オギーと他の作家のちがいは、どこにあるんだろう。
 花組公演『TUXEDO JAZZ』初日を観て、しみじみ考える。

 センスの差、才能の差は言うまでもないが、もうひとつ「タカラヅカの座付き作家」として決定的にチガウことがある。

 生徒たちの、役のつけ方。

 時間は同じ、出演者も同じ。
 なのに他作家ショーの場合は「少人数しか見せ場ナシ」が基本。だからといって、多くの場合、その「少人数」のスターたちの見せ場が「ありがとう**先生! この場面のために通うわ!」というようなものではナイ。

 オギーの場合は。
 なんかもー、すごい人数に見せ場があるんですけど?!

 上級生から下級生まで。
 「えっ? こんな場面させてもらえちゃうの?!」「えっ? この人がこの扱い?!」
 と、びっくりするところが、びっくりする人が、何十人単位でいる。

 この子、ココすごいオイシイ、この人、ココすごいオイシイ……の繰り返し。まんべんなくみんななにかしら見せ場がある。

 時間も出演者数も同じだよねえ?
 なんでオギーはこんなに、みんなに見せ場を作れるの?
 今のワンフレーズ歌ったのって、あの子だよね、今まで舞台でソロで声出したことあった? 今のトリオ、ひとりはあの子だよね、今までこんな少人数で踊ったことあった?
 うおお、ここで上級生来ますか、と思ったら下級生ズ来たーーっ。

 みんな、おいしすぎ。
 目がいくつあっても足りない。
 どこを見ればいいのか、舞台のすべてでドラマが進行している。

 上級生ファンも下級生ファンも、みんなオイシイ、たのしい。
 そんなショーって作れるんだ。

 ここまで作れるものなら、他の演出家って、ナニやってんだ? と、すごーく基本的な疑問が湧く。
 80人もの出演者を使わなければならないから難しいんだ、って駄作の言い訳に使われるけど、オギーはいつも、ソレ言い訳にしてないじゃん。ふつーにその人数使い切るじゃん。

 オギーにできることが、他の演出家にはできないんだな。
 ただ、それだけのことなんだ。

 や、今さらだけどさ。
 しみじみ、考えちゃって。

 
 なにしろ、『タランテラ!』のあとだから。
 すごく、オーソドックスなショーだ。
 ……と、思うけどたぶん、本当の意味での「タカラヅカのオーソドックスなショー」ではない。場面ずーっと続いてるし、シーンがぶつ切りじゃないし、パレード変則的だし、シャンシャン持ってないし。
 クラシックな場面のあとに脈絡なく原色ギラギラな場面とか、てきとーなことして「バラエティに富んだ構成」とかにしないし! 統一感あるし。ずーっとセンスいいし。番手関係なく、歌える人が歌って、踊れる人が踊っているし。
 ぜんぜんオーソドックスぢゃないかも(笑)。

 『タランテラ!』のような重さはない。
 にぎやかで明るい作品。

 なんていうか。

 オサin大人のワンダーランド。

 あ、石田作の最悪ショーのことじゃないよ、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』ね。

 不思議の国の春野寿美礼。
 オサ様が、色彩と光にあふれた不思議の国に迷い込み、次々といろんな出来事に出会っているかのよう。
 明るい、たのしい。そして、少しの毒と狂気。

 やー、もー、たーのーしーいー。

 どうしよう!ってくらい、たのしい。
 

 ショーのいちばん最初。

 花組お帰りなさい、の壮くんがさ、コートについたを払って歩いてきて、みわっちに赤い薔薇で迎えられてさ。まりんと抱き合ってさ。愛されてるね、壮くん。
 まだまだわたしのアタマの中は『タランテラ!』のままだったのに、『タランテラ!』が終わったのがついこの間のことのようなのに(途中ふたつばかし公演があったよーな気もするが、記憶にはあっても心には残っていないもんでな)、『タランテラ!』を引きずったままのオギーファンとしては、ふたつの舞台で共通している出演者、壮一帆に注目してしまうわけだから。
 雪というモチーフから花というモチーフへつなげるプロローグは、雪組から花組へ、『タランテラ!』から『TUXEDO JAZZ』へ、スムーズに観客を導く効果があった。と、思う。
 や、男が男に、赤い薔薇を1輪贈るのは変なんだけどね。ぶっちゃけ、「こいつらゲイ?!」って感じなんだけどね(笑)。
 みわっちと言えば「赤い薔薇」。博多ギュンターのトレードマーク。愛されてるね、みわっち。

 最初から人間いっぱい、大都会そのままに交差するプロローグのあと。
 なんつーか、最初にオサ様がビルの窓から正装して出てくるところからめっさ、ときめいたんですが。

 ああもお、オサ様ステキ。バイオリンみたいな笑顔。いやその、細長くて目が曲線で。
 ダイスキ。

 着飾った紳士が、窓から登場。
 だからナニ、てなもんだが、理屈ではなくときめいたの。あたしをさらってえぇぇっ!!みたいな。(ジュンタンっぽく言ってみる)

 これだけでもクラクラしていたのに。

 そのあと、オサ様見るのに忙しくて、だけど下級生点呼もしたい人なので気もそぞろになっている目の端に、オサが出てきた窓からもうひとり、スーツの男が出て来たっぽいことが映る。
 ああ、オサ様と同じ登場の仕方であとから出てくるってことは、まとぶだな、ととくに気にもとめずにいた……ら、ちょっと待て。

 まままままつださん? あーた今、どっから出て来ました?!

 何テンポか遅れて、窓から出てきたのがまっつだと気づき、大いにうろたえる。
 しかも、同じ衣装のラインダンサーズ(ロケットぢゃないぞ、もちろん)のセンターにまざりやがるし。
 まつださん? そ、そんなとこにいていいのあーた?

 そっから先は、まっつROCK ON。オペラグラスでまっつを追いかけていた。
 その場にいた全員が、銀橋に移動したのでわたしのオペラもとーぜん銀橋へ。

 あー、まっつだー。
 久しぶり、まっつ〜〜。

 まっつを眺めて、それだけで幸福感に浸る。

 で。

 ふと、オペラグラスを下ろした。や、他も観たいしさ。ちょっとは全体も観なきゃ。

 そしたら。

 銀橋にいるのが、まっつとあやねちゃんだけだった……ので、腰を抜かした。

 まままままつださんっ?!!

 銀橋にふたり?
 しかも、トップ娘役と?!

 えええ? だってさっきまでみんないたじゃない、勢揃いして歌い踊っていたじゃない!!
 わたしの視界がまっつだけだったうちに、いつの間にみんないなくなったのおっ?!!

 …………すみません。
 ここで、緑野のヒューズが飛びました。

 あともー、なにがなんやら。

 まっつが歌ってる。
 大劇場で、まっつが歌ってるよ。娘役ちゃんとデュエットしてるよ。
 ねえねえ、まっつって2つ前の公演までモブだったよねえ? 見せ場といえば「山寺の和尚さん」だけで、あとは基本背景だったよねえ?
 モミ手まっつ。へこへこまっつ。ベスト姿萌え。華奢な肩と細い腰に萌え。
 寿美礼サマの後ろに、意味もなく立ってるまっつ、てかなんでまだ舞台にいるの、かっこつけて立ってるの店員Aとやら!
 きらきら付きスーツでひとりあとから銀橋登場、なんなのソレ、ありえない!!

 ……大階段パレードでは、いつまでたっても降りてこないので、「いつの間にか脇を通って降りちゃった?!」とアセりましたが(笑)。歌ナシの分、えらく大人数で、えらくあとから降りてきたなー。
 
 ああああ。
 まっつのせいで、オギーのおかげで、混乱しまくりっす。
 もー、オギー神。ありがとう。

 や、まっつの扱いが特別いいわけではなく、全体的にみんなみんないいから。
 主立った人や期待の下級生たち、みんな見せ場アリだよ!
 だいもんやアーサーまで歌ってるよヲイ、てゆーかめぐむすげぇ。

 体温、上がりまくり。

 1回でなんて、とても見切れない。
 もー、どうしよう!!


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