緒月遠麻に司会をさせると企画した、その瞬間からこの結果は出ていたのだ。

 イベント目白押しの『ハウ・トゥー・サクシード』です。
  アフタートークショー『努力しないで出世したい重役たち』に行ってきました。

 出演者は、フィンチ@キム、バド@ちぎ、ブラット@まっつ、ギャッチ@コマ、ジェンキンズ@ひろみ。
 そして、司会者が、ウォンパー@ヲヅキ。

 6人ともフィナーレまんまのおっさん(青年)姿。

 ジェンヌだけに託されたトークショーがぐだぐだになる、というのはよくあること。
 そーゆーところも含めて、ファンは楽しく愛でるわけだが。

 このトークショーは、ぐだぐたすら、超えていた。

 なんつーの?

 自由?(首傾げ)

 トークショーが終わったあと、まっつメイトと「このトークショーの面白さって、絶対観た人にしかわからないよね」と頷き合った。
 話していた内容だけを文字にしても「ふつう?」な感じだし、テレビで流したにしろ、ジェンヌが答えているところだけを編集したんじゃ伝わらない。
 なんというか、とても手に負えないトークショーだった。

 とゆーのもすべては。

 司会をするヲヅキの、投げやりさにあるのだ(笑)。

 あああ。
 ヲヅキが好きだ……もーめちゃくちゃ好きだー。(身悶え)

 まず、坐り方。
 制作発表のとき、おっさんスーツ姿で背筋をぴんと伸ばし、両膝と足首を揃えた女の子坐りをしていたヲヅキさん。
 それとは別人のようにラフな、くつろいだ坐り方をしていました。
 肘掛け椅子に深々と坐り、脚は自然に開いて猫背。
 脱力したおっさんがそこに。

「ほんじつは『H2$』をごらんいただき、ありがとうございました(早口・棒読み)」
 という、口火を切る挨拶からして、相当だった。
 なんつーんだ、「ありがとう」という言葉を使っていながら、客の顔を見ていない、誰に伝えるために発しているのかわからない。

 そして彼はその体勢のままファイルを開き「まずなにしましょうかね。えー、んじゃじこしょうかい」てなノリ。
 すべてが、投げやり。
 放りっぱなし。
 仕切ろうとかいう気概もなければ、人の話も聞いていない風、客のことも気にしていない風。
 「やくづくりについてかたってください」とかお題目を言ったあとはファイルに目を落として、喋っている人をろくに見ないし、ましてや客席なんか、カケラも見ないっ。
 ヲヅキさんはうつむいた横顔しか見せてくれません。

 完全に「他人事」になっているので、全員が質問に答えたあとキムくんとかが「きたろうはどうなの」と振ると、顔を上げることもなくぼそっとひとことてきとーな返事で終了し、「じゃあつぎ」と質問を読み上げる。

 キムくんが「こんなにラフでいいの?」と何度も繰り返していた。
 あまりにあまりな空気感なので。
 そして、ヲヅキさんのシュールさに「やだこの司会者!」「ほんと自由だね!」と叫んでいた。

 ファイルには進行や質問が書いてあるらしく、最初のいくつかは「必ず聞く質問」と書いてあったんだろうけど、「時間が余ったら、ここから好きな質問を選ぶ」欄も別にあったんだと思う。
 まず必須事項を終わらせたヲヅキさんは、その「彼の選択にゆだねられた質問」に関してはもう、さらに投げやりで。

「つぎなににしますか」←質問を選ぶのは司会者、質問一覧を持っているのも司会者、なのに出演者に聞く
 自分でそう聞いておきながら、
「じゃあけんこうのひけつ」←棒読み

 ヲヅキ……。

 なんなんだろうね、この人。

 もう、大爆笑。オイシイところはヲヅキが全部持っていく。

 投げやり、やる気ナシ、人の話聞いてねえ、客の顔も見ねえ。
 ……これは全部、違います。
 ヲヅキさんはめちゃくちゃ緊張して、使命感でいっぱいいっぱいになっているのでしょう。
 自分の世界にこもっているような、猫背で丸まってファイルばっかり凝視しているのは、進行を恙無くクリアするために必死なんです。
 投げやりな棒読み、言葉の意味を理解していないようなひらがな喋りは、緊張ゆえでしょう。

 わかる。わかるんだ。
 「この人、なんか怒ってるの?」な顔のまま、突き放した棒読み。
 それこそがヲヅキさん。

 わかっている客席は、抱腹絶倒。

 いやあ……すごいよ。
 得難いキャラだ、緒月遠麻。

 こんなシュールなトークショー、はじめて見た。

 ヲヅキがめちゃくちゃ面白くて愛らしかったことが、文字では伝わらない。
 あったことだけを書くと、まるで悪口のようになる。
 そうじゃない、そうじゃないんだ。
 それこそが最高に面白くて、ファンが喜ぶことだったんだよ。

 ヲヅキさんを好きすぎて、胸が苦しい(笑)。
 タカラヅカって不思議なところだ、こんな不器用な生き物が生息していられるなんて。
 仲間たちからもファンからも愛されて。

 司会者がこの通りの異次元空間生命体なので、それに流されることなくマイペースに話を進める出演者たちのすごさも、よくわかった(笑)。
 みんなくじけないねっ、すごいねっ!
 マイクの数がぜんぜん足りてないのに、マイク無しでも勝手に喋り出してるしね。(特にエエ声のあの人・笑)

 そんな感じで盛り上がっている中、ぜんぜん話と関係なく突然、
「はなしもまとまったところで、これでおわりです。ありがとうございました(超棒読み)」
 と、ヲヅキさんが強引に言い出して、突然幕が下りたのに、さらにびっくり爆笑。

 これで終わるんだ?!
 まとめの言葉も挨拶もナシかいっ。

 いやもお、呆然とする面白さ。
 ヲヅキさんさいこー。

 観られて良かった……むちゃくちゃ笑った……面白すぎた……。

 劇団様、これからもヲヅキさん司会でトークショーやってください。
 そして、今後ともあの人を、あの個性を、保護してください。貴重種ですよ、彼。あの個性は「天から与えられた才能」です。

 
 ただ。
 たまたま今日観ていただけの、ヅカ初体験の団体さんたちは、あのトークショーと司会者をどう思ったろう。
 「やる気ナシのぶっきらぼうプレイの芸人さん」だと思ってくれたかしら、ヲヅキのこと。持ち芸としてアリだよね、ああいう投げやりさ(笑)。

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