さて、まだ『ロミオとジュリエット』の話。とゆーか、ベンヴォーリオ@まっつの話。

 それで結局、ベンヴォーリオって、どんなヒトなのよ?

 東宝のベンヴォーリオはだいぶん変わっていたけれど、ムラでは場面ごとに別人すぎた。
 オープニングの「ヴェローナ」ではクールなドS、しかしその直後の「憎しみ」から銀橋ロミオとの会話は滑稽でわざとらしい道化、「世界の王」はにこにこ少年。
 ナニこれ。

 場面ごとにちがいすぎて、一貫性がない。
 特にいちばんひどいのが「憎しみ」でモンタギュー夫人@ゆめみちゃんと話すところと、銀橋のロミオと話すところ。
 脚本にある「粗忽者」らしい物言いかもしれないけれど、変に滑稽で浮いている。星組版を観たときも、オープニングのあとモンタギュー側の最初の会話……「物語スタート」となるベンヴォーリオ@すずみんの喋り方のわざとらしい滑稽さにびっくりしたし、ロミオ@れおんに対するわざとらしい子どもっぽい喋り方にびっくりした。
 ので、雪組でまっつが同じ喋り方をしているのを見て、演出家指示なんだと思った。なんでかわからないけど、このキモチワルイ滑稽さや幼さが、イケコのこだわりなんだ、と。

 このいちばん浮いている部分について、ムラでは後半になるにつれまっつベン様は対モンタギュー夫人には皮肉っぽくなることで対処していたと思う。大人をバカにしているから、あえて滑稽な調子で話しているんだ、と。対ロミオは相変わらずだったけど。
 が、イケコの目を離れたからか、東宝ではがらりと演技を変えて、「ここだけ浮いている」場面のカラーを統一していた。
 対モンタギュー夫人にもさらに冷ややかに、対ロミオにもクールな年長の友人風に。これなら「ヴェローナ」からそれほど浮いていない。
 こんだけ芝居をがらりと変えるんだから、やっぱ変だったんだよなあ、当初の芝居。てゆーか、イケコのこだわり。

 ムラでのこの部分だけは変だと思ったけれど、そこは星組でも最後まで引っかかり、混乱した部分だったのでもうあきらめるとして。(日本初演の『ロミオとジュリエット』の星組初日、ベンヴォーリオ@すずみんのキャラクタを把握するのに時間が掛かったのは、この場面の変な喋り方のせい。ここだけ別人過ぎる)
 この場面を除いたとしても、ベンヴォーリオは場面ごとに印象が変わる。チガウ。

 それはどういうことなのか。どういうヒトなのか。

 って、実は気にならなかった。
 そのまま、そーゆーもん、と思った。
 そりゃ初日はそんなキャラクタ見慣れていないのでびっくりしたけど、リピートすればなんの問題もナシ。

 というのも、この『ロミオとジュリエット』という作品で描かれている若者たちは、とてもマンガ的だからだ。

 ベンヴォーリオもマーキューシオ@ちぎも、コミックから抜け出てきたよう。髪型といい、振る舞いといい。
 中世を舞台にした名家同士の争いの話なんだが、現代的な衣装や髪型、音楽や演出で、無国籍かつ時代考証無視。古典劇ではなく、現代に新しく創られた作品。
 争っている若者たち、パンクなファッション……ああコレ、マンガだ。てゆーか、少年マンガなんだ。

 わたしはもともと少年マンガ育ちで、今も女性向けコミックは読んでないが、少年誌は読んでいる。
 そこにはツッパリ物というかヤンキー物というか、不良少年たちがケンカに明け暮れるマンガが必ず載っている。
 で、そーゆージャンルのマンガは大抵、主人公たちは仲間内ではギャグ満載でゆるい姿を見せているんだけど、いざケンカとなると絵柄まで変わってかっこよくなる。
 アホアホギャグとドシリアスで血を流す姿が、当たり前にひとつの世界にある。

 それがふつーなので、場面ごとにキャラクタの変わるベン様も、なんの違和感もない。
 少年マンガじゃん。
 敵の前では超クールだけど、仲間と一緒のときはゆるみまくってる。いたずらしたりアホなことしたり。でも、いざってときはすげー大人。でもって純粋で友情のために命懸けたり泣いたり。
 きょうびのマンガで、ずーっとカッコイイだけ、シリアスなだけで通るわけないじゃん。笑いもクールさも必要だっての。

 と、まあ。
 今わたしが好んで読んでるのが『A-BOUT!』というヤンキーマンガであるためか、ときどきベン様たち『ロミジュリ』のみなさんが、『A-BOUT!』キャラの絵柄で脳内再生されて困る(笑)。

 ようするに、「面白ければ、なんでもアリ」。
 イケメンとかお持ち帰りとか、シェークスピアが絶対に使わない単語が出てもアリ。
 「ヴェローナ」でとことんかっこよくドSにクールに舌出してるベン様が、ロミオ相手に小学生みたいに話していてもアリ。
 仮面舞踏会でマーさんとふたり、にっちゃあ☆と笑っていてもアリ。

 ふつーに少年マンガのクールキャラ。ヤンキーキャラ。
 ケンカ大好き高校生。
 仲間内では大人。
 それが、親友の死を通してほんとうの大人になる。
 そーゆー物語。

 特別でもなんでもない。
 等身大の、男の子。

 だからこそ愛しい、ふつうの少年。
 ふつうだからこそ、彼の心の葛藤や傷にも興味があるし、妄想がわく(笑)。想像の余地があり、また翼も開く。

 そんな風に思っている。
 わたしにとっての、ベンヴォーリオ。
 『ロミオとジュリエット』ムラ公演にて、やたらとノリノリだったある日のベンヴォーリオ@まっつ。
 敵と裏切りにはひたすら硬質にこわい人で、仲間に対してはかわいこちゃん全開。

 で、そんなテンションのままマーキューシオ@ちぎを失うと、どうなるのか。

 喪失が、すごいことになっていた。

 臨終の際のマーさんが「愛する友よ」と、ベン様の方へ手を伸ばす。その手をがっしり握りしめる。
 マーさんの手を握りしめたまま最後の言葉を聞く……のは、いつもと同じっちゅーか、「手を握るバージョン」でよく見る光景。でもこの日は。

 一度勢いだけで握った手を、握り直した。
 単に角度が悪くて持ちにくかったとかいう、身も蓋もない理由があるのかどうかはわからないが、わざわざ再度ぎゅっと握った。
 そして、マーさんを見つめる。
 ロミオ@キムにばかり必死で話しかけ、歌いかけるマーキューシオを、ずっとずっとひたすら見つめる。手を、握ったまま。
 そうやってマーさんだけを見ていたのに。
 この日のベンヴォーリオは、マーキューシオが事切れたのを彼が目を閉じたとか首をがくりと折ったとかいうことで知ったのではない。

 自分の手を握りしめたマーキューシオの手が、すべり落ちていくことで、彼の死を知ったようだ。

 しっかり握りしめていた手。
 ただ握っているだけに留まらず、ときには臨終の苦しみゆえ強い力が加わっていたんだろう。
 その手から力が抜け、すべり落ちていく。
 それは、マーキューシオの命が、魂が、抜け落ちていく、そのままの姿で。

 ロミオをはじめ、その場の全員がマーキューシオの顔を見て嘆き悲しみ、声を上げている中、ベンヴォーリオひとりが違うところを見ている。
 仲間たちの輪の中で、ただひとり。

 自分の手のひらを見つめ、放心している。

 彼は多分、その中に握っていたんだ。愛する親友の命を。
 人間の手のひらは、包み込むことが出来る。獣とは違い、他者を包み、守ることが出来る。
 ずっとずっと当たり前に、マーキューシオの手を、腕を、身体を触ってきた手。
 その命に触れてきた手。

 「憎しみ」でも「綺麗は汚い」でも触れていた。抱き合っていた。
 いちばん、近くにいた。いちばん、愛していた。

 変わることなどないと信じ、親友を抱きしめてきた手を、見つめる。
 最期の瞬間、マーキューシオの手は、命は、たしかにベンヴォーリオの手の中にあって。
 どこへも行かせないと、指を絡めて握りしめて。
 なのに。

 その手は、すべり落ちた。

 ベンヴォーリオの手から。

 マーキューシオの命が、魂が、消えた。

 たしかに握りしめていた、そこにあったものを見つめて、ベン様は呆然としている。そこにあった……自分が握りしめていたものを、見つめて。

 周りが動いている中、叫んでいる中、ひとりだけ動かない姿。
 ひとりだけ、マーさんの亡骸すら見ずに、自分の手のひらを見つめている姿。

 どんだけ。
 どんだけの悲しみよソレ。

 こわれる。
 あの人、壊れちゃうよ。

 も、心配で心配で。他の人どころぢゃない、オペラでベン様ガン見。ちなみにSS、4列目、この距離でオペラ使いますかアンタ、てな。周り誰もオペラ使ってないのにー。

 ロミオの歌声に合わせてベン様も泣き声を上げるんだが、ここでも彼はマーさんを見ず。
 自分の手を見たまま、天を仰いで慟哭して。

 みんながマーキューシオを見て嘆いている、その群れの中でただひとり、ちがうところを見ている、ベンヴォーリオ。
 その壊れ方の激しさ、こわさに、震撼した。

 そのあと、ロミオ乱心ゆえあわてて立ち上がるけど、それがなかったら立てなかったんじゃないかな。放心しきっていて。
 立ったはいいけど、結局ロミオを止められず、ティボルト@ヲヅキ殺害を目の当たりにして。
 ベン様、ナニか切れちゃった模様。
 仲間たちに声掛けられても、反応しないし。ぼうっと突っ立ってるベン様に、一方的に女の子がなんか言ってる図。女の子が腕を取るんだけど、ベン様反応せず、女の子があきらめて放したベン様の腕が、彼の胴に当たって跳ねる。
 唯一、モンタギュー夫人@ゆめみさんに「なにがあったの?!」って詰め寄られたときだけ、弱々しく話している様子。夫人にはよく躾られてるんだろうな、詰問されたら答えます的な。(例・「ロミオを探してきてちょうだい」「はーい、仰せの通りに」)
 でもほんとのとこ、思考できる状態ではないようで。
 ロミオを守るために右往左往、「僕たちは犠牲者だ」とか歌ってみたりするのも、思考手放してる。どこか呆然としたまま、本能だけで動いてる。ロミオを守らなきゃ、って。
 幼児が泣きながら大人の胸をぽかぽか殴る、あの感じというか。自分がなにを言ってなにをして、それがなんの意味があるのかわかっていない、おぼえていないような。
 ロミオ追放決定には崩壊して、(涙の有無ではなく)すごい泣き顔だし。

 「狂気の沙汰」は無力感半端ナイ。
 登場したときからすでに虚無入ってる。止められると思って止めているのではなく、絶対無理だとわかってすがっている。その、絶望。
 それでもよく、立ち上がると思った。
 途中がっくりと膝を折って。ほんとにもう立てないんじゃないかこの人、と思った。それでも「やめろ」って立ち上がるんだけどね。

 で、目玉のソロナンバー「どうやって伝えよう」とその直後のロミオへの伝言は、ここでは省略、また別欄で(笑)。

 ラストの霊廟シーン。
 その前の場面でけっこう持ち直していた、落ち着いていたテンションだったが、ロミオの姿を実際に目にしちゃうとスイッチ入っちゃったみたいで。
 ぺたんと坐り込んだまま、人形のようになっていた。
 ロミオとジュリエットが横たわる石壇の縁にたどりついたときには、そのまま泣き崩れちゃって、顔上げないし。
 縁の端に両手を残したまま、顔だけ沈んでるの。
 縁に残った指の、力の入り具合ったら。かきむしるように、指を立てて。すがりつくように。

 そのあと「罪びと」の感動的な大合唱シーンになるんだけど、ベン様群衆のセンターでなんかぶちキレてて。
 みなさんイイ笑顔で希望を込めて歌う場面、実際ベン様の声が朗々と響いてるんだけど……しかしベン様あーた、壊れてるよね??
 どこか呆然とした笑顔がこわいです、この人ココロ戻ってません、整理ついてません!!

 そんな彼を後ろから抱くよーに長い腕を広げて促す大公様@しゅうくんに、望みを託します、お願い閣下、その人助けて、救ってあげて!!と(笑)。
 あまりにもベンヴォーリオが哀れすぎて、壊れきっていて、こわかった。

 あんだけものすごい喪失ぶりで、最後笑うんだもん……! いや、あそこは笑顔だと決められているんだろうけど、ベン様その精神状態で笑ったらそりゃすでにあちら側の人ですよ!という。

 
 終始一貫して、テンションの高い日だった。
 そして、テンション高いとえらいことになるんだなと。

 ベンヴォーリオを演じるまっつは、面白すぎる……。
 まだ書き切れていない、『ロミオとジュリエット』の話。
 ほんとに、どんだけ好きなん、とあきれるくらい。思いと言葉が止まらないんだ。
 いやまあその、このテキスト書いたのははるか以前……2月中のことで、アップする機会がなかっただけなんだが。
 

 ムラの『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつは日替わりになにかしらやっていて、見るたび微妙に印象が違っていて。
 よわよわで萌えだった日の話は書いたので、反対に、ノリノリで萌えだった日の話。

 その日はどーゆー気分だったのか、ベン様の中の人はノリノリで、なんかすげーホットなベン様でございました。

 まず、オープニングのかっこよさが半端ナイ。びしばしキレのいいダンスもそうだが、ティボルト@ヲヅキに向ける敵愾心がまたテンション高め(笑)。うっわー、嫌な奴~~。
 そしてこれはまっつの持ち味っつーか、テンション高いからといって暑苦しくはならず、むしろ、ドSなクールさが増すのが素敵です。
 やーん、こわいー、かっこいー。
 物騒さが増すというか(笑)。

 そんな調子だから十分「今日なんかすげぇな」と思ってたのに、極めつけはヴェローナのコーラス&ダンス場面ラスト、吠えてましたよこの人。
 「~決して終わらない♪」でみんなそれぞれアツく挑みかかるよーにしていると思うけど、ベン様がくわっと吠えるよーに歌ったのには、心底びっくりした。今ベン様吠えた?! ベルナール@『外伝ベルばら』でよくやってたけど、ベン様でもやるなんて?!

 いつもより5割り増しでコワくてイヤな奴になっているベン様。
 ティボルトに唾を吐きかけられ、自分では怒らず、怒って掴みかかろうとするマーキューシオ@ちぎを制止……という流れは同じだけど。
 そのあと、ティボルトやキャピュレットたちを見ながら、ゆーーっくりと頬を指でぬぐった。首を傾げ、あざ笑うように……しかし冷え冷えとした眼差しで。

 そのゆっくりとした指の動きと、冷たい目にぞくぞくした。なんなのあのエロさ!

 エロさを見せつけてる? 挑発している? 暴力の挑発というより、性的な挑発に見えてうろたえる。ベン様待って、ティボルト相手にそんなことしちゃダメ、危険だわ!!(ナニが)

 匂い立つイヤラシサに、まだオープニングだっつーに息も絶え絶えになる(笑)。

 テンションの高さはかわいこちゃん度の高さ、悪のり度の高さでもあった。
 ロミオや仲間たちに見せる顔がかわいこちゃん全開。
 ちょ、ベン様いくつの設定?! 年齢さがってないか?

 そしてマーさんとのいちゃつき方が大判振る舞い。スキンシップ多すぎ、くっつき過ぎ! 「憎しみ」でもやたらいちゃくらして、ストップモーションは互いの肩や腰に手を回して抱き寄せて、顔を寄せて見つめ合って。ちょ、そのキスの前後みたいな体勢で止まるのかっ?!!

 「綺麗は汚い」でも犬ころマーさんにお手をして立たせたあと、抱き合ってラヴシーン。ふたりしてタコクチして「ちゅ~~♪」ってやってた。ベン様が女役、膝を折って小さくなって。

 タコクチでチューをねだるまっつ!!

 我が目を疑う。未涼さん、どーしちゃったのあーた!!
 そのあとのデフォルトのカップルのふり(愛について歌うマーさんにしなだれかかるベン様)も、もちろんノリノリのカマっぽい腰つき。

 ナニこれやばい。お前らラヴ過ぎ! いちゃつき過ぎ!

 てゆーかなんでいつもベン様が女役なの、マーさんとベン様の間には不文律があるの? 「ふたりでいちゃついてふざけるときは、オレが男でお前が女な」とか、前もって決めてあるの? ベン様ソレでいいの? 受なの? ベン様受としての自覚あるの?!(落ち着け)

 「どんなかわいい女の子でも♪」の、「かわいい」のところでベン様、両手の人差し指を自分の頬に向けてにっこり小首傾げて笑ってた……かわいいって、アンタ……。

 みすずあきさんの中の人が別人に入れ替わっているのか、コワレているのか。
 とにかくもー、あまりの豹変ぶりに開いた口がふさがりません! これがこの間まで『EXCITER!!』で黒タキでまとぶさんに後ろから迫っていたエロ男ですか??!

 ピーター@ハウルのいじり方も激しい。ベン様ソレすでにセクハラ! そんなウブな子、口説いちゃダメ!!
 とまあ、スケベ心も上がっているのか、仮面舞踏会ではいつも3人の女の子にキスして4人目はお持ち帰りなのに……4人目にもキスしてた?! ちょっ、今ナニしたよヲイ!と、目が点になった。
 ベン様軽い……チャラ過ぎますよちょっと。アナタその容姿でそんなことしてたら罪作りだってばー!

 とにかく1幕のベン様は大暴れ。なんなのよこの男。
 敵に対してはすげーこわい人で、仲間内ではかわいこちゃん、マーさんとはやばいくらいラヴラヴいちゃいちゃ、ホモネタも好き、反面女タラシで手が早い。
 そんな、やたらとテンション高く生き生きとしていたベンヴォーリオ。2幕でどうなるのかと思ったら。

 ロミオ@キムの裏切りに対しては、こわいモード。すごく硬質な態度で、怒ってる感じがこわい。
 強いな、固いなという印象だった。
 まっつの中の人的に、かなり高温位置で安定したまま演じている感じ。高温だけど暑苦しくはなく、固い、こわい(笑)。

 で、そんなテンションのままマーキューシオを失うと、どうなるのか。

 喪失が、すごいことになっていた。

 続くー!
 わたしの癖といいますか、自衛手段でもあるのですが。
「人生がけっぷち、2度目があると思うな、いつだってこれが最初で最後」という意識があります。
 なにかうれしいことがあっても、この幸運が毎回続くはずがない、幸せなのは今だけで、あとできっと悲しい目に遭う。だから次に悲しい目に遭っても大きく傷つかないように、「いいのは今だけ、次はそうじゃない」と思い込むというか。

 ヲタをやる自分への言い訳でもあります。

「もう大人だもの、いい加減落ち着かなきゃ」と思うべきところを、「こんなことはもう2度とないかもしれないのよ? 今よ、今。今暴走しないでいつするのよ?!」と欲望を肯定したり。

 つーことで、わたしは昔からいつも「最初で最後」という言い方をします。
「ゆーひくんはこれからまだバウ主演あるかもしんないけど、ケロは最初で最後だろうから、悔いないよーに通わなきゃ!」と、10年前にもふつーに言ってましたね……いやまさかその10年後にゆーひくんが、バウ主演はおろかトップスター様になっているとは思わず。

 今の口癖は「全ツ2番手なんて最初で最後だもの! 堪能しなきゃ!!」だしな(笑)。
 その前は「好きな作品でしかも名作で、好きな役でしかも出番が多いなんて奇跡! もう2度とナイわこんなこと、今通わないでどーするのよーー!!」つって、二日に1度の割合でムラへ行っていたわけですな(笑)。

 少しは落ち着けよとツッコミつつ。
 「いつだって最初で最後」の覚悟のもと、ひとつひとつを大切に大袈裟(笑)に、堪能していきたいと思っています。

 てことで。
 最初で最後かもしんないから、騒いでおく。

 ある日の『ロミオとジュリエット』貸切公演。
 といっても、それが貸切公演だったとは、わたしはわかっていなかった。
 1幕が終わって、わたしはふつーに座席でメールをしたり、本日のベン様の素敵ポイント(笑)をメモしたり、のんきにしていた。
 すると、場内アナウンスが流れた。
「厳選な抽選の上~~」
 抽選? なんだ、ナニか当たるの? そーいやコレ、貸切公演だっけ? ふつーにサバキで買って入ってるから、区別ついてない。
「音月桂さんのサイン色紙は各階各列**番……」
 ああ、よくある貸切公演のプレゼントか。列関係なく、席番号で当たるやつ。
 わたしはこの公演中すでに何回も貸切公演を観ており、そのうち2回は幕間にプレゼント抽選会があった。サイン色紙はトップスターのキムくんと、そのときのジュリエット役、その2種類のみ。今回の公演に限らず、最近の貸切公演ではサイン色紙のメンバー数も削減しているようで、トップコンビのみとかふつーなんだよな、と大した興味もなくアナウンスを聞いていた。
 キムくんやみみちゃんのサインに興味がないわけではなく、単にわたしが当たるはずがないので、気にすることがないのだ。なにしろ当たった色紙は大浦みずき様のフェルゼンのみなんだもの、この20年間で。
 貸切公演のサイン色紙? ナニソレおいしいの? もらったことないからわかんない。
「早霧せいなさんのサイン色紙は~~……」
 え? ジュリエットじゃなくて2番手の色紙なの、この貸切。ジュリエットはトップぢゃないからの応急処置? そんなこと気にする貸切元なんだ?と、思っていたら。

「未涼亜希さんのサイン色紙は各階各列70番……」

 えええっ?!

 座席から、腰が浮きました、マジで。
 番号まで言ったところで反応するなら「当たったのかな、あの人」って感じかもしれないけど、番号以前、名前が読まれた段階で反応しまくりだったので、すげー恥ずかしかった。

 みすずあき? 今みすずあきって言ったよね??
 信じられなくて、おろおろした。
 や、当たってませんとも、当たるわけないでしょ、伊達に20年以上ナニも当たってないわけぢゃない、わたしのくじ運は最凶よ、ほんっとに当たらないもの!(おみくじの「凶」ならよく引き当てます)
 自分の当落よりも、みすずあき。
 今のマジですか、わたしの幻聴ですか? ひとり観劇なので誰にも聞いて確かめられない。

 まっつがサイン色紙メンバーに入っている……だと……?
 そんなことが、ありえるのか?

 取り乱したわたしは、フラフラとロビーまで行きました。
 プレゼント引換場所は劇場内ロビーではなく、改札を出たインフォメのあるロビーでした。
 もぎりのおねーさんを踏み越えて、外に出ました、わざわざ。
 で、当たったわけでもないのに、引換所真ん前行って、置いてある色紙を眺めました。

 ほんとだ……ほんとにまっつだ……。

 ぼーぜん。

 左上にスチール写真が貼ってあり、劇団発行の色紙で、劇団名の入った封筒に入れられている。
 それがたくさん、積み上げられている。

 あれは『太王四神記』の幕間トーク付きの日。
 平日公演の客寄せに、幕間に出演者を日替わりでトークさせるイベントがあった。喋るのはほんの数分、5分に満たない。そして、そのトークする生徒のサイン色紙を3名様だっけかプレゼント。
 なんともチープな、微妙すぎるイベントだった。
 だけど、日替わりであったために、ふつうならイベントに出してもらえないようなポジションの生徒にも順番が回ってくる。
 スターさんではないご贔屓が、まさかのイベント出演ですよ! ひとりだけ舞台に出て、司会者のじゅりあにインタビューなんかされちゃうんですよ! 大事件ですよ、行くしかないでしょう!!
 と、わざわざその平日に駆けつけた。連れのまっつメイトは茨城から駆けつけたさ。ふたりそろって「こんなの最初で最後ぢゃね?」と張り切ってSS席連番で、ヒョンゴ村長をガン見したさ……。
 そのときのサイン色紙が、わたしは本気で欲しかった。
 左上にスチール写真が貼ってあり、劇団発行の色紙で、劇団名の入った封筒に入れられている、貸切公演でプレゼントされているのと同じ形式のサイン色紙。
 トップさんたちなら貸切公演で毎回プレゼントされているけれど、脇の人はそんな機会はない。ふつーは一生ナイんだよ?
 こんなイベント最初で最後かもしんないし、するとマジであの3枚が、「未涼亜希」としての最初で最後の劇団公式発行サイン色紙かもしんないじゃん。
 ……もちろんわたしたちは当たらず、指をくわえてみていたさ。ヒョンゴ村長のサイン色紙なんて、もらった人うれしいんだろうか? てゆーかオレだ、オレによこせ~~!!と、内心身悶えながら。

 そっか……『太王四神記』のサイン色紙3枚が、「まっつ人生最初で最後の3枚」じゃなかったんだ……。
 こうやって、本日70番に坐った人全員の枚数があるんだ……。てゆーかまっつ、ここに積んである色紙に全部、1枚1枚サインしたんだ……。

 すごい。まるで、スターさんみたいだ。

 色紙の束を横に置いて、機械的にサインしているまっつを想像し、また実際に積み上げられた色紙の束と飾られた写真、名前を見てしみじみする。

 こんな日が来るとは、夢にも思わなかったナリ……。
 このうろたえっぷりも含め、忘れずにいたい。
 最初で最後、次はないかも、と自戒しつつ。

 あうう。
 まっつのサイン、欲しいなああ。ベン様の写真付きで。
 そのうちヤフオクとかに出るかなあ。
 貴重だよな、絶対。
 最初で最後かもしんないし!←
 ろくに数を数えられない(「1、2、3……いっぱい?」的な)キムシンの演出に当たってしまった、数えてもらえなかった役の人たちの悲しみはわかります。
 その昔、わたしの贔屓も台詞4つしかもらえませんでしたから。贔屓より下級生で、出番も台詞もある人がいるのに。

 それでもわたしは、彼の作品が好きです。脇ファンだとリピートしんどいだろうなあ、と思いつつも。
 でれでも、『バラの国の王子』は好きです。

 ええ、とりあえず叫びます。

 野獣@きりやん好きだー!!

 なんですかあのかわいいイキモノ!
 不器用で鈍くさくて独りよがりで、かわいくてしょーがない。

 武骨で優しい、不器用なきりやさん、というのは、わたしの好きなきりやさんです。
 きゅんきゅんきます(笑)。

 あの小さな身体に大きなかぶり物して、両手を前に出したみょーな立ち方して、ディズニーの野獣みたいなシルエットでのそのそ歩いて。
 あのもふもふ欲しい、ぬいぐるみを売ってくれ!! 中身はキューピーでもなんでもいいから、かぶり物取れるようにして。
 少しも早くキャラクターグッズ化を望む!

 ラスト、王子にならなくてヨシ! ってくらい、野獣なきりやさんが好きです。
 ディズニーアニメでも、野獣は野獣のままの方が美形と思ったけど、まさかタカラヅカでまで(笑)。

 で、その大好きな野獣の相手が、これまた素敵な女の子で。

 
 ベル@まりもちゃんの、すこやかな強さ。
 ぶっちゃけ、絶賛されているほどの美女には見えないんだが(笑)、それはともかく、彼女のキャラクタが好き。

 人間らしい弱さやずるさを持ちながらも、光に向かって歩く女の子。
 この子だからこそ、野獣を救えるんだと思える。

 ベルが野獣の屋敷に来た最初の夜、自分の闇を吐露して泣くところから、一緒に泣いてます(笑)。泣けるもん、彼女の独白。
 そして、父親を起こさないよう、声をひそめて、それでもずーーっと泣いているとか。なんて悲しいの。
 それを見守る家臣たちも切ない。手をさしのべたいのに出来ないで、ただ見ているだけって、つらいよね。

 野獣のコンプレックス、それゆえの引きこもり。
 ベルの気づき。

 キムシンらしいテーマの押しつけがましさが、快感っ。

 や、わたし彼と波長合いますから。
 あれくらい「書きたいこと」がはっきりあって、それを表現するクリエイターは好き。

 自分自身を革命出来るのは、自分だけなんだよ。

 他人を変えることなんか出来ない。それは神様の仕事。
 だけど自分は変えられる。
 まちがったら、やり直せる。

 野獣を救えるのは他人の愛かもしれないけれど、引きこもりを間違いだったと気付くのは、野獣自身なの。
 愛する人を信じるという選択肢を選び取るのは、自分自身なの。

 キムシンのサムい台詞センス……というか、「おばかさん合戦」には、かなりムズムズしますが……。

 
 ところでわたしは、「お釈迦様の手のひらの上」ストーリーが苦手。
 誰かの作為の上で展開する物語が嫌い。
 なので、野獣ママ@あーちゃんの存在だけがこの物語の苦手ポイント。

 せっかく愛し合い、自分たちの力で幸せを掴んだはずの野獣とベルが、「みんな私の計算通り」とママが出てくることで台無し。と、思うんだけどなあ。
 みんなみんなママが何十年前に仕組んだことで、野獣もベルも自分で愛し合ったのではなく、ママの台本通りに操られたみたい。やばくなったらママが横から手を出して、自分の思い通りにする。ムカつく妹@りっちーに仕返しするためなら手段は選びませんわ、オーホッホッ!てか?
 ママの存在がお伽話感を高めているので、必要なのかもしれないけれど、わたしは不要だと思っている。
 ラスボスではなく、ピーチ姫ポジションにしておいてくれればいいのに。野獣の魔法が解けたから、ママも救われました、だけでいいのに。

 年齢不詳のあーちゃんの美貌は、さすがのフェアリーっぷりですが(笑)。

 
 とまあ、野獣とベルのラヴストーリーに心からときめき、涙しているのに、それとは別に野獣と商人@リュウ様のラヴストーリーを妄想してしまうのは、腐女子のサガというものでしょうか……(笑)。
 『記者と皇帝』、さくっとキャスト感想。

 マーク@いりすさんが、いい男だ。
 役が好みど真ん中なこともありますが(笑)、それにしてもかっこいいわー枯れた感じ、ヘタレ具合、それにそぐわないビジュアルの良さ。

 まさこさんは別に、芝居がうまい人ではないと思うのね。持ち味に合う役以外は技術の低さで表現しきれない。スタイルとダンスという武器があるからそれで良し、あとは本人のキャラ勝負……という。
 成長を見守るのがタカラヅカの楽しみ方のひとつ、変な役しかできなかったあのいりすくんが、上級生になるにつれ「できる役」を増やしていくのが、うれしいやらときめくやら。
 わたしは新公主演する彼を見たかったクチで、なんで七帆と1回ずつ分けなかったんだろうと当時は思ったけれど、今思うと無理もなかったかなあと。
 まさこ、ヘタすぎたよね。いろいろと。研7時点であの実力に懸けるよりは、堅実な七帆くんひとり推しと劇団が判断しても仕方ない。
 でも、なまじ新公主演しなかったからこそ、まさこはその後いろんな役をして。
 路線スターじゃないからこそ、求められる役割ってのがある。スターの高学年化が進み、舞台に年期のいったスターとぴよぴよのひよっこしかいなくなった今、その高学年な路線スター様より「大人」に見える役者がどんだけ必要になっているか。
 早くから「大人」役を振られたことで、まさこはそっち方面へ伸びていった。
 動く背景だったたかはな時代のあと、いきなりトップスター様の父親役とかするよーになったもんなあ。まさこだけでなく、『A/L』っていろんな意味で宙組の転機となった公演だよなあ。
 新公時代もWS主演も、ナマで観てきてますから。アレな時代も記憶に焼き付いてますから。そんな彼が今。……うわーん、ときいりがいい男過ぎてきゅんきゅんするー!(笑)

 志を忘れ権力にへつらうようになり、そんな自分を嫌悪したまま生きる男が、すべてを捨てても失っても、初心を取り戻す。お約束だけどわくわくする展開、キャラクタ。
 彼のカタルシスが、主人公アーサー@みっちゃんによってもたらされるのが、物語として正しい機能。アーサーの初恋の人だったんだねえ……ほろり。(チガウ)

 
 アーサーを追いかけ回す婚約者クリスティ@ちさきちゃん。
 コメディやるとすげーたのしそーだよなー。すでに貫禄を感じる(笑)。
 なんだろ、お約束であるこその動きというか、華がうれしい。安心して眺めていられる。
 ほんとに舞台にいることが楽しそうで、かわいいなあ。
 コトコトのポジションなのかあ。(え?)

 そのクリスティの相手役……ぢゃないけど、ラストで突然相手役に躍り出たブルース@愛ちゃん。
 かっこいーねー!! こーゆー役似合う~~。
 わたし愛ちゃんは顔立ちよりも体格萌えだなー。
 抑えて硬質にしてきた分、ラストの崩れっぷりがかわいいし。
 てゆーか、なんでこの男がよりによってアレに惚れているのか、バカバカしくもかわいい(笑)。

 
 ダグラス@ちーちゃんは、これまたお約束というか予定調和なキャラクタで。
 かわいくていいけど、不思議と「知っている」ちーちゃんの気がして、新鮮味がない。
 別にこんな役を他でやっていたかどうか、おぼえてないんだが。
 役自体がありがちすぎるせいかな。
 かわいい役をやっていても、ちーちゃんがキモく見えなくなったので、わたし的には進歩したなと。あ、ちーがではなく、わたしの目が。そして、キモく見えていたのもすべてわたしの責任で、ちーちゃんにはなんの責任もございません。ちなみにわたし、バウ出演組ではちーちゃんがいちばん好きです、でも彼をキモいとか言う。や、もう言わずに済みそう、目が慣れた!(ヲイ)
 しみじみ彼は好みの顔です。眺めているだけでシアワセ。

 
 桜木みなとくんと伶美うららちゃんはかわいいカップルだなー。
 桜木くんは美形さんだが、横顔の顎のラインが惜しい。これからもっと美しくなっていってくれるかなー。
 ところで、アーサー・キングの妹といえば、ギネヴィアだろう! と、偏った思い込みゆえ(笑)、名前の違和感からスタートしました、セーラ・キング。

 ふーりじんは良い役者さんだなあ。星の美城れん君と共に、貴重な大人役者。84期万歳。
 専科さんとサシで芝居して違和感ない、って、そんだけで尊敬だ。

 役があったのかどうかわかんないが、あちこちで出てくるたびに、あっきーの顔を好きだと思った。
 彼を個別認識した『薔薇雨』新公では別に、そんなこと思ってなかったのに。どんどん好みの男になってくる。
 鈴奈さんのステージ場面で、彼が登場したときに、どんだけうれしかったか……いやその、ビジュアル的に……(笑)。

 
 ロッタ@れーれなんだが、実はわたし、彼女が登場していることにしばらく気付いてなかった。
 アーサーがコナかけてる踊り子さん、たくさんわらわら出てきたダンサーチームのひとり、脇役の女の子だとばかり……思い込みってこわい。
 新聞記者として登場したときにはじめて、「あ、れーれだ! よーやく出てきた。かわいー」と思い……話を聞いていたら、さっきまで出てた踊り子さんがれーれだったのか!とびっくり。

 等身大のかわいい女の子。ツンツンしてるのがイイんだろうなってゆーか、大野くんの洋ものコメディ作品のヒロインってみんなツンデレじゃあ……?

 歌は相変わらずでうまいヘタ以前。
 だけど芝居歌だと気にならないな。歌がアレなのはわかってるから実際にすごくてもご愛敬っていうか、あーはいはい(笑)みたいな。
 かわいいからいいんじゃね?(素)
 かわいいは正義。……たしかにまあ、トップスターがコレじゃアレだが、バウヒロならまあ、アリなんじゃないかと。

 
 楽しい物語で萌え(られたかどうかはともかく)もあって、良い作品だと思います。
 贔屓が出演していたら絶対うれしい!

 ただ、この作品とこの役が、ほくしょーさんに合っていたのか、彼の魅力をこれまで以上に開花するモノだったかは、ちょっと疑問です。
 もちろんうまかった。それはたしか。
 でも、みっちゃんがうまいことなんて最初からわかっているので、こーゆーハートフルな二枚目半が「こんなみっちゃんはじめて見た! 素敵!!」な役だったかどうか。
 みっちゃんへのアテ書きではなく、あくまでも「大野作品」なんだなという印象でした。

 ラストシーンの蛇足感もなあ……。下手側だったわしは、ベッドにダイビングするほくしょーさんの丸いお尻が最後のアーサーの記憶なんですが……。

 フィナーレがあって良かった(笑)。
 新人公演『バラの国の王子』キャスト感想、覚え書き。

 虎@たまきちは体格勝ちというか、やっぱ彼は「男役」としてきれいだなあ。
 集団の中にいても、その姿全体で目を惹く。
 が、美貌かというとそーゆーわけでもなく。

 虎さん役ってほんと、出番と台詞(と、歌)が多いだけで、どーしよーもねー役だなと思った。
 人格がないというか。
 演じている人のキャラクタがすなわち役であるというか。

 本役のみりおくんは、とにかく「美貌」というわかりやすいキャラクタがあり、その美貌を愛でるという意味で、人格なんてなくても、出番と台詞が多い、とゆーことに価値がある。
 んじゃみりおくんほどの美貌がない人は、この役でなにをどうしろと? とりあえず歌って喋ってる姿を愉しめと? って、芝居ってそーゆーものなのか?

 と、キャストにではなく、これは制作側への疑問(笑)。

 虎くんに限らず、野獣家臣のコーラス隊はそれぞれキャラクタを創っているのだと思う。演じている人たちは。
 だけど毎回あの人数で出てきてあれっぽっちの台詞で、キャラクタの違いをどう読みとればいいのか、わたしにはわからない。

 プログラムには役名がびっしり載っているけれど、なにがなんやら。
 たまきち姿きれいだな、まんちゃん動きがきれいだな、ちゅーちゃんかわいいなー、ちゃぴが男役でうれしーなー、でも性別関係ない役だなーとか、そんなことぐらいしか。

 
 妹君@みくちゃんって、そんなに小さかったっけ? なんか登場するなり「小さっ」と思った。本役さんが大きいだけかなー。そして最初の歌が大変なことになっていた気がしたんだが、わたしの耳の問題か。や、あとになればふつーに歌えていたけれど。
 癖の強い役はみくちゃんに合うだろうなと期待しすぎていた面があったかもしれない。わりと手堅く、あ、こんなもんか、つー感じに収まっていたような。や、それこそが新公ではすごいことなのかもしれないが。

 アンリ@からんくんのみなぎっている感じが微笑ましいです(笑)。いやキミ、力入りすぎだろソレ。
 王様@ゆりやくんに家来が彼ひとりであることも相まって、いつもきっかり悪人顔のアンリと浮世離れした王様コンビが不思議なコントラスト。
 からんくんには何故か星組のかほりがする……(笑)。

 長女@鳳月くんは、ふつーにきれいなおねーさんで、困る(笑)。
 笑いを取らなきゃいけない役なのに、そんなにきれいじゃおかしくない!
 オカマにも見えず、ふつーに女性。
 本役のマギーは出オチってくらい笑わせてくれるからなあ……美人なのにカマっぽくて。
 若者が演じると、女装した男に見える女性、ではなく、ふつーに女性に見えてしまうんだ。
 で、男役のときはナチュラルに大人というか、おっさんくさいのに、女役だとそれほどでもないんだ……芝居って不思議だなあ。

 次女@晴音アキちゃん、前回新公に続き抜擢ですな、95期。ふつーにうまい……。
 でも本役さんのような出オチ感はない。新公だからそれでいいのか。

 いぢわる姉妹は体当たりな演技で笑わせてくれたけれど、小粒というか、視覚的にも芝居的にもどーんっと来るモノはなかった。
 ドタバタ喜劇的なビジュアルには、あえてしなかったんだろうと思う。阿呆な外見を作って笑わせることは簡単だけど、お勉強の場である新公でソレは必要ないと。
 でもその分やっぱ、地味だったかなあ。

 村の青年たちが、なんか愉快だった。
 十把一絡げの家臣コーラス隊より、村の青年がオイシイような。
 それぞれ個性的な顔立ちの子たちで、目、エラ、頬、耳、てなふーに特徴付けて覚えられる。残念ながら鼻!な子がいなかったけど(華ではナイ。わたし的に鼻!は重要・笑)
 なんか楽しい。次からも彼らを探してみよう、と思えた。おかげで、兵士役で出てきても一発でわかった(笑)。

 野獣の少年時代@咲妃みゆちゃん、かわいかった。きれいな声。

 ママ@白雪さんもきれいな声。ただ役としてはハッタリが足りないというか、ラスボスとしての貫禄がちがっているような……って、ラスボス言うな!てか?(笑)
 ゆりやくんが殻を破るには、ナニが必要なんだろう、と新人公演『バラの国の王子』を見ながら思った。

 早くからそれなりの役付を得てきたゆりやくんだが、長の期になっても主演できず。
 これで何回目?の2番手役。

 今回の王様役はしどころのない役だから、これで世界をひっくり返せというのは酷だけれど、それにしても頭打ち感があるというか。
 せっかくの甘い美形くんなんだもの、羽ばたいてほしいんだけどなあ。

 王様役はもともと裸の王様な役、ただのお人形で人格が見えない役ではあるんだけど、新公はさらにひどい演出なの。

 家来が、いない。

 ちょっと演出家、ここへ坐りなさい(笑)。
 このオモシロ演出はなんなの。

 王様は「王様」という設定があるだけで、家来ナシ。唯一アンリ@からんくんがいるのみ。
 どこへ行くにもひとりぼっち。えらそーにしていても、ひとりぼっち。
 ナニこのぼっち星人。
 いるのはママ@みくちゃんと、悪役顔(こいつきっと裏切るわ!、の)アンリのみって。
 どう見ても、彼がやっているのは「王様ごっこ」。
 国なんかなくて、ママの魔法で自分を王様だと思い込んだ可哀想なオトコノコなんじゃないの?
 てな、素敵演出。

 このまま家来ナシで行くのかと思ったわ(笑)。

 一方、野獣@ゆうきくんには、家来いっぱい。
 本公演と同じ?ってくらい、たくさんうぞーむぞーのコーラス隊。
 ぼっちの王様と、舞台いっぱい家来の野獣。
 ナニこれ。

 後半、野獣の城へ攻め込むぞーってなときになってはじめて兵士たちが登場したけど、あれって、ベルの村人たちやん! 兵士ちゃうやん!
 ベル@ゆめちゃんの取り巻きたち。ベルに振られた腹いせで、ベルを捕らえた?みたいな。
 つーかこの村人たち以外全員野獣コーラス隊なのよね。王様側には人員割いてないの。

 そりゃ、ただ軍服着て立っているだけの兵士役より、歌って踊る野獣コーラス隊に配役した方が、その生徒のためにはなる。新公はお勉強の場だから、その配役は正しい。
 が。

 あまりに極端すぎて……愉快なことに。

 王様は完璧にひとりぼっちのカンチガイ男。
 ちょっとアレな母の歪んだ夢の中で操られ、自分を王様だと思い込んでいる可哀想な人。実際にはもちろん彼は王様でもなんでもないのよ。
 村人動員して野獣の城へ押し入るんだけど、人数少なすぎて、勝てる気がしない以前に、痛々しい。
 何十人の敵の中へ、数人で押し入るんだよ? 画面的に、ちっとも野獣の危機じゃない。王様のカンチガイぶりの方が「大丈夫?!」な感じ。

 そうやって目に映るものと、脚本上の「野獣ピンチ!」な展開が、どう受け止めたらいいのか混乱する。
 あれっぽっちの人数の村人(しかも半数は男装した女の子)、コーラス隊で十分ボコれるっしょ。虎@たまきちひとりでも如意棒振り回したら一掃できそうだ。(彼は孫悟空ではありません)

 この愉快展開は、わざとですか、キムシン?
 ゆりやくんのあの脱力系な持ち味と、この裸の王様役が素敵にマッチ、妙な説得力。
 本役さんの持つ毒や歪みがなく、ただただヘタレな王様なんだもん。

 
 でもって最後に駄目押しの愉快さが。
 年度替わりの新公なので、研7の90期はすでに出演しておらず、今回91期が長を務めている。
 でもって、91期の長はゆりやくん。
 時の流れは速い、もうゆりやくんが長の挨拶しちゃうんだ!とびっくりしたのも束の間。

 この、長の挨拶をするゆりやくんが、もお(笑)。
 テンパっちゃって大変。
 話はぐだぐだで半べそで、いつまでたってもマイクを離さない。
 いやその、長の挨拶は簡潔に、感動的な挨拶は公演の主役に任せようよ。
 まるでゆりやくんが初主演をしたかのような、テンパり方。

 ……がんばったんだね。
 長の期になり、そのなかでも組内首席で、下級生をまとめていかなきゃならなくて。
 すごーくすごーくがんばったんだろう。
 自分のことだけでも大変だろうに、それでも新公の長として、すっごくがんばったんだ。
 それで、無事に幕が下りて、たがが外れちゃったんだね。
 もーナニがなんだか、って感じに喋り続けるゆりやくんに、トホホはトホホなんだけど、やっぱりこの子好きだなと思う。

 ゆりやくんの新公主演、見てみたいんだけどなあ。
 ダメかなあ。
 文化祭で王子様を演じた、あのときのキラメキを思うと、殻を破ることが出来れば、化けられるんじゃ……?とか、思っちゃうんだけどなあ。

 で。
 そのダメっこ炸裂の挨拶をしているゆりやくんを、後ろでまんちゃんが見守っている姿に萌えたんですが。
 ゆりやくんが笑ったときに、まんちゃんも一緒にイイ顔で笑って。
 同期萌えは基本装備です、ええ。 
 新人公演『バラの国の王子』、初主演おめでとーな主演コンビ、ゆうきくんとゆめちゃん。

 野獣@ゆうきくんを見て、この役ほんま出番少ないんやな、と思った。
 主役なのにいつまで経っても出てこないし。
 新公は1度きりの晴れ舞台!という思い込みも強いため、なかなか出てこない主演スターにもったいないことだと思いました。
 
 でもって、本役のきりやんの芝居が演出家のこだわりであることも、よーっくわかった。
 新公の演出もキムシン自身だったわけだが、野獣の喋り方が、一緒。
 きりやんと同じイントネーション、表情の付け方。丸コピ。
 そうか、野獣はこうでなきゃいかんのか……。
 きりやん野獣の、あのちょっと棒読み?な話し方を、ゆうきくんもまんまやってました。
 また、立ち方や歩き方も一緒。あれはキムシンのこだわりなのか……。

 ゆうきくんは身体が大きいので、とっても野獣(笑)な外見。野獣でかっ、と思う、かぶり物の分も含め。きりやさんだと部屋飼いな小型野獣っぽかったけど……って、ひきこもりのシャイボーイ役なわけですけどねー。
 でもやはり、本役さんに合わせた衣装だから、彼個人の魅力を引き立てるデザインではないんだろう。
 ガイジンさんみたいなきりやんの顔だからこそのかぶり物なんだなあ。鼻ペチャ丸顔さんだと、さらにその張りのある若さを強調されちゃうというか。

 ラストの王子様変身時の、ビジュアルの変化はイイですな。あ、王子様だ!と、わかりやすく納得できる。
 かぶり物を取り、ゆうきくん自身の姿になったときには、もっとゆうきくん自身の喋り方で、演じ方で、見たかったな。野獣のときはきりやんまんまでも、かぶり物が同じであるように「型」としてアリだと思うけど、それから解き放たれたときはもっとオリジナルな魅力が見たい。
 と、思ったんだけど、これはゆうきくんの問題ではなく、コピー芝居をさせたキムシンの問題かな。自分の作品にこだわり過ぎだよ、もっと生徒に合った演出にしてあげてよ。

 
 でもってヒロインのベル@ゆめちゃん。
 早熟タイプといえば、彼女もそうだ。94期で研3。しかも中卒。文化祭でヒロインを演じたときからすでに安定した実力を見せていた。
 だから新公初ヒロインとはいえ、実力に不足はない、不安はない。

 でもって。

 この物語って、ベルが主役だよね?

 どうあがいても、もともとの話が。
 女主人公モノで、野獣はその相手役、脇役だよね?

 本公演はきりやんが実力で主役を張っていたけれど、新公になるとそうもいかない、もともとの骨組みが出てしまう。
 なんか、見ていてぽかーんなくらい、女の子が主人公の物語でした。
 ヅカなのに、娘役が主役……てゆーか野獣出て来ねえ……。

 もともと『バラの国の王子』は『オグリ!』と同じ手法で作られた作品で。
 お伽話調で歌と朗読で話が進み、物語を動かす、がんばるのはヒロイン。男主役はナニもしない。
 それでも男主役が主役として成り立つのは、彼に華とハッタリ力があるからだ。
 真ん中にどーん!と踏ん張り、なにをするでもないのに衆目を集め、「彼こそが主役」と納得させてしまう。

 しかし新人公演だからなあ。
 この脚本演出で、野獣主役に見せろっつーのは、酷な話だ。

 てことで、ベル主人公として観てしまいました。
 ゆめちゃんうまいもん、押し出しいいもん。

 彼女に必要なのは、化粧力。

 顔ちっさいし、スタイルのバランスもいい。
 顔立ち自体は端正。
 なのに何故こんなにビジュアルの欠点が目立つんだー。
 晩年の渚あきちゃんや舞風りらちゃんを彷彿とする……って、ゆめちゃん中卒の研3だよ、そんな年齢で何故そんなに老け……ゲフンゲフン、大人な外見なんだ。
 星組の同期、わかばちゃんといい、美形さんは老けやすいのかなあ。目が大きいとシワが出やすいとか聞くもんなあ。

 
 タカラヅカは男役主役でナンボだな、と改めて思いました。
 とくにこの『バラの国の王子』はお伽話調というか、ファミリーミュージカルっぽい作りなので、女の子が主人公で舞台が進むと、なんかタカラヅカを観ている気がしないというか。
 外部のお芝居観てるみたいだった……。お子ちゃまターゲットなので、あえて女の子たちばかりで演じている感じ(バリトンな男性たちが大勢いると子どもたちがこわがるので)。
 あれは1年半ほど前のことでしたか。
 ケツの青い子どもたち、ぷくぷくほっぺとお尻のオンナノコたちががんばってスーツを着て大人ぶる、そーゆーもんだと覚悟して出かける「新人公演」という場において。
 こちらの思い込みを覆すような、見事なおっさんが、そこにおりました。
 ただのおっさんではございませぬ、堂々2番手、色男役。

 等身大の少年だとか子役だとか、あるいは「アイドル系」という便利な言葉で済まされるきれいな青年役、イロモノとしてのじじい役だのヒゲの年配役ならオンナノコたちでも出来ないことはないけれど、「大人の色男」は相当高いハードル。
 まず「男」に見えて、「大人」に見えて、そのうえ「カッコイイ」で、「色気」がある……って、お子ちゃまには難しいですよ!

 きりやんが演じたおっさん色男役を堂々演じたたまきちくん、当時研2。

 研2であの芸達者さ、そしてなにより、おっさん臭さ!

 まったく無名の研2が突然2番手抜擢、堅実な技術で見事に演じきったというのに、誰も「大型新人のキラキラ大スターが現れた!」とは言わない(笑)。
 あまりに堅実におっさんだったので、路線スターとしての抜擢なのか、別格スター候補なのか判断に困るというか。
 なにしろほら、正塚せんせは某新公で研5まっつを突然抜擢、2番手やらせたりしてたし(笑)、あのテのタイプが好きなんだよね、地味な実力派っちゅーか。

 今の子は昔より成長が遅く、昔の研7レベルが、今なら研12くらいにならないと形成されない。
 されど、早熟な子は昔よりさらに早熟な気がする。(脳裏に花組のいまっち氏が浮かんで消えたりな)
 劇団が正しく生徒の適性を判断し、適所で活躍させれば、若い力を武器にすることはできると思うんだ。

 わずか研2の、すばらしいおっさん色男を輩出した月組さん。

 今回もまた、すばらしいおっさん色男がデビューしました。

 新人公演『バラの国の王子』にて。

 商人@輝月くんの、色男ぶりに拍手。

 本役は越リュウ様です。
 ヒロインの父親。
 本公演を観たとき「これって越リュウ2番手ぢゃ……?」と思ったことはナイショですよ、の素敵な比重の役です。
 ぶっちゃけ商人役って、銀橋ソロさえあればいつでも2番手役として認知されると思うのよ、比重的に。王様は出番少ないししどころないし、家臣その1の虎さんも、所詮その他大勢でしかないわけだし。
 ストーリーに絡んでドラマがあって、単体で行動する役。
 番手制度の縛りゆえ、2番手役にすることができなかった役。ヒロインの父親が2番手なんて、キャリエールくらいヅカ的に間違った比重だもの。ヅカだからあえてキャリエールを2番手役にせず『ファントム』を作ったとしたら、2番手役のフィリップはしどころのない役でしかなく、コーラス要因のその他大勢のひとりを狂言回しっぽくして3番手役に、キャリエールは銀橋ソロはおろか歌もろくにない脇の役に落として脇の人が演じます、でもやっぱりストーリー的には重要だから、目立っちゃいます、てな感じ。
 キムシン、がんばって比重いじったんだね、でも成功してないね(笑)。

 脇役扱いだけど、実は相当大きな役、ヒロインの父。
 それを演じたのが、たぶん世間的にまだ無名だよね?の、輝月くん。
 ナチュラルにハンサムなおっさん。新公レベルとはいえ、浮かない演技と姿。だだ漏れる、娘への愛情。ほんとにベル@ゆめちゃんかわいいんだ、かわいくて仕方ないんだこのおとーさん!
 線は細いけど、こんな30男いるよね?てな。

 違和感なくおとーさんでおっさんでハンサムなヒゲ男、彼はまだ、研2。

 ラストの挨拶の際に、さーっと花道の方へ走っていく。上級生ぢゃないの、95期なの(笑)。
 なにも知らずに端っこから生徒さんたちを眺める人は、びっくりしただろうなあ。「えっ、あのおとーさん役の人?! こんな位置なの?!」って。

 みりおくんひとりっ子政策が長年続いたため、若手路線スター育成がかなり滞っている印象の月組だけど、代わりに面白いことになってるなあ。
 おっさん系色男育成なんて、ありがたい話ですよ。
 どっちを見てもアイドル系のぷくぷくオンナノコたちばっかじゃ、芝居が成り立たないもの。男臭い系も必要なんだって。イロモノじゃなく、二枚目の立役が必要なんだって。

 たまきちは若い役をやるといろいろ課題が見えるんだが(笑)、おっさんやると最強だし、輝月くんもこの芸風で突き進んでくれたら将来が楽しみ過ぎる。
 バウとか振り分け見ただけで「ラスボスはさおたさんかふみかか二択じゃんね?」と言われるよーな、素敵なラスボス俳優になってくれるかも! 大人の男で、色気があり二枚目であるというのが必須条件だもの。(例題が花組ばかりで申し訳ない)

 おっさん色男系として期待している鳳月くんが、今回まさかの女役で。
 そして、ふつーにうまいしきれいだし!でうれしい驚きだったけれど、それはさておき男役の彼が見たいわ。

 毎度のケロファンと一緒の観劇だったんだが、食いつくのはやはり、たまきち、鳳月くん、輝月くんですもの。
 でもってこのケロファンはまっつファンでもあるので(笑)、ゆりやくんのこともまったり愛でているのですが……ゆりやくん、大変そうだなあ、いろいろと。

 
 好みのタイプが次々登場してくる、月組新公はたのしいですわほんと。
 1作品1ホモがお約束の大野先生。
 ホモばっかり!ぢゃあんまりなので、抑えて1ホモにする慎ましさ。……ホモは出さなきゃならんのか?という疑問は横へ置いておいて。

 『記者と皇帝』はどんなホモが出るのかしら、と思っていたら、…………カチャの役だとは意外すぎた。

 そこ?! ソコに来るわけなの??
 もっとわかりやすいところに持って来られるだろうに、ソコなの??
 わかりやすいってのはつまり、役者的に。まさことかちーちゃんとか、ふつーに美形男役で。
 カチャが美形ではないと言っているわけではなく、カップリング相手にとっての美形というかね。

 カチャが愛ちゃん相手に少年役同士でカップリングなら、ふつーに美しいと思う。
 だけど、みっちゃん相手にとなると、まさこやちーが収まり良いと思う。

 そう、相手がみっちゃんだから。
 あのみちこ様相手に、カチャが年長の役でホモ絡み、つーのは……なんのプレイかと。
 大野くん、すごいなあ。

 
 タカラヅカはスターの高学年化が進んでいる。2011年4月からは、宙組トップスター大空祐飛さんは、研20だ。すげー。
 昔は研12くらいで就任して、研15くらいで退団とかがふつーだったのに、今は「昔のトップスターが退団する学年でよーやく就任」が当たり前だ。
 ゆーひくんの例に限らず、今のヅカはトップになるまでに時間が掛かり過ぎるため、組にはトップ路線が同じ顔ぶれで何人も何年もひしめいている。そのあたりの人々で主な役は独占、活躍の場もないままそれ以外の生徒たちは中堅学年になると残らず退団。
 それでふと気がつけば、高学年のトップ路線と、ぴよぴよのひよっこ下級生たちばかりになっている。
 そして芝居というものは、主人公ひとりで成り立つわけじゃない。主人公ひとりが大人で、あとは子どもしか登場しないわけじゃない。
 当然、主人公より大人だったり、同年齢だったりする人々が必要になる。
 だが、路線スター以外はみんなひよっこばかり。大人を演じられる人がいない。スターの高学年化により、物語を作りにくい状況になっている。

 という、現代のタカラヅカ事情をまんま表している配役であり、画面であるのだと思いました。

 主人公を若造に設定すると、周囲の大人を演じられる役者がいないのですよ。
 本公演なら総力戦なのでそれほどでもないけれど、それ以外では。

 水夏希が沖田総司を演じた『星影の人』を痛烈に思い出しました。
 あのベテランスター、学年以上に大人びた水しぇん相手に、新公学年かそれをようよう卒業したばかりの下級生たちが「大人」ぶらなくてはならない、あの痛々しい芝居。子どもにしか見えない男役たち相手に、懸命に「少年」ぶった演技をしている大人の水くん……!

 少年役者のカチャ相手に、懸命に「若輩」の演技をするみっちゃんを、どう処理していいのか、わたしの脳内がかなり混乱しました(笑)。

 ブライアン@カチャが、ふつーにアーサー@みっちゃんより大人に見える役者ならば、なんの問題もなかったんだけど。
 見た目はブライアンが少年、アーサーは30前後、なのにどうもブライアンが大人で、アーサーは若造であるらしい……えええ?

 ブライアンも、彼単体ならば大人に見える、と思う。
 周囲を新公学年で固めれば、彼が大人であることはわかると思う。
 実際カチャはよく芝居していた。『カサブランカ』新公のデキからすれば、格段の進歩。かっこよくなったし、大人の男らしい演技をしていた。
 が。
 相手は、小僧じゃない。学年より上に見える持ち味のほくしょーさんだ。
 学年より幼く見えるカチャと、学年より老けて見えるみっちゃんとで、どうして年齢逆転した役をやらせるんだろう?

 芝居と脚本からわかることと、実際目にしている視覚情報が乖離していて、わたしの少ないのーみそは混乱、どう処理すればいいのかとまどっているうちに、ふたりのホモホモしい場面が終わってしまった……。
 ついでにいうと、クリスティ@ちさきちゃんもカチャより年上に見えるので、彼女の堂の入ったにぎやかな芝居で「お兄様~~!!」とやられると違和感があった。

 ブライアンとアーサーって、すごく萌えな関係なんだけどなあ。
 演じている人が違えば、すげー萌えだったのに。
 どうしてカチャとみっちゃんだったのだろう?

 ブライアン役は、アーサーより年上に見える人なら誰でも良かった。まさこでもちーちゃんでも、ふーりじんでも、わたしは萌えていたと思う。彼らの実際の役を否定するわけではなく、ブライアン役だったとしたら、という意味で。

 そして、カチャの演じたブライアンを否定するわけでもない。
 ブライアン単体なら、すごく良かった。カチャブライアンの高貴さや硬質さはすごくイイ。あのブライアンがヒゲ男たちの間に君臨している姿はとてもイイ。
 ただ、みっちゃんアーサーと、合わない。
 カチャがブライアンなら、それこそ愛ちゃんや桜木くんがアーサーでもいいくらいだ。
 それならものすごく美しく、萌えな関係だった。

 せっかく良いホモなのに、どうしてこんなことに……。
 みっちゃんの若ぶり演技の達者さに、やっぱりどうしても作為を感じて、素直に脚本演出に入り込めずにいた。
 彼の貫禄に、誰もついてこられない。いちばんうまくて貫禄があって「スタァ!」なほくしょーさんが、地に足ついていない若造役なんだもんよ……。彼がモラトリアム演じるなら、周囲はもっと大人の役者で固めてくれないと、ひとりだけ浮いてしまうよ、うますぎて。

 リピート基本のファンなら、目が慣れて問題なくなるのかもしれない。
 1回しか観られないびんぼー人なので(お金さえあればもっと観たいですよ!)、視覚情報の混乱で終わってしまったのが残念です。
 や、本編についてではなく、大野くんの「1作品1ホモ」についてですよ(笑)。

 役者のことは考えず、脚本だけ読んだとしたら。
 ブライアンとアーサーは過去になにかしらあり、ふたりの会見、フェンシングの場面は別れた恋人同士の再会の場ですよ。
 それも対等ではない恋愛関係……年長者が、判断力のない子どもを自分の色に染めた、そーゆー関係。子どもは成長し、自分でものを考えられるようになったときに疑問を抱き、年長の恋人の元から逃げるように去る、年長者は大人ゆえに逃げた子どもを追わない、だがふたりの間にはしこりだけが残る、と。
 そーゆー設定なのに、少年に見える年長者と30男に見える元少年、つーのは……大野くん……何故……。
 大野先生の新作だー! みっちゃん主演だー! ってことで真面目にチケ取りしたのに、取れなかったんですけど『記者と皇帝』
 バウは満員御礼、みんながこの公演を待っていたんだね、とわかる。
 なんとかチケット入手して行ってきました。

 お金持ちのおぼっちゃまアーサー@みっちゃんは婚約者から逃げて市井暮らしスタート。新聞記者になるはずが、ライバルのロッタ@れーれに初戦敗北、正式採用ならず。今求められているのはサンフランシスコで絶大な人気を誇る自称皇帝@ソルーナさんの記事、アーサーとロッタは皇帝の記事を得ようと競ううちに惹かれ合う……わけだが、この愛すべき皇帝が、権力者たちに利用されようとしている?!

 大野先生のタップ好きに、はじめて意味があった!

 と、まったく関係ないところにもっとも感心してしまったんですが、どうしましょう(笑)。
 大野作品といえばタップダンス。
 どの作品だろうと、脈絡がなかろうと、とにかくタップ。
 大野くんの洋モノ作品か、んじゃタップだな、と直結して考えていいくらい、とにかくタップ。
 それがはじめて、タップを踊る意味があった。はじめて、物語にタップが必要だった。
 タップでモールス信号を打つ、というのがキーになっているわけです。

 わたしは音楽的才能もなく、運動能力も低く耳も悪いので、タップダンスでモールス信号な人々を見て「天才ってすげえな」と思いました。や、天才なんて物語には出てこないので、ダンスができる人にとっては「あたりまえ」のことらしいです。
 が、わたしはいくらモールス信号を勉強して知識としてアタマにあったにしろ、それをダンスから信号部分だけ抜き出して読みとったり、仲間内でダンスに信号を入れて会話したり、1回だけ見た(聞いた)ステップをあとになって間違いなく再現してみせたり、とにかくなにひとつ一切合切出来る気がしないので、天才しかいないのかこの物語、という気分でした(笑)。
 やたら英才で特別だと描かれてる主人公や、才能あるダンサーのヒロインだけなら、かれらが優秀だからそんなことができるんだ、と思えるけど、ヒロインの仲間たちでさほど将来大物にも大スターにもなりそうにない、ふつーのダンサーたちも、ふつーにやってのけてたからなあ。

 現実にそんなことが可能なのか、ではなく、可能かもしれないと思わせることが、フィクションの醍醐味。
 魔法やテレパシーで会話しました、ではなく、ありそうなものやできそうなことでやってのけるのが、たのしい。

 ただ、「盗聴が平気。悪いことではまったくない」世界観にはびびりました。
 ヒロインのロッタがスクープを得られたのは、友人の父親が通信会社勤務だから、そこで個人的に使われた電信内容を勝手に記事にしたもの。
 たとえば、宝塚スターの北翔海莉さんではなく、本名の**みちこさんが、恋人にネット通販でメッセージ付きのプレゼントを送ったとして、その通販会社の社員が「あ、これタカラヅカの北翔さんの個人的なラヴレターだわ!」と気付いたからといって、みちこさんが入力したメッセージ内容を他人にコピーして渡したり、ましてやそれを「スクープ」として新聞に売るような交友関係を持っていたら、酷いのひとことだなと。
 でもソレが平気だから、ラストのどんでん返しも同じように電信盗聴で得たものを「動かぬ証拠」として突きつける。
 そういう時代だったのか……。郵便局とか電話会社とかのスタッフは利用者のプライバシー全部「娘の友だち」程度の間柄の人に流して平気な時代だったのか……と、アタマが現代でしかないわたしは、なかなかどーして混乱しました(笑)。
 

 ま、それはさておき。
 
 改めて、大野せんせの作品のいいところは、主役たちに、友だちがいることだと思いました。

 主人公に友だちがいる。ヒロインに友だちがいる。
 ……人間としてあたりまえのことで、主役を張るからには友だちのいる人間的に魅力のある人でなきゃ、見せられる方はたまったもんじゃない、と思うが、通常のヅカ作品の主役たちは、友だちもいないよーな人ばかりなんだ。
 せいぜいは「友だち」という名前だけで、ただ隣に立っているだけの人格も物語もない人とか。

 まだ主人公はいい、友情寄りに描かれることもあるので。
 問題は、ヒロイン。
 ヒロインに友人がいる作品なんて、どれだけある? 名前だけで横に立っているとかルームメイトだとかではなく。

 大野せんせのヒロインは、みんな友だちがいて、わいわいやってていいなあ。
 ほんと、同性の友だちもいないよーな子には感情移入もしにくいし、女性が好むタイプの女性ではない場合が多いと思うんだけど。ヅカの観客の大半は女性、なのに「同性の友だちもいない女」つまり、「同性から嫌われる女」をヒロインにするのはどうかと思うよ、男性演出家のみなさん。


 とはいえ、大野せんせのヒロインがダンサー(とか女優とか)以外の職業だったことはあるのか?
 『ヘイズ・コード』『NEVER SLEEP』『フェット・アンペリアル』と、洋モノは全部ヒロインがダンサーですがな。そして主人公は同じダンサー系職種ではなく、外側から彼女に出会う、と。
 『ロシアン・ブルー』だけが唯一違うんだけど、結局ダンサーチームは作中に出てくるし、ヒロインのいる組織と彼女の立ち位置が他作品のダンサーヒロインとそのチームと同じ手法で形成されてるのよね。

 またしてもヒロインがダンサーで、チームで登場したため、強い既視感に襲われた(笑)。

 いつも同じヒロインを書き続ける大野せんせは、たったひとつのパターンのみでどこまで作家を続けるのか、それはそれで興味深いっす。
 今は登板が少なく、年1本とかしか書かせてもらえないから、同じ話ばかり書いていてもバレないっつーか、観客には別の話に見えるけど、近年の正塚せんせみたいに短いスパンで次々書くことになったらどうなるのかしら。マサツカだってこんなに続けざまに書かなければ、ファンから「また同じ話」「自分探しと革命とあの戦争でしょ」とか言われずに済んだかもしれないのに。

 それでもわたしは、正塚せんせのいつもの話を好きで眺めていられるように、大野せんせのいつもの物語も好きです。
 これ前にも観た(笑)、と思いつつ、新作として愉しめます!

 『記者と皇帝』も好きだー。
 かわいいたのしい。
 宙組さんに詳しくないわたしですら、目が足りないくらいあちこち隅々まで気になって楽しいんだから、組ファンにとっては、隅々まで楽しいんだろうな。
 もちろん、主演のみっちゃんにファンにとっても。

 わたしは思わぬところでみちこさんに一本釣りされて、どっかんと煙あげて爆発しました(笑)。わたしのそんな反応を見て、「にやり」とされたのがくやしくてなりません。うわーんっ。
 友人たちに確かめたところ、みっちゃん的にはソレ、ふつーのことのようです。日常だそうです。あの人一本釣りしてニヤリってふつーにするのね。うおお、そーゆーとこかっけー! スターは傲慢なくらいがいいのよ、そーゆーとこに一般市民はときめくんですから!
 ひょっとしなくてもまっつ、この中で最年長だよね?

 95期の礼真琴くんと比べたら、軽く10歳差……ゲフンゲフン。(ジェンヌはフェアリーです、年齢などありません)

 『14 COVERS TAKARAZUKA OTOKOUTA』、発売日に無事購入……したのはいいけれど。

 アタマからふつーに再生し……まさかの大ウケしました。
 CD聴いて爆笑するとは思わなかった。

 斉藤恒芳、トバしすぎ!!(笑)

 最初っから首を傾げてはいたんだけど、こちらもまさか、

>宝塚の“男役”である「女性」が、「男性アーティストの楽曲」をカバー!
>若手スターたちの華やかな歌声で、誰もが耳なじみのある14曲のヒット曲を収録。

 なんてコンセプトのアルバムで、作曲家のアレンジが暴走するとは思ってないぢゃないですか!(笑)

 主役はあくまでも「タカラヅカ男役」。
 このアルバムを購入するのは99%ヅカヲタで、アレンジ担当の作曲家ファンではないだろうし、収録されている男性ミュージシャンの楽曲ファンでもないだろう。

 それぞれの男役の歌を聴きたくて購入する人がほとんどだろーに、その主役たる男役の個性や歌声を打ち消す勢いで編曲家が暴走しているって、なんじゃこりゃ。

 最初の方はまだマシなんだけど、真ん中アタリで爆発し、最後でまたどかんとトバしている(笑)。
 だいもん、アーサーはマシ、みりおあたりからおかしい。途中別の人のアレンジ曲が入り、まっつでまたおかしくなり、がおりが最高峰! ここでわたしは吹き出した。そのあとまた他の人になり、カチャが大変、本人の声がわからないレベルの効果掛けまくり、みっちゃんもえらいことになって終了。

 いやはや。
 面白いな斉藤先生。

 
 斉藤先生はたぶん、真正面から「14曲収録のカバーアルバム」を作ったんだと思う。
 だから14曲通して聴くと、起承転結っていうか、音楽がドラマになっている。歌詞ではなく、曲が。
 それはとても興味深い、おもしろい作りだし、それぞれの曲も良いのだけど。

 でもね、それはひとりのアーティストが14曲歌う場合にしてくれ。

 14曲通して聴いて1作品、ってことは、なかの1曲1曲はパーツなのよ、各演出のひとつなのよ。部品なのよ。それぞれ役目があるのよ。
 でも、歌ってる人全部ばらばらなの、ひとりずつ持ち歌1曲しかもらえてないの。その状態で「部品」扱いされたらたまらん。

 歌っている男役ひとりだけ、1曲だけを取り出して考えると、その彼の個性や長所、得意分野、そして彼が選んだその曲の本来の意味、魅力とは無関係なアレンジがされているの……。

 びっくりした。

 首を傾げて聴き入り、次第に笑いツボに入り、ついには爆笑した。

 た、大変だなーこりゃ。
 すげー面白い。

 ノリノリせわしない「チェリー」とか、壮大でぽかーんな「I LOVE YOU」とか、想像の翼広げ過ぎちゃって帰ってこられなくなった「壊れかけのRadio」とか、誰が歌ってるのかわからない「Believe」とか、オモシロ曲となりはてた「悲しみにさよなら」とか。

 主役は歌う男役たちで、編曲の腕を見せつける場ではナイから! 斉藤せんせが才能豊かな作曲家であることはよーっくわかったから、コンセプトを間違えないでくれ、キミ絶対間違っただろ?? と(笑)。

 なんつーか、ヲタの世界でもあるんですよ、パロディ同人誌でも、こーゆーことって。
 人気マンガのパロディ同人誌を買ったら、原作マンガのキャラクタよりも、その同人作家のオリジナル・キャラクタが幅を利かせているってなことが。
 原作マンガのファンで、原作のキャラクタの別物語が読みたくて買ったんであって、その同人作家のオリジナルマンガだったら買ってない、興味もない! ……てことで、通常同人界でもオリキャラが登場する話は嫌われてます。プライスカードに「オリキャラ出ます」と注意書きしないとクレームの元になるくらいには。
 それと同じことをやっちまいましたね、てな。

 編曲家はもうひとりいて、こちらの方は問題なくふつーに「カバーアルバム」としての仕事をしてらっしゃいます。だからこちらの先生に当たったジェンヌはふつーに歌ってる。
 斉藤せんせに当たったジェンヌは多かれ少なかれ愉快なことに。

 言えることは、DVDがあって良かった。てこと。
 CDだけ、純粋にこのものすげーアレンジ曲のみだったら大変だった。
 DVDでジェンヌの歌う姿を見られるから、CDがジェンヌ本人の声とかけ離れていても許されるというか。

 まっつは斉藤曲で、正直「なんじゃこりゃあ」とぽかーんとしたけれど、それでもまあ、マシな部類。
 録音ではなく、ショーでならどんどん歌いこなして、歌い方も変わって、おもしろみがあるかもしれない、というような曲。
 まっつがまっつの声で尾崎の「I LOVE YOU」を歌うの聴きたかったわたしには、余計なアレンジが邪魔だった(笑)。
 
 でも別に不快だとか腹を立てているというわけではまったくなく、本気で、面白かった。

 まっつを愛でるだけならDVDを見ればいいわけで、CDは誰が歌っているとか関係なく、愉快で壮大な斉藤作品だと思って聴けばいいんだ、と。斉藤曲でない曲も、その邪魔にならない無個性なところが作品の部品、演出の一部っつーか。
 ……誰が歌ってるか関係ないよーなモノを、歌っている人のファンしか買わない場でやってしまった斉藤せんせに「空気読め」と思うだけで(笑)、アルバム自体、「音楽」としては好きよ。

 ただ、わたしがカチャのファンで、カチャ目当てでこのCD買ってたら怒ってると思うわ。ここまで歌い手の個性より自分の編曲に酔われたらたまらん。
 雪組の次回公演集合日ということもあり、雪組に関することがいろいろと発表されたわけだけど。

 再演であり、初演を知っているだけにどの役が誰、ってことで『黒い瞳』の配役発表はわくわくする。

 エカテリーナ@かおりちゃんがうれしいし、まさかのシヴァーブリン@コマがうれしい。
 コマって本気の悪役やったことあったっけ? 今の彼がどんな芝居をしてくれるのか、たのしみだー。
 裏切り者マクシームィチ@がおりとか、あーゆーややこしい役のがおりんはじわじわくるうれしい配役。
 んで、朝風くんの役って、悪役だよね? つか、「悪い」役だよね? また彼の「悪い」顔を見られるかと思うとわくわくするー(笑)。

 そして、夢華さんの休演。

 わたしは彼女の抜擢を良く思っていない。
 彼女くらいの実力を持つ研1は過去にいくらでもいたし、その上で彼女以上の容姿を持つ人たちだっていた。だけど、そんな人たちだって研1で大劇場ヒロインを務めることはなかった。
 タカラヅカの娘役というのは特別な「芸」であり、若い女の子なら誰でも出来るというものではない。それは100年近く「宝塚歌劇団」をやってきた人たちなら、作り、維持してきた人たちなら常識としてわかっていることのはずだ。
 実際夢華さんは歌ったり踊ったりという技術面はともかく、「タカラヅカ娘役」としては足りておらず、経験値の少なさを覆せるほどの「天才」ではなかった。
 早熟な技術を持つだけの凡才を、何故あえて天才扱いして、特殊な舞台に載せたのか。夢華さん自身はまだ子どもなので、自分をわかっていないだろうし、やれと言われればやるだろう。チャンスがあれば食いつくだろう。
 その結果が『ロミオとジュリエット』にてジュリエット役の休演であり、次の全国ツアー全休演だ。
 劇団はいったい、ナニをしたいのか。

 ムラでジュリエット役を演じる夢華さんを見て、「ただの記号」だと思った。
 脚本にある通りに喋り、歌い、演出家に言われた通りに動き、踊る。正しい音階で歌い、正しい動作をしているんだろうけれど、それ以上ではない。
 言われた通りに出来る、教科書に書いてある通りに出来る、それはたしかにすごいことで、「役者」としてはアリかもしれない。だが、「主役」はそれだけでは務まらない。脇を固める人ならば、その堅実さは貴重だけど。
 『ロミオとジュリエット』なのに「ジュリエット」という役は見えず、『ロミオ!』という作品でしかなかった。

 それでもまあたしかに、きれいな声で歌えてはいた。

 それが、東宝公演で。
 最終日の昼公演、つまり夢華さんジュリエットの千秋楽を観た。
 夢華さんは東宝公演を途中休演し、震災後に復帰していた。
 わたしが彼女を見るのは、ムラ以来。

 おどろいたのは、彼女のいちばんの武器であるはずの歌が、ボロボロだったことだ。
 劇団的には、彼女の歌唱力の高さをこのわけのわからない抜擢の、いちばんの言い訳として宣伝していたはずだ。
 その歌がこのデキって、もう抜擢の言い訳にできないよ??

 休演というブランクがあったとはいえ、復帰して1週間経っている。調子を取り戻していてもおかしくない。それにこれが彼女の千秋楽、ジュリエットとして、ヒロインとして生きられる最後の回なのに、このデキって??

 さらに目を疑ったのが、ロミオとジュリエットが恋に落ちる仮面舞踏会、仮面姿のふたりが向かい合って歌い出す場面。

 ジュリエットが、両足を踏ん張って、ハァハァいっていた。

 もともとそこはけっこう、踏ん張り系のポーズなんだが。可憐な子がやってもなかなか絵としては難しい感じのポーズなのはたしかだが。
 それにしても、体格が良くて肩幅ばっちり胸板むっちりの仮面姿の女の子が両足広げて踏ん張って、両手を広げて「いい男見つけた!」とハァハァ肩で息をされると、逃げて、ロミオ逃げてーー!!な気持ちになる。

 あまりにすごいことになっていたので、さすがに思った。
 夢華さん、体調悪い?
 歌がヘタになったというより、アレが精一杯? 仮面舞踏会のダンスで息が切れて、ふつうに呼吸できないくらい?

 と、心配になり、そこからはけっこう夢華さんを見ていました。
 でももともと記号としての芝居しかできない人なので、唯一動きの大きなダンス場面が済めば、あとはあまり変化がわからなかった。ふつーに台詞喋って動いてる。ただ、歌はムラほど歌えていない。
 あとはラストシーンとフィナーレくらいか、踊るのって。でもどちらも時間は短いしな。(舞踏会はほんと長い場面だからなー)

 でも、笑顔だった。ちゃんとかわいく笑っていた。

 最後の大階段パレード。
 彼女がジュリエットとして、この大きな劇場のヒロインとして最後のソロ、声を出す場面になる……のだから、ふつうなら相当気合い入れて、集大成とばかりに美しい歌声を聴かせてくれるだろうに。
 カマしまくりっつーか、フラフラボロボロ。
 泣いているのかな、と思った。感極まって泣いちゃって、まともに歌えなくなっちゃったのかなと。

 泣いているかどうかは、わたしにはわからなかった。涙の有無までは見えない。
 ただ彼女は、ちゃんと笑っていた。

 体調が悪くても、これが彼女ひとりの千秋楽だとしても、舞台人ならナニゴトもなくキラキラの笑顔でいなければならない。
 そのあとの、みみちゃんジュリエット千秋楽でも、フィナーレにて笑顔で踊り、パレードもふつうにしていた。

 なので、ほんとのところナニが起こっていたのかはわからない。
 でもわたしは、「夢華さん、体調悪い?」てなことを終演後に友人に話したりしていた。
 病み上がりだから、そうだとしてもおかしくはない。

 そして。
 今回の、全ツ休演。

 『ロミジュリ』と同じ休演理由、「体調不良」。

 『ロミジュリ』を休演した時点で、わたしはもう夢華さんは『ロミジュリ』には出演しないのかと思っていた。
 出たり出なかったりすることで、他のキャストにも舞台全体にも、あまりに負担が大きすぎる「ヒロイン」の休演だ。幸いWキャストで、彼女より経験値の高いジュリエットがすでにいるのだから、無理に戻ってこなくても、治療に専念できる。もちろん、彼女のジュリエットを楽しみにしていたお客さんには不実なことだけれど、「体調不良で休演」になってしまったのだから、あとは舞台維持の方が大切じゃ?と。
 勝手な考えですが。

 でも、ラスト1週間、数回だけ復帰。レベルの落ちた姿で。

 なんというか。
 たとえ万全でなくても、彼女は「戻る」しかなかったのかなあと思った。
 体調不良が深刻であればあるほど、これで『ロミジュリ』を残り全部休演して、その上全ツまで休演したら、もう彼女に居場所はない。次の本公演で集合日退団でもするしかないっていうか。
 タカラヅカの舞台に立ちたかったら、今、なにがなんでも舞台に、公演に戻らなくてはならなかった。
 それであんなデキなのに、状態なのに、戻ってきた。
 そして、全ツには出られる体調ではなくなった。

 夢華さん、まだハタチくらいだよねえ。そんな子が、そこまで追いつめられてるのか。

 いや、だとしても、半端なモノを見せるくらいなら休演してろってゆーか、そもそも休演せずふつーに全部務めろ、それがプロだ、って話なんですが。
 自業自得、自分で選んで、自分でやっていることなんだろうし。

 わたしは彼女の抜擢には反対だしその舞台姿もヒロインとしての力も足りてないと思っているし、Wキャストもトップ娘役不在も全部NO!、アホな所業だったと思ってますが。
 だからといって、ひとりの女の子が公開処刑されているかのような姿には、肩を落とします。見てられない。

 や、劇団が公式に発表していることと自分が実際目にしたことから、わたしが勝手に想像したことでしか、ありませんが。

 みみちゃんが正式に雪組トップ娘役に決まり、それがうれしくて仕方がないだけに。
 じゃあ『ロミジュリ』のWキャストはいったいなんだったんだと、やるせない思いですよ。
 みみちゃん、トップ決定おめでとー!!
2011/03/24

雪組 トップ娘役について


この度、雪組トップ娘役に舞羽美海が決定致しましたのでお知らせ致します。

尚、トップ娘役としての公演は、2011年4月23日に初日を迎える雪組全国ツアー公演『黒い瞳』『ロック・オン!』からとなります。

 モバタカメールを受け取ったときムラにいたんですが、メールを開く指が震え、「舞羽美海」の文字を見てマジに泣けました。

 よかった、ほんとによかった。
 「娘役トップスター」がいる。キムくんに相手役がいる。雪組に、トップコンビがいる。
 あたりまえのことなのに、そのあたりまえが泣くほどうれしい。

 そして、『ロミオとジュリエット』東宝楽を観てから、わたしのなかではすでにみみちゃんがキムの相手役、トップ娘役だったので、事実が追いついてきてくれて、喜びひとしお。

 あのランドセル背負っていた子が、トップスターかああ。じーん。(すっかり近所のおばちゃんモード)
 や、実際、背負ってたしな、ランドセル(笑)。←『忘れ雪』

 
 わたしにとってみみちゃんって、長い間興味の対象外の女の子で。
 舞台で見失うというか、見つけられないというか。芝居はまだ役があるからいいとして、ショーになるとどこに出ていたのかよくわかんない……という。リピートして、意識して捜したり、「キムの横にいた女の子は誰かしら」とまともに見てみてはじめて、「ああ、みみちゃんか」と気付く。
 そんなだから、彼女の場合わたしの注意を引いたのは、なんつっても素顔の美しさだ。
 なんで抜擢されてるのか舞台ではあんましわかんない、悪くはないけどまあこんなもん? 学年相応のビジュアルと実力? てな印象だったのが、素顔で登場するテレビ画面でびっくり。うわっ、すごいかわいい! しかも、タカラジェンヌというより、ふつーのテレビタレントみたいにかわいい。
 タカラジェンヌはタカラジェンヌだからイイというかアリな面が大きく、一般社会でのアイドルだーのタレントだーのに比べてかなり特殊というか個性的というか、ええっと、なモノであって。わたしはもちろんソレでいいと思っているが、みみちゃんは一般的なタレント系美少女だった。
 スカステニュースはもとより、水くんトップ時代やたら雪組ばかりテレビに出まくっていた一般局の番組で、みみちゃんの美少女ぶりに刮目した。

 つっても、舞台人は舞台が勝負。
 素顔がどんだけ美しくても、一般ウケするかわいさや現代らしさを持っているとしても、「タカラジェンヌ」として、「タカラヅカの舞台」で美しくなければ、なんの意味もない。
 舞台の上で、見つけられなきゃ、興味をかきたててくれなきゃ。

 そんなみみちゃんがわたしの興味を引いたのが、『オネーギン』。
 ヒロインのタチヤーナ役は、今までの彼女への評価を覆すものだった。

 といっても、1作品だけじゃ、まだわからない。
 『ロミオとジュリエット』でWキャスト、ジュリエット役になったはいいが、どうなることやら。
 わたしがもうひとりのジュリエット・夢華さんの抜擢に納得できていないこともあり、みみちゃんを贔屓目に見てしまう、底上げされてしまうことはあるだろう。でもみみちゃんだって特別好きな娘役さんでもないし、『ロミジュリ』なのにロミオ役しか好きじゃないっつーのはきびしいなあ。
 みみちゃんの武器というと、「かわいい」だけだもんなあ。

 そんな状態での観劇で。
 『ロミジュリ』についてムラ初日からえんえん感想を書き連ねてきたけれど、みみちゃんジュリエットについての感想は、わずか数行だった、最初の方(笑)。
 見た目がジュリエットらしいからいいんぢゃね?みたいな。かわいいからいいんじゃね?みたいな。
 それよりロミオ@キム見てた方がおもしろいから、ジュリエット見てるヒマないや、みたいな。この話って『ロミオとジュリエット』ぢゃなくて、『ロミオ!』だよね、てな。

 それが自分でも類を見ないリピート回数ゆえ、贔屓が出ていない場面への視野はどんどん広がってゆき。
 ジュリエット@みみちゃんを、どんどん好きになる。

 変わったのは、わたしなのか、みみちゃんなのか。
 テレビCMと同じで、繰り返し繰り返し彼女を見ていたから愛着がわき、それが好意になったのか。
 みみちゃん自身が舞台の上で変わっていったのか。

 最初あんなによくわかんなかった「ジュリエット」が、「ヒロイン」としてとてつもなく魅力的な女の子に見える!!
 「『ロミオとジュリエット』なのに、肝心のロミオとジュリエットの間に愛が見えない……」とか思ってたのに、東宝楽ではふたりのいちゃいちゃぶりに泣けた(笑)。
 愛があるとたのしい! 『ロミオとジュリエット』たのしい!

 キムくんとのコンビぶりを、心から愉しんだ。
 わくわくした。ときめいた。きゅんきゅんした。

 だからこそ、そんな娘役さんが、雪組のトップ娘役に、キムくんの相手役になることが、ほんとにうれしい。

 全ツからトップコンビかあ。
 やっぱヅカとは無関係な地方のお客さん相手に巡業するんだもの、ポスターにでかでか載っている女の子がトップじゃないなんてはず、ないもんな。みみちゃんトップ構想はふつーに以前からあったんだろう、と思った。
 が。
 それなら『ロミオとジュリエット』のWキャストは、研1生の前代未聞の抜擢はなんだったのか、疑問だけが残る……。

 
 んで、ラインアップも発表。とりあえず、担当組分だけ貼る。
【宝塚大劇場、東京宝塚劇場】
雪組
■主演…(雪組)音月桂、舞羽美海

ミュージカル
『仮面の男』
原作/アレクサンドル・デュマ 脚本・演出/児玉明子

「三銃士」の続編であり、レオナルド・ディカプリオ主演の映画でも話題となった、アレクサンドル・デュマ原作による「仮面の男」を上演。17世紀のフランス王宮を舞台に、ルイ13世の双子の王子が、ダルタニアンや三銃士と共に活躍する、恋、友情、サスペンス、そしてアクションありの華やかな冒険活劇。

ドリームステージ
『ROYAL STRAIGHT FLUSH!!』
作・演出/齋藤吉正
              
「ROYAL STRAIGHT FLUSH」とは、トランプゲーム“ポーカー”の最高の決まり手のことであり、無敵、最強といった勝利の代名詞。「華麗なるゲーム」とも言える人生における喜怒哀楽をゲームに置き換え、雄々しい勝者の姿、ドラマティックな美しき敗者にもスポットを当てながら華麗に展開する、華やかなレビュー大作。

【宝塚バウホール】

雪組
■主演…(雪組)彩凪 翔/彩風咲奈

バウ・ワークショップ
『灼熱の彼方』
~「オデュセウス編」と「コモドゥス編」~
作・演出/鈴木圭
       
西暦180年。時の皇帝マルクス・アウレリウスに仕える将軍オデュセウス、自らの野望と平和への願いとの間で苦しむ次期皇帝コモドゥス。ローマ帝国を舞台に、すれ違いぶつかり合う二人の男の戦いと絆、その二人の間で揺れ動く一人の女性。「オデュセウス編」(主演:彩風咲奈)、「コモドゥス編」(主演:彩凪翔)と題し、三人の恋愛物語を異なる二つの角度から描くミュージカル。

 バウはまさかの彩凪翔!! やったー! つーと次は彼に新公主演来る? わくわく。

 本公演はリピート基本である以上、どんな演目・演出家かが死活問題なので、どちらも楽しそうなものでうれしい。植爺とかイシダとか、わたしの鬼門が当たらなくてよかった、神様ありがとう(笑)。

 こだまっちとゆーと『天の鼓』があるのでイイのですが(鼓より軽い命!)、サイトーくんとまっつの芸風の接点が見あたらないあたりに、わくわくと震撼しています……(笑)。
 東京に住む親友がわざわざ大阪のわたしのところへやってきて、それは思いがけない再会で、
「**ちゃんじゃない、どーして大阪にいるの?!」
「こあらちゃんに会いに来たの」
 と言われたら、こあらちゃんはふつー、なんと返すでしょうか。

「うれしー。わたしも会いたかったよー。元気? 最近どう?」
 てな言葉にならないか?

 まず、訪ねてきてくれた友人のことを話すよねえ?

 それがもしも、
「**ちゃんじゃない、どーして大阪にいるの?!」
「こあらちゃんに会いに来たの」
「ねえ、まっつは? まっつベン様は今どんな感じ?」
 と、こあらちゃんが返したら、ひんしゅくですよね。

 わざわざ会いに来てくれた親友より、まっつかい。
 そりゃ、こあらがまっつ大好きなのは知ってるけどさー、東宝のまっつがどんな風か、話してやろうと思ってたけどさー、でもコレはないんぢゃない?
 と、その親友が思っても、仕方ない……つーか、カチンときて、とーぜんですよね?

 『ロミオとジュリエット』のマントヴァ場面にて。
 まっつメイトと、話してたんですよ。

「ロミオ@キムにジュリエットの死を伝えるベンヴォーリオ@まっつは、何故ああも学芸会ちっくなのか」を(笑)。

「ベンヴォーリオぢゃないか、どうしてここに」
「君に会いに」
「ジュリエットはどうしてる? なにか伝言は?」
「ジュリエットは亡くなったよ」
「嘘だ」
「嘘じゃない。毒を飲んで、自ら命を絶ったんだ」

 とゆーよーなやりとりで、最後の一文のとこ、ベンヴォーリオの言い方ってなんかアレだよね? 嘘くさいというか、「演技してます俺!」って感じだよね?
 まっつメイトから切り出され、あ、そう感じてたのわたしだけぢゃないんだ(笑)、と思ったわけなんですが。

「ベンヴォーリオ的にはずっとロミオの味方で、ロミオのために『僕たちのせいじゃない』って歌ってかおりちゃんに『言い逃れだわっ』とか責められたり、さんざんがんばってきてるのに、『どうやって伝えよう』ってあんなに苦悩して、わざわざマントヴァまで会いに来てるのに、そんなベンヴォーリオに対してロミオときたら『ジュリエットは?』でしょ? ひどくない?」
 ひどいよ。
 わざわざ大阪まで会いに来てくれた親友に、開口一番「まっつは?」と聞くくらいひどいわ(笑)。

 ロミオの態度は酷い。
 ベンヴォーリオが内心カチンときていてもおかしくないくらい。

「じゃあやっぱりベン様あそこ、実は、『いい気味だ』とか思ってるかもしれないよね?」

「嘘じゃない。毒を飲んで、自ら命を絶ったんだ」……と、とても明瞭な口跡とわざとらしい節回しで、やたらテンション高く叫ぶところ。

 あそこを嘘くさいよね、ベン様。
 なんか「演技してます」って感じだよね?
 あそこが芝居がかって嘘くさいと、まるでベンヴォーリオがチクリと毒を含ませているというか、ムカついたからちょっぴり悪意があってもおかしくない感じというか。

 いや、ベン様芝居日替わりだし、ほんとに可哀想なときもあるんだけど、けっこー高確率で嘘くさい苦悩っぷりで。
 ツッコミどころでございました(笑)。

 感情表現の薄いまっつさんだから、気合い入れてがんばった結果、やりすぎて愉快なことになっていただけかもしれませんが。
 
 ほんっとロミオひどいよねー。親友相手にやっちゃいかんよね、あーゆーの。
 いやいや大丈夫、ベン様はロミオよりマーキューシオ@ちぎに惚れてる男だし。
 マーさんなら「君に会いに」と言うベン様無視して他の人の話したりしないし。マーさん、ベン様大好きだし。
 ああ、マーキューシオならそうだろうけどねえ。
 と、関係あるんだかないんだか話に、逸れてゆきましたが。

 
 ジュリエットの死を告げるときのベンヴォーリオの、あのみょーなテンションと節回しはなんなんでしょうね(笑)。
 なまじまっつの声がイイもんだから、さらに嘘くさく芝居っぽく響くというか。

 しかし千秋楽はなにかにせき立てられるように言い切っていて、いつもの節回しぢゃなかった。
 あれなら学芸会ちっくぢゃない! スカステ映像に残る回でその演技で良かったよベン様の中の人!(笑)

 
 ところで「宝塚GRAPH」2011 4月号のサイドショットセレクションすばらしいですな。
 4P目の右上の写真にキュン死する勢いで購入しました。
 ベン様の右手の美しさに萌えです。
 しあわせなことに、東宝ではずーっとまっつメイトと一緒だったので、最初から最後まで「まっつカッコイイ」しか言わず、それで成り立つ会話だけをして過ごしました(笑)。

 11日の朝、京都テレビ放送の『TAKARAZUKA CAFE BREAK』でまっつの回を見ていたので、ベン様がムラより大人びていること、クールになっていることは知っていた。
 『ロミオとジュリエット』東宝公演のベンヴォーリオ@まっつのいちばん大きな変化は、ロミオ@キムくんのたんぽぽプレイ銀橋のやりとりですな。

 あの痛々しい少年ぶりっこが、なくなっていた。

 無理だから! 不自然だから! まっつに低年齢かわいこちゃん役は!(笑)
 オープニングのダーク&クールっぷりとかけ離れた、幼いおどけた演技は全編通しても浮きまくっていたので、年齢がぐっと上がったベン様には、心からほっとしました。
 てゆーかイケコ、なんで最初からコレはあかんかったん……? 初演の涼さんもそうだったから、イケコの指示だったんだよねえ……。

 全体的に大人びて、やりすぎ感がなくなっていた印象。
 だって「綺麗は汚い」で、女役しなくなってるんだもん!! 地味にショックだったわ(笑)。
 男と女について歌うマーキューシオ@ちぎくんに寄り添い、マーさんが彼氏、ベン様が彼女、という風情でポーズを決めるのがムラではデフォだったのに!! ここでシナを作りすぎて、マーさんに引かれたりする日もあって、すごく愉快だったのに!!
 ヲカマポーズはしなくなったんだー。ただ寄り添ってるだけになってた。昼公演も千秋楽も。

 そして、かわいくて大好きだった、舞踏会潜入時、口元で手をわきわきするの、これもなくなってたなあ。

 ラストの霊廟で、ロミオとジュリエットの眠る台の端っこにすがりついて泣き崩れちゃうのも、なくなったのか……。
 2回とも、一瞬顔を伏せるけど、大半は顔を上げたまま歌ってた。
 顔伏せて動かなくなっちゃうの、好きだったんだけどなあ。

 好きだった「かわいらしい」「悪のり」な部分が薄くなり、キャラクタとしてはまとまっていたんだと思う。
 ムラのベン様、いくつか人格ある感じだったからな(笑)。リピートする分にはそれくらい場面場面で差があってくれても、十分楽しかったんだが。

 んで、大人っぽく、よりクールになったベンヴォーリオ。
 20日の昼公演は彼との再会を確認するだけで終わってしまったので、特に語ることもないんだが。
 問題は、千秋楽。

 ベンヴォーリオ、超絶カッコイイ。

 なんかもー、アタマをがつんと殴られた思いです。
 マジすかアレ、なんなんですかアレ。
 ベン様マジ素敵です。格好良すぎです。

 オープニングの「ヴェローナ」でのベンヴォーリオの「笑い方」にびびった。

 いちいち、歯を剥いて笑うんです。
 野蛮な表情、下卑な笑い。
 ちょ……っ!!

 まっつというと、品の良さと知性、これが彼の持ち味です。貴族とか医者とか、身分にしろ知識にしろ高いキャラクタがハマる人です。
 ふつーに芝居をすると持ち味は出るから、勝手にどこか品のある人になってしまうわけですよ。
 それが、持ち味とはチガウ表情をしている……!

 今まで見た中では、いちばん『Red Hot Sea II』に近いかな。彩音ちゃんに絡んでまとぶんを殺しちゃうあの悪党、あの役を演じているときのまっつを思い出した。

 『Red Hot Sea II』のときは容赦なく悪党だったけど、ベンヴォーリオはそうじゃない。
 あくまでも、二枚目。
 美形としての矜持を崩さないまま、『Red Hot Sea II』のときのような下卑な笑い方をする。

 …………ときめきました…………。

 はじめて見るまっつだ……まっつニューバージョンだ……この人どこまで変わり続けるの……心臓ばくばく(笑)。

 オープニングのベンヴォーリオが格好良すぎて。
 飼い慣らすことの出来ない野獣。今までムッとした顔をしていたところで、ニッと歯を剥いて笑って見せたり。
 見下した視線、明らかな凶暴性と、それを隠すわけでもなく抑えているクールさ。

 見られてよかった。
 このまっつを、ベンヴォーリオを見るためだけでも、東京まで来て良かった!と、痛感した。

 また、千秋楽のベン様の女ったらしぶりは、すごいことになっていて。

 いったい何人にキスしたら気が済むの……っ。

 舞踏会でキスする相手は通常3人。これは振付、演出のうち。
 それが千秋楽は4人にキスして、その他数名にも投げチューしてた……。ぼーぜん。

 キングやパリス@ひろみちゃんにも秋波送りまくり。反応しているキングがかわいい。男にコナかけられて、びびったろうな……。

 舞踏会だけでなく、他の場面でも隙あれば「ちゅっ」ってリップ音たてる感じの仕草を女の子たち相手にしていたぞ、ベン様。

 なんなのあの小悪魔……魔性の男……エロエロ男……。

 ワイルドでクールでエロエロで、ベン様から目が離せません!! わーん、どーしよー!

 んで、マントヴァのロミオにジュリエット@みみちゃんの死を伝えるところでは、すごく切羽詰まった告白をしていたし!
 これなら学芸会ちっくぢゃないわ!(え)

 最後の「罪びと」で舞台中央、ゼロ番で歌うベン様の笑顔がまた、今までの彼と違っていて。
 なんだかとても儚い笑顔で歌っていたの。
 頼りなげで儚い、解き放たれたような笑顔。

 あ、まっつの笑顔だ。
 と、思った。

 わたしがまっつファンになった頃、彼はこんな笑い方をしていた。
 今みたいな美形キャラとかクールとかドSとかゆーキャラクタぢゃなく、ヘタレとか薄幸キャラとか「笑うな、不幸が伝染りそうで嫌」とか言われていた頃の(笑)。

 とてもなつかしい、へたれわんこなまっつの笑顔!

 今のまつださんは黒ヒョウだけどね! もしくは気まぐれな黒猫だけどね!
 出会った頃のまっつさんは八の字眉毛をマジックでイタズラ書きされたよーな、なさけないわんこ風だったんだもの。

 なんか今、なつかしいモノを見たぞ? と思っていたら、最後の最後、パレードのときに同じ笑顔をしていた。

 ……辛かったんだろうなあ。この、公演。特に、13日以降。
 それはまっつだけでなく、出演者みんなが感じていた辛さや緊張感だったことだろう。
 それでも彼らは舞台人で、フェアリーで、演じきること、舞台に立ち続けることを、まっとうした。
 やり遂げたからこその、笑顔なんだろう。

 今の成熟した男役・未涼亜希としての笑顔ではなく、ずっと幼い未涼亜希の顔が出てしまうくらい。

 
 んで、パレードで泣いてたそうですが、未涼さん。1階席にいたまっつメイトから聞きました。
 2階のわたしの席からはわかりませんでした。残念(笑)。
 星組の『ロミオとジュリエット』と、雪組の『ロミオとジュリエット』の、いちばん大きな違いはなんだろう?
 ハコもチガウし演出もチガウし、違っていて当然なんだけど、それにしても。

 わたし的にいちばん大きな違いは、「ロミオとジュリエットのラヴラヴ度」だと思っていた。
 星組版を観たときは、そりゃーもー、ロミオとジュリエットにめろめろだったさ。ちえねねが好きだ、ちえねねが好きだって、ふたりがしあわせそうにしている、愛を語っている、それだけでだーだー泣けて仕方なかった。

 ところが雪組版を観ても、そういう意味でのときめきは感じられなかった。
 天下のラヴロマンスなのに、ジュリエット役はふたりだしさ。トップスター・キムくんの相手役は決まってないしさ。
 星組で感じられた、トップコンビのお似合いぶり、ラヴラヴっぷりに没入する感覚、それが雪組にはなかったんだ。
 他のタイトルならそれでもいいのかもしれないけど、なにしろ『ロミオとジュリエット』だよ? 世界でもっとも有名なラブストーリーでなんで、主役カップルの恋愛に酩酊できないの?

 キムくんの持ち味的に、女の子にデレデレに恋愛するタイプじゃないしなあ。こんな状況じゃ、仕方ないか。
 そう思って、そのへんはあきらめていた面があったのだけど。

 雪組『ロミオとジュリエット』東宝千秋楽。

 ロミオ@キムとジュリエット@みみに、泣けた。

 ロミオとジュリエットが、ロミオとジュリエットであること。
 ふたりが出会い、恋に落ち、愛し合う。
 その過程のひとつひとつに熱いモノがこみ上げ、泣けて泣けて仕方なかった。

 バルコニー場面から泣きっぱなしですよ。
 ナニこいつら、かわいすぎる。
 ロミオの笑顔がきゅんきゅんする。

 ふたりがいじらしく、抱きしめたくなる。
 この恋を、このふたりを応援したいと思う。
 生きて、しあわせになるふたりを見たい。
 心から、そう思う。

 だから「私に勇気を下さい」と歌う乳母@コマにもさらに泣ける。
 感情移入半端ネェ。
 へたれるロミオに渇を入れ、立ち上がれと歌う神父@にわにわにも泣ける。
 救いたい、力になりたいんだ。

 神はまだ、見捨てていない。
 彼らを。わたしたちを。

 しあわせを欲し、愛を欲し、懸命にあがく。努力する。それらは無駄ではないはず。未来へ、希望へつながるはず。
 そう信じて。望んで。渇望して。

 キムみみが好きだ、キムみみが好きだ。
 ふたりがふたりで過ごし、歌い、踊る、それを見るのが好きだ。

 ジュリエットの強さと美しさ。
 これが「ジュリエット」ではない、別の女の子だったとしても、わたしはこの子が好きだ。
 そう思える魅力。
 この子だからこそロミオは一目惚れして、ティボルト@ヲヅキが長年片恋を続け、乳母が味方をしたんだろう。

 ヒロインを好きだと思える物語は、楽しさがチガウ。
 わたしは女性だからこそ、ヒロインには共感できるものが欲しい。ヒロインを愛せる物語は、ヒーローが素敵であること以上に物語を豊かにする。

 霊廟で「ふたりのパラダイス」を歌うジュリエットに号泣。
 その迷いのない、強い意志。
 狂ったのでも悲しみや依存ゆえでもなく、誇り高く愛を選び取る姿。

 あのロミオが、愛した少女。
 あのロミオを、愛した少女。

 それを納得させてくれる。

 
 ロミオはねえ、「世界の王」から泣かせてくれてさぁ。
 マーキューシオ@ちぎが下手の階段で仮面付けてふざけていて、そこへ奥からロミオが「やあ」と現れて。
 モンタギューの仲間たちが「ロミオー!」と迎え入れるんだけど、ここが、もお。
 みんなすごい勢いでロミオにまとわりついていって。
 抱きついていって。

 まさかの、ショーストップ。 

 数秒のことであっても、舞台進行止まってた。
 
 キムを迎える、仲間たちの姿に。

 次々抱きついてくる仲間たち、それを赦して、舞台が止まる。
 それが終わるまで、物語が止まる。

 ああ、大変だったね。いろんなことがあったね。
 だけどみんなで乗り越えてきたね。
 キムくんを中心に。
 雪組トップスター、音月桂を中心に、彼を信じて、彼を愛して。

 昼公演を観たとき、「世界の王」で早々に手拍子が入るのに驚いた。てゆーか違和感。盛り上げたいのはわかるけど、曲がもう少し盛り上がってからでもいいんじゃね? なんでスタートと同時に手拍子なの? と思ったんだが。
 千秋楽ではそんなこと感じなかった。

 舞台の上で、キムと雪組っ子たちが輝いている。
 愛があふれている。
 そのことに励まされ、勇気づけられ、愛しさと喜びに奮える……その気持ちを、表現したい。舞台へ返したい、示したい。
 そんな思いが、手拍子になる。
 一緒だよ。
 みんなみんな、一緒だよ。
 わたしたちも、ここにいるから!! そんな思いで、手を打ち鳴らす。

 いつもはカラダをぶつける程度だったロミオとベンヴォーリオ@まっつが、いきなり抱き合っていた。ハグしていた。
 それを見てさらに、だーだー泣く。
 まっつが、笑っている。幸せそうに、楽しそうに。仲間たちと。
 それを見て、さらに泣く。

 ありがとう。
 誰に対してでなく、繰り返し思う。
 ありがとう。ありがとう。

 キムくんの安定した実力。
 こんだけ問題が矢継ぎ早に起こり、いろんなものを抱え込まされて、それでもそこに立ち続け、力を出しつづける彼に敬服する。
 キムの創るロミオが好きだ。
 闇の気配と、素直な朴訥さ。繊細さと土着的強さ。
 誰からも愛され、赦される存在。仲間たちを裏切ってなお、結局のところ愛され続けたであろう、そのキャラクタ。

 フィナーレの男っぽさの対比もいい。
 いろんな魅力を持った、自慢のトップさん。

 『ロミオとジュリエット』のなにもかもがうれしくて、愛しくて。

 キムみみが好きだ、と心から思うだけに、「どうしてみみちゃんが娘役トップじゃないんだろう」という疑問はわくし、今回の研1抜擢とWキャストの意味は最後までわからないままだったけれど。
 そんな疑問に足を取られて今目の前の美しいものを見失うのは、馬鹿げている。
 ロミオ@キムと、ジュリエット@みみを愛する。堪能する。このカップルが、大好きだ。
 キムみみ万歳!
 トップコンビのラヴラヴ万歳! それでこそタカラヅカ!

 組子たちの団結とまぶしいパワー万歳! それでこそタカラヅカ!

 
 良い千秋楽でした。
 ありがとう。
 いろんなもの、いろんなひとに、ただもお、ありがとう。
 雪組東宝『ロミオとジュリエット』千秋楽に行ってきました。

 震災発生が11日。その翌々日の13日に、劇団が上演再開したことには、心から驚きました。

 わたしは公演中止を願ってはいなかった。
 ふつうに上演されていた公演が、突然中断され、そのまま「なかったこと」にされる。
 それが別れだと気付かないまま、あとになって「あれが最後だったんだ」と思う……それが、嫌だった。わたしは。
 公演だけでなく、すべての出来事に対して。
 「あのとき会った、あれが最後だった。……最後だってわかっていたら、もっとなにかしたのに」とか、あとから悔やむことへの恐怖。
 この世のほとんどのことが予測なんてつかないものだから、後悔の連続だけど、企業の行うエンターテインメントぐらい、「最初と最後」を区切ってくれてもいいじゃないか。
 自分が行けるかどうかではなく「*月*日が千秋楽」で、「ああ、この日が最後なのね、これで終わるのね」と区切って欲しかった。
 虚構を創る舞台というものが、外からの力でもぎ取られ、そのまま地に沈むこと、消えてしまうことが嫌だった。たかが虚構、現実になくてはならないものでないからこそ。人が人工的に創ったモノならばなおさら、人の力でコントロール出来て欲しい。

 「幕を下ろす」という行為をして欲しかったの。
 だからこのままなし崩しに「全公演中止」はつらい。
 まだ被害の全貌が見えていない時期に、わたしは漠然と「震災後しばらくは上演中止。電力不足と言われているから、電力消費の激しい平日も中止。千秋楽前の土曜日から再開し、千秋楽はふつうにやる」ぐらいの感じかな、と思い、そういったカタチを希望しておりました。ナニか根拠があるわけではなく、なんとなく。「幕を下ろす」、つまり千秋楽だけでもなんとかやって、きちんと観客に挨拶をする。そういうカタチを望んでいた。
 大好きな『ロミジュリ』だから、もっともっと上演して、もっともっと観たいけれど。断ち切られるのはもったいないと思うけれど。ラスト2日上演できたら幸いだな、と。

 でも、まさか翌々日に再開するとは。

 安全面や電力、交通手段など、問題がないのなら The show must go on.上演するべきだと思っている。不謹慎とか自粛とかいう、空気だけの問題なら、夢を織ることのナニが不謹慎なんだ、虚構は虚構として愉しむものだ、と。

 問題がないのなら、です。
 問題ありまくりなのに、強行上演ってどうなの。

 そして、演じているジェンヌさんたちはどうなの。どんな気持ちでいるの。

 テレビで繰り返される苛酷な現実と、大阪で変わらない日常を送る自分のギャップに意味もなくへこんで、観劇感想を書く意欲も失せ、ブログも放置していました。
 もちろん観劇意欲もなく、『ヴァレンチノ』が観たかったのに、観劇のお誘いはあったのに、腰を上げることが出来ずにいた。

 そして、発売日に届いた『14 COVERS TAKARAZUKA OTOKOUTA』を聴いて、マジ泣きしました。

 会いに行こう。
 まっつに、会いに行こう。
 タカラヅカに、会いに行こう。

 こんなに遠いところでぐるぐるしていちゃダメだ。
 真実は劇場にある。
 テレビでもネットでも噂でもない。

 ナマの彼らに出会い、ナマの空気を感じる。
 それに勝るモノはないんだ。

 『男歌』はすごいアルバムで、マジ泣きしたのは事実ですが、実は大爆笑もしました……ナニこれ面白い……なんてひどい作り(笑)、と。いずれ感想書きます。

 
 つーことで、最終日だけはなにがなんでも観るつもりでした。
 震災がなければもう1回別に遠征する予定だったんだけど、それは吹っ飛んじゃったので、ラスト1日が最後のチャンス。

 なんかいろいろテンパってて、遠征前日にひとりでべそべそやったりしてたこともあり、きっとわたし、雪組のみんなに、『ロミジュリ』に出会えたら大泣きするんだわ。と、思っていた。
 チャリティ公演として終演後の挨拶があるようになり、そこでキムくん泣いてるとか、フィナーレでまっつが泣いてたとか、話だけはあちこちから目に耳に入ってきているし。ジェンヌさんたちはぎりぎりのなか、真摯に舞台を務めている。妖精であるという使命を全うしている。
 余震の中変わらず舞台に立ち続け、拍手喝采でものすごい感動的な回もあったというし。きっと未曾有の感動が押し寄せ、大感動の舞台になるんだわー!!
 と。
 なんか勝手に想像して、盛り上がってました、わたし。

 そうやって構えて観劇した、11時半公演。

 えーと。
 大感動で涙涙で……。
 えーと。

 なんかすごく、ふつーでした。

 そこにあるのは、見慣れた舞台で。
 1ヶ月半前、2日と空けずに観にいっていた、「知っている」モノで。

 公演を重ねるごとに芝居は進化するし役者も成長する、そういう意味での違いの有無ではなくて。

 観ることが日常だった、わたしの『ロミジュリ』。
 それとナニも変わらない、記憶のまんまの『ロミジュリ』が、そこにあった。

 ただもお、なつかしかった。

 やあ、ひさしぶりだね。1ヶ月ほど会ってなかったね。……友だちに、そんな風に再会する感じ。
 なにも特別なことはない。
 勝手に「非常事態での上演だから、特別なナニかがある」と思い込んでいた。
 たしかに今この状況での上演で、演じている人たちも、足を運んでいる観客も、ナニかしら抱えているのだけど。雪組のみんなはもちろん大の熱演なんだけど。
 それでも、そこにあるのはまぎれもない、「日常」だった。

 昨日までと同じ、明日からも続くと信じている、日常。
 たしかなものなんてこの世にはなにひとつなく、いつ断ち切られるかしれない。明日日本が、世界が、平和に存在しているかなんて誰にもわからない。明日わたしが生きているかどうかだって、わからない。
 それはまちがいないことで、今回の震災でそれをさらに実感しているところだけれど。
 だからこそ。

 この非常時に、「日常」と思える舞台を、東京で公演している是非は置くとして。
 今、ここに、「日常」と思える世界があることに、感謝した。

 ああ、ふつーだ。特に感動的ってわけじゃない、あたりまえで、いつも通り。
 しばらく会ってなかった、ひさしぶり、そう思えるくらい、ふつー。
 記憶に焼き付いているままの『ロミオとジュリエット』を、ひとつひとつ確認する。うんうん、ここはこうだった、そこはそうだった。あれ、ジュリエットの衣装チガウ、フィナーレの動線がチガウ。変わったとは聞いていたけど、ふーん、こんななのか。そうこうしているうちに、幕は下りた。
 
 もっと感動して大泣きすると思っていたのに。
 ぜんぜん泣けない。
 ふつうに、楽しかった。

 そのことに、カラダの緊張を解く、思いがした。
 
 
「あ、募金箱。あたしちょっと入れてくる」
 と、出口まで来て、あわててロビーへ引き返す見知らぬ年配女性。連れの女性も一緒になって財布を開ける。
 うん。ネットからも他の団体からも募金はできるけど、とりあえず、この劇場のこの箱に、入れたいと思うんだ。

 わたしは、タカラヅカファンだから。
 劇団のやり方にいろいろいろいろ目眩を感じていても、舞台の上にある真実を信じているから。
 愛しているから。

 
 で。
 昼公演でぜんぜん泣けなかったからそーゆーものかと思っていたら、千秋楽では泣きっぱなしで大変だった、という(笑)。
 あー、『ロミジュリ』好きだー。キムくん素敵、みみちゃんかわいい。
 でもってまっつ、かっこいー。
 月組初日『バラの国の王子』『ONE』観劇しました。

 東宝観に行ってるまっつメイトとメールでやりとりしつつ、西と東で観劇な平和な1日……の、はずだった。

 キムシン新作『バラの国の王子』。
 ポスターのきりやさんにわくわくしまくっていた「美女と野獣」。あのポスターはアリですよ、大好きですよ!

 あちこち泣きまくり、ツボ入りまくり……しかし「これ、面白いのか?」と疑問も消えない微妙な作り。
 わたしが単にキムシンと波長が合うだけで、構成演出的には残念作なんぢゃ……? ナニこの合唱劇。ト書きだけで進む話。

 てゆーか野獣@きりやんが一目惚れした相手って、商人@越リュウなんぢゃないの?
 ベル@まりもは、商人の娘だっちゅーだけで……という疑問からアタマが動かず、苦労した。

 きりやんとまりもちゃんなら、ドシリアスな大人な物語を見てみたい……と、観劇中にすら思いました。
 『ジプシー男爵』に続き、またしてもおとぎばなしっつーのは、偏りすぎてる気がする。

 
 そーやって芝居が終わり。
 休憩時間を告げるアナウンスに、耳慣れない1文が付け加えられていた。

「宮城県沖を震源地としたM8の地震が発生しましたことをお知らせします」

 え?
 観劇中はまったく気付かなかった。
 関西も揺れたらしいが、大劇場は変化無し。なごやかな幕間風景。

 とりあえず休憩時間はネットで情報収集。

 
 阪神大震災を、思い出していた。
 部屋中の家具が全部倒れた、落ちた。停電し、ガスが止まった。
 数百冊の本の下敷きになったまま、揺れがおさまるのを待った、あの記憶。

 
 ナニゴトもなくショー『ONE』がはじまった。
 ああ、はじまるんだ。東宝は中止になったようだけど。

 舞台の上には、笑顔のタカラジェンヌ。

 彼らの中には、東のことが心配な人たちだって、いるだろう。
 東北出身に限らず、友人知人、安否を確認したい誰かがいたりするだろう。
 それでも誰ひとり欠けることなく、笑顔で歌って踊るんだ。

 休憩時間に友人たちが無事らしいことは確認した、だけどそれでも動揺が治まらないでいるわたし。
 ただの観客で、なにをするだもなく坐っているだけのわたしがこんだけ気もそぞろなんだ、舞台上の彼らはどれだけの精神力で踊っているんだろうか。

 それにしても。
 『ONE』-私が愛したものは・・・-ってゆータイトル……宝塚歌劇団っていう意味だったのか。

 主題歌から「この世でたったひとつの宝塚、すばらしい宝塚」てな意味の歌詞で、椅子からずり落ちました。
 過去のタカラヅカ賛美曲もいろいろ登場。えっと、なんかの記念公演だっけ、コレ……?
 『TCAスペシャル』とか『タカラヅカスペシャル』なら「タカラヅカ万歳」な歌を垂れ流していてもなまぬるく眺めているけど、コレって通常公演だよね……? ムラと東宝通して「素晴らしいタカラヅカ」ってマンセーし続けるの……?

 毎度毎度同じことを言って、我ながら芸がないと思うが。

 草野せんせとは、気が合わない。

 苦手だわ……。

 衣装の色彩センスはもうあきらめてるけど、笑いのセンスもわたしとはズレがあるみたいだ。
 まるでトップの退団公演みたいな演出にも思えるし、そのかの退団ご祝儀がエトワールとか、気の遣いどころを間違えてる……。

 いやその、地震のニュースでわたしが舞台に集中しきれなかったせいも、あるかもしれない。
 でもわたしやっぱ草野苦手……。

 まさおが2番手として確定したかな。中詰めはトップコンビとまさおで銀橋、ラストは2番手羽根付けて、パレードは下手先頭だった。
 
 
 劇場は通常営業、テレビではふつーにスカステ流しているし。きりやんの挨拶もふつーだったし。

 そんな感じだったけど、ソリオ宝塚のauショップがテレビをニュース用にしてくれてました。情報不足なままだったので、映像でがつんとナニが起こっているかを見せてくれるのはありがたい。人だかりになってた。

 帰宅してからはずっとテレビ付けたまま。
 あの日もずーっとニュース見てたっけ。めちゃくちゃになった家の中を片付けながら。電気は復活したけどガスが使えないから暖房ナシ、コート着たまま、震えながら。
 被害の実態がわかっていくことの、こわさ。

 
 明日もまた、ムラでは通常通り公演するのかな。
 どんな思いでいたとしても、あの人たちは笑顔で光の中に立つんだろう。
 今日、そうであったように。
 タカラヅカは、そういうところだから。

 被害に遭われた方々の無事を祈りつつ、それでも今日、ムラの舞台がつつがなく終わったこと、月組のみんながキラキラ美しい世界を創っていたこと、それを記したいと思う。

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