『仮面の男』の、こあらった目線のアトス様@まっつ語り、その2。

 ターゲットとなる酒場へやってきた三銃士たちは、無銭飲食をするために大活躍。

 無銭飲食というと、店に入って料理を食べるだけ食べて、お金を払わないで逃げる、というイメージなんだが。
 三銃士がやっていることは「無銭」であっても「飲食」ではない。だって彼らは、店内ではなにも飲み食いしていない。店内にある食べ物を盗むことが目的だから、「無銭飲食」ではなくただの「泥棒」なんだよな。
 演出家の頭の悪さがこんなところでも表れていて辟易しますが、それまあ置いておいて。

 普段着マントを店主に預けて席へ案内された三銃士……つっても席に着くのはポルトス@ヲヅキ、アラミス@きんぐのみ。アトスは坐らず奥へ……そして、何故か床に転がっている大きな白い布袋、を拾う。
 ポルトスとアラミスがケンカをはじめ、店が騒然となっている間に、いろんな食べ物を袋の中へ。
 えーと。
 ことの是非は置くとして、アトス様大活躍です。
 立ち回り以外で、こんなに大忙しにわーわー走り回っているまっつって……。
 舞台の上には大人数、まっつがいなけりゃ見ていたい子たちがいっぱいいるんだが、困ったもんだ、アトス様追いかけてると他を見ている余裕がない。
 てゆーか黒子がいるんですが、舞台上。

 黒子は、三銃士専属です。
 情けないことに。
 コロスとかイメージ上の存在じゃないんですよ、正味黒子が舞台上でお笑い場面を支えてます。
 そして彼らが登場するのは三銃士の活躍……つまり、お笑い場面。

 で、アトス様は黒子が回す棒の上の瓶を追いかけたり、飛んでくる品物を袋で受け止めたり。

 さらに彼は、クサい芝居の口火を切るという大役がある。

 大暴れしていたポルトスとアラミスが、ついに剣を抜いた。まあ大変! ってときに、アトスも剣を抜き、ふたりの合わせた剣を真ん中からかしゃんと振り払う。
 ここだけ見るとかっこいいっす。
 ええ、かっこいいことが前提、必要。
 争うふたりの間に割って入り、「みんな兄弟」と演説をぶつ。その説得に必要だから、「カッコイイ」が。
 まだやるのかと演出にあきれる、『H2$』「ブラザーフッド」のパロディ場面。ここも著作権対策なのか、微妙に違うメロディ、でも「あの曲」だとわかる仕様。
 キレイゴトを嘘くさく語る、アトス様の美声が響き渡る。

 胡散臭い芝居をさせると、ピカイチのハマり方。

 まっつってほんとうまいなあ……しみじみ。

 偽善的に盛り上がる人々の中、アトスはひとり群れから離れ、下手のテーブルへ移動、持っていた小袋に、テーブルの上にある入れ物……袋から白い粉を詰め替える。粉、にしか見えないが、テーブルに置いてある調味料だから塩のつもりかなあ? それとも小麦粉とかをテーブルに置く習慣が当時はあったのか?
 初日はアトス様、盛大にこぼしてた。そのへん粉まみれ、こぼれた粉が白く舞い上がるから、それが「粉」だってことがよくわかった。
 わざとかと思った。ナニをしているのかが、多分遠目からもよくわかる、あんだけ粉を舞い上がらせていたら。
 でも、翌日から手元がもっと慎重になり(笑)、こぼさずに移し替えるようになった……ので、初日は失敗したんだとわかった。初日は緊張してたのかなあ……そう思うとかわいいなー。

 騒ぎが収まったところへラウル@翔くんとルイーズ@みみちゃん登場。
 兄弟の場面はここだけなのに、ふたりは挨拶しかしない。ラウルがルイーズを紹介する、ただそれだけ。
 ラウルが「兄のアトスだ」と言うところで、「親代わりに育ててもらったんだ」とひとこと付け加えるだけでも違うし、それに対しアトスがひとこと返すだけでも、その後の展開に活きるだろうに、んなこたぁ一切ナシ。
 アトスもポルトスとアラミスと同じ温度感でしか描かれていない。
 中の人が懸命に心のつながりを表現しようとはしているが、なにしろそれをしている時間がない。アトスは「場所を変えて飲み直そう」と次の台詞とアクションが決まっているし、店の親爺@にわにわへ前述の小袋を渡して、次の瞬間にはロシュフォール@せしるが銃士隊を連れて登場して。

 粉を詰め替えていた小袋、あれってお金のつもりだったのね。
 「釣りはいらないぜ」的に店主へ渡していたのを、ロシュフォールにただの粉だと暴露される。
 で、「無銭飲食の現行犯」として剣を向けられる。

 やだなーと思うのは、ここで三銃士が剣を抜くこと。
 そもそも三銃士が無銭飲食ってだけでもアレなんだが、その上、罪を指摘されて苦し紛れに剣を抜く……って、ナニゴト?
 悪いのは100%三銃士なのに、この上暴力を振るって人を傷つけるの? 人殺しまでしちゃう? 剣ってのは凶器、人を殺せる武器だよね? それを抜くって……。

 ロシュフォールは悪人っぽく描かれているけれど、この場では正義。三銃士が悪。
 悪いことをした三銃士を咎めているだけなのに、まるで正しいのは三銃士のような描き方。

 という常識的なことは考えず、ここでは「多勢に剣を向けられ、臆せず剣を抜いて構える三銃士かっこいー」とだけ思って見る。それがこだまっち作品を鑑賞する上での正しい見方。

 ここでダルタニアン@ちぎ登場。
 すっかり変わってしまったかつての友を見つめるアトス様。

 ここはわたしの気分の問題なのか記憶違いなのか、いろいろと印象が変わる。

 アトス様は、概ね困惑した様子でダルタニアンを見つめているんだが。

 初日はそれまでのコメディパートを引きずっているような、少し大仰な表情をしていたと思う。眉が八の字になるような感じで。
 でもなんかだんだん、シリアスになっているような。

 切なそうだったり、苦しそうだったり。
 苦しいのではなく、苦い顔だったり。
 思いっきり考え込んでいる様子だったり。

 身内だけになってダルタニアンを語るときも、考え込んだ様子のまま「俺はそうは思わない」と言ってみたり、すでに結論があるような、それゆえ苦い様子で言ってみたり。

 どんどんシリアスになっていくのがうれしい。
 や、ここだけに限らず、「アトス」というキャラクタ自体がかなり深刻キャラにシフトしてきてる。がんばって中の人、演出家のアホなおちゃらけに負けるな!
 初日に見たときは、アトス様も潔くギャグキャラで、どーしよーかと思ったよ……(笑)。

 あと、ロシュフォールを見送るときの「わざとらしい貴族的な礼」が好きだ。
 慇懃無礼がハマるよなあ、まっつ……。


 続く~~。

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