キムシン新作キターー!!

2009/10/27
花組
■主演…(花組)真飛 聖、桜乃 彩音

◆宝塚大劇場:2010年3月12日(金)~4月12日(月)
<一般前売:2010年2月6日(土)>
◆東京宝塚劇場:2010年4月30日(金)~5月30日(日)
<一般前売:2010年3月28日(日)>

ミュージカル
『虞美人』
-新たなる伝説-
~長与善郎作「項羽と劉邦」より~
脚本・演出/木村信司

中国の最も優れた史書と言われる「史記」の中で、秦の始皇帝死後の覇権を争った項羽と劉邦の戦いを軸に、項羽と虞美人との悲恋を描いたドラマティックな物語は、いつの時代も多くの人に愛されてきました。宝塚歌劇では白井鐡造の作・演出による「虞美人」が1951年に上演されるや大好評を博し、初のロングラン公演が行われました。今回は、原作である長与善郎作、戯曲「項羽と劉邦」から新しく構成し直し、また音楽・装置・衣装を刷新した、一本立て大作ミュージカルとなります。より現代的にアレンジした、新しい『虞美人』を壮大なスケールでお送りします。


 キムシン好きなので、彼の新作は単純にうれしいです。

 それが贔屓組で1本モノというのが、ちょっと残念な部分はあるが……(笑)。
 ふつーにショー付きだったら、贔屓組で万々歳なんですがね。どの作家登板だろーと、贔屓組は2本立てがいい、つーだけのことで。

 だって原作が『項羽と劉邦』でしょ? や、読んだことないんですけどね、中国モノ苦手で。
 でも、野郎ふたりがタイトルになっている歴史物なら、主役とその恋バナだけでなく、もうひとりの男も比重高いと思っていいでしょ?
 で、キムシン作品って通常2番手男役がひじょーにオイシイし。

 壮くんがどんなことになるか、それだけでもわくわくしますわー。

 キムシンと壮くんって相性いいのわかってるし、黒トカゲな彩音ちゃんも安心だし。
 まとぶんは……潤ちゃんはいろいろ気の毒だったが、今回は主役だからきっとオイシイはずだし。
 
 不安なのは我が贔屓ですよ……。
 キムシン、まっつのこと知ってるかなあ。「その他大勢」としか認識してないかもな……(笑)。
 装飾過多なハッタリ衣装、似合わないだろうなあ……ちっちゃいから……とかなんとか、悪く考え出すとキリがないが。
 台詞が3つ以上あるといいな。(前回のキムシン作品で、まっつの台詞は「出たぞトカゲちゃんが」と「ボクとピアノの連弾を」と「黒トカゲ様がいらっしゃいました」と「名探偵の最後だ」……あ、4つだ!!)訂正、4つ以上あるといいな。……うわ、書いててヘコむわ(笑)。

 贔屓を含む、主要人物以外の出番と台詞については、不安もあるが、それでも「作品を楽しむ」という点に置いて、わたしはキムシンと波長が大変合うので実に楽しみだ。
 『王家』も『スサノオ』も『鳳凰伝』も『暁のローマ』も『君愛』もダイスキだー!! 『不滅』はフェイバリットだし、『オグリ』も愛しいぞー。
 ……いちばん好き度が低いのが『黒蜥蜴』だったりするのは残念な事実。明智@オサ様単体は悶えるほどスキだが(笑)。

 
 んで。
 今回のキムシン作品発表で、ひとつ気が付いたことがあるの。
  
『虞美人』-新たなる伝説- ~長与善郎作「項羽と劉邦」より~
脚本・演出/木村信司

 これは半世紀以上前に上演された、白井鐡造せんせーの『虞美人』の再演ではない。
 原作が同じで、同じタイトルで上演されたことがある、というだけ。
 よね?

 再演ならば、

作/白井鐡造 演出/木村信司 

 と表記される。
 最近の再演モノを例にすると、

『大江山花伝』-燃えつきてこそ- ~木原敏江原作「大江山花伝」(小学館文庫)より~
脚本/柴田侑宏 演出/中村 暁

『哀しみのコルドバ』
作・演出/柴田侑宏 演出/中村 暁

 それは柴田せんせが現役だから名前を使っているのよ、という場合を考慮して作者が現在劇団にいないものを例にしても、

『ホフマン物語』-オッフェンバックによる-
脚本/菅沼潤 脚本・演出/谷正純

 再演ならば、絶対に初演の作家の名前が表記される。
 それがないから、キムシンの新作。

 今回は原作が同じだけでなくタイトルをも同じにして、昔の栄光も利用しようという魂胆が見えてるけど、別のサブタイトルが付いているから、ほんとのとこは別タイトル扱いしていいんじゃね?

 大昔にタカラヅカでも上演したことのある題材を、同じ原作を使って別タイトルで別の演出家で上演する、というと最近では、

『紅はこべ』(柴田侑宏)
『スカーレット・ピンパーネル』(小池修一郎)

『シチリアの風』(太田哲則)
『カラマーゾフの兄弟』(斎藤吉正)

 とかあるよねー。

 もっと言えば今回と同じ作家同士で、

『トゥーランドット』(白井鐵造)
『鳳凰伝』(木村信司)

 があるわけだが。

 繰り返すが、今回のキムシン新作は、わざわざ昔と同じタイトルつけてる。
 別タイトルだから別作品ですよ、新しいですよ、とは主張せず、昔作品のファンもあわよくば取り込もうと画策しつつ、じつはよく見るとふつーに新作をやる気らしい。
 『トゥーランドット』と『鳳凰伝』が別物であるくらいには。

 そう。
 これらのことから、ひとつの事柄が導き出されるのだ。

 同じ原作を使って別物を別の作家で上演、て、できるんじゃん。
 昔作品のネームバリューや当時の人気も取り込みつつ、実は別物を。

 つまり、『ベルばら』も……っ!!

 なんか『ベルばら』だけは「植爺が存命の限り、ヘタすりゃその死後も永久に、別の演出家による新作は上演できない」ってファンもあきらめている節があるけど、別に前例はあるんじゃん。
 原作が同じで、別物上演してイイんじゃん!!

 『スカピン』は海外ミュージカルだから別物上演も仕方ないとして、先に上演した演出家が劇団を去れば、新作上演がアリ、ということか?
 白井せんせーはもうこの世になく、太田せんせは劇団を去った。
 何年あとかわかんないけど、植爺が劇団を去ったあとは、原作レイプでない、正しい『ベルばら』が上演される可能性もあるってこと?!

 そのときもきっと、劇団の紹介文には、

 今回は、原作である池田理代子作、劇画「ベルサイユのばら」から新しく構成し直し、また音楽・装置・衣装を刷新した、一本立て大作ミュージカルとなります。より現代的にアレンジした、新しい『ベルサイユのばら』を壮大なスケールでお送りします。

 って書かれるんだわ。刷新……現代的……まったくなあ。
 頼むよ劇団。いつか、いつの日かまともな『ベルばら』を……!!
 感想書くのが遅れて、書く予定のことがどんどん溜まっていっている現状。
 まだローレンス@もりえくんの感想を、現時点で書けていないんだけど。

2009/10/27

月組 宝塚大劇場公演 休演者のお知らせ

月組 宝塚大劇場公演『ラスト プレイ』『Heat on Beat!(ヒート オン ビート)』の休演者をお知らせいたします。

 月組 青樹 泉

●代役 ローレンス 役 …鳳月 杏

※体調不良の為、10月27日(火)13時公演より休演いたします。
なお、復帰時期につきましては、現在のところ未定となっております。


 なんてこったい。どーしたこったい。
 ラインアップ発表と新公と同時になってしまって、どこに書いたらいいかわかんないので、前日欄だが挿入しておく。

 同日ムラに行っても、一般人にはなんの情報もない。もりえくんが休演で、新公の子が急遽代役やったらしいよ? ……そんなことしか、わからない。

 それでも幕は上がり、ショーは進む。
 本公演はどうだったんだろう。
 新公はふつーに、ナニゴトもなく上演された。

 ゆっくりの療養と、早い回復を祈る。
 矛盾していても、毎回そう思う。

 幕は上がり、ショーは進む。
 だけどひとりひとりが、たしかにその瞬間、そこにいなければならない人なんだ。

 
「もりえ、ヒゲ希望」
 とか、他愛なく願望を語って待っているよ。
(ふつーのもりえくんはもとより、ヒゲのもりえがどんだけカッコイイかとか、好みだとかを、ことあるごとに語るヒトたちがいるのだ、昨日もまた仲間たちとしょーこりもなく語っていたのだ)

 や、ここに書いても誰に伝わるわけでもないが、「待っている」人がひとりでも多くいることを、エールを送る人がひとりでも多くいることを、とにかく声を上げておく。

 
 ……早く『ラスト プレイ』感想書ききろう。(予定では、新公までに書くつもりだったんだ……)
 感想を言うならば、「かわいい」の一言に尽きる、星組全ツ『再会』

 マーク@かなめくんが無意味にきらきらかわいいんだが、彼をさらにかわいく感じさせ、身悶えさてくれるのが、ポーレット@コロちゃんとのカップリング。

 テル×コロってなんだソレ。
 や、ノーマークだった、そんな萌え。

 すっとしたイマドキなイケメンかなめくんが、あのちっちゃくてまるっこいコロちゃんといちゃいちゃラヴラヴしてるのが、手足じたばたさせたいくらい、可愛いんですが。
 またポーレットってのが、舌たっらずに語尾を上げて喋るおバカ美少女キャラ。うおお、コロちゃんのおバカ美少女ってソレなんのプレイよ? 可愛すぎる。

 他に美少女が出演しているのに、わざわざコロちゃんがこの役をやっているのが、イシダの好みというか、このテの役のイメージなんだろうなあと思う。
 ほら、ポーレット@雪組再演『再会』、ヒトミ@『猛き黄金の国』とあいようこお姉様が演じたように、語尾上げて喋るアタマゆるいけど善良な現代っ子が、きっとイシダ的に丸顔キャラなんだと思う。(しかも本来の持ち味は別格マダム系の娘役……なのに何故かロリ娘を演じさせるイシダの好みって濃いわ)
 
 あいようこお姉様のロリ娘はポーレット役に限らず毎回眩暈がしていたが、コロちゃんはまだまだロリータも大丈夫だ! たとえバウとかで迫力のマダ~ム役を経験していても、星娘らしく力強くて頼もしくても、かわいこちゃん全然OK!
 つか、うまいんだよな。「ポーレット」というイシダ作品にありがちな記号みたいなお約束キャラを、見事に演じている。うおー、かわいい~~!

 
 で。
 女の子ではないが、キモチ的には女の子に萌え萌えなハートでときめいているのが、ピエール@しーらん!

 うおおお、かーわーいーいー!

 このジェラール@れおんの義弟役ピエールっつーのは、しどころのないどーしよーもない役。
 悪役なんだかいいもんなんだかも中途半端。や、いい人なんだけど、作劇上それがわからないように、ぎりぎりのところで描いてあるので難しい。

 いろんな展開に問題はありまくりだが、イシダせんせの「見えているところに嘘はない」作りは、公平だと思う。
 試験に通らなきゃ長男ジェラールは跡継ぎとして認められないよ? 失敗したら、義弟のピエールが漁夫の利を得ちゃうよ? てな流れの中、派手ないぢわる顔の継母@ももさりが、「あなたはなにも心配しなくて良いのよ」とピエールに話しかける場面は、うまいと思う。
 どう見ても、悪妻が悪だくみをしている姿だし、その息子もどちらに転んでもおかしくなさそう。母と同じ善人ぶった悪者かもしれないし、善良でも母に逆らえないマザコンくんかもしれないし。

 真実は、悪妻の悪だくみではなく、あくまでもジェラールのために一芝居打っているゆえに、母が息子に声を掛けているんだけどね。2回目に見たら「そういうことか」と納得できる場面で、観客にも脚本にも嘘がなくて、うまい演出だと思う。
 ええ、ここでのポイントは、継母が「いぢわる顔」であるということ(笑)。善行をしているだけなのに、「たくらんでる!」と観客に思わせること(笑)。初演の五峰ねーさんといい、ももさりといい、なんてイイ仕事っぷりかしら。

 「観客を騙す」部分のグレーさで、書き込みをされていない、困った役……それがピエール。
 この役のおいしさは、「オテル・ド・モンテカルロ♪」と歌い踊りながら、銀橋が渡りがあるということに尽きる。

 や、ソレだけですよ。ソレだけ。
 たったソレだけで、「あの子誰?!」と思わせるのが仕事です。

 初演はトウコだもんよ。
 ええ、見事にやってのけてましたよ、トウコちゃん。一緒にいたのがまひるちゃんだしさー、そりゃーもーキラキラした若手スターっぷりでした。

 トウコの問題は、母と同じくたくらみ顔なので(笑)、間違いなく悪人に見えてしまったことかなー(笑)。
 絶対悪人だと思ったもの、ピエール@トウコ!!

 でも実は良い子だとわかったあと、どっかんとピエール・ブームがキました、わたし的に。
 ピエール@『再会』、わたしの「トウコの役の中で好きなキャラ」ランキング、実はナニ気に高い位置にいます。

 たしか当時、ジェラール×ピエールでSS書いた、よーな記憶がある……。兄弟BL……でも血はつながってないからセーフ、とか言いながら……ゲフンゲフン。

 まあトウコ萌えの話はともかく(笑)、ピエールっつーのは重要キャラなんです、わたしにとって。

 キャスティングを理解しないまま観ているので、音楽が変わって、「オ・オ・オ・オテル~~♪」と歌いながらしーらんが現れたのを見て、ぎゃふんなキモチでした。

 しーらんかよ、この役!!

 いやあ、テンション上がった。

 かーわーいーいー。

 銀橋がないから、唯一のお得場面すら何割か減なのに、それでもしーらんが真っ向勝負でアイドルしてる!!

 かわいこちゃん勝負。
 役としての台詞も見せ場もないから、ショーシーンでそのビジュアルと華で押す。つか、勝つっ!!という、気合い!(笑)

 いいよいいよ、しーらんいいよーっ! 自分の武器を理解した上で、正面勝負を挑むファイターは大好きだ。
 スーツ物だから地味になりがちな画面を、制服コスプレで盛り上げるわけだ、役割わかってるね、潔いね!

 かわいこちゃんな弟。
 優等生で大人受けの良い子ども。
 だけど「実は悪役?」と思わせたりもする、あまりにも翳りのない光りっぷり。

 うまいなー。かわいいなー。

 しーらんが出てくるだけでわくわくするわ。あああかわいいー。

 で、まひるポジションにいるのがせあらだしさー。眼福~~、かわいいー。

 
 美形がやることに意義がある、酔っぱらいとバイオリン弾きの、れんたとミッキー。どっちも鼻息荒くてステキ。つか、れんたはどんどんアゴが尖ってきてる気がする……?
 こいつらもすげーかわいいしっ。

 編集長@水輝涼はかわいいとはまた別の、不思議な味わいだし。つか、わたしの目に焼き付いているナルセのスタイルとの違いがすげえ(笑)。

 ドイちゃんとコトコトも、「この役がこの人たちなのか」という驚きもありつつ、コンパクトにかわいいし。
 
 いやはや、すばらしいですな、新生星組。
 トップコンビ、2番手を含み、かわいこちゃんだらけだ。
 眺めているだけで、この幸福感。

 
 幕が下りるなり、黙っていられなくて、見知らぬ隣の人と目が合うなり感動の声を上げてしまう、って、滅多にないことが起こった。や、ふつーは心の中で感動していても、声には出しません、ひとり観劇で。
 なのに、声を上げずにいられなかった。
 お隣の人も同じ気持ちだったんだと思う。一緒になって「かっこいー、かわいー」ときゃーきゃー言った。

 こんな気持ちにさせてくれるなんて。
 すげー幸福感をもらったよ。
 なにはともあれ10年なわけで。

 星組全ツ『再会』を観て、あちこちなつかしかったっす。

 当時の雪組のスターたちの姿が浮かんできて。

 スティーブ@あかしは違和感なし。もともとコウちゃんは別格向きの人だった。
 マーク@かなめは……違和感バリバリ(笑)。ナニこのイケメン?! とてもじゃないが社会人で近々結婚するふつーの人には見えなかったぞ。タータンは地に足の着いたおっさんで、一回り以上年下の女の子を騙したのか騙されたのかで結婚する、って感じだったけど。てゆーか鳴海先生……ゲフンゲフン。

 この、ジェラール@れおんの親友役ふたりっての、ほんとにしどころのない、どーでもいい役だったよなあ、と。
 改めて思う。

 でもって、タータンとコウちゃんはうまかったなあ、あの滑舌、テンポと会話の応酬、間の取り方……、と。
 改めて思う。

 会話で笑わせるコメディなので、なに言っているのか聴き取れなくてちょっと困った部分も多分にあったぞ、テル&あかしコンビ(笑)。まあ、れおんもだが(笑)。
 しかし、初演と比べて若々しいなぁ……。きらきらしてるなぁ……。

 酔っぱらい@れんた、バイオリン弾き@ミッキーの改めて見るほんとに「出番これだけ?」な脇役ぶりに、将来のトップスター、かしげとコムちゃんがこんな役だったんだよなあ、と感慨深かったり。

 「なつかしい」と、あたたかく、そしてちょっと切ない感じがずーーっとしていました、観劇中。

 
 まあそれはさておき。

 星組『再会』で思うことは、「かわいいっ」の一言に尽きる。

 どこを見ても、誰を見ても、かわいくてかわいくて手足をじたばたさせて黄色い声を上げたくなる。

 かわいいかわいいかわいい~~。

 登場人物全員、というか、キャストがかわいくて仕方がない。

 ジェラール@れおんくんが格好良すぎて可愛すぎてくらくらしているのはデフォルトとして。

 ヒロイン・サンドリーヌ@ねねちゃんがまた、可愛すぎるっ。

 『再会』自体キライな話なんだけど、その「キライ」とは別に、致命的に「作劇失敗しているだろ」と思う部分がある。
 それは、ブスヒロインが、美女に変身する瞬間を描かないことだ。

 今花組で公演中の『EXCITER!!』でもやっているが、イケてない主人公がそのイケてなさゆえにバカにされ、他人の力で思いがけず変身、ファッションを変えるだけで実はこんなにも美形だったんだ!! と、いうカタルシス。
 定番です、ありきたりです、お約束です。

 お約束なんだから、そのお約束をちゃんと描こうよ。
 タカラヅカのヒロインが、瓶底メガネのブスのまま終始するなんて、「タカラヅカはじめて観ます」な地方のおっちゃんおばちゃんだって思ってないよ。あの不細工な女の子は実は美人なんだって、わかって見ている。
 だからこそ、不細工だからとドン引きしている主人公が、美女になったヒロインを見てどきまぎする場面が必要なんだよ。

 ブティックでも美容院でもいいからサンドリーヌを放り込み、無理矢理着替えとメイクをさせて、「どーせこんなことしてもブスはブスだし」と決めつけてぶつぶつ言っているジェラールの前に、カーテン開いて変身後のサンドリーヌ登場、「ええっ、マジっすか、美人じゃんヲイ?!」と驚愕しているところに、「メガネはどこですか、なにも見えません」と中腰で目をすがめてブス時代と同じ動きをさせて観客を笑わせ、一旦がっくりしたジェラールが気を取り直し、「次はコンタクトレンズだっ」と中腰サンドリーヌを連れて出て行く。
 で、今と同じデート場面へつなげればヨシ。サンドリーヌのあのおかしな動きは、メガネが合ってなかったせいで、コンタクトレンズにすればふつーに立ってふつーに喋るんだってこともわかるし。
 『マイ・フェア・レディ』でもあるまいし、淑女特訓したわけでもないのに、喋り方や姿勢が治ってるの変だもん。

 ブス→美人の変身場面は、描くべきだよ。
 つか、このテの話でもっともオイシイ場面なのに、何故描かない?

 理由はわかってる、イシダ的には最後のあの無意味などんでん返しで「サンドリーヌは大金持ちのお嬢様」をやりたいから、同じシチュエーションである「変身」場面を作りたくなかったんだ。
 ラストの無意味な場面はふつーに「再会」場面として流していいから、それより不細工から美女への変身場面をどーんと描いてほしかったよ、初演も今も。
 初演初日、せっかく不細工とおかしな動きで笑いを取りまくったグンちゃんが、次の場面でふつーのきれーなおねーさんになっていて、盛大に、肩すかしを食らったことも思い出した。
 お約束は守ろうよ、イシダせんせ……。

 初演は過去のこととしてあきらめるにしろ、今回の星組公演では、是非是非是非、見たかったっ。

 不細工ねねちゃんが、美女ねねちゃんになってぱーーっと登場するところっ。

 そしてそれに、ぼーっと見とれるれおんっ。

 見たかったよ、そんなかわいいふたり!

 サンドリーヌ@ねねちゃんはもお、ほんとにかわいい女の子で。
 こんな子に煙草片手に不倫話されたら、そりゃジェラール@れおんもショックで顔がこわばるわ。

 でもって、ジェラールを騙したあと、お気楽マーク@かなめくんと話ながら泣き出してしまうところ、そのとぼとぼとした背中……この子かわいいっ、つか、ぎゅーってしたい、ぎゅーって!!(落ち着け)
 もー、後ろから「大丈夫だよ、泣かないで」って抱きしめてあげたくなるっす! ハァハァ。

 そしてさらに、最後の「嘘つき合戦」。
 嘘を嘘とわかったうえで、わざと悪ぶって言っているのに、それでもだんだん哀しくなって、マジ泣きしてしまうサンドリーヌ。
 そのいじらしさ、切なさ…………この子かわいいっ、つか、ぎゅーってしたい、ぎゅーって!!(落ち着け)

 も、ねねちゃん可愛すぎ。
 血管切れるかと思ったわ……(笑)。
 そーいや『大坂侍』でも、可愛すぎて取り乱したな、あたし……。

 
 で、他のキャラも可愛いんだよー。たまらないんだよー。
 つーことで、「かわいい」話、翌日欄へ続く。
 ともみん、きれいになったなあ……。

 と、しみじみした『コインブラ物語』

 や、昔からきれいなんだろうけど、彼は顔より姿の方がきれいな人認識だったんだ、わたし的に。
 『龍星』のニセモノ(いや、本物)だとか、『ダンディズム!』ポラリスのダンサーとか。顔見えません、でもあのきれいな姿と動きの男は誰? って。
 わたしがともみんに傾いたのは『エル・アルコン』新公でその健康的体育会的個性が楽しかったことと、その本公演『レビュー・オルキス』でいつもの最前列端っこに坐ったときに目線くれまくって構ってくれたことによる。
 それ以前はもちろん知っているけれど興味がないから、とくになんとも思っていない。そんな状態でも、彼の姿の美しさはときおりぽーんと目に飛び込んできた。だから、姿が美しい人認識。顔は……ええっと、とりあえずわたしの好み(オサ様とか水しぇん系)ではない、ということで(笑)。

 ……とゆーことだったわけだけど、最近きれいになったよなあ。

 この恋する水夫長@ともみんがまた、すげーイケメンぶりで。
 体育会系の役とキャラなのはいつもの通りなんだが(笑)、それでも乙女好みの「甘さ」や「きらきら感」がある二枚目なのよ。
 いやあ、最初に登場したとき「誰?!」と2度見しちゃったよ(笑)。

 だってこの水夫長くんは、客席から登場するのよ。かっこいいイケメン様だし、芝居しながら客席通って登場するしで、すげー重要キャラだと思うじゃん!
 うお、このかっこいーにーちゃんともみんかよ、そんなものすごい役だったのか、いかにもな少女マンガ系な姿ででワケ有りに「最後の航海」の話をして、結婚の話をして、どこの死亡フラグ?! なことをいちいち全部台詞で説明するんだもん。
 彼がこれからどう25歳王子@トド様やイネスちゃん@まりもちゃんの恋物語とふたつの国家を揺るがす大陰謀劇に関わるのかしら、そしてどんな劇的な最期をとげるのかしら、「最後の航海を終えたら、愛するカノジョと結婚だ」と言うからには最後の航海で死んでしまうはずだし! わくわくわくっ!!

 …………まさか、わざわざ客席登場させて、結婚だの最後の航海だのといろいろいろいろワケ有り気に語らせて時間使って、ストーリーと無関係な、ただのモブキャラだとは、夢にも思いませんでした。
 いてもいなくても同じ。実際、そのあと存在を忘れるくらい出てこないし。

 作者、どんだけ作劇の基本わかってないんや……。

 まあこのあと、さらにひどい「重要人物フラグ立てまくって登場、ただのモブキャラ」として、盗賊たち@ベニーその他いっぱいが登場するので、ともみんだけがひどいことになっているわけじゃない、作者がアホなだけとわかるんだけど、ともみんは最初だったからなー(笑)。

 悪いのはもちろん作者だけど、ここまで「ただのモブキャラを重要キャラだと誤解させた」要因のひとつに、ともみんがキレイってのは、あったと思う。
 そのあとの盗賊@ベニーが「ただのモブキャラを重要キャラだと誤解させた」要因のひとつと同様に。

 無駄に豪華に美形ばかりを取りそろえている『コインブラ物語』、冒頭の王宮パーティで、やっぱりちょろりと目立つ場面をもらっているみやるりが、その美貌ゆえに目に残り過ぎて「みやるり、貴族の役? どんな役割のあるキャラなの?」とわくわくしてしまったり。(答え・もちろん、ただのモブ)

 いやあ、罪が深いですなあ、星組美形軍団(笑)。
 
 で、ストーリーに無関係な人ばかりわいわい出まくるわけわかんない話の中、めずらしくストーリーに関係のある役、ロドリゲス@真風くん。

 とりあえず、かっこいいです。

 黒尽くめの悪役。歌わない踊らない、無表情に説明台詞を喋るのみ。
 や、いい感じっす。やることが少ないと、真風くんの美貌のみが際立って、すげーカッコイイっす。
 歌ったり踊ったり演技いろいろしたりすると、途端ヘタレるんだけどね(笑)。本編ではマジいい感じっす。やっぱ彼の顔、好きだ……。だからこそがんばって、もっといい表情を作って欲しいなあ。

 あと、脇役だけど王子の小姓@マイケル。すげーかわいい。
 もう子役は勘弁してやれよ、と思いつつも、こーゆーかわいい少年役をやるとオイシイ子だよなあ。
 されど2幕でどさくさまぎれの尼僧をやっていたとき、しっかりオカマで気持ち悪かった(笑)ので、子役だ少年役者だといっても、ちゃんと男役なんだと安心したり。

 なんかひたすら、登場人物がキラキラと美しすぎて。

 ストーリーほとんどナシで作劇間違いまくりのどーしよーもない公演なんだけど、ほんとキャスティングはいいんだよなあ。

 25歳という年齢はさておき愛に生きるトド様王子に、可憐なヒロインと元気な盗賊娘をまりもちゃん。キラキラお貴族サマすずみんに、ワケ有り盗賊ベニー、「年下の彼氏」みやるり、誠実な体育会系水夫ともみん、はしこいかわいい少年マイケル。
 それぞれが得意分野を活かし「アテ書きだよね? こーゆー**が見たかった!」を正しく見せてくれている。

 キャストとキャスティングは良く、衣装は豪華で音楽も耳に残るキャッチーさ。
 何拍子も揃っているのに、作者がダメすぎるってのが、もお……。「宝塚歌劇団」の問題点をそのまま内外に宣伝しているような、困った公演っぷり。
 自分で作った賞を自分で受賞してるよーなもんだもんな、公平氏のしていることって。ふつーなら恥ずかしくてできねーよ……。

 ともかく、すげーもったいない公演だった。
 役と設定をそのままに、1からストーリーを書き直させてくれ、オレ、いくらでもゴーストライターやるよ! と、懇願したくなるっす。

 伏線張ってそれを回収するの、得意っちゅーか、そーゆーとこに萌えるんだよわたし。ちゃんと水夫長も盗賊とその出生の話も、本筋に絡めて盛り上げて、最後に風呂敷もたたむからさ。代わりに書かせてくれ……!! 心の叫び。

 いやその、ただの素人のタワゴトですが。無責任な1ファン位置からならなんでも言える、つーことで(笑)。

 しかし、もったいない……。

 
 あー、えーと、お姫様@りこちゃんは、えーと、いろいろ足りていなかったんだが、はじめての大役だから仕方ないのかなと。
 なんつーか、「固い」。足りないことはいろいろあっても、それ以上に、せっかく今持っているものすら解き放っていないような印象。
 まさか彼女が準ヒロインだとは思わず観に行ったので、びっくりしたまま終わってしまった。
 や、りこちゃんはお父様とお話ししたことがあったので、勝手に感慨深く眺めている娘さんなのよ。……といっても別に、知り合いでもなんでもないっす。ある新公でたまたま席が隣の人と成り行きでお話ししたら、りこちゃんのお父様だったという。
 それで今回も、よかったねえ、抜擢だねえ、がんばれー、と勝手にオヤゴコロで見てしまったよ……オレ単純だから、ちょっとでもきっかけがあるとそれ以来「あ、あのときの子(はぁと)」ってチェックしちゃうから。
 キラキラ美形揃いのキャストの中、キャリアが不足しているりこちゃんは不利だったと思うが、この経験をもとにさらに美しく華やかになってくれるといいな。
 まりもちゃんは真ん中向きなのかもな、と、はじめて思った。

 『コインブラ物語』を観て。

 ご、ごめん、はじめてだ。
 わたし的にまりもちゃんは、路線娘役だということはわかっているけれど現時点でまだ未知っちゃーか「これから」の子で、今すぐどうこうという子じゃなかった。
 ふたつのWSヒロインも『Kean』ヒロインも新公も、全部ナマで観てきているし、毎回ふつーにうまいと思っていたけれど。(あ、最後の『太王四神記 Ver.II』新公だけ観てないや)
 うまい、及第点である、ということと、「今すぐトップOK」とか「この子を真ん中にしないでどうするの」と思うこととは、まったく別で。
 わたしが「トップ娘役」に求めるものを、まりもちゃんはまだ満たしておらず、それは「若いから」「下級生だから」ってことで、「トップ候補生」としては目に入っていなかった。

 今のわたしがトップ娘役とその候補に求めているモノは、「ガーリッシュな輝き」なんだなあ、と、改めて思った。
 
 わたしは、「女の子」が好きなんだと思う。
 「女の子」というイキモノが持つ、顕著な部分。
 かわいくてキラキラしていて自己愛と狭い視野から生じる小悪魔的な部分があって。オシャレがダイスキで自分を飾ることに何時間でも費やせて。
 与謝野晶子の歌にある「おごりの春」というフレーズが似合う、今まさに美しい、とびきりガーリーな存在を、愛おしく思う。

 そこに、「タカラヅカ」的清く正しく美しくのスピリッツをブレンドした感じが、わたし好みの「路線娘役」なんだと思う。
 たとえばそれは、この公演で退団してしまうちゃきちゃんとか、『ラスト プレイ』で好みど真ん中な女の子を演じている蘭はなちゃんだとか。
 今、星組娘役トップとして花開いているねねちゃんだとか。
 ああ、女の子っていいな、かわいいな、と思う「やわらかさ」「華奢さ」に萌えるらしい。
 きれいに巻いた長い髪、小さな頭の上にマボロシのティアラが載っているよーな、「プリンセスちゃん」な女の子が好きだ(笑)。

 好みは変動するモノなので、あくまでもわたしの現在の萌えだけど。

 今のわたし的に、まりもちゃんは「トップ娘役」という狭い範囲のタイプに合う人ではなかった。

 うまいことはわかっているけれど、わたしが彼女から感じるのはうまさより美しさより「骨太さ」で。
 ずっしりどっしり本物系っていうか。
 それは骨格とか背が高いとか太っているとかいう話ではなくて。

 芸風的に、どうにも「重く、太い」と感じていた。

 わたしがタカラヅカ娘役に求める「きらきら」「華奢」な感じがしなかったの。あくまでも、芸風に。
 若手のバウや新公だと、まりもちゃんの「実力」……骨太さは頼りない主演少年を支える「力」となる。だから諸手をあげて歓迎したけれど、ヒロインではない、準ヒロとして出演したときはそれらが裏目に出る。
 『ハレルヤ』や『ブエノス』での準ヒロイン位置の女性を演じているのを見て、安定した巧さに感心すると同時に、その重さ……軽やかさのない堅実な芸風、きらきらよりは輝度の低い渋い色が強く印象に残った。
 実力があるから、重要な役で出てくれるとうれしい。でも、骨太すぎて場に沈むなあ。というのが、わたしのまりもちゃん感。
 彼女が登場しても、「キラキラな女の子キターー!」という昂揚感がない。

 実力に破綻がないことはたしかだから、真ん中に立つ人になっても文句はない。月組トップ娘役に決まったことはよろこばしいことだし、実力派のきりやんに相応しい実力派娘役ということで、高品質の舞台を約束されたよーなもんで、一観客としても心からありがたい。
 おめでとう、と思ったことに嘘はない。

 でも、わたし好みの「真ん中」さに欠けていると思っていたのも、たしか。

 それがなんか、覆されたというか、「真ん中アリぢゃね?」と思ったんだ、『コインブラ物語』を観て。

 トド様の相手役、イネスちゃんを演じる姿は、ひたすらいじらしく、かわいらしい。2役の盗賊娘ミネルバも、イネス役との対比でこれまた強くはじけて魅力的だ。
 そういや、『Kean』のときもかわいかったなと思う。
 わたしが路線娘役に求める「ガーリーさ」があったなと。

 脇役とか別格風味のヒロインやらせるから、ダメなんじゃね?
 と、開眼。

 真ん中で、いかにもなヒロインを演じるなら、それも「主演男が頼りないから支えなきゃな姐さん女房ポジ」ではなく、経験豊かな主演男がどーんと構えて、その腕の中で自由に泳がせてもらえる女の子なヒロインなら、ふつーにガーリッシュなヒロインちゃんですよ!!

 むしろそうなると、なまじちゃんとうまいだけに、安心して世界に酔えますよ。

 イネスちゃんきれい~~、かわい~~、健気~~。
 ミランダちゃんキュート~~、キラキラ~~。

 そうか、この優等生委員長が女の子っぽく見えなかったのは、男たちが悪いんだな。
 最近の男たちはもお、なよなよした草食系ばっかでさ。きれいでやさしいのはいいけど、甲斐性がないんだよ。だからこーゆー「強い」女の子はわりくっちゃって、「あねご」になっちゃうんだな。
 いかにもなキラキラした女の子たちの横で、「強い女」「頼れる存在」として、女子カテゴリから外されてるんだわ。

 と、妄想走っちゃうくらい、どーんとキましたね。
 だってだって、まりもちゃんの嫁入り先はきりやさんですよ? 大人の男ですよ、経験豊富ですよ。まりもちゃんのこと余裕で受け止めて、腕の中で自由に泳がせてくれるよねえ?
 彼女の、とびきりかわいらしい「女の子」な顔を、引きだしてくれるよねえ?

 と、未来にドキドキするくらい、トド王子25歳(笑)に愛されるまりも嬢はかわいらしいプリンセスちゃんでした。

 実際、「イネス」という役は「ヒロイン」という要因以外なにもないよーな、どうしようもない役で。
 タカラヅカのヒロインに求められている「美しさ」「清らかさ」「健気さ」とあくまでも外的イメージのみを求められ、そこだけで完結してしまったような役。……作った人が、そーゆー漠然としたイメージだけで脚本書いて終了しちゃってるのがよくわかる、気の毒な役なんだが。
 だからこそ、「タカラヅカ娘役力」をとんでもなく求められ、発揮する必要があった。

 まりもちゃんは見事にこなしていたと思う。
 や、すげえすげえ。

 そして、対するミランダの躍動感。
 こちらは作者云々よりも演出家の色付けかなと思うんだが、はすっぱなんだけれど清潔感のあるかわいらしい女の子を演じていて、ヒロイン力が更に高まった感じ。

 観ていてたのしかった。気持ちよかった。
 ああ、「タカラヅカ」だわ、と思えた。
 ほんときれいになったねえ、まりもちゃん。女の子だねえ。かわいいねえ。
 書く順番や日付がめちゃくちゃですが。

 ちゃきちゃんはいったいどうしてしまったの?!

2009/10/29

星組 東京特別公演 休演者のお知らせ


星組 東京特別公演 日本青年館『コインブラ物語』の休演者をお知らせいたします。

 星組 水瀬千秋

■代役 イザベラ役 ・・・夢妃杏瑠

※体調不良の為、全日程(2009年10月30日~11月5日)休演いたします。

 なんかもお、わけわかんないっす。
 才能ある子なのに。努力して難関突破して入った劇団だろうに、こんなラストはつらすぎる。
 DC休演もびっくりだったが、きっと有終の美を飾るために万全を期しているのだと信じていた。願っていた。

 もう、ヅカの舞台でちゃきを見ることはないってこと?

 なんてこったい……。

 『コインブラ物語』初日、イザベラ@ちゃきは華やかに歌い踊ってました。

 退団発表は残念だけれど、最後の舞台できっと燃焼してくれる、きっと2番手娘役なのだろうし、と思っていたので、実際舞台を見て首を傾げた。
 あれえ? 役的には2番手娘役はお姫様だけど、お姫様はちゃきちゃんじゃない……。なんで?? ちゃき、役は?

 イザベラは早い話がいなくてもいい役で、まあそれを言うとほとんどの人がそうなんだけど、それにしてもコレだけなのか、と肩を落とした。いやその、いい役だよ、このどーしよーもない話の中で、歌とダンスがあって1場面ヒロインのよーに真ん中に立てるんだから。
 ただの脇役、ただのモブなんだけど、それでもダーリン@ともみんがいて、キャラクタとその背景を役者も観客も想像できるのはありがたい。

 愛だよね、愛。
 ちゃきの最後の役が、愛のある役でよかった。

 
 真ん中で歌うイザベラは、義賊役のペニーたちがそうであるように、本筋と無関係なのにいきなり1場面ミュージカルする。
 本筋をストップさせて大騒ぎ。

 で、この本筋と関係ない、主要人物でない人たちの場面が本筋より遙かに派手で盛り上がる……という、『コインブラ物語』ってのはほんとどーしよーもない作品。
 も、本筋やるのやめたら? と言いたくなる(笑)。

 脚本を書いた人が「物語」としての基礎をまったくわかっていないんだと思う。「物語」ってさ、方程式とか数字的なルールがあるんだよ? それに則って書かないと成り立たない部分っていうのはあるんだよ? それがナニか理解してもいない、できない人は、そもそも作劇に向いてないからやめておいた方が恥をかかなくて済むよ?
 素人が書いた設計図を元に家を建てろと言われた酒井せんせは気の毒だが、酒井せんせも物語を構築する能力のない人だ。ショーは作れるけど、ストーリーを作り進めまとめることは最初から出来ない。
 こんなふたりが組んで作ったもんだから、そりゃーもーステキにめちゃくちゃ。
 とりあえずショー作家の酒井せんせが自分のスキルで出来る、「ストーリー以外の部分」は楽しく作ってあるんだけど……なにしろ「ストーリー以外」で「本筋と関係ナシ」だから、そこが楽しかったり盛り上がったりすると余計『コインブラ物語』自体が「いらない」ものになるという。
 とまあ、建てられた家はボロボロなのに、なまじ権力者たちの遊び場だから、家具や装飾品はやたら豪華絢爛。
 キャストも豪華で、衣装も豪華。
 
 トドを求道者だと思うのは今にはじまったことじゃないが、トップスターになって以降、彼は劇団の意向に諾々と従うようになった。やんちゃはしない、わがままは言わない。与えられた仕事を黙々とこなす。
 どんなひどい作品のひどい役でも、全霊を挙げて演じる。
 ……ただそれはファンや観客に向けて、開かれた演技をするのではなく、自分の中に向かって極めていく職人のようだ。己れの道を極めることにこだわる求道者のよう。
 そーやって『花供養』他、権力者たちの遊びにつきあって、「主演」と持ち上げられてきた。
 トドの立ち位置がどうかは置くとして、役者として男役として、極みの域に入った人だと思う。
 どんだけ理にかなわない内容でも展開でも、感情をつなげて爆発させて、無理矢理演じきってしまう。
 あの「大仰芝居」はすごいスキルだと思うよ、トド様。公平氏や植爺他、ご高齢の方々にわかりやすく響くタイプの芝居なんだろうな。

 ただわたしは、トド様はそれだけの人ではないと思っているので、いっつもいっつも同じよーな扱いと同じよーな芝居色を求められていることが残念だ。
 トド様自身が「いつもの役」「いつもの扱い」しか求めていないとしても、やらせれば出来るんだから、他のこともやらせてみればいいのに。そんだけの能力がある人なのに。やれと言われれば諾々とやりますよあの人。
 もったいないわー。きりきり。←歯ぎしりの音。

 
 んでもうひとり。
 今回、がたがたの家を支え、装飾するために連れてこられた人、すずみん。

 楽しいのも盛り上がるのも、本筋以外のショー場面だから、本筋に出演しているビメンタ@すずみんは辛抱役。
 本筋に出演、ったって、その本筋も3行あったら片が付くよーなすっかすかぶり(作者がもとのあらすじをふくらませていない)なので、ただきれーな衣装を着て立っているだけのよーな役。
 
 政略結婚させられたお姫様を愛し抜く親衛隊長役なわけだが、これがもお、いろんな意味で大変で。

 ないに等しいストーリーの、ないに等しいキャラクタで、ただきれいなお衣装だけ与えられて、作品を華やかに波瀾万丈に盛り上げなければならない。
 や、ストーリー作ってないのは作者じゃん! キャラクタ作ってないのも作者じゃん! なのに豪華な着せ替えだけさせて、役者に「あとはヨロシク」ってナニゴト?!

 こんな状況ですずみんが、ストイックに戦ってます(笑)。

 お姫様を愛している臣下の男……だから、いかにも王子様になってしまってはまずい。抑えなければならない部分もあり、基本スキル「王子様」なすずみんも手こずってます。
 また相手役のお姫様が華やかに美しい人ならすずみんももう少しやりやすかったと思うけど、ええっとその、相手はかなり下級生だし、いろんな足りない部分をすずみんが補ってやらなければならないんだよね。

 これだけ苦戦している涼さんっていうのも、なかなか味がありますな(笑)。プルキル@『太王四神記 Ver.II』とはまた別の手こずり方。
 プルキルは役に対してすずみんが足りてなかったけれど、今回は役不足すぎて抑えるのが大変、抑えながらも作品は支えなきゃって、「どっちやねん!」などーしよーもなさ……。

 ベニーやともみん、ちゃきはある意味良かったのかもしれないよ。
 本筋に関係ある役の人たちはみんな、大変なことになっていたから。作者が作劇をわかっていないもんだから。
 役のナイ人たちの、ストーリー以外の場面こそが、『コインブラ物語』の醍醐味だから。
 悪役チームでいちばん目を惹いたのは、わたし的にベレッタ@一色氏だ。

 ……仕方ないやん、一色氏スキーなんだもん。彼のあのみょーな枯れた色気を愛でているんだよ。
 コメディだとは思わないから、ふつーにシリアスな役だと思って見ていたよ。えらくもったいつけてるなあとは思ったけど。

 わたしは一色氏をあまり芝居のうまい人とは思ってなくて、だからまあ、せっかくのクール系二枚目役をやったらやりすぎておかしな感じになっているのかなと自己解決して見ていた。
 変な力みはあるけど、黒尽くめの殺し屋、かっこいー。

 お笑いだと思ってなかったし、悪役チームが芸人チームだなんて思ってなかったんだから。

 2度目の登場では、もったいつけてるどころかただの変な人になっていて、どーやら「笑っていい人」だとわかる。
 あー……二枚目役だと思ったのに……ただのお笑い役だったのか……。

 や、お笑い役っていうのはオイシイ役でもあるので、お客様に笑っていただくってことは、その分記憶に残る可能性があるわけで、「あの殺し屋の人、変だったねー(笑)」と観劇後に言ってもらえたら万々歳なんだってわかるけど。

 いやあ、一色氏演じる「空気読まない殺し屋」って、なんとも言えん、独特の味がありますねえええ。
 成功しているのかどうか、わたしにはわかんないけど。

 とりあえず顔が好みだから、すべて許す。

 あの顔でかっこつけられたり変な溜めで喋られたり、もーソレだけでたのしいっす。
 好きだなあ、一色氏。

 
 物語の流れ的にも設定的にも、最初ドシリアスで登場した悪役チーム。なのにクライマックスはお笑いで、オチもお笑いという誠意のない展開になる『ラスト プレイ』

 最初にヴィクトール@そのかが人質にされ、ムーア@きりやんが助けに行く段階で登場してもよさそーなもんなのに、話だけで出てこなかった。
 その後アリステア@あさこの記憶喪失話がえんえん続くので、さらに登場は遅くて。

 もりえくんは、いつ出てくるんだろう? と、首を傾げた。

 待てど暮らせど出てこない。
 ひょっとして見逃していたのか、役ついてなくて街の男とかコロスとかで帽子被って踊るだけの人だったのかと、マジで不安に思ったくらいだ。

 医者その1@マギー、医者その2@みりおが登場し、このランクでこの役と出番? んじゃいったいもりえはどーなってんの?

 ……シンジケートのボスとして登場したときは、ほっとしたよ。
 役付いてんじゃん! しかも、かなり大きな役じゃん!! と。

 ……大きくなかったね。
 ただのアホでただのお笑いだって、知らなかったんだもん。

 でも、それはとどのつまりアテ書きだったのかもしれない。
 わたしはシリアスに展開するべきところを「バカばっかりでーす♪」とお笑いに逃げてオトしてどっか~~んって、ドリフのコントみたいにぐちゃぐちゃにして笑って終了、というのは好きじゃない。逃げるな、楽なことをするな、真面目にやれ、と思う。
 が、それはアテ書きの結果というのもあるんだろうか?

 というのも、「マフィアのボスです」ともったいつけて登場したローレンス@もりえくんが、どーにもこーにも、頼りなかったからだ。

 えーと、この人が、ボス?
 いや、シンジケートのボスは不明で、この地域を任されている男、つーことだからラスボスではなくて章末に登場する中ボスなんだろうけど、ラスボスと対決する予定のない物語の場合は、組織の中では幹部止まりでも、物語的にはラスボス扱いなんでしょ?
 ラスボスにしては、貫禄なさ過ぎでしょ? つか、なんかひょろいおにーちゃんだし。もっと貫禄のある、大人の男であるべきじゃないの?
 
 もりえくんはなまじスタイルが良くて、スマートな二枚目の風情を持っている。
 しかも、顔が童顔。
 それでもったいつけた大人の胡散臭い男の演技をしているので、ひ弱さ増大。

 どうせなら、「ハタチそこそこの若造だけど、このへんのボスなんだぜ。若いだけに考えナシだからナニするかわかんなくてコワイぜ」とやってくれれば良かったのになー。
 見た目と芝居が合ってない気がして、視覚情報に混乱が生じた。

 だけどここはタカラヅカなので、全部好意的に解釈する。
 もりえくん、大人の役なんだー。がんばってるなあ。ボスに見えないけど、ボスなんだな、がんばれー。

 見る側ががんばって「ボスに見てあげないと」と思っていたら。

 ……ただのアホキャラでした。

 第一印象は、正しかったのか。

 貫禄がないのも似合ってないのも、もったいつけて「ボスです」という喋り方をしているのが違和感でも、最後にドリフ的お笑いどっかーんになるなら、それらは全部正しかったの??

 いやしかしなんかチガウ気がする……。
 もりえくんが目指したモノと、この展開はチガウのでは? マサツカは、ナニを思ってこんな演出にしているんだろう??

 いっそ、もっとわかりやすく胡散臭いキャラにするとかすればよかったのに。
 ヒゲつけて、ことさらに大物な仕草をさせて。
 マサツカの美学に反するのかな、役を演じる底上げのために外見をいじるのって。
 でもヒゲのもりえの方がセクシーでかっこいいのに~~。外見からわかりやすくした方が、観客もすんなり入っていけるのに~~。
 もりえくんはがんばっているんだけど、この演出の半端さには首を傾げるばかり。

 まあなんにせよ、地団駄を踏むもりえは、この作品の見どころのひとつである。きっぱり。

 とりあえずかわいいから、いいんだよなきっと。

 お笑い役っていうのはオイシイ役でもあるので、お客様に笑っていただくってことは以下略。

 
 でもほんとのとこ、シリアスにかっこいいことで、「オイシイ」と思える役を書いて欲しいなあ、座付き作家様。
 女無用の『ラスト プレイ』、女性キャラたちの話。

 エスメラルダ@あいちゃんは、「ひとめでわかる」いい女だ。
 一斉にざーっと出てきたけれど、ムーア@きりやんの仲間のなかでは紅一点でわかりやすいとはいえ、とにかく登場した瞬間に、「いい女キター!」「高そうな女キター!」と思える。
 デイジー@『グレート・ギャツビー』でもそうだったけど、登場した瞬間「彼女がいちばんの美女」とわかるのがすごい。

 ヒロイン不在の物語だから、あいちゃんの扱いはなんとも半端で、もったいない限りだが。
 それでも、その半端な扱いの半端な役を、きっちり演じていたのはあいちゃんだからだろう。

 エスメラルダはムーアの恋人。つか、妻。正式な手続きがどうあれ、人生のパートナー位置。
 アリステア@あさこの物語だから、ムーアとエスメラルダのことは画面の真ん中にして描いてくれないけれど、行間が見える濃密なカップルぶり。
 ケンカしたとして、別れるのどうのと言ったとして、そこに濃ぃいドラマがあったんだろうなと思わせる。そこをあえて教えてくれない・説明してくれないのがマサツカ芝居(笑)。

 されどこのふたりの痴話喧嘩が妙に重い。
 きちんと書く気のない、「アリステアがムーアと間違えられて撃たれる」状況を作るためだけに取って付けられたエピソード。
 だからそれだけで終わっていいようなものなのに。

 演じているのがきりやんとあいちゃんだから、本筋を喰う重さが出てしまっている(笑)。

 や、それであの話はどーなったのよ、ムーアとエスメラルダよ。ムーアがどこぞの女と浮気して、エスメラルダが実家に帰ったって? よっぽどのことがない限り、ソレはあり得ないでしょう。よっぽどのことが起こったわけでしょ? ソレを教えなさいよ、記憶喪失の男のことは置いておいて!!

 と、思えるくらいには、重い。濃い(笑)。
 ストーリー進行上の取って付けたエピソード、どーでもいい話なんだからソコに食いつくなよ! 忘れろよ! 本筋見ろよ! と言われても、きりあいが本気で愛憎芝居はじめたら、そっちに気が散ってしまうって。

 ムーアとエスメラルダの芯を描いてくれないまま、何故か突然はじまる三重唱。
 マサツカ……ほんとに、手ェ抜いてないか? 変だとか思わないのか? と、アタマを抱えつつも、もう仕方ない、あるものだけを愉しもう。

 クライマックスのぐだぐだ、お笑いに逃げてどっかーんで大団円を迎える、エスメラルダ救出大作戦。

 ここでエスメラルダが怒りながら登場するのが好きだ。

「全部見てたわよ!!」
 と、ムーアにくってかかる。

 自分のせいでムーアが危機に陥る。そりゃ自分も助かりたいだろうけど、それよりやっぱムーアが大事じゃん? 助けて、と、逃げて、が一緒になってぐるぐるしているだろう、人質の心境。

 そこへ、ムーア登場。
 ああ、やっぱりアタシを見捨てずに助けに来たんだ……そーゆー優しくて不器用な男なのよ……でもなんで来たのよ、逃げてよーーと、思っていたら。

 ムーア、ダイナマイト持ってますがな!

 ちょっと待って、あのバカなにやってんの?! ダイナマイト? 信じられない、やめてよちょっと!!

 ビルの上、悪者の愛人?アヌーク@ほたるちゃんとエスメラルダが、どんな会話していたか、想像するだけで愉快過ぎる。

 互いの男のバカっぷりを責めつつ、男を守りたくて女の闘いを繰り広げていたんだろうなと(笑)。

 自分のために、ダイナマイト持ってやって来る男。

 そんな男の命ギリギリのハッタリに、命懸けの「あいらびゅ~ん」に、心が動かないはずがないっ。

 どんな思いで、見ていたのか。
 ダイナマイト持って、なんかいろいろコント(笑)をやっているムーアと仲間たち。VS悪者。
 どんな思いで……エスメラルダ。

 想像すると、泣けてくるんだ。

 そりゃ、せっかく助かってムーアと再会!の瞬間、トップテンションで怒ってるよね、怒鳴りもするよね。
 でも、強く強く抱きしめるよね。

 ああもお、ダイスキだ。

 オトナだからかえって滑稽で、愉快でどーしよーもなく愛しい人たち。

 愛しい、男と女。

 
 現在の月組には、トップ娘役がいない。
 だからって簡単に単純に女無用な話を書いた正塚せんせ。

 なんでこんなことになっちゃうのかな。
 もっとちゃんと、書いて欲しかったよ。
 こんなにこんなに、「描かれていない部分」を盛り上げることの出来る役者が揃っているのに。

 
 主人公を愛している少女、という意味ではヒロインに近いかな、というヘレナ@しずくちゃん。

 アリステアの幼なじみで、唯一の理解者。
 言い出せずにいるけれど、彼女がアリステアを愛しているのはよーっくわかる。
 つか、その「言い出せない」感じがじれじれしていてすごい。

 言えないのはわかるよ。
 男が、「言わせない」んだもの。
 空気読まない女なら、自分の気持ちを押し付けるだろうけど、男がこれだけ「ただの友だち、ありがとう」オーラ出してたら、ナニも言えないって……かわいそおおお。

 そのいじらしい、小動物みたいな女の子は、しずくちゃんアテ書きなんだろうなあ。
 愛人風イイ女があいちゃんアテ書きのように。

 ヘレナがいじらしい分だけさらに、「主人公に恋愛も描いてくれよ」と思うよな……正塚せんせぇ。
 トップ娘役がいないことと、主役が恋愛感情を持つかどうかは別物なのに。

 
 短い出番ながらテーマ語っちゃいます、な女の子ポーリーン@蘭はな。
 かーわーいーいー。
 このドライな女の子が、こんな性格と態度で人生渡っていけるのは彼女が美少女だから。

 女の子ってイイよなっ。 

 と、握り拳で思っちゃうよ。
 小悪魔OK、性悪OK。
 かわいければ許す。つか、かわいい女の子はそれを武器として、男たちを振り回してヨシだ。
 そーでなくっちゃ、だ。

 都合のいい男としてクリストファー@まさおとつきあいつつ、アリステアを真っ正面から口説くポーリーンは、かわいくてダイスキだ。
 んで、この子に夢中なクリスも好きだ(笑)。

 
 役の少ない正塚芝居。
 看護師アイリーン@ゆりのちゃん。
 『マジ鬱』に引き続き、ナニ気にマサツカのお気に入りか。
 知的で有能そうで、目を引きますな。感情が見えにくいところが、彼女の物語を知りたくなるようなステキなキャラクタ。

 あとは前述のアヌーク@ほたるちゃんが美しくてステキ。
 クールでダークな美女っぷり(笑)。
 そして、ナニ気にオチ部分の彼女のはじけっぷりが素晴らしい。

 空気読めないローザ先生@あーちゃんステキ。多くは語らない(本人はノンストップで喋ってるけど・笑)、説明もないが、彼女がどーゆー人なのか短い出番でわかりすぎる。

 
 女性キャラをもっと書き込んでほしいなあ……マサツカ作品の女性、好きなんだよなあ。
 魅力的なキャラクタがいっぱいいるのに。「無用」ってことで放置。
 もったいない。
 で、ムーア@きりやんを好きなせいがたぶんにあると思いますが、今回クリストファー@まさおがめっちゃ好きです。

 うわー、なんかど真ん中キタよなにコレこの好みの男。

 クリストファーは脇役で、カメラのフレームの端や外にいる。だから彼自身のキャラクタや人生が垣間見えるのは、フレームの中に入ったわずかなときだけ。
 そのちらりちらりと入る情報が、いちいちツボだ。

 ふつーに若い男であるらしいこと。
 若さゆえの無邪気さと無神経さ、明るさと希望と優しさを持っている。
 浮ついたところ、安っぽいところが多分にあり、彼がつきあっている女の子ポーリーン@蘭はなのはじけたキャラクタも納得。彼女に対するやさしさと独占欲も、いかにもな感じ。
 
 で。
 で、ムーアのことが好き。

 特に語られることはない、わざわざ台詞でどうこう表現されないけれど、見ていればわかる。
 ムーアのことが好き。
 たぶん、命懸けで好き。

 ムーアのためならなんでもするんだろう。
 それが彼にとっての「当たり前」だから、いちいち口に出して言わないんだろう。

 この、「当たり前だから、説明しない」あたりがツボです。大仰に語ることなく、銃を持ってムーアについていくわけだ。
 つか、悪者から宣戦布告状受け取るなり、まっすぐにムーアのとこへ駆けつけて、しかもすでに銃装備してて「一緒に行く」って断言ですよ。どんだけ本気で来たんだ。
 彼を守って闘う、彼のために死んだり彼と共に死んだりしたいわけだ、それが彼の「当たり前」なんだ。

 若い男にありがちじゃないですか、年長の友人を尊敬していて「兄貴のためならなんでもやるっすよ」なチンピラって。なにかにつけて「兄貴」連発、威嚇したり寵を争ったりやりすぎて叱られてしょんぼりしたり。
 男子の中にはありがちな光景かもしれないけど、あまりによく見かけるのでうざったい。
 クリストファーって位置的にはムーアのこういう「弟分」なんだけど、彼は「兄貴兄貴」と言わないのね。言葉の問題だけじゃなく、言動的に弟分としての特別感を主張しない。ムーアがそーゆー関係を潔しとせず、対等な友人としてつきあっているのだろうけれど、若輩のクリス的には十分ムーアは「兄貴」ポジションなんだが、それらを踏まえてもなお、「兄貴兄貴」言わない。
 クリスにとってムーアは「兄貴」だと思う。男社会によくある、アレ。で、男たちはアレが楽しいんだと思う、弟分は尊敬する年長の友人を「兄貴」と呼ぶのがうれしいし、兄貴分はかわいがってる若者からそう呼ばれることがうれしいんだと思う。双方快感だから成り立っている。ヤクザ社会のみならず。男って変。
 舎弟ごっこが男の快感であるのに、ムーアとクリスはあえてそのキモチイイ関係にはならず、「友人」で踏み止まっている。
 そのストイックさが、萌えなんだ。

 「兄貴」呼びはダーリン呼びと同じ、愛情の表れだからなー。呼びかけの言葉に「特別な関係ですよ」と含ませている。
 だから安っぽいチンピラを描くときにもやたら強調されるよね、兄貴風を吹かせるとか弟分が「兄貴兄貴」とうるさいとか。上っ面の関係や、呼びかけで持ち上げることで立場を保つ安っぽさを表現することに使える。

 それを一切封じて、「ふつうの友人」のふりして、実はかなりディープに愛している。
 それがわかる関係だから、クリストファーが萌えなわけです。好みど真ん中なわけです。

 あいらびゅーん、とは一切言わず、ただ危機が迫ったときにのみ、共に戦おうとする。死ぬかもしれないのに、共にあろうとする。
 日常ではそこまでの覚悟をおくびにも出さず、ふつーに友だちやって、女の子とちゃらちゃらしているのにね。
 その説明のなさ、黙して語らず、ただ行動あるのみ、なとこが萌えです。
 
 まさおがまた、ふつーにハンサムだしね。
 女の子っぽいかわいい男の子じゃなく、ふつーにイマドキなイケメン男子っぽいのがいい。
 で、これはまさおクオリティかもしれんが、ふつーに黒いのがイイ。
 黒い。ダーク。闇。悪人っぽい(笑)。
 無邪気なだけの善人に見えない(笑)。
 いろんな歪んだモノを、そのウチに秘めていそうなとこがいい。
 正塚せんせ、クリスってアテ書きだよね? ムーアやヴィクトール@そのかがアテ書きなように。
 一見安いチャラ男でそのくせ驕ってそうで、さらにどっかダークというか性格悪そうなとこが、たまりません(笑)。

 見たかったまさおがソコに!!(笑)

 わたしがまさきくんにアテ書きしたら、まさにこうなるわー、なステキな若者、クリストファー。
 もー、ダイスキ。

 他の誰かが演じていたら、あんなに「毒」は感じないだろう。
 クリスそのうち、ムーア襲うんぢゃね? 突然キレてオスカルをベッドに押し倒すアンドレみたいなことは、ふつーにやりそうぢゃね? ……と思えるのが、クリスの良いところだ(笑)。

 
 まさおくんは前回公演に引き続き、怒濤のポジションアップ。
 この役と出番とミュージカル場面の少ない芝居で、ちゃんと通し役があり、1場面彼がセンターで歌って踊ってしまうという、破格の扱い。
 ショーでの出番を考えても、彼が現月組の3番手なんだなあ……プログラムとかの公的出版物、パレード位置などの扱いはただの下級生であっても。
 87期研9だから、昔のヅカなら決してめずらしいことではない、むしろそれがふつーだったんだが、今世紀に入ってからこの学年でこの扱いは稀。……つーか、見ている方が落ち着かない、ここんとこ前例を見てないから(笑)。

 雪組4番手のちぎくんは、公的出版物パレード位置などいろんなところで「4番手」と明言されているのでショーで1場面センターでも驚かないが、まさおは「番手なんかありませんよ」なボカシ入れられたまま、実際の舞台上では3番手位置だから、落ち着かないんだよなー。
 
 また彼は昨今のタカラジェンヌにはめずらしい、肉食系。
 貪欲で傲慢な芸風・キャラは判官贔屓で謙虚をヨシとする日本人好みではないと思うが(笑)、だからこそ他にはないキャラとしてがんばって欲しい。

 なんつーてもあの「毒」と「闇」は貴重だ。タカラジェンヌって「いい人」は地で演じられるけど、「悪人」は演じられない人が多いんだもの、特にキャリアの少ない若手時代。若いウチからなにやっても「黒い」のは才能だ。
 「毒」が強すぎると真ん中向きではなくなっちゃうんだけど、まさきはそれらを「上昇欲」に還元できるみたいだから、期待している(笑)。
 ムーア@きりやんっていくつなんだろ?

 きりやんは小柄で明るい持ち味から、若者役を得意としてきた。
 若手~中堅ぐらいまで、少年役は任せろ!だったよな。

 でもほんとのとこ、彼が真価を発揮するのは大人の男役だと思う。
 ムーアは若くなくていい、青くなくていい、おっさん希望。

 大人の男が若い男の子を拾う話ですよね、『ラスト プレイ』
 アラフォー男が20代男子を拾っちゃう感じ。ねえ?

 年の差けっこーアリ、されど年の差に関係なく対等に、ふつーに友人なのよ。そこがいいのよ!!(力説)

 グラハム@マヤさんが見るからに年配なのにふつーに仲間であるように、クリストファー@まさおが若輩なのにふつーに仲間であるように。
 友情に、年の差は関係ナシ。
 グループのリーダーは自然とムーアだけど、グラハムもクリスも部下じゃない、手下じゃない。そこがいい。

 とことん「ポスターに偽りアリ」な最近の正塚せんせ。
 『薔薇に降る雨』でやっちゃって、どうも味をしめたのかなんなのか。引き続き『ラスト プレイ』でもポスターとは無関係なぐだぐだなコメディっぷり。

 んで、この「ポスターに偽りアリ」ってのは、「シリアスに見せかけておいて、じつはお笑い」というだけではなくて。

 きり×あさホモものと思わせておいて、べつにそんなことナシ。……という意味でもある。

 あ、ごめん、単語間違えた、「ホモ」を消して「友情」にしておいて。(投げやり)

 ポスター最初に見たときは、あまりの慎みのなさに眩暈がしたもの。
 正塚せんせ、ホモはもっとオブラートにくるんでやるものです。こんな「どこのBLアニメ」みたいなポスターを、大真面目に作っちゃいけません(笑)。
 
 まあ、これは正塚せんせのトラップ、確信犯としての行動かもしれない。
 彼がガチホモを描くときは、あえてポスターからガチホモ男をはずし、主人公とヒロインのみで作ったりするのよ@『マリポーサの花』。
 「男同士のラヴストーリー」にしか見えないポスターをあえて作ったとしたら、「ほんとはチガウんだな、別にホモぢゃないんだな」と読み解くべきなのかもしれない。
 ……って、ややこしいよ、正塚晴彦!(笑)

 というのも、主人公アリステア@あさこは別にムーア@きりやんを愛してないし、ほんとのとこムーアもそれほどアリステアを愛しているわけではないからなのよ。

 大人の男ムーアが、世間知らず坊やのアリステアを拾ったのは、成り行きと人情(笑)ゆえであって、ホモな下心でも「Boy Meets Boy」な運命でもありゃーしません。
 ムーアはふつーに恋人の美女エスメラルダ@あいちゃんを愛しているし、友情だけでいったらクリスの方が業が深そうだ。

 出会ったときも、そしてその後一緒にいて商売やっているときも、べつにアリステアはムーアの特別でもなんでもない、ふつーに仲間。ふつーの空気感。

 だからふたりの関係が変わるのはあくまでも、「ムーアのせいでアリステアが撃たれた」ときから。
 で、アリステアはとーとつに記憶喪失になるし。
 で、アリステアはピアノなんか弾いちゃうし。

 ムーアはそれまで、アリステアの過去なんか気にしていなかったと思う。友情に氏素性は不要じゃん? 今、目の前にいるアリステアが善い人物だから信頼して一緒に仕事をしている。それだけ。
 が、自分のミスで彼を損なって。
 そこではじめて、自分が知っていたアリステアがすべてでなかったことを知る。

 記憶を失ったアリステアは、本人の力ではなにもできない。本来のアリステアがナニにつまずき、ナニを求めていたか。
 ムーアが責任を持つべきなのは、この本来のアリステアに対して。
 アリステアがナニを抱え、自分の前で穏やかに笑っていたのか……はじめて、考えることになる。

 ムーアが「アリステア」を本気で見つめるのは、彼自身の罪だから。

 無骨で真っ直ぐな彼は、そりゃあもお真正面から正攻法で、アリステアに詫び、支えようとするわけで。

 自分が犯した罪の象徴であり、自責の結晶である「アリステア」は、ムーアの人生の真ん中にどーんと置かれてしまうんだ。

 もともと友人で、もともと好きな相手である。
 自分のために自分の女を守って、それゆえに記憶喪失になってしまった相手である。
 ムーアはたぶん、アリステアの一生を、引き受ける覚悟をしたと思う。
 エスメラルダと別れることがあっても、彼女とアリステアとのどちらかを選ばなくてはならなくなったとしても、アリステアだけは見捨てないだろう。見捨てられないだろう。……気の毒に。

 そして、なにがあっても、アリステアを恨んだり嫌ったりも、しないだろう。
 記憶喪失のアリステアは、穏やかで嫌味のない青年で。ムーアのせいだと教えられても、それでムーアを恨むでなしあるがままを受け入れている。こんな毒のない青年を嫌う必要もないだろう。

 すべてを失うことがあっても、ムーアはアリステアの腕だけは、離さないだろう。
 もしも離さなければ奈落に落ちるとゆーなら、一緒に落ちるだろう。

 ムーアの実直さ、不器用さ……そして、しぶとさは、そーゆーことだと思う。
 いざとなったらダイナマイト持ち出すくらいには、パッショネイトにバカですから。

 ムーアは自分の過ちから、はじめて「アリステア」という男をまともに見るようになった。考えるようになった。
 記憶が戻ったあとも、ムーアのアリステアへの干渉は続く。それまでの「ただの仲間」の域を超えて、お節介を焼く。
 ムーアの中で、アリステアは昔とは別の場所に置かれているんだから。病気が治りました、だからもうムーアの罪は消えました、にはならないんだ。

 ほんとのところ、ムーア→アリステアの片想いっていうのは、恋とか友情とか、プラスの感情ではないと思う。
 罪悪感や自責の念、責任感が形を変えたモノで、ちっとも純粋じゃない。

 だから、切ないんだ。

 ムーアはアリステアを愛している。
 でもそれは、歪んだ意味でも真っ当な意味でもなくて。
 ムーアが見ているのは、自分自身なだけかもしれない。

 ムーアがいい男なのは、「大人の男」である点。
 自分の罪から、失敗から、逃げない。真正面から向き合い、すべてを背負う。

 大人の彼は、かなしいかな「受け止める」強さを持っている。自分の罪を。犯した過ちを。
 登場してきたとき彼は、刑務所帰りだと言う。「務めは果たしてきた」と。犯した罪と等価の罰を受け、逃げることなく果たしてきたんだ。
 そして、変に悪びれない。務めは果たした……対価を払ったからこそ、前科に対して卑屈になることもない。

 そして、大人だけで留まらない彼は、罰を受けるだけでなく、少年の純粋さで一歩踏み出す。
 「本当はピアノを弾きたいんだろう」と記憶の戻ったアリステアに迫るのは、ただのお節介。もう彼が口を出す筋合いはないのに、アリステア個人の事情に踏み込んでいく。

 いい男だ。
 大人で、バカで、潔い、いい男。
 
 彼が伴侶たるエスメラルダをまともにふつーに愛し、自分の罪であるアリステアを歪むことなく愛しているのが、心地良い。

 
 余談だが。
 アラフォー男が20代男子を拾う話、で、ついちょっくら考えちゃったんだ。
 ムーア@某ツツミシンイチ、アリステア@某オカダジュンイチでキャスティングしたら、
萌えまくっちゃったよ……(笑)。
 わたしはいっそムーアを視点にすれば良かったのに、と思っている。
 正塚晴彦作『ラスト プレイ』

 「物語」があるのはムーアなんだよね。「愛」があるのもムーアなんだよね。
 アリステアは「美しい」だけでナニもしない、ナニもない。

 ただの箇条書きになってしまっているのは、アリステアが弱いためだと思う。それがじれったい。

 だからいっそ、ムーア@きりやんを語り部にして、彼の目を通したファム・ファタール、アリステア@あさこの物語にすれば良かったのに。

 女無用の男同士の世界を描くのが好きな人だが、実際のとこ正塚せんせはとてもノーマルで、「女のいない世界」は描けないのだと思う。
 ヒロインの出番がどんだけなくったって、主人公はちゃんとヒロインを愛していて、それを彼の魂の基盤にしていたりする。
 今回トップ娘役不在公演ってことで、あえて主人公は恋愛沙汰をシャットアウトしているんだが、これが成功しているとは到底思えない。
 相手役はいなくても、誰かを愛している設定は必要だったよ。
 心の中にひとりの女がいて、その上でその女に出番はまったくないまま男同士の友情のみで話を進めるべきだった、いつものよーに(笑)。
 
 同じよーに男同士の友情やら確執を描いてみせた大野せんせは、本気で女不要の耽美世界だったが。
 正塚は女無用(使い道がない)なのであって、不要(いらない、最初から存在しなくていい)でないんだ。
 ハリーは健康的な思考回路の作家だから、倒錯世界は書けないし、書く必要がないんだ。
 女性作家はわりと、女不要世界描くの得意だけどな。BL作家とかがその最たるもので。男性作家にソレを求めるのはまちがっているし、また、本気で女不要世界のみを構築する作家は、ヅカには不要(笑)。
 ヅカの女性作家陣も別に女不要の作風の人はいないし(こだまっちはちょっとアヤシイ・笑)、耽美派の大野せんせも両方描けるだけで不要の人じゃない。

 ただ健康で人生肯定、人間讃歌のハリーには、女不要話は書けなかったんだなと。
 「女不要」で物語を書ける人なら、アリステアをヒロインにしたなら、容赦なく彼をファム・ファタールにできただろうにな、と。
 正塚せんせ、中途半端だわ(笑)。

 ムーア視点で物語を進めれば、アリステアはどんだけ美しく神秘的だったかと(笑)。
 世間知らずなピュア・ボーイだったり、お笑いを入れてなお、ムーアの目を通して語られれば、アリステアがマイナスに語られることはないんだから。だって彼、愛されてるもの。
 石岡くんの一人称で書かれる御手洗シリーズみたいなもんですよ。おっさんふつーに書いてるつもりだろうけど、ソレ壮大なラヴレターだから、いい加減気づけよ恥ずかしいヤツだな、みたいな。

 視点と主人公はチガウ。
 ムーアが語り部であっても、アリステアはちゃんと主役として君臨できたろうし、あさこちゃんほどキャリアを重ねた人なら「モノローグの心理説明」だけに頼らなくても主役たらしめただろうに。

 出来事の箇条書きであったとしても、語り部が「視点」として散漫な出来事を要所要所でまとめれば良かったんだよ。
 ムーアが語り部でも、最後のオチというか正塚的どんでん返し?はできるし。

 それまで語り部だったムーアが本舞台で倒れ、エスメラルダ@あいちゃんだのに介抱されつつ、「最期の頼みだ、ピアノを弾いてくれ」って言ってるとこにつなげればいいんじゃん。
 今までの回想は、悪者に撃たれ、アリステアのピアノを聴いているムーアの走馬燈なんだってわかるじゃん。
 お前どんだけアリステア好きなん、で(笑)。
 でも、そーゆー話なわけでしょ? あくまでも、アリステアの物語なんだから。

 きりやんなら、あのテンポの悪い「ボクの日記」を牽引してメリハリつける仕事、してくれたと思うけどなあ。
 カーテン前だの花道だので地味だけど技術は半端ない仕事をきりやんがやって、本舞台で派手に大きな見せ場はあさこちゃんが担当。だってあさこちゃんのサヨナラ公演だもん、てことで良かったと思うんだが。

 ナニもしない誰も愛してないアリステアが主役で彼の目線で彼のモノローグ(録音)で淡々と「今日の出来事」の箇条書きで進むから、なんともはや。

 アリステアを愛しているムーアの目線で、アリステアの半生を描いてくれ。

 思い切りが足りないよ、正塚せんせ。アリステアがヒロインなら、ここまでやってくれなくちゃだわ。
 ファム・ファタールやってよ、開き直ってとことん!
 

 と、言いつつ。

 今のあのしどころのない、どーしよーもないアリステアに惚れているムーア、つーのもツボなんですが。
 
 やー、オレ片想いスキーだからさー。
 ムーアの一方通行なのは、それなりにたのしいのよー。

 
 きり×あさだと思って『ラスト プレイ』見て(わたしはあさこちゃんは受派のため、予備知識ナシだと右側に置きます・笑)、いちばんわっかりやすいカップルがその×あひだったことに驚き、せっかくの主役たちはきり→あさでしかないことに驚き、ナニ気にまさ→きりだったことに驚いた(笑)。

 まさ×きり!!

 ちょっと待て、オレこれ大好物ですよ(笑)。『大坂侍』がどんだけたのしかったか。
 政×又七はもお、鬼畜攻に被虐受として確固たる萌えあがりっぷりですが、今回のクリストファー@まさお×ムーアは、クリスの片想いっぷりがツボです、ええ。
 今は片想いで黙って耐えてるけど、そのうちこりゃ爆発するな、ひどいことになるな、と思えるあたりステキです。や、わたしがまさおくんをSだと思っているせいも大いにありますが(笑)。

 行間を読む、描かれていないキャラクタの人生を感じるのが正塚芝居の醍醐味。
 キャラ萌えだけでたのしいですよ、この芝居。

 作品的には、作者に物言いたいことありまくりですが、でもとどのつまりはキャラクタさえたのしければソレで楽しいんだよな。ラノベとかマンガとか、そーゆーもんじゃん?

 
 なんやかんやで、楽しいです、『ラスト プレイ』。
 『ラスト プレイ』を見て、主役の愛のなさに「うわー、こうきたか」と唖然としはしたが、実はいちばんびっくりしたのは。

 もっともラヴいカップルって、そのあひかよ?!

 ということでした。

 1時間半の上演時間の中、作品を通して、いちばん愛し合っていることがわかり、また、痴話喧嘩して別れるのと騒いだり、愛のために命懸けたり、ちゃんと関係に盛り上がりや事件が練り込まれてるのって。

 そのか×あひ、なのか。

 想像だにしてませんでしたよ。
 よりによってソコなのか。

 てっきりふつーにきりあさで来ると思ってたんだけどなー。
 アリステア@あさこは誰のことも愛してないのでノーカウント(笑)。
 ムーア@きりやんは、恋人のエスメラルダ@あいちゃんと「痴話喧嘩して別れるのと騒いだり、愛のために命懸けたり、ちゃんと関係に盛り上がりや事件が練り込まれてる」んだけど、それと同時にアリステアのことも愛しているので、エスメラルダだけのカップリングでは語れない。

 そんななか、大して出番があるわけでもない、おバカコンビのジークムント@あひ、ヴィクトール@そのかのラヴっぷりときたら……!(笑)

 どっちもバカなんだけど、ヴィクトールはさらに輪を掛けたバカで。
 バカコンビとして、物語中出てくるだけで笑いを取っている。

 多分設定的にはジークムントはバカではないと思うんだけど、あひくんが演じるとヘタレ度が上がりすぎてしまって、そのかとのコントラストが弱くなっている。
 チンピラのジークムントと、バカのヴィクトールという、個性のはっきりしたコンビのはずだから、「どっちもバカ」にするのはやめてほしい、がんばれあひ、負けるなあひ。
 芝居がアレだったり男役スキルが低いのはもうあひくんクオリティだと思うが、あれだけの出番でそのかに喰われるのは勘弁してくれ。

 でもってマサツカはそのかをバカだと思っているのか、いつもいつも彼にその類の役をやらせる。
 たしかにバカキャラはそのかの得意分野っつーかアテ書きだとそうなっちゃうのかもしれないが、正直またかと思った。

 色男の桐生園加が見たいっすよ、マサツカせんせ……。クールでハードな大人の男が見たいっすよ……。あの子犬のよーな子リスのよーな声がイカンのだろうか。

 てなことは、置いておいて。

 
 ヴィクトール×ジークムント萌え。

 えー、攻はヴィクトールですよ。あのちっこい子リス(笑)だかハムスター(笑)だかのよーな男です。
 バカで考えナシで口が軽くてどーしよーもないチビ男。

 いいとこないじゃん! 実際いつも足引っ張ってばかりだし。トラブルメーカーでお荷物だし。
 なんでこんな男とつきあってんの? と思わせるよーな、どーしよーもない男。

 そんな男と別れられない、長身美人ジークムント(笑)。

 ジークムントは黙っていればクールな美人。口を開くと演じている人のスキルがアレなんで途端ヘタレるけど、設定上は美人だと思う。

 ヴィクトールはジークムントに惚れていることを隠さない。痴話喧嘩はいつもジークがヴィーのアホさにキレてひとりで怒って、ヴィーが「捨てないでよ~~」とすがりついて終了。

 でも実際、惚れているのはジークの方。

 どーしよーもないアホ男を切れないのは、自分にとってお荷物でしかない相手を捨てられないのは、愛しているからでしょう。
 しかも相手が本気でバカだから、そんなジークの切ないヲトメゴコロをまったく理解しない。
 「アイシテル、オマエガヒツヨウダ」と口に出して言ってやらない限り、ジークの真意にヴィクトールが気づく日は来ない。
 それでも言えないのがツンデレたる所以、がんばれジーク、負けるなジーク。

 ……告白したらしたで、あのアホがつけあがるのは目に見えてるしね……あああ、どっちにしろ報われないなジーク(笑)。

 バカ攻が大好物のわたしには、カモネギなカップリングです。

 あひくんが本気で美形でうれしいっす。
 動いて喋るとヘタレにしか見えないけど、でもいちおー、衣装とか役割はかっこよくてうれしいっす。
 そのかとの芝居はあまり合っているとは思えず、間合いとか「あちゃー」とアタマを抱える不協和音だったけど、き、きっと公演を重ねるごとにうまくなっていくと信じてる。
 つかそのか、キミが合わせてやれ、暴走しないで。あひくんはキミに合わせることはきっと不可能だ(笑)。

 
 『Le Petit Jardin』でわたしをメロメロにして以来、あひくんはわたしの萌えキャラです。
 どんだけ技術的にアレだったとしても、そのダメっぷりを嘆いたり突っ込んだり文句言ったりしつつも、でもやっぱり好きでしょーがない。
 ダメっぷりに苛々したりうきーっとなったりもするんだけど、それでもやっぱり彼は憎めない。

 彼が舞台にいると、萌えるんだもの。
 彼が演じるキャラはわたしの琴線に触れるんだもの。

 彼を失うことが、心から寂しいです。

 最後の役が、ラヴい役で良かった。

 愛し合っている役で良かった。……相手、そのかだけど(笑)。

 
 そのうちこっそり、ヴィクトール×ジークムントでSS書いてるかもしれん……(笑)。
 いちばん盛り上がったのは、まちがいなくベニーが登場した瞬間だ。

 星組DC『コインブラ物語』初日。
 作品はもおアレで、「脚本書いたヤツも演出したヤツも最低(怒)」状態、平坦で退屈、「出来事を時系列に並べただけの絵日記風」な展開に、客席が沈んでいるところで。

 突然、歌声が聞こえる。
 舞台上からではなく、客席。

 上手側真ん中の扉前。

 で。
 今までの世界観をひっくり返す調子で、派手に歌って踊る。

 退屈な絵日記でしかなかったのに、突然ミュージカルになるの!!
 王子様とお姫様がふたり並んでラヴラヴするだけだった童話絵本に、いきなり現代アニメのヒーローが登場するの。
 絵日記も絵本も、画面は動かない。なのに突然のアニメーション、動画、動く動く動く!

 客席の空気が、一気に変わった。

 昂揚。

 ぶわっと、沸き立った。

 紅ゆずるの、とんでもねー美貌っぷり。

 真ん中の扉から現れた彼は、真ん中通路を歌いながらやって来て、わたしの席のすぐそばで立ち止まった。
 で、客席を見回すよーにした。なんか言ってたかな。
 彼に呼応して、後ろ扉から男たちがぞろぞろ現れる。縦通路2本とも、イケメンたちが踊り通っていく。そのにぎやかさ。

 んで、ベニーだ。
 彼はものすげー勢いで、一本釣りした。
 歌いながら、ひとりの客にがーんとアピール。体勢を低くして、腕を広げて。
 目を合わせてアピられた女性は一瞬凝固し、ベニーが去ったあと、うきゃきゃと崩れた。や、その周囲も一斉にうきゃ~~!!となった。
 や、心はひとつ、ベニーが一本釣りしたそのブロック全部が、ざわついてえらいことに。(わたしも含まれる・笑)

 ベニー効果で客席がざわめいているその勢いのまま、舞台に上がったベニーと男たちは、陽気に野性的に歌い踊る。
 ひとりだけ混ざっているプラチナブロンドの女の子もかっこいい……って、アレ、まりもちゃん??(2役だと知らなかったから、混乱した)

 それまでの舞台進行のもたつき、テンポの悪さを全部ひっくり返す陽気さ。派手さ。
 ベニーをはじめとして、みやるりとまりもちゃんがまたいいんだ、美しいんだ。

 彼らは義賊で、元は由緒ある身分のモノだが悪人の謀略により今は野に身を伏している。力を蓄え、近い将来悪に鉄槌を加え、真実を明るみに出すべく大望を胸に秘めているんだ。
 おおお、よーやく物語が動き出した? 王子とその恋人が身分違いだからどーのこーの言ってるだけの「4畳半のお茶の間」的な、狭いところでうだうだやってるなんとも動きのない平坦な話が、過去の陰謀とか義賊とかで舞台が広がった??

 義賊リーダー@ベニー、その妹@まりもちゃんの、ワケありっぷり。彼らの身の上は、まんまキャスバルとアルテイシア。いわば、国を追われた王子と王女。幼かった彼らは逃げるしかなかったけれど、成長した今は故郷へ凱旋も可能。彼らを信じてついてきた家臣たちもいる!
 しかも甘い美貌の青年みやるりと、ワイルド美少女まりもちゃんは恋仲だ。ラヴラヴだ。
 みやるりが年下彼氏、てゆーかみやるりソロってナニゴト?! うおー、かしちゃんに似てるわやっぱ、なにあの美貌、王子様系。

 と、ほんとに、いちばんわくわくした一瞬だった。
 ベニーと盗賊団登場。

 物語的にも「長い長い導入部分が終わって、これからよーやく本編スタートね」という感じで、心からわくわくしたんだ。

 ほんとに。

 一瞬だったけどな。

 作者は物語センスが皆無らしいので、ほんとにわけわかんないことになってるんだわ。
 幕が開いてからずっと紙芝居状態で、衣装とキャストの豪華さと美しさのみ、それだけしかない状態で30分経過しているのよ。
 で、ストーリーは?? と、平坦さに客が困惑しているところに、派手に異分子投入、がらりと空気を変えて、「さあこれからだ!」と盛り上げておいて。

 この、いちばん盛り上がる彼らが、本筋と無関係って、どーゆーこと?!

 盗賊団の背景、リーダーとその妹のワケありっぷり、妹とイケメンの恋、しかもこの妹、王子様の恋人と瓜ふたつ、そこにはナニか秘密が?! と、わずかな間にすげー勢いでドラマを盛り上げているのよ。
 彼らが主役でもおかしくない勢いで。
 実際ベニーの美貌と華が半端ナイし。
 動きの少ない王子様側と対比させて、この義賊たちの物語が派手に進行するのね! 昔彼らを陥れた悪人たちが、現在の物語にナニか絡んでくるのね? 妹がヒロインと瓜ふたつ(まりもちゃん2役)なのは、物語の鍵よね? 生き別れの姉妹とか、そーゆーこと?
 そうでなければ、わざわざ盗賊団が1場面、これみよがしに歌い踊って自己紹介し、ベニーたちの背景説明なんかしないだろうし。
 なにより、みやるりとまりもちゃんの恋の話、これが決め手、みやるりにソロがあるんだもの、それだけ重要な役なわけよ。ふつーワケありで登場して恋人がいてソロのあるキャラは、主要キャラだもの、作劇の基本として。
 王子様の恋と隣国の関係、奸計ゆえ盗賊に身を落としたセレブ兄妹のお家再興と仇討ち、それらが複雑に絡み合って盛り上がり、最後はものすごいカタルシスに……!!

 ……これだけ伏線としか思えない登場しておいて、無関係って、どーゆーこと?

 盗賊団はべつに、どーでもいい役でした。
 彼らの名前も背景も設定も、まったくの無意味。
 妹ちゃんとその年下彼氏も、無意味。

 出てこなくても問題ナシ。

 話はあくまでも「4畳半のお茶の間」で終了。王子様が「ヒロインちゃんは盗賊に殺されました!」と報告受ければいいだけのこと。
 盗賊を描く必要はなかった。
 盗賊妹とヒロインが瓜ふたつである必要もなかったし(屋敷にいた若い娘でヒロインのドレスを着ていたから間違っても問題ナシ、死体は誰の目にも触れさせずに処理してまうわけだし)、その恋だとか元はお姫様だとかは、まーーったく、なんの意味もなかった。

 怒り狂った王子様が、わざわざ兵を率いて盗賊団を全滅させるのも、すげー感じ悪い。
 ちゃんと調べてから討伐しろよ、キミが惨殺している相手は善人なんだよ?? 主人公がただのバカだとなんで時間を掛けて表現するんだ??
 と、疑問ばかり。

 作品中、もっとも盛り上がったのは、まちがいなくベニーが登場した瞬間。観客に大歓迎された、ベニーと盗賊団。

 なのに彼らはストーリー上なんの意味も価値もなく、出てきたと思ったらなんの罪もなく主人公に惨殺、全滅させられる。
 彼らがひとりずつ殺されていく場面は、とにかく盛り上がる。登場時が最大の盛り上がりだから、ソレに次ぐ場面ね。
 影の主役?てくらいの登場だったから、彼らがただ為すがないまま殺されていく様に半信半疑。なんで? どーして?

 ベニーがトドに殺されて1幕終了、客席のぽかーんぶり。

「ええっと……さゆみちゃん、2幕も出てくるのよね?」「なんか殺されてなかった?」「出てくるでしょ?」……客席のざわめきったら(笑)。

 作者のセンスのなさをどーにかしてくれ。
 いちばん盛り上がる場面が、ストーリーと無関係、ただの端役たちの場面って……。
 アホや。
 いちおーこれでもトド様ファンなわけで。
 長年、トド様のガチな恋愛モノが見たい見たいとゆーて来ました。

 でもって、『コインブラ物語』初日観劇。

 ペドロ@トド様とイネス@まりもちゃんの、恋物語。正味ラヴストーリー。つか、恋愛以外、ナニもない話。

 すすすすすみません。
 たしかにわたし、恋するトド様が見たいとゆーてました。ゆーてましたが、実際に見てみたら。

 盛大に、テレました。

 うっきゃ~~、恥ずかしい~~、恥ずかしすぎる~~(笑)。

 ペドロ王子@トドは、花も恥じらう、25歳。恋を夢見、恋に命を懸けたいお年頃。
 貿易商の娘イネス@まりもちゃんとパーティで出会い、すぐラヴラヴな仲に。
 身分違いだと恐れ入るイネスちゃんを、口説くわデート誘うわ家まで押しかけるわ、ラヴは盲目、パッショネイト。

 イネスちゃんちの庭には、呪いの泉があって、そこで愛を誓ったカップルはもれなく不幸に……あ、チガウチガウ、「愛の泉」があって、愛を誓うと結ばれるんだってさー。(棒読み)
 王子もイネスちゃんも、呪いの泉で愛を誓って正しく不幸に……あ、チガウチガウ、愛の泉でラヴラヴさー。(棒読み)

 とにかく愛、愛がすべて。
 恋愛モード全開なトド様。

 は、恥ずかしい……。
 なんかすげー恥ずかしい……(笑)。

 いやその、あんまり長くトド様見てきてるせいかもしんない。彼のことは愛情より愛着を持って眺めているので、「硬派で知られる上司が恋人にめろめろになっているところを、うっかり目撃してしまった」よーな、いたたまれなさを感じるんだわ……。

 「男の中の男に、女はいらぬ」でただのお飾り妻だとかシモネタでしか女の子と絡まないトドより、恋愛しているトドの方がずっといい。
 ひとりで英雄やってるトドより、相手役を見つめているトドの方が、ずっといい。

 が。

 ……ち、ちがうんだ、わたしが見たかった「恋するトド様」は、ペドロくんとはちょっとチガウんだ。

 轟悠に、年相応の大人の恋をさせてやってくれ。

 なんで25歳なんだ……しかも精神年齢は17歳みたいな青い果実を、何故轟理事がやってるんだ……春日野八千代先生がいまだに若衆を演じる劇団だからなのか……? 立場が上がると役は若返るのか……?

 『オクラホマ!』といい、今回の『コインブラ物語』といい、なんで劇団は、トドに青臭いガキの役をやらせるんだ?
 「ボク、恋に恋する17歳☆」な役は、相応の学年の男の子たちにやらせてやってくれよおお。

 研25のトド様には、研10だの研5だのには絶対真似できない、大人の男を演じて欲しいっす……。

 ラヴィック先生@『凱旋門』再びは、かなえられない夢なのか……?

 えーと。
 「国より政治より国民たちより、自分の恋が大事」な、「大人はみんなキタナイっ!」と叫んで真夜中の校舎のガラスを割ったり盗んだバイクで走り出しそうな、純粋無垢な思春期王子を演じるトド様は、そりゃーもお、かわいらしいです。
 豪華絢爛衣装も美しいです。
 「ハニーが殺された?! 殺したヤツを殺してやるー! バッサリ!!」な短絡思考と、「ヲイ、生かして捕らえないと殺害動機も聞けないよ?」と見ていてハラハラする暴走ぶりと、それでも殺陣は華麗にキメキメなところも、素晴らしいです。
 小人物で十分常識的なんだけど、恋が絡むと感情暴走大騒ぎなところも、愛しいです。泣くわわめくわ、もー大変。
 ラヴラヴなトド様、めそめそトド様、いろいろ見られてステキです。

 なんかもー、全編、トドロキを愛でるためにある舞台だな、と、思いました。

 オレはトド好きだからいいよ、しかしこのトド様、オレが見たかったトド様ぢゃないっす……(笑)。

 大人の男が見たい。
 あー、キーン@『Kean』がガチで恋愛してくれたら、たのしかったのになあ。アレ、女は絡んでいたけど、恋愛モノぢゃなかったからなあ。プリンス@れおんとの愛憎モノとしておいしくいただいたけどさー。そーゆー屈折系ではなくて、もっと真っ当に愛憎してくれてもよかったのに……相手、男でも女でもいいから(笑)。

 恋愛しているトド様に照れたというより、少年のやうな若々しい演技のトド様に照れたという方が、正しいかもな。
 トド様真面目に設定通りの年齢演じちゃうからなー。四十路で高校生はキツイわ。(トド様はフェアリーです、年齢なんかありません)

 
 恋愛モードなトド様にテレまくり、目を覆いながらも指の間からちゃっかり見ている感じかな、終始(笑)。

 ヘタに愛を語ってデレデレしているときや、慟哭しているときより、デスクで手紙を書いているときの横顔や、従僕@マイケルにワインを許してやる愛情のにじんだ笑顔や、コンスタンサ@優香りこちゃんとビメンタ@すずみんの逃避行を手助けしてやるときのやさしい寂しい表情が好きだ。

 演技がノッて「絶好調!」とトバしているときより、押さえた、引いた、日常の仕草に、重ねられた年輪と磨き抜かれた艶を感じる。

 あたしが劇団のエライ人なら、もっと別の企画をするのに。トドでやりたいもの、見たいものは他にいくらでもあるのになー。
 
 歌声は昔に比べ、明らかにスケールダウンしている。
 もう彼は、以前のようには歌えないんだろうなと思う。
 それはもう仕方ない。

 それを嘆くのではなく、それを踏まえた上で、今の彼にしかできないものを、演じられないものを、今のトドロキに演じさせたいよ。
 今より若くてパワーがあった、でも今ほど研ぎ澄まされてなかった頃には出来なかった、今のトドだからこそ出来る、大人の物語を。

 いやその、ペドロ王子だって、今のトドロキだからこそのペドロ王子なんだとわかっちゃいるが。

  
 驚いたことに、初日の挨拶で、トドロキは、歌わなかった。
 新人公演主演挨拶時から、ずーーっと一貫して、自分が主演のときはあのおかしな節回しの挨拶をしてきたのにね。

 大人になっちゃったのかなあ。
 なのに、舞台の上では若作りな役……ゲフンゲフン。
 正塚晴彦は、瀬奈じゅんをどうしたかったのだろう?

 『ラスト プレイ』のぐだぐだっぷりは、そこに尽きる気がする。

 とりあえず、アリステア@あさこのヒロインっぷりを、愉快だと思う。

 最後の最後に天下の瀬奈じゅん様に、魔性の総受キャラをやらせんでも、正塚よ(笑)、と思う。
 孤児ですよ。ピアニストですよ。ナイーーヴで傷つきやすくてトラウマ抱えちゃって大変★な美青年ですよ。
 出てくる人たち、男女問わず彼に興味モチマス、彼がキニナリマス。
 彼はなーんにもしないのに彼の周りだけ、みんなわいわい。

 これだけでもなかなか笑える厨設定てんこ盛りなのに。
 極めつけは、記憶喪失っすよ?!(笑)

 予備知識なく見ているもので、この脈絡のない展開に「ボクのお人形さんプレイ」キターーっ!!と、大ウケしたね(笑)。

 昔から「耽美系」と言われるジャンルに、どんだけ厨設定と嗤われようと廃れない確固たるニーズの「お人形さん」モノっつー設定があるのだ。
 記憶だの知能だのを失い、無垢な幼児のようになってしまった美しい受を、攻が大切に大切に屋敷に囲う、というシチュエーション。事故で記憶を、とか、あるいはショックなことがあって心がコワレてしまった、とか、理由もとってもアレなんだけど、攻の庇護無しでは生活できない、姿は美しいままの生きている人形状態。
 きれーなお洋服を着せ、髪を梳ってやって、「今日もきれいだよ」とか話しかけるんですね!!(笑)
 もちろん無私無償の究極のプラトニックから、愛欲の限りを尽くす鬼畜モノまで多種多様よりどりみどり。

 きり×あさなのは最初から謡ってあるし、ポスターでもこれでもかと煽っているので、据え膳に食指の動かない真の腐女子としては「ふーん、勝手にやってれば?」と高みの見物気分だったんだが。
 アリステアの無意味な記憶喪失ぶりを見て、大ウケしたさ。高みの見物してる場合ぢゃねーよ、なにやってんだマサツカ!(笑)

 あさこで「お人形さんプレイ」がしたかったのか。

 この記憶喪失にもう少し意味があれば良かったんだが、ほんとに「箇条書きであらすじ書いてます」な無味乾燥などーでもいい調子で「はい、そーゆー順番なんで記憶喪失入りましたー」で、あっちゅー間に「はい、出席印だけもらったからお役御免、記憶戻りましたー」で終了。
 うわ、意味ねー。
 意味ないのにわざわざ無理矢理挿入してあるもんだから、あさこにお人形さんやらせたかっただけかと。
 記憶をなくし、頼りなげな瞳で喋らせたかっただけかと。

 おっさん、あさこにナニ求めてんだ(笑)。
 や、ナニを求めてもいいが、ソレはあさこファンのニーズに合ってんのか? 最後の作品なんだから、ストーリーがアレなのはともかく、ファンのニーズをいちばんに満たしてやってくれよ。
 あさこちゃんのファンは、こーゆーあさこちゃんを見たかったのかな? それならいいんだけど。

 アリステアがあまりにも少女マンガのヒロインか、ヲタクコミックの受キャラまんまでびびります(笑)。

 ヒロインやらせたかったのはいいけど、とどのつまりナニをさせたいのかわからないあたりが、作品がぐだぐだになった所以かな。
 正塚せんせ所詮ノーマルだから、「お人形さんプレイ」を萌えて書いてないんだもの、プレイの真髄がわからないまま「こんなプレイがあるんだ、へー、やってみよー」ってだけで書かれても、足りないわっ(笑)。

 娘トップ不在、女と恋愛しなくていい、ならばあさこ萌えだけを突き詰めてくれればいいのに。
 マサツカさぁ、ぶっちゃけあさこにそれほど萌えてないっしょ?
 あさこはヒロインだから女と恋愛はしなくてイイ……ってだけじゃん、これじゃ。
 あさこでナニがしたいか、ナニが見たいか、もっと明確にしてよ。
 ……まあなぁ、明確に萌えて書いてたら、「時系列にただだらだら並べただけの日記」にはなってないか……書くことナイと出来事箇条書きになるよね、人は。

 このアリステアって役は、ほんと困った役だ。
 最初にピアニストとして使命感バリバリに登場したとき以外は、ナニもしない、ナニも考えない。
 されるがまま、流されるまま。記憶があろうとなかろうと同じ。
 そして、コレが重要。

 誰のことも、好きじゃない。

 友好的だし、好意的だけど。日常のある一定ラインの「好き」はあるんだけど、ほんとのとこ彼は誰ひとりまともに愛してない。

 「男同士の友情」ってのを謳い文句にしているけれど、ムーアが愛しているほど、アリステアはムーアを愛してない。
 ヘレナ@しずくちゃんとかポーリーン@蘭はなとか、あからさまにアリステアを愛している者たちもいるけれど、とにかくすべてにおいて不等号でしか関係していない。ムーア>アリステア、ヘレナ>アリステア。
 愛されるばかりで、愛し返さない、返せない。

 アリステアがナニもしないため、物語自体がもったりしている。

 これがあさこちゃんの個性なんだろうとは思う。
 同じ脚本、同じ演出でも、別の役者が演じれば、アリステアは別人だったろう。「愛」という動詞を持ち味にした人ならば、なまじ恋愛がないからこそ、さらに愛があふれていただろう。

 アリステアのなにもしなさは、「余白」だと思うんだ。

 たしかに正塚せんせはあさこ単体に萌えてはいないだろうと思う。
 だけど、男役・瀬奈じゅんを信頼していると思う。

 余白の多い、フリースペースのある役を、最後に与えた。
 脚本上ナニもしない男だけど、だからこそ、あとは男役としての基礎力で、18年培ってきた個性でなんとかしろと。
 なんとかしろ、と丸投げするのは、つまり、「ナニをしてもイイ」ってことで。

 余白をどんな色に染めるのか、あさこちゃん個人に任されているのだと。

 正塚せんせはかなり細かく演技指導する人だと思うけど、それをしてなおフリースペースのある役だと思うのね、アリステア。

 その結果が吉と出るか否かはまぁ、ファンが判断すればいいのでしょう。退団公演はファンのモノだし。

 ただ、最後の最後にあさこちゃん、すげー難しいものを求められているなと思うよ。
 それが、マサツカがあさこちゃんにやらせたかったことなのかな。

 にしてもおっさん、きりあさで「お人形プレイ」って……!!(笑)←そこか。
 『ラスト プレイ』の、ダラダラした盛り上がりのなさには閉口した。
 いくらでも面白くできるネタだし、あさこちゃん、きりやん、あいちゃんと実も華もあるキャストが揃っていて、なんでこんなことになっているのか、とじれったかった。

 でも、いちばんトホホとアタマを抱えたのは。

 お笑いに逃げていることだ。

 なんか、手を抜いた言い訳に、お笑いに走っている気がした。

「ものすごく大事件が起こりました、主人公は危機一髪です。この危機を、どうやって乗り越えるのでしょうか?!」

 という、状態があり、その回答が。

「大丈夫です。主役はなにもしないけど、悪役がバカだったので、勝手に自滅しました。おバカな悪役を笑ってハッピーエンド、よかったね★」

 ……だと、肩透かしも甚だしいっす。
 これってもお、禁じ手ぢゃないの?
 どんだけ深刻な、大事件も起こしたい放題。
 うわっ、こんなに大変なことになって、ハラハラドキドキさせて、いったいどうやってこれをまとめるの、ひっくり返すの?!

 悪役がバカだから、無問題。

 テロリストが攻めてきても、核爆弾のスイッチが押されても、昔の女が「あなたの子よ!」と突然現れても、全部OK、「悪役がバカだから、勝手に自滅」。
 なんて魔法の言葉、悪役がバカだから、無問題。るるる、ららら♪

 どんなことも書けるし、やりっぱなし、てきとー、その場しのぎでOK。どんなに大変なことにしても、悪役がバカだから、勝手にバカやって「うおーっ」と滑稽なことやって、観客が大笑いして、「よかったねー、全部丸く収まったわー」るるる、ららら♪

 ……正塚よ……何故にこんなことに? あなたいつからそんな人になっちゃったの?

 最初からおバカなコメディだと銘打ってくれていれば、そんなオチでもかまわないのよ。
 主人公チームに絡んでくる敵が、わずか数名(ボスの愛人含む)しかいないのに大マフィアを気取っているバカ小悪党だと書いてくれれば。
 カンチガイして大物気取って歌い踊ってくれれば、「ああ、そーゆー世界観なのね」とわかる。
 そんなアホに撃たれて記憶喪失になる主人公や、そんなアホとモメて死んだふりをする準主役の男ぶりは下がるけどな。
 
 シリアスもののよーに登場させて、実はおバカでした、ちゃんちゃん♪ で笑わせて終わりっつーのは、あまりに誠意がないわ。
 そりゃそれまでまともに見えた人がいきなりお笑い芸人みたいな崩れ方をしたら、観客は笑うけど、その瞬間ウケるし、「ふつーの主人公がバカに勝つのは当たり前」だから、クライマックス収束の方程式は間違ってないけど、それで「当たり前」にしちゃうのはひどくないか?

 真面目に書くと大変だから、楽をした結果に思える。
 だって正塚せんせ、真面目に書くことだって出来る人だし。

 日常の中にあるおかしさ、シリアスだけどくすりと笑える、というのと、今回の『ラスト プレイ』のちぐはぐな笑いは、チガウと思うんだ。

 シリアスと笑いが融合していない。
 これらは相反するモノではなく、共存できるんだよ。
 なのに、してない。ちぐはぐ。どっちつかず。

 なんつーかもー、観ていて、途方に暮れた。

 最後の場面、ムーア@きりやんが虫の息でアリステア@あさこにピアノを弾いてくれと頼むところで、笑えばいいのか、感動すればいいのか、判断に困るのは勘弁して欲しい。

 こちらもオチの予想は付いて観ているけれど、作者がどーゆーつもりで描いているのかわからなくて、演出の中途半端さに困惑するという。
 初日ゆえの客席の、あの空気。
 「え? 死なないよね?」「でもなんかシリアスだよ??」「あさこさんサヨナラだし、最後はシリアスなんぢゃね?」「じゃあここ、笑っちゃいけないの??」「えー、でもなんか嘘っぽいよー??」……誰も声には出さないが、「???」が飛び交う、ある意味緊迫した空気。

 まあ、オチを知り、観客が自分でどう感じるか咀嚼したあとでなら、演出の半端さはどんどん気にならなくなるんだろう。
 あの空気感は初日のみで、この情報過多時代、先にどんな話か耳にした人はまたちがった受け止め方をするだろうし。
 ラストだけでなく、全体に漂うシリアスと笑いのちぐはぐさも。

 
 ともあれ、ラストの盛り上がり場面を、どちらかにすることは、できたと思うんだ。

 感動のドシリアスな場面にすることも、最初からオチをわかっていて、安心して笑いながら、それでも男たちの友情に感動することだって、できる。
 それまでの演出、世界観の統一で。

 それをしていないからこの作品は、ただ箇条書きにして、〆切が来たから提出しました、という未完成品に思える。

 や、こっから推敲して、いらないものを削ったり必要な肉付けをしたり、最後にカラー統一してきれーにパッケージして、はじめて「商品」として店頭に出すんだよね?

 ……未完成とか下書きとかで、「まあいいや」って客に売ってしまうのは、手抜きに思えるんですが。

 同じキャラと設定、同じストーリーで、もっともっとおもしろくできるだろうに。
 なんでやらないんだ。

 じれったい。
 すげー、じれったい。

 あさこちゃんもきりやんも、もっともっと出来るのに。
 彼らの魅力は、もっと多面的に複合的に、表現できるのに。

 もったいないっす。

 つか、ネタ的にはオイシイのに。
 書きようによっていくらでも盛り上げられるし、「悪役がバカだから、無問題」にしなくても事件を起こして収束できるし、モノローグ一辺倒の淡々日記ではなく起承転結メリハリつけて、ついでに耽美にも愉快にも萌えにもできるのに。

 だってコレ、あまりにも「未完成」で「下書き」風味で、「仕上げをやらせてくれ、これを原画としてデザインをさせてくれ、『作品』にさせてくれ」というキモチになる……。

 あー、同人誌作ればいいのか。
 本編がスカスカで辻褄があっていないことだらけだと、同人界が活気づくのな。隙間なく書き込まれたまともな物語だと、ツッコミも入れられない、知りたいことはみんな本編で過不足なく書いてくれるから想像の翼を広げてがんばって補完する必要がない、という。

 同人誌向きの作りだわ、この作品。
 観客のキャラへの愛情だけで持っている感じが、もお(笑)。

 
 とまあ、しろーとが勝手にいろいろほざいてますが、正塚せんせだからついこちらも要求を高くしてしまうだけであって、植爺『ベルばら』を観たあとでは、パラダイスですよ。

 舞台が美しく、主役がいろいろと萌えな「美しいこと」になっている。演出が地味ですが、それはつまり悪趣味ではないということで、リピート基本の作品では、悪趣味よりは地味な方が絶対イイ。
 悪役たちのご都合主義と下級生の役のなさはどうかと思うけど、悪役はオイシイ役だし、役はなくても出番はできるだけ作ろうとがんばっていることもわかるし。

 主要キャラたち、個々はとても興味深いし。

 彼らのキャラを、人生を、彼らの演技から行間から読みとっていくのは、たのしいと思う。
 そーゆー作りであるのは、いつもの正塚作品。

 そーなんだよねえ、キャラなんだよねえ。
 ストーリー手抜きでも、ともあえずキャラがかっこよかったりかわいかったりしたら、それだけで通えちゃうからなー。作品がどうあれご贔屓が出ていたら通っちゃうタカラヅカと同じで。
 キャラもの作家という点では、正塚せんせはまちがいなくヅカ作家だよなー。ハリー作品って主人公の自分探しであったり、ストーリーよりキャラやテーマ、雰囲気重視だもんよ。(つか、息もつかせぬストーリー展開、物理的な出来事によって進む正塚作品ってあったっけ?)

 つーことで、なんやかんや言っているくせに。

 キャラは好きだぞ(笑)。と、次はキャラ話~~。 
 とりあえず正塚せんせは、モノローグだけで進む芝居をやめてくれ。

 男役・瀬奈じゅん最後の公演『ラスト プレイ』観劇感想。

 モノローグ過多はすでに芸風だとあきらめてはいるが、今回は特にひどい。舞台上の80人だかの脇出演者の総台詞量より、主役のモノローグの方が多いってな勢いで、モノローグだらけ。
 モノローグもナマ台詞なら許せるが、全部録音。
 観客はナマの芝居を観に来ているのであって、録音芝居を観たいわけじゃない。

 モノローグで説明しないと話が進まないというか、ぶっちゃけ話がナイというか、もう大変だ(笑)。

 主人公の自分探しなので、物理的なアクションより精神的な変化が重要、でもって精神面を描く手法が録音モノローグ。
 ストーリー展開が日記風というか、「○月×日 こんなことがありました。ボクはこう思いました。」「○月××日 こんなことがありました。ボクはこう思いました。」とだらだら連なっていくだけなので、すげーテンポ悪い。

 出来事が同じテンションで羅列されるだけなので、「これって何分の芝居だっけ……いつ本編はじまるんだっけ……なにがしたいんだろう……」と疑問符を飛ばしまくった。

 孤児のアリステア@あさこはプレッシャーからピアノが弾けなくなった。ピアノで金を稼げる人になるのが、孤児の彼の唯一の生きる道だったのに。
 人生途中で突然トラバーユを強いられたアリステアは、偶然出会った刑務所帰りの男ムーア@きりやんとつるんで新人生をはじめた。ムーアは裏世界にも詳しいようだが、あくまでもアリステアはムーアの表商売の相方。
 なのにムーア狙いのマフィアに間違って撃たれてしまった。目ざめたアリステアは「私は誰? ここはどこ?」……記憶のないアリステアはプレッシャーもないのでピアノも弾ける。びっくりしたのはムーア、「えっ、こいつピアニストやったん?!」……ただの世間知らずのイケメンだと思ってたんだよなー。
 で、とーとつに記憶は戻る。や、ほんと唐突に。理由なんてナイですよ、現実なんてそんなもん。大事件があってそれゆえ劇的に記憶が戻るなんて、物語の中だけですよお客さん。……でもコレ、フィクションなんだけど。記憶が戻ったら、またピアノは弾けなくなっちゃった。「ホンマはお前、ピアノ弾きたいんやろ」「ピアノはもう捨てたんだってば。弾く気なんかないよ」アリステアはまだうじうじ。まあ所詮、プレッシャーでコンクール本番に倒れた男ですから。
 そんな折に悪のマフィア再襲来! 恋人エスメラルダ@あいちゃんを人質に取られたムーアはダイナマイト持ってマフィアへ殴り込み。ムーアの一大事だ、アリステアも駆けつける! 悪者どもをやっつけ……たというより向こうが勝手に自滅してハッピーエンド、と思いきや。
 なんとムーアが撃たれていた! 「俺の最期の頼みや……ピアノ聴かせてくれ……俺、お前のピアノ聴きたいねん……」「バカ、最期とか言うな!!」アリステア、涙ながらにピアノに向かう!! 友情の力でプレッシャー克服だ、トラウマ打破だ! ムーアはアリステアのピアノを聴きながら……まあ、お約束の展開で、お約束はイイが、そこですとんと終幕。
 えええ、これで、ここで終わるのか。あ、ムーアさんが関西弁なのはただのイメージです、本気にしないように。
 

 ずーっと同じテンションで、「今日の出来事」だけが日記のようにモノローグ・モノローグ・モノローグで続いていく。
 ……誰か、添削してくれる人はいなかったのか。
 もしもわたしが教師で、生徒がこーゆーレポート出してきたら、「テーマを絞って書き直しましょう」と一旦返却しているわ。
 まず、出来事を1行にまとめて、それを時系列に箇条書きにする。「アリステア、ピアノコンクールに出場」「アリステア、コンテスト会場で倒れる」とか、そーゆー風に。端的に、出来事だけを整理して。
 その上で、「いちばん描きたいこと」がその箇条書きのどの部分かを考える。
 いろいろいろいろ思い入れはあるだろうけど、あえて1行だけ選ぶ。
 「アリステア、記憶喪失になる」でもいいし、「ムーアの頼みで、ピアノを弾く」でもいい。
 とにかく、1行、ひとつの出来事のみを選ぶ。

 で、その選んだ1行を含む場面、事件だけの「物語」を描く。

 記憶喪失なら、記憶喪失のみ。その前の孤児院でどーのとかアンティークショップ経営とか、そのあとの記憶が戻ったあとのギャングとのあれこれとかも、一切なし。
 記憶喪失のアリステアがなにを感じ、どうやって日々を過ごしているかのみ描く。
 それによってなにを表現したいのか、テーマだけを突き詰める。

 ムーアの頼みでトラウマを乗り越えてピアノを引くのならば、そのふたりの最後のやりとりのみをじっくりねっとり描く。記憶喪失もその他の出来事も一切なし。
 ムーアの頼み、それを叶えるためのアリステアの葛藤などだけを描く。
それによってなにを表現したいのか、テーマだけを突き詰める。

 で、肝心要、ここがいちばん大切、と自分が選び、こだわり、まるまるひとつの物語をその場面だけで描ききる勢いで描いたあとに、最初の箇条書きを引っぱり出す。
 ひとつだけ選んで描いた場面に関連する、直接キーとなっている出来事のみをピックアップし、時系列に並べる。

 いちばん要の場面を活かす、そこをいちばん盛り上げる、ただそのためだけにそれ以外の出来事を配置し、演出する。
 最重要場面のみはもうかなりのボリュームで出来上がっているから、それ以外の場面にはあまり時間を割かない。

 テーマの確立と、ストーリーの緩急。
 そこに時系列をあえていじったりの仕掛けを加え、クライマックスが盛り上がるように心がける。
 主要人物以外の出番は、仕方ないからこのあとで付け加え。本筋にはまーーったく絡まないダンスシーンやクラブで女の子が踊る場面を入れるわけだな、正塚らしく(笑)。

 ほんとは大筋を考える段階で、主要人物以外のモブをどう入れるかミュージカルらしい場面をどうするか考えるもんだけど、まあなにしろ正塚だし(笑)。すれ違う通行人たちと脈絡のないクラブのショーでお茶濁してすべてヨシなんでしょ?

 と、えらそーに語ったところで、わたしは教師ではないのでただの素人のたわごと。
 しかし、素人にすぎなくても、もどかしくてたまらない。
 なんなの、あのダラダラした盛り上がらない「ボクの日記」は?
 「物語」なら、起承転結緩急付けて、クライマックスでどーんと盛り上げて終了しろよー。

 お笑いに逃げるのではなく。

 頼むよほんと。
 開く、という行為は、エクスタシーなのだと思う。

 月組公演『Heat on Beat!』初日観劇。

 暗闇が、開かれていく。門が開く。光によって。
 その切り取られた空間が、どんどん広がっていく高揚感。ときめき。

 そして。
 闇の向こうに、トップスターがいる。

 今、を最高潮に輝いているスターがいる。

 開く。
 そのときめき。
 開いたその先に、あさこちゃんがいる。
 光の中に、光をまとって、光そのものとして、瀬奈じゅんがいる。

 …………いやあ、冒頭のテンション上がり方はハンパなかったっす、わたし的に。
 そのあとのオープニング自体は明るく元気なんで、最初の胸がハクハクする感じとはまたチガウんだが。

 相変わらず予備知識なく観たわけだが、『Heat on Beat!』はえらく盛りだくさん、つーか節操ないほどにバラエティに富みまくっている。

 オギーみたいな「作品全部でひとつの、何重にも張りめぐらされた複雑な物語」になっているショーはともかく、ふつーのタカラヅカ・ショーでは、「ひとつだけでも、この場面のために通える」ってな魂揺さぶり系のツボ場面があれば、「好きなショー」とカウントしている、わたしは。

 んで、この『Heat on Beat!』。

 なんかツボにど真ん中キタんですけど。

 前半の目玉だと思う、赤い椅子の場面。
 白スーツの旅人あさこがたどりついた、エキゾチックなクラブ。
 ここが、もお。

 あさこちゃんの、美しさ。
 洗練されたスーツのライン、落とした照明の中、浮かび上がる光。彼個人の光。

 対する赤スーツきりやんの、毒々しさ。

 きりやん毒全開!!
 うわーん、このきりやさん好き、見たかったきりやんがそこに!!

 あさこちゃんを翻弄するきりやん、そしてスーツの男たち。
 椅子を相手に踊る官能、倒錯。

 で、椅子を蹴るのあひくんだよね? かっこよかったわ。

 男たちもエロいし、女たちもエロい。あさこちゃんが台の上で女の子ふたりに押し倒されて上に乗られてるのを見た日にゃあ、目が点になりましたよ。

 そして、ファムファタルよろしく登場するあいちゃんの、艶やかさ……!

 男たちが愛撫するように踊っていた赤い椅子が肉体を得たなら、まさしくこの女だろうと思わせる、デカダンスな大輪の華。
 あさ×あいの、大胆なリフトもすげー美しい。

 エロ美しいだけでなく、不吉で不安、まさしく耽美な場面だった。
 この場面だけでも通えるでしょー、この作品。
 久しぶりに、ショーで好みの場面を見た。(いつ以来かおぼえてないくらい、久しぶり……『ソロモンの指輪』以来か?)

 
 とにかくバラエティ・ショーなので、やりすぎっていうか落ち着きのなさは感じた。
 個人的に突然で無理矢理なラテン部分(「クンパンチェロ」だの「ベサメムーチョ」だの)には、思わず「ヲイヲイ」と突っ込んだ(笑)。やらにゃならんのか、ソレは。

 でもそのごちゃ混ぜ感がいかにも「タカラヅカ」で、いいんだと思う。
 全体としてどうよりも、「1場面お気に入りがあればOK!」なんだもの。

 蛍光カラー部分入りのスーツのオープニング、いきなりあさこ様の両脇がそのかとマギーで、その渋さにびびった(笑)。組長も真っ赤な口紅でがんがん踊ってるし。
 そのかより上の人たち、きりやん、あひ、もりえ、まさお、みりおは彼らだけで銀橋場面。だから最初はそのマギなわけねー。
 いったん「オープニング終了」って感じに暗転したあと、「おまけ」ってな場面がちょろりとあったり。

 芝居に引き続き、まさおセンターで1場面っつーのにびっくり。この学年と番手?で1場面って、キム以来かなあ、イメージ的に。
 目玉はうらもえのバレエシーンのよーな気がしなくもないが(笑)、まさおくん中心で若い少年たちばかりでまるまる1場面って、信頼されてんだなあ。まさみりの並びが麗しい。
 組ファンだとたのしさもまたチガウんだろうな、お気に入りの若手をがっつり眺められる場面なわけだから。
 まあちと長い気がするんだけどね、ここも一旦終了と見せかけて、またさらに続くわけで。……ミッキーせんせのブームだろうか。
 
 
 それとは別に、まさみりはまたしても女装して美脚を披露。あさこちゃんに絡んでました。ラテンな場面からの流れでだっけ?
 柱がくるりと回って、そこから美女が登場するのは興奮するな(笑)。

 ロケットも変則的な位置に挿入。つか、ほぼ真ん中あたり?
 プログラム買ってないから確認も出来ないんだが、「え、ここでロケット??」と思った。

 
 中詰めになるのかな、白い衣装の大人数群舞。
 神が望み、人が夢見る明日。そんなフレーズが繰り返されていた。

 エル・ビエント、風の吹き渡る空間。

 中央で踊るあさこちゃんがどんどん透き通っていく。
 輝度はそのままに、白い風になっていく。
 美しい、ひろいひろい場面なのに、息詰まる感じがある。この美しい人が、この地上を離れて飛び立っていくのだと思い知らされるからだろうか。

 見つめていると、自分も体重やら大地やらを見失ってしまいそう。
 や、わたしは「落ちる」と思った。
 だってわたしには翼はない。
 あさこちゃんと同じように重力とは無関係に、大地から離れてしまったら、わたしは墜ちてしまう。羽ばたくあさこちゃんを、墜ちながら見上げるんだろう。

 そーゆーたまらない場面。

 
 かと思えば、タンゴもありーので。
 古城でがっつり踊る人々がかっこいい。あひくんとしずくちゃんが踊りながら銀橋渡ってたのはここだっけ?

 わたしゃここでの「あさこさん脱ぎ脱ぎプレイ」に気を取られてました。
 だって、登場するなり階段降りてくる間にどんどん脱いでいくんだもの! さすが瀬奈じゅん、最後のショーにナマ脱衣シーン入れるのかよ?! と、心臓バクバクさせてました(笑)。

 どこまで脱ぐんだ、と思ったら、最後の1枚をなかなか脱がなくて、「いつ脱ぐの、いつ?!」とじらしまくり。
 いやその、最後の1枚ったって、ジャケット(周囲から浮いてる真っ赤なヤツ)のことなんだけどね。絶対アレも脱ぐぞ、脱ぐはずだ!と思って見ていたから……結局脱いだの最後だし。

 
 黒燕尾大階段ダンスもあって、ほんとに「これでもか!」な作りだ。

 この圧巻の黒燕尾男ダンス場面に、愛希れいかちゃんが混ざっているのを見てびっくり。ダンサーだから?
 ちっこくてほっそいカラダで黒燕尾着て、下手奥のいちばん端でがんばって踊ってました。最後は上手端。
 で、パレード直前に黒燕尾なわけだから、ロケット衣装でパレードする他の研1生たちとはちがい、ちゃんと黒燕尾で男役として階段降りて来た……でもって、なんか上手端でしばらくコーラスしてたよーな? びっくりしたー。

 あ、あと輝月くんはロケットでも最後の階段でもわかりました。やっぱ好みなのかな、あのキャラクタ……。

 
 あさこちゃんときりやんは、がっつり組んで歌って踊って。
 ふたりだけの場面もあった。
 銀橋とか、これから変わっていくんだろうな……てゆーかアレは、楽の日とか絶対泣けるぞヲイ。

 あいちゃんはあさこちゃんよりも、きりやんとのデュエットダンス姿にきゅんときた。
 ずっと相手役だったよね。今回は芝居も相手役だし。

 
 あさこちゃんと現在の月組の魅力を存分に、縦横無尽に見せてくれるショーだと思った。
 あああ、もっぺん見たい~~。チケット持ってない~~。

 
 芝居? 芝居の話は、またいずれ……。うーん、アレはなあ……正塚よ……。溜息。 
 わたしはイシダ作品が苦手だ。
 そして『再会』も、嫌いだ。イシダのイシダらしい、嫌ったらしさに満ち満ちた作品だと思っている。女性を弄んで捨てることを笑うコメディなんて、正気とは思えない。

 だが。

 星組全国ツアー初日、改めて『再会』を観劇して。

 どうしてこの作品が支持されるのか、わかった気がした。
 いや、思い出した、というか。

 昔々、この作品の初演を、わたしは初日から繰り返し観た。ムラだけに留まらず、東京まで追いかけていって観た。
 当時わたしは、この作品を、キライではなかった。

 初見では、無邪気に笑うことができるんだ。
 先を知らないから、どうなるのかわかっていないから、そのときそのときだけを楽しめる。
 さすがに初見から「女を騙して弄んで捨てる」のはどうかと思うが、これだけひどいことをネタにするには、なにか意味があるとかすばらしいどんでん返しがあると思うじゃないか。
 ふつーに楽しく、笑って観ることができるんだ。

 それが、リピートすると作品の酷さが目に付くようになって、どーにもこーにも気持ち悪くなる。
 オチを知ったあとでは、なにひとつ笑えなくなってしまう。登場人物すべてが最低。みんな嘘。欲にかられた嘘だけで、他人を騙す物語。そしてそれを「相手のため」と偽善ぶる物語。
 ストーリーもひどいが、作家の人間性が透けて見える気がして、それにも閉口。他人を傷つける様を笑う「コメディ」は、わたしの逆ツボ。

 あとになればなるほど、嫌悪感しか残らない。

 初演はもう、昔々、10年も前。
 10年間、嫌悪感ばかりが強く残り、熟成された。

 『再会』というと、最低な話。という感想。『ベルばら』というと、最低な話。という感想なのと同じ、わたし的枕詞の域。ぬばたまの、と言えば、黒髪と続く、ぐらい自然な言葉。

 だから再演が決まったときに、心からうんざりした。
 どの組の誰が演じるにしろ、勘弁してくれと。あんな最低な偽善話を「ちょっといい話」として再演を繰り返すのは絶望するからやめてくれと。

 10年間嫌悪だけが積み上がって、初見時のキモチを忘れていた。

 そうだわたし、あのころこの話をキライではなかった。
 引っかかるところはあっても、そーゆーことより別のところが楽しくて、そこまで気を取られることがなかった。

 全ツ初日。
 れおんくんとねねちゃん、そしてかなめくんという若々しい新生星組の面々による『再会』を観て。

 思い出した。
 
 主役のファンならば、ものごっつー楽しめるのだということを。

 たしかにひどい話で、主人公は最低最悪なんだが。
 そーゆーことには思考をストップさせて、役ではなく役者個人を眺めるのは、ものすごくたのしい話なのだ。

 かわいいんだ。

 主人公ジェラールは、ストーリー内でどんどん立場が変わる。また、気持ちも変わっていく。
 それを主人公目線でえんえんじっくり描かれる。

 大雑把が基本のタカラヅカにおいて、主人公が恋に落ちていく様をじっくり眺められる物語は、稀有だ。

 出会った瞬間恋に落ちてそれまでと別人とか、さっきまでふつーに世間話していたのに、しばらく舞台上で会ってない・出てこないのに、次の銀橋では愛の歌を歌っていたりするのがタカラヅカ。
 いつ、なんで、恋に落ちたのか。どーしてその人なのか。
 なんの説明もない、ただ「トップスターと娘役トップスターだから」というだけの恋物語を何十年何百作上演し続けるタカラヅカ。

 そんななかで、出会いから恋、打ち明けられなくてじれじれ、すれ違ってじれじれ、もうダメだサヨナラだ、でもどんでん返しでハッピーエンド! を、フルコース主役目線でやってくれる作品は、ほとんどない。
 「恋愛至上主義」の劇団なのに、ほんっとーに、ほとんどないんだコレが。

 それがこの『再会』ときたら。
 これでもか、と主役の感情のみを追い続ける。

 主人公の表情、感情、浮き沈みの激しさを、たーーっぷり堪能できる。

 てゆーか、恋に落ち、女の子にめろめろになって、自分の気持ちに振り回される主人公を見られる、って、すげーたのしいっ。

 トドファンだったわたしが、当時どんだけ舞い上がっていたか。
 愉快なイキモノ・グンちゃんにめろめろになって振り回されているトドが、どんだけかわいかったか。グンちゃんを見つめるトドの目が愛情と興味にあふれていて、アドリブでグンちゃん抱き上げてぐるぐる回ったりする姿に「どどどどーしたんだ硬派一途の九州男児が?!」と目を飛び出させたもんだった。
 恋にコワレるトドロキ、という、未知の状況にくらくらしつつも、楽しそうで幸せそうなご贔屓に、こっちもつい頬がゆるむという状況で。

 そうだった、コレ、すげーたのしいんだった。
 1回観るだけなら、誰でもふつーに楽しいし、オチを知った上でもリピートしても、主演のファンなら楽しいんだ。主演に好意を持っているなら、楽しめるんだ。

 なまじ何度も観すぎていて、映像でもなんでも見すぎてきて、最初の出演者への感想よりもあとから残る作品と作者への嫌悪感ばかりが大きくなっていた。

 うおおお、10年ぶりの『再会』。
 や、コム姫の再演は全国ツアーのみだったので観ていない。当時の全ツはほんとに全ツで、大阪では上演されなかったから。
 だから初演以来の観劇。

 ジェラール@れおん、かわいすぎ。

 かわいいっ、ジェラールかわいいっ。
 金髪のれおんくん、ステキ過ぎ、イケメン過ぎ。

 ナニあの男、格好良すぎる。

 彼の周りがきらきらして、リアル少女マンガだ!

 「結婚なんてしないぞぉーっ」と若者らしく言い捨てているときもかわいいし、プレイボーイらしくいかにもなカッコ付けてるとこもステキ。そして、どんどんどんどんサンドリーヌ@ねねちゃんに夢中になっていくところが。
 サンドリーヌの「ふしだらな過去」にショックを受ける様とか、混乱してぐるぐるしているとことか。
 最後、再会したふたりの「嘘つき合戦」、嘘だからひどいことを言っているのに、サンドリーヌが泣き出してしまうかわいらしさ、それにジェラールの心の動く様。
 ナニもかもが可愛すぎて、うきゃ~~~~っっとなる。

 かわいいかわいいかわいい。

 幕が下りたあと、見知らぬ隣席の人と、「ナニあれ、かわいすぎるっ」「ちえちゃんイケメン過ぎっ」「星組よ、とてつもなく星組だわっ」と盛り上がる(笑)。

 うっわ、たのしい。
 たのしすぎる。

 つか、れおんくんマジやべえ。
 かっこいい。

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