まだ続いてます、まっつ語り。
 ……読んでる人、いるんだろうか。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

『TUXEDO JAZZ』その3。

 気怠い大人の雰囲気ではじまる「ナイト・ジャズ」。
 まっつは中央大セリを使ったジャズ・バーの中にいる。白スーツの男たち、下手からふたり目。帽子をテーブルに置いて、同じ白スーツのかりやんと飲んでいる。あとから現れるのは王子。上手テーブルにも同じ衣装の男たちがいるが、帽子をかぶっているので顔は見えない。(見てない、が正しい。まっつガン見中)

 まっつの前に現れる人たちは目に入る。だから、世にも珍しい大伴さんのソロダンスも初日から見ていたし、ハッチ組長のソロも視認済み。
 ……なのに、壮くんのセリ上がりは見ていない。だって下手花道のセリなんだもん。まっつ見てると気づかないよ、そんなとこに出て来てんの。
 歌声が聞こえてはじめて、壮くんがいることを知る。

 銀橋の壮くんは、どえりゃあかっこいい。この1シーンがあるだけで、他は全部吹っ飛ぶくらいに。
 歌も声もダイスキだ。

 しかし。

 ソレは目の端に入るのみで、結局まっつのかっこよさに見惚れている。

 白スーツ+帽子のまっつ!!
 全編通していちばんかっこいいよね。ここがいちばんオトコマエだよね。
 壮くん登場あたりから、バーの男たちは店を出てそれぞれ本舞台でキメ、壮くんが銀橋センターでキメキメしてるときに銀橋へ出てくる。
 まっつは下手先頭きって銀橋へ、壮くんの下手横にたどり着く。

 脇ファンやってると、「銀橋を先頭きって歩く」ということに過剰に反応してしまう。『ドルチェ・ヴィータ!』でケロが下手先頭で銀橋に出てきたとき、それだけで号泣したもんな。先頭にしない選択肢だっていくらでもあるのに、あえて先頭にしてくれたんだとわかるから。
 まっつもなんか立ち位置がいい。今までではありえないところにいる。グループで移動するとき必ず先頭をきるように配置されていることも、大勢口でもセンターにいるスターの後ろに立つようにされていることも。
 ささやかだけど、ひとつひとつがとてもうれしい。

 銀橋で踊る白スーツの男たちの美しさ。
 壮くんの美貌が正しく開花。
 なんだよ、シリアスでもイケんじゃん壮一帆。(壮くんをなんだと思って……)

 まっつガン見基本だが、東宝4列目で観劇していたとき、つい目の前にいたふみかを眺めてたら、ウインクされたなー。わわわ。
 ふみかにはこのあと、ブルーのロングコートのときにも再度ウインクをもらった。こっちのウインクは音がしそーなくらい派手なヤツ……ふみか、わたしをオトそうとしている?!(うろたえ)

 まっつは見てくれないよなー。
 なんとなく目線は来ている気はするんだが。はっきりと「今彼、わたしを見たわ!」てな感じはしない。ムラの0列に坐ったときがいちばん「なんとなく目線」が来た気はするが。(今回緑野、かなり散財してます、びんぼー一直線)

 本舞台中央に白スーツ(ポスターバージョン)の寿美礼サマがせり上がってくるのに合わせて、銀橋の男たちも本舞台へ戻る。
 寿美礼サマの斜め後ろ下手側がまっつ位置、対の上手は壮くん。

 「アンタッチャブル」の黒スーツまっつはクール、「ナイト・ジャズ」の白スーツまっつもクールはクールだけど激しいの。冷えてない。
 その差がいいんだ。
 かっこいい〜〜。まっつなのにかっこいい〜〜。なんかソレって落ち着かない〜〜。(ヲイ)

 寿美礼サマ中心にどんどん温度が上がり、上がりきる前に白スーツ男たちは消える。寿美礼サマの「現実」である男たちが消え、それと入れ替わりに「幻想」の女たち男たちが現れるのな。

 次に白スーツまっつが登場するのはカオスシーン。
 彩音ちゃんを失った寿美礼サマのもとへわらわら現れるところ。毒の美女@みわっちが妖艶に嗤うあの場面ね。
 まっつのポジは「歌手」。渦となったカオスシーンだけど、歌手とダンサーにポジション分けしてあるから。
 寿美礼サマの斜め後ろあたりで歌いまくっている。一緒にいるのはいちか。

 まっつも狂気っぷりが上がっている。
 最初のうちはわりと淡白に声を合わせているんだけど、寿美礼サマがカオスをたのしむようになってからはなんか突き抜けたみたいだ。
 コーラスのなか、ときおりまっつの声がぽんと耳に飛び込んでくる。あ、歌ってる。カオスのひとりとして、歌ってるんだ。
 客席に背を向ける勢いで、エビ反りして歌い上げてますよ。

 このショーで、まっつは「きれいな歌」しか歌わせてもらっていない。
 小さくまとまって「きれい」なのは、まっつの持ち味であり、限界であるのかもしれない。「ヨゴレ」部分は彼には与えられないの。
 「役割」が決められているのがオギーショーだから、今回は「きれいな部分」だけと役割分担されているだけかもしれないが……「ヨゴレ」を歌うまっつも見てみたかった。
 歌えるのかどうか、殻を破れるのかどうか、見極めたかった気もする。(で、ヘコんでいそうな気も……ゲフンゲフン)

 渦が巻きはじめるとまっつも移動する。初日はわからなかったが、舞台中央よりちょい下手奧を芯とする渦(ダンサーチーム)の周りを、時計回りにぐるりと一周しているんだな。
 そして上手奧の袖の手前あたりに着地。

「♪止めた時計の針……」と歌うオサ様を見守ったあと、上手袖へ消える。

 次の狂乱には、参加していない。
 同じ白スーツチーム(壮くん他)がみんな残っているから、まっつもいそうに見えるけれど、実はもういないの。
 まっつは「きれい」担当だから。「夢」や「愛」を歌う人だから。
 真の狂気には存在していないの。

 で、フィナーレ突入。

 
 ……どうしよう……まだ終わらないなんて……。2日分くらいのテキスト量のつもりだったのに。


 しつこく続けます、まっつ語り。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

『TUXEDO JAZZ』その2。

 セットが同じだというのに、雰囲気はがらりと変わり、オサ様中心の「アンタッチャブル」場面。

 まっつはマフィアの男として登場。
 黒スーツに紫のベスト。

 最初から登場する黒スーツの男たちではなく、第2弾でわらわら現れるグループの中のひとり。位置は上手側。

 まっつたちが現れてすぐに、ボスの娘@由舞ちゃんが登場する。

 わたし、この黒スーツの男たちを従えて踊る美少女@由舞が、ものごっつー好きで。

 牙を持つ男たちをとーぜんのカオで支配する美少女。かしずかれることを「あたりまえ」とする、生まれながらの傲慢さ。
 彼女自身の能力で得た地位ではなく、親の力、自分以外の人の権力でしかないというのに、彼女は女王のように振る舞う。
 世間知らずな、一途でイノセントなゆがみ。

 由舞ちゃんの好戦的な美貌が、都会の狼たちのマドンナとして説得力を持つ。

 その由舞ちゃんに率いられて踊る、黒スーツまっつ。

 クール・ビューティです。ええ、ここは。
 ヘタレてません。かっこいいです。
 端正さが役柄に合っているよね。ね。(念を押してみる)

 組織と由舞ちゃんに逆らうオサ様にメンチ切ったりしてます。いかついふみかの隣で冷ややかにしているところが、ひそかにツボ。

 場面ごとにまっつもチガウ顔をしているんだよなあ。
 かっこいいまっつはここと後半の「ナイト・ジャズ」だけど、どちらもかっこよさの質がチガウんだよね。
 「アンタッチャブル」のまっつは、冷ややか。ダーク。
 組織の駒であることを割り切っている風なのが、素敵。低温まっつ。

 
 で、次がいちばんのおたのしみ、仕立て屋の店員A。

 あのドライな黒スーツのマフィアが、ジャケットを脱いだだけで、コミカルな店員ズに早変わり。
 オギーの衣装使いって独特。毒トク。
 まっつをはじめ、他の店員たちも見回してみればさっきのマフィア男たちなのよ。ジャケット1枚の変化。
 オサ様を死へ追いつめた男たちが、そろってヘコヘコ彼にかしずいている。
 ……素敵すぎ。毒効きすぎ。

 カッコイイまっつはいろいろあれど、どんな二枚目まっつより、ヘコヘコまっつが好き。

 中腰でモミ手。
 嘘くさい愛想笑い。
 ゆーならば、ホンマさん@『ぶつ森』的うさんくささ。

 あああ。花組で『おいでよどうぶつの森』を上演するなら、まっつはホンマさんでヨロシク。嘘くさい保険屋まっつ、立て板に水喋りのモミ手まっつ……うっとり。(とたけけさんは壮くん希望。力強く希望。昭和な渡り鳥は彼しかいないっ)

 ノリノリでいろんな衣装をオサ様に勧め、断られてしょぼくれて。
 なにもかもがツボ。

 「愛らしい」という言葉が、これほど似合う人がいますか?

 あの泣きそーな、なさけなーいカオが好き。
 かわいいーかわいいーかわいいー。

 ここのまっつが好きで好きで。
 あのいぢめてオーラがたまらないっ。ハァハァ。
 放出される下っ端感がたまらないっ。ハァハァ。

 まっつといえば、コレだよなっ。
 うさんくささとヘタレ感。あああかわいー。

 オサ様がタキシード購入を決めたあと、黄色いドレスの姫花ちゃんと満面の笑顔で踊るところもめっさ好き。
 姫花ちゃんがまた、お人形みたいな美少女だからさー。
 小さなまっつがご機嫌で彼女とふたり、くるくる回っている様が、オルゴール人形みたい。

 そっからセットもなにも変わっていないのに場面はバーとなり、まっつはブティックの店員Aから、バーの店員Aになる。
 上手奥のカウンターにずっといる。

 ここでは、まっつの細腰を堪能。

 ベスト姿はいいね。
 カラダの薄さ、腰の細さが強調されて。
 それも、このときのベストが、背中がまるっと出る胴回りにしか布のないベストだからさ。なんかヤラしくていいよね。(えっ?)

 ……そんなことやってるから、センターで美女はべらせて踊っているまとぶ氏をろくに見たことないんだよなぁ、あたし……。
 オサ様がタキシードでビシッと登場するとオサ様見ちゃうんだけど、それまではずーっとナニをしているわけでもないまっつの背中を見てるからなぁ……。

 りおんちゃんを介してオサ様にお酒を渡したまっつは、カーテンの奥へ消える……はずが。
 何故だ、ずっといる。
 回転ドアの枠にもたれて立っている。
 舞台が回って、奥にいたまっつもまた表に出てくる。
 衣装はずっと同じ。コミカルにヘコヘコしていた、店員Aのまま。

 なのに、まちがいなく、カッコイイ。

 ただ立っているだけ……なんだってば。
 それでもかっこよくてびびる。
 こう、なんつーんだ、キュッとコンパクトで小さくまとまって端正とゆーか。(誉めてるのか……?)

 ただいるだけかと思いきや(それもどうよ)、わかなちゃんとデュエットしちゃうし。

 ただ立っているだけより、歌い出したときの方が絶対オトコマエ。
 あのちっちゃいカラダから、低〜い美声が響くのだからインパクトよね。
 まるでオサ様と対をなすかのよーに上手と下手に立つ瞬間が好き。
 博多版『マラケシュ』みたいで。

 
 でもって中詰めへ。
 ここでもまつださん、気が付くと出ているので要注意。

 オサ様とドレスの彩音ちゃんが一旦退場して、まとぶが歌い出したあと。
 まとぶ、みわっち、と短いフレーズごと「スター歌い継ぎ!」みたいな感じの場面にて、まず女の子たちが円を描くよーに登場し、どさくさにまぎれて、まっつも登場する。
 「スター歌い継ぎ」って感じで拍手もらってひとりずつ登場かと思う演出なわけよ。なのに、実際はまとぶとみわっちのみで、歌ナシで壮くんとまっつが背後にまざるの。
 ここでみわっちと壮くんが逆転しているのがちと気になる。……オギー、みわっち好きだよなー。

 まっつはじゅりあちゃんとデュエットダンス。
 ……負けている。
 いろんな意味で、完璧にじゅりあちゃんに負けている。
 ソレをツボと言わずして、ナニを言うのか(笑)。

 衣装は白燕尾にキラキラ金色ベスト。
 ありがたいねえ、壮・みわ・まつで同じ衣装だよ。他の男たちも白燕尾で金ベストだけど、モノがチガウのよー。

 すぐにまっつは大勢口に飲み込まれるけれど、キラキラ金ベストがまぶしいぞっと。

 盆が回り、まっつを含めた白燕尾男たち黄色燕尾男たちはセットの奥へ消えていくんだけど……ここでまっつを見えなくなるまで見送っていると、銀橋の金ダルマトリオを見逃します。
 や、最初のウチは見逃していた……まっつを見送ってから気配の方向を見ると、金ダルマトリオがはけていくところなんだもんよ……。
 おかげでマジ初日はめおちゃんを一度も捕捉できなかった……。

 まつださんは中詰め直後の「ナイト・ジャズ」のスタンバイがあるので、このあと出てきません。
 だもんで安心して、オサ様とシビさんのスキャットを堪能。中詰めラストの銀橋も、まっつ探しせずにオサ様に集中してヨシ。
 席が上手の場合はマメを、下手だとかすがを眺めるのもヨシ。

 
 あああ、まだ終わらない……続く〜〜。


 需要がないことはわかっているが、ソレでも語る、まっつ語り。
 2007/03/22の続きっす。
 テキスト自体はムラ観劇時に大方書いてあったんで、東宝版とはちがっている可能性もあり。(ふみかの肩ポンって、東宝ではなくなった? 立ち位置的にできないみたいに見えたぞ)
 

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

『TUXEDO JAZZ』

 言わずとしれた登場シーン。
 オサ様が登場した窓から、まっつも出てきます。
 まず窓枠に手をついて外を見、ニッと笑います。この笑顔がかわいーの!!
 一瞬なんだけどね。「そんなヒマなかった!」と言わんばかりの慌ただしさで、まっつは窓を後にし、階段を駆け下りる。
 下では、おそろいの水色ベストの男たちが踊っているんだけど、そこでまっつはとりあえずふみかの肩をたたく。で、ふみかと軽くアイコンタクトしてから、定位置(センター下手側)へ。
 タイミングが合わないときは、ふみかの肩ポン無しで定位置へ。……肩ポンできなかったときの、ふみかがかわいい。まっつが肩ポンするのを、踊りながらすごーく気にしているのね。だからソレがないと、「あれ?」って感じで肩すかしになってる。それを知っていて、ときどきわざと肩ポンしないでふみかが戸惑う様を楽しんでいる黒いまっつてのも萌えですが。……ま、たんにタイミングの問題ぢゃろーな。
 噂によると、まっつのことをさお太さんが手を振って迎えてくれているらしいが、まっつしか見ていないので、よくわからない。ふみかはまっつの動線上のいるので捕捉できるんだけど、さおたんは見えないのよ。

 チームにまざっちゃうと、もう「まっつ」ではなく群舞のひとりになっている。

 まとぶ氏が太鼓の音ともに派手に登場(セットが割れていきますよ!)、まっつは下手隅でそれを迎え、また本舞台へ戻って大勢口にまざる。振りがかわいいよね、ここ(笑)。まっつには合ってると思う……他の人的にどうかは知らない。
 
 次が雨のシーン。
 タキシード軍団がばらばらとはけていき、かわりに傘を持った女の子たちが登場。まっつはそのまま舞台に残り、上手に移動。
 上手手前隅にて、真上からピンスポあびて、りおんちゃんとデュエットダンス。下手のシンメ位置でおどっているのは王子ね(女の子、誰か知らない)←見ていないらしい。
 オサ様と彩音ちゃんの、出会いシーン。
 とまどいがちなふたりを盛り上げる、彼らの影ともいえる2組のラヴカップル、それがまっつと王子のそれぞれのカップルね。

 ここがねー、なにしろライトが真上からなので、顔は見えない。
 でも至極まっとーにデュエットダンスなの。ラヴラヴなの。リフトだってしちゃうんだよ。
 顔が見えないと思って(?)、安心してやわらかい表情でいちゃついているまっつをチェック!!

 オサ&彩音カップルが初々しくも手を取り合ってはけていく直前くらいに、まっつ&りおんも上手袖へはける。

 このショーはなー、油断すると見失うし、気が付くと出ているし、ややこしいショーなんだもんなー。
 まっつも出たり入ったり、すげー忙しい。

 そーやっていなくなったなー、と思っていたら、すぐにまた出てくるんだよ。
 まとぶ氏とめぐむたちコーラス隊ががんばっているとき、本舞台に水色軍団がいるんだけど、最初まっつはいない。時間差でグループになって再登場、まっつは上手から登場グループの先頭。そして下手にたどりつく。

 プロローグ最大の萌えどころといたしましては、本舞台下手で踊っているとゆーのに、上手にはけなければいけないところ。
 あの泣きそーな笑顔を張り付かせたまま、必死になって早送りのよーなツーステップではけていく姿!!

 急げ、急げまっつ! 時間内に上手袖に入るのだ〜〜!!(笑) 急がないと、次の出演者の演技の邪魔になっちゃうよ〜〜! ついでに、自分自身の衣装替えもしなきゃなんない! 急げ〜〜!!

 他の誰より、移動距離が大きいのよ。そして、舞台のいちばん前を移動するのよ。張り付いた笑顔と、「急がなければっ!!」という手順が透けて見えて、すげー愉快なの!!
 きりきりまっつ!(笑) かーわーいーいー。

 そんなまっつに釘付けなので、さお太さん、マメ、しゅん様のダンサー男トリオとダンサー娘たちの登場シーンをきちんと見られなかったりする(笑)。

 次の登場は、赤いペアルックのラヴラヴオサあやカップルの、しあわせな銀橋シーン。
 グレーのモーニングコートとシルクハット姿で、ピンクのロングドレスの淑女@りおんちゃんと連れだって上手花道に登場。や、同じ姿のペアが両花道にぞろりと現れてるんだけど。
 しかしなんでモーニング着て「夕暮れの歌」なんだろう……。夕方に着るものではないよね……? カタチからしてアレって燕尾ではなくモーニングだよね?

 そのまま銀橋へ進み、まさかのソロ。
 まっつが銀橋でソロ! ありえねえ。初日に観たとき、どれだけ驚愕したか。

 まっつがソロを歌っている間に他のメンバーは退場、彩音ちゃんとまっつのみが残る。
 オサ様を見失ってしまった彩音ちゃんは、わたわたと探しはじめるわけだけど……まっつはとってもまっつらしく、ヘタレ感漂う紳士っぷりを披露。
 ええ、いかにも貴族っぽいよね。セレブっぽいよね。肩をすくめて見せたり、ほこりを払ってみたり、いちいち気障。でも、ヘタレ。

 まっつはクラシックな格好が似合う人なので、モーニングにシルクハットに白手袋はすごいツボだ。気障でヘタレな紳士なんて、好みど真ん中過ぎて困る(笑)。

 今回のショー、全編通していちばん好きな衣装。
 シルクハット必須で、部屋に飾りたい。

 で、その銀橋のクラシック紳士まっつ。
 下手へ行きたいのに彩音ちゃんに堰き止められて、逆戻り。
 小走りちょこちょこ巻き戻しまっつ!
 後ろ向きに銀橋を小走り、って、こわくないのかなー。なかなかありえない図でおかしくてかわいい。女の子相手にたじたじ、ああなんてまっつクオリティ。
「あっちへ行きたいんですけど」とかなんとか、小芝居してますないつも。ところどころ聞こえる台詞。彩音ちゃんに命令されてるよね(笑)。

 上手花道にたどり着いたまっつはりおんちゃんにGETされ、またカップルに戻る。そっから先はタクシー騒動。
 大騒ぎして一旦はけ、でもすぐに下手花道からシルクハット無しで登場。
 オギーの衣装使い回し術はおもしろい。シルクハットの有無で、雰囲気ががらりと変わるもんなー。
 ここはなにもかも高速で、かわいくてたまらない。まっつは終始いつものこまった顔をしているので、眺めるのがたのしい。あああ、あの情けない顔こそまっつだ〜〜。

 げ。
 プロローグとタクシー騒動だけで文字数いっぱいだわ。

 続く〜〜。


 東宝から帰ってくると、どーしてもオサ様の話ばかりになるなあ。
 だってあの人ほんとすごいんだもん。
 ムラでもいちいち別人だけど、久しぶりに観るとさらに別物なんだもん。

 オサ様、どーしてあんなにご機嫌なんですか?

 東宝初日『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』にて、なにがびっくりしたかって、オサ様のご機嫌ぶり。入りを見た人も「ファンの端から端までわざわざ手を振って歩くような人じゃないのに、してた」と、そのご機嫌ぶりにおどろいていた。
 わたしは入りも出も見ないので、舞台上しか知らないけれど、それにしたってテンションすげえや。

 たのしそうなの。

 笑ってるの、オサ様。
 目をバイオリンの模様みたいにして。
 それがもう、見ていて幸福でならなくなるの。オサ様が笑ってる……しあわせそうに笑ってる……それだけで、胸が痛くなる。

 明智@オサ様が笑いかける相手は、波越@壮くん。そして、小林少年@いちか。ときどきは、黒トカゲ@彩音ちゃん。

 いいなあ。彼に笑いかけられたい……。じーん。

 波越くんのラヴっぷりが、見ていて微笑ましくて。
 波越くんと目が合うなり、にこーって顔面崩すの。
 追跡シーン、初日は急カーブでおっとっとってやってたかな。翌日の昼は手袋波越くんに押しつけて、いやがられてた。夜はマフラーをぱたぱたやって、これまた波越くんにいやがられてた。

 いちばん愉快だったのは、2日目の夜公演での、ホテルでの明智と波越。
 まず最初に、波越くんが明智くんを触った。
 「友人として来た」「泣けるねぇ」のところで、ソファの明智の肩に両手を置く。
 で、次に明智くん、ソファで眠っている波越くんの真後ろに立ち、「寝てしまった」の台詞。いつもなら、ソファの脇で言うのに。
 真後ろに立たれていることを知る波越くん、もうすでに顔が笑ってるの。寝ている(寝たふり?)はずなのに。期待で、顔がゆるんでいる。
 で、期待通り明智くんが、「長年の勘はどうなった」と肩を触る。
 「寝てないぞ」で目を開ける波越くんがもお、うれしそうで。

 なにいちゃついてんだお前ら(笑)。

 らぶらぶで、恥ずかしい……。おっさんふたりでナニやってんだか。

 そーいや昼公演では「知っているようで知らない。友人同士でもよくある話だ」で、明智くんが波越くんに急接近して、おなかのあたりを突いてたな。波越くんのくすぐったそうな顔がまたツボ。
 夜公演はやらなかった。

 とにかくもお、寿美礼サマがご機嫌でご機嫌で。
 テンション高くて。

 オサ様の演技が毎回チガウのはデフォルトだから、3回観て3回ともちがっていたのはとーぜんなんだけど、いつもハイテンションなのはたしかで。

 銀橋のクネクネっぷりも絶好調。

 たのしそーだ。
 たのしそーだ、明智くん!!

 黒トカゲを失ったあとの明智くんのキレっぷりもすげえことになっている。

 初日はあの人、笑ってたんですけど。
 階段の上で「なにが名探偵だ」と言うあたり。
 自嘲とも少しチガウ、ヤバイ笑顔。

 翌日の昼は、怒り狂っていた。目つきの鋭いのなんの。
 涙のあとを頬に残したまま、青白い炎が見えて、震撼した。

 夜公演は笑い続けていた。
 泣きながら、口元が引きつるように笑う。
 また、ときどき表情がすーっと消える。なにか、ぶつんと切れたみたいに。

 ……こわいんですけど。

 明智先生、壊れてる……。

 ご機嫌でハイテンションで、うれしそうでノリノリで、そしてぶっ壊れて狂気の域にまで到達。
 なんか、えらいことになってる……。
 喜怒哀楽がはっきりして、エキセントリックさが全面に出てる。

 春野寿美礼から、目が離せない。

 すごいよー。
 なんてすごい人なんだ。

 で、『TUXEDO JAZZ』でも魔界の中心で渾身のシャウトしてるでしょ。

 カリスマが空気を統べる世界、てのはここまで気持ちいいモノなのかと、彼の求心力に翻弄されるがままですよ。

 だからこそ、彼がふにゃっとした笑顔でたのしそうにしているところを見ると、なんか泣けてくるんだよなあ。
 この人の笑顔のためなら、なんでもできるし、しなきゃ! って気持ちになる……。

 ああもー、オサ様ダイスキ。
 ダイスキ過ぎて、うろたえる。

 なんで東京なんだ。
 もう簡単に観に行けないじゃないか。

 オサ様をもっともっともっと、観たいのに。
 見続けたいのに。
 

 花組初日のあと。
 待ち合わせたパクちゃん相手に、そののち合流したサトリちゃん相手に、わたしはもうただひたすら、「オサ様すごい! オサ様素敵!」とだけ、わめきつづけていた。

「あのー、まっつの話、ぜんぜん出てこないんですが」
「緑野さん、まっつと寿美礼サマ、ほんとのとこどっちが好き?」

 と、真面目に訪ねられてしまうほどに。

 
 まっつ?
 好きですよ、もちろん。
 でもあの人と寿美礼サマぢゃあ、存在の格がちがいすぎて……。
 てゆーか、寿美礼サマがすごすぎるんだ。
 

 スカステが見られなくなって3週間、すっかりヅカの現在から遠ざかっているようないないような。
 数日前、スカステの花東宝稽古場映像で変更があったと人から聞いた。

 『TUXEDO JAZZ』のオープニング。
 窓から出てきたオサ様が、窓の鍵を閉めていくんだって?

 ちょっと待って、そんなことしたらまっつはどうなるの?

 同じ窓から出てくるまっつが出られないじゃん。
 まっつはどこか他のところから登場するってこと? なんのために?

 やっぱり寿美礼様の「影」は、まっつでは足りないと判断された?(やっぱり言うな)

 『マラケシュ』にて、大劇場ではヒロイン役だったふーちゃんが、同じ役のまま東宝では第2ヒロインに格下げ、博多ではさらに複数いる女たちのひとりにまで比重を下げられた。
 オギーは、「できない」と判断したら、台詞も出番も変えずに役の比重を変える、という容赦ないことをやってのける人だ。
 まっつがオサ様のあとから同じ窓から出る、という演出をあえて変えられたとしたら、まっつではダメだと判断されたってこと?

 そりゃたしかに、まっつダメダメだったけど!!
 ぜんぜん足りてなかったけど!
 空間の埋め方、存在感、歌の表現力、なにもかも足りてなかったと思うけど。
 でも、ひどい〜〜、オギーそんな、わかりやすいダメ烙印は勘弁して〜〜。
 大劇場の真ん中に立って自分のオーラを解放するよーな、そんな扱い今まで受けたことない人なんだよ、今できなくてももう少し手加減してやって。

 と、ファンモードばりばり、恋は盲目状態で、ハンケチ握りしめて東宝へ駆けつけた。
 だからわたしはまっつファンなんだってば。
 あの人がどれだけ足りなかろうと、そんなの関係ないのよ。

 あ、あれ?

 窓の演出は、なんの変更もなかった。

 オサ様が鍵をかけるってゆーのは? え? え?

 あたし、ひょっとしてだまされた?

 あたしが今、スカステ見られないと思って、みんなであたしのことだました〜〜?
「騙してないって! ほんとにオサ様鍵かけてたよ!」
 ホテルドリーにて、ドリーさん、ジュンタン、サトリちゃん、パクちゃんと雑魚寝、スカステ流しながら半徹夜したんだけど(寝ろよ)、そこで見せてもらったタカラヅカニュースでは、たしかにオサ様が窓に鍵をかけていた。

 ……なんで演出変更やめたんだろう。時間の関係かな。
 オギー的には、まっつを窓から出したくなかったのかな。
 オサ様が自分で「影」を閉じこめる?
 どんな意味があったのだろう。

 新しい演出も観てみたかったんだけど(ええっ、まっつは?!)、とりあえず東宝版『TUXEDO JAZZ』も、ほぼムラと同じでした。や、ちょこちょこした変更というかアレンジ変えてあるとこはあるけど、大意は変わらず。
 寿美礼サマ暴走仕様になっているだけで(笑)。

 
 まっつについては、ほんとに語ることがない、『TUXEDO JAZZ』。
 足りてないところは足りてないままだ。
 ……まっつ……頼むよ……がんばってくれぇ。

 それでも、まっつばかり観てたけどなっ。
 彼はちっともわたしなんか見てくれないけどなっ。
 今回、チケ運が信じられないくらい良くて、前方良席でしか観劇してないんだけど(4列目と5列目がダブって手に入り、5列目を空席にしてしまった、ってどうよソレ?! もったいなくて眠れない)。

 ノリノリ戦闘意欲旺盛なまぁくんに流し目喰らって撃沈しかけたり、音が聞こえるほど完璧なウインクをふみかにもらい、隣席の人とふたり終演後に盛り上がってみたりしたけどな。

 みわさんに目線やウインクもらわないと花組観た気がしない、つーほどあの人の絨毯爆撃は健在だし、めぐむに微笑みかけてもらった気がするし、舞い上がって舞い上がって帰ってこられない、帰りたくない、すばらしい2日間でした。

 あああ寿美礼サマ……。
 寿美礼サマに会いたい……。

「だから、まっつは?」

 まっつは好きですってば。ええもちろん。
 久しぶりに会う人たちに、もれなく「まっつ手帳」や「まっつ写真入りパスケース」などあきれられつつ。

 ホテルドリーにて繰り返し見た稽古場映像で、まっつとさお太さんとまりんがお揃いで着ている某豚シャツ、同じのを探して着てみたいと思うくらいに、ふつーにダイスキですってば。アメ村とか行ったら、あのシャツ売ってるかしら?

 まっつまっつまっつ。


 花組東宝初日、翌日と合計3公演連続で観てきました。

 ムラから東宝へハコが移動するにあたって。
 期待していたことがある。

 『TUXEDO JAZZ』というワンダーランドの物語が、正しく仕切り直されていること。

 ムラの初日からしばらくは、おそらくオギーの演出通りの物語になっていた。
 彩音を探すオサ、オサを探す彩音、すれちがい続ける恋人同士、彼らを翻弄するまとぶ、人間のオサ様が悪魔まとぶに導かれ、混沌の中で狂気と絶望に堕ちる……ええっと、こんな感じだったよね?

 それが、中日を過ぎるころには、別物。

 オサ様は狂気を愉しみはじめた。

 苦悩しなければならない場面で、ノリノリで歌いまくる。絶望しなければならないところで、ポーズを決める。
 誰かこの人なんとかして。
 オサ様は「人間」役なのに。
 悪魔に翻弄される、「こちら側」の存在なのに。

 誰よりも愉しそーに「あちら側」で息づかないで。

 春野寿美礼って……。
 なんつー困ったイキモノだ。
 寿美礼様サマに「人外」を振ることは簡単だったのに、オギーは今回あえてそうしなかった、らしいのに。暗黒ではない物語を表面に描いていたのに。

 なのに寿美礼サマは、勝手に「人外」キャラになる。
 放っておくと、「人間」を、わたしたちの生きる「こちら側」を簡単に置き去りにして、選ばれた者だけが赦される場所へ行ってしまう。

 舞台はイキモノだから、公演を重ねるごとに変化していくことは仕方がない。最初揃っていたダンスがどんどんバラバラになっていくよーに、それぞれ個性が出てしまって、当初の予定とちがってくることはある。
 それをリセットする意味が、ムラと東宝の劇場移動にはある。
 一旦千秋楽を迎え、再び演出家のもとお稽古をし、初日を迎える。
 これまでも、ムラでヒートアップし過ぎていた舞台が、東宝初日にはムラ初日のテンションに戻っていたり、過剰なアドリブが抑えられたりしたもんだ。

 だから、期待していた。
 オギーがきちんと手綱を取り、好き勝手やっていたオサ様に、脚本上の演出上の演技をするよーに、仕切り直すと思っていたの。
 カオスでエクスタシーのまま絶唱する寿美礼サマは大好物だけど、オギーファンでもあるわたしは、正しい「オギー作品」も観たいのよ。

 期待していた、のに。

 
 リセットされていない。
 矯正されていない。
 制御されていない。

 当初のストーリーもテーマも、あったもんぢゃない。
 ムラ楽のまんま(むしろ前楽の狂乱に近い)、さらにエスカレートしている。

 春野寿美礼、暴走。

 なにコレなにコレなにコレ。

 寿美礼サマが暴走している。
 野放しになってる。

 リミッター解除。
 剥き出しの、春野寿美礼。

 クライマックスのカオスシーンにて。

 オサ様は、魔界で笑い出す。
 ただ表情が笑いのカタチになっているだけじゃない。

 好きに「音」で遊んでいいこの場面で、オサ様は今までもスキャットで自在に「声」を出してきた。「みわ〜〜っち!!」と歌ったりな。

 それが東宝初日。
 「AH〜〜」で自由に音を遊ぶところで、オサ様、本気で笑っている。

 「AHAHA」、って、歌の中で本気で笑ってるよ。

 なにコレなにコレなにコレ。

 カオス突入前のさあやの清浄な歌声が、狂気の歌い上げにつながる、アレンジの変更。それが示す通りに。

 盛り上がる狂気。
 回り出す狂乱。

 春野寿美礼が、解き放たれる。

 もう彼は、「人間」ぢゃない。
 わたしたち側の存在じゃない。

 「あちら側」が彼の居場所だ。

 理解した。
 理解したよ。

 こちら側とあちら側が描かれるこの物語において、オサ様があんなに重いせつない「現実」を生きていたのは、わたしたちのいる「ここ」が、彼の本来の世界ではなかったためだね。

 「あちら側」の人だったんだ。
 なのにまちがって「こちら側」に生まれてしまった。
 だからあんなにも、彼は孤独だった。

 今、カオスの中で彼は本来の自分に戻る。

 制御装置をはずして。
 演出家も、ソレを許した。
 春野寿美礼に「人間」をやらせようとした、ソレが間違いだったと認めた。

 まとぶに奪われた彩音を追っていたはずの銀橋渡りも、彩音のことなんかまったく眼中にない。
 彼は自分の世界を見回すことに気を取られている。

 まとぶは悪魔ではない。
 魔界の帝王ハルノスミレ自身の使い魔だ。彼の回りをちょろちょろすることでヒントを与えた程度。……や、寿美礼サマの目に入っていたかどうかも怪しい。
 魔王は自身で覚醒したのだから。

 めちゃくちゃだ。

 ほんと、カオス。混沌。狂乱。

 こんなめちゃくちゃなショー、知らない。
 春野寿美礼がめちゃくちゃにした。
 なにかもぶっ壊して、そしてその上で、君臨している。

 その、圧倒的実力。カリスマ性。

 作品ってのは、ここまで壊していいもんなんだ。
 それを統べる、力があるなら。

 気持ちいい。

 能力を自在に解放する天才のオーラに身を任せるのが、最高に気持ちいい。

 てゆーか、リミッター解除したオサ様に引っ張られて、他のみんなの狂気も上がってるよね?
 えーらいことになってんですが。

 おかげで、カオスのあとショーシーンに戻るために、音楽に「線引き」のためのアレンジ加えられてるじゃん?(笑)

 オギーが、春野寿美礼を「赦した」んだなあ。
 その才能を発揮するための舞台を提供したんだ。あちこち細かいアレンジして、クライマックスで大暴れしていいように、バランス調整してくれている。

 ものすごく、気持ちいい作品だ。
 東宝『TUXEDO JAZZ』。ムラ前半とは、明らかに別物(笑)。

 いいなあ、東京の人。
 これから毎日、魔王の宴で異次元体験できるなんて。
 や、正しい演出だったムラの『TUXEDO JAZZ』も、できることならもう一度観たいのだけど。……もう消えてなくなってしまった。

 だから今はただ、「今」の『TUXEDO JAZZ』が観たいよ。

 帝王、春野寿美礼にひれ伏したい。


 昔のまとぶんには、正直興味がなかった。

 わたしは彼の「持ち味は正統派だけど、黒っぽい男役の方が世の中的にウケるから黒で行こう」的なところが苦手だったの。
 や、世間的にどうだとか、彼自身がどうだとかは知らないが、わたしはとにかくそう感じていたんだ。昔からずーっと。同じタイプにあさこちゃんがいる。「俺様の方がウケるから、俺様で売ろう」的な。
 どう見たって「いい人」なのに。ヲトメたちがときめくのは「ちょい不良」だからって、属性を偽らなくてもいいのに。
 そーゆー無理をしている人には、興味ないなー。

 あくまでも、舞台上のキャラの問題ね。本人の人格なんぞ知らないし、関係ないよ。

 舞台の上で、本当の鬼畜キャラつーのは、春野寿美礼みたいな人をいうんだと思う。
 あ、朝海ひかるも同カテゴリに入れてもまちがいではないな(笑)。寿美礼サマとは色がちがうけど。
 彼らはナチュラルボーンであり、「ソレが売れるから」そうしているわけではない。天使の笑顔で正統派二枚目を演じていても、本人がそのつもりでも、勝手に闇の属性がにじみ出ている(笑)。

 まとぶんが花組にやってきて、歪んだ王国の帝王ハルノスミレに翻弄され、今までのよーな黒っぽい男役を作っていられなくなり、一時「途方に暮れて泣き出しそうな、頼りなげな男の子」の体をさらし、そののち開眼した、今の芸風が好みど真ん中だ。

 今の芸風。
 すなわち。

 ワイルドM男。

 黒っぽい男役として培ってきた、ワイルドなビジュアル。本来の顔立ちはやわらかくも女性的な美貌なのに、雰囲気を黒っぽくすることでワイルドさを演出してきた。
 どんなに黒っぽくふるまっても、性格の良さはにじみ出る。いい人オーラ、かわいこちゃんオーラは隠せない。
 そのいびつさが、寿美礼サマとゆー真の「黒」の前で破壊され、男っぽいのに、受々しいという、素敵資質を開花。
 それも、ただ受てりゃいーっつーもんでもない。
 相手のS属性を受け、被虐キャラとしての色気爆発。

 ロドリーゴ@『落陽のパレルモ』でヴィットリオ@寿美礼サマにコケにされる美形貴族を演じ、資質の片鱗を見せる。
 オーランド@『Appartement Cinema』では、ウルフ@寿美礼サマに惚れきってる年下の犬属性攻男を熱演。女王様に振り回されるM男っぷりが素晴らしい。
 フィリップ@『ファントム』では、本人は恋人気取りなのにクリスティーヌ@彩音ちゃんには、頭数にもされず完全スルー、独り相撲が素敵なフラレ男。
 マックス@『MIND TRAVELLER』では、本人なにも悪くないのに不幸が雪だるま、殺されかけて記憶喪失でぬれぎぬでモルモットで電気ショックで、拉致られて集団リンチでこれでもかと驚異の受難、不幸っぷりがときめく美男。
 そして極めつけの雨宮潤一@『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』、悪女のM奴隷。

 不幸であればあるほど、美貌が輝き、魅力が増すのは、どーゆーこっちゃ。

 踏みつけられると、色気がダダ漏れるのは何故。

 ふつーM系被虐系がハマる人は、美少年系というか、中性っぽかったり女っぽっかったりするもんなのに。
 まとぶ氏は男らしいまま、M道驀進。

 セクシー・ワイルド。……クール・ビューティと対をなす、もうひとつのカテゴリ。
 そこにまとぶ氏は、M属性を加えた!

 最強だ、真飛聖。
 見ていると、ぞくぞくする。

 いぢめたい……この男、いぢめたいー。
 泣かせたい〜〜!!

 
 てことで、彼のはじめてのパーソナルブック。

 Mっぽくて、いいデキです(笑)。

 表紙からして、美形M男オーラ出してますよ!!

 ゆみこパソプでも語ったけれど、わたしがタカラヅカ男役の写真集に求めるモノは、「タカラヅカ男役」。
 素の、きれいな女の子の写真集じゃない。
 女の子写真は退団してからいくらでも出してくれ。
 それより今は、「男役」という希有な存在であることを「創りあげ」て、「作品」にしてほしい。

 2007年パソプはまとぶ氏でVOL.3。
 実はVOL.2のらんとむさんも、発売直後いそいそと手に取ったのだけれど。
 ……かなしいかな、求めるモノではなくて、眺めるだけで棚に戻してしまった。

 わたしが欲しいのは、「タカラヅカ男役」の写真集。きれーなおねーさんじゃない。
 ましてや、熟女写真集ぢゃない。
 舞台のらんとむはあんなにいい男なのに、パソプのコンセプトはまちがってるとしか思えない。

 肩を落としつつ、発売日にVOL.3のまとぶ氏を手に取った。
 あの男っぽいらんとむが「女の子」写真を撮ってるくらいだ、素がかわいこちゃんな美人のまとぶんはさらに「ただのアイドル写真集」だったらどうしよう。
 そう、危惧していたさ。

 ところが。

 ……そのまま、レジへ直行。
 
 「男役」だ。
 「タカラヅカの男役」だ。

 素の「女の子」写真の方がラクだろうに、いくらでもきれいになるだろうに、あえて、「男役」を創りあげようとしている、写真集。

 その心意気やヨシ!!

 男役のまとぶが好き。
 10年以上懸けて人工的に後天的に、意志を持って創りあげられた、彼の財産が好き。
 
 星組時代・下級生時代からエリートコースを進み続けた彼だけど、写真集としてまとまったのが「今」でよかった。
 星組下級生時代の女の子アイドルまんまだったころでなく。
 また、かよちゃんを追い落とし、組替えで来たしいちゃん@新公主演経験上級生をハナから下に置き、トップ路線男役としてブイブイ言わせていた星組時代後半でもなく。
 花組に組替えになり、いろんなものにぶち当たり、あがいて傷ついて、そして独自の魅力を醸し出しはじめた、「今」。

 「今」の真飛聖の魅力が詰まった写真集だ。

 これから先、彼はまた変わっていくだろう。
 次の写真集ではチガウ顔をしているかもしれない。

 だからこそ、2007年personal bookは、意味がある。

 今の、「被虐系セクシー・ワイルド」とゆー、希有な芸風が匂い立ってます。

 ダイスキだ、まとぶん。


 ウィーン版『エリザベート』観てきました。
 本日マチネの方っす。キャストは確認し忘れたんで、わかりません。
 ヅカファンやってるとキャスト固定の概念があって、ひとつの役にキャストが複数いるっつーのに慣れなくて。
 主役のエリザベートはファーストキャストのマヤ・ハクフォート氏で合ってる?
 1階席の隅っこで観劇。わたしたちの後ろも横も無人だったので、のびのび観られました。
 

 隣の席でnanaタンは「フランツ主役!」とわめていたけれど、それはいつものnanaタンクオリティ(笑)、主役はちゃんとエリザベートでした。
 
 わたしがウィーン版を観たかったのは、ひとえに宝塚歌劇の『エリザベート』という「作品」が好きだから。
 たとえば、好きなマンガがアニメ化されたら、とりあえず1話は見てみる。続けて見ることはあまりないけど、1回自分で見て、納得する。
 そんな感じで、東宝『エリザベート』も初演と再演を1回ずつ別キャストで観て、納得、以来まったく観ていない。
 原作マンガのファンだからって、そのアニメ化作品を「原作とチガウ!」とどうこう言う気はない。原作とメディアミックス作品はまったくの別物で当然。同じタイトルだとしても、別作品カウント。
 別物であるという前提の上、そこに個々の好みがあるだけのこと。
 どちらが優れているのどうのと言う気はない。

 てゆーか大抵の場合、「先に出会ったモノ」が素晴らしく、あとから出会ったモノはソレに劣るのだ。
 わたしがどうこうというより、人間の習性として。だからみんな言うんだ、「昔の方が良かった」「昔は良かった」。事実とちがっていても、関係ない。その人個人の記憶では、そーゆーことになっているんだ。

 タカラヅカで再演を繰り返し続けている『エリザベート』にしても、個々が最初に観た『エリザベート』、もしくは贔屓が主要キャラを演じている・贔屓組上演の『エリザベート』が最良のものと感じられるだろうさ。

 ウィーン版『エリザベート』が本家本元、いわゆる「原作」なのはわかっている。
 素晴らしいことも、わかっている。
 でも、わたしはタカラヅカ版に最初に出会ってしまっているので、そしてそっちにハマり過ぎてしまっているので、結局のところどーやっても覆されることはないのだ。
 寿美礼サマがこんなに好きで、寿美礼サマのトートを心から愛しているけれど、わたしのベスト『エリザベート』は初演の雪組だ。あの感動が心に刻みつけられてしまって、あとからなにを観たって「感動の記憶」は揺るがないんだ。
 作品のクオリティとかキャストの技術とかハマリ具合とか、そーゆーモノとは別次元なんだよなあ。
 「最初に出会ったモノ」っていうのは。

 だから、ドラマにハマったから原作マンガを読んでみる、そーゆーノリでウィーン版を観劇した。

 や、ほんと、素晴らしかった。
 金さえあれば、何度でも観たい(笑)。
 S席16000円、B席でも7000円もしやがるので、わたしの経済状況では無理ですが。……てゆーか、3階席でも半分A席11000円なの?! あの超観にくい天井桟敷が?!

 オープニングからスイッチ入っちゃって、だーだー泣けたんですが。

 『エリザベート』ってやっぱ、すごいなあ。
 作品の持つ力に圧倒される。

 あと、字幕が新鮮でねー。
 原作の歌詞を日本語歌詞に凝縮すると、まったく別の単語になっていたり、大意だけ酌んだ別の文章だったりするじゃん?
 それが、メロディの制約を受けず、映画の字幕程度の情報量のある翻訳文章になっていると、印象がかなりチガウ。
 文字でダイレクトに飛び込んでくるので、歌詞を聴き取ることに気を取られない。歌声を「音楽」として、より本能的に体感する。……字幕に気を取られると演技が観られなくなっちゃうけど(笑)。

 『エリザベート』は、どれもチガウ。
 タカラヅカ版も東宝版も、ウィーン版も。
 カンパニーがチガウ、技術がチガウ、とゆーよーな意味ではなくて。

 まるで、古典文学をいろんな作家が自分の解釈で現代語訳して、オリジナリティのある潤色をして「作品」として発表しているように。

 おもしろいなー。

 ウィーン版では、トートが主役ではない。それはわかっていたけれど、東宝版ほどの重みもないのは意外。
 主役はエリザベート、そして準主役というか彼女の相手役は、「彼女の生きる世界」だと思った。そして「世界」は、ナビゲータでもあるルキーニに近い。
 エリザベート、ルキーニ、トートの順なんだ、役の重み。

 なんか、シシィとルキーニだけでみんな持って行かれたよーな気がする……。
 トート閣下はとても甘い声(これも意外)の方で、気持ちよく大暴れしていたけど、それよりルキーニの自由自在ぶりがこわかった。

 ルキーニの軽やかさと毒、台詞のあちこちにある「人間」への辛辣さ……舞台全体の厭世観と退廃感が、じりじりと心を浸食していく感じ。
 わずかな流れだからと他のことに気を取られていたら、ふと気づいたときには胸まで浸かっていた、空気残ってるのあと少し、このままじゃ溺死?! みたいな。

 シシィと、「世界」。
 「世界」の中の、シシィ。

 檻の中と外。

 ものすげー好みの世界が展開されていた。
 だから好きなんだ、『エリザベート』。
 絶望がちりちりと髪の先を灼きはじめている。身体は無事だよ、でも。……でも。

 不吉なナイフが舞台を切り裂く。

 ルキーニ、そしてトートが行き来する、巨大な装置がある。舞台を斜めに分断するスロープ。
 ナイフのようだ。

 「世界」は何度も切り裂かれる。
 巨大なナイフに。

 ナイフの上で笑うルキーニ。あるいはトート。

 あがきつづけるエリザベート。
 彼女に届かないフランツ・ヨーゼフ。

 圧倒的な音楽と歌声、禍々しい美しさに満ちた舞台。
 や、絶対おもしろいって! すごいって!

 
 ……しかしコレを、よりによって宝塚歌劇で上演しようなんて、よく思ったな。

 ウィーン版を観ながら、心から感心した。
 そして。

 小池修一郎を、改めて尊敬した。

 この救いのない、ついでに愛も大してない(それよか絶望の方が大きい・笑)物語を、トートとシシィのラヴストーリーとして、ロマンティックによくぞ脚色したもんだ。
 原作をふくらませたのであって、壊していないんだもの。

 在りモノの設備と限られた予算で、ヅカ版『エリザベート』をあそこまで創りあげたイケコは、ほんとーに素晴らしい演出家だ。

 『MIND TRAVELLER』とか作るから、ありがたみのない人になっちゃってるけどさ。ほんとはこんなに、すごい人なんだよなあぁ。溜息。
 オリジナルはもういいから、アレンジと演出だけに努めてくれよ……懇願。これだけ才能あるのに、なんであんなしょーもないオリジナルで名声に泥を塗るんだ。

 
 んで。
 原作の役の比重を見せつけられることで、ヅカにおける生徒への格付けが見えて、わかっていることだがちとしょぼん。

 ルキーニ≧トート>フランツなんだ……。

 ヅカではトートが主役だから、トート役が大切なのは言うまでもないけれど、次に重要なのはやっぱフランツではなくルキーニなんだな。
 組内昇格が前提だった雪・星・宙までは除外して、新専科以降劇団の人事事情がかかわってくる花・月で、重要なのはトート、ルキーニ、ルドルフ。
 新公はもっとわかりやすく、路線が演じるのは、トートとルドルフのみ。
 フランツぢゃない……。
 今のところ、フランツやってトップになった人いないぢゃん……。

 いやその。
 わたしの好きな役者は、大抵フランツ役者なんですよ。

 フランツ役、好きだもんよ……。あああ、わたしの好みって。


 書きたいことが多すぎて、いちばん書きたいことが書けない……。って、ナニやってんだろうなあ。

 いちばん書きたいことっていえばもちろん、花組公演の感想です。
 他の組もまんべんなく観るから、先にそっちの感想を書いてしまって、肝心の花組の話が書けない。他の感想はその数回で終わることがわかっているけど、花組の感想は果てが見えない。
 だからつい、まず「語ってもせいぜい2日分(6000字程度)だな」とか、「3日(10000字弱)かかるかな」とか、見当のついているものを先に書いちゃうじゃん?

 そーやって花組の話が、ちっとも書けない……。
 そしてわたしの海馬は不良品。書きたかったことをどんどん忘れていく。
 助けてリチャード教授。わたしの海馬をサーチして花組公演の感想をバックアップしてぇ。

 
 ま、それはともかく。

 初日からずーっと書きたかったことを書こう。よーやく書こう。

 
 花組公演『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』初日。

 わたしはひそかに、ものごっつー、びびったことがある。

 明智くん@オサ様と、波越くん@壮くん。

 お帰りなさい、の壮くんは、なんかものごっつー自然に花組に同化していて、雪にいたときのトホホさがウソのよう。
 まちがいなくオトコマエ度も上がっている。

 とはいえもちろん、リーマン度が下がることなどない。

 勤労者がこれほど似合う二枚目もいない、すばらしきかな壮一帆。

 なにより、オサ様との相性がいい。

 春野寿美礼はいろいろ困った人で、合わない人には合わせないし、ひとりで勝手に芝居をする。ついて来られない人は平気で置き去りにする。しかも本能、無意識に。

 壮くんは空気読めない人で雪組では盛大に浮き、これまたひとり勝手に芝居をしていた。

 そんなふたりが芝居で組んだら、どんなとんでもないことになるんだと期待危惧していたんだが。

 杞憂だった。
 合わせる気のない気ままな天才と、空気読めない天然男は、10年来の相方のよーに、あうんの呼吸で本能的な芝居をしていた。

 なんなのこの人たち。

 べつに、それぞれが変わったわけでもないのに。
 勝手にやっているだけなのに。

 相性がいいってのは、こういうことか。
 1年半も前に組替えしてきて、未だにオサ様相手に悪戦苦闘しているまとぶ氏が気の毒だ。
 ナチュラルボーンの壮一帆は、なーんにも考えずにオサ様の横に収まっている。

 明智くんと波越くんは、親友同士。
 互いに尊敬の見える、大人の男の友情。

 ふたりの関係が、やりとりがあまりに自然で、びっくりしたさ。

 なんだよなんだよ壮一帆、なんかやたらとかっこいいぞ?
 オサ様がカッコイイのは地球の常識だとしても、その横に立つのが似合うくらい、壮くんもかっこいいぞ?

 波越くんは彼特有の鈍くささとなまぬるさで、それでも心を開いて明智くんを見つめている。

 明智くんは明智くんで、妙なテンションの高さで波越くんに……甘えている?

 初日のおどろき。
 あまい。
 オサ様なんか、あまいぞ?

 心が、波越くんの方を向いている。
 銀橋でクネクネ歌っているときはチガウけれど、波越くん相手に話しているときは、ほんとーに波越くんを見ている。自分を見ていない。
 や、オサ様演じるキャラクタは、相手への関心度によって心の向け方が変わってくるから。下手すりゃ相手と話しながらも自分のことしか見てないから。

 波越くんのこと、好きなんだ。

 そう思えるキャラクタ像に、びびる。

 さらに。
 ……さらに、うろたえまくったことは。

 新婚ホヤホヤの波越くんに「おめでとう」と言いながら、明智くんは言うんだ。「ひとつ聞いてもいいか」と、改まって。

「どうして結婚した?」

 この台詞が。
 下手花道から銀橋にかけての立ち位置で、観客に背を向け本舞台上の波越くんにだけ顔を向けて言う、この台詞が。

 めちゃくちゃ、甘かったの。

 スウィートですよ。
 甘え声ですよ。

 媚態を含んだ声ですよ。

 うろたえましたとも。

 なななななんなんのアンタたち。
 これって睦言?
 恋人同士の会話?
 元カレ相手に言ってる?

 返す波越くんの台詞もすごい。

「子どもも欲しかったし」

 ……明智くんには産めないもんな、子ども!!
 別れた理由はソレか、波越よ!!

 はぁはぁ。
 初日から、無駄に消耗しました。

 初日のあと、わたしが次に観劇したのはいつだったかな。2日後?(海馬に残ってない……)
 そのときには、明智くんの「どうして結婚した?」はふつーの声音になっていました。

 やっぱマズかったんだ、初日のアレ。
 やりすぎてたんだ。

 オサ様の演技は日替わり公演替わりが基本だけど、あれほど完璧に甘え声だったのは、初日1回のみだった。や、わたしはたかだか15回しか観てないから、狭い範囲での話だけど。ん? 回数チガウ? 芝居は捨ててショーだけ観たこともあったよな?(海馬がもうあやふや……)

 
 明智くんと、波越くん。

 初日から、わたしの頭を横殴りにしてくれた、麗しきリーマンBLの図。

 萌えとか明智受とか、そーゆーことが言いたいわけでもなく、ただもう、明智くんの甘えっ子モード全開さに、オサファンとして目眩がしたのよ。

 だって壮くんは、あの通りのなまぬるさで。
 甘えっ子なオサ様のことも、同じ温度でふつーに受け止めていそうで。
 や、ソレ君、破格の扱いだから!! 君がわかっていないだけで、ものすげーことになってるんだから!!

 明智くんの媚態は初日限定だったとは思うけれど、かわりに彼は、追跡シーンでいちゃいちゃしはじめた。

 初日はまだ、ふつーだったのに、追跡シーン。

 日を追うごとに明智くんと波越くんは、密室の中で愛をはぐくむ。

 仕掛けるのが、明智くん。
 波越くんはやっぱりぬるい。でも、明智くんにかまわれるのはうれしいみたい。
 明智くんは、波越くんの木訥な反応を愉しんでいる。小悪魔的に。

 
 たぶん、このふたりが素晴らしいのは、壮くんに色気がないことだと思う。

 彼はほんとふつーの、鈍い30男なのよ。
 妻を愛し、仕事に誇りと責任を持ち、親友に心を砕く、ふつーの愛すべき日本男児。
 色っぽいことなんかぜんっぜん考えてないし、耽美とか芸術とかもまったくわからない。

 そんな、ふつーに健康的な彼の親友が、天才であり、多分に背徳的な美や快感の側に立つ耽美青年であるということ。

 波越くんは明智くんを理解できないし、明智くんもソレをわかっているけれど、それでもふたりは親友なの。
 互いを尊敬し、愛しているの。

 車の中でいちゃつく30男ふたり(公式の年齢設定なんぞ無視)に、変ないやらしさがないのは、波越くんがなにもわかっていないから。
 空気読めない男だから。
 明智くんの色っぽさをまったく理解せず、彼がデフォルトで振りまいている鱗粉のごときチャームオーラにも無感動。
 だからこそ明智くんも安心して、エロ気全開に甘えていられる。

 
 おもしろいなあ。
 明智くんと、波越くん。

 このふたりの空気感。
 美しさの相乗効果。
 耽美と健康美。
 倒錯と純粋。

 
 黒蜥蜴@彩音を失い、心が死んでしまった明智くんを救うために、波越くんが手をさしのべるのは基本でしょうね。
 明智くんの魂懸けた誘い受に、さすがの鈍感波越くんも、重い腰を上げるでしょう。
 彼はとことん健康的な思考回路の持ち主だから、「女は妻一筋」「明智くんは男だから、これは不貞ではない」とか、ふつーに思っていそうだ。
 そしてそんな波越くんの思考も言動も全部、もちろんわかっているのが明智くん。

 素敵な関係。


 花担なことだし、花組振り分け発表には反応しておくか。

 初夏の花組の興行メンバーが発表になった。
 梅芸『あさきゆめみし』と、バウ『舞姫』『ハロー!ダンシング』の3作品に、誰が出るのか。

 
 いちばんショックなのは、『ハロー!ダンシング』のメンバーだ。

 
 劇団はナニを考えているんだろう……。

 他4組の出演者と、花組の出演者はちがいすぎるだろう。
 他組は「芯を取れるスター不在」のまま、無理矢理興行し、自爆していたりするんだよ?

 構成も群舞基本で、スター力を鍛えることにはなりそーにない演出。
 「バックダンサー養成」を目的とした、「タカラヅカ」としてまちがった興行。……そう、あきらめていた。

 演出が悪いことは言うまでもないが、今のところ唯一星組だけはキャストの実力とバランスの良さで「タカラヅカ」として成立していた。
 トップスターが主役で、2番手3番手がソレを盛り立て、組子全員が一丸となって取り組み、組長が組と公演自体をまとめる。……そーゆー、ふつーの「タカラヅカ」。

 トップスター役@あかしが華と実力とハッタリ(顔芸含む)で真ん中で燦然と輝き、サブをともみんとドイちゃんが務め、ゆいちゃんが組長の仕事を果たし……てな。
 雪と宙は、トップスター不在で学年順に仕事をしていた。そりゃ、キャリアがある方が「見せ方」はわかっているだろうよ……でも組長がイコール主役、つーのは「タカラヅカ」のルールぢゃない……。

 もちろんバウサイズの話であり、20人弱の出演者の話なんで、大劇場で80人強の人数相手にトップスターやってる人たちと、スケールがチガウんだけど。
 それでも、そこがどんなハコであれ、なんの興行であれ、タカラヅカは「タカラヅカ」であるべきだと思う。

 『ハロダン』がどれほどまちがったコンセプトの公演であろうと、演出に誠意とセンスが欠如していようと、星組のようにキャストの力とバランスで、なんとか「タカラヅカ」にすることはできる。

 だから花組にも、ソレを期待していた。
 大劇場でトップスターをやれるほどのスターはそうそう出るモノではないが、ショートプログラムのバウホールで真ん中に立てるぐらいのショースターならいる。
 いわゆる「路線」でなくても、将来のダンスリーダーを期待できる子だとか、ダンスもふつーにできて新公主演してない、でもスター寄りな子とか、『ハロダン』にうってつけの子たちがいる。
 星組でいうあかしポジの子がいるんだから、星組のよーに「タカラヅカ」として『ハロダン』ができるじゃないか。

 あのまちがった演出を、力業で立て直してくれることを、期待していたんだ。

 他4組を見ても、星組をのぞいて「主役」ポジにいるのは88〜89期あたりの子だ。
 花組もまた88〜89期あたりで「主役」ポジをひとり選出、2番手としてそのへんか、その下あたりからひとり、あとは組長として83期前後のダンサー属性の人がひとり選出。
 という形になると思っていた。
 だって他の組がそうなんだから。

 なんで花組だけ、主役張れる人たちがゴロゴロ出演するの?

 主役はひとりでいいんだってば!!
 「タカラヅカ」ってそーゆーところでしょ?
 拮抗する2番手はいてもいいけど、それもひとりでいいんだってば!!

 振り分け発表を見て痛切に思ったことは、もったいないでした。

 だってもう、演目知ってるし。
 ただの群舞ショーなんだよ? 武富士のCMみたいに踊ることを目的にしてるよーな世界なんだよ?
 唯一「主役」と2番手だけには「タカラヅカ」っぽい場面があるけれど、4分の3は「バックダンサー養成」場面なんだよ?

 バウワークショップでなら「主役」になれる人たちを、正しく「主役」として使ってくれよ。
 結局ただの「バックダンサー」にすることになるじゃん、こんなにたくさん「主役」クラスの子たちを出したら!!

 
 もちろん、観客としてはうれしいよ。基礎力の低い、とほほなモノを見せられるより、スター勢揃いだからそれだけでもたのしい、てなモノの方が、金を出す身としてはうれしいよ。

 ただ、「タカラヅカファン」としては、他公演ではたぶん絶対「主役」になれない属性の子が、「主役」になれる公演、ということだけで『ハロー!ダンシング』という謎の企画に望みを見出していたのでな。
 ソレすら奪われると、ヘコむ……。

 花組『ハロー!ダンシング』は、「主役」ポジ誰なの?
 かりやんならすずはるき的「主役」だし、マメやしゅん様ならあかし的、ダンサー枠で組替えしてきたらしいかすがだって、花組色満載のらいらいだって、「真ん中」を与えられれば仕事をするだろう。
 新公主役も将来狙えます系若手枠としては、だいもんがいる。
 ミホ先生は組長ポジだと思うけれど花組を代表するダンサーのひとりだし、今年ヒロイン総ナメ状態のののすみまでいる。
 「バウワークショップ規模限定」でなら、彼らは「主役」として場面もらってもおかしくない面子だ。

 もったいない……。
 せめて半分にしてくれたら……。

 オイシイ場面なんかほとんどない、サムいつなぎの場面と群舞しかない公演なのに。
 他組と同じキャスト構成なら主役になれる子が、ここでもただのバックダンサーになってしまうなんて。
 や、結果として「この子に主役は無理だったな」てなことになるかもしんないけど、名前だけ見る分には『ハロー!ダンシング』でせしるや鳳翔大ポジ(本当なら主役ポジ)OKだろう、花組88〜89期出演者たち。

 いや、見応えあるだろーから、うれしいはうれしいんだってば。
 ただもう、くやしくてな……。
 かりやん主役だって、マメ主役だってしゅん様主役だって、見たかったんだってば。かすが主役もらいらい主役も見たかったんだってば。
 だいもんは、これから先主役があるかもしれないけれど……ここでだって、見てみたかったさ。
 なのに、この面子じゃ、主役になれるのはひとり、あとオイシイのはひとりか、せいぜいふたり。……残りはバックダンサー決定。
 くやしい〜〜。

 花組だけ、通常バウ公演と『ハロー!ダンシング』の間が丸1ヶ月も空いているので、両方出演可能だから、出てくれること自体もうれしいんだけど。
 でもなんでだいもん、よりによって『ハロダン』だけなの? 彼が主役だから?

 あーもー、うれしいことはうれしいのに、同時にヘコむってなんなんだ。

 
 あ、まっつが『舞姫』なのは意外でした。
 『MIND TRAVELLER』に引き続き、2作連続2番手ポジにさせてもらえるはずがないと信じていたんで。
 『あさきゆめみし』で4番手くらい?(てきとー)をやっているのが、まっつらしいと思い込んでいた。
 や、バウで2番手なのかどうかなんて、幕が上がるまでわかんないことだけれど。まあ、キャストの学年的に2番手位置、つーことで。

 びんぼーなので、コストパフォーマンスのいいバウホール組でありがたい……。
 通いますよっ、あの『MIND TRAVELLER』にアレだけの金額かけて通ったんだから。
 『MIND TRAVELLER』と同じ金額出したら、バウなら毎日観られるわね♪(『マイトラ』は超前方席でしか観なかったので7000円定価基本、プラス青年館遠征費がかかっている)

 まっつは相沢役希望。
 みわっちを愛し、彼のためだけに思考し、行動し、ののすみから彼を奪い、彼女を発狂に追いやる役……ハァハァ。(←『舞姫』の基本理解がちと曲がってるかもしれません)
 まっつ攻のみわっち受が見られるのかしら。ハァハァ。
 景子せんせーお願いっ!! まつみわを見させて〜〜!!
 みわっちを愛し、苦悩するまっつを見させて〜〜!!

 サイトーかこだまっち演出なら腐った期待もできるし、大野せんせーならど真ん中でわくわくできるんだが(笑)、少女マンガきよらか系の景子タンでは無理だろうなー。美しいけれどエロさも闇もないのが景子タン。

 でもたのしみだ。

 
 『あさきゆめみし』は主要配役が先に出ていたので、ふつーにたのしみにしている……が、作品自体がアレだとわかっているので、寿美礼サマのビジュアルと歌に期待するよ〜〜。


 4月1日エイプリルフール。

 嘘をついてもいい日、ではなくて、願いが叶う日だといいのに。

 『ドラえもん』のひみつ道具「ウソ800」って、エイプリルフール・ネタだっけ?

 「ウソ800」を飲んでから口にした言葉は、全部嘘になる。

 いいお天気だからそのまま「いい天気だね」と言うと、途端雨が降る、そんな薬。

 ドラえもんは未来へ帰ってしまい、もう二度と会えない。
 その現実を受け止め、のび太は肩を落として言う。「ドラえもんが帰ってくるわけないじゃないか」
 諦観。絶望。

 すると突然、ドラえもんが現れた。
 のび太と、彼の生きる20世紀世界で、今までと同じように一緒に暮らせることになった、と。

 のび太が「ウソ800」を飲んでいたためだった。
 彼の言ったことが、全部嘘になったんだ。

 のび太が口にした「事実」、口にすることで受け入れようとしていた「絶望」が、覆された。

 「帰ってこない」は嘘に。
 「二度と会えない」は嘘に。

 ドラえもんはのび太の元へ戻り、のび太は号泣しながらも「嘘」を口にし続ける。

「ドラえもんは帰ってこない。ずっと一緒に暮らさない」

 泣きながら、抱きしめ合いながら。
 愛しい嘘を叫び続ける。

 
 子どものころ読んだ記憶のままなんで、まちがっている可能性大だが、たしかこんな話があった。
 泣いたおぼえがある。

 
 エイプリルフールが、願いの叶う日だったらいいのに。

 どうせ叶いっこない、とあきらめて口にする、ネガティヴな言葉がすべて嘘になればいいのに。

 タカラジェンヌは誰もが必ず退団する。

 初舞台を踏んだその日から、カウントダウンははじまっている。
 生まれた命がいずれ必ず死ぬように。
 それは、ただの事実。世の理。

 花は散るからこそ美しいし、楽園は有限だからこそ素晴らしい。
 新陳代謝を繰り返して、地球は回り続ける。

 それでも。

 「事実」だとか「理」だとか。
 そんなもので、寂寥も哀惜もぬぐい去れやしない。

 生まれたからどーせ死ぬんだ、人の寿命なんて大抵決まっている、と言ったって、いざ大切な人の命が消えていくとき、平静なんかでいられなかったように。

 祖父は96歳の大往生だったけれど、それでも、その死の直後に「そんなトシまで生きたんだから、いいじゃない」と言って笑った人に、やるせない怒りを感じた。
 理屈じゃない。96だから死んでイイなんて、どうして思える。祖父は次の季節をたのしみにしていた。家族で出かけるイベントを楽しみに、次の約束を楽しみに、家族を愛し猫を愛し、生きようとしていたのに。死んで良かったというのか。

 終わりが来ることと、終わりを悼むことは、また別の感覚だ。

 「事実」であっても。
 「理」であっても。

 
 みんなみんな、嘘になれ。

 わたしの愛するあの人が、いつか必ずいなくなる、なんて事実。そんな理。

 『アデュー』なんてタイトルも、嘘になれ。

 
 わたしはただの一ファンで、ジェンヌの人事情報なんか公式を待つしかない身だし、これまでがそうだったように、年間スケジュールや任期を鑑みて心の折り合いをつけるよう努力しつつ、それでもまだ未来を夢見ている。

 いやその、タイトル発表されて以来、ずーっとヘコんでるからさ。

 
 助けてドラえもん。


 ツキに見放されております。

 今日は雪組『エリザベート』発売日。水くん水くん! 初日初日! 絶対お披露目初日チケをGETだー! と、張り切って梅田へ並びに行きました。
 最近どーもチケ運その他かなしーことばかりなので、ふと思いついて某SNSのHNを変更してみた。
 や、プラス思考な言葉には、幸運が寄ってくるってもんでしょう!!
 だからHNを思い切って「ラッキー★***(名前は伏せる)」にしたのよ。
 梅田のチケ抽選で、すごーくイイ番号が引けますように! と、願いを込めて。

 そしたらさ。

 待ち合わせして一緒に並んだチェリさんには「ラッキィ池田」って言われるしさ。

 「『未涼亜希』で検索してきた人にしか気づかれないよね」と、こっそり更新したまっつまっつ煮え日記が、これまたチェリさんにサラリとバレていたり。

 そして、なんつっても抽選で、白紙(大ハズレ)を引いてみたり。←お約束

 白紙を引く方が難しい抽選率で、何故白紙を引くかな……。
 最前列を購入できる番号を引くのと同じくらい、白紙を引く確率は低いっつーに。

 しょぼんしょぼんしょぼん。

 
 梅田のチケット発売は大盛況。

 最終的にどの程度売れるのかなんて知ったこっちゃないが、並んだ人たちがどの程度本気か、伝わってくるからね。

 いつもの前売り日なら、みんな「迷いがない」の。「千秋楽だけ欲しい」「新公だけが欲しい」「最前列だけが目的」「土日しかいらない」など、目的がはっきりしている。
 だから、目的のチケットがないとわかると、はいソコまで。他のチケットに未練はないので、窓口でのろのろしない。複数枚GETしていた購入整理券だって破棄。
 読み上げられる購入番号に、ヌケがどんどん増えていく。

 だって所詮ムラだもん。
 観られないなんてことは、ありえない。
 初志を曲げてまで、チケットを購入する必要はない。

 ところが本日は。
 みんな、迷う迷う。
 第一希望の日時で購入できなかった場合、「じゃあ、どうしようかしら」って迷っているの。
 購入列が、ぜんぜん進まないの。

 いやあ、どんどんズレ込んでいくんだわ。
 11時購入の人たちが、12時過ぎてもまだ購入できない。で、販売会場には次の12時購入の人たちもやってきているので、人口密度過剰。
 暑いよー。空気薄いよー。

 友だちのチケ購入につきあったりなんだりしていたんだけどさ。
 「12時購入だから、終わったらみんなでランチしようね」って言ってたのに、そーやって購入時間がどんどん遅れていくので、結局時間切れでごはんできなかったっす。
 午後からの予定のある子とかが、それどころではない時間になってしまったので。

 あ、でもチケット売り場のおねーさん親切だったよー。
 いろいろ希望を聞いてくれ、根気よく応対してくれた。
 ……だから、どんどん時間がかかっちゃうんだろうけど、親切なのもやさしいのもありがたい。

 
 とにかく早朝からずーーっと立ちっぱなしだったので、もうへとへとになって解散、睡眠不足も深刻だし、早く家に帰って休もう、と思ったら。

 JR運転休止。

 ホームがこれまた、ものすげー人口密度。
 いつ動くかわかんねー、危ないからホームに上がるなと繰り返し放送中。
 上がるなと言われても、みんなどんどんホームにやってくるし。停まったエスカレータをものともせず、とりあえずホームに来るし。

 あああ、もう人口密集地帯は嫌よぅ。
 立ったまま待つのは嫌よぅ。

 切符払い戻して、迷わず阪急に行きました。阪急は遅くて高いから、あまり使いたくないんだが仕方ない。

 帰宅すると、玄関の土間部分に、ブーツキーパーが猫のおしっこまみれで放置されてました。
 今朝は時間がなくて、猫を親の家に預けられなかったの。
 ウチの猫は、ひとり留守番させられるのが大嫌い。
 わたしに置いてゆかれたので、仕返しに下駄箱の上からブーツキーパーを土間へ落とし、おしっこを引っかけた模様。

 あああ、バカ猫〜〜。
 や、今、こーしてキーを打っているわたしの膝の上で、平和に丸くなってやがりますけどね。
 くそー、愛されてると思って!!
  
 
 ツキに見放されております。
 溜息。

 ……まっつの出てるビデオでも見るかな……。←とりあえず、まっつまっつなら幸福になれるらしい。

 スカステはまだ見られないままっす。


 続けて、宙組『ハロー!ダンシング』の話。

 雪組版が相当トラウマになったので、今後『ハロダン』観劇するのを躊躇した。
 しかし、宙組版には一縷の望みがあった。

 すずはるき。

 この人が出演する、というだけで、「とりあえず、観てみよう」と思えた。

 どりーずメンバーは揃ってすずはるきスキーで、なんやかんや言って4人も宙組『ハロダン』観てるよなあ(笑)。しかも、うち2人は東京組だよなあ(笑)。

 
 星、雪、宙と、どんどん知っている出演者が減っている。
 星は半分、雪では4人、そして宙に至っては、すずはるき以外、誰も知らないという状態。

 わたしの今回の野望は、すずはるき以外、ひとりでもいいから顔と名前をおぼえるだった。
 まあ順当にいって、雪でいうせしるポジションの、鳳翔大くんとやらを、おぼえて帰ることにしよう、と思った。

 ……おぼえました、鳳翔大くん。ははは。

 88期なんだね。今調べて、おどろいた。もっとずーーっと下級生だと思ったよ。

 
 わかっていたことだけれど、すずはるきのひとり舞台でした。

 長でありながら、主役でもあるという、三面六臂の大活躍。

 ゆめみちゃんが娘役であったためにセンターを取れなかった場面を、すずは男役だから任されていた。
 それでいい。それが「タカラヅカ」だから。ゆめみちゃんはすばらしい人だけれど、それでもこれが「タカラヅカ」だから。

 男役スターが真ん中で輝く舞台は、正しく「タカラヅカ」で、安心してたのしめる。

 そういう意味で雪組よりはたのしめたのだけれど、やはり演出のセンスのなさに、盛大に肩を落とした。

 後半の目玉である、全員出演の組ごとに出し物の替わるシーン。
 星組は「都会はこわいところだ、故郷がいちばん!」、雪組は「オレたちパイロット、Hey!」……そして宙組は「戦災孤児たちの夢」。

 すずはるきなのに、子役!!

 主演の学年で考えたって、星86期あかし、雪84期ゆめみ&88期せしる、宙83期すずといちばん年長なのに。しかもすず、男役なのに。娘役のゆめみちゃんよりもっと、無理な若作りはキビシイのに。

 すずはるきに主役をやらせる公演で、何故わざわざ児童劇団のノリの場面をオリジナルで作るんだ、草野よ。

 星も雪も若者・大人の役だったんだってば。
 なんで宙だけ全員子役?!

 草野ってほんと、ナニも考えてないんだ……。

 すず以外は、女子校の文化祭ちっくな公演なんだよ? 
 すずを魅力的に見せてくれなきゃやってらんねー公演なのに、何故子役……。
 そして、タカラヅカ力の低さ5組1の宙組に、性別分化前の子どもをやらせるのはやめようよ……彼らに必要なのは「タカラヅカ」の「男役」「娘役」としてのスキルだってば。
 ダービー帽かぶって男女同じ衣装と振付で踊っていると性別がわからない、性別分化していないことに唖然となる人たちだっつーに。

 演出家の愛と興味のなさが透けて見えて、精神衛生悪いったら。

 いや、宙組はこれでいいのかもしれないけれど。
 性別分化なんかしないのが、ライトでいいのかもしれない。髪が短い人が男役、長いから娘役、という区別の仕方でいいのかもしれん。
 草野せんせーも、「宙組には性別分化不要」と判断し、それゆえに男女みな同じよーに稽古をつけたのかもしれない。
 「男役」ではなく、「男装した女の子」をウリにするのも、モーニング娘。がミュージカルをやるこの時代、たしかに戦略としてアリだろうと思える。
 星雪が「男役のキザりを勉強する場」として、サムさ爆発していたトリオ場面を、宙組では男ひとりと女の子ふたりの場面に変更していた。このことからも、やはり宙組は特別な意図を持って演出しているのかもしれない。
 この公演での2番手スター位置にいる鳳翔大くんの「男装した女の子」っぽさ、「女子校演劇部のスター」っぽさは、「新しい」形なのかもしれない。
 「男役」を「キモチワルイ」と感じる、ヅカファン以外の層へアピールするために、新しいタカラヅカスター像を、宙組で模索しているのかもしれない。
 
 そんななかですずはるきが、「男役」として、美しいこと。

 男装した女の子じゃない。
 男役。

 性別分化していない子どもたちが子役をふつーにごちゃごちゃ演じているなか、「子役は無理があるよ、勘弁してくれよ」と思うくらいに、大人の男。

 よかった。
 彼がいて。
 真ん中に立つ彼を見ることが出来て。

 宙組が新しい感覚を重視して創られている組だとしても、まだソレは発展途上であり、完成形ではないはずだ。
 今現在、商業ベースで舞台を務めるためには、「男装した女の子」ではなく、「男役」が必要だ。
 その意味で、すずはるきの存在が、唯一この公演を支えていた。

 
 すずを眺め、音楽に身を任せているだけで、あっという間の75分だった。
 たのしかったよ。

 だって、出演者はみんなみんな、とっても一生懸命。
 一途な若者たちの息吹を、間近に感じられる、それだけでも楽しめるもの。
 やっぱライヴはいいよね。

 
 『ハロー!ダンシング』というのは、ある意味愉快な、大変興味深い公演だと思う。
 ひとつ間違えると、劇団への不信感がどーんと目盛りアップしてくれちゃうけど(笑)。


 雪組『ハロー!ダンシング』の感想を書いていない。
 てゆーか、書けなかった。
 わたしの周りは「全組観る」「タカラヅカは贔屓だけで回っているのではない」とゆー感覚の人たちが多い。だから『ハロダン』も複数組観ている人たちがちらほらいる。
 その人たちと感想を語り合うのみで、まとまった文章にすることができなかった。
 あまりにも……アレだったからだ。

 『ハロー!ダンシング』という、興行自体に、激しく疑問と反感を持った。

 なにがしたいんだ、この公演?

 星組を観たときは、素直にたのしんだ。あかしというスターを中心に、踊れるけれどナニか足りない美形のともみん、技術が足りていない分は気合いで勝負だ!のドイちゃんを2番手位置に据え(気合いのドイちゃんの方が番手が上に見えた・笑)、達者なゆいちゃんを長とし、実力に破綻無しコロちゃんでがっちり固め、「エンタメ」らしい作品になっていた。
 それでも4500円は高いけど……まあ仕方ないのか。

 それが、雪組は。

 麻樹ゆめみちゃん、初主演おめでとう!

 星組で「スター!あかし」が担っていた部分を、ゆめみ姉さんが受け持っていた。
 ゆめみちゃんはパワフルに踊る踊る、センター取って踊る! 歌も歌うし、MCもするし、孤軍奮闘、獅子奮迅の働き。

 えーと?

 わたしがヅカファンやって19年経つけれど、その間、娘役で主役張ってダンスコンサートをしたのは、ゆうこ姫のみだ。
 ダンサーとして名高い風花舞が、荻田浩一演出で、トップ娘役退団記念イベントで、同期スターの樹里ちゃん他、複数組の新公学年の路線スターを投入し、これでもかと盛りだくさんにして、それでもバウホール3日間だけのイベントだった。

 ゆめみちゃんはすばらしい娘役さんだけど、ゆうこちゃんが3日間だけしかできなかったダンスコンサートを、1週間もやるよーな立場の人でしたっけ?
 アテ書きでもなく、センスがアレな草野旦演出で、1週間。

 劇団はなにを考えて、こんな阿呆な興行を?
 それなら、ゆうこ姫のダンスコンサートを1週間やれよ! 3日間、4回だけの公演なんて、1回チケット取るだけでどれだけ大変だったと思う? チケ難で大変だったんだからね! ……と、いつの話だ。

 いや、実際のところ、ゆめみちゃんはあれほどの重責を負わされていながら、「主役」ではなかった。
 タカラヅカは男役中心、興行として成り立つには、男役スターが必要。男尊女卑とか、そんな問題ではなく純粋にビジネスとして。ジャニーズで女の子ユニットを作ったところで既存のジャニファン相手に興行が成り立たない、とゆーのと同じ。
 獅子奮迅の働きをしながら、ゆめみちゃんの立ち位置は曖昧。
 加えて、男役スターポジのせしるが、なんとも半端な仕事をしている。

 本来ならば、せしるが主役として立たなければならなかった。
 それが、彼に圧倒的に力が不足していたために、長の立場のゆめみちゃんが主役としての責まで負うことになった。

 でもソレ……「タカラヅカ」として、どうなのよ?

 バックダンサーを養成することが目的で、『ハロダン』をやっているのか?
 そうではない、「タカラヅカスター」を育てたいならば、「スター」のいる構成にしなければならない。大勢の中のひとりで踊ることと、群舞で常にセンターを取り、ソロで一場面踊りきり、デュエットダンスをすることでは、まったくチガウ。
 なんの経験も積まずに「スター」でいられる者など、存在しない。タカラヅカはそんなに甘くない。どんなダイヤの原石だって、場面を与えて育てている。
 
 ただ「若さ」「フレッシュさ」「一生懸命さ」だけを売りにして、観客もろくにいないホールで踊らせることに、なんの意味があるんだろう。
 ダンススクールの発表会ではなく、宝塚歌劇団の商業作品なのに。

 どんなに意義が謎の公演であろうと、生徒たちは一生懸命だ。そりゃあもお、せつないほどに。

 星組がなんとかなっていただけに、ここまで思うことはなかったが、雪組を観たあとでは劇団への疑問でいっぱいだ。

 「スター」を育てるつもりがあるなら、きちんと主役を立て、ピンで盛り立てるべきだった。
 せしるはたしかに力不足だが、それでもこの立場を与えられたのだから、問答無用でピンに立たせるべきだった。『エルドラード』で、タニちゃんが壊滅的歌声を披露し、伝説化しているよーに、「できなくても、必要ならばやらせる」のがタカラヅカだろう。
 たぶん、今のせしるではとても務まらなくて、さんざんな評価を受けるだろうけれど、「1公演主役を務めた」という経験は、これからの彼の財産になるはずだ。

 いや、とてもせしるにあかしと同じポジションは任せられない、というならば、そもそもせしるにする必要はなかった。誰か他に、真ん中が務まる若手を出演させればよかっただけのことだ。

 公演の考え方が、わからない。
 バックダンサー養成、ダンススクールの発表会、そんなものをやりたかったのか?
 「ダンス力向上」を謳ってのワークショップらしいが、向上するのはバックダンサー力であって、「タカラヅカ・スキル」とは別だろうよコレ。
 芯のはっきりしない、あちこちお茶を濁した構成。お飾り的にスター位置に置かれたせしる、重責だけ負わされ便利使いされるゆめみちゃん、スター力の低い、タカラヅカ力の低い下級生たち。

 彼らががんばっていることがわかるだけに、せつないやらくやしいやら。
 なんでこんな阿呆な企画で公演やってんだよぉ。

 下級生たちの育て方、使い方をまちがっているとしか思えない。
 くやしいなあ。

 
 あああ、苦言ばかりになるから、感想が書けなかったのよ。
 キャストに含みはまったくない。ゆめみちゃんのことはもっともっと好きになったし、どんなにダメダメでもせしるは好きだー。

 組ごとに変わる、後半の目玉である群舞場面は、物語がわかりやすくて好きだったかな。
 組ごとに変わるデュエットダンス場面は、ははは、やっぱこーゆー「タカラヅカ」シーンは大変なんだね、星もアレだったが雪も大変なことになっていた。
 娘役ちゃんの沙月愛奈ちゃんは健闘していたけれど、相手役のぐっちょんはもう……(笑)。

 でもわたし、このキャストの中でいちばん注目していたのは、じつはぐっちょんです(笑)。
 ケロに似てるよね、彼?

 キングはときどき美しさが目に入ってくるんだけど、概ね目立たなくてびっくりする。
 むしろ、愛輝ゆまくんの方が、やたらと目に入るなあ……『Young Bloods!! 』に引き続き。

 星組より出演者の学年が低いので、スキルが低いのは仕方がないけれど、草野の演出のサムさが栄えるつなぎ場面などは、サムさも倍増してお届け!で、えらいことに。
 いやあ、大変だ。
 彼らがこの経験を元に成長することを祈る。

 あとプログラムもさー、いい加減だよ。「ピンクのつなぎ」とか書いてあるけど、ピンクじゃないの。衣装変わっているのに、星組のプログラムからなんの修正もしてないの。
 草野からの言葉も、たぶん全組同じ原稿のコピー。各組出演者に対してのコメントや贈る言葉もなし。
 ……ほんとに、やる気も誠意もないんだね、この公演に対して。

 みんながんばれ。
 劇団のおやじたちがどんなにアレでも、みんなは負けるな。

 雪組キャストの汗の美しさを、観客は知っているのだから。


 『シークレット・ハンター』は他愛なく、たのしい作品。
 スカスカな分、役者が力業で余白を埋めることが可能。
 

 ダゴベール@トウコは、わざとらしくもクドくて、そしてかわいらしさのある大人の男。
 トウコの洒落た部分、いたずっこな部分を最大限活用できそうなキャラクタ。
 公演が進むにつれどう発展していくかたのしみ。
 

 ジェニファー@あすかは、かわいくてうまくてきれいで、たまらん。なんでこんなにうまいのかなあ、この子。ファニーフェイスのはずなのに、舞台の上で絶世の美女になる、「女優」という不可思議なイキモノ。
 ジェニファーの衣装、みんなすげーかわいいのー。
 ヒロインはこうでなくっちゃ。なにも知らない小学生がママに連れられて客席に坐り、なにもわかんないけどヒロインのお姫様にあこがれる、あの感じよ!
 かわいいお衣装と、かわいいあすか。
 そしてかわいいだけでない、心の奥行きの深さを感じさせる演技。
 正しいヒロイン像に、わくわくする。

 
 悪役男爵@しいちゃんは、なんかなまぬるい笑いが起きていたよーな?

 大人になったねえ、しいちゃん。タニちゃんと同じ属性の人だったのに、『ヘイズ・コード』から大人の男になりつつある。

 実際のところわたしは、「演技をしているしいちゃん」というものがあまりよくわかっていない。この人は正しいタカラヅカスターで、しかもアイドル属性の人で、「なにをやってもしいちゃん」なんだ。や、ここもタニちゃんと同じ。
 どんな役も、「しいちゃん」として完結させてしまう人なので、学年が上がり「しいちゃん」自身が深く大きくなることが、舞台人としての成長、という独特のキャラ。

 素のしいちゃんとはまったくチガウ役を、どう見せてくれるのかたのしみだー。
 初日は役のインパクトだけで終わっちゃった印象。

 
 ボディガード・マックス@すずみんは、クール・ビューティー。
 かっこいい。かっこいいよー。
 すずみんの端正さ、気品を再確認できるっちゅーか、もーすげー好み。
 オチ部分の設定も加え、いちばん萌えたのは、このキャラクタだ。

 
 セルジオ@れおんは、なんか何作もこのキャラばかり見ている気がする……てな、いつものれおん(笑)。がんばれー。
 ついでにマシンガン男イグナシオ@和もがんばれー。
 いろいろいろいろ、大変だと思うけど、がんばれー。

 
 初の大役、情熱の女刑事@みなみちゃんが、かっこいー。スタイルの良さが際立つ……とゆーか、スタイル悪い人が着たら気の毒すぎるパンツルックで客席にお尻ばかり見せている。
 舞台中央のダグを狙う役だから、花道とか舞台の端とかで中央を向いてばかりなので、横顔や後ろ姿が圧倒的に多い。……演出家……もうちょい考えてやれよ……。
 

 えー、各島の住人たち(オチに関わる人々)がまた、クドくてうさんくさくて、素敵です。
 星組ならではだよな。彼らがモブとして存在していても、モブになってないことを逆手に取っている(笑)。
 

 ダグの父のエピソードは謎だし(これもねえ、ついこの間『ノン ノン シュガー!!』で同じ話を観たのよ……なんでカブらせるかな)、ダグの母のキャスティングはさらに謎。

 本来泣かせるはずの場面で、場内大爆笑だったのは、キャスティングミスだろう。なんでこう、無駄な演出をするのかな、こだまっち。

 英真くみちょは素晴らしいんですがね、プログラム写真も含めて。
 サトリちゃんの買ったプログラムを囲んで、みんなで大ウケしました、組長スチール。ぜひチェックしてみて! くみちょ、すごいから!!(笑)

 
 今回、たしかに役は少ないんだけど、なんかみんな、いろんなところでわいわいモブとして登場している。
 上にも書いたけれど、モブがモブにとどまらないのが星組。
 
 ショーのようにみんなでわーっと踊りまくったり客席降りしたり、なんかもー、とにかくにぎやか。
 物語自体が少ない(あっ、言っちゃった)ので、ショータイムをいっぱい入れられました、って感じ。
 や、にぎやかなのはいいことです。

 だって今回、初舞台生公演でもあるんだもの!
 人数多いよ! ひよっこたちも出番多いよ!
 人海戦術やってるよ!

 中詰め?の客席降り場面にて、センター取ってるのが、ますちんだったりして、星組クオリティの奥の深さにツボる(笑)。

 
 でもって、わたしの目を奪いまくるゆーほさとると、鼻の君。

 鼻の君、とゆーのは、今年の文化祭にて、とにかく「鼻」でわたしを魅了した個性的な顔立ちの男の子。名前を蒼羽りくくんという。
 初日の口上のひとりだ。

 やっぱり独特の顔だよね、鼻の君。どこにいてもわかるわ。
 ゆーほさとるがわかるくらい、わかるわ(笑)。

 
 鼻の君を見付けられたおかげで、気が付いた。
 初舞台生が活躍していることに。
 賑やかしに楽器持たされ、がんばって演奏してますよ!

 感心したのは、フィナーレの初舞台生が、ロケット衣装じゃないこと。

 初舞台生なんて所詮デコレーション、脚を出して羽付けて、大階段に載せておけ、てなもんなのに。
 今年はチガウ。

 娘役は娘役の、男役は男役の衣装を付けて、大階段にいるの。

 全員同じだ個性殺せ!のロケットではなく、丸1公演、「娘役」「男役」としてそれぞれ髪型やら着こなしやら考えながら舞台に立てることって、若い彼らにとってどれほどの財産になるだろう。
 デビューした年や組回りによっては、1年間性別分化前のロケット姿だけで過ごすことも、あるだろうに。

 GJだ、こだまっち。

 でも、フィナーレのトウコの衣装は、どーゆー意図で、あんなことに?

 薔薇タン@『ベルばら』の悪夢ふたたび? アレ系の衣装が、トウコにとって鬼門だってことぐらい、わかっているだろうに。

 ……はっ。

 もこもこ衣装に埋もれちゃってるトウコかわいー! 萌え〜〜!! ……とかゆーんぢゃないだろうな?!

 たしかに、ソレはソレで萌えだが……ゲフンゲフン。


 タニちゃんの『A/L』初日を観た段階で、チェリさんはひたすら繰り返していた。

「『A/L』がこんな出来じゃあ、トウコちゃんんのお披露目が心配だわ!」

 もしもし? トウコちゃんんのお披露目作品はこだまっち、『A/L』はサイトーくん。別の演出家ですよ。『A/L』がアレだからって、まだ見ぬこだまっち新作を心配するというのは、なんかおかしいのでは?

「児玉も齋藤も似たよーなもんですよ」

 似たよーなものだが、別人だから! 『A/L』のアレさで、こだまっちを責めるのは、こだまっちに悪いだろう。

 てゆー会話を、たしかにしたんだが。

 安蘭けい大劇場トップお披露目初日、こだまっち作『シークレット・ハンター−この世で、俺に盗めぬものはない−』を観て。

 『A/L』を観た直後に、観るもんぢゃない。

 と、目眩がしましたとも。

 言うならば、サイトー作『厳流』を観た直後に、こだまっち作『龍星』を観てしまったようなもんです。

 サイトーくんとこだまっち、別人なのに同一視されても仕方ないわこりゃ。

 同じコトやりすぎ。

 お姫様を庶民育ちの男が盗み出し、街で庶民デートをする。お姫様を奪おうとする悪人と戦いながら、男とお姫様は恋をする。

 ……ストーリーの根幹部分がカブりすぎていて、エピソードがカブりすぎていて、続けて観ると混乱する。

 パクリだとは言わない。ただのありがち、今までに5万回も見た・読んだ話だから、サイトーが5万と1回目、こだまっちが5万と2回目に同じことをしている、つーだけのこと。

 問題は、その5万と1回目、5万と2回目を、何故同時期に同じ劇団で上演するのかということだ。

 バウホールで『厳流』観て、その足でドラマシティに行って『龍星』観てしまうよーなもんですよ。
 えええ? これって同じ話? や、チガウよね。チガウのはわかるけど……ええっと、なんか、同じモノを観てしまったよーな印象になるのは何故?

 5万と1回目、5万と2回目は、間を何年か空けようよ。『Romance de Paris』だってまだ記憶に新しいのに、立て続けにやられても。

 『厳流』と『龍星』は、作家の「萌え」の位置がちがったために別の物語へと展開している。
 『厳流』は佐々木小次郎と宮本武蔵、ふたりの男とその対決に萌えたことから作られ、『龍星』は偽龍星単体の壮絶な孤独に萌えたことから作られている。

 『A/L』はヒロインのおてんば天使@ウメに萌えて作られ、『シークレット・ハンター』は主人公の泥棒@トウコに萌えて作られている。
 同じネタでも、萌えたキャラの位置がチガウので、物語は別の展開。
 もちろん、別の作家が作った別の物語なんだから、別で当たり前なんだけど……あああ、なんて不自由な作家なんだ、サイトーとこだまっち。

 いや、まあ。
 『A/L』がいろいろアレな出来でも、とってもたのしい作品であるよーに、『シークレット・ハンター』もたのしいのでもういいか、つー感じ。
 ほんとに、なんで同時期にやるかな……。演出家もアレだが、劇団もほんとアレだよな……。

 
 泥棒で詐欺師のダゴベール@トウコが引き受けた仕事は、ある女の誘拐。話を最後まで聞かない彼は、女の素性も気にせずさっさと仕事を済ませたが。
 その女ジェニファー@あすかは、某国のプリンセスだった。
 プリンセス誘拐犯?! 聞いてないよ!!
 仲介者である情報屋セルジオ@れおんとは連絡が取れないし、おまけにジェニファーは殺し屋に狙われているし。行きがかり上ダグはジェニファーを守って、カリブの島々を逃避行。ふたりの間に恋が芽生えるが、所詮王女と泥棒、結ばれるはずもなし。
 ダグを追う女刑事アナ・マリア@みなみ、ジェニファーを狙う殺し屋ジョエル・ロビュション@しいとその手下たちがこんがらがってさあ大変、ダグとジェニファーの未来は?

 他愛ないコメディ。
 だからこそ、トウコの実力が光る。てゆーか、ほんとに力業だから! トウコが支えてるから!(笑)

 公演を重ねれば、もっとなめらかに、かつアツく盛り上がるんだろうけれど、なにしろわたしが観たのは初日で。
 みんないっぱいいっぱい、手順命。主演のふたりも含め、ほんとーの意味でいい出来になっているわけじゃない。トウコは大汗かいてかなりキツそーだったし、あすかちゃんはアレ、一度出遅れしてるよね? とか、みんな大変!状態。

 それでも、トウコが支えている。
 扇の要。
 彼が真ん中に立ち、舞台に立つひとりひとり、そして物語や舞台全体を、引っ張っている。

 力のある人が真ん中にいる、心地よさ。
 すべてが彼に向かい、それを彼が受け止めている、安定感。
 周りが多少「おいた」や「やんちゃ」をしたって平気。だって真ん中は彼だもん。なにがあっても、揺るがない。なにがあっても、受け止めてくれる。

 似て非なる作品『A/L』を観たところだからこそ、作者の萌えどころのちがいと、出演者のパワーバランスのちがいが興味深い。

 『A/L』の、タニちゃんを中心とする全体の「わーっ」としたパワーと輝き。みんな勝手にガチャガチャやっていて、タニちゃん自身はそれを統べようとかまーったくなんにも考えていなくて、技術とはべつのところにある光が、世界で起こるすべてのことを許容している感じ。
 タニちゃんって、すごくおおらかだよね。
 彼の光はまんべんなく照らしているの。その光の中で、他の出演者たちが自由に息をし、各自がなにかを「はじめて」いる。これからきっと、この組は変わっていくんだろう……そんな予感にも、わくわくする。

 『A/L』と『シークレット・ハンター』、タニちゃんとトウコちゃん、宙組と星組。
 どっちがいい悪いではなくて、同じよーな話で同時にお披露目公演(タニちゃんはプレお披露目)やって、持ち味がまったくチガウのがおもしろい。

 さて、我らがトウコの『シークレット・ハンター』は、これからどう変わっていくのだろう。
 光ではなく、力で舞台を吸引する「星組」の舞台。力は熱を放ち、周囲の温度をも上げる。ソレが愛しい、トウコと星組の持ち味。

 トウコにはやっぱエロを期待したいんだけど、ダメかしら?(笑)
 ジェニファーとはプラトニックでいいんだけど、別のところでエロくクドく花開いて欲しいわ。

 他の出演者については、別欄で。


 「節句人形」の話だけで終わってしまった、『さくら』感想の続き。

 なにしろプログラムを前もってチェックしないから、次にナニが起こるかわからない。

 次の「竹灯籠」は、はじまり方があまりに幻想的で美しいので期待したが、あっちゅー間に終わった。
 いやその、他の場面はそれなりにあったのかもしれないけど、場面の主役であるはずのトウコの出ている時間が印象として、すっげー短くて。
 大仰にセリ上がってきたなー、と思ったら、ちょろっと歌っただけでそのままセリ下がっていったり。
 『星影の人』の土方@ゆみこぢゃあるまいし……(笑)。

 主役=出演時間だとはまったく思っていないが、あのタッチ・アンド・ゴーみたいなセリ上がりとセリ下がりはおもしろかった。(いろんなことがツボに入るらしいよ)

 松本悠里大先生は、あいかわらずの妖精ぶりで、年齢不詳の美女。
 だけどわたし、あまり目に入らなかったよーな……。
 やりすぎる星組の気合いの入った「ストーリーを表現するぜ!!」魂の間にいるせいか、ただひたすらきれいな大先生の舞は、薄く感じてしまう。
 たぶんとてもうまいのだろうけれど、わたしみたいな見る目のない者には猫に小判、その舞の素晴らしさはわからない。
 それより、脇の娘役さんたちの方が目に付いてしまう。
 大先生がどんな舞を舞われていたのか、どんな役だったのか、記憶にない……。

 ん? やたら短く感じたのは、松本大先生効果?
 トウコがあまり出ていない印象なのは、松本大先生が相手役だったから? それでわたし、なにもおぼえてないのかしら……。
 ほんとうは、長い場面だったとか?
 

 「花折」は、すずみん主役、相手役しいちゃんの愉快な小品。
 原作は知らない。

 わたしはふたりを眺めていられてとてもたのしかったのだけど、作品全体の構成としてはまちがってるなあ。
 カーテン前で他愛なく繰り広げる程度の内容なのに、すげー長い。
 この長さでやるならば、カーテン前ではなくちゃんとした舞台を使ってセットや効果なども考えて上演するべきだし、カーテン前限定なら、もっと短くまとめるべきだ。

 でも、すずみんがかわいい……。つまずいていたのも、かわいい……。
 
 下手側に坐っていたわたしは、しいちゃんやすずみんがわたしに向かって走ってくるので、すげーたのしかった。ときめいたわ〜(笑)。

 あ、ここってしい×すずだよね?(誰も聞いてない)

 
 そして、クライマックスでありフィナーレである、「さくら」。
 作品タイトルともなっている、まさにいちばん肝な部分。

人目にふれることもなく咲いては散る運命の深山の桜が、風に運ばれてきて鬱金色の桜とともに旅し、大勢の仲間たちがいることを知り、短くも美しく生き抜こうと歌い舞う。

 と、チラシに書いてあるんだが。

 まずわたし、この日本語よくわかんない……。

 「風に運ばれてきて鬱金色の桜とともに旅し」って、どういうことだろう。

 「風に運ばれてき“た”鬱金色の桜とともに旅し」ならまだわかるんだけど。

 深山桜くんが、やってきた鬱金桜ちゃんと出会って、それから一緒に旅をして……って意味よね。

 「深山の桜が、風に運ばれ“、”鬱金色の桜とともに旅し」ならまだわかるんだけど。

 深山桜くんが風に運ばれ、そのことで鬱金桜ちゃんと出会い、それから一緒に旅をして……って意味よね。

 でも、「風に運ばれてきて鬱金色の桜とともに旅し」だと、意味わかんない……。

 「風に運ばれて“きて”」で、視点が混乱しているの。
 深山桜くん視点で書きはじめたのに、「運ばれて“きて”」で、鬱金桜ちゃん視点になっている。
 深山桜くんは「行った」のであって、彼が「来た」と思えるのは鬱金桜ちゃん視点よ。

 あ、そうか。
 もともと鬱金桜ちゃん視点なのか?

 主人公は鬱金桜ちゃんで、彼女の元に深山桜くんがやって来ることで、物語がはじまる?

 でもそれなら、句読点の位置がおかしい。

 「人目にふれることもなく咲いては散る運命の深山の桜が風に運ばれてきて“、”鬱金色の桜とともに」でないと。
 
 それに、鬱金桜ちゃん視点で文章を統一すると、深山桜くんの修飾が重すぎるんだよなー。
 
 それともまったく別の意味の文章なのかなあ。
 公式の文章って、よくわかんないんだよなあ、いつも。

 文章はわからないけれど、コンセプトはなんとなく理解できた。
 そして、おどろいた。

 そんな話だとは、まったく思わなかったから(笑)。

 ひとりぼっちで寂しい桜が、「仲間がいる! ボクは独りぢゃないんだ! 長く生きられないことは知ってるけど、強く生きるよ!!」と握り拳で瞳をきらきらさせるよーな物語だとは、夢にも思わなかった。

 てゆーかソレは、すてに「桜」というモノのイメージとかけはなれているのでは?

 「桜」ってのはもっと、ストイックなものだと思っていた。

 それこそ、深山にて人目にふれることもなく咲いては散ることを、黙して受け止めているよーな。

 深山桜が鬱金桜に恋をして、結ばれるはずもなく散っていき、魂だけが睦み合い、壮大な見渡す限りの桜のボレロになる……的な物語かと勝手に思っていた。
 や、深山だ鬱金だのはわかってなかったけど。

 あとからチラシの解説見てびっくりしたくらい、舞台は別にそんな前向きな中学生日記@闘病生活みたいな話には見えなかったので、自分が観た神秘的な美しさを信じておくことにする(笑)。

 手のひらからはらはらと桜の花びらがこぼれる演出は、とてもファンタスティックで美しいです。
 トウコちゃんがまた、きれいなんだ。

 静かにはじまった物語が、最後の総踊りになるころには、ぞくぞくするよーな「日本の美」を、「タカラヅカの美」を味わえるよ。

 鳴り物入りの一竹辻が花のお衣装はそりゃ美しいのですが、じつはタカラヅカの舞台の上では、けっこー地味。
 よく見れば幻想的でその場面の世界観にあってはいるんだけど、タカラヅカ的ではないのよね。

 タカラヅカは「ガラス玉」を「ダイアモンド」に変える、また、そう「見せる」ことを信条とする舞台なんだなあ、と思った。

 本物のダイアモンドでなければキラキラしない、美しくない、なんてことはヅカの舞台ではナンセンス。

 おもしろいねえ。


 大和悠河お茶会@『A/L』に参加。『維新回天・竜馬伝!』のときに続いて、2回目。なんか味をしめたのか、こあら?

 いやあ、待てど暮らせどはじまらないんで、どーなることかと思ったよ。公演終了から優に2時間半。会場に入れるよーになってから1時間半?
 場所が梅田で良かったよねえ。終了が午後11時前ぢゃ、ムラだったら近隣の人ですら最後まで参加できなかったろうよ。
 みんな待ちくたびれてお茶やケーキに手を出すし。
 わたしはお茶会参加歴ほとんどないけど、乾杯前にお茶を飲み干したり、ケーキを食べきったりするお茶会ははじめてだった。
 わたしがこれまで参加したお茶会は、お茶は乾杯ではじめて口を付ける、ケーキは握手や撮影などでスターさんが「お仕事」をしている間に食べる、だったからさー。
 それでもほら、待ちくたびれたから食べはじめたわけで、みんな1時間位は神妙に待っていたのよ。
 他のテーブルが食べはじめたのを見て、わたしも食べはじめたんだけど……お皿にデコレーションされているフルーツソースが、固まって、取れなかった。わたしだけでなく、周囲の人たちのも。
 ちょっとウケたわ……リッツ・カールトンのケーキなのになー。もったいねー。

 今回はふつーに丸テーブルが整然と並んでました。
 リングサイド観覧席みたいな独創性豊かな席順ではなく、ふつーのお茶会風でした。

 さて、お茶会がはじまる前に。
 タニちゃんへの質問と、簡単なクイズの解答を記入することになっていた。
 質問はまあ、いつものごとくアレなことをてきとーに書いて提出。

 問題は、クイズだ。

「悠河さんの、本日のパンツの色を当ててください」

 パンツの色?(白目)

 タタタタタニちゃんの下着の色を当てろと?
「おねーさん、パンツ何色?」は、イタズラ電話の定例句だ。
 タニちゃんのパンツの色。パンツの色かー。すげえなタニ会、斬新な趣向だわ!!

 タニちゃんの回答は、やっぱあのステージの上で、ファスナーを下ろして「チラ見せ」してくれるってことかしら!!

 …………わかってますよ。
 パンツはぱんつでも、パンツちがいだってことは。
 でも、司会者の発音が最初アレだったんだもん。2回目は正しい発音で言い直してくれたけれど。

 わざわざクイズにするくらいだから、どれくらいすごい色のパンツなのかと思ったが。

 白でした。

 ロングブーツに白パンツ、このまま『ベルサイユのばら』の舞踏会シーンに混ざっていてOKって感じ。

 タニちゃん登場シーンはすごかったねー。

 タニちゃんはルパンばりのマント姿でかっこよく登場してくれたんだけど、それよりおもしろかったのは、司会者のポエム朗読。

 『ハケンの品格』で篠原涼子がハートの着ぐるみかぶってチョコレートのMCしてたじゃないですか、アレです、モロ。
 声も、しゃべり方も、トーンも。
 かわいー嘘くさい声で、サムいポエムを「棒読み」するんですよ!! ドラマと同じっす。テキストがサムいことも、棒読みなのも! 
 場内爆笑。
 そして、笑いの発作が収まらないウチに、タニちゃんが登場する? と見せかけて、さんざんさらに待たされる、という、素敵な趣向。

 前回のお茶会は、司会者がちがったと思う。こんなにおもしろい人じゃなかった。ポエムがふつーにサムいだけで、爆笑にはならなかったもの。
 GJ、司会の人!! あのテキストを朗読するんだから、これくらいキャラが立ってなきゃだわ!

 タニちゃんのお茶会は、「まがいもの臭さ」で統一されていて、それがすごーく素敵なの。
 司会はひたすら、おかしな日本語でポエムを奏でる。ふつーに言えばひとことで終わるよーなことを、長々と詩的に飾り立てて話す。装飾語の多さで、本文が見えなくなっている系ね。
 なんというか、そこにあるのは「非現実」なの。
 ここは「特別な場所」であり、参加者は一時現実を忘れ、別の価値観に身を任せる。

 そこに登場する、「大和悠河」というキャラクタがまた、「非現実」を盛り上げる存在なんだ。
 マントを着て登場したところもそうだけど、タニちゃんが登場すると、それだけで歓声が上がるのね。「きゃー! きゃー!」な気分になるの。
 席でかしこまってスターさんを眺める、というより、「きゃー、素敵! きゃー!」と黄色い声を張り上げたくなる「別物感」。
 タニちゃんはその美しさと華だけでなく、「嘘くさく」も「スター像」を創りあげてくれるので、安心して「きゃー!」な気持ちになれるの。

 タニちゃん自身はなんつーかもー、「いい人だなぁ」「やさしいなぁ」とか、いちいちなにかっちゃー思える人なんだけれど。
 そーゆーこととは別の部分で、「スター」として思い存分ミーハーして、童心に返ることをゆるしてくれる存在なの。

 「嘘」だとわかっていて、愉しむ時間。かりそめの王国で、美貌の王を奉る気持ちよさ。
 わたしは本名のわたしではなく、今ここにいるだけの存在で、タニちゃんだけに集中していられる。
 「まがいもの」であることの安心感。
 世界観が統一されていて、潔い。

 「きゃー! タニちゃん素敵! きゃー!」と、やってきました。心から。
 ああ気持ちいー。

 いやその、お茶会の進行自体はかなり手に汗握る感じなんだけど、それでも「スターさんのお茶会に参加している」特別感を、たーっぷり味わせてくれる。

 
 お茶会のメインは前回に引き続き、「参加者の質問を、タニちゃんがランダムに選んで勝手に回答する」というもの。
 なにしろランダムだから、流れもテーマもあったもんぢゃないんだが。
 公演絡みの定番的質問の他は、トップスター関連の質問、相手役のウメちゃんのことへの質問がわりとあったかな。

 いやもお、タニちゃんの語るウメちゃんの姿が、かわいくて。

 お稽古の休憩時間などに、ウメちゃんが壁に向かってひとりでなにやらやっているらしい。壁を叩いたりなんだり、ひとりでじたばた。
 なにをしているのかタニちゃんが問うと、ウメちゃんの同期のあゆちゃんが「あれは、テレてるんです」と教えてくれた……そうな。
 お稽古はちゃんとふつーにやるのに。
 ソレが終わると、素に戻ってテレまくるらしい。

 壁に向かってじたばたするウメ。……かっ、かわいい!!

 ありえないくらいかわいい。

 そりゃそーだよなあ。
 タニちゃんに「ボクのおてんば天使♪」とか真顔で言われて、テレないわけないよなー。

 そしてタニちゃんは、ナチュラルに、「王子ちゃま」。

 キャトレで売っている、タニちゃんのオリジナル・グッズ。
 「ガラスの靴を片手に、陽気な仲間たちと共に楽園を旅する“王子さま”」と解説してある、アレ。
 タニちゃんはほんとにアレ、こだわりをもってデザイン監修し、また、「シンデレラはファンの皆様、私が“王子ちゃま”」と、真顔で言ってくれました。

 王子ちゃま……。
 王子ちゃまって言った……。王子「様」ぢゃない……。

 本気なんだ、王子ちゃま!!
 いいなあ、大和悠河。本気でこーゆー「世界観」を貫いてくれることが、心地いい。

 王子様だものね。
 タニちゃんは、ほんとうに。
 きらきらきらきら、現実を忘れさせるほど、美しい人。

 いやはや。
 とてもたのしめました。
 進行自体は行き当たりばったりというか、かなりヤヴァめなのに、それでもなんつーかこー、他にはない味があるよなぁ(笑)。

 帰るとき、どのテーブルのお皿も、ケーキはなくなっていてももれなくフルーツソースが固まったまま残っているのを見て、またツボった(笑)。

 
 そうそう、ツボといえば、お茶会のおみやげが、すごかった。

 タニちゃんの顔写真付きのうちわ。

 見るなり爆笑しました。
 いや、うちわがひとつ、ぽつんと置いてあることにもツボったんだけど、「何故この写真?」というタニちゃんの微妙な写りと(タニちゃんはもっと美人だい!)、「何故わざわざ下をぼかす?」という微妙な画像処理と、この季節にうちわをもらって、どうしろと? とゆーことと、鞄に入らないよ、これ剥き出しで持って、電車乗るのか?! とか、いろいろいろいろコンボでツボったんですよ。

 いいなー。千秋楽行くとき、このうちわ持って行こうっと!(いや、楽を観るかどうか決めてないけど)←花組を**回観た上、東宝まで追いかける予定のド貧乏ゆえ……。


 
 宝塚舞踊詩『さくら−妖しいまでに美しいおまえ−』という、とんでもないタイトルと、怖すぎるポスターから、よくわかんねーけど、耽美なんだろうなと思っていた。

 コメディだったとは。

 いやその。
 ふつーの場面もあるんだけど、50分の短いショーで、その中で初舞台生口上があってさ、チョンパのプロローグと桜のボレロのフィナーレをのぞくと、「節句人形」「竹灯籠」「オペレッタ狂言 花折」しかないんですけど。
 でもって、「節句人形」と「花折」はコメディなんですけど。「竹灯籠」はトウコちゃん、なにしに出てきたの? ってくらい、短いんですけど。

 全体の印象が「コメディ」でも、仕方あるまい。

 厳密にいうと、日本物ショーではありませんでした。
 衣装と世界観が和モノなだけの、短編ミュージカル・ショー?
 真面目に「耽美で幽玄な、日本物ショーを観るのよ」と思って着席すると、肩すかしかも。
 フィナーレの「さくら」は圧巻なんだけどねー。そこにたどりつくまでが、コメディで洋モノ・ショーちっくでねー。

 トウコちゃんのお披露目、ということもそうだし、トップ代替わりにかこつけた番手の変動を見せつけられるはじめての場としてもまた、感慨深いものだった。

 れおんが2番手になることはわかっていたけれど、なんとなく察するのと、実際に目にするのとではまったくチガウ。
 ここまで完璧に下克上が行われたのを見るのは、めずらしい。アイドル抜擢組の月組以外では、記憶にない。(反対に、月組ではアイドル抜擢当然であるがゆえに、学年逆転にトップ就任もアリになっている)
 番手を逆転させたいとき、路線からはずしたいとき、劇団は組替えなどをしてお茶を濁していたからなー。
 ここは夢の世界だから。あからさまに誰かが落とされるところは、あえて見せない。
 ……そーゆーもんだと思っていたからこそ、同じ組のままで番手が逆転している様を見せられるのは、複雑だ。
 それでも、辞めないでいてくれたしいちゃんとすずみんに感謝。あなたたちの舞台を、少しでも長く観ていたい。

 で、わたしは、このみょーな日本物ショー、好きだ。

 耽美でもなければエロでもないが、それでもトウコと星組のカラーが出ていて愉快。
 シリアスにばーんと決める桜のボレロもらしいし、「デュワッデュワ〜♪」なノリで横揺れしちゃうお雛様たちのドタバタも、なんとも星組らしい。

 フィナーレの気持ちよさをのぞけば、ほんとに「節句人形」がツボった。
 あそこだけ何回でも観たい(笑)。

 なにしろなんの予備知識もなく観ているから。

 プロローグが終わり、花の2番手襲名@れおんが、りりしい狩衣姿で登場。烏帽子の飾りが長ぇ。揺れる揺れる。
 本舞台にはそれこそ幽玄な桜の幕がどーん。
「私は桜を憎む……」
 芝居っ気たっぷりに、深刻に大仰に、公達れおんは言う。

 なにやら、シリアスな、壮大な物語の予感。
 桜の季節に恋人でも亡くした? 戦で大切なものを失った? それとも、桜の精に恋でもした?

 深刻一直線に公達れおんは歌いながら銀橋を渡る。
 なにを言ってるんだが、正直歌詞はよく聞こえない(笑)んだけど、なんか、ものすごーく、くだらないことを言っているよーな気がする?

 下手花道にたどり着くと、やはり公達姿のしゅんと水輝涼が出てきて、れおんの両脇で膝を付いた。れおんの部下らしい。

 うっわー。
 水輝涼キターー!!
 れおんを真ん中に、しゅんと水輝涼、ってなんか、新しい時代だなあ。しみじみ。

 彼らがキメる間に、本舞台の幕が開く。

 そこには、朱色の雛壇が。

 お内裏様と、右大臣・左大臣かよ!!

 プログラムをチェックしていたりしないので、れおんとしゅん・水輝の役名なんか知らなかった。「節句人形」という場のタイトルも知らなかった。

 リアル雛飾り。

 あああありえねー!
 人間が、マジで雛飾りやってるー。雛人形やってるー。

 お内裏様@れおんとお雛様@あすか、三人官女に五人囃子、そして右近左近の大臣たちがソウルフルに歌う。
「桜が咲いて季節が変わると、納戸の中行き。次は五月人形の出番。そんなのいやだ〜〜、デュワッデュワッ♪」

「革命だ! 反乱だ! 武力蜂起だ! 力尽くで、1年中雛飾りにしてやる!!」
 お内裏様@れおんが意気をあげ、血の気の多そうな三人官女以下が賛同する。

 舞台が回転すると、そこは五月人形たちの場所。
 木箱の前にそれぞれの人形がスタンバイしている。
 武者人形@トウコのかわいらしさ(武者人形がかわいいって?! だって、「ちょこっと」してるんだもん。キュートなんだもん)もさることながら、桃太郎@すずみんに、心奮わされる。
 桃太郎って!! 日本一ののぼり付きって!!
 関羽と張飛のヒゲ男ふたり@和とあかしの愉快系ビジュアルにもウケ、鍾馗@しいちゃんがなんかすげーかっこいいし、神武天皇@ゆかりがどえりゃー美しい。
 なんなんだお前ら、オイシイぞー?!

 そこにゲリラ的に殴り込む、雛人形ソルジャーたち。
 虚を突かれた五月人形たちを次々木箱へ封印。

 てか、箱に入ってるよ!! 入れられちゃってるよ!!

 トウコのみ、外から中が見える状態。他の人形たちはフタを閉められてしまうので、中でどうしているかは見えない。
 みんなひとり1箱、関羽と張飛のみペアで1箱。

 箱入りトウコが可愛いっ!!

 あのフィギュア、発売してくれ。買う。絶対買う。

 それから、狭い密室にふたりきりの、和とあかしはナニやってますか?!ハァハァ。←落ち着け。
 や、ナニかする隙間も余裕もないとはいえ、会話はしてるよなー、きっと。ナニ話してるんだろーなー(笑)。

 勝利の雛人形たち、失意の武者人形。

 そこへやってくる、お雛様@あすか。彼女だけはこの戦いに疑問をもっており、ミッションに参加していなかったんだ。
 彼女は閉じこめられている武者@トウコと出会い……。

 お雛様と、五月人形の恋!! てか、不倫!!(白目)

 いわば、アントワネットとフェルゼンですよ!!

 決して結ばれない立場ながら、宿命の恋に落ちた男と女。
 戦場の中で芽生えた恋。

 ドラマティックですよ!!(笑)

 そこへ人形の大敵ネズミ軍団@組長他襲来、フランス人形@恐怖の白塗り娘役たち、おもちゃの兵隊@横顔しか見えなかったがこちらも白塗りだよね?若手男役たちも参戦、ドリフ的しっちゃかめっちゃかに!

 禁断の恋に落ちた武者人形とお雛様の運命は?!

 …………いやあ、なんちゅーかもー、星組クオリティ。

 トウコをはじめ、主要キャラはとびきりうさんくさく(誉め言葉)アツくアツく力任せにみんなバカ(誉め言葉)で愉快でたまりません。

 オチまで完璧なミュージカル・コメディ。
 あのポスターであのタイトルで、ありえねえ(笑)。

 たのしいってば。


 トウコちゃん、あすかちゃん、トップスターお披露目公演初日おめでとう。

 『さくら』『シークレット・ハンター』初日に行ってきました。

 言葉がない。
 この日を迎えることができて、ほんとうによかった。

 トップになるべき人。安蘭けいに対し、そう思ってから10年が経った。
 この10年間の想いを振り返ると、それだけで感無量、いっぱいいっぱいになってしまう。
 時代は変わり、いろいろいろいろあったけれど、トウコちゃんに相応しい場所はここだと思う。
 だから、この場所で充実した時を過ごして欲しい。輝いて欲しい。

 作品云々の感想を言うよりも。

 なんかね、「今」、ここ……お披露目初日の客席にいることが、うれしくてならない。
 舞台も客席も、ものすごく濃密なの。
 「わかった」人たちだけで埋められた空間。
 だから拍手の音がチガウし、舞台上の出来事に対する反応がチガウの。ふつーのときと。

 トウコちゃんを愛し、トウコちゃんの一挙手一投足に反応する人たちで埋まっている。全員がそうでなくたって、かなりの数を占めている。
 みんながみんな、「同じ方向」を向いた空間、てのは貴重だ。
 熱い、濃い、重い空気がひとつの方向を向き、爆発する。

 その、快感。

 気持ちいい。
 すっげ、気持ちいいってばよ。

 また、安蘭けいというのが、そーゆー濃度の高い空気の集中に耐えられるスターだから。
 むしろ、ねばっこいまでの空気を味方につけ、操る人だから。

 幸福な、両想い。

 舞台と客席とが、ちゃんと会話をして向き合って、両想いになっている。

 しあわせだ。

 あちこちでショーストップせんばかりの拍手。
 トウコがいつも、強引に拍手を遮って舞台を進める。
 そう、「動かす」のはトウコしかありえない。彼の意志になら観客は従う。

 芝居の間はともかくとして。
 フィナーレになると、どんどんどんどんアツくなる。
 舞台も、客席も。
 ヒートアップ。
 うわ、このノリ、まぎれもなく星組だ(笑)、と思う。

 くわしいことは置くとして、芝居もショーもとりあえずエロさには欠けたので、観客のデュエットダンスへの食いつきがすごい。

 深紅の衣装のトウあすが、大階段中央で抱き合って登場するところから、客席で一気にオペラグラスが上がる(笑)。

 リフトとかはないけれど、ふたりがきちんと向き合い、大切に踊っていることがわかる、デュエットダンス。
 大汗かいてるトウコちゃん(笑)と、ひたすら涼しく美しいあすかちゃん。
 信頼、のある男と女。
 この空気感が、ゾクゾクする。

 で、デュエットダンスも半ばを過ぎるとみんなオペラが下りているわけよ。観客も、オペラで顔ばっか見ているわけじゃなく、ダンス自体も見るわけだから。

 それが。

 デュエダンのラスト、トウあすは舞台中央でまたしても抱き合い、キメて終了する。

 ここで。

 一斉に、オペラが上がる!(笑)

 みんな、食いつき良すぎ!!(笑)
 トウコが立ちつくし、せつなげな表情で片手をあげて静止、あすかはその下肢にすがりつく形で終了、そのままセリ下がり……なんだけど。

 みんな、トウコのエロ表情見るため、オペラグラスでガン見だもんよ。

 わたしもそうだけど、見渡す限り客席が一斉に動いたので、ツボに入った。
 で、トウコが完全にセリ下がるまで、オペラ固定。
 ……みんな、好きやねええ(笑)。

 いやあ、エロさの少ない公演だからこそ、ここは見どころですよみなさん!
 トウコちゃんがえっちくさい表情してますから!!(笑)

 
 フィナーレからかなりキてたんだけど、公演後のトウコちゃんの挨拶までくると、泣けてしょーがないっすよ。
 長い長い道のりを超えて、ここまでたどり着いた人の言葉だから、胸に響く。
 
 美しい人の、美しい涙と、鳴りやまない拍手。

 劇場が奮えるような拍手。
 音が反響しあっているような。

 そのくせ、トウコが音頭を取ると、ぴたりと手拍子が揃う。

 『フェット・アンペリアル』千秋楽と同じ。
 練習したわけじゃないのに、指示されたわけでもないのに、客席の手拍子がそろうの。
 拍手がチャ・チャ・チャ!の手拍子となり、もれなく静止。えええ? 練習なし、誰の指示もなく2500人が自発的にやって、ぴたりとそろうの?! ありえねええ。

 これぞ、星組クオリティ。

 わたしももちろん、トウコの合図に合わせて手拍子→静止と、ぴたりとキメたけれど。
 自分がやっておいてなんだが、信じられない、なんでみんなこんなことできるの?!(笑)
 あの場面でそーゆーことをやってのけるトウコもトウコだ。決まらなかったら、さみしいじゃんよ。……ぴたりと決まるのが星組だけど!

 あーもー、ダイスキだ星組!!

 トウコちゃん、あすかちゃんおめでとう。
 しあわせな門出を祈る。


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