『静岡2』が終わりました。
 ………………主人公、自殺しちゃいましたが………………これ、バッド・エンディングですか?
 亡き妻メアリーから手紙を受け取り、「まさか、メアリーが生きている……?」と、ふたりの思い出の地、サイレント・ヒルにやってきたジェイムス。
 さんざんいやな目に遭って、冒険して、殺して殺されて、よーやくたどりついた答えが、
「そうだ、こうすればメアリーに会えるんだ」
 って、自殺しやがった……。

 そ・れ・な・ら、最初からやっておけ。

 やっぱりバッド・エンディング??
 謎はなにひとつ解けないままだったんですけど。ローラってなに? アンジェラはなによ?? そもそもマリアってなによーっ。
 わたしのプレイの仕方が悪かったの……?

「ほんと、ろくなゲームじゃないよな、静岡」
「ストレス溜まるばっかで、爽快感がない」
「こわくないよね。嫌な気持ちになるだけで」
「生理的に嫌なものばかりを書き込んである」
「システムへぼいし、設定はいい加減。その場限りの演出ばかり」
「キャラクターは電波なヤツばかり」
「ストーリーはこじつけ。必然性もリアリティもない」
「ひどいゲームだ」

 それじゃなんでやるんだ、『静岡』。
 デキの悪さを理不尽さをアンフェアさをツッコミながら、文句たらたらプレイするのがたのしみ方か。
 わたしも弟も、『静岡』の話になると文句ばかりさ。そして、『バイオハザード』のクオリティの高さやセンスの良さをなつかしく語ってしまうのだ。『バイオ』だって、つっこむところは多分にあるんだがな。……それでも、『静岡』に比べれば、あちらはパラダイスさ。

 ところで、弟とふたりでメシ食いに行こうとしたら、わたしの自転車が消えてました。
 犯人は父。
 勝手にひとの自転車、乗っていきやがった……。ひ、ひとこと断れ。わたしと弟は、焼きたてパン食べ放題の某レストランに行く約束してたのに。そこまで行くには、自転車が必需品だったのに。

 仕方なく、もうずいぶん誰も使っていない、折りたたみ自転車を引っ張り出しました。
 こ、こわっ。
 メンテされていない折りたたみ自転車は、不吉な音をたてつづける。えーとコレ、大丈夫? 途中で分解したりしない? どきどき。

 某レストランが、いつもよりずっと遠く感じられました……。

 
 ふと思いついて、昔自分が書いたヅカパロ作品を読み返しました。

 う・ひゃー。
 盛大に、愛が空回りしている……。

 たしか当時、仕事も入っていたのに、忙しかったはずなのに、それでも、とてつもない情熱をかけて書いたんだわ。
 あれほど手こずったことなんて、仕事も併せて一度もないよ……。

 いちばん最初に書き出したのが、主役ふたりのヤッているシーンで、よりによってソレを最初に書いたもんだから、あとになって本文と差異が生じて、結局そのシーンはボツになった……。
 そして、やほひを謳いながらも、本文中では一度も直接描写のない小説になってしまった。あらら。

 ほんとにもー……大丈夫なのか、この小説。読んで意味わかるのかなあ??
 時間が経ってから読み返すと、とってもしょぼんな気持ちに。
 いや、誰にも負けない愛がそこにあることは、今も自信満々だけど。……その愛が、盛大にすべっているのは、否めない……恥ずかしい……。

 ほんとにほんとに、大好きだったんだ、『血と砂』。
 好きすぎて、手に余ったんだ。

 いやあ、人生とは恥を積み重ねることですねえ。

 
 だってわたしは今、ヲトメだから。
 愛しのダーリンだけを見つめるの。

 3回目の『王家に捧ぐ歌』観劇。
 貸切公演B席の隅っこでささやかに、ひとりだけを見つめ続ける。

 潔いほどに、ケロしか見ていません。

 この人、ものすごく表情が変わる。
 細かいの。
 剣舐めも、指舐めも見所だけど、1幕終わりの台詞のないあたりは、秀逸だよ。
 捕らえられた父王と、エジプト兵士。
 エチオピア解放を唱えるラダメスを見る目……。

 狂気に満ちた危ない男なのに、ときおり、泣きそうにせつない目をする……。

 くらくら。
 誰か助けてください。
 この人、素敵すぎます。

 ケロ・ウバルドに感情移入して『王家…』を観ると、やばいです。気分はテロリスト。
 彼の狂気を突き詰めていく作業は、とてもたのしそうだ。

 なんといっても『王家…』ときたら穴だらけな物語なんで、わからないところが山ほどあります。
 ウバルドはその謎な部分の代表みたいな男です。

 この男、なんなんですか?

 敗戦国エチオピアの王の息子、なのよね?
 エジプトにいるってことは、彼もまた囚人なの?
 でもそれにしては、自由に王宮を闊歩しすぎてないか?
 しかも、帯剣してますが。
 実は捕まってないの? だとしても、いくらなんでも堂々としすぎてるだろ。世界一の強国エジプトは、敗戦国の戦士が簡単に忍び込み、自由に歩き回れるくらい軍事に無関心なの?

 プログラムや機関雑誌を買って読めばわかるのかもしれんが、わたしにとってば舞台がすべてだ。舞台を観ただけで判断するさ。
 で、舞台を観ているだけじゃ、さっぱりわからない。
 ウバルドって、なに? この男の存在、変。
 とっても都合良くアイーダを虐め、とっても都合良くファラオを暗殺する。
 なんていい加減な設定。

 ああ、だけど。
 そのみょーな設定の男から、目が離せない。

 勝手にいろいろ考える。

 ウバルドって、アイーダのこと、愛してるよね?

 ウバルドは王の息子だが、「王子」には見えない。実際、そう呼ばれることもない。
 家臣のカマンテまとぶや、サウフェすずみんと一体化しているところを見ても、まっとーに王子様だとは思えない。
 王の息子だが、王子ではない。彼の母親は身分が低く、正式な王子としての身分を持ってないんじゃねーか?
 だから彼は考える。
 王位を継ぐためには、正妃の娘、第一王位継承者であるアイーダを娶るしかないと。
 ウバルドのアタマの中にあったドリーム。美しい異母妹アイーダと結婚し、ラブラブ王様生活。「いやだ、お兄様ったら」「こら、もうお兄様じゃないだろう」「だって……ポッ」「こいつぅ」「いやん」な素敵未来。
 それが。
 国は戦争に負けるわ、捕虜になるわ、しかも未来の妻アイーダは、敵国の将軍なんぞに目をハート型にしているし。ちょっと待った、俺の未来予想図どうしてくれる?!
 ……ウバルドが、逆ギレしてアイーダを虐めまくったり、暴走しまくるのも、納得だわ……こう考えると。

 だってウバルド、アイーダのこと、愛してるよね?
 だからこそ、彼女をあそこまで憎むのよね?
 兄の妹に対する感情じゃ、ないよね? もっと切実でどろどろした、男と女の愛憎だよね?

 ウバルドと、カマンテ、サウフェの関係も今イチ謎。
 いちお、ウバルドがえらそーにしてるけど、根本的に同質として描かれているからなあ。
 ウバルドがデキてるとしたら、どっちとがいいですか?(笑) 彼は倫理とか理性とか持ち合わせが少なそうなので、手近で処理していそうだなと。
 カマンテは、ウバルドと似たもの同士って気がする。同じくらい、最悪に見える。唯一サウフェは多少情緒を持っているかも。じゃ、サウフェがひとり受状態とか。彼はアイーダに惚れてるみたいだから、受として合格だよねえ。
 この最悪な男3人で、ドロドロしている救いのない話とか、描いてみたいなー(笑)。
 すずみんが受?!とか考えちゃうと、正気に戻るんだけどな(笑)。

 ああそれにしても、ケロちゃんラ〜ヴ。
 わたしは今ヲトメ。

             ☆

 今日は月バウ発売日。
 わたしは三番街へ並びに行きました。
 もちろんそれは、CANちゃんのためにです。
 忙しいCANちゃんは、土日しか観劇できないの。土日だって、下手したら「結婚式です」と嘘をつかなければ休めないの。
 わたしはチケット余らせているくらいだから、どーでもいいんだけど、CANちゃんのためにいい番号の抽選券を引かなければ。

 ナメてました。

 きりやんが出ないんだから、並びはきっとスカスカ。さぞかし人数少ないだろーな、と。
 千秋楽でも土日でも、鼻歌まじりに買えるはずさ。
 CANちゃん、待っててね。いい席で大好きなさららんを観られるよ、きっと!

 すごい人数でした。並び。

 わたしとWHITEちゃんは、まさかの白紙を引きました。
 呆然。
 白紙? 白紙って、はずれ? 買えないってか?
 たかがさららんだぞ?!(失礼) なんなのよ、それっ?!

 江戸モノだよ? 人情モノだよ? 青天だよ?
 しかもしかも、谷正純演出だよ?!
 きりやん以外で誰がこんなハンデだらけの作品を演じられるというの。
(コウちゃんなら余裕で演じられるでしょう。ついでに、ケロでもぜんぜんOK。でも、彼らが主演することなどあり得ない)

「みんな、どうして? たかが、さららんだよ?!」
 と、さららんラヴこの道何年、のCANちゃんでさえ、首を傾げていました。

 結果を言おう。
 たしかに、並びの人数は多かった。かしげバウくらいの人数は並んでいたさ。
 しかし。

 実際に買う人は、ほとんどいなかったのだ。

 ……なんだったんだよ、あれは。
 買わないのに、ただ並んだだけ。
 ファンクラブ制度の弊害だ。
 一般の、ほんとーにさららんや、他の出演者のファンで、あるいは作品に興味があったりする、ふつーの人たちを閉め出しているよ。
 発売枚数よりはるかに多い人たちが並んだんだ、はずれを引き、泣く泣く購入をあきらめた人たちが、いたんじゃないのか?

 なのに、チケットは売れなかった。

 午後1時過ぎには、チケットカウンターに客の姿はない。
 売り切れは千秋楽のみ。残りの日程はすべて売れ残り。

「こんな番号じゃ土日は買えない。さららんを観られない」
 と、泣く泣く仕事に行ったCANちゃん。つらい思いをした分、損したね。サクラたちさえいなかったら、かなしい気持ちを味わうことなく希望のチケットが買えたのに。

 とりあえず、チケットは選び放題、買い放題です。
 もしもまだ月バウチケを持ってなくて、観たいと思っている人、三番街へGO。
 チケットは、ほんとうに欲しいと思っている人が買うべきだ。

 まあ、まさかのきりやん休演で、いろいろFCも大変だったんだろうけどさ。
 一般人からすると、ヤな感じのチケ発売だったよ。

 

口の肥えた猫。

2003年7月25日
 昨日、さんざんキティちゃんとお喋りして帰ってくると、猫が誘拐されていた。
 うちの親が、わたしに無断でわたしの家から猫を自分の家に連れ帰っていたのだ。

 猫は、猫缶をもらってご満悦。

 ちょっとぉ、よくもそんなものを食べさせたわねっ。
 うちの猫のエサは「カリカリ」。つまり、ドライフードよ。なんでかってーと、それがいちばん安いからよ。
 高いエサを与えると、口が肥えてしまって安いエサを食べなくなる。だから缶詰は絶対にあげなかった。
 なのになのに。

「この子、ほんとに缶詰が好きみたい。ものすごい勢いで食べるの」
 あたりまえじゃん、値段がチガウんだからっ。缶詰を好きなことぐらい、はじめからわかってる。わかってたけどあえて、食べさせなかったのに。
「この子、ウチになついちゃってるわぁ。ほら、こんなにくつろいで」
 高いエサで餌付けておいて、母は満足顔。猫の愛を、エサで買うつもりなのだ。まったく。

 その満腹している猫を、連れて帰ろうとしたら。

 猫は、わたしの腕から逃げた。

 ……帰りたくない、だと?
 ここの子になるってか?
 むきーっ。アンタの飼い主は誰よっ?!
 逃げる猫を力尽くで連れて帰った。

 そして、今日。
 猫は玄関で正座する。
「親の家に連れて行って!!」
 と。
 ……どーすんのよ、味を占めちゃってるよ。
 仕方なく親の家に連れ行ったよ。そしたら母はまた、いそいそと缶詰を食べさせる。
 カリカリを食べなくなったら、責任取ってよ?

             ☆

 デイジーちゃんからTEL。
 昨日、おさあさ画像を送ってきたときは、まだきりやんのことを知らなかったのだと言う。
 いやあ、みんなが悲鳴を上げているときに、君ののんきなメールはほっこりしたよー(笑)。
 んでわたしは、画像職人の彼女にリクエストをしてみる。

「あのスワンレイクのおさあさだけどさ、アイコラでもなんでもいいから、もっと顔近づけて、ほんとにチューしてる画像作れない?」

 デイジーちゃん、ふたつ返事。

「わかりました、まかせてください」

 男前だぜ、お嬢さん!!
 できたら是非、待受画像にさせてもらうよ。携帯電話を開くたびに、おさあさのチュー。……うっとり(笑)。

 ついでに、『アイーダ』でホモパロやるなら、の話もする。
 いちばんやりやすいのは、チャル・ファラオ×ワタル・ラダメス……。
 し、しかしそれはな、あまりに本物くさくて……ちょっとな。やほひはファンタジーだからな……。
 それくらいならまだ、エチオピア・トリオでなんかする方がいいよな。

 友会からは、月バウの払い戻し書類が届いた。
 どーしよーかなあ。せっかく当たってたのになあ。
 周囲のみんなは、誰も「いる」と言ってくれないので、払い戻しちゃうかなあ。
 ま、明日の発売日以降に考えよう。

 
 ムラへたどり着くと、バウホール前に張り紙がしてあった。

『月組バウホール・霧矢大夢休演のお知らせ』

 なんてこったい。
 信じていたのに、きりやん。バウには絶対出てくれるって。

 その直後に、ケータイにメールが届く。友人たちから「きりやん休演だって!」の悲鳴メール。
 唯一のんきなメールをくれたのはデイジーちゃん。彼女はきりやん嫌いだから、このことにはまったく触れずにスルー。正直な奴だ。デイジーちゃんが送ってくれたのは、スワンレイクのおさあさキスシーンの待受画像。うわお。眉間にしわの寄った、おさちゃんの表情がセクスィーです。

 よーやく2回目の『アイーダ』です。
 いくらでも通いたかったんだが、ひとえに金がなくてな……。
 本日は2階S席。金がないのに何故こんな席で観劇? 1階良席なら7500円出すのもわかるけど、2階席に7500円出せるなんて、金が余っている人間みたいじゃん!!
 答えは、この席が「コーナン貸切引換券付き」だったからよ。2階S席×2+コーナン券セットで15000円だったの。
 それなら「買い」だわ! てことで(笑)。キティちゃんとデートなのさ。昨日に引き続き薬漬けになってますが。

 やっぱりわたし、好きです。この作品。
 ツボなの。
 あちこちがもー。
 適材適所が気持ちいい。
 そして、作品の風通しの良さもいい。
 理詰めでがちがちになっておらず、穴がいっぱい。
 逆ツボ直撃するようなまちがいをされるくらいなら、穴が空いている方がずっといい。
 大好きよ。
 ワタルくんのラダメス。トウコちゃんのアイーダ。檀ちゃんのアムネリス。みんな好き。
 このままたのしくハマっていたら、なにか書きたくなるかもなあ。あ、ホモじゃないけど。
 ホモをでっちあげるなら、しいちゃんとかれおんとか、あとはケロとかまとぶとかですな。すずみんもいい感じです。……つまり、主役以外全部かい(笑)。
 刺激があるって、いいなあ。

 それはともかく、今回わたしは乙女はぁと。
 ケロちゃんにときめきまくり。
 ああ、いいなあ。ひさしぶりだよこんな、恋する気分を味わえるのは。
 愛と恋は明確にちがいます。ケロちゃんのことはずっと愛してましたが、恋していたことは一度もないのです、冷静に顧みれば。
 恋は『花恋吹雪』のときのトウコちゃんだとか、『血と砂』のゆーひだとかですな。瞬間的に心が沸騰し、きゃーきゃーになる。スターさんに恋のよーにときめくのは、わたしみたいな理屈屋にはあまり簡単に起こることじゃないのだわ、かなしいことに。ほんとにひさしぶり。
 今さらケロを相手にときめくとは……人生なにが起こるかわからないなあ。だって、もともとずっと好きだった相手にだよ? なにを今さら、もう一度恋してるの?(笑)
 てなわけで、今わたしはヲトメ。
 ケロちゃんラ〜ヴ。

 この恋を原動力に、なにか書くしかないわ。
 夏コミ、これからがんばろうかな(笑)。自宅にコピー機あるし。いや、これも恋のなせる技、深く考えずにフカシこいてます。

 あー、ときめきは命よねえ。
 意味もなくたのしいわ。

 
「今日は弟くんとデートの約束はしてないの?」
 とCANちゃんに言われ、なんでバレてるんだ? とびびる。
「してるけど……めんどくさくなったから、メールして帰ろうかと思ってる」

 CANちゃんの会社でアルバイト。
 CANちゃんの会社はミナミにある。そして、弟の会社もミナミにある。つーか、CANちゃんの会社に行く途中に、弟の会社の前を通る。
 だから、CANちゃんの会社でバイトをするときは、終業後の弟と待ち合わせてごはんを食べることがわりとある。
 ……そうか、わたしの行動を読まれているんだ。

 弟の仕事の方が、2時間くらい遅いんだよね。ヤツは「そのへんで時間つぶして待ってろ」と昨日言っていたし、昨日はたしかに待つつもりでいたが、本日の姉はもう待つ気にならず。先に帰ってやる。
 というのも、体調が悪いんだ。外食する気になんねー。
 どの店に食べに行くか、弟は昨日いろいろ言っていたけどな。結局決まってなかったから、会ったあとで一緒に探すのもめんどーだし。

 朝、起きたときから気分が悪かった。
 目眩と頭痛、吐き気。
 それでも仕事は仕事。なにくわぬ顔でCANちゃんの会社に出勤。
 ……不思議だな、仕事の能率は過去最高だった。気分悪い方が手が早くなるのか、わたし? CANちゃんにも誉められちゃったよー。
 いや、わたしのやっている仕事は、ほんとに単純な手作業なんだが。気分が悪い分、急き立てられるような感じで早く手が動くのかな? 迷惑かけちゃいかん! てことで、気が張っているせいかな?

「あんたの体調いいときって、いつよ?」
 北海道の山から無事生還した母は皮肉を言う。母は健康至上主義者。虚弱な者が大嫌い。またしても体調の悪いわたしは叱られる。
 いやでもほんと、最近わたし、いつもいつも体調が悪い。昔のわたしはこんなじゃなかったのに。
 目眩がひどくて、頭を起こしていられない。
「緑野家の人間の特徴ね。緑野家の人はみんな、重い軽いはあっても同じ症状で寝込むわ」
 ってソレ、遺伝ってことじゃん。わたしより弟の方が症状は重い。アイツは一端発病すると、動けなくなる。子どものころはそれで病院をいくつも回った。
「なんでそんな、悪いところばかり遺伝するの? アタシに似ればいいのに」
 母の家系はすこぶる元気だよなあ。そして元気すぎるもんだから、病人のつらさはわからないのだ。うがー。病人を叱るなー。
「瀞峡の写真は見た? アンタ、体調悪いからひどい顔で写ってるわよ」
 だーかーらー、じんましんで発狂しかかっていたわたしにカメラを向けるなと言っていただろう! どうしてそうデリカシーないのよう。
「病気になるのは、本人が悪いのよ。心がけが悪いから、そんなふうにすぐしんどくなるの。アタシなんかこんなに健康よ!」
 お説教はエンドレス。
 ママに言わせると、不慮の病気やケガはすべて本人のせい。自業自得なのだ。せっかくの旅行なのにじんましんになっていたわたしは、「たのしい気分に水を差す迷惑なヤツ」で、叱られて当然なのだ。あー……。

「明日はゆっくり寝ていなさいよ」
「あ、ダメ。明日はタカラヅカ」
「…………病気になるのは……………」
 はい。
 わたしの場合、たしかに自業自得です。

 
 弟と近所のファミレスでごはんを食べたんだが。
 どーしたことだ?
 ウエイトレス、おばさん率高し。
 つーか、おばさんばっかし。

「……変じゃないか?」
「変だよな」

 夜のファミレスは、若いアルバイトくんたちの職場だ。このファミレスはできてから20年くらい経ってるんだが、その改装改築主義主張の迷走いろいろあった長い歴史のなか、夜におばさんたちが働いているなんてこと、一度もなかった。

「この時間帯なんて、主婦が働く時間じゃないだろ? 家庭はどうしてるんだ? 亭主や子どもの晩ごはんは?」
「たしかに、昼間はおばさんが働いているけど……今は夜なのに」

 ファミレスやコンビニ、それからファストフード。それらの店は、昼間はおばさん率が高い。彼女たちは、夕方になると若いバイトに交代して家へ帰っていく。夕方の主婦は忙しい。
 反対に若者たちは、昼間は学校に通っているので、夕方から夜に働く。若者とおばさんは、こうやって時給いくらのアルバイト業界を回していく。

 それが今までの常識だったのに、今日のこの店は、おばさんばかりが働いている。
 若者向けのかわいい制服を着て、ゴールデンタイムに働いている。

「……不景気ってこと?」
「一家の主婦が、家庭を放り出してこんな時間に働かなきゃ、やっていけないほど逼迫しているのか?」
「今の若い子は、ファミレスなんかでバイトしないのかしら。時給安いから?」
「安い時給でも、おばさんならそりゃ働くだろうけど」

 それにしても、雰囲気がチガウ……。
 おばさんがウエイトレスだと。なまじ制服がかわいいぶん、ブラックな雰囲気。

「会議している客はいるし。なんか、変な店だな」
「なんでこんな時間まで会議してるのよ」
「自社ビルじゃないから、もう時間外ってことで追い出されたとか。ありえるぞ」

 いつもなら、若い客でにぎやかな店なのに。
 いちばん目立つ大テーブルでは、書類を広げたスーツの人たちが本気で仕事中。食事のついでに、とかではなく、食器すらすでにないテーブルでふつうに会議をしている。

 雰囲気がチガウ……。なんなの?

「どーでもいいけど、スープの補充はいつしてくれるのよう」
「聞いてくれば」
「もう一度言ったもん。2度も言えないよー」

 おばさんしかいないウエイトレスは、人数が明らかに足りていない。
 サラダバーもスープバーもなくなりかけている。でも、補充されない。人数が足りなくて、そこまで手が回らないのだ。料理を運び、レジを打つだけでいっぱいいっぱい。
 3種類あるスープの、2種類が空になっていたので、わたしは補充を訴えた。……のに、補充してくれたのは1種類だけ。もうひとつは空のまま放置。
 つーか、あの大きなスープタンクが空になっているのをはじめて見た。ふつー、空になる前に補充されるから、底が見えるなんてことあり得ないんだよね。本気で人手が足りていない模様。

「パンプキンスープ〜〜。飲むまで帰らないからね〜〜」
「あー、うるさい。スープなんかどうでもいいだろう」
「よくないわっ。スープバーがたのしみで来てるんだからねっ」

 わたしは汁物好きなんだ。わざわざスープバー料金を別途払ってるんだから、スープは5杯以上飲むことにしてるんだいっ。
 しかも今日は大好きなパンプキンスープがメニューにあった。大喜びで飲んでいたのに。
 よりによって、パンプキンスープの補充をしてくれない……あと1杯は飲んでやるー。そーでなきゃ帰らないぞ。

「不景気ってことか……どこもかしこも」
「夜中のファミレスで仕事をする人たち、人件費を抑えるために少ない人数で店を回すファミレス、しかもおばさんばかり。不景気は目に見えるかたちで、こんなところに。……嫌すぎ」

「まあ、ウエイトレスの年齢は、現在の店長の趣味、て可能性もあるかもしれないけどな。熟女趣味とか」
「それ、もっと嫌すぎ」

 
 母は旅立ちました。
 今度は北海道です。
 先月は屋久島で、今月は北海道。……ほんと、元気だな、母。今回は大雪山とやらに登るそうです。……ほんと、元気だな、母。

            ☆

 大人になってからは、身長を測る機会がない。
 身体測定なんてもの、ないからな。
 だから、わたしが自分の身長として記憶しているモノは、学生時代最後の記録だ。

 そのあとのことは、「なかったこと」だ。

 そうさ。
 つい先日、病院で身長体重を測られてしまったけれど、その数字は「なかったこと」さ。
 体重は自宅でも量れるからわかっていたけど、身長はノーマーク。

 学生時代より伸びているなんて、そんな現実は「なかったこと」さ。
 ばばあになったんだから、ぴちぴち時代よりしぼんで小さくなっているはずなのに、伸びているなんて、そんなことは「なかったこと」さ。

 人に聞かれたら、ちゃんと今までと同じ数字で答えるわ。
 ええ。

 
 これは好みの問題でしょうか。
 ……やっぱりわたし、アメコミって、ダメだ……。

 『ハルク』を見ました。
 監督アン・リー、出演エリック・バナ、ジェニファー・コネリー。

 40年も前に発表されたアメコミで、そのあまりのスケールの大きさに映像化不可能とされていたのが、21世紀になってようやく映画化。まさに、時代がようやく『ハルク』に追いついたということです!

 てな、司会のおねーさんの演説を聞きながら、首を傾げていたんだが。
 見終わった後に、そのときの疑問が確信になったよ。

 時代は追いついてないよ。つーか、置き去りにされてるって。

 センスが古すぎて、見ていてつらかったっす……。

 素直に40年前に映画化していればよかったのに。
 現代でやると、脱力系の笑いしか出てこないよ。

 ストーリーは、悲劇のヒーロー系。
 自分の意志とは関係なく、超人になってしまった男の慟哭。
 よくあるヤツね。
 40年前なら新しかったかもしれんが、今だと食傷ぎみ。
 しかも、その変身した姿がすごい。緑色のゴムでできた、つるつるマッチョゴリラ。
 まちがってもかっこよくないし、いっそ醜ければまだマシなんだが、それすらなく、ただただ、かっこわるい。

 そのマッチョゴリラを、天下のアメリカ様が最新兵器で攻撃するの。マッチョゴリラ、大暴れ。どっかーん、ばっこーん。
 大統領の許可を受け、最終兵器投下! てなな。

 そんななか、わたしが気になって仕方がないのは、超人ハルクなんぞより、最終兵器で攻撃されてもまったく無傷の、

 ぱんつ

 のことです。
 ハルクはそりゃ超人なんでしょ、モンスターなんでしょ、それはいいよ、わかったよ。
 でもさ、彼が穿いてるあのパンツ、あれはふつーの服だったはずよね? ハルクが人間ブルースだったときから穿いていたわけだから。
 ミサイルでも破れない布の存在に、わたしは目眩がしました。
 アメリカ大統領、あなたはまちがってます。ハルクなんかに税金を使わないで、彼が穿いているあのパンツこそに、国家の威信を懸けて着目すべきです!!

 ……とゆー、脱力加減。
 ねえ、いくらマンガでもさー、こーゆー子どものツッコミはかわして欲しいよー。
 なまじ、他の部分が真面目に作られているだけに、しょぼしょぼだわ。

 古すぎるセンスと、現代の技術とがうまく噛み合わずに痙攣している感じ。
 WHITEちゃんとふたり、苦い笑いと疲労を載せて、会場を後にしました。

 いやたぶん、好みの問題だよね……?
 ツボが合う人には、名作、なのかもしれん。

 でもさ……。
 あの予告編のあざとい作り方からは、日本のプロモーターも、わかっててやってるんじゃないかなあ……?

 
 『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(……長い……)見ました。
 とりあえず、他から感想を聞く前に見ておきたかったんで。

 なにしろわたしは『踊る…』を愛しすぎているので、ふつーに見、感じることはできません。
 親が自分の子どもの発表会を冷静に見られないよーなものでしょうか。わたしはべつに、『踊る…』の親じゃないけれど。
 第三者の目を持つことができないんですね。
 ここをイイ!と思っても「それはわたしがファンだからじゃないのか」と思うし、ここがイヤ!と思っても「それはわたしがファンだからじゃないのか」と、とにかくエンドレス。

 端的に言うならば、たのしかったです。
 おもしろい映画でした。

 いろんな角度から語れる映画だし、わたし自身多面的な見方をたのしむ方なので、なにを語ればいいやら。えーと。

 「シリーズ」というものの存在意義について。

 今回『踊る2』を見ながら、再確認していた。
 シリーズってのは「同じことを繰り返す」ことなんだなあ、と。
 『水戸黄門』と同じ。『必殺仕事人』と同じ(今たのしく再放送を見ている・笑)。
 『踊る2』もまた、とどのつまりは「同じことを繰り返し」ていただけだ。
 テレビシリーズでやったことを、何本かのSPでやったことを、映画の1本目でやったことを、またしても、もう一度繰り返しただけ。
 『踊る』はテレビシリーズで正しく完結していた。だから、それよりあとに作られたモノはすべて「同じことの繰り返し」でしかない。

 物語は、動いていてなんぼだと、わたしは思う。
 恋愛モノでいうならば、ふたりの男女が出会い、両思いになるまでが花。
 一度ハッピーエンドになってしまったカップルの物語を、人気があったからって続きを作ると確実につまらなくなる。
 そこに「動き」がなくなるからだ。
 ラブラブのふたりにすれちがいが生じ、このままでは別れてしまう?てなことになる。が、結局は誤解が解け、元通りのラブラブに。
 その繰り返し。毎回ちがう当て馬が出てくるだけ。
 『必殺』シリーズのように、物語の定型を理解した上で、その多彩さを楽しむ、という種類のモノでない以上、毎回当て馬が変わるだけのラブラブものは失速するだけだろう。

 『踊る』は「パターンもの」ではなく「ストーリーもの」だった。ストーリーが「動く」ことが前提で作られたのだから、そのストーリーに動きがなくなれば、そりゃあ魅力は落ちていくだろう。
 「同じことを繰り返す」だけ。「全部同じ」。
 シリーズ化してしまった『踊る』は、必然的にそうなってしまった。

 『踊る2』を見ながら、痛感した。
 ああ、結局「同じことを繰り返す」だけなんだ。「みんな同じ」なんだ。テレビシリーズを見た者は、わざわざ映画なんか見る必要ないんだ。だって同じことをやっているだけだもの。
 同じことをやっているのに、さも「ちがうことをしているふり」をしているような、奇妙な恥ずかしさ。
 おじいちゃんそれ、昨日も同じこと言ってたよ。……ああでも、おじーちゃんボケてるから仕方ないか。今日もまた、はじめて聞くふりで聞いてあげよう。
 真実を知っていて、知らないふりをする落ち着きの悪さ。
 ……そんなものを、感じてしまった。

 だからといって。

 わたしは、シリーズ化や今回の映画を否定しているわけじゃない。

 終わったモノ、ENDマークのついたものをまた続ける、という行為の是非は、制作者はハナから承知の上でしょう。
 清も濁も超えたところで、それでもなお、「おもしろいものを作る」意欲と行為に拍手する。

 ワンパターン上等。
 全部同じ上等。
 同じことを繰り返しながらも、それでも客をよろこばせる技術こそを、褒め称えたい。

 ひとりではとても作れないものだと思った。
 これだけの要因を満たす作品というのは。
 パターンである以上、はずすことができない要因がものすごーくあるんだよね。
 多すぎるキャラに全部見せ場を与えることだとか、テーマを使い回すことだとか、とにかく細部に至るまでクリアしなきゃいけないポイントが山積み。
 それらを正しく消化しながらも、以前よりさらに大きな事件を起こし、現代という流動性のある世界を舞台に最低限のリアリティを崩さずに全力疾走しなければならない。
 これは、ひとりでは無理でしょう。チームで、人間たちひとりひとりの力で、そしてそれを結集して、超えていくべきものだ。

 「シリーズ」であることの、是と非。
 作品のクオリティだけを追求するならば、続編なんてものはいらない。あってはならない。
 だけど、至高の芸術だけて世の中成り立っちゃいないのだから、俗にまみれても、続編は存在していいのだ。

 テレビシリーズ以降の作品はすべて、蛇足にすぎないと思っているけれど、それでもわたしは、それらをとても愛している。
 たのしんでいる。
 大好きだ。

 たのしかったぞ、『踊る2』。
 ワンパターンで、いつもとまったく同じ話、同じ展開、同じテーマで、やっぱり泣いたぞ。
 同じ話を繰り返す以上、とんどん「ずるく」なるし、「反則」もするし、そういう部分を嫌悪する気持ちもたしかにあるが。
 それでも、ゆるしたいと思う自分がいる。

 『踊る』を許せないと思うのも、そしてそれでも愛しいと思うのも、全部全部、愛のせい。
 まったくもって、第三者的な視点を確立できません。こまったこまった。

             ☆

 ところで、雪組の発売日だったねえ。
 並びの人数の少ないこと。はずれ券ナシ、つまり並ばなかった人も夕方からはふつうに買えますよ状態。
 なのに、わたしたちの人数の多いこと。
 ねえなんで、たかが雪組(失礼)の並びに8人も集まるわけ?
 いや、友だちにいっぱい会えて、喋れて、たのしかったんだけどさ(笑)。

 
 ここ数日はずっと、読書とゲームと長電話の日々(笑)。オレンジとはほんとによく喋ってるなあ。東京−大阪なのになあ。

 さて、ゲームはただいま、『サイレント・ヒル2』です。
 転勤みやげに弟が買ってきた。ありがとう弟。

 やっぱりヘボいぞ、『静岡2』! 期待を裏切らないゲームだ。
 主人公はやはりオヤジ。今回は死んだ妻を捜している。
 最初から日本で売る気はあまりないのかしらね。海外で売るためには、主人公が未成年ではいけませんもの。いたいけな少女が武器を持って血みどろになって戦うのは、海外ではNG。……そう考えると日本ってのはすごい国だ。血みどろになって戦う主人公が「大人の男」であることに違和感を持つくらい、めずらしいことなんだもの。
 日本で売るためには、主人公はいたいけな少女でなくちゃねえ。彼女が残酷に殺されなきゃダメなのよねー。アクションゲームは死んでなんぼだからねー。最終的にハッピーエンドでも、その課程でめちゃくちゃ悲惨な目に遭うもんだからねー。
 ふつーのオヤジが主人公である、日本ではめずらしいゲーム、『静岡』。(マッチョなヒーローが主人公のゲームならまだあるが、ひ弱なオヤジが主人公ってのは、ほんとにめずらしい)
 めずらしいだけに、ヘボさが目立つ。
 だって、他に類がないってのは「求められていない」ってことだからねえ。
 かわいい女の子なら許される能力の低さも、かわいくないオヤジだと、見ていてたのしくないでしょ?
 強い男ならプレイしていて壮快だけど、よわよわ男だとストレスなだけでしょ?
 『静岡』は不思議なほど、世間のニーズを無視してるよなあ。

 ま、わたしはオタク女だから、「ふつーのオヤジ」が「はぁはぁ」とあえぎまくっているのも、それなりにたのしめますが。
 オヤジ受属性のある人は、まだたのしめるか? 主人公はそこそこ男前で虚弱なオヤジで、ちょっと走るとすぐあえぎだしますぜー。

 ふつーの男たちは、このゲームをプレイしてたのしいのかしら……。男のあえぎ声をえんえん聞き続けるゲーム……。

 アクションは4段階、謎解きは3段階の難易度切り替えがあるので、わたしはアクションをEASY、謎解きをNORMALでプレイ。
 前作でアクションをNORMALでプレイしたら、2回目以降のプレイでめちゃくちゃ苦しんだからさ(2回目以降のプレイは、自動的に難易度が上がりやがったのよ。下手っぴのわたしが、HARDモードなんかできるわけないじゃない! 死にまくったわ)。
 そしたらこのEASYモード、激ぬる。簡単すぎるよ、死なないどころか危機にも陥らないよ……つ、つまんねー。でも2回目以降を考えたら、ここは我慢しておくべきか。
 しかしEASYでこのぬるさでは、その下のBEGINNERモードはどこまですごいことになってんだ?

 操作性の悪さ、世界観のずるさと薄っぺらさ、ストーリーのいびつさ。
 いやあ、さすが『静岡』だ。前作からまったく進歩してない。
 でもなぜか、たのしかったりするんだよなあ。ヘボゲーなのになー。
 少年ジャンプ的なヘボさだから、たのしいのかな。穴がありすぎて、ツッコミが前提ってのが。

 あ、アドバンスの方では『MOTHER2』です。『MOTHER1』はけっこーあっさり簡単に終わりました。
 『MOTHER2』もキャラの名前は全部同じ。主人公はケロ、そのガールフレンドはトウコ、ひ弱な男友だちがユウヒ、マッチョな男友だちがワタル。
 『2』ではワタル、王様なんだねー。なんか笑っちゃったよ。

 
 せっかく試写会が当たっていたのだが、見に行くのをあきらめた。
 ……行くつもりで着替えて、駅まで行ったんだけどな。
 脱落。
 このまま出かけたら、きっと人様に迷惑をかけてしまう。梅田で倒れて救急車はいやー(苦い過去。しばらくは恥ずかしくてその周辺に行けなかった)。

 手ぶらで帰るのは寂しかったので、ローソンに寄って『踊る大捜査線』の前売りチケットを引き替えてきた。
 ローソン限定のグッズ付きのヤツだ。ストラップとポストカードのセット。

 グッズ付き、はいいけど、4種類あるうちから選べない、てのはどうよ。

 劇場前売りのプレミアは、ポスターだった。こちらも4種類あり、そこから好きなモノを1枚選べた。
 選べるのはありがたいけど、ポスターは勘弁。いらねー。せめてポストカードなら、劇場前売りにしたのに。

 だけどわたしは、かつて『踊る』モノだった。『踊る大捜査線』がブレイクする前から、踊り狂っていたひとりだった。(変な日本語だが、解説はしない。わかる人にだけわかってくれ)
 再度の映画化に、記念品のひとつも欲しかった。
 記念品……ポスターがいやなら、ストラップ(+ポストカード)しかない。

 ローソン限定の、グッズ付き前売り券。4種類のロシアンルーレット、どれが当たるかはわからない。
 いちばん欲しいのは、なんといっても「カエル急便」。かつての『踊る』モノならば、コレでしょう。
 次の希望は、今回の映画のいちばんメジャーなロゴ付き、「He’s back.」。青島のシルエットがかっこいい。
 3つめの「WPS」はふつー。良くもなく悪くもなく。
 最後の「湾岸くん」は、絶対イヤ。かつての『踊る』モノであるわたしは、この新しいキャラクタに拒絶反応。だってこんなの、知らないもん。

 『踊る大捜査線』はすばらしい作品。
 そして、数ある物語の中で、もっとも完成度が高いのは、もちろん最初のテレビシリーズだと思っている。
 毎週どれだけたのしみに見、終わった後に友人のオレンジとFAX文通し、また電話で語りあったか。
 こんなにいいドラマなのに、視聴率はふるわず、周囲は誰も見ていない。ビデオ化もされない。
 歯がみしながら、布教につとめた。
 ふつーのドラマなら、最終回あたりにビデオ化のお知らせがあるのにね。『踊る』がビデオ化されたのは、放映終了から半年近く経ってからだったんだよ(DVD化なんて、さらにそのはるか後)。ファンの地道な声が届くまで、それだけかかったんだ。
 そのあとに、まさかのブレイクが待っているとは露知らず。

 わたしは最古ファンのひとり。
 ブレイクしたあとは、よくあることだが『踊る』はわたしの手の届かないところに行ってしまった。
 「湾岸くん」というキャラクタは、その最たるモノ。
 テレビシリーズ本放送ファンはそんなもん、知りません。だっていなかったもの。
 HPでだけ盛り上がっていたって、知りませんよ。
 わたしは心が狭いばばあなのだ。年寄りは、自分の知らない新しいモノに拒絶反応を起こすのだ。

 ローソンのグッズ付き前売り券に手を出すのをとまどっていたのは、ひとえにこの「湾岸くん」のせい。
 残りの3種類だけなら、迷わず申し込んでいたのに。
 万が一にも「湾岸くん」が当たったら、泣くに泣けない。
 わたし、くじ運ないのよー。いつだって欲しいモノは当たらず、「これだけは嫌」が当たるのよー。

 だけどありがたいことに、メル友のかめたさんがわたしとまったく逆の希望を持つ人だった。
「第一希望は湾岸くん。カエル急便が来たら嫌だなあ」
 うれしいよ、かめたさん。もしもわたしが「湾岸くん」を引き当ててしまったら、ぜひ交換してくれー。
 かめたさんの快諾を得て、少しは希望を持ってローソン限定前売り券を申し込むことができた。
 完全な希望じゃないよ? だって、わたしもかめたさんも「湾岸くん」だった場合は、どーしよーもないからね。つくづく運のないわたしは、それくらいありそうな気がしていたし。

 とまあ、これくらい長々と文句を書き連ね。
 本日引き替えてみたグッズは、「He’s back.」でした。

 ひとまず、ほっ。

 ぜんぜん悪くないよ、「He’s back.」。かっこいいよ。
 ただ、わたしの携帯電話には合わないデザインだけどな(笑。それでもつける)。
 かめたさんは「WPS」だったそうな。

 やはり『踊る大捜査線』は初日に見に行こうと決めた、2日連続映画を見損ねた日。

 
 さて、じんましん発病4日目。
 重病さでいけば、この日が最高潮でした。も、半泣き(苦)。

 朝から病院に行き、治療してもらう。
 ……が、無理がたたったんでしょうな、注射してもらうなり気分が悪くなり、そのまま処置室のベッドに担ぎ込まれた。
 動けるようになるまで、点滴を受けている人たちや、看護士さんたちと雑談してました。
 つーかわたし、アイドルだったわ。「病気が目に見える」っていうのは、大きいね。わかりやすくひどい状態だったので、みんなこわいもの見たさでのぞき込んでくるし、同情もしてくれる。
 わたしも、あまりにひどい自分の肌を見せたくてしょーがなくなっていた。ほーら、こんなに気持ち悪いのよー、服に隠れている部分はもっとすごいのよー。わたしの症状のひどさに周囲が声を上げるのが、快感だったり。
 ……みなさん、よい人たちでした。素直に声を上げ、同情してくれてありがとう。ここにいるってことは、みなさんもなにかしら病気の人たちなのにね。
 家族旅行中、つらくても「辛気くさい顔しないで、周りが迷惑する」と言われ、気を張っていた分、「つらいでしょう、かわいそうに」と言ってくれる見知らぬ人たちが、ありがたかった。
 同情が心地よかった……。くおー、わたしにやさしくしてくれー、病気自慢させてくれー。つらい顔をしたり弱音を吐いたら叱られた2日間分、ストレスが溜まってるんだよー。
 ちがう意味で、病院で癒されました(笑)。

 せっかく水曜日なのにな……映画は見に行けない。さようなら、『スパイ・ゾルゲ』。映画は映画館でしか見ないので、もう見ることはないのだわ……。

 
 わたしたちが泊まった日の出館は、いい宿でした。
 建物はきれいで、眺めがいい。朝焼けの水平線が一望できる。山上館を望む気持ちは変わらないが(笑)、第2の宿も悪いところじゃなかったよ。
 それと、浴衣によるあからさまな差別も気づかなかった。なくなったのかもしれないし、わたしが気づかなかっただけかもしれない。いちおー、第2ランクの施設だったからな。昔、差別されたときは最低ランクの施設に泊まっていたの。
 今回は、ちゃんと丹前が用意されていました(笑)。

 不思議なのは、施設に名前が変更になっていたこと。
 10日前から、日の出館は「日昇館」という名前になっていた。
 あちこちにそれについての説明がされているんだが、細部の記載は変更が行き届いておらず、結局は「日の出館」のままだ。なんでこんな意味のない名前の変更をしたんだろう?
「分与でモメて骨肉の争いがあり、部分的にオーナーが変わったんじゃないの?」
 とか、
「嵐で道路は閉鎖、船も出せずに日常世界から切り離され、孤島となりはてたうえで連続殺人事件でも起こったんじゃないの?」
 とか、弟とふたりで想像してみたり。
「ゲームとかミステリ小説とかで、『こんな意味のない複雑なつくりの建物、現実にあるわけない』っての、よくあるけど、この宿はまさにソレだなー」
「なにも考えずに改築してどんどん増やしていって、手に負えなくなってる感じだよねー」
 ゲームの舞台としてゾンビと戦うのにもいいし、ミステリ小説の舞台として密室殺人事件を起こすにもうってつけのロケーションだぞ、この宿は(笑)。

 ところでわたしは、この朝ヘコんでました。
 前日、大事を取って温泉を我慢したのに、翌朝目覚めてみれば、じんましんはさらにひどくなってましたのよ。
 注射が効いたのか、前日はわりと沈静化していたの。だからまだなんとか、観光することもできた。このまま治るのかな、とも思ったけれど、念には念を入れて、温泉を我慢したのに。
 発病3日目だよ? なんでひどくなる一方なの?
 ムカついたんで、温泉に入ったけど。あんまりひどくなっていたんで、なにをしてもこれ以上ひどくなることはないだろう、と思って。

 父ひとりご機嫌さん。
 思い存分温泉めぐりをして、スタンプを集めて。足が悪いので、我慢しているところももちろんあるんだろうけど、自分が楽しめる範囲でめいっぱい楽しんでいる様子。
 ……よかったね。とりあえず、父がたのしめたんんなら、この旅行の価値はあったわけだから。わたしは心底、へとへとだったけどさ……。

 前日に那智の滝へ行き(よりによって年に一度の火祭りの日だった)、幽玄の世界を堪能。家族の体調もあり、火祭り本体はスルーしたんだけど、霧の中の滝は空の一部が落ちてくるようで、これはこれで眼福。
 宝塚歌劇団雪組・大凪真生の千社札が目に新しく光ってたけど……滝そばの社に貼ったの、本人? ファン? ちと恥ずかしい……。(古いモノでは真矢みきもあった)
 本日はウォータージェット船に乗って瀞峡めぐり。深い山と山の間、切り立った崖の狭間を高速で移動するパノラマ見物、水上でしか得られない目線。わたしがこの船のオーナーなら、船を造り直すよ、絶対。船のデザインの陳腐さで損をしている。せっかくの景観がもったいない。
 そのあと新宮で城跡見物。……うちの弟が城跡マニアなので。我が家は鉄道マニアと山オタクと城跡マニアとヅカオタクで成り立っているのよ……。
 新宮あたりではもう、わたしの意識はかなり朦朧。じんましんがさらにひどくなっており、まともにモノが考えられない。ついに顔もまだらになり、「誰もわたしを見ないで」状態。
 そんなわたしにビデオカメラを向け「辛気くさい顔しないで、ほら、笑って」と母。笑えるかー。こんな顔、撮るんぢゃねえ。

 健康第一。
 とにかく、じんましんのおかげで、わたしは散々だったよ。
 なにもしてなくても、体力が剥ぎ取られていく感じ。めそめそ。

 で、でも、親孝行だしな……体力気力のつづく限り、がんばったよ、わたし!(息絶え絶え)

 
「リベンジ、山上館!」
 と言ったのは、あれはいつのことだったろう。
 そのころ、わたしも友人たちもまだ若く、金も地位もない小娘たちだった(わたしは今もびんぼーな傘張り浪人のよーな人生を送ってますがな)。
 わたしたちは、温泉旅行を計画した。
 目指すは勝浦、日本一の滝を眺め、海の見える温泉に入ろう!
 決めた宿はそこいらでいちばんの有名どころ。海が眺められる洞窟温泉をはじめ、いくつもの温泉を施設内に持つたのしそうなところ。
 よくわかっていないまま、安いツアーを見つけて旅立った。
 宿に着き、「さあ、温泉だ!」と部屋で浴衣に着替えた。
「……あれ? 丹前がない」
 部屋に置いてあったのは、白くちゃちい浴衣だけ。下着の線が映りそうなぺらさ。
「置き忘れかな? フロントに聞いてみる」
 季節的に言っても、こんな薄い浴衣1枚のはずがない。上に羽織る丹前があるのがふつうだろう。
 だが、フロントは「そんなものは、はじめからない。浴衣だけで我慢しろ」てな意味のことを丁寧に返しただけ。
 そろそろ肌寒いこの季節に、丹前の用意がない温泉宿なのか……。ちょっとびっくりしたが、「そんなところもあるんだ」と、まだ若いわたしたちは納得した。
 浴衣1枚で廊下を歩くのは肌寒く、上にジャケットを羽織って対処した。
 ところが。

 他の人たちは、丹前を着ているのだ。

 なんで? わたしたちは、フロントに確認して「そんなものはない」と言い渡されたのに。
 しかも、浴衣にも種類があった。わたしたちが着ているぺらぺらの白い浴衣ではなく、もっとしっかりした生地の、きれいな色の付いた浴衣を着ている人たちが大勢いた。色つきの浴衣を着ている人たちはみんな丹前を着、白い浴衣の人は寒々しく1枚きりで歩いている。
 どういうことかは、すぐにわかった。
 その宿は、泊まる施設によって完全な階層があり、高額の施設に泊まっている人たちはいい浴衣と丹前を着ることが出来、安い施設に泊まっている人たちはみじめな浴衣しか与えられないのだった。
 がーん……。小娘たちは、ショックを受けた。
 旅行のパンフレットには、たしかにいろんな金額のツアーが記載されていた。高いコースと安いコースがあるのだから、値段に応じた差別が存在することはわかっていた。
 しかしそれが、こんな、「ただ歩いているだけ」で一目瞭然な差別だったとは!
 同じ宿の中だというのに、「金持ち」と「貧乏人」がひとめでわかる仕組みだったのだ。
「ここまで差別されるんだったら、パンフレットに書いておいてくれればよかったのに。そしたら、高い方のコースにぐらい、したのに」
 いくら金のない小娘たちでも、1晩高い宿に泊まることぐらいできる。ただ、どーせ観光で1日走り回るのだから、宿は温泉と寝るだけ、それならスタンダードでいいじゃん、スペシャルルームにしなくても、てぐらいの気分だった。
 機能的な判断だったはずの値段設定が、こんなことになるなんて。
 わたしたちは、心に誓ったのだ。
「リベンジ、山上館!」
 4つある施設のうち、もっとも高額なのがその山上館と呼ばれる施設で、色つき丹前つき浴衣の客たちは「ここから先は山上館ご利用のお客様以外立ち入りを遠慮願います」のガラスドアに消えていくのを、わたしたちはキッとにらみつけた。
 いつかお金持ちになって、山上館に泊まってやる……!!(涙。唇噛)

 いや、もちろん冗談半分でだけどな。
 とりあえずわたしたちは「次にくるときは絶対山上館にしようね」と約束して別れた。
 繰り返すが、いくらそのタカビーな山上館とはいえ、一般人が泊まれないよーな値段設定じゃないよ。小娘たちがギャグにするのにふさわしいエピソードだったということさ。
 宿の値段設定はいろいろあり、人の価値観は様々だ。わたしたちは、たかが宿の値段程度であからさまな差別に直面した思い出を「若かったわねー、あのころは」と記憶に刻んだだけのこと。
 その友人たちとは結局、二度と旅行することはなかった。人生いろいろだ。
 誓いは果たされないまま、わたしのなかには「リベンジ、山上館!」という言葉だけが残った。

 入院→手術→退院→障害者認定→リハビリの日々、というコースを歩んでいた父が「山上館に泊まりたい!」と言い出したのは、彼が退院して間もないころだった。
 ストレスが溜まっていたのだろう。鉄道マニアの彼は「オーシャンアローの海側の席に乗るんだ!」と言ってきかない。
 発病してからこっち、大好きな鉄道旅行をしていない彼の希望を、家族全員できくことになった。
 いつの間にか幹事はわたしになり、わたしが父の希望を書き付けたメモを持って旅行代理店を往復した。
 乗る電車、坐る座席の番号、泊まる部屋と夕食。通る希望と動かぬ現実、旅行代理店のカウンターから携帯電話で自宅にいる父と何度も話しながら、なんとか話がまとまったのが、6月半ばくらいだったかな。
 なんせわたしは、その昔「リベンジ、山上館!」だった人間なので。父が「絶対山上館。他はダメ」と言う気持ちはよーっくわかった。父も以前その有名宿に泊まったことがあり、「次にくるときは絶対山上館だ」と心に誓ったらしい。

 結局、山上館には泊まれなかったのだけど。

 いや、いろいろ事情があってねー。苦笑。
 山上館に泊まれないなら、次は第2ランクの日の出館だ、絶対日の出館じゃなきゃヤだ! ってことで、またばたばた。
 山上館に泊まるつもりで予定していた資金が余ったんで、それはまた次回の旅行にでもプールしておきましょう。

 とまあ、いろいろがんばって組んだ旅行だったわけだよ、緑野家。

 なのになのに、前日から幹事のわたしは、じんましん発病!
 温泉どころの騒ぎじゃない。

 今さらキャンセルできないので、予定通りオーシャンアローに乗って旅立ったけれど。
 ……トラブル連続の旅でしたよ、まったくもー。

 とゆーことで「リベンジ、山上館!」はまだ有効だなあ。
 またいつか、チャレンジする日も来るでしょう。

 
 よみがえる記憶。
 若かったわたしたち。
 薄暗い室内と、不安な赤いランプ。

 そして。

「宝塚歌劇団星組トップスター・日向薫退団決定!」

             ☆

 この日は、荻田浩一演出の、バレエ観劇の日。
 ところが。
 わたしは、それどころではなくなった。

 朝目が覚めると、身体のあちこちがカユかった。
 へんだなー、と思いつつも、JRに並びに行く。夏恒例のコミケ旅行のチケットを買うために。
 みどりの窓口のオヤジの対応ははなはだ鈍くさく、「きくぞうくんに投書するか?」とWHITEちゃんとふたりで話し合うくらい、ひどい対応をされた。

 そのあといったん帰宅。どーにもこうにも、体調が悪い。なんでだろー、昨日は元気だったのに。
 横になれば少しはマシになるかな、と休息を取っていたのだが。
 出かける間際になって、異変を自覚する。
 全身に走る、地図のような腫れ。これは、じんましんだ。

 なぜ?

 わたし、じんましんなんてもの、およそ出したことないのよ。
 本人も家族も、まったくそんな体質ではないのよ。
 昨日はいつもの店でいつもの食事をしただけだし、食べ物にあたったとはとても思えない。

 じんましんという状態自体のつらさ。めちゃくちゃかゆいー。
 じんましんになったというショック。免疫ないから、「わたしにナニが起こったの?! 超ショ〜〜ックッ!!」状態。
 そして、もうひとつ。

 明日、温泉に行くんですけど。
 ……こんなんで、行けるの?

 ショックが3つ重なり、わたしはくらくらしたままオギー・バレエを観るためにドラマシティへ行きました。
 まったくもって集中できない。
 舞台でなにが起こっているの? わたしにナニが起こっているの? 明日の温泉はどうなの? もう今さらキャンセルできないよ。忘帰洞と「リベンジ山上館」はどうなるの?
 くらくら。

 オギー作品は、コンディションのいいときに観ましょう。
 美しくてこわくて、深みが好みのはずなんだが、近寄ることができませんでした、今回。
 「立っている位置」が興味深かったんだが。ダンスアクト『草原の風 白い馬の伝説』。映画『白い馬』と、それに取り込まれていたモンゴル民話『スーホの白い馬』、両方を料理してある作品なのね。
 舞台には、スーホとナラン、白い馬を愛したふたりの少年がいた。彼らを描く、舞台としての「立ち位置」がとても興味深く、考察するのがたのしそーだったんだが。
 だがしかし。

 緑野、沈没。
 感性よりも、体調と精神状態に敗北。

 公演のあとは買い物する予定だったのに、わたしは早々にWHITEちゃんに別れを告げて帰宅しました。

 じんましんになったことはないけれど、アレルギーであることや、時間が経てば回復することぐらいは小耳に挟んでいる。
 だから、おとなしくしていればそのうち治るだろー、ぐらいには思っていた。なまじ今日は日曜日。病院もお休みだ。平日なら、さっさと病院に行っていただろうけど、救急外来に飛び込むのはためらわれた。
 ただ問題は、何度も繰り返すが、明日から温泉旅行だってことだ。
 じんましんって、温泉に入ってもいいもんなの?
 いいとしても、このみっともない身体をさらしていいの?
 それで治りが遅れたりとか、周囲に迷惑をかけたりとか、そーゆーのはどうなの?

 たぶん貧血も起こしているんだと思うので、おとなしくベッドに入っていたんだが、結局夕方に、病院へ駆け込んだ。

 唇が、腫れ上がったから。

 きんどーさんみたいな、ものすごい唇になったのよ。
 いかりや長介どころじゃない。

 こんな唇で、外に出られないっ。
 旅行になんて行けないっ。

 ……トシは取っても女だから。
 顔が変形したら、パニックになる。

 飛び込んだ救急病院は、時が止まったよーななつかしさ。

 昔一度だけ、来たことがある。

 あれは何年前だったかねえ。
 夜中に、当時いちばんの親友だったぺーちゃんが、半べそかきながら電話してきたんだ。
「弟が病気らしく、とても苦しんでる。あたしひとりで、どうしたらいいのかわからない」
 そんなもん、わたしにもまったくわからなかったが、とにかくわたしはぺーちゃんの家に駆けつけた。
 わたしがいても役に立たないことはわかっていたが、ぺーちゃんをひとりにしたくなかったんだ。
 たしか、**病院は救急指定病院だったはず。そんな聞きかじりの知識だけで、救急車を手配して**病院に乗り込んだ。
 真夜中の救急病院。
 診察中のぺーちゃんの弟。
 暗い待合所のベンチに並んで坐る、わたしとぺーちゃん。
 不安でたまらないのを、会話でごまかして。

 そのとき、待合所に置いてあったスポーツ新聞で知ったんだ。

「宝塚歌劇団星組トップスター・日向薫退団決定!」

 当時はインターネットなんかなかったし、ヅカ友だちもいなかった。
 スポーツ新聞の記事だけが、リアルタイムの情報源だったよ。
「ええっ、日向さん辞めちゃうって!」
「うそっ、なんでっ?!」
 ぺーちゃんが会社でもらった無料招待券で『戦争と平和』を3列目で観て以来、日向薫ファンだったわたしたちは、薄暗い病院でショックの声をあげたんだった。
 3列目、てのがポイントなのよ。あの長身と長い足を、間際で見上げたもんでさ……。劇場を出るなり、本物の男たちのスタイルの悪さを見て溜息をついたもんさ。
 以来、ネッシーさんはわたしとぺーちゃんの間では特別なスターさんだったのよねえ。たとえ、その次の星組公演でふたりそろってシメさんに転んでいたとしてもだ(笑)。

 もひとつショックだったのは、スター・日向薫の本名と年齢も、ずばりと書いてあったことよ……。
 夢が壊れる……。
 当時のわたしたちには、ちょっとショックなおばさん年齢だったもんでな……あのころはわたしらもまだ、若かったのよ。ふっ。

 結局ぺーちゃんの弟はなんということもなく、3人で歩いてぺーちゃんの家に帰ることができました。
 だけどわたしには、忘れられない記憶のひとつ。
 しっかり者で強気なぺーちゃんの泣きべそ電話と、ふたりで坐っていた薄暗い待合所のベンチ。そして、日向薫退団の記事。青春の思い出ってやつ。

 **病院の救急外来は、まったく変わってませんでした。

 あれからずいぶん経つのになー。そっか、変化ナシか。より薄汚れて、しょぼくなっているだけか……。

 最初に書かされる問診票の「どこをいちばん治して欲しいですか」という問いに、「かゆみと、外見。明日から温泉旅行に行くので、なんとかしてください」と書いたよ……だってだって、外見は重要だもん!!

 どっから見てもただのじんましんだし、問診だけで原因がわかるわけでなし。
 一時的なアレルギーだと医者もわたしも思っているから、関心事はひとつ。
「今すぐ治して。明日、温泉に入りたいの!」

 …………無理でした。

 温泉はやんわりとストップかけられた。
 つーか、お風呂自体、やめておけ、と。
 完治したなら入ってもいいけど、そうでない場合は血行をよくするのは逆効果。

 めそめそめそ。

 それでも明日は旅行なのだ。

 
 うわっ、日記が一週間遅れている。
 毎日書くのが基本なんだけど、追いつけるかなー。
 体調不良でパソの前に坐るのがうざかったんだよ……。

             ☆

 えーと、12日は、映画『白い馬』を見ました。
 椎名誠監督の、ちょいと昔に作られた映画。翌日に荻田浩一演出のバレエを見る下準備として。

 現代のモンゴルを生きる、とある遊牧民家族の一夏の物語。
 少年ナランが他の兄弟たちとともに、寄宿舎をあとにして古ぼけたバスで帰ってくるところから、物語はスタート。
 なんせ遊牧民なので、地に着いた「家」はない。彼らは一族で組立移動簡単なテント型の家で過ごし、羊や馬の群れを飼い、草原を移動する。素朴な素朴な世界。
 その生活の中で、少年ナランは一夏分成長する。ずっとあこがれていたナーダムのレースに、愛する白い馬と出場することができた。
 ナランたちがまた寄宿舎のバスへ乗るところで、この物語は幕を閉じる。

 なんつーか……この映画が「日本産」だということに違和感を持ちますな。
 日本人ってほんと、金と感性が余ってるんだなあ。
 他の国のひとたちなら、よその国の「ただ日常であること」を、こんなに愛を持って描かないでしょう、莫大な資金をかけて。
 わたしはモンゴルの生活を知らないし、知りようがないので(暮らす気はない)、この映画がどこまで真実に近いのかはわからない。だがおそらく、かーなーりー、リアルに描いてあるのだと思う。
 これをわざわざ日本人が作るのか……当のモンゴル人じゃなくて。
 当のモンゴル人は、日本人の酔狂さをどう思うのかなあ。
 彼らは、日本人のそーゆー湿った感性をぽーんと突き放しているんじゃないかと思う。

 いい映画でした。
 見て良かったよ。
 だが、いい映画であっても、おもしろい映画ではなかった。
 この映画を自らの意志で見たいと思う人たちが極少なのも、いざ見に来ても爆睡する人たちが多いのも、仕方ないことだと思う。
 エンタメじゃないから。
 客をたのしませようとして作っていないから。

 全編に漂う、教科書に載っていそうな純文学の香り。
 モンゴルが舞台で、モンゴル人の生活を淡々と描きながらも、そこにあるのは日本人の湿った感性なんだよねえ。
 懐古主義というか。
 昔は良かった……というよーな。
 現代の日本人が失ってしまったモノが、そこにはある。って感じですか。
 『となりのトトロ』とかでさ、昭和30年代の田舎の生活が事細かに書き込まれ、再現されていたでしょ。あれと同じ臭い。いや、『トトロ』はべつに純文でも教科書的でもないけど。
 『白い馬』は、作者の思い入れの強さが世界観に出ている、自己完結した物語だと思った。

 それでもわたしは、たのしかった。
 現代の日本人が失ってしまったモノを、そこに見ることができて、せつなかったよ。
 たとえば、家庭というもっとも小さな社会で、己れの役割を当たり前に果たしている子ども。みんな幼いなりに自分の役目を持ち、働いている。親に養ってもらうのが当然だとは思っていない。子どもだから遊んでいていいとは思っていない。
 たとえば、父親を尊敬している息子。働く父の背中を見て、「父さんのようになりたい」と素直に思う少年。
 たとえば、家族のつながり。複数の世代が共に寝起きし、親族が支え合って生きる。
 たとえば、自給自足の生活。必要なモノは自分たちでまかなう。生きるというシンプルな事象に必要なモノ以外は欲しがらず、足ることを知る。
 たとえば、自分たちが自分たちであるという誇り。何百年、あるいは何千年かもしれない大昔の祖先がしていたのと同じ生活を守り続ける。便利だからといって、西洋文明におもねったりしないし、自分たちの文化を放棄しない。
 ……日本も、少し前はそーゆーもんだったんじゃないのかな? だからこんなに、ウエットな目線でこの映画は作られているんじゃないのか?
 わたしは所詮日本人だから、草原の乾いた空気は実感できず、日本人としての郷愁をこめて見ておりました。や、どっから見ても日本映画だったよ。いい意味でも悪い意味でも。

 癒し系だから、癒されたい人にはいいかもな。
 しあわせな家族が愛し合い、手を取り合い、しあわせによりそって生きている。……そんな、ごくごくふつーの、なにも起こらない日常にほっこりしんみり涙するよーな。
 ジブリ的だなー。

 しかし……。
 なんで、よりによってコレをバレエ化するんだろう?
 企画はどちらが先だったのだろう?
 つくづく謎だ。

 
 ケロファンの方へ。
 『王家に捧ぐ歌』を観るときは、余裕を持って着席していましょう。
 幕が上がるなり、ケロお兄様の出番です。1幕、2幕とも、幕が上がるなりケロお兄様がひとりでまず舞台に現れます!

 つーことで、行ってきました、新生星組『王家に捧ぐ歌』初日!!

 「当面コンタクトレンズ禁止」を言われていたのに、ちゃっかりコンタクトレンズ着用。健康よりもヅカが大事なのか?!

 予定通り早々に立ち見券を買い、いつもの場所に坐り込んでミニパソを打っていたら、襲撃された。アタマを押さえつけられ、なにごとかと思えば、Be-Puちゃんがいた。
「なんで緑野さんがいるの?!」
 そりゃこっちの台詞だ。愛するチャー様が卒業して以来、ヅカも卒業したのかと思っていたよ。
 やはり立ち見だというBe-Puちゃんは、「幕が上がるころにどこか観やすそうな位置に行くわ」と言っていたが、結局わたしの隣で観ることになった。
 わたしはいいのよ。立ち見は得意だから。
 でもBe-Puちゃん、わたしの肩までしか身長がないのよね。かなり観にくかったようだ。

 物語は、大昔のエジプトが舞台。ラダメス@ワタルはエジプトの武将。敵国エチオピアから奪ってきた王女アイーダ@トウコにめろめろ。スタート時点からラヴ全開。エジプトの囚人であるアイーダも、スタート時点から、敵国の将であるラダメスによろめき中。そっかこいつら、出会って反発して、でも徐々に惹かれ合って……てな途中経過は省略済みなのね。いきなり禁断の恋人ムード。
 両想いでも、ふたりの恋は前途多難さ。エジプトVSエチオピアは終わっていない。敵国同士じゃどうあがいても結ばれないよねえ。
 てなわけでラダメスは将軍として戦争に勝利し、その褒美としてエチオピア解放をエジプト王@チャルさんに求めた。戦争をなくし、平和を!てなもんだ。
 さあ、これでふたつの国は敵国ではなくなった。アイーダとラダメスはそれぞれ祖国のしがらみを捨て、ふたりで手に手を取って逃避行! と行くはずが、そうはうまく運ばない。
 英雄ラダメスはエジプト王女アムネリス@檀ちゃんの想い人であり、ファラオのお気に入りでもある。次期ファラオ候補なんだ。彼の人生は彼だけのモノではない。
 アイーダもまた、エチオピア王女。敗者復活を狙うエチオピア王@一樹さんや王子@ケロが、ラダメスの恋人という彼女の立場を利用しようと虎視眈々。
 さあ、禁断の恋人たちの明日はどっちだっ?!

 おもしろかったです。
 いや、わたしキムシン好きだし。
 彼の作品で「ふざけんな(怒)」と思ったのは、タニちゃん主演の『十二夜』だけで、あとは全部OKだった人なんで。ええ、評判の悪い『ゼンダ城』も『愛のソナタ』も好きよー。
 『鳳凰伝』は1幕モノだったから、濃密にぎゅっと詰め込んだ感じだったけど、『王家』はその反対。余裕ぶっこきな感じ。特に1幕は、時間がある分のんきに展開したな。いらねーと思うシーンがあったり、テンポの悪さが気になったり。でも、1幕終わりから2幕の盛り上がりはたのしーぞー。

 出演者が、歌がうまかったらよかったのに。
 全編通して、痛切に思った。

 この作品、歌唱力のある人たちで上演したら、迫力あったろうなあ。
 ソロを歌う人たちだけじゃないよ。コーラスも、けっこー不満を感じるレベルだった。
 へんだなー、星組って前の公演まで「歌の星組」だったのになー(泣)。
 ワタルくんと檀ちゃんの歌にはハナから期待してなかったが、肝心のトウコちゃんまであんなにヤバいとは。高音になると途端に声量が落ちる。なんて不安定な歌声。
 歌には不満アリだー。

 しかし。

 しかし、たのしかった……。
 ツボな作品。
 『鳳凰伝』がツボだったよーに、わたしはこの作品を愛せそうです。ふふふ。

 主演キャラ、みんな好きだもん!
 ラダメス、好きよ。英雄だけど貧乏くじなところとか、ツボ(笑)。公私混同なところとか、愛を語ってついでに世界平和に転嫁しちゃうとことか。
 アイーダはむずかしいヒロイン。この女にムカついたらすべて台無し。でも、きわどいラインで自分の足で立って見せ、「この疫病神がぁっ!」という感想を持たせない。彼女の悲劇に感情移入できれば、とってもたのしいグランド・ロマン。
 アムネリスは、かっこいい。美貌だけで説得力。悪女ではなく、強い女。2幕の彼女はとにかく、かっこいい。すてきだわ。
 役らしい役がほとんどない作品なので、この3人を愛せたら、あとは問題ナシ。

 そんでもって。
 そんでもって、ケロちゃん。
 言っていいですか。
 ひょっとしてケロちゃん……2番手、ですか?

 いやもちろん、わかってるよ! 今さら、ケロを路線だなんて思ってませんとも! わかってるけど、でも今回、ケロが2番手男役?

 本来の2番手であるトウコがヒロインをやっているし、組替えご褒美ってやつなんだろうけど……まさかまさか、実際に観るまで夢にも思ってなかっただけに、おどろきだよ。
 ケロが2番手!

 全国ツアーでも代役でもなく、大劇場で2番手……。じーーーーん……。そんな日が来ようとは……。あの江上さんが……。(感慨にふけっている)

 まあ、ケロファン以外は、彼を2番手だなんて思わなかったかもしれないけどな。
 でも、べつにケロファンではないBe-Puちゃんも、終わるなり「良かったね、2番手で」といきなり言ってくれてたから、やっぱり2番手だったと思っていいのかな?

 それにしてもケロちゃん、かっこいいっす。
 まさか、幕が上がるなり出てくるとは思わなくて、油断してぼーっと観ていたら、一度聞いたら忘れられないハスキーヴォイスが耳に。ええっ、つーとあの、かっこいーシルエットで現れた男役はケロかいっ?! とあわててオペラグラス固定だよ。やーねぇ。
 ダークでワイルドな男。しかもアヴない系。MY剣にみょーにこだわりを見せ、奪われたときは大騒ぎ、取り戻したときは大喜び。舌ですよ、舌。ヤバい目をして剣を舌でぺろりと舐めます……あわあわ。
 セクシーなケロを見るのは、いつ以来でしょう……。『血と砂』の鬼畜入ってますエル・マタドール以来ですか? ブラボー。
 はっきり言って迷惑な男なんだけど、色男だから許す!! もっともっと暴走してくれ!って感じ。
 銀橋でアイーダ@トウコをいぢめます。引きずります。う・わー。トウコから「お兄様!」と呼ばれます(兄役だから当然なんだが)。う・わー。
 出番自体は少ないんだが、そんなのぜんぜん気にならないぞー。たのしいぞー(笑)。

 しいちゃんはラダメス@ワタルの友人役。れおんくんとセット。
 ワタル、しい、れおんの並びは、美しいぞ。3人とも体格いいからさー。太陽タイプが3人並んで、きらきらしてる。
 でもしいちゃん……やっぱり君、まとぶより下なんだね、立場。上級生なのに……しくしく。階段降りには気を遣ってもらってたけどさ。

 それにしても、トップお披露目の初日は、一種独特のムードがあっていいですなあ。
 開演アナウンスで拍手して、カーテンコールで拍手して。
 ……スタンディング・オベーションにはおどろいたが。

 たのしかったので、ぜひまた観に行きたいと思っています。
 とりあえず、あと2回はチケット買ってあるので確定。それ以外はそのときの気分で。

 そして、Be-Puちゃんとわたしはそのまま、ヅカ・カラオケをしに行きました。
 いや、なんとなく(笑)。

 
 そういや書いてなかったな、と、土曜日に見た映画の話。

 『めぐりあう時間たち』2回目を見ました。

 ストーリーがわかっている分、せつなさ倍増って感じですか。
 全編だーだー、泣きながら見ました。

 痛くてこわくてせつなくて、息苦しくなる映画。
 呼吸することや、まばたきすることを忘れていて、ときおり「はーっ、はーっ」と胸を押さえて深呼吸してしまうような。

 理屈を並べる映画ではないし、解説する映画でもないでしょう。
 感性だけでOK、てか。

 ただわたしは、死ぬときは愛を語ろうと思いました。
 どんなかたちで、いつ死ぬかわからないけど、それが自分の意志で得る死なのか、不可抗力で訪れる死なのかわからないけど、それでも、わたしは死ぬとき、愛を語ろう。
 誰への愛か、どんな愛か、わからないけれど。
 そのときに、わたしのなかにある愛を語ろう。

          ☆

 それにしてもこの日記のカウンターって、よく壊れるねえ。

 
 体調ふるわず、自宅にてごろごろ。
 最近溜まっていたビデオを一気に見てみたり。

 佐藤浩市主演『高原へいらっしゃい』第1話をよーやく見る。
 ああ、コレかぁ、『龍神町龍神十三番地』のラストで予告編が流れていたドラマは。

 佐藤浩市ってのは、「名前だけで」視聴率が稼げる役者なんですか?

 佐藤浩市主演の単発2時間ドラマのラストに、主演の新ドラマの予告を流すってことは、世間的にそーゆー認識がある、ってことよね?
 佐藤浩市目当てに単発ドラマを見る。そのラストに、佐藤浩市主演の新ドラマの予告。……じゃあ、次はこのドラマを見なきゃね!
 って、世間の人はそう考えるもんなの?
 つーか、みんなほんとに佐藤浩市目当てに、チャンネルを決めるの?! 佐藤浩市だよ? キムタク様じゃないのよ?

 わたしですか?
 もちろん、佐藤浩市目当てでチャンネルを決めますよ。

 わたしはたしかにそうだけど、自分が多数派だとは思えないもんで、この「宣伝の仕方」にちと首を傾げたのよ。
 世間的に、人気者なのか? 佐藤浩市?

 新ドラマ『高原へいらっしゃい』は、べつにおもしろくもなんともない、どーでもいいドラマだ。人生に暇が余っている人以外、見る必要はないでしょう。
 とりたてて不愉快にもならないし、壊れてもいない、つまらないと断言するほどのものでもない、ただおもしろくないだけのドラマなので、キャストのファンならたのしめるかしら。
 わたしは大してたのしめなかったので、佐藤浩市目当てでも続けて見るかどうかはそのときの暇次第かな。

 友人のオレンジが言っていた「あんなドラマ、佐藤浩市の無駄遣いよ!」に、大きくうなずくわ。

 佐藤浩市の正しい使い方の最高峰は、なんといってもドラマ『天国への階段』でしょう!!
 総受の薄幸の姫君。登場人物は老若男女問わず、彼にめろめろ。狡猾な年寄り攻をパトロンに持ち、生命懸けで惚れている美形の副官を横にはべらし、昔の男に復縁を迫られ、実の息子に愛憎の刃を向けられ、ただただ苦悩し色気全開で周囲をコマしつづける魔性の受。
 第1話から最終話まで、抱腹絶倒でした。
 いやあ、男のロマンってやつは、笑えるわー。
 谷正純もそうだけど、男の中の男だとか、ハードボイルドにときめく男が描く物語ってのは、オタク女にはカモネギ。両手を合わせて、おいしくいただきます。

 『龍神町龍神十三番地』という、なんじゃそりゃ?なタイトルの単発ドラマを見ようと思ったのは、わたしのオタク女センサーがピピッと反応したから。
 佐藤浩市主演。共演が柴田恭兵、椎名桔平。ヒロインが美貌の攻女・高島礼子。
 そして原作が、船戸与一!!
 うわっ、この面子ならそりゃ、見なきゃ嘘でしょう!! わかりやすい超カモネギ状態。

 暗い過去を持つ殺人犯の元刑事@佐藤浩市が、昔なじみの美貌の人妻@高島礼子に依頼され、五島列島の龍神町へやってきた。そこでは悪の駐在所長@宇崎竜堂が汚い手で町を支配しており、前町長は謎の事故死をしているし、今また高島礼子の夫である現市長@佐野史郎が何者かに殺害された!
 佐藤浩市は、県警のはみだし刑事@柴田恭兵とコンビを組んで、町を支配する悪と戦う!

 最初から最後まで、見事でした。ええ。
 抱腹絶倒、というのは、こーゆー状態を示すんだな、と再確認。おもしろすぎだー。
 暗い過去を持つ男が主人公。ああ、ハードボイルドはこうでなくっちゃねー。その暗い過去ってのは、「巨悪と戦ったが、個人の力ではどうしようもなく敗北」だとか「正義を行ったが、世間的には犯罪」とか、そーゆーのでなくっちゃねー。
 佐藤浩市演ずる主人公もまた、義憤により悪人をその手で殺した過去があるの。時代劇やマンガの世界ならヒーローだけど、現実社会では、死刑が確実な極悪犯罪者でも私刑を下すことはできない。つーことで彼が犯罪者として服役することになった。
 そんなやさしさと熱さ、不器用さを持ち、微妙に世をすねている男……って言ったらもー、佐藤浩市しかないでしょう。ハマリ役。傷ついた瞳がすばらしい。
 彼が龍神町での事件に巻き込まれ、刑事時代の熱さを取り戻していくわけだ。
 彼の横には、一匹狼のはみだし刑事、恭兵ちゃん。恭兵ちゃんは最初、敵意剥きだし反感むき出しで、佐藤浩市につっかかる。でもなぜか、なにかっちゃー恭兵ちゃんは佐藤浩市にアプローチ。放っておけばいいのに、わざわざつっかかるために彼の元へやってくる。
 はじめは恭兵ちゃんを邪険にしていた佐藤浩市も徐々に心を開きはじめ、ふたりの間に芽生える友情と信頼関係。
 ハードボイルドはいいですなあ。立場のチガウふたりの男の友情、ですよ。お約束ですよ。
 それにしても恭兵ちゃんの、佐藤浩市へのラブラブっぷりは、見ている方が恥ずかしくなる感じ。好きな女の子をいじめるためだけに校門で待ち伏せしてる男の子みたい。わざわざからみに行く。それも、愛情が透けて見える乱暴さで。
 笑えたのは、佐藤浩市に惚れて「ねえ、抱いてン」と彼の布団に裸で入り込んでくる脳みそピンク美女@小島聖を、恭兵ちゃんがいただいちゃうこと。えーとソレ、佐藤浩市の女(ストイックな彼は、そんな女に手は出さないが)だから、いただいちゃったの? あわよくば3人で、とか、穴兄弟目当て?
 そして恭兵ちゃん、佐藤浩市の股間触るし。つーか、掴むし。……あちこち、どーしよーもなく、笑わせてくれる。

 そして、もっとも爆笑させていただいたのが、佐藤浩市を助けるために恭兵ちゃんが死ぬところ!!
 うおーっ、助けるために死にますか! 愛!
 しかも、腕の中ですよ。
 しかもしかも。
 ……腕の中で、いきなり「告白」はじめやがります、このオヤジ。

「5年前から、アンタに惚れてたんだ……」(パラフレーズ)

 佐藤浩市が過去に犯した犯罪、正義の怒りゆえの殺人。……当時、その事件を知った恭兵ちゃんは、会ったこともない佐藤浩市に惚れてしまったのだった。
 ひそかにあこがれていた男が目の前に現れた、つーんでこのオヤジ、理由にならない理由をつけてはわざわざからみにやって来てたのね。好きな子をいじめる小学生みたいに。
 それを死ぬ間際に、腕に抱かれて告りやがんの!!
 そんな死に方アリかいっ?! そこまでかっ飛ばしますか?! 画面に向かってツッコミ入れちゃったよー。腹いてー。

 事件の真犯人は、設定を見た段階でわかる「あの人」だったし、なにもかもが「お約束」。
 ああ、ハードボイルドっていいなあ。なにもかも予定調和。お約束だけでできあがっている心地よさ。

 あとで知ったんだけどこのドラマ、『天国への階段』と同じスタッフが作ってたのね。
 ……そりゃ抱腹絶倒なハズだわ……。

 椎名桔平はチガウ意味ですごかった。アンタ誰、状態。顔も喋り方も変えてるの。わざと下顎を突きだしたままで固定。横顔なんか、ほんとに別人だよ。キモいっちゅーか、ボーダーラインなところにいる野人を迫力で演じきっていた。
 見る前は、桔平ちゃんにも期待してたんだけどね、攻様として……。いや、たしかに攻だったし、佐藤浩市を誘拐したり縛り上げたり、いろいろおいしかったけど……なにしろ不細工な野人だったから(笑)。

 次はぜひ、二枚目鬼畜な桔平ちゃんと、姫君浩市っちゃんでなにかドラマ撮ってください、鶴橋監督!! 恭兵ちゃんは属性受な人なんで、佐藤浩市と絡めても「受×受? この場合、どっちがどっち?」と混乱します(笑)。
 攻男の桔平ちゃん希望!

          ☆

 ところで今日は、デイジーちゃんのメールで起こされたところからはじまりました。
 ヅカの人事大ニュースについてでした。

 報知新聞のニュースがどうあれ、なんで今日だったのかなと思いました。
 つーのもわたし、リカコンの入力忘れてたんだわ。
 1日早くこのニュースが流れていたら、絶対入力してたのになあ。いや、わたしがどうじゃなく、リカちゃんファンのCANちゃんのために。

 エロエロないい男がまたひとり、ヅカから去っていくのかしら……。もったいない……。


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