往復ビンタをしたことがありますか?
 成人してからです。
 相手の胸ぐらを掴み、振り回し、往復ビンタ。

 わたし、したことがあるそうです。
 光田さんの頭の中では。

 いや、前の日記読み返しててね。
 光田さんのエピソード、他にも思い出しちゃったのよー。

 あるとき、光田さんがわたしに言った。
「緑野ちゃん、前にわたしをビンタしたよね」
 はあっ?
 なんのことっ?!
「いきなり胸ぐら掴んで振り回して、それで往復ビンタしたのよね。とってもこわかったし、つらかったわ」
 ちょ、ちょっと待て、なんなんだそれは。
 おぼえがないぞっ。
 つーかわたし、生まれてこのかた、往復ビンタなんかしたことないっ。

 問いただしてみると、彼女の語る出来事はたしかにあった。
 あった……が。
 往復ビンタではない。

 あるとき光田さんがいつもの調子でぬけがけをした。
 それをわたしを含め、クラブのみんなは怒っていたのだ。
 これはいったいどーゆーことなのか、光田さんにきっちり聞かなければっ!! と、わたしたちは部室で光田さんを待ちかまえた。
 そして、なにも知らずに「おはよーっ」とやってきた光田さんに証拠を突きつけ、「これはいったいどういうこと? 説明しなさいよ!」と詰め寄ったのだ……。

 そのときのことが、光田さんの頭の中で自動変換されているのだ。
「いきなり胸ぐら掴んで振り回して、それで往復ビンタしたのよね。とってもこわかったし、つらかったわ」
 と。

 あんたがおイタをしたから、みんなで叱ったんじゃん……。

 口で叱っただけで、誰ひとり暴力なんかふるってない。
 しかし彼女はそんな事実はまったくおぼえてない。
 ついでに、他にたくさん人がいたことも、おぼえてないない。
 彼女のなかでは、わたしひとりが往復ビンタをしたことになっている。

 たぶん、彼女はクラブのみんなに叱られたのがこわかったんだね。なんで叱られるのか、わかってないみたいだったし。
 そのなかでも、自分の超仲良しでなにをしてもかばってくれる、ゆるしてくれる、やさしいダーリンの緑野までもが、自分を叱ったという事実が、ショックだったんだね。
 それで、変換しちゃったんだね。
 緑野に殴られた、と。

 そんなことはしていない。それはあんたの憶えまちがいだ。あのとき部室にいたダイコやヤマダさんに聞いてみろ、と、わたしがどんなに説明しても。
 光田ちゃんはなまあたたかく笑い、
「いいわ、緑野ちゃん。緑野ちゃんがそこまで言うなら、そういうことにしておいてあげる」
 をい。
 往復ビンタなんてひどいことをした友だちをゆるしてあげる、やさしいワタシ、てか、光田!!
 やってないって言ってるだろーっ?!!

 光田ちゃんの必殺技。
 脳内変換。
 いろんなことが、彼女の中では変換されている。

 そーいや光田さんは出会ってからしばらくは、わたしのことを「ワカさん」と呼んでいた。
 どっからワカさん?? わたしの名前、そんな音は関係ないです。
 理由を聞いても、「緑野さんってなんか『ワカさん』って感じだから」としか答えない。
 「ワカ」って、「若様」とかじゃなく、なんかの固有名詞っぽかったのよ……しかもクラブにはもうひとり「わかちゃん」って渾名の子がいたから、わたしを「ワカさん」と呼ばれるとややこしくてこまったんだが。

 今思えば、きっとなにか、マンガとかのキャラクターの名前をつけられてたんじゃなかろーか。

 
 イベント好きなんで、行ってきました「レビュー記念日」。

 レビュー記念日自体はショボかった。
 昔はもっとたのしかったと思うんだけど。4組のトップスターが総スパン衣装着て「レビュー、レビュー、すてきなレビュー♪」と歌っていたのは、あれはいつだ?
 毎年ショボくなっていってるよーな。

 月組の今回の公演を観るのは2回目。
 ははは。
 もーいいや。チケット買い足したり、サバキで行ったりするのはやめよう。
 あとは明後日の1列目と新公と千秋楽の3回。それで十分だ、コレ……。

 やっぱり芝居の方は2回目からは物語のアラばかりが見えてダメです。出演者ががんばっていても、作品がプーだからつらいのよ。
 キャラはそれぞれかわいいんだけどね。

 ショーは……キツイなー。いろいろと。
 そのうち爆睡しそーでこわいわ。

 それからわたし、この公演芝居もショーもタイトルおぼえられないんですが。
 内容とリンクしてないタイトルは嫌っす。
 リンクしてない場合はインパクトが欲しい。わかりやすく、ベタであるとかね。
 芝居の方はとくに最悪だと思っている。素人がつけそうなタイトルだニャ。てきとーにロマンチックっぽい単語並べてみましたってか。同人誌みたいだニャ。
 ショーの方は英語の文章はよせ。他国語の持つ曖昧さに逃げるな。びしりと直球勝負せんかい。

 「ほらあの、ゆーひが女役やってた公演。タイトル忘れたけどあの公演さー」と、数年後に話していそうだ。

 とまあ、初日のような興奮もたのしさもなにもなかったんだが。
 ただひとつ、うきゃ〜〜っ、なことが。

 ショーのとある場面。
 男役たちがブルーの衣装着ているところ。プログラム買ってないから名前わかんないんだけど、「思い出の40th」ってシーンかな。中央でワタルとかが踊ってたと思う。中央見てないからよくわかんないけど。
 わたしが見ているのは下手。男役たちが下手にずらりと縦に並んでるのね。
 オペラグラスでケロちゃん見てたら、そこにゆーひが現れる。初日もそうだった。べつにここは振りはついてなさそうだから、そばにいる人と談笑していればいいだけらしいのに、2回あるシーンで2回ともゆーひが現れる。
 あー、ケロを見てると絶対ゆーひが出てくるよなー。やれやれ(笑)。
 と、初日は微笑ましく見ておりましたさ。
 そして今回。
 またしても、ケロのところにゆーひがやってくる。ケロが振り返ってふたりでなにか話している。
 すると。

 ケロ、ゆーひの頬に指をのばす。

 なななななんですかぁっ?!
 なにやってんですか、あんたたちっ?!!

 び、びっくりした。
 ゆーひちゃんのほっぺたになにかついてたのかな? ケロ、やさしー笑顔でゆーひの頬に触れ、ゆーひも笑顔を返す。ふたりの世界。

 あー……。またいちゃついてるよこいつら……。

 いいんだけどね。いいんだけどね……。
 ゆーひ命のデイジーちゃんと一緒に見てたからさ。ふたりでギャフン!!てな気分になったよ。

「ゆーひファンは言ってます。『神様、ゆーひにケロちゃんを与えてくださってありがとうございます』って」
 帰りの電車で、デイジーちゃんはそう言っていた。

 
 なんなんだ、この人数は。
 花組『エリザベート』発売日。

 いつもの三番街、2100人中、確実にチケットを買うことができるのは950人。
 半分以上の人が外れる計算。

 ひさしぶりに、過酷な並びだ。
 大劇では通常あり得ない、こんな抽選率。

 過酷だということは予想していたから、わたしたちは大人数。わたし、WHITEちゃん、CANちゃん、キティちゃん、デイジーちゃん、いつもはまず並びには来ない殿さんとアッコちゃんの、総勢7人。
 殿さんが白紙、キティちゃんとアッコちゃんがキャン待ちを引いた。
 どーやら、並びにあまり参加していない順でよくはずれたみたいだな(笑)。
 あと4人が当たっていたし、なかでもデイジーちゃんはえらくいい番号を引いていたので、まあ全員が1回は観られるだろう。
 と、安心したところ。
 CANちゃんには年配のお友だちが多く、わたしたちの母世代の方々が「いるならあげるわよ」とさらに当たり券をざくざくくださった。
 番号的には中の下くらいかな。
 それでも助かったわ、ありがとう名も知らぬおばさま方。

 でもってわたしとデイジーちゃんは希望通り、1階1列目をGET。

 一度、観て観たかったの、エリザを1列目で!

 あ、三番街だからもちろん端っこよん。
 でも、後ろのセンターならサバキでも観られるかもしれんが、1列目の端はここで買っておかなきゃ。
 もう1枚は1階A席サブセンター。よしよし。

 んで、チケットを買ったあとで気づいた。

 あれ、わたし、千秋楽と新公のこと、忘れてた。

 今回きれーに忘れてたよ。楽も新公も。
 おまつり好きなわたしは、いつも楽と新公をまず押さえるのに。
 そんなもんより、本公演をいい席で観ることしか、考えなかった。
 あちゃー。そのかちゃんルキーニなのにな、新公。
 さよならショー付きなのにな、楽。
 思い出しもしなかったよ……両方、買えたのに……まだ売ってたのに……。

 新公、いつもみたいにどっかから回ってこないかなあ……。

          ☆

 あと、三番街プレイガイドの今回の不手際はひどいと思う。
 わたしたちは被害に遭っていないが、CANちゃんの友人のおじさまが被害直面。
 彼はわざわざバイトを雇ってまで抽選券をかき集めているのだ。二度並びとかじゃないから、ズルじゃないよ。本当にひとりずつ並んでるんだもん。ひとりが1回ずつ抽選してるんだもん。ただ彼らはヅカに興味のないバイトくんなのだ。(大人の男は趣味にかける意気込みとお金がちがうよな)
 いい当たりを引くために、列のいろんな場所にあえて人を配置して並ぶので、最後列のこの事故に巻き込まれた。

 まだ100人くらい並んでいるのに、抽選券がないのだ。足りないのだ。

 抽選券がなかったら、どうするのか。
 ……白紙を増やして、水増しするしかないよな。

 ひどいよ、それ。
 みんなハズレだってバレバレじゃん。
 整理券を持った人は全員等しく抽選に参加できる、というのがルール。
 それを破ったのだ。阪急プレイガイドは。
 客を裏切るなよ。騙すなよ。

 それで謝罪はナシ、事故なんか起こってない、不手際なんかなかった、で押し通したらしい。
 ……嘘つき。

 医療ミスなら社会問題。
 だけどたかがヅカのチケットだから、べつにいいや、てなもんなのかな。阪急プレイガイド。

 
 わたしとWHITEちゃんの合い言葉。
「チャルさんを見に行こう!」

 今チャルさんと言えば、某巨大掲示板の愉快な艶聞よね。
 ネットで書いてあることを鵜呑みにするほどかわいい人間ではないのですが、さすがにあの艶聞には、ウケました。ときめきました(笑)。
 チャルさん男前!!
 あなたなら、あそこに書いてあることがすべて本当でも納得するわ。感心するわ。

 行ってきました、本専科エンカレ。
 わたしオヤジ好き属性ですから。
 このコンサートはハズせません!

 感心したのは、出演者8名のキャラがかぶってないこと。
 すごいじゃん、バラエティに富んでいるわ。

 女は3人、可憐で美しい奥様、やり手のPTA会長、下町のおばさん、と見事に3タイプ。
 男は5人、かわいいたぬきオヤジ、流離いの真剣師、外面だけ柔和なヤクザの組長、気のいい中年ホスト、町内会のアイドルのハンサムオヤジ、とこれもきれいに5タイプ。

 たのしゅうございました。

 プロローグが終わるといきなり、流離いの真剣師(賭け事で生計を立てている人のことね)の風情を持つ萬あきら様がフェロモン散布しながら「LUCK BE A LADY」をお歌いになるので、恥ずかしさに椅子から滑り落ちそうになりました。
 なんだろう、この恥ずかしさは……。
 きっと「これぞタカラヅカ!」という恥ずかしさなんだと思う。
 「最後のダンス」もすばらしゅうございました。
 自分のソロ以外のときは、とっても「素」な、かわいらしい笑顔なのに、いざ「男役」としての出番が来るとびしりと豹変。フェロモンがー、フェロモンがぁぁ。
 萬ケイ様すてき……。

 不思議なことに、立さんがアイドルに見えました。
 いや、びっくりした。
 重鎮ぞろいのこの顔ぶれで、立さんひとりがさわやかきれいにアイドル。
 たとえるなら、タータンだとかトドだとかワタルだとかの、濃い野郎どもの間で、コム姫が可憐に舞っている感じでしょうか。
 目からウロコ。
 立さんてばアイドル系だったんだ……(なにかチガウ)。
 ただわたし的には、「風に立つライオン」がイケてなかった。
 あの曲はまんま物語だからねえ。歌詞が聞き取れないとなにがなんだかわかんないのよ。
 立さんの歌声では、歌詞がよくわからなかった。
 わたしは歌詞全部おぼえてるからいいけど、はじめて聞く人にはわかったのかしら。
 歌の部分は首を傾げたけど、台詞の部分はさすがに感動的。
 CDのさだまさし自身による曲解説をそのまま読んでいたと思うけど、立さんに読んでもらえると臨場感あるわ。「ぼくは野垂れ死ぬですとよ」だっけ、主役の医師の台詞。
 わたし、さだまさしは語りすぎだと思うのね。自分の作品について語りたいのはわかるけど、「これは実話を元にして作りました。モデルは友人で……」とか、いちいちうるさい。舞台裏になんか興味ない。「作品」だけを評価したいのに、ノイズが多すぎる。
 「風に立つライオン」は大好きな曲で、TVで聞いてその足でCDを買ったクチだが、さだ氏の語りがうるさかった。自画自賛はもうええっちゅーの。自分と自分の作品が好きなのはわかったから、わたしに作品だけを味あわせてくれ。
 ……と大昔に思ったことのある、そのうるさい部分だよ、立さんが朗読してくれたのは。
 さだ氏の文章で、CDの歌詞カードの巻末として読む分にはウザかったが、立さんが読んでくれるのはヨシ!!
 どえらい感動的に幕が下りた。
 まさかあそこで1幕が終わるとわ。

 汝鳥伶さんがもー、プリチーでプリチーで。
 あの体型で黒燕尾着て、赤い薔薇一輪持って歌い踊るのよーっ。やーんもー、かわいすぎーっ。

 一樹千尋氏は星組にいたときから見ているので、特に発見はなかった。相変わらず歌はうまいし、かっこいいし。
 ただ、「男役」としてより「中年女性」として舞台にいる時間の方が長かったよーな。それが残念ナリ。

 わたし、邦なつきさんだけ知らなかった。
 いや知らないわけないんだが、わたしの意識に残らない人だったらしい。
 今回はじめてちゃんと見た。例の艶聞でもさんざん見た名前だしな(笑)。
 まあ、きれいでかわいらしい方。

 京三紗さん……三味線、ヘタ……。びっくりした。
 雪エリザのルドヴィカがとーっても歌ヘタだったから構えて聞いちゃったけど、洋楽の方はふつーに聞けました。
 しかし、「この歌は『ファイナルファンタジー8』というゲームの主題歌です。このゲームはゲーム界のタカラヅカと言うべき、とてもすてきな恋愛物語で……」なんて語りを聞けるとは思わなかったぞ、京三紗!! 孫から借りてプレイしたのか?(ジェンヌは独身です)
 にしても、いちばんものすごい選曲だった。和楽にゲーム主題歌、そして中島みゆき……。

 矢代鴻様はもー、おさすがです。
 あっぱれ。
 『デパメン』の本歌をこんなところで聴けるとは思わなかった。ラッキー。

 そして、チャルさん。

 思えば、わたしとチャルさんの出会いは平成元年の雪組『ベルサイユのばら』だった。
 わたしがアラン役のトドロキに一目惚れした記念すべき公演。あそこでアランに墜ちてなきゃ、今のわたしは存在しない。
 あの『ベルばら』で、印象に残ったのはアランの他では、オルレアン公爵だったんだわ……。
 ええ。
 それこそが箙かおる様でした。
 幕前で歌っておられた姿と、その心情豊かな歌声が忘れられませんでした。
 そう。
 当時の親友、ぺーちゃんとふたり、「様」付けで呼んでいたジェンヌはたったふたり。
 「北斗ひかる様」と「箙かおる様」だった。
 このふたりは、呼び捨ても渾名も不可。絶対にフルネームに様付けだったわ。

 あれから14年。
 ともに「箙かおる様(はぁと)」と言っていたペー子はタカラヅカを卒業し、「緑野、まだあんなの好きなの? さっさと結婚でもしなよ」的なことを言う女になってしまった。
 わたしは外見はしっかりおばさんになったが、中身は昔と変わらず、大好きなことをいっぱいかかえて生きている。結婚しようがしまいが、好きなものは一生好きさ。
 時は流れ、それでもわたしはここにいて。

 チャルさんの歌声に、涙する。
「O’l Man River」……これってたしか、『LET’S JAZZ』でチャルさんワンフレーズだけ歌ってたね。
 全部聴けるとは思わなかったよ……。
 すげえ。
 この歌、はじめて聴いたわけなんだけど……。
 ゴッホの絵を思い出したよ。
 ゴッホって、明るい色彩の絵の印象が強いけど、そうでもないんだよね。ものすげえ、暗い絵も描いてる。それこそ、死しかやすらぎは存在しないだろう、てな、追いつめられたおそろしく暗い絵。
 労働者の、節くれ立った手をしたいかつい老人が、力尽きて泣いている絵とかな。
 咲き終わり、燃え尽きたように腐り果て、ゴミとしてうち捨てられたひまわりの絵とかな。
 はじめてゴッホの絵を見たときは、中学生だったかな。泣いたよ、わたし。
 とてもとても、こわい画家だと思った。魂をえぐりだしてくるよーな絵を描く人だと思った。
 チャルさんの歌う「O’l Man River」を聴きながら、ゴッホの絵を思い出した。

 それにしても、タカラジェンヌは妖精だねえ。
 不思議だよ、あの空間は。
 若さだけで誤魔化しているよーなものじゃないんだね、タカラヅカの美ってものは。

 そしてチャルさんの姿に、トドロキの進化系の姿を見た……。

 

思い出話。

2002年8月29日 その他
 わたしは過去に一度だけ、自分から絶交をしている。
 あ、この一度だけ、てのはあくまでも、「同性の友人」限定。ここに恋愛とか男とかを入れるとややこしくなるから、「過去に一度だけ、同性の友人を自分から絶交した」という意味っす。

 元来忘れっぽく、のど元を過ぎたら熱さを忘れる性格なので、多少「こいつとはもうダメだ!」と思っても、またなにかしらその人のいいところとか見ると「ま、いっか」と思ってしまう。
 そして、よいところのない人なんてこの世にはいないから、たいていの人とはこうやってつづいてしまう。

 だが、唯一「こいつとはオサラバだ! こいつにどんないいところがあったって、二度と会いたくねえ!!」と思った相手が光田さんだ。

 光田さんは、学生時代の友人だ。
 クラブが一緒だった。
 変な人だなとは思ったけれど、個性だと思って深くは考えなかった。

 光田さんと会うと、話すと、いつもわたしは悪者になる。いつも、気が付いたら謝っている。
 たとえば、光田さんから電話がかかってくる。
「あ、緑野ちゃん? お願いがあるんだけど。**っていう本、貸してくれない?」
「うん、いいよ。明日学校に持っていくね」
「ありがとう。でも**って本、分厚くて重いよね。持って帰るの大変だなあ」
「そうだね」
「緑野ちゃん、わたしの家まで持ってきてくれない?」
「はあ? それはちょっとできないよ。光田さんち、遠いし。明日学校で会うから、そこで渡すよ」
「でも**は重いのよ。わたしの家は遠いから、持って帰るの大変なのに。緑野ちゃん、ひどいわ」
「ごめん、でもさすがに++市までは持って行けないよー」
「緑野ちゃん、冷たい。ひどい」
「ごめん」
 ……てな感じだ。
 わたしが謝る必要はどこにもないんだが……気が付くと謝っている。
 そして、
「もういいわ。緑野ちゃんがそこまで言うなら我慢してあげる」
「ありがとう。ほんとにごめんね」
 というオチがつく。
 そして電話を切ったあとで「あれ? なんでわたしが謝ってるんだ? わたしは光田さんのためにわざわざ重い本を持って学校まで行くんだぞ、光田さんが読みたいって言うから」と首をひねる。

 いつもこの調子だ。

 光田さんに悪気はない。彼女はナチュラルにこういう人だった。

 友人のミヤビンスキーは、あるとき光田さんにお弁当を作って届けていた。
 女の子が、女の子の友人に手作り弁当? それも自分のを作るついで、ではなく、わざわざ光田さんひとりのためだけに。
 なんでそんなことするの? と聞くと、ミヤビンスキーは首をひねっていた。
「よくわかんないけど、電話で話しているうちに、あたしがお弁当作って届けることになってた」
 …………んなバカな。

 WHITEちゃんは「光田さんと話すと、別れるときには必ずなにかしてあげる約束をとりつけられている」と首をひねっていた。

 光田さんは自分しか見えない人だった。
 そりゃもー、あっぱれなくらいに。
 はじめて会うタイプの人だったので、わたしはとてもびっくりした。

 出会って間もない学生時代に、わたしは一度キレかけたことがある。
 光田さんのわがままのためにクラブの話し合いが頓挫し、みんなでこまりきっているときに、光田さんがこう言ったからだ。
「なにをつまらないことを言ってるの? みんなの都合なんかどうでもいいからわたしの言うとおりにしてよ。みんながわがままだから、わたしはとても迷惑だわ」
 部長をしていたわたしは、部室のテーブルをひっくり返しそうになった。
 この女、ハタチにもなってなにをぬかしとんじゃあ、表へ出ろ。
 ……それでもこらえてしまったのは、とりあえず部長だったからだ。ここでケンカをしてもしょうがない。
 あとで他の子から、「緑野さっき、キレかけたね」と突っ込まれた。
 うん、マジギレ寸前だった。だけど光田さんはかけらも気づいてない。彼女は自分の不幸(みんなのわがままを我慢してあげるのって大変。わたしって可哀想)で手一杯だった。

 まーとにかく、光田さんには引っかき回されつづけた。

 わたしは光田さんに気に入られていた。
 アホウで利用しやすかった、というのも理由のひとつだろう。
 そしてもうひとつの理由はとても情けないのだが、わたしの体格のせいじゃないかと思う……。
 わたしは、光田さんの好きなマンガの男の子と、同じ身長だった。
 光田さんはなにかとわたしと腕を組みたがった。
「kkくんと腕を組んだら、こんな感じなのね」
 光田さんは抱擁や手を握るのが大好きだった。わたしは女の子に抱きつかれてもうれしくないので、逃げ腰だったが、ヘタに断ると「緑野ちゃん、ひどい!」「聞いてみんな、緑野ちゃんがわたしをいじめるの!」とやられるので、ある程度は我慢していた。
 まあ、光田さんは美人なので、なつかれるとそれなりに情もわくんだが……しかしなあ。わたしゃ、女の子と疑似恋愛する趣味はないんだ。わたしを彼氏扱いされてもこまる。

 
 光田さんのことをこまったちゃんだと思っているのは、わたしだけだろうか。
 当時、わたしは悩んでいた。
 はきっり言ってあいつ、ムカつく。つきあうのはしんどい。
 でもこう思ってるのって、わたしだけ?
 光田には友だちが多い。みんな上にバカがつくくらいやさしいいい子たちばかりだ。
 あのやさしい子たちは、光田さんのわがままを笑ってゆるしている。あまやかしている。
 わたしが光田さんを「なんかヤだな」と思うのは、わたしがやさしくないから? わたしが嫌な奴だから?
 そう思うと、なにも言えない。

 実際光田さんは、誰かに傷つけられると泣きながら電話をしてくるのだ。
「聞いて緑野ちゃん。タンタンちゃんったらひどいのよ、わたしは悪くないのに……。ねえ、慰めて。このままじゃわたし、哀しくて眠れない」
 いやあ、マンガでもドラマでもなく、泣きながら電話をしてくる奴に会ったのは、20年生きていてはじめてだったから、カルチャーショックだったよ。「慰めて」だもんなあ。
 おかげであのころのわたしは、ひとを慰める語彙を勉強したよ。あまりにしょっちゅーかかってくるもんで。

 
 そしてあるとき。
 光田さんがいないとき、友だち全員で話す機会があった。
 そのときに発覚したのだ。

「光田さんって……ひどいよね?」

 みんなみんな、光田さんをこまったちゃんだと思っていた。思っていたけど、「こんなのわたしだけかな。陰口は言いたくないし、みんなは光田ちゃんと仲良くしてるんだから、わたしが我慢しなきゃ」と全員が思っていた……。
 みんな、オトナだね……。そして、いい人だね……。
 光田ちゃんを変だと思わずに、誰かのことを変だと思うわたしが変なんじゃないだろうか、と悩むあたり。

 みんなも同じ想いだった、変なのはわたしではなく光田さんだった!
 わたしたちは、熱く熱く語り合いました。
 それまで話せなかった数々のことを。
 そして、友人たちの口からも、光田さんにされたひどい仕打ちがいろいろと打ち明けられました。
 ……大変だったね、みんな。
 

 さて。 
 わたしはつい数年前まで、光田さんとはつきあいがあった。
 お互い社会人になってしまえば、会う時間が減るので、彼女が多少イタタな人でも実害が少なくなったからだ。
 もちろん彼女にもいいところはたくさんあったので、そのいいところを目にするたびに「あのことはまあ、忘れることにしよう」と、イタタな仕打ちをされても流してきていた。

 光田さんも社会に出て、丸くなってきていたし。

 が。
 あるときついに、わたしはキレた。
 やっぱり光田さんは光田さんだった。出会ったときからずっと、本質は変わっていなかった。多少トシをとって丸くなっていたとしても、「腐っても光田」だった。

 わたしはにっこり笑って、絶交した。
 さようなら光田さん。

 もうわたしはなにも知らないハタチの小娘ではないのです。
 もしあなたが「緑野ったらひどいのよ、わたしが可哀想」と騒ぎ立てたとしても、関係ないっす。
 わたしが大切だと思う人は、わたしの言い分の方が正しいと信じてくれる人ばかりだよ。あなたがなにを言ったとしてもね。
 そーゆー人間関係を築いてきたつもり。

 つーか、あなたが素っ頓狂すぎるのよ……もし、悪いのがわたしだったとしても、もう誰もあなたの言い分を信じないって。
 

 実は今、わたしは友人のCANちゃんの会社でアルバイトをしている。
 本業が忙しくて、バイトをしている暇はないはずだが、CANちゃんにはいろいろ世話になっているし、大好きな友だちだから、こまっているときは手を貸したい。

 CANちゃんとふたり、仕事をしながらいろいろ話していると、その光田さんの話になった。
 CANちゃんはまだ多少光田さんとつきあいがあるらしい。
「相変わらずだよ、光田さん」
 CANちゃんは笑って言う。

 そういやCANちゃん、わたしたちハタチのころ、やっぱりこうやってふたりで働きながら、光田さんの話してなかった?
「ああ、そういえばそうだねえ。光田はとにかくものすごかったから、笑い話は尽きなかったね」

 光田さんもわたしたちも、変わってないね(笑)。


 さて、今日は映画『ピンポン』を見に行きました。

 原作は読んでいません。
 雑誌で初回から何回か読んだけど、そんなの大昔のことだしな。おぼえてねーよ。
 見に行った理由はひとつ。窪塚洋介主演だから。プラス、宮藤官九郎脚本だから。

 とってもたのしかった。
 たのしかったんだけど……『エースをねらえ!』を見たあとに行くと、いろいろとクるものが(笑)。
 だって基本は同じだからね。球技で天才で努力で勝利なのよ。鬼コーチで決勝戦で「岡、エースをねらえ!」つーか世界へはばたけ! なのよ。

 わたしのツボの中に、「アマデウス症候群」つーのがある。
 つまり天才と凡才の構図だ。
 天才の孤独と、天才になり得ない凡才の苦悩。
 それがツボなのよね。
 だから『エースをねらえ!』では、ひろみよりもお蘭が好きだし、『ガラスの仮面』では姫川亜弓が好き。

 この『ピンポン』はややこしいことに、主役ふたりとも天才系ときた。そして両想いのすれちがい中ときた。
 愉快だなぁ。
 最初、天才はペコで、スマイルは凡才かと思った。ペコは髪型をはじめとして、とにかく変だからな。あれだけナチュラルに変なんだから、そりゃ天才肌だろうよ、と。
 そしたらなんと、天才はスマイルの方で、ペコはヘタレちゃんだった。ペコはいじめられっ子スマイル少年の初恋のヒーロー(笑)だったから、スマイルはペコの前ではどーしても弱くなってしまう。
 しかしスマイルが強さにめざめ、ペコは天才レースから脱落。他校の強豪たちもスマイルのことしか眼中にない。ペコはグレて卓球を辞める。
 しかし。
 スマイルだけは信じていた。ペコの才能を。
 才能があるからこそ、努力を怠っていたペコははじめて努力をし、スマイルと戦うために階段を駆け上っていく。
 そして。
 ふたりの天才、ペコとスマイル。
 いちばんの天才は、やはりペコの方だったらしい。
 まあな、ペコは卓球がいちばんだけど、スマイルのいちばんはペコだしな……。

 色のちがう天才どもと、愛しい凡才たちの葛藤がいい。スポーツものの醍醐味だわ。
 そしてわたしは、「欠けた人」が好き。萌える。
 ペコもスマイルも、どこか欠けていて、そこが愛しい。

 昔スペインに、ガガンチョという闘牛士がいた。
 彼は臆病者で、とてもつたないコリーダを見せる。
 逃げることしか考えていないせいなの。臆病だから。
 だけど彼は人気があった。
 ごくまれに、うまくいったとき彼が見せるコリーダは、生涯忘れられないようなすばらしいものだから。

 この闘牛士のことを知ったとき、萌えましたわ。
 誰よりも才能があるのに、人々を魅了するコリーダを舞うことができるのに、いつも逃げ回ってばかりのヘタレ闘牛士。
 本気で闘牛を愛し、砂の上で死ぬことを本望とする闘牛士の目から見たら、ガガンチョは許せない存在だろうな。
 才能はなくても、闘牛が好きでしがみついている、二流の闘牛士とかな。
 俺にあれほどの才能があったなら!! と、歯噛みしただろうさ。
 才能は、のぞんだ人のもとにだけ存在するわけじゃない。
 ガガンチョのように舞えたら、その場で死んでもいい! と思っている男の前で、その才能を無駄遣いしてへっぴり腰で逃げ回っているガガンチョ……。
 も、萌え……。

 あと、夭逝した天才闘牛士ホセリートと、そのライバルのベルモンテの話とかな。
 某『血と砂』のために、闘牛とスペイン関係の本、いろいろ読んだからな……(笑)。

 どんなジャンルであろうと、「アマデウス症候群」ネタには、くらりとくる。

 ま、なんにせよ、わたしは窪塚くんが好きだ。
 生の彼はどーでもいいが、「役」としての彼が好きだ。
 透き通るような美少年から、キレた変態まで自在に演じてくれる。彼の持つ、みょーなリアリティを希有なものだと高く評価する。
 いちばん好きな役は『IWGP』のタカシだけど、こまったことに『S.O.S』の名前忘れた留年して女教師を愛し続けてるロン毛の先輩くんにもめろめろだ(笑)。
 つーか『S.O.S』……『ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ』だっけか、タイトル長いんだようざってぇ、は大嫌いドラマの5指に入ってる超絶ムカつき電波ドラマ、野島伸司アンタもおいいよ、アンタの子宮回帰願望マスかき作品見たくねーよ、と毎回毒電波をくらって倒れそうになっていたたのしい思い出しかないんだけど、それでも窪塚くんだけはよかったよ。(日本語コワレてるのはわざとです、念のため)
 少女マンガのヒーロー、ヅカの舞台の上で白ブラウス着たたかこに勝てるのは、この役の窪塚だけかもしれん、とまで思ったよ。(あくまでも、この「役」な)
 『生徒諸君!』原作の、飛島峻(字がわからん……シュンってたしか、ヒネった漢字だったよね? 調べる気になんねー)をリアルで演じられる、と思ったよー。

 ペコ役は、恐怖のヘルメット頭。しかもキャラ的に、表情めちゃ幼いっす。小学生みたい。
 けっして美形キャラじゃないのに……(美形はスマイルの方)なのに、おそるべし窪塚、君が美形だということはちゃんとわかったよ。その睫毛の長さはなんだ?!(笑)

 正直、ホモ萌えはしませんでした。
 あまりに全編ホモくさかったので(笑)。
 わたしは由緒正しきオタク女。据え膳には手を出しませぬ。

 
 ようやく『エースをねらえ!』を最後まで見た。
 WOWOWで放送していたやつを、録画だけしていて、まだ見ていなかったんだ。

 「3部作一挙放送!」というウリだったが、なんでTVシリーズは全部放映してくんねーんだ?
 TVアニメ『エースをねらえ!』のあとには『新・エースをねらえ!』があったはずだよね? 「♪泣きたいときはコートで泣けと あの人はあの人は教えてくれた♪」の主題歌で、ひろみたちはアメリカかどっかに行ってなかった? アニメの登場人物が英語で喋り、字幕が出ていたのが、子ども心にショッキングだったよ。

 わたしがリアルタイムで見た『エースをねらえ!』はこの『新・エースをねらえ!』だ。『エースをねらえ!』の方は見てなかった。のちにTVで映画版を見たから、それで得心していた。

 それが何年か前に再放送されたんだよね、『エースをねらえ!』。
 火曜日の深夜枠『アニメ大好き!』で。
 そのときはじめて、まともに『エースをねらえ!』を見た。
 いやー、おもしろかった。
 ビデオを録らなかったことを後悔したよ。
 たしかにね、笑える。時代のギャップに。お蝶夫人と藤堂さんに関しては、ギャグにしか思えません。身悶え系の恥ずかしさとおかしさ。

 だけど、おもしろかったんだ。

 時代のギャップに笑いの発作は起きるけど、それでもなお、おもしろかった。
 ひろみの成長と努力に、感動したさ。

 エンタメって、こうあるべきだねえ。
 気持ちいいよ、盛り上がりが。

 悪役は顔をゆがめて目がきらーん、あっ、靴に画鋲が! 口の下までもみあげ(カール付き)のある王子様はチャリンコで「乗りたまえ、送ってあげよう」、あこがれのお姉様はロングドレスで広大な西洋館に住み、とーぜん土足。
 いいなあ。なにもかもが「パーツ」として独立した強さがあるよ。
 ひとつひとつのモノが出来事が「そうでなくっちゃ!」というお約束で最高です。

 今回またその『エースをねらえ!』を1から見て。
 やっぱり藤堂さんのカール付きもみあげや、お蝶夫人の堂々たる「花の16歳、高校2年生♪」ぶりに目眩はしましたが、それでもたのしかった。感動した。
 前半の絵の汚さはすごかったが……。後半は原作の絵をなんとかモノにしたな、って感じでほっとする画面になっていたし。

 
 そして、『エースをねらえ!2』。
 わたしこれ、アニメで見るのははじめてかな。たぶん。前に放送していたのは知ってるけど、見損なっていた。
 原作では読んでいた。だから桂大吾コーチのことは知っている。

 Be-Puちゃんが「WOWOWのCMでちらりと見たんだけど……あれってホモの話?」と大真面目に聞いていたとーり、正気ぢゃねえ男の友情の物語。

 いやふつーさ……親友が不治の病だと知った途端、出家するかね。アンタ変だよ。
 なにかっちゃー、親友の幻と会話するなよ。それもドリーム入ってるよ。そのうち、桂さんの脳内の宗方さんの背中には、ピンクの羽が生えてくるんじゃないか?
「俺の天使、宗方。今日もきれいだよ」とか、話しかけそうでこわいな。

 桂コーチに関しては、まなあたたかい笑いを禁じ得ません。

 ま、それはともかく。
 起伏に富んだ物語を大変たのしく堪能しました。
 それは完結編の『エースをねらえ!ファイナルステージ』も同じ。

 独立した物語として、おもしろかった。
 でも。

 でもさ。

 あれって、『エースをねらえ!』なの?

 
 わたし原作、最後まで読んでないのね。『ファイナルステージ』の話はまったく知らない。アニメで今回はじめて見た。
 だから原作がどうだから、という話はわからない。
 原作まんまなのかそうでないのか知らないし、実はそんなことはどーでもいい。

 ただ、『2』と『ファイナルステージ』は、わたしにとっての『エースをねらえ!』ではないなと思った。

 だって、トンデモ度が下がり過ぎちゃってるもん。

 お蝶夫人も藤堂さんも、ふつーの人じゃん。
 『エースをねらえ!無印』のときの、トンデモない人たちじゃないじゃん。
 地に足の着いた、ふつーの人たちじゃんよー。

 こんな高校生いるか!(ビシッ!)
 こんな日本人いるか!(ビシッ!)
 こんな人間いるか!(ビシッ!)

 と、いちいちつっこみ入れずにはいれないよーな、バカバカしいけどものすごく濃い、魅力と破壊力を持った人たちだったのに。

 お蝶夫人は池田昌子の声でなきゃいやだ〜〜。あの気品あふれる声で「あたくし」って言ってくれなきゃいやだ〜〜(じたばた)。
 いつでもどこででもドリーム入って、勝手に自己完結する、こまったちゃんのお蝶夫人でなきゃいやだ〜〜。
 そしてそして、傲慢な女王様でなきゃいやだ〜〜!!
 弱くてヘタレなお蝶夫人なんか、わたしのお蝶夫人じゃない〜〜!!

 藤堂さんも森功至の濃い〜キザ声でなきゃいやだ〜〜。語尾は「たまえ」でなきゃいやだ〜〜。
 いつも場違いに明るくさわやかで「はっはっはっ」と笑ってくれなくちゃいやだ〜〜!!
 そしてそして、こいつ実は情緒が欠けてるだろ、てなくらい王子様してなくちゃいやだ〜〜!!
 弱くてヘタレな藤堂さんなんか、わたしの藤堂さんじゃない〜〜!!
 

 わたしはどうやら、『エースをねらえ!』の、あのトンデモな世界観を愛していたようです。
 異世界ファンタジーを見るハートで。
 剣と魔法の世界で戦争にあけくれ、身も心もぼろぼろになりながらも明日をめざす主人公に感情移入して感動するように、パラレルワールド日本を舞台にしたファンタジー『エースをねらえ!』を、愛していたのです。

 
 『2』と『ファイナルステージ』は、別ハートでたのしみました。
 でないとちょっと苦しい。
 声優も絵も世界観もちがうんだもん。

 ねえねえ、あの出崎統・杉野昭夫コンビって、どうよ?
 わたし実は、マンガ原作のアニメーション化において、この人たちの仕事はあまり、好きじゃないんだ。
 だってさ、マンガのアニメ化っていったら、原作を大切にして欲しいじゃん。マンガってのは、物語だけでなく、「絵」で語る部分も大きいんだから。
 それが、出崎・杉野コンビの手にかかると、原作無視して「彼らの」作品に作り替えられちゃう。
 同人作家が自分の絵で既存作品をパロディ化するみたいにね。
 その昔、『キャプテン翼』っちゅーマンガのパロディが一世を風靡していたころ、少女マンガのような可憐な日向小次郎や若林源三が当たり前にマンガになっていたよ。
 たしかに髪型や服装は同じ、言動も同じかもしれん。だが、顔の半分が目で星がきらきらして睫毛ぱっちり鼻筋通ってますのお前らが、日向や若林のわけがないだろおっ?! てなノリっすよ。
 たしかにひろみにしろお蝶夫人にしろ、パーツは合ってるよ。でもそれは本物のひろみたちじゃない。出崎・杉野コンビの、ひろみたちだ。
 絵も演出も、出崎・杉野コンビのオリジナルだ。
 出崎・杉野コンビのファンならいいだろうよ。でも原作のファンだったりしたら、つらいよ。

 先日アニメの『ブラックジャック』が放映されているのを見たんだがね。
 …………あれ、『ブラックジャック』じゃないっす。
 だって絵が。絵が、カケラも手塚治虫じゃないっす。ゲストキャラの美女なんて、『コブラ』に出ててもきっと不思議に思わず見てるよ……。
 つまり、『エースをねらえ!2』に出てても違和感ない手塚治虫キャラって、どうよ? てことさ。
 山本鈴美香と手塚治虫って、絵のタッチまったくちがうじゃん。
 なのに、出崎・杉野コンビの手にかかっちゃ、みんな同じさ〜〜。

 もちろん、マンガをそのままアニメにすればいいってもんじゃない。絵も演出も変わって当然だ。
 ただ、出崎・杉野コンビほど原作無視して「自分たちの」作品に変換してしまうことに、疑問を感じているんだ。
 『エースをねらえ!』だって『無印』のころは、がんばって原作の絵に似せようとしていたじゃん。それが、『2』以降は完全オリジナルだよ……。

 うまいんだけどね。出崎・杉野コンビ。
 これだけ実力があるのに、いや実力があるからか?、自己顕示力が強すぎて、残念だ。

 
 んでもって、実はみょーにおもしろかった『ファイナルステージ』。

 ひとりアメリカで黄昏れる藤堂さんのこと、心配にならなかった?
 わたしは心配でしょーがなかったよ。
 藤堂さんあなた、そんな受オーラ全開で「ボクは今傷ついてます。誰でも押し倒してください」てな風情でニューヨークなんかにいちゃダメよっ。シャワーあびたまんまの裸で、無防備にドアを開けちゃダメでしょおっ?! その男、アナタのこと狙ってるのかもよっ?!
 はらはらどきどき(笑)。
 子どものころには思いもしなかった心配だわ(笑)。

 んでもって、お蝶夫人とお蘭。
 どっちが受ですか?
 この人たち、すばらしすぎです。いつこのままカサブランカ群れ咲く世界へダイビングするのかと、はらはらしました。
 つーかお蘭、かっこいいなあ。惚れるよー。

  
 『エースをねらえ!』は変わってしまい、もう昔の『エースをねらえ!』じゃない。
 そして。
 わたしももう、昔のわたしではないのだ。
 ……汚れた大人になったもんだぜ。ふっ。


トイレの鍵。

2002年8月26日
 かなり久しぶりに、トイレの鍵を閉めた。

 祖父の三回忌だったのよね。
 親戚やらなんやら、ささやかに集まっていたので、トイレに入ったわたしは「あっ、そうか」と思って鍵を閉めた。

 ひとり暮らしですから。
 トイレに鍵をかける習慣がありませんでした。

 つーか、トイレのドアはいつもわずかばかり開けておくのが癖になってるし。
 全部閉めちゃうと、猫がうるさいのよ。「おねーちゃんの気配がするのに、姿が見えない!」てなもんで、鳴きわめいたり、ドアをがりがり引っ掻いたりする。
 とりあえずほんの少し、中がのぞける程度に開けておくと、納得するらしい。「ここにいるのね」って感じにのぞくだけのぞいて行ってしまう。
 そのときの気分なのか、「中へ入れろ」とドアの隙間に前足をつっこんでじたばたしたりもする。トイレのドア、重いから自分で開けられないらしい(風呂のドアは開けるくせに)。
 こちらからドアを開けてやると、中に入ってきて便器に坐っているわたしの周りを一周して出ていく。なにがしたいんだか。
 そしてごくたまに、坐っているわたしの膝に乗って、寝てしまったりする。

 トイレ使用中、むき出しの太股の上に猫……。

 客観的に見ると、これほどまぬけな姿もないが。
 それでも、うちのバカ猫はかわいいのである。世界でいちばんかわいい猫なのである。
 たぶん、猫に飼われている人間たちは全員、同じ想いのハズだ。

 そして、祖父の三回忌。
 お坊さんがお経をあげているその最中に、猫はあたりまえの顔をして、仏壇の上に飛び乗った……。

 じーちゃん、ばーちゃん。
 我が家には猫がいるよ。
 じーちゃんばーちゃんが生きていたころと変わらずにね。

 
 おどろいたこと。

 ネットの月組大劇芝居『長い春の果てに』の公演感想をいくつか読んでみた。
 ……ケロって、出番少ないの?
 もったいない使われ方で、やりがいのない役なの? さららん以下の役の大きさなの?

 びっくり。
 ふつーの人の印象はそうなんだ。

 出てくる時間が短いからか?
 私生活が一切描かれず、熱血記者してる部分しか描かれていないからか?

 いやあ、わたしケロファンだけど、そんなことカケラも思わなかったよ。

 ワタ×ケロに萌えてて、そんなこと考えてるヒマなかったって(笑)。

 つーかさ。
 ふつーの人って、不自由だなと思うのよ。
 悪徳医師ワタルが突然善人に変身しちゃう、あのドアホウなシナリオを、どう理解するの?
 だってあまりにも変な展開だよね。
 人間が生き方を変えるには、理由が必要よ。「物語」なんだからね。「不治の病」だと知ったから善人になった、って、そんな薄っぺらい理由を理由にするなら、石田先生と同レベルよ?
 人が死ねば感動ですか。
 んじゃ、なんでもかんでも殺しなよ。視聴率が落ちてきたら、てきとーなキャラを殺してお涙ちょうだい、ほら感動。
 それと同列の理由ね。「不治の病だから改心」。
 死は感動だから、改心なのよー、てか。
 わたしはワタル医師の死にはなんの感動もなかった。
 だって、「死」で感動させるなら、彼が改心するに至る過程を描くべきでしょう。その手間を一切省き、「死ぬんだから、泣いてね」と言われても、顎が落ちるだけさ。
 さて、ワタル医師が突然別人格になった理由を、ふつーの人ならばどう納得するんだ? 「不治の病だから改心」なんておめでたいことを考えない、ふつーの人は、ただ怒るだけじゃないの?
 バカにすんじゃないわよっ、って。
 怒る前にあきれて終わりかな。どーせ石田だし、こんなもんか、って?
 それとも、ワタル医師は突然宇宙人にさらわれ、円盤から降ろされたときには人格が変わっていました、とか、そんな理由でも見つけて納得するんだろうか。

 その点わたしはオタクなので、とっても簡単だ。
 「ワタル医師は、ケロ新聞記者の愛で、改心した」。
 伏線として、ワタル医師が愛にも物質にも恵まれない少年時代を過ごしたことが語られているよね。だから彼は、ちゃんとした「愛」があれば改心できる素質を持っている。うん、この伏線があるからこそ、「ケロの愛で」という物語が真実味を持つ。
 さららんの役がもう少し、ワタル医師に対して複雑な想いを持っている(あるいは表現している)ならば、この役はさららんでもよかったかもしれない。ってゆーか、さららんが女医だったら「物語」としての深みは増したと思うよ。腐女子的にはうれしくないけどな。
 しかし、さららんの役作りがアレである以上、ワタル医師の「悪人→善人」への変化は、それまでの彼の生活になかったものが加わったためだと確定できる。
 1(悪人)+x=3(善人)
 この数式から、xの値を求めよ。
 てことで、悪人時代にはそばにいなかった、ケロがこの場合のxになる。
 わかりやすいやね。

 ああ、腐女子でよかった。

 「不治の病だから改心」なんて、客をナメた物語にも、腹を立てることなくかえってたのしむことができて。

 そして、「ひとひとりの人生を変えるほどの愛」を捧げたであろー新聞記者の役をやっているケロを、「出番なくて可哀想」とか「あんなやりがいのない役でもったいない」とか思わずにすんで。

 ケロちゃん、とってもパッショネイトに新聞記者を演じてますぜ。
 社会の敵として糾弾していたはずの悪徳医師を、誠心誠意支えてますぜ。
 敵だったはずの男の苦しみに、顔をゆがめ、共に苦しんでますぜ。

 ……いい役じゃん。

 ショーの方は、短パン膝小僧と、あいかわらずぶ*いくな女役姿に目眩がしましたが。雪組時代から、ぶさ*くだよね……伝説の「ミラクルファイブ」でどれだけつらかったか……。
 女役がブーでも、大好きだよケロちゃん。

          ☆

 そして今日は宙組東宝発売日。
 いつもの場所へ行ったら、男の人が青いシートを広々と敷いて場所取りしていて、おどろいた。
 ついにこの穴場もダフ屋の魔の手がっ?!
 ……ヅカチケット目当てじゃなかったみたいだから、よかったよ。次にはいないだろうし。

 WHITEちゃんは宙組に並んだそのあとで、インテックスに向かって旅立ちました。
 元気なヤツだ……。

 
 またしても、文字数エラー。
 わたしには少なすぎるよなあ、このサイトの文字数って。

 昨日は話題途中だし、おまけに内容も泣く泣く削ってたりするんだよ。

 3700文字しか一度に書けないんだよね、ここ。
 つーと、原稿用紙でいうと9枚ちょっと。
 …………少ねーよ。

 今日もかねすきさんと一緒だったので、昨日の月組のワタ×ケロで盛り上がりました。
 ああ、いいなあ、ワタ×ケロ……。

 キティちゃんは、ばりばりのリカファン。リカちゃんさえ舞台にいれば、それでしあわせ。リカがいる限り、駄作なんて存在しない。(逆に、リカがいない舞台はそれだけで駄作の可能性大)
 そんな彼女は超ご機嫌。今回の月組公演は大変お気に召した様子。
「リカちゃんの脚のためだけに通うわ、わたし!」
 キティちゃんは吠える。

 リカちゃんの脚。
 ショーの方で、リカちゃんは美脚を披露。いやあ、すばらしいです。
 脚、長いよね。スタイルいいよね。

 それはともかく。

 わたしが思いを馳せるのは、ワタル兄貴だったりする。
 たしかに、リカちゃんはかっこいい。チャイナドレスから伸びる美脚に釘付け。
 しかし、女リカちゃん単体では、それほど萌えはしないのだ。
 そこにワタルが加わると、萌えはパワーアップする。

 ワタル兄貴の最大の魅力は、あの体格だろうとわたしは思う。
 かっこいいのだ。とにかく。
 自分が華奢な小さな女の子になったよーな錯覚を与える、あの広い肩と胸。がっしりとした男らしいスタイルは、オトメのあこがれだ。胸キュン(笑)だ。

 しかし。
 ワタル単体では、ときめかない。
 ワタさんは色気のある人と組んだときに限り、わたしを虜にする。

 たとえば、コム姫。たとえば、リカちゃん。
 そして不本意というか不意打ちだがケロ。

 ワタルって、大きな透明の入れ物なのかなと思う。
 組んだ相手をそのまま映す。相手の色になる。
 ワタル個人でならいやになるくらい健全で無神経な体育会系の持ち味があるのに、組む相手によって耽美にも繊細にもなる。
 演技力も大してないと思うので、時折見せる本来の彼とまったくちがうカラーは、やはり相手役のカラーなんだろう。

 それはそれで、得難い才能だろうさ。

 相手の色気を映し、その恵まれた体格で何倍にも発酵し、発散するのだから。

 女リカとからむワタルは、すてきでした。
 ああ、かっこいい。
 リカちゃんを持ち上げてくるくる回しちゃうのなんか、兄貴以外の男では無理でしょう!! ブラボー!!

 コム姫のときも思ったけど、ワタル兄貴ならわたしのこともお姫様抱っこできるかもなあ。
 ……そう思える男って、いいよな。ロマンだよな。

 ええ。
 今日はインテックスで同人誌のイベントがあり、わたしとかねすきさん、WHITEちゃん、Be-Puちゃんは参加しておりました。
 そのあと梅田でごはん食べたあとのことよ。

 かねすきさんが、ものすっげーーーーナチュラルに言うのよ。

「緑野さんって、身長170って言うけど、それ以上あるんじゃないですか? だって目線が……」

 をい。

 我がソウル・フレンド、かねすき嬢よ。
 めちゃナチュラルになにを言うだ。

「わたしは身長168センチっ、170だなんてひとことも言ってないっ」

 「え」とか言って、本気で固まるな、戸惑うな。
 なにを聞いているの、わたしは168センチよ。今までも何度もそう言ってきたでしょう? ケロちゃんよりはほんの少し大きいけど、ゆーひちゃんよりは小柄なんだってばっ。

 華奢な女の子になりたくて、踏み台昇降をがんばりすぎ、腰を痛めているよーな女の子らしい女の子なのよっ?!(みんなに爆笑された。「そんなにしてまで痩せたいの?」って。痩せたいよ、この身長でデブになったらわたし、人生儚むぞ)

 このわたしでも、夢を見させてくれるワタル兄貴。
 わたしのことだって、兄貴なら抱っこできる……よね?
 オトメはぁとがチクチクするわ(笑)。

 ところでかねすきさん。
 冬コミはほんとに本出すの?
 ワタ×ケロで。
 あなたが描いてくれるなら、わたしも書くわ。書きますとも、かなしくせつない、愛の物語を(笑)。
 にしてもこのままじゃ、うちはほんとにケロ受サークルだよ……。

 世の妄想系でも、ケロは攻なのにさ。なんでわたしら、少数派の中の少数派を突っ走ってるんだろう??

 
 
 ああもう、どうしてくれよう。

 うろたえました。おろおろ。
 目からウロコが。
 どうしよう。
 

 行ってきました、月組初日。
 期待なんかしてません。わたしの心はすでに星バウにとんでいました。
 冬コミに本を出すことがあるとすれば、それはまちがいなく『ヴィンターガルテン』本でしょう。ロリコン医師の話なんてモノは、最初からアウト・オブ眼中でした。

 だからとっても気を抜いて、「ゆーひの女装(笑)」というキワモノ見物の気持ちで行きました。

 まさか。
 まーさーか、萌えるなんてっ!!

 芝居の幕が下りるなり、隣に坐ったかねすきさんが言いました。
「冬コミに本出すなら、わたしお金出しますよ」
 かかかかねすきさん。なんてことを。
 出すなら金だけでなく、原稿も出してください。描いてください。

 いやあ、びっくりした。
 油断していたし、それ以前にまず、夢にも思ったことのないカップリングだった。
 まさか、こんな話になるとは。

 最初、リカちゃんのあまりのプリチーさにおどろいた。
 いい。いいっすよ、その髪型!! さらさらストレートの前髪アリ。かわいいっ。ハンサムっ。
 スタイルいいよね。細いよね。隣にワタさんが立つともー、ふたりの体格差が美しいのよ。
 ワタル×リカってのもいいなあ。そんなことをぼんやりと考えて、見ていたよ。
 ええ。
 問題のシーンまでは。

 ワタルは悪徳医師。不幸な少年時代が災いして、悪の道へ走った人。とっても底の浅い、笑止な人。いやこれは、脚本のせいだけど。
 でまあ、悪人のワタさんは、悪いことをしているわけだ。14歳のえみくらちゃんに振り回されている35歳(?)のおぼっちゃま医師リカちゃんの物語とは関係なく。

 そのワタさんの悪事を、熱血新米医師さららんと、熱血新聞記者ケロが暴き、追いつめる。14歳のえみくらちゃんに振り回されている35歳(?)のおぼっちゃま医師リカちゃんの物語とは関係なくな。

 そして、悪事の証拠を突きつけられたワタル医師は、かっこつけを放棄して「金でなんとかならないか」と正義の新聞記者ケロにすがる。
 第1のびっくり。
 ワタさん、ケロのジャケットの中に手、入れます。
 なにすんだ、あんた?!
 いやいや、金を無理矢理押しつけようとしただけなんだけど。
 いきなりジャケットめくるなよ! びっくりしたよ、わたしゃ。
 第2のびっくり。
 ワタさん、ケロの肩掴んで揺さぶります。
 ワタさんとケロちゃんだと、身長差いくつだ? かなりあるよな。ちなみに、体格差もすごいです。体育会系大男が、線の細い男にからんでます。
 第3のびっくり。
 ワタさん、ケロの腕の中で倒れます。
 なんの伏線もなく、悪徳医師ワタルは不治の病で倒れるのです。正義の医師と記者に詰問されているときに、取り乱しついでに昏倒。……かっこわるいっす。突然すぎるから、なにかと思ったよ。
 それも、ケロの腕の中……。
 な、何故?!
 あ、このときももちろん、14歳のえみくらちゃんに振り回されている35歳(?)のおぼっちゃま医師リカちゃんの物語とは関係ないです、ええ。

 ワタル×ケロ?!

 …………考えたこともなかった。
 髪の毛一本ほどにも。
 夢にも。
 カケラにも。

 ああなのに。
 ワタル×ケロ!!

 悪徳医師ワタルが取り乱し、正義の新聞記者ケロ相手に迫りだしたときから、わたしとかねすきさんは笑いをこらえるのに必死。
 手は入れるわ、肩は抱くわ、挙げ句の果てに、倒れてケロに支えられるだとぅ?!
 暗転の間際、悶絶死しそうになったよ、わたしゃ。

 それだけでは終わらなかった。

 次にこの悪徳医師ワタルが登場するときは、いきなり善人医師ワタルになっていた。
 ええ。
 人格が変わっておりました。
 それについての説明は一切ありません。
 ただ、不治の病のワタルくんは、突然いい人なのです。
 弱る身体に鞭打って、自分の病気の研究をしていたそうです。自分はもう助からないけれど、次に同じ病気の人を治療するために、いわばモルモットになることを選んだわけです。
 そしてワタさんがそんなことをやっている間も、14歳のえみくらちゃんに振り回されている35歳(?)のおぼっちゃま医師リカちゃんの物語はばたばたコミカルに進んでいます、はい。

 このワタさんの病気が、実はえみくらちゃんの病気と同じだった、ってことではじめて、ワタさん側の物語と、リカちゃん側の物語はつながります。
 …………ご都合主義にしか、見えません。
 だってワタさん、突然善人になってるし。

 そして、善人ワタルの横には何故か、正義の新聞記者ケロがいます。苦痛にうめくワタルを抱きかかえたりしてます。

 ワタルが死んでありがたく解剖されるときも、あたりまえのよーに医師たちの間にケロがまざっています。

 
 結論。
 悪人ワタルを善人ワタルに変えたのは、ケロだ。

 悪徳医師ワタルが何故突然、善人になったのか。
 まったく説明されていないのよ。
 んじゃ、描かれていない間になにかあったと考えるしか、ないでしょう。
 じゃなにがあったって、そりゃ、倒れる前と後の「変化」って、ケロの存在しかないじゃん。正義の医師さららんもそりゃいるにはいるが、あの子はワタルが悪の権化のときからすでにそばにいたわけだから、「変わる」理由にはならない。

 ケロと出会って、ワタルは変わった。

 い、いったいそこに、どんなドラマが?!

 
 わたしとかねすきさんの焦点は、そこだった。

 もちろん、いちばん大きな答えは出ている。

 悪徳医師ワタルは何故、善人に変身したか。
 その理由は、「愛」。
 新聞記者ケロと出会い、彼の愛によって、ワタルは変わったのだ。

 問題は、その愛のカタチ(笑)だ。

 
 ねえねえ、ケロって年齢設定いくつよ?
 かねすきさんは、オヤジだっていうのよ。
「離婚を2回くらい経験してて、今も養育費を払い続けてるの。でも、子どもには会わせてもらえない、そんなオヤジが、若い悪徳医師に出会って、仕方なく支えてあげるのー」
 り、離婚経験2回?
 わたし、青年だと思って見てたんだけど。
 トップ屋をめざしていたころ、勇み足でリカちゃんを傷つけてしまった過去を持つ、若い新聞記者。まだまだ駆け出しだから、理想に燃え正義に燃える。
 髪型もストレートでこざっぱりと若めだし、声のトーンも若々しい。ケロちゃん、今回は若い役作りだなー、と思って見てた。オペラグラスで顔を見ちゃうと、やっぱり目の下にはクマがあってオヤジ顔なんだけど、「役」としては青年なんじゃないかな。さららんと同年代くらい、ケロちゃんの実年齢くらいの男。
 若くて青い印象。

 オヤジか若造かで、物語が変わってきます。
 真実をプリーズ。
 ケロ、青年なの? 中年なの?

 
 ワタル×ケロの衝撃で、他のことはすべて吹っ飛んでしまった。
 ああ、びっくりした。

 芝居は……とりあえず、ヅカ初心者には見せたくないですな。ディープなヅカファンだけが楽しみましょう。
 軽くて愉快な物語。リカちゃんをはじめ、登場人物すべてがかわいい。
 石田芝居の特徴かな。たのしく笑って観て、あとにはなにも残らない。
 1回観たら十分、2回は観たくない。もしもリピートかけたら、きっと嫌なところばかり目に付くようになるんだろうな。深く考えず、表面だけを楽しむべし。笑いを取る手段にしても、その場当たりというか、底の浅いセンスのないものが多いのも、特徴。
 石田作品にはいつも、生理的に嫌なモノが詰め込まれているからなー。

 石田作品の物語としての機能性の低さや、悪趣味さは周知のことだと思う。
 だが、どんな作家にも良い面があるわけで、石田センセはキャスティングだけはうまいと思う。
 この人に、こんなキャラを。ってやつな。
 リカちゃんはかわいかったよ。ほんとに。えみくらちゃんも、彼女にしかできないだろこの役は、と思ったよ。ワタルの白衣、きりやんのツナギ、おばかで憎めないキャラのタニちゃんと、適材適所。
 コウちゃんとゆーひに関しては、他に役がなかったんだから仕方ないと思っている。
 コウちゃん、うまいのかな。うまいんだよね? でもどーしても外見についていけなかったよ、わたし。デカすぎる……カオが。そして、男役がわざわざ演じる意味がない役だと思ったよ。いい役なんだけどさ。たんに、「他に役がないから仕方ない」って消去法で決まった役に思えた。
 ゆーひの役は、男役が演じることに意味を見つけることができる。コミカルな役だし、たくましさで笑いを取ってるし。弁護士にはカケラも見えなかったけどね……バカなアメリカ女……あの胸は詰め物だよね、ゆーひちゃん。
 下級生に出番は少ないが、群衆芝居ではみんななにかしらやっている。にぎやかだなー。

 ところでこのヒロインえみくらちゃん、いいのか? たしかにかわいいよ。すごくかわいいけど。
 わたしには、「押しかけ厨」に見えた……。
 脳内事実でシンデレラになりきって、一方的に嘘を付いてリカの家に押しかけ、居座る。
 しかも親公認。親厨かいっ、と内心つっこんだよ。

 ハッピーエンドでよかったね。一歩まちがうと、いろんな意味で犯罪な物語。


 両親が帰ってきた。
 毎年8月第3週は家族行事(主に旅行)だったんだが、弟の休みが取れないので両親だけで北海道へ行っていた。弟ひとり置いて行くのは可哀想、だからわたしも残れ、というのが彼らの主張。
 いいオトナなので、可哀想もクソもないんだがな……べつにどーでもいいことなので、両親を気持ちよく見送りましたよ。

 彼らがいないからってどーってことはないのだが、面倒なのは庭の水やりだった。
 母が「あたしの孫」と呼んでいる、あの奔放に生えまくった植物ども。
 めんど〜〜!!

 母ときたら、行く前にさんざん含みおきし、さらにわざわざ携帯メールで「水やりたのむ」と言ってくる固執ぶり。
 ほんとに心配事は花壇だけだったのね。

 家の前の花壇と、裏庭の花壇と大小様々な植木鉢。緑に浸食されてるので、どれが育てている植物なのか、勝手に生えているものなのか、わかりゃしねえ。
 わたしは植物に興味ないのよ。
 きれいに整えられた花壇ならともかく、母の性格そのまんまなダイナミックすぎる花壇は、わたしの趣味じゃない。

 裏庭はホースで水やりするけど、家の前の花壇はじょうろを使うしかない。
 ちょろちょろと水をやりながら、郷愁にふけりました。
 そーいや小学校のころは、やってたな、水。夏休みのお手伝いで。あのころはまだ裏庭には花壇を作ってなかったから、この家の前の花壇だけだった。
 ほんとに、大昔のことだよ……。

 北海道は大雨だったらしい。台風の影響で。
 大阪は快晴だったのにね。
 天気が逆なら、わたしも水やりしないですんだのにな。

 
 今日はCANちゃんの会社でアルバイト。

 自由業で自宅で仕事をしているわたしは、時間だけは使い放題。〆切間際でさえなければ、呼び出されればどこへでも行く。腰は軽いよ、わたし。
 てことで、前日の夜に頼まれ、ひょいひょいとミナミまで。
 CANちゃんとこでバイトするのはこれで2度目。依頼は唐突だけど、そんなのぜんぜんOK。

 前に一度、CANちゃんからの依頼を断ったことがある。そのときは、仕事の〆切前で切羽詰まってたのね。
 だけど、そのときのCANちゃんからの依頼内容、ものすごーく魅力的だったのよ。
 なんと「ビデオ出演」!!
 CANちゃんの会社って、ビデオの制作もしてるんだよね。企業向きの。
 「30代で、所帯臭くない素人女性」が必要だったんだって(笑)。
 やりたかったよ、ビデオ出演(笑)。
 お金云々じゃなく、経験したかった、撮影とかそーゆーの。仕事に役立つかもしれないから。
 断るのがつらかった……〆切さえなければ、絶対引き受けてたのにー。わたしみたいな一般的な顔した人間が、そーゆーものに出られることなんてまず一生あり得ないのにー。
 唯一無二の機会を逃しました。
 「次の機会にぜひ」とCANちゃんにはお願いしてあるが、もう二度とそんな話はない。ちぇーっ。

 そーいやBe-Puちゃんも、前の職種のときは、仕事の人手が足りないときはわたしに言ってきてた。「明日手伝って!」と。わたしはふたつ返事で出掛けていく。
 Be-Puちゃんとおそろいの白い割烹着姿で、「いらっしゃいませ!」をやってましたわ。1日にちまきを500本だか巻いて、手が死んだな……。(すげー肉体労働だったよ)
 繁忙期だけ、イレギュラーで日雇いされるわけだ。
 いつだったか、Be-Puちゃんより先に職場に到着して、シャッターの閉まった店の前で同人誌の原稿やってたことがあったなー。そうそうあれは、『Crossroad』の原稿だった(笑)。「知らない男の子が店の前に坐ってるからおどろいた」などと、よくわからんことを言われたっけ。誰が知らない男の子だ、わしじゃ、わし。それともあれは、やほひ原稿やってたわたしへのイヤミ?(笑)

 販売業は好き。お客さんと話すのがたのしいから。「ありがとうございました」って言うのが好き。

 もうずいぶん、外で働いてないなぁ……。

 CANちゃんから、トドコンのチケットとCSのビデオテープをもらう。
 わーいわーい。ケロ×トウコの対談〜〜。

 バイトが終わった後は映画を見て(『スターウォーズ・エピソード2、吹き替え版』。わたし、スターウォーズのファンでもマニアでもないんで、コメントは控えます)、弟と待ち合わせして、ふたりでごはん。

 それにしてもわたし、ほんとにミナミってよくわからない……。キタ育ちだからさ。
 バシ筋を基点にしないと、位置関係がわからないのよ。

 
 Be-Puちゃんがビデオテープを持って現れた。友人のためにダビングして欲しいのだそう。

 昨日の今日なので、ワゴンねーちゃんから聞いた話をする。
 うんうん。
 いろいろ話したついでに、ワゴンさんの職場の人に、わたしのスタイルが誉められた話をした。
 するとBe-Puちゃんは速攻で返してきた。

「顔のことはノーコメントだったのね」

 ………………。
 ナイスつっこみだ、Be-Puちゃん。

 でもな、友だちなら、そこをつっこんじゃいかんだろ?
 な?
 めったに誉められることのないさみしー女が、無邪気によろこんでいるのにな。
 それを、叩きつぶさなくてもな?(笑)

 ええ。
 顔のことはノーコメントですわ。
 つーか、顔の美醜について口に出したら、それはもう誉め言葉にはなりようがないでしょうからなっ。

 
 WOWOWの『エースをねらえ!』にハマっている。たのしく見ながら、保存版CDを作成している。

 だが。
 『エースをねらえ!』と友人ならば、そりゃ友人を取るだろう!!

 宙組千秋楽。
 偶然友だちのワゴンさんに会った。
 いや、ワゴンさんは劇場内で働いているので、会うのは偶然じゃない。わたしはムラへ行くたび「ワゴンねーちゃんいるかなー」と思って彼女の受け持ち場所をのぞいている。
 仕事中の彼女に会える確率は、3分の1くらいかな。今日はその3回に1回の日だったらしく、向こうからわたしを見つけてくれた。
「緑野ちゃん、また切符買えずにあそこにいるかと思って、探しちゃったよーっ」
 とか言われ。
 あそこ、てのはサバキ・ゾーンね。前回雪組の大楽、あそこで会ったんだわ。
 心配ありがとう、今日はチケット持ってるんだ。
 初日とか新公とか千秋楽とか。イベント好きなわたしは、冠のついたときには出没するからなー。ワゴンねーちゃんも学習したみたい(笑)。
 で、ワゴンさんと帰りに会う約束をした。わたしもひとりだし、他に予定ないし。
 ちらりとアタマをよぎったのは、『エースをねらえ!』のこと。
 時間までに帰るつもりだったから、ビデオの予約入れてない。全話録画する予定で、今までがんばってきたんだけど。
 …………でも、たかがアニメと人を比べるまでもない。
 いーや、アニメは。
 ワゴンねーちゃんと話せるの、ひさしぶりだし。

 とゆーことで、帰りにふたりでお茶しました。さよなら『エースをねらえ!』。

 ワゴンねーちゃんは、わたしの自慢のおねーちゃんだ。
 美人でやさしいのだ。
 わたしより……えーと、6つ年上だな。めちゃ若いうちに結婚したそうで、もう高校生と中学生の息子さんがいる。
 だがっ。
 そんなふーにはまず見えない。
 わたしもタメ口きいてるし(笑)、同じトシにしか見えないよー。
 息子さんと歩いてて、「年上の彼女」とか誤解されんじゃねーかと心配するほどだ。
 身長もわたしとほぼ同じだけあるし、細いのに胸はばーんとあるし、小顔だし、足長いし。……独身のわたしより、子持ちの彼女の方がスタイルいいって、どうよ?

 わたしは長女だが、実は妹気質で、あまえたさん(さむっ)だ。
 そんなわたしを姉のようにあまやかしてくれる友人がふたりいる。
 ワゴンさんと、きんどーさん。
 このふたりは、わたしの大好きなおねーちゃんだ。
 実際にわたしたちは「スパ好き3姉妹」と称して、近辺のいろんなスパに出没している。
 スパだけでなく、ちょっとした遊びはこのメンバーで行くなー。
 えーと、モモ狩り、しいたけ狩り、バーベキュー、そば打ち、パン作り、乗馬、ラフティング、タラソテラピー……あとなんかあったっけ? ジェットスキーは誘われたけど断ったんだ、わたし目が悪いから水ものはつらいのだ。
 そして、しょっちゅー3人で温泉。
 集まって話してその場で宿を取って(ネットは便利)、「じゃあ3日後に1泊旅行決定」なんてこともあった。とにかく腰の軽い人たち。とくに、大きなワゴン車を男前に操り、わたしたちをどこでも運んでくれるワゴンねーちゃんの存在が大きい。おかげで行動範囲が広いったら。
 彼らはわたしという人間を構成する「オタク」「ヅカ好き」という2大要素に関係していない、少数派の友人だ。
 ふたりとも、「オタク」という文化をハナから知りもしないし、「ヅカ」は自分とは関係ない異文化だと思ってスルーしている。
 オタクじゃない、パンピー・フレンズ。……これがわたしにはありがたい。
 わたしはオタクだからオタクな友だちとオタクな話題で盛り上がるのが大好きだが、それだけでは人生が閉じてしまう。わたしは貪欲なので、もっともっと、他のことも知りたいのだ。
 ちがう世界で生きる人と、話したいのだ。
 オタクでない、一般人属性の親友の存在は、わたしを救い、癒す。
 しかもふたりとも、お人好しなまでにやさしく、そのうえわたしに甘いときた。そしてふたりとも派手な顔立ちの美人だ。面食いのわたしは、とてもうれしいぞ。
 ありがとう、おねーちゃん。

 ふたりと「姉妹」でいるために、わたしも少しはきれーになりたいと思ってはいるんだがな……。顔に関しては親を恨むしかないんだよ。とほほ。
 せ、せめてスタイルだけは、きれーでいたいと、日々努力中だ。ぜえぜえ。

 さて、この大好きなワゴンねーちゃん。
 この日記を書きはじめてから、彼女たちと遊びに行く記述がないのはすべて、彼女が仕事をはじめてしまったせいだ。
 派遣会社に登録した彼女、なんと第一の派遣先が、宝塚大劇場。
 …………彼女、ヅカのこと、なにひとつ知らないんですが…………。
 おねーちゃんが仕事忙しくて、ちっとも遊んでもらえない、わたしはさみしい。だからムラへ行くたびにおねーちゃんを探す。きれーな笑顔で名前を呼んで欲しくて、いつも探す。
 大好きだよー、ワゴンねーちゃん。
 と、彼女の目に触れないのをいいことに、告白してみたりな(笑)。

 久々のデートは、ひたすら彼女の仕事の裏話でした。
 めちゃくちゃおもしろかったっ。
 ああ、書きたいよー、ここに書いてしまいたいよー。
 でも万が一にもおねーちゃんが誰か特定されてしまってはマズいので、書けないなあ。
 そうか……華やかなあの世界には、そんなことが(笑)。

 ワゴンさんの職場の人に、わたしもスタイルを誉めてもらったので、上機嫌だぞ、緑野こあら! お安いぞ、緑野こあら! あれっぽっちの誉め言葉で木に登るか!!(笑)

 最後に、ヅカをまったく知らないままにムラで働くワゴンさんの名言。
「あたし、ひとつおぼえたのよ」
 と、彼女は胸を張って言う。

「ルドルフっていうのは、トートとエリザベートの息子なのよねっ!!」

 チガウ。
 瞬時に完全否定したわたしに、彼女はぼーぜん。
 ルドルフはエリザベートの息子だっ、トートは関係ない〜〜!!(笑)

          ☆

 宙組千秋楽は、おねーちゃんの話の方がおもしろかったので、ぶっとんでしまったなー。
 たかちゃんが相変わらずかわいかったっす。絶対泣くよね、あの人。

 
 価値観は、ひとの数だけ存在する。
 自分の価値観は絶対ではない。

 わかっている。
 わかっているともさ。

 だが。
 アタマでは理解していても、どーしても感覚で納得できないことがある。

 電車ビデオってやつだ。

 電車の、運転席にビデオカメラを設置する。
 電車は走る。
 ふつーに走る。
 映るのは線路だ。
 線路だけだ。
 どこまでもつづく。
 線路を中心にして、風景が流れる。
 駅に着く。
 止まる。
 だが相変わらず映っているのは線路だ。
 また走り出す。
 線路はつづく。

 なんの編集もない。
 ただ淡々と、線路だけが映る。
 運転手の独り言(信号ヨシ! などの確認の言葉)だけが小さく聞こえる。
 それだけ。
 あとはただひたすら、コトトンコトトン、電車の走る音だけがする。

 ねえこれ、どこがおもしろいの……?

 ごめんわたし、まったくわからない。
 『電車でGO!』とかの、自分で運転するゲームとかならわかるよ。
 でも、ただのビデオなのよ? 映ってるのは線路だけなのよ?
 車窓ビデオなら、まだわかるよ。『世界の車窓から』って番組あるよね。電車の窓から見える、めずらしかったり美しかったりする風景を、旅行気分でたのしむの。
 でも、運転席からの風景なのよ? 映ってるのは線路だけなのよ?

 こんなビデオが存在すること自体、信じられなかった。
 市販されてるんだ。
 最初に見たのは何年前だ? ほんとに、おどろいた。カルチャーショックってやつ。

 そしてさらにおどろくことに、人気があったらしく、このテのビデオはどんどん増殖し、無数の作品が世に出ている。
 たぶん、日本中の路線すべてが、ビデオ化されているんだと思う。
 なんたって、地下鉄のビデオまで出てるんだもの。
 地下鉄だよ?!
 真っ暗なのよ?
 えんえんえんえん、真っ暗な中を走るのよ。明かりが見えたら、駅なのよ。ギャグかと思ったよ。

 なんで理解できないモノを、よく知っているかって?
 地下鉄御堂筋線のビデオまで、見ているのかって?

 うちの父が、好きだからだ。この電車ビデオを!!

 すべて、父によって問答無用で見せられるんだ。
 夕飯のときにビデオを流すんだもの!
「今日は阪急京都線だ」
 とか言って。
 梅田を出発して、河原町まで。
 えんえんえんえん、線路を見せられるの!!

 ねえ、なにがたのしいのっ?!

 いや、なんでもちょっとだけなら興味深いもんさ。「運転席から線路はこんなふうに見えるのね」って思うことはできるさ。
 でもさ、線路ばっかし何時間も見せられたらたまんないよ。

 売れてるらしいから、父のような趣味を持つ人間たちが大勢いるんだと思う。わたしに理解できない人たちが、きっといっぱいいるんだ。
 いいけどさ。
 いいんだけど父よ、家族からは大ブーイングだ。

 我が家では、お出掛け時にビデオカメラを持っていく。
 父が大好きなんだ。
 彼は電車に乗ると、いそいそと先頭車両に行き、ビデオを撮る。
 えんえんえんえん、線路を撮る。
 自家製電車ビデオだ。
 だけど、運転席にカメラを固定したわけではないので、どーしてもブレる。電車は揺れて、終始手ぶれ状態。
 酔う。
 そんな映像を見せられたら、酔う。
 勘弁してくれよ、父よ。

 ええ。
 今日はビデオ上映会だった。
 今年の夏の家族恒例行事を撮影した、ビデオ上映会。

 六甲山では行きの電車、ケーブル、帰りのロープウェイ、すべてを、乗った瞬間から降りるまで、ずーーーっとビデオ回してやんの、マイ・ファーザー!!
 高野山では電車とケーブル+バスの中でも撮ってやがった!
 そして、墓参りでは車の中で!!
 なに考えてんだよ!!

 つまり、2時間電車に乗って遊びに行ったとする。
 その電車に乗っていた2時間を、そのままビデオで再現されてしまうわけだ。
 会話も音楽もなく、ただただ、線路だけが2時間映る。
 旅行が楽しいのは、目的地に行ってからだろ? そりゃ行くまでの行程もたのしいっちゃーたのしいが、それはみんなでするお喋りとかで、ひとりで席を離れて撮った線路しか映っていないビデオがたのしいわけがないっ。

 墓参りのときの、お墓までの30分、えんえんえんえん道路を撮られ(手ぶれMAX)、家族は総ギレ。
 しかも、目的地に着いてからは、わずか10分ほどしか映ってない。
 しかもっ、人間はほとんど首から下しか映ってない。
 父は自分が喋ったりあそんだりするのに必死で、ビデオカメラのファインダー(および液晶画面)をまったく見ずにただスイッチだけ入れていた模様。

 なにをやってんだ?!

 父はビデオを撮るのがたのしいだけで、ひとをたのしませるためには一切はたらいていないのだ。
 子どもがおもちゃであそんでいるだけ。

 新しいカメラがうれしいのはわかるよ。
 この夏、弟が父にプレゼントしたのさ、新しいカメラを。
 だから父が大喜びで撮影しているのを、家族はなまあたたかく見守っていたさ。いそいそと電車の先頭車両に行くのも、黙認していたさ。
 しかし。
 ここまで自分勝手なものしか撮っていないとわっ。

「父だけにカメラ持たせるの、やめよう」
「ある程度は僕らで撮るしかないな」
 娘と息子はひそひそ話し合う。
 せっかくのお出掛けビデオ。顔がまったく映ってないって、どうよ??

 
 同人誌を読むからには、誤字脱字なんてものを気にしていてはいけない。
 素人さんの文章なんだから、まちがいがあってもしょーがないことだ。

 それはわかっている。

 だから、「以外」や「話し」などという、めちゃくちゃ多いまちがいも、なまあたたかい目で見守っている。

 「以外」と「意外」。
 漢字にすれば一目瞭然だと思うんだが、これが信じられないほど使い分けができていない。
 「以外」は、「そのほか」って意味。
 「意外」は、「思いがけない」って意味。

 わたしはそれ以外ないと思った。
 わたしはそれを意外に思った。

 小学校で習うと思うんだがな……。

 「話し」。
 名詞と動詞のちがい。
 名詞では「話」。動詞では「話し」。

 とってもおもしろい話だった。
 とってもおもしろいことを、話してくれた。

 動詞のときしか、送りがなはいらないんだよ。

 ネットの書き込みでは、わざと変換まちがいを楽しむルールとかあるから、日本語の正しさなんてあまり関係ないのかもしれない。
 しかし、同人誌として本のカタチを取って売っているものは、同音異義語であそんでいるというより、ただのまちがいだろう。
 あと多いのは「始め」と「初め」かな。
 それから、ワープロに頼り切った、「こんな漢字普段使わんだろー!」な、やたらめったら小難しい漢字ばっか使った文章。少なくとも、副詞を漢字にするのはやめようよ。
 わたしが仕事や、頼まれものでも文章を書くときに気を付けることの中には、漢字の配分、てのもあるよ。「読みやすいこと」が第一だから。新聞に出てくる文章程度の漢字しか使わない。新聞って、固有名詞や代替不可な言葉以外は、意外なくらいわっかりやすい漢字しか使ってないんだよ?

 なんて、つらつら書いてみたり。

 はじめに言っているよーに、わたし、多少のまちがいはもー、スルーしてます。そんなもん気にしていたら同人誌なんか読めないし、ネットの文章も読めないよ。
 ただ。
 ひとつだけ、どーにもこーにも、見過ごすのがつらいまちがいがあるの。
 つらい。
 つらすぎる。
 だけど、ものすごく多い。
 すごーく、多いのよ。
 このまちがい。

 ベット。

 [例]
 そのまま二人は、もつれるようにしてベットへ倒れ込んだ。

 ベットってなんだ、ベットってぇええっ?!

 ベッドだろっ?!

 ベッドってのはbed、寝台のことだ。
 スペル見れば、一目瞭然だろ? tじゃない、dだ!
 その単語がなにを意味していることなのかも考えず、耳だけで聞いた、まちがった音をそのまま文章にしてやがる。
 そんなあんた、幼児じゃないんだからさ。
 「お菓子」がうまく聞き取れず「おかち」って聞こえたからって、「おかち好きなのぉ」とか、オトナになっても言ってたら恥ずかしいだろ?
 ベットってのは、恥ずかしすぎるまちがいなんだよ。bed、とゆー単語さえ知らないってことだからな。

 ねえ。
 なんでみんな、こんな超簡単なことをまちがえるの?
 1回こっきりなら「かな入力の人のタイプミス」ですむけどさ。小説1本全部「ベット」だったら、作者本人の無知だよね?
 せっかくの萌え〜なシーンで、幼児語が出てきたら、一気に萎えるよー。たすけてー。
 せっかくのエロエロも、しらけちゃうよぅ、ママン。

 ベット率がどーしてこんなに高いんだ、同人やおい小説!!

 とゆーのも。
 わたしが読む同人誌には、高確率で寝室のシーンがあるんだなっ。
 だからどーしても、くだんの単語が出てくる。だから、くだんのまちがいが、どーしても目に付く。

 そんな同人誌ばかり読んでいるわたしが悪いのか?!

 
 一度UPした日記は、書き直さない。
 誤字脱字は恥ずかしいので、直すけど、内容は直さない。
 それがMYルールだったんだが、今回限りは書き直そう。
 やっぱり、恥ずかしかったので(笑)。
 誰か読んだかな。
 この日記のカウンターってどこまでほんとかわかんないからなー。
 誰も読んでないことを祈ろう。

          ☆

 さて。

 わたしは、ふつーに恋愛してふつーに結婚したいと思っている、ふつーの女だ。ふつーに子どもも欲しい。
 そんなわたしに、オレンジは言うのだ。
「オレは結婚する気がしないから、緑野にもして欲しくないって、黒い祈りを捧げてたんだけどさー」
 オレンジは「オレ女」だ。自分のことをよく「オレ」と言う。とくにふざけているときの一人称は「オレ」だな。普段は「私」か「アタシ」だけど。
 黒い祈りだと?
 ちょっと待て、そんな不吉な祈りを捧げていたのかお前?!
「でも、そんな祈りなんてもん、存在しないよね」
 そう、その日の話題で、「とあるHPの日記」がでていた。オレンジがよく読みに行っている人の日記で、「この世には呪いなんか存在しない。もしも呪いが存在するなら、理事長が無事でいるわけがないのだから」というよーなことが書いてあったらしい。
 この「理事長」ってのは、某歌劇団の某理事長で、その日記を書いている人は某歌劇団のファンらしい。オレンジは某歌劇団のファンではないので、そのへんよくわからないらしいが、日記を書いている人は、某歌劇団のなんらかの人事に激怒していたらしい。
 この世には、呪いなんていうものは存在しない。その証拠に、某歌劇団100万人のファンの怒りが呪詛となっていても、某理事長の身には届いていないでしょ? という意味。
 そのことをさして、オレンジは言うのだ。
「この世に呪いも祈りもあるわけないよねえ。今まで、緑野が結婚できないのはオレの黒い祈りのせいかも、とかちらりとは思ったけど、そんなわけないよね。呪いに効力がないのは、理事長が無事なことで証明されてるわけだし」
 オレンジは悦に入った声で言う。
「だから、緑野が結婚できないのは、緑野個人のせいだね。緑野自身が甲斐性ナシだからだ」
 なんだとぅ?!

「ちがうわっ、あんたのせいよ。あんたがそんな黒い祈りを捧げているから、それでわたしが結婚できないのよっ!」
「ちがうねー。オレの祈りなんか効力ないもーん。あんたがモテないのは、あんたのせいだ〜〜。そーかそーか、甲斐性ないよな、緑野は」
 しししし失礼なっ!!

「オレはべつに結婚したいとか思ってないけど、緑野はしたいと思ってるのに、できてないんだ」
 うるさいっ。

 そのうち結婚して、甲斐性を見せつけてやるぞ。
 そのうちな。
 そのうち……生きてるうちには。
 わたしは100まで生きる予定だから、いつか、そのうち。
 100までには。
 たぶん。
 きっと。

          ☆

 そして、今日。
 今日はよーやく、本格的に仕事スタート。
 がんばらなければ。

 
「緑野ちゃん、また背ェ伸びた?」
 と、会うなり言われた。
 学生時代からの友人、ダイコに会うのはおよそ1年ぶりだ。

 またってなんだよ、伸びたってなんだよ。このトシで伸びたら気持ち悪いっつの。
 しかし、わたしとダイコの身長差はなんかずいぶんあるよーに見える。アタマ半分くらい?
 へ、へんだ。わたしとダイコは最初に会ったころ、ほとんど同じぐらいだったはず。そりゃまー、わたしの方が大きかったけど、わたし的にダイコは「わたしと同じくらい背が高い女」だった。

「ダイコこそ、縮んでない?」
 と言ってみたが、反論された。
 でもな、わたしは自称168センチの女なんだ。
「自称ってことは、ほんとはもっとあるってことでしょ?」
 と、つっこまれたって、肯定なんかしない。わたしは自称168センチ。コンマ以下切り捨て。Be-Puちゃんに「170センチに数ミリ足りないだけの、自称168センチの女」と、いちいち長々と評されているとしてもだ。
 ケロちゃんの「おとめ」に載っている身長が167センチだから、今のままでもわたしとしては不満なんだっ。わたしはケロちゃんより小柄な女でいたいのよ。それが女心ってもんさ。
 あー、そーだなー。次から身長聞かれたら「165センチ」って言うことにしようかな。身長なんて言ったもん勝ちだよね。

 と、しょっぱなから身長談義。
 へんだよな、昔わたしと同じくらいでかい女だったのに、今のダイコは理想的なスタイルのかっこいいおねーちゃんだ。
 わたしとダイコはよく、姉妹扱いされた。体格や髪型が似ていたせいだ。真っ黒で量の多いストレートな髪を、腰近くまで伸ばしていた。服の趣味も似ていて、あのころはけっこーおねーさん系の格好をしていた。色は黒が基本。原色やパステルカラーなんてもってのほか。ハタチくらいだったわたしたちは、若さの驕りで黒ばかりを張り切って着ていたもんだ。

 いやあ、トシをとると女は変わるね。
 わたしもダイコも、あのころの面影はないよ。ふたりとも、髪はばっさり切ったしね。わたしはここんとこずーっとショートだし、ダイコはさっぱり系のセミロング。
 服だって、黒一色なんでこと、しなくなったしね(笑)。
 わたしは赤がマイブームだから、今はとてもビビッド。夏ならではの派手なプリントものに走ってる。

 ダイコと滅多に会えないのは、彼女が大阪在住ではないからだ。会えるのは、実家に戻ってきたときだけ。
 とにかく、いつも突然なんだこいつは。今日にしろ、電話がかかってきたのが午後3時過ぎ。「あー、緑野は家にいるんだー」とか、失礼な第一声。
 いて悪いかよ。つーか、ここんとこで家にいたのは今日が久しぶり、毎日いなかったってばよ。
「なに、今どこよ?」
「んー、昨日から大阪帰ってきてる。つっても明日また東京戻るんだけど」
「おおそーか。で、わたしはどーすりゃいい?」
 電話をしてきたってことは、会おうってことだ。
 ダイコは甘えた声で言う。
「ねえねえあたし、『まんだらけ』行きたいんだけどー」
 まんだらけぇ? いやべつに、いいけどさ。
 わかった、そいじゃ梅田で会おう。
 ホームウェア、と言えば聞こえはいいが、つまりは外には出て行けないラフな格好でいたわたしは、あわてて身支度。着替えて、コンタクト入れて、化粧して、髪を整えて。

 そうして4時半には、ふたりで「まんだらけ」。

 「まんだらけ」っちゅーのは、マンガや同人誌、キャラクターグッズなど、オタク御用達品専門の古本屋だ。
 大阪・梅田の東通り商店街にある。
 昔はディスコだった店舗をそのまま利用。
 ダイコとふたり、まんだらけの店内を歩きながら、しみじみと話す。
「昔よく踊りに来たよねえ」
「まさか昔よく来た店が、こんなふうになるなんて、思ってなかったよねえ」
 なまじ、昔の面影が残ってるからな。この店。
 しかし。
「いちばん『まさか』なのは、このトシになってもオタクやってて、マンガや同人誌を読んでることだよ」
 ははははは。
 笑うしかないっす。

 それにしても、わたしは「まんだらけ」が久しぶりだ。以前は梅田で働いていたから、まだ多少行くことはあったが、京橋に転勤になり、またその後失業したあとは、ほんとに足を踏み入れることがなかった。
 それに、まれに行くことがあっても、2階のマンガ売り場までしか行かなかった。
 3階の同人誌売り場に行ったのは、いったい何年ぶりだろう。

 驚きました。
 なんですか、あの「受別」分類はっ!!

 ジャンル別はわかるよ。しかし、ジャンルで分けた上にさらに、「受」で細分類されているとは。

 なんてこったい。
 わたしはなんかものすごーくこっぱずかしくって、そばに寄れませんでした。
 だってさ……。
 なんか、自分の性癖をモロばらしてしまうよーなもんじゃないですか、受の趣味ってやつぁ。
 コミケでならともかく、梅田の明るい店舗で、そんな恥ずかしいことできません。
 いや、わたしはオタクだよ。オタクだしいいトシだし、なんで恥ずかしいんだ、そんなこと言ってる方が変だし恥ずかしいってばよ。と、セルフつっこみするけどさ。
 でもやっぱり、恥ずかしいのさ〜〜。

 が、ふと見ればダイコが買い物カゴ片手に、『ガンダムW』の「2受」の棚で、1冊ずつ手に取って検分している。そりゃーもー、ものすごい勢いで。
 強いよ、ダイコ……。
 

 それにしても、「受別」なんだよな。
 わたしは思う。
 「攻別」ではないわけだ。

 一般的に、腐女子たちは「受」にこだわる。「受」のファンになる。
 攻がどーあれ、**は受、ということには格別こだわる。
 それがまあ、ふつうなんだろう。
 それをあからさまに見せられた感じだよ。「受別」の分類は。

 わたしももちろん平凡な腐女子だから、受にはこだわるさ。こだわるけど、結局のところ、受も攻も平等でなくては気が済まないので(恋愛は平等であるべきだ)、途中でどちらが受なのかわからなくなる。
 最初には、明確な区別があったはずなのに。
 長くそのカップルを好きでいると、わからなくなってくる。
 どっちが攻でどっちが受なのか。
 だってどっちも男だからな。どっちかだけが「女」という別の生き物になるはずがない。
 リバOK、というのとも多少チガウ気がしているんだがなー。客観的にいうと「リバOK」なのかな。

 たとえばフアンは総受男だと思うけど、プルミタス相手に攻でも、べつにかまわないぞ?(by『血と砂』)
 ナイスリー×ビッグ・ジュールが基本だけど、あるときなんかの弾みで、ビッグ・ジュール×ナイスリーになっても、わたし的にはぜんぜんかまわないぞ?(by『ガイドル』)
 ……って、ケロとゆーひばかりを例に出して申し訳ないが。

 ものすごい情熱で書棚の前に立つダイコに口を挟めず、わたしはひとり時間をもてあます。
 ひとりで2階をぶらぶらしていたら、ミジンコくんが登場した。彼女もダイコから唐突に呼び出された口だ。
「電話もらったとき、ダイコったら『行きたいところがあるの』って、2回も言うんだけど、それがどこなのか言わないのよ。なんか恥ずかしいらしくて」
 ミジンコくんは「まさか、『まんだらけ』だったなんて」と溜息をつく。
 ちょっと待て、ダイコ。
 あんた、ミジンコには「まんだらけに行きたい」って言えなかったのに、わたしなら平気なわけっ?!

 そう詰め寄ると、ダイコは「ふふふ」と笑う。
「だって緑野なら、恥ずかしくないもん」
 どーゆー意味よおおおっ。

 ダイコはWの1×2ばかり、13000円分も買いました。ええ、ここで記録してやるわ。

「それにしても、あたしと緑野って一度もカップリングかぶらないわねえ。ていうか、ジャンルすらかぶらないけど」
 ええ。ショタ属性のあなたと、おっさん属性のわたしは、永遠に相容れられません。
 ダイコはジャニーズ、わたしはヅカだしな。
「でも、さすがにWだけは、かぶるかと思ったんだけど」
 わたしのカップリングは、2×1です。
「見事に逆よねー!!」
 と、ダイコは笑う。
 はいはい、まちがって2×1買っちゃったときは、わたしが引き取ってやるよ。

 ダイコの男前な買い物っぷりにアテられて、わたしもよくわかんねーまま、『ワンピ』のゾロ受本を買いました。


 てなことがあったのが、実は昨日だ。
 昨日書くつもりだったんだが、すべては高野山の話が長引いたために、ズレてきている。

 次にダイコに会うのはいつだろー?
 君がいつまでも、パワフルにオタクであってくれることを、生涯一オタクのわたしは祈っている(笑)。


 日記のこのページを見たら、カウンターが「801」だった。
 「801」つーと、「やおい」だなー、と、ぼーっと考える。
 いや、そんだけ(笑)。……終わってるな、わたしも。

 昨日も一昨日も、2日つづけて文字数オーバー。エラー出ちゃったよ。
 仕方ないから、部分的に文章消して、無理矢理UPした。ちぇっ。全文残したかったなー、せっかく書いたのに。
 どっちにしろ、テーマが絞り切れていない、散漫な文章だったけど。いーのだ、そんなこともあるさ。

 で、高野山の話題を引っ張っちゃったから、他の話題が押されてる。
 昨日は実は、墓参りの話をするつもりだったんだ。
 緑野家恒例の墓参りDAYだったから。

 両親とわたし、そして叔母と叔母の次男夫婦(つまり、わたしの従兄だな)で、いざ墓参り。

 数珠の話を昨日えんえんしていたが、あらやだわたし、持ってくの忘れちゃったよ、MY数珠。つーか、父も母も「いかん、数珠忘れた!」って、なにやってんだ、緑野家。叔母たち日の出家メンバーは全員ちゃんと用意してたってのに。

 墓参り自体は恒例だし、べつにどーってことはない。
 ただわたし的に「めんどだなー」と思ったのは、従兄夫婦が子どもをつれてきたことだ。

 わたし、子どもはべつに好きじゃないのよ。
 きらいでもない。
 つーかね、はっきりいって、「興味ない」のよ。

 興味ないから、子ども嫌いの人より寛大っていうか、鈍感なんだよね。
 子どもが騒いでも金切り声上げて泣き叫んでても、あんまり気にならない。
 電車やレストランとかで赤ん坊が泣いてたりするのを、ものすごーく不快がる人、いるじゃない。不快な気持ちはわかるけれど、わたしはあんまり気にならないなー。興味ないから、スルーしてしまう。
 過剰反応する人って、好きにしろ嫌いにしろ、興味があるんだよね。

 ま、そんなわたしだからな。子どもがうるさいから嫌いとか、そんなことはまったくないのよ。そうじゃなくて。

 相手が男でも女でも、年寄りでも子どもでも、そんなことは関係ないよ。
 わたしがその人を好きなら、親しくなる。好意的態度を取る。
 それって、ふつーだよな?

 だが子どもっちゅーのはだな、「特別」だと思っている人が多いんだよな。それがこまるんだよな。
 子どもは子どもってだけで特別。だからあなたも特別な態度を取って。
 と、要求されると困る。

 友人たちと会うときに、子どもを連れてこられると、わたしは面倒だと思ってしまう。
 だって何故だか彼らは子どもを「特別扱い」する。
 子どもを中心にして話す。
 わたしは友人たちとは話したいけど、その子どもにはなんの興味もない。だってその子とは友だちじゃない、ただの「まったく知らない人」だもの。知らない人を中心にして話す気になれない。
 年齢に関係なく、わたしがその人を好きになれればいい。好きになるには、共通の趣味とか、尊敬できる部分とかが必要だよね。でも、まだ日本語も喋れない動物状態の人に、人間としての興味も好意も生じないよ。
 なんの興味もない、まったく知らない人を中心にして、時間を潰すのは苦痛だ。
 もちろん、友人への好意ゆえに、「好きな人が好きな人なんだから、わたしも好きになろう」と努力はするけどな。
 いちいち努力が必要な時間は、つらいよ。

 従兄夫婦が来る、と聞いたとき、「じゃガキつきだな」と、わたしは腹をくくった。
 彼らの子どもはまだおしめをしている、直立歩行をおぼえたところの動物状態だ。
 小さな生き物はそれだけで愛らしいし、その子はひとなつこくて笑顔のかわいい、とてもいい子だった。
 母親と同世代(つってもわたしの方がはるかに年上だが)のわたしのことを、最初から気になるらしくなにかと好意全開で接してくれた。
 だからわたしも、それなりの好意は返した。初対面の人に通常返すだけの態度を心がけた。

 でもそれは、あくまで社交辞令。
 人として、人に対する礼儀。
 赤ちゃんだから、といって特別扱いする気はない。
 いつかこの子が大きくなって、ひとりの人間としてわたしが好意を持てる存在になれば、わたしも義理を超えた好意を示そう。

 されど。
 うちの両親、とくに父はその子にメロメロ(死語)。
 ひとんちの子だってのに、うれしそーにビデオを撮っている。おいおい。
 その子がどんな人格であろうと関係ない、ただ「赤ちゃん」だから愛しいというのだ。小さきものだから、愛らしいというのだ。まあ、血がつながっている、というのもポイントのひとつなのかもしんないけどさ。

 従兄夫婦は自分の子どもだから当然、叔母は初孫だから当然、その子中心にいつも「あばばばば。いい子でちゅね〜〜」をやっている。
 そしてわたしの父も母も「なつかしいねえ。うちにも昔、こんな子がいたねえ」と思い出に浸って一緒に「あばばばば」をやっている。
 赤ちゃん万歳、赤ちゃん特別主義。
 
 親が自分の子どもに夢中なのは、べつにいいんだよ。わたしだって親になれば、そうやって子どもを育てるさ。
 でもわたしは今、その子の親ではなく、親戚のひとり、いわば血のつながった他人なわけさ。

 はー、つかれたよ。
 まだ人間以前のユウくん。君が一個の人間としてわたしの目の前に立つ日まで、わたしは君への判断はしないよ。
 君だって「赤ん坊だから」なんていう、君自身とは別の部分で評価されるだけの存在ではいたくないだろ。

 わたしは友人になる人を、自分で選ぶよ。
 わたしにとっての「特別」な人は、わたしが選ぶ。
 押しつけられても、こまる。

 とまー、そんな日だったのだわ。
 んでもって今日は今日で…………ああでも、1から書くには文字数が足りないわ。
 これもまた明日送りかー。

 毎日毎日出歩いてて、いったいわたしはいつ仕事するんだ?!

 あ、でもこれだけは叫んでおく。

 トド様コンサートのチケットGETぉおおおっっ。
 1階A列ぅぅぅ!!

 うれしーよー、うれしーよー。
 ありがとうCANちゃん!!

 

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