『おかしな二人』千秋楽。
 かわいらしさをヒートアップさせて、幕は下りた。

 過剰なアドリブでぐちゃぐちゃになることもなく、ノリノリの会話やアクションが飛び交い、盛り上がって終幕した。
 キャラクタたちはさらに息づき、テンポよく、同じ板の上で全力っぷりを見せてくれた。

 たのしかったー!!

 みっきーのいじられっぷりがかわいかったなあ。なんかますますみっきー好きだわー(笑)。

 マヤさんの「マイウェイ」はさらにしみじみと響きわたり。
 客席すすり泣き状態だし。
 わたしはフィナーレ開始でトド様登場時から泣きまくってましたが。だってもお、トド様愛しすぎる。


 今さらだけど、この作品が可愛く感じられることについて、考えてみる。

 仲間たちの溜まり場になっている、オスカー@トドの部屋。
 彼は売れっ子のスポーツ記者で、部屋が8つもある高層アパートでひとり暮らし。それじゃ必然的に溜まり場になるわな。 集まる仲間たちは職業も経済状況も年齢も、そして性格や価値観も様々。だけどポーカー好きという共通の趣味があるから盛り上がれる。
 自分と仲間たちに照らし合わせても、納得の設定。
 オスカーみたいな境遇でかつムラの近所に住んでる子がいたら、ヅカ友たちの溜まり場になっているのが目に見える。なにかっちゃー集まって上映会とかやってるの(笑)。年齢も職業もファッションセンスもまったくバラバラの女たちが集まってきゃーきゃーやれるなんて、共通の趣味(ヅカ)がないとありえないわー。

 そんな部屋に住んでいられるだけの高給取りなんだけど、オスカーの生活はびんぼー。
 だらしない性格で、稼いだお金は酒にギャンブルに湯水のごとく使っちゃう。
 あああ、この辺もリアル、どんだけ高給取りになっても、全部ヅカに使っちゃってびんぼー生活している自信あるわ、わたし!(情けない自慢はよせ)

 部屋は汚れまくり、服装だっていい加減。
 もちろん、奥さんも愛想をつかして出ていった。息子の養育費の支払いに追われる日々。
 でも彼は仲間たちとそれなりに楽しく暮らしている。

 そんなある日、ポーカー仲間のひとり、フィリックス@マヤさんが奥さんから三行半を突きつけられ、オスカーの部屋に転がり込んできた。
 もともと友だちだけど、週に一度趣味の集まりで会うのと、一緒に暮らすのは違う。潔癖性のフィリックスはいー加減なオスカーの神経を苛つかせる。
 生活スタイルをめぐってのふたりの攻防戦が物語のメイン。

 この物語がいやな感じにならないのは、成り行きで一緒に暮らすふたりの、転がり込んできた方が、押し掛けてきたわけじゃないってことが大きいな。
 わたしはドラマ好きでドラマもかなりの数見ているんだけど、わたしの逆ツボ、これをやられたらそのドラマを見る気がなくなる、っていうシチュエーションに「押しつけ同居」がある。
 ひとり暮らしを満喫している主人公のところへ、強引に押し掛けて居着いてしまう自分勝手なトラブルメーカーの肉親、親友、元恋人や元配偶者、郷里の人。勝手にそんなことをして平気な性格の人だから問題起こしまくりで、それに振り回される主人公をおもしろおかしく描くってやつ。でも憎めないところがあって主人公が助けられることもありほっこり、とか。
 この発展系で更に嫌いなのが、子どもや赤ん坊を押しつけていくこと。子どもなんか育てたことのない独身の主人公が、子ども相手にわたわたする様をおもしろおかしく描くってやつ。でもなにしろ子どもネタなのですぐほっこりとかハートフルになって……とか。
 役に立つことがあろうが、小さいからかわいかろうが、迷惑は迷惑なんじゃ、押しかけるな押しつけるな。やっていいことと悪いことがある、とそのシチュエーションだけでわたしには無理。楽しめない。

 しかし『おかしな二人』は、独身貴族のオスカーが、行く当てのないフィリックスを口説く、「一緒に住もう」と。フィリックスが辞退するのを半ば強引に口説く。
 居候が強引にやってきたわけじゃないから、次の場面で同居を迷惑がるオスカーは勝手なんだけど、そこがリアルでいい。

 オスカーがフィリックスを好きなことも、失意のまま行く当てもない彼を心配したことも、友だちとの同居にわくわくしていたことも、全部本当。でも、実際暮らしてみたら、嫌なことが多かった、と。それでブチ切れるオスカーは勝手だけど、仕方ないよ~~、あり得るよ~~。
 オスカーの責めに対し、隷属を宣言するフィリックス。するとこれまたオスカーは前言を撤回、「自分がいつも正しいとは限らないから、盲目的に従わなくてもイイ」とすねたように返す。
 これが。こっ、れっ、がっ、すごく好き。

 オスカーが、イイ奴なの。ほんとに愛すべき奴なの。
 可哀想な友人を口説いて一緒に住むことにして、でも勝手に「家主はオレだ」とブチ切れて、「じゃあすべて家主様の言う通りにする」と言われれば「オマエが正しいことだってあるんだから、すべてオレの言う通りにする必要はない」と言う……この流れが好き。
 ほんとによくあるパターンだと、前述のように居候が勝手に押しかけて来たわけだから、家主である主人公がキレるのは当然、なのに居候はさも被害者ぶるし、売り言葉に買い言葉で主人公も「家主はオレだ、すべてオレに従え!」と理不尽発言、ますます居候が正義、主人公が悪になり、結局居候がそのまま居座る口実に……みたいな流れになる。
 わたしの逆ツボとはチガウ、自然な流れなの。
 オスカーにもフィリックスにも欠点はある。それでも、歩み寄り、妥協点を探りながら暮らしている。
 それはとてもリアルで……愛しいこと。
 ひととひとが、他人同士が、互いの違いにとまどいながら摩擦を生みながら、それでも手を取り合おうとする姿。
 それはとても、愛しい。

 そのあとオスカーとフィリックスは、致命的な大喧嘩をし、同居解消に至るわけだけど。
 どちらも聖人でも悪人でもない、等身大のダメ男。いや、ふつうの、人間たち。
 修復不可能なくらい傷つけ合っても、結局オスカーはフィリックスを心配するし、フィリックスもオスカーを好きなんだろう。

 ラストは互いが互いを認め、影響し合い、それぞれが良い方向へ変化していく。
 ああもお、なんてあたたかいんだろう。作品を通しての、「人間」を見つめる目が。

 オスカーの誰彼なく口説きまくるチャラ男ぶりがステキだし、そんな彼が、妻と離婚した当初のことを話す哀しさは胸に痛いし。
 ポーカー仲間たちも、口ではいろいろ言っていても、みんなとてもやさしい。友だちなんだ、マジで。

 出てくる人々がみんなみんな、リアルにやさしい。
 「やさしい」が基点なのよ、そこから発展しているのよ。
 だからこんなに、やさしい物語になる。


 ミサノエールが彼らしさを発揮しつつ縦横無尽に暴れ回る、このあったかい作品で主演できたことがうれしい。
 トド様が彼らしさを超えて新しい顔を見せて、このやさしい作品で主演できたことがうれしい。

 ほんとに、かわいくて大好きだ。愛しくて、大好きだ。

 千秋楽、いつまでも手を叩き続けた。
 キャラクタのせいか衣装のせいか、いつものトド様ではアリエナイ、おかしな腰の揺らし方で踊り続けるトド様に、泣き笑いしながら。

 しあわせな時間だった。

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