みなこちゃんは、主役役者なんだなと思った。

 『うたかたの恋』と同カテゴリのヒロイン、『情熱のバルセロナ』のロザリア@みなこ。
 知能や自我はなくてヨシ、むしろない方がヨシ、「美貌・可憐」とい記号さえあればヨシ、という実にものすげーヒロイン。
 下手な知恵や小賢しさがあるとウザくなる、いっそ幼児程度のメンタルである方が哀れさを誘う、「ヒロイン」というだけの記号キャラ。

 みなこちゃんは美貌と可憐さという、ヅカ娘役の基本スキルを持っていない特異な娘役。
 が、スキルがないから演じられないというわけではないのが、舞台のすごいところだ。

 可憐なヒロインでしたとも、ロザリア@みなこ。

 主人公のフランシスコ@水くんには、残念ながら感情移入出来なかったのだけど、ロザリアにはOKっす。
 いやあ……アホな男に惚れられて、大変だったね!(笑)

 フランシスコへの想いを断ち切るために、安全牌の当て馬@キングを利用しようとするのは浅はかだが、それもあの時代の女性として自然な選択だったろうし。
 あのまま善良当て馬くんと結婚していても、きっとふつうに幸せな家庭を築いただろう、ちゃんと夫を愛して。

 ロザリアが自分の恋の成就より、いつもフランシスコの無事だとか幸福を願っているのがいい。
 色ボケのフランシスコが、自分の情欲と恋の成就しか考えていないっつーのにね。

 主人公に一目惚れされるところの説得力は、ごめん、あまりないんだが、その後の彼女の行動ゆえに「愛すべき少女」だと思える。
 恋する相手のために尽力し、犠牲を払う覚悟のある女の子だから。

 フリフリドレスの下から垣間見える、意志と決意の深さ、骨太な力強さに、ああ、この子好きだなー、と思える。
 ロザリアの言動はとてもリアルだ。
 記号みたいなヒロインなのに、そこにこれだけ血肉を感じさせるのは、みなこちゃんの持ち味なんだろうな。

 ろくに出番もなかったアニス@『凍てついた明日-ボニー&クライドとの邂逅』を、ヒロインにまで見せてしまった、あの感じ。
 彼女の一代記から、そこだけ切り取ったかのような、濃密な背景感。脚本以上のドラマを持っていると感じさせる芝居をする、主役役者なんだなー。
 それはすごいと思うけど、……でも、ヅカのヒロインにそーゆー部分が必要かというと、ぶっちゃけ首傾げるしな。記号を記号として演じ、華と美貌だけで免罪符もらうのが、タカラヅカの娘役に求められる役割のひとつだから。

 
 反対に、リンダ@かおりちゃんはやっぱり、タカラヅカの娘役であり、ヒロイン役者なんだと思う。
 公爵夫人リンダは、「娘役」ではなく、大人の女役。娘役の範疇を超え、娘役スキルを捨てる覚悟でのぞまないといけない役。

 影の主役ってゆーか、どっから見てもリンダ主役じゃん?な作品だからこそ、かおりちゃんの持つ華やかさと美貌、真ん中オーラが活かされていた。
 すごくかっこいい大人の女っぷりで、「かおりちゃん素敵、よかったー!」と喝采する傍ら、それでもやっぱりこのリンダ役としては、ナニか違ったんじゃないかなという気はする。

 マダム・ヴォルフ@『エリザベート』でも感じたけれど、かおりちゃんってほんと、汚れ役似合わないなー(笑)。
 太陽と月でいえば、なにをやっても基本太陽で、月ではないというか。
 強く、真っ直ぐで、華やか。
 そして、若い。
 学年的に大人の女性を演じておかしくないんだが、そして芝居の出来る人だから十分大人の女性も演じられるんだが、若い女性になってしまい、大人というか、おばさんにはならない。役の年齢がおばさんでも、魂に若さを持った女性になる。
 少女しか演じられないロリータな持ち味というわけではまったくなく、ドラマのヒロインあたりの女の子になってしまう。

 美貌と華と歌唱力があり、ヒロイン系しか似合わない太陽系持ち味……ほんと、ヅカの路線娘役に必要なモノを全部備えているんだけどなー。だからこそかえって、別格スターとしては立ち位置が難しいというか、役を選ぶなあ、と。

 みなこちゃんとかおりちゃんの役が逆だったら、なかなかどーして面白い芝居が見られたんではないかと思う。

 
 ところで、ルーシーちゃんの、最大級の正しい使い方を見たっ!(笑)

 えー、その昔雪組で、『ホップ・スコッチ』という、どーしよーもない駄作があった。
 なにがどうじゃない、ほんとどーしよーもないレベルの哀しみ作品なんだが、この作品の哀しさを確実にひどくする要因のひとつに、「ルーシー」という女の子がいた。
 ただでさえ意味のナイつまらない話なのに、そのつまらない本筋すらをぶった切って、ルーシーという女の子が場面をもらって独壇場。
 ぽかーん……。
 しかもこのルーシーちゃん、感動的なほどに、棒読み。

 ストーリーをぶった切って流れを止めて、ストーリーにまったく無関係なルーシーちゃん。
 棒読み異次元感覚なルーシーちゃん。

 ルーシーちゃんが出てくると、芝居が止まる。空気が止まる。流れが止まる。
 すばらしい破壊力だ、ルーシーちゃん!!

 それ以来、ルーシーちゃんは、ルーシーちゃん。名前はおぼえてなくても、彼女が舞台上で声を発すればわかる、「あ、ルーシーちゃんだ!」
 花組にいたりおんちゃんとか、現花組の姫花ちゃんとかと同じ。とにかく、どんな混雑したモブに混ざっていても、喋ると「あ、りおんちゃんだ」とか「あ、姫花だ」とか一瞬でわかる、そーゆー女の子。
 共通項は、みんなとっても美貌だってこと。そして、どんだけ美貌でも、ここまで芝居がアレだと大きな役はつきにくいということ。

 えー、そのルーシーちゃんもすっかり上級生。てか、雪組では上から数えて数人目の娘役だ。大人の女役が回ってくる……というか、やってもらわなきゃ困る学年になった。
 相変わらず美貌はすばらしいので、あとは芝居をなんとか「ルーシーちゃん」から脱して欲しい……脱することは不可能でも、ちょっとは変化があると助かるな、というルーシーちゃん。
 いやその、何年経ってもルーシーちゃんなところを愛でているんですけどね(笑)。

 今回、そのルーシーちゃんが「ルーシーちゃん」ぶりを、遺憾なく発揮!!

 とことんKYな、美貌なだけの大公妃。
 空気読まずに登場して、空気読まない奇声を発し、周りをしらーっとさせて、でもそんなことすらなにも感じずマイペースに退場する。
 
 うっわー、ルーシーちゃんだ。すげーすげールーシーちゃんぶりだっ。

 杏奈ちゃんの、もっとも正しい使い方っ! 演出家GJ!
 ツボ入りまくりました。

 ルーシーちゃんはルーシーちゃんだからいいんですよ。もうソレは芸風ってやつだから、貫いてくれていいよ。

 ほっこりしました(笑)。

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