ダニエルがロリコンになってる……っ!

 花組全国ツアー『メランコリック・ジゴロ』初日観劇。

 『メランコリック・ジゴロ』自体は、中日公演に通って何度も観た。大好きな作品。
 ダニエル@まとぶんはまさに「お兄ちゃん役者」で、そのアツさと誠実さ面倒見の良さっつーか「関係ないよ」と手を離せない投げ出せない生真面目な不器用さ……そーゆーのがハマって、ものすごく素敵だった。問題は、ジゴロに見えないこと……(笑)。ジゴロだと悪ぶっているだけの、ふつーに誠実な若い男に見えた。

 それはまとぶんの愛すべき持ち味。クールやドライになる必要はない、ホットでウェットでいいじゃない。
 中日公演から約3年経ち、トップスターとしてのキャリアは重ねたけれど、この人は変わらず地に足をつけている印象。
 女を食い物にするワル=かっこいい、ではなく、年上の金持ち女にふつーに恋してたのに、浮気がバレて捨てられて、その言い訳に「オレはジゴロだ、あんな女ただの金ヅルに過ぎなかったんだ」と虚勢を張る、等身大の青年の好ましさ。

 ワルが純真な少女と出会い、恋することによって改心するのではなく、もともとふつーのオトコノコ。ふつーだから、一攫千金の「完璧な計画」にも乗ってしまうし、嘘からはじまった関係や過去や現在の自分の生き方を恥じて、愛する少女に素直に告白できない。
 それってものすごーくふつーだ。
 納得できる、感情移入できる、キモチの流れだ。

 クールだったり格好良すぎたりしない、感情移入できる等身大の男の子、ダニエル。

 そんなふつーの青年だからこそ。

 フェリシア@蘭ちゃんとの関係が、リアルにロリコン味を増す……!(笑)

 
 フェリシアの初登場場面、オープニングはほんと、大変なんだなとはじめて思った。
 それぞれ派手に歌い踊る人々の中、紺の事務員的ワンピで本を手に登場するのは……相当華がないと埋もれるんだなと。

 蘭ちゃんのスターとしての素質に疑問はないが、それでもこの初登場シーンにぎょっとした。あまりに、地味で。
 地味でグズな女の子役だから当然なんだが、それは本編でそうあるべきで、オープニングのショー部分では華やかに「この物語のヒロイン」と、輝きと存在感をばーんと出してくれてもいいんだがな。
 うわ、かわいいきらきらした子が出てきた! でもなんか地味なカッコしてる?? と思わせるのが、このオープニングでのフェリシアの役割では?
 そして、彩音ちゃんは華やかな娘役だったんだなと、改めて思う。実力面でいろいろ足りないところはあったけれど、とりあえず地味服着て出てきても、「あ、なんかヒロインっぽい人が出た!」とわからせる力のあった人なんだ。

 蘭ちゃんの良さは、初見初登場の数秒で視覚にがつーんと来る系の、大輪の薔薇や牡丹のあでやかさではない。彼女をずーっと見ていることによって、じわじわと伝わってくるんだ。
 タカラヅカの娘役トップスターとしてそれはどうよ?な気もするが、初見での客席の掴みは技術として後天的に得られる部分もあるので、それは今後に期待。

 とりあえず、フェリシアとしての初登場時に、あまりに地味で埋もれていて、びびった(笑)。
 ナニこの子……って、はっ、そうだこの子がヒロインだったっ。
 
 地味ではかなげで、他の花の陰に埋もれて揺れているかすみ草みたいな女の子。小動物というか、ハムスターみたいな女の子。
 肉食獣だの大型獣だの間で、このか弱い女の子はどんなはたらきをするのかしら……?

 彩音フェリシアにあった押し出しの良さと鈍くささがない分、際だつのは幼さ。

 彩音ちゃんのフェリシアって、たしかに鈍くさいっつーかスローモーな感じだった(笑)。ちゃきちゃき先輩@さあやからすりゃ、そりゃ耐えられない時間感覚だったろうなと。

 でも蘭ちゃんのフェリシアは、それほどトロそうに見えない。おどおどはしているけれど、それは人生経験の少なさから立ち居振る舞いに迷いがあるせいで、それほど鈍くさいわけでもなさそう。
 まあ、彼女のスローさを対比で表す役目の先輩@仙名さんが、ちっともきびきびして見えなかった、むしろフェリシアよりもドジッ娘☆に見えたせいもあると思うが……。(がんばれ仙名さん・笑)

 フェリシアが人生生きにくそうにしているのは、彼女がグズキャラだからではなく、単に子どもだから。
 戦争と親の死と、幼い彼女が社会に出てひとりで生きなければならない状況があったから。

 15歳のナニも知らない女の子が、家庭の事情でいきなり就職してもばりばり仕事できないし、大人の同僚からは役立たずだと思われるし、おどおどしちゃうのは仕方ないって。

 子どもだから、父親のニュースに即仕事辞めて飛び出して来るし、「お兄ちゃん!」とダニエルになつきまくるだろう。

 フェリシアが本気で「少女」だから……ダニエルとの年齢差がすごいことになってるから……。

 おもしろいな、コレ(笑)。

 ダニエルがフェリシアに対して保護本能を発揮するのも、惹かれていてもそれを打ち消そうとするのも、騙しているとかジゴロだからとゆーことに加え、年齢差のタブーがありそう。

 「ひとりって嫌ね」と言うフェリシアに「これからは一緒にやっていこう、兄妹なんだから」と言うダニエルがより無心に見える。
 きれいな若い女の子と暮らすのは男としてまずいけれど、かわいくてもまったくもって子どもで対象外、大人としていたいけな孤児を保護する意味だから、ぜんぜんOK。……って感じ。
 この子の兄として、この子を守って生きていくのも悪くないかもしれない。より無心に、なんの下心もなくそう思う。

 そーやって、大人として子どもを拾った感覚だったのに……その対象外の子どもに、どんどん惹かれていく。
 ちょっ待て、相手子どもじゃん、女じゃないじゃん。オレってロリコン?!
 自分のアイデンティティまで揺らぐダニエル(笑)。

 そしてまた、蘭ちゃんの演技は繊細系。
 いたいけな少女フェリシアが、すげーリアル。
 むらむらわき上がる保護欲。
 この子を守りたい、しあわせにしてやりたい……っ。

 「ずっとひとりだった」と言う彼女、「でももう孤独じゃないよね」と笑う彼女。
 フェリシアの背負ってきた孤独とか悲しみが、そこに透けて見えて一気に切なくなる。

 そりゃダニエルも「お兄ちゃん」をかってでるわな!
 オレに任せろ!てなもんだな。

 でもあまりにフェリシアが素直に心を預けて、頼ってくれるから……罪悪感と恋心が表裏一体にわき上がるわな。

 ナニこの萌え物語。

 すげえツボな話になってますよ。や、もともとそうなんだけど、中日版より、さらに。

日記内を検索