「ぶっちゃけ、ヒョンゴって、嘘ついてんじゃね?」

「スジニに黒朱雀の印がどうのこうのって、アレなに? 伏線かと思ってたら、ぜんぜん関係ないまま終わっちゃったんですけど?」
「結局、朱雀は最初から最後までキハだったじゃん? スジニはなに?」

「ワシが思うに、よーするにヒョンゴ殿はスジニは結婚しちゃダメだとゆーことが言いたかっただけではないかと」

「えー、ひどーい。結婚しちゃダメだなんてぇ」
「そーだよなー。結婚したいよなー」
「ねー」

「はい、そこのバカップルは口を挟まない。そもそも前世でタムタムとカップルだったのはスジニでしょ? なのに現世でスジニがタムタムに想いを掛けているって流れに話がなると……」
「ヒョンゴ村長が眉を八の字にして待ったを掛けた、と」
「息子の花嫁のために用意した、ワシの『ちょっといい話』の衣装が無駄に~~」
「結婚してはならない理由は、スジニが黒朱雀になるかもしれないから……でも朱雀だろうと黒朱雀だろうと、関係者はキハのみで、スジニは無関係。スジニを黒朱雀だのなんだのと言っているのは、ヒョンゴのみ。これって……」

「幕開きの怒濤の回想シーン、ヒョンゴ村長ってばどさくさにまぎれて捏造してないか?」
「自分の子ども時代が、あーんな少女とみまがう美少年だもんねえ。自分で語って、アレはないわな」
「真実の中に嘘を混ぜることで、全部真実だってことにしてんじゃね?」

「……なんのために?」

「結婚させず、どこへもやらず、スジニを手元に置くことがヒョンゴ殿の目的ではないかと推察する」

「つまり……『光源氏計画』だね」

「姐さん、鋭い!」
「女の勘だよ」

「赤ん坊の頃からその手で育て、好みの女性に成長させる。せっかく美しい年頃の娘になったのに、ここで横から取られてたまるものかと……」
「黒朱雀の話を捏造する!」
「さすが参謀ヒョンゴ殿!」

 鍛冶屋の姐さんとか、田舎部族の若者とかその恋人とか、元仮面の男とかその育ての親の将軍とか、某村のはしこい青年だとか、まあいろんな面子が口々に勝手なことを言っていた。

 そこへ話題の主が現れた。

「捏造ってナニ、冗談じゃないっ」

「だって宝塚歌劇版『太王四神記』の『スジニ=黒朱雀説』は完璧な説明不足ってゆーか『ソレ、なかったことになってね?』的ぐだぐださで終わってしまうから、語り手ヒョンゴがフカシこいたってことでしか説明つかないじゃん」
「何故そーなるっ、悪いのは演出家だろう?!」

「光源氏計画はいいけどさー……ヒョンゴって、女の趣味変わってるよなー。スジニって美人だけど、男みたいだし。アレが理想って……」
「すでに尻に敷かれてるよな。武装してふつーに戦場出るし。村長よりぜんぜん強いし」

「育て方を間違えただけです、しとやかで奥ゆかしい女性が好みです、本来は……ほんとうなら……」

 こんなはずじゃなかった。私が貴重な青春を犠牲にしてお育てしたお嬢様なんだから、もーちっとなんとか……臈長けてたおやかな、はにかみやさんのお姫様になったっていーはずなのに。
 とかなんとか、出典どこかわかりますか?な、某アンドレ@『ベルばら』ぢゃないぞっと、の台詞を涙ながらに語るヒョンゴ先生、老けているけどこれでもまだぴっちぴちの30代。

「辻褄の合わないことは全部、語り手のヒョンゴのせいってことにしとけば、話は収まるってことで」
「原作は無視、舞台の上で描かれたモノだけがすべて。ということはやはり、光源氏……」
「ヒョンゴの趣味って……」

「お師匠様の趣味がどうしたって?」

 ひょっこり現れた、もうひとりの話題の主に、皆は黙って「うんうん」とうなずき掛け、その場を去っていく。

 残されたヒョンゴとスジニの後ろに、ピンクのハートマークに続く真っ白な道を見るのが、少女マンガの王道かと。
 がんばれヒョンゴ先生。

             ☆


 や、だから原作無視で。

 みわまつ万歳。

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