『EXCITER!!』再演による大発見。

 みちるタソと姫花は、似ている。

 新しくなった場面、ハワイにてチェンジBOXが活躍するわけなんだが、今回はミセスファット@ちあきさんが変身するわけじゃない。
 ミセスファットは最初からスリムな美女。前回のチェンジBOXで美しく変身したままだ。

 変身するのはハワイのおでぶおばさん@みちるタソだ。
 堂々たる横幅顔幅の美声おばさんで、いかにも「いるいる、ハワイにいる!」てな迫力のある女性。

 その女性がミセスファットの太鼓判のもと、チェンジBOXに入ると……。

 ああら不思議、出てきたのは姫花だ!!

 すげえ、横幅顔幅、なにもかもミニマムになってる!
 だけど歌声は変わらず美声。どすこいアルト。

 えーと。
 みちるタソが、姫花に。

 ありえないことなんだが、なんか納得してしまうのは、ふたりの顔立ちが決してかけ離れてはいない……むしろ同系統なのだという、事実。似ている、わけじゃないけど、変身して出てくるのに納得してしまう部分があるという、真実。(口ぽかーん)
 タソだって、顔立ちはかわいいんだよ。ただ、お肉に埋もれてしまっているだけで。
 声が良くて歌が上手くて芝居ができて。彼にないのは美貌……というか、ジェンヌらしいスリムな顔とカラダだけ。
 そして姫花といえば。
 百花繚乱の花娘たちの間でも一際輝く美貌の娘役。フィギュアのようなプロポーションの美少女。彼女にないのは、きれいな声と歌唱力と演技力。
 正反対の92期、このふたりを「使用前」「使用後」に使うなんて……!!
 そして実は、裏表のように、なんか共通点のある顔立ちだったなんて……!!

 フジイダイスケ、おそるべし!
 そんな真実にたどりつくなんて。

 
 前回より5分上演時間が延びた『EXCITER!!』、新しい場面が増えるのではなく、それぞれの場面が間延びしてました……。とくに「Mr.YU」のミュージカル場面の間延びっぷりはどうかと思う。前回でも大概だったんだが(笑)。いや、1回観るだけの一見さんにはいいのかもしれないけどなー……フタ桁観るのはテンポの悪さがなー……。

 でもって、物語が思いっきり「前回の続編」。……いいのか?
 チェリーちゃんが結婚退職した、とかいうのが続編だからどうこうと言っているわけじゃない。たしかにそこも続編な部分だけど、そーゆーことじゃなくて。
 フィットネス商品を開発している会社の話だということが、説明されてないのよ。よく聞くとそれらしきことは言ってるんだろうけど、ごめん、そんなこと1回観ただけじゃわかんないよ、聞き取れないよ。
 ダメリーマンが何故かハワイでいきなりチェンジBOXになってるよ。
 チェンジBOXがなにかの説明もない。なんでハワイで?
 あくまでも「前回のオフィスでのやりとりを知っている人向け」に作られている。なのに、前回イケメンに変身したはずのMr.YUはダメ男のまま。
 前回そのままでもないし、続編でもない。前回を知って観ている人にとって変だし、はじめて観る人には不親切。
 フジイくんの「物語をたたむ能力欠如」がこんなところでも発揮されている(笑)。作っていて、途中でわけわかんなくなるんだろーなぁ。

 んで、前回「せっかくイケメンに変身したMr.YUの活躍の場がない」「こんだけ長々変身ものを描いて、オチがない」と嘆いていた部分を、フジイくん的には改善しようとしたんだと思う。
 エキサイターに変身したあと、銀橋でパンダちゃんケータイを出して「クラブ?」と言っているから、そのあとの黒タキ祭りに登場するエキサイターは、Mr.YUだと言っているんでしょう。

 ……で?

 クラブ場面とつなげたところで、なんの解決になってないっつーの。
 Mr.YUをバカにした女の子や会社の人たちをあっと言わせてオチになるのに、別世界でブイブイ言わせてもただの外弁慶、「知らない人の間でしかかっこつけられない残念な人」でしかないよ~~!

 むしろ、次の場面の邪魔になってるんですが……。
 本舞台のカーテンが開いて、黒タキ男たちがかっこよく登場しているのに、銀橋にて音楽に負けじと台詞を言われ、前回の、イケメンに変身!→バーンッとかっこいいシーン! という舞台転換のカタルシスが削がれている。
 
 エキサイターに台詞を言わせて話をつなげるなら、クラブで踊っているのもMr.SO@壮くんとランラン@蘭ちゃんであるべきだ。なのにセクシーガイ@壮くんとセクシードール@蘭ちゃんなんだもの、そこでかっこつけてもMr.YU的にはなんの関係も発展もない。

 ただ台詞で「これからクラブに行きますよ」とだけ言わせて、オチを作った気になっている安直さにアゴが落ちました……フジイくんってほんとに「物語」の構成力がナイんやなー……。

 
 そしてこのミュージカル場面からわかった、もうひとつの発見。

 フジイダイスケは、可愛い女の子に「変態クン」と言われると萌えるらしい。

 初演『EXCITER!!』で、痴漢の冤罪をきせられたMr.YUが憧れのチェリーちゃん@彩音から「変態クン」と罵られる。
 痴漢行為と冤罪を笑いにする演出に賛否両論っつーか疑問視する声はかなりあったと思うんだが、今回もそこは改善されず、わざわざ同じことをしていた。

 ヒロインから誤解され、罵られる、というシチュエーションがストーリー的に必要なのはわかる。
 それだけなら別に痴漢行為でなくてもいいはずだ。鈍くさい大失敗をして秘書@さあやに「この役立たず」と罵られるよーに、ランランちゃんにも「役立たずクン」と言われればそれで済む。
 でも、役立たずとかおバカとかではイカンのだろう、フジイくん的に。

 あくまでも「変態」と罵られなければならない。譲れないこだわり。

 女の子が男を変態呼ばわりするには、ナニがある? 限られた時間でソレを表現するなら、やはり痴漢行為が手っ取り早い。

 観ている側からすりゃ、変態でも役立たずでもおバカでも同じよーなもんなんだが、演出家はあくまでも「変態」にこだわった。「変態」と呼ばせたいのだ。

 とゆーことで結論。フジイくんは、「変態クン」と罵られるのが萌え。
 ツンデレ萌えとかに通じる感じでしょう、あくまでも「可愛い女の子」だから許される、キツい言葉。「こんなコに、こんな言葉を言われるなんて、キュ~~ン☆」な感じ?
 フジイダイスケ、おそるべし!

 ……痴漢行為萌えだとは思いたくないので、そーゆー方向で納得しておきますわ(笑)。
 8ヶ月ぶりの、『EXCITER!!』です。

 最後に『EXCITER!!』を観たのが、2009年11月22日。で、今回観たのが2010年7月30日。……1年経ってねええぇ。

 そして、彩音ちゃんのサヨナラショーで『EXCITER!!』主題歌部分をムラと東宝で2回観て、彩音ちゃんのMSでムラと東京で3回観て。

 あたしいったい何回『EXCITER!!』観てるの?!!
 と、がっくり大地に膝を付きたくなります。

 過去は忘れる人間なので、何回観劇したのかマジでおぼえてないんですが、『ベルサイユのばら』の3~4倍は観ているはず。大人げないので、芝居観ないでショーだけ観劇に通ったんだよなー。公演時間50分でS席8000円という、やたら高い公演だったわ。びんぼーなんでS席は観劇回数の半分くらいだったけど。(SS? なにソレ、どーやったら買えるの??)

 そうやってたかだか8ヶ月前に十何回、2~3ヶ月前に5回観た作品。

 なつかしい、というよりは、「あー、はいはい」って感じなのは、どーしよーもない。
 あー、はいはい、そうだったわね、そうよね、って。


 それでも、さおたさん先頭に男たちが大階段を降りてくるオープニングでは、血がたぎる。

 お帰りなさい、さおたさん。でもって、やっぱこのオープニングは秀逸だと再確認。

 問答無用で、カッコイイ!!

 これぞタカラヅカ、これぞ花組!!

 壮くんから歌い継ぎ、まっつのソロまで息を詰める勢いでガン見しているよー(笑)。

 で、そのあとの主題歌。
 特撮ソングなガチガチバチバチ、ウインク指さしてんこ盛り。これがもお、条件反射で楽しい、テンション上がる。

 やっぱたのしいなあ、『EXCITER!!』。

 ……ただどうしても、その直後の蘭はなちゃんの主題歌はパワーダウン。
 や、無理だからふつう、大劇場の真ん中に立ったことのない子にいきなり銀橋センターなんて。新公ヒロやバウヒロ独占してきたお披露目かなみちゃんとか、トップ前には経験少なくてもトップになって4年経ちましたな彩音ちゃんならできることでも、蘭ちゃんには荷が重すぎるでしょー。
 ハバナのソロダンスはいいんだけど、オープニングの勢いでセンターを務めなければならないこの場面は、蘭ちゃん試練のときだなと。
 や、なにしろここ、ダンスではなくだし。

 蘭ちゃんの最大のウィークポイント、歌唱力。
 『麗しのサブリナ』ではそれほど気にならなかったけれど、『EXCITER!!』主題歌では手に汗握った。声量のなさ、音程のやばさ、発声のあやうさ。うわー、えらいことに(笑)。

 この作品は、円熟期に入った娘トップ彩音ちゃんならではの作品だったんだな。
 キーとなるオープニングと中詰めがセクシー・ワイルド系だったもんよ。

 彩音ちゃんは女豹としての迫力があった。代表作が黒トカゲやキハだったよーに、彼女は妹キャラではなく、大人の女、魔性の女こそが最大の魅力を発揮できるスターだった。
 「カッコイイ」女役になれる人だった。

 だが今の蘭ちゃんはチガウ。
 蘭ちゃんの最大の魅力はマデレーネに代表されるよーな、「小悪魔」だと思っている。あくまでも、今の。将来的には大人になるんだろうけど、今の蘭ちゃんだからこそ持っている魅力、色気。
 少女であるがゆえの毒。
 なのに、中詰めの黒タキ場面など、彩音ちゃんが演じていた大人のセクシー美女にそのままスライドさせても、残念感が残る。彩音ちゃんは色っぽかったなあ、と。

 せっかくの蘭ちゃんお披露目なんだから、蘭ちゃん用にキャラ設定を変えてくれればよかったのに。「Mr.YU」場面の蘭ちゃんのキャラ変更よりも、よっぽど重要だと思うんだがな、フジイくん。

 黒タキ場面、セクシードール@蘭ちゃんを小悪魔な少女にしてエキサイター@まとぶんに絡ませたら、同じ場面、同じ振付でもすげー印象変わると思うんだが。
 少女に過ぎない蘭ちゃんが、大人の女たちを従え、まとぶんを挑発する……って、想像するだけでぞくぞくするけどなー。

 んで、その少女にかしずくよーに、みわっち他の黒タキ男たちが絡む、と。

 そーゆー倒錯感あふれる場面、作ってくれないかなぁ。蘭ちゃんが大人になってしまう前に、是非。今の危うい少女の魅力全開に。フジイくんより、三木せんせの方が得意か、そーゆーの?

 まあそれでも、大変なことになっているオープニングでは、とりあえず歌詞を変えてました。
 彩音ちゃんが女豹なら、蘭ちゃんはシンデレラ。そのへんはうまいなと思うんだけど、なにしろココ、歌が聞こえねえ(笑)。歌詞が、じゃなく、歌とか声とかのレベルで聞こえないので大変っす(笑)。がんばれ蘭ちゃん。

 個人的に、彩音ちゃんの女豹サマでさらにガーーッとテンション上がった記憶が新しいので、ココでがくんと盛り下がるのが悲しい。
 蘭ちゃんのせいではなく、演出が悪いと思う。蘭ちゃんひとりでなく、歌える娘役スターを両側に付けるだけでぜんぜん違ったのに……蘭ちゃんには要所要所で数小節ソロを歌わせるぐらいで、あとはポーズキメさせておくだけで良かったのに。
 お披露目作品のオープニングから弱点をさらけださなくても……。

 
 彩音ちゃん→蘭ちゃんの変更がいちばん大きく感じるとして、他にもやっぱり「いた人が、いない」ことは寂しかった。
 や、大劇場で時間をおかずに再演、なんて経験、ヅカファンになってから一度もなかったから、はじめてのことだから。
 何年か経っているなら主要メンバー自体が変わっているだろうし、全ツならはじめから人数がチガウ。
 まったく同じ劇場と顔ぶれでたった8ヶ月後にやっているから、いなくなった人が目立つ。
 覚悟していた目立つ場面ではなく、油断している群舞のときにすごく感じる。

 ここに、いたのに。
 今は、いない。

 いちいち考えるのではなく、無意識に記憶との相違が浮かび上がるから、きつい。切ない。

 
 そして。
 そして、どーしても、まっつが、いなくなってしまうということが、悲しい。
 ここから、この人たちの間から、まっつがいなくなる。
 タカラヅカはひとつだとか新しい組での出会いがとか、そーゆーことは置いておいて、ただもお、大好きな花組からまっつがいなくなってしまうのが寂しい。

 ずっとずっと、ここにいると思ってたんだもん。
 この組から、卒業していくと思ってたんだもん。

 前に『EXCITER!!』を見ていたときは、ここからまっつが消えるなんて夢にも思わず無邪気に楽しんでいたな、なんて考えるとさらに切なくてたまらなくなる。

 
 それでも『EXCITER!!』は楽しい。主題歌が流れると、テンションが上がる。
 過去と現在、そして未来、いろんなものが交差して、さらにテンションが上がる。
 生理的嫌悪感だの思考停止させられるよーな破綻だのがない、薄くて可愛らしい作品は、キャストの魅力だけで、楽しめる。

 罪なくほっこりかわいい物語『麗しのサブリナ』は、いろいろとありがたい作品だ。

 リピートもしやすいし、ひとにも薦めやすい。『EXCITER!!』という派手で楽しいショーと2本立てのこともあり、まあいっぺん観てみてよ、「タカラヅカ」体験にいいっすよ、と。
 客席には家族連れ・子ども連れも多いし、若い学生たちの姿も多い。夏休みの演目として最適だと思う。
 てゆーかいいなあ、学割チケット……。
 2階10列目が2000円で買えるんだよ? そこってつい数年前まで5500円だった席だよ? 学生さんがうらやましすぎる! わたしが学生だった頃はそんな割引なかったし!

 まあ、わたしの若いころとは時代があらゆる意味で違い、今はヅカ自体が斜陽で、割引チケットでも出さなきゃやってらんないんだろうと思う。全組通して平日・土日ともに万遍なく観劇する身としては客席の現状が目に胸に痛いさ……。
 
 
 なにはともあれ、『麗しのサブリナ』はキャストがかわいい。

 ヒロインのサブリナ@蘭ちゃんがキュートであることは言うまでもなく。
 童顔ゆえ気づいてなかったけれど、意外に背が高いというか、バランスの良いプロポーションなんだ。
 今は可愛らしさが前面に出ているけれど、これからどんどん美女になっていくんだろうなあ、そう思わせる素材の良さに期待感が高まる。

 んで、その若く可愛らしいサブリナに惹かれていく大人の男、ライナス@まとぶん。

 大人のまとぶんがかっこいい。

 少女にめろめろになるおじさん、というとアレな感じになりがちだけど、まとぶんだとそうはならない。
 仕事一途過ぎて女性に興味がなかったんだとわかる。だってめちゃイケメンだもんよ、モテないはずがない。
 そして、女の子の扱いも知らないわけじゃない、堅物設定のわりにやることけっこー強引、てのがねー、ポイント高いんですよー。

 ああそして、デイヴィッド@壮くん。
 女好きのチャラ男を何公演続けてるんですか、女たちの嬌声とえりたんはデフォルトですかそうですか。
 そのケーハクぶり、タラシぶりがもお、板につきすぎて(笑)。

 デイヴィッドがかわいすぎる。

 お尻の手当てとか、すみれコード的にアレなはずなんだが、えりたんなら平気。ぜんぜんOK、ふつーにアリ。
 彼のあっけらかーーんとした明るい光が、すべてを肯定する。

 壮くんって、ものすごい舞台人かもしれない。
 彼には「ありえない」がないの。どんな荒唐無稽なことでも、これやっちゃシャレならんでしょなことが、ナイの。
 全部全部、壮一帆ならアリだと思わせる。

 舞台の上に、ファンタジーを作り上げる。

 つくづくおそろしい人だ……(笑)。

 デイヴィッドの、「株のことはわからないが、キスならわかる」の台詞が好き。
 いい男だ、デイヴィッド。

 
 主人公3人いればカタがつくよーな話なんだが。

 ストーリーテラー@みわっちはオイシイ役。
 いろんな場面でいろんなコスプレして、いろんな役をしている。
 そのいろいろな姿を見られるのはオイシイ。
 ショータイムとしてたのしい料理学校場面や、クラブの歌手としてねっとり(笑)1曲ソロ、さらにくまちゃんとアダルトにエロ絡みアリ。
 よぼよぼ医者の可愛らしさもいいんだが、ツボというか、ある意味「みわっちキターー!」と笑えるのは、意味なく登場する電話の男と、最後の船員ですな。
 いやその、胡散臭すぎて、ツボに入る。みわっちならではですわ、あの無駄な濃さ。(力一杯誉め言葉)

 
 んで、料理学校場面がみょーーに楽しい。
 オープニングがショーになっておらずそのまま物語スタートだったこともあり、ミュージカルっぽい最初の場面になるんだよね。パーティで紳士淑女が踊っているのはある意味ふつーだもん。

 ここのキャラクタが、誰を見ていいのか目がいくつあっても足りない。

 オカマのあきらと、キザよっちはもお、どうしてくれようかと。

 ナニあいつら?!
 面白すぎるっ。

 瀬戸くんは若くして男役として出来上がっているので、シナを作られると素直にキモい(誉めてます)。カオもキツイ系の美形なので、オネエ喋りが活きる(誉めてます)。

 よっちはよっちだというだけで点数高いんだが、あのよっちがキザな俺様キャラで盛大にカッコつけているというと、「よっちがエライコトになってる!!」と、花担たちを震撼させる結果に。
 あああ、よっちに『摩天楼狂詩曲』CMのともみんの役やってほしー!! いたたまれなくなって地団駄踏みたい~~!!

 
 場面としてオイシイのは料理教室だけど、モブのグループとしてオイシイのは、ララビー家の使用人たち。
 執事@ふみかが若い! てっきりヒゲじーさんで来るのかと思ったら、現役色男で来ましたよ!
 さあや&きらりが芸達者にメイドとして目立ち、いまっち&みちるタソがコミカル部門担当、かわいこちゃんポジがまゆくん……で、しゅん様がんばれ、食われてる食われてる!(笑)

 つか、女たち強いですよ……(笑)。

 
 デイヴィッドの恋人、グレチェン@じゅりあとエリザベス@あまちゃき。
 壮×じゅりあはこの間まで、おそろしい夫婦だったような……? 「あなたのせいなのです!」てな。そのギャップも楽しみつつ(笑)。
 あまちゃきはすげーかわいい。記号的にかわいい。おかしい。おもしろい。「サブリナって誰?!」の台形グチがたまらん。
 
 
 もう少し書きようがあったのになあ、と思うのはデイヴィッドの友人たち。みつる、めお、まぁ、だいもん。
 銀橋に出てくる場面がある程度で、濃度的には使用人ズと変わらない……。

 パーティとかクラブとか、大人数で華やかにしている場面には登場するので「モブとして」愛でるのは楽しいのだけど、彼らはモブで見たい人たちじゃない、「役」が見たいんだ。
 彼らが新公学年の若者たちなら、あるいは路線外の人たちなら、モブでの人間関係や小芝居を探して眺めて本筋そっちのけで仲間内で盛り上がったりはアリだろうけど……彼らのポジションを思えば切ない。
 せっかくそれぞれカノジョ持ちで、今をときめく美形娘たちと組んでいるのになあ。

 あと5分彼らに割いて、ひとり(ひと組)ずつ見せ場を作ることは出来なかったのか、中村せんせ……。
 いつも全員同じ扱いで横並び登場はあんまりですよ。
 
 扱いへの不満はともかく、カップルでいちゃついていたり、男同士でじゃれていたりする彼らを見るのはたのしい。4組のカップルの人間関係とか、リピートすればするほど見えてくるものがあって、たのしいんだろうな。

 
 真ん中にしか役がないので、結局のところそれ以外はグループ芝居か、モブ。そして、実はグループやモブの出番は多い。
 みんなでがちゃがちゃなにかしら歌い踊るなので、目は忙しい。
 パーティが2回、学校場面が2回、オフィスにクラブに幻想のダンスと、大人数場面がいろいろある。ストーリーがシンプルな分、歌い踊っていて、すごくかわいい。
 いやあ、ほんと『虞美人』とのギャップが大きいわ……。

 このくすぐったいキラキラ感と、罪のないハッピーストーリーが気持ちいいんだほんと。
 んで、改めて。

 蘭ちゃん花組娘役トップ、まと×蘭・新生花組スタートおめでとう。

 『麗しのサブリナ』はタイトル通り、サブリナ@蘭はなちゃんが主人公。
 そう、どう足掻いても『虹のナターシャ』の主人公がナタ公で、三条さんが主役にはなれなかったように、『麗しのサブリナ』もサブリナが主人公だ。

 運転手の娘サブリナ@蘭ちゃんは、お屋敷のおぼっちゃまデイヴィッド@壮くんに片想い。バツ3の女ったらしデイヴィッドには、お子ちゃまのサブリナなんて眼中にない。思いあまったサブリナは自殺しようとするが、デイヴィッドの兄ライナス@まとぶんに偶然助けられてしまう。
 パリの料理学校に留学、帰国したサブリナは美しいレディに変身。今度はデイヴィッドがサブリナに一目惚れ。だが仕事一筋のライナスが、デイヴィッドを政略結婚させようとしていたため、運転手の娘サブリナとくっつかれては困るっつーんで、横恋慕をはじめた。ケガをしたデイヴィッドの代わりにライナスがサブリナをデートに誘い、口説きはじめるが……。

 なんといっても、サブリナがかわいい。
 いちばん最初の、木の上の蘭ちゃんがベリキュート! 恋愛ドラマの「ヒロイン」として納得のかわいらしさ。

 サブリナはつくづく若く、初々しく、可愛らしい。
 なにしろ演じている蘭ちゃんのキャリアが圧倒的に少ない。バウヒロ経験があるだけで、大劇場でのヒロインは新公1回のみ……しかも、娘トップ不在組でのヒロインだ。『エリザベート』新公とか経験できていればちがったんだろうけど、浮舟だけだもんなあ。
 広い大劇場の真ん中に立つ訓練が足りていないところへもってきて、いきなりタイトルロールだ。『EXCITER!!』もそうだが、劇団は蘭ちゃんに大きな期待を持っているのか単に無神経なのか、そのスパルタぶりがハンパない。経験不足の女の子に、いきなりナニやらせてんだ?!の重責ぶり。

 等身大の若い女の子として存在できる、初々しさ・かわいらしさ勝負の最初はいいんだけど、物語が進むとそれだけでは立ち行かないため、後半になると大変さが増す。
 がんばれ蘭ちゃん! きっとこの経験が彼女を急激に成長させるはず。

 とまあ、素質はあってもそれをまだ生かし切れていないヒロインを支え、ライナス@まとぶんの男ぶりが上がっている。

 なにが驚きって、まとぶんが、大人の男なんですよ。

 大人を演じるまとぶさんを見るのは、はじめてだと思うんです、わたし。
 星組時代からずーっと眺めて来ているけれど、彼が「あんちゃん」でないことなんて、初体験ぢゃなかろーか。
 あんちゃん、てのは「お兄さん」ではなくて、若い血気盛んなにーちゃん、という意味。
 まとぶんの特質というか持ち味は、永遠の若者というか、ナニを演じても結局のところ「あんちゃん」になること。王子様でも貴族でも、何故かいつも血気盛んで爆走上等の下町のにーちゃん的アツさを持つ。

 それがデフォルトだと脳内に染みこんでいるから、ついつい無意識に「いつライナスはあんちゃんになるのかしら」と思って見てしまった(笑)。
 ところがどっこい、ライナスは大人だった。
 少なくとも、初日とその翌日は大人のままだった。
 このまま千秋楽まで、大人でいるのかしら。

 まとぶさんの「なにを演じても結局はあんちゃん」という特質は、愛すべきところだと思っている。
 芝居に正しいも間違ってるもないので、彼のそーゆー持ち味を好きか嫌いかだけでしょう、問題は。
 美貌と変幻自在の声と破綻ない実力を持ちながら、まとぶんてば芸幅が意外なほど狭いんですよ、ナニやってもあんちゃんになるので。
 その「ナニをやっても」ってのは、ソレを好きな人にはたまらない魅力だろうし、そこを認められない人には観劇意欲につながらないだろう、両刃の剣。
 わたしはもお、まとぶんのそーゆーところはアリだと染みこんでいるので、彼があんちゃんでないことに逆に驚いてしまうという(笑)。

 まとぶんが、大人の男だ。
 抑えた声で話し、暴走していない。

 相手役が変わる、ってのは、こーゆーことなのか。

 それはとても新鮮な驚きだ。
 このまま大人でいてくれるのか、結局はあんちゃんとして暴走をはじめるのか、見守るのが楽しみです。……どっちでも楽しめる自信がある! まるごとまとぶんだもん!

 作品的には、悪くない小品になっていると思う。

 かわいらしく、オシャレにまとまっている。
 気軽に口に出来る小さなお菓子。3度の食事とは別に、いつでもお茶してよし、みたいな。
 くすくすと笑えるし、女の子が好きなドレスもパーティも出てくるし、悪人のいないハートウォーミングなラヴストーリーだし。
 画面もキレイだし、嫌味はないし、破綻もない。

 ただ……劇的に盛り上がるかというと、そーでもない。

 演出家のキャラクタが出ているのかもしれない。
 こじんまりして平坦、という。加点法ではなく減点法で作劇というか。冒険はしないので減点されない、結果として合格点だけど、最初から満点は取れないことがわかっているというか。
 爆発的に盛り上がるところがない、クライマックスがない、同じテンションで終始する。
 派手にとんがらない分、かわいくオシャレである、と辻褄は合っている。
 濃くないから、口当たりは悪くなく、激しい感動はなくても「いいんじゃない?」という感想にはつながりやすい。

 主人公はあくまでもサブリナだが、現在彼女は経験の浅い初心者ヒロインが悪戦苦闘中であり、また男役至上主義のタカラヅカである以上、視点をサブリナ一本に出来ずライナスにも振る必要があるため分散、二足のわらじを履いた結果すべてが薄くなる。……ということなのかもしれないが。

 演出で盛り上がることはない。そして、演出が邪魔をしてドン引きすることもない。良くも悪くも、とっても中村Aな作品。
 いや、奥行き皆無の紙芝居作品だの前後のつながりの悪すぎる破綻作品を作り続ける演出家なので、もっとわけのわからないモノが出てくるのではないかと危惧していただけに、この「ドラマティックではないが、悪くもない」作品は「良かった」と言えるのではなかろーか。

「で、この『サブリナ』って、面白いの?」
 と、という疑問を何度か聞いた。
 未観劇の人が言うんじゃないの、今観終わった人が、言うのよ(笑)。

 面白くないとかキライとか不快とかは、特にナイ。ただ、面白いのかどうかわからないだけで(笑)。
 楽しく観られるし、最後はちょっと泣けたりもするんだけど、なにしろ爆発的にどーんっと来るモノはないので。観劇直後に「面白かったっ、この作品すごい!」と叫ぶよーなモノではないので。

 ある意味、可能性がある、のかもしれない。
 土台がベーシックで大きな穴がないなら、いくらでも化けられる。演じている人たちもそうだし、観ている側もそうだ。

 全部、差し出されているんだ。
 料理みたいに。
 まっつは、黒髪でした。

 ……って、ソコから?!
 でも大切なことでしょう?
 宝塚戦隊flower7のフラワー・ブラックは、今回もまた黒髪でした!

 『麗しのサブリナ』『EXCITER!!』初日。

 組替えが発表になってからの、はじめてのまっつ。
 よかった、プログラムの写真が前回『EXCITER!!』の使い回しぢゃない。や、撮り直すだろうとは思っていたけど、一応確認(笑)。衣装も違ってる。
 でもって、「ステージスタジオ」もまっつまで入ってた! よっしゃ、ストラップ作るぞぉ。

 
 そして、公演は。

 まっつ×一花でした。

 『麗しのサブリナ』は、ライナス@まとぶんの秘書ウィリス役で、いつも同じく秘書のマカードル@一花と一緒。

 人物相関図が発表になったときに、まっつと一花が共に秘書役っつーんで期待はしたけれど、それは単に同じ場面に出るとか絡みがあるとか、その程度だった。

 タカラヅカではトップコンビ以外は明確な「相手役」は存在せず、ラヴもない。それがふつう。
 わかっていても、まっつと一花は組むことが多く、なんとなく「相手役」なイメージだった。
 組替えが決まり、これが最後の花組公演となるなら、せめて一花と同じ場面に出てくれるのはうれしいな……そう、思っていた。

 実際、ウィリスとマカードルはいつも一緒に出てくる。共に有能な秘書(ただし、マカードルは料理が壊滅的)。

 ふたりがこちょこちょ一緒にいるのは、それだけで楽しかった。

 それが。

 まさかの、カーテン前デュエット。

 秘書ふたりで歌い踊る。
 いやその、コミカルな場面なんだが。

 なにコレ、ここまでまつ×いちがっつり見せてくれるなんて、思ってなかったよ?!

 それだけでも、感涙モノなのに。

 さらにこのふたり。

 ラヴがあります。

 ライナス氏にもらったチケットで、ちゃっかりデートして、その夜はふたりして眠れなかったそうで……。

 恋に落ちる、まっつ×いちか!!

 なんなのこの展開?!
 予想だにしなかったっ。

 何度も書いているけれど、1時間半で主人公とヒロインが出会って愛し合って障害乗り越えてハッピーエンドにならなきゃいけないタカラヅカでは、脇役まで恋愛しているヒマがない。
 だから通常、トップさんや路線スターさんしか、恋愛はできない。
 「愛」がテーマの劇団のわりに、団員のほとんどが芝居では恋愛もラヴシーンも経験できないという。

 だからわたしもとーぜん、ご贔屓が恋愛しているところを見たことがなかった。
 本公演はただの脇だから仕方ないとして、バウやDCで2番手やっても海馬ヲタクだったり親友を溺愛していたりで、まともに恋愛してねえ。
 バロット@『メランコリック・ジゴロ』は妻がいたけど、正塚芝居では折ってたたんで裏返しな夫婦関係だし、ウラジミール@『マラケシュ』ぐらいか、まっつが女の子とハッピーエンドな役って?

 それくらい、女の子にも恋愛にも縁がなかった、まつださん。
 相手役、と言えるくらいよく組んでいる一花ちゃんがいてなお、そうだった、まつださん。

 それが、最後の最後になって。

 相手役+恋愛アリかよっ!!

 見たかったんだ、一花ちゃんと恋するまっつ。
 ラヴラヴなまっつ。

 かわいいよおおお。

 いやその、所詮脇役な人たちなんで、出番もエピソードもあるわけじゃないんだけど。
 少ない出番で、それでもまさかの扱いですよ、ありがとう!!

 正直、ウィリスのスーツは、どうかと思います。

 最初に着てる、明るいブルーのスーツなんか、似合わなさに眩暈がするっす……(笑)。
 すげーアホっぽいっちゅーか、カラダに合ってないっちゅーか。
 スーツのトンデモカラーと、まっつの重い黒髪、さらにボリュームのある髪型がなんともミスマッチ。せめて髪型、なんとかならんのかなー。

 そして、「うわっ、似合ってねー」と絶句したその姿で。

 踊るは、プラスチック・ダンス!!

 未涼亜希の真骨頂。
 あの動き、あの表情。

 重役たち秘書たち、十数人で踊るわけなんだが、なにしろ表現しているのが「プラスチック」。
 すげー愉快な動き、振りなのよ。

 そのクキクキしたダンス、足捌きがもおっ、まっつのまっつらしさ全開。

 あの人、なんであーゆー動きをさせたらあんなに面白いんだろう……。

 幕間で、まっつメイト以外にも「まっつのプラスチック・ダンス!!(笑)」と爆笑されたさ……あれは突っ込むところだろう、うん。

 ブルーのスーツの似合わなさがすごいので一見わかりにくいけど、実はひそかにもう一着スーツあるのね、一花ちゃんとデュエットのときはグリーンのスーツになっている。こっちは材質も色も形もずっとマシ、ずっとイイ。

 
 『EXCITER!!』はエトワールでなくなっていることをのぞけば、微妙な差はあれど、ほぼ前回通りなんだけど。

 ただ、ひとつだけ、大きな違いがあった。

 ハバナのシーンの、ラスト。
 蘭はなちゃんの娘役トップお披露目公演なので、まとぶんと蘭はなちゃんが銀橋で寄り添ってエンドになる。

 ハバナというと、定番の「ひとりの女を取り合って男ふたりが争い、片方が凶器を出す」展開。
 ふつーはそこで男のどっちか(大抵女の恋人の方)が殺されたり、恋人をかばって女が死んだりするんだけど、『EXCITER!!』ではまさかのファヌン様降臨エンド。
 グローバルな愛を歌って、争っていた人たちがみんなでわーきゃーしあわせー!と歌い踊って終わる。

 それが、今回の『EXCITER!!』ではさらに続きがあり、人々がそれぞれ解散していく中、ファヌン様@まとぶと争いの元だった美女@蘭はな、そして何故かその他大勢に過ぎなかったまっつと一花が残る。

 で。

 まっつといちかが、愛の歌を歌う。
 ファヌン様の伝道ソングを。

 その歌声にのって、銀橋でまとぶんと蘭ちゃんが寄り添うわけだ。

 この、歌が。

 まっつが組替えする、この場所、このメンバーの間からいなくなる、そうわかった上で聴くと……クる。かなり、来る。
 まっつファンはここで涙腺決壊します、マジで。

 千秋楽とか、泣かせるつもりでこの演出したんぢゃ、フジイくん?!
 ファンの泣かせツボを熟知してるもんな?!

 ここでも、まっつ×一花で。
 そして、こんなに美しい愛の歌を歌わせてくれて。

 ありがとうありがとう。
 花組のまっつを見納めるよ。
 みんなの愛でまさかの快晴、その日の宝塚ムラは丸一日暑かった。

 こんなに汗をかいたのは、ひさしぶりだ。
 軟弱な生活をしているので、汗をかくよーな事態にならないんだ、いつもは。
 それが、入り待ちからはじまって、最後のパレードまで暑くて暑くて大変だった(笑)。

 前楽、千秋楽と当日券抽選から参加しての立見観劇なので、並びもギャラリーも観劇も、早朝から夜まで2日間つり革もない満員電車で立ちっぱなしのよーなもんなんだが、それでもなんとか乗り切った。
 人間、気力次第でなんとかなるもんだな。

 チケットを買って楽屋口に駆けつけたとき、ちょうどあずりんが入るところだった。
 スカイフェアリーズをやっている彼の美貌に一目惚れして以来、「カオが好き」「素顔が好き」と言い続けてきたわりに、彼の素顔をナマで見たことがなかったんだ。
 当日抽選に参加していると下級生の入りは見られないとあきらめていたんだが、なんとか間に合った。
 はじめて見た、あずりん。

 背中に「7」と書かれた白いパーカー姿のあずりんは、とてもキュートだった。
 うおお、スタイルいい、アタマちっこい。
 やっぱあのカオ好き、見ているだけでうれしい。

 なんで「7」なのか本気でわからなかったけれど、他の人たちを見ているうちにわかった、退団者たちが背番号付けてるんだ。ちなみに水しぇんが「1」だった。

 トップさんと同時退団なら中継があるっつっても、トップさん以外はろくに映像に映らない。あひくんですらそうだったんだから、あずりんが映るはずもないと覚悟を決めて、ナマ観劇に、劇場の中に入ることにこだわった。
 最後の男役姿、入魂のシケ一本のオールバック姿を目に焼き付けたよ。モブでも探してオペラで追ったよ。気合いの入ったキメ顔をしていたね。やさしい目で女の子を見ていたね。

 最後の、袴姿のパレードにて、あずりんはやたらめったらゆっくり歩いていた。
 パレードとはいっても、みんなわりとふつーの速度で歩くから、あずりんの速度にはちょっとびっくりする。
 そこに見えているのに、なかなか近づいてこないんだもの(笑)。おかげで、長い間眺めていられたけれど。

 ゆっくりと、ゆっくりと。
 周囲を見回し、噛みしめるように、歩いていた。

 はじめて見るナマあずりんが、最後の姿だなんて。
 これからもっともっと活躍してくれる人だと単純に思い込んでたからなあ。長くいてくれれば、ナマ姿を拝める機会もあるだろうと、のんきに構えていた。

 最初から最後まで、ずっとずっと好みで、ずっとずっといい男でいてくれた。
 雪組を見るたのしみのひとつだったんだ、ありがとう。

 
 舞台で見ると超オトコマエのそらくんは、お茶会に参加したという友人から聞く限り、かなり愉快な人で。えーとその、天然っちゅーか、川原泉の世界的愛らしい美男子というか。
 伝え聞くそらくんと、舞台のギャップ……それとまあ、スカステで見るいろいろテンパっている姿などから、彼に対しては心の落としどころがよくわかっていないんだが、それにしたって愛しいキャラだ。
 彼の卒業が残念でならない。
 『春麗の淡き光に』新公の四天王役で、その美貌に瞠目した。それ以来、ずっと愛でてきた美貌の君。

 袴姿のそらくんはもちろん目が覚めるほど美しく……そして、ボケていた。

 川原泉のマンガに出てきそうな、あの感じで……。

 いやあ、マスコミブースを完スルーして車に乗ろうとしたジェンヌ、はじめて見た。

 えー、ムラでのパレードにはマスコミ用の足場がセッティングされており、上下2段にぎっしりカメラマンが詰め込まれています。
 そのマスコミブースの真ん前に車が停まっていて、すべての卒業ジェンヌは車に乗る前に、カメラマンたちに写真を撮ってもらうのです。「目線お願いしまーす」とか、「手を振ってくださーい」とか注文つけられながら。
 新聞に載っているトップスターの退団記事、車の前で手を振っている写真は、そうやって撮られている。

 なにしろ自分が乗る車の真ん前に、工事現場みたいな足場が組まれ、でかいカメラを構えた人々が10数人いるんだよ? 嫌でも目に入るじゃん?

 だけどそらくんは、大物だった。

 おっきな目を見開いて、沿道を埋め尽くした人々に手を振りながら歩いてきて……ふつーに、車に乗ろうとした。
 自分で、ドア開いて。

 ちょっと待って、ドア開くの別の人の仕事だし、つか、目の前で君を待っているマスコミの人たちはっ?!

 ドアは通常、おとーちゃんと呼ばれる生徒監のおじさんが開けるのかな? わたしはそーゆー風習をよくわかっていないんだが、そんなイメージだ。卒業するジェンヌさんと一緒に歩いて、代表さんは運転席へ、おとーちゃんが助手席のドアを開ける。

 なのにそらくんが自分で車に乗ろうとしたから、おとーちゃんもあわてて。
 チガウから、まだだから!
 カメラマンのみなさんに挨拶して、ほら!

 そらくんは、大きな目をぱちくり。

 あああかわいい。かわいすぎるっ。

 ちゃんと謝ってました、カメラマンさんたちに。
 んで、写真撮ってもらって。

 おとーちゃんが、「向こう側の人たちにもご挨拶を」と指示する。
 するとそらくんは、言われるがままにちょこちょこ歩き出し、車の反対側や、門の外に集まった人たちの方向にも挨拶を……って、ちょっと!
 
 ふつーのジェンヌさんは、「向こう側の人たちにもご挨拶を」と言われたら、車の脇や前で、そちらの方向に向かってお辞儀をしたり手を振ったりするんだ。それですぐに車に乗り込むんだ。

 なのにそらくんは、とことこと歩き出し、歩き続け、……おとーちゃんが必死で止める。行き過ぎ、戻って、戻って!!
 そらくんは「ぴよ?」というカオで振り返ってました。

 あああかわいい。かわいすぎるっ。

 止められなかったらきっと、門の外まで行ってたぞアレは……(笑)。

 
 みなこちゃんも歩みはゆっくりだった。
 きれいになったねえええ。以前、駅前ですれ違ったときと印象がまったくチガウ……若い娘さんはまたたく間にきれいになるから、見ていてたのしいね。
 きれいで礼儀正しくて……そして彼女も「向こう側の人たちにもご挨拶を」と言われたら、行き過ぎちゃっておとーちゃんに止められていた(笑)。

 
 そして、最後が水しぇん。
 一般ギャラリーでしかない身なので、奥の方で行われる退団者と会の人たちのイベント……というか、声掛けとかの様子はわからない。

 ただ水しぇんはあまりに、ふつーに現れた。

 周囲の人たちも、わりと油断してなかったか?
 まだまだだよね、拍手とか聞こえるけど、きっとまだまだ姿は見えないよね、って雰囲気があったのに、水しぇんはめっちゃふつーに現れた。
 あわてて、周囲のカメラが上がる。

 もったいつけることなく、ナニか特別なことがあるわけでなく。

 水くんはしゃきしゃき歩いて手を振って、やること全部やって、車に乗った。

 しかも車、ふつーだし。

 車がセッティングされたときに、残念な声があがったんだ。
 トップさんの車って大抵オープンカーだから。
 人混みの後ろの人にも、門の外の人にも、その晴れ姿がよーっく見える車だったから。
 それを期待していただけに、ふつーの車が出てきて、びっくりした。

 わたしたちは歩く水くんが見えるから良いけど、車より後ろや門の外の人たちは、ナマの水くんが見えないんだ……。

「車の屋根に乗ったりしないのかな」
「実は屋根が取れる仕組みなんじゃ?」
 そんな人々の期待(いや、ありえねーって)をよそに、水くんはふつーに車に乗り込み、ふつーに行ってしまった。

 ああ、そんなところがまた、水夏希らしいのかな、と思ってみたり。

 てゆーか。

「大雨を想定していたから、オープンカーは無理だったんじゃね?」
「屋根付いてないとだめだよね、他ならぬ水さんだし」

 あああ、なんともまったく、水夏希!!(笑)
 もったいぶらず、もったいつけず、きれいな笑顔を残して行ってしまいましたよ。

 
 なんかいまいち、現実感ナイ……。
 水しぇん、ほんとに卒業しちゃうの?
 きんいろの草原がきらきら揺れて、そこをあの人が笑顔で走っていったの。

 『水夏希サヨナラショー』で、息を飲んだ。
 『RIO DE BRAVO!!』コーナーになり、舞台にはみなこちゃんを中心とした組子たち、そして彼らとノリノリでポンポンを振っていると、いつの間にか客席に水しぇんが! という趣向。

 下手扉から現れた彼は、22列目前の通路を通って、41番座席横の通路を直進して銀橋へ行く。

 客席降りしているわけだから、客電が何割か点き、劇場内は明るくなっている。

 みんなでポンポンを振っているところだから、ライトを浴びて客席全体が金色に輝いている。水しぇん登場でさらに興奮、わーっと歓声が上がり、さらにポンポンが揺れる。

 金色が揺れている。
 さらさらさらさら、わっしゃわっしゃ。

 見渡す限り。

 1階席のいちばん後ろ、立見位置にいたわたしからは、1階客席全部が見回せた。
 灯りが点いた途端、金色が浮かび上がるのを見た。

 きれいなんですけど。
 もーめちゃくちゃ、きれいなんですけど。

 泣けるんですけど。
 みんなの心がひとつで、金色の草原になった空間。

 そしてその光の草原を、水しぇんが駆け抜けていく。
 うれしそーに、大きな口をにかりと広げて。

 金色の草原を、きらきらの魔法使いが渡っていくみたいだ。

 両手を広げて、飛ぶみたいに、空気を切るみたいに、駆け抜けていく。

 仲間たちが待っている、光あふれる舞台の上に。

 前楽、千秋楽ともに、同じ位置(立ち位置まで・笑)からその光景を見た。
 揺れるポンポン、その波の中を走り抜ける水夏希。

 こんな光景、ありえない。
 客席全部がポンポン振って、ライトが点いてて、水しぇんひとりが走り抜ける。
 それを、劇場のいちばん後ろから全部眺める、なんて。
 どれひとつ取っても特別すぎて、それら全部がそろった奇跡、いつか見た夢みたいな現実感のなさ。

 なにがどう、じゃなくて、きれいで泣けた。

 ここは、美しい処だ。

 雪組公演千秋楽、トップスター水夏希の退団公演最終日、サヨナラショー。
 キモチの詰まった、美しい処だ。

 
 金色の草原は次に、闇に光る青いペンライトの海になった。
 名前と公演名と日付の入った透明な板が、中に入っているタイプ。スイッチを入れると青いライトが点き、中の文字が浮かび上がる。

 これほど、動きの揃ったペンライトをはじめて見た。

 千秋楽(昔は前楽も)でペンライトを振る経験は10回以上軽くあるけれど、動きはいつでもけっこーバラバラで。
 この列は右左、こっから一部は左右、とバラバラなのが当たり前。隣の人に合わそうと思っても、両隣の人が逆に振っていてどちらに合わせて良いか混乱したり。
 前の人に合わせて振るようにすれば全員揃えることは可能なはずだが、まず揃わない。周囲関係なく勝手に振る人は必ずいるし、揃えたいと思っていても一旦リズムに乗り、その周囲がきれいに同じ動きになっていたら、そこだけが逆だとしても途中から修正できない。
 前もって練習しているわけでも「この列の人の動きに合わせて」と指令があるわけでなし。一期一会の4ケタもの他人の集まりで、動きがシンクロするはずがない。

 なのに、さすが雪組。

 ポンポンの振付で、「みんなで同じ動きをする」ことに慣れている。
 最初はふつーにバラバラ、列単位、群れ単位で勝手に揺れていたペンライトが、どんどん「前へならえ」で揃っていく。
 自分だけが勝手に振るのではなく、周囲を見回し、ナニが起こっているかを判断し、決断する。
 わたしの前の人はオペラグラスをのぞくのに必死で、ペンライトの向きなんか気にしていない。そのためしばらくひとりで逆に振っていたけれど、いつの間にかちゃんと周囲に合わせて振るようになった。
 そうやって、ひとりひとりが「参加」していく。
 自覚を持って。

 水しぇんを送る、この美しい場所にいること。

 すごい、きれい。
 1階席の千何百本ものペンライトが、一斉に同じ動きをしている。
 1000人以上の心がひとつになって、調和している。

 水夏希の歌声に。

 2階席はわかんないけれど、きっと同じように美しい波を作っているんだろうね。
 水しぇんに見せるために。

 いろんな思いを込めて。

 
 劇場のいちばん後ろから見る光景は、舞台の上だけでなく、客席まで全部が全部、美しくて愛しいものだった。

 金色の草原も、青い波も、拍手と手拍子に揺れる人たちも。
 なにもかも。
 トップ娘役の資質ってなんなんだろう。
 いろんな要因があるとは思うけれど。
 いつもヒロインを演じ、いつも同じ男役の相手役を務める。それだけは決まっている。

 決まっているからこそ。
 どれだけ「感情移入できる女の子」かどうか、ってのが、必要な資質のひとつではないだろうか。

 水くんが退団してしまう、っつーんで、『ロジェ』ではわたし、アホみたく水くんばっか見てた。オペラグラスピン撮り、ロジェって役は好きじゃないし共感もないんだけど、ただただその美しさ、格好良さに見とれていた。

 それが前楽になってはじめて、レア@みなこちゃんを見た。
 そうだ、みなこも最後なんだ、ちゃんと見ておかなきゃ、と思って。
 前楽が最後だと思うからこそ、いろんなところを見ておかなきゃと思って。

 それではじめて、レアを見て。

 何故、彼女がヒロインなのかがわかった。

 物語的にレアって別にいらなくね? と思っていた。主人公が誰も愛していない(バシュレとシュミット除く)状態なので、取るに足らない扱いをされているレアは、いなくても問題ない。
 ただみなこちゃんに似合う役や仕事を書いたら、こーゆー立場の女性になったんだな、いなくてもシュミット探し出来たけど。
 今までの正塚芝居なら、杏奈ちゃんがやっていた女上司あたりがヒロインじゃね? 仕事のことで対等にぶつかり合い、怒鳴り合いながらお互いのことを見つめ合っていく。んで、協力して事件を捜査するのさ。……正塚のヒロイン衣装着てたし(笑)。

 ロジェが水くんをイメージ的に格好良く描いたものであるように、レアもみなこちゃんをイメージ的に鉄の女に描いただけのものかなと。正塚がどう思っていようと関係なく、そんな風にわたしは受け取っていた。

 でも、最後の最後になって。
 レアに注目して見てみると。

 レアが、ヒロインだとわかる。

 物語的にはいなくてもいい役。本筋にも絡まないし、主人公にも特別に愛されていないし。
 されど、そんなことは関係ないんだ。

 レアが、ロジェに恋しているから。

 レアを見ていると、彼女の物語が浮かび上がってくる。彼女がロジェと出会い、恋に落ちる様が見えるんだ。
 ロジェだけ見てるとわかんないけど。なにしろロジェさん、レアに(勝手な思い込み以外)興味ないから。

 ロジェはロジェでなんか勝手にやってる。それはいい。レアはレアで、彼女個人で、彼女ひとりで、ひそかに恋をしているんだ。
 彼女は、彼女自身の物語の主人公なんだ。

 レアを見ているのが、快感だった。

 恋に落ちる、快感。

 日常ではもうさっぱりなくなった(笑)、情熱的なトキメキがずどんとくる。レアになり、ロジェに恋をする。
 彼女の心の動きがリアルで、いちいち痛い。切ない。

 復讐しか興味なくて、自分がそうだからと他人もそうだと決めつけて、狭い狭い自分だけの世界で完結してイキがっている、アホな男。哀れで滑稽な男。
 見れば見るほどロジェさんてばだめんずなんだが、そんなロジェに恋するレアの、リアルさときたら。

 心象風景ダンサーまで動員してカッコつけて歌ってるけど、ゆってる内容ダメダメだよね?なロジェをただ見つめるレア。
 彼女の恋が見える。わかる。
 彼女を通して視る、ロジェという男は、たしかにアホで哀れで滑稽なんだけど、なんだけど、なんかもう、めちゃくちゃ愛しい。

 レアになって、ロジェに恋をする。

 ロジェ単体で見ているときより、はるかに切なく、愛しい。レアを通して見る方が。
 ロジェを好きで、なにかしたくてできることをするしかなくて、自爆しながら自嘲しながら、「殴るぞ!」とかウザがられながら、それでも懸命に食いついていく様が、痛々しくリアル。胸に迫る。
 こんな恋しかできない、その不器用さに泣けてくる。

 タカラヅカのトップ娘役の資質ってなんだろう。
 キラキラしてて夢が見られる、異次元存在。二次元のお姫様みたいな、現実離れした存在。
 それもたしかにそうなんだけど。

 感情移入して、リアルに恋が出来るってのも、重要な資質のひとつじゃないだろうか。

 いやその、リアル過ぎてタカラヅカじゃない、部分はあるかもしれないけれど。日常にありそうな痛さや切なさなんかいらない、おとぎ話のような恋をしたいのよ、てのはあるかもしれないが。
 わたしはリアルな恋ってのも、すでにファンタジーとしてアリだと思っているので、膝を打ちましたよ。
 何故レアがヒロインかわかった、って。

 彼女になって恋すればいいんだ、ロジェに。
 ただ素直に。

 現実でだって、恋した相手の本筋に絡むことなんてそうそうないじゃん。勝手に出会って勝手に恋して、相手の意識が動いてからようやく、本筋に絡めるかなってなもんで、最初から絡んでいたらソレただの吊り橋恋愛、ハリウッド映画になっちゃうよ。
 
 『ロシアン・ブルー』のときも千秋楽になってはじめて、そんなことに気づいたと書いていたような……あああ、わたしって鈍すぎる。ついつい、水くんばっか見ちゃってるから。

 ロジェがどんだけ残念な人でも、それでもなお、愛しくてならない。
 好きで好きでたまらない。
 見ているだけで、泣けてくる。
 それは水くんが卒業しちゃうとか会えなくなるとか、そんな外側のことじゃなくて。

 ロジェが、恋しくて泣ける。

 水くんではなく、ロジェが。
 それが、ヒロインの意味。ヒロインの資質。

 うわあああん、ロジェが好きだああ。愛しい。切ない。苦しい。
 そして、そんな痛みごと、うれしくて仕方がない。

 恋を、トキメキを、ありがとう。
 それはたしかに、わたしがタカラヅカに求めるモノだよ。
 まさかの晴天。

 いやその、信じていたから、水夏希の最強雨男伝説を。4月後半に雪を降らせる、その力を。

「雨、降らないねー」
「あたしいちおー、傘持って来たんだよ、いつどひゃーって降るかもしんないから」
 前楽の日、当日抽選を終えたわたしとnanaタンは大橋を歩きながら話していた。
 水夏希の記念日が雨・雪・台風以外のナニかであるはずがない。わたしはその昔コミケの快晴伝説を信じていたよーに、水先輩を信じていた。

 水夏希は、地球をも動かせるのだと(笑)。

 どんだけ晴れていても、天気予報がどうでも、突然ゲリラ豪雨がやってくるはずだ、それこそ水くんの千秋楽だっ。

「きっと明日は雨だよ」
「だよねー」

 晴天、とはこのような日を言う、という見本のような青空、猛暑の最中そう話した。

「きっと上演中にざーっと一雨来て、雨上がりで気温も下がったなか、パレードになるんだよ」

 そうあってほしい。
 雨のパレードは寂しい……し、場所取りしている人たちが大変だ。かといって、この猛暑炎天下での場所取りも大変……水しぇんが厩戸皇子みたいに雨雲をつれて来て、みんなさわやかにラストディを迎えられるといい。

 そう願っていたんだが。

 7月26日、『ロジェ』『ロック・オン!』千秋楽。

 まさかの、晴天。
 広がる青空、ゆらゆら空気が揺れるほどの、猛暑。
 水しぇんのムラ楽なのにー?

 
 その謎は解けた。
 水夏希最強雨男伝説を打ち破るほどのソーラーパワーが、宝塚大劇場にて、局地的に発せられていたんだ。

 劇場の楽屋口に、わらわら現れる、白いフードに白いケープ姿の人々。巻き付けているモノもそれぞれ、スカート風だったり布風だったり、手作り感あふれまくる姿。や、中でもヲヅキ氏のでかい(ちょっと黄色がかった)フード姿は異様だった(笑)。
 飾り立てられた台車も出てくる。これまた高校の文化祭的装飾の、白い花だのリボンだの、手作り感満載。
 この晴天に、みなこちゃんは雨傘まで持っている。傘には水しぇんの写真がべたべた貼ってある、これまたチープな手作り感あふれるシロモノ。

 白装束集団たちに、「てるてる坊主」の歌声がかぶる。

 ……て、てるてる坊主なのか、アレ?!

 拡声器にラジカセ持参、ギャラリーへの挨拶も抜かりナイ。
 花の道にいるわたしたちにも、ちゃんと音楽も声も聞こえるようにしてくれてるの、GJ!

 数年前、同じようにこの位置から(わたしはいつも同じ位置・笑)、見送り部隊を指揮する水先輩を見ていたっけ、となつかしく思い出す。コム姫を迎えるために、水くんがそりゃーオトコマエに仕切っていましたよ、尻ポケットから携帯を取り出して、なにやら話をして。
 
 あのときの水くんの立場が、キムくんだった。
 水先輩は「仕事の出来る、大人の男!」って感じに生真面目に、緊張感バリバリに仕切っていたけれど、キムくんはまたチガウ。
 もちろん真面目に緊張感を持って臨んでいるんだろうけど、なにしろ見た目が若い。元気な男の子が仲間たちとなにやら準備している感じ。

 車から降りた水しぇんが、キムたちを見て爆笑した。
 キムが黒いコートを羽織らせ、みなこちゃんが大真面目に傘を差し掛けるし……だからこの、晴天にっ!

 ああそうか、大雨の中の入り、を想定して演出してあるんだっ。

 なにしろ最強雨男伝説の持ち主だから。

「ちかさんの入りのイベント、どうする?」「きっと当日は大雨だよねえ」「んじゃ、雨でも大丈夫なイベントにしないと」……ってところからスタートしたんだ、コレ。

 ミズはモテモテ、ロックオンミズ、数々の替え歌と共に、てるてる坊主たちが揺れる。
 お花で飾られた台車に乗って凱旋した水しぇんは、拡声器を渡され、開口一番。

「絶対雨降ると思ってたでしょ!」

 オゥイエーッ!! てるてる坊主たちも、観客も歓声。

「こんだけの生テルテル坊主のおかげで、晴れだっ!」

 そうか。
 そうなのか。

 水夏希最強雨男伝説を打ち破ったのは、組子たちの愛なのか。

 雨を呼び、嵐を呼ぶ男、水夏希。
 地球をも動かす最終兵器、アクアの地球、みんなの水夏希の雨っパワーは健在、ナニモノにも揺るがないラスボスぷり。
 しかし、ついに伝説は破られるときが来た。

 それが、愛によってだ。

 物語の結末は、いつだって、愛。
 退団者に美しく爽快に最後の日を迎えて欲しいという、雪組メンバーたちの愛によって、雨雲が蹴散らされたんだ。

 野獣が愛によって王子様に戻るように、雨の伝説の奥に囚われていた黄泉の帝王ミズナツキは、愛によって封印を解かれ、わたしたちの前に現れたんだ。

 青い空と、白い雲を背に。
 輝く太陽を浴びて。

 
 …………愛の力、強すぎです、みんな。
 暑くて死にそうな1日だった(笑)。
「この人、どうしてトップスターじゃないんだろう?」

 と、思ったのは、2002年のことだった。
 舞台の水夏希を見て、今この瞬間トップスターでもおかしくない、と思った。

 ちなみに、当時のわたしはまだ水ファンとは言えず、「水くんがかっこよく見えるなんて、どうして??」と友だちと言い合ったりしていた(笑)。
 ファンじゃなくても、ジェンヌの「熟れ方」はわかる。
 舞台上の水夏希はすでに「タカラヅカ・スター」として、大きく花開いていた。

 「どうしてトップじゃないの?」と思えるような人が、2番手であるゼイタク。
 当時の宙組はたか花全盛期であり、絶大な人気を誇っていたが、そこで負けず劣らず、水かなも輝いていた。力のあるスターがメインをがっちり固め、……まあその、他は「動く背景」と呼ばれた極端なシフトが有名な組だったんだけどさ……安心して「タカラヅカ」というファンタジーに酔える組だった。
 翌2003年のバウ公演『里見八犬伝』の超チケ難ぶりが表すように、トウコ、あさこと並んでヅカを牽引する人気スターだったんだよな。

 2002年のときすでに「どうして」と思うほどだった人なのに、トップになったのは2007年。
 トウコにしろきりやんにしろ、熟した学年から何年も経ってからしかトップになれない、現在の歌劇団について危惧はあるし、だからといって代替案があるわけでもないから黙するとして。

 2002年にトップになっていたなら、2010年の今、水夏希という男役は存在していない、ということだ。

 今、目に映っている、完成された男役には会えなかったんだ。

 雪組公演『ロジェ』『ロック・オン!』、前楽。
 チケットなんてもちろんありません、当日券の抽選に早朝から並びましたとも。
 なんとか立見チケットをゲットして劇場へ。
 翌日の千秋楽チケットなんてあるはずもなく、当日抽選には参加するつもりだけど、当たるとも思えず、東宝チケットも皆無である以上、「これが最後」「これが見納め」と心して、「水夏希」を見る。

 通り過ぎてきた時間に、いいも悪いもナイ。
 今、美しい水夏希がいる。
 それがすべて。

 
 一昨日の新生雪組関連の人事発表で動揺しているため、実のところわたしはすでに許容量オーバーを起こしていて、「ラスト3日は水しぇん三昧だー」と(チケットもないのに)予定を空けていたにもかかわらず、発表の翌日は一歩も家から出ずにダラダラしていた。
 このままだと、しばらくは劇場へ行く気力がわかない気がした。

 でも、時間は待ってくれない。
 水くんは卒業してしまう。
 気力・体力がなくても、とにかく行こう。
 自宅にこもってスカステだのネットだのを眺めていても意味がない。

 「タカラヅカ」は、ナマモノだ。
 実際に同じ空間へ行き、彼らの姿を見、同じ空気を吸って共感してはじめて、本当の出会いがあるんだ。

 その時間、その場所へ行く、というのは、簡単なことではないけれど。
 自分の都合の良いときにスイッチを入れれば眺められる録画映像じゃない。販売ソフトじゃない。
 みんななにかしら犠牲にして、その時間、その場所へ行く。
 人間同士で、作り上げるモノだから。

 行けば、会えば、吹っ切れる。
 わたしはそれを知っている。
 水くんはそれだけ魅力的で、タカラジェンヌたちもみな魅力的だからだ。あの舞台は、光り輝いているからだ。
 あの汗と、あの笑顔。それがなにより確かな真実。まぎれもない現実。

 そうして。
 幸運にもわたしは当たりを引き当て、劇場に入れた。
 まばゆい人たち、まばゆい世界を見ることが出来た。

 水しぇんの満面の笑顔。幾筋ものライトが、ひとりの人のもとに集束していく。それが、この世で最も正しいこと、当たり前のことであるように。
 水夏希だけを、照らす。

 いつも流暢に話すナガさんの、涙。詰まる声と、それを包む拍手と。
 緞帳に「思い出の舞台映像」を流すのはもう定番になったんだね。彩音ちゃんのときと違い、映像とナガさんの語りは別々のモノだったので、「語りと映像がずれる」ことに気を取られないで済む(笑)。

 ナマで見られるとは思ってなかった、水夏希サヨナラショー。
 ゆみこもハマコもいない、水くんのラスト・プログラム。

 こちらとしては、かなり構えて観劇したわけなんですよ。
 さあ、サヨナラショーだっ、サヨナラショーなんだぞっ、と。
 
 えーと。

 わたしだけかもしんないけど。

 なんか、「サヨナラショー」っぽくなかった。

 ふつーに、水夏希ショーだったような?
 さあ泣けっ!! というよりは、ポンポン振って歓声上げてうきゃ~~っ!!とやって、どーんっと終わったっていうか。

 なんか、ふつーに「水夏希コンサート」とか、こんな感じじゃない、今なにかやったとしたら。1幕はストーリー仕立ての新作ショー、2幕は水夏希の歴史を振り返るヒットメドレー的ショー、てな構成で、梅芸と人見(笑)あたりでやっていてもおかしくない。
 や、サヨナラショーってそもそも、「歴史を振り返る」構成が当たり前なんだけど、なんだろ、それにしてもあっさりさっぱり風味というか?(記憶に強烈なトウコちゃんが泣かせ入り過ぎの演出だったせいか?・笑)

 いや、泣きましたよ。泣きながら観てましたが(笑)、でもなんか、こちらが勝手に構えていた感じと違うというか。

 あ、終わっちゃった。
 と、思って。
 なんか、サヨナラショーっぽくない……落としどころがビミョーっていうか、ええっと。

 そして、どんどん、にまにましてくる。

 そうか、これが水くんのサヨナラショーか。
 この、らしくない、のが、水くんのサヨナラショーなんだ。

 カーテンコールで水くん自身が言う、「みんなも泣きすぎて観てない、なんてことがないように」と。「私も含めちゃんと千秋楽を終える」のだと。

 なんか生真面目で、悲劇になりすぎない……さよならは寂しいけれど絶望ではない、どこか愛嬌のある、清涼感のある舞台。
 トート様ではじまり、これ以上ない男役としての美しさを見せてくれてなお、まだ緩さがあるというか。これ以上ない、はずなのに、まだ上のナニか、を信じさせてくれるというか。

 まだ、明日……これからも続いていく、未来があるんだと、思わせてくれる。
 たしかに、これは別れなんだけど。悲しいんだけど。でも、人生は続いていくものね。真面目にさわやかに、堅実に、前向きに。できることを力一杯やる。信じたい人を、信じる。見つめる。

 泣きながら、にまにました。
 うん、明日もちゃんと見届けるよ、泣きすぎないように……って、チケット持ってないけどなっ(笑)。

 2002年に、早々にトップになっちゃわなくて、よかった。あのころはわたし、こんなに好きじゃなかったもの。
 こんなに長くいてくれて、こんなにいろんな姿を見せてくれて、こんなに好きにさせてくれて、ありがとう。
 ちょっと感慨深いこと。
2010/07/23

組替えについて

この度、下記の通り、組替えが決定致しましたのでお知らせ致します。

【花組】
未涼 亜希・・・2010年10月18日付で雪組へ

(今後の出演予定)
・~2010年10月17日 花組東京宝塚劇場公演『麗しのサブリナ』『EXCITER!!』
・2011年1月1日~  雪組宝塚大劇場公演『ロミオとジュリエット』

 昨日も転記した公式の「お知らせ」。

 まっつ単体のことが載っている新着情報なんて!!

 たとえばディナーショー(イゾラベッラ・コンサート含む)に主演が決まれば、新着情報に単体で載ります。
 たとえばケガや病気で休演すれば、新着情報に単体で載ります。

 でも。

 モバタカから、メールは来ない。

 モバタカのメールっていわば新聞でいう「号外」、特別なお知らせ。だから送信されるのは人事か演目についてが基本。

 集合日ごとの退団者メールでもなく、まっつひとりの去就でモバタカ・メールになる、ってのがすごいなと。

 や、組替えは人事だからメール対象で、組替えするなら誰だって載るんだけど、大抵組替えって複数での発表で、ひとりってのはめずらしい。
 そのめずらしい状況になっている、という事実。

 昨日欄のタイトルに「@未涼亜希組替え発表」って書きながら、こんなことを書く日が来るとは思ってなかった、としみじみした。
 まっつの組替えもだが、この組替えはまっつひとりのモノで、わたしの思い入れ以前にタイトルにするならこうなる、ということについて。

 まっつひとりでわざわざメールだよー。
 まっつひとりの「今後の予定」が記されてるよー。
 すげー。
 なんか、スターさんみたい。

 ……ファンとは滑稽かつ哀れなモノで、こんなことにすら反応するのですよ(笑)。
 モバタカ・メール、大事にしようっと。
 確実に、「未涼亜希」というジェンヌがいた証なのだ。(前からいますってば)

 
 今後のことに不安は尽きないけれど、うじうじしててもはじまらない。
 せっかくの同期のいる組への異動。
 学年からいって、そうそう無碍な扱いは受けないだろう。

 せっかくだから、キム×まっつ(並びに深い意味ナシ、左右逆転可)で萌えようじゃないか!

 まっつは2番手ではなく3番目か別格だろーから、トップスター様とどうこうなんて役が回って来るかどうかは棚上げして、今は勝手にキムとまっつで観たいモノを考える! なんて前向き!

★タクティクスオウガ
 デニム@キム、ヴァイス@まっつ。
 リメイク決定で世間がにぎわっている今だからこそ(笑)。
 今回の『ロック・オン!』のブルースVer.とラテンVer.みたいに、抜き打ちの日替わりでロウルートとカオスルートをやればいいよ。
 「今日はカオスルート、まっつの暗黒ぶりがハンパないわ~~!」とか、「今日はロウルート、キムくんの病みっぶりに胸きゅん!」とか楽しそうじゃないですか。

★踊る大捜査線
 青島@キム、室井@まっつ。
 最新映画上映で世間がにぎわっている今だからこそ(笑)。
 テレビ版がいいです、「アンタは上にいろ!」とまっつに叫ぶキム……シュールな(笑)。まっつのツンデレっぷりが見物ですな。最後のシンデレラ階段での別れもヨロシク。

★我間乱
 我間@キム、直善さん@まっつ。
 キムはハマる。すっげー見たい。キムは『ONE-PIECE』のルフィもハマると思うの。ほんとに「主役」体質だから。
 本能でつっぱしるキムと、後ろでおろおろしているまっつ。このふたりで和モノ見たいよなー。

★境界のRINNE
 りんね@キム、翼@まっつ。
 キムくんは少年マンガのほとんどの主役は似合うと思うが、あえてりんねで(笑)。まっつはほら、ドロドロの恋愛モノをやりたいって言ってたし、これってドロドロだよね?(笑)←いい加減この上ない意見。

 
 ヅカ作品の再演では、番手という枷があって思考がストップするので、あえて別畑のモノを。
 深い意味はなく、思いつきで羅列。実は『A-BOUT!』も考えたんだけど、自重した(笑)。ハナノアナ@まっつだなんて、口が裂けても言えない……!


 と、あえてお気楽なことを書いてますが。 
 とりあえずは、今の水くんのサヨナラ公演、そして次の花組公演に全力だ。
 明日、当たりますように。
 まっつって、どこまでハマコを踏襲するんだろう……と、遠い目をしました。
2010/07/23

組替えについて

この度、下記の通り、組替えが決定致しましたのでお知らせ致します。

【花組】
未涼 亜希・・・2010年10月18日付で雪組へ

(今後の出演予定)
・~2010年10月17日 花組東京宝塚劇場公演『麗しのサブリナ』『EXCITER!!』
・2011年1月1日~  雪組宝塚大劇場公演『ロミオとジュリエット』

 1年ちょい前に、わたしは「○組の未○○希さん。←○を適当な漢字で埋めよ。」という記事を書きました。http://koalatta.blog48.fc2.com/blog-entry-1790.html
 どんだけ、まっつとハマコに共通点があるかを。

 まさか、これ以上ハマコと同じ道を歩むなんて、これ以上があるなんて、夢にも思ってなかったです。

 同期トップを支える別格スターとして、雪組ですか。

 ハマコ退団の痛手をぐじぐじ引きずっているわたしは、後ろアタマをすこーんと殴り飛ばされました。
 えー、あのー、わたしがどんだけハマコ好きだったと思ってんですか? んで、雪組を特別に思っているか、わかってんですか?

 そして今、どんだけまっつを好きだと……!!

 まっつがハマコで雪でって、なんじゃそりゃーーっ?!!

 ……とまあ、盛大に取り乱し、現実逃避にえんえんモンスター狩ってました。『アイルー村』ももうじき発売だしね。ナンバリングタイトルは年内発売予定だしね、『2G』極めておかないとね。つーことで、えんえんテオと闘う。古龍の大宝玉が出ないのよ~~。弟に「クシャルを先に倒した方が、テオ対策防具を手に入れられるぞ」って言われて、クシャルに闘いを挑み、瞬殺されてPSPを放り出す。G級クシャル強すぎるんじゃ~~っ、ひとりで倒せるかこんなもん~~!!
 協力プレイで倒すしかないなー、ぶつぶつ。

 協力プレイで盛り上がる気力がなかったんで、あえてひとりでゲームしてましたのよ。自分のウチにこもるために。

 
 わたしがゲームに逃げ込んでいる間に、まっつメイトからメールが入り、「沖縄に行く必要がなくなった」ことを知る。

 下級生バウに出演するのでない限り、まっつは全ツだったわけで、まっつメイト的には「千秋楽の沖縄に行っちゃう?」と予定をうっすら考えている段階なわけで。
 そーだなー、沖縄行っちゃうかなー、とか漠然と考えていた「今後の予定」が白紙になったことに、はじめて思い至った。

 で、ゲーム機を置いて、わたわたと来年の公演スケジュールをプリントアウトした用紙を引っ張り出す。ええ、わたしの部屋にもついにプリンタ様が登場、印刷できるよーになったので、そんなもんもわざわざ印刷してありますのよ。

 来年のスケジュールが発表になったときは、とーぜん花組欄が、自分にもっとも関わりのある部分だった。何月にどこで公演があり、そのとき自分がどうしているか。
 そうやって眺めた過去の自分が、すべて無意味になった。

 組替えって、こういうことなんだ。

 未来の自分まで、変わってしまう。
 「花組」の欄はもう関係ない、「雪組」の欄を見なきゃいけないんだ。来年は青年館付きバウと全国ツアー、そして梅芸がある。んで年末にはDCもあるんだ。
 まっつはどこに、ナニで出るの? 全ツだとしたら、今までのパターンからして、『ロック・オン!』(キムラさんバージョン)に出演しちゃったりするの?!

 ……クラクラしました。
 あまりにも、途方がなさ過ぎて。

 また『EXCITER!!』? 『ラブ・シンフォニー』飽きたー。……とか言ってたのに。
 まーーーーったく未知の作品に出ることになるんだ。

 梅芸とDCはその期間にぽんっと単独であるので、その裏にナニか公演が後出しされる余地もあるし、「花組」しか考えていなかったときと、「予定」に対する目線がまったくチガウ……。

 そしてさらに、ネットで組ごとの学年順一覧表サイトを眺める。
 花組ではまだ上級生が何人もいて、ポジション的にも中堅としての落ち着きだの美味しさがあったけど、雪組だと……何番目になるの、ナガさんの下は84期ですがな! 超上級生?!

 地盤が揺らぐ、どころじゃなく、崩れるんだ、組替えって。
 呆然。

 また、現実逃避してPSPを握る。よっしゃー、クシャルとの闘い方、わかってきたわ! このままがんばれば、そのうち倒せるかも。
 ちくちくちくちく、地道な努力で腕を磨く。10回倒れても、11回目にクリアすればそれでよし、100回倒れても101回目にクリアすればそれでいいのよ。わたしは超絶へたっぴだけど、そうやって乗り越えてきたのよ。

 そう。

 組替えするってことは、しばらくは辞めないってことで、来年の公演予定表はかなり現実味のあるモノで。
 少なくとも組替え最初の公演『ロミオとジュリエット』では退団はありえなくて、集合日をこわがらずにすむわけで。

 なにより、『ロミオとジュリエット』は素晴らしい作品で。
 それに出られるってことは、まっつにとってもやり甲斐のあることだろうし、まっつファンにとってもありがたいことで。
 まっつが別格スターなら、すずみさんポジションよね? つーとベンヴォーリオよね? わわわ、そんなのうれしすぎる、あの役好き~~!(いや、チガウかもだが、ここはあえて自分を盛り上げる)

 前向きに、希望をつなぐ。

 この記事を書くために、以前書いた「「○組の未○○希さん。」記事を引っ張り出すのに「花組 未涼亜希」というカテゴリ分けを見て、「花組 宝塚巴里祭2009」というカテゴリ分けを見て、どうしよう……と思う。
 もう「花組」じゃなくなっちゃう。
 「花組」じゃなくなるまっつなんか、夢にも思ってなかったのに。安心以前、世界の常識太陽が東から昇るのと同じ気持ちで「花組」だったのに。

 さみしくて混乱して、またゲームに逃げそうになるがとりあえず、へこたれずに、今は「未来」を考える。

 『麗しのサブリナ』『EXCITER!!』は、がんばって観る。や、もともとフタ桁観劇前提だけど、それでもさらに気合い入れて観る。東宝楽は絶対行く。友会当たってますように!
 「花組」のまっつを観るの。

 んでもって、来年は元旦からタカラヅカだ、ムラ入りだー! キムくんのお披露目に、そしてまっつの雪組デビューに、精一杯拍手するぞ。

 しかし、結局は雪組なのか、雪組に戻ってくる運命なのか。わたしのヅカヲタ人生は雪担からスタートしたのですよ。だから雪組はずっと特別な組。

 ……雪組トップ娘役不在発表、研1さんのWヒロインに物申したいこと、てゆーか絶望感は、山ほどありますが、そのためにまっつやキムくんを好きなキモチ、応援するキモチは揺るぎません。つか、揺らいでなるものか、負けるもんか。
 現実逃避したりめそめそしたりしつつも、前を見て走ります。
 『ロミオとジュリエット』にハマり過ぎて、雪組の感想を書く余地がなくなってしまっている、という。
 なんで日程丸かぶりなんだ。

 とゆーわけで、実は『ロック・オン!』の感想を、まだ一度も書いていないという事実。
 初日にはどわーーっと書きたいキモチもあったんだが、時を逸すると、気合いも失うね……。

 今さら感漂うが、とりあえず自分的メモ。簡単に。

 オープニングが好き。

 タカラヅカでロック、ってのは、いろいろいろいろ間違っている気がしないでもないが、それでもこの独特のノリを「ロック」と呼ぶ、それをまるっと肯定する。
 ズンドコズンドコ、エアマラソンでもしているよーな振りもツボだ。

 そして、きゃーきゃーヒューヒュー叫びまくる客席。

 雪組は長い間、「いちばん拍手の少ない組」だった。質実剛健、ファンも客席でかしこまって観劇、というか。
 水しぇんトップお披露目の『エリザベート』で、楽の日のトート様渾身のアドリブに客席が無反応だったのは、記憶に新しい。水くん自身がカテコ時に「反応がなくて寂しかった」系のコメントを残している。

 そこからスタートして、「客席参加型」のスタイルを作り上げたんだね。

 でもってわたしは、圭子ねーさまの太股が好きだ(笑)。
 圭子ねーさまが、若い娘たちと同じよーなハードな衣装で、網タイツの太股をちらちらさせて、ギンギンにロックされているのが、ものすごく好きだ。
 オープニングも彼女に釘付け。
 その後のカーテン前で歌う「次の言葉を英訳してみようソング」みたいなふわふわしたものより、ドスの効いた歌声が好き。

 ピアノの場面は、ストーリーがよくわからない(笑)。何回観ても。んで、そのたび「ま、いっか、わかんなくても」と思う。ピアノの角度が変わるのは、なんとなく「おおっ」と思う(笑)。
 みみちゃんの脚線美、かおりちゃんのめずらしい迫力系の歌、次々現れるダンサーたち。

 オペラ座の黒男たちがかっけー。そらくんがすげーかっけー。
 こーゆー「お高い」感じのみなこちゃんはイイ。水みな堪能。

 んで、実はある意味いちばんテンションが上がった場面かもしれない、リサリサと杏奈ちゃんのマリリン・モンロー。
 うわわわ、好き、ここ好き! つか、リサちゃんと杏奈ちゃんの正しい使い方!!
 ここはもお、リサちゃんロックオンですよ、彼女のウインク目当てにガン見ですよ。
 男がふたり出ているらしいけれど、結局一度も彼らを見られなかった……リサちゃんが可愛すぎる。

 銀橋センターのちぎくんより、本舞台にせり上がって朗々と歌うコマにびっくり。
 スーツ男たちみんなかっけー。

 んで、圭子女史の歌う「ゴールドフィンガー」がかっこよすぎる。うっかりすると、目を閉じて聴き入ってしまい、あせる。水みな見るの、水みな!!
 
 みなこちゃんのドレスのスリット。太股のベルト!! うきゃー、セクシー。いやあ、素晴らしい美脚ですたい! 眼福眼福。

 うってかわって明るくジャズ、スーツの色にけっこうくらくら。
 あずりんをぼーっと眺めていることが多い。退団者だけのパートがあるのはここだっけ?
 水先輩の「ワンモアタイム」は、彼の滑舌の問題かわたしの耳の問題か、その前になにを言ってるのか聞き取れないことも何度かあった(笑)。

 初日からしばらくは、ブルースVerばかりだった、わたしの観劇日。
 ふつーにかっこいいし、違和感なく眺める。

 大分あとになって、ラテンVer捕獲。そうか、メンバーが違うんだ。
 でも、ラテンの方が好きかもしれない。銀橋を渡るキムとみなこがイイの。キムがすっごい野獣なカオしてる(笑)。

 でもってその次、まさかの耽美場面。
 水しぇんでロン毛耽美、しかも受受しい美青年ですか!と、初日はびびった(笑)。演出家、フジイくんぢゃないよね? 水しぇんとらんとむで、ナルシスホモ耽美やったフジイくんぢゃないよね?!
 あーそーいや三木せんせも耽美OKな人だったねー。その昔、わたしと友人は「三木せんせ? ああ、ゆりちゃんとマミちゃんを男同士でキスさせた人」という認識だったもんなあ。

 しかしこの場面での驚きは、パツキンロン毛水先輩ではない。
 まず、黒ドレスの娘役たちのくねくねした踊りとコーラスにわくわくし、ダーク全開の圭子ねーさまの歌声に酔う。
 そーしてせり上がってくる白いドレスの可憐な美少女……って、きゃびぃ?!
 みなこだと思った。そーあるべきだと思った。なのに何故、きゃび子。え、え、きゃびぃ退団だっけ??とアセる。
 そして、受受しい水しぇんが美女たちに弄ばれている最中、わたしはその後ろの圭子ねーさまときゃびぃに釘付けだ。
 ドS女王様な圭子おねーさまが、可憐なきゃび子をなぶる。いたぶる。
 はかなくもエロい表情のきゃび子を、黒いルージュの圭子ねーさまが後ろから抱きしめる……!! えええ、ナニその倒錯物語!! エロすぎるんですけどちょっと?!!

 そーいやきゃびぃってその昔、鬼畜絶対君主@ヒロさんに後ろから抱きしめられて、あんなことやそんなことをされていたわね……百戦錬磨の専科さんにいたぶらせたいキャラなのか、きゃび子……。

 で、圭子ねーさまときゃびぃを見ていたら、水しぇんがいつターバン取ったのかわからないという……(笑)。
 気が付いたら水しぇん、金髪むき出しになってた。たしか愉快なターバン巻いてたよねえ?

 何回も観て、水しぇんがターバン取られるとこまで捕獲しましたよ。いやあ、圭子ねーさまおそるべし!(アンタが圭子タマを好き過ぎるのよ!)

 あさこちゃんの退団公演の印象が強いもので、いろいろ比べちゃうわけなんだが、あさこちゃんが身にまとうモノを捨てて裸足で踊り狂っていた場面に相当するのが、水しぇんはこのデコラティヴに金髪ロン毛で踊る場面なのか……あさこは地毛で、水しぇんはファンシー……三木せんせ……?

 キムの渾身の歌声を聴きつつ、男たちを、水くんを眺める。

 んで、極楽鳥の迫力は謎。『ネオ・ヴォヤージュ』だっけかの、「ハッ!」「フゥ!」な鳥さんたちを思い出す……アレよりはまだ目を泳がせずに済むか。
 ここでもあずりんロックオン、他はよくわからん。

 あざやかなドレス娘たちの場面、登場する圭子ねーさまが、まるでトップ娘役のよう。って、ここだけでなく、それまでもさんざんそんな感じだったが。
 カラードレスの女の子たちの間に、波が引くように白いドレスのみなこちゃんが現れるのはイイ。
 しかし。

 しかし、コレがデュエットダンスの代わりだなんて、納得できない。

 初見では、幕が下りたあとに「トップコンビ退団なのに、デュエダンがなかった?!」と愕然とした。
 やっぱ大階段の前で、エトワール登場の前に、がっつり踊るのがデュエットダンスでしょう。

 大階段黒燕尾ダンスはうれしい。
 が、初日は、曲にびびった。
 何故この音?!(白目)
 音楽、というより、音。びーんびーんゆってます、こんな音で何故黒燕尾……!

 新しい……のか、な。
 初日観劇後、いつもの店で合流したnanaたんに、「ふつーでいいのに、何故にあそこであの曲……」と嘆くわたしに、「大丈夫、三味線で黒燕尾ダンスした人たちだから」とよくわかんない説得力のあるお言葉を頂きました(笑)。

 うん、そうだね。
 なにをどうやったって、かっこいいもんね。無問題だよね。

 『ロジェ』は正直ちょっとリピートキツいんだが(笑)、『ロック・オン!』は素直に楽しい。大好き!と言える。

 ありがとう、三木せんせ。
 あれは、大劇場のキャトルレーヴでだったか。
 いかにもイマドキの娘さんという、キラキラしたきれいな女のコふたり組が、雑誌コーナーで立ち読みをしていた。
 ふたりで1冊の本をのぞき込んでいる。

 そして。

「うわ、ちょーやばい」「これやばいって!」と、ふたりで身もだえている。

 ナニがそんなにやばいんだ、とおばちゃんは不思議に思い、横からチラ見した。
 彼女たちが読んでいるのは「タカラヅカレビュー2010」だった。そして、開いているのは、星組のページ。

「ちえねね、可愛すぎるっ!!」

 れおんくんとねねちゃんのオフ姿のツーショ写真を見て、すげー勢いで身もだえているんだ。

 そこにあるのは、理想のカップル。美男美女。
 タカラヅカという昭和時代でストップした特殊な世界というよりも、現代社会でふつーに存在していそうな、されどここまでのビジュアルはありえない、と思えるような、まさに現代の王子様とお姫様。

「この写真のために、マジ買うしかない?」「高すぎるよ~~でも欲しい~~」と、女のコふたりは雑誌の値段を見てお悩み中。
 若い彼女たちには、1500円も高額らしい。きれいに巻いた明るい色の髪とキラキラメイク、凝ったネイルのイマドキのおじょーちゃんたち、キミらも十分かわいいやん!な、こんな若い女のコたちから見ても、ちえねねって夢のカップルなんだ。

 わたしのようにすでにまったく若くない元女のコ(笑)の目にも、ちえねねの美しさが「やばい」と思えるのは、とーぜんのことだな(笑)。

 だって、まぎれもない事実だもの!
 
 かわいいは正しい、かわいいは正義。

 てことで、『ロミオとジュリエット』、ヒロインの話。

 ジュリエット@ねねちゃんのかわいさにハァハァする。
 このリアル・フィギャアのような美少女が、れおんくんと並んでいるだけで眼福。

 そして、ねねちゃんのフィギュアっぷりは、ウメちゃんとはチガウんだなあ。
 フィギュアといえばウメちゃんが代表格だけど、彼女はもっと二次元っぽかった。アニメとかCGとかの感覚。
 ねねちゃんは、リアルなんだな。
 生身の女のコを感じる。 

 そこが彼女の魅力であり、あやうさでもある。……と、思う。

 ねねちゃんを苦手だと思う人がいる、れおんくんの横にいて欲しくないと思う人がいる……人の好みは千差万別なので、そーゆー人がいるのは当然のことだが、それにしたって、そーゆー人たちが一定数いるんだろうなってことを、今回のジュリエット役で納得した。

 生々しすぎるわ、あの子。

 タカラヅカという夢の世界とは少しチガウ存在感を持つ。
 少女マンガの世界のお姫様ではなく、現実の美少女っぽいところが、女性観客からある意味拒絶反応が出るのかもしれない、と思った。

 リアルに嫉妬できる存在というか。

 れおんくんがどんどん現実離れした美しさを、タカラヅカらしい透明感を身につけていくだけに、ねねちゃんの現実の濁りのある存在は、諸刃の剣。
 今まで明確に感じたことはなかったんだけど、今回の「ジュリエット」という役で痛感した。

 このジュリエット、浮いてる、と。

 美しいお伽噺の世界から、ひとり浮いている。生々しい、現代ドラマのヒロインみたいな女のコ。9時スタートのドラマみたいよ。
 あああ、このジュリエットを受け入れられないって声をあちこちから聞くけど、それもまた納得だなあ。彼女ひとりチガウもの、あきらかに。歌唱力がどうとかは、後付っぽい、そんなことより彼女自身の持ち味の問題。

 そのねねちゃんの持つ、主に女性に嫌われるタイプの性質……が、一気に際立つ役なんだ、ジュリエットって。

 あー、そーゆーことか、と納得しつつも、とどのつまり、わたしはねねちゃんジュリエットは好きだ(笑)。

 彼女の芝居が素晴らしいというより、わたしはただもう、彼女のビジュアルが好みなんだと思う。
 それこそ、「タカラヅカレビュー2010」の写真見て歓声上げるよーなノリで。
 みっちゃんと一緒に写っていた、「宝塚GRAPH」の写真だって大好きだ。かわいすぎる。

 そのリアル・フィギュアなビジュアルと、そこから醸し出される生々しい存在感が、好き。ツボ。

 トシくったとはいえわたしもオンナなので、オンナノコが持つ「あ、見たくないな」と思う部分はわかる。
 ねねちゃんはそこを突いてくる。だからイタい。
 その「あ」と思わせるぎりぎりのところを、わくわく楽しんでいる。

 だってかわいいは正義だもの!!(笑)

 生身ゆえの濁り、痛々しさ、見たくなさ、そんなものを見せつけて、ジュリエットが疾走する。
 「少女」という無垢さと残酷さをキラキラキラキラ見せつけて。

 それが、たまらない。
 そこが、好きだ。

 天使の羽を持つロミオ@れおんの横に、天使の顔をした生々しい人間のオンナが寄り添っている、そのことにもお、萌えまくる。

 ロミオは汚れない。
 彼は誰からも汚されたりしないのよ。

 ジュリエットも汚れない。
 彼女は清らかな乙女。

 だけど、ふたりが寄り添うと、奇妙な濁りが生じる。
 それは彼らの背後で妖しく踊る「死」@真風のように。
 ふたりは、「ふたり」であることだけで、すでになんらかのざわめきを心に起こさせる。

 いいなあ、ちえねね。

 オフ写真の「王子様とお姫様」みたいなビジュアルも大好き。
 そして、舞台上での不思議な融和感も。
 んで、組をふたつに割った上演ってのは、意味のあることだなあと思った。
 梅芸&博多座『ロミオとジュリエット』
 大劇場ではなく、バウと梅芸とで組をふたつに割っているからこそのデキであり、キャスティングであるのだなと。

 タカラヅカには、番手制度がある。
 トップスターが頂点にいて、ピラミッド状に組子たちがいる。
 これはタカラヅカのシステムなので、これについてどうこう言う気はない。番手制度の縛りで適材適所に配役できず、残念なことになるのがタカラヅカだとしても、番手制度は必要なんだ。

 たとえ歌えなくても踊れなくても、トップスターは主役を演じる。娘役トップはヒロインを演じる。これは鉄板。

 ロミオ@れおん、ジュリエット@ねねちゃん、ティボルト@かなめくんはガチ、なにがあってもこのキャスティングで正しい。
 だって彼らが「タカラヅカ」だから。

 ねねちゃんのおウタがアレだとか、かなめくんのおウタもまたアレだとか、そんなこたぁーどーだっていいんだ。
 彼らは娘トップ・2番手だから、それらの役を演じる使命がある。それだけのこと。

 トップ周囲はそれでいい。
 しかし……それ以外のところでは、番手・学年順に縛られすぎると不自由なんだよなあ。
 上から順番に、得意分野や持ち味も無視して機械的に役を割り振るのは、勘弁して欲しいと思う。

 ので、今回の組をふたつに割っての公演は、そのあたりがうまく機能していたなと。

 つまり、歌える人が、歌のある役をやることが、できた。

 もしコレ、全員出席の大劇場公演だったら、キャピュレット夫人@柚長とか、パリス@ともみんだったかもしんないわけで。
 柚長は納得の美しさだろうけど、歌はなにしろええっともう大変!なことになるし、ともみんは正直見てみたいが(笑)、空回りっぷりに歌唱力の裏打ちがない分笑うに笑えない悲しいことに……。
 夫人@柚長だと乳母@れみちゃんとの見た目……つか、年齢の差もえらいことになるし。

 上級生はもちろん一芸のある人たちなので、ヴェローナ大公@みきちぐ、モンタギュー夫人@毬乃サンとかになっても、歌は聴かせてくれるだろうけど、水輝りょおや花愛さんという、中堅の歌ウマさんに出番がなくなってしまうし。

 この『ロミオとジュリエット』を観た今となっては、それはもったいないと思うんだ。
 だから、組をふたつに割っての公演でよかったなあ、と。
 出演者たち、バウ組のメンバーになにか含みがあるわけではまったくなく、ただ『ロミオとジュリエット』という作品の力と規模に対して、最良のカタチで当たることが出来たんだなと。

 ヅカの番手制度と、作品のクオリティと、なんとか折り合いをつけられるのが、別ハコ公演の強みだよな。
 もちろん、玉石混合物量勝負の大劇場本公演も大好きさ。実力だけで計れない魅力を持つのが、タカラヅカであり、タカラジェンヌ。
 スター勢揃いと縛りのきつさのある大劇場、セレクトしたキャストで興行できる別ハコ公演と、両方あるのがヅカの強み。
 1組80人で5組もあって、専用劇場を東西に持つ、100年近い歴史を持つ大カンパニーの強み。

 この多彩さが、ヅカの楽しみだよなー。

 つーことで、今回の『ロミジュリ』に出演している選抜メンバー、モンタギュー、キャピュレットの若者たちも、みんなかっこいーしさー。
 興行自体、ほどよいコンパクト具合だと思った。

 それでも「役」はほんと少ないんだけどね。
 大劇場でなく、梅芸や博多座ならぎりぎりアリだよなと。

 
( ……てなことを、観た直後ミニパソにとりとめなく書いていたんですよ、ええ。

 まさかそのあと、雪組で大劇場本公演をやることになるとは思わずにね。
 しかも、自分が関係することになるとは……。
 あ、自分がってのは、自分のご贔屓が、って意味ね。贔屓が出てるかどうかで、他人事度がチガウという、悲しきヅカヲタの性……。

 つか、感想を溜め込むと話題が古くなってややこしいな)
 『ロミオとジュリエット』で名をあげたのは、死@真風くんと愛@礼くんだと思う。

 他キャストももちろん素晴らしかったが、彼らはすでに評価を得ている人たちだ。
 「新人」枠で注目を集めたのは、彼らだろう。

 礼くんは研2、新公他で抜擢はされているが、常識の範囲内の上げ方なので対外的に認識されるほどのものじゃなかった。
 それがこの愛役で、一気に知名度アップ。
 長い手足としなやかなダンス、光が差すような美貌と表現力。

 まだ男役として出来上がっていないからこその、人間ではない女性役のハマりっぷり。
 正しく「フェアリー」がそこにいる。

 男役としての彼は未知数だけど、ひとりの舞台人としての資質を見せつけてくれた。
 今後に期待。

 そしてその相方、死役の真風。
 もう研5になる彼は、ずーーっと抜擢続きで、「下級生だから仕方ない」「急な抜擢だから仕方ない」で済む段階を超え、そろそろ「結果出してくれてもいいんぢゃね?」「そろそろうまくなってくれてもいいんぢゃね、つか、なってくれなきゃ困るんぢゃね?」なところまで来ていた。
 ほんと、いつまで経ってもうまくならないなと(笑)。
 抜擢されても、機会を与えられても、投資に見合う結果は返してくれない子だなと。
 そんな印象だった。

 いやそのわたし、彼のビジュアルが好物ですから!
 初舞台の前から、音校文化祭以前、小林公平様の偉業を讃える『花の道 夢の道 永遠の道』の大階段合唱時から、目について仕方なかった水しぇん似のお顔。

 顔が好みであるだけに、もどかしいというか、じれったいというか。
 うまくなってくんねーかなあ。長身の水しぇんなんて、おいしすぎる資質だろうに。
 と、常々彼のへたっぴさと、それでも顔の好みっぷりとで、わたしの小鳩のような小さな胸は揺れ動いていたわけなんですよ(笑)。
 ええ、あれは『太王四神記 Ver.II』のフィナーレ、玄武ファイターのとき。
 黙って踊る真風は、大層かっこよかったのでございます。
 彼のダンスがうまいなんて、とくにというかまったく思わないのですが、黒尽くめで踊る真風が好み過ぎて……。当時の日記にも書いてますな。

 黙って踊る真風は好み。
 そうたしかに書いていた、そう思っていた。

 そしたらなんと、ここでほんっとーに、黙って踊るだけの真風がっ!!

 しかも、まさかのトートメイク、トートっぷり!

 わざとだよね?
 演出家が同じなんだから、わざとやらせてるよね?
 しかも役名も同じ「死」なんだから、わざとだよね?

 雪組再演『エリザベート』。
 タカラヅカでの『エリザベート』上演は5組一巡し、最初に戻ってきた。
 同じことを繰り返すだけでは意味がない、小池せんせはなにかしら、新しい『エリザベート』を模索していた……と、初日近辺は思った。

 ぶっちゃけ、トート@水は、キモかった(笑)。

 爬虫類を通り越して、ヘビまんまの外観、動き。
 表情から反応から、異質すぎて気色悪かった。

 水しぇんキモい! と叫びながら、わたしは拍手喝采していた。
 「水夏希」にしかできないトートだと思った。この気持ち悪いほど「死(=異質)」であるトートを造形できるのは、またできると演出家にGOサインを得られたのは、水しぇんだからだと思った。
 だからその気持ち悪さを堪能していたのに。

 評判が悪かったのかなあ、あまりにトバしすぎていて。
 せっかくの気持ち悪い化け物トート様は、回を追うごとにふつーの「二枚目」「人間の男」に近い、「いつものタカラヅカのトート」に近づいていった。

 えええ。
 いつものトートなら、なにも2巡目の雪組でやらなくていいじゃん。なんのための2巡目なの、同じコトを永遠に繰り返すため?
 「新しい『エリザベート』」を意欲的に作り上げていたはずなのに……こんな風に、小さくまとまらないと、保守的なヅカファンには認められないの? しょぼん。

 なーんて、勝手にいろいろ考えていました、当時。
 水トート初日のあの衝撃。そして、そこから「ふつー」になっていった変化と落胆。や、それでも水しぇんのトートは好きだったけれど。

 初日のぶっ飛ばしっぷりと、その後の変化を知っているだけに、考えちゃうんだ。
 イケコ、ほんとは初日のテイストでやりたかったんじゃないのかなって。
 ヅカファンが「キモ過ぎるトートはNG、美しいヒーローなトートを見せて!」と言うから路線変更したし、その後の月組再演『エリザベート』では人間くさい「ふつーの美形トート」に戻していた。
 だけど、クリエイターとしての小池せんせは、よりビジュアルの突き抜けた、禍々しいトートを創りたかったんじゃないのか? 
 ヒーローではない、観客が感情移入する必要のない、「異質」な存在。
 禍々しく美しく、エロくて不吉で、マイナスでしかない、救いのない存在。
 とことん、耽美なトート。

 女性だけで演じるタカラヅカでは、究極の美青年を形作ることが出来る。生身の男性には創れない美だ。
 だけどタカラヅカでは、タカラヅカであるゆえに、トートを完璧な「死」として描くことはできないんだ。だってトートはトップスター様の役だから。観客が恋をする相手役だから。
 二律背反、ジレンマ、なんてもどかしい。

 だからこその、主役ではないトート、獲物がエリザベートではない場合の、トート。
 『ロミオとジュリエット』で、よーやく自由に「死」を描くことができたんじゃないのか?

 これって、『エリザベート』のリベンジぢゃね?

 イケコ、水トート大好きだったんだな! だからもう一度、やりたかったんだな、横やりの入らないところで! トートが主役でなければ、縛りはなくなるもの!
 キミとシェイクハンド、わたしも大好きだったよ、水トート!! あの容赦なく「死」で、容赦なくキモチワルイところが!!(笑)

 てことで、クリエイターの試みとしての、真風トートの造形に注目しました。
 まったくチガウ別の作品で、役者もチガウし役もチガウのに、「死」という同じ役を創る、そのトリッキーな姿勢。
 『ダンバイン』と『エルガイム』にチャム・ファウが出ていたよーな感じだなっ。(こらこら)

 そして、演じる真風が美しかった。
 黙って踊っていると、こんなに素敵なんだ。
 好みの顔の男が、好みのダークな存在で、妖しい表情して、エロエロしてるんですよ。
 見ていて楽しい。

 『エリザベート』にて、トートはうっかりエリザベートを愛してしまったからあんなことになってしまったけれど、ターゲットを愛したりしなければ、トートはこれくらい事務的に確実に仕事をしているんだなと。
 死はロミオを気に入り、確かに愛しているけれど、それはエリザベートに対する愛ではなくて。だから確実に仕事をし、ロミオをその手におさめる。

 『ロミオとジュリエット』、これはエリザベートを愛さなかったトートの物語でもある、と思いました。
 ロミオ@れおん、ベンヴォーリオ@すずみん、マーキューシオ@ベニー。

 『ロミオとジュリエット』のキャピュレット側の幼なじみのこの3人が、美しい絆で結ばれた親友同士だとは、思っていない。
 友情を語るには、彼らはあまりに幼いためだ。

 子どもの頃の友だちなんて、自分で選んだというよりは、偶然そこにいたという方が正しい。
 家が近所だとか、同じクラスだとか、席が隣だとか。
 現実距離の近さで友だちになり、距離が離れれば別れる。

 価値観とか興味とか笑いのツボとか、大人なら重視する点を一切無視で、「そこにいたから」友だちになる。

 そうやって、自分も他人もよくわかっていないまま一緒に過ごして、成長するに従って「違い」を理解していく。
 自分とチガウ考え方をする他人を受け入れることや、自分にとっての好悪がどこにあるのかを学んでいく。
 ぶつかりながら車間距離を学び、あま噛みしあいながらケンカの仕方を学ぶ。

 距離が友情とイコールだから、いつも一緒にいるし、同じコトをする。
 カラダが近くにあればそれだけで納得、心の場所には鈍感。

 だから、ベンヴォーリオとマーキューシオは、ロミオひとりがちがっていることに、気づいていない。
 モンタギューとキャピュレット、ふたつの家の争いが続くなか、それを当たり前として楽しく騒いでいるベンヴォーリオたちと違い、ロミオは争いを憂いている。
 ベンヴォーリオたちはロミオを理解していないし、ロミオもだからといって深刻に嘆いてもいない。

 まだ、わかってないんだ。
 自分たちにあるのが「距離」という名のつながりだけで、「真の友情」ではないことを。

 ロミオがジュリエット@ねねちゃんを愛したのも、彼が最初からベンヴォーリオたちとは別の感覚を持った少年だったから。
 仮面舞踏会でジュリエットと出会ったのがベンヴォーリオやマーキューシオなら、ジュリエットがどんなに美しくても「敵の女」としか思わないだろう。

 だから、ロミオがジュリエットを選んだとわかると、「親友」のはずの彼らは激高する。ロミオならそれもありえる、とは思わない。
 彼らは「近くにいる=自分と同じ立場にいる=自分と同じ」という考えで、自分を愛している延長で友人を愛しているだけ。
 自分の理解の範囲外のことをされると、拒絶反応が起こる。

 ロミオの理解者がロレンス神父@くみちょしかいない、のが、彼に親友がいなかった証拠。
 ひとはひとりずつチガウのだ、ということを理解できる大人は、ロレンス神父だけだったんだな。
 ベンヴォーリオもマーキューシオも、悪い子たちではなかったけれど、子どもすぎて話にならなかった。

 だから、切ない。

 ロレンス神父しか味方のいないロミオは、親友たちには理解されないと悟っていた。バレれば責められると覚悟していた。それくらい彼は、年齢相応の成長をしていた。
 だけどベンヴォーリオたちにとっては青天の霹靂、まさかの裏切り。
 
 ロミオが、自分たちと違わずなにもかも同じだと信じていた親友が、別のことを考えるなんて。自分たちが夢にも思わないことを考え、するなんて。

 当たり前のことに、傷つき、憤る。

 当たり前だと理解できないほど、幼い少年たちの姿に、泣けてくる。

 ゴールデンエイジの終わり?
 少年が少年でいられる時代の終焉。
 子どもはいつか大人になる。でもそれは個人差があり、ゆっくりと発育していく。
 なのにベンヴォーリオたちは、ロミオの裏切りという形で強引に成長を余儀なくされた。もっとゆるやかであっていいはずの時間の流れを、一気に早送りされたんだ。

 その痛み、きしみ。

 おつむのデキがより単純であったマーキューシオは、その早送りされる情報量を処理しきれずに、パンクする。
 もっと時間を掛けて、ロミオが自分とは別の人間であり、別の考えを持っていて、別の人生を送るのだと理解し、彼の考え方を自分はどう思うかどうしたいかを咀嚼し、解きほぐし、それでも彼とこれからどうつきあいたいかを突き詰めて、答えを出すモノだったのに。
 早回しされる映像のようにきりきりくるくる回って、マーキューシオは死ぬ。
 彼の命が早回しされたように、彼の心もさっさと答えにたどり着く。

 それでも、ロミオは友だちだ、と。

 両家の争い、それを是とする世界観、価値観はゆるがない、そこを突き詰めて考えている余裕はない、それでもなお出てきた答えは、ロミオを好きだということ。
 だから彼は、死の間際にロミオを肯定する。ロミオが選んだ生き方を、愛を貫けと言い残す。
 途中のことを全部全部吹っ飛ばして、いちばん大切なことだけ伝える。

 演じているのがベニーなので(笑)、この早回し人生と最期の独白が行き過ぎていて、なんか笑える感じになっていたりするんだが、マーキューシオ単体としては、ブレてないんだ。
 
 マーキューシオは勝手に人生早回しして終了したけれど、ベンヴォーリオはチガウ。
 いちばん哀れなのは、彼かとも思う。

 ロミオという親友を精神的に失い、マーキューシオという親友を物理的に失った。
 彼ひとり、残された。
 それでもベンヴォーリオは、生きなければならない。

 ロミオの裏切り、マーキューシオの死で、ベンヴォーリオも成長する。
 無垢で無神経だった少年時代を過ぎ去り、大人へと近づく。
 だから彼は、ジュリエットの死をロミオへ知らせようとする。……自分の行動が、親友を破滅させることになるとは知らず。

 
 ロミオ、ベンヴォーリオ、マーキューシオ。
 彼らがあまりに「少年」で、すっかり年老いたわたしなんかは、まぶしくてならない。
 切なくて、ならない。

 正しくなんかない。
 だけど懸命に生きる彼らの姿に、泣けて仕方がない。

 黄金のままでいられない、消え去ることがわかっている少年期の傲慢さと無神経さと無邪気さと、掛け値なしの情熱や愛情や誠実さが、キラキラ波のように輝いて、胸に刺さる。

 地味キャラスキーなので、とくにベンヴォーリオの立ち位置はツボすぎて。
 最後、テレビカメラには映らないんじゃないかな、って目立たなさでロミオの亡骸にすがって泣き崩れる姿に、こっちも号泣したってばよ。

 少年はいつか、大人になる。
 それが、こんなカタチでだなんて。
 仲良し3人組、ロミオ、ベンヴォーリオ、マーキューシオ。

 「少年」である彼らが、愛しくてならない。
 嘘さ! 嘘さ!!
 善悪が両岸にまっぷたつに分けられてるなんて
 嘘さ! 嘘なんだ!!
 嘘さ! 嘘さ! 嘘さ!

 ここは善だけの岸だと 信じ切れるなら楽さ!
 善い岸に住んで適当な時には 善なんか眠らせときゃね

 嘘さ!
 ボクがここにいるってだけさ!

 
 ……いつも同じ出典でアレですが、なにしろわたしの根っこにあるものは変わらないので。
 『ロミオとジュリエット』を観て、これまた痛烈に『はみだしっ子』を思い出していました。
 いがみ合う子どもたち。理由もないまま、対岸の子どもたちを憎んで。何故ならそれは、大人たちがはじめたことだから。大人の争いが子どもたちに広がり、今では原因もわからないまま、ただ相手を憎み、暴力に訴える。
 攻撃されて、思わず防戦したはみだしっ子たち……どちらの岸にも行き着くことは出来なくて、そんなもんくそくらえで。

 シェークスピアの『ロミオとジュリエット』の方が古くからあるもので、それを観てずっとあとに創られた作品を思い出すのはチガウと言う人もあるかもしれないが、古い作品に対してどうこうではなく、あくまでも、2010年初演の宝塚歌劇『ロミオとジュリエット』を観て、子どもの頃に読んだ『はみだしっ子』を思い出したということ。

 有名すぎる『ロミジュリ』については、意識するまでもなく知識として知っている。
 でも教養のないわたしは、それをきちんと咀嚼することないままこのトシになった。
 改めて出会う『ロミジュリ』で、登場人物があまりに「子ども」であることにおどろいた。知識としてロミオとジュリエットの年齢を知っていても、それがどういうことなのか理解してはいなかった。

 子どもの感性、子どもの考え方。子どもの理屈。
 そこにあるのは中2病全開の、とても痛く恥ずかしいモノ。
 うっわー、天下の『ロミジュリ』って、こーゆー話なのか。映画でもチラ見するバレエだのミュージカルでもイイ年した大人が演じているから、気づいてなかった。

 そして、あまりに「子ども」であるがゆえに、すでに大人であるわたしからすれば、痛々しくて、切ないものだった。
 生まれたときから「敵」のいる世界……そんな世界に生まれてしまった彼らを不憫に思う。
 それを当たり前とし、憎しみと暴力を空気として呼吸し、それでもそのなかで愛し希望し、笑って生きる。
 「男はみんな王になりたい」……いちばんになりたいと、無邪気に夢見る男の子たち。自分の可能性を信じ、未来になんの疑いもない、まっすぐな瞳。
 そんなものが、愛しくて切なくて、泣けて仕方がない。

 ロミオは所詮モンタギュー家の一員であり、よそ者だったはみだしっ子たちとはチガウ。グレアムたちも対岸の連中に石を投げたし、対岸に住んでいる女の子との交流もあったけれど、結局そこまで人々の争いに関与しない、しなくても済む。
 ロミオとグレアムたちが会っていたら、それはそれで悲しい会話が展開されただろうなあ。

 結束のための掟、結束のための敵。
 モンタギューとキャピュレット、互いを憎むのは個々にナニかあるからではない。すでにそんな次元は過ぎた。
 共通の敵がある限り、安心して同胞としてまとまっていられる。個は消失し、あるのは実態のない集団のみ。
 「沢山のお豆がありましたが、つぶされて粉になり、練られて一つのかたまりになっちゃったって話」……アンジーの要約の仕方が的確すぎて泣ける(笑)。

 そんなひとつのかたまりの中にいた、練られていたけれどまだなんとか原形を保っていた、ひとつのお豆の物語。
 もともと両家の争いを快く思っていなかったロミオ@れおん。そんな彼だから、とても素直にジュリエット@ねねちゃんと恋をした。

 ロミオは片方の岸の住人だったから、死まで描かれたんだなと、当たり前のことに思い至る。

 『はみだしっ子』では、いつも答えまでは描かれない。
 ふたつの岸の争い、理由もわからないままそれでも憎み合う子どもたちが、そのあとどうなるのかは描かれない。
 歪みや哀しみは提示されるけれど、それによってはみだしっ子たちは傷つくけれど、答えはない。
 それは彼らがはみだしっ子であり、どこの組織にも属さない、属せない者だからだ。

 根を下ろす大地を持たないまま彷徨い続け、それゆえに「よそ者」として「外から」人間や集団を見る。
 それが『はみだしっ子』であり、そんな彼らが「家」と「親」……大地に根を下ろしたときに、『はみだしっ子』は終わったんだなと思う。クリスマスローズが花を咲かせるように。彼らはもう、はみだしっ子ではないから。

 てな、舞台と関係あるよでナイことを考えつつ。

 考えさせてくれるから、『ロミオとジュリエット』ってのはすごい作品だと思った。
 リオン@がおりくんがうまかったのは、言うまでもない。
 新人公演『ロジェ』において、見事な安定っぷり。

 キムの役をやるのは何回目?
 わたしの記憶にあるだけで3回目なんだが、中でいちばんイイ感じで……そしてちょっと、残念だったと思う。

 がおりくんは、キムくんと持ち味がチガウ。
 『君を愛してる』のときはアウェイ感ばりばりに苦戦していた。『ソルフェリーノの夜明け』は、キムくん自身がアウェイ感、がおりくんの方がニュートラルに勝負している気がした。

 そして今回のリオンは、そのキャラや立ち位置ががおりくんにも合っているし、なんというか、彼の中で自然に咀嚼し、形作っているように見えた。
 だからとても安心して見られるし、キャラクタ造形も安定していた。

 が。
 ……リオンってあんなに、安定して堅実に、一歩後ろの型にはまってしまっていいものなの?
 一歩前へ出て、あえて型からはみ出してみせるぐらいの気がないと、埋もれてしまう役ではないかな。

 がおりくんのリオンはとてもうまくて、リアルなキャラクタだったんだけど、それゆえに危惧した。そんな風にまとまってしまうことに。

 しどころのない、地味な役だからこそ、意識して前へ出ないと、脇役になってしまうっす……。

 がおりくん、本役のタンゴの男の方がずっとキラキラしてた。押し出しよかった。
 リオンが「キラキラしてなくていい、押し出し良くなくていい」役だとしても、そこにまとまっちゃったらダメだと思うんだ。完全な脇の役ならともかく、2番手役で次期トップスターの役だ。キラキラして押し出しよくやって問題ないはず。復讐に生きるロジェ@咲奈くんとの対比を出すためにも。

 がおりくんの実力と堅実な芸風を愛でるからこその、老婆心。
 
 
 シュミット@りんきらは、やっぱりうまい。そして、期待した通り、ヒゲのおっさんは似合っている。カラダの厚みも合わせて、かっこいい。

 そうか、やっぱりかっこいいんだ……と思ってその直後の、全員集合で旅立ちソング熱唱時、ヒゲ無しの姿を見て肩を落とす。ぷくぷくちゃん……ヒゲがないと、ビジュアルがつらい……。

 りんきらはもう、痩せる意志はないのかなあ。顔立ちはきれいなんだから、痩せれば役の幅も広がるだろうに。
 もちろん太っていても役者はできるけれど、ここはタカラヅカで、太ったおじさんの役だけでなく、ショーも演じなければならないところなんだがなあ。

 
 バシュレ@ホタテくんもまた、回数を重ねるごとにうまくなっていくなあ。
 最初に彼を認識したのは『忘れ雪』で、あのときは一緒に観劇した友人があーたん(なつかしい……)と混同するくらい横に大きな子だったわけだが。
 今はけっこういい感じで落ち着いてきた気がする。
 ロジェとバシュレの体型の差、頭身の差が本役さんっぽくて、年配の男性だとわかるのもイイ。
 顔立ちのクラシカルさも、いい男ぶりだと思うの。

 歌は大変だったような……幕開きのソロ、あれって歌というより台詞になっていた? そーゆー演出?

 若くておっさんができる、ってのは将来有望だと思うので、男ぶりを磨いていってほしーなー。

 
 クラウス@彩凪くんは、期待通りでかくてきれいで眼福ですな。
 存在が派手なので、派手な役をやってくれるとハマリが良くて、見ていて楽しい。
 狂気というよりは、ただの暴力的な人、だったけれど、それはソレでアリかと。

 せっかくの美貌の人なので、いちどきちんとお芝居を見てみたいっす。こんなどたばたした出番の役ではなく、通しでキャラクタのある役を。
 あまり繊細ではない芸風に見えるんだけど、派手な人なので大味でもイケルと思うんだよなあ。

 
 マキシム@透真くん、キャラクタのある役が付いてるの、はじめて見た。
 てゆーか透真くんの場合、見るたびにカオが違っている気がする。喋って演技している透真くんを見て、しみじみと「こんなカオだっけ……?」と思いました。

 本役さんのよーな、間で笑わせるのではなく、もっとわかりやすくコメディっぽくすることで笑わせていた。それは正しい。正塚こだわりの笑い場面は、別に新公でがんばるところじゃない(笑)。

 わかりやすくコメディにすることで、目立つキャラになっていたような。リオンが地味な分、オイシク前へ出ていたよーな。また、笑わせキャラな分、技術のなさが目立たない……いや別に、ヘタではなかったけども。
 かなり役に助けられていた印象。
 しかし今までろくに役がついてないわけだし、はじめてのキャラある役でこれだけ出来たら及第点かな。

 
 ポポリーノ@まなはるくんは、いきなりおっさん役でしたな……ゲルハルト。
 普通にうまくて、ヒゲも似合っていておっさんで。
 おっさんができるのはたしかに有望なんだが、まなはるには今おっさんに逸れてしまわず、もっと真ん中寄りで見てみたいんだが……彼はどこへ行くのかなあ。

 大澄くんは、なんかどこにいても目に入る……のは今回に限ったことではないが、今回さらに瞠目したのは、彼の場合、シルエットでもわかるということだ。
 暗いライトを浴びて浮かび上がったときに、シルエットで判別付くよ彼……あの耳はいいよね……(笑)。

 
 娘役に語るべき役がない、のは前回に続いてどうなのよ、と演出家に物申したいところです。

 クリスティーヌ@さらさちゃんが、きれいで落ち着いていて、いい女でした。
 抑えた物言いが、言葉にしない部分の感情を、ドラマを想像させて、イイ感じ。

 その娘モニーク@花瑛ちほちゃんも、かわいかったし、うまかった。まだ研2なのかー、違和感なくお芝居してたぞ。
 わたしはちほちゃんのカオはおぼえていなかったのだけど、横顔が独特なので「あ、ロジェ(子役)の子だ」とわかった(笑)。正面顔と横顔のギャップは、その昔、若き日のヒメ(キティお嬢様、と呼んでいた頃)を思い出す……。

 カミーラ@みみちゃん、大人の女もかっこいー。美人はいいね。
 でも、ヒステリー起こす演技はけっこう難しいのかなあ。なめらかではなく、ところどころ軋んだ気がする。

 マリア@あゆちゃんはかわいいけど……本役のマイペースなメイドさんの方がよりかわいいな。
 地味というかシリアスで堅実な役より、アイドル系の役が似合うんだなー。みみちゃんと反対に。

 
 雪組って芝居うまいなと思うのは、間と会話テンポが難しい正塚芝居をこなしている子たちが多いこと。
 
 シュミットの診療所前の通行人の女たち、千風カレン、此花いの莉、雛月乙葉、みんなすげーうまいんですが。雛月サンはタンゴダンサーもかっこよかったし。てゆーかカレンちゃんってまだ新公学年だったんだねえ。
 そして、アタマ悪く「好みの顔」の話をする(笑)。
 舞台人としてどうこう、技術がどうこう、を語る資格ナッシングな、実に偏った話。

 新人公演『ロジェ』において、とにかく、あずりんのカオを眺めていました。

 好きなカオですから。
 もう見られなくなってしまうのだから、これが見納めとばかりに、じっくりと。

 わたしの好きなカオのポイントは、なんつっても「鼻」です。高い、大きな鼻が好き。
 それゆえに、真正面より横顔フェチ。
 大きな鼻を堪能できる横顔が好き。

 男役ならカオは長めで、鼻も長めがいいです。でもってクチは大きく、唇がタラコ気味がいいです。受け口も好物です。

 つーことで、あずりんを失うのが痛手です。

 ヤコブ@あずりんは、もともとよくわかんない役。本役さんからして、キャラクタが見えにくいってゆーか、立ち位置がよくわかんないってゆーか。
 深く考えず、レアの同僚、ただの解説役、合いの手を入れる役、と開き直っていればいいのかなあ、正塚せんせ?

 あずりんはとても真面目に、思慮深い感じでヤコブを演じている、よーに見えました。
 個性が見えにくい分、なかなか難しい役だと思うんだけど。彼は台詞も自然で、このまま経験を積めばいい男になったろうと思うんだけど。なんで辞めちゃうのかなあ。しょんぼり。

 つーことで、あずりんが出ているところは彼をオペラグラスでピン撮り。

 
 そして、それと平行して好みの横顔探しをしていたところ……ヴィンセント@レオくんがとっても好みだということに、気づきました。

 潔いデコ出しヘアが良かったのかな? それともお化粧? 役?

 てゆーか彼、あんなカオだった?

 いちお、ずっと顔の見分けのつく下級生だったわけですよ、レオくん。だからなんか今さらな驚き。もともとあんなカオだった?
 なんか急に好みになっていて、びびった。

 そして。

 …………芝居、ヘタだね…………(笑)。
 いや、声か? 芝居がどうというより、声の問題? 地声のままで喋るのは演出家指示なの? 本役の咲奈くんもだし、レオくんもオンナノコのまま喋ってますが……。

 レオくんは以前の新公で、芝居好きな子なんだなと思った。すごい濃度で顔芸していたし。
 でもあんときは、台詞はほとんどなかったな……。喋るとこんなに大変なことになるのか。

 彼が喋るたびに「うわっ」と思ったんだが、顔が好みなのでがんばって欲しい……。

 
 れのくんを愛でるのはいつものことなんだが、今回はあまり琴線に触れず。
 とゆーのも、本公演で「なんかれのくん、かっこいい」と思ってしまったので、新公ではそれ以上にときめかなかったという(笑)。

 
 カウフマン@朝風くんは、なんか恥ずかしかった……。
 なんだろう、この気恥ずかしさは。朝風くんがあんな役やってるー、黒いー、きゃー自殺したー。

 ……たぶん、どんどん彼を好きになっているんだと思う。そのせいで、なんか「知ってる人」感覚で勝手に恥ずかしくなるんだ(笑)。

  
 で、なんか今回、央雅くんがめっさかっこよかったんですが。
 彼、フケてるよね?(誉め言葉)

 前回の新公でフケ役やってたけど、すごく大人なのはすでに芸風?
 タンゴがかっこいーよー。
 悪者もかっこいーよー。

 好みのカオ、の範疇ではナイんだが、その色男っぷりが予期していなかったところにずどんとキた。
 好みの顔ゆえにわくわくどきどきするのもいいけど、実力で振り向かせてくれるのはイイよなあ。

 
 んで、実はこの新公でいちばん衝撃だったのは。

 アイザック@月城くん!

 ねえちょっとナニ彼、めちゃくちゃうまくね?! まだ研2だよね?!
 前回もすごくナチュラルにおっさん役をやっていたけれど、今回もまたふつーに大人ですよ。

 で、本役とはチガウ手触りのキャラクタ。
 軽くない、土着の臭いのある男。

 なんかいろんな意味で驚いて、彼をオペラでピン撮りしていたら、なんか、オペラ越しに目があった気がして、息が詰まった……(笑)。
 カンチガイでもなんでも、あのでかい目で見つめられるとびびるわー。

 これから彼は、どう育つんだろう。
 なんかすげーたのしみっす。

 
 と、とにかく好み語り。好みの顔と、芸風と。

< 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 >

 

日記内を検索