わたしは、音月桂の主役が見たかったんだ、と、最近とみに思う。

 キムくんのことは昔からその実力を買っていたけれど、それにしても彼が主役を張ったときの能力はすごいなと。
 駄作を引き上げる力。バラバラな断片でしかないものを、力技でひとつにまとめ、見せてしまう力。

 出番も見せ方もなにもない、脇役だと能力を発揮できない。
 ほんの端役で勝手にソレをやったら、ただの舞台荒らしだ。
 ある程度の真ん中の役でないと。

 また、ガチガチにまとまった、フリースペースのない役だと、主役だとしてもそれ以上ヘタに広げられない。
 勝手にソレをやったら、ただの空気読まない人だ。

 主役か、それに近い比重の役で、役者の個性や表現力にゆだねられている作品において、音月桂は彼独自の魅力を発揮する。
 脚本にあるだけのモノではない、もっと深い、大きいモノを作りはじめる。

 たとえば、新人公演『スサノオ』。
 本公演とはまったく違った、キムの『スサノオ』という物語がそこにあった。

 たとえば、ぶっ壊れ作品『さすらいの果てに』。
 もうひとりの人が先に同じ役、同じ作品をやっていたときは、全編大爆笑のおバカ作品でしかなかったのに、キムが演じるとふつーにアリなレベルの作品に立て直された。

 たとえば、いろいろなオギー作品。
 キムがその個性のままに野蛮な毒を全開に、いろんなキャラクタを表現し、物語を多面的に盛り上げていた。

 そして彼がトップスターになって。
 『ロミオとジュリエット』『黒い瞳』『H2$』……そして、『仮面の男』と、キムはその「真ん中の演技力」を自在に見せつけている。
 『ロミジュリ』と『黒い瞳』は作品もキャラクタも良いのだけど、それにしたってキムくんが演じることでさらにその役の内面が膨らみ、わたしの想像力を刺激した。
 『H2$』も『仮面の男』も作品もキャラクタもまーーったく好きじゃないけれど、キムくんだから作品を置いておいて、彼単体では愛すべきキャラを見せてくれている。

 わたしにもっと、主役の音月桂を。
 彼が創る物語を、キャラクタを見たいんだ。

 作品自体のデキはともかくとして、『ベルばら』や『花供養』や『やらずの雨』みたいなガチガチに縛りのあるキャラクタじゃダメ。
 構成的にもぶつ切りっちゅーか結構荒い作りで、その空白部分をキムが埋め、膨らませることのできる作品で、根っこに流れるテイストがわたし好みだったらいいなあ、と。

 で。
 来年の雪組のラインアップが発表された。
2011/10/11

2012年 公演ラインアップ【宝塚大劇場、東京宝塚劇場】<3月~5月・雪組『ドン・カルロス』『Shining Rhythm!』>


10月11日(火)、2012年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、宝塚大劇場、東京宝塚劇場の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。

雪組
■主演・・・(雪組)音月 桂、舞羽美海

グランド・ロマンス
『ドン・カルロス』
~シラー作「スペインの太子 ドン・カルロス」より~
脚本・演出/木村信司

16世紀のスペインを舞台に、スペイン王子ドン・カルロスと王子を愛する女官レオノールとの恋を軸に、かつてドン・カルロスの婚約者で今ではドン・カルロスの父親フェリペ2世と結婚したイサベルをめぐる父子の思い、フランドル(オランダ)の解放を訴える友人とドン・カルロスとの駆け引きなどが、ドラマティックに展開する作品です。愛と政治をめぐる葛藤を通して、一人の青年が成長する姿を描き出します。

グランド・レビュー
『Shining Rhythm!』
作・演出/中村一徳

「光」「影」「ときめき」「喜び」、そして「情熱」「躍動」をテーマに、パワフルかつ幻想的に織り成す、ダンシング・ショー。雪組のショースター、ダンサー、シンガーたちが、心弾むリズムに乗せて、輝く舞台をお届けします。

 キムシン、キターーー!!

 構成的に穴だらけ、でもアテ書きでキャラのハマリっぷり半端ねえ、キャストにいろいろ丸投げで魅力全開底上げさせるさせる作家が来ましたよ!

 キムシン・オペラは大好物です。
 どれももれなく泣けます。

 そして、キムシン作品のキムは大好き。
 『スサノオ』本公演のヲカマちゃんはともかくとして(笑)、新公のスサノオ。新公の演出もキムシン自身だもんね。
 加えて、わたしの大のお気に入り作品『君を愛してる』のフィラント!! ああフィラント。今思いだしても心震える、大好きだ。やっぱりいちばん好きかも……! ロミオもニコライも好き過ぎるんだけど、フィラントも甲乙付けがたい。

 またしてもキムシンでキムくんが見られるなんて。わーいわーい。
 ああいっそ、『炎にくちづけを』レベルのモノが観たい。
 あんだけ衝撃的なモノはそうそうナイからなー(笑)。
 初日に満員の大劇場で人混みの後ろから立ち見して、その衝撃にしばらくぼーぜんとしてたもんなー。友人のkineさんと「すげーもん観た」と頷き合い……。

 キムシンは『炎にくちづけを』が最高濃度で、あとは薄くなる一方。つまんない。
 あれくらい濃ゆいキムシンが観たいよー観たいよー観たいよー。

 でもって、お願いキムシン。
 甲斐正人先生と組んでください。

 キムシン・オペラには甲斐せんせの音楽が必要なんだってば!!
 長谷川せんせの曲はきれいだけど退屈なのよー、地味なのよー。
 『虞美人』や『バラの国の王子』だって、甲斐せんせの曲ならもっと違っていただろうに……。

 もう甲斐せんせとは組まないのかなあ。『鳳凰伝』も『王家に捧ぐ歌』も『スサノオ』も『炎にくちづけを』も『暁のローマ』も『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』も、甲斐せんせだからこそのパンチのある音楽だったのにー。
 歴史に残る珍曲(笑)だって、甲斐せんせならではだったのに。

 カムバック、黄金コンビ。


 ショーの中村Bには特にナニも……。
 どーせいつもの中村B。

 だけど、「上から順番、1、2、3」の中村Bなら、まっつを3番手扱いしてくれるのかなあ。
 サイトーくんはまっつが(暫定であろうとも)3番手だって知らなかったみたいだし……(笑)。


 同時に星組さんの3月公演が発表された。すずみんバウとれおんくんのコンサート、どちらも楽しみっす。
 わたしの中でスズキケイ株が暴落しているので、バウの演出がまたしてもスズキくんだっつーだけが不満かな(笑)。

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