『New Wave! -宙-』の構成で、ウケたこと。

 2幕は「宙組トップスター列伝」ではじまった。
 歴史の薄い組はこういうときいいよね、各トップひとりずつ振り返っていける。

 宙組創世の『エクスカリバー/シトラスの風』を全員で盛り上げて、2幕スタート。

 そっから「さあ、宙組の歴史を各トップスターで振り返ってみよう」コーナーですよ。
 まずは最初のトップスター、天下の歌ウマ人気トップ、ずんこ。『エリザベート』から「闇が広がる」を歌ウマ下級生で。
 次のトップスターはたかこ、『NEVER SAY GOODBYE』。いい曲だねえ。

 続いて雪組からの落下傘トップ、かっしー。1作だけだったんで、もちろん『維新回天・竜馬伝!』から。歌うのは、ずんちゃん。
 ずんちゃんは何故か雪組の匂いも感じるので(顔か?)、かっしーがずんちゃんなのは、なんかすげー納得。てゆーか、いいわ~~。

 次はタニちゃんだな、なんの曲だろ……と身がまえてたら(前もってプログラムチェックしてません)、何故か『雨に唄えば』!! 何故、他にももっとあるだろうに? と選曲はよくわかんないけど、タニちゃん役がりくくんだということに、ツボる。
 そっかー、りくくんかぁ。
 タニちゃんの『雨唄』、いろいろ怒濤だったよねえ。思い出すわあ。
 うんうん、歌唱力はどーでもいいのよね、キラキラしていれば!

 じゃ次はゆーひさんだな、と思っていたら。

 何故かあおいちゃん登場で、「HOME」がはじまった。

 お花様って、トップスター換算なんだ!!

 初代からここまで、ずーーっとトップスター列伝で、ヅカで「トップスター」というとそれはもちろん「男役」のことで、娘役は「トップ娘役」表記で「トップスター」ぢゃないのに……!
 ずんこ、たかこ、かしげ、タニと、並列なんだ、お花様!

 すげーー!

 そのことに、大ウケした。

 それとも、このあとトップ娘役の曲もやるのかな? トップスター列伝だと思ったのはわたしの早とちりで、「トップスター、トップ娘役」の曲を全部やるのかな?

 と考え直していたら次、なにごともなかったかのように、りんきら登場で「AS TIME GOES BY」……ゆーひくん作品がはじまった。
 でもりんきらだからか、ゆーひくんというより、萬ケイさんの歌声とオーバーラップしちゃったけど。
 いい。りんきらで萬ケイさん、いいっ!!

 で、次は我らがかなめ様、お披露目曲の『銀河英雄伝説』!!
 あっきー! あっきー! あっきー! ←テンション上がってる

 ……って、やっぱり「トップスター列伝」であってるやない!! 「トップスター、トップ娘役」名曲集ちゃうやん!

 つまり、お花様は、まぎれもなく「トップスター」なんだ……。
 宙組歴代トップスターは、ずんこ、たかこ、お花様、かしげ、タニ、ゆーひ、テル、なんだ。

 すげえなあ、お花様……。
 すげえなあ、宙組……。


 と、ぜんぜん関係ないとこで、ひとり大ウケしてました。

 や、組の各トップスター名曲集はいいよな、盛り上がるよな。
 『銀英伝』であっきー登場したときの、あの輝きったら!!
 澄輝さんねえ、絶好調でチョーシ乗ってるんですよあの人!
 拍手気持ちいいとか、手拍子快感とか、トップライトさいこーとか、絶対思ってますよ!(笑)
 チョーシこいた澄輝さん、さいこーです!!
 この人、ノせた方が絶対いい、面白い、気持ちいい。
 見ていて、わくわくする。
 さて、いい加減他の感想行きます、『New Wave!-宙-』

 花、月ときて、3つめの『New Wave!』。
 あとになるほど、構成よくなるよね!
 人として正しいけど、花組スキーとしては切ないです(笑)、三木先生。
 花組は構成・演出、よくなかったよなー。選曲も謎だったよなー。だいもんが力技で支えきってたけどさー。ぶつぶつ。
 つか、「Jupiter」で黒燕尾、って絶対ずるい(笑)。

 センターが男4人、女の子ひとり、の合計5人という、月組と同じポジショニング。
 でも、「主な配役」に載っているのがあっきーひとりだからか、みやるりよりもあっきーの方が「主演」っぽい位置にいるような気がした。
 やっぱセンター5人は多いよ……。花組の3人がちょうどいい。みやちゃんは人数多すぎな分、割り食ってたなあ。

 宙組版が良かったと思うのは、花組で感じた「ずれた選曲と場面は誰特?!」という不満と、月組で感じた「主演筆頭位置の人がストーリー場面ナシってどういうこと?!」という不満が、一気に解消されていたこと。
 馴染み深く、かっこいい選曲と場面(『ガイズ&ドールズ』除く)と、主演筆頭位置のあっきーが、ちゃんとストーリーのある場面を任されていたこと。
 花組版はエンタメ技術はやたら必要なのに盛り上がらない構成でもたついていたし、月組版はみやちゃんにストーリーのある場面がなかった。ショーの中でストーリーを演じるのは、トップスターの醍醐味よ?? なんでカーテン前や中詰めメドレーみたいな場面ばっかなの? みやちゃんにもストーリーやらせろ!! てな。

 んで、なまじセンターが男4人、女の子ひとり、の合計5人という月組と同じで、男役中心のタカラヅカで、花組ではふつーにセンターは男たちだけだったのに、月と宙は女の子がいるのかっていうと、大人の事情ってやつで。
 男たちだけでいいのに、そこにムリにでも入れられた女の子は、「トップ娘役になる予定がある」ためで。
 娘役がショーで真ん中経験積むのは難しいのよね。やっぱりタカラヅカは男役中心で、本公演はトップ娘役がいるから、若手の女の子には経験を積む場がない。あゆっちぐらい長々と娘2を何年も続けないと、ふつーは「抜擢されました、はい、次はもうトップです」が娘役。
 ショーの練習をさせるために、どんだけ強引でも娘役をセンターにねじ込まなきゃ。みゆちゃんもだし、ののすみもそうやって無理矢理バウで練習してたなあ。

 んで、みゆちゃんもののすみも、バウでしっかりトップ娘役修行して行ったわけだけど。

 うららちゃんは、ここでも大変だったニャ……。

 オープニングのラテン、ひとり特別衣装を着ているのに、目立たない……。
 ちょっとびっくりする地味さだった。

 そして、なんつっても謎の『ガイズ&ドールズ』……。

 や、あっきーはいいの。男たちもいいの。あっきーに伊達男スカイをやらせたかったのも、男たちにかっこいいスーツダンスを踊らせたかったのも、わかるの。アリだと思うの。
 みっちゃんと星組がやること決まってるのに、ここでやる意味がわかんないけど。

 問題は、うららちゃん。

 何故、サラをやらせたし……。
 何故、よりによって「私がベルなら」を歌わせたし……。

 うらら様の魅力は、その大人びた美貌だ。
 正統派の美しさだ。
 そしてそれは、役と衣装と髪型を、ひどく選ぶ。
 憂い顔の未亡人やらせたら最強の美女だ。そんなうららちゃんに、「若くてかわいい女の子」という記号を持つサラを、何故やらせる?

 似合わない……。

 髪型も衣装も話し方も、なにもかも。
 いくら美人でも、年齢詐称したら痛いでしょ? きゃぴりんぶりっこしていい年齢じゃないでしょ? 実年齢や学年ではなく、舞台の見た目年齢っす。

 いやその、これが「トップ娘役練習」だから、「初々しい少女」はトップ娘役の定番キャラクタとしてわざとやらせたのかもしれないけど……。けど……。
 こうまで持ち味にないものをやらせなくていいじゃん、新公じゃないんだから。オリジナルでアテ書きできるバウ公演なんだから。

 それでも、彼女が歌ウマならアリなんだ。
 大人っぽい持ち味の風ちゃんが、それでもサラを演じられると安心していられるのは、彼女が抜群の歌ウマだから。ミュージカルはまず歌ありき、「あの曲を彼女で聴きたい」そう思わせてくれるから。

 しかし、うらら様は……。

 声、出てないし。
 いや、出る出ない以前に、「ない」し。
 ヅカ曲じゃない海外ミュージカル曲っすよ……途中で声、なくなるし。

 持ち味と正反対で、美貌が活かされず痛々しいまでの姿で、出ない音域の曲を歌わせる。
 ……いじめっすか?

 そして、それを見せられる観客の立場は。

 ミキティ、最低。

 この人、なんにも考えてないんじゃね?
 今ここでうららちゃんに必要なのは、「苦手分野の公開練習風景」をお金を取って見せることぢゃないよっ。
 うららちゃんの魅力を、苦手は苦手としてある、でもそれ以上に素敵な面がこんなにある!というのを、ばーーんと見せつけることでしょ?!

 1幕ラストのうららちゃんが、すげー素敵だったの。
 黒いうらら様。
 ファム・ファタール役。
 あっきー青年を翻弄する、魔性の美女。

 うらら様の、正しい使い方!!

 ファム・ファタールっすよ。
 美女でなきゃダメなの。ひとめ見て「特別」でなくてはならないの。
 うららちゃんの大人っぽくて暗い美貌が、見事にハマってたの。

 や、正直ここまで素敵だとは、思ってなかった。
 美貌だけどどうにも地味っていうか、押し出しに欠ける人だと思っていたから。実際、オープニングでは埋没してたし。
 なのにここへ来て、うれしい裏切り、うらら様かっけーー!!

 幕が閉まる瞬間、うらら様見てたもん。
 哄笑するうらら様最高。

 うららちゃんってあんな顔できるんだ。あんな表現できるんだ。
 わーい、楽しみ増えたー! こーゆー持ち味の女の子好きーー!

 と、一気に持ち上がったのにさ。

 全部、叩き落とすんだもん。
 サラ@『ガイズ&ドールズ』で。

 みゆちゃんを「トップ娘役として仕上げて送り出す」役目のあった『New Wave! -月-』。
 ジェンヌ個人の持ち味や魅力なんかガン無視で、ただのテンプレートにあてはめただけですか、ミキティ。

 またしても、ミキティ株が落ちました。『ファンシー・ガイ!』で底値だと思ってたのに、まだ下があったか。

 うららちゃんに限らず、万能な子はいない。なにかしら足りない部分を持っている。それは別にかまわないんだ、万能ならそれで素敵、というわけじゃないもの。
 うららちゃんの位置まできちゃうと、苦手分野をことさら強調して自爆させるんじゃなく、魅力をさらに開花させるのが、座付き作家の仕事じゃないの?
 ったく、3回目の『New Wave!』、構成・演出はいちばんよくなってるのにさ。

 タカラヅカの財産たる「スター」育成部分で大きくマイナス。
 ミキティめ。
 強いデジャヴを感じたのは、りくくんだ。
 『New Wave! -宙-』を観ながら、「わたしこれ知ってる!」という思いに記憶をぐらぐら揺すられた。

 知ってるって……初観劇ですがな、初日ですがな。前もって観ることなどできません。スカステも見てないから、お稽古場映像も知らないし。
 でも、びんびんに強い既視感。
 それが発動するのは、りくくんセンター場面。あっきーセンターで脇にいるときは発動しない。
 衣装でも曲でも場面でもなく、蒼羽りくセンターに反応している模様。

 バウのショーで、センターにいるりくくん。真ん中で、場面を率いているりくくん。

 文化祭か!!

 観る予定のなかった音楽学校文化祭、大劇ロビーで必死の形相の音校生からチケット買って……いや、お金は受け取ってもらえなかったから、タダでもらったことになるな……わけもわからず飛び込んだバウホール。
 階段上がりセンターの良席で、ショーの最中に周囲に頭を下げつつ着席した。
 舞台では、ダンスコンサートの真っ最中。
 わたし好みの「鼻」をした少年が、センターで踊っていた。
 目が合った。
 そりゃ合うだろ、終演まで30分もない頃に入ってくる、しかも段上がりセンターの客。
 なんの準備も心構えもなく成り行きで飛び込んだから、なにもわからない。ただ、センターで踊る少年を観る。
 大きな、特徴ある鼻の男の子。
 わたし好みの、美形。
 それからずっと、やたら目が合う気がした……ってだからそれは単に段上がりセンターマジック。
 他はともかく、このときの文化祭といえば、「鼻の君」。センターで華やかに踊る、りくくんだった。

 そうか、りくくんセンターって、あれ以来なんだ。
 文化祭でセンターだからって、入団してから路線になれるわけじゃない、それを言ったら月組のゆりやくんだって文化祭では王子様踊ってた。花組の仙名さんだって、センターで誰より男前に踊ってた。
 あの日、突然「鼻の君」。彼以外見えない! てな出会い。
 いろんな記憶がスライドショーみたいにカシャカシャめぐって、思ったことは、りくくん、やめないでね! ……だった。ってナニよそれうがち過ぎ。
 わたしにとってのスタート地点の記憶と重なったからって、それがゴールになるわけないのに、むしろリスタートだろうに、この悲観的な脳みそときたら。

 センターで場面を任されているりくくんは、立派な男役スターで、なんとも頼もしかった。
 喋らず歌わないりくくんはほんと最強だ。
 かっこよさと美しさは宙組の配役事情からすれば十分よくやっていると思う。宙組の事情ってつまり、ショーのお勉強機会が他組に比べて格段に低く、動く背景率は高いってやつ。
 技術は上がっているのだと思う。

 が、スターとしての「華」は、変わっていない気がした。

 それは文化祭時からスターに必要な華を持っていたということだし、同時に、入団してからさらに大きくなるわけではなかったのかなあ?という疑問でもある。
 や、単に、わたしのファーストインプレッションが強烈だったため、スタート時がやたら強く印象づけられていて、今が鈍感になっているだけかもしんない。ちゃんと華も成長しているのかもしれない。
 でもなんか……「変わらない」記憶に、胸がひりひりする。なにかと感傷過多なんですよ、過ぎた時間を思うと苦しい。
 今回もわたしは段上がりセンター座席……文化祭のときより後方だけど……にいて、必然的にセンターにいるりくくんと「目が合う」ような錯覚をおぼえる。
 「鼻の君」にとってのこの9年間は、本名で踊っていたあの頃彼が望んだ通りの、イメージした通りの時間だったのかなあ。

 りくくんはもちろんかっこよかったです。
 いやあ、大人になったんだなあ、と思った。
 ただこれは、わたし側の勝手な問題で。
 レオタード姿と本名思い出しちゃったせいか、なんか、変に気恥ずかしくてね。
 スーツでキザってるとか、派手衣装でオラオラゆってたりすると、照れくさかったのだわ。
 で、ああ、あの小さかったすみれちゃんがこんなに大きく……てな、親戚のおばちゃんめいた心持ちになってだね……。

 照れた。

 切なくなったり、照れくさくなったり。
 なにやってんだろね。

 今の宙組で好みの顔って、りくくんとあっきーなのね。好みの鼻、ともいう(笑)。わたしは鼻スキー。大きなかぎ鼻系が大好物。
 好きな顔の男ふたりがセンターで並んでて、じゃれたり絡んだりしてくれて、なんて俺得な舞台なの……! 神様ありがとう!

 りくくんにはぜひぜひもっともっとかっこよくなって、ずっとずっとわたしをわくわくさせて欲しい。
 わたしがあっきーを初認識したのが『薔薇に降る雨』新人公演、ともちんの役を演じていたとき。
 宙担友人の爆走ジュンタンに「あっきー」という愛称を教えてもらい、「わかった、これからはあっきーって呼ぶわ」とわざわざブログ内で宣言したっけ。
 『クラシコ・イタリアーノ』新人公演の幕が下りたばかりの客席通路で、宙担ジュンタンにばったり会い、「こんなにいいとは思わなかった、大泣きした」と、ぼろぼろの顔で言い、わたし以上に大泣きしてたことが一目でわかるジュンタンと手を取り合って「よかったよね? よかったよねえええ?」と日本語不自由ですかってな単語リピート会話をしたっけ。
 そんなことを思い出しつつ。
 『New Wave! -宙-』を観る。

 わたしはただのミーハーヅカヲタ、各組に好きなスターさんがいっぱいいる、観劇するたび「**さんかっこいー!」といろんな人に対してきゃーきゃー言ってる広く浅くの人間です。
 そんなわたしの言うことなので、「またか」かもしれませんが。

 あっきー真ん中舞台観て、どきどきが止まらないっ!!

 『New Wave! -宙-』初日。
 はじまる前からなんか緊張してね。
 んで、舞台がはじまると、どきどきしてね。
 そんでさらに舞台が進むと、にまにました。
 やだ、顔が笑う。にやけてしまう。
 にまにまにま。
 この感じってなんだろう。
 どきどき、にまにま。

 たぶん、舞台の密度に関係していると思うの。
 最初、舞台は緊張していたの。
 エンタメとしての緊張感というより、文化祭のお芝居みたいな緊張感。
 なんだろ、どっちへ転ぶかわかんない、手探り感。
 学生時代のイベントごととかで舞台の幕が上がるときの、「自分たちだけで創りました、これでいいのかまったくわかってません」って感じで、とにかく時間だから幕が上がった、てな、あの感覚。
 大人が監督してない、子どもたちだけでやってる、心許なさ。きょろきょろ、おそるおそる。

 ああ、舞台に「芯」がないんだ。
 たとえ新人公演であろうとワークショップであろうと、ふつー舞台には芯がある。主演の子は腹をくくっているし、作品的にも「主役」が誰か確立しているわけだから。
 『New Wave!』は「主な出演者」であって「主演」として出演者を明記していない。
 にしても、花月とちがって宙は「主な出演者」はあっきーのみ、3人4人列記されていた花月よりも芯の自覚は得られそうなもんなのに……。
 花のだいもんも、月のみやちゃんも、まぎれもなく「真ん中」として存在していたんだなと、宙のあっきーを観てはじめて思った。

 てなふーに、最初はどきどきしました。あっきーがだいもん・みやるり位置にいるのに、彼は「主演」ではなく「みんなでがんばろう」と思ってるっぽい。や、「みんなで」と思うのは間違いではないんだが……。
 「主な出演者」なんて大人の事情で明言してないだけで、主役が、センターが、存在する。主役なしの『ハロー!ダンシング』ではなく、センター確定の『Dancing Heroes!』なの。

 芯が定まらないままはじまっちゃって、責任持つ人がいないもんだから、「みんなでがんばろう」な文化祭的緊張感が漂っている。
 緊張感、ではあるんだけど、どうにも、ゆるい。ぴりぴりはしていない。どきどき。
 その浮ついた感じのまま、わたしもどきどきして。

 このまま行くのかなあ、と思ってたら。
 そうじゃないの。

 変わるの。

 あっきーが。

 澄輝さやとが、調子に乗り出すの!

 1幕半ばの黒燕尾にて。
 黒燕尾の男たちを率い、あっきーがセンターで踊る。いわゆる「トップスター仕様」の場面。
 これを踊りながら……まさに、踊っている最中に、彼が変わっていくのがわかった。

 ぐいーん。
 そんな擬音がつく感じ。

 彼が、前へ出はじめたの。スピード上げたの。アクセル踏んだの。
 何故そうなったか、客席にいたわたしにほんとのとこはわかりません。
 でも、わたしは思った。

 そっか。
 気持ちいいのか。

 気持ちいいんだ。それで、勢い付いたんだ。
 トップスターだけに許された演出、黒燕尾群舞のセンター。タカラヅカを目指す乙女たちの夢の頂点。
  それが、気持ちよくない、はずがないっ!!

 あっきーが、気持ちよさそうで。
 うれしそうで。楽しそうで。
 でもって、ぐいーんと加速する。彼の輪郭が際立つ。色が、コントラストが強くなる。
 あ、調子乗ってる。
 気持ちよくて楽しくて、チョーシ乗ってやがるっ。

 それこそ、世界の真ん中に立つくらいの、思い込みで。

 気持ちいい。
 空気が変わった。
 漂う緊張感が文化祭から、プロのエンターテインメントになった。
 センターが出来た、全世界を、つまりは全責任を背負うと、真ん中の男が高らかに宣言した。

 やだもお、楽しい楽しい楽しい!
 うれしいうれしいうれしい!

 あっきーが、びゅんびゅん飛ばす! チョーシこいてやがる! 行けーー!
 劇場内の空気が、一点に向かい、そこからさらに噴水みたいにぷわーーって広がる!

 にまにまにま。
 笑えてくる。
 口元が弛んじゃって、どうしようもない。
 楽しい。
 愛しい。
 あっきー、面白い! あっきー、好きーー!


 あとはもう、真っ当なタカラヅカ・ショーですよ。あっきーセンターの。
 すっげー楽しい!

 黒燕尾のあの、空気の変わりっぷりは、得がたい経験です。こんな体験が出来るから、観劇ってのは癖になるのだわ。
 人間ってすごい。

 んで、帰宅してから『クラシコ・イタリアーノ』新公の感想引っ張り出してみたら、やっぱあっきーについて似たようなこと書いてるので、ギャフンなキモチ。
 あー、だから『New Wave!』観ながら、『クラシコ』のこと思い出したり、してたんだなあ、無自覚だったけど。
 あっきー、あーたエンジンかかるの遅すぎ。なんでいつも舞台の上で加速するの?(笑)
 娘役は、出来上がりが早い。
 男役はモノになるまで10年掛かるけれど、娘役は3~4年で旬を迎える。新公卒業前後あたりは円熟期・充実期になるか。
 トップ娘役就任が研4~5、研7~8くらいで卒業がひとつのパターン、新公卒業後に就任は特別な例として人の口に上る、というイメージだし。

 だから、研7までで行う新人公演では、「舞台での出来上がり方」という面で、娘役が圧倒的に有利。
 男役は声の出し方、衣装の着こなし、立ち方ひとつにも苦戦しているのに、娘役はそれこそ本公演でやっていても問題ないレベル、ということが、ままある。
 それはタカラヅカの性質上の問題なので、仕方ない。

 というタカラヅカにおいて、主人公たる男キャラよりも、その相手役でしかないはずのヒロインと、まったくの脇役でなくてはならない専科キャラに見せ場と人格とストーリー上の鍵を託した、脚本が悪い。
 テレビドラマ作家に脚本書かせると、女性目線の女性主人公モノになっちゃうのね。テレビドラマの想定視聴者は女性で、女性が共感出来る女性主人公を作ることを命題にしているジャンルだから。や、男主人公でも、明らかに女性お断りテーマでない限り、女性視聴者の目線は考慮しているもの。
 てことで『カリスタの海に抱かれて』という作品、いちばん心情が「ドラマ」として書き込まれているのはヒロインのアリシアなのよね。
 彼女だけが、キモチが一本の筋の元に起承転結している。
 主人公のカルロもがんばってはいるけれど、「ドラマ」としてはアリシア以下。
 2番手のはずのロベルトなんて、人格木っ端微塵、ストーリーの都合で場面ごとに言動が変わるどーでもいいキャラですよ。

 そして、他愛ないストーリーを煽りまくって盛り上げる、ご都合キャラ・アニータがいる。
 アニータの仕事は、煽って炎上させること。
 べつにふつーのことなのに、いちいち些細なことをあげつらって悪い方へ解釈し、大きな声でくり返し、自分の言葉こそが正しいように錯覚させ、悲劇や破滅に誘導しようとする。
 フランス人に恋人を殺された憎しみゆえ、フランスへの復讐心ゆえだ、という建前だが、彼女の言動はそういう意味ではブレまくっている。
 アニータはただ、煽りたいだけだ。自分の言葉で他人が不安になったり迷ったりするのを見たいだけ。だから、いつもその場で最悪の方向へ誘導する、主義主張はその都度変わる。あるのは悪意と狂気だけ。
 なんでこんな、おかしなキャラクタがいるのか? 「こんな風に狂った姿を描くことによって、フランスとカリスタの状況を表現しているのです」?
 いやいやいや、単に、作劇の都合でしょ?
 アニータの出番も台詞も歌も、全部削った『カリスタの海に抱かれて』を想像してください。
 すっごくメリハリの少ない、シンプルな話になるでしょ?

 歩いていたら、うっかり転んじゃいました。いたた、私ったらドジね、さ、早く待ち合わせに行かなきゃ!
 で、すむ出来事に、アニータ登場させてごらんなさい。
「これは予兆だわ! 悲劇が……とてつもない悲劇が起こる……」赤いライトぐるぐる、壮大な音楽、「恨む恨む恨む~~♪」ドラマチックヴォイス炸裂の呪詛ソング!
 そうか、転んでしまったのはきっとナニか理由があるんだ。なにかの病気? はっ、不治の病?! そうよ、なんか知らないけど不治の病が進行しているからなんだわ! 親も恋人も、わたしのためになにも言わないでいるんだ! 笑顔の下に別の気持ちを隠してる……! もう誰も信じられないっっ!! 地球なんか滅んでしまえ!!
 ……てな展開へ、煽りまくりです。

 作者が、物語を煽るためにだけに配置したのが、アニータ。
 こーゆーキャラを作っておくと、楽なんだもん。なんでもかんでもドラマチックに出来て。

 『黒豹の如く』にでも『白夜の誓い』にでも、アニータ@美穂圭子様を投入してご覧なさい。
 お手軽に、ドラマチック化完成。

 どんだけ些細なことも、どーでもいいレベルのことも、これでもかと煽りまくって炎上させてくれますよ。


 で、話は戻る。

 ヒロインのアリシアが、いちばんドラマチック。
 そして、主人公とヒロインの次に重要なキャラクタが、この煽り屋のアニータ。

 で、タカラヅカでは男役よりも、娘役の出来上がりが早い。
 研7まで、と線引きされた状態で、「まだ出来上がり学年に達していない」男役たちと、「早々に出来上がっている」娘役たちが、構成上わりとどーでもいい役割しか持たない役と、構成上大きな意味を持つパワーのある役、を演じる「新人公演」では、どうなるか。

 娘役たちが、男役を吹っ飛ばすことになる。


 新人公演『カリスタの海に抱かれて』の、いちばんのクライマックスというか、温度が高く盛り上がっていたのって、アリシア@みれいちゃんと、アニータ@乙羽ちゃんのたたみ掛けソングだよね?

 作品がそうなっているから、仕方ないんだけど。
 タカラヅカのシステム上、そうなってしまうのは仕方ないけど。

 主演は女の子ふたりだったかと、瞠目してしまうような勢いだった。


 こんな状況で、マイティはよく踏ん張ってた。
 ゆーなみくんは吹っ飛ばされてて影も見えなかったから、やっぱマイティよくやってたよ。
 そして、いかなるときもマイペースに存在しているカレーくんの輝きっぷりにも、感心したナリ。
 マイティ、新人公演初主演おめでとーー!!

 花組新人公演『カリスタの海に抱かれて』観劇。

 マイティ主演が心からうれしいです。
 特定スターの新公主演独占は百害あって一利なし、できるだけ多くの人に新公主演を!がわたしの希望です。
 だから、長の期の初主演は大歓迎です。

 加えて、マイティは好きなジェンヌさんなので、二重にうれしいっす。
 や、単に顔が好きなんです。元贔屓に似てる。腕まくりされたりした日にゃ、ドキドキします(笑)。
 同期に美貌の超路線スターがいて、本人は男っぽい持ち味で、新公2番手とかそこそこおいしい役割はめぐってくるけど、センターライトを浴びることはない……そんな立ち位置まで元贔屓と同じかい、と思っていたところの新公主演だもん、そりゃうれしいわ。下に劇団推しスターがいない、という違いは大きいな。

 カレーくんが超路線なのも、新公やバウ主演をするのも、3番手なのも、なんの不思議もないと思ってはおりますが、ここでマイティに路線切符が回ってきたことに、素直に喜んでます。

 てなわけで、とってもわくわくしつつ客席に着き。
 この芝居、最初に登場するのは主役のカルロ@マイティ。せり上がりのあと、銀橋ソロですよ!
 最初からマイティですよ!

 …………えーと。

 なかなかどうして、反応に困る、感じ、だった。
 と、いうのもだ。

 ビジュアル……。
 軍服姿が、その、どうも……似合って、ない……。

 新公だから、借り物衣装で着こなし大変だから、本来の衣装のようには着こなせないんだろうけど……事情はわかっているけど、最初の登場から見た目がけっこう残念、という。
 顔はきれいなのにな……何故こう、全体のバランスがびみょーなんだろう。『エリザベート』初日も同じこと思ったな。いやその、マデレーネ嬢と同列に語るのもなんですが。

 ビジュアルが残念な場合、期待したいのは「圧倒的な実力」。その昔、「美貌が売りのトップスター様」の新公主演をしたほくしょーさんが、ビジュアルの難点をその歌唱力でぶっ飛ばしたように、ここはひとつ、卓越した歌声で……。
 というほど、マイティ、歌うまくないしなあ。
 初主演で「最初にひとりせり上がり→銀橋ソロ」って、すげー難易度高いんだろうなあ、このしょっぱなの銀橋ソロ、決していい出来ではなかった、マイティ比でも。

 みりおくんもこの軍服には手こずっている感があるのに、新公はさらに大変なんだろうなあ。
 しかし、この「つかみ」部分でガツンと行けないと、場の掌握が難しくなる気がする。

 ビジュアル残念、歌もそれほどでもない……こんなところからはじまってしまった、アウェイ感あふれる舞台、さあどうする?!
 って、どうするもなにも。
 わたしが、手に汗握ってどうする。

 実際、舞台が進むにつれ歌はよくなっていったし、お芝居は問題なく出来ている。
 相手役に恵まれたなあ。アリシア@みれいちゃんがマジにうまいので、マイティは自分で立つことに専念出来たみたい。これがなんにも出来ない初心者娘役だったりしたら、共倒れの危険ありだもんよ。

 カルロという役、芝居については、よく出来ていたと思うんだけどなあ。
 特に引っかかることなく、見られた。
 軍人らしい雰囲気があるし、おおらかな明るさがある。本役さんだと「DTにソレ言っちゃダメ!」と思ったアリシアの台詞も、なんなく耳を素通りするし。

 『ラスト・タイクーン』新公では、本役さんよりも説得力あったくらいだもの。得意分野の役ならば、最大限に魅力を発揮出来るだけの舞台力がある。
 が、同じ本役さんの役をやっていて、今回は見た目のバランスがいまいちだったのは……ほんと、向き不向きの話ってことになるか。
 専科さん風のしぶいヒゲのおじさまは、みりおくんの苦手分野。でも、マイティは得意分野。
 キラキラ美青年いかにも主人公!は、みりおくんの得意分野。そしてマイティには、ちょい苦手……?
 って、つまりそれは、マイティの持ち味が別格スターであるってこと。
 や、それははじめからわかってる、だから彼は今まで主演できなかったのだし、そーゆー人だからこそ、わたしの好みだったりするのだから。

 そしてそれは、今現在の話。
 別格タイプであっても、新公主演することで、路線変更するかもしんないじゃん。真ん中に立った経験ゆえに、さらに美貌と華に磨きをかけるかもしれないじゃん。
 だからなんでも、やる意味はある。いろんな人が新公主演していいと思う。


 贔屓目かもしんないけど。
 『カリスタの海に抱かれて』のマイティは、役として、芝居としては、別にいいんだと思う。
 だからあとは、「タカラヅカ」として。

 やっぱ、登場した途端、「おおっ」と思わせる美貌が必要。
 顔立ちのコトじゃなくて、姿。

 今現在の「新公初主演です」のマイティだと、「トップ路線の若手スター」というには、苦しいと思った。やっぱ持ち味が真ん中じゃないなあ、と。
 繰り返すが、今現在は。
 先のことは、わからない。
 着こなしも見せ方も、これからどんどん垢抜けて、「真ん中もいける」と思わせるビジュアルやオーラを身に付けるかもしれないもん。

 とりあえずマイティって、地味ではないんだよね。芸風が。いわゆるキラキラアイドル系ではないだけで。今の時代、キラキラアイドル以外は「別格向き」「脇向き」と言われるのかもしんないけど。

 真ん中向きではない、と言われる人の多くは、うまくてもきれいでも、地味だったり生彩や輝度に欠ける人である。
 マイティの持ち味は、少なくともそっちじゃない。濃い輪郭を持っている。顔の濃さだけじゃなくて(笑)。 
 だから、スターとしての経験値次第で変わっていく可能性は、大いにあるよなあ。
 もちろん、トップだけがヅカではないので、この経験を元に厚みのある別格スターになってくれるのも、ぜんぜんアリだし。

 所詮好きなタイプには甘いのですよ(笑)。
 あー、だからこそ、もっと実力が欲しいなあ……。歌、もっと安定してうまくなってくんないかなあ。
 トップスターは特別な存在である。
 宝塚歌劇団はピラミッド式の番手制度で組が運営されており、5つの組にひとりずつトップスターがいる。
 その唯一無二の存在トップスターには、様々な権利がある。
 芝居にて必ず主人公を演じることもだし、公演の最後の大階段パレードで、ナイアガラ付き大羽根を背負って、最後に大階段を降りることもそうだ。

 いろんな「トップスターならでは」の権利がある。
 そのなかでも、とびきり「トクベツ」なこと。

 それは、ショーの主役を演じることだと、わたしは思う。

 芝居の主役は、別箱でも、新人公演でも、できるからねー。
 だけど、ショーは、基本本公演のみだ。新人公演だって芝居のみ、ショーの新公はかなりイレギュラーで、ほとんどない。別箱でもショー公演は稀だ。あっても単独主演ではなく、主な出演者表記だったりする。

 芝居は物語の力も借りられるが、ショーはスター個人の力で成り立たせなければならない。たったひとりで、ショーを牽引できる舞台人は、トップスタークラスの力が必要だからだろう。半端なランクでは、任せられないってことか。
 2番手が全ツを主演として回る場合でも、芝居一本モノが基本で、ショーは避けてるもんなあ。

 だから、本公演で、大劇場で、ショーの主演が出来ること、というのは、タカラヅカのトップスターの持つ、特別な権利なのだと思う。


 てなことを、改めて感じた、みりおくんの初ショー主演『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』初日。

 みりおくんは入団当初から抜擢されて、ずーーっとずーーっと「トップスター候補生」として特別養成コースを歩いてきた人だ。
 抜擢されること、特別な立場に立つこと自体は、決して不慣れではないし、経験値が足りないわけでもない。
 そして、準トップとして大劇場センターも務めてきたし、晴れて花組トップスターになってからも、大劇場1作、別箱公演2作をこなしている。
 これ以上ないくらいの、「ベテラン」経験値を持つスターだ。

 それでも。

 みりおくんのいっぱいいっぱいさに、「初体験」なのだということを、思い知る。

 そうか。ショーの真ん中は、はじめてか!!

 2番手以下で「場面」のセンターに立つこと、1本モノ芝居のフィナーレで歌い踊ることとは、ワケがちがうんだ!

 芝居は、「役」として舞台に立っている。トートであり、カルロであったわけだ。
 でも『宝塚幻想曲』の真ん中にいるみりおくんは、「明日海りお」として舞台に立っているんだ。
 花組トップスターとして。


 いや、なんつーか。
 大変、そうでした。
 いろいろと。

 テンパってるなあ。そう思えるほどには。

 そして、気づくわけだ。
 この『宝塚幻想曲』という作品、「みりおくんの、はじめてのショー作品」として、座付き演出家が「みりおくんのためだけに書き下ろした作品」ではないのだということに。
 たしかにみりおくん率いる新生花組のための書き下ろし新作ショーなんだけど、「みりおくんのための作品」というよりも「宝塚歌劇団海外公演用演目」として作られてる。
 だから、みりおくんの得意分野や魅力を最大限に発揮出来るかどうかには頓着せず、「作品としてのメリハリ」とか「海外の客向けサービス」とかに執心している。
 ぶっちゃけ、みりおくんの苦手分野もがんがん盛り込んである。

 これは、大変だ……。

 しかも。
 相手役のかのちゃんがもう、「スター初心者です!!」と顔にでかでかペイントされている。
 「トップ娘役初心者」ですらないの。「スター初心者」なの。トップ以前に、舞台の真ん中でライト浴びて「存在する」こと自体に慣れてないの!!

 こ、これは……大変だ……。

 そして。
 2番手のキキくんが、周囲気にせず、勝手にキラキラしてるの!!(笑)
 トップを支えようとか、思ってないよね、そもそも思いついてないよね? 自由だな、まったく!

 大変だな!!(笑)

 みりおくんがいっぱいいっぱいで。
 すげーすげー、きりきりきりきりがんばってて。

 かのちゃん周囲見えてなくて、キキくん周囲見てなくて。

 ああもう、愛しいわ!!

 みりおくんの一生懸命さ、あのぎりぎりっぷり。
 重責背負ってただもうストイックに神経質に、役目こなすことに必死になって。
 似合わないことや苦手なことも、真正面からぶつかってて。
 空回りしてるかのちゃん引っ張って、好きな方向へ走り出してるキキくんやカレーくん引き戻して、全部全部、背中に背負い込んで、前を向いて。

 ああ、これはこれで、得がたい魅力だなあ。

 つい先日、超ベテラントップ、レジェンド柚希の「スター力で世界に君臨する」ステージを観たところじゃないですか。
 トップスターの発する力で、舞台上だけでなく劇場全部を覆ってしまう。温度を変え、持ち上げ、浮かせてしまう……そんな、とてつもないパワーに身をゆだねる快感。

 それと見事に正反対の……青い、不完全な舞台。
 だが、それがまた、魅力なんだ。
 このぎこちなさ、荒削りだけれど若者が懸命に己れと闘い、前へ進もうと気を発している舞台……これもまた、まぎれもなく「タカラヅカ」で、ひとの心を動かすものなんだ。


 あー、いいなあ、みりおくん。
 みりおくんというと、「悪く言う人がいない」「愛されキャラ」というイメージだ。
 客席で隣り合った見知らぬ人と話したりする場合、高確率で「好きなジェンヌ」として名前を聞く。大抵の人は「だってきれいだもの」と続けるのだけど。
 彼の場合、顔のきれいさだけでなく、こういう芸風も含めて、愛されるんだろうなあ。
 そう思った。


 みりおくんのためだけのオーダーメイド服ではなく、あまり似合わないタイプの服かもしれない。超ヒールのブーツばかり履いていられないわけだし。
 だけど『宝塚幻想曲』は「宝塚歌劇団が外の世界に向けて力を入れた」作品だ。本気できれいに作った新しい服だ。
 得意でなくても、着こなそうとしている姿は素敵だし、そもそも、美しい人はナニを着たって美しいのだ。

 みりおくんの新しい門出に乾杯。
 ご贔屓卒業後は、ライトなヅカヲタになる。
 わたしは痛いまっつファンなのだが、まっつを好きになる以前から、ヅカヲタだ。まっつがいなくなったとしても、それは変わらない。
 だから、まっつというタカラジェンヌが消えてしまっても、ずっとヅカヲタでいる。

 ということで、相変わらず全組観ているし、どの組にも好きなスターがいるし、どの公演を観ても楽しい。

 まっつの次に好きなのがだいもんなので、今はだいもんだいもん言ってるし、雪組がHOMEなので、雪っこたちが愛しいし、特にかなとくんがお気に入りだったりする。
 花組は元HOMEなもんで愛着あるし、そこでの視点は、今はあきらが圧倒的。や、前回まではだいもんが第一視点で、あきらは次点だったんだけど、今回からはあきら中心っす。
 月組はなんといってもちゃぴ! あと、まゆぽん眺めるのも好きだな。星組はやっぱちえねね観てたし、宙組はいつもヲヅキさんにロックオンしてました。

 特にご贔屓がいなくったって、ヅカヲタは楽しい。

 毎公演、誰かしらの名前を挙げて「かっこいい!」ときゃあきゃあ言ってる。
 きゃあきゃあと……気楽に。
 ご贔屓じゃないから。

 まっつ卒業して半年以上経つわけだけど、次の恋はいつ訪れるのかしら?
 過去の恋を忘れるには、新しい恋でしょ?

 ちくしょーー、まっつのバカーー!!
 まだぜんぜん、前へ進めないんですけど? トラウマジェンヌめ(笑)。


 『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』観劇後、友人に聞かれたんですよ。
「スーツの場面、こあらさんは誰を観てたの?」

 えー、みりおくんがゴールドスーツで、周りを花男たちが囲んでキザに濃ゆく踊る場面です。
 長年の花担さん的には……や、花担でなくてもかな、「あれって、みりおくん的にいいの?」な場面なわけで。
 いやその、みりおくんはあまりダンスが得意な人ではナイので、そんな彼にあのスーツであのナンバーを、花男たちに囲ませて踊らせる、てのはもう、本人にかなり気の毒なことになってるんじゃあっていう。
 実際観てて、こりゃ大変やなあ、と思ったわけで。

 観た人みんなが口を揃えて「らんとむで観たかった……!」というあの場面。
 真ん中を観るのは痛々しい、じゃあ周囲の誰を観ていた?

 聞かれて一瞬、詰まった。

 ダレヲミテタ?

「えーと、全体を、観てたかなー」
 一瞬詰まって、そう答えた。答えながら、自分で思う、なんか嘘っぽい答え方。

 スーツでキザに濃く踊る男たち。
 その曲調、振付、演出。

 わたしが視ていたのは。

 まっつだ。

 まっつの、幻影。

 まっつが得意としたダンス。ジャンル。花男の真骨頂たるナンバー。
 あの真ん中、金色のスーツを着て、帽子をかぶって、あのクールな色男が現れそうだった。
 いや、現れた。
 わたしのなかに。

 この場面だけじゃない。
 この『宝塚幻想曲』というショー、やたらと、『インフィニティ』を思い出させる。

 なにがどう、じゃなく。
 同じ稲葉先生だからか。
 創作の癖が出ているんだろうな。また、『インフィニティ』は「タカラヅカREVUEのテンプレ」みたいな、きれいなカタチを持った作品だったし。海外公演に使い回す前提公演だから、余計に「きれいなテンプレ」をそのまんま使ってるんだろうな。

 まっつは雪組だった。そして、まっつのいない雪組のショー『ファンシー・ガイ!』を観ても、平静でいられた。幻影に悩まされることはなかった。別モノとして楽しめた。
 だからもう、大丈夫なんだと思った。
 まっつがいないタカラヅカを、受け入れられているんだと。

 油断した。
 雪組じゃなく、花組か!
 まっつが生を受け、形作られた組。最後まで花男だった、DNAの濃さ。
 花組で、稲葉ショーで、来た。

 まっつが、いない。

 何故いないの。
 いなきゃ、おかしいのに。
 こんなにこんなに、既視感あるのに。
 幻影が見えるのに。

 どうして、いないの……?

 特に、スーツ場面は、『インフィニティ』のパリに重なって、息が詰まった。

 落ち着いて、ここは大劇場、まっつが金色スーツでセンターにいたのはバウよ、大劇場でそんな位置にいるわけないじゃん。
 そう思い直せば、今度は真ん中のらんとむさん(何故か脳内変換。オサでもまとぶでもなく、らんとむだった)の周囲にいるだろうまっつを探し出す。
 ポジション的にあの辺りかな、てなところを観ては、そこにいない彼を、脳内が勝手に映像を創り上げる。

 そして、泣く。

 馬鹿げてる。
 こんなの、おかしい。
 馬鹿げてる。
 苦しい苦しい苦しい。

 誰よりも美しい、あのダンスを、あの動きを、あの姿を、脳が、心が、おぼえている。


 消耗した。
 なんでこんなに、苦しいの。
 ショーを観て。楽しいはずの、観劇で。

 や、楽しいよ。ちゃんと楽しんでるよ。
 だけど。

 あちこち、きついわ……。


 ああもお。
 まっつのバカーー!! なんでいないのよーー!!(逆ギレ)
 わたしの好きな人が、わたしが思うほどの扱いを受けられない。
 それはとても、切ないこと。

 今回は花組公演を観た、つーことで、あきらのことを語っているわけなんだが。前日欄からの続きです、めっちゃ途中です。

 うん、あきらは口実かもな。「どうして世界は、わたしを中心に回らないの?!」という、実に厨二な虚しさを、とてもミクロなところで例に出すと「あきらの扱い」なんですよ。
 それはもう、昔から「どうしてオギーにトウコ主演でバウをやらせないのよ?!」とか「まっつを大事にしろーー!」とか、「『フットルース』DVD出さないとか、バカにもほどがある!」とか、ずっとずっと、なにかしら憤ってましたね(笑)。
 わたしは神ではないので、ちっとも思い通りにならないんです、すべてのことが。

 わたしには、なにもできない。なんの力もない。
 だから世界の片隅で、祈るだけ。
「あきら、辞めないでね。ずっとずっと、この花園にいてね。フェアリーでいてね」てな。

 あきらだけでなく、各組数名ずつ、そういう「好きな人」たちがいる、広く浅くの無責任ファンです、あたしゃ。

 それでもそうやって、「目の前にあるモノ」を楽しんできた。
 扱い悪いなあ……そう思いつつも、かっこいいなあ、と舞台の上にいる彼を眺めて満足してきた。
 ただ、あるものだけで。


 そんな日々でしたから。
 そんな前提でしたから。

 『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』あきらの扱いには、度肝を抜かれた。

 場面もらってる? あきらセンターで1場面?? や、3個イチとはいえ、いちおーあきらセンター……。

 あの、まっつですらそんなの一度もなかったんですよ? 雪組3番手でしたけどね?

 あきらって今まで、ほんとに脇扱いだったよね? その他大勢だったよね?
 しかも、バウ主演下級生に抜かれてましたよね?
 なのになんで、ここでいきなり、「路線スターですがナニか?」「番手ついてますけどナニか?」な扱いになってんの?!

 や、あくまでも若手な扱いで、今年度研12とかになる男役の扱いじゃないかもしれんが、それにしたって、いきなりすぎるわ! 今までの彼の立ち位置からしたら……!

 ……所詮わたしは外野、ライトなファンなので、見当違いのことゆってるかもしんないけど。ガチのファンから見れば「順当に番手として上がってきてるわ、上が抜けたんだから相応の番手に付いただけよ!」なのかもしれんが。

 大階段パレードで、4番手として階段降りするあきらを観て、ぶわっと泣けた。

 ……まさか。
 まさか、ね。
 こうくるとはね、思ってなくて。
 新生花組がスタートして、あきらがまさか、踏ん張るとは思ってなくて。
 みりおくん中心に、真ん中辺りがやたら若く幼くなった花組だから、中堅スターが活躍することは想定内、つか、期待していたけれど。
 てっきり、あきらPちゃんちなつとか、まるっとまとめて扱いはぼかすと思ってたのよ。
 ここであきら単独とは、思ってなかった。

 あきらが、4番手だ……!!

 そのことに衝撃を受けて、泣けて、……えーと、すみません、キキちゃんあんましぴんときてません。羽根背負って堂々の2番手降りしてたのは観たけど……ああはいはい、そうよね、ぐらいで、オペラはすぐにあきらに戻って。

 自分でもびっくりしたさ……。
 ショーの間、ずっとずっとドキドキしてた。
 正確には、あきらセンターで海の場面がはじまったときから。
 え? え? なんで? マジ? って。
 ずっとずっとドキドキして、最後の階段降りでどーーん!と来て。

 泣くのかオレ?! セルフツッコミ入りましたよ。

 不遇な人にやたら入れ込む癖が付いてるからなー(笑)。
 たぶん、ご贔屓とかぶっちゃって過剰反応してるんだと思うわ。

 はー、ドキドキした。
 んで、よかった。
 劇団がどう考えているのかわかんないし、次の公演ではさくっと「4番手降り? なんのこと?」と手のひら返してるかもしんないけど。
 今、この公演で、芝居・ショー共に、ちゃんと4番手してるあきらが、うれしい。
 いやほんと、かっこいいんだって!!
 あとはもう少し、歌がうまくなってくれたらなあ……(笑)。

 てことで、初日のショーの感想は、ツッコミいろいろあれど、「あきら……!!」なキモチが全部持って行ってしまったんだ。
 花組公演、『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』は、楽しいショーだと思う。
 初日、初見では、いろいろツッコミながら観てたけど。

 や、なんつってもカレーくんの歌声の凄まじさに椅子から転げ落ちる思いだったし(芝居より、圧倒的にショーがすごい!!)、バスケというと花組には『Cocktail』という黒歴史があってだね……! あの微妙な空気、忘れられないよね……! 未だに語り出したら止まらなくなるよね! まずソレを語らなければ、『宝塚幻想曲』のバスケは語れないよね!的な? それからみりおくんの金スーツ場面の息苦しさ、あとみりおくんが花魁やるって前評判すごかったけど、えっと、アレはいいのか? なんかかなり微妙っていうか、効果率悪そう……、タカスペ観たときから感じてたけど、かのちゃん、ダンス苦手だよね?? なのにこの役割と演出は誰得……?? 和太鼓はいいなあ、圭子ねーさまショーも出るのか、や歌聴けるのはうれしいけど、全部持ってくからなあ、いいのか? 三味線燕尾というと花組には『ASIAN WINDS!』という黒歴史があってだね……! かっこいいんだか笑えるんだか反応に困るあの客席の空気ごと、語らずにはいられないわけでだね!的な? ってゆーか忙しすぎだろこの黒燕尾! 点呼できねー!

 とかな。

 それはともかく、観ている間ずーっとずーっとドキドキしてた。

 終演後、「キキちゃんが2番手羽根背負っててびっくりした」という意味のことを友人に言われたけれど、わたしの観点はそこになかった。
 キキくんのトクベツ扱いはもうわかっているというか、治外法権っぽくて、わたしの関心の内にはなかった。

 わたしがドキドキしっぱなしだったのは、あきらの扱いだ。

 わたしが知る限りのナマで花組観劇したすべての友人知人がもれなく「かっこいい」と言う、オムライス筋を持ったイカス兄貴。
 こんだけ誰もが口を揃えて誉めるのに、劇団からはガン無視されている「幻の新公主演」経験者。
 「あきら、もったいないね。なんで新公主演できなかったんだろ?」と、何度言われたことか。
 いやいや、してるって、あきら、新公主演!!
 しかも、ちょーかっこよかったんだってば! ナチュラルに男で! ナチュラルにおっさ……ゲフンゲフン、大人で!!
 『麗しのサブリナ』。版権のせいで、ニュース・バラエティ番組にも映像ナシ、当然新公の舞台放送もなし。
 一切なんのカタチにも残ってないもんだから、記憶に残してもらえない。で、最近のファンとかには「扱い悪いけど仕方ないね、あきら、新公主演してないもんね」とか言われちゃう。
 してるから! 劇団が無碍な扱いしてるだけで。(劇団は意志を持って「90期の新公主演? は? そんなもんあったっけ??」という態度を取っていると思う。としくんにしろ、がおりにしろ)

 あきらをもっと大事にしろ!! と、思う。
 が、それと同時に、あきらには劇団の扱いを覆すほどの「基本的な実力」が足りていないとは思う。としくんやがおりほどの実力があれば、少ない見せ場でももっともっと表現出来ることはあるだろうに……歌にしろダンスにしろ、これという武器はないんだよね。
 あきらの武器は、なんつってもかっこいいことだ。
 群舞の中で、「あ、あの人かっこいい!」と思えるビジュアル。男役としての体型、動き。
 とびぬけてうまいわけでなくても、この「男役としての美しさ」は、れっきとした才能だと思う。

 でも現実問題、あきらの扱いは「仕方ないよね、新公主演してないもんね」と言われる辺りの扱いだ。脇の男前、中堅だから立ち位置それなりにいいよね的な。
 そして、月組でもあきら辺りの扱いしか受けていなかった(「新公主演したの?」「さあ?」といわれる、組ファン以外には本公演で「どこに出てたの?」と聞かれるような)、ちなつくんに、さくっとバウ主演を取られ、下位へ押しやられてしまった。
 あきらって、ちなつ以下だったんだ!! それが劇団の考えなんだ! がーーん。
 カレーやたまきちならわかるけど、ちなつっすか……。
 や、名前出してる下級生に他意はないです、彼らがどうこうということではなく、劇団が、あきらを、そんな風にしか考えていないのだ、という事実のみに言及。

 わたしはあきら好きだから、しょぼん。

 花組観るときの、視点のひとつ。花組を観る楽しみのひとつ。
 わたしの大好きな、わたしが価値がある、大切だと思うモノを、劇団が「どーでもいー」と思ってるっぽいことへの、ショックと悲しさ、切なさ。
 あきらに限らず、わたしの望み通りにならない現実のすべてに感じるやりきれなさ。


 って、めっちゃ途中だけど、文字数都合で翌日欄へ続く!!
 『TOP HAT』があまりに楽しかったので。

 この楽しい物語を根っこにおいて、もっと「タカラヅカ」なモノを作れないかな、と考える。

 だって、楽しいことは楽しいけど、所詮海外ミュージカルだもん。
 わたしは海外ミュージカルを、あまりありがたいと思ってない。大劇場本公演でショーと2本立てで上演される、オリジナル芝居作品こそが、いちばん大切にしなければならないヅカの文化だと思う。
 海外ミュージカルに大好きなモノもたくさんあるけど。『TOP HAT』だってものすごく楽しくて笑えて泣けたけど。それとは別の話。

 『TOP HAT』を下敷きに、ヅカ用芝居を考える。

 『TOP HAT』は楽しかったけれど、ヅカ的に視点でもっとも大きな問題は、キャラ設定。

 『TOP HAT』、『ME AND MY GIRL』、『ガイズ&ドールズ』ってなんかキャラ配置がかぶるなあ。
 主人公-男前、ヒロイン-若い美女
 主人公の友人-ヒゲのおっさん・ヘタレ・三枚目、その相手役-こわい系のおばさん・三枚目
 主人公を引き立たせるためなんだろうけど、主人公カップルだけ美男美女で、2番手カップルは中高年のお笑い(+ほっこり)担当って。きれいじゃない、若くないカップルだからこそ泣けるとか「いい話」になったりするのはわかるけど、ヅカ的じゃない。
 こーゆーとこがほんと、海外ミュージカルの大きなネックよね。

 タカラヅカは新陳代謝と番手制度がある。このシステム上、ほとんどの場合、トップスターよりも2番手以下が年下だったり下級生だったりする。
 主人公が若者で、2番手役が年配だったりすると、なかなか不自然な姿になる。若者らんとむと、彼を拾った中年男みりお、とか、純情可憐な少年水しぇんと、百戦錬磨の大人のダンディキムとか、「若者主人公と大人2番手」が大変な異世界を作りだしていたよな。
 ヅカでは、主人公と2番手役は、同世代であるべき。

 『TOP HAT』の主人公ジェリーと、その友人ホレスは同世代なのかもしれないが、描き方が「現役はジェリーのみ、ホレスはロートル」になっている。や、「素敵なのはジェリーのみ、ホレスはお笑い担当」と言い換えるべきか。

 タカラヅカは男役がカッコよくてナンボだから、こーゆーキャラ分けはしない。
 かっこいい男性のタイプは、いくらでもある。
 ジェリーもホレスも今が旬のイケメン。おっさんでも恋愛可能範囲外の三枚目でもない。
 ただ、ふたりはタイプがチガウ。
 ジェリーはスターらしく、チャラめの強引男。恋愛経験はそれなりに華やか、女の子にはいつもきゃーきゃー言われてるけど、本当の恋はまだ知らないの系。 
 ホレスはイケメンだが、基本真面目な仕事人間。ヒゲの代わりにメガネ着用でいいんじゃね? 女性には不器用で、新婚の妻ともすれちがいがち。

 ヒロインのデイルは、ジェリーが一目惚れするくらいだからもちろん、あでやかな美女。
 その友人でホレスの妻であるマッジは、デイルと同世代の若い女の子。仕事仕事でほったらかしになっているので、その不満からデイルについ、ホレスが悪い男であるかのよーなことを言ってしまう。

 マッジを変な声の悪妻・恐妻にする必要なし。
 専科さんか男役が演じそうなおばさんの役が準ヒロインってのは、ヅカ的に大きくチガウ。
 ヒロインに次ぐ大きさの女性役なんだから、ふつーに路線娘役が演じておいしい役であるべき。
 デイルがきれい系なら、マッジはかわいい系とか。デイルが素直な女性なら、マッジはちゃっかり系とか。いくらでも、キャラを立てられる。
 重要なのは、どちらも若くキレイな女性であること。

 2組のカップルが誤解で大混戦! しかも主人公はスターダンサーで、ヒロインはモデル、もう1組のカップルも業界人でお金持ち、という華やかな道具立て。
 これだけで90分十分みっちり埋められる。ショーシーンを自在に入れられるもんな。

 加えて、3番手男役にもオイシイ役。
 ヒロインに横恋慕するデザイナー役。横恋慕というか、そもそもこっちが先にアプローチしてた(相手にされてなかった)わけで。

 もちろんこの恋敵のアルベルト役も、ヒゲのお笑い芸人なんかじゃない。
 ふつーにイケメンだ。派手でキザ男だとしても、常識の範囲。

 『TOP HAT』のアルベルトがあまりに酷い描き方なのは、「はじめから論外、こんなキモチ悪い男には、どんな酷い扱いをしてもいい」という理由付けのためだろう。
 主人公たちに酷い目に遭わされる当て馬に、同情票が行かないようにという、計算ゆえ。
 彼はいわば被害者なんだが、「アルベルト可哀想! デイルはバカだわ、アルベルトを選んだ方が幸せになれたのに!」と、観客に1%でも思わせちゃいけない。
 観客は全員ジェリーの味方で、デイルがアルベルトとの結婚を決めたときに「ダメよデイル!!」とハラハラする……観客の視点・意識の統一のために、当て馬は徹底的にキモ男として描く必要があった。

 が、ヅカではそんなもんいらん。
 ある意味、「当て馬と結ばれた方が良かったのに!」と思う層がいてもいいんだ。
 ジェリーも素敵だけど、アルベルトも素敵だったなー。……そう思わせていい。

 ただし、アルベルトをドリフや新喜劇的に描いているからこそ、「結婚無効」という力技のオチがまかり通るのであって、彼をふつーの二枚目にする場合は、もうひとひねり必要。
 『PUCK』のダニエルが、子どもの頃からずーーっと想い続けたハーミアに振られても、ハーミアが悪者にならないのは、ダニエルが「間違った手段」で愛を得ようとしたためだ。
 アルベルトがなにかしら悪い方法でデイルを得ようと画策した、というちょっとした追加要素必須。
 「愛ゆえに強引な方法を取ったイケメン」は許されても、「なにも悪くない、善良なキモい不細工」は、ヅカの方法論的には許されないんだ。(繰り返すが、現実の話じゃないよ、ヅカの世界観論理においてだよ)

 トップから3番手まで、それぞれ恋愛要素がっつり、女の子は娘役2番手まであるし、なによりオイシイ執事役もあるし、舞台をロンドンとベニスと2箇所に分けず、1都市にしておけば、脇にも通し役をいろいろ作れるはず。

 骨組みだけ借りて、まったく別のモノ。
 その昔、太田せんせが「入れ替わる2組のカップル」ネタで何本も書いていたように。
 『Ernest in Love』というブロードウェイミュージカルがあってなお、「ヅカオリジナルですがナニか?」と『アリスの招待状』を上演するようなもんっすね。

 『TOP HAT』を否定するわけではなくて。
 『TOP HAT』が楽しいから、面白いから、これをさらに「タカラヅカ」的に「オリジナル作品」にしてしまえば、もっと面白いのにな。
 と、思ったというだけです。

 『TOP HAT』がきちんと面白かったからこそ、これだけいじりまわせるんだ。
 メガネのイケメンかいちゃんが、ここぞというところでメガネを取ってかわいこちゃんとラブシーン、キザ美形の愛ちゃんが強引愛展開……そんな画面を脳裏に描きつつ。
 ありがとー、アタマの体操楽しかった!
 まぁくん、宙組トップスターお披露目初日、おめでとーー!!

 というキモチで、梅芸へ行きました。
 『TOP HAT』初日!!

 お披露目っていいね、初日っていいね。客席のざわつきと高揚感、くすぐったいようなわくわくした空気が気持ちいい。
 開演アナウンスに拍手するぞと待ち構えていたのに……。

 謎の、開演時間遅れ。

 説明もないまま放置される客席。

 …………いやあ、お披露目初日からこれは、不安広がりますわ…………ナニかあったんじゃないかと、いろいろ考えちゃったよ。
 『風共』初日のことを思い出してさ……。ナニかアクシデントがあったことは瞭然なのに、なんの説明もされず(いかなる場合もアナウンスは「装置点検のため」)コマつん不在で進む舞台を見せられた、あのこわさ。

 やっぱり今回もなんの説明もされないまま幕が開き、「ナニがあったんだ。みんな無事なのか??」というもやもやを抱えたままの観劇となった。(結局、開演が10分遅れて、幕間休憩も10分延長)

 や、そんなの、観ているうちに吹っ飛んじゃったけど!(単純)

 だって、すっごく楽しい舞台!!

 まぁくんかっこいい、オシャレ、キザ、チャラい、やだナニこれチョーシこいてんじゃないわよー、かっこいいと思ってさ~~、やだー、かっこいーー!! でもってかわいーー!!
 てな主人公。(説明になってない)

 みりおんもかわいいなあ、きれいだなあ。安心して観られるヒロイン。

 そして、せーこ!! やっぱうまいわー、すごいわー。かいちゃんもかわいくて、お似合いだわー。

 でもって実はいちばん場を沸かせたんじゃないかな、すっしー!! 相変わらずいい仕事してる。


 物語は、とてもシンプル。
 互いに惹かれ合う男女がいるんだけど、誤解ですれ違っちゃうの。この主人公カップルに、その友人夫婦の誤解も絡み合い、もつれて大変! だけど最後はもちろんどちらのカップルもハッピーエンド!

 いやあ、やっぱ誤解はいいですな。ドラマを盛り上げる定番ですよ。
 直近に『カリスタの海に抱かれて』を観ているから余計に? 罪のない誤解で三角四角関係が盛り上がっていくのが心地いい。……ほんと『カリスタ』はなんで誤解じゃなく逆恨みと逆ギレだったんだろう……(笑)。

 誤解モノって定番ゆえに、プロットの組み方でいろいろ発展させられて楽しいんだよね。腕の見せどころっていうかさ。
 感情ゆえに話が転がるんだけど、その下敷きとして、数学的な構成が必要。1+1=2的な。ここでこうきて、事実はこうだけどこの角度からはこう見えるから誤解が生じ、されどこちらからはこうだからこのキャラはこう考えていて……という。
 ヅカではこのへんぐちゃぐちゃな作品が平気で存在するので(笑)、シンプルに計算してある『TOP HAT』は観ていて気持ちいいの。

 まぁくんがハンサムで、みりおんがきれいで、この見るからに美男美女のカップルがすれ違ってどたばたしているのは王道ハートで楽しいし、ハッピーエンドだとわかって観ている安心感がある。
 なんの知識もないけどコレ、ハッピーエンドでしょ? 予定調和の過程を楽しむものでしょ? そーゆー「お約束』ゆえの楽しさ。

 そして、主人公の美男美女カップルと対になる、三枚目カップルのかいちゃんとせーこ。わたしはこういう「笑わせるために、わざと滑稽にしている」キャラや展開が好きではないので、最初はけっこーウザっと思って観ていた。
 主人公カップルを引き立たせるためなんだろうけど、かいちゃんはわざとらしいまぬけ男だし、せーこは変な声のこわいおばさんだし。あー、キタキタ、これだから海外製コメディって苦手なのよー的な。
 でもこの「わざと滑稽」なカップルが、泣かせるんだわー。や、泣くまではいかないのかもしんないけど、わたしは泣けた。
 ラスト近くの「♪あなたのここがキライ」と歌う場面が泣けるのは、若い美形カップルじゃないからだよねえ。
 とほほキャラだからこそ、それを肯定した上での「それでも愛してる」が泣けるんだよなあ。


 どこまでが原作ミュージカルまんまで、どこがサイトーくんのオリジナルなのかはわからない。
 版権ガチガチで、台詞の一言一句、衣装の色カタチ、髪型やアクセのひとつひとつにまで制約があって、それ以外は一切出来ない作品だったのかもしれない。
 にしても、愛ちゃんの演じていたキャラの造形はどうかと思うし、なにより舞台上のストリップは、わたしの許容範囲を超えていた。
 愛ちゃんのがんばりがわかるだけになー。ドリフみたいなことしなくても、コメディは出来ると思うのよ。役のせいもあるけど、台詞が聞き取れなくてストレスだったし。

 あと、1幕ラストのタップは、男女衣装を変えて欲しかった。
 ほんとうの男女なら、同じ衣装で踊っても性別が一目瞭然だけど、ヅカには女性しかいないから。
 男役・娘役が完成された人たちだけの少数精鋭ならともかく、人海戦術、ダンス大変!なわけだから。ただ踊ることに集中しているせいなのか、基本スキルの問題なのか。
 OG公演みたいだと思った。「タカラヅカ」マジックが消えた、だけどタカラヅカやってる感じ。
 全員がそうじゃないよ、もちろん。真ん中はいい仕事してる。でも、出ているのはまぁくんたちだけじゃないから。
 ああ、男役って女性なんだな、とわかって、夢から覚めるっす……。しょぼん。
 女の子はダルマ+燕尾ジャケットでええやん……。

 作品冒頭の映像はオシャレだったなーー!
 サイトーくん、変なアニメを作るんじゃなく、生徒を使ったオープニング映像を作るのは洒落てていいよね! テンション上がるよね! や、原作がそうだからであってサイトー関係ないのかもしんないけど、「オープニング映像=サイトー」というイメージがあるから、幕開きから「サイトーGood Job!」と思ったわ。

 作品中の音楽は知っている曲オンパレード、ヒット全集めいていて楽しい。
 観ながら「この曲はどの作品で誰が歌ってたっけ」と、少ない脳内メモリがフル回転しまくりだったわ……なんか「ひとりタカラヅカ音楽クイズ」になっていたような(笑)。

 役自体は少ないけど、下級生たちもバイトしまくりで、組ファンなら点呼に忙しいだろう。
 楽しくハッピーな時間だった。

 まぁくん、いいプレお披露目だね。
 わたしが劇場の客席にいるときって、なにかと発表あるよな。
 そう言ったら、「3日に1度はどこかの劇場にいるんだから、不思議でもなんでもないんじゃないの?」と友人に返されてギャフンなキモチになったことがありましたが。
 ライトなヅカファンになったわたしは、もう3日に1度生活は送ってないんだが(笑)、それでもやっぱ、劇場でモバタカメール受け取ってる確率高い気がする。

 突然「タカラヅカが観たいわ!」と言い出した母を連れて花組『カリスタの海に抱かれて』『宝塚幻想曲』を観劇している幕間に、月組の公演ラインアップと、宙組『王家に捧ぐ歌』前夜祭の発表を知る。

 今年ラストを飾る月組本公演は、景子先生+稲葉先生の2本立て。
2015年 公演ラインアップ【宝塚大劇場・東京宝塚劇場】<11月~2016年1月~2月(予定)・月組公演『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』>
2015/03/24
3月24日(火)、2015年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、宝塚大劇場・東京宝塚劇場公演の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。   
月組
主演・・・龍 真咲、愛希 れいか

Musical
『舞音-MANON-』

~アベ・プレヴォ「マノン・レスコー」より~
脚本・演出/植田 景子
フランス恋愛文学の最高峰の一つであり、バレエやオペラ作品としても人気の高い、アベ・プレヴォ作「マノン・レスコー」。将来を嘱望されるエリート青年が、自由奔放に生きる美少女マノンに魅せられ、その愛に翻弄されるドラマティックなラブストーリーを、20世紀初頭のフランス領インドシナに舞台を置き換え、アジアンテイストの香り溢れるミュージカルとして描きます。
フランス海軍将校シャルルは、駐屯先であるコーチシナ(現ベトナム南部)のサイゴンで、金持ちの男達の心を次々に捕えては、自由気儘に豪奢な暮らしをしていることから舞音(マノン)と呼ばれる混血の美少女と出会う。二人は激しい恋におちるが、彼女への愛ゆえにシャルルの人生の歯車は狂い始め・・・。
ニューヨーク在住の韓国人作曲家ジョイ・ソン氏、そして、振付にハンブルクバレエ団ソリスト大石裕香氏と、アジア系女性アーティストをクリエイティブスタッフに迎えて創り出すエキゾティックなオリジナルミュージカル、アジア版「マノン」にご期待下さい。

グランドカーニバル
『GOLDEN JAZZ』
作・演出/稲葉 太地

数ある音楽の中でも、リズミカルな旋律で私たちの心を揺さぶるジャズ。ルーツであるアフリカ音楽から現代に至るまでのジャズの変遷を辿りながら、バラエティに富んだ数々の場面で構成するショー作品です。龍真咲を中心とした月組の個性溢れるメンバーが、様々な角度からジャズの魅力をお届け致します。

 いなばっち、大活躍だなー。
 今年の本公演は、9公演。そのうちショー付き2本立て公演は、6公演。
 6つしかないショーの演出家は、三木、藤井、稲葉、齋藤、中村B、稲葉……稲葉くん、2回。
 うち1回は台湾公演上演前提作品だしさー。
 すっげー期待されてるよな。

 まさおさんでジャズ、ということに首をかしげるっちゅーか不安をおぼえたりもするが(笑)、スーツで踊りまくるとしくんとまんちゃんを想像してうっとりし、なによりちゃぴの活躍を思って胸躍る。

 そーいやいなばっち、草野せんせ大好きな人だっけ。
 作品解説が、草野せんせを彷彿とさせる……。

 まさお氏はなんつっても芝居に期待ですな。
 だってさ、景子たんだよ?

 まさおVS景子せんせ、って、なにその異種格闘技戦!!

 月組ってほんと、景子作品に当たってない組なのね。
 近年の景子たん作品と言えば、2006年『THE LAST PARTY』、2007年『HOLLYWOOD LOVER』しかない。これは月組というより、ゆーひくんありき。
 第一8年前じゃ、今活躍しているほとんどの生徒が「まだ入団していない」か「下級生過ぎてなにもしていない」時期。
 まさおはどっちの公演にも出てないし、まさおが出ていた景子たんの大劇場作品は2003年の『シニョール ドン・ファン』まで遡るし、当時のまさおは研3、新公でももちろんモブ。まさお節もまったくない、きらきらの下級生。
 あの新公ディーラー役で、すげー鼻息荒くやる気あふれる芝居をしていたことは、今でもよーーっくおぼえているけども。
 景子作品があれだけって……。

 昔のまさおは美貌と実力の人だった。抜擢が遅かった分、脇扱いされている若手にしては、歌と芝居が出来る人、という認識だった。
 美形で実力あるのに、どうして新公で役がつかないの、下級生のみりおくんが番手役をやっているのに、どうして副組長の役しか回ってこないの……そう、じりじりしていたなあ。なつかしい。
 だけど、今のまさおは他のナニより唯一無二の個性の人になっている。
 なんとも不可思議な「まさお節」の持ち主として。

 あのまさお節は、景子せんせの趣味に合うとは、到底思えないっ!!(笑)

 大歌舞伎まさお節と景子せんせのこだわり耽美作品。
 いやまさに、VS。ゴングがカァ~~ンって鳴るキモチ。

 楽しみ過ぎる(笑)。


 ついでに。
 作品タイトルや内容から、人事を想像するのはヅカファンの醍醐味のひとつだと思っておりますが。
 このタイトルだと、まさお氏の治世は安泰のようですな。
 ……ちゃぴの方が不安になる。
 ちゃぴは月組観るときの視点のひとつ、この子が見たくて行く面も大きいのよーー!!
 で、また『カリスタの海に抱かれて』の話に戻りますが。

 この作品で、いちばんびっくりしたのって、やっぱなんつってもナポレオン@カレーくんですよ!

 わたし、カレーくんのことなんにも知らなかったんだね。
 今まで花組けっこう観てきたし、新公もバウも観てきたし、ご贔屓が花組にいたときはそれこそ毎公演わりと数観てたし、耽美が似合うとかダンサーだとか、入団当初から注目の的だった美貌だとか、そういう表面的なことは知っていたけれど。

 ほんとのとこ、なんにも知らなかったんだな。
 そう思い知りました。

 なんというか。

 破壊力、パネェ。


 最初の銀橋ソロは、感心した。
 もちろんぜんぜんうまくないんだけど(笑)、こんだけ長い間出て来なくて、もういい加減出来上がった状態の物語の中に突然ぽんっと出て来て、スター来ました! 重要人物来ました! と瞬時に客席を納得させる力すごい。

 『Victorian Jazz』初日を思い出していた。
 めっちゃへなちょこなんだけど、彼が登場するなり「スター、キターーッ!」と思わせる力。
 ああそうだ、こういう子だ、こういう天賦の才を持った子だ、そう改めて思い出した。

 そこまでは、いい。
 問題は、ナポレオン氏が喋り出した……芝居をしだした、とき。

 えっと。
 …………。
 一瞬、アタマ空白になった(笑)。

 それくらい、インパクト強い。

 なんとも、処理しにくいモノが、展開されていた。

 瑞々しい美貌の若者が、なんかとてもバンカラな無神経キャラを演じている。
 見た目は青年なのに、中年以降のおっさんのような演技。板に付いてないから、盛大にうわっすべり。
 しかも。ヘタ。

 えーと。
 なんだこれ。
 ヘタ……だよね?
 なんかいろいろと、ムリしてるというか壊れているというか、自爆しているというか。

 どうしよう!!

 なんか、焦る。
 客席で、手に汗握る。
 見てはいけないモノを見てしまったような、いたたまれないキモチ。

 なんでこんなことに??
 いやその、おもしろいけど!
 でもこれ、おもしろがっていいの? ドン引きするのが正しい鑑賞法? 笑うとこなの?

 いやあ……舞台の上で展開されている場面の情報を処理しきれなくて、盛大にフリーズしましたねー。

 どうも、「豪快で型破りな英雄」というのがこの作品のナポレオンのキャラ付けらしい。幕末でいうところの坂本龍馬系。ラストで狡猾さも垣間見せるから、ただの無神経キャラじゃないぞ、と。切れ者ゆえの豪快さなんだぞと。
 脚本と演出から、そう読み解く。
 が。
 目に映るカレーくんの、すべりっぷりがすごい。

 豪快さも大物さも、かなしいほど感じられない。
 ただの、変な人に見える。

 黙って踊ってたらかっこいいのに……スター!!なのに……。

 びっくりした。
 その、明るい破壊力に。

 まさに、どっかーーん!! って感じなの。
 みりおくんがちまちま細心に並べた街のジオラマを、端からちょこちょこ遠慮しいしい壊していくんじゃなくて。
 どっかーーん!!
 テーブルごとひっくり返しましたーー! みたいな。もしくは、真ん中にボーリング玉落としましたーー! みたいな。
 一発で、木っ端微塵。
 しかもそれが、明るいの。変な陽気さ、屈託なさがあるの。
 あのそれ、みりおくんが時間かけて、眉間に縦皺寄せて苦悩して脂汗流しながら並べたのに、彼の周囲に暗雲立ちこめてたのに。
 一瞬で、ぴかーー! てかーー! どっかーーん!!

 あー……スターなんだね……。
 しかも、タニちゃん系ですか……。

 知らなかった……。

 その爆弾力が、キラキラ。
 突き抜けた無頓着な存在感。

 ヘタだよ。ヘタなんだけど……彼がどうしてこの役をやっているのか、どうしてこのポジションにいるのかを、納得、させられてしまう。

 柚香光おそるべし!!


 あんなに耽美な美貌と色香を持ちながら、色気皆無のタニちゃん系スター力を持つ、って、アンバランスすぎてすごい。

 知らなかったっす。
 美貌ばっか見てたからなー。

 花担友人に言わせると、驚くことでもなんでもない、カレーらしいキャラだそうですよ。


 でも終演後に話してたんだけどさ。

 この作品、だいもん組替えを知らされずに大石せんせが書き下ろしちゃったんじゃないの?
 カルロ@みりお、ロベルト@だいもん、ナポレオン@キキ、って、すっげーしっくりくるんですが。

 ロベルトは熱と闇を持つキャラ。陽性のキキくんだと、彼がなにを悩んでいるのかわからない。や、キミ、そんなことで別に悩まないよね的な。
 ロベルトって作品の粗をすべて押し付けられたひどいキャラなんだけど、だいもんならその濁りと闇を、圧倒的な熱でもってねじ伏せたんじゃないかな。

 ナポレオンは陽性の英雄キャラ。キキくんなら持って生まれたトップ路線オーラで、おおらかに発散しまくったろうなと。演技しなくても、地のままでOK!てな。

 別々の組で、片や超路線育ち、片や叩き上げとして育ち、今同じ組でトップと2番手として並び立つ同期が、「同じ日に生まれた親友同士の光と影」を演じる……って、想像するだけでわくわくですがな。
 みりおとだいもんアテ書き設定なんじゃ……?

 プログラムに、いろいろあったっぽいことが、書いてあるようですが……このへんのことかなー、と勝手に思ってみたり。


 なんにせよ、今のナポレオンはカレーくんで、おかげでなんとも素敵なことになってます(笑)。
 いいよなー、柚カレー。
 月組『1789』といえば、先日の友会先行先着順にチャレンジしたわけなんですが。

 ライトなヅカヲタのわたしは、友会以外のチケット入手方法を知りません。
 友会も、基本は先行抽選のみ。それで当たらなかったら。縁がなかったモノとしてあきらめる。
 反対に、保険で入れた分まで当たりまくる場合もあるわけだけど、それもまたご縁だと思って全部観に行く。

 抽選ではずれても、地元関西公演は、当日券やサバキでふらっと行って観劇できるから、ご縁があれば観られると思うし。
 以前、ディープなヲタライフを送っていたときは、なにがなんでも手に入れるため、いろんな窓口の発売方法を調べたり、高額チケットに手を出したり(笑)、がんばってたけどね。
 今はもう、それもない。遠征もしないしね。

 友会頼みと言いながら、利用しているのは抽選のみで、先着順は利用したことがほとんどなかったの。や、どうせつながらないと思って。
 発売開始の購入は最初からあきらめて、発売日の夜とかに残ってるチケットをおとなしく買ったりはしたなー。

 でもまあ、前回の花組『カリスタの海に抱かれて』のときに、朝から先着順にチャレンジしてみたの。

 無事に10時ジャストにつながって、目的の日時をGET。購入出来ればそれでよし、だったので、座席はおまかせで迷うことなく決済まで。実際、迷ってたりしたら売り切れちゃったと思うし。

 それだけで済ませればいいのに、つい欲が出て、「先着順って、どのあたりの座席があるんだろ?」と考えちゃった。
 今回はもう、欲しいモノは買えたからこれ以上必要ないけど、今後のために販売座席枠を見ておくのは有効かも。

 とゆーことで、人気なさそーな平日を、てきとーにクリックしてみる。
 や、できるだけたくさん残席がある日を見てみたら、持ち分がわかるかなと思って。
 発売開始から2分くらい経ってたかな、きっと土日はもうろくな座席残ってないだろう、だから平日。席番だけ見たら、すぐに戻ろう。

 てなわけで、気軽にクリックして。
 6列目、通路際。
 ほほお。隣はSSだから、これはおいしいなあ。
 贔屓組だったら飛びついてるなー。先着順ってこんな席もあるのねー、ふむふむ。
 よし、他の日にちはどうだろ? 1画面戻って、またてきとーに日時をクリック。
 あ、こっちも6列通路際だ。平日は出足が遅いのかな。
 さらに別の日をクリック。
 あれ? また6列目……。
 いくらなんでも、発売開始から10分位経ってるのに、いつまでも6列目がこんなにたくさんの日時売れ残ってるはずは……??
 しかも、どの日時も、全部同じ席番……。

 ええ。知らなかったのですよ。
 席番を見る、だけは出来ないのだということを。

 最初にてきとーにクリックした日時、これを確定・購入せんことには、他日をどんだけクリックしても意味ナイのだということを。

 や、すべてキャンセルして最初からログインし直せば、その都度別の日時の席番を見られるのかな? でもそれじゃ、いつつながるかわかんないし。ログインしたままだと、いったんクリックした席番がずっと残ってて、これの始末を付けないと次にいけないみたい。
 以前はそんなことなかったと思うんだけど……なにしろほとんど使ってなかったので、よくわからない。

 席番だけ見てウロウロ、は出来ないシステムになってるんだー。まあ、公平でいいかなー。一度つながりさえすれば、あとは何日分でもクリックし放題、てのはよくないもんなー。一回一回、最初からやならないといけないんだねー。

 てなわけで。
 てきとーにクリックした6列目、そのまま確定・購入しました。コレもご縁だと思って。
 や、6列目は実にありがたいのですが、花組さんも複数回観るつもりだったし、1枚多く買っちゃうのもぜんぜんアリなんだけど、問題はそこではなくてだな、なにしろ買うつもりもなく、席番が見たいだけでてきとーに人気なさそうな日をクリックしたもんでな……自分が行ける日程かはまた別でしてな……てきとーにクリックはもう二度としません(笑)、お勉強になりました、はい。

 チケットは友会頼み。観られる・観られないはご縁。ったく、ダイヤモンドでもちっとも当たらねー。他に比べて新公だけは当たる確率高し。……なんなんだろね?

 ということで、月組さんも希望日がはずれたので、先着順にチャレンジしたわけですが、目的の日時以外一切クリックせずにミッション・コンプリート。
 ライトなヲタとして、身の程をわきまえて生きます。

 友会だけがチケ取りのお友だち。
 というわたしは、だいもんACT入力忘れてたことに気づき、軽く凹みました……。不戦敗では、最初からご縁ナシじゃん……。(遠征しないんじゃなかったの?!)
 専科バウ、おもしろそーー!!
2015年 公演ラインアップ【宝塚バウホール】<8月・専科『オイディプス王』>
2015/03/20
3月20日(金)、2015年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、宝塚バウホールの上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。   
専科
■主演
(専科)轟 悠
■その他の出演者
(専科)夏美 よう、悠真 倫、華形 ひかる、沙央 くらま

ギリシャ悲劇
『オイディプス王』
~ソフォクレス原作「オイディプス王」より~
脚色・演出/小柳 奈穂子

古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人であるソフォクレスが紀元前に書いた戯曲「オイディプス王」は、そのテーマの普遍性と、サスペンス的要素溢れた緻密な構成ゆえに、ギリシャ悲劇の中でも最高傑作として知られ、時代を超えて上演されています。この傑作を、轟悠と専科を中心とした実力派メンバーで、宝塚ならではの演出を加えた新たな「オイディプス王」として上演いたします。

古代ギリシャ・コリントスの王子オイディプスは、自ら授かった「父を殺し、母を娶(めと)るであろう」との予言の実現を避けるため放浪の旅に出て、テーバイ国で怪物スフィンクスを追い払い、請われてテーバイ国の王となる。前王の妃イオカステを妻に迎え幸せな日々を送るが、数年後に国を襲った疫病災厄から国を救うため、神託を乞い、「前王ライオスを殺した犯人を罰せよ」とのお告げに従ってライオス殺しの犯人を探る。その謎を解くうちに、悲劇的な真実が明らか になっていく…。

 トドファンとして、トド様でこうして「難度高め」公演をやってくれるのが、すっごくうれしい。
 トド様は完成された「男役」なので、あとは「男役の可能性」にチャレンジしてくれればいい。
 トド様の歩いたあとに、道が出来ていく。その背中を見るのが楽しいんだ。うれしいんだ。

 つか、出演者豪華だな。
 トド×はっちさんとか、濃すぎだろ、胸焼けレベル。
 はっち、まりん、みつる、って、どこの花組……ああ、コマが清涼飲料水。

 そして、考えてはいけないことだとわかっちゃいるが、考える。
 まっつがいたら、この公演に出ているのかな。
 元花組のみんなと。元雪組のコマと。DS出演したトド様と。
 観たかったな。
 心から。
 こんな、好きな人しか出ていない、濃ゆい濃ゆい舞台。

 まっつのバカーー!!(お約束)


 月組『1789』新公の主な配役は、残念です。
 あーさで観たかった。美形で歌えるあーさにミュージカル主演をさせてはいけない理由はないだろうに。
 あと、ムリだとわかっちゃいるが、まゆぽんで。脇のおっさん一直線のまゆぽんですが、その属性は変わらないにしろ、真ん中経験でさらに強い存在感を得るかもしれないじゃないですか。マギーだって新公主演してるんだし。

 新公はお勉強の場だとわかっちゃいるが、一観客としてある程度のクオリティを欲するのですよ。せっかくの鳴り物入り海外ミュージカルだからさー。
 暁くんというと、『THE MERRY WIDOW』でも 『THE KINGDOM』でも、「今のナニ?!」と二度見しちゃうくらいの破壊力の持ち主だったからなあ。舞台の上に突然素人の女の子の声がすると、びっくりするんだわ……。

 ということで、バウ発表時の感想をコピペっておきます。

 劇団の暁くん推しがこわいです……(笑)。
 月組はほんと、将来のトップスターを早々に決めて、揺るがないな。強気だよな。
 もう少し、慎重になってくれてもいいのになー。
 演目発表時にも、ちらっと書いたっけ。

 次代の星組で自由に『ガイズ&ドールズ』の配役をしていいとすれば。

 主役のスカイがいちばんハマるのは、ベニーだ。
 ビジュアル特化の伊達男。調子よく生きてきたギャンブラーが、うっかりお堅い女の子・サラに惚れてしまう。

 でもって、ヒロインのサラがいちばんハマるのは、キサキちゃんかな。個人的にははるこで観たいかなー。
 とにかく若くてかわいいこと。救世軍の軍服姿でも「キュート!!」と思わせるビジュアル必須。

 ネイサンがいちばんハマるのは、みっちゃんだ。
 ヒゲの中年男。胴元としての世慣れた感と、婚約者アデレイドの尻に敷かれているヘタレ感が素敵に同居。

 で、アデレイドは娘役がやるなら風ちゃんがハマる。
 年増のショースター。歌って踊っての実力派が演じてナンボ。サラが小娘、こちらはイイ女だが、確実におばさん、ふたりの世代格差大事。
 男役も含めてイイなら、みっちゃんが、いちばんハマる。

 ……純粋に、キャラだけで言うと。

 って、なんで『ガイズ&ドールズ』なんだろう……ネイサンとアデレイドがハマるトップコンビなのに、何故わざわざ、持ち味外のモノを当てるんだろう。

 や、みっちゃんも風ちゃんも実力者なので、持ち味なんか関係なく演じちゃうだろうけどさ。そのへんはすっげー信頼しているけど。

 みっちゃん風ちゃんはいいとしても。

 アデレイド役の難しさがなあ……。

 アデレイドって、タカラヅカの娘役が演じるには、役が大きすぎるんだわ。
 主役カップルに比肩する役なんだもん。
 他においしい男性キャラがいるなら、バランスも取れるかもしれないけど、あきらかにアデレイドひとり勝ち。
 男役スターたちがソロも名前もないようなモブで、トップでもない娘役がピンスポ浴びてがんがん活躍する……のは、タカラヅカじゃない。
 番手のあるピラミッド制度の劇団だから、必然的にアデレイドは男役スターが演じることになる。

 30年以上前の初演はともかく、現代のタカラヅカにおいては。

 また、アデレイドが清楚な美少女役なら、男役が演じるのは難しいし、そもそも意味も薄くなる。(持ち味が「清楚な美少女」な生徒は、最初から娘役をやってるだろうから)
 が、迫力ある年増女役だから、男役が演じることによって押し出しの良さを出せる。
 『ME AND MY GIRL』のジャッキーや、『風と共に去りぬ』のスカーレットなど、男役が演じることの多い定番作品の有名役は、みんな一様に「娘役では出せないエグ味」を期待しての男役配役だ。
 アデレイドも同じ、男役だからこそ出来る女役。

 トップがスカイ、2番手がネイサン、3番手が女装してアデレイド……と当てはめていくことになる。

 星組次期3番手、って、誰?

 ふつーに考えれば、宙組から異動してくる、かいちゃんだ。
 あちらは宙組3番手、こちらは星組3番手のマカゼが異動……同じ番手同士、空いたところに入ると思うじゃん? その昔、雪組3番手だったえりたんが、雪組トップスターコムちゃん卒業時に花組へ3番手として異動になったときのように。
 トップスターが卒業したから、このまま組に残っていたら、2番手昇格。……の、はずが、組替えで3番手据え置き。えりたんも、かいちゃんも。
 組に残っていたら2番手だったのに、据え置き異動させられて、最初の本公演で3番手役をもらえないなんて、思わないよ。組替えご祝儀で、イイ扱いを受けるはず。

 加えて、アデレイドが「中年女」役だ。ある程度学年を経た男役でないと、無理がある。

 ただアデレイドは歌って踊って芝居して、のかなりの難役だ。それをこなす実力、という点では……ごめん、かいちゃんだとかなり苦しいというか、正直どうすんだと思うけど、タニちゃんだってネイサンやったんだしこのミュージカル実力不問なんぢゃないの?って気もするし……。

 星組には小柄で女顔で歌って踊れる超実力派若手スター、ことちゃんがいる。
 実力だけでいえば、ことちゃんが向いている。
 が、ことちゃんはあまりにも女役をし過ぎている。ことちゃんのジェンヌ人生、半分は娘役だよねってくらい。
 男役の女装は切り札であり、人気を出したいときに使う。客を呼べるのは男役だ、人気男役を女装させるのは「男役」としてのデコレーションのひとつでしかない。
 デコレーションばかりこだわっていると、中身の価値が落ちる。
 だから本当に売りたいスターは、女役ばかりをさせない。

 てな事情から、アデレイドは、たとえ実力が足りなくても学年と組替えご祝儀でかいちゃんシングルか、あるいは、それじゃいろいろやばいってならば、ことちゃんとのダブルかと思った。

 ぶっちゃけ、ことちゃんシングルのアデレイドが、いちばん嫌だった。わたしは。

 89期で宙組番手付きのかいちゃんが、95期星組番手なしのことちゃんの下に配役されること。
 男役として日々成長していることちゃんが、また女役をさせられて、貴重な男役人生を数ヶ月も失うこと。

 この2点において、個人的に、嫌だったんだ。
 ……嫌だと思う、というのは、そうなるのではないかという、危惧があった、ということ。
主な配役
スカイ・マスターソン 北翔 海莉
サラ・ブラウン     妃海 風
ネイサン・デトロイト 紅 ゆずる
アデレイド       礼 真琴

 『ガイズ&ドールズ』主要4役が発表になり、危惧が現実になった。

 あーあ、また、ことちゃん女役かあ。
 男役というのは有限で、短い時間しか楽しめないのになあ。
 
 かいちゃんの立ち位置も気になるし、その人事配慮(番手ぼかしに全力投球、作品壊しても誰が何番手かわからないようにすることの方が大切です!てな)によっておかしなアレンジをされるのもやだし。

 もっとも、かいちゃんもそのファンも、主要役でなくても男性の役の方がいい!!と思っているかもしれないし、ことちゃんもそのファンも、女役大好き! 男役よりも主要な女役の方がうれしい!!と思っているかもしれないから、これはあくまでも、わたしの勝手な思い。

 そして。
 ここまであーだこーだ言っておきながら。

 ことちゃんのアデレイドが、楽しみだ。

 みっちゃん、風ちゃんの主演舞台を楽しみにするのと、同じハート。

 ただ純粋に、シンプルに、うまい人の歌を聴きたい。
 歌ウマさんが主要役で、がんがん歌ってくれるんだ~~、楽しみーー!
 と、いう。

 ことちゃんには男役をやって欲しいけど、それでも、ことちゃんの歌が聴けると確約されていることは、うれしいんだ。
 矛盾上等。
 新生花組再スタート、みりかのトップコンビ本拠地お披露目おめでとー。

 キキくん2番手、カレーくん3番手って、すごい新陳代謝ぶりだな、昨今なかった急激な若返りだな。
 大丈夫か……?! というキモチと、なんかわくわくする! というキモチが、両方ある。

 てな感じに大劇場へ駆けつけた『カリスタの海に抱かれて』初日感想つれづれ。

 最初に単独で登場する主人公カルロ@みりおくんは、相変わらずきれいで歌ウマで。初日ゆえの固さはあるものの、観ている側としてはよく見知った姿。

 違和感というか、新鮮な驚きがあるのは、次の「島の祭り」場面。

 幕が開き、本舞台全部使ったにぎやかなダンスナンバー。
 センターはロベルト@キキくん。

 なんつーか、キキくん、華やかだね!!

 真ん中が似合う。
 長身と、おおらかな明るさ。
 あー、この子スターなんだなあ、と思う。

 たった3年前か。キキくんが星組からやって来たのは。もともと鳴り物入りのトップ確定コースの子だけれど、それにしても今の姿は感慨深いね。らんとむがいた、えりたんが、みわっちがいた、あのときから、3年足らずでこの光景。

 それはともかく、一斉にたくさん歌い踊るので、点呼が大変。
 うわっ、セルジオ@あきらヒゲ! ヒゲ! かっけーー!!

 てゆーか、マイティ!!

 …………マイティが昔のご贔屓クリソツ過ぎて息が止まり、彼をオペラで追っていたら、この場面が終わってしまった。

 いやあ、今までもときどき「似てる!」と思ってはいたけれど、『カリスタ』のマイティのケロ度は異様(笑)。
 元ケロファン友人と、「『大海賊』の頃のケロにそっくり!!」と盛り上がる。

 で。
 マイティ見てたせいで、祭り場面は真ん中を観られていません。
 声は聞こえてたから、別に問題ないか、と思ってたんだけど。

 あとになって、「オープニングで真ん中観てなかったせいか!」と反省する。
 というのも。

 カリスタの若者たちがカルロを監禁して、集団ヒステリーを起こしている場面にて。
 カリスタ青年団って感じで男ばかりのグループに、何故かひとり娘役が混ざっていた。
 モブの娘役さんだと疑いもしないわたしは、場面が進むにつれ、首をかしげた。
 このアリシアって子、モブにしてはえらく真ん中に出て来るなあ。なんか、みりおくんに絡むなあ。
 違和感。ふつー、モブのひとりはこんな絡み方をしない、舞台のお約束。

 その違和感と同時にわき上がる、もうひとつの疑問。
 そういやいくらなんでも、ヒロイン出て来るの遅すぎね?

 ……まさか……!!

 と、オペラで確認したら、そのアリシアこそが、かのちゃんだった……!!

 いやあ、衝撃でした。
 アリシアがかのちゃんだと気づいたときは。

 「アリシア」というキャラクタがいることは、わかってたんだけど。祭り場面から名前を連呼されていたし。
 でも、それがヒロインだと気づいてなかったんだ。なんでだろ? あきらの妹役ねー、はいはい、ぐらいで点呼に戻った。

 『エリザベート』でかのちゃんを一度も見つけられずエトワールではじめて存在を思い出したり、してたけど……それにしても、ここまで気づかなかったとは……!
 自分の迂闊さに驚いた。

 最初の祭り場面で、ちゃんと真ん中を観てなかったせいですね。
 たぶん、この場面での主役であるキキくんを見ていれば、ヒロイン登場に気づいたんだと思う。初見時はちゃんと全体観ようよ、自分……。

 初日観劇後、友人に「祭り場面の、舞台の真ん中でなにが起こっていたか」を尋ねましたよ……キキくんとかのちゃんが踊ってたのね? 囃し立ててる声は聞こえてたけど、強引にチューとかしてたの?
 友人の答えは「大したことはしてない」。ただ踊ってただけか。にしても、そこでヒロイン認識すべきだった。

 そっから先は大丈夫! ちゃんともうおぼえたわ!


 これは誰にも同意してもらえなかったんだけど、アリシアがわたしには、ののすみに見えた。
 顔は似てないし、ののすみほど芝居がうまいわけでもない。
 でもなんか、ののすみが演じているっぽいニュアンスをびしびし感じた。
 かのちゃんは宙娘だから、宙組トップ娘役だったすみ花ちゃんから影響を受けているのかもしれない。でも、学年的に直接、大きな影響を受けるほどではない? 新公でののすみの役を演じたわけでもないし?

 あとから思うに、「大石脚本のヒロイン」が同タイプだから、とか?
 「イシダ演出」も関係あるのかも?
 わたしの先入観があるのかどうか知らないが、アリシアの台詞回しや居方に、『美しき生涯』の茶々様@ののすみを強く感じた。


 『美しき生涯』といえば。

 美穂圭子おねーさま、『美しき生涯』に次ぎ、大石&イシダ作品にて、堂々の2番手娘役おめでとうございます。

 娘2だから、銀橋ソロ当然よねー。2作連続銀橋ソロ付き娘2、って、そうそうナイわー。

 大石&イシダ作品における、圭子ねーさまの強さはなんなんだろう?
 『美しき生涯』でも大概だと思ったが、『カリスタの海に抱かれて』でもそうだと、明確な理由があるのかなと。大石せんせが圭子ねーさまファンで、「美穂さんにぜひ歌って欲しい」とわざわざ歌を書き下ろしているから、とか?

 わたしは雪担で長年の圭子ねーさまスキーなので、アニータ@圭子ねーさまががしがし歌って活躍してくれるのはぜんぜんOKなんだけど……主人公とヒロインに次ぐ重要な役(2番手男役はそれ以下)という状態は、「いいのか?」と思いますわ……。

 それはともかく、圭子ねーさまのドラマチックヴォイスは大好物。
 聴いていて涙が出るわ……。

 英雄アルド@さおたさんもナイスな美中年ぶりで、出番が少なすぎて残念っす。
 プガチョフみたいな人だったのかなあ? らいらいに命令している姿とか、圭子ねーさまといちゃいちゃしているところとか、観てみたかったな。

 しかし『カリスタの海に抱かれて』って、『太王四神記』に似てるよね、キャラ配置……。
 カルロとロベルトは、タムドクとホゲだし。
 「……(忘れた)に、生まれた男子はチュシンの王になる!!」

 でもって『カリスタ』ってよーするに、「アルドとアニータが電波カップルだった(友人の表現・笑)」ために、雪だるま式に大変なことになってないか?
 カリスタ島の人々の不幸って、フランスの支配ではなく、変な予言残して死んだ英雄と、それに固執して半分あちらの世界に精神を持ってかれてしまった女が、傍迷惑な煽動をしまくったせいで、平穏な暮らしができなかったこと、ぢゃないの……?

 なんてな。
 なんでもありーのな『カリスタの海に抱かれて』だから。
 ラストシーンがどんなものでも、ありえる。

 この物語は、いったいどこへ行くんだろう?
 どこへ着地するんだろう?

 ってことで、ラストシーンがどうなるのかを、考えてみる。


 こっから先の展開の、おおざっぱな選択肢。
→a.皆殺し悲劇エンド
 セルジオの画策により、ロベルトが最悪の決断をした! わずかな武器でフランス軍へ突撃したカリスタの若者たちは全員死亡、見せしめにとフランス軍が逃げ惑う女子どもを皆殺し、家を焼きオリーブ畑を焼き、誰ひとり助からない!! アニータのドラマチックヴォイスがとどろき渡り、炎の精が踊り狂う!!
 屍の山に遅れて到着したカルロが泣き崩れ、ピストル自殺でEND。
 とか。
 ああら、なんてドラマティック!! 谷せんせやりそう。
→b.とにかくカルロVSロベルト対決エンド
 逆恨み炸裂、カリスタの未来よりなにより、とにかく決着付けるんだ、勝負だカルロ! チャンバラ開始! 腕はカルロが上なのに、ロベルトを殺せないカルロはやがてピンチに……! ああ、あぶない……!! そこに響き渡る銃声、アリシアがロベルトを撃った……崩れ落ちるロベルト、急転直下クライマックス。
 とか。
 なーんか文学的なくくりにできそうね。柴田パターンっすねー。
→c.なんかうまくいきましたハッピーエンド
 カルロの作戦がうまくいき、誰も死なないし、カリスタ独立成功だし、カルロとアリシアもうまくいくし、ロベルトとの友情も復活だし、みんな幸せ大団円!
 作戦部分をもっとちゃんと描いたら小池っぽくなるのに? トリッキーに、派手な仕掛けをして。
→d.これも青春の1ページ……エンド
 「生きることとは」と歌い出すカルロ、セルジオや仲間たち、フランス軍のみなさんが、雑踏の中を通り過ぎ、立ち止まり、人生を歌う。すれ違う人たちの中、アリシアやロベルトにスポットライトが当たり、それぞれが人生を歌い、やがて大きな合唱となる。
 で、一気に何年後に話が飛ぶ。すっかり壮年になったカルロが、「熱い日々だった……カリスタの海に抱かれて」と懐古する。幕。
 どんな話もこのオチでまとめるのが可能、ってすごいな、正塚風。あ、みりおくんにタンゴは無理なのか??←飛躍

 ……ダメだ、考え出すとキリがない。
 aパターンだって、その中でも「アリシアひとり生き残るバージョン」とか、「アリシアがカルロの腕の中で息絶えるバージョン」とか、なんぼでも派生出来る。
 cパターンだって、独立はうまくいったけど、カルロは「幸せになれよ」とロベルト&アリシアに背を向けて去って行くバージョンとか、「カルロ大統領万歳」エンドとか、いくらでも考えられるし。

 この話、どこへ向かうの?
 なんでもありじゃん!!
 先がまったく見えない!!


 と、思いました。

 だから、「アドベンチャーゲーム」みたい、と思った。
 どっちへでも行ける。
 選択肢の多さ。
 どれもありだけど、つまりそれは、「ここがこうだからこうなったんだ!」と構成の緻密さや、伏線の巧妙さに感心することは、まったくなし、ということ。
 いろいろ大味っていうか、雑っていうか。

 でも、それも含めて、ぜんぜんアリだと思う!

 楽しかったよ、どこへ転がっていくのか、まったくわからなくて。
 新作オリジナルっていいなあ!って、本気で思った。

 カルロとアリシアがかわいいから、真ん中を見ている分にはちゃんと楽しめるし。
 ……ロベルトは、ひどいけどな(笑)。


 この、なんでもあり、どっちもあり、のほほんソングでスタートして、突然ドシリアス悲劇になったり、またなんかお気楽若者たちをやったり、ドラマチック革命物!をやったり、ご都合主義で軽く薄く事件解決!したり。
 場面ごとに雰囲気ばらばらで、悲劇からお手軽ハッピーエンドまで、どこに着地してもいいような雑な作り。
 という素敵な性質は、ラストシーンの斜め上っぷりでも裏切らずに「なんでもあり」「どっちつかずぶり」を発揮してくれた。

 すべてうまくいって大団円! ハッピーエンド!
 と、思ったのに。

 何故かラスト、突然ロベルトが、わけのわかんないことを言いはじめる。

 友情も元通りで恋も手に入った、全方向ハッピーエンドだと思ったのに。ロベルトだってそういう言動取って笑ってたのに。
 何故か、最後になって「誰も信じない、心を閉ざして生きる」と言い出す……えええ?! 逆じゃないの? 「友を信じて、心を開いて生きる」と言うべきなんじゃあ? それがリーダーたる器の大きさってもんぢゃ……?
 隣にいるのはアニータ。
 えっと、やっぱりここはアニータの呪詛ソング的な展開??

 よくわからんわー(笑)。ロベルトって、作品の粗を全部背負わされてるからなー。
 『カリスタの海に抱かれて』を、選択肢という視点で語ってみよう、その4です。
 いい加減長いなー、しかもどんどん語りが増えてるよなー(笑)。だって楽しいしな、『カリスタ』。いろんな意味で。


8.アリシアとはキレイに別れられたので、カルロは本国フランスで根回し中。
 その間のカリスタチーム。

 なんと、セルジオさんが問題発言。
「ロベルトが憎らしくなる。裏切ってやりたい」……カルロの父が、英雄さんを裏切ったように。

 セルジオってそんな大きな役だったのか、今まで気づかなかったよごめん!
 ユダはキリストを愛していたのです、愛の反対は憎しみではなく無関心、憎しみとは愛の同義語なのです……てな展開ですか、セルジオさん?!

 選択肢。
→a.カルロ&ロベルトをフランス軍に密告しちゃう?
 カルロ父の話を出すくらいだから、同じ手段を取る。
→b.ロベルトが大統領になったのち、暗殺する
 栄光の瞬間を狙って、すべて奪い取る。あらドラマチック。

 わくわくしたんだけどなあ。
 これも、きらり奥様の「間男発言」と同じ。

 なんもなし。

 ただ、言ってみただけ?!! えええ?!!


9.で、ロベルトさんは、逆恨みしたあと、どうなったの?
 ……どう思っているのかわかんない。
 なにしろ責任転嫁して、カルロを悪者にする発言した人だから。惚れた女に好きになってもらえないのって、誰かのせいチガウやん……。

 で、今も責任転嫁してるの? そういう人なの?
 ロベルトの描き方はかなりひどくて、この段階でもさっぱりわかんないわけなんだが、さらにここで。
「カルロを殺っちまおうぜ、そうすりゃアリシアはお前のもんだ」
 と、セルジオがたきつける。まあ、なんて悪役理論。死んだ男のことなんかすぐに忘れる、と。
 でもアニータは未だに死んだ男を想い続けている……「アリシアはまだ若いから大丈夫! 生身の男がイイに決まってる」アニータはもとから若くなかったってことか、ヲイ、失礼な話だな!(笑)
 乱暴な女性観を披露するセルジオに対しての、ロベルトの返答。「アリシアは、そういう女だろうか?」

 や、常識で考えようよ。
 自分の愛する人を殺した相手を、なんで「まだ若いから」と愛するようになると思うんだ?
 犯人がロベルトだとさすがにまずいから、ここでも責任転嫁前提? 誰か別の人がカルロを殺したとか、仕方ない状況で死んでしまったってことにして……で、アリシアは「ロベルト愛してる!」になると、本気で思うの??
 ロベルトってよくわかんない……。

 そしてセルジオは、カルロの作戦をガン無視して、フランス軍に戦争吹っ掛けようと言い出す。作戦もなんもない、ただ「武器があるから大丈夫、やっちゃえやっちゃえ!」てなもん。
 ひょっとしてこの、アタマ悪すぎる提案の数々が、「ロベルトを裏切りたくなる」ゆえの行動なんだろうか?

 場面8.の選択肢の続き。
→c.今あるものを、全部ぶっこわしちまえ?


 カルロのプランを全否定して、カルロを殺して、それによって本気になったフランス軍にカリスタ人が皆殺しになって、世界から消滅するのが望み? 彼の言う「歴史に名を残す」こと?

 セルジオ、グローバルだな。で、ロベルト、アタマ弱すぎるな。

 「裏切る」ことでロベルトとカリスタに致命傷を与える、ってことは、ナニが致命傷かを理解してなきゃいかんわけで。
 実はセルジオ、物語の中でいちばん聡明?? →違うと思います。

 セルジオのすっげーアホ臭い煽りに、いちいち本気で悩んでいるロベルトが、アホにしか見えません。
 2番手ヒーローをアホにするのはやめてーー!

 いろいろアタマ抱えつつも。
 ここで、気がつく。

 この物語、最終的に、どこへ行くの?

 アニータとアリシアの「愛をあきらめない・あきらめる」の迫力の掛け合いソングや、ナポレオン@カレーくん登場で、どこの革命物ミュージカル巨編?!てな、ダンス&ソング場面までぶちかましているのよ。

 どこへでも、行ける。
 だってほんと、ストーリー自体はシンプル。
 でもって、のんきだったり、他愛なくラブリーだったり、ドシリアスのちょー悲劇だったりと、行き当たりばった……ゲフンゲフン、なんでもありーののばらばらっぷり。
 だから、突然大悲劇の残酷展開で、阿鼻叫喚のラストシーンに行き着いても、不思議じゃない。
 反対に、めーーっちゃ軽くご都合主義に、明るくハッピーエンドでも、おかしくない。

 どうするつもりなんだ、これ。
 震撼。

 てことで、いろんなラストを考えてみる(笑)。


 あと1回だけ続く~~。

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