ふたりはともだち。@アデュー・マルセイユ
2007年9月28日 タカラヅカ 良い作品、だとは思うよ。
思ってはいるけれど、どーにも引っかかる。
そして、その引っかかりゆえに「物語」に入り込むことが出来ない。
『アデュー・マルセイユ』について。
そもそも、いちばん最初の「漁師の息子と魚屋の息子」だったときは、こーゆー設定だった。
イケコはここからスタートして話を作り、あちこちいじってプロットが二転三転し、はっきり言って別物になってしまったあとも、この「幼なじみ設定」にだけこだわった。
でもさ。
スタート地点はわかるけど、競技が別物になっていたら、意味ナイと思うんだけど?
短距離走用のスタートだったのが、途中で水泳になってたんだよ。クラウチングスタートしても、プールに落ちるだけで泳げないよ?
えーとね。
病気の母のために、シモンが盗みをはたらいた。警官に追われるシモンにジェラールが「オレが盗んだことにするから、お前は逃げろ。お前が捕まったら、病気の母さんはどうなるんだ!(瞳キラキラ)」「……すまない!(男泣き)」てなやりとりがあったなら、よかったんだよ。
罪を犯したのはシモン、だが彼は母の命のため、泣く泣く親友を犠牲にする。
病気の母の看病をしなくてはならないから、シモンは自首することができない。ジェラールはなにもかも承知の上で少年院へ入る。
そーして時が流れ、ジェラールの行方はわからなくなり……。
てゆーことなら、問題はない。
14年後マルセイユに戻ってきたジェラールは、間違いなくシモンの恩人。
シモンはずっとジェラールのことを思っていたし、ジェラールもシモンを思っていた。
ふたりの友情は続いている。
ところが実際の『アデュー・マルセイユ』は。
ジェラールとシモンは、親友でもなんでもない。
ただ、親の職場が同じで同じ寮に住んでいたため、親しくしていた、程度。
クラスが同じときは仲がいいけど、翌年別のクラスになったら口も聞かないレベルか?
ジェラールとシモンは、地下水道で見知らぬ男に鞄を渡された。
鞄には、現金の入った封筒が。
たしかに男は鞄をジェラールたちに託すときに「好きにしていい」と言っていたが、いきなりいわくありげな現金を渡されて、好きにできるものでもないだろう。
シモンはごく真っ当に「警察に届けなきゃ」と言う。ところがジェラールは、「ネコババしよう!好きにしていいって言ってたから大丈夫!」てな意味のことを言うんだ。
ネコババ……横領したのは、ジェラール。
たとえそれがシモンの母の薬代のためだとしても、犯人はジェラールで、シモンは悪くない。むしろジェラールにそそのかされて悪事に手を貸してしまった。
もしこれでジェラールが、鞄の中身を追っている一味にシモンのことを言えば、シモンを売ったことになる。
黙っていてあたりまえ、言えば裏切り、罪の押しつけだ。
秘密を守り通したジェラールは、えらくもなんともない。
もともと悪いのは自分で、友人のシモンを巻き込んだんだ。
しかも、真実を言えば消されることがわかっている。鞄の男は目の前で殺されているんだから。
主犯のジェラールが、自分の生命惜しさに沈黙を守った。
それだけのことだ。
美談でもなんでもない。
そのくせ、友人の罪をかぶったと思い込んでいる感じが見えて、「ちょっと待て」と言いたくなる。
自業自得のくせに、なに善人ぶってんのよー。なんなのその偽善っぷりー。
シモンもまた、ジェラールが何故突然少年院送りになったのか、知らなかったらしい。知らなくても平気だったらしい。あ、その程度なんだ。
と、思うよな?
ジェラールの母親が、少年院へ面会に行っている場面があるので、隔離されていたわけではなく、手続きを踏めば外部の人間と会って話すこともできたらしい。
「ケンカに巻き込まれて少年院送り」という表向きの理由とは、どう考えても無関係なことを、ジェラールとその母親はもったいつけて話している。
ジェラールは母親に、「シモンをかばって逮捕された。真犯人はシモンだが、シモンのためにあえて罪をかぶる」てなことを言ったとしか思えない。
ネコババしたモノを返さないために投獄された、なんて絶対に言ってないだろ、オマエ。
それとも、「盗んだモノの在処を白状したら殺される。だからどんなことがあっても言わない。貫き通す」とでも言ったんだろうか。それで母は、「殺されちゃ堪らないから、強い心で嘘を突き通すのよ!」と励ましているのか?
なんにせよ、母親と突っ込んだ話をすることは可能だった。
……てことは、シモンと話すことも可能だったろうに。
14年後のシモンがナニも知らないってことは、ふたりはちゃんと話していないってことだ。
あまりに不自然なジェラールの少年院入りに対し、シモンはナニも感じることなく平和に暮らしたらしい。
「ケンカに巻き込まれて少年院送りになったんだってさ」「ふーん」で終わり、つまりもともと、大して仲良くなんてなかったんだ。
ネコババしたお金を山分けしようとしてたのに、ジェラールはケンカで捕まっちゃったのか。ま、いいや、それならオレひとりで使っちゃお、母さんの薬代高いし。
……そんなもん?
ぜんぜん美しくないんですけど。どーゆーことなの、イケコ?
思ってはいるけれど、どーにも引っかかる。
そして、その引っかかりゆえに「物語」に入り込むことが出来ない。
『アデュー・マルセイユ』について。
ある日ジェラールとシモンは菓子屋の屋台でかっぱらいを働き、逃げる途中でシモンが捕まってしまう。ジェラールは逃げ切れたが、つかまったシモンを救うため、自らおとりとなって警官に捕まり、学校を退学させられる。シモンはいつかこの借りはきっと返す、二人の友情は永遠だと誓う。
そもそも、いちばん最初の「漁師の息子と魚屋の息子」だったときは、こーゆー設定だった。
イケコはここからスタートして話を作り、あちこちいじってプロットが二転三転し、はっきり言って別物になってしまったあとも、この「幼なじみ設定」にだけこだわった。
でもさ。
スタート地点はわかるけど、競技が別物になっていたら、意味ナイと思うんだけど?
短距離走用のスタートだったのが、途中で水泳になってたんだよ。クラウチングスタートしても、プールに落ちるだけで泳げないよ?
えーとね。
病気の母のために、シモンが盗みをはたらいた。警官に追われるシモンにジェラールが「オレが盗んだことにするから、お前は逃げろ。お前が捕まったら、病気の母さんはどうなるんだ!(瞳キラキラ)」「……すまない!(男泣き)」てなやりとりがあったなら、よかったんだよ。
罪を犯したのはシモン、だが彼は母の命のため、泣く泣く親友を犠牲にする。
病気の母の看病をしなくてはならないから、シモンは自首することができない。ジェラールはなにもかも承知の上で少年院へ入る。
そーして時が流れ、ジェラールの行方はわからなくなり……。
てゆーことなら、問題はない。
14年後マルセイユに戻ってきたジェラールは、間違いなくシモンの恩人。
シモンはずっとジェラールのことを思っていたし、ジェラールもシモンを思っていた。
ふたりの友情は続いている。
ところが実際の『アデュー・マルセイユ』は。
ジェラールとシモンは、親友でもなんでもない。
ただ、親の職場が同じで同じ寮に住んでいたため、親しくしていた、程度。
クラスが同じときは仲がいいけど、翌年別のクラスになったら口も聞かないレベルか?
ジェラールとシモンは、地下水道で見知らぬ男に鞄を渡された。
鞄には、現金の入った封筒が。
たしかに男は鞄をジェラールたちに託すときに「好きにしていい」と言っていたが、いきなりいわくありげな現金を渡されて、好きにできるものでもないだろう。
シモンはごく真っ当に「警察に届けなきゃ」と言う。ところがジェラールは、「ネコババしよう!好きにしていいって言ってたから大丈夫!」てな意味のことを言うんだ。
ネコババ……横領したのは、ジェラール。
たとえそれがシモンの母の薬代のためだとしても、犯人はジェラールで、シモンは悪くない。むしろジェラールにそそのかされて悪事に手を貸してしまった。
もしこれでジェラールが、鞄の中身を追っている一味にシモンのことを言えば、シモンを売ったことになる。
黙っていてあたりまえ、言えば裏切り、罪の押しつけだ。
秘密を守り通したジェラールは、えらくもなんともない。
もともと悪いのは自分で、友人のシモンを巻き込んだんだ。
しかも、真実を言えば消されることがわかっている。鞄の男は目の前で殺されているんだから。
主犯のジェラールが、自分の生命惜しさに沈黙を守った。
それだけのことだ。
美談でもなんでもない。
そのくせ、友人の罪をかぶったと思い込んでいる感じが見えて、「ちょっと待て」と言いたくなる。
自業自得のくせに、なに善人ぶってんのよー。なんなのその偽善っぷりー。
シモンもまた、ジェラールが何故突然少年院送りになったのか、知らなかったらしい。知らなくても平気だったらしい。あ、その程度なんだ。
と、思うよな?
ジェラールの母親が、少年院へ面会に行っている場面があるので、隔離されていたわけではなく、手続きを踏めば外部の人間と会って話すこともできたらしい。
「ケンカに巻き込まれて少年院送り」という表向きの理由とは、どう考えても無関係なことを、ジェラールとその母親はもったいつけて話している。
ジェラールは母親に、「シモンをかばって逮捕された。真犯人はシモンだが、シモンのためにあえて罪をかぶる」てなことを言ったとしか思えない。
ネコババしたモノを返さないために投獄された、なんて絶対に言ってないだろ、オマエ。
それとも、「盗んだモノの在処を白状したら殺される。だからどんなことがあっても言わない。貫き通す」とでも言ったんだろうか。それで母は、「殺されちゃ堪らないから、強い心で嘘を突き通すのよ!」と励ましているのか?
なんにせよ、母親と突っ込んだ話をすることは可能だった。
……てことは、シモンと話すことも可能だったろうに。
14年後のシモンがナニも知らないってことは、ふたりはちゃんと話していないってことだ。
あまりに不自然なジェラールの少年院入りに対し、シモンはナニも感じることなく平和に暮らしたらしい。
「ケンカに巻き込まれて少年院送りになったんだってさ」「ふーん」で終わり、つまりもともと、大して仲良くなんてなかったんだ。
ネコババしたお金を山分けしようとしてたのに、ジェラールはケンカで捕まっちゃったのか。ま、いいや、それならオレひとりで使っちゃお、母さんの薬代高いし。
……そんなもん?
ぜんぜん美しくないんですけど。どーゆーことなの、イケコ?