少年は「夢」の中。@ロジェ
2010年6月25日 タカラヅカ 予備知識は入れていない。
が、復讐モノだと聞いた。実際、幼い頃に家族を殺され、その復讐のためだけに生きる男の物語だった。
水夏希退団公演『ロジェ』初日観劇。
正塚晴彦が、水夏希のために書き下ろした新作。ハードボイルド、男役の集大成、水夏希をかっこよく見せることに焦点を合わせた作品……。
スーツ姿の水しぇんが、めちゃくちゃかっこいいっす。それはたしか。太鼓判。
でも、キャラとストーリーは(笑)。
いやはや。
ほんっとに、水しぇんアテ書き作品だった。
復讐モノですよ。ドシリアスですよ。「あの男をこの手で殺すために今日まで生きてきた。復讐のためならどんなことでもする」系の話ですよ。
なのに。
主人公ロジェ@水くんは、めちゃくちゃ真面目な常識人だった。
ふつー復讐モノっつったらだ、暗黒街に身を沈めたり、さんざん手を汚し、目的のためには手段を選ばず、暗く歪んでたりするもんだと思うんだ。
なのにロジェくんが選んだ道は。
「悪いヤツに復讐するために、ボクはおまわりさんになるっ!!」
ナニその健全な思考回路?!(笑)
……正確には、インターポールの刑事なんですけどね。外人部隊→情報部→ICPOだそうです。
非合法組織で手段選ばず、ではなく、あくまでも正攻法にお上のもとで犯人探し。
理不尽に大切な人を殺された過去により、なんかとっても「悪を憎む、正義の人」として開花。お役所仕事しかしないエライさんと熱血にぶつかってみたり。
ドシリアスな復讐モノって聞いて、殺し屋とかダークサイドの水しぇんを想像していたわたしが浅はかだった、そーだよ、水先輩にアテ書きしてあるんだ、同じ復讐モノでも殺し屋だのマフィアだののわけないじゃん。ズバリ、公務員モノですよ(笑)。
第二次世界大戦終息間際、とある家族が殺された。ひとり生き残ったロジェは、育ての親のバシュレ@まやさんと共に、犯人の男シュミット@ヲヅキを追っている。
家族殺害から24年経っているそうな。ロジェさんいくつだろう……30代? そのわりに思考回路はかなり若い。
もともと富豪なのかな、かわいいメイドさん@あゆちゃんのいるお屋敷に住んでいる。マメ知識・ロジェさんの朝食は大変豪華。きっと昼食も夕食も、豪華だと思われる。
そんなにお金持ちなら、お金の力で闇社会に働きかけて、犯人探しすればいいのに……と思わないでもないが、アツいはぁとを持つロジェはそっち方面には行かない。彼は正義の刑事なのだ。
復讐相手は戦犯絡みだってことで、ロジェはナチス関係者を追っている。その過程で、戦犯逃亡組織を追う特殊機関の調査員レア@みなこと出会うが……まあ、ぶっちゃけどーでもいい感じ? ついでに、その過程でパリ市警の刑事リオン@キムと協力したりするんだけど、ぶっちゃけどーでもいい感じ?
真面目なロジェさんは、ひとつのことしか考えられないんだ。
「犯人のシュミットを見つける!」と決めて24年。どうも、他のことは考えられないらしい。
女にも興味ないし、友だちもいらないらしい。
レアはロジェに会ってからなんか服装のテイストが変わったり、どうも彼を意識しているようなんだけど、ロジェ、気にしてないし。
リオンはロジェのこと好きみたいだけど、ロジェは仕事上のつきあい以上の興味を、リオンにはまったく持っていないようだし。
ロジェが愛してるのって、家族代わりのまやさんだけ?!(役名で言いましょう)
真面目で熱血一直線。目的のためにがむしゃら。基本的にいい人。人情家。……でも、誰のことも好きじゃない。
……熱烈に恋愛している水しぇんとか、友情めらめらな水先輩が見たかった、り、したんだが。それは『マリポーサの花』でもうやったから、今回はあえてスルーしたのかな。
しかし、最後まで恋愛ナシ、友情ナシですか。
舞台はいきなりブエノスアイレス(笑)。や、予備知識ナシなので、いきなりブエノスアイレスと言われ、吹き出した。またしてもブエノスアイレスか! ハリー!!(笑)
ロジェの人捜しはとんとん拍子で進んで、無事に宿敵シュミット発見!
どんだけ悪人だ!と思っていたシュミット医師は実はめっちゃいい人で、ついでにヒゲが素敵なナイスミドルで、かわいい看護師@みみちゃんが「先生を撃たないで!(涙)」とかゆってるし。
復讐することだけを目的に生きてきたロジェさんですが……えーと、ネタバレにもならんよな、みんな最初からわかって観てるよな、悪人に復讐するためにおまわりさんになる思考回路の健全少年ですよ、もちろん、撃てませんとも。
家族を殺した犯人に復讐する、というのは、ロジェ少年の24年来の「夢」だったんです。
健全でまっすぐなロジェさんですから、それは鎖とか檻とかですらなく、「夢」というプラス方向のモノだったんです。身を汚したりせず、正義の刑事やってるわけですから。
30代になってよーやく彼は、子どもの頃の夢に決着をつけ、新しい人生を送る決意をしたのでした。
……てことで、最後はなんかやたら前向きっつーか、キラキラさわやかなキャスト全員のお見送りソング。
旅立つロジェを祝福するがごとく。
とまあ、ほんっとーにひとりの男の物語で、ロジェの復讐の起承転結しか、描かれていない。
恋愛は? 友情は?
真面目で融通きかないもんで「オレは復讐に生きるっ」と思い込んだら最後、他にナニも考えられなくなっちゃって、そのままうっかり24年過ごしちゃったピュアボーイ(30過ぎてるけど)。
「他のこと考えていいんだよ」となったラストシーンからはじめて、周囲をちゃんと見回したっぽい。
彼が恋愛するのも、親友を得るのも、すべてはこれから。
……って、芝居終わっちゃいましたけどっ? 正塚先生、続編はどこで書く気ですか??
レアのことも、ちゃんと考えたら好意を持てた、のかもしれない。いや、わたしにはよくわかんなかったが、実は好きだったのかも、しれない。正塚的にはあれで恋愛を描いたつもりなのかもしれない。(せんせ、ちょっとそこ坐ってください、恋愛とヒロインの描き方について語り明かしましょう)
リオンのことは、実はけっこー好きなのかもしれない。でも現時点でロジェは気づいてない。
ふたりとの関係は、あくまでも「これから」だ。
今のままじゃ、なにも「無い」。
ロジェはあまりに自分のことしか考えてない。幼い子どもが自分の都合しか考えられないように。
彼はまだ、社会生活をまともに送れていない。「他人」と関わることが出来ていない。彼の精神世界には、「自分」と「家族(死んだ家族と、育ての親のまやさん)」しかない。
小学校で学ぶ人間関係を得られていないまま、30過ぎてしまったらしい。
家族が殺されたときの年齢で、止まってしまっているのかもしれない。
「夢」だけに一途に、まっすぐに。生真面目に、堅物に。
そんな状態の男……就学以前の幼児が、ランドセル背負って「家族以外の、はじめての社会」に足を踏み出す、それがラストシーン。
タカラヅカという時の止まった花園を卒業する人には、ある意味相応しいネタなのかもしれないが。
水しぇんにアテ書きして、こんな「自分探し」「男の子の成長物語」を描く正塚すげえな。
少年のまま30男やってるロジェがかわいいっつーか、そのくせ表面的には「復讐を胸に、ヨゴレタオトナになったこのオレ」的格好付けに満ち満ちていて(笑)、いろいろツボですとも。
が、復讐モノだと聞いた。実際、幼い頃に家族を殺され、その復讐のためだけに生きる男の物語だった。
水夏希退団公演『ロジェ』初日観劇。
正塚晴彦が、水夏希のために書き下ろした新作。ハードボイルド、男役の集大成、水夏希をかっこよく見せることに焦点を合わせた作品……。
スーツ姿の水しぇんが、めちゃくちゃかっこいいっす。それはたしか。太鼓判。
でも、キャラとストーリーは(笑)。
いやはや。
ほんっとに、水しぇんアテ書き作品だった。
復讐モノですよ。ドシリアスですよ。「あの男をこの手で殺すために今日まで生きてきた。復讐のためならどんなことでもする」系の話ですよ。
なのに。
主人公ロジェ@水くんは、めちゃくちゃ真面目な常識人だった。
ふつー復讐モノっつったらだ、暗黒街に身を沈めたり、さんざん手を汚し、目的のためには手段を選ばず、暗く歪んでたりするもんだと思うんだ。
なのにロジェくんが選んだ道は。
「悪いヤツに復讐するために、ボクはおまわりさんになるっ!!」
ナニその健全な思考回路?!(笑)
……正確には、インターポールの刑事なんですけどね。外人部隊→情報部→ICPOだそうです。
非合法組織で手段選ばず、ではなく、あくまでも正攻法にお上のもとで犯人探し。
理不尽に大切な人を殺された過去により、なんかとっても「悪を憎む、正義の人」として開花。お役所仕事しかしないエライさんと熱血にぶつかってみたり。
ドシリアスな復讐モノって聞いて、殺し屋とかダークサイドの水しぇんを想像していたわたしが浅はかだった、そーだよ、水先輩にアテ書きしてあるんだ、同じ復讐モノでも殺し屋だのマフィアだののわけないじゃん。ズバリ、公務員モノですよ(笑)。
第二次世界大戦終息間際、とある家族が殺された。ひとり生き残ったロジェは、育ての親のバシュレ@まやさんと共に、犯人の男シュミット@ヲヅキを追っている。
家族殺害から24年経っているそうな。ロジェさんいくつだろう……30代? そのわりに思考回路はかなり若い。
もともと富豪なのかな、かわいいメイドさん@あゆちゃんのいるお屋敷に住んでいる。マメ知識・ロジェさんの朝食は大変豪華。きっと昼食も夕食も、豪華だと思われる。
そんなにお金持ちなら、お金の力で闇社会に働きかけて、犯人探しすればいいのに……と思わないでもないが、アツいはぁとを持つロジェはそっち方面には行かない。彼は正義の刑事なのだ。
復讐相手は戦犯絡みだってことで、ロジェはナチス関係者を追っている。その過程で、戦犯逃亡組織を追う特殊機関の調査員レア@みなこと出会うが……まあ、ぶっちゃけどーでもいい感じ? ついでに、その過程でパリ市警の刑事リオン@キムと協力したりするんだけど、ぶっちゃけどーでもいい感じ?
真面目なロジェさんは、ひとつのことしか考えられないんだ。
「犯人のシュミットを見つける!」と決めて24年。どうも、他のことは考えられないらしい。
女にも興味ないし、友だちもいらないらしい。
レアはロジェに会ってからなんか服装のテイストが変わったり、どうも彼を意識しているようなんだけど、ロジェ、気にしてないし。
リオンはロジェのこと好きみたいだけど、ロジェは仕事上のつきあい以上の興味を、リオンにはまったく持っていないようだし。
ロジェが愛してるのって、家族代わりのまやさんだけ?!(役名で言いましょう)
真面目で熱血一直線。目的のためにがむしゃら。基本的にいい人。人情家。……でも、誰のことも好きじゃない。
……熱烈に恋愛している水しぇんとか、友情めらめらな水先輩が見たかった、り、したんだが。それは『マリポーサの花』でもうやったから、今回はあえてスルーしたのかな。
しかし、最後まで恋愛ナシ、友情ナシですか。
舞台はいきなりブエノスアイレス(笑)。や、予備知識ナシなので、いきなりブエノスアイレスと言われ、吹き出した。またしてもブエノスアイレスか! ハリー!!(笑)
ロジェの人捜しはとんとん拍子で進んで、無事に宿敵シュミット発見!
どんだけ悪人だ!と思っていたシュミット医師は実はめっちゃいい人で、ついでにヒゲが素敵なナイスミドルで、かわいい看護師@みみちゃんが「先生を撃たないで!(涙)」とかゆってるし。
復讐することだけを目的に生きてきたロジェさんですが……えーと、ネタバレにもならんよな、みんな最初からわかって観てるよな、悪人に復讐するためにおまわりさんになる思考回路の健全少年ですよ、もちろん、撃てませんとも。
家族を殺した犯人に復讐する、というのは、ロジェ少年の24年来の「夢」だったんです。
健全でまっすぐなロジェさんですから、それは鎖とか檻とかですらなく、「夢」というプラス方向のモノだったんです。身を汚したりせず、正義の刑事やってるわけですから。
30代になってよーやく彼は、子どもの頃の夢に決着をつけ、新しい人生を送る決意をしたのでした。
……てことで、最後はなんかやたら前向きっつーか、キラキラさわやかなキャスト全員のお見送りソング。
旅立つロジェを祝福するがごとく。
とまあ、ほんっとーにひとりの男の物語で、ロジェの復讐の起承転結しか、描かれていない。
恋愛は? 友情は?
真面目で融通きかないもんで「オレは復讐に生きるっ」と思い込んだら最後、他にナニも考えられなくなっちゃって、そのままうっかり24年過ごしちゃったピュアボーイ(30過ぎてるけど)。
「他のこと考えていいんだよ」となったラストシーンからはじめて、周囲をちゃんと見回したっぽい。
彼が恋愛するのも、親友を得るのも、すべてはこれから。
……って、芝居終わっちゃいましたけどっ? 正塚先生、続編はどこで書く気ですか??
レアのことも、ちゃんと考えたら好意を持てた、のかもしれない。いや、わたしにはよくわかんなかったが、実は好きだったのかも、しれない。正塚的にはあれで恋愛を描いたつもりなのかもしれない。(せんせ、ちょっとそこ坐ってください、恋愛とヒロインの描き方について語り明かしましょう)
リオンのことは、実はけっこー好きなのかもしれない。でも現時点でロジェは気づいてない。
ふたりとの関係は、あくまでも「これから」だ。
今のままじゃ、なにも「無い」。
ロジェはあまりに自分のことしか考えてない。幼い子どもが自分の都合しか考えられないように。
彼はまだ、社会生活をまともに送れていない。「他人」と関わることが出来ていない。彼の精神世界には、「自分」と「家族(死んだ家族と、育ての親のまやさん)」しかない。
小学校で学ぶ人間関係を得られていないまま、30過ぎてしまったらしい。
家族が殺されたときの年齢で、止まってしまっているのかもしれない。
「夢」だけに一途に、まっすぐに。生真面目に、堅物に。
そんな状態の男……就学以前の幼児が、ランドセル背負って「家族以外の、はじめての社会」に足を踏み出す、それがラストシーン。
タカラヅカという時の止まった花園を卒業する人には、ある意味相応しいネタなのかもしれないが。
水しぇんにアテ書きして、こんな「自分探し」「男の子の成長物語」を描く正塚すげえな。
少年のまま30男やってるロジェがかわいいっつーか、そのくせ表面的には「復讐を胸に、ヨゴレタオトナになったこのオレ」的格好付けに満ち満ちていて(笑)、いろいろツボですとも。