『ロミオとジュリエット』のダブルキャスト、みみジュリエットについての感想。

 初日を観たとき、感じたのはジュリエット@みみちゃんの「少女」らしさだ。
 少女というか……子どもっぽさ。

 みみちゃんは公演ごと、ヒロイン経験ごとに成長していき、気が付くとずいぶん大人になっていた。
 トド様の相手役をして、浮かないくらいのクラシックな持ち味の女の子だ。

 男役に比べ、娘役は早熟だ。旬は早く訪れ、また短い。
 そんな大人びたみみちゃんが演じる、16歳の聖少女……。
 高く作った声、可憐で無邪気な芝居……みみちゃんの今の持ち味からすれば、ちょっと無理をした感じ。
 等身大の少女が演じている少女ではなく、大人の女の子が芝居として「作っている」少女だ。

 テレビドラマならともかく、舞台は役者の実年齢なんぞ役には無関係。みみちゃんがきちんと「少女」として物語の中に在ってくれたことに拍手。痩せすぎちゃってちょっと顔に年齢以上の陰があるけれど、それにしたってもともとが美人さん、かわいーかわいー。「ジュリエット」として説得力ある。

 でもそうやって作った少女は、最初から最後まで少女だった。
 夢見る夢子ちゃんな深窓のお姫様が恋を知り成長する・変化する……ことはなく、無垢な子どものまま死んでしまった、ような。

 芝居に正解があるわけではないから、それはソレでかまわない。
 てゆーか、『うたかたの恋』もそうだけど、破滅する恋に殉じる少女ヒロインっつーのは、無垢っちゅーか無知な方が物語的に盛り上がったりする。
 分別とか思慮深さとかがあったら、そんな恋に突っ走ったりしないし、死を選ぶこともないだろうから。
 わたしたち大人ならまずそんなことにはならないだろう、非現実的な「純愛」に「純粋」に驀進するには、小賢しい知恵なんかいらん、アホなくらいでヨシ、その方がより別次元として泣ける……てことが、大いにある。

 子どもっぽく作ったジュリエットが、子どものまま死んでしまう……みみジュリエットは姿のかわいさ、可憐さも相まって、それでも十分「ジュリエット」であり、感動的だった。

 ただ、ロミオ@キムは子どもではない。
 夢見る夢男くんであっても、その魂は無知とは別のところにある。
 個々で見るといいのに、「ロミオとジュリエット」としてはしっくり来ない気がした。

 それが、外見はお似合いだけど、芝居としてはあんまり合ってない気がする、と以前書いた理由。
 だったんだけど。
 みみちゃんが変わったのか、わたしが気付いていなかっただけなのか。
 公演が進むにつれ、最初の印象とまったく違ったジュリエットが見えてきたんだ。

 ジュリエット。
 名門キャピュレット家の娘、深窓の令嬢、世間知らずで恋に恋するお姫様。
 どーでもいい求婚者からもらった花束を抱きながら、「結婚だけは好きな人としたい」と歌う彼女は。
 とても強い意志を持つ少女だった。

 親に逆らったことがないとか、いつか運命の人がとかタワゴトを言っているが、現実の見えていないお人形さんではない。「頑なな強さは私に似たのか」と父@ヒロさんが歌うように、うわ、このジュリエット、絶対気ぃ強え! と、思った。
 お姫様育ちだから世間知らずなだけで、意志薄弱でも白痴でもない、あざやかな自我。
 人生に対するアグレッシヴな姿勢。
 恋に恋する少女のお花畑な歌だと思っていた「結婚だけは」という歌が、まったく違って聞こえる。

 「娘の結婚相手は父親が決める」と当たり前に断言されてしまう時代の16歳の女の子が、ここまで強い意志を持ち、自分の人生に貪欲だってのは、驚異だ。
 え、ナニこの子、面白い。そう思った。

 仮面舞踏会でロミオと出会い、「天使の歌が聞こえる」を歌うときの、あのきらめき。
 運命とやらに流されて恋をしたのではない。受け身ではない。恋をした、その次の瞬間、ジュリエットは、自分の意志で、その恋へ踏み出した。

 ロミオにとっては、運命だったかもしれない。
 でもジュリエットにとっては、彼女自身の選択と、意志だった。

 ロミオが闇と死に囚われている繊細な少年であるのに対し、ジュリエットは光と生を信じる強い少女だ。
 ロミオが何故この少女に惹かれたかわかる。そりゃ彼には、この子がまぶしかったろう。

 わたしがジュリエットを好きだと思った瞬間から、世界でもっとも有名なこの純愛物語は、別の色を持った。
 もともと演じているみみちゃんをかわいいと思っているとか好きだとか、そーゆーこととはまったく別に、この物語の中にいる「ジュリエット」という女の子を好きだと思った。
 すると、ロミオがわかるんだ。ジュリエットに会うためにバルコニーに上がってきて、「恋の翼に乗って」とかすごくイイ顔して歌っちゃう、彼の気持ちがわかる。
 ロミオがやたらめったらにこにこ笑っているのもわかる、そりゃ笑顔になるよ、こぼれるよ。このジュリエットを好きなんだもん。彼女の変わる表情を見ているだけで、うれしくてうれしくてならないんだもん。
 ロミオが一気に、わたしの近くに来た。『ロミオとジュリエット』ではなく『ロミオ!』だとか、恋愛してないとか、いろいろ言っていたことを全部吹っ飛ばして。
 愛してる=結婚しよう!の性急さ、単純さ。余分なことのない思考。それが愛しい。

 ジュリエットのキャラクタが見えたから、ティボルト@ヲヅキの恋もまた、納得がいく。
 ゆがみたくてゆがんだわけじゃない。この世界のおかしさを知りながら、それに飲み込まれ抗いきれずにいるあの痛々しい生身の男、ティボルト。
 己れの闇と闘うティボルトには、そりゃあこのジュリエットが救いだろう。
 ヲヅキティボは意志のない偶像なんか崇め奉って完結する男じゃない。
 この生きの良いジュリエットならさもありなん……とゆーか、日頃のジュリエットとティボルトの会話が想像できる。
 上辺だけでナニか言ってもジュリエットはうんとは言わない、絶対言い返してくる(笑)。気が強くて、頑固で。生真面目(笑)なティボルトは、しょっちゅう言い負かされていそう。本気でケンカしたりな……ティボルトも年下の女の子相手に本気で怒るし、ジュリエット負けてないし。
 ティボルトが怒るととりまきの連中はびびるし、機嫌の良し悪しや空気を気遣って遠巻きにしたりするけど、ジュリエットだけは別。どんなに怒らせても空気悪くても、臆することなく態度も変えず、近づいてくる。

 ジュリエットは真顔で言うの。
「ティボルトなら、きっとドラゴンを倒せるわ」
 まっすぐな瞳で。

 
 と、「ジュリエット」が見えた瞬間に、物語が立ち上がり、あざやかに動き出したの、わたし的に。
 それぞれキャラクタの個人技だった雪組『ロミジュリ』が、ロミオとジュリエットの愛の物語に、彼らを愛するモノたちの物語に。

 続く。
「なんかまっつ、カマっぽくなかった?」

 普段見かけるナマまっつは、きれーなおねいさん。男に見えることはまずない。
 だがしかし。

 ベンヴォーリオ役のため後ろ髪を束ねているまっつは……なんかみょーに中性的というか。
 女言葉で喋る美容師のおにーさんとか、そんなイメージのある姿でございました。

 「SNOW ドリームトーク&“BINGO”」参加後、ごはんしながら木ノ実さんと、「ショートヘアだと女性に見えるのに、ロングヘアだと男に見える、未涼亜希さんの謎」について語りました。

 終演の後のイベントなんで、出演者はみんな素顔です。
 ピンクのスカステTシャツを思い思いに着こなしての登場です。

 年末の『タカラヅカスペシャル2010』で後ろ髪の長さを心配されたまっつさん、そしてスカステの『NOW ON STAGE』でも後ろ髪が長かった記憶があるわけですが……舞台の上だけの部分かつらじゃなく、まっとーにエクステ付けてるんだ。そのために後ろ髪伸ばしてたのね。

 舞台のベン様と同じく、メッシュ入りの黒髪を後ろで結んでいる状態。

 そんなまつださんが……不思議だなあ。男子っぽい……。

 他のみなさんがきちんと脚を揃えて坐っているのに、まつださんひとりが椅子の脚を支える横棒に、片足を乗せているとゆー、オトコ坐りだったせいもあるのでしょうか。
 イベント用の脚の長い椅子だったんで、まっつひとり足が床に着かないのかと余計な心配しちゃったことはナイショですよっ?!
 や、ひとり個性的な坐り方だったんで、ツボってたんですがね(笑)。

 
 さて、5組共通して開催されたこのイベント。
 5組目にして初参加っす。
 前半日程を観劇している人の中から抽選で選ばれるわけですが、わたし的には十分通っていた花組でかすりもせず、前半だけで10回から観劇したこの雪組でも、もちろん当たるはずもなく。周囲にも「当たった人でいらないっつー人がいたら教えて、声かけて」と宣伝しまくっていたのに周囲も誰ひとり当選の声を聞かず。ほんとに当たってる人なんているのか、劇場に貼ってあるアタリ番号はサクラではなかろうかと疑いつつ(笑)。
 くじ運ナイですから。抽選と名の付くモノには、当たったためしがありません。
 掲示板でかろうじてGETしました。いやはや、執念(笑)。
 まっつメイトの木ノ実さんも同じよーに、掲示板でGETしていたので、インターネット様々です。おかげでふたり並んで観覧できました。

 レポではないです、わたしにレポ機能はないので、ただの感想、まっつ中心。

 当日はロビーに集合して、入場順を決める抽選。入場時にビンゴカードをもらう。ビンゴはコンピュータ式。用意されたノーパソをクリックするタイプ。
 45分間のイベントなんだけど、タイトル通りのビンゴははじまってすぐに開始、出演者が順番にパソコンをクリックして、ただもお淡々と進む。
 そして数分後には、ビンゴ終了。え?
 ビンゴの景品も、スカステで流れていた出演者の思い出の品でもなく、キャトルレーヴで売っているささやかすぎる品物だし。

 もちろん、当たりませんでしたとも。つかリーチすらしなかった(笑)。
 くじ運ナイですから。抽選と名の付くモノには、当たったためしがありません。
 
 ビンゴは理由付けというか、タイトルにナニか景気の良い単語を使いたかっただけだなとわかる。
 早い話がトークショーでした。

 出演者は、キムくん、ちぎくん、まっつ、ヲヅキ、みみちゃんと夢華さんという、5組中最多人数。プラス、雪組生全員(笑)。
 ステージは劇場内ロビーの階段踊り場、雪組生たちは2階の手すりに鈴なり。

 出演者にフリーに喋らせるのではなく、あらかじめ雪組生相手にアンケートを採り、その集計結果を使ってリアクションを見るトークだった。
 「音月桂の魅力とは?」「公演開始のアナウンスで、音月さんが発音に苦労していた名前は?」「6名をそれぞれ動物にたとえると?」「音月桂をスイーツにたとえると?」「雪組生が意外だと思った、未涼亜希が好きな動物は?」「雪組の魅力は?」だっけか、要所要所でクイズとして観客に2択問題。

 雪組生のアンケートっつーのが、記名式だったらしく、トンデモな答えをした人の名を司会者が発表したりするので、出演者以外の思いがけない人の一面が見えたり(笑)。

 まつださんは「黒ヒョウ」だそうです。
 票を集めた動物も、本人も周りも納得のいくものばかり……だったんだが、トンデモ票として、「ツチノコ」ってのがあり。

 「なんでっ?!」と、まつださんが本気で憮然としてました。書いたのはひーこちゃんだっけか、「まっつさんのことを、あまりまだよく知らないから」という理由付けでしたが。
 そーか? ほんとか? 本気でツチノコに似てると思って書いたんぢゃないの?(笑)
 わたしはなんとなく納得したんですが、「そっかあ、まっつがツチノコかあ、たしかに面影(?)あるわー」と。

 黒ヒョウっていうと、「TAKARAZUKA REVUE 2007」でまっつ自身が自分のことを黒ヒョウっとゆーてるんですよね。キムくんを「桂」呼びしていたあの本で。
 当時は「黒ヒョウだって(笑)」って感じだったのに、組替えってすごい、黒ヒョウがマジなイメージになってる!!

 クイズは思った通り、わたしはラスト1問で脱落。大抵わたし、最後まで残るんですよ、こーゆー勝ち抜き式のクイズやゲーム。そして、あと一歩で脱落。そんな人生です。

 まっつは隣の席のヲヅキさんと終始顔を寄せて、こそこそくすくすやってました。ナニその萌え構図!!
 行くのが「まっつから」ってのがいいなあ。ヲヅキさんはそりゃーもー真面目な人なので、すごーく気を遣ってマイク用意したり立ち位置考えたりしている様子でした。
 まっつはそんなヲヅキ氏の気配り緊張モードを知ってか知らずか、わりに大雑把というか、気取りナイ雰囲気で話しかけてる感じ。

 タイトルのビンゴでプレゼントされなかった思い出の品は、その後の抽選会でプレゼント。
 テレビでやっていたそれぞれの品(まっつだったら香水)だけだと思っていたら、もうひとつ「愛用品」というのがあったのね。
 出演者が持っているパネルの写真が、スカステで見たプレゼントとチガウなあ、と思っていたら、2種あったためだったのね。1枚のパネルの裏表にそれぞれ思い出の品と愛用品が印刷されていた。

 下級生から順に、パネルを見せて品物を紹介しつつ抽選するんだけど。
 後ろで待っているまっつが、2階の雪組っこたちに、自分のパネルを見せてなんか盛り上がっているのがかわいかった。
 まっつの愛用品は、『相棒』のパンダマグカップ。この写真を雪組生たちに見せていたらしい。

 ……ところで、ヲヅキさんの愛用品が素敵でした。えーと、電気アンカ?
 彼は思い出の品もファスナーネックレスで、写真にすると微妙なんですね、これが。
 オレンジ色のアンカの写真がどーんと印刷されたパネルもシュールだし、それが入った箱のでかさと飾りようのないシンプルなラッピングも他のかわいらしい小物たちの間で異彩を放っていたし、その箱を持ってスタンバっているヲヅキさん自身も、素敵にシュールでした……(笑)。

 ヲヅキ氏は話し方が独特でいいなあ。「なんか怒ってるの?」と聞きたくなるような喋り方(笑)なんだけど、切り返しはけっこーアタマいいというか、気持ちいいんだよなー。

 それらプレゼントはもちろん参加者に選ぶ権利はなく、それぞれが引いたチケットの半券にて決定ですよ。
 じつはわたし、ヲヅキさんのがいちばん欲しかったっす……。

 もちろん、当たりませんでしたとも。
 くじ運ナイですから。抽選と名の付くモノには、当たったためしがありません。
 
 いちばんの垂涎プレゼントは、6名+雪組全員と記念撮影、1名。
 ……すごすぎる……。
 や、一緒に撮らなくていいから、参加賞として雪組生集合写真プレゼントしてくださいよ、劇団様。

 
 まっつがとても自然に雪組生にまざっていて(たとえツチノコでも・笑)、キムくんにツッコミ入れたり、ちぎくんとこちょこちょ話していたり、かわいい顔がいっぱい見られて幸せでした。
 キムくんはテレビで見るまんまのキムくんだなああ。ちぎくんはリアル男子、いるよこんな男の子タレント! ヲヅキはいつぞやの『GOGO5』以来、さらにかっこよくも愉快な人、みみちゃんきらきらすげーかわいい、夢華さんはほんと子どもみたい、若い。
 登場時の自己紹介が、『ロミジュリ』と絡めてネタ披露!的になっていたので、あとになるほどプレッシャー。ヲヅキ氏があまりに追いつめられた顔をしていたので、固唾をのんだよ。結果彼は突然歌い出し、司会者のおねーさんを仰天させてました(笑)。
 うわー、ヲヅキさんをめちゃくちゃ好きになって帰ってきた気がする(笑)。

 
 木ノ実さんも古いまっつファンだから、「変わっていくまっつ」について、なんかしみじみと語りましたよ……どこへ行くんでしょうね、あの人。
 まあとりあえず、黒ヒョウでロン毛で性別不明ですから……何故髪が長いと性別が危うくなるんだ(笑)。
 わたしは、そこにいてはいけないのだ、と思った。

 『Dancing Heroes!』観劇時、単純に良い舞台だから、千秋楽も観たいなと思った。
 でも最後まで観劇したあとには、それは無理だと思った。

 『Dancing Heroes!』の空気はあまりにも「卒業」を前提としたモノで……舞台演出も、出演者も、そして、観客も。
 単に1観客として『DH』を好きだとか、そのかを好きだとかの意識で、楽を観てはいけない気がした。

 そう、わたしはびびった。そして、逃げた。
 そのかはまだ卒業しない、だってサヨナラ公演をやってもらえる立場じゃない、そんなのゆみこ以上の扱いじゃん、大劇場と東宝の楽の2日間、各15分のサヨナラショーしかしてもらえない娘役トップや2番手以上じゃん、10日間×2時間もサヨナラショーするなんて。
 立場的にありえない。
 だから、そのかは卒業しない。だから、千秋楽を観ることにこだわらなくていい。
 そう思い、さらに、もうひとつ。
 卒業しなくても、するのだとしても。
 バウホールのこの親密な空間は、ファンだけのものだ。千秋楽は、そのかファンと、月組ファンが味わう特権だ。
 そう、思った。

 楽チケットのあてがないわけでもなかったが、踏み込む勇気がなかった。
 わたしはそこにいてはいけないのだ、と思った。
 真のファンだけが、そこにいる権利があると思った。

 そして。
 そのことが、寂しかった。

 もしもこれが花組公演なら。
 そのかの『Young Bloods!!』の初日と楽に駆けつけたように、わたしはなにがなんでも観劇していたし、胸を張ってそこにいただろう。
 だって花組はわたしのホームで、そのかは花組でご贔屓の次に大切な人だもん!と。

 今さらそのかの組替えについてどうこういうつもりはないし、そのかの月組での活躍や歴史に水を差す訳じゃない。
 ただ、「楽を観たい」と思い、「いや、ダメだ。月組だから、わたしは遠慮するべきだ」と思ってしまったことが、寂しかった。

 花担な友だちと一緒だったこともあり、踊るそのかに花組の遺伝子を見て、そのことを話したりもしていただけに。
2011/01/27

月組 退団者のお知らせ

下記の生徒の退団発表がありましたのでお知らせいたします。

 (月組)   
  研 ルイス
  桐生 園加

     2011年5月29日(月組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団

 わたしがまっつオチした理由の一端は、そのかにあった。……てことは、もうここで何度も書いた。
 そのかを好きで、だけどそのかに恋するには当時のわたしは傷つきすぎていて(痛)、その想いから逃げ出したところに、まっつがいた。

 『ロミジュリ』祭り中なので、いつか落ち着いたら書こうと思っていた、『Dancing Heroes!』を観て思うところはいろいろあったんだけど、そのうちのひとつに、「似ていない」というのが、あったんだ。

 そのかを好きで、だけど、見ているとつらかった。似ているから。
 不意に思い出して、心がひりひりした。涙腺が決壊した。
 ふだんはまったく意識しないのに、似ているなんて思ってないのに、ふたりを混同しているつもりはないのに、それでも忘れた頃にどーんと過去はわたしを押し流す。

 そんなだったのに、『Dancing Heroes!』で超オトコマエなそのかを見ても、前のご贔屓を思い出さなかった。
 むしろ、「似ていない」と思った。

 そのかの美しさに、シンプルに感動していた。

 切なさはそのかが花組にいた頃に対してのモノ、つまりはそのか自身に対してのモノで、前のご贔屓絡みの感傷ではなかった。
 ああわたしはまたひとつ、階段を上ったんだな。昇華したんだな。それは、そのかのおかげなんだ。
 そんなことも思った。

 思った、のにな。
 わたしはわたしのなかで、新たなスタートラインについて、そのかを見つめたのに。


 その昔。 
 新しい宝塚友の会に入り、カードが送られてきて。
 支払金額・ポイントその他はwebで確認しろと書類にあったから、いそいそと阪急グループのサイトに行き、会員登録をした。
 ログインID入力のあとは、パスワードの設定。
 新しいご贔屓と共に生きる自覚のあったわたしは、「mattu」と入力した。
 すると、「文字数不足」でエラー。なんだよ、5文字じゃダメなのかよ。
 それで結局パスワードを、「sonomatu」にした。そのか×まっつを心の糧に生きる心意気として!!

 ……その翌日、そのかの組替え発表があり、すげー凹んだのをおぼえている……(笑)。
 ヅカカードのパスワード、「園松」にしたんだよー。そのかとまっつを愛でるつもりでいたんだよお。なのにコンビ解消はあんまりだあああ。てゆーか何故このタイミング!! パスワード設定したの昨日なのにぃぃ。

 その後友会カードは今のスタシアカードに変更されたりサイトも変わったりして、パスワードもナニも変わっちゃったけどね。
 当時はすごくさみしい思いで「そのか、いかないで。ずっと花組にいて」とうじうじパスワード入力していたわ……。発表後1年近く、花組にいたんだっけか(笑)。

 
 とりあえず、スカステに要望送るか……。
 そのかとまっつの対談とか、なにかしらやってくださいよ。ニュースの中の1コーナーでもいいから。
 そのかがことあるごとに希望していた、そのまつ番組をと。
 『ロミオとジュリエット』のダブルキャスト、夢華ジュリエットについての感想、その2。
 完璧にわたし個人の好みの話なので、世の評価とズレているかもしれんがそこはご容赦を。

 わたしは以前、キムくんのロミオには、夢華さんのジュリエットの方が芝居としては合っているかもしれないと書いた。
 外見ではカケラも合っているとは思わないが(笑)。

 何故、芝居が合うと思ったのか。

 それは、夢華さんのジュリエットに、個性を感じないためだ。

 夢華さんはヘタではない。
 歌はうまいし、声もきれい。ちゃんとお芝居している。でも。
 「ジュリエット」が見えない。

 なんつーか、お手本通り、演出で定められた通りの表情をし、動いて喋っているだけに見える。
 初日近辺は「いっぱいいっぱいだからかな」とか思ってたんだけど、楽まであと1週間という頃になっても印象が変わらない。
 見た目の若さと、それゆえのかわいらしさで、お手本通りの動きに過ぎなくても、たしかにジュリエットとして成立はする。
 初々しいジュリエット、こんなに若くいとけない少女が恋に殉じるのは可哀想、その若い一途さが美しくて切ない。最後のロミオとの白いデュエットダンスがかわいくて素敵。
 と、すべてが実年齢の若さと経験不足ゆえの効果。若い役が主役の物語だと、新人公演がなんとなくサマになるのと同じ。

 夢華ジュリエットにあるのは、「ジュリエット」としての記号だった。

 ジュリエットという衣装を着て、歌を歌い、言葉を話す、それだけ。
 それゆえに夢華ジュリエットのときは『ロミオとジュリエット』ではなく、『ロミオ!』になる。
 ロミオ@キムのひとり舞台だ。

 劇団が意図しているのかどうか知らないが、いろんな宣伝映像でロミオとふたりできちんとアップになってふたりとも顔が見える状態で「芝居」をしているのはみみちゃんで、そこにジュリエットがいるとわかるだけの「姿さえわかればいい」、ロミオさえちゃんと映っていればいい状態のときは夢華さんであることが多い気がした。
 単なる学年配慮、ヴィジュアルによる配慮かもしれないが、これは正しいと思った。
 「ロミオとジュリエット」なのはみみジュリエット相手だからアップでふたりを映し、新トップスターキムくんが「ロミオを演じているところを映したい」なら、夢華ジュリエット。

 夢華ジュリエットのときは、わたしはジュリエットに目がいかない。ジュリエットが気にならない。
 ただもお、キムロミオに圧倒される。
 実際、ロミオの狂気が激しいのは夢華ジュリエットのときだと思う。
 キムくん独走状態。
 だからキム単体の『ロミオ!』を見たいなら、夢華ジュリエットかもしれない。相手役ナシのロンリートップスターを見たいなら。

 ここまできてはじめて、キムって相手役いらずかもしれないと思った。
 責任の大きさゆえにまだ余裕がないためかもしれないが、「独走上等! 周り見えてません!」状態になっている。
 「ロミオ」なのに、恋愛していない。
 魂のないお人形相手に泣いて笑って大忙しのキムロミオは、ある意味役者として、舞台人としての「音月桂」そのものかもしれない。
 相手が足りないからといって共倒れするのではなく、自分ひとりでも走り出す。暴れ出す。相手が倒れていることを、観客が気付かないくらいの勢いで、ふたり分動く。
 人形を人間にすることも、時間があればできるかもしれないが、そんな時間はない。だから人形だと気付かれないよう、ひとり芝居でもなんでもして煙に巻く。
 キムの強さがそのまま出ている気がするんだ。

 が、舞台は強いだけや、ひとりだけで成立するわけじゃない。キムくんは通常ならきちんと芝居をしていると思う。
 その「通常」ができないくらい、今彼は全力で闘っているのだと思う。

 夢華さんの記号っぷりは、たしかに今までのタカラヅカでもよく見かける。
 ベテラン男役トップスターの相手役に、なんの色も付いていない未熟な新人娘役を抜擢すると、そーゆー立場の女の子はただ決められた通りに歌って喋るだけの人形になりがち。
 それはソレでアリだろう。未熟な少女を相手役に迎えることで、男ぶりが上がったり、それまでのベテラン相手役と組んでいたときとはチガウ新たな顔が見られたりするから。
 ……ってソレは、男の方がすでにベテランで、ふたり目以降の相手役を迎えるときの話だろう。それも、きちんと「相手役」「トップコンビ」として成立していた上で。

 2番手経験すらろくになく、決まった相手役を持ったことのないキムくんがトップスターになり、相手役でもなくダブルキャストで、「記号」しか演じられないヅカ素人相手に、ナニができるっつーんだ。
 孤軍奮闘しているがゆえに、キムの力、魅力はどーんと表に出ている。つか、全開だ、全力だ。
 キムひとり芝居状態だもの、キム単体を見たい人にはいいかもしれない。キムがひとりでやりたいように出来る、だからいいかもしれない。

 そういう意味で、夢華ジュリエットの芝居が、キムには合っているかもしれない、と思ったんだ。

 でもわたしは、そんなモノ、タカラヅカにもキムくんにも求めていない。

 ナニがかなしゅーて記号相手に恋愛せにゃならんのだ。『ロミオとジュリエット』なのに、ひとり芝居で『ロミオ!』をやらにゃならんのだ。
 キムくんにはちゃんと恋愛して欲しい。『ロミオとジュリエット』をやってほしい。

 ロミオだけじゃない。
 夢華さんの回は、「ジュリエット」が見えないため、ジュリエットに関わる他のいろんな人に感情移入できる。
 キャピュレット卿@ヒロさんに泣いたり、乳母@コマに泣かされたり。ふつーならジュリエットを見て彼女に感情移入すべきところで、彼女が記号なので、彼女に対する人々の顔がよく見えるの。
 乳母はカーテン前独唱ではなく、それ以外のジュリエットと一緒にいるときの表情のひとつひとつ、話し方や声色で泣けるよ……なんてキュートかつオトコマエなおふくろさんなんだ、てなふうに。

 ダブルキャストのジュリエットが、その回どちらであるかは、わたしは気にせず着席していた。なにしろトチ狂っていつもより通ってるからさー。いちいち気にしてないっつの。だから登場するまでどちらかわかっていないことが多かった。
 が、夢華さんが続くと、みみちゃんを見たくて仕方なくなる。ので、公演も後半になるとみみジュリエットの回を選んで観劇するようになった。
 や、やっぱ「ジュリエット」が見たいんだもの、記号とか人形とかじゃなくて。

 
 と。
 これはわたしひとりの感想なので、みみちゃんが良くて夢華さんがダメ、というわけじゃない。
 「タカラヅカ娘役」としては素人同然の研1の女の子にしかできないジュリエットを、今の夢華さんは演じているし、そこに価値を置くのもアリだろう。
 これからキャリアを積めば、彼女も変わっていくだろうし。
 だからこれは現時点での感想。

 劇団がナニを考えてこんな抜擢をしているのかは、未だもってよくわからないが。
 ジュリエットについて、わたしの好みを語る。

 雪組公演『ロミオとジュリエット』のジュリエットは、ダブルキャスト。それゆえに、わたしには最初わかりにくかった。
 ふたりのジュリエットが同時(同じ日の午前午後公演とか)に差し出されるもんで、アタマの悪いわたしは情報処理に時間が掛かった。

 舞台人は、舞台の上がすべて。うまいヘタもそうだけど、わたしの場合なんつっても、好みかどうか。舞台以外の要因で左右したくない。……が、舞台以外の情報で雑念が混ざるのも事実。
 
 ダブルキャストの片方、夢華さんに関しては厳しい目で見てしまったと思うよ、すまんねぇ。
 なにしろ彼女は「研1でヒロイン」だ。現在宝塚歌劇団に在籍するすべての娘役よりも素晴らしい資質を持っていると、劇団に判断された人だ。また、100年近い歴史の中でも相当稀な事象であり、劇団史に残る美貌と実力を持っているということだ。
 ……ところが、『ロジェ』新人公演や『はじめて愛した』を見る限り、実力は「研1にしてはいいんじゃね?」程度で、美貌に関してはかなり肩すかしで、「全娘役以上」とか「劇団史に残る逸材」とは思えなかった。
 だもんで、彼女の抜擢には納得できていない。この程度の実力なら、今までの研1生にもいくらでもいたレベルだ、それならせめて絶対的美貌を見せてくれ。

 つーことでまず、見た目の話から。

 最初から穿ち過ぎていたせいだろうか、実際目にした夢華ジュリエットは、とてもかわいかった。
 あ、なんだ、かわいいじゃん。そう思った。

 それは顔立ちや見せ方の技術というより、ひとえに若いということだった。
 若いってすごい。肌のふわふわ感がチガウ!

 ヅカのスターは、トップになるまでそれなりの時間が掛かる。お肌ふわふわのハタチそこそこの女の子がスターになれることは少ない。
 でも、それでいいと思っている。タカラヅカの男役芸、娘役芸を観に行っているわけで、「若ければそれでイイ」とゆー、そのへんの女の子タレントが見たいわけじゃない。
 技術と共に磨き抜かれた姿を見たくて、安くはないチケットを買っているのだから、トップスターはそれなりの年数をその身に刻んでくれてヨシ。

 と、拳を握って力説するが、それはソレとして若さゆえの美しさが新鮮だったことも事実。

 若いというか、幼い姿はジュリエットに合っていたし、もともとジュリエットっていうのは女の子をかわいく見せる役だ。ブロンドの長い髪、きれいなドレス、いくらでもかわいこぶってヨシのキャラクタ。
 役で底上げされている上に、かわいいきれいな声で歌えるとなれば、さらにかわいく見える。

 わたしは正面顔よりも横顔萌えの人間なので、鼻の低い人は好みではない。ゆえに夢華さんの顔は好みから大きくはずれているのだが、横顔に重点を置かない人には、及第点の顔立ちなのかもしれない。
 劇団史に残る美貌とはとても思えないが、とりあえずはかわいい。
 てゆーかやっぱ若い女の子はかわいいわ!(おばさん発言)

 ただ、彼女の身体の大きさは、ロミオ@キムくんに致命的に合わない。
 舞踏会のペタ靴をはじめ、ロミオがすごいハイヒールを履いている横で、スリッパみたいな靴底でしかないヒール皆無の靴を履かれると、視覚的にたのしくない。

 と、身長面でまず首を傾げていたんだが、彼女のヴィジュアルについての最大のびっくりはそのあとにあった。

 愛し合う若いふたりが一夜限りの愛を交わし、生木を裂かれるよーに別れを迎える切なくも美しい場面。
 愛@せしるがしなやかに美しく踊り、雲雀の鳴き声がする……。
 前日にもうひとりのジュリエット@みみちゃんを見て、その清らかな美しさと切なさに胸が熱くなった寝室の場面にて。

 紗のカーテンが開き、寝台で身を起こす下着姿のジュリエットの、しどけない姿がそこに……ってところで、ジュリエットのカラダの厚みにびびった。 

 肩幅があるのは想定内だったが、あの胸板は……。

 ここは折れそうに華奢でなくちゃだわ! 女子の夢そのものの可憐な姿でなくちゃだわ!
 ロミオより分厚い胸板はナイわー。ドキドキしないわー。

 他のどこより、ここがショックだった(笑)。
 健康的な若い女の子のカラダつきなんだろうけど、タカラヅカで、ましてや「ジュリエット」で見たいカラダではなかったっす。とほほ。

 この体格の夢華さんを相手役に恋を語ってサマになる男役というと、縦にも横にも相当大きくないと苦しいなと思わせる立派さでした。
 ジェンヌは舞台に立ち続けることでどんどんきれいになるので、カラダの厚みに関しては何年か経てば改善されるのではないかと思う。
 でもそれなら、娘役としてきれいにカラダを整えてから主演しろよって話だしなー。
 とりあえず夢華さんはキャミドレスまんまではなく、肩にナニか羽織って登場させてあげた方が、本人にも観客にもやさしいと思うんだが、ダメなのかな。

 とまあ外見的には、全娘役より上だとか、劇団史に残る美貌だとは、とても思えません。
 顔は好みがあるからなあ。わたしは高い鼻と横に大きなクチが好きなので、鼻ぺちゃ+おちょぼ口というのはときめかないんだよなあ。

 わたしはタカラヅカのタカラヅカらしいところを愛しているので、圧倒的な美貌やキラキラの華があれば、好みはともかくスターとしてアリだと思うんだが。
 たとえばタニちゃんは鼻ぺちゃ+おちょぼ口でわたしの好みの顔立ちではまったくなかったけれど、あれほどの美貌とキラキラオーラを持っていたら、納得せざるを得なかった。この人はスターだ、と。
 夢華さんはタニちゃんに顔のタイプは似てると思う……鼻とか口とかアゴとか。劇団の好きな顔なのかな? でもタニちゃんほどの美貌ではナイっすよ……。

 
 んで、次はヴィジュアルではなく、芝居の話。
 文字数ナイので続く。
人を信じられるのが財産。
 まっつのポストカード発売……だと……?

 そっか、出るんだ……。

 えーと、うれしいです。
 ポスカ出て欲しい、なんで出してもらえないんだろう、と思ったのは何年前だっけ。同じ年に新公主演した下級生の七帆くんのポスカが発売されたあたりかな。
 「ああ、まっつは出してもらえないんだ、そーゆー立場なんだ」と「現実」を突きつけられたっけ(笑)。

 この組替えで、ほんとにいろいろ変わったんだなあ、まっつのいる場所。
 うれしいけど、ちょっと切ないのはなんだろう……。わたしが年寄りだから、すぐ感傷的になっちゃうってことかな。

 や、うれしいですマジ。
 なにがどうあれ、わたしは彼について行くのみ!ですから。


 「宝塚GRAPH 2011 2月号」の「84期同期アンケート」で、そのかが相変わらず良い園松ぶりを発揮してくれたこともあり(笑)、なんかなつかしくなって、「宝塚ファンタジー VOL.9」を押入れから掘り起こして読み直しちゃったよ。

 A4ワイドサイズのムック本で、見開きまっつの舞台写真なんて、今見てもすごすぎる(笑)。
 でかっ、とびびるわ。

 んで、続けて「遠野あすかスペシャルブック LA DONNA」を読む。

「まっつが(主役を)すると決まった時に、主役もやってみんなも引っ張っていかなきゃいけない訳ですが、そんなことをさせる訳にはいかないから、他のことは私たち周りが助けるべきだと思ったので。」-宝塚ファンタジー VOL.9

「あの時、まっつが泣いてたのをすごく覚えてる。」-遠野あすかスペシャルブック LA DONNA

「私はまっつの何でも知っているから」-宝塚GRAPH 2011 2月号

 ……て、わたしがツボったそのかの言葉を各誌から抜き出すと、なかなか愉快にそのまつ(笑)。
 や、恣意的なチョイスですよっと。

 まっつ、そのか、あすか。男子ふたりと女の子ひとりの、このトリオが大好きだったよ。
 女の子ひとりなのに、あすかちゃんが姫として祭り上げられる感じじゃなく、ニュートラルに友情してるのが。……って、みんな戸籍上の性別は女子だと思いますが、たぶん。
 
 
 んで、ひっさびさに押入れ開けたついで、他の古いムックもチェックしてみた。
 REVUE本にまっつが登場したのは2006年からなんだねー。2005年版には載ってなかったわ。
 『スカウト』直後らしく、ド金髪のまつださんが載ってた(笑)。ほんと大好きだったわ、アズ。まっつの演じた役の中で、ヴィジュアルでは3本の指に入るトキメキっぷりだった。

 そして見つけてしまった、ふるーいREVUE本。
 ふつーは「TAKARAZUKA REVUE 2006」とかゆー風に、何年っつーのがタイトルになってるのに、年の表記無し。
 ひょっとしてREVUE本の最初の号?

 タイトルは「TAKARAZUKA REVUE 21世紀への旅立ち」、帯に「宝塚歌劇85周年 タカラヅカのすべてがわかる!」と書いてある。

 85周年ですよ。
 12年前ですか。……わたしみたいな年寄りにとっては、つい昨日のことのようですが(笑)。
 当時のトップスターだけでなく、魔王サマや黒木瞳、通常ヅカ関連に顔を出さない天海まで載ってるし。

 単に「なつかしーわねー」とページをめくっていたら。
 各組組子全員のオフショットが掲載されていた。
 ほんとーにオフ。お稽古場でちゃちなカメラで撮っただけの素人撮影っぽいもの。カメラ目線ではなく、隠し撮りというか、本人が意識しないところを撮っている。
 これがいろいろとすごい……「気の毒だからこんな写真載せてやるなよ」というひどい写りのものも多々あるし(純粋にぶすに写ってる)、ものすごーく面白い。

 大暴れしている壮くんとか、今と変わってないらんとむ氏(!)とか。あ、らんとむ胸すごい……。

 まっつはコレ、男役として踊っているんだろうか? 組配属された直後の写真だよねコレ、まだ研1? このムックの発売自体はまっつが研2のときだけど、撮影は98年度末だよね。
 ちなみに、みわさんの写真はレオタード姿。ロケットのお稽古かなあ。
 そのかはそのかだった(笑)。

 
 「人を信じられるのがすごい財産です」-未涼
 と、最後は「宝塚ファンタジー VOL.9」のまっつの台詞で締めて終わるっ。
 聴いて感じている以上に、歌の難しい作品なんだなと、あちこちで思い知らされた、新人公演『ロミオとジュリエット』

 わたしが朝風れいくんを個別認識したのが、『凍てついた明日−ボニー&クライドとの邂逅』だ。
 そこで彼は名曲「ブルース・レクイエム」を歌っていた。
 『凍てついた明日−ボニー&クライドとの邂逅』は役替わり公演で、Aチーム・Bチームで主要な役が替わり、朝風くんも役が替わった。……のに、「ブルース・レクイエム」を歌うのは彼だった。その役だから歌ったのではなく、朝風くんだから歌ったってことだ。

 癖のない声で、とてもニュートラルに名曲を歌っていた。

 以来朝風くんは、わたしの中では歌ウマ認定。なにしろ「ブルース・レクイエム」の歌手ですよ!

 でもって顔が好みなので、いつもなんとなく目に付く。学年が上がるにつれ、その度合いが増す。
 今回の『ロミオとジュリエット』本公演でも、キャピュレットチームでこわーい顔をしているのとか、大好物で愛でています。

 その彼が、新人公演でキャピュレット卿を演じる。
 色男役ですよ!! しかも歌がありますよ! や、キャピュレット卿最大の見せ場であるソロはカットされるだろうけど、それ以外も歌と出番はモンタギュー卿に比べてたくさんあるし、わくわくですよ。

 そして実際に。
 色男です、モンタギュー卿。
 登場した瞬間から、「かっこいいっ」と大喜び。ナニあのわたし的ど真ん中な美中年ぶりはっ。
 本役さんと比べれば線が細いんだけど、その分神経質な感じでヨシ。声に厚みもないっつーか喋っているときにいっぱいいっぱいなのが透けて見えるけど……まあそれは新公らしさってやつで。

 いやはや。
 まさか、「娘よ」のソロがあるとは思ってなかった。

 まるまる1曲歌っちゃいましたよ、朝風くん。大劇場で。
 すっげー。

 ……しかし、歌いきった、というだけで、その、歌いこなせていたかどうかは……。
 「ブルース・レクイエム」を聴いたとき、ニュートラルな正しい歌声だなと思ったんだけど。
 まだ余計な色が一切付いていない、「音」として正しい歌声。未完成ゆえにひろがりを予感させるような。

 あれから3年? ……あんまりうまくなってないよーな……。

 そんだけ『ロミジュリ』の曲は難しいってことっすかね。

 それにしても、すげー歌ウマってほどでもなく、また路線スターというわけでもないのに、朝風くんは名曲をまるまる1曲歌いきる機会にまたしても恵まれちゃったわけっすね。
 このめぐりあわせの強さを、是非糧にして欲しいです。

 
 ロレンス神父@ホタテくんは、なんつっても芝居が良かった。
 ナニあの安定したうまさ。おっさん演じると際立つなあ。
 歌はハラハラしたけどね(笑)。でもあんだけ歌えればいいんじゃないかなあ。
 

 キャピュレット夫人@カレンちゃんがいい女だ。
 なんか格好良かったぞ。激しい女が似合う。

 モンタギュー夫人@いの莉ちゃんは、本公演がエロワイルドないい女なのでビジュアルにも期待したんだが……モンタギュー夫人だと、いつものいの莉ちゃんビジュだわ……。

 歌は、歌ウマな彼女たちをもってしても、なかなか大変そうだという印象。
 カットされた「憎しみ」の歌も聴いてみたかったな。

 
 ヴェローナ大公@透真くんは、いつ出てくるのかと。アルバイトばっかしで、役として出てこないよー。
 彼の最大の見せ場であるオープニングがカットされているため、あとは裁き場面で台詞と歌がわずかにあるだけ、ラストシーンは個としての台詞と歌はないし。
 おかげで、歌える人なのかどうかもわからん(笑)。
 とりあえず、相変わらずきれいでした。みっさまとタニちゃんを足したよーな感じ。

 ピーター@れのくんがかわいい。もーめちゃくちゃかわいい。
 帽子かぶってたって、あの素敵な鼻はよくわかるし!(彼の鼻スキー)

 ハウルがキャピュレット男……キングの役をやっていた。すごいのよ、髪の毛立たせて、こわーい顔して。
 でも、こわくないの(笑)。すごくかわいいの。
 悪ぶっちゃってもお、この子は!みたいな。(ヲイ)

 でもってそのハウルくんのすぐそばに、れのくんが同チームとしてまぎれていたりね、やーん、好みの鼻が並んでるー!(ヲイ)

 
 愛@あすくんは……ヲカマ……?
 と観劇後に忌憚なき感想を言って、あすくんファンに抗議されました(笑)。
 
 あすくんは期待の美少年です、本公演でも目立ってます。特にらんとむさんのファンの食いつきぶりは素敵です、ええつまりそーゆー顔立ちです(笑)。

 若くてきれいな男の子だから、娘役も違和感ないだろうと思っていたんだけど、甘かった。
 前髪ぱっつんのカツラがいかんかったんか? なんかとてもヲカマちっくだった……。
 ダンスはしなやかでしたけれどね。
 まだ若いのに、こうまで女装が似合わないっつーのは褒められるべきですよ、そんだけ男役だってことで!(笑)←笑うのか。

 相方の死@レオくん、顔立ちが好みの子だから死メイクをするとどーなるのか興味津々だったんだけど。
 黒天使@さおたさんに見えた。
 後日スカステで見たらガイチっぽかったけど。ナマではさおたさん。

 レオくんって喋らないとオトコマエだよね。喋るといろいろとびっくりするけど。その、前回の新公とか。
 研3であれだけシャープな輪郭を持っているのは武器だよなー。
 本役さんとちがってカツラで丸顔隠しをしなくていいので、表情がよくわかる。
 やりすぎぢゃ?ってくらい、顔芸しまくり。邪悪なカオとか、恍惚としたカオ、がんばってやってました。
 なんか面白かった(笑)。

 愛と死は同格でした。どっちも元気。(ってソレはどうなの・笑)

 
 最後に。

 パリス@まなはる。
 前半大幅カットのこのひどい構成の新公で、愛と死の次に登場するのがパリスなんだが。
 登場した途端、アゴが落ちた。ちょ……っ、そのアタマ……!!
 目が点、つーかね。

 結い上げた髪に、小鳥さんついてませんでした?

 鳥、ちょお、鳥ついてるよパリス!! と、ソレに気を取られまくったよ(笑)。
 キイロイトリさんです。ついでに宝石も巻き込んであったよーな。
 あまりのアホアホっぷりに、絶句。
 すげーやパリス。
 こんだけカンチガイ野郎全開だったら、ジュリエット@あゆっちでなくても逃げ出すし、ティボルト@りんきらでなくてもムカつくわー(笑)。

 まなはるはまなはるらしい全力疾走ぶりで、舞踏会では覆面レスラーみたいなティボルトにくるくる持ち上げられ回され、きゃーきゃーやってました。
 なにこの際立つギャグキャラっぷり……。
 突き抜けてアホなので、腹も立たないというか、目が離せなくなる(笑)。困ったヤツだわ、パリス……(笑)。

 や、楽しかったです。

 
 全体的に「足りなかった」印象の新公ではあったけれど、それは未来への期待感ゆえというか。ここで完成せずに、彼らのジェンヌ人生はこれからなんだから、今回の公演は通過点っつーことで、さらに個性豊かに1観客たるわたしの目を楽しませてくれることでしょう。わくわく。

 ……願わくば、東宝で舞台構成やり直してくんねーかなー……。
 緑野こあらは現在、とてもびんぼーです。

 や、いつでもオールウェイズ(『ロック・オン!』的表現)びんぼーなんですが、今はさらにひどいことになっています。
 びんぼー人のくせに、分不相応に観劇しているせいです。『ロミオとジュリエット』に通ってしまっているせいです。通常の倍観てます。つまり、通常の倍、びんぼーなわけです。

 今だけよ、来月になれば落ち着くわ。
 名作で、作品を好きで、贔屓の役が好きで、贔屓の出番が多いなんて公演は奇跡、二度とないかもしれないもの。
 今通わなくていつ通うのよーっ。

 この4つの要因が揃うことなんて、ほんっと奇跡よ?
 ヅカヲタやって長いけど、前例は『凱旋門』まで遡っちゃうのよ? あれから何年よ? 干支がひとめぐりする間に1回あるかどうかなのよ?

 ヅカ作品のほとんどは凡作か駄作。まず名作が圧倒的に少ない。……ので、この段階でかなり狭き門。
 さらに、世の中的に名作でも、わたし自身が好きかどうかは別。ストレスなく観られる美しい名作で、そのうえわたしのツボにジャストミートしなければならい。……って狭き門のあとに高さ制限のある門が来ましたーって感じに、難しい。
 名作でわたしも大好きで観るたびわくわくどきどき大泣きしちゃう、カタルシスを味わえる公演だったとしても。大抵そーゆー作品に、ご贔屓は出ていない。もしくは、出ていても出番はわずかとかモブだとか。好きもキライもない程度のちょい役だったり?
 もしくは2本立てで、1本は大好きでたまらなくて、もう1本を好きでなかったり、どーでもいいと思っていたり。
 そんなふうに、どこか絶対欠けるのが、タカラヅカ。
 望む姿でなくても、1回は観に行くし、ご贔屓が出ていれば駄作でも通うし、ご贔屓が出ていなくても作品に惚れたらリピートするし。
 そうやって生きてきたけど。

 今回は12年に一度の大フィーバー。
 『ロミオとジュリエット』は名作で大好きで、ご贔屓の役が好きで、出番も多くて、たのしくて仕方がない。
 だから今だけ、この公演の間だけたがをはずすの。今だけのお祭りなの。
 公演が終わったら、質素に倹約して生きるの。

 そう自分に言い聞かせて、自宅とムラを往復する日々。

 そう、言い聞か……せ……。 

 まっつプガチョフ来たーーっ。
雪組 全国ツアー公演『黒い瞳』一部の配役 決定(2011/01/22)
【全国ツアー】
雪組
『黒い瞳』
『ロック・オン!』

公演期間:2011年4月23日(土)~5月22日(日)
主な配役 出演者
ニコライ 音月 桂
マーシャ 舞羽 美海
プガチョフ 未涼 亜希
※その他の配役は、決定次第ご案内いたします。

 相も変わらずムラ詣でしている身、貸切公演観劇後に会ったまっつメイトから配役発表があったことを聞き、その場で抱き合って喜びました(笑)。

 見たかったの。
 まっつで、見たかったの、プガチョフ。
 全ツ演目が『黒い瞳』だと発表になったとき、震撼したもの。まっつでプガチョフが見られたら……!!って。

 そしてマーシャがみみちゃん!! Wでうれしい!

 夢に見た配役だわ……。

 そして、『ロック・オン!』
 まっつ組替えが発表になった日、混乱しまくりながら、2011年の年間公演スケジュールを確認した。
 『ロミジュリ』のあとは全ツとバウ+青年館、バウは2番手のちぎくんだろーから、まっつはふつーに考えると全ツ、そしてトップお披露目して最初の全ツといえば、前トップさんのサヨナラ公演のショーを持っていくもの。
 まっつ、『ロック・オン!』に出るの?!と、くらくらしました。
 組替え発表の翌々日、つまりは前楽だったわけだが、『ロック・オン!』を観劇しながら水しぇんとの別れにさめざめと泣きながら、それでも混乱していた……このショーに、まっつ出るのかしら、と。

 ほんとーに出るんだ……。

 とゆーことで、全ツ遠征決定です。

 初日と楽、梅芸とあと1箇所は地方へ行く……って、そんなカネがどこに??

 『ロミジュリ』が終わったら、倹約して、質素に……つつましく……。
 うわあああぁぁん、マジでお金ないよう~~!!

 うれしい悲鳴ってやつです。
 まっつプガチョフうれしいです。びんぼーはつらいけど、なんとかするべく、がんばる……ううう。

 ちぎくんバウだって観たいんだ。まとぶんだって見送りたいんだ。ああ、どっかからお金出てこないかなー。大掃除したら、しまい込んだまま忘れてたタンス貯金とか見つからないかなー。(そんな追いつめられ方)


 ちなみに。  
 まっつで『ロック・オン!』がうれしい理由のひとつに、ナース姿で『ロック・オン!』熱唱するまっつを、正しい姿で上書きできる喜び、つーのがあります(笑)。
 ポテンシャル開花に期待できる作品……だと思ってはいるが、いかんせん新人公演『ロミオとジュリエット』は構成が悪すぎだ。
 こんなことなら、2幕とも上演すればいいのに、と思う。フィナーレ切るだけで少しは短縮になるんだし。演出家に短縮する能力がないのなら、できないことは最初からやらなければいい。昔はこんな短縮版ではなかったのだし。

 しかし現実は、謎の構成でぐだぐだ。
 マーキューシオ@しょうくんは出番や見せ場の大幅カットで、ポテンシャル開花どころじゃない。

 劇団も商売下手だなあと思う。『オネーギン』で一気に注目を集めた長身美形くんを売り出しに掛かるなら、今ほどの好機はないのに。
 しょうくんを最終的にトップスターとする気がない(かどうか知らないが)としても、「今」人気が出そうな子は売り出しておいて損はないでしょうに。
 人気商品が店頭に複数並んでいる方が、お客さんもやってくるし、実際に買い物する人だって増えるよ? それによって劇団が本当に売れて欲しい、買って欲しい商品が実際に売れるかもしれないよ? 誰も来店してくれなかったら、どんだけ特別陳列棚で祭り上げた商品だって、誰も見ることさえない、つまり買ってくれないよ?

 わたしはしょうくんを「長身の美形若手くん」と認識しているのみで、彼にナニが出来てナニが不得意なのかもわかってません。
 ただ、モブでも目に付くし、いろんな人に「青チームにいた、大きな男の子は誰?」と聞かれる。「きれいだったから、誰かなと思って」と、主要番手しか見分けの付いていない人に目をとめられる、そういう男の子。
 うまいヘタがさっぱりわかってないが、とりあえず彼なら「今」、ロミオやらせてみればよかったのに、と思う。
 ロミオ役は若くてきれいなら、新人公演限定で許される。実力よりもヴィジュアルと初々しさ。

 堅実にまとまった咲ちゃんより、面白いモノが見られたんじゃないかなあ。

 実際マーキューシオ役のしょうくんは美しく華があり、パワフルにどたばたしていた印象。
 スマートだったとか、歌唱力があったかはともかく(笑)、芸風が大きく感じられたのは良かったなと。
 トサカ頭も似合ってました。きれいな子はナニやっても似合っていいね(笑)。
 しょうくんのトサカが、とてもわかりやすいトサカだったので、本役さんの髪型に対する謎が深まった……ちぎくんはアレ、なかなか複雑なトサカだよなあ。

 でも彼はいつも大人数場面で大暴れしている役なので、じっくり彼だけを見ているヒマがなくてなあ。
 ほんとに見せ場カットが惜しい。

 
 ティボルト@りんきらには、期待しすぎていたかもしれない(笑)。
 りんきらは出来る子!と勝手に盛り上がっていたので、いろいろ首を傾げる結果に。
 歌がうまいことも、芝居が出来ることも、観る前からわかっている。顔立ちだってきれい……その、ニクに埋まっていなければ。彼にないのはタカラジェンヌらしいスタイルだけ!と、思っていただけに。
 久々に見る美形若者役、本公演で痩せていないことはわかっていたので、二枚目役だからといって突然美形になっているとは思ってない。だからヴィジュアルに関してはなんの引っかかりもない。

 あれ、と思ったのは、歌と、芝居だ。
 そうか、この歌ってこんなに難しかったんだ、と改めて思った。
 テルキタだからアレになっちゃってるんじゃなく、ほんとに難しいんだ、りんきらでさえこうなんだから、と……各方面に失礼な感想を持った。

 テルにしろヲヅキにしろ、歌のうまい人ではないが、最低限歌を自分のモノ……「ティボルトの歌」にはしていたんだ。
 それを歌うことで、ティボルトという男を吐露していた。

 りんきらの歌では、それによってティボルトという人物が見えるには至らず……ヘタじゃないのになあ……歌唱力と舞台はまた別なんだなあ。

 また、彼の芝居もそれが「ティボルト」なのか、よくわからなかった。
 いや、芝居や役作りに正解があるわけじゃない。それが彼のティボルトだと言われればそうなんだけど。
 なんというか、地味で薄いティボルトだった。いろんな感情が、低かった。クールというのではなく、薄味。抑えられた情熱が、とかゆーんでもなく……地味、だった。

 ティボルトは、花形の役だ。
 ばーんと舞台を圧倒する力がいる。きらきらした明るいものではないが、確実に己れで発光しなければならない。
 それが、感じられなかった。

 場が、チガウ。
 そう思えた。

 りんきらの今回の存在感やまとう色は、たとえばキャピュレット卿ならば、なんの問題もない。むしろすばらしいと絶賛されただろう。
 だけどティボルトじゃない……。

 うまいんだし、ほんとはきれいなんだし、痩せればいいのに、と今まで単純に思っていた。りんきらがぷくぷくなまま美少年役とかをやっているのを見て、そのヴィジュアルで美少年は勘弁、と思っていたが……そーゆー外見だけのことではないのかもしれない。
 ティボルト役を見て、はじめて思った。

 
 ジュリエットの乳母@さらさちゃんもまた、「乳母」という役の難しさを改めて考えさせてくれた。

 若く美しいスタイル良しのお嬢さんばかりで構成された、宝塚歌劇団の難しさというか。
 女性の役は娘役が演じるべきで、もともと花形である男役が、辛抱役の娘役の場を取るべきではない、娘役芸を軽んじてはならない、とわたしは常々思っているクチだ。
 だから最初は男役のコマくんが、役の少ない海外ミュージカルでヒロインの次に比重の高い女性役を演じることに疑問もあった。
 でも実際の舞台を観ると、乳母に関しては娘役よりも男役が演じた方がいいと思えた。乳母役は「娘役」という性別の役ではなかったからだ。男か、別枠の専科さんが演じてしっくりくる役。
 役柄としては男役が演じていいけど、課題は残る。それが歌だ。男役のコマくんは高音が出ない。

 新公で歌ウマ娘役のさらさちゃんなら、「男役か専科さんが柄に会う」乳母という役を、その歌唱力でねじ伏せてくれるかもしれない、と期待したわけだ。
 
 外見はやはり、かわいい女の子のままだった。娘役だから、男役の演じるおばさんほど姿を汚すことは出来ない。声もかわいい、太ったおばさんに相応しい濁りはない。
 姿がソレでも、他の部分で「乳母」として確立してくれただろうか、というと。

 ……ほんとに、乳母って難しい。
 
 男役が演じると高音がつらくて、娘役が演じると低音がつらいんだ。
 乳母の地声と裏声の差が別人過ぎて、1曲の間にそれがしょっちゅう行き来するもんだから、切り替わりのたびに「あ、今変わった」と引っかかる。
 声が明らかに切り替わる不自然さのため、歌は芝居の延長の心の叫びではなく、「コンサートの1曲」のように、独立してしまう。心の叫びなら、なにも出ない音を、声を変えてまで出さないでしょうから。

 歌がそれほど武器になっていないので、見た目のかわいらしさと若さを、全部芝居でカバーしろってのは、なかなかにハードル高すぎたと思う。対するジュリエット@あゆっちは学年相応の大人びた部分があるし。

 さらさちゃんのお芝居をちゃんと見たのは『オネーギン』のときで、あの芝居が好きだっただけに、今回は見ていてもどかしかった。すごいアウェイ感というか。勝負すべき場でないところに正念場を持ってこられても、実力とはチガウよなっていうか。

 『ロミジュリ』って見た目の甘い華やかさに反して、ほんと難しい作品なんだなあ。
 なんか盛り上がらないなあ、コレ……と、しょんぼり気分で、それでも舞台上の彼らのがんばりと一生懸命さには拳を握って見守っていた、新人公演『ロミオとジュリエット』

 ひとり、ものすごーく愉快な人がいた。

 ベンヴォーリオ@がおりくん。

 すらりとスタイルのいいベン様で、本役さんとのヴィジュアルの差にくらくらしながら(ちびっこで悪かったな、うわああぁぁぁん!なキモチ・笑)、本公演でのモンタギューの男も含め、がおりくんキレイになったなあ、と眺めていたわけなんですが。

 途中からこの人、トバしはじめるの。

 「狂気の沙汰」リプライズあたりからぐわーんとアクセル入った。
 がおりくんがダンサーなのは周知のこと。翻弄される困惑ダンスが美しい。
 わたしが彼を認識したのは、実はダンスではなく歌でなので、わたしにとっては歌ウマさんくくり、ベン様の歌についてもなんの心配もしてなかった……が、思ってたよりずっとうまい!! ファルセットもOK!
 そしてさらに、カーテン前ソロ「どうやって伝えよう」が。

 面白かった。

 いやごめん、うまい、うまいんだ。期待以上にうまかった、見事に歌った。
 でもそれ以上に、面白かった。

 舞台ってさ、ナマってさ、うまいヘタだけで決まるものではないんだ。
 うまくても興味を持てないものはある。最低限の技術は必要だよ、でもその上でテストの点数ではないナニかが重要。

 このベンさんは熱血漢で、あちらこちらで魂のアツさを垣間見せていた。
 いかにもコスチュームプレイなロン毛は黒+金で、いやソコは本役さん踏襲しなくても(笑)な色合い、されどぶわっと大きくなびかしているところは、ライオン風でわかりやすい。背が高いと髪のボリューム多めでもいいんだよなあ。
 きれいで派手でスタイル良しの、アツいハートのロッカーなベンさん。

 彼がそのアツいハートを爆発させ、魂のシャウトをするのが、「どうやって伝えよう」だ、面白くないはずがナイ!

 いやもお、顔芸すごいから。
 「狂気の沙汰」からすでに。身体表現も大きいけど、表情筋の動きも大きい。

 技術に増して、「ナニか面白い」というものは、観客に伝わる、動かす。
 がおりのソロで、客席が動くのがわかった。
 舞台を自分のモノにする、「主役」になる。
 今は新人公演だから、他のみんながいろいろと足りていないし真面目な固さに満ちあふれた舞台だ、本公演で同じことができるかどうかは別だが、今この舞台、この公演で一気に劇場の空気を動かしたのは、間違いなくこのがおりベンさんだと思う。

 ソロが終わったときの、拍手の大きさ。熱さ。
 この公演でいちばんだった。

 やっぱナマ舞台って面白い! 観に来て良かった! と思わせてくれる。こーゆー空気がぶわっと動く瞬間って、そこにいてすごく気持ちいいんだもの。感動するんだもの。

 がおりベンさんの面白さは、なんつーんだ、蘭寿さんがベンヴォーリオを演じたらこんな感じかも、と思わせてくれるような面白さだった。
 らんとむもすごく「面白い」スターさんで、若いときからとにかく目を引く……好き嫌い以前に衆目を集める「面白さ」のある人だった。
 やっぱスターさんは面白くなくっちゃねー。なんかわかんないけど見てしまう、目が離せない、そーゆー味のある人っていいわあ。
 そこからさらに、美しさや格好良さ、オトメをくらくらさせる色気なんかを開花させていけば鉄板ですよ。

 がおりくんというと、うまいけれど地味めな人という印象、舞台を締めてくれる貴重な人という印象だったんだけど、どんどんスキルを磨いて存在感を増しているなあ。
 いやはや、すごく楽しかった。拍手!
 

 構成の悪さで足を引っ張りまくられていた気の毒なこの公演で、ベンさん大爆発まできてよーやく劇場内の空気が動き、暖まった。
 ……って、もうラストやん!(笑)

 次に面白かったのが、ジュリエット@あゆっちだ。

 かわいい、というのはあゆちゃんの武器。とにかくかわいいジュリエット。
 なんだけどやっぱり彼女はまぎれもなく「おねえさん」だった。
 本役のジュリエットより上級生だし、コムちゃん時代から抜擢を受けたきたスターだ、丸顔とロリっぽい持ち味で今まで忘れていたけれど、すでにもうこんなにも「大人」になっていたのかと驚かされた。
 ロミオとの実の年齢差というかキャリア差があちこちに見える。
 咲ちゃんロミオも子どもっぽすぎるわけではないけど、やっぱり幼い。それに比べ、ジュリエットは大人の部分が見えた……役作りではなく。

 ロミオとジュリエットが何故恋に落ちたのかわかんない、という致命的な構成の悪さ。なにしろ、主役とヒロインが観客に個別認識できたのが「天使の歌が聞こえる」を歌い出すときからで、そのとき彼らはすでに恋に落ちていたので、その前がわからないという。
 そんなひどい状態で、それでもよくキモチをつないで、演じていたと思う。

 かわいいし、よくやってるし、歌はまあご愛敬っつーことで、ぜんぜんイイんじゃないの、ってあたりの感じでまったり愛でていたんだが。

 ラストの霊廟。
 早とちりロミオが自殺しちゃったあと、ナニも知らずに目覚めたジュリエット。
 ロミオが死んでいるとわかった途端。

 あ、狂った。

 ちょ、ジュリエット、狂っちゃったよ??!

 客席から心の手を伸ばしたよ、ちょっと待て、と(笑)。
 愛ゆえになんの迷いもなく死を選ぶ、というより、狂気の域だからこそ笑いながら自分の心臓にナイフを突き立てるんだと。

 あゆっち、ぶっトバしてるなああ!!
 ジュリエットの狂気にぞわっとした。

 そうだよな、自分のせいで愛する人が死んじゃったんだもんな、心が壊れないはずないよな。
 狂った瞳で「ふたりのパラダイス」を歌うジュリエットが、めちゃくちゃ素敵だった、美しかった。……切なかった。

 このジュリエット、キムロミオの相手役で見てみてぇ!!と、心底思った。

 
 がおりは研7、あゆっちは研6。
 若者の成長が遅くなった現代、やはりこれくらいの年輪を重ねてはじめて花開くモノはあると思う。主役独占で作られるのではなく、いろんな役を経て力を溜めて経験を積んで、それゆえに輝くモノが。
 若ければそれでイイっつーのは、年配男性の感覚なのかなあ。今の時代、入団間もない下級生はほんとに幼いよ、姿もタカラヅカスキルも。歌やダンスという基礎技術は昔の人よりしっかりしてるんだろうけれど、タカラヅカスターとして「見せる」力は昭和時代とまったくチガウ。
 幼いスターに機会を与えて鍛えるのは大切だけど、偏執しすぎるのはどうかと思う。

 目を離せない、惹きつけられる「面白い!」と膝を打ちたくなるよーなスターを、舞台を、タカラヅカには作り続けて欲しい。
 さて、雪組新人公演『ロミオとジュリエット』を観て、感動したことのひとつは。

 衣装部さんって、すごい! ……だったりする(笑)。

 観る前に友人たちと喫茶店でぐだぐだやりながら、「お衣装は替わってるよねえ」「そりゃそーよ、だって本役の衣装が入るわけナイもん」「きっとちえちゃんたち、星組さんの衣装になってるわよ」と決めつけていたんですよ。
 「よかったねー、もう1着ずつあって!(笑)」と、のんきに話しておりました。

 主役の咲ちゃんは縦にはもちろん、横にも丸ぷくだし、しょうくんは縦にはもちろん、がっちり男っぽいし、がおりくんは横はともかくとして、縦には本役よりずっと大きいわけだし。
 や、実際の彼らがどうかはよくわかってないけど、舞台上から受ける印象として。
 あのミニマムな本役さんたちの衣装を着られるとは、思ってなかった。

 そしたらなんと!
 みんなちゃーんと、本役さんの衣装を着てるんですよ!!
 タカラヅカってすごいな。いろんな体格の子が着回し出来るようにしてあるんだ。

 そしてまあ、舞台上のロミオ、マーキューシオ、ベンヴォーリオの3人が……大きい。
 ちびっこトリオを見慣れた目には、すらりと長身のイマドキの若者たちトリオがまぶしくて……(笑)。←こあらさんのご贔屓は、そのちびっこトリオの中でもいちばん小さいだろう人ですよ(笑)。

 ロミオの白い舞踏会衣装はパンツに黒レースのラインが入ってるんだけど、太股部分は太く、足先に向かってどんどん細くなっていくデザインなの。
 キムくんが着ているときは、同デザインのスターブーツの間際でもレースは太いままなんだけど、咲ちゃんだとすごーく細くなってた……あのレースの太さの差が、ふたりの脚の長さ……もとい、身長の差なわけだ。
 トリオの中でも咲ちゃんがいちばん大きいので、衣装のラインの差が大きい。

 ロックテイスト黒燕尾も、がおりくんが着るとあんなにすっとして見えるのか……「狂気の沙汰」のリフレインの方で、ひとりくるくる踊るがおりくんとまっつの、スタイルの差に愕然(笑)。←だからわたしのご贔屓はその、いちばんのちびっこさんだってば(笑)。

 
 『ロミオとジュリエット』は秀逸なミュージカルであり、それゆえに役者のポテンシャルを引き出す効果があると思う。
 『エリザベート』や『スカーレット・ピンパーネル』がそうであるように。
 もともと10の力のある舞台人が、10以上の力を発揮しちゃうような。
 数あるタカラヅカ的駄作たちだと、役者がどんなにがんばってももともとの作品が悪いため8ぐらいの力しか出せなかったり。どんな駄作もすべて10以上の力でもって名作・感動作に変えられる人は天才ってやつで、そうそういないので、そんな特殊な人のことは置いておいて。
 『ソルフェリーノの夜明け』や『ロジェ』で10以上の力を出せなんて無理は言わない(笑)。ただ、『ロミオとジュリエット』なら、ソレも出来るだろうって思うんだ。

 ベニーの新公『スカピン』が近年まれに見る大盛り上がりだったように、作品がキャストを底上げしちゃうことがあるんだ。
 もちろん、最初から容量のない人はどんだけ作品が良くてもダメかもしんないが、本人も周りも「オレのMaxは10」と思い込んでいたけれど、実は15まであったとか。今まで誰も気付いていなかった未知のスペックが開花するとか。
 そーゆーことを起こしてしまう力のある作品だと思うの、『ロミジュリ』も。

 だからとても期待して観劇した。

 で。
 ……期待が、大きすぎたのかもしれない。

 わたしが勝手に夢見ていたのは、そのポテンシャルが作品力にのってぱあっとはじける・花開くこと。
 なにかしら未知の魅力に出会えること。
 良いのか悪いのかわかんないけど、なんかすげえもん観た!!と無我夢中で拍手すること。

 手堅く地味に小さくまとまった「良い新人公演だわったね」というデキ……を観たかったわけではなかったんだな。
 あとにして思えば。

 構成演出が酷すぎて、物語に集中しにくかったこともあるけど、「爆発的なナニか」「よくわかんねーけど、すごいもん観た!」と思うよーな新公ではなかった。

 そして、しみじみと「この作品の歌って、ほんとに難しいんだな」と思った。

 咲ちゃんにしろりんきらにしろさらさちゃんにしろ、歌ウマで通っている人たちだ。カレンちゃんだっていの莉ちゃんだって。
 だけどその歌唱力でどーん!とねじ伏せてくれる、聴き惚れさせてくれることはなかった。
 彼らもものすごーく歌い込めばもっともっとうまくなるんだろうけど、なんか一様に「足りない」歌声だった。
 や、もちろん、ヘタじゃない。ふつーにうまい……及第点ってやつだと思う。
 でもそれは、客席で聴いていて鳥肌がたつよーな、身震いするよーな「ドラマ」のある歌声ではなかった。

 1回きりの新公だからこそ、そーゆー「奇跡」が起こるかもしれない、と思ってわくわくしてたんだけどなあ。
 なんつーかものすごく、真面目な新公だった。コケてもいいから大技にチャレンジ!というより、絶対失敗しない規定演技をきっちりやります的な。
 スタンドプレイしろってゆーんじゃなくて。うーん。

 自分たちで枠を作って、その中で収めることを第一目標にした新公っぽい印象を受けた。

 やはりそれは、主役の印象が大きいかなあ。
 ロミオ@咲ちゃんは3回目の新公。本公演やDCでも主要キャラを演じている、すでにベテラン新人っつー人。
 崖っぷち感より慣れの方が大きいのか、「ロミオってこんな感じ」という想定内のロミオをきっちり演じた。
 歌ウマさんだし、なにもかも平均点以上ある人だし、ナニが悪いっつーわけでもないんだが……つまんなかった……。

 この間のジュリアーノ@『はじめて愛した』のときの方が、面白かったなあ。

 面白いかどうかで語るなっつーもんかもしれんが、エンタメですよ、「スター」ですよ、なんかわかんないけど目が離せない!という魅力を、わたしはアタマ悪く「面白い」という言葉でくくってみたりする。

 せっかく『ロミジュリ』という大作なんだもの、もっと「面白い」咲ちゃんの姿が見たかった。
 失敗しない手堅くまとめた咲ちゃんではなく、大失敗しちゃったけどすげー面白かった咲ちゃん、が見たかったなあああ。
 
 いや、若々しくてかわいいロミオでした。適度に甘くて、悲劇的で。ふつーにロミオでした。……ふつーでないロミオでも良かったのになー。←しつこい。
 ナニこの構成……。

 雪組新人公演『ロミオとジュリエット』、1本モノを短縮して上演するのだから、いびつになるのは仕方ない。
 『エリザベート』も『スカーレット・ピンパーネル』も、盛り上がり最高!のオープニングをわざわざカットして、テンション上がらないハンパな場面からスタートして、観客を冷めさせ、かつ演じている下級生のハードルを上げる不親切設計が通常。

 それにしたって、コレはないやろ……。

 あのかっこいいオープニングがないだろうことは、覚悟していた。どんだけかっこよくて観客の期待を煽り、劇場の空気を暖める効果があっても、所詮「状況説明と人物紹介」に過ぎない場面なので、カットしてもストーリー的には問題ない。
 幕が開いたらナレーションで解説されつつ、ロミオのせり上がり→銀橋ソロだと思っていた。

 そんなカワイイモノではなかった。
 いきなり第7場舞踏会からスタートだったんだ。

 いちおーその前に、愛@あすくん、死@レオくんがふたり一緒にカーテン前センターにせり上がり、愛と死のダンスを披露。
 そこに神父@ホタテくんのナレーションでモンタギューとキャピュレットが憎み合って大変、そして今夜はジュリエットがお金持ちのパリス伯爵@まなはると見合いさせられる仮面舞踏会が開かれること、そこにモンタギューのベンヴォーリオ@がおりくん、マーキューシオ@しょうくんが潜り込もうとしていること、ジュリエットの従兄ティボルト@りんきらが何故か不機嫌であることを説明。

 本舞台カーテン前は、愛と死が踊り、主要人物たちは上手花道にナレーションに名前が出ると登場、すぐにいそいそと消えていく。
 舞踏会場面だから、衣装は全員白。そしてナレーション解説のみで一瞬、しかも花道。
 ……無理です。これだけでキャラクタ認識しろなんて。
 わたしはそれぞれの顔も、役の衣装もわかってるからイイけど、そうでない人にはなにがなんだか誰が誰だか状態のはず。

 そしてさらにわけわかんないことに、このナレーションがおとぎ話ちっく。
 本公演のナレーションが感情を廃して淡々と解説して壮大感を出しているのに反して、「あらあらティボルトくんはご機嫌斜めです、どうしたのかな?」みたいなファミリーミュージカルのナレーションっぽい。

 承前であっけにとられているところに、カーテンが開き舞踏会スタート。

 ええ、こっからは本公演と同じです。

 ……同じなんです。
 つまり、全員白衣装、全員仮面着用。

 ちょっと待て。

 はじめての場面がコレ?!
 誰が誰だか誰ひとりわからない状態で、コレ?

 出演者全員って勢いの人数、モブも主役も入り乱れてごちゃごちゃ。
 ヒロインのはずのジュリエット@あゆっちがどこにいるのか、主役のはずのロミオ@咲ちゃんがどこにいるのか、いやそもそもいつどこで登場したのかも、わからない。

 新公定番の「主役が登場したら拍手」もなかった。そんなもん、入れる隙もない。
 
 主役が誰かもわからないまま、長々と舞踏会が続く。
 画面はいつもごちゃごちゃ、なにかしらどたばたしているが、それでナニが起こっているのかわからない。だって全員同じ衣装に同じ仮面、誰が主役かヒロインか、主要人物かもわからないのに、全員がナニかしら動き回っている舞台で、ナニをわかれと?
 よく見れば仮面にも個性があるし、主要人物は豪華衣装なんだけど、そんなもん咄嗟にわかるかっつの。いきなり何十人と登場されて踊られて、そこまで区別できないって。

 本公演の舞踏会はすごく楽しい場面なのに、新公では盛り下がり一直線。
 つか、苦痛だった。
 いつまで続くのコレ。
 お芝居を観るつもりで着席したのに、本編がはじまるまでに観るつもりのなかった別のショーをえんえん観せられている気分。
 早くお芝居観させてよ、『ロミオとジュリエット』を観させてよ。

 物語がはじまったのは、新公がスタートして何分も経ったあと。
 ロミオとジュリエットが舞台でふたりきりになり、「天使の歌が聞こえる」を歌い出してから。
 ここでよーやく仮面を取るし。

 しかし、盛り上がらない。
 キモチが切り替わらないんだ。
 アンタたち誰?状態だし。

 それまでに蓄積されたストレスを、どう処分すればいいのか。

 そうやって、キャラクタにも物語にも入りきれないまま、次はティボルトのソロ。こちらもすごーく唐突。
 ああ、「ティボルトは何故か不機嫌です(笑)」って解説されてたな。でも(笑)付きの解説されたあとに「みんな大人が悪いんだ」と歌われてもな……なんか変な人。

 こんなひどい構成の新公、はじめて観た。

 いろいろ物申したいカットぶりの新公はあった、これまでも。
 しかし、ここまでひどいのははじめてだ。

 主役やヒロインが登場しても観客が気付かない演出ってナニ?
 彼らがどこでナニしてるかわからないまま何分も続くってナニ?

 そしてそもそも「新人公演」とはナニか?を、考えさせられる構成だった。

 もちろん目的は新人の育成、下級生の適性のお試しの場だろう。
 将来のトップスターは大劇場の真ん中に立たせることで経験を積む、スキルを磨く。実際に真ん中に立たないと得られない物はあるし、反対に向き不向きも顕著になる。
 スター候補生だけでなく、脇を支える人々の育成も必要。出演者全員ひとりひとりがこの経験を血肉とし、成長していく……のはわかる。

 しかし。
 このいびつな構成はいったい……?

 主役や主要人物がわからないまま進む序盤に加え、2番手役であるマーキューシオの見せ場カットにより、「スター」スキルの研鑚の場が削られ、なのに専科役のモンタギュー父の見せ場はまるまる残っている。
 星組版では2番手役だったティボルトも、1幕の大半がカットされているため出番と見せ場はさらに減り、途中で死亡・出てこなくなるためおいしいとは言えない。

 ナニがしたいの?
 次代を支える「スター」を育成したいんじゃないの?
 ならば「スター」としての経験を積める構成にするべきじゃないの?
 おでぶおばさんや、しぶいおっさんを演じられる人たちを育てるのが目的で、この新公を上演したの?

 いや、乳母役は娘役2番手の役なので、カット無しは妥当だと思っているし、専科さん的な役割を軽んじているわけではなくて。

 朝風くんスキーなわたしは、カットされるに違いないと思っていたキャピュレット父のソロがまるまるあってうれしかったけれど、彼に1場面与えているヒマがあれば、マーキューシオや若者チームがオイシイ場面を作れと。
 ソレが「タカラヅカ」だろう、と。

 結局主役のロミオしかオイシイ役はなく、咲ちゃんだけを目立たせる目的で作られている?
 ヒロインのジュリエットも、たった1曲の銀橋ソロ削られてるから、あとは芝居歌しかないのな。

 そうやって主役だけを目立たせたいというならソレはソレでアリだろうけど、それなら最初の「主役が誰でどこにいるかわからない」場面をえんえんやるのはなんなんだと。
 ファミリーミュージカル調のナレーションで愛と死が踊るのも、わけわかんないし。

 目的のわからない、迷走しまくった構成にストレス溜まりまくりでした。

 
 演出家バカなんじゃねーの? というのがいちばんの感想ですが(笑)、出演者への感想とは別です、もちろん。
 キャストについては別欄で。
 基本まつださんはあんまし芝居の変わらない人だと思うんだけど……ベンヴォーリオ役に関しては、その日によって印象が変わる。
 ちなみに、コレを書いている1月18日、新公の日の本公演ベン様はクール成分多めでした。ロミオを責める「もう友だちじゃない」とか、冷え冷えしてこわかったよー。

 『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつのツボ語りの続き。

 10場、「綺麗は汚い」場面。
 ここもまた見どころだらけツボだらけでこまる。書ききれるとは思えない、きっとぼろぼろ抜け落ちる。

 ここのベン様は、モンタギューチームの影番@ヒメとのダンスからはじまる。

 プログラムの写真はかわいいのに、舞台のヒメはそりゃーもーコワイです。何故あんなメイクを……!(笑) 所作も不良少女というより、スケ番です、長いスカートに木刀持ってガム噛んでるイメージ。ムカついたとき、ドンって床踏みならすんですこの子、怖すぎます(笑)。
 敵と対峙していないときは、ファニーなおねーちゃんって感じ。キャピュレットチームの影の女王@杏奈ちゃんがお色気美女なのとは正反対なキャラ。
 でもベン様は臆することなくダンスしてます、たのしそーに。

 街角で、モンタギューチームみんなできゃーきゃー遊んでいる。
 そこへ現れる年期の入った軍艦……ジュリエットの乳母@コマくん。

 この乳母との絡みがいちいち素敵で。

 相方のマーキューシオ@ちぎくんがスカートめくりなどの悪ガキ系の絡み方をするのに対し、ベン様は色男系です。遊び半分に口説きに入る。
 だから「粗忽者のベンヴォーリオと女ったらしのマーキューシオ」ってのは……以下略。

 ロミオ@キムを捜している乳母に対し、「僕こそロミオです」としれっと嘘を付いて迫るわけなんだが……。
 ナル入ったわざとらしいキメ顔に、あのイヤミ貴族的な大仰な物腰。
 初日近辺は「こんな男」呼ばわりにマンガみたいな「がーーん」という顔をしてショックに後ずさっていたけれど、最近はそこまではやってない。ショックはショックだけど「なんだよ、くそっ」ぐらいの感じで引いている。

 それでもめげずに、「色男」攻撃。
 ダンスしたり、ほっぺにちゅっとやったり、あくまでも男としての魅力勝負。ナニ、「こんな男」呼ばわりされたから? 手玉に取るまであきらめないっての?(笑)
 荷車に坐った乳母の片脚を肩に掛け、反対に乳母にいじられているまっつがまた、イイ顔してる……おねえさまに遊ばれるのをヨシとする悪ノリしたエロい顔。
 まっつの横顔スキーとしてはたまりません、横顔キレイ、その上表情エロい。

 ここの場面が楽しいのは、乳母に対しての色男ぶりと、相棒マーさんに対しての子犬的じゃれ合いっぷり、その両方を楽しめ、美声まで堪能できるから。

 乳母にしてやられたマーさんがわんちゃんよろしく四つん這いでぴょんと跳ねてくるのをベン様が両手で受け止め、その後ふたりでいちゃいちゃ。
 マーさんの髪を撫でたり(犬を撫でる手つき)、マーさんに抱きしめられたり(あくまでも、受動態)。
 男と女の恋愛模様の歌の中では、マーさんと恋人同士の真似事もしちゃう。もちろん?ベン様が女役、内股でシナをつくってマーさんに寄り添う。マーさんは男らしくベン様の細い腰を抱いてるのー。
 この女役のときが、なりきってキモいまばたきをパチパチしていることもあるし、ふつーにかわいく笑っていることもある。あんまりやりすぎてキモくなってると、マーさんが「おえっ」て感じに突き放す……。ベン様、ほどほどにね(笑)。

 3回目の舌出しもここのはずだが、最近はめっきり見かけない。プロローグではエロ、舞踏会ではがきんちょと色のチガウ舌出しをするベン様、ここではかわいこちゃんだったよーな。ふざけて女の子相手にやってたはず。ああ、もう記憶が……っ。

 男たち全員がイケメンポーズをキメる場面もあるんだが、そりゃもおベン様もノリノリでキメてます。
 たまに遊びすぎててタイミングが遅れ、ポーズできずに流れちゃったりもする……そのときの「乗り遅れた!……なんてことないよ、もともとこうするつもりだったんだし!」という誤魔化しっぷりも素敵です(笑)。
 ああ、あのしれっとした誤魔化しっぷり、ナニかに似てると思ったら、猫に似てるんだわ。猫って失敗すると「ナニ? なんのこと?」って誤魔化すよね? ソレに似てる……(笑)。

 乳母をかまうのにあきると次は、乳母のお付きのかわいこちゃんピーター@ハウルをいじりだす。
 ピーターくんがヘタレ美少年なだけに、年上の不良少年ベン様がちょっかいかけると、余計な心配しちゃいますな。ベン様、手加減手加減、そんなウブな子、食っちゃったらダメだよー。
 まるで女の子にするみたいに、くるくる回して踊っちゃうんだもんよー。

 そしてみんなで銀橋。ピーターをいじりつつ、センターで乳母とマーさんと合流。
 他のみんなは客席降りで歌い踊っているわけだが、銀橋から目を離せない。

 乳母が主旋律をがんがん歌い、他のみんなはリフレインのコーラスをしているんだが、この銀橋で突然ベン様が「Oh~~」とオブリガートはじめるのだわ。
 これがまた、イイ声。
 めっちゃ楽しく盛り上がっているその最高峰なところで、がつんと響く声。

 たまりません。ほんと。
 目に楽しく耳に楽しい、乙女心も腐女子心も萌え心も、なにもかも一気に満たしてくれるすばらしい場面です。
 
 最後に銀橋センターで、乳母とマーさんと3人でハートを作るところとか、かわいすぎる……!

 ここまで乳母に尽くした(笑)あと、本物のロミオと比べて「やっぱりアンタたちとはチガウ」と言われ「ああっ?!」となるとこや、「おいロミオ、そのおばさんをお持ち帰りか?」の台詞の言い方が好き。「お持ち帰りか?」の「か?」で語尾が揶揄っぽく上がるとこがいいのー。
 そしてロミオの趣味を疑いつつ、ピーターくんをお持ち帰りする、と。
 ベン様、マーさん、その子にワルイコト教えちゃダメだよー(笑)。

 
 1幕の出番はここまで。
 オープニングのダークさをのぞけば、1幕のベン様はとにかくかわいい。マーさんとのコンビがかわいすぎる。

 モンタギューチームのカラーは青だけど、ベンヴォーリオの衣装は黒。これは星組版でも同じ。
 星組のベンヴォーリオ@すずみんはロングの黒コートだった。でもって彼は、このコートをいちいちばさりばさりと手でひるがえしていた。や、ベン様だからではなく、これは涼さんの標準スキル。昔っからマントやコートの裾は、いちいちひるがえすヒトですから(笑)。
 ひるがしはすずみん固有スキルだけど、同じ役で同じ衣装の場合、まっつもアレやるのかしら……と、まっつメイトと共にわくわくどきどきしていたんだけど。

 衣装違った……ロングコートぢゃなかった……っ。がっくり。

 まっつベン様は燕尾ジャケットです。ハードテイストにじゃらじゃら光り物付けられてるけど、基本は黒燕尾。
 すずみんのコートはプログラム写真でのみ着用。

 そうだよな、まっつの身長だと足首まであるロングコートは重すぎるよな……。
 や、すずみんもれおんくんとベニーに身長合わせるため、ひとりだけものすごいヒール着用だったけど。(れおんとベニーはローヒール)
 まっつはヒール履いても……ゲフンゲフン。

 燕尾はまっつに似合う衣装のひとつであるので、それをチョイスしてくれたイケコに感謝です、はい。
 ところで、この作品の「死」って、女性だよね?

 新人公演も迫っていることだし、取り急ぎ『ロミオとジュリエット』キャスト感想の続き。

 象徴的な存在として、ダンスと身体表現でテーマを表す愛@せしると死@咲ちゃん。
 初演の星組では愛と死は男と女、あらゆる意味で対照的な存在だったけれど、雪組版ではチガウ。
 愛も死も、両方とも女性だよね?

 死は男に見えない。
 ふつーに女の人だよね。
 それも、カラダの大きな、男装している女性。男役。

 対する愛は、これみよがしに「女」であることを強調した女性。

 「男役」と「娘役」がいる、宝塚歌劇団を暗喩しているよーな。

 抽象的な存在である以上、愛と死にナニを見るかは、観客にゆだねられている。
 わたしには、死が女性にしか見えないし、また愛と対等だとも思えない。

 愛の圧倒的な存在感の陰になり、いるのかいなのかわからないのが死だと思う。

 死は、物語を統べる存在ではない。
 物語が生み出した澱みだ。

 物体と光源があれば、そこに陰ができる。それが死。

 死自体に感情はないし、意志もない。なにかしら表情を浮かべているとしてもそれは、彼女がどうこう考えているのではなく、そのときの「世界」に在るものがそう映っているだけ。

 この『ロミオとジュリエット』世界において、もっとも透明で美しく、それゆえに澱んでいるのは、ロミオ@キムだ。
 繊細すぎるモノは、この汚れた世界では生きられない。ロミオは破滅をその内にに秘めている。
 ロミオが生み出した陰、世界の澱みが生み出した陰、それが死だと思った。

 ぶっちゃけ、咲ちゃんが足りていないのか、そーゆーところも含めてイケコが狙って演出したのかは、わかりません。
 男役であることとか星組版の死から考えれば、あまりにもアレな「死」ぶりなので(笑)。
 でもこれでOK出ているってことは、それでいいってことで、男役だとか星組版の死だとかいう先入観を捨てて見れば、男装の女性、ボーイッシュな大柄女性であり、存在感なく気が付いたらそこにいる不気味さ、感情や意志の見えなさも、すべて説明がつくってことで。

 ロミオの絶望感が全編に渡って大きく漂っているこの物語には、裏主役のように君臨する死、トート閣下は不要。
 トートなんかいなくても、十分暗いから(笑)。
 死は意志なんか持たなくて、ただなんかそこにいて、しどころなくただ「在る」だけでいい。
 ファンタジーというよりも、ある意味ホラーな存在でいい。
 トート閣下は「ファンタジー」だよねええ。星組の真風トートは「タカラヅカ」らしいファンタジックなキャラクタだった。

 死がただ「在る」だけの存在である分、愛の存在感が強い。
 ロミオとジュリエットの運命の恋というよりも、ロミオの闇の方が印象強いっつー気がしないでもないこの物語だからこそ、愛はあざやかであるべきだ。

 せしるが美形であることはわかっていたけれど、女性となった彼は息をのむほど美しい。
 毒のある美しさだと思っていたのに、いや、もともとソレがあるからこそ、ソレすら超えて慈愛の美しさを表現しうるのか。

 愛の美しさ、しなやかさが、この絶望的な物語に光を射していると思う。

 ……ただしこの愛、死とは違い、感情も意志もあるようなので。
 世界と異質な存在、死すら彼女の一部のような。
 神とは残酷なものである、という証明のように、彼女こそが「トート」なのかもしれない。

 
 なんて、とりとめもなく考えつつ。

 実はこの愛と死を見ながら、ナニか思い出すなーと思ったら、『無限のリヴァイアス』のネーヤだ(笑)。
 姿は愛が近いけれど、存在は死の方がネーヤっぽい。
 舞台の上の人々の意志を映して踊る、ヒトでない存在。

 
 ……『無限のリヴァイアス』を雪組でキャスティングしたらどーなるだろう……。キムやちぎはともかく、まっつがどのキャラになるかわからん……(笑)。
 順番に当てはめると昴治@キム、祐希@ちぎ、イクミ@まっつ、ブルー@ヲヅキか。イクミの二面性と狂気はキムで見たいけどなー。

 
 余談。
 「タカラヅカ・ステージスタジオ」の衣装で、わたしたち素人が着ていちばんサマになる衣装はナニか。
 宝塚の舞台衣装のレプリカを着て写真を撮れる、変身写真館ね。
 いろんな衣装があるけれど、所詮素人が着てジェンヌさんみたいにかっこよくなれるはずがない。
 メイクサービスを受ければまた別なのかもしれないけど、そうでなくてただ衣装を着た、標準装備の小物を貸してもらっただけの状態で、いちばん底上げされて見える衣装って?

 それは、トート閣下です。

 シシィの豪華ドレスでも背負い羽根尽きドレスでも燕尾でもオスカル様でもなくて。
 トート閣下のコスプレなら、どんな人でもサマになる。ある程度、カタチになる。

 あの白金髪カツラで丸顔だろーと女顔だろーとラインが隠れるし、なによりダークカラーの口紅(貸してくれる)で、誰でもなんとなーくそれっぽく見えるそうだ。
 ステージスタジオで以前友人が働いていたのでな、教えてくれた。現場の経験から(笑)。

 だからナニってもんだが、トート閣下つながりで、余談(笑)。
 おかしいなあ、1日が初日だった公演、どーして15日の段階で観劇回数が10回超えるのかなっていう。
 こんな人生間違ってる、と思いつつ、「今だけ、この公演だけ」と言い聞かせながら暴走してます(笑)。

 『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつ語り、その3。

 7場、仮面舞踏会。
 ドレスコードが白のパーティなので、潜り込むモンタギュートリオもみんな白。
 ベンヴォーリオは相方のマーキューシオ@ちぎと一緒に上手から登場。

 なんでここ、ロミオ@キムは一緒ぢゃないのかなあ。演出上仕方ないとはいえ、マーベンの2個イチ感が上がるというか、このコンビ好き過ぎる(笑)。

 あまり乗り気でないゆえに準備にもたつくロミオに業を煮やし、「先行くぞ!」とやったのかな。オシャレもばっちりなマーベンコンビ。ふたり一緒に選んだんだろうなって感じがくすぐったい衣装。……でもわたし、サルエルパンツってあんまし好きぢゃない……(笑)。

 やってきたはいいが、もちろん彼らは招かざれる客、招待状があるわけじゃない。入口でキャピュレット家の使用人に止められる。
 なんとか中へ入ろうともがくバカコンビ。
 そこへ現れる、パリス@ひろみ! 来たぞ、救いの神!!
 パリスがアホボンだってのは、ヴェローナ中の共通認識なのか。すかさずパリスに取り入るふたり。
「これはこれはパリス伯爵」「お久しぶりです」「ん? 誰だっけ?」「お忘れなんですか? 私たちですよ」「ああもちろん忘れてないとも、キミたちだよね、はっはっは」……てな会話が聞こえてきそう。
 そんなことをやってるときに、天敵ティボルトがこっちにやってくる。あわててその場にしゃがみこむふたり。

 この、ティボルトの視線を避けて坐り込むときの、ベン様の手つきが最高。
 地味に大好きだココ。すげー萌える。
 なんつーんだ、わきわきと女の子みたいに手を口元にやってるのね。危ない危ない、てな動作なんだけど。
 コレ、かわいい。かわいすぎるっ。すごい好き!!

 この間にアホボンパリスは使用人と話しており、どさくさにまぎれてマーベンコンビは「パリスの連れ」として門番突破。

 この突破したときにマーベンコンビが「やーいやーい」てな顔をする。
 ベン様の2回目の舌出しが拝めるのはココ。運が良ければですが。してないことも多い。
 オープニングでティボ相手にダークにエロエロに舌を出すのとは違い、いたずら小僧全開の無邪気な「べろべろばあ」(笑)。
 オープニングの舌出しほど下手を向いてるわけじゃないが、上手端でやるから、下手からの方がかえって見やすいと思うんだが。

 そしてコンビは階段を上がり2階へ。まずは敵情視察、全体を見回している。

 この2階にいるふたりがまた、めちゃくちゃかわいい。
 
 2階席の後方だと、この舞台上の2階が見にくいので、1階か2階前方ですよ、お勧めなのは。当日Bだとろくに見えん(笑)。←経験談

 上手から下手へ移動していくんだけど、真ん中を過ぎたアタリがいちばんフリーダム。
 アドリブ場面なので、ふたりで毎回好きなことやってる。
 わたしはダンスしているのがいちばん好きだなー。
 大抵まっつが男役で、ちぎが女の子でくるくる回されてた。でも1回だけ逆も見た、「あ、まっつが回されてる!」って。
 楽器演奏していたり、くねくねしていたり、意味もなくスキンシップしていたり、こいつらナニっっ!!ってくらい、かわいい。

 さて、平舞台に降りてきたふたりは、当初の目的「女の子たちをからかって捨てる」を実行する。
 ベンヴォーリオは降りてきてすぐに、さっさと女の子にコナかけてる……マーキューシオはチガウのに。

 ここで愉快なのは、ベン様にちょっかい出された女の子たちが、みんな正しくその気になっていること。
 仮面で顔はわからない、なのにちょっと声かけるだけで女の子が目をハートをする、って、どんだけ色男設定なん、ベン様。そうか、声がイイからかっ? あの声で口説かれたらそりゃ腰くだけるわ。

 ベン様は男連れの女の子をひとり声かけたあと、ダンスの順番待ち、マーキューシオとふたりでセンターで踊って仮面を取ってにっかり。

 で、そのあと本格的に行動。
 つまり、キス攻撃。

 男からパートナーの女の子を奪い、がばっとキス。
 立て続けに3人。

 キスされた女の子が、みんな「ぽわわ…ん」となっているのが、もお(笑)。

 このキスしているベンヴォーリオ、まったく無表情で義務的にやっているときと、口角上げてにんまりしているときとがある。
 どっちも萌え。
 いや、冷たい顔は今までも見ているから、キスしてにんまりしている薄い唇の方が好きかなー。
 なにあのワルイカオ!!

 んで、ベンヴォーリオがこうやって次々女の子をオトしている間、言い出しっぺのマーキューシオがナニしてるかと思うと……スカートめくり……。
 オトしてる女の子の数は、絶対ベン>マー。
 マーさんがキスしたのひとりだけだっけ?
 マーさんがしているのは「女の子を誘惑」ではなくて、「女の子にイタズラ」という、小学生のガキレベルに思えるんですが……それでも声に出して「女! 女!」と騒ぐから「女ったらし」と思われてるのかな?
 声に出して騒げる分、子どもだっちゅーかね。

 またしてもティボルトの視線をのがれて、上手の人垣の後ろに隠れ、隠れたあとにちゃっかり女の子ひとりお持ち帰りするベン様。
 女の子と一緒に退場していく……別室でナニしてるの? ねえ??

 舞台奥へ去ったのに、再登場は上手袖。マーさんと一緒。
 リボン芸人たちに拍手。

 そうこうしているうちに、下手から銀橋でロミオとティボルトがモメている。それに気付いてマーベンコンビも銀橋へ。

 ふたりしてロミオを守る、その使命感が素敵。
 真っ先に飛び出してティボルトに対峙するマーキューシオ、それでもなお、さらにロミオを後ろへ下がらせようとするベンヴォーリオ。

 ロミオは君たちのお姫様ですか?

 プリンセス・ポジションの友だち。……って、ふつーに少年マンガでもアリだから、実際の男社会にありがちなんだろうけど、目の当たりにするとウケる。
 いいなあ、愛されキャラ・ロミオ。

 
 舞踏会だけで1欄使っちゃったよ……続く。
 『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつ語り、その2。

 3場銀橋にて、夢見る夢子ちゃんロミオ@キムを捕獲するベンヴォーリオ。
 ここもものすごーい道化喋り。

 かわいいけど、それほど好きなわけでもない……まっつの若作りの違和感がいちばんキツイ場面というか。(若作り言うな!)
 ロミオの二枚目ぶりを強調するために、ベンヴォーリオはこういう演出なんだろうなと思う。
 オンナの話にニカニカ興味津々、先走ってみたり、説教してみたり、こーゆーところが「粗忽者」なんだろう。
 ……でもベンヴォーリオがそーゆー言動を取るのはココだけで、ココがかなり浮いてるのはどうかと思う(笑)。

 くしゃみがやたらイイ声で笑える。そして、ロミオを捜す声がまたイイ。……ああもお、あの声大好き(笑)。

 
 6場の市街。モンタギューチーム勢揃い。
 「ここにいたのか」と、ロミオを捜して現れるベンヴォーリオ、よっぽどあちこち捜し回ったのか、見つけるなりぺたんと膝を突き……。
 ロミオの脚を掴み、そのまま地面に転がってしまう……のだが、最近どんどんロミオが冷たい(笑)。
 初日近辺はもう少しちゃんと、脚を掴ませてくれていたと思う。でも回を重ねるごとにろくに掴ませてもらえず、ベン様ひとりぺしゃっと潰れている(笑)。

 「お前はいつもロミオのあとを追いかけてるな。ロミオはまるでお前の王様だな」……って、文字だけで見ると相当の萌え台詞だ(笑)。
 実際はそーゆーBL的な気配のない、健康かつ幼稚な様子で言われる。
 マーさんにこう言われたときの、ベン様の子どもっぽいぶーたれた顔はかわいい。「なんだよソレ!」みたいな反論顔。

 ロミオはベンヴォーリオの王様じゃない。
 だけど、崇拝の対象ではある、のだろう。

 たぶんベン様は感じている。ロミオがどこか自分たちとはチガウ次元に立っているって。
 チガウところにいる人だから、彼とこの世界をつなぐ役目が必要で、自分こそがそうなんだと……無意識にでも思っている、そーゆー立場の役だと思うんだ、ベンヴォーリオって。

 いつもロミオのあとを追いかけている、の「いつも」がイイですな。
 そうか、いつもなのか。
 キムのロミオはある日ふと消えてしまいそうな、別次元へ飲み込まれていきそうな不安感がある。
 ロミオを守るために、得体の知れないナニかに彼を奪われないために……ベンヴォーリオがロミオを手の届くところにおいておきたくてあがいているのだとしたら、とても切ない。

 や、全体的に彼らはみんな子どもなので、そんなことは気づきもしない、無意識の話ですが。
 でも子どもだからこそ、敏感に察することはあるよね。

 そして、盛り上がりナンバー「世界の王」へ。

 ロミオの歌声を受けて、まずベンヴォーリオが歌う。
 その声の良さもいいけれど。

 いちばん血がざわざわして昂揚したのは、コーラスになってからだ。
 ベンヴォーリオがオブリガートをはじめたとき。

 うわ、スイッチ入った!
 実際、マイクのスイッチ入ったのかもしれないが(笑)、まっつの声がどーんと響いた瞬間の感動。

 近年はソロで歌わせてもらうことも多くなった。でもソロはソロで完結しているし、コーラスになれば多重のなかのひとり。『Red Hot Sea』の幽霊船コーラスは素晴らしかったけれど、まっつひとりの声が前に出る類いのコーラスではなかったし。
 彩音ちゃんMSで声を重ねたときにすごく響く人だということはわかったけれど、それはあくまでもホテルの宴会場という小さなハコでの話。
 大劇場でソレを披露することがあるなんて、そして完璧にやってのけるなんて、想像したこともなかった。

 主旋律と絡み合いながら、対になる旋律をガンと入れる、響かせる。

 踊り、暴れながらも背をそらし、全身を使って「音」を出している。奏でている。
 まっつの小さくて華奢なカラダ全体が動いているのがわかる。弾んでいる、はじけている、外に向かってうなりを上げている。

 そんなまつださん、見たことがない。

 たしかに役割的にはじめてっつーのもあるが、それ以前に、「未涼亜希」という人が変わった気がする。
 それをいちばん顕著に思い知らされたのが、このときだ。

 だから初日は心臓ばくばくして、「ナニが起こってるの」「あの人にナニが??」とうろたえまくった。

 歌いながら、キムちぎまっつが銀橋に来る。
 この3人。
 ああ、この3人でこれからやっていくんだ。

 まっつは変わり、ここに居場所を見つけた。
 キムくんが笑っていて、ちぎくんが笑っていて。ここに居場所を作ってくれている。そこでまっつも楽しそうに笑っている。

 ああほんとうに、組替えしたんだ。

 感傷とか安堵とか過去とか未来とか、いろんなものが押し寄せてきて、涙なしにはいられなかったよ、初日。

 公演も中日を迎えようかって今はもう、大好きな楽しい場面ってだけだけど。

 この元気で楽しいナンバーのあと、打って変わって妖しいナンバー、「マブの女王」になるのがいい。

 ここはマーキューシオのソロなので、ベンヴォーリオはダンスのみ。
 モンタギューチームのひとりとして仮面のダンスをする、その動きが素敵。

 ここでだっけ、ひとりメンバーたちの後ろに身を引き、髪をいじるの。
 長い後ろ髪を直す感じで、必ず手をやる。無造作に見えてナル入ってる感じがたまらん(笑)。
 ひとり群れをはずれ、またナニ喰わぬ顔で戻る。
 彼の性格というか、立ち位置が見えてイイ。

 芝居部分は初日とかはここでもかなり道化的で、ロミオを捜していたハクション銀橋的な演技だったんだけど、どんどん落ち着いて、大人びてきた。
 「女の子をちょっとからかって退散するだけ」と悪い遊びの提案をするマーさんに、ドキマギする芝居をしていたんだ、初日あたり。
 まるでベン様も相当うぶな男の子、みたいに。

「今日家に誰もいないから、兄貴が隠してたエロDVD鑑賞会やるぞー」と言い出した女ったらしのマーさんに、「そういうの興味ナイ」という優等生ロミオくん、「オオオオレは行くぞっっ」と、普段は悪ぶってるけど実は未経験のベンくん、声がうわずってます、みたいな感じだった。
 これこそが脚本通りの「女ったらしのマーキューシオと粗忽者のベンヴォーリオ」なのかもしれないが……途中からベン様は声をうわずらせることなく、ふつーに「面白そうだから行く」という芝居に変わった。
 いや、ほっとしました。ベン様がチェリーボーイだとオープニング他の大人び方との差が微妙なので(笑)。

 
 続く。
 粗忽者のベンヴォーリオと、女ったらしのマーキューシオ。
 そう脚本にはあるけれど、逆じゃないのかなああ。
 まずマーキューシオは女ったらしではないでしょー? アレは女の子にもちょっかいかけて喜んでるガキ。スカートめくりして喜ぶ類いの。
 ベンヴォーリオの方がよっぽど女性経験豊富に見えるし、粗忽なのはどう考えてもマーキューシオでしょ、あのトラブルメーカー(笑)。

 神父様の前ではベン様相当猫かぶってんだな、と思うと萌えですわ(笑)。

 結局ベンヴォーリオ@まっつの歌声は朗々と響いていて、弱弱だったのはわたしが見たマボロシだったようです。
 ファルセットもきれいに響き、オブリガートも迫力っす。歌い上げるときのカラダを弓なりにそらす姿も健在、「腹筋が割れてきたほどの歌声@まっつさん談」を堪能できます。

 ちょっくらここで、『ロミオとジュリエット』のベン様のツボ語り……つーか、メモ。

 オープニングのナレーションはベン様ではなく「まっつ」なので、ベン様ツボとは別……アレを「ベンヴォーリオ」としてやってくれたら萌え死ぬんだけど(この物語の語り部が、生き残ったベンヴォーリオってことになるっしょ?)、あえて個性を廃し「ナレーション」に徹している・ベンヴォーリオとは別人の声としている、とわたしは思った。
 ベン様ではないが、もちんあのクレバーな声も大好きだ。
 しかし小池せんせはまっつの声が大好きなんだろうな。(握手! わたしと同じねっ)

 
 ベン様登場は1場から。
 上手花道を通って、2個イチ扱いのマーキューシオ@ちぎくんと一緒。

 あ、ベン様ウォッチは下手がお勧め!! 彼の重要な表情はすべて下手からでないと見えません(笑)。

 ベン様の舌出しは大公閣下登場してすぐ、ティボルト@ヲヅキ相手に舞台中央でべーっとやります。めっちゃ冷え冷えした眼。
 ヲヅキいいなあ、毎日あの顔見られて……。(やられる方はたまったもんぢゃなかろう)
 ただ、タイミングなのか気分なのか、やらないときもあり。そのときはただガン付けるだけに留まる。

「え、ソレいつもじゃないですか?」と、返したまっつメイトにツボった……そう、無言のガン付けってまっつ的標準装備というか、ふつーにしててもそう見える人なのにって(笑)。

 オープニングのベン様のクールぶりはすごいです。
 キレキレのマーさんとのコントラスト。少年マンガ的キャラ造形。

 下品に好戦的に威嚇しまくるマーさんと対照的に、ベン様は慇懃無礼。敵の大将登場に貴族的な礼をしてみたり。あちこちでこれみよがしな一礼をするのがベン様。

 ベンヴォーリオとティボルトの関係が好き。
 お互いなにかとちょっかい出しあってるとこが。

 ベン様はマーさんと違って露骨にくってかかったりしない。舌出しのようにバカにした態度を取ったり、猛るティボルトを収めるよーにハグしたりする。
 てゆーか、何故にハグ!!
 ものすげー低温に投げやりに、ティボルトを抱きしめるベンヴォーリオ!!
 や、もちろんティボは怒って突き飛ばすんだけど。

 両家のトップ、キャピュレット卿@ヒロさんとモンタギュー卿@ナガさんが一発触発!って感じに身構えたとき、それぞれの大将を守るように背中に隠すよーにばっと前に出る、ティボルトとベンヴォーリオが好き。
 闘うのは、このふたり。対峙するのはこのふたり。
 両家を背負い、血を流す覚悟のあるふたり。

 モンタギューのリーダーはベンヴォーリオとマーキューシオのふたりだけど、後先考えずに吠え続けるマーさんより、一歩引いたベン様の方がよりリーダーっぽく見える。こういう肝心なときにモンタギューを背負って立つのがベン様であるように。
 マーキューシオはもっとフリーダム。ベンヴォーリオが背負っている責任感みたいなものが感じられない。だからこそ魅力があるわけだが。

 そして、ティボルトに唾を吐きかけられるベン様の図に萌え、それに加え、ベンヴォーリオのために怒り狂うマーキューシオに萌え。
 唾かけられたのベン様だってば、なのにベン様、自分では怒るヒマがないの、マーさんが激昂しちゃってくってかかるから、ソレを止めるのに必死で(笑)。
 ベン様、頬をぬぐうヒマもろくにないのよ……マーさんが激しすぎて(笑)。

 
 2場の両家夫人の歌「憎しみ」場面では、ライトが点かないうちから要チェック。
 ベンヴォーリオとマーキューシオが、とにかくいちゃいちゃしている。子犬のようにじゃれあってる。
 ここはアドリブOKなので、毎回チガウ。
 ふたりの仲良しぶりがたまらん。かわいすぎる。体格が合っているって、こんなにかわいらしさを増大させるものなのか(笑)。
 モンタギュー夫人@ゆめみちゃんへ、マーさんがベン様のアタマを押さえて挨拶をさせる……のはほぼデフォだが、やってないときもある。
 この両手を広げた挨拶が、とてもベン様らしい。貴族的で、棘と愛嬌があって。

 「憎しみ」の歌は両家夫人がそれぞれ歌い、相手のターンのときはライトが落ちてストップモーション。
 自由にいちゃついているベンマーコンビもその瞬間、ぴたりと止まる。
 静止が決まっているあたりでは激しい動きはしていないが、あるときちぎちゃんが腕をわりと上げているときにこの瞬間がやってきて……腕を肩より上げたまま、マーさん止まってた……大変だなちぎたさん……(笑)。

 マーさんは「チャオ!」と退場、残されたベン様は階段を上がり、途中で止まって出番待ち。
 壁にもたれて待っている姿が美しい。

 初日前にマスコミに出た写真では「まっつ、やらかした?!」と心配した髪型だけど、実際の舞台ではすごーく映える、かっこいい。てゆーか初日はもっと「部分ヅラ載せてます」って感じだったのに、短期間でどんどんきれいになっていったので、手直し相当がんばったんじゃないかと。
 白金の髪が頬に落ちる感じが実に美しい。

 わざわざ上った階段を下りてくるところでモンタギュー夫人にとっつかまる。このへんがベン様。調子のいいマーさんは、こーゆーうざい状況を敏感に察して逃げる。

 ロミオ@キムの居場所を聞かれ応える声と姿が……オープニングと別人。
 あの危険なクールビューティ様はどこにっ?!状態の、道化喋り。
 それがまた、イイ声で……。

 ベン様はモンタギュー夫人に信頼されているんだと思う。ティボルトのことをキャピュレット夫人@かおりちゃんが「私のたったひとりの相談相手」と言っているが、むしろモンタギュー夫人とベンヴォーリオの関係っぽいなあ……キャピュレット夫人の場合、チガウ意味も混ざってるわけだし。

 いずれロミオが当主となりモンタギューを率いる。そのときの右腕がベンヴォーリオなんだろう。モンタギュー夫人はそう考えていそうだ。

 
 ……たった2場書くだけで欄ひとつ?? 大丈夫か、書ききれるのか。
 続く!
 ある日の『ロミオとジュリエット』、ある日のベンヴォーリオ@まっつ。

 せっかく、立ち直ったのに。
 ロミオ@キムに裏切られた傷、捨てられた悲しみ、否定された痛みから、愛ゆえに立ち直ったのに。親友を赦し、彼の心ごと受け入れようとしたのに。

 立ち直った、次の瞬間奈落へ突き落とされるって、ナニこの完璧なドラマっぷり。すげー急展開。

 マーキューシオ@ちぎが刺され、ベンヴォーリオは崩れる。

 それまでのカッコつけキャラ……二枚目半なところを見せてもいたが、対外的にはシニカルで慇懃無礼なクールキャラだったのに。おにーさんキャラだったのに。ふてぶてしいチームリーダーだったのに。

 まとっていたもの全部かなぐり捨てて、親友を抱く。必死に手なんか握って。
 言葉もなく、消えていく親友の魂を見つめる。

 哀しい顔、なんてもんじゃない。
 子どものような、痛々しい表情。
 思考がストップしたような。

 だからロミオの凶行にも反応できず。横にいたんだから、止めろよ、なんて無理な話。
 いつもの仲裁役ベンヴォーリオなら止められていたかもしれないけど。今の彼には無理だった。
 呆然と、立ち尽くすしかなくて。

「僕たちは被害者だ」と、死んだティボルト@ヲヅキのもとまで行って歌う。
 その、ティボルトを見る目も、とても哀しくて。

 友情じゃなくても、ここにもなにかしらの絆はあったんだと、前にも増して思う。(ティボとベンは、マーやロミオ抜きで一度ちゃんと話すべきだ、と思っている……そのうち語る)

 親友とライバルを一度に失って、その上ロミオまで追放になって。
 「狂気の沙汰」から「どうやって伝えよう」の痛々しさ全開。

 ちょ……っ、ちょおっ、ちょおっ、なんなのこれ、なんのプレイなのまつださん、今回のベン様すげートバしてるよおおおっ。
 
 歌声は抑え気味、高音は出ないのか最初から出さない方向、その分悲しみや揺らぎがてんこ盛りっ!!
 クールな外見と強い動き、なのに満ちる悲しみ。

 萌え死ぬかと(笑)。

 マントヴァで満面の笑顔のロミオに対峙し、クチにする言葉、「君に、会いに」が絶品。

 きみに、あいに。
 キミニ、アイニ。

 文章にならない、単語を並べただけの幼児みたいな喋り方。
 これが精一杯だったんだ、ベン様。
 あれだけ壮絶な決心をしてマントヴァまで来て、でもロミオの笑顔を目の当たりにしちゃったら、言葉が出なくなった。

 絞り出す、「君に、会いに」。

 ジュリエットの死を告げたあとは、目を合わすことも出来なくて。親友の視線を避けて、顔を背ける弱い姿。

 霊廟での、腰が抜けたようなぺたんとした坐り方、亡骸のそばまで行って台に両手をついて泣き崩れる姿が哀しいのは、言うまでもなく。

 マーキューシオの死の場面や、霊廟での魂が抜けたような姿へのラインが、一気につながり、あざやかに浮かび上がった気がした。
 や、今までだって別に疑問はなかったんだけど。

 初日のベン様はもっともっと強くてふてぶてしかったし、ドSな顔もいっぱいしていたし。
 怒りより悲しみを湛えた人ではなかった。

 こんな哀しい人なのか、ベンヴォーリオ……。

 立ち上がり、決意を歌い出す姿がまぶしい。
 コーラスの中、まっつの声を拾うのもたのしい(笑)。

 去り際に大公閣下@しゅうくんとなにを話してるんだろう、「はい」って頷いているのがわかる。

 わたしの脳内には「大丈夫か?」「はい」という会話が聞こえるんですが。
 大公閣下はマーさんの死、ロミオ追放後、ベンヴォーリオがボロボロだったのを知っているのよ、だからここで彼の心の傷を案じるのよ(笑)。

 
 また別の日には違ったベン様が見えるかもしれない。
 だから取り急ぎ、あの日わたしが(勝手に)見たモノを記す。

 ……客席に水くんたちがいたのに、きっとふつーならより張り切って見せちゃうところだろうに。よりによってこんな日に本調子ぢゃなかったまつださんの運の悪さにも萌え(笑)。
 それは、まっつの声の調子の悪い日のことで。
 前日からファルセットがなくなり、見守るファンも心穏やかでなかった日。

 実際歌声は抑え気味というか、いつもの心地よいクリアさに不意にざらつきが混ざったり、のびるはずのところで不用意にオチたりしていた。
 もちろんファルセットもなかったし、聴かせどころのソロ「どうやって伝えよう」の最後の歌い上げの音が下がっていたりした。
 相当キツイんじゃないかコレ、と、まっつの中の人の心配を、マジにした。

 といっても、台詞声はふつーだし、歌だってリピートして通常時の歌声が耳に焼き付いているから「あれ?」と思うだけで、初見の人には不調なんてわからないだろうレベル。
 いちばんわかりやすいファルセットの有無だって、「へえ、こうまとめるのか」と、その違和感のない終わらせ方に感心したほどだ。
(後日、ちゃんとファルセットで歌い、なんの問題もなく美声を響かせているそうなので、この2日だけだったらしい)

 生身の人間の生の舞台だから、いろいろある。
 観ているこちらも、そのときどきによって違った受け止め方をするし。

 だからコレは、このとき限定だったのかもしれない。
 調子が悪いから勢い任せにガンガン飛ばしていく、とかそーゆー選択肢は最初からなかった結果なのかもしれない。
 中の人の都合はわからないが、とりあえずわたしは1観客として、舞台上に見えるモノがすべて。

 その日の『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつは、いつもにもまして、抑えの効いた人に見えた。

 激しさがなく……まとっている空気に熱はあるのに、声のトーンは抑えられていて。
 2幕の最初の方、ロミオ@キムの裏切りを責めるベンヴォーリオとマーキューシオ@ちぎの場面で。
 激昂するマーキューシオの横で、ベンヴォーリオは。

 かなしそうだった。

 言っていること自体は強い、キツイ、脚本通り。いつものように、ロミオを責めている。
 なのに、そこに怒りの表情はなくて。

 抑え気味の声、熱のこもった言葉、責める、詰問する歌、まっすぐな眼差し。

 でもそこに浮かんでいるのは、哀しい表情。
 責めながら詰問しながら、泣きそうな顔をしている。

 今までだって、怒りにまかせて責めているのではなく、友人を心配して説得しようとしているのがベンヴォーリオだった。
 
 怒りに過剰反応するマーキューシオや、他の人々の中で。

 哀しいベンヴォーリオ。
 怒りより不信より、悲しみなんだ……傷ついているんだ……。そういう、人なんだ……。

 哀しい顔で、でも強い言葉で親友を責める姿に、泣けた。

 ベンヴォーリオの痛みが、鋭角に突き刺さった。

 強いからこそ、そこに満ちる悲しみが痛い。つらい。
 
 そうやって痛々しい姿を見せていたから、次の場面でベン様が笑いながら登場して「おおっ、笑ってる!」とびっくりした。(いや、デフォルトですから)
 でもベンマーコンビは、毛を逆立てたティボルト@ヲヅキの姿を認めて、一気に表情を改める。

 そして「決闘」場面になる。
 挑発するマーキューシオ、苛つき臨界点突破のティボルト。

 ひとり離れたところに坐り込んで、なりゆきを眺めているベンヴォーリオの横顔が……かなしげに見えた。
 もちろん冷笑したりウザそうにしたりと、いつものことは一通りしているんだけど。
 冷え冷えとした眼差しが、ふと寂しげに見えて。愁いを帯びているように見えて。

 こうやってティボルトと、キャピュレットたちとぶつかるのは、ベンヴォーリオたちの「日常」。生まれたときから敵のいた彼らは、こうやって生活してきた。

 親友ロミオがやったことは、この「日常」を破壊することだ。否定することだ。

 ベンヴォーリオにとっては大切な仲間、日常なのに。
 親友だと思っていた男は、それを否定した。
「君たちを愛している。でも彼女への愛はもっと深い」……俺たちをアイシテル? そんなの言い訳じゃん。

 マーキューシオみたいに怒りに転嫁して発散も出来ない……だからベンヴォーリオはひとり離れたところにいる。
 冷えた目つきで騒ぎを眺め、嗤い、ふと、哀しい瞳をする……。

 冷静なベンヴォーリオが、出遅れている。
 ティボルトの様子がいつも違うこと、狂気じみていること……もっと早く察するべきだ、そしてマーキューシオを止めるべきだった。

 シャレにならない空気の中、元凶のロミオが飛び込んで来、説教なんかはじめるからティボルトの狂気はさらに加速。ティボルトの怒りはマーキューシオにも火を付ける。

 哀しい目で沈黙していたベンヴォーリオも乱闘に加わりながら、積極的な戦いではなく、制止する目的で動く……いつものように。
 そしてロミオの言葉に耳を傾ける。

 哀しい顔はしない。
 親友をまっすぐに見つめる。
 力強い歌声を返す。

 あ、哀しくなくなった……と、思った矢先に。

 マーキューシオが、刺される。

 せっかく、立ち直ったのに。
 ロミオに裏切られた傷、捨てられた悲しみ、否定された痛みから、愛ゆえに立ち直ったのに。親友を赦し、彼の心ごと受け入れようとしたのに。

 
 続く。
 観るたびに、いろんな発見があり、チガウところで泣ける。
 アングル固定の録画映像ではない、ナマの舞台のおもしろさ。

 『ロミオとジュリエット』、リピートすることによっていろんな人の人生が浮かび上がってくる。

 キャピュレット卿@ヒロさんが素晴らしいことは、初演の星組でもわかっている。
 色男な姿も素敵だし、妻に愛されていないと判明、その上娘に非難されての寂寥のソロがまた絶品。
 毎回豊かな歌声を心地よく聴いているわけなんだが、あるときちゃんと歌詞に耳を傾け……というか、考えてみた。や、歌詞はもちろん聞いている・意味わかっているけど、ちゃんと考えてなかったのね。

 ジュリエットに拒絶されたあと、キャピュレット卿は「娘よ」と歌う。
 憎くて言っているんじゃない、幸せを願っているのだと。
「いつかはわかりあえる日が来る」と。

 いつかなんて来ないじゃん!!

 ジュリエット、自殺しちゃうじゃん。

 キャピュレット卿目線で物語を見たら。
 それまでは「個」なんて無視、自分の所有物だと思っていた一人娘。なにも言わなくても自分を愛し、全幅の信頼をおいてくれていると、疑ってもいなかった存在。
 親にとって、子どもはいつまでも子ども。娘がひとりの女性に成長しているなんて、気付いていない。最初に抱き上げた小さな姿のまま、「ぱぱのおよめさんになるー」と抱きついてきた姿のまま、印象は止まっている。
 だからジュリエットの愚行が許せないし、理解できない。自分の考えを一方的に押しつけ、逆らわれて手をあげる。

 思わず殴ってしまい、はじめて、娘が成長していることに気づき。

 彼はいつも、自分が良かれと思うことをしてきた。黙っていても家族は理解してくれていると思い、闘ってきたのに……実は誰も彼を愛してくれていなかった。
 自分の生き方は間違っていない、考え方は間違っていない。ただ、愛する家族に理解されていなかったこと、それを少しも気付かずいたことを寂しく思い、また、自嘲する。

 子どもに否定されるって、人生否定されたよーなもんじゃんね?
「親父みたいになりたくない」とか、「お母さんみたいな人生は嫌」とか、息子や娘に言われたら、凹みますよ。
 家族のためにがんばって生きている、その過程全部間近で見てきた相手に否定されたら、じゃあオレの人生なんなんだよ?てなもんで。
 ジュリエットひどい。パパの自尊心こなごなに砕いちゃったよ。

 自嘲しても、キャピュレット卿は意志を曲げない。間違っているのは娘の方、親は娘のためを思ってやっているんだ、いつかわかってくれる。
 叩いてしまった手を見つめ、きっと娘の幼い頃の姿なんか思い浮かべながら……彼女の幸福を祈る。今憎まれても、娘のために最善を尽くそうと。

 なのに。
 なのに、ジュリエットは死んでしまう。

 キャピュレット卿は娘とケンカ別れしたまま……その手で娘を殴り、泣かせてしまったまま、永遠の別れとなる。
 いつか、わかってくれる……そう思っていたのに。あえて悪役になったのに。

 てゆーか、娘殺したの、俺か?

 泣いて嫌がる娘に結婚を命令した、そのまま娘自殺ってことは、殺したの俺じゃん。

 娘に全人生否定された上、その娘殺しちゃったよ……。
 ってそれ、どんだけ悲劇。

 ヒロさんの歌声に聴き入り、彼の哀切に集中したあとジュリエットに「恐れはしない♪」と薬飲み干されたときにゃ、喉の奥が鳴りましたよ、キャピュレット父の気持ちを思って。
 ちょっと待て、父親を全否定したまま死ぬな!! そんなことしたらパパがどんだけ傷つくと……!!

 突き放した直後に息子に自殺されたエリザベートもかくや、の悲劇。

 ここでだーだー泣きました。舞台に現れないキャピュレット卿の慟哭を思って。

 跡継ぎで息子同然だったティボルト@ヲヅキを失い、その上一人娘まで失って。
 それでもキャピュレットの長たる彼は、弱いところを誰にも見せられず、妻すら心通う相手ではなく。
 その寂寥の凄まじさは想像にあまりある。

 
 いやはや。
 どこにツボがころがっていて、どこでずどーんと来るか、実際観てみないとわかんないし、観るたびチガウし。
 こーやってジュリエットパパに感情移入して泣いたかと思うと、次に観たときはまさに同じ場面でジュリエットに感情移入してさめざめと泣いたし。

 大好きだ、『ロミオとジュリエット』。

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