全国ツアー『黒い瞳』を追いかけているとき、某地方の劇場にて。
 出会った見知らぬ人が、ごく自然に「ルーシー」という名を口にした。ヅカを観るのは何年ぶりって人だった。
 杏奈ちゃんのことを、そう呼んだんだ。
 感動しました。
 「ルーシー」が通じる!!
 「だって、ルーシーじゃん」「ルーシーなのに(笑)」……そうそう、そうなのよ、ルーシーなのよ。

 杏奈ちゃんといえば、ルーシーちゃん。
 もう何度も語っているが、まさに伝説の役(笑)。
 膨大な過去ログを探すことは困難だから、あえてまた書く。
 とゆーのもだ、前になんかで「ルーシーちゃん」ってわたしがブログに書いたときだったかな。
 なんか、ブログ内検索で「ルーシーちゃん」を探している人たちがいたので。
 で、実際にわたしもやってみたけど、目的の記事にはたどり着けなかった(笑)。「ルーシーちゃん 意味」とかで検索している人がいる以上、再度意味解説をするべきかと思いましたの。

 つーことで、ルーシーちゃんの由来語り。

 その昔、雪組に『ホップスコッチ』という大駄作バウ公演があったとさ。主演は大人の事情により、なんと3人。
 3人もの男役に等しく主役としての立場を与え、ヒロインと恋愛させなければならない。主役ひとりの話でもまともに書けない演出家が多いっちゅーに、3人主役っすよ。それだけでどんだけ駄作になったかは、想像が付くでしょう。
 演出の太田先生はもともと駄作メーカーだが、このときももれなくどーでもいい駄作を書き下ろした。
 3人主役の物語を書く気なんてさらさらない。太田せんせは省燃費な人で、手を抜くときはとてもすぱーっと抜く。過去作の焼き直しとか、他作品のパク……ゲフンゲフン、よく似た話とか、平気でお作りになる。
 このときも、テーマは省燃費、労力をかけずに話を作る。
 だから、3人主役の話を書く、なんてしんどいことはしない。書いたのはひとつの話、それをそのまま、3人にやらせた。
 同じ話を、ひとつのバウ公演で、3回やった。主役とヒロインだけ替えて。
 観客は同じ話をえんえん3回見せられるんだ。おもしろくもない話を、3回。
 ほんとに、ひどい作品だった……。
 演出家に作品への誇りも愛情もないのが見え見えで、一生懸命演じている生徒たちが不憫でならなかったし、生徒への愛ゆえに寒い客席に坐り続けるファンも不憫だったさ……。
 で、この『ホップスコッチ』。
 もともとどーしよーもなく駄作なんだが、この作品の駄作度をさらに上げる要素があった。
 作中で、本筋にはまったく関係なく登場する「ルーシー」という女の子がいる。ストーリーに無関係、いなくていい役だ。なのに、このいなくていい役が、わざわざ時間をたーーっぷり取って彼女のためだけ、としか思えない演出で長々と喋り出すんだ。
 物語は、その間停止。
 ナニか意味があってこんだけ長々と出てくるのかと思いきや、本当に、なんの意味もない。
 さらに、このルーシーちゃんがうまいなら……いや、うまくなくても、せめて人並みならば、まだいい。
 アゴが落ちるくらい、ドヘタ(笑)。
 舌っ足らずのアニメ声で、超棒読み、焦点の定まらない表情で、コニーアイランド(地名)の説明をするだけのキャラクタ。
 あまりに世界観ぶった切って登場したので、観客あぜん。
 今のはなんだったんだろう、なんの意味があったんだろう……と首を傾げるのみ。
 そして、『ホップスコッチ』とルーシーちゃんの恐ろしさは、これだけに留まらない。
 何故ならば、主役は3人いるからだ。
 同じことを、3回くり返すからだ。
 つまり、謎のルーシーも、3回登場する!!

 いやあ……これは、衝撃だった。
 わたしのヅカヲタ人生でも五指に入る珍妙な経験。本気で、わけわかんない。
 ストーリーが彼女のために、ぶった切られるんだよ? それも、3回。
 しかも、超ヘタ。ここまでヘタで、よく役者になろうと志したなあ、と感心するレベル。

 彼女が劇団推しのスターで、これからトップ娘役にするために、無茶なデビュー場面を作ったのだ、というならまだわかる。
 しかし、ルーシーを演じた子は、それからもさっぱり役はつかず、このとき限定の爆上げだったんだ。

 あまりに強烈すぎて、『ホップスコッチ』を生で体験した者たちはみな等しく「ルーシー」のことを口にする。演じた娘役のことをその後もずっと「ルーシー」と呼ぶ。

 もう10年も前のことだから、生で体験した人は減ったよね。
 で、バウも青年館も完売チケ難が常識の時代に、客席ガラガラだったし、生で観た人がマジ少ないんだよね……。
 もう「ルーシーちゃん」が通じる人がいなくなり、わたしもいつしか呼び方を変えるようになったよ……杏奈ちゃん、と。

 これだけヘタすぎると、さすがに役はつかないのだろう。いつも彼女はその他大勢のひとりだった。が、モブの中ですら、声を出すとその棒読みぶりで「あ、ルーシーだ」とわかった。
 彼女は致命的に芝居ができなかった……。


 というのが、「ルーシーちゃん」の説明です。
 『ホップスコッチ』を観た人たちが、確実に「ルーシーってナニ?!」「てゆーか誰あれ?!」と言い出すのが愉快だった。
 他人に語らずにはいられない体験だったんだ。

 なつかしいなあ、『ホップスコッチ』……。

 でもって、キムくんの駄作運も、鉄板だなあ……。しみじみ。


 と、ルーシーちゃんの話をした上で、次は杏奈様の話!

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