『仮面の男』東宝初日に行ってきました。

 語りたいことは多々あれど、とりあえず、爆笑したことを書きます。

 三銃士、ひでえ!!

 あまりのことに、声を殺すのに必死でした。
 さすが宝塚歌劇団、変更してなおものすごいことにするのか! ナイス!(笑)

 えーと、まず、ムラ版三銃士の酷さについて、おさらいしておきます。

 三銃士はフィリップを「道具」として扱っている。
 彼らの目的はルイの暗殺であり、フランスのこともフィリップのこともどーでもいーと思っている。
 だからフィリップを牢獄から救出し、その恩を売って無理矢理命令。
 泣いて嫌がるフィリップを、ルイの替え玉として王宮へ送り込む。
 ばれたらフィリップが殺されることは必至、なのに「ばれたらそのときだ(いい笑顔)」という冷酷さ。

 これは、三銃士がフィリップをどう思っているか、まったく描かれていないために起こったこと。
 アトスの弟がルイに殺された、アトスは復讐を誓う、復讐のためにフィリップを救出、ルイとフィリップを入れ替える……これだけの出来事しか描かれていない。
 描かれたことだけを見れば、フィリップは三銃士の「道具」でしかない。使い捨て上等!!

 さすがに、あの「道具」っぷりはひどい、三銃士悪役過ぎ。
 それに、監獄暮らしで宮廷マナーはおろか一般常識だってアヤシイ男の子を王様とすげ替えるなんて、絶対無理。

 そのことに制作側がよーやく気付いたのか、三銃士によるフィリップへの紳士教育場面があると、スカステニュースで稽古場映像が流れた。
 じゃあ、東宝版では三銃士とフィリップの間に信頼とか友情とかが芽生えるのかと思ったんだ。


 で、東宝初日。

 三銃士絡みの変更は、仮面の男=フィリップを脱獄させたあとに、彼をルイの替え玉として様々な教育を施すこと、1ヶ月後のアンヌ王太后のお誕生会で入れ替えを決行すると宣言していること。
 それと、クラゲのシーンがなくなったこと。
 この2点。無銭飲食も『H2$』パロもそのまま。

 いちばん大きな変更は、なんといってもフィリップの教育。スカステで流れた、あの場面ですな。

 ……すごいよ?
 この段階でわたしは、かなりクチの端がむずむずしていた。おかしくて。

 いい意味での笑いではなく、笑顔でペガサスに乗るオスカル@コム姫を見たときの笑いだ。も、笑うしかないよね、このあさってぶりは、という。

 わざわざ新しく、三銃士とフィリップの場面をひとつ作っているの。
 音楽はフィリップのサーベルダンスのときの曲を使い回し、演出も似せてある。「三銃士とフィリップ」の場面ってことで、呼応させているんだと思う。そーゆー演出はうまいと思う。
 しかし。

 三銃士とフィリップの「関係」は、なんら変化がなかったんだ。

 フィリップを牢獄から救出し、鉄の仮面を取ってやった三銃士。
 泣いて怯えるフィリップに、一方的に「1ヶ月後に作戦決行するから、あれをやれ、これをやれ」と上から命令。「ルイと入れ替わって国王になれ」……だからフィリップはそんなこと望んでないのに、助けてやった恩を着せて強制。

 うっわー……。

 描かねばならない、いちばん大切なことはマナーや剣を教えることではなく、「三銃士とフィリップの信頼関係」だ。
 おびえるフィリップに、上から命令して押さえつけるのでは意味がない。
 「無理だ」と言わせるだけでなく、フィリップ自身が「ルイを、フランスをなんとかしたい。でもボクには無理だ」と言わせ、「そんなことはない、我々が協力しよう」と三銃士がいろいろ教えるならいい。
 フィリップの意志は一切ナシ。そこにあるのは、三銃士の思惑だけ。
 で、その直後に例のアラミスの「笑顔で恫喝」場面が続く。

 ムラのときと、一切変わってない……三銃士ひでえ。アラミスひでえ(笑)。

 いやむしろ、おびえるフィリップに、大の男が3人がかりで恫喝する部分が加わり、さらにヒドイことになってる。

 ナニこれ、笑える。
 アトスなんか厳しい顔と声で剣なんか向けちゃって、ナニ、仇の兄だから容赦なし? 「お前なんか殺してもいいんだぞ、生かしてやるだけでも感謝しろ」的な?


 それから、ルイーズがルイ暗殺にやって来たときも、地味にツボりました。
 三銃士、ひでえ!! と。

 ルイーズにもなにも教えてなかったんだ、三銃士。
 フィリップ救出までなら、危険だからルイーズを巻き込みたくない、ってナイショにしているのはアリかもしれんが、その後丸ひと月、のどかにフィリップの教育していた時間も、ルイーズは蚊帳の外。
 おかげでルイーズがフィリップ殺して死んでたかもしんないという。ひでええ。


 そして、わたしが爆笑を抑えるのに苦労したのが、正体がばれてルイーズとふたりでフィリップが逃げる場面。

「不思議だわ。フィリップ、あなたなんだか楽しそう。命を狙われているというのに……」
「はじめてなんだ。こんなに外を自由に走り回ることが。自由に息をして、風を光をこの頬に感じる。
 ボクは今、生まれはじめて『生きてる』って感じるんだ」

 ……ええ、ムラのときとまったく同じ台詞、やりとりです。
 でもさ、これをこのまま東宝でやられちゃうと。

 ちょ……っ、三銃士、あんたたち丸1ヶ月間、フィリップをどんな扱いしてたのよ?!!(笑)

 鉄の仮面と監獄と、同じだとフィリップが思うほどの扱いだったのか!!
 三銃士ひでえええ!!

 ムラ版では、王太后のお誕生会がいつかの明言がなかったため、脱獄即国王入れ替えのようだった。
 だから、フィリップが「はじめて自由を感じた」と言っても「昨日まで鉄仮面で牢獄だったもんね」と思えるんだけど。
 自由になってから1ヶ月経っているのに、「命を狙われている」のに、それでも「自由でうれしい」と言わしめるほど、三銃士との生活は、辛かったんだ……!!

 どんだけフィリップのこといたぶり続けたの、三銃士。
 仇と同じ顔した男ってことで、ヒドイことさんざんしたのね、アトス。
 おかげでフィリップ、ちょっとコワレてるよ? なにかっちゃーぽろぽろ泣いてますがな。
 いや、フィリップは健気度が上がり、可哀想度が上がり、じつに萌えなキャラになってるんですが(笑)。

 「君や三銃士まで巻き込んでいる……ボクはこの世に生まれてこなければよかったのかもしれない」って、三銃士に言われ続けたのね、「お前は存在自体迷惑なんだから、命がけで償え」とか。
 うっわー、鬼畜ー。


 と、思えるくらい、三銃士とフィリップの「心の交流」については描かれていませんでした。
 ムラ版よりひどくなるとは思わなかったぞ、マジで(笑)。
 三銃士が酷すぎて、いっそ笑える。

 わたしにアトス×フィリップでなにか腐った話を書けと言ってくれているのかと思ったわ、このすげー展開。

 アトスはきっと、最後の場面まで、フィリップのことは「ただの道具。仇の兄だから、使い捨ててかまわない」と思っていたのね。
 そーやってさんざんヒドイ扱いをしてきたのに、天使なフィリップは「ルイーズと三銃士の命だけは助けて欲しい」と、自分を犠牲にして言う。そこではじめてアトスは心が動いたんだわ、彼の「フィリップ……」という台詞は、それを表しているんだわ。

 と、ストーリーが脳内を駆けめぐりました。


 おもしろいなあ、『仮面の男』。

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