で、昨日の『アバウト・ア・ボーイ』の話。とっても期待して観に行ったんだってばよ。

 ところがどっこい。
 こちらは大ハズレ。

 わたしの逆ツボを直撃。
 不愉快さのあまり、途中で席を立って帰りたくなった(笑)。

 まず、あまりのナレーションの多さに辟易。
 これって映画……映像である意味あるの?
 キャラクターの状態、心情をすべて、ナレーションが語る。それじゃあ役者が演技をする意味はどこにあるの? 朗読劇ですか?
 最初から、いつまでもいつまでもナレーションが続くので、首を傾げたよ。いつになったら本編がはじまるんだろう、って。まさか、全編ナレーションだけでつづられるとは思わなかった。
 ナレーションがなかったら、意味が通じない映画なんですかね、これって。

 マンガ描いてる友人は言う。
「台詞やナレーションで説明できたら、どんなに楽かと思うよ。でも、オレが描いてるのはマンガなんだから、絵の演出でそれを表現しなきゃと思って、いつも悩んでる。台詞にしろナレーションにしろ文字の説明は極力省いて、絵だけで表現するために努力している」と。
 そうでないと、「マンガである意味がない」と。

 「死にたいほど傷ついた」なら、映像でそれを表現してなんぼだろう。
 ナレーションで「死にたいほど傷ついた」と言葉で言うな!(例。んな台詞はないぞ)
 なにもかも台詞で言うなら、小説で十分だろう。
 なんのために映画なんだ?
 なんのために映像なんだ?

 「映画」としての作りに、まず疑問を抱いた。
 カスなんじゃねーの? と首をひねっていた。
 それでも、とりあえずストーリーを見てみようと思った。

 そして……。
 これがいちばんの、逆ツボ直撃。
 ストーリー、最悪。

 ダメ男がナンパ目的で嘘をついて女に近づいた。このことによって起こる物語。
 ……なのはいい。
 ダメ男のヒューが、嘘をつくのはべつにいい。そういうキャラだからな。それによって悲惨な状態になるのもお約束。
 問題は、もう一人の主役、ガキの方だ。
 ガキはヒューをストーカーして、嘘をついていることを見破る。そしてヒューを脅す。彼の家に押しかける。
 ガキの行動はべつにいい。ガキには事情があるので、そういう行動を取るのも仕方ないのかもしれん。
 だがガキがやっていることは「犯罪」だ。
 ストーカーして、脅迫して、友好関係を迫る。もしこれが、ヒューが女性でガキが大人の男なら、まちがいなく警察沙汰だ。「嘘をばらされたくなかったら、オレの女になれ」って言ってるよーなもんだからな。
 わたしにとっての逆鱗は、このガキの行動が作品中で「是」とされていることだ。
 おいおい、たしかに嘘をついているヒューが悪いよ。だからといって、彼を脅迫するガキはゆるされるのか?
 ガキの行動は犯罪だ。なのにそれを「愉快でけなげな行動」として描いている。
 ガキが母親のためにしていることだからか? 母親のために、ヒューを利用しようとしているんだぞ? 赤の他人を脅迫して利用することを「愉快」だとか「心温まる」とかにしてしまっていいのか?

 よく、男の子向けのラブコメにあるよね。
 主人公の男のところに、ものすごーい美人が押しかけてくる。男が生活をかき回されて大変なことになるのに、女は「だってアナタが好きなの!」と、自分を正当化。男は実際こまってるんだけど、彼女についついほだされてしまう……てやつ。
 もしくは、美人な女の子と突然ひとつ屋根の下に住むことになって、男はものすごーくこまるんだけどついついほだされてしまう……とか。
 共通項は、本来ならば「迷惑」であるということ。だけど相手が「美人な女」だからOKだということ。
 ブスな女だったら、即たたき出されてるんだろーなー、ということさ……。

 美人だろうが子どもだろうが、迷惑は迷惑、犯罪は犯罪だろう。
 美人だからゆるされて、子どもだからゆるされる。そんなことはまちがってる。
 と、わたしは思っている人間なんだ。

 押しかけ美人が、「わたしがやっていることは悪。悪だけど、あとに引けない」と思っているならいい。
 だけど大抵、こーゆー立場の美人は「わたしは正しい」と思って傍若無人道を突っ走っている。

 この映画のガキもそうだ。自分がまちがっていることを自覚していない。だからちょっとヒューに冷たくされたら、「被害者」という顔をする。てめーは脅迫者だっつーの。被害者の愛を求めるな。
 ガキだから無知である、という設定ならいいが、映画自体がガキの肩を持っているので、ヒューに冷たくされたガキを「可哀想」という撮り方をする。
 それがわたしには、致命的に不愉快。

 無神経な物語が、わたしはいちばんキライなんだ。

 まちがった人間を「可哀想」と美談にするな。
 まちがった人間は「まちがっている」と描け。そのうえで「やっていることは、まちがっている。でも可哀想」だと観客に感じさせろ。

 全編に置いて、この映画は倫理観がわたしとはチガウところにあるようだった。
 それがもー、つらくてつらくて。

 いっそのこと、ガキがヒューに近づいたのは、彼を愛していたからだっちゅーことにさせろ。ヒューとガキの恋愛モノにしちまえ。
 愛ゆえにまちがっちまったならまだ、許せる。
 だがガキはべつに、ヒューを愛してないだろ? 「母親のために都合がいい」から近づいただけだろ。ヒューとガキの間に友情が芽生えたのは結果論であって、もしそれが芽生えなかった場合、ガキのやっていることはただの暴力だ。
 恋愛が行き過ぎというならせめて、ヒューに「パパになってほしかった」ということにしろよ。
 気持ちもなにもないで近づいたのに、どーしてそれを「美談」として「温かい」目でとらえるのよ、この映画。感性がわたしには理解できないよ。

 つまり、先に結果があるからじゃないの?
 ぐーたら男ヒューと、可哀想なガキの間に「友情」が芽生え、ヒューもガキもその友情によって救われ、「次のステップ」へ進む。
 という結果が先に決まっているから、なにがなんでもふたりを接近させなきゃなんない。それで無理矢理こじつけた。
 そうとしか思えない。
 どうしてキャラの立場と心情を誠実に描かないんだ? ひとつひとつのエピソードを正しく組み立てたら、正しい結果にたどりつくのに。
 結果のために、キャラの人格を破壊するなよ。

 『ブリジット・ジョーンズ』は好きだったんだけどね……。
 ヒロインの心情と、それゆえの行動に感情移入できた。
 しかしこの『アバウト・ア・ボーイ』では、壊れたキャラたちにまったく感情移入できない……。なんでそこでそう思うの、なんでそこでそう行動するの。疑問符ばかり、わたしは置き去りさ。
 心を描いてくれ。行動もストーリーも、まず「心」があってこそ動き出すものなのよ。

 なにかっちゃー、ヒット作『ブリジット・ジョーンズ』の名前を出すのも、かっこわるいよね。この作品単体では売れないってわかってるからだよね。
 つーか、あからさまな「2匹目のドジョウ」を狙った映画……。
 ひたすら、かっこわるい……。

 つってもまー、とても印象に残ったよ。
 見終わって「わたしこの映画、大嫌い」と口に出して言える映画は少ないからな。
 「つまんない映画」「まー、おもしろいんじゃない?(と言ってすぐに内容を忘れる映画)」なら、いくらでもあるからな。

          ☆

 今日は梅田で、キティちゃんとエクスさんとお茶。既婚者はエクスさんだけ。
「なんでか知らないけどアタシって、ひとから女優みたいってよく言われる」
 と、キティちゃん。なんとなくわかる、それ。わたしはウケる。
「服装がコレで、態度がコレだから?」
 とキティちゃんは本日のゴールドラメのアンサンブルの、豊かな胸をぶるんと振ってツンと顎を高くつきあげる。
 服の趣味が派手派手ゴージャスお嬢様系なんだよね。そして性格なのか、姿勢なのか、とても「えらそー」な風情……。
 それを「女優みたい」と評する人がいるのか。うまいこと言うなあ。
 そんなキティちゃんは、「年下の男とつきあいたい」と言う。エクスさんは「絶対無理」と言う。
「緑野ちゃんは年下でもいいけど、キティちゃんは絶対無理。アンタ、金のかかる女でしょ」
 女優だもんな。
 わたしははげしく納得。「ジーパンって穿いたことない」とかゆーキティちゃんは、若い男とはつきあえないでしょう。服装からして、お金のない若い男とは釣り合わない。
 ……キティちゃんに関しては納得したけど。
 あれ? そーするとエクスさん、わたしは「見るからにびんぼーくさい」ってことですか? 若い男の子と、金のないびんぼーデートが似合いそうな? しししシツレイなっ!!(笑)
 たしかにわたし、びんぼくさい(実際びんぼー)よなー。性格も下っぱ気質だしなー(笑)。


 今日は映画館のハシゴをしました。
 ……って、なんかついこの間も、ハシゴしていたような。2本連続見ると消耗するんだけどなー。

 1本目は『バイオハザード』。
 ええ、原作ファンとしてはハズせない1本。

 じつはぜんぜん期待せずに観に行ったのね。コレクターズアイテムっていうか、原作ファンだから見ておかなきゃってゆー義務感っていうか。
 所詮、ゲーム原作の映画だしなー、みたいな気持ち。
 予告で見る限り、主演のミラ・ジョヴォヴィッチはかっこいいしさー。『フィフス・エレメント』も『ジャンヌ・ダルク』も観に行ってたしさー。
 てなもん。

 しかし。

 おもしろかったっ!!

 やーん、おもしろかったよー。
 ミラ・ジョヴォヴィッチ、かっこよすぎ!!
 この人、年齢不詳だなあ。『フィフス・エレメント』のときもそう思ったけど。
 大人の女性にはちがいないんだが、少女のようにも見える。
 そして今回は、「少年」。強さとストイックさを併せ持つ少年のよーな瞳が、かっこいいっす。
 美しくて、強い。ああ、最強だわ。

 特殊部隊の女性隊員ミシェル・ロドリゲスも、かっこいー。男言葉がいいよ。萌えだわ、萌え。

 こういう「原作付き」を、きれいに料理してあるものを見ると、素直に感動する。
 まったくのオリジナルですばらしい作品を創るのとは、べつの技術が必要だからね。
 この映画は、設定こそは原作を踏襲しているけれど、ストーリー自体はオリジナル。キャラも全員オリジナル。原作のキャラは登場しない。
 つまり、「世界観」のみを使って、まったく「別のモノ」を創り上げている。そのくせ、テイストはまちがいなく「原作通り」。これって、すごいよ。
 バランス感覚が絶妙。

 古めかしい洋館からはじまるところなんか、原作ファンとしては「にやり」とするよね。洋館の地下にいきなり列車があるとこなんかも、「にやり」だよね。列車が研究所に着くのだって、ゾンビだってケルベロスだって、とにかく原作知っている者には「そうだよ、そうなんだよ!」だよね。
 恐怖が「びっくり!」の連続なのも、原作のテイストだよね。
 『バイオハザード』の恐怖って、「驚」なんだよね。『零』の恐怖は「恐」だけど。『バイオハザード』は、びっくりさせてなんぼ。突然襲われる恐怖。

 絶望的な状況を、強い意志と力で乗り越え、突き進んでいくヒロインには、素直に拍手を贈るよ。
 「映像」であることに、意味を見いだす。
 彼女は演説ぶったりしない。正義とか、自分のこととか。
 ただ、目の前の障害を叩き伏せ、弱った仲間を助け、突き進んでいく。
 行動によって、ヒロイン「アリス」の人となりが見えてくる。
 彼女が記憶喪失なのもいい。記憶喪失ってのは、萌えアイテムよね。いかつい特殊部隊のみなさんの間で、ただひとり華奢な赤いドレス姿。たったひとりブロンド。その「か弱い、守られてしかるべき姿」で、がしがし戦って行くのが萌え。
 寡黙に前へ進む。……彼女の生き方が、観ているわたしの力になる。

 「生き残る。たとえ一人でも」というコピーが、すべてを表しているよなー。
 その、強い意志。

 もう1本は、『アバウト・ア・ボーイ』。
 『ブリジット・ジョーンズの日記』が大好きだったので、是非観たいと期待の1本。わたしと同世代の腐女子なら、主演のヒュー・グラントには特別の感情を持っているだろうしな(笑)。

 こちらの感想は明日。
 実は書いていたら文字数エラー出ちゃったから、明日の枠に書くっす。

  
 イベント好きなので、行って来ました、花エリザ初日!
 だけど、舞台は観ないで、他でエリザベートしてました(笑)。
 わたしが行った場所は、変身写真館っす。

 いいチケットがあれば観るつもりだったんだけど、さすがエリザだねえ。サバキはろくなの出てないよー。
 定価で観るのはちょっとな、という席ばっかだったから、早々にあきらめちゃった。

 かわりに、変身写真館でエリザベートのドレスを着ました。はっはっはっ。
 ワゴンねーちゃんがいてくれたおかげで、サービスたっぷり。つーか、そもそもワゴンさんが大劇で働いてなかったら、写真撮ろうなんて考えなかった。職場のワゴンさんを見たかった、というのもあるんだな(笑)。

 変身写真館を利用するのは、はじめてじゃない。
 できたばかりのころに、撮りに行ったことがある。
 横浜の友人が撮りたいと言うから、それにつきあったのな。
 もちろん、ドレスを着ましたよ。金を出すなら輪っかのドレスでしょう!! 男役の服なんか、着たくないよ。
 スカーレットの白いドレスを着ました。
 でも髪が短いので、リボンができなかった。んでティアラで代用。
 友人がどうしてもと言うので、男役の服も一着だけ着たなあ。あれはなんだったっけ。自分じゃまったくおぼえてないのだが、友人が娘役のドレスを着て、ふたりでトップコンビのやうにポーズつけて撮りました。いや、取らされるのよ、ポーズは。
 どうやら、『うたかたの恋』だったみたいね。わたし、ルドルフをやったんだわ。当時は『うたかたの恋』を観たことがなかったので、ぜんぜんわかんないままに着ていたの。だからおぼえてなかったんだな。今日、変身写真館で見本の写真見て、思い至ったわ。そーいやあの友人は、シメさんファンだった、と。……ファンならなおさら、わたしなんかがルドルフでよかったんか……?

 あれから8年ばかりの日々が流れ、変身写真館は進化している。
 スカーレットにはウィッグがあるんですってぇ?! 今なら、ショートカットの客でも、ちゃーんとスカーレットヘアができるそうな。
 髪型だっていろいろ整えてくれるんだよ? 以前はそんなサービスなしで、アタマはそのまんまが基本だったのにぃ。
 お化粧が自前なのは同じだけど、今は口紅を貸してくれる。ルージュ一本でぜんぜん変わるよ、このサービスはありがたい。……値段は同じなのに、こんなに進化してるよ、写真館。

 で、あっという間でした。
 フィッティングルームに入ってから、カメラの前に立つまで。
 え? と言ってるうちにドレスを着せられている。早っ。
 アクセサリもあっちゅー間につけられている。
 「髪型どうします?」と聞かれても……わかんねーよ、「プロにお任せします」としか言えない。
 「エリザベートは本来真ん中分けなんです!」と、腕に覚えありなおねーさんが、びしばしと櫛を使い、わたしの髪を「タカラヅカのエリザベート」にしていく。
 ここでトピックス。
 なんとエリザベートの鬘は今回新調したそうな。「お客さんが、新しい鬘の最初の使用者です」って言われちゃった。おおっ。新品ですか、いちばん乗りですか! そりゃ気分いいなあ。ただし。「新品なんで、まだ人の頭の形に馴染んでないんで、落ちやすいです」アタマを動かすなと言い含められる(笑)。
 きれーでした、鬘。飾りがきらきらしてて。重いし。

 しかし。
 わたしは背が高すぎるので、エリザのドレスは丈が足りない。……ワゴンさんから聞いていたけれど、ちょっとショックだわ。ドレスの中で足を広げて、わざと短足にして写真撮るんだよー。ひでーよー。スカーレットのドレスはぴったりだったから、ヅカのドレスって身長170センチの女用に作ってあるんだと信じてたのに……。でも考えてみれば、裸足でドレスを着て長さがぴったりってことは、やっぱりあのスカーレットのドレスも短かったんだよね……。ヒール履いたら、くるぶしから下がにょきっと飛び出してしまったはずだから。
 163センチくらいの人がいちばんきれいに着こなせるのかなぁ。

 わたしは相当身体が曲がっているらしい。写真を撮る段になって、何度も身体や顔の角度を訂正される。他に客がいないからか、とても丁寧に撮ってくれた。スタッフのおねーさんありがとう!

 前に撮ったときもそうだったけど。いちばんたのしいのは、ドレスを着せてもらっているときだね。
 鏡の中の自分を見ているのは、とてもたのしい。ああ、女に生まれた醍醐味だなあ、きれーなおドレス着られるのはさぁ。
 ドレス姿のわたしって、けっこういい感じ。なかなかイケてんじゃん、ふふふ。
 なーんて、悦に入ってられる。
 しかし。
 できた写真を見ると、一気に現実に引き戻される。
 ははははは。
 現実は、厳しいなあ(涙)。

          ☆

 その、エリザベート・コス写真を家族に見せていたときのこと。

「写真と言えば、今日おかんが新婚旅行のときのアルバムを引っ張り出していて、『わたしはお姉より美人だ!』ってさわいでたぞ」
 と、父が言う。
 お姉、というのはわたしのことだ。おねえ、と読む。家族からは名前ではなく、こう呼ばれておるのだ。

「なんだと?」
 わたしの目はきらんと光る。
 母の目もきらんと光る。
「そうよ! わたしはずっと、あんたはわたしより美人だって思ってたけど、新婚旅行のアルバムを改めて見たら、ちがってたわ。わたしの方が美人よ」
「聞き捨てならんな」

 わたしと母の視線が、ばちばちと火花を散らす。

「ぼ、ぼくはここにいていいのか?」
 わたしと母の間に坐っていた弟が、うろたえた声を出す。

 母は鼻息荒く古いアルバムを持ってくる。新婚旅行のアルバムだ。
 わたしよりも美人だと? ずうずうしいことを言いおってからに。
 わたしはそのアルバムをめくった。弟も横からのぞき込む。
 そしたら……。

「かわいい……」

 意外。
 マジ、かわいかった、母。
「美人、というのはぜんぜんちがうけど……かわいいよね」
 わたしが言うと、弟もうなずいている。

「ほーら見なさい」
 勝ち誇る母。むかっ。

「たしかに顔はかわいいけど、スタイル悪っ。なによこの顔の大きさ。スタイルはわたしの方が絶対いいよ!」
「そんなの、持って生まれたってだけでしょーが」
「顔だって持って生まれたもんだろーがっ」
「……あの、ぼくはここにいていいのか?」
 言い合う母とわたし、間でおびえる弟の図再び。

「しかし、おかんとお姉、ぜんぜん似てないなー」
 弟はアルバムを見ながら言う。
「でも、今はそっくり」
 そして、実際にわたしと母の顔を見て言う。

「いやだわ」
 と、同時に声を上げる母とわたし。

「まあ、この写真のおかんは、今のお姉よりはるかに若いわけだしな」
 とフォローする弟。だがはたしてそれは、フォローなのか?

 そして、そのアルバムを見たわたしたち家族の共通意見は……。
「おとん、貧相」
「なんでこう、貧乏臭そうっていうか、幸薄そうかね」
「たよりなさそう」
 いいとこないな、若き日の父よ。

「結論。母は娘より美人で、息子は父より男前」
 母は勝ち誇って宣言する。
 むかっむかっ。
 なんだその失礼な言いぐさは。

 娘が母よりブスだったら、それは生物としての退化だろ、親の責任だろ?
 あんた今まで、わたしが「なんでわたしを美人に生んでくれなかったの?」と嘆くたびに、「親より美人に生んでやったんだから、義務は果たした!」と言っていたじゃないのーっ。
 その「母としての立場」をあっさり覆しますか、それが「女の本能」ってやつですか!

 そして。
 火花を散らし、舌戦を繰り広げる母と娘の間で。
「ぼく、ここにいていいの」
 と、いちいちおびえる弟よ、あんたも十分シツレイだぞっ?! そんなにわたしたちがこわいのか?(笑)


 クリスティーナさんとデート。

 クリスティーナさんは名字を聞き返されるのが嫌い。
 初対面で名字を言ったとき、相手に「は?」と返されると、「二度と名乗ってやらない」と思うそーな。
 つまりそれくらいよく聞き返されるらしい。かわいい名字なんだけどな。
 あるとき仕事で電話をかけたとき、彼女はきちんと名乗ったのに、「**さーん、**社のクリスティーナさんからお電話でーす!」とやられてしまったらしい。「どっからクリスティーナ? わたしゃばりばり日本人じゃ!」と憤慨していた。

 さて、クリスティーナさんはBe-Puちゃんの同期入社フレンドで、わたしは彼女と一時期同じフロアで働いていた。そりゃーもー、仲良かったっすよ。仕事に支障が出るくらい、仲良くしてました(だめじゃん! ……そーいやわたし、Be-Puちゃんとは同じ店で働いたこと一度もないんだよなー。なんで仲良くなったんだっけ?)
 クリスティーナさんはわたしに会うたび、メールをくれるたび、「Be-Puさんに連絡が取れない」と嘆いている。「もうどれくらいBe-Puさんに会ってないだろう。声も聞いてないわ」と。
 わたしだって以前ほどBe-Puちゃんには会ってないけど、それでも月に何度かは会ってる。ちゃんと連絡取れるよ?
「Be−Puちゃん、クリスティーナさんに会いたくないんじゃないの?」
「ねえ? そうとしか思えないよねぇ?(ちょっと怒り。ほとんど笑い)」
 ちなみにわたしは、会うたびBe−Puちゃんには「クリスティーナさんに連絡してあげなよ、嘆いてたよ」とせっついているんだ。なのにBe−Puちゃんは依然連絡をしていないらしい。おいおい。
 前にわたしがクリスティーナさんと会ったのって、いつだっけ? まだトド様がトップのころじゃなかったっけか? 次のトップはブンちゃんだねえ、って話をしたような。
 そしてそのときすでにクリスティーナさんは「Be−Puさんに連絡が取れない」と嘆いていた……。

「昨日、Be−Puさんに電話したのよ」
 と、クリスティーナさん。
「ほお」
「出なかったわ」
「……夜遅くにかければ出るんじゃない?」
「そう思っていつも11時くらいにかけるんだけど」
 わたしがかければ、出てくれるよ? それくらいの時間。もしくは留守電に入れておけばリターンしてくれるし。
「電話ちょうだい、メールちょうだい、って言っても、返事くれないのよ」

 ……Be−Puちゃん、マジ、クリスティーナさんを避けてる? ← いや、たんにズボラなだけッス(笑)。

 もうこうなると、どこまでクリスティーナさんがBe−Puさんにフラれつづけるか、たのしみになるなー。
 すでにふたりが会えなくなってから、雪組のトップは3人目だぞ?!(笑)

 クリスティーナさんとは東急ハンズの喫茶店で6時間しゃべり倒した……。
 この前会ったときは、ヨドバシのコムサカフェで7時間ほど喋ってたのよね。
 どちらも追加オーダーなし、閉店なので仕方なく店を出たという。
 今のところ、1店居座り記録はクリスティーナさんとのみ更新中だわ。

 
 いい季節になりました。
 サイクリング日和。

 春と夏は、某マイカル・シネマズまで自転車で映画を観に行く。
 夏と冬はいかないよ。梅田で十分、電車で十分。乗車時間も10分だしな。

 某マイカル・シネマズまで自転車で行くと言ったら、周りからあきれられてしまった(笑)。
 たしかに、ふつーは自転車で行く距離じゃない。
 でもわたし、その昔、旧MBSでバイトしてたときは、週1回自転車で送迎バス乗り場まで通っていたのよ。
 某マイカルは、そこからちょっと先にあるだけ。バイトで通っていた道を走るくらい、大したことないわ。

 マイカルまで自転車をとばしていると、そのアルバイト時代を思い出すのよ。普段は通らない道だからさ。
 MBSでのバイトは、某番組のサクラ、だった。
 時給1500円、交通費なし。ヒナ段に坐って、さも「スタジオに遊びに来たいと思った視聴者が、ハガキを送って抽選で当たり、幸運にもここに坐っているんですよ」という顔をして、拍手したり笑ったりしていればOK。それでお金がもらえて、ついでにちょろりとテレビにも映ってしまうという、おいしいバイトだった。
 視聴者からの応募が少なかったんだろーなー……毎回募集のテロップ流してたのになー。
 それで、わたしのよーなバイトが活躍。金をもらって客のふりをする。
 もちろんそれは、わたしに「女子大生」という肩書きがあったときだからこそ、できたバイトだ。
 卒業したら呼んでもらえなかったもん(笑)。
 でも、わたしのバイト人生の中では、いちばんの変わり種さ。

 あのころと同じ自転車に乗って(わたしの自転車は、2回盗難に遭い、2回とも戻ってきたという剛のモノだ)、同じ道を行く。
 あのころ、一緒にサクラをやっていた友人たちは、今はどうしているかしら……とか思いつつな。
 わたしは自分がブスだと自覚していたから、ヒナ段では率先していちばん後ろで隅っこの、TVに映りにくい場所に坐っていたなー。
 TVに映った自分のイケてなさに目眩がしたからさ……できるだけ映りたくないと思ったのよ。
 あれから何年だ?
 ああ、トシくったよね、わたし。

          ☆

 でもって、『竜馬の妻とその夫と愛人』を観た。

 予告編を観ただけで、それ以上の予備知識はまったくなし。
 タイトルをどこで区切るのかも知らなかった。

 「竜馬の妻とその夫と、愛人」かと思ってたよ。
 つまり、竜馬の妻がいて、彼女に夫がいて、その夫に愛人がいるのかと。
 「竜馬の妻と、その夫と愛人」だったのね。
 竜馬の妻がいて、彼女に夫と愛人がいる、と。

 よくわかんねーけど、三谷幸喜原作脚本つーならとりあえず行っておけ! てなもんだ。『ラヂオの時間』も『みんなのいえ』もたのしかったからさ。
 とくに『ラヂオの時間』は好きよ。泣いたわ。
 あと、舞台『笑の大学』では、魂溶けそうなほど泣いたわ。
 三谷幸喜は好き。
 映画なら無条件で観に行く。

 そして、『竜馬の妻と…』。
 たのしかった。
 いっぱい笑った。
 そして泣いた。

 あの坂本竜馬の妻・おりょうと、彼女にベタ惚れの甲斐性ナシばか亭主・松兵衛と、彼女の愛人で竜馬にそっくりな男・虎蔵。そして、竜馬を愛し、竜馬の妻であるおりょうを愛する男・覚兵衛。
 この4人のはちゃめちゃな四角関係。
 竜馬をめぐる物語なのに、竜馬はもうどこにもいない。
 だけどその存在と名前は残ってるっていうか、ひとり歩きしていて。
 まともに描けば、とんでもなく重いテーマを、コメディにして描いた物語。

 いやあ、みんなかわいいよー。
 どいつもこいつも、かわいいっ。
 とくに覚兵衛。中井貴一をかわいいと思う日が来ようとは(笑)。
 鈴木京香はさすがの美しさだし、江口洋介の竜馬コスプレはすごい。似てる。つーかイメージぴったしだー。
 竜馬は33歳で死んでるんだからさ、世の時代劇よ、享年よりはるかにトシくった役者に竜馬をやらせるのはよせ。いつだったかの新撰組なんか、近藤勇(主役)が渡哲也だったもんなー。おいおい、近藤勇の死んだ歳の倍ほどの年齢の役者ぢゃん……。
 世の時代劇って、役者不足と視聴者の年齢に合わせたキャスティングするから、めちゃくちゃなんだもんなぁ。
 てなことを、考えさせてくれる、年相応のキャスティング。
 若者の役を若い俳優がやる、って、そんな当たり前のことにも感動する時代劇という不思議ワールド。
 いや、江口洋介やトータス松本はいいっすよ(笑)。

 されどわたし、テーマ部分というか、いちばん良いシーンで、他のことにアタマがいってしまったの。
 それはある作家さんの書いた小説だ。
 このシーンとまるきし同じよーなシーンと台詞があったのさ。
 ……やほひなんだけどな。
 それもやはり、未亡人ものでさ。やほひだけど、未亡人もの(笑)。
 天才と呼ばれた男がいて、彼には妻というべき親友がいた。天才が死んだあと、妻は天才の意志を継ぎ、彼の夢を実現させる。
 天才の夢を実現させてしまったあと、妻に残ったのは「愛した彼はもういない」という現実だけ。
 そんな妻を、愛する男がいた。かつては敵だったが、今は妻のけなげな姿に打たれ、味方になっている。
 男にとって、死んだ天才はどうあがいてもかなわない相手だ。生きているときだってかなわなかったのに、死んだ今では完敗が決定事項。覆されることなんかあり得ない。
 妻は今も、死んだ天才を愛している。他の者たちにはなんの意味もない。どんなすばらしい者が現れたって、「死んだ天才ではない」というただそれだけのことで、決して妻の心は開かれない。
 男は妻の愛を得ることができない。死んだ天才に勝てない。
 ただひとつ、彼が天才に勝てることがあるとすれば。
「おれは生きている」
 今生きて、お前を抱きしめることができる。それだけだ。

 ……てな話。大好きな作家さんの小説でさ。同人誌で、しかも某サッカー漫画(ジャンプじゃないよ)のパロディだったんだけど。
 先にそれを読んでるから、途中からアタマがトリップしちゃったよ。
 うわー、キャラの立ち位置が同じだー。台詞が同じだー。
 よくある話っちゃー、そうなんだけどさ。
 同人誌は、その作家さんがプロデビウする前のものだから、ずーっと昔の作品だしねー。この映画の元となったお芝居はたかが2年前のものだし、関係はまったくないとわかってるけど、いちいち同じだから、つい反応してしまふ……。

 そしてわかったことは、わたしがこのテのネタが好みだってことですわ(笑)。

 今生きている、っていうことは、もっともすばらしい才能なの。
 誰かをしあわせにできる、誰かを癒し、救うことができる、ということだから。
 誰かを愛することができる、ということだから。

 生きている。
 それがいちばんの才能。 

 そして、この映画のオチ。
 あれって……どうよ?
 いや、作品としては、うまいよ。なるほど、こうきたか、と、プロットの巧みさに膝を打ちましたさ。
 しかしさ……。
 わたしやっぱし、竜馬ファンで歴史好きなんだわ。
 あのオチはやっぱ、心情的にゆるせないものがあるよ……。いくらギャグでもさー。

 
 文字数の関係で入りきらなかったので、こちらに月組千秋楽のことを書く。

 ……実は今、エラー出てさ。
 文字数エラーじゃなく、explorerのエラー。
 強制終了されちゃったよ……よかった、9/30の日記を送信したあとで。
 パソコンがめちゃ動作不良でさ……Premiereも動かなくなっちゃったし、ひょっとして再セットアップ?! また?!
 そ、それはいやすぎるぞ。
 どうか無事でありますように……合掌。

          ☆

 わたし自身が、テンション低かったんだ。
 旅行で疲れ切ってたからさ。
 なんであたし、チケット取っちゃってたんだろう。チケット持ってなかったら、絶対もう観に行ってないよ……てな、後ろ向きな気持ちではるばるムラまで出掛けました。

 楽日だから、芝居もショーもアドリブ満載。
 全体の印象は「口数多いなあ」だった。歌が増えてるのね。芝居もショーも。音楽だけのところに、自作歌詞がついてたり、ハミング入ってたり。
 リカちゃんも喋りまくってた、いろんなとこで。
 たしかにおもしろかったけど、こちらのテンションが低かったせいで「あー、やってるなー」ぐらいの印象だった。
 それでも、「つっこみステファン」は好きよ。
 彼はツッコミさん。とにかくもー、いろんなとこでいろんな人の言動に、ツッコミを入れる。
 大阪人のわたしは、ツッコミさんは好きなのだ。ツッコミ入れたくて、いろんなところでうずうずしている人間だからな。
 とはいえ、ショーの「少年時代」ではいくらなんでも喋りすぎだと思ったけどよ、リカちゃん。あれはツッコミではなく、無駄口だろー。

 『長すぎた春』は初日に観に行って良かった、と心から思える作品となった。
 初日だけなんだもん、ワタル・クロードがケロ・ジャンの肩抱き寄せて、ジャケットの中に手を突っ込むの。
 『スタ小部』で初日映像見て、ほとほと感心したもの。
 ケロちゃん、むちゃ簡単に抱き寄せられて、服の中に手ェ突っ込まれちゃってるし……。まさか舞台で、ケロを「華奢だ……」と思う日が来るとは。
 初日は鼻血吹くかと思ったからなー。

 ところが、日が過ぎるに従ってクロードは、とても淡泊に。
 肩を抱き寄せたりしない。
 服の中に手を突っ込んでごそごそもしない。
 慣れちゃったもんだから、そんなことしなくても、ケロのポケットにすんなりお金を入れられるよーになったのね、ワタル。

 つまんねー。

 それまで激しくかっこつけてたクロードが、みっともなくとり乱すシーンなのよ。激しければ激しいほど、ドラマチックじゃないの。
 なのに回を追うごとに淡泊。あっさり。

 たしかにあれじゃあ、クロード×ジャンだと思う人は少ないだろーなー。
 さららんピエールとの関係は初日から変わってないので、今の舞台を見た人はクロード×ピエールだと思うだろうよ。
 ピエールとの関係より、もっともっと激しくてディープだったのよ、ジャンとの絡みはっ。世の中の腐女子たちよ、誤解しないで! すごかったのは、クロードとジャンよぉーっ。絶叫。

 初日に観て良かった……。
 神様ありがとう。

 
 『長い春の果てに』をネタに、わたしがなにか書くなら視点はどこだろう、とか千秋楽の帰りの電車の中でぼーっと考えた。
 やっぱエヴァかな。

 健康に成長したエヴァはある日、クロードという男に興味を持つ。自分の生命が今あるのは、この男の存在が関係しているらしい。
 何故赤の他人の医師が、たまたま同じ病状だったというだけで、自身を犠牲にしてまでエヴァの治療に協力したのか。患者の回復を自分の生命以上に考える崇高な人物だったのだろうか。つーか、そもそもどうやって「同じ病状」だと知ったんだ? 担当医でもなければ、裁判沙汰で大忙しだった人間が? とか、疑問ばかりがある。
 エヴァはひとり、このミステリを解き明かさんと調べはじめる。
 生前のクロード医師を知るものは、みな一様に彼を誉める。すばらしい才能と志を持った高潔な医師であると。だからこそ、死に至る病に冒されながらも自身を診察し、医療の発展に輝かしい業績を残した。同じ病状の14歳の少女の生命を救うことができた。
 あの、でも、告訴されてるんですよね、この人? 途中で亡くなってしまっているけど、犯罪者だったんじゃあ?
 エヴァの疑問に答える者はいない。そればかりか、クロードに生命を救ってもらっておきながら、彼の罪について追及するなんて恩知らずだ、てなことを言われたりもする。
 エヴァはただ、真実が知りたいだけなのに。
 どんな人だったの? なにを考えていたの? なぜわたしを助けてくれたの?
 真実を求めることは、クロードの名誉を傷つける行為なのか。
 病院関係者をはじめ、いろんな人に話を聞いていくエヴァ。
 そして彼女は、ひとりのジャーナリストに行き着く。
 クロードを告発した男だ。

 彼の名はジャン。クロードからすべてを奪い、追い詰めながらも、彼の看護をし、最期を看取ったという男。
 クロードの犯した罪を暴き、彼を狩る側に立ちながらも、彼を見守り支えつづけたなんて……あまりに矛盾した、おかしな関係。
 いったいそれは、どういうことなのか。
 問いつめるエヴァに、ジャンは1枚のディスクを渡す。出版するつもりで書いていた原稿だという。
 医師クロードの生涯を、小説風に書いたものだった。

 貧しい生まれのクロードが、どんなふうに生きてきたか。なにに傷つき、傷つけられ、どんなふうに心をねじ曲げていったか。世の中への復讐心ゆえに医師となり、どれほどの罪を犯してきたか。
 さすがはジャーナリストの手によるものだけあって、それらは詳細な調査に裏付けられ、克明につづられている。

 これほどまでに悪いことをしてきた人だったのか、わたしを助けてくれたクロード医師とは。
 だから誰も真実を口にしなかったんだ。美談で収めたかったんだ。

 たしかに、死の直前にクロードは突然医師としての使命に目覚め、死にゆく我が身を医学発展のために捧げている。
 しかしそれも、神の啓示を受けて改心したとかではまったくない。裁判途中の犯罪者が行った陪審員たちへのパフォーマンスであったと、その原稿は告げている。
 人は簡単に変われない。
 人を信じず神を信じず、誰も愛さずにひとりで生きてきた男が、簡単に変わるはずがない。
 彼は最後まで「悪」だった……。

 それは、クロードがしてきたことを正しく羅列した作品だった。
 クロードの行いは、どう見ても「悪」であり、彼自身も「悪」としか思えなかった。
 なのに……。

 読み終えたエヴァは、クロードを憎むことができなかった。
 彼の歪んだ行いを列記してあるというのに……とても突き放した、冷たい書き方をしてあるというのに、その作品はクロードを孤独でかなしい、愛すべき男として描いていた。

「小説ですから」
 と、作者のジャンは笑う。事実なんて誰にもわからない、と。
「でも……見えた気がしたんです」
 14歳のエヴァの生死を懸けた大手術が行われていたそのとき。誰もが最善を尽くし、それぞれの人生と向き合い、希望を祈っていたあのとき。
 戦う人々を見守るようなクロードの姿が。

 手術の成功をアルノーが告げに来たその瞬間、微笑むクロードの姿が……たしかに、見えた気が、した。

 だから、この作品を書いたのだと。
 彼は語る。

「いつ出版されるんですか?」
 と訊ねるエヴァに、ジャンは照れたように笑った。
「そのつもりだったんですが……やめました」
「どうして?」
「ちょっと、恥ずかしいかなと思って」
 だってこれ、クロードへのラブレターだよね。全編通して。
 告発し追い詰めすべてを奪い……だけど見守り支え、愛した。最期の瞬間、その手を握っていた。涙を流していた。
 恥ずかしすぎるよ。クロード本を出版するなんて。

「これは、わたしと彼の……わたしたちだけの宝物にしておきたいんです」

 どうして、生前のクロードを知るものたちが美談しか口にしないのか。
 クロードが犯罪者であったことは、たしかなのに。
 それでもみんな、彼を悪く語らない。
 それはきっと、見えたからなんだろうな。ジャンが見たという、最期の笑顔を。もしくは、それを見たと錯覚させるほどの穏やかな死に顔を。
 だからみな、罪を語らず、愛を語る。
 彼はすばらしい人間だったよ、君はすばらしい人に助けられたんだ。君の生命にはそれほどの意味があるんだよ。
 だからしあわせにおなり。すばらしい人間におなり。
 ……そう、言い続けるんだ。

 自分の生死に関わるミステリに答えを見つけ出したエヴァは、吹っ切れたようにピアニストとして大成していく。
 彼女が初恋の人、あのクロードのライバルであり友人であったステファンと再会するのは、それから間もなくだ。

          ☆

 『長い春の果てに』は、石田芝居にしてはぜんぜんマシな部類だ。
 現代物でコメディで、ということで比べるけど、『再会』より100倍はマシな作品だと思う。

 石田作品でいちばんいやなのは、彼の根底にある「女性蔑視」が透けて見えることだ。
 無意識に思ってることって、作品に出るからねぇ。

 『再会』はものすごかったよ。女の扱われ方。
 まず、主人公の父が、「ある女を騙して犯し、捨てろ」と主人公に命令する。「金が欲しかったら、女を犯して捨てろ」と。
 んで主人公、「お金欲しいから、女を犯して捨てることにするよ」と承諾する。そのうえ、「女を騙している過程、たしかに犯したかどうかをすべて小説にしろ」というものすごい条件さえ、平気でのんでしまう。
 だがうっかり、主人公はターゲットの女性に恋をしてしまう。騙すつもりが本気になって、しかも犯す寸前で逃げられてしまう。
 実はこの女性は主人公の父に雇われていたのだ、遊び人の主人公を懲らしめる父の作戦だったのだ、というオチ。
 いや、作戦てアンタ。それがはじめから作戦であったとしてもだ、主人公「金のために、女を騙して犯して捨てる」ことを承諾して実行するような人間なんですけど?? そ、それっていいの??
 そして、ヒロインである女性にしても、だ。「金のために男に騙されたふりで騙す」ような女、で、しかも、この「騙されたふり」には「犯される」ことも含まれているわけだよ?
 たまたま本気で恋に落ちたから主人公は手を出さなかったけど、そうじゃなかったらとっととヤられてるわけだよね? 関係を持ったあとで捨てるのが条件だもんね。
 つまりヒロインは「金のためになら、男を騙して捨てる」うえに、「どんな男とでも寝る」ことのできる女なわけだ。
 この倫理観って、どうよ?
 男も女も最低ですがな。
 しかも女は不倫の過去があるっていうんで、犯罪者扱いだけど、男が遊び人で今までさんざん女を渡り歩いてきたことは不問。
 そんな男のプロポーズの言葉は「嘘つき女への罰だ。黙って俺に一生ついてこい」……嘘つきはてめーもだろーがっっ、と胸ぐらを掴みたくなる無神経さ。
 やってることの犯罪度は同じ、人でなし度は同じなのに、責められるのは女だけで、男は一切おとがめなし。
 寛大な男が、汚れた女をゆるしてやって、ハッピーエンド。

 ものすごい話だった……。
 まともな人間が誰ひとり出てこないの。キチガイばっかさ。

 だけど、表面的にコメディの皮で包んであるから、1回観たくらいじゃわかんないのね。ギャグに「あはは」と笑っているだけで、あっという間に終わってしまう話だったし。
 当時トド様が、グンちゃんにベタ惚れで、目尻下げまくってるのが微笑ましいやら恥ずかしいやらで、ファンとしては男の中の男トドロキ親分のめろめろぶりを見ているだけでたのしめたから、一層カムフラージュされちゃってたんだけどさ。
 でも、不愉快度でいえば、最悪ランクだよ、『再会』って。

 それに比べて、『長すぎた春』(パラフレーズ)はぜんぜん不快じゃない。
 ただたんに、「つまんない」だけで。
 害はナシ。

 しかしそれって、救いなのか?


 HAPPY BIRTHDAY TO ME !!

 誕生日だけど、他人にオルデトウを言っています。
 旧友のミヨの結婚式。
 なにもわたしの誕生日に嫁に行かなくてもいいだろう? わたしのことを置いてゆくのね? つーか、いつまでわたしは独身なんだ? ととほほな気分にもなりながら、友を祝福。

 これで学生時代の同じクラスの仲良しは、ちょうど半数が結婚したことになる。
 残っているのは、わたしの他はグループ内でいちばんの美人のイシちゃんと、いちばん華やかでかわいらしいスノオちゃんだ。
 なんでよりによってイシちゃんとスノオちゃんが残ってるかな。いちばん先に行くかと思ってたのに。
 バンカラなヤマダさんがいちばん最初に行き、少年のようなリーが次に行き、そしてクールなミヨが今回かよー。
 最後に残るのはだれだ?
 ……わたしのような気がする……。

 とにかく、1泊2日の東京行き。ヅカとメル友とデートと結婚式で、ハードスケジュールさ。へとへと。
 それでも帰って来たら、またしても『零』をやっていたりな。
 弟がわたしの部屋にぺたんと腰を落ち着けちゃうもんだからさ、一緒にあーだこーだと仲良くゲームをしちゃいましたよ。
 35の姉と、32の弟が、仲良くテレビゲーム……。なにをやってるんだ……。

 わしがなかなか嫁に行けないわけだよ……。

 
 欲望は生きている。
 生きて、うごめいている。
 心に巣くいながらも、勝手に蠢いている別の生き物であるのかもしれない。
 俺は欲望を否定しない。
 他人の欲望も、己れの欲望も。

 安全な場所から生贄の血を見たいという、あの弱き者たちの欲望も。
 己れの美貌と広大な後ろ盾をエサに、生贄を求めるあの蜘蛛女の欲望も。
 美姫と豊饒な国を手に入れんと、蜘蛛の巣に自らかかるあの生贄たちの欲望も。
 奪い、殺し、心のままに生き、求めるままのすべてを欲する、この俺も。
 欲望は、等しく醜い。
 そして、等しく滑稽だ。
 そして。

 等しく、正しい。

 生き方の美醜なぞ、興味はない。心正しく美しく生きても、凶悪に醜く生きても、大した差などない。
 生きている間など、一瞬のことだ。
 己れのうちに欲望を飼い、それをあやしながら、あるいは翻弄されながら一生を過ごす。
 愉快だろう?

 俺はその日またひとつ、愉快なものを見つけた。
 堂々たる物腰の長身の男。今は亡き国の王子だという。
 腕が立つことは一目でわかった。俺の手下どものかなう相手じゃない。争乱を止めに入ったのはひとえに手下どもの命を惜しんだからだ。
 男には俺の意図がわかったのだろう。なにも言わずに引いてくれた。俺はそのことに頭を下げた。
 強い者は好きだ。
 男でも女でも。
 賢い者も好きだ。
 子どもでも老人でも。
 男は強く、賢かった。数にものを言わせようとした俺の手下どもを一掃できる強さ。そして、そいつらを瞬時に許し剣を引く賢さ。
 気に入った。
 そばに置きたいと思った。
 この男が俺のそばにあれば、どれほど心強いだろう。また、危険だろう。
 この男は俺のものになど、ならないだろう。たとえそばに置いたとして、手下どものように俺に心酔し服従しはしないはずだ。男の腰に穿いた剣は、簡単に俺の喉元に突きつけられる。風に吹かれた紙がその都度ちがう面を向けるように、男の剣は俺を守り、また殺すだろう。
 俺は舌で唇を湿らせる。欲望。そうこれは、欲望だ。
 この男が、欲しい。
「仲間に入るか」
「やめろ。私を巻き込むな」
 俺の求愛は簡単に退けられた。女のように整った横顔には、月のような冷ややかさがあるだけだ。
 その乾いた風情が、俺にある女を連想させた。
 生贄を巣におびき寄せて殺す、美貌の蜘蛛女を。そう、その女の名は。
「王女トゥーランドット。そこに書かれた通りだ。王女がかける三つの謎を解けば、妃にできる。もし解けなければ、首を切られる」
 しかし男は、なんの興味も持たなかった。俺が差し出した絵姿を突き返してくる。ここへは生き別れた父を捜しに来ただけであり、その父を見つけた今は、この街に長居する気はないと言う。
 男の父親は、しょぼくれた老人だった。その姿からは、王座にあった昔日の姿は想像できない。なまじ男が美丈夫であるだけに、差は歴然としている。
 そのぼろぼろの老人を、男はとても愛しそうに労っていた。……きっと母親が長身細身の美人だったんだろう。父親に似なくてよかったと、俺は余計な感慨を持つ。
「残念だ」
「なにがだ」
「お前を俺のものにしたかった」
 男は口の端だけをあげて笑う。冷笑が似合う顔立ちだ。父親に対してはけなげないい息子の顔をするが、他の者に対するこの態度はどうだ。相当根性が歪んでいそうだ。
 かく言う俺は、嘲笑が似合う顔立ちだと言われる。「酷薄と傲慢が暴力で混ぜられたような顔」と、わけのわからない形容をした女に意味を問えば「色男だってことよ」と答えが返ったので、そういうものかと思う。「あんたが本気で口説けば、堕ちない女はいないわ」とその女は言ったが、男はその限りではないらしい。
 目の前の男は、俺になんの興味も持たない。乾いた砂のように、俺の前を素通りする。
 まあいい。愉快なものなら他にいくらでもある。
 欲しかったのは事実だが、それに固執する気はない。
 俺は肩をすくめて男に背を向ける。ひとつのものに執着するほど、一途な性質ではない。好ましい女がいくらでもいるように、好ましい男もいくらでもいる。
 この流浪の王子が俺のもとを通り過ぎたからといって、どうということはない。

 ……どうということはなかった。今までならば。

 冷めた月を思わせるその男は、俺の目の前で変わっていった。
 折しも満月の光を浴びて。
 その横顔に瞳に唇に、炎がやどる。
 熱だ。
 熱が見える。

 男は変わった。
 ひとりの女と出会って。
 ひとりの女を見て。

 処刑される生贄、見守る民たちの悲鳴と号泣、そして歓声。
 刑場にあざやかに散る紅い飛沫。
 それらを表情ひとつ変えずに、高みから見おろすひとりの女。
 生贄の血を吸って今なお美貌を輝かせる、あの蜘蛛女。

 あの女を見て、男は変わった。
 孝行息子の仮面をかなぐり捨てて父を振りきり、慈愛深い主人の仮面をかなぐり捨てて従者たちを振り切る。
 己れの欲望のみに、突き動かされて。
「あの女は、わたしだけのものだ!」
 宣言する。
 たった今首を斬り落とされた生贄と同じように、あの女の出す三つの謎に挑むと言う。あの女を得るために。

 欲望。
 それはまぎれもなく、ただの欲望だ。
 自分勝手で傲慢な、醜い欲望だ。
 そして俺は、欲望を否定しない。
 他人の欲望も、己れの欲望も。

 いや。
 欲望こそを、愛しているのかも、しれない。
 もっとも強い欲望が持つ力を、誰よりも欲しているのかもしれない。
 だから、名も知らぬ王子よ。
 俺はお前から目が離せない。
 お前の強い欲望力から、魂が離れない。

 好ましい女くらい、いくらでもいる。好ましい男も、いくらでもいる。唯一無二などというものは存在しない。それはただの幻想だ。
 俺自身ですら、絶対のものではない。俺の代わりとて、大河のように続く時間の中にはいくらでもあるだろう。
 しかし。

 今、代わりのないものが、俺の目の前にある。
 唯一無二、絶対の存在。

 この男でなければ駄目だ。
 他の何でも駄目だ。
 俺が欲しいのはこの男ただひとり、誰より強い欲望力に魂を輝かせ、他人を踏みつけて叫ぶ男。
「聞け、トゥーランドット! 私はここだ! お前の男はここだ!」
 銅鑼が鳴る。
 運命の音が夜の中に響きわたる。

 俺の愛しい男が叫んでいる。

          ☆

 発売日に並んで手に入れたチケットは、1階3列目が1枚と、同じく23列目が2枚。

 今、友情が試されるとき……!!(震撼)

 さ、3列目で観たい……!!
 一瞬ぐらりときましたが、友情を取りました。
 3列目は手放して、23列目で友人と並んで観劇。
 ヅカに慣れた人ならともかく、「ヅカ初体験!」な人を、あの特殊空間でひとりにはできぬ。

 メル友のタワシさんは、興味津々で劇場内を探検。オケボックスまでのぞきに行っていたよ。
 「堪能する!」と言ってプログラムまで買っていた。……わたし、買ってないのにな。
 そして、タワシさんはたかこを見て言った。

「要潤……」

 ええ。あなたで何人目かしら。
 大抵の人はたかこを見るとそー言うよね。
 殿さんだって最初はそう言っていたし。

 
 やっぱりわたしは好きよ、『鳳凰伝』。
 お花様のキレっぷりに心ときめいていたし。
 いーよね、花ちゃん!
 ムラで見たときより一層ぶちキレてたわ。高笑いのすばらしいこと。

 わたしはたかこファンだし、カラフは当たり役だし大好きだし、カラフを見たいと思うのだけど、気が付くとトゥーランドットを見ている。ああ、こまるわ。トゥーランドットに釘付け(笑)。

 タワシさんは、ヅカのことはなんにも知らない人だが、前もって友人から吹き込まれていたらしい。
 曰く「チケット獲得は至難の業。チケットを用意してくれた人に感謝しろ」。曰く「ヅカファンはこわいから、不用意なことは言うな。見終わったあと『おもしろくない』系のことは口が裂けても言うな」。等々。
 そんなに恐縮しなくても、そんなにおびえなくても、たぶんきっと大丈夫だよ。しかし彼にいろいろ吹き込んだ人は、ヅカに対してどーゆースタンスを持つ人なんだ?

 まーなんにせよ、興味深く観劇してくれたようだ。よかったよかった。

 そしてタワシさんたら、「チケットを取ってくれたお礼」だと言って、たかちゃんの携帯ストラップをプレゼントしてくれた。えーと、そんなに気を遣ってくれなくても、ぜんぜんいいのに……つーか、よっぽど吹き込まれてたのか、前もって。

 とゆーことで、わたしの現在の携帯電話には、王様ストラップがついてますわ。


 衣替えをしようと思った。

 が。
 タンスの前には本の高層ビルディングが建設されている。
 まずはこいつをなんとかせんことにゃあ、引き出しが使えない。

 ……なんか1日、衣替え(以前の作業)で終わっちゃったんですけど? はあはあ。

          ☆

 ブンちゃんとまひるちゃんの退団記事は、白黒の上、小さな扱いだった。ナルセのことにはまったく触れてないし。
 つまんないぞ、スポニチ!

 
 前振りで文字数エラー出てしまった……。
 よーやく本文。
 行ってきました、『ワンピースワールドin白浜』!!
 9月22日(日)、午前8時台新大阪駅発の特急くろしお。
 わたしははりきって弟からデジカメ借りて、朝からチャリンコ飛ばして新大阪まで行きました(地元民)。写真写りを考えて、服の色はあざやか路線ね。
 お天気は曇りだけど、暑くなく寒くなくいい感じ。

 どーせデジカメだから、と、いろーんなくだらないものも、いちいちシャッターを切る。
 苦労の末手に入れたラリーブックも、1ページずつ撮影。特急くろしおも、ホームのダサい看板も、みんな撮っておけ!
 WHITEちゃんにも「写真はMOでデータだけ渡すから、自分で好きにしてね」と言っておく。CDに焼いてやる気さえないわたし。MOは貸すだけよ、データコピーしたら返してね(笑)。

 はりきって出掛けたけど……。
 さみしかった、白浜……。

 海水浴シーズンが終わってたからかな。わたしの記憶にある、子どものころのにぎやかな観光地のイメージからはほど遠い。
 さびれた感じの田舎町……。

 ちゃんと、乗るバスの時刻表までチェックしていたわたしたち。すべてのポイントを無駄な時間を使わずに回りきるぞと、やる気十分。
 ひとつめのチェックポイントにはあっさり着いた。
 いきなりゾロとサンジの看板がお出迎え。……何故このカップリング? スタンプの絵柄もこのふたり。
「ゾロ×サンはだめよ。サン×ゾロでなくちゃ」
 とWHITEちゃんは腐った感想をもらす。スタンプの絵柄で、ゾロの方が上だったからだ。上に絵があるからゾロが攻……。

 閑話休題。
 わたしは最近、ゾロ受小説を読んだ。
 わたしは腐女子だしゾロは受だと思っているが、じつはワンピのやほひ本はまともに読んだことがなかったのだ。(WHITEちゃんはいろいろ持っているらしいが、秘密主義なので他人には自分の蔵書を公表しない)
 それがふとしたことで、はじめて読んだ。ネットのSSだった。
 サン×ゾロだった。
 物語自体はたのしく読んだ。
 ただ……。
 ふと、正気に返る瞬間があった。
「そーだよな。ゾロって、腹巻きしてるんだ……」
 いろいろといたすシーンで、サンジがゾロの腹巻きを脱がしたりするわけだ。
 そこでわたしは素に返る。
「腹巻き……」
 またあるSSでは、セクスィーなシーンで、言葉責めなんかしちゃいながら、サンジの手がゾロの腹巻きをまくりあげる。
「腹巻き……」
 またあるSSでは、とっても鬼畜なシーンで、両手の自由を奪われたゾロの下半身の衣服だけを取り払い、どーのこーのっちゅーことになる。シャツも腹巻きもそのままで、下半身だけ裸。
「腹巻き……」
 いや、いいんだよ。ゾロは腹巻きをしているさ。してるんだから、仕方ないさ。
 しかし、腹巻き。
 いちいち「腹巻き」という単語が出てくるたびにわたし、夢から覚めるんですが。
 作家さんは強いよな。腹巻きがあってもゆるぐことなくえっちシーン描くんだもんな。人間の想像力ってのはすごいよな。
 てなことを言ったらWHITEちゃんは腹を抱えて爆笑していた。秘密主義のWHITEちゃん、あなたはいつもどんなやほひ本を読んでるんですか? わたしは隠し事のない人間なので、自分の持っている本はみんなWHITEちゃんに教えちゃうんだけど。
 そして。
 どんなに「腹巻き」という単語がわたしを苛んだとしても、ゾロを受だと思う気持ちに変化はありません、オタク魂ここにあり。

 まー、余談はともかく。
 ひとつめのチェックポイントクリア。
 次はさっきバスに乗っているときに見えたなー、てことで、またバスに乗り、問題の箇所まで戻る。

 すると。
 いきなり、終わってた。
 終了?
 看板のキャラはルフィーとナミで、「冒険はここで終わりだ」みたいなことが書いてある。はぁ?
 よく見るとチェックポイントは3つめになっていた。
 2つめ飛ばしてんじゃん。てっきりここだと思ったんだけど。どこよ、2つめ?

 てきとーに当たりをつけて歩いてみたら、あっさり2つめも発見。キャラはウソップとチョッパー。
 2つめと3つめは、徒歩3分くらいしか離れていない。だからつい、まちがえて3つめに先に行っちゃったのね。

 …………どうしよう、終わっちゃった。ちなみにまだ、お昼。

 わたしたち、ものすごいはりきって来たんですけどっ?!

 実質1時間もあれば終わるゲームだったのね。
 だからどこにも書いてなかったんだ、日帰りでいいのか泊まりかなんて。

 わたしたちが大騒ぎしすぎていた?
 いやしかし、パンフレットに所要時間の記載は必要だと思うよ。それによって乗る電車の時間も宿の都合も変わってくるじゃん。JR、案内ヘボすぎ。

 お昼に予定が終わってしまったわたしたち、夕方までどーするか、途方に暮れる。
 帰りの特急の時間を変更して、早く帰ることはできるけど……1万円以上かけて来てるんだから、観光くらいすべきでしょう。
 でも、どこへ行く?

 海水浴場の白い砂浜で波とたわむれ、無料の露天風呂で足浴だけする。……わたしひとり。
 だってWHITEちゃん、パンツにサンダル履きなのにパンスト穿いて来てるんだもの。水に入れないってゆーのよ、面倒な。サンダルは素足が基本だろー。
 わたしは裸足にサンダル履きだったので、とっても自由。水物OK、たのしみました。

 わしらはババアなので、子どもがよろこびそうな遊び場には近寄りたくない。
 せっかく温泉地なんだから、ってことで、急遽温泉旅行に変更。
 ラリーブックに載っている中で、いちばん規模の大きい温泉へ行く。

 ……たしかに、行った甲斐のある温泉でした。
 眺めが最高、海を見おろしながらの露天風呂。
 しかしな。
 山の上なんだよ。
 しかも、6つだか7つだかあるお風呂がすべて、チガウ場所にあって、気の遠くなるよーな石段を登らなきゃいけなかったりするのよ。敷地が広すぎるのよ。
「なあ、この温泉、なんかまちがってない?」
「温泉ってふつー、癒されに行くよね……なんか明日、筋肉痛になってそうなんだけど?」
 石段に継ぐ石段、坂道に継ぐ坂道。なまじ温泉で温まったあとだから、歩きながら「くらっ」と立ちくらみを起こしそうになる。
 しかもここもまた、スタンプラリーやってるし。温泉場を巡りながら、スタンプ集めた……。なにをやってるんだ?
 よせばいいのにわたしたち、全部の温泉回って、最後にサウナまで入って来たよ。もー。ふらふら。

 千畳敷で夕焼けだけ見て、白浜駅に戻る。
 そこで念願の「ワンピース・ピンバッチセット」をもらう。このイベントのオリジナル商品。このために、ここまでがんばったのよ、わたしたち。
 帰りのくろしおの中で、もちろん記念撮影しましたともよ。ピンバッチも、ピンバッチを持ったところも。……ああ、オタクって……涙。

 白浜はさびしかったけれど、それでもさすがに日曜日、人はそれなりにいたよ。『ワンピースワールドin白浜』に参加している家族連れもちょろちょろ見かけた。ええ、大人の女性ふたり組ってのもいたわ(笑)。
 でも、なんか……さみしいね。昔はもっと、にぎやかなところだったのに。

 ところで街を走るバスなんですが。
 典型的な田舎のバスって感じなんだけど、観光地だからか、アナウンスが愉快。次の停留所のCMをするんだよね。
 ものすごーく淡々とした、抑揚のないおばさんの声で、
「君歌う僕踊る、最新DAM完備、ダンスダンスレボリューション設置の**カラオケは次の**でお降りください」
 はぁ?
 WHITEちゃんとふたり、思わず顔を見合わせてしまったよ。今なにか空耳が? てなもんで。
 感情のある、たのしそーな声で言うならともかく、お経みたいな陰鬱な声で「君歌う僕踊る」と言われてもな。呪いの言葉かと思ったよ。
 なんにせよ、田舎はいろいろ味があるよな、多彩な意味で。

 それにしても、疲れた。
 帰りのくろしおは爆睡2時間半、おかげでごはんを食いっぱぐれた……。

 たのむよJR、次のスタンプラリーは白浜はやめて。
 神戸あたりがいいな、どうせなら。


 少年は飢えていた。
 自分がなにに飢えているのかは、わからない。
 だが少年は飢えていた。
 孤独だった。
 彼には父親も妹もいたけれど、名家に生まれ裕福に育ったけれど、それでも彼は孤独だった。
 そして、自分が何故孤独なのか、なにを求めているのかわからなかった。
 いや。
 ひょっとしたら彼は、なにも気づいていなかったのだ。
 自分が飢えていることにも。
 自分が孤独であることにも。

 そんな少年を、抱きしめる女がいた。

 その女は、孤独な女だった。心の飢えを日常とし、すべてをあきらめた女だった。

 孤独な女は、少年の孤独を見抜いた。
 少年の孤独ごと抱きしめた。
 孤独な女と孤独な少年は抱き合った。互いをむさぼった。
 それは、必要なことだった。
 それは、必然だった。

 彼らの不幸は、少年がまだ人生のはじめを生きる年若い存在であるのに対し、女が人生がなんたるかを知った成熟した存在であったことだ。
 少年はいつまでも少年のままではない。彼はすぐに大人になる。彼はすぐに男になる。
 女はおそれた。孤独な少年がひとりの男となり、かれらの蜜月が終わってしまうことを。

 恋ゆえに、女は狂う。

 変わっていく少年、過ぎていく時、指の隙間を滑り落ちる幸福な瞬間。

 狂うことでしか、時を止められない。
 少年を止められない。

 女は狂い、己れの左眼をえぐりとり、己れの顔をずたずたに切り裂く。
 そして少年の手で、屠られる。

 少年に殺されることで、女は永遠を手に入れる。
 少年は業を背負う。はじめて抱いた女を、狂わせた業。その手で殺した業。

 孤独を抱きしめてくれたたったひとりの存在であった女を、少年は自らの手で殺した。淵に沈めた。
 もう少年の心を癒すものはなにもない。

 少年は心を壊したまま、大人になる。男になる。
 少年を癒すものは、この世にはない。

 そして、大人になり男になった彼は、育ての親でもある舅をその手で殺し、妹を苦界へ売り飛ばす。妹の婚約者を陥れ、殺す。妻を毒殺し、利益だけを求めた再婚をしようとする。

 この世でもっとも醜い心を持つ彼は、それでもこの世でもっとも美しい姿をした人間だった。
 彼と出会う者たちは誰もが彼に惹かれ、彼を欲し、彼に溺れ、破滅する。
 その昔、少年だった彼に恋をし、左眼をくりぬいて狂い死にしたあの女のように。

 彼は、不幸だった。
 愛され、求められ、溺れられても、不幸だった。
 奪い、犯し、殺し、他人の生き血を吸うがごとく、傍若無人に生きながら。
 彼は、飢えていた。
 彼は、孤独だった。

 彼の魂は、誰にも救えない。

 ……救われることを、彼ものぞんでいない。

 彼の妻は、彼の手で殺された。
 妻は成仏などしない。
 妻は彼の再婚相手に取り憑き、その相手をも彼の手で殺させた。
 妻は彼を許さない。許す意味も必要もない。
 この世でもっとも醜い姿をした彼女は、この世でもっとも醜い心を持った彼に、恋をしていた。

 彼女は死してなお、彼の前に現れる。
 うらめしや。
 彼女の恋が、死ぬことはない。
 彼の魂が、救われることがないのと、同じに。

          ☆

 すみません、WHITEちゃん。
 わたしきれーにカンチガイしてました。
 『新版・四谷怪談−左眼の恋−』千秋楽。
 日付を見事にカンチガイしてたのよー。
 わたしのミスのせいで、WHITEちゃんもわたしも、最初の10分が観られませんでした。Be-Puちゃんにも迷惑をかけました。
 ごめんね。

 東京で初日を観、大阪で千秋楽を観る。
 オギーファンのわたしとしては、ハズせない大行事。
 痛くて痛くて、大好きな『左眼の恋』。もういちど観るのをたのしみにしてたのよー。

 なのになんだ、あの会場。
 HEP HALLってば、客席すべてフラットなの。そして舞台は、低い。
 ふつーの芝居ならいいよ。しかし『左眼の恋』は、寝転がり芝居だ。肝心なシーンのほとんどが板の上に寝転がったり坐り込んだ状態でつづく。
 舞台の高さは、観客の首くらいの位置だ。
 つまり、最前列の人しか舞台のすべてを観ることができない。

 ものすごいストレスだった。

 考えるべきだったね、会場選び。
 ふつーの芝居ならともかく、アレはまずいよ。肝心のシーンのほとんどを、大半の客は見ることができない。
 見えなくてもそりゃ、筋はわかるけどね。
「芝居はよかったよ。でも、いちいち水を差される。現実に引き戻される。前の人の頭で視界を遮られるから」
 と、Be-Puちゃん。
 床に寝転がられたら、役者の顔が見えないから、客はみんなそれぞれ頭を動かすわけだ。前が動くから、後ろまで順番に動かざるを得ない。そしてそのたび、感動は水を差され、作品世界から現実へ引き戻される。

 東京まで行ってよかった。
 わたしは心から思った。
 大阪でしか観てなかったら、感動がちがっただろうよ。

 個人的に、みえちゃんお岩は、大阪で観た方が好き。吸引力が増していた。

 ところで、客席のジェンヌ率の高さにおどろいた。10分の1ぐらいか、ジェンヌ率?(笑) 客席の10人にひとりはタカラジェンヌ、ってくらいの、ものすごい数。(それくらい会場は小さく、また客の数が少ない)
 休憩時間に扉の前で喋ってたら、目の前にうようよジェンヌさん。うひゃー、右京くんだよ、どーしよーうれしー。と、内心うかれていたわたし。
 ふと振り向くと、わたしの真横にきりやんがいた。び、びっくりした。……きりやん、きれー、でも小さい……わたしより、はるかに……。

「今日は緑野さんが小柄に見えた」
 と、Be-Puちゃん。
 宙組の巨大なジェンヌさんたちが、いっぱいいたからな(笑)。彼女たちに比べれば、わたしだって小柄な女(笑)。

 
 とにかく、疲れる日じゃった……。

 天気が悪いことはわかっていた。全国的に雨マークがある日。

 しかし、朝はまだうっすらと日が射していたのよ。
 なのに。
 突然雨が降り出した。
 出かけがけから、天気雨?!

 とっても嫌な予感。

 家族で1泊2日のミニ旅行。なんで1泊なのかっていうと、弟の休みがそれしかとれなかったから。

 やはりあの天気雨はトラブルの前触れだったのかな。
 とにかく、ろくでもないことの連続。芋蔓式に不幸。
 新大阪の新幹線の自動改札で引っかかった。
 理由は、「指定席の日付ちがい」。
 わたしたちが持っていたのは「昨日の切符」だった……。
 その切符は1週間前に母が買った。わたしも弟も、「母が日にちをまちがえた」と思った。しかし母は「まちがえたのは切符を発行した窓口の駅員だ。わたしは悪くない」と言ってきかない。

 さて、どうするか?

1.指定席をあきらめ、自由席の列に並びに行く
2.新しい指定券を買いに窓口へ並びに行く
3.駅員にクレームをつけ、新しい指定券を発行してもらう 

 わたしと弟は、1か2を選びたかった。しかし母がきかない。
 結局3になった。
 わたしたちが事実を確認する前に、母が改札口で駅員さんになにやら噛みついていた。

 さて、クレームの出し方。

1.昨日の指定券を発行したのはそちらのミスだから、今日のものに替えて欲しい。4人なので、向かい合わせに坐れるようにD・E席で連番、禁煙席で頼む。
2.昨日の指定券を発行したのはそちらのミスだから、今日のものに替えて欲しい。と言うだけで精一杯。
3.事実の確認と、それを踏まえた上での改善要求と、自己弁護と逃避、言い訳をすべてごちゃまぜに感情的にまくしたてる。

 わたしか弟がいれば、1か2だった。しかし、そこにいたのは母。実際に駅員さんになんと言ったのかは、その場にいなかったのでわからないが、
「わたしは知らない、わたしは悪くない、駅員さんはここで待てと言った、待っていたらどうなるのかも知らない、わたしは悪くない、わたしはちゃんと今日の日付で1週間も前に**駅で買ったのに。あの日はとっても忙しかったのに、それでもわざわざ今日のために**駅まで行って買ったのに。日付の確認なんかしなかった、そんなの正しいって信じていた。信じていたのに、まちがっているなんておかしい」
 と、電波かお前、てなことをわめきつづける母にかかっちゃー、なにも通じてなんかいないだろうことは予想できた。
 ええ、ぜんぜん通じてなかったよ。駅員さんは右往左往してた。……気の毒に。
 途中からわたしが交渉して、ようやく今日の指定券を手に入れることができた。
 ごめんね駅員さん。わるいのは、うちの母です。でも成り行きで強引に今日の指定券を発行させちゃったよ……。

 ようやく予定の新幹線に乗ることはできた。
 だけど母のクレームが支離滅裂だったせいで、取れたのは喫煙車両のA・B席連番。つまり、3人掛け席なんだよね。向かい合わせにすると2席、余ることになる。ただ余るだけならいいけど、ここに誰かまったくの他人が来るとなると……おたがい気詰まり。
 連番が取れたのは、わたしが交渉したから。母の言い分だけでは同じ新幹線に乗ることも難しかったよ。とにかく、無茶苦茶だったから。

 精神的にとても疲れて、東京着。
 実は母、行きのチケットだけでなく、帰りのチケットもまちがえて取っていた。行き16日、帰り17日のはずが、行き15日、帰り16日になっていた。つまり、日にちをきれーに1日前で取っていたのね。
 1日だけなら、窓口の駅員さんの入力ミスかもしれない。しかし、もう1日もちがう日付だとしたらそれは、申し込んだ人間が日付をカンチガイしていたとしか思えないだろう。
 だが母は、
「駅員さんだって人間だもの、入力をまちがえることだってあるわ。許してあげなきゃ」
 と寛大なことを言っている。わたしや弟が突っ込んでも聞く耳持ちゃしねー。

 とにかく、帰りのチケットの指定券を変更しなければならないわけだ。
 東京に着くなり、窓口へ行き変更手続き。
 わたしと弟は荷物番をしながら、ぼーっと待っていた。
 ずいぶん待った。
 そしてよーやく窓口をあとにした母は。
「帰りの切符がないの、あんたたち持ってない?」

 はあ?

 どーやら母、新大阪で切符の日にちちがいに気づいて、駅員さんにクレームを付ける際に、帰りのチケットも出してあーだこーだ言ったらしい。
 そしてそのとき、帰りのチケットを落としたそーな。

 さて、どうするか。

1.落としたものはあきらめ、新しく買い直す。
2.さがす。とことん探す。
3.事実の確認と、それを踏まえた上での改善要求と、自己弁護と逃避、言い訳をすべてごちゃまぜに感情的にまくしたてる。

 もちろん、3でした、母。
 まず、自分が落としたことを認めない。
「だって袋はあるのよ! わたし、袋をこうしてちゃんと持ってるんだから! 袋の中に入ってるって信じるじゃない。なんで入ってないの?!」
 ……アンタが落としたんじゃん……。
 チケットを持っていたのもアンタ、チケットに触ったのもアンタ、袋から出したのもアンタ、他の誰も触ってないし、知らない。

 チケットを落とした、という事実を認めるまでに、なんであんなに時間がかかるんだ?
 落としたのは母の分の1枚だけだったのよねえ。母以外に誰が落とすんだよ。

 結局母は「いいわ、わたしが出すわ、切符1枚くらい」ととても寛大なこと言った。……アンタが落としたんじゃん、というわたしや弟のツッコミは以下略。

 じつはまだこの切符騒動は余波があったんだが、書いてて不愉快になってきたので、もうやめておく。
 はー…………。

 せっかく早くに東京に着いたのに、いつまでたっても駅から出られない。
 よーやく駅を出たときには、雨がぱらつきだしていた……。
 切符のトラブルがなかったら、降られなかったはずの雨だった。

 わたしたちの目的地は「鎌倉」だった。
 朝7時半に新幹線で大阪を出たというのに、午後1時の段階でまだ、東京駅にいた。
 東京駅で昼食を取りながら、わたしと弟は鎮痛剤を飲んだ。この旅行のあまりの手際の悪さ、前途多難さに疲れ、偏頭痛を起こしていたのだ……。

          ☆

 旅行を計画したのは父だ。
 父の予定通りにいけば、昼食は鎌倉で取っているはずだ。
 彼は鉄道好きなので、鉄道に関してだけはいろいろ調べていた。
 が、父の計画表はすべておじゃんになった。
 予定していた新幹線が取れなかったせいだ。

 絶対に取れるはずの新幹線が取れなかった。
 仕方なく1本前の便にした。
 そのために、そのあとに乗るつもりでいた列車のタイムテーブルは無意味になった。
 忙しかったからか、父はタイムテーブルを再度組み直すことはしなかった。「ま、なんとかなるだろ」と成り行きに任せた。

 ……何故、「絶対に取れるはずの新幹線が取れなかった」か。
 母が日にちをまちがえていたせいだ。
 15日は3連休の中日。
 16日は3連休の最終日。
 父が指定したのは「16日」。この日なら「絶対に取れるはず」だ。
 だが母がまちがえて「15日」で取った。もちろん15日は売り切れで、仕方なく1本前の便になった。1本前だから、父のタイムテーブルは無効になった。

 すべての不幸は、ここからはじまる……。

          ☆

 「16日」の旅行なのに「15日」の切符だったから、新大阪駅でトラブルになった。
 そのトラブルが原因で、母は帰りの切符を無くした。
 そのトラブルが原因で、東京駅で無意味な時間を過ごした。
 その無意味な時間のために、雨に降られた。
 雨のために移動その他に予定外の時間がかかった。
 予定外の時間がかかったために、鎌倉での神事を見ることができなかった(終了時刻に到着した)。
 予定していた行程の半分も消化できなかった。

 と、とにかく最悪。

 わたしも弟も疲れ切った。
 雨の中を動き回っていたから、傘をさしていても濡れてるしな。
 父はすぐ疲れて不機嫌になるし、母はテンション高くて自分勝手なことばかり言い出すし。

 ホテルの部屋割りは、父母と、わたしと弟。
 わたしたちはとっとと自分たちの部屋に引き上げ、休みました。 
 就寝はなんと午後11時。
 …………普段からは考えられない時間。

 疲れてたんだよ……。


「クラウスがゆーひだったら、って脳内変換して萌えてます」
 と、ゆーひ命のデイジーちゃんが言う。

 なるほど。齋藤くんに合うんだよね、ゆーひは。

「でもごめんなさい、クローゼをケロさんに変換することができないんです。やってみたんだけど、どうしても……」

 本気で謝ってくれなくていいよ、そんな。
 安心してくれ、わたしだっていやだ、ケロのクローゼ。
 ケロには王子様ブラウスも金髪巻き毛も似合わないっ。ファンが断言する。

「ケロはクローゼじゃなくて、トーマス」
「ああっ、いいです緑野さん、それ萌えですぅうう」
「でもそれじゃ、話が変わってくるねー。クラウスとクローゼの物語じゃなくて、クラウスとトーマスの物語だ」
「いいです、クラウスとトーマスでっっ(鼻息)」

 ゆーひ中心のデイジーちゃんは、「ゆーひクラウスをいぢめるケロトーマス」に萌え萌えだ。

 雪バウ発売日、並びのあとのいつものブレックファスト。このあとお茶会が控えているデイジーちゃんは、お化粧に念を入れすぎてろくに眠っていないというのに超ハイテンション。モーニングセット1人前では足りないと言って、さらになにかしら食べていた。……大丈夫か、君。

 と言うデイジーちゃんも星バウのチケットを、2枚もさばいてしまったらしい。
 わたしら、星バウのチケットさばきまくってるね……つまりそれくらい、齋藤くんには期待してチケ取りしていたし、また落胆したってことだ。

 来年の中日劇場は、月組で『長い春の果てに』をやることになっている。かなしいことに。
 この演目をまんまやるなら、わたしは観に行かない。
 役代わり次第だな。
 デイジーちゃんも不満そうだ。「男役のゆーひが見たい」そうだ。ま、当然だわな。
 専科が抜けて、役代わりがあるならば……。
「いやです、それも。順当にランクアップするなら、ゆーひがアルノーじゃないですか。アルノーをやるくらいなら、フローレンスでいいです」
 うん……アルノーとフローレンスなら、フローレンスの方がいい役だよなー。
「ブリスだって、タニちゃんだからよかったんです。タニ以外のブリスでゆーひがフローレンスをやるのはいや」
 ファンの心は千々に乱れる。
 その横でわたしは、勝手な妄想をする。

「もしもワタルの役がゆーひだったらなー。萌えだなー」

 デイジーちゃん、ぴくりと反応。
「それ、いいです。それ見たいですぅぅうう!!」

 しばらくふたりで、ゆーひクロードの妄想に耽る。
 ああああ、かっこいいだろーなー。「俺は愛を信じない」だよーっ。
 クールでとことん冷酷なキャラになるぞー。ゆーひの持ち味がソレ系だから。
「そんでもって、ケロはジャン役のままで、ゆーひクロードにジャケットの中に手ェ突っ込まれたり肩揺さぶられたりするのー」
「病んだクロードの妻として、病室に泊まり込んでお世話をするわけですねっ」
 ふたりできゃーきゃー。
 ゆーひくんのお茶会の帰り道。ハイテンションなわたしたちの横で、WHITEちゃんはひとり、慣れない電車にとまどっている模様。
「この電車……どこに向かってるの? 大丈夫?」
 放っておいてごめんね、WHITEちゃん。君は南口から電車に乗ったことなかったんだね。大丈夫、向かっているのは西宮北口だよー。

 デイジーちゃんから、新しいプルミタスの写真を見せてもらい、またしても男前なゆーひくんに萌え。あー、いい男だプルミタス……。
 冷酷な表情がいいのー。悪役顔がいいのー。うっとり(笑)。

 
 昨日文字数的に入らなかった、月組新公の話をしませう。

 またしても、チケットをさばくところからスタート。
 なんか毎回さばいてないか……?
 欲しいチケットは手に入らず、余るチケットは余る……人生苦し。

 わたしは単なるイベント好きだ。
 お目当ての人がいて行く新公ではない。「新公」が好きなんだ、イベントだから。
 お目当てのために本気で観に行った新公は、トドが新公主役やってたころと、ケロがいい役つきはじめたころかな……『華麗なるギャツビー』(トドの最後の新公)と『エリザベート』(ケロがフランツ・ヨーゼフ。歌がアレなケロが、「夜のボート」だぜ?!)の新公のチケ取りは過酷だったよ……。

 イベントとしての新公が好き、ってのは、ほんとにヅカ自体を愛してなきゃいかんのだなと思う。
 昔はひいきの人がいなけりゃ、観に行く気になれなかったもんな。
 今はそんなの関係なし。
 特別なごひいきさんがなくても、たのしめる。

 月新公のいちばんのお目当ては、のぞみちゃんかな。
 長だから挨拶も聞けるしなっ。

 作品が作品だから、期待なんかまったくしてない。とても気を抜いて観に行った。
 そして気楽に笑って観た。

 えーと。
 18歳の高校卒業間近の女の子エヴァと、飛び級して大学を卒業し、23歳で医者になったステファンの物語。
 …………こまった、ロリコン医者の物語にはカケラも見えん。
 ふつーに青春映画のよーだった。

 でも。
 前回の『ガイドル』よりはるかによかったよ、さららん!
 スカイがあまりにサムかったからさー。まだぜんぜんいいよね、ステファンは。
 リカちゃんのバッドコピーだったスカイに比べ、ステファンはちゃんとさららんに見えたから。

 さららんの新公主役は何故か全部見てるけど、いちばん好きだったのはフェルゼンだなあ……。

 本公演のパロディとしてたのしんだ新公。ギャグ満載。なつかしーノリだなー。昔は新公っていうとこんな感じなのをよく観たわー。
 トドが主役やってたころの新公って、体当たりのギャグ作品が多かったよーな。トド様、新公でねずみ男やってたよな……たかことふたりで。カオにヒゲ描いて。あーゆーバカギャグに満ちていた。
 それをふと、なつかしく思い出した。
 よーな、ギャグに満ちた新公じゃった、月新公。
 脇役たちがごちゃごちゃと、なにかしらやって笑いを取っていた。
 芝居として、作品としてはNGだよ、そんなもん。本筋より目立ってどーすんだ。
 でもわたしはイベントハートだから平気。パロディとしてギャグとして、なんでもたのしめてしまう。
 オカマの研修医から目が離せなかったもん(笑)。

 たまこちゃんフローレンスは、せっかくの実力派だっつーのに、ルックスの悪さが気になった。残念ナリ。お化粧のせいか? 髪型のせいか?
 そしてタニちゃんと違和感ない青樹泉くんブリスとの、最後のラブシーンが好きだった。
「それって脅迫してるの? それとも誘惑?」のシーンですな。
「誘惑に決まってるじゃない!(泣)」のフローレンスの台詞のあとの、タメが好き。
 そこですぐさまがばっと抱擁! じゃなく、ぼーぜんとフローレンスを見つめるブリス。そして、磁石が引き合うように、抱擁。
 とゆー、台詞のあとのタメがいいのー。
 あのブリスくんのぼーぜんぶりがいいのー。

 のぞみちゃんのジャンは、ケロとはキャラがちがう。
 うわー、最初の「若気の至り」シーン、クールだ……こええ。こーゆー役作りで来ますかー。のぞみちゃんは悪役の方がハマるから、こういう冷ややかな喋り方させるとかっこいいなー。
 らぶー(笑)。
 この冷ややかな男が、改心後は善人になってるのがまたいいわ。たのしー。

 さららんのアタマの悪そうな(失礼)挨拶が、好きだった。
 正直だよ。
 アタマは悪いと思うけどね。
 そんな本音で挨拶するなんて。
 てきとーにきれいごと言ってりゃいいものを、本音で喋ってるよ、この子……。
 「他人の評価が気になる」なんてこと、挨拶で言うかね、ふつー。
 わたしはたのしく聞いたよ。
 彼女の本音の部分に共感できたから。

 わたしも、あがきつづけたいと思っている。
 そして、あがきつづけることを、誇りに思う。
 あがくことさえやめてしまったら、おしまいだと思うから。

 タカラヅカを観て共感するのは、彼女たちも自分で選んだ仕事のために汗を流しているからだと思う。
 がんばっている人を見ると、がんばろうって思えるからな。
 オレンジー、がんばれよー。わたしもがんばるからさー。と、私信を書いてみたり。

 星バウのチケットは全部さばいちゃったから……次にヅカを観るのはいつだ?
 ひょっとして『鳳凰伝』か。
 なんか遠いなー。

          ☆

 今日は仕事で1日終わった……。
 いろいろ複雑だ。
 メディアミックスって、むずかしい……。

 
 謎。順不同。

 クローゼはなにをしにベルリンに帰ってきたのか。
 「軍事機密をクラウスに届ける」という理由ではおかしい。届ける前にぐたぐたしてるし、届け終わったあともぐたぐたしている。

 諜報部員ヒルダはどーやって、世界の命運を握るよーなものすげえ機密を手に入れたのか。
 高校卒業から5年、てことは23歳くらいの小娘よね。やっぱカラダか? あのカラダを使ったのか?!

 諜報部員ヒルダは、なんでまたよりによって、ソビエトでダンサーやってるクローゼにそんなものすげえ機密を渡したんだ?
 一般人だし、ただの友だちだし、ソビエトで生きてる人だし、なのにソビエトから盗んだ機密で、ドイツ側に渡せとか言うし、いくら恋人の親友ったって5年も経ってるのに、「それほど追いつめられていた」としても無茶苦茶すぎるだろそれは。
 わたしなら、5年間会ってない、友だちの恋人がいきなり現れて、「世界の命運を握る軍事機密」なんて渡されたらびびるぞ。わたし、ただの一般人。勘弁してくれ。

 「世界の命運を握る軍事機密」を渡されたのに、それをただの一般人クローゼに突き返す軍人クラウス。
 いいのか、それ。いいのか?!

 クラウスの仕事はなんですか?
 この人、ただの一度も仕事をしているように見えません。
 公私混同しているか、もしくは女とベッドの上。
 こんなSS、嫌すぎます。

 ただの一度も仕事をしない、公私混同しかしない男クラウス。軍人としてはただのバカで落ちこぼれの窓際くんだと思って見ていました。
 そしたらなんと、有能そうな軍人トーマスは言います。クラウスが有能すぎて自分の出世には邪魔だったと。
 ええっ?!
 どどどど、どのへんが?
 どのへんが有能で、どーゆーことで君がわざわざ嫉妬をしなければならなかったんですかっ?!

 友情だなんだと吹きながら、クラウスはカケラもクローゼを信じない。親友の言葉より、どーでもいい人の言葉を信じて取り乱す。自分ではなにも調べない。なにもしない。
 「王様の服は、かしこい人にしか見えないんだよ」と誰かが言ったら、きっと彼は信じて王様の服を誉めるでしょう。
 ここまでバカでいいですか?

 「世界の命運を握る軍事機密」を持ったままの一般人・クローゼ。
 ……いいんですか? ねえそれ、いいんですか?

 クローゼがヒルダ殺しの罪を着せられ、ナチスから追われるのは、彼が「世界の命運を握る軍事機密」を持っているから。
 じゃあなんでカテリーナはわざわざ追われるのか。ユダヤ人だから、というなら、クローゼと一緒にいたらちっとも「守られる」ことにはならん。つーか、「世界の命運を握る軍事機密」を持った男と一緒にいたらやばいだろ。
 なんで一緒に逃げますか。

 1幕で、追われるクローゼとカテリーナを逃がすために、ヴィンターガルテン総力を挙げて一芝居打ち、ナチスの目をくらます。
 ……らしいが、その必要はどこに?
 ナチスがやって来る前に、とっとと逃げていたらマーサも死なないですんだのでは?

 上記の芝居に巻き込まれたマザコン青年ジェフ。何故彼を巻き込む必要があった?
 ヘタをしたら彼も犯罪者。捕らえられて拷問の末に殺されたかもしれない。あんなに気軽に、しかも騙すようにして仲間に入れていいのか? しかもあまり意味なかったし。
 大富豪の息子だからOK? ならはじめから、彼に金を出してもらえばよかったのでは?

 クラウスはそもそもなんで、ナチスに?
 日本に行く話はどーなったんだ?

 謎の男、真中隼人。彼はいったいなにがしたかったんだ?
 日本人外交官が「ハイル・ヒトラー!」って……。
 日本の諜報部員? にしては日本のためになにもしてないぞ。
 ドイツ人になりきって、ドイツでウハウハで生きるため? それならナチスはよせ、有色人種を受け入れてくれるわきゃねーだろ。
 そして、最後のあの白い軍服はなんですか。どこの軍服?

 トルコ移民の若者たち。
 あれ、なんすか?
 存在意義がカケラもナッシング。
 ナチスって、他民族も入党できたの?

 トーマスはなんでトルコ移民の若者たちを口説いていたんだ?
 ただの趣味か?

 クローゼはベルリンでナニがしたかったのか。
 カテリーナと逃避行をして、なにがしたかったのか。
 「戦っている」そうだが、なにと?
 どうやって?

 逃避行のうえ、いつの間にかくっついて子どもまで作っていたクローゼとカテリーナ。
 仕事はどーしたんですか?
 踊ることしかできそーにない、いつまでもひらひらブラウスの男と、かわいこちゃんワンピの娘さん。

 「世界の命運を握る軍事機密」の賞味期限。
 第二次世界大戦についての機密なのに、大戦はすでに勃発、クローゼとカテリーナの子どももすくすく育ってます。
 ……ねえ、こんなになってもまだ、賞味期限内なの、その機密って。
 ソビエトは盗まれた機密を放置して何年も、なんの対策も変更もしなかったの?

 どーやらクラウスにとっての関心事は、「ヒルダを殺したのは誰か」だけらしい。
 そのために何年も経ってからクローゼと再会する。
 そして、再会しての会話は。
 「ヒルダはおれに機密を渡したあとに殺された」
 前にした会話とまったく同じ。
 再会の意味は?!
 再会話の意味は?!
 同じことなら、わざわざする必要ないだろう、齋藤!!

 マーサがナチスに捕まってから、殺されるまでの空白の年月の謎。
 その間にどーやら、クローゼの子どもはすくすく育った模様。

 レオナは何故突然狂いますか。
 クローゼを撃つ必要はどこにもないですが。
 クラウスはただの一度もクローゼのことなんか愛してません。そんな台詞もシーンもなかった。
 クラウスを取られたくないから、という理由は存在しない。

 クローゼの息子、トーマは何故、クラウスを撃つのか。
 トーマはジョセフィンが育てた。彼女が育てて、クラウスを憎むはずがない。クラウスを憎むよーになったとしたらそれは、ジョセフィンという女の存在価値がなくなる。

 で、結局ヴィンターガルテンはどーなったんですか。
 せっかく支配人たちは「もう一度ヴィンターガルテンをやり直そう!」と意気を上げて集まったのに。これぞ青春の息吹! ジョセフィンのラジオ放送も感動だぞ!
 ……なのに、クラウス乱心で銃乱射。
 これでおしまい、なんのフォローもなし。
 クラウスとクローゼって、ヴィンターガルテンの疫病神? 彼らのせいでヴィンターガルテンは2度ともなくなりました、って、そーゆー話?
 

 謎は尽きない。
 今、ぱっと思い出すだけでもこんな感じ。
 もっとちゃんと突き詰めたら、はるかに出てくるだろう。

 どーやったらここまで壊れた話を作れるのか、ある意味感動でもある。

 物語が壊れているのはいつものことだけど、人間まで壊れてるよ、今回。
 そのキャラがなに考えてるのか、さっぱりわからない。
 やってることが滅茶苦茶すぎて。

 素直に時系列に作ればよかったのでは?
 高校生時代の青春なシーン → モスクワにて、突然現れるヒルダから機密を渡されるクローゼ → ベルリン、クラウスに機密を渡すクローゼ
 てなふーにさ。
 ヒルダが何者かに殺されたのは観客も知っている事実、なのにあほんだらクラウスは信じないで敵になり、クローゼは逃げるしかない。ふたりの心がつながる日は来るのか? てな話にしておけよ。
 クローゼに機密を持たせたままにしておくのはよせ。いくらなんでもアホアホすぎる。ありえなさすぎる。
 単なる「殺人犯」として追われるだけでいいじゃんよー。
 トーマスはヒルダ殺しの真犯人を、クローゼが知っている、もしくは気づく可能性がある、と思っているから、なにがなんでも彼を「殺人犯」に仕立て上げるしかなかった、ということで。
 その昔、ヴィンターガルテンでともに青春していたのに、今は敵同士、なんてこったい、てなノスタルジーでいいじゃん。
 風呂敷広げすぎ。
 あっちもこっちもつまみ食いして、腹下してんじゃねーよ。

 バカすぎだ。

 今日2回目を観たんだけど、帰りにあと2枚、バウチケットさばいて来ちゃったよ。
 今回わたし、星バウは3枚もさばいちゃったわ……。『血と砂』のときみたいに通う気満々でチケット取ってたのにー。

 今日はじめて星バウを観劇したWHITEちゃんも殿さんも、迷わず残りのチケットをさばいていた。
 「観るだけ時間の無駄!」とまで言われる齋藤バウ……。
 しくしく。

 
 んでもって、星バウ『ヴィンターガルテン』初日。

 大変だったのよ。
 わたし、もー息も絶え絶えだった。
 3日間で、4時間くらいしか、まともに寝ていなかったの。
 それでも初日に行った。東京からのぞみに乗って、駆けつけた。なにがなんでも観たかったのよ。睡眠時間や健康よりも、齋藤くんの初日が観たかったのさ。

 なのに。

 なーのーにー。

 なんやねん、あれはっ。

 結論だけ先に言うと、駄作でした。
 壊滅作。

 そりゃま、わたしの体調も悪かった。ベストコンディションではなかったさ。
 だが、萌えなかったのはわたしのせいだけじゃないだろー。

 齋藤作品のよいところは、「萌え」だと思っている。
 辻褄なんてあってなくてヨシ、壊れていてもヨシ。それを吹き飛ばす萌えがあれば、それでヨシ!

 萌えのない齋藤作品なんて、ただの駄作よーっ。

 齋藤くんに問いたい。
 なにがやりたかったの?

 今までの齋藤作品……といっても、まともに観たのは『花恋吹雪』『血と砂』それと『BMB』だけなんだけどさ。
 どれも、明確な「萌え」……つまり、齋藤くんの「やりたいこと」が感じられたの。
 彼のリビドーがわかった。
 これをやりたいがためだけに、他のシーンやストーリーを作って、つなぎあわせたんだなって。
 もちろん、ただのつなぎあわせだから、物語としてのデキは悪かったよ。だけど「やりたいこと」があまりにはっきりしていたから、そんなことは目をつぶれたよ。

 ああ、がっかり。

 出演者のファンには、これでもいいのかしら?
 演出家のファンにはつらいことばかりだわ。

 いやわたし、かよこちゃん好きなんですが。彼女への愛だけでは、つらい……つらすぎる……。

 初日の幕がおり、バウホールを出るときにはわたし、次の星バウチケットを握っていました。
 そして、さっそく階段下でさばきました。大劇はまだ公演中だから、しーんとしたロビー。つまり、さばきを買ってくれるだろう人は、わたしと同じバウの初日を観た人だけ。
 マジ、誰も買ってくれないかと思った。このデキじゃ、さばきたくなる人はいても、買ってくれる人はいないんじゃないかと……泣。
 幸い、すぐに買ってくれる人がいたので良かった。
 ふふふ、のぞみ(まゆげちゃんじゃなくて、新幹線)分はこれで取り返せたわ……。

 それと。
 まとぶんがタータンに見えてつらかったのことよ。なんでこの子、こんな癖がついちゃったのかしら……。

 
 トド様のコンサートが東京で行われる。
 この事実に、わたしは奔走することになった。

 わたしはトドのファンである。
 もう14年もファンをやっているので、ファンであることを忘れているが、よーく考えるとファンなんだ。
 ファンだから、行かなければならない。

 わたしの周りにトドのファンはひとりもいない。ネットをうろうろしても、なんかファンは少なそーだ。
 だからわたしは、楽観していた。チケットなんか楽勝で取れるって。取れすぎたらこまるなあ、さばけないよ。

 ……取れないじゃん。「譲る」も出ないじゃん。オークション高騰してんじゃん、手が出ないよ!
 トドコンの日程に合わせて取った雪東宝のチケットどーすんだよ、雪だけのために上京する余裕なんかないよ。

 ヘコみましたわー。

 ところが神が現れた。
 CANちゃんがCSのご招待券をGETしてくれたんだ。「当たるよーな気がする」と言っていたCANちゃん、「CSのHP見たら名前載ってた。やっぱり当たったみたい」で有言実行、しかもA列センターっす!!
 あんた神だ、CANちゃん!!

 本業の〆切間際、時間に追われていたが、CANちゃんの仕事を手伝いにミナミまで通った。ちょっとでも恩返しがしたかった。CANちゃんによろこんでもらえることをしたかった。
 とにかく今回本業がつらくてだな、くじけそーになる自分を奮い立たせるため、トド様のチケットをパソコンの前に貼った。
 これに行くんだ、トド様に会いに行くんだ、そのためにがんばるんだわたし! と、中学生のやうな純情さで日々を過ごしておりましたさ。

 たのしみなだけだったトドコン、そこにたどりついたときは、わたしははっきり言ってボロボロだった。いや、いろいろあったのよこれがもー。
 精神的にも肉体的にも。
 貧血起こしてたから、意識もーろーとしてたしなあ。
 倒れるな、俺! とか、自分で気合いを入れてな。今は倒れてる場合じゃない、そんな甘えたこと言ってる場合じゃない、それでもあきらめられなかったトドコンだ。

 なんといいますか。
 わたしはトドのファンなんだなと、再確認させられましたよ。

 あの状態でも、あきらめなかったもん。コンサート行くの。
 つーか、「絶対行くんだ!」という意固地なまでの決意が、わたしを支えていた。

 なんでそこまでボロボロになっていたかの日記はまた日を改めるとして。

 
 素晴らしかった、トドコン『Stylish!』。

 コンサートっていうから、コンサートだと思ってたのよ。
 ふつーに、ひとりが真ん中でえんえん歌ってます、バックダンサーが後ろで踊ってます、途中はMCあってなんかどーでもいい話して客をよろこばせて、またひとりがずーっと歌って……。

 あれ?

 わたしがその日見たものは、ふつのーコンサートではなく、「タカラヅカ」でした。
 これって、タカラヅカだ……。
 それが新鮮な驚きだった。

 コンサートだと思ってた。いや、あきらめていた、とも言う。どーせコンサート。トドひとりが歌ってるのよね、ずーっと。ディナーショーのディナーなしってとこ?
 安いからその方がいっかー。

 ところがどっこい。
 そこにあるのは、「タカラヅカ」だった。まぎれもなく。
 印象としては、ふつーに大劇場でやっているショーの、ミニチュア版。
 トップ男役スターを中心にした、ヅカのもっともヅカらしい世界。
 一緒に出ている宙組の子たちも、名もなきバックダンサーではなく、タカラヅカのスターのひとりとしての役割を果たしている。
 だってちゃんと、彼らのシーンが、見せ場がある。衣装も着替えまくる。
 ストーリーのあるダンスシーンもある。トドロキマフィア組長(ロンリーハート。クールだけど憂いアリ・笑)が、ヘマをやった若いのを制裁として射殺し、その若い男の親友(恋人?・笑)が復讐としてトドロキ組長を刺殺。組長、劇的に死す。……なんて、ヅカのショーではありがちなものを、ちゃーんとやってくれるんだもの。全員スーツにソフト帽の男役だけのダンス。
 トドロキの露出が多いけれど、それはトップスターだってことで納得すれば、ほんとにふつーにショーだった。
 2番手すっしー、3番手はっちゃん。4番手がリキくんかな? トップ娘役はいないけど、まあたぶん、ふーちゃんかしら。
 すっしーの色気は言うまでもないが、愉快だったのは初嶺のはっちゃん。
 もー、キザりまくりー(笑)。
 ものすごい自己アピールでした。カオゆがめまくってのウインク連発。この子、こんなキャラだっけ? 人数少ないのをいいことに、はじけきってる。「わたしを見て! 男役初嶺まよここにアリ!!」と全身で叫んでる。……カオは子どもなんだけどね……。
 

 トド様は相変わらずでした。
 どこまでも轟悠。
 なにひとつ、変わらない。

 変わっていくことがタカラヅカの宿命であり、人の宿命である。
 しかし……。

 変わらないものが、あってもいいと思った。

 ひとつくらいは。
 流転の日々、疲れたときにふと思い出してそのドアを開ける。
 するとそこは、はじめて行ったときと同じ。同じ音楽同じインテリア、同じ笑顔。ほっとして、昔と同じ席に坐る。
 失った時間は戻せないけれど、それを知っていてなお、昔に戻ったような青さとやすらぎを感じてほっと息をつく。肩の荷を下ろす。

 そーゆーのは、必要だなと思った。

 精神状態も関係して、ほぼ全編にわたって泣きながら聴いていたんだが(わたしはなにを見ても聴いてもまず泣くから、涙はあまり関係ない)いちばんキいたのは、『パッサージュ』の曲だな。
 オープニングが、トドのトップになってからの大劇作品メドレーだっんだが。
 『猛き黄金の国』ではなくて『パッサージュ』だった。タイトルはわからんが、中詰めの曲だった。
 ものすごく、好きな曲。
 トドの声の中でいちばん好きな声で歌う曲なのね。そして、作詞がオギーだから、繊細で痛い。
 「おびえた憎しみ抱え」というワンフレーズで、わたしを撃沈した曲だ。
 おびえた憎しみ、って、どんな憎しみだね?
 ……なんかもー果てしなく、かなしい感情じゃないか、それ。人間が抱くなかでも、最高にかなしくせつない感情のひとつじゃないか?
 まさかこの曲をもう一度、生で聴くことができるとは思ってなかったからさー。
 一発で倒れました。マットに沈んだよ、わたしゃ。
 

 や、ほんとにたのしかった。
 しあわせを噛みしめました。

 「好き」ってのは、ものすごいことだと思うよ。
 わたし、前に一度立てなくなったことがあるんだよね。
 なにがどうじゃなく、用があったからしゃがんだの。そしたらそのまま、立てなくなった。
 絶望が押し寄せてきてね。
 その瞬間までまったくふつーだったのに、ふつーに「あら、スリッパがばらばらだわ。揃えなきゃ」ってしゃがんで、スリッパを揃えた。そしたらそのまま、立てなくなった。
 わたしはもうだめだ。もう二度と立てない。
 そう思った。
 絶望っちゅーのは、ああいうもんなんだなと思う。理屈ではなく、脈絡もなく、わたしは絶望した。
 魔が差す瞬間、ての? 反射的に自殺しちゃう人の心境?
 頭はからっぽで、ただ涙だけ勝手に流れていた。
 そのからっぽの頭に、音楽が流れてくる。
 音楽をつけたまま掃除をしていたのね。
 タカラヅカのCDだった。
 ショーのたのしい音楽が流れていてね。
 気が付くとわたしは歌を口ずさんでいた。
 立ち上がっていた。お掃除の続きをはじめていた。歌いながら。
 ……もう立てないと思ったのにね。
 それは、わたしに「好き」があったからだと思う。
 好きなモノがあるから、わたしはなんとかこちらの世界に踏みとどまることができる。
 それはべつに、大したことじゃない。小さな「好き」がいっぱいあって、それらはわたしによろこびをくれる。
 「好き」ってのは、最大限のちからだと思う。才能だと思う。
 生きる、才能。

 トドコンでわたしはまた、確認した。
 わたしの「生きる才能」。
 わたしは生きることが好き。
 この世界にはよろこびがあふれている。
 大好きなものがあふれている。
 トドはそのうちのひとつだ。

 トドが全部じゃないよ。
 そのうちの、ひとつ。

 そのうちのひとつ、がいっぱいあって、わたしはしあわせな人間だと思う。
 わたしには生きる才能がある。
 たのしむ才能がある。

 それはわたしを、救う。

 
 たかちゃんと花ちゃんが来ていた。
 わたしの3列前、最前列だ。おかげでトド様はじめ、キャストのテンションの高いこと。わーい、得したー。
 わたしの席、4列目のドセンターだったからさー、「トド様ひょっとして、わたしのために歌ってる?」という錯覚すら起こるほど、視線来まくるしもー、しあわせ絶頂(笑)。
 スタンディングになるたび貧血のせいでふらついてたけど、昂揚してるもんでぜんぜん平気! いつもなら後ろの人のことが気になって立つのをためらうけど、今回は最前列にたかちゃんがいるから、わたしが立つくらいなによ! てなもんさ。スタンディングだと、わたしとたかこの頭だけがぼこっと出ているのがわかる(笑)。

 好きでよかった。いろんなこと。


 パソコンがフリーズした。
 よくあることだ。
 動画処理を主な任務のひとつにしているMYパソは、とにかく不安定で、買ってからまだ8ヶ月だっちゅーに落ちまくる。
 ……のはもー、あきらめてるけどさ。
 日記書いてるときに落ちるなよーーーっ。
 このサイト、バックアップないっつーの。

 大したことは書いてなかったんだけど、書いてる途中で全文消えたので、いったんフテ寝した。

          ☆

 わたしはささやかなアルバイトを続けている。
 1ヶ月に1度、アンケートを提出する。それで500円の図書券がもらえる。
 とゆーアルバイトだ。

 そこはリサーチ専門の会社で、様々なジャンルの調査を行い、その情報を企業に提供することで糧を得ている、らしい。
 そしてたまたま、わたしにも協力の依頼が来た。
 なんでわたしなの? どっかの懸賞かなんかに応募したときの個人情報が漏れるなりしたのかしら、と危惧して訊ねた。
 向こうが言うには、役所を通して得た個人情報だというんだな、これが。
 一般市民に調査を行うためには、そこの役所に行き、書類を提出し審査を受け、真っ当な調査であることを証明した上で許可を受けるのだそーだ。そこで得たランダムな名簿をもとに、アンケート調査の依頼に来た、と言う。

 ま、難しいことはどーでもいーや。
 要するに毎月アンケートに答えたら500円もらえるのね? いーよべつに。

 そうやってわたしが依頼を受けたアンケートのジャンルは、「化粧品について」だ。
 毎月、購入した化粧品を報告するわけだ。
 A4サイズ16ページからなる冊子に、項目別(ファンデーションとか口紅とかあぶらとり紙とか)に記入する。買った日にち、店名、個数、値段、商品の正式名称、バーコード。
 最初は面倒だったけど、要はその項目にある品物を買ったときにだけその場で記入すりゃいいわけだから、慣れればどーってことはない。
 そして月末に、買わなかったモノの項目にチェックを入れて月が変わったら投函。

 それが8月末から今月にかけて日付の感覚がなくなるほど多忙だったために、このアンケートのことをきれーさっぱり忘れてた。
 催促の電話が来たので、東京へ向かう電車の中で最後のチェックをする。
 買ったのに記入忘れで無記名なのか、買わなかったから無記名なのかを判別するために行う、最後のチェック入れね。
 それをやりながら、またしても思う。
「なんでわたしなんだろ?」
 このアンケートを書くとき毎回思うんだけどさー。ここ2ヶ月はほんと、しみじみ思ったよ。
 だってわたし……化粧しない人なんだもん。

 化粧品はほとんど買わない。
 化粧をしないから。
 肌が弱くてね。だめなんだわ。
 いろいろあってさ、紆余曲折の果てに化粧するのをあきらめたんだ。

 つっても、なにもしないとただのブスだから、最低限のポイントメイクだけはする。眉と目元と口紅と。
 夏は仕方ないから日焼け止めだけは使う。

 基礎化粧品も使ってない。
 無添加石けんひとつだ。なにも塗らない。
 でも肌はきれいだとほめられるぞ。昔、「大人だからお化粧しなきゃ」という固定概念に追い立てられ、いろんな化粧品に頼っていたころよりな。
 髪は無添加の外国製石けんシャンプーとコンディショナーを、わざわざ通販している。石けんシャンプーもいろいろ試したが、今使っているものがいちばんわたしの髪に合うようだ。

 こんな生活だから、化粧品買わないんだよ、ほんと。
 口紅とかマスカラとかを年に1回買うくらいかな。ショートヘアだからシャンプーの減りも少ないしな。
 ダイエット食品もサプリメントも買わない。ダイエットは薬や食事制限ではなく、運動で引き締めたい人間なんだ、わたしは。
 いちおーエコロジーなんかにも興味があるので、歯磨き粉もほんの少ししか使ってないもんでな、これもまた減りが少ない。

 唯一、鎮痛剤だけは定期的に買っている。頭痛持ちだからだ。
 化粧品のアンケートだけど、薬についても記入欄があるんだな。薬局で売っているもの全般、ナプキンやパンストまで記入欄があるのよ。生理用品は買うけど、わたしパンスト穿かないしなー。身長のせいで合うパンストが少なくて、キライなんだわ。
 化粧品についてのアンケートだってのに、わたしが記入するのは毎月1箱買う鎮痛剤と、数ヶ月に1回生理用品についてだけ。
 なんだかなー、悪いなー、こんなんで500円もらって。
 そう思いながらやってたんだけど。

 ここ2ヶ月はさ。
 その鎮痛剤すら前にまとめ買いしちゃったんで、買ってないのよ。

 つまり、なにも買ってない、まったく記入なし。
 すべての項目の「なにも買ってないから書きようがねーんだよ」枠に、チェックを入れる。

 なんでわたしなんだろね?
 他のことならもー少し、記入しようがあるんだけど。
 なんか悪いよーな気がするのよ。
 ここまでなにもせずにお金だけもらってると。

 
 平井堅が『一万人の第九』に参加する。

 いやあ、朝からうれしいニュースだ。

 関西名物、『一万人の第九』に参加しはじめて、今年で何回目かな。佐渡裕氏参加と同時にはじめたの。
 最初の年は、ひたすら感動した。「第九」っちゅー歌のことをなにも知らなかったから、すべてが新鮮だった。
 司会者として俳優の内藤剛志が参加していたのも、よかった。佐渡氏もノリノリで、「新しいことをやってやろう」という野望がきらきらしていた。佐渡さんと内藤さんの掛け合いは、「君ら本職なんやったっけ?」という関西人ならではのものだったし。
 2年目も佐渡&内藤コンビ。見事に「続き物」の構成。おいおい、そんなにふたりして「去年はこうだったよねー」「だから今年はこうしようと思って」とかを全面に出してていいのか? 今年はじめて参加する&見る人たちはわけわかんないぞ、それじゃあ? 読み切りだと思って買った本が、「シリーズの2冊目かいっ、1冊目読んでねーからわかんねーよ、疎外感ありまくりだよ!」って感じ。
 たのしかった。
 ところが。
 3年目は内藤さんが不参加。かわりにどっかのアナウンサーだかタレントだか知らん、どーってことのないおっさんが司会をやった。
 テンション、下がりまくり。
 なんなの、このつまんない構成。お仕着せのトーク。
 佐渡氏のテンションも低く、「仕事だからな」って感じが見える。1年目2年目のあの「オレはやるぜ!」な鼻息はどこへいったの??
 がっかり。

 そして、今年が4年目か。
 また、昨年司会やったおっさんが出てきたらどーしよーかと思ってたんだが。
 とりあえず平井堅が出てくれるのは朗報だ!!
 たのむ堅ちゃん、佐渡さんのテンションをあげてくれ!! あの人、いったん盛り上がったらめちゃ暴走するんだよー、すげーたのしいんだよー。
 2年目なんか、歌っててめちゃ感動したよー。

 つーか。
 単純に、平井堅の歌を生で聴けるのがうれしかったりな(笑)。

          ☆

 今日は3回目の月組公演。

 まいったな、腐っても1列目だわ。
 なんか、よかったのよ、芝居(笑)。これぞ1列目マジック。

 「もう二度とないかも」と思って、ゆーひの足首に注目してました。男役の足首(ストッキング+パンプス)をこの近さで見ることはないだろうから(笑)。

 タイトルのおぼえらないこの芝居、石田作品にしちゃーかなりマシ。とはいえ、突っ込みたい、直したいところがいろいろあって、精神衛生上よくない。なんでここでこーするかなー、くうぅ。ってのの連続。

 タイトルもなあ、「長い冬」の「果てに」だったらまだ理解できたんだけどな。トラウマ医者がそれを乗り越え、自分を取り戻す話ってことで。
 「長い春」だと、なにが春なんだか(恋してねーじゃん、主役医者)わかんねーし、しかも春が「果てに」なったらまずいだろ?
 出会ってから結ばれるまでが長い物語、ちゅー意味のタイトルなんだろうけど、「長い春」が「果て」たらそれ、「破局」じゃん。日本語として。
 タイトル、思い切りまちがってる……。
 わかるけどさ……。「冬」より「春」の方が通りがいいからそうしたんだよね? 単語のイメージがいいから。んでもって「果て」っていうとなんかカッコよさげだもんな。しかも「果てに」ってやるとなおカッコよさげだもんな。
 企画会議で通りやすい名前だな。
 年寄りの好きそうなセンス。
 そして抽象的だから、本編の内容が多少変化しても誤魔化せる。
 だからこんなタイトルなんだよね、石田センセ?

 ショーではわたし、いちばん好きなのは「少年時代」ってシーンだわ……。長すぎる、あきる、と悪評のある、アレ。
 なんか好き。
 あの衣装、あのダンス。
 ケロたちの女装はべつに、どーでもいいの。いるから見ちゃうけど、いなくてもたぶん、いちばん好きなシーン。
 だってあのシーン、気持ち悪くない……?
 「陽気な悪夢」って感じで。
 同じ顔同じ姿の女の子たちが、たんぽぽの綿毛みたいに揺れて弾んで増殖してるのよ? 気持ち悪いよ。 動きもデフォルメされてる感じで。
 そして、その気持ち悪さがツボ。
 悪夢だ。これはいつか見た悪夢の世界だ。と思って、ぞくぞくする。
 いやー、好きだなー(笑)。

 「オリエント・ファンタジー」では、まともにケロちゃん見てた。よそ見せずに(笑)。
 そしたら、海軍将校その他のひとりであるケロちゃんが、オリエントなお嬢さんに恋に落ちる過程がよーくわかりました。うわ、マジ恋に落ちてるのがわかる……。かわいい……。
 ここでのポイントは、ゆーひくんをまともに見ていても、「恋に落ちる」ところは見られないってことでしょうか。どうやらゆーひ将校にとってのオリエント娘は、「遊びの恋」の相手みたいっすね(笑)。
 いやあ、君はそれでいいよ、それでこそゆーひだ(笑)。

 一昨日、ケロがゆーひの頬に触れていたシーンでは、今回はなにもありませんでした。つーことはやはりあれは「ラッキー」なシーンだったってことか……。まあ、あれがアドリブでなく、振りとして決められていたら、それもイヤだしな(笑)。
 しかし今回は、ゆーひの腕をケロが一瞬掴んでいたよーに見えたんだが、わたしの妄想か?

 そして……。
 この公演、きたじままみ氏がやたらめったら目に飛び込んできてこまってます……。なんでこんなにあの人がどこにいるかわかるのかしら。
 雪のまちかめぐる氏と同じ現象です……。まいったよ……。

 

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