ちんたらと『第93期宝塚音楽学校文化祭』の話、いちおー4回目。

 芝居は谷正純作『La Boheme+RENT=』。
 文化祭の芝居って、「劇団の劇中劇」にしなければならないルールでもあるの?
 89期から文化祭を観ているけれど、89、92、93と「劇中劇」で違和感。通常の公演で劇中劇なんてほとんどないのに、文化祭では比率高すぎ。
 谷作品としては、『1914愛』と『UNDERSTUDY』に似ている。
 舞台は現代の、あるカンパニー。1857年パリが舞台の『La Boheme』が舞台下手で、1989年NYが舞台の『RENT』が上手で同時に上演されている。どちらの物語にもミミという病弱な少女が登場し、それぞれの物語の主人公と愛し合い、貧しさの中で死んでいく。
 『La Boheme』の主人公・貧しい詩人ロドルフォ、『RENT』の主人公・貧しい音楽家のロジャーがそれぞれの「ミミ」と愛をはぐくむのが同時進行。片方の主人公とミミが会話しているときは、もう片方の主人公とミミは無声になっている。時代と場所を超えて、同じ会話をしているらしい。
 ストーリーらしいストーリーはなく、彼らと仲間たちのちょっとしたエピソードをつなぐだけで、ミミが死んで完。同時進行とはいっても、『La Boheme』の方が主。要になるシーンはロドルフォとミミばかりで、ロジャーとミミはあまり出番がない。
 習作、という感じで、作品として完成していない。短い上演時間で、登場人物全員に見せ場を作らなくてはならない文化祭では仕方ないのかもしれないけど。ちゃんと「作品」にしたら、おもしろそうなのになあ。

 芝居がうまいと思ったのは、現代場面のみに出てくるガタイよすぎの眼鏡の彼女。ええ、クラシック・ヴォーカルの彼女ですわ。堂々たる女役ぶり。

 お金をばらまくテンション高い女の子役の子と、浮気なお色気女役の彼女も素敵。

 ヒロイン・ミミは、たぶんうまかったのだと思う。ただ「清く正しく美しく」の具現で人格以前にとにかくかわいらしく儚げでなければならない、つーのは大変だなと。
 『La Boheme』の方のミミを、幕開きの日舞で美声を披露した娘役さんが演じており、うまかったとは思うが、違和感は消えない。……お花様やまーちゃんでもなきゃ、この役はできないだろ……難しすぎるよ。
 ライトの当たった死に顔があまりにリアルに死に顔で、びびった。死んでるよ、この子死んでるよー。なのに現実を受け止められないロドルフォが、死体の彼女に必死に話しかけ、気遣うのがものがなしくもちょっとホラー。
 ロドルフォが学芸会テイスト満載なので(笑)、いろいろ落ち着きが悪かった。

 もうひとりのミミは、うーん? とにかく出番もしどころもなくてなぁ。

 ロドルフォ、ロジャーにはそれぞれ男友だちがいるわけなんだが、男の子たちはみんな演技がアレで大変だ(笑)。やっぱり「男役」になることからはじめなきゃならないので、演技以前の問題なんだろうな。衣装の着こなしもえらいこっちゃになってるし、声は女の子のままだし。
 男友だちは、ビジュアル重視なのかなあ? みんなそれぞれ、容姿はいいと思う。

 なかでもロジャーの友人の大学の先生、着こなしその他いろいろあちゃーなんだけど、スタイルよかったなー。どこにいても目に付くわ。

 見せ場のあるロドルフォの親友ポジの子、せめてもう少しうまければなあ……見せ場と実力が合っていないし、相手役のお色気彼女がかっこいいだけにちぐはぐ感が増大された感じ。

 クラシック・ヴォーカルのえくぼの少年は、声と発声がいいから大分底上げされていたけれど、お芝居はそれほどうまくはないなー。ダンスでは目に付かないし。
 や、でも、声がいいのは武器だよな。他の男の子たちよりまだ男役っぽく見えたのはソレもあるかも。

 お色気女の愛人の政治家役の彼は、うまく育てばみきちぐやゆーほさとる系になってくれるのかしら。いい感じに脇っぽい三枚目だったわ。(バリ路線志向だったらごめんよぅ)

 昨日あまりに美形で目がいった彼、芝居に出ていたけれどちょい役で、台詞も出番もほとんどナシ。うまいも下手もわからない程度。……やっぱ下手だからそんな扱いなのかな?

 知人の応援している娘さん(幼少時から知っている子だそーで)が出ているというので、その子のことはがんばって探したんだけど……群舞ではわかんないし、歌は場面与えてもらってないし、ちょい役の芝居では、はっきりいって下手だった……うわー……がんばれー。
 顔はかわいいのになぁ。

 芝居がいちばん好きだったのは、前日欄で書いた濃い男。ロジャー役。素の表情より、演技しているときの方がかっこいいぞ。
 ひとりだけ「男役」になっていたことも大きいんだろうな。他の子たちとちがい、演技をする余地があるというか。
 芝居の主役は所詮ロドルフォなので、ロジャーである彼は舞台で演技をしていても、口パクだったり(ロドルフォが喋っているときは、ロジャーは口パク)ライトが当たっていなかったりするんだけど、それでも濃く芝居を続けていた。
 ラスト、死んだミミを抱きしめる姿が素敵。なんつーか、彼の心の痛みが伝わってくるのね。いい男だなあ。

 にしても、おもしろい芝居ではまったくなかった。
 演出家のせいだけど。
 制約付きで盛り上げるのは難しいんだろうな。
 去年の正塚芝居のよーな萌えがあればよかったんだが……そんなもん、まあふつーないだろうし(笑)。
 でも、ラヴシーンありの姫抱っこありの、サービスは心がけた作品だよね? 太田芝居よりマシマシ。
 

 さて、ミミの亡骸をロドルフォとロジャーがそれぞれ抱きしめて幕、なんだけど。

 最後の最後に、「愛してる」ってささやくの、どっちの男?

 幕はほとんど下りかけてるし、客席は拍手しているしで、「終わった」感が漂う中、マイクなしのナマ声で「愛してる」って声が聞こえたんだけど。

 ぶっちゃけ、ときめいたんですが。

 もう「終わった」と油断していたから。
 マイク落とされてたし、幕閉まりかけだったし、アレはアドリブなの?

 ロドルフォなのかな? ロジャーは最後のシーンも口パクだったから声を出してはいけない人だったんだろうし。
 ロドルフォくん、演技はかなりアレだったけれど、マイクがなかろーが幕が下りていよーが関係なくハマりきって演技を続けていたなら、その心意気やヨシ!
 
 だらだらと、翌日欄に続く。


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