4月1日エイプリルフール。

 嘘をついてもいい日、ではなくて、願いが叶う日だといいのに。

 『ドラえもん』のひみつ道具「ウソ800」って、エイプリルフール・ネタだっけ?

 「ウソ800」を飲んでから口にした言葉は、全部嘘になる。

 いいお天気だからそのまま「いい天気だね」と言うと、途端雨が降る、そんな薬。

 ドラえもんは未来へ帰ってしまい、もう二度と会えない。
 その現実を受け止め、のび太は肩を落として言う。「ドラえもんが帰ってくるわけないじゃないか」
 諦観。絶望。

 すると突然、ドラえもんが現れた。
 のび太と、彼の生きる20世紀世界で、今までと同じように一緒に暮らせることになった、と。

 のび太が「ウソ800」を飲んでいたためだった。
 彼の言ったことが、全部嘘になったんだ。

 のび太が口にした「事実」、口にすることで受け入れようとしていた「絶望」が、覆された。

 「帰ってこない」は嘘に。
 「二度と会えない」は嘘に。

 ドラえもんはのび太の元へ戻り、のび太は号泣しながらも「嘘」を口にし続ける。

「ドラえもんは帰ってこない。ずっと一緒に暮らさない」

 泣きながら、抱きしめ合いながら。
 愛しい嘘を叫び続ける。

 
 子どものころ読んだ記憶のままなんで、まちがっている可能性大だが、たしかこんな話があった。
 泣いたおぼえがある。

 
 エイプリルフールが、願いの叶う日だったらいいのに。

 どうせ叶いっこない、とあきらめて口にする、ネガティヴな言葉がすべて嘘になればいいのに。

 タカラジェンヌは誰もが必ず退団する。

 初舞台を踏んだその日から、カウントダウンははじまっている。
 生まれた命がいずれ必ず死ぬように。
 それは、ただの事実。世の理。

 花は散るからこそ美しいし、楽園は有限だからこそ素晴らしい。
 新陳代謝を繰り返して、地球は回り続ける。

 それでも。

 「事実」だとか「理」だとか。
 そんなもので、寂寥も哀惜もぬぐい去れやしない。

 生まれたからどーせ死ぬんだ、人の寿命なんて大抵決まっている、と言ったって、いざ大切な人の命が消えていくとき、平静なんかでいられなかったように。

 祖父は96歳の大往生だったけれど、それでも、その死の直後に「そんなトシまで生きたんだから、いいじゃない」と言って笑った人に、やるせない怒りを感じた。
 理屈じゃない。96だから死んでイイなんて、どうして思える。祖父は次の季節をたのしみにしていた。家族で出かけるイベントを楽しみに、次の約束を楽しみに、家族を愛し猫を愛し、生きようとしていたのに。死んで良かったというのか。

 終わりが来ることと、終わりを悼むことは、また別の感覚だ。

 「事実」であっても。
 「理」であっても。

 
 みんなみんな、嘘になれ。

 わたしの愛するあの人が、いつか必ずいなくなる、なんて事実。そんな理。

 『アデュー』なんてタイトルも、嘘になれ。

 
 わたしはただの一ファンで、ジェンヌの人事情報なんか公式を待つしかない身だし、これまでがそうだったように、年間スケジュールや任期を鑑みて心の折り合いをつけるよう努力しつつ、それでもまだ未来を夢見ている。

 いやその、タイトル発表されて以来、ずーっとヘコんでるからさ。

 
 助けてドラえもん。


 花担なことだし、花組振り分け発表には反応しておくか。

 初夏の花組の興行メンバーが発表になった。
 梅芸『あさきゆめみし』と、バウ『舞姫』『ハロー!ダンシング』の3作品に、誰が出るのか。

 
 いちばんショックなのは、『ハロー!ダンシング』のメンバーだ。

 
 劇団はナニを考えているんだろう……。

 他4組の出演者と、花組の出演者はちがいすぎるだろう。
 他組は「芯を取れるスター不在」のまま、無理矢理興行し、自爆していたりするんだよ?

 構成も群舞基本で、スター力を鍛えることにはなりそーにない演出。
 「バックダンサー養成」を目的とした、「タカラヅカ」としてまちがった興行。……そう、あきらめていた。

 演出が悪いことは言うまでもないが、今のところ唯一星組だけはキャストの実力とバランスの良さで「タカラヅカ」として成立していた。
 トップスターが主役で、2番手3番手がソレを盛り立て、組子全員が一丸となって取り組み、組長が組と公演自体をまとめる。……そーゆー、ふつーの「タカラヅカ」。

 トップスター役@あかしが華と実力とハッタリ(顔芸含む)で真ん中で燦然と輝き、サブをともみんとドイちゃんが務め、ゆいちゃんが組長の仕事を果たし……てな。
 雪と宙は、トップスター不在で学年順に仕事をしていた。そりゃ、キャリアがある方が「見せ方」はわかっているだろうよ……でも組長がイコール主役、つーのは「タカラヅカ」のルールぢゃない……。

 もちろんバウサイズの話であり、20人弱の出演者の話なんで、大劇場で80人強の人数相手にトップスターやってる人たちと、スケールがチガウんだけど。
 それでも、そこがどんなハコであれ、なんの興行であれ、タカラヅカは「タカラヅカ」であるべきだと思う。

 『ハロダン』がどれほどまちがったコンセプトの公演であろうと、演出に誠意とセンスが欠如していようと、星組のようにキャストの力とバランスで、なんとか「タカラヅカ」にすることはできる。

 だから花組にも、ソレを期待していた。
 大劇場でトップスターをやれるほどのスターはそうそう出るモノではないが、ショートプログラムのバウホールで真ん中に立てるぐらいのショースターならいる。
 いわゆる「路線」でなくても、将来のダンスリーダーを期待できる子だとか、ダンスもふつーにできて新公主演してない、でもスター寄りな子とか、『ハロダン』にうってつけの子たちがいる。
 星組でいうあかしポジの子がいるんだから、星組のよーに「タカラヅカ」として『ハロダン』ができるじゃないか。

 あのまちがった演出を、力業で立て直してくれることを、期待していたんだ。

 他4組を見ても、星組をのぞいて「主役」ポジにいるのは88〜89期あたりの子だ。
 花組もまた88〜89期あたりで「主役」ポジをひとり選出、2番手としてそのへんか、その下あたりからひとり、あとは組長として83期前後のダンサー属性の人がひとり選出。
 という形になると思っていた。
 だって他の組がそうなんだから。

 なんで花組だけ、主役張れる人たちがゴロゴロ出演するの?

 主役はひとりでいいんだってば!!
 「タカラヅカ」ってそーゆーところでしょ?
 拮抗する2番手はいてもいいけど、それもひとりでいいんだってば!!

 振り分け発表を見て痛切に思ったことは、もったいないでした。

 だってもう、演目知ってるし。
 ただの群舞ショーなんだよ? 武富士のCMみたいに踊ることを目的にしてるよーな世界なんだよ?
 唯一「主役」と2番手だけには「タカラヅカ」っぽい場面があるけれど、4分の3は「バックダンサー養成」場面なんだよ?

 バウワークショップでなら「主役」になれる人たちを、正しく「主役」として使ってくれよ。
 結局ただの「バックダンサー」にすることになるじゃん、こんなにたくさん「主役」クラスの子たちを出したら!!

 
 もちろん、観客としてはうれしいよ。基礎力の低い、とほほなモノを見せられるより、スター勢揃いだからそれだけでもたのしい、てなモノの方が、金を出す身としてはうれしいよ。

 ただ、「タカラヅカファン」としては、他公演ではたぶん絶対「主役」になれない属性の子が、「主役」になれる公演、ということだけで『ハロー!ダンシング』という謎の企画に望みを見出していたのでな。
 ソレすら奪われると、ヘコむ……。

 花組『ハロー!ダンシング』は、「主役」ポジ誰なの?
 かりやんならすずはるき的「主役」だし、マメやしゅん様ならあかし的、ダンサー枠で組替えしてきたらしいかすがだって、花組色満載のらいらいだって、「真ん中」を与えられれば仕事をするだろう。
 新公主役も将来狙えます系若手枠としては、だいもんがいる。
 ミホ先生は組長ポジだと思うけれど花組を代表するダンサーのひとりだし、今年ヒロイン総ナメ状態のののすみまでいる。
 「バウワークショップ規模限定」でなら、彼らは「主役」として場面もらってもおかしくない面子だ。

 もったいない……。
 せめて半分にしてくれたら……。

 オイシイ場面なんかほとんどない、サムいつなぎの場面と群舞しかない公演なのに。
 他組と同じキャスト構成なら主役になれる子が、ここでもただのバックダンサーになってしまうなんて。
 や、結果として「この子に主役は無理だったな」てなことになるかもしんないけど、名前だけ見る分には『ハロー!ダンシング』でせしるや鳳翔大ポジ(本当なら主役ポジ)OKだろう、花組88〜89期出演者たち。

 いや、見応えあるだろーから、うれしいはうれしいんだってば。
 ただもう、くやしくてな……。
 かりやん主役だって、マメ主役だってしゅん様主役だって、見たかったんだってば。かすが主役もらいらい主役も見たかったんだってば。
 だいもんは、これから先主役があるかもしれないけれど……ここでだって、見てみたかったさ。
 なのに、この面子じゃ、主役になれるのはひとり、あとオイシイのはひとりか、せいぜいふたり。……残りはバックダンサー決定。
 くやしい〜〜。

 花組だけ、通常バウ公演と『ハロー!ダンシング』の間が丸1ヶ月も空いているので、両方出演可能だから、出てくれること自体もうれしいんだけど。
 でもなんでだいもん、よりによって『ハロダン』だけなの? 彼が主役だから?

 あーもー、うれしいことはうれしいのに、同時にヘコむってなんなんだ。

 
 あ、まっつが『舞姫』なのは意外でした。
 『MIND TRAVELLER』に引き続き、2作連続2番手ポジにさせてもらえるはずがないと信じていたんで。
 『あさきゆめみし』で4番手くらい?(てきとー)をやっているのが、まっつらしいと思い込んでいた。
 や、バウで2番手なのかどうかなんて、幕が上がるまでわかんないことだけれど。まあ、キャストの学年的に2番手位置、つーことで。

 びんぼーなので、コストパフォーマンスのいいバウホール組でありがたい……。
 通いますよっ、あの『MIND TRAVELLER』にアレだけの金額かけて通ったんだから。
 『MIND TRAVELLER』と同じ金額出したら、バウなら毎日観られるわね♪(『マイトラ』は超前方席でしか観なかったので7000円定価基本、プラス青年館遠征費がかかっている)

 まっつは相沢役希望。
 みわっちを愛し、彼のためだけに思考し、行動し、ののすみから彼を奪い、彼女を発狂に追いやる役……ハァハァ。(←『舞姫』の基本理解がちと曲がってるかもしれません)
 まっつ攻のみわっち受が見られるのかしら。ハァハァ。
 景子せんせーお願いっ!! まつみわを見させて〜〜!!
 みわっちを愛し、苦悩するまっつを見させて〜〜!!

 サイトーかこだまっち演出なら腐った期待もできるし、大野せんせーならど真ん中でわくわくできるんだが(笑)、少女マンガきよらか系の景子タンでは無理だろうなー。美しいけれどエロさも闇もないのが景子タン。

 でもたのしみだ。

 
 『あさきゆめみし』は主要配役が先に出ていたので、ふつーにたのしみにしている……が、作品自体がアレだとわかっているので、寿美礼サマのビジュアルと歌に期待するよ〜〜。


 書きたいことが多すぎて、いちばん書きたいことが書けない……。って、ナニやってんだろうなあ。

 いちばん書きたいことっていえばもちろん、花組公演の感想です。
 他の組もまんべんなく観るから、先にそっちの感想を書いてしまって、肝心の花組の話が書けない。他の感想はその数回で終わることがわかっているけど、花組の感想は果てが見えない。
 だからつい、まず「語ってもせいぜい2日分(6000字程度)だな」とか、「3日(10000字弱)かかるかな」とか、見当のついているものを先に書いちゃうじゃん?

 そーやって花組の話が、ちっとも書けない……。
 そしてわたしの海馬は不良品。書きたかったことをどんどん忘れていく。
 助けてリチャード教授。わたしの海馬をサーチして花組公演の感想をバックアップしてぇ。

 
 ま、それはともかく。

 初日からずーっと書きたかったことを書こう。よーやく書こう。

 
 花組公演『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』初日。

 わたしはひそかに、ものごっつー、びびったことがある。

 明智くん@オサ様と、波越くん@壮くん。

 お帰りなさい、の壮くんは、なんかものごっつー自然に花組に同化していて、雪にいたときのトホホさがウソのよう。
 まちがいなくオトコマエ度も上がっている。

 とはいえもちろん、リーマン度が下がることなどない。

 勤労者がこれほど似合う二枚目もいない、すばらしきかな壮一帆。

 なにより、オサ様との相性がいい。

 春野寿美礼はいろいろ困った人で、合わない人には合わせないし、ひとりで勝手に芝居をする。ついて来られない人は平気で置き去りにする。しかも本能、無意識に。

 壮くんは空気読めない人で雪組では盛大に浮き、これまたひとり勝手に芝居をしていた。

 そんなふたりが芝居で組んだら、どんなとんでもないことになるんだと期待危惧していたんだが。

 杞憂だった。
 合わせる気のない気ままな天才と、空気読めない天然男は、10年来の相方のよーに、あうんの呼吸で本能的な芝居をしていた。

 なんなのこの人たち。

 べつに、それぞれが変わったわけでもないのに。
 勝手にやっているだけなのに。

 相性がいいってのは、こういうことか。
 1年半も前に組替えしてきて、未だにオサ様相手に悪戦苦闘しているまとぶ氏が気の毒だ。
 ナチュラルボーンの壮一帆は、なーんにも考えずにオサ様の横に収まっている。

 明智くんと波越くんは、親友同士。
 互いに尊敬の見える、大人の男の友情。

 ふたりの関係が、やりとりがあまりに自然で、びっくりしたさ。

 なんだよなんだよ壮一帆、なんかやたらとかっこいいぞ?
 オサ様がカッコイイのは地球の常識だとしても、その横に立つのが似合うくらい、壮くんもかっこいいぞ?

 波越くんは彼特有の鈍くささとなまぬるさで、それでも心を開いて明智くんを見つめている。

 明智くんは明智くんで、妙なテンションの高さで波越くんに……甘えている?

 初日のおどろき。
 あまい。
 オサ様なんか、あまいぞ?

 心が、波越くんの方を向いている。
 銀橋でクネクネ歌っているときはチガウけれど、波越くん相手に話しているときは、ほんとーに波越くんを見ている。自分を見ていない。
 や、オサ様演じるキャラクタは、相手への関心度によって心の向け方が変わってくるから。下手すりゃ相手と話しながらも自分のことしか見てないから。

 波越くんのこと、好きなんだ。

 そう思えるキャラクタ像に、びびる。

 さらに。
 ……さらに、うろたえまくったことは。

 新婚ホヤホヤの波越くんに「おめでとう」と言いながら、明智くんは言うんだ。「ひとつ聞いてもいいか」と、改まって。

「どうして結婚した?」

 この台詞が。
 下手花道から銀橋にかけての立ち位置で、観客に背を向け本舞台上の波越くんにだけ顔を向けて言う、この台詞が。

 めちゃくちゃ、甘かったの。

 スウィートですよ。
 甘え声ですよ。

 媚態を含んだ声ですよ。

 うろたえましたとも。

 なななななんなんのアンタたち。
 これって睦言?
 恋人同士の会話?
 元カレ相手に言ってる?

 返す波越くんの台詞もすごい。

「子どもも欲しかったし」

 ……明智くんには産めないもんな、子ども!!
 別れた理由はソレか、波越よ!!

 はぁはぁ。
 初日から、無駄に消耗しました。

 初日のあと、わたしが次に観劇したのはいつだったかな。2日後?(海馬に残ってない……)
 そのときには、明智くんの「どうして結婚した?」はふつーの声音になっていました。

 やっぱマズかったんだ、初日のアレ。
 やりすぎてたんだ。

 オサ様の演技は日替わり公演替わりが基本だけど、あれほど完璧に甘え声だったのは、初日1回のみだった。や、わたしはたかだか15回しか観てないから、狭い範囲での話だけど。ん? 回数チガウ? 芝居は捨ててショーだけ観たこともあったよな?(海馬がもうあやふや……)

 
 明智くんと、波越くん。

 初日から、わたしの頭を横殴りにしてくれた、麗しきリーマンBLの図。

 萌えとか明智受とか、そーゆーことが言いたいわけでもなく、ただもう、明智くんの甘えっ子モード全開さに、オサファンとして目眩がしたのよ。

 だって壮くんは、あの通りのなまぬるさで。
 甘えっ子なオサ様のことも、同じ温度でふつーに受け止めていそうで。
 や、ソレ君、破格の扱いだから!! 君がわかっていないだけで、ものすげーことになってるんだから!!

 明智くんの媚態は初日限定だったとは思うけれど、かわりに彼は、追跡シーンでいちゃいちゃしはじめた。

 初日はまだ、ふつーだったのに、追跡シーン。

 日を追うごとに明智くんと波越くんは、密室の中で愛をはぐくむ。

 仕掛けるのが、明智くん。
 波越くんはやっぱりぬるい。でも、明智くんにかまわれるのはうれしいみたい。
 明智くんは、波越くんの木訥な反応を愉しんでいる。小悪魔的に。

 
 たぶん、このふたりが素晴らしいのは、壮くんに色気がないことだと思う。

 彼はほんとふつーの、鈍い30男なのよ。
 妻を愛し、仕事に誇りと責任を持ち、親友に心を砕く、ふつーの愛すべき日本男児。
 色っぽいことなんかぜんっぜん考えてないし、耽美とか芸術とかもまったくわからない。

 そんな、ふつーに健康的な彼の親友が、天才であり、多分に背徳的な美や快感の側に立つ耽美青年であるということ。

 波越くんは明智くんを理解できないし、明智くんもソレをわかっているけれど、それでもふたりは親友なの。
 互いを尊敬し、愛しているの。

 車の中でいちゃつく30男ふたり(公式の年齢設定なんぞ無視)に、変ないやらしさがないのは、波越くんがなにもわかっていないから。
 空気読めない男だから。
 明智くんの色っぽさをまったく理解せず、彼がデフォルトで振りまいている鱗粉のごときチャームオーラにも無感動。
 だからこそ明智くんも安心して、エロ気全開に甘えていられる。

 
 おもしろいなあ。
 明智くんと、波越くん。

 このふたりの空気感。
 美しさの相乗効果。
 耽美と健康美。
 倒錯と純粋。

 
 黒蜥蜴@彩音を失い、心が死んでしまった明智くんを救うために、波越くんが手をさしのべるのは基本でしょうね。
 明智くんの魂懸けた誘い受に、さすがの鈍感波越くんも、重い腰を上げるでしょう。
 彼はとことん健康的な思考回路の持ち主だから、「女は妻一筋」「明智くんは男だから、これは不貞ではない」とか、ふつーに思っていそうだ。
 そしてそんな波越くんの思考も言動も全部、もちろんわかっているのが明智くん。

 素敵な関係。


 ウィーン版『エリザベート』観てきました。
 本日マチネの方っす。キャストは確認し忘れたんで、わかりません。
 ヅカファンやってるとキャスト固定の概念があって、ひとつの役にキャストが複数いるっつーのに慣れなくて。
 主役のエリザベートはファーストキャストのマヤ・ハクフォート氏で合ってる?
 1階席の隅っこで観劇。わたしたちの後ろも横も無人だったので、のびのび観られました。
 

 隣の席でnanaタンは「フランツ主役!」とわめていたけれど、それはいつものnanaタンクオリティ(笑)、主役はちゃんとエリザベートでした。
 
 わたしがウィーン版を観たかったのは、ひとえに宝塚歌劇の『エリザベート』という「作品」が好きだから。
 たとえば、好きなマンガがアニメ化されたら、とりあえず1話は見てみる。続けて見ることはあまりないけど、1回自分で見て、納得する。
 そんな感じで、東宝『エリザベート』も初演と再演を1回ずつ別キャストで観て、納得、以来まったく観ていない。
 原作マンガのファンだからって、そのアニメ化作品を「原作とチガウ!」とどうこう言う気はない。原作とメディアミックス作品はまったくの別物で当然。同じタイトルだとしても、別作品カウント。
 別物であるという前提の上、そこに個々の好みがあるだけのこと。
 どちらが優れているのどうのと言う気はない。

 てゆーか大抵の場合、「先に出会ったモノ」が素晴らしく、あとから出会ったモノはソレに劣るのだ。
 わたしがどうこうというより、人間の習性として。だからみんな言うんだ、「昔の方が良かった」「昔は良かった」。事実とちがっていても、関係ない。その人個人の記憶では、そーゆーことになっているんだ。

 タカラヅカで再演を繰り返し続けている『エリザベート』にしても、個々が最初に観た『エリザベート』、もしくは贔屓が主要キャラを演じている・贔屓組上演の『エリザベート』が最良のものと感じられるだろうさ。

 ウィーン版『エリザベート』が本家本元、いわゆる「原作」なのはわかっている。
 素晴らしいことも、わかっている。
 でも、わたしはタカラヅカ版に最初に出会ってしまっているので、そしてそっちにハマり過ぎてしまっているので、結局のところどーやっても覆されることはないのだ。
 寿美礼サマがこんなに好きで、寿美礼サマのトートを心から愛しているけれど、わたしのベスト『エリザベート』は初演の雪組だ。あの感動が心に刻みつけられてしまって、あとからなにを観たって「感動の記憶」は揺るがないんだ。
 作品のクオリティとかキャストの技術とかハマリ具合とか、そーゆーモノとは別次元なんだよなあ。
 「最初に出会ったモノ」っていうのは。

 だから、ドラマにハマったから原作マンガを読んでみる、そーゆーノリでウィーン版を観劇した。

 や、ほんと、素晴らしかった。
 金さえあれば、何度でも観たい(笑)。
 S席16000円、B席でも7000円もしやがるので、わたしの経済状況では無理ですが。……てゆーか、3階席でも半分A席11000円なの?! あの超観にくい天井桟敷が?!

 オープニングからスイッチ入っちゃって、だーだー泣けたんですが。

 『エリザベート』ってやっぱ、すごいなあ。
 作品の持つ力に圧倒される。

 あと、字幕が新鮮でねー。
 原作の歌詞を日本語歌詞に凝縮すると、まったく別の単語になっていたり、大意だけ酌んだ別の文章だったりするじゃん?
 それが、メロディの制約を受けず、映画の字幕程度の情報量のある翻訳文章になっていると、印象がかなりチガウ。
 文字でダイレクトに飛び込んでくるので、歌詞を聴き取ることに気を取られない。歌声を「音楽」として、より本能的に体感する。……字幕に気を取られると演技が観られなくなっちゃうけど(笑)。

 『エリザベート』は、どれもチガウ。
 タカラヅカ版も東宝版も、ウィーン版も。
 カンパニーがチガウ、技術がチガウ、とゆーよーな意味ではなくて。

 まるで、古典文学をいろんな作家が自分の解釈で現代語訳して、オリジナリティのある潤色をして「作品」として発表しているように。

 おもしろいなー。

 ウィーン版では、トートが主役ではない。それはわかっていたけれど、東宝版ほどの重みもないのは意外。
 主役はエリザベート、そして準主役というか彼女の相手役は、「彼女の生きる世界」だと思った。そして「世界」は、ナビゲータでもあるルキーニに近い。
 エリザベート、ルキーニ、トートの順なんだ、役の重み。

 なんか、シシィとルキーニだけでみんな持って行かれたよーな気がする……。
 トート閣下はとても甘い声(これも意外)の方で、気持ちよく大暴れしていたけど、それよりルキーニの自由自在ぶりがこわかった。

 ルキーニの軽やかさと毒、台詞のあちこちにある「人間」への辛辣さ……舞台全体の厭世観と退廃感が、じりじりと心を浸食していく感じ。
 わずかな流れだからと他のことに気を取られていたら、ふと気づいたときには胸まで浸かっていた、空気残ってるのあと少し、このままじゃ溺死?! みたいな。

 シシィと、「世界」。
 「世界」の中の、シシィ。

 檻の中と外。

 ものすげー好みの世界が展開されていた。
 だから好きなんだ、『エリザベート』。
 絶望がちりちりと髪の先を灼きはじめている。身体は無事だよ、でも。……でも。

 不吉なナイフが舞台を切り裂く。

 ルキーニ、そしてトートが行き来する、巨大な装置がある。舞台を斜めに分断するスロープ。
 ナイフのようだ。

 「世界」は何度も切り裂かれる。
 巨大なナイフに。

 ナイフの上で笑うルキーニ。あるいはトート。

 あがきつづけるエリザベート。
 彼女に届かないフランツ・ヨーゼフ。

 圧倒的な音楽と歌声、禍々しい美しさに満ちた舞台。
 や、絶対おもしろいって! すごいって!

 
 ……しかしコレを、よりによって宝塚歌劇で上演しようなんて、よく思ったな。

 ウィーン版を観ながら、心から感心した。
 そして。

 小池修一郎を、改めて尊敬した。

 この救いのない、ついでに愛も大してない(それよか絶望の方が大きい・笑)物語を、トートとシシィのラヴストーリーとして、ロマンティックによくぞ脚色したもんだ。
 原作をふくらませたのであって、壊していないんだもの。

 在りモノの設備と限られた予算で、ヅカ版『エリザベート』をあそこまで創りあげたイケコは、ほんとーに素晴らしい演出家だ。

 『MIND TRAVELLER』とか作るから、ありがたみのない人になっちゃってるけどさ。ほんとはこんなに、すごい人なんだよなあぁ。溜息。
 オリジナルはもういいから、アレンジと演出だけに努めてくれよ……懇願。これだけ才能あるのに、なんであんなしょーもないオリジナルで名声に泥を塗るんだ。

 
 んで。
 原作の役の比重を見せつけられることで、ヅカにおける生徒への格付けが見えて、わかっていることだがちとしょぼん。

 ルキーニ≧トート>フランツなんだ……。

 ヅカではトートが主役だから、トート役が大切なのは言うまでもないけれど、次に重要なのはやっぱフランツではなくルキーニなんだな。
 組内昇格が前提だった雪・星・宙までは除外して、新専科以降劇団の人事事情がかかわってくる花・月で、重要なのはトート、ルキーニ、ルドルフ。
 新公はもっとわかりやすく、路線が演じるのは、トートとルドルフのみ。
 フランツぢゃない……。
 今のところ、フランツやってトップになった人いないぢゃん……。

 いやその。
 わたしの好きな役者は、大抵フランツ役者なんですよ。

 フランツ役、好きだもんよ……。あああ、わたしの好みって。


 昔のまとぶんには、正直興味がなかった。

 わたしは彼の「持ち味は正統派だけど、黒っぽい男役の方が世の中的にウケるから黒で行こう」的なところが苦手だったの。
 や、世間的にどうだとか、彼自身がどうだとかは知らないが、わたしはとにかくそう感じていたんだ。昔からずーっと。同じタイプにあさこちゃんがいる。「俺様の方がウケるから、俺様で売ろう」的な。
 どう見たって「いい人」なのに。ヲトメたちがときめくのは「ちょい不良」だからって、属性を偽らなくてもいいのに。
 そーゆー無理をしている人には、興味ないなー。

 あくまでも、舞台上のキャラの問題ね。本人の人格なんぞ知らないし、関係ないよ。

 舞台の上で、本当の鬼畜キャラつーのは、春野寿美礼みたいな人をいうんだと思う。
 あ、朝海ひかるも同カテゴリに入れてもまちがいではないな(笑)。寿美礼サマとは色がちがうけど。
 彼らはナチュラルボーンであり、「ソレが売れるから」そうしているわけではない。天使の笑顔で正統派二枚目を演じていても、本人がそのつもりでも、勝手に闇の属性がにじみ出ている(笑)。

 まとぶんが花組にやってきて、歪んだ王国の帝王ハルノスミレに翻弄され、今までのよーな黒っぽい男役を作っていられなくなり、一時「途方に暮れて泣き出しそうな、頼りなげな男の子」の体をさらし、そののち開眼した、今の芸風が好みど真ん中だ。

 今の芸風。
 すなわち。

 ワイルドM男。

 黒っぽい男役として培ってきた、ワイルドなビジュアル。本来の顔立ちはやわらかくも女性的な美貌なのに、雰囲気を黒っぽくすることでワイルドさを演出してきた。
 どんなに黒っぽくふるまっても、性格の良さはにじみ出る。いい人オーラ、かわいこちゃんオーラは隠せない。
 そのいびつさが、寿美礼サマとゆー真の「黒」の前で破壊され、男っぽいのに、受々しいという、素敵資質を開花。
 それも、ただ受てりゃいーっつーもんでもない。
 相手のS属性を受け、被虐キャラとしての色気爆発。

 ロドリーゴ@『落陽のパレルモ』でヴィットリオ@寿美礼サマにコケにされる美形貴族を演じ、資質の片鱗を見せる。
 オーランド@『Appartement Cinema』では、ウルフ@寿美礼サマに惚れきってる年下の犬属性攻男を熱演。女王様に振り回されるM男っぷりが素晴らしい。
 フィリップ@『ファントム』では、本人は恋人気取りなのにクリスティーヌ@彩音ちゃんには、頭数にもされず完全スルー、独り相撲が素敵なフラレ男。
 マックス@『MIND TRAVELLER』では、本人なにも悪くないのに不幸が雪だるま、殺されかけて記憶喪失でぬれぎぬでモルモットで電気ショックで、拉致られて集団リンチでこれでもかと驚異の受難、不幸っぷりがときめく美男。
 そして極めつけの雨宮潤一@『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』、悪女のM奴隷。

 不幸であればあるほど、美貌が輝き、魅力が増すのは、どーゆーこっちゃ。

 踏みつけられると、色気がダダ漏れるのは何故。

 ふつーM系被虐系がハマる人は、美少年系というか、中性っぽかったり女っぽっかったりするもんなのに。
 まとぶ氏は男らしいまま、M道驀進。

 セクシー・ワイルド。……クール・ビューティと対をなす、もうひとつのカテゴリ。
 そこにまとぶ氏は、M属性を加えた!

 最強だ、真飛聖。
 見ていると、ぞくぞくする。

 いぢめたい……この男、いぢめたいー。
 泣かせたい〜〜!!

 
 てことで、彼のはじめてのパーソナルブック。

 Mっぽくて、いいデキです(笑)。

 表紙からして、美形M男オーラ出してますよ!!

 ゆみこパソプでも語ったけれど、わたしがタカラヅカ男役の写真集に求めるモノは、「タカラヅカ男役」。
 素の、きれいな女の子の写真集じゃない。
 女の子写真は退団してからいくらでも出してくれ。
 それより今は、「男役」という希有な存在であることを「創りあげ」て、「作品」にしてほしい。

 2007年パソプはまとぶ氏でVOL.3。
 実はVOL.2のらんとむさんも、発売直後いそいそと手に取ったのだけれど。
 ……かなしいかな、求めるモノではなくて、眺めるだけで棚に戻してしまった。

 わたしが欲しいのは、「タカラヅカ男役」の写真集。きれーなおねーさんじゃない。
 ましてや、熟女写真集ぢゃない。
 舞台のらんとむはあんなにいい男なのに、パソプのコンセプトはまちがってるとしか思えない。

 肩を落としつつ、発売日にVOL.3のまとぶ氏を手に取った。
 あの男っぽいらんとむが「女の子」写真を撮ってるくらいだ、素がかわいこちゃんな美人のまとぶんはさらに「ただのアイドル写真集」だったらどうしよう。
 そう、危惧していたさ。

 ところが。

 ……そのまま、レジへ直行。
 
 「男役」だ。
 「タカラヅカの男役」だ。

 素の「女の子」写真の方がラクだろうに、いくらでもきれいになるだろうに、あえて、「男役」を創りあげようとしている、写真集。

 その心意気やヨシ!!

 男役のまとぶが好き。
 10年以上懸けて人工的に後天的に、意志を持って創りあげられた、彼の財産が好き。
 
 星組時代・下級生時代からエリートコースを進み続けた彼だけど、写真集としてまとまったのが「今」でよかった。
 星組下級生時代の女の子アイドルまんまだったころでなく。
 また、かよちゃんを追い落とし、組替えで来たしいちゃん@新公主演経験上級生をハナから下に置き、トップ路線男役としてブイブイ言わせていた星組時代後半でもなく。
 花組に組替えになり、いろんなものにぶち当たり、あがいて傷ついて、そして独自の魅力を醸し出しはじめた、「今」。

 「今」の真飛聖の魅力が詰まった写真集だ。

 これから先、彼はまた変わっていくだろう。
 次の写真集ではチガウ顔をしているかもしれない。

 だからこそ、2007年personal bookは、意味がある。

 今の、「被虐系セクシー・ワイルド」とゆー、希有な芸風が匂い立ってます。

 ダイスキだ、まとぶん。


 花組東宝初日、翌日と合計3公演連続で観てきました。

 ムラから東宝へハコが移動するにあたって。
 期待していたことがある。

 『TUXEDO JAZZ』というワンダーランドの物語が、正しく仕切り直されていること。

 ムラの初日からしばらくは、おそらくオギーの演出通りの物語になっていた。
 彩音を探すオサ、オサを探す彩音、すれちがい続ける恋人同士、彼らを翻弄するまとぶ、人間のオサ様が悪魔まとぶに導かれ、混沌の中で狂気と絶望に堕ちる……ええっと、こんな感じだったよね?

 それが、中日を過ぎるころには、別物。

 オサ様は狂気を愉しみはじめた。

 苦悩しなければならない場面で、ノリノリで歌いまくる。絶望しなければならないところで、ポーズを決める。
 誰かこの人なんとかして。
 オサ様は「人間」役なのに。
 悪魔に翻弄される、「こちら側」の存在なのに。

 誰よりも愉しそーに「あちら側」で息づかないで。

 春野寿美礼って……。
 なんつー困ったイキモノだ。
 寿美礼様サマに「人外」を振ることは簡単だったのに、オギーは今回あえてそうしなかった、らしいのに。暗黒ではない物語を表面に描いていたのに。

 なのに寿美礼サマは、勝手に「人外」キャラになる。
 放っておくと、「人間」を、わたしたちの生きる「こちら側」を簡単に置き去りにして、選ばれた者だけが赦される場所へ行ってしまう。

 舞台はイキモノだから、公演を重ねるごとに変化していくことは仕方がない。最初揃っていたダンスがどんどんバラバラになっていくよーに、それぞれ個性が出てしまって、当初の予定とちがってくることはある。
 それをリセットする意味が、ムラと東宝の劇場移動にはある。
 一旦千秋楽を迎え、再び演出家のもとお稽古をし、初日を迎える。
 これまでも、ムラでヒートアップし過ぎていた舞台が、東宝初日にはムラ初日のテンションに戻っていたり、過剰なアドリブが抑えられたりしたもんだ。

 だから、期待していた。
 オギーがきちんと手綱を取り、好き勝手やっていたオサ様に、脚本上の演出上の演技をするよーに、仕切り直すと思っていたの。
 カオスでエクスタシーのまま絶唱する寿美礼サマは大好物だけど、オギーファンでもあるわたしは、正しい「オギー作品」も観たいのよ。

 期待していた、のに。

 
 リセットされていない。
 矯正されていない。
 制御されていない。

 当初のストーリーもテーマも、あったもんぢゃない。
 ムラ楽のまんま(むしろ前楽の狂乱に近い)、さらにエスカレートしている。

 春野寿美礼、暴走。

 なにコレなにコレなにコレ。

 寿美礼サマが暴走している。
 野放しになってる。

 リミッター解除。
 剥き出しの、春野寿美礼。

 クライマックスのカオスシーンにて。

 オサ様は、魔界で笑い出す。
 ただ表情が笑いのカタチになっているだけじゃない。

 好きに「音」で遊んでいいこの場面で、オサ様は今までもスキャットで自在に「声」を出してきた。「みわ〜〜っち!!」と歌ったりな。

 それが東宝初日。
 「AH〜〜」で自由に音を遊ぶところで、オサ様、本気で笑っている。

 「AHAHA」、って、歌の中で本気で笑ってるよ。

 なにコレなにコレなにコレ。

 カオス突入前のさあやの清浄な歌声が、狂気の歌い上げにつながる、アレンジの変更。それが示す通りに。

 盛り上がる狂気。
 回り出す狂乱。

 春野寿美礼が、解き放たれる。

 もう彼は、「人間」ぢゃない。
 わたしたち側の存在じゃない。

 「あちら側」が彼の居場所だ。

 理解した。
 理解したよ。

 こちら側とあちら側が描かれるこの物語において、オサ様があんなに重いせつない「現実」を生きていたのは、わたしたちのいる「ここ」が、彼の本来の世界ではなかったためだね。

 「あちら側」の人だったんだ。
 なのにまちがって「こちら側」に生まれてしまった。
 だからあんなにも、彼は孤独だった。

 今、カオスの中で彼は本来の自分に戻る。

 制御装置をはずして。
 演出家も、ソレを許した。
 春野寿美礼に「人間」をやらせようとした、ソレが間違いだったと認めた。

 まとぶに奪われた彩音を追っていたはずの銀橋渡りも、彩音のことなんかまったく眼中にない。
 彼は自分の世界を見回すことに気を取られている。

 まとぶは悪魔ではない。
 魔界の帝王ハルノスミレ自身の使い魔だ。彼の回りをちょろちょろすることでヒントを与えた程度。……や、寿美礼サマの目に入っていたかどうかも怪しい。
 魔王は自身で覚醒したのだから。

 めちゃくちゃだ。

 ほんと、カオス。混沌。狂乱。

 こんなめちゃくちゃなショー、知らない。
 春野寿美礼がめちゃくちゃにした。
 なにかもぶっ壊して、そしてその上で、君臨している。

 その、圧倒的実力。カリスマ性。

 作品ってのは、ここまで壊していいもんなんだ。
 それを統べる、力があるなら。

 気持ちいい。

 能力を自在に解放する天才のオーラに身を任せるのが、最高に気持ちいい。

 てゆーか、リミッター解除したオサ様に引っ張られて、他のみんなの狂気も上がってるよね?
 えーらいことになってんですが。

 おかげで、カオスのあとショーシーンに戻るために、音楽に「線引き」のためのアレンジ加えられてるじゃん?(笑)

 オギーが、春野寿美礼を「赦した」んだなあ。
 その才能を発揮するための舞台を提供したんだ。あちこち細かいアレンジして、クライマックスで大暴れしていいように、バランス調整してくれている。

 ものすごく、気持ちいい作品だ。
 東宝『TUXEDO JAZZ』。ムラ前半とは、明らかに別物(笑)。

 いいなあ、東京の人。
 これから毎日、魔王の宴で異次元体験できるなんて。
 や、正しい演出だったムラの『TUXEDO JAZZ』も、できることならもう一度観たいのだけど。……もう消えてなくなってしまった。

 だから今はただ、「今」の『TUXEDO JAZZ』が観たいよ。

 帝王、春野寿美礼にひれ伏したい。


 花組初日のあと。
 待ち合わせたパクちゃん相手に、そののち合流したサトリちゃん相手に、わたしはもうただひたすら、「オサ様すごい! オサ様素敵!」とだけ、わめきつづけていた。

「あのー、まっつの話、ぜんぜん出てこないんですが」
「緑野さん、まっつと寿美礼サマ、ほんとのとこどっちが好き?」

 と、真面目に訪ねられてしまうほどに。

 
 まっつ?
 好きですよ、もちろん。
 でもあの人と寿美礼サマぢゃあ、存在の格がちがいすぎて……。
 てゆーか、寿美礼サマがすごすぎるんだ。
 

 スカステが見られなくなって3週間、すっかりヅカの現在から遠ざかっているようないないような。
 数日前、スカステの花東宝稽古場映像で変更があったと人から聞いた。

 『TUXEDO JAZZ』のオープニング。
 窓から出てきたオサ様が、窓の鍵を閉めていくんだって?

 ちょっと待って、そんなことしたらまっつはどうなるの?

 同じ窓から出てくるまっつが出られないじゃん。
 まっつはどこか他のところから登場するってこと? なんのために?

 やっぱり寿美礼様の「影」は、まっつでは足りないと判断された?(やっぱり言うな)

 『マラケシュ』にて、大劇場ではヒロイン役だったふーちゃんが、同じ役のまま東宝では第2ヒロインに格下げ、博多ではさらに複数いる女たちのひとりにまで比重を下げられた。
 オギーは、「できない」と判断したら、台詞も出番も変えずに役の比重を変える、という容赦ないことをやってのける人だ。
 まっつがオサ様のあとから同じ窓から出る、という演出をあえて変えられたとしたら、まっつではダメだと判断されたってこと?

 そりゃたしかに、まっつダメダメだったけど!!
 ぜんぜん足りてなかったけど!
 空間の埋め方、存在感、歌の表現力、なにもかも足りてなかったと思うけど。
 でも、ひどい〜〜、オギーそんな、わかりやすいダメ烙印は勘弁して〜〜。
 大劇場の真ん中に立って自分のオーラを解放するよーな、そんな扱い今まで受けたことない人なんだよ、今できなくてももう少し手加減してやって。

 と、ファンモードばりばり、恋は盲目状態で、ハンケチ握りしめて東宝へ駆けつけた。
 だからわたしはまっつファンなんだってば。
 あの人がどれだけ足りなかろうと、そんなの関係ないのよ。

 あ、あれ?

 窓の演出は、なんの変更もなかった。

 オサ様が鍵をかけるってゆーのは? え? え?

 あたし、ひょっとしてだまされた?

 あたしが今、スカステ見られないと思って、みんなであたしのことだました〜〜?
「騙してないって! ほんとにオサ様鍵かけてたよ!」
 ホテルドリーにて、ドリーさん、ジュンタン、サトリちゃん、パクちゃんと雑魚寝、スカステ流しながら半徹夜したんだけど(寝ろよ)、そこで見せてもらったタカラヅカニュースでは、たしかにオサ様が窓に鍵をかけていた。

 ……なんで演出変更やめたんだろう。時間の関係かな。
 オギー的には、まっつを窓から出したくなかったのかな。
 オサ様が自分で「影」を閉じこめる?
 どんな意味があったのだろう。

 新しい演出も観てみたかったんだけど(ええっ、まっつは?!)、とりあえず東宝版『TUXEDO JAZZ』も、ほぼムラと同じでした。や、ちょこちょこした変更というかアレンジ変えてあるとこはあるけど、大意は変わらず。
 寿美礼サマ暴走仕様になっているだけで(笑)。

 
 まっつについては、ほんとに語ることがない、『TUXEDO JAZZ』。
 足りてないところは足りてないままだ。
 ……まっつ……頼むよ……がんばってくれぇ。

 それでも、まっつばかり観てたけどなっ。
 彼はちっともわたしなんか見てくれないけどなっ。
 今回、チケ運が信じられないくらい良くて、前方良席でしか観劇してないんだけど(4列目と5列目がダブって手に入り、5列目を空席にしてしまった、ってどうよソレ?! もったいなくて眠れない)。

 ノリノリ戦闘意欲旺盛なまぁくんに流し目喰らって撃沈しかけたり、音が聞こえるほど完璧なウインクをふみかにもらい、隣席の人とふたり終演後に盛り上がってみたりしたけどな。

 みわさんに目線やウインクもらわないと花組観た気がしない、つーほどあの人の絨毯爆撃は健在だし、めぐむに微笑みかけてもらった気がするし、舞い上がって舞い上がって帰ってこられない、帰りたくない、すばらしい2日間でした。

 あああ寿美礼サマ……。
 寿美礼サマに会いたい……。

「だから、まっつは?」

 まっつは好きですってば。ええもちろん。
 久しぶりに会う人たちに、もれなく「まっつ手帳」や「まっつ写真入りパスケース」などあきれられつつ。

 ホテルドリーにて繰り返し見た稽古場映像で、まっつとさお太さんとまりんがお揃いで着ている某豚シャツ、同じのを探して着てみたいと思うくらいに、ふつーにダイスキですってば。アメ村とか行ったら、あのシャツ売ってるかしら?

 まっつまっつまっつ。


 東宝から帰ってくると、どーしてもオサ様の話ばかりになるなあ。
 だってあの人ほんとすごいんだもん。
 ムラでもいちいち別人だけど、久しぶりに観るとさらに別物なんだもん。

 オサ様、どーしてあんなにご機嫌なんですか?

 東宝初日『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』にて、なにがびっくりしたかって、オサ様のご機嫌ぶり。入りを見た人も「ファンの端から端までわざわざ手を振って歩くような人じゃないのに、してた」と、そのご機嫌ぶりにおどろいていた。
 わたしは入りも出も見ないので、舞台上しか知らないけれど、それにしたってテンションすげえや。

 たのしそうなの。

 笑ってるの、オサ様。
 目をバイオリンの模様みたいにして。
 それがもう、見ていて幸福でならなくなるの。オサ様が笑ってる……しあわせそうに笑ってる……それだけで、胸が痛くなる。

 明智@オサ様が笑いかける相手は、波越@壮くん。そして、小林少年@いちか。ときどきは、黒トカゲ@彩音ちゃん。

 いいなあ。彼に笑いかけられたい……。じーん。

 波越くんのラヴっぷりが、見ていて微笑ましくて。
 波越くんと目が合うなり、にこーって顔面崩すの。
 追跡シーン、初日は急カーブでおっとっとってやってたかな。翌日の昼は手袋波越くんに押しつけて、いやがられてた。夜はマフラーをぱたぱたやって、これまた波越くんにいやがられてた。

 いちばん愉快だったのは、2日目の夜公演での、ホテルでの明智と波越。
 まず最初に、波越くんが明智くんを触った。
 「友人として来た」「泣けるねぇ」のところで、ソファの明智の肩に両手を置く。
 で、次に明智くん、ソファで眠っている波越くんの真後ろに立ち、「寝てしまった」の台詞。いつもなら、ソファの脇で言うのに。
 真後ろに立たれていることを知る波越くん、もうすでに顔が笑ってるの。寝ている(寝たふり?)はずなのに。期待で、顔がゆるんでいる。
 で、期待通り明智くんが、「長年の勘はどうなった」と肩を触る。
 「寝てないぞ」で目を開ける波越くんがもお、うれしそうで。

 なにいちゃついてんだお前ら(笑)。

 らぶらぶで、恥ずかしい……。おっさんふたりでナニやってんだか。

 そーいや昼公演では「知っているようで知らない。友人同士でもよくある話だ」で、明智くんが波越くんに急接近して、おなかのあたりを突いてたな。波越くんのくすぐったそうな顔がまたツボ。
 夜公演はやらなかった。

 とにかくもお、寿美礼サマがご機嫌でご機嫌で。
 テンション高くて。

 オサ様の演技が毎回チガウのはデフォルトだから、3回観て3回ともちがっていたのはとーぜんなんだけど、いつもハイテンションなのはたしかで。

 銀橋のクネクネっぷりも絶好調。

 たのしそーだ。
 たのしそーだ、明智くん!!

 黒トカゲを失ったあとの明智くんのキレっぷりもすげえことになっている。

 初日はあの人、笑ってたんですけど。
 階段の上で「なにが名探偵だ」と言うあたり。
 自嘲とも少しチガウ、ヤバイ笑顔。

 翌日の昼は、怒り狂っていた。目つきの鋭いのなんの。
 涙のあとを頬に残したまま、青白い炎が見えて、震撼した。

 夜公演は笑い続けていた。
 泣きながら、口元が引きつるように笑う。
 また、ときどき表情がすーっと消える。なにか、ぶつんと切れたみたいに。

 ……こわいんですけど。

 明智先生、壊れてる……。

 ご機嫌でハイテンションで、うれしそうでノリノリで、そしてぶっ壊れて狂気の域にまで到達。
 なんか、えらいことになってる……。
 喜怒哀楽がはっきりして、エキセントリックさが全面に出てる。

 春野寿美礼から、目が離せない。

 すごいよー。
 なんてすごい人なんだ。

 で、『TUXEDO JAZZ』でも魔界の中心で渾身のシャウトしてるでしょ。

 カリスマが空気を統べる世界、てのはここまで気持ちいいモノなのかと、彼の求心力に翻弄されるがままですよ。

 だからこそ、彼がふにゃっとした笑顔でたのしそうにしているところを見ると、なんか泣けてくるんだよなあ。
 この人の笑顔のためなら、なんでもできるし、しなきゃ! って気持ちになる……。

 ああもー、オサ様ダイスキ。
 ダイスキ過ぎて、うろたえる。

 なんで東京なんだ。
 もう簡単に観に行けないじゃないか。

 オサ様をもっともっともっと、観たいのに。
 見続けたいのに。
 

 需要がないことはわかっているが、ソレでも語る、まっつ語り。
 2007/03/22の続きっす。
 テキスト自体はムラ観劇時に大方書いてあったんで、東宝版とはちがっている可能性もあり。(ふみかの肩ポンって、東宝ではなくなった? 立ち位置的にできないみたいに見えたぞ)
 

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

『TUXEDO JAZZ』

 言わずとしれた登場シーン。
 オサ様が登場した窓から、まっつも出てきます。
 まず窓枠に手をついて外を見、ニッと笑います。この笑顔がかわいーの!!
 一瞬なんだけどね。「そんなヒマなかった!」と言わんばかりの慌ただしさで、まっつは窓を後にし、階段を駆け下りる。
 下では、おそろいの水色ベストの男たちが踊っているんだけど、そこでまっつはとりあえずふみかの肩をたたく。で、ふみかと軽くアイコンタクトしてから、定位置(センター下手側)へ。
 タイミングが合わないときは、ふみかの肩ポン無しで定位置へ。……肩ポンできなかったときの、ふみかがかわいい。まっつが肩ポンするのを、踊りながらすごーく気にしているのね。だからソレがないと、「あれ?」って感じで肩すかしになってる。それを知っていて、ときどきわざと肩ポンしないでふみかが戸惑う様を楽しんでいる黒いまっつてのも萌えですが。……ま、たんにタイミングの問題ぢゃろーな。
 噂によると、まっつのことをさお太さんが手を振って迎えてくれているらしいが、まっつしか見ていないので、よくわからない。ふみかはまっつの動線上のいるので捕捉できるんだけど、さおたんは見えないのよ。

 チームにまざっちゃうと、もう「まっつ」ではなく群舞のひとりになっている。

 まとぶ氏が太鼓の音ともに派手に登場(セットが割れていきますよ!)、まっつは下手隅でそれを迎え、また本舞台へ戻って大勢口にまざる。振りがかわいいよね、ここ(笑)。まっつには合ってると思う……他の人的にどうかは知らない。
 
 次が雨のシーン。
 タキシード軍団がばらばらとはけていき、かわりに傘を持った女の子たちが登場。まっつはそのまま舞台に残り、上手に移動。
 上手手前隅にて、真上からピンスポあびて、りおんちゃんとデュエットダンス。下手のシンメ位置でおどっているのは王子ね(女の子、誰か知らない)←見ていないらしい。
 オサ様と彩音ちゃんの、出会いシーン。
 とまどいがちなふたりを盛り上げる、彼らの影ともいえる2組のラヴカップル、それがまっつと王子のそれぞれのカップルね。

 ここがねー、なにしろライトが真上からなので、顔は見えない。
 でも至極まっとーにデュエットダンスなの。ラヴラヴなの。リフトだってしちゃうんだよ。
 顔が見えないと思って(?)、安心してやわらかい表情でいちゃついているまっつをチェック!!

 オサ&彩音カップルが初々しくも手を取り合ってはけていく直前くらいに、まっつ&りおんも上手袖へはける。

 このショーはなー、油断すると見失うし、気が付くと出ているし、ややこしいショーなんだもんなー。
 まっつも出たり入ったり、すげー忙しい。

 そーやっていなくなったなー、と思っていたら、すぐにまた出てくるんだよ。
 まとぶ氏とめぐむたちコーラス隊ががんばっているとき、本舞台に水色軍団がいるんだけど、最初まっつはいない。時間差でグループになって再登場、まっつは上手から登場グループの先頭。そして下手にたどりつく。

 プロローグ最大の萌えどころといたしましては、本舞台下手で踊っているとゆーのに、上手にはけなければいけないところ。
 あの泣きそーな笑顔を張り付かせたまま、必死になって早送りのよーなツーステップではけていく姿!!

 急げ、急げまっつ! 時間内に上手袖に入るのだ〜〜!!(笑) 急がないと、次の出演者の演技の邪魔になっちゃうよ〜〜! ついでに、自分自身の衣装替えもしなきゃなんない! 急げ〜〜!!

 他の誰より、移動距離が大きいのよ。そして、舞台のいちばん前を移動するのよ。張り付いた笑顔と、「急がなければっ!!」という手順が透けて見えて、すげー愉快なの!!
 きりきりまっつ!(笑) かーわーいーいー。

 そんなまっつに釘付けなので、さお太さん、マメ、しゅん様のダンサー男トリオとダンサー娘たちの登場シーンをきちんと見られなかったりする(笑)。

 次の登場は、赤いペアルックのラヴラヴオサあやカップルの、しあわせな銀橋シーン。
 グレーのモーニングコートとシルクハット姿で、ピンクのロングドレスの淑女@りおんちゃんと連れだって上手花道に登場。や、同じ姿のペアが両花道にぞろりと現れてるんだけど。
 しかしなんでモーニング着て「夕暮れの歌」なんだろう……。夕方に着るものではないよね……? カタチからしてアレって燕尾ではなくモーニングだよね?

 そのまま銀橋へ進み、まさかのソロ。
 まっつが銀橋でソロ! ありえねえ。初日に観たとき、どれだけ驚愕したか。

 まっつがソロを歌っている間に他のメンバーは退場、彩音ちゃんとまっつのみが残る。
 オサ様を見失ってしまった彩音ちゃんは、わたわたと探しはじめるわけだけど……まっつはとってもまっつらしく、ヘタレ感漂う紳士っぷりを披露。
 ええ、いかにも貴族っぽいよね。セレブっぽいよね。肩をすくめて見せたり、ほこりを払ってみたり、いちいち気障。でも、ヘタレ。

 まっつはクラシックな格好が似合う人なので、モーニングにシルクハットに白手袋はすごいツボだ。気障でヘタレな紳士なんて、好みど真ん中過ぎて困る(笑)。

 今回のショー、全編通していちばん好きな衣装。
 シルクハット必須で、部屋に飾りたい。

 で、その銀橋のクラシック紳士まっつ。
 下手へ行きたいのに彩音ちゃんに堰き止められて、逆戻り。
 小走りちょこちょこ巻き戻しまっつ!
 後ろ向きに銀橋を小走り、って、こわくないのかなー。なかなかありえない図でおかしくてかわいい。女の子相手にたじたじ、ああなんてまっつクオリティ。
「あっちへ行きたいんですけど」とかなんとか、小芝居してますないつも。ところどころ聞こえる台詞。彩音ちゃんに命令されてるよね(笑)。

 上手花道にたどり着いたまっつはりおんちゃんにGETされ、またカップルに戻る。そっから先はタクシー騒動。
 大騒ぎして一旦はけ、でもすぐに下手花道からシルクハット無しで登場。
 オギーの衣装使い回し術はおもしろい。シルクハットの有無で、雰囲気ががらりと変わるもんなー。
 ここはなにもかも高速で、かわいくてたまらない。まっつは終始いつものこまった顔をしているので、眺めるのがたのしい。あああ、あの情けない顔こそまっつだ〜〜。

 げ。
 プロローグとタクシー騒動だけで文字数いっぱいだわ。

 続く〜〜。


 しつこく続けます、まっつ語り。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

『TUXEDO JAZZ』その2。

 セットが同じだというのに、雰囲気はがらりと変わり、オサ様中心の「アンタッチャブル」場面。

 まっつはマフィアの男として登場。
 黒スーツに紫のベスト。

 最初から登場する黒スーツの男たちではなく、第2弾でわらわら現れるグループの中のひとり。位置は上手側。

 まっつたちが現れてすぐに、ボスの娘@由舞ちゃんが登場する。

 わたし、この黒スーツの男たちを従えて踊る美少女@由舞が、ものごっつー好きで。

 牙を持つ男たちをとーぜんのカオで支配する美少女。かしずかれることを「あたりまえ」とする、生まれながらの傲慢さ。
 彼女自身の能力で得た地位ではなく、親の力、自分以外の人の権力でしかないというのに、彼女は女王のように振る舞う。
 世間知らずな、一途でイノセントなゆがみ。

 由舞ちゃんの好戦的な美貌が、都会の狼たちのマドンナとして説得力を持つ。

 その由舞ちゃんに率いられて踊る、黒スーツまっつ。

 クール・ビューティです。ええ、ここは。
 ヘタレてません。かっこいいです。
 端正さが役柄に合っているよね。ね。(念を押してみる)

 組織と由舞ちゃんに逆らうオサ様にメンチ切ったりしてます。いかついふみかの隣で冷ややかにしているところが、ひそかにツボ。

 場面ごとにまっつもチガウ顔をしているんだよなあ。
 かっこいいまっつはここと後半の「ナイト・ジャズ」だけど、どちらもかっこよさの質がチガウんだよね。
 「アンタッチャブル」のまっつは、冷ややか。ダーク。
 組織の駒であることを割り切っている風なのが、素敵。低温まっつ。

 
 で、次がいちばんのおたのしみ、仕立て屋の店員A。

 あのドライな黒スーツのマフィアが、ジャケットを脱いだだけで、コミカルな店員ズに早変わり。
 オギーの衣装使いって独特。毒トク。
 まっつをはじめ、他の店員たちも見回してみればさっきのマフィア男たちなのよ。ジャケット1枚の変化。
 オサ様を死へ追いつめた男たちが、そろってヘコヘコ彼にかしずいている。
 ……素敵すぎ。毒効きすぎ。

 カッコイイまっつはいろいろあれど、どんな二枚目まっつより、ヘコヘコまっつが好き。

 中腰でモミ手。
 嘘くさい愛想笑い。
 ゆーならば、ホンマさん@『ぶつ森』的うさんくささ。

 あああ。花組で『おいでよどうぶつの森』を上演するなら、まっつはホンマさんでヨロシク。嘘くさい保険屋まっつ、立て板に水喋りのモミ手まっつ……うっとり。(とたけけさんは壮くん希望。力強く希望。昭和な渡り鳥は彼しかいないっ)

 ノリノリでいろんな衣装をオサ様に勧め、断られてしょぼくれて。
 なにもかもがツボ。

 「愛らしい」という言葉が、これほど似合う人がいますか?

 あの泣きそーな、なさけなーいカオが好き。
 かわいいーかわいいーかわいいー。

 ここのまっつが好きで好きで。
 あのいぢめてオーラがたまらないっ。ハァハァ。
 放出される下っ端感がたまらないっ。ハァハァ。

 まっつといえば、コレだよなっ。
 うさんくささとヘタレ感。あああかわいー。

 オサ様がタキシード購入を決めたあと、黄色いドレスの姫花ちゃんと満面の笑顔で踊るところもめっさ好き。
 姫花ちゃんがまた、お人形みたいな美少女だからさー。
 小さなまっつがご機嫌で彼女とふたり、くるくる回っている様が、オルゴール人形みたい。

 そっからセットもなにも変わっていないのに場面はバーとなり、まっつはブティックの店員Aから、バーの店員Aになる。
 上手奥のカウンターにずっといる。

 ここでは、まっつの細腰を堪能。

 ベスト姿はいいね。
 カラダの薄さ、腰の細さが強調されて。
 それも、このときのベストが、背中がまるっと出る胴回りにしか布のないベストだからさ。なんかヤラしくていいよね。(えっ?)

 ……そんなことやってるから、センターで美女はべらせて踊っているまとぶ氏をろくに見たことないんだよなぁ、あたし……。
 オサ様がタキシードでビシッと登場するとオサ様見ちゃうんだけど、それまではずーっとナニをしているわけでもないまっつの背中を見てるからなぁ……。

 りおんちゃんを介してオサ様にお酒を渡したまっつは、カーテンの奥へ消える……はずが。
 何故だ、ずっといる。
 回転ドアの枠にもたれて立っている。
 舞台が回って、奥にいたまっつもまた表に出てくる。
 衣装はずっと同じ。コミカルにヘコヘコしていた、店員Aのまま。

 なのに、まちがいなく、カッコイイ。

 ただ立っているだけ……なんだってば。
 それでもかっこよくてびびる。
 こう、なんつーんだ、キュッとコンパクトで小さくまとまって端正とゆーか。(誉めてるのか……?)

 ただいるだけかと思いきや(それもどうよ)、わかなちゃんとデュエットしちゃうし。

 ただ立っているだけより、歌い出したときの方が絶対オトコマエ。
 あのちっちゃいカラダから、低〜い美声が響くのだからインパクトよね。
 まるでオサ様と対をなすかのよーに上手と下手に立つ瞬間が好き。
 博多版『マラケシュ』みたいで。

 
 でもって中詰めへ。
 ここでもまつださん、気が付くと出ているので要注意。

 オサ様とドレスの彩音ちゃんが一旦退場して、まとぶが歌い出したあと。
 まとぶ、みわっち、と短いフレーズごと「スター歌い継ぎ!」みたいな感じの場面にて、まず女の子たちが円を描くよーに登場し、どさくさにまぎれて、まっつも登場する。
 「スター歌い継ぎ」って感じで拍手もらってひとりずつ登場かと思う演出なわけよ。なのに、実際はまとぶとみわっちのみで、歌ナシで壮くんとまっつが背後にまざるの。
 ここでみわっちと壮くんが逆転しているのがちと気になる。……オギー、みわっち好きだよなー。

 まっつはじゅりあちゃんとデュエットダンス。
 ……負けている。
 いろんな意味で、完璧にじゅりあちゃんに負けている。
 ソレをツボと言わずして、ナニを言うのか(笑)。

 衣装は白燕尾にキラキラ金色ベスト。
 ありがたいねえ、壮・みわ・まつで同じ衣装だよ。他の男たちも白燕尾で金ベストだけど、モノがチガウのよー。

 すぐにまっつは大勢口に飲み込まれるけれど、キラキラ金ベストがまぶしいぞっと。

 盆が回り、まっつを含めた白燕尾男たち黄色燕尾男たちはセットの奥へ消えていくんだけど……ここでまっつを見えなくなるまで見送っていると、銀橋の金ダルマトリオを見逃します。
 や、最初のウチは見逃していた……まっつを見送ってから気配の方向を見ると、金ダルマトリオがはけていくところなんだもんよ……。
 おかげでマジ初日はめおちゃんを一度も捕捉できなかった……。

 まつださんは中詰め直後の「ナイト・ジャズ」のスタンバイがあるので、このあと出てきません。
 だもんで安心して、オサ様とシビさんのスキャットを堪能。中詰めラストの銀橋も、まっつ探しせずにオサ様に集中してヨシ。
 席が上手の場合はマメを、下手だとかすがを眺めるのもヨシ。

 
 あああ、まだ終わらない……続く〜〜。


 まだ続いてます、まっつ語り。
 ……読んでる人、いるんだろうか。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

『TUXEDO JAZZ』その3。

 気怠い大人の雰囲気ではじまる「ナイト・ジャズ」。
 まっつは中央大セリを使ったジャズ・バーの中にいる。白スーツの男たち、下手からふたり目。帽子をテーブルに置いて、同じ白スーツのかりやんと飲んでいる。あとから現れるのは王子。上手テーブルにも同じ衣装の男たちがいるが、帽子をかぶっているので顔は見えない。(見てない、が正しい。まっつガン見中)

 まっつの前に現れる人たちは目に入る。だから、世にも珍しい大伴さんのソロダンスも初日から見ていたし、ハッチ組長のソロも視認済み。
 ……なのに、壮くんのセリ上がりは見ていない。だって下手花道のセリなんだもん。まっつ見てると気づかないよ、そんなとこに出て来てんの。
 歌声が聞こえてはじめて、壮くんがいることを知る。

 銀橋の壮くんは、どえりゃあかっこいい。この1シーンがあるだけで、他は全部吹っ飛ぶくらいに。
 歌も声もダイスキだ。

 しかし。

 ソレは目の端に入るのみで、結局まっつのかっこよさに見惚れている。

 白スーツ+帽子のまっつ!!
 全編通していちばんかっこいいよね。ここがいちばんオトコマエだよね。
 壮くん登場あたりから、バーの男たちは店を出てそれぞれ本舞台でキメ、壮くんが銀橋センターでキメキメしてるときに銀橋へ出てくる。
 まっつは下手先頭きって銀橋へ、壮くんの下手横にたどり着く。

 脇ファンやってると、「銀橋を先頭きって歩く」ということに過剰に反応してしまう。『ドルチェ・ヴィータ!』でケロが下手先頭で銀橋に出てきたとき、それだけで号泣したもんな。先頭にしない選択肢だっていくらでもあるのに、あえて先頭にしてくれたんだとわかるから。
 まっつもなんか立ち位置がいい。今までではありえないところにいる。グループで移動するとき必ず先頭をきるように配置されていることも、大勢口でもセンターにいるスターの後ろに立つようにされていることも。
 ささやかだけど、ひとつひとつがとてもうれしい。

 銀橋で踊る白スーツの男たちの美しさ。
 壮くんの美貌が正しく開花。
 なんだよ、シリアスでもイケんじゃん壮一帆。(壮くんをなんだと思って……)

 まっつガン見基本だが、東宝4列目で観劇していたとき、つい目の前にいたふみかを眺めてたら、ウインクされたなー。わわわ。
 ふみかにはこのあと、ブルーのロングコートのときにも再度ウインクをもらった。こっちのウインクは音がしそーなくらい派手なヤツ……ふみか、わたしをオトそうとしている?!(うろたえ)

 まっつは見てくれないよなー。
 なんとなく目線は来ている気はするんだが。はっきりと「今彼、わたしを見たわ!」てな感じはしない。ムラの0列に坐ったときがいちばん「なんとなく目線」が来た気はするが。(今回緑野、かなり散財してます、びんぼー一直線)

 本舞台中央に白スーツ(ポスターバージョン)の寿美礼サマがせり上がってくるのに合わせて、銀橋の男たちも本舞台へ戻る。
 寿美礼サマの斜め後ろ下手側がまっつ位置、対の上手は壮くん。

 「アンタッチャブル」の黒スーツまっつはクール、「ナイト・ジャズ」の白スーツまっつもクールはクールだけど激しいの。冷えてない。
 その差がいいんだ。
 かっこいい〜〜。まっつなのにかっこいい〜〜。なんかソレって落ち着かない〜〜。(ヲイ)

 寿美礼サマ中心にどんどん温度が上がり、上がりきる前に白スーツ男たちは消える。寿美礼サマの「現実」である男たちが消え、それと入れ替わりに「幻想」の女たち男たちが現れるのな。

 次に白スーツまっつが登場するのはカオスシーン。
 彩音ちゃんを失った寿美礼サマのもとへわらわら現れるところ。毒の美女@みわっちが妖艶に嗤うあの場面ね。
 まっつのポジは「歌手」。渦となったカオスシーンだけど、歌手とダンサーにポジション分けしてあるから。
 寿美礼サマの斜め後ろあたりで歌いまくっている。一緒にいるのはいちか。

 まっつも狂気っぷりが上がっている。
 最初のうちはわりと淡白に声を合わせているんだけど、寿美礼サマがカオスをたのしむようになってからはなんか突き抜けたみたいだ。
 コーラスのなか、ときおりまっつの声がぽんと耳に飛び込んでくる。あ、歌ってる。カオスのひとりとして、歌ってるんだ。
 客席に背を向ける勢いで、エビ反りして歌い上げてますよ。

 このショーで、まっつは「きれいな歌」しか歌わせてもらっていない。
 小さくまとまって「きれい」なのは、まっつの持ち味であり、限界であるのかもしれない。「ヨゴレ」部分は彼には与えられないの。
 「役割」が決められているのがオギーショーだから、今回は「きれいな部分」だけと役割分担されているだけかもしれないが……「ヨゴレ」を歌うまっつも見てみたかった。
 歌えるのかどうか、殻を破れるのかどうか、見極めたかった気もする。(で、ヘコんでいそうな気も……ゲフンゲフン)

 渦が巻きはじめるとまっつも移動する。初日はわからなかったが、舞台中央よりちょい下手奧を芯とする渦(ダンサーチーム)の周りを、時計回りにぐるりと一周しているんだな。
 そして上手奧の袖の手前あたりに着地。

「♪止めた時計の針……」と歌うオサ様を見守ったあと、上手袖へ消える。

 次の狂乱には、参加していない。
 同じ白スーツチーム(壮くん他)がみんな残っているから、まっつもいそうに見えるけれど、実はもういないの。
 まっつは「きれい」担当だから。「夢」や「愛」を歌う人だから。
 真の狂気には存在していないの。

 で、フィナーレ突入。

 
 ……どうしよう……まだ終わらないなんて……。2日分くらいのテキスト量のつもりだったのに。


 長くなり過ぎちゃった、まっつ語り。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

『TUXEDO JAZZ』その4。

 で、フィナーレ突入。
 彩音ちゃんと歌い踊るみつるとりせ、金色のスキャットトリオ、そこへひとりあとから登場するまっつ。
 彩音ちゃんたちをぼーっと見ているとまっつの登場シーンを見逃すので、注意が必要。
「♪脚を高く蹴り上げれば」と彩音ちゃんたちが仲良くセンターで脚を上げるのを見たら、すかさず上手花道袖を見る。

 花道から出たまっつはスキャットトリオに色気を振りまき、どこの大人の色男だよってな態度で絡んでみせる。……ミトさんにだよ? ちあきさんにだよ? わかなちゃんにはアゴを指ですくってみたりしてるのよ?
 おねーさま方相手に、なんてことをっ。
 ごめんなさいごめんなさい。わたしが謝るのは変だが、いたたまれなくて謝り倒したくなる。
 そのうえまっつ、駄目押しにおねーさまズに、投げチューまでする。
 ごめんなさいごめんなさい。至らぬ贔屓でごめんなさい。
 アタマ抱えて丸まりたくなる。穴掘って埋まりたくなる。
 ごめんよぉ。
 ……でも……好きだー……。ぽっ。

 えー、ここでの登場の仕方は、明らかにスター扱いなので、びびります。
 登場で拍手してもらえるなんて、ありえないだろ?(あ、拍手お願いします)

 ひとりだけキラキラの多い衣装着せてもらってさ。それがまた、微妙に似合ってなくてさ。(ヲイ)
 さんざんかっこつけて出てきて、それであっさり彩音ちゃんに振られてトボトボ。……ってナニ、かわいすぎる。

 ここの歌がいちばん好き。まっつの声は単体よりデュエットとかで他の人の声と重なった方がきれいだということに、最近気づいた。や、ソロも好きなんだけど。
 スキャット隊の歌声とまっつのソロのハーモニーが好き。

 下手にはけて行く姿をしつこく追っているので、まとぶ、壮、みわっちのトンチンカントリオの登場は見たことないっす。振り向くと彼らはセンターにいる(笑)。

 はい、まっつ&オサファン的に気を抜けるのはこの3兄弟とタップのシーンだけです。ここ以外はまっつとオサ様、全部出ているよーなものだもの。
 シビさんとブルーロングコートの大男5人組のシーンが終われば、オサ様大階段ソロが待ってるしさー。

 オサ様がガーターベルトの小尻美女たちと戯れながら歌っている背景に、ブルーベストの男たちがずらりと登場。もちろんまっつもここにまざっている。中寄り下手をチェック。
 出番としては、ここが最後。
 遠く大階段上で踊ったあとは、本舞台に降りて総踊り、……ぢゃないんだ。音楽にのって階段を降りてきたかと思ったら、みんな次々はけていくんだよ。えええ?
 大階段を埋め尽くした男たちは、ただの前座。
 主役は彩音ちゃんだ。
 彼女が歩く赤絨毯の役目だったわけだよ、男たち。

 交差するようにはけていくのはお約束、まっつも下手から上手へ向かって走り去る。

 オサあやデュエットダンス+ちあき姉さんのソロ付き、が終わったあとは、まさかのめぐむエトワール?で、パレード開始。歌付きセンター降りはみわっちから。
 ……まっつがいません。
 いつまでたっても降りてこない。

 初日はあせったねー。その他大勢の中にまざって降りてしまったのかと。気づかないうちに終わってしまったのかと。

 他の人がほとんど降りてしまったあとで、まっつ、みつる、めお、りせが4人で降りてくる。まっつは上手中寄り。
 センター降りではないけれど、その他大勢降りでもない。4人だけ衣装チガウし(壮くんやみわっちと同じ)、なにより降りたあとショーシーンのように舞台に残り、彩音ちゃんを迎える。

 彩音ちゃんが降りたあと、4人の男たちはわたわたと所定のポジションへ。ここでも交差するのがお約束だから、まっつは上手から下手のみわっちの隣へ移動。
 お約束の馬蹄形になって、トップスター寿美礼サマを迎える。

 銀橋へのパレードは下手からセンターへ歩く、彩音ちゃん、みわっちのあと。
 センターのオサ様から左へ3人目とゆー位置だよ?! ありえねー。

 
 はぁ。こんなたくさんまっつを見られるショーなんて、しあわせ過ぎる。出番だらけで気が抜けない、気を張りすぎて消耗するという。
 終演後は高確率で偏頭痛起こしているし(直後に入る飲食店で鎮痛剤を飲む姿がデフォルトに近いな)、やたら甘いモノを食べていたり(苦手なので普段はまず食べない)、おなかすいたと大騒ぎしていたり(あれ、いつもか?)する。

 そして、ムラの花組公演が終わったあと、複数の人に「痩せた?」と言われた。
 あ、マジで消耗してたんだー(笑)。て、単にムラ通いがスケジュール的に大変だったのと、時間配分的にろくになにも食べられなかったりしていたせいだと思うが。
 

 はい、でもっておさらいです。

 こあらったは、何回ここがいちばん好きと言ったでしょう。

 いちばん好きな衣装……プロローグから「街角」のグレーのモーニングコート。
 いちばん好きな役……仕立屋の店員A。
 いちばんかっこいい場面……「ナイト・ジャズ」の白スーツの男。
 いちばん好きな歌……フィナーレの銀橋ソロ。

 いちばん、が4つもありますよ?!
 全部別、しかもまんべんなく見事にわかれてますよ?
 それ以外の場面だって「カッコイイ」「かわいい」を連発しておりましたよ?

 つまり、全部好きなんですね。

 しあわせです。
 ありがとうオギー。

 
 で。

 
 記憶だけでばばーっと書いてしまっているので、思いこみちがい聞き間違い(歌詞なんかわかるかー!)だらけだと思うし、ムラで書いたものなんで、東宝とちがっていることもあるだろーし、アテにはならない。
 ただ、わたしのために書いておくのさ。

 ……ほんと、自己満足。
 大きくまちがっていたところ(変だなあ、頭の中にはちゃんとああなっていたのに、なんであんな表記をしていたんだろう)をこっそり書き直したりしたけれど、まちがっているときになんの指摘も入らなかったことから、誰も読んでくれていないんだなとがっかりしたりほっとしたり(笑)。
 未来の自分のがたのしむために! 今のわたしは書き記し続けるのよ〜〜。

 あああ、『TUXEDO JAZZ』が観たい〜〜。
 東宝行きたい〜〜。

 まっつまっつまっつ。


              ↑
 ……我ながら阿呆なタイトルだな……(笑)。

 
 大野せんせ〜。
 せっかくだから萌えポスター製作しよーよ。萌えポスター。

 たしかに前回の『ヘイズ・コード』ポスターは素晴らしかったが、今回の『NEVER SLEEP』は『フェット・アンペリアル』ポスター並に、詰めが甘い。

 アングルは同じでいいからもうちょいロングショットにして、らんとむに手錠を付ける。

 腰から上くらいのショットがいいな。
 どっから見てもラヴラヴな恋人同士がいちゃついている写真。
 なのに、男は手錠を付けられている。

 ……萌えじゃん?
 ソレって、すげー萌え写真ぢゃん?!

 なんで手錠? 男は犯罪者なの? どうして女と抱き合ってるの? 禁断の恋? にしてはなんか甘甘な雰囲気してますけど?

 この矛盾が萌えなんですよ。
 大野先生、詰めが甘いわ。

 予備知識無し、主演がらんとむ、ヒロインがまちゃみ、2番手が七帆、つーことしか知らない。探偵ものだったんだ?

 なーんにも知らずに見て、幽霊かよっ?! とアゴを落としつつも。

 蘭寿とむの格好良さにとろける。

 らんとむかっこいーかっこいーかっこいー。
 アテ書きをするとこうなるのか、ぶっちゃけ、『スカウト』のときとどうチガウの?てなキャラクタだけどな。
 ハートフルな二枚目半。好きな女の子、大切な女の子にでろでろに甘い誠実な男。たぶんコレが、らんとむの持ち味。『スカウト』はもっとススけているワルい男のはずが、途中から大甘の愛すべき男になっていた。『NEVER SLEEP』では最初かららんとむの「漢」のかわいらしさ全開。

 役としてはかっこよくないはずなんだけど、らんとむの容姿と女の子好みの甘さてんこ盛りのおかげで、十分かっこいいって。

 手錠ですよ、手錠。

 手錠をはめられる意味も大してないんだが、とりあえず手錠をはめられてしまうサミュエル@らんとむ。すべては愛ゆえ、大切な女の子のためゆえ。ブリジット@まちゃみと手錠をはめたままのラヴシーン。
 胸にすっぽり抱きしめてしまえるんですよ。手錠で両手をつながれたまま。
 両腕の中に、女の子。
 てろてろに甘い抱擁、だけど手錠、囚われの身。
 邪魔者たちの登場に、あわてて彼女と離れるサミュエル。万歳するみたいに両手をあげて、それで腕からブリジットを抜くのね。なにしろサミュエルの両手首は手錠で固定されてるから。

 あの、「すぽっ」感がたまらない。

 両手をつながれていてなお、女の子を抱きしめてしまえるガタイ。包容力。
 女の子がかがんで下から入るのではなく、男が腕を上げ下げするだけで、入るの。

 いいなあ。
 あたしもあんなふーに抱きしめられたい。

 まちゃみになりたいよーっ。らんとむに抱きしめられたいよーっ。あの厚みのある胸板にしがみつきたいよーっ。

 ……舞台上の話ですから。
 ナマのまゆさんがわたしよりはるかに細いお嬢さんであることとは、別ですから。身長もひょっとしたら同じくらいだよな、万が一オレの方が高かったらどうしよう、なんてことも、別ですから。

 舞台の「蘭寿とむ」という男の美しさに感心する。
 たしかに、彼より美しいプロポーションの男役は存在する。身長にしろカオの大きさにしろ。
 だけどらんとむの場合は、「男役」ではなく、「男」として理想的な美しさを持っている。

 夢の王子様ではない、生身の男としての最高峰のルックス。
 あの肩幅、胸板、そして手足の長さ。スーツ姿の美しさ、ハッタリ感。
 彼の持つリアリティが、なんか、なにをしてもどこか恥ずかしいという特質につながるのだと思う。

 らんとむを見るのは、なんか恥ずかしい。
 カオを両手で覆い、「きゃ〜〜っ!!」と言いながらも指の間から見てしまう、得も言われぬ魅力がある。
 恥ずかしいんだ……くるくる回りたくなるくらい、恥ずかしいんだ……でも、ときめくんだ……。
 あああ、かっこいいよ、らんとむ……。

 てな、蘭寿とむの魅力爆発してますわよ、『NEVER SLEEP』。
 恋人に対しでろでろになっているらんとむ、妹に対しててろてろになっているらんとむに、きゅんきゅん来る人におすすめ。
 愛を隠すことないとろけきった表情で見つめる、ガタイのいい二枚目。
 なんて愛すべき男。

 
 サミュエルはかっこいい役ではない。かっこいいのもオイシイのも、2番手マイルズ@七帆の方。

 で、七帆くんが正しく、「オイシイ2番手」として機能している。

 いいですな。キャラクタが正しく機能しているのって。見ていて気持ちいいぞっと。
 七帆くんてば、眼鏡着用クール・ビューティですよ!!
 すばらしい!!

 ハートフルな主人公に、クールな相棒。基本ですよ基本。

 しかも眼鏡っこのお約束「必要に応じて眼鏡を外す」まで完璧に踏襲されています。大野せんせーすごーい(笑)。
 マイルズくんは「ここぞっ」てなときは眼鏡を外して、その美貌を際立たせるのですよ。拍手。

 七帆ひかるの成長ぶりは、じつに気持ちいい。
 『UNDERSTUDY』でのいっぱいいっぱいぶりがウソのようだ。『維新回天・竜馬伝!』でひとつふたつ脱皮したよねえ?

 七帆くんは本当に美しい人だと思う。
 彼もまた、「リアル」なルックスを持つ。王子様的な「タカラヅカ男役」ではなく、ナマの男を感じさせる体格だから。
 背が高い、だけではリアル男性にはなれない。彼の顔の大きさ脚の長くなさ(微妙な表現)が、リアリティなのよ。現実の男って、あれくらいカオでかいし、脚だってみ……長くないじゃん。
 現実の男のような体格でありながら、現実の男ではありえない美貌を持つ。それが彼の魅力に拍車をかけていると思う。
 らんとむ氏と並ぶと、顔の大きさと脚のアレさに驚愕するけれど、ソレはらんとむ氏が「現実の男にしてはありえないくらいプロポーションがいい」わけで、「現実の男」である七帆くんの魅力を損なうことにはならないんだ。

 らんとむと七帆、リアルなガタイを持つ美形ふたりが並んでるのって、眼福だわ。

 ついでに愛情の在処もいい感じ。

 『ヘイズ・コード』のときも感じたけれど、大野作品の「男の友情」の温度と距離加減は絶妙だと思う。
 無駄にリアルというか(笑)。
 ベタベタするでなし特別盛り上がるでなし、されどけっこう絆があったりする感じは、大野作品独特。これが正塚だともっとホモっぽくなるし、谷だと大仰でウザくなる(どっちも誉め言葉・笑)。

 サミュエルとマイルズは、いい感じで友人していると思う。

 ……わたしとしては、とむ・七帆で萌えたかったんですが(受はどっちだ?)、無理でした(笑)。マイルズ、ちょっとチガウんだなー。も少し針がどちらかに揺れてくれないとカップル萌えはできねーや。

 マイルズの哀しい過去、自殺した恋人のくだりは、さらに消化不良。いっそ役者を使わずマイルズのひとり語りでよかったんじゃないか?
 あの恋人役の子が下級生だからだろうけど、かなりアレだったんで、七帆が空回っていてトーンダウン。
 シルエットだけで、らんとむが2役とかやってくれたら完璧だったのに。ええ、マイルズの元カレ役。
 ん? マイルズはゲイの設定だよね? 大野せんせーだから、ごくあたりまえにそーゆーキャラがいるんだと思ったけど。
 ただ、特に萌えないのがつらい。キャスティングって大切だわ。七帆単体はいいんだけどなー。食い合わせがなー。GOアカツキあたりと絡めてくれたら、生唾もんだったのに。

 ヲトメゴコロを刺激するかっこいーらんとむと、ヲタクゴコロを刺激する眼鏡っこ七帆の並びを、素直に堪能しておきます(笑)。


 男爵は、どーゆー人なんだろう?

 疑問解消になるか?
 立樹遥お茶会@『さくら/シークレット・ハンター』にまざって来ました。

 『シークレット・ハンター』の素敵悪役、ジョエル・ロビュション、通称男爵。
 いちいちおフランス語で話す、TPO無視したエ〜レガントなお衣装の殺し屋。

 いちおー悪役、いちおー最後まで真面目に敵役、なんだけど……なんつーかこー、微妙?(語尾上がる)
 なにがどうと言えないが、なんか収まりが悪い気がする妙な役。

 まず。

 男爵は、20代の若者であるらしい。

 どよどよ。客席にびみょーな空気が広がった。

 え? なんで? としいちゃんはマジに戸惑いながら、言葉を重ねた。20代、後半と。

 若い役だったのか男爵。マジで知らなかった。
 大人で、それでもあんなセンスで生きているんだと思っていた。ケツの青い若造だったのか?
 客席がどよめかなかったら、20代、つーことで話が進んでいたんぢゃないのか? 後半、ではなく。

 貧しい生まれで、それゆえに金だの地位だの権力だの、そして豊かであることから有しやすい美というものを憎んでいる。殺し屋をやっているのは人生への反抗だそうだ。美にこだわるのは、ソレに対する愛と憎しみがあるからだそーな。
 ……まあ、こだまっちだから、ソレでいいか。すげー薄い設定だが、なにしろこだまっちなのでそこは突っ込む気にならん。

 てゆーかそもそも、『シークレット・ハンター』という作品自体、突っ込んで考えてはならないんだけどね。ツッコミ出すとドツボにはまるから。

 手下のグラサン軍団は、男爵が個人的に雇っているそうだ。
 雇用の基準はズバリ。

 ルックス。

 男爵面食いだから。
 美にこだわる人だから。

 ゆーほさとるも、ルックスで選んだんだ。(ソコか!)

 グラサン軍団は、なんか増えたり減ったりコスプレしてたりでいろいろだけど。
 うんうん、たしかにルックスだねえ。

 王女ジェニファー@あすかを狙い、そのたびダゴベール@トウコに邪魔をされ。
 最後の対決までいくころには、王女のことはどーでもよくなっているらしい。それよりもダゴベールとの決着にこだわっている。

 で、結局男爵はあのあとどうなったの?
 ジェニファーにまで撃たれてましたけど? 死んじゃったの?

「絶対死んでない」

 力強い断定。
 男爵はあのあとも、なんら変わりなく殺し屋やってるそうです。……や、誰も死んだとは思ってないだろうけど。(ジェニファーが人殺しになっちゃうじゃん!)

 そもそも、「初の悪役、男爵役はどうですか」という基本的な質問に、しいちゃんはうなり声をあげて、しばらく悩んでいた。
 ……しいちゃん的にどうなんだろうなあ、あの役。もちろん、役を愛し、大切に演じているのはわかるけれど。

 完全おバカなコメディアンにしてしまうべきなのか、まともな悪役であるべきなのか。
 どーしよーもない役だよなあ。まともな悪役にするには、あまりにディテールがバカだし。しいちゃんは真剣に演じているし。

 ……なんかね、某海馬の帝王を真面目に演じていて、どーにもこうにも足りてなくてじれったかった、かの人を思い出すのですよ。
 キチガイとしてバカバカしく演じることは簡単だけど、役割はそうではないらしい、半端な設定をされた美形悪役。
 なんかね……ひとごとではなくて、手に汗握ってしまうんですよ、しいちゃん!!

 今、わたしのパスケースには、まっつとしいちゃんのポケットカレンダーが並べて入ってるんですが。(微妙にしい担サトリちゃんの陰謀・笑)
 太陽しいちゃんと月まっつはまったくタイプチガウんだけどね。なのになんか、共通項があったりしてね。微妙なポジションが、わたしのハートをくすぐるんでしょうか……。や、たんにヘタレ男好きなだけですけどね(笑)。

 まあ、それはともかく。

 しいちゃんは相も変わらぬおおらかな輝きで場を満たしてくれる。
 大きな表情、大きな声(笑)、大きな反応。しゃきしゃき答えが返って、表情がくるくる変わるのがたまらない。てゆーか、絶対笑顔で締めくくってくれるんですけど。
 なにか話したあと、にこっと笑う。うおー、なんかカラダにいいモノ出てるよ、しいちゃんから。この場にいて、浴びていると健康になれるナニかを放出中。
 日光浴とか月光浴とかあるじゃん。アレと同じ言葉の使い方で、しいちゃん浴。しいちゃんを浴びると、キモチいい。幸福に、健康になれる。ほわわん。

 テーブルごとにしいちゃんを囲んで写真を撮るとき、わたしは椅子に坐っているしいちゃんの真後ろに立っていたんで、ついつい首筋眺めてました。襟足長いし服の襟があるしでふつーはまず見えない、「上から見下ろす」角度限定の、白いやわらかそーな首筋。ふふふ。
 しいちゃんは大きい人なので、なんかすげー安心して会いに行けるのもいいよなあ。「ぺたんこ靴履かなきゃわたしの方がでかくなる?」なんて気を回さなくていいもの。や、ぺたんこ靴で行きましたけども。
 握手のとき、目が合うとき、ひとつひとつ表情が動く、その豊かさ、あざやかに見とれる。……じーん……。

 しかししいちゃん、おおらかなのはわかるし、純朴な人なんだろうとも思っちゃいるけど、ゲーム回答の天然ぶりには、ウケましたよ。
 「*ではじまる言葉」を、しいちゃんの回答を参加者みんなで当てる、というゲーム。

 「『エ』ではじまる言葉」とかゆったら、「次の公演『エル・アルコン』かな」とかちょっとはヒネるじゃん? 特別凝る必要はなくても、あまりにベタな答えだとか突拍子もなさすぎると引かれるんぢゃ、とか、一瞬考えるじゃん? ふつー。
 しいちゃんの答えは、「えのぐ」。
 ……どうして絵の具なんですか?
「思いついたから」 ……天然だ……。

 なにしろ、最初の回答がすごい。「『ジョ』ではじまる言葉」で、しいちゃんの答えは「ジョーシン」。
 関西大手電化商品量販店かよ?! 固有名詞かよ?!
 関東人が面食らっていたぞ、「ジョーシンってナニ???」って。いちおー全国展開しているとはいえ、基本大阪の会社だってば〜〜。

 連想ゲームで、実在の店名(全国区ではナイ)を答えるってありえねーよ……。
 天然……。

 や、わたしはしいちゃんに会うのももちろんたのしみでしたが、しいちゃんに会うためにドレスアップしたピュアしいファンのサトリちゃんに会うのもたのしみのひとつでしたことよ。いやあ、若い娘さんがおしゃれしているのを見るのはいいよねえ。しみじみ。

 
 お茶会のあと。
 男爵とゆー役のアレさについて、もっとも問題なのは脚本であり演出であり、とどのつまりこだまっちだよねえ、といつもの店で話していたんだけど。

「斎藤吉正演出なら、まちがいなく男爵は仕事だから・プリンセスを守る者は排除しなければとかとゆー話ではなく、ダゴベール自身を憎んで愛して追いつめるよね」

 と言ったら、

「ソレは緑野演出だから」

 と、総ツッコミされました。
 ええええ。
 チガウでしょ、キチマサ演出なら絶対そうだってばっ。
 『花恋吹雪』を見てよ、『巌流』を見てよ、『血と砂』を見てよ、主人公は敵に憎しみという名の愛を捧げられ、執拗に追い求められるんだってば。

 わたしがヨゴレているからの発想ぢゃないやい。

 ……まあ、「トウコちゃんを愛しすぎて憎しみとの区別がなくなり、追い回すしいちゃん」、つーのが見たいかどうかは置くとして。(正直微妙……。逆なら見たいが。しいちゃんを追い求めるトウコ・笑)
 さいとーくんならまちがいなくそっち系になっていたよなと。


 ちょっくら、ポスターの話。

 その昔わたしは、たかこ主演『嵐が丘』のポスターを見て、「すげえ、たかこひとり写りだ!!」と感心したんだ。

 それまでわたしは、ひとり写りのポスターをろくに見たことがなかったんだな。
 もちろん、まったくなかったわけじゃないだろうけれど、意識に残っていない。
 主演とヒロイン、2番手までが載るのがあたりまえ、という意識が先にあり、それ以上を考えたことがなかったんだ。

 で、たかこの『嵐が丘』に触発され、それ以来「バウホールの宣伝ポスターに、何人で掲載されるか」をチェックするよーになった。

 それによってわかったことは、「バウホールのポスターが、ひとり写り」の場合、劇団がかなり期待をしている人で、将来的にトップスターになる可能性が高い、ということだった。

 手持ちのチラシで2番手以下ひとり写りなのは、古いところではトド、たかこ、ズンコかな。えー、20世紀後半あたり。

 あー、正確には、トドのひとり写りの方がたかこより先だな、もちろん。順番からしても。でも、トドはなんか「順当」だったので(笑)、その直後のたかこの方が印象的だった。なんせモノが『嵐が丘』(ヒロインとふたり写りでなきゃおかしいタイトル)だし。

 このへん、バウのチラシは貴重品で、一般人には手に入らなかったので(笑)、自分がチケ取りしたものしか持ってない。(発売日当日にチケカウンターに並んだ人に、ひとり1枚ずつ配布、それ以外は手に入らなかった)

 99年あたりから、チラシが自由に入手できるようになった。

★99年のシェークスピア特集
『冬物語』オサ
『から騒ぎ』ガイチ、チカ・ゆうひ・きりやん・星野瞳
『ロミオとジュリエット’99』水、かなみ
『十二夜』タニ、ゆうひ・あーちゃん
『夢・シェイクスピア』ブン、ええっと? ひとりぢゃなかったぞ、たしか
『TEMPEST』ワタル、ねったん・陵あきの
『SAY IT AGAIN』おっちょん・コム、その他いっぱい
『エピファニー』さえこ、妃里梨江

 水のロミジュリとブンちゃんのが見あたらない……何故だ……たしかに持っていたし、持ってない人にあげたりするくらい、余裕があったはずなのに。(白目)
 ひとり写りは、オサだけ。(でも写りは超微妙)

★2000年
『聖者の横顔』さえこ、妃里梨江
『ささら笹舟』かしげ、まひる
『FREEDOM』樹里、ねったん・あすか
『更に狂わじ』タニ・きりやん、となみ
『トム・ジョーンズの華麗なる冒険』チャーリー、あさこ・まーちゃん
『花吹雪恋吹雪』トウコ、そんちゃん・ねったん

 ひとり写りナシ。

★2001年
『マノン』あさこ、かなみ
『イーハトーヴ夢』ねったん、ゆうか・えみくら
『アンナ・カレーニナ』コム、まひる
『フィガロ』水、かなみ・久遠麻耶
『血と砂』けろ・ゆうひ、みえ・たまこ

 ひとり写りナシ。
 この年はエンカレの年でもあったので……花エンカレリプライズの、まっつ写真見てしばしウケてしまった。(ウケるのか!)

★2002年
『エイジ・オブ・イノセンス』ゆうか、ふーちゃん・まちゃみ
『SLAPSTICK』きりやん、るいるい
『月の燈影』ゆみこ・らんとむ、くるみ
『ヴィンター・ガルテン』かよこ・まとぶん、そんちゃん・チカ
『ホップスコッチ』しい・そう・キム

 ひとり写りナシ。

★2003年
『アメリカン・パイ』かしげ、シナ
『里見八犬伝』水
『なみだ橋えがお橋』きりやん

『二都物語』あさこ、彩音・ゆみこ
『厳流』トウコ、ケロ・チカ・ウメ

 はい、これだけひとり写りナシが続いたあとだったので、水くんひとり写りを見たときは震撼しました。しかも彼のポスターのみ、2バージョンあったのよね。サイズちがいで別ショット、なんてありえねー。
 どれだけ期待されてるんだ、と驚きました。演目的に、他にわらわら出ていてもおかしくないからね。『嵐が丘』でひとり写りだったたかこの不自然さに継ぐ(笑)。
 きりやんは納得のひとり写り。この年彼は、タニちゃんの跡を継いでペルソナのイメージガールになったり、タニちゃんがまさかの組替えでいなくなったりと、「ああ、劇団がきりやんを次世代月組トップとして認めたんだな」ということが丸わかりの力の入れぶりだったから。
 ……まさかの休演で、レールは大きく蛇行してしまったようだけど。この年のきりやんは、ほんとにすごかったんだよ。

★2004年
『送られなかった手紙』壮、他いっぱい
『愛しき人よ』きりやん、あいあい・さららん・るいるい
『NAKED CITY』ゆみこ、あすか
『花のいそぎ』まとぶ、コトコト・れおん
『THE LAST PARTY』タニ
『THE LAST PARTY』ゆうひ


 壮くんはひとり写りにカウントしていいのか……? 微妙。
 タニちゃんはいつも特別扱いだから、ひとり写りでも違和感なし。ゆーひくんは、タニちゃんとペアだから、ひとり写りだからどうこうとは特に思わず。

★2005年
『DAYTIME HUSTLER』かしげ

 イレギュラー感漂う公演、ひとり写り。
 だって、通常バウ公演、かしげ1作きりなんて、やっぱなんか変……。

★2006年
『不滅の恋人たちへ』タニ、るいるい
『想夫恋』ほっくん、あいあい・もりえ
『スカウト』らんとむ
『フェット・アンペリアル』しい、すず・ウメ
『やらずの雨』キム、ちとせ
『UNDERSTUDY』七帆、アリス

 らんとむがひとり写りだと知ったとき、再び震撼。
 そうか、らんとむか、来たか! と。

★2007年
『Hallelujah GO!GO!』れおん、ウメ
『ノン ノン シュガー!!』キム
『NEVER SLEEP』らんとむ、まちゃみ
『大坂侍』きりやん

 つーことで、現在。
 きりやんは納得のひとり写り。
 飛ぶ鳥を落とす勢いだった2003年から、病気で失速し回り道したけれど、今ここでまた本来の道に戻ってきた印象。

 あ、ワークショップや再演、特別公演(コラボとかコンサートとか)はカウントしてません。純粋に、バウ公演のみ。

 2番手以下のバウなんて、ポスターは賑やかし、いくらでも載せた方がいいんだと思う。
 そーゆー意図で、何年も何年も、主役とヒロイン、そして2番手を載せてきたんだろう。第一、複数いた方がドラマを表現しやすいしな。本公演とちがい、バウは物語内容に沿った画面作りをしているもの。

 そんななかで、ほんとーに「ピンで売りたい」と思っている男役スターのみに、ひとり写りをさせるのだろう。
 作品内容とは無関係に、ただ突っ立っているだけのポスターになってしまったとしても。
 売りたいのは「作品」ではなく、「スター個人」である。という、強烈な意思表示。

 で、さらに人気と劇団の強固な意志がある場合は、バウより大きなハコだったり、個人冠のコンサートだったりをひとり写りポスター制作でやっちゃうわけだな。
 バウのひとり写りはその一歩手前。

 今のところ、ひとり写りになった人で、トップスターになっていない人はいない。

 劇団の意志なんだ、と思っている。受け取っている。
 わたしがどう思うかではなく、劇団の意志として、ただ、受け止めている。
 たとえば、大野先生がどんなにしいちゃんひとり写りでポスターを作りたがっても、劇団がOKを出さなかったと思うんだ。……しいちゃんを例に挙げて悪いが。(『フェット…』のポスターは、大好きな人たちのトリオ写りでウレシイ!のだが)演出家の「作品」でありながら、そこには劇団主導の人事も確実にあるんだよなと。

 未来なんかどーなることか、さっぱりわからないけどな。

 その昔、『嵐が丘』でたかこのひとり写りポスターを見て、震撼した。
 「来た」と、そう思った、あの衝撃のまま、現在に至る。
 他の人がどう思おうが、わたしはバウのひとり写りポスターには、過剰に反応するぞ(笑)。

 つーことで、今年のキムくんひとり写りには、ひとりでやいのやいのゆーてました。
 まさかキムくんひとり写りとは思ってなくてな。

 きりやんと、らんとむ、キム。……れおんも、ウメちゃんのトップ決定時期とバウ公演がかぶっていなければ、ひとり写りだったかもな。
 そして、バウをすっとばしてドラマシティでひとり写り公演をやらされたまとぶ。

 彼らが、現在の「劇団の意志」なんだろうなと、受動的に思う。

 ただ、ソレだけだが。


「オギーの色って、何色だと思う?」
「青」

 ドリーさんと、そんな会話をした。あれはムラでのこと。

 オギー作品には色があふれているし、独特の色を使うけれど、核となる場面の色は、大抵決まっている。

 青。
 そして、水の音。水を連想させるナニか。

 青のグラデーション。青系。

「ピンクは、オギーの色じゃないよね?」

 チガウ。
 ピンクは、まったくチガウ。
 賑やかしにかわいらしく使われることはあっても、核となる使い方はされない。
 ヒロインらしくピンクを着まくっていた『タランテラ!』のまーちゃんだって、「大西洋」では青いドレスを着ている。

 ピンクは、異質な色だ。

「どうしてゆうちゃんにピンクを着せるんだろう。ピンクがいちばん似合う色だっていうならともかく」

 うん。
 ソレ、すっごい疑問。

 何故、真飛聖だけが、ピンクを着るのか。

 『TUXEDO JAZZ』の話っす。

 今回、まとぶは「影の主役」になるべき役を与えられた。
 でも実際にはぜーんぜんダメ、ただの脇役その1に成り下がっている。
 ただひとり、「オギー世界」にない色=ピンクを与えられている男だというのに、世界から浮き上がってもいいはずなのに、世界に埋没している。

 ムラで観ていたとき、まとぶの足りなさぶりに胸を痛め、「オギーのことだから、東宝ではまとぶ、役の比重変えられてるんじゃあ?」と危惧した。

 そしてやはり、東宝ではさりげなーく演出にアレンジが加えられ、まとぶの比重は下げられている。
 まとぶがオサ様を導き翻弄する「運命」そのものではなく、オサ様自身が勝手に狂気で遊べるようになっていた。
 ぶっちゃけ、まとぶがいなくても、オサ様はカオスで自在に歌いまくるよ。
 誰に導かれなくても、オサ様は最初から人外だってば。

 オギーはなんで、オサに人間を、まとぶに人外を割り振ったんだ、最初?
 まとぶに人外キャラが演じられないことなんか、『ドルチェ・ヴィータ!』のサテュロスのダメっぷりでわかっていただろうに。

 や、わたしとしては、まとぶ氏のまともさが愛しくてならないんだけどさ。人外とか悪意とかが演じられない、誠実さや真面目さが透けて見える常識人なところが、好きでしょーがないんだけど。
 邪悪を演じようと、ものごっつー努力しているのはわかるし、人外のアヤしさを出そうと摩擦熱で焦げそうなくらい一生懸命空回っているのもわかる。
 ソレが愛しくて愛しくてしょーがないんだが。

 ……そんな、努力して自爆する人に、何故できもしない役割を振る?
 柄でもないピンクを着せて。

 まとぶの持ち味って、「ピンク」ではないよね? 彼のトレードカラーがそんな色であるはずがないよね?
 なのにわざわざ、まとぶはピンクなんだ。この作品において。
 オギー世界にそぐわない色を、わざわざ選んで着せられている、2番手。

 オギーはそこまで、真飛聖を疎外しているのか?

 いや。
 そんなふーには、思えない。
 オギーが舞台人としてのまとぶに興味がないだろうことは想像がつくが、マイナスの意識はべつにないだろう。
 2番手としての彼の体面に傷が付くような使い方はしていないわけだし。……「オギー作品」として見た場合は、足りなさぶりがえーらいこっちゃになっているだけで。オギーに興味のない人から見れば、「今回まとぶん大活躍だよね!」てな出番の多さだよね。

 何故オギーは、まとぶに人外をやらせ、ピンクを着せ、できもしない役をわざわざやらせたのか。
 ……できると、思ったからかなあ? 彼の成長を見越してのキャスティング?
 でも結局ダメだったから、東宝ではオサがひとりでカオスで大暴れするよーにアレンジした?

 アテ書き基本の作家が、まとぶにだけソレをしなかったってこと? それもかえって変だよなあ。
 

 うがった考え方をしてみよう。

 まとぶファンの方と、このテーマでちょっとメールのやりとりをしたんだが。

>花カラーですよね、ピンクって。

 そう指摘されて。

 オギーがまとぶに「アテ書きをした」と考えるならば、今現在の真飛聖という立場そのものへのアテ書きではないか?

 たとえば壮くんは、すーっかり花組に馴染んでいる。彼の芸風は違和感なく花組で、「お帰りなさい」の演出のあとは、見事に街の住人として落ち着いている。
 なのに、まとぶんはどうだ。組替えしてきて1年半、未だに組カラーのちがい、芸風のちがいにとまどっている風情がある。

 トップスター=組カラーである、トップ至上主義ピラミッドのタカラヅカにおいて、魔界の帝王オサ様相手に、誠実な人間の騎士まとぶはなんとも分が悪い。世界全部がオサ様のモノ。アウェイで戦う彼には、どこか不自由感がつきまとう。

 ココは、彼の世界ではない。

 だからひとりだけピンク。
 「世界」に反する色。
 ヒロインが記号として着るピンクではなく、男役がわざわざ着せられるピンク。オギーカラー青に対する反対色、あるいは補色。

 まとぶは、花組らしい花組生徒ではない。
 ここは、彼の世界ではない。

 しかし。

 彼は、「花組」を継ぐ者だ。

 人事のことなんざ知らんが、ふつー2番手ってのは、「いずれトップスターになる」ものだ。
 組子としてトップスターを支え、時期が来れば世代交代してトップスターになる。
 どんなに組カラーから浮いていようと手こずっていようと、2番手である以上、「組を継ぐ」意識と責任は必要だろう。

 わたしは、まとぶを「花組を継ぐ者」だと思っている。さんざん苦労しているとか足りていないとか言ってるけどな。ソレは「現花組」に対してであって、彼の時代になれば彼が組カラーになるんだから無問題。
 わたしは古い人間なんで、落下傘人事はキライ。順当にトップから2番手に引き継ぐのが、タカラヅカの「美しいカタチ」だと思っている。
 生え抜き主義ではないよ。
 いずれトップになるために組替えされてきたのだとしても、年単位前からならそれはもう組子と考えるさ。現トップと同時期を同じ組の2番手として過ごしてきた人は、組替えだ生え抜きだと区別するべきではない。
 まとぶが花に来て1年半。今回から単独2番手になったのだから、当然彼が次代の花組トップスターと考えるべきでしょう。
 劇団がなにをしでかすかは知りようがないけれど、ヅカファン19年目の人間の感覚として。

 花組を継ぐ者が、花組カラーをまとう。
 「世界」からは浮いた色。「世界」の外側にいるべき役割。

 花組を継ぐべき者でありながら、花組カラーに染まりきることができない、真飛聖。

 そーゆー意味でのアテ書き?
 オサ様相手に、オサ様の形作る「花組」を相手にあがいている、今のまとぶへのアテ書き?

 ……なんて、うがった考えではありますが。

 まとぶのことはダイスキなので、『TUXEDO JAZZ』のまとぶの半端さには、真面目に考え込んでしまいますよ。

 まとぶがいつか、柄でもないピンクを着こなし、オサ様相手に負けないだけのオーラを放てるスターになることを、現在を風刺しながら未来にエールを送っているのかなと、解釈しておきます。

 わたしはオサと花組ファンであり、そして花組にいるまとぶもダイスキだ。オサ様とまとぶの並びも好き。
 このふたりの並びを見ることが出来てよかったと思う。
 今回はテーマに取り上げてしまったけれど、じつはそれほどまとぶが今の花組に合っていないとは思ってない。
 『TUXEDO JAZZ』のまとぶにはいろいろいろいろ(笑)考えさせられるけれど。

 おもしろいなあ。


 今日はドリーさんのBDで、オサ様DSの発売日。
 てことで、朝から携帯の電源が切れるまで電話しつづけたのに、つながらず。あああオサ様……さめざめ。

 昨年のドリーさんの誕生日は、HOTEL DOLLYで過ごした。前日がスカステ『ドルチェ・ヴィータ!』東宝楽ファーストラン日だったから。
 東京のドリーさんちに駆けつけて、どりーずメンバーみんなで見たんだよな。
 あれから1年。
 時が経つのは早い。

 原因不明のまま映らなくなった我が家のスカステは、1ヶ月近くのブランクを経て、やはり原因不明のまま復活。
 『Cafe Break』のケロが、『ガイズ&ドールズ』のころのわたしの大好きなケロで、ケロの素顔についてドリームを持たないわたしですらケロちゃん美形だわ!と思えるビジュアルで、大変うれしい。
 わたしんちはMXテレビは見られないので、スカステで見るのが基本はじめて。だから、『ガイズ&ドールズ』のケロははじめて見るんだってばーっ。
 なんだよー、舞台映像は全カットかよー、著作権のばかぁ。わたしにビッグ・ジュールを見せろ〜〜、じたばた。

 
 ……なんてことを言いながら、今回は1週間遅れの星組新人公演『シークレット・ハンター』の話。

 86期が卒業、87期が長となった初の新人公演。主役ダゴベールは88期の麻尋しゅんくん。ヒロインのジェニファーは89期の羽桜しずくちゃん。

 なんか星組の新公って切っても切ってもれおん、切っても切ってもウメって印象で、両人がいないだけで、別の組を観ているよーな錯覚にとらわれる(笑)。
 代替わりしている実感がないので、いつも新公で見かける子たちがいないことに、まず違和感。

 あたしの一輝慎くんはどこっ?! ……とゆーことに加え、天緒っちを無意識に探している自分におどろきました。(ともに86期なので、探してもいないっつーの)

 さて、この新公でいちばん「わちゃー★」と思ったのは、オープニングでした。

 この作品は、完全トウコちゃんアテ書き。
 すなわち、トウコの力業で成り立っている部分が大きい。

 オープニングから、コントがあるんだもんよ。
 コテコテのクサみたっぷりに、観客を相手にひとり芝居をしなければならない。
 空気をひとりで動かし、一瞬で世界を構築しなければならない。

 トウコだからこその、オープニング。

 それを、まだ研6になったばかりの、新公初主演の少年にやらせるのは、そゃー酷ってモノだろう。

 麻尋しゅん、大変。
 オープニング、ボロボロ。
 仕方ない。仕方ないさ。……わかっちゃいるが、大変なことになっていた。

 えーと、オープニングの童謡、音、アレって正しかった?
 ズレたまま、最後まで歌いきったよーに聞こえたんだけど。
 しゅんくんの歌唱力をもってしても、あそこまでずたずたになるものなのかと、ある意味感心……。

 最初があんまりえらいことになってたので手に汗握ったが、そのあとは大丈夫。
 しゅんくんはきちんと演じていた。

 て、ゆーか。

 孤軍奮闘?

 伊達に抜擢はされてきていない、しゅんくんは「演じる」ということがどーゆーことなのか、理解した上で仕事をしていた。
 ヒロインのしずくちゃんがねえ……ええ、そりゃーもー、大変なことになっていてねえ……(笑)。
 ダゴベールは基本、ジェニファーとしか絡まないのよ。だから、ジェニファー役がアレだと、負担がどーんと大きくなるのよ。

 なんにもできないヒロインの分まで引き受けて、しゅんくんがすげーがんばっていた。

 かっこいいぞ、麻尋しゅん! 男だね!!

 スタイルもいいし、美しい子だとわかっているんだが、フェイスラインの丸さが惜しい。
 なんか、タータンに似てる……。そしてわたしは、タータンが苦手なので、今回のしゅんくんは実はかなり苦手だ(笑)。

 
 ヒロインのしずくちゃんは。
 美しい。
 まずは、それに尽きる。
 お姫様だってことがわかる、納得のビジュアル。この容姿だけでヒロインをやる価値がある(笑)。
 ただ、芝居ははたして芝居をしているのか、素で喋っているだけなのかきわどいラインだったし、なにより歌がえらいことになっていた。
 そうか、ここまで歌えない子だったのか!!
 か細いっちゅーか儚いっちゅーか……ひとりだけマイク音量変えてもらっているんだろうに、それでも途切れそうな細い声。
 いやあ、大変だなー。
 突然の抜擢だ、プレッシャーもすごかったろうけど、がんばれー。
 美しい娘役さんなので、成長が愉しみ。

 
 セルジオ@ともみんは、あまりに本役のれおんまんまで……困惑。
 容姿も似ているわけだから、ここまでコピーされちゃうと、ともみんである意味がないような。
 や、うまいんだけどね。

 男爵@ドイちゃんは、お化粧変えた?
 なんか切れ長の瞳になっていて、ドイちゃんっぽくなかった。本役しいちゃんより、シリアス度高し。それゆえに悪役度高し。
 ダゴベール@しゅんに、本役トウコの軽妙さがないから、コントラストとしてはいい感じ。
 でもなんか足りない……。

 マックス@カマちゃん。
 ……地味でおどろいた……。
 そうか、本役のすずみんはほんと、華やかだったんだなあ。それを改めて思った。
 なにが悪いってわけでもないんだが、出番自体が多いわけではない分、華やかさがないと役の説得力に欠けるのだなと。

 ニコラス@とゆー役名だったのか、知らなかった、しーらん。
 実はちょっとしーらんブームが来ているので(笑)、個人的に要チェック。……のわりに、彼が何の役をしているのか知らずに見て、ヒゲのおっさん役だったことに、びっくらこいたんですが。
 本役はにしきさん。王女暗殺計画の首謀者。
 
 濃い。
 無駄に濃いっ(笑)。

 てゆーか、べつにうまくないのに、やりすぎている感じがとてもツボ。
 絶対コイツ、自分のことヒゲのダンディだと思ってる〜〜、てな陶酔系演技にウケる。

 アナ・マリア@コロちゃんは、予想通りの巧さで、とくになにも思わず。
 イグナシオ@碧海りま……が、がんばれ。微妙な本役(でもソコが味)の、微妙さだけをコピーしなくても……。が、がんばれ。

 水輝涼が国王役で、出番がほとんどないのが不満です。
 この子にもっと演技させてやってよぉ。見てみたいよぉ。

 ダゴベールパパ@ベニーが、無駄に美しくて、ツボる。
 なんであんなに浮世離れした美青年なんだ、ダグパパ。本役英真くみちょーとのギャップがすげえ。
 美しいだけの生気に乏しい青年が自滅するようで、物語に説得力があったかなあ(笑)。

 ダグの少年時代は、弟くん。……あ、『Hallelujah GO!GO!』の主人公れおんの弟役をやった、大輝真琴くん。
 かーわーいーいー。
 自然な少年姿、情感たっぷりな演技。
 子役ばかり続いているのでナンだが、将来がたのしみな子だー。

 そーいや新公では、ダグのパパとママは別の人が演じているんだよなあ。本公はなんのためにくみちょーがやってるのかなあ。遠い目。

 鼻の君こと、蒼羽りくくんはどこにいても目立ってました。
 彼は男爵の手下ズにまざっているんだけど、なにしろあの鼻がねー、サングラスかけてもわかりやすいからねー(笑)。

 初舞台生がいるもんだから、新公だというのに寂しさを感じさせない、にぎやかな舞台でした。
 なにはともあれ、パーカッション演奏があったり、客席降りがあったりでたのしい。
 勢いで演じぬく感じ。未熟さを後押しするパワーが気持ちいい。

 
 ラストの挨拶で、コロちゃんが長の挨拶をしているときすでにダム決壊カウントダウンって感じのしゅんくんが、かわいらしかったっす。
 そうか、初主演だもんねえ。まだ研6だもんねえ。
 そんなにいっぱいいっぱいには見えなかったんだけど、十分追いつめられていたんだなあと。

 新公を観ると、キャストへの愛しさが増すよねえ。
 みんながんばれー。


 1年ぶりです、OSKです、『春のおどり』です。

 突然お誘いを受けまして、取るモノも取り合わず、とりあえずミナミの松竹座へ駆けつける。や、お誘いのメール見たのが開演2時間半前でな……よくぞ間に合った、開演5分前に座席にすべり込む。

 予備知識は、トップスター大貴誠さんの退団公演だということ、日本モノと洋モノ、ショー2本立てだということ。

 おもしろかった。

 や、ほんと、ただもー、素直におもしろかった。

 なつかしい、愛しい世界がそこにあった。

 わたしは年間100回超えてヅカの舞台を観ている少しばかりディープなヅカファンで(少し、ですよ!!)いつだって「現在」のタカラヅカを愛しているのだけど。

 なんか、いろーんなことの中でタカラヅカが変わってしまった、失ってしまったものを、『春のおどり』から感じたの。

 昔の方が良かった、とは、思わない。いつだって、「今」がいちばん好き。好きでありたいと思う。
 だけど。

 「今」はもう失ってしまった「愛しいモノ」が、たしかにある。存在する。

 そーゆーものに、不意に出会わせてくれた。
 だからなんかもー、たのしくてたのしくて。
 1部の和モノも2部の洋モノも、きゃーきゃーなキモチでいっぱい。自分でも、カオがにやけてるのがわかるの。あーわたし今、すっげー笑ってるぞー、なさけないカオしてるぞー、でもま、いっかー。

 1部は「桜・舞・橋」で、大坂の橋をテーマにした日本物。
 チョンパですよ、チョンパ。
 「春のおどりはヨイヤサァ」ではじまる、お約束のアレ。
 ライトがついた瞬間の華やかさ。わくわく感。ひらひらつけた天女たちが舞い踊るプロローグ。
 ああ、この路線ですすむのだと思い込んだら。

 ……まともに和モノだったのって、プロローグだけ?(笑)

 次の場面は、いなせなにーちゃんたちが歌い踊る、ノリのいい場面。
 いきなり町人ですか、や、だって町人ってどーしても地味ぢゃん、いいの?
 ……いいのだ。
 だって、かっこいいんだもん。

 このへんで、「なんか変だぞ」と思うべきだったのか。

 次の場面でタカセさんがこれまた色男オーラばりばりに橋の上での逢い引きをキメてくれるので、そっちにときめき、感じた違和感を忘れる。
 なんだよー、あの色男ぶりー。いたずらっぽい大人の男の表情とかたまらん〜〜。
 カノジョ役の若木さんがまた、かわいくてさー。すねるとことか、すげーキュート。あまり若い人には見えない(失礼)のに、それでもかわいくてかわいくて。あんな女の人好きだなー、と思う。

 大人っぽい場面のあとに、子役がぞろぞろ出てきたことでまた、「あれ、なんか変だぞ」という気分になる。
 子どもたちのシーンが、何故か長い(笑)。まあ、大人の恋バナばっかやってても単調になるから、こーゆーシーンも必要なのかなと思っていたんだが。

 次の場面で、「やっぱ変だよこの日本物!!」と確信する。

 カーテン前で、突然コントがはじまった!!

 予備知識ないですから!! ふつーに和モノショーだと思ってましたから!! ついでに、サブタイトルも知りませんから! 大貴さんが橋について歌ってたなー、つーことと、橋のセットが出てきたなー、ぐらいで、「橋がテーマ」だということさえ、知らずに観てましたから!

 泣いてる梅の橋ちゃん@珂逢こころをイジめる、おっさんふたり、太左衛門橋@緋波亜紀、淀屋橋@貴城優希。
 橋の話だなんて知らないから、なにを言い合っているのか、マジでわからなかった。
 しかし、緋波さんと貴城さんって、初見でも絶対目につくとびきり濃い男たちふたりで女の子イジめるって、そりゃないだろー(笑)。
 最初「???」だったのが、だんだん「橋の話」だとわかってきて。
 そうかこいつら、「橋」なんだ、擬人化なんだ! ……てゆーか、何故橋を擬人化してコントを?!(白目)

 八百八橋大坂の橋の名は、みんな「バシ」と濁って発音する。なのに「梅の橋」だけは「ハシ」と清音だっつーんで、おっさん橋ふたりが梅の橋ちゃんをいじめているの。……わけわかんねえ。
 コンセプトはわかったが、目的がわからずとまどっているところへ、どっかで聴いたメロディが流れる。

 これは、日本物です。
 みんな着物着てるし、髷を結っています。

 なのに、流れるメロディは、「冬のソナタ」!!

 なんぢゃそりゃ?!
 と思っていたら、花道に清盛様登場!!

 や、去年の『義経』で清盛役をやっていた素敵なアゴのおじさま(おにいさま?)桐生麻耶さん登場!!

 もちろん着物です、髷姿です。
 なのに。

 マフラー巻いてます!!

 ヨン様! ヨン様よ〜〜!!

「女の子をイジメちゃいけないよ」
 てな、粋でいなせで超COOLなヨン様です。

 お前は何者だ! と迫られ、ヨン様は花道でハタッと見得を切る。

「問われて名乗るもおこがましいが」とゆー、お約束の見得。
 マフラーを巻いたその背中には。

 目出度い鶴の絵。

 そう、彼は「鶴橋」様!!

 「ツルハシ」……そう、「ハシ」と濁らない!!

 だからナニ。このコント。(白目。背景ベタフラ)

 わけわかんねーけど、たのしい。

 勢いだけに持って行かれる。
 てゆーか、鶴橋様に持って行かれる。

 鶴橋様、素敵(はぁと)。

 そーしてコント4人集そろって大坂八百八橋ラップだ!!

 ラップ? に、日本物でっ?!

 てゆーか鶴橋様、歌うまいー。いちばんリズムにノれてる〜。鶴橋様なのにー(意味不明)。

 「なんか変だぞ」と、思ったんだ……チョンパではじまる、ふつーの日本物っぽかったのに……ぜんぜん、ふつーぢゃなかった。

 音楽が、見事に洋モノっす。
 アレンジが完璧洋モノ。
 だからすげーノリがいい。

 舞台が大坂だから、町人ばかりなの。
 「春のおどり」でチョンパだったから、平安だとか王朝だとか華やかな時代で来るかと思いきや、江戸時代一辺倒。

 大都会大坂。
 しぶとくも粋、ラテンでおおらか、ちゃっかりしてて適度にウェット。
 京都ほど気取ってないし、江戸より下世話。

 その「大坂」の魅力を歌い踊るショー。
 舞台が江戸時代なだけで、感覚は、現代。

 鶴橋様コントはもう1回あったし、「橋の上での、大人の男と女の恋」も今度は桜花さんを主人公にしてもう1回あった。これがまた、糸を引きそうにクドい……桜花さんっておもしれー。

 そして「シメるとこはシメるぜ」と、大貴さん中心の連獅子。

 ごちゃまぜ感と、笑いと、ノリの良さ。
 桜花さんの「これでもか!」なクサみと、大貴さんの端正なセンチメンタルさ。

 緩急具合が、すげーツボりました。

 てゆーか桜花さん、最後のソロすげーよ。あのクドさと色気はナニ。
 日本物なのに、着物なのに、歌う歌はふつーに現代、ムード歌謡系。知ってる歌なんだが、タイトルが思い出せない……。
 ヅカでなら、黒タキ着て流し目ばんばんで歌っている感じ。……着物なのに!!

 この人のクドさと色気に勝てる人は、ハマコぐらいかもしれない……。そして、ハマコより美形カテゴリ。
 もー、すげー素敵。

 
 と、本気でたのしかったっす。
 2部の話はまた別欄で。


 OSK『春のおどり』話の続きっす。

 1部の日本物でのカルチャーショックはいろいろあれど、着流しの男役がみんなズボン着用なことは、心からおどろきましたね。
 着流しの裾からすねをちらちらさせるのはデフォルトではないのですか?
 男の色気ってもんでしょう?! チガウのですか?!
 ミニスカートの娘役のパンチラをたのしむのと同じハートではないのですか?
 びっくりだわー。残念だわー(笑)。
 

 2部は洋モノショー「桜ファンタジア」。

 燕尾、タキシード、猫ちゃんと盛りだくさん。

 ……猫ちゃん?
 ええ、娘役ちゃんたちがそろってしっぽフリフリ、キュートな猫ちゃんやってました!! あ、耳はついてないっす。たしか。サイトーぢゃあるまいし!
 センターが娘役トップスター(だよね?)の若木おねーさまで。
 おねーさま、な年齢なはずなのに、これまたかわいい!! キュート!!

 タカセ氏はわたし、ミツバチ・トミーでハマったせいか、端正な黒燕尾姿より、ストリート・キッズやってる方がクるみたいっす。
 それぞれえーらいこっちゃな「イマドキの10代@いやソレ、カンチガイ入ってるから!!」な格好をさせられたみなさんが、わいわい踊るストリート・ダンス。
 群舞センターのタカセ氏がかっこいーぞっ。若いぞっ。

 しかしそのうえ、トップスターの大貴さんまでもが、「キッズ」のひとりとして登場するとは思わなかった。
 客席からの登場で、赤いキャップ姿で、わたしのすぐ横を歩いていったのに、大貴さんだと気づかなかった。
 アタマ小さっ。肩細っ。ほんとに、少年みたい。
 びびびっくりだー。ほえー。

 でもって我らが鶴橋様は、キッズの中には、まざってないの。
 とーぜんだよな。桐生さんが短パン穿いて「少年」やってたら、そりゃなんの罰ゲームだよ?!なノリになるよな?(よな?)
 おっさん属性の緋波・貴城両名もがキッズをふつーにやっていても、桐生さんだけはチガウよな?(よな?)

 大貴・桜花・高世とそろって少年役をやっているのを横目に、桐生さんは、大人役。

 高級クラブのマネジャーとして登場!!

 きゃーっ、うさんくせーっ(笑)。

 クラブ・チェリーだっけ?
 1部の鶴橋様もそうだったけど、桐生さんってこーゆーポジなわけ?
 2部でひとりだけ、台詞がある。狂言回しというか、世界観を台詞で語りながらオシャレ(笑)に客席と舞台をつなぐ。

 鶴橋様(違)の案内によって、舞台はクラブ・チェリーへ。

 美しいショーガールたちが踊る、大人の社交場。
 訪れる客たちは、もちろん黒タキだ。

 この場面がすごい。

 次々と、これでもかと、ダンスダンスダンス!!

 画面前面にせり出してくる勢いで、黒タキの紳士たち、ドレスの淑女、ショーガールたちが踊り続ける。
 全員登場だよね。
 スター勢揃い。
 華やか。
 グループごとに「これぞ見せ場!」って感じに、次々登場してサイドにはける。はけたあとはそれぞれお酒飲んだりしてくつろいで、またダンスグループに混ざってガンガン踊り……と。

 ええ、鶴橋様含む従業員たちも、踊りますよ!!

 かっこい〜〜!!

 この場面、もっぺん観たいなー。とにかくテンポ良くてダンスがかっこよくて、わくわくしたわ。
 それぞれ画面のあちこちで小芝居してるみたいだし、ファンやリピーターもたのしいんたろうな。

 終業後の姿まで見せるのは、正直「なんで?」だったけど、鶴橋様の見せ場が多いのは歓迎(ヲイ)。
 若ぶっている貴城氏もかわいかったし。(貴城さんがほんとに若い場合は失礼極まりない認識だニャ)

 大貴さんのサヨナラ公演でもあるわけだから、またこっちがその先入観で観ているせいか、彼の見せ場はなにかしらセンチメンタルに映った。
 そーゆー持ち味の人なのかしら。

 クライマックス、大貴さんの絶唱で緞帳が下りる。

 えええ。
 緞帳だよ、カーテンじゃないよ。
 まるで、これで終演、というように、幕が下りてしまうの。

 そして、ひと呼吸置いたあとで幕が上がり、フィナーレがはじまる。

 ああ、そうか。
 ほんとうに、ひとつの歴史の区切りなんだ。
 ショーの途中で緞帳を下ろすほどに、大貴誠の存在は大きく、彼のラストステージは特別なものなんだ。
 スタッフもファンも、それに敬意を示しているんだ。

 あまりにドラマティックな演出だったので。

 もう、大貴さんは出てこないのかと思った。

 再び開いた幕、再開された舞台の上にいるのは、桜花さんだ。
 次のトップスターは彼だよね?
 現トップが満場の拍手とともに一旦幕を下ろして去り、次のトップが幕を開ける……そーゆー演出だと思った。

 もう大貴さんは出ないのかなぁ……フィナーレなのになぁ……。

 桜花さん中心の男役場面、若木さん北原さんの娘役場面、高世さんの場面……と続いて、スター全員の場面になっても、大貴さん、ぜんぜん出てこないし!! アレで終わり? 緞帳を下ろして区切り、って、ほんとにそりゃすげー斬新な演出だ〜〜!!

 や。
 最後の最後に出てきました。大きな羽背負って(笑)。
 そりゃそーだよなー、出ないわけないよなー。

 でも、「緞帳を下ろす→フィナーレは出ない」ての、すごいわー。
 それくらい、大貴誠は重い存在なんだと思う。ふつーではありえないような演出をするほど。

 で、ラストは傘回し。
 出演者全員が、ピンク(スパンコール付き)の傘を客席に向けて持って、OSK讃歌みたいのを歌いながら、回したり、閉じたり開いたりするの。
 そーいや去年も見たよーな気がする。
 
 恒例らしいが、客席から笑いが起こるのは、どうなんだろう。
 回している出演者たちも、恥ずかしそう……笑顔が微妙になっている。

 大昔なら「舞台と客席で、傘を回す」というのは一体感があってよかったのかもしれないが、現代ではキツいのでは? 「傘を歌に合わせて開いたり閉じたりする」って、どう考えてもダサい……。

 OSKは、タカラヅカがなくしたものを持ち続けているカンパニーだと思う。
 それが感じられて、今回の公演はすげーたのしかった。
 じんじんと胸が熱くなる、愛おしさを感じた。

 大衆演劇であること。
 それが愛しいのだが。
 ……傘回しはその大衆演劇の象徴としても、さすがに時代を超越しすぎていて、愉快な文化になっているなー。
 客席の微妙な笑いも、出演者の微妙な笑いも(笑)。
 客席が濃い〜〜いファンのみで構成されていたら、そーゆー空気も流れないんだろうけど、実際はそうじゃない。てゆーか、ファン以外の「はじめて観ました」「縁あって足を運びました」な人たちが大半を占めるからこそ、大衆演劇なんだもの。

 微妙な笑いが起こるなか、それでも観客たちはソレを受け入れ、「こーゆーもんなんだ」と手拍子をする。
 あの空気感が、いいよなー。
 傘回しも、やっぱなきゃダメなんだろうなー(笑)。

 ハイディさんがわたしの観た翌日に、『春のおどり』を観に行ったそーで。
 桐生さんに食いつくあたり、すばらしい(笑)。
 鶴橋様の話が出来る人がいてくれて、うれしいわん。

 えーと、23日月曜日までミナミの松竹座で上演中っす。
 オススメですわ〜〜。


 シュミで書いているこんなブログにも、好不調はあり、スランプというものが存在する。

 書きかけてPCに眠っているテキストは多々あれど(『A/L』とか『NEVER SLEEP』とか!)どーにも気分がノらないので、マメの話をしようと思う。

 マメ。
 芸名の読み方を実はよくわかっていない、花組のお気に入りの若手くん。
 ひゅうがくんだと信じること数年。実は今も信じている節がある……何故か。
 ひゅうがの方が耳障りがいいんだもん。アニメヲタクだった過去を持つ身には。
 ヒュウガと言えば小次郎で、ついでに『シュラト』だったりするもん。地味で真面目な学級委員タイプが大好物なわたしは、あのころヒュウガがお気に入りだったなぁ。そして今はまっつなんだよなあ(話飛躍しすぎ。誰もついてこられないだろー)。

 芸名の読みすらよくわかっていないからこそ、『Young Bloods!! 』で「サンコン」という看板抱えているのを見て「どっからサンコン?」と本気で首をかしげた。
 芸名が「さん」だから、「サンコン」か!! 人に言われるまで想像もしなかったっつの。

 未だに、名前はよくわからない。

 だが、舞台にいる彼のことはよーーっく愛でている。

 はっきりいって彼は、美形ではない。
 本名のマメちゃんがかわいー女の子だとか、そーゆー話ではなく、あくまでも芸名の、舞台人としての話ね。

 現代のタカラヅカ男役の美形基準からはわかりやすくはずれた、丸いフェイスライン。
 丸い目、丸いほっぺ、と、なにかと丸い顔の作り。
 華奢には見えない体格。

 タカラヅカの正統派美形というのは、美少年系フリルのブラウスと、総スパンラテン襟巻き衣装、両方着こなすことだと思っている。
 どっちかじゃダメだ。両方だ。

 マメは両方、「……できることなら、やめとけ? な?」と肩を叩いて語りかけたいよーなヴィジュアルの男だ。
 君には、他に似合うものがいくらでもある。サナトリウムの美少年みたいなフリルブラウスとタイツはやめとけ? 総スパンの襟巻きやら手ビレ脚ビレ付きラテン衣装もいたたまれないから、やめとけ? な? そんなもん似合う奴の方が変なんだから。
 ふつーの日本少年には、似合うわけないから。似合わなくて当然だから。

 と、ヅカ的美形ではないにもかかわらず。

 マメは、耽美OKの男なんだ。

 彼は、耽美世界を表現できる役者だ。
 外見はぜーんぜんっ、耽美ぢゃないのに。むしろ耽美を損なうくらいなのに。

 お笑いキャラ、喜劇役者として能力を発揮し、新公でも「笑わせてくれるはず」と観客が勝手に期待してマメが登場するだけですでに笑っている、という状況まで到達してしまった(これは観客が悪い。ひどいと思う)彼だが、ほんとのとこ、「笑い」だけが彼の持ち味ではない。
 舞台へのアクティヴさがお笑い芸人方面に結びついているだけで、それは彼の役者人生の一部でしかない。
 「演技が出来る」から、コメディやギャグができるだけで、それだけがすべてではないんだ。

 や、なにしろ花組だからマメが「演技が出来る」カテゴリだけど、よその組なら「ふつー」カテゴリぢゃないかとも危惧してはいるんだけど(笑)、ま、それは今は置いておく。花組の演技力の低さは、今語ることではナイ。(それでも花組ダイスキさ!)

 マメは演技が出来る。
 基本的な技術をとりあえずクリアしたうえで、もうひとつ。ひょっとしたらこれは天賦の才ってやつなのかもしれないけれど……彼には、毒がある。

 音楽学校という女子校を経て同じ面子で囲いの中で純粋培養されるせいか、タカラヅカの俳優たちはみな「いい人」は演じられても、「悪い人」が演じられない。
 「少年」は演じられても「大人の男」は演じられない。ましてや、「かっこいいおじさん」も演じられない。(かっこわるい中年なら、外見を作ることでまだなんとかできる)
 「少年」で「いい人」は、技術がなくても演じられるからだ。素の「幼稚さ」と「未熟さ」を出すだけで「若くてかわいいハンサム」程度なら演じられてしまうんだ。タカラヅカという舞台自体のマジックで。
 「幼稚」で「未熟」だから「純粋」で、「いい人」。
 たしかにソレはソレで魅力的な場合もあるがな。

 でも、舞台にいる若い男たち全員が「善良な少年」ばかりでは、物語にならない。
 役割があり、役を示す衣装があり、台詞がある「芝居」ですら、「善良な少年」たちは素のままいるだけで、仕事を果たせていないことが多い。
 同じ衣装を着、明確な役や台詞のないショーになると、もうどーしよーもない。みんな「善良な少年」。ひとりずつがんばっていることはわかるけれど、いや、ヅカの舞台でがんばっていない子なんかひとりもいないことはわかっているけれど、それにしたってみんな「自分」の枠の中だけであがいている。

 そんな十把一絡げのモブの若者たちの間で。

 マメがすこーんと前に出る。

 彼には、毒がある。
 「善良な少年」だけで終わらないアクがある。

 もちろん、マメもふつーに「善良な少年」を演じられるだろう。彼がもっと力を抜き、ただきれいに笑っていれば、勝手に「善良な少年」になるだろう。ヅカの男役ってそーゆーもん。
 素を出すだけでいい「善良な少年」に、「なにか」加えることで彼は「仕事」をはじめる。

 「毒」は持って生まれた才能かもしれない。
 なにをやっても「いい人」にしか見えない、悪役をやると「まぬけな人」になるジェンヌは、存在している。しかも、かなりの数。そーゆー持ち味の人が「毒」を出すには相当の技術が必要になる。
 マメが今の技術や経験で毒を持っていられるのは、やはり天賦の才なんだろうなとも思う。
 だが、それを外へ向かって出しているのは、マメ自身の意志であり力であるだろう。

 「毒」は、きれいなものとは限らないからだ。

 世の中の人の多くは、「毒」を嫌う。
 とくに、タカラヅカのような「現実を忘れてひととき夢を見ていたいの」てな目的で観劇する人の多いジャンルでは嫌われる。
 「きれいであること」「たのしいこと」「簡単であること」を求められる世界では、「毒」はない方がイイとゆーことになっている。
 「きれい、たのしい、簡単」を能動的に嫌う人はいないが、「毒」を本能的に能動的に攻撃的に嫌い、排除する人は一定数確実にいるからだ。
 その確実にいる人たちのために、「毒」は最初から排除しておく。
 タカラヅカにあっていい「毒」は、「悪役」だけだ。主人公サイドには絶対にあってはならない。

 「きれいなこと」を求められるタカラヅカで、それでも「毒」を表現する。
 天賦の才であったとしても、それはたしかに、マメの意志であり力であるだろう。

 『TUXEDO JAZZ』の後半、「ナイト・ジャズ」の赤ベストの男@マメを見て欲しい。

 あの、邪悪さ。

 白スーツの男@オサ様に迫り、嘲笑う男。
 醜いほどの禍々しさを解放している。

 彼がここまで思い切って「毒」を解放できるのは、「路線ではない」からだと思う。
 マメが路線男役ならば、やってはいけないことだと思うからだ。「毒」を嫌う人は多い。脇でならいくらいてもいいが、少しでも真ん中寄りになると拒絶反応を起こす人がいる。で、拒絶反応を起こす人の声は大きく強く、なんとも思わないから黙っている人を駆逐する勢いで叫ばれてしまう。危険危険。

 邪悪全開のマメの横で、必死に邪悪を「演じよう」として自爆している「路線スター」まとぶの、痛々しいこと。
 マメを操っているべき存在なのに、いたいけに見えてしまう善人まとぶは、「路線スター」としては正しいのだと思う。彼はトップスターになるべき人なのだから、「毒」は不要なんだ。

 オギーがマメをひそかに愛でている(博多『マラケシュ』しかり、『TUXEDO JAZZ』しかり)のも道理、これだけ邪悪な毒を持った若手男役はめずらしい。
 みんなまだ、「善良な少年」でしかない世代なのに。

 そしてわたしもまた、マメの「毒」に、その「耽美」さに震撼する。

 美形ではないのに。フリルもレェスも似合わないのに。ほっぺぷくぷくちゃんなのに。
 それでも彼は、耽美世界で生きることが出来る男なんだ。

 耽美に必要な、「毒」を表現しうる「役者」であること。

 彼をただのギャグメーカーとして使うのではなく、その「黒の魅力」をも正しく認めて欲しいと思う。
 将来、色気のある大人の男役に成長する可能性を持った少年なのだから。

 や、その前に芸名おぼえろよ、こあら。……て話ですが。


1 2

 

日記内を検索