「牡丹と薔薇はぁ、どちらがきぃれーいぃぃ」

 ふと口ずさんだわたしの横で、WHITEちゃんが「ぐはあっっ」とウケている。

 星組の並びの帰り道。

 あら。
 この歌が通じるってことは、アナタも見てるんですか、あのドラマ。

 前にも、

「僕が泣いーているのはぁ、とてもくやしいからです〜」

 と、なんとなく口ずさんだら、やはりWHITEちゃんが横でひとり、ウケていたっけ。

 主題歌というのは、共通言語として有効よね。

 あれ。
 「牡丹と薔薇」は、主題歌じゃないか。

 

愛が欲しい…。

2004年1月16日
 犬は人につき、猫は家につく。

 我が家の猫は、わたしにだけなついている。
 わたしと猫は狭く汚いこの家で、とりあえずふたりっきりで暮らしている。

 抱っこされるのは大嫌いだけど、わたしの膝には乗ってくる。そのまま眠ってしまって、降りない。
 わたしがトイレに入ると、入口までついてくる。長く(つっても数分だけどさ)入っているとドアを掻いたり鳴いたりと大騒ぎをするので、いつもドアを少し開けてある。顔を見たら安心するのか、隙間から目が合うとそれでおとなしくなる。あるいは中に入ってきて、便器に坐るわたしの膝に乗ったりする。
 風呂に入っていても同じ。必ず1度はドアの前で大騒ぎをする。風呂のドアの開け方だけは何故か知っているので、勝手に開けて入ってくる。水が大嫌いだから、すぐに逃げるように出て行くけれど。わたしが長く入っていると、何度も勝手にドアを開けて、顔をのぞかせる。ドアの前でうるさく鳴く。
 夜はわたしのベッドの上で眠る。1時間おきくらいにわたしの顔をのぞきに来る。
 早朝のいちばん冷え込む時間になると、眠るわたしの頬を前足でつついてくる。肉球がぺちゃっと頬に押しつけられる。「いつもの体勢」というのがあり、わたしにそれを要求する。わたしの腋を枕にして、布団に肩まで入って眠る。いちばん寒い時間は、こうやって暖を取る、らしい。
 わたしが出かけるときは、玄関で大騒ぎをする。つっかけを履くだけなら反応しないが、下駄箱から靴を出して履くと必ず大騒ぎする。「どこへ行くんだ!」「おれも連れて行け!」と。後ろ足で立ってドアに前足をかけ(直立猫。けっこう長い。でかい)、ぎゃーぎゃー鳴きわめく。

 とまあ、猫とわたしはそれなりに仲良く暮らしている。
 猫はわたしにだけなつき、わたしの顔の見えるところにしかいない。わたしがいなくなることを、いつもおそれている。

 しかし。

 ……しかし、だ。

 わたしはよく、猫を親の家に連れて行く。
 出かけるときなどは、親の家に猫を預けていく。猫にとって、わたしの親の家はもうひとつの家である。

 親の家に連れて行くと、猫の態度は豹変する。

 人間きらい。
 触られるのきらい。
 抱っこなんてもってのほか。
 エサをよこせ。水をよこせ。でも触るな。

 わたしの家で暮らしているときは、わたしの膝が定位置なのに。そうでなくても、わたしの顔の見えるところにしか、いないのに。

 他の人にも触らせないが、わたしにも一切触らせない。

 しばらく預けていて、数時間ぶりとか何日ぶりとかにわたしの顔を見ても、ぜんぜん知らんぷり。
 わたしの顔を見ても、ちっともうれしそうにしない。
 呼んでも反応なし。

 親の家に行くと、わたしにも他の家族にも、猫の態度は一律同じ。
「知っている人」
 という認識。
 知っている人だから、危害は加えてこない。知っている人だから、要求すればエサをくれる。
 ……という認識。

 どういうことっ?!

 親たちは、信じないのよ。
「家では、猫はわたしの膝から降りないのよ。いつも一緒に寝ているのよ」
「嘘でしょ。だって、アンタが触っても逃げるじゃない。いやだって言うじゃない。ちっともなついてないじゃないの」
 家ではなついてるのよーっ。
 わたしのそばから離れないのよーっ。

 家とよそでは態度がチガウって、どういうこと、猫よ?!

 猫は、家にいるときに限り、わたしになついている。

 犬は人につき、猫は家につく。

 ……ねえ、ひょっとして、猫にとってわたしは「家の一部」ですか?
 猫の大好きな「自分の家」の、「お気に入りの場所」みたいなもん? 動いて、エサをくれたりする「場所」だと思っている??

 だから「家」以外の場所では、わたしのことは「お気に入り」とは認識されない?

 今も猫は、膝の上にいる。
 重い。

 
 秀さんは、ふんどしをしめていませんでした。
 ぱんつ着用でした。

 ……いや、今日の『必殺仕事人』で。
 秀さんデーだったのか、彼の脱ぎっぷりがすごかったです。

 クールな仕事人、飾り職の秀@三田村邦彦は、チラリズムが信条です。おいそれと脱いだりはしません。
 裾の合わせ目から垣間見える生足、襟の合わせ目から見える鎖骨が魅力。
 ……なんだけど、今日は裾のまくり上げがすごくてねえ。太股まで見せまくり。黒いぱんつまで見せてくれたよ。
 上半身も黒い下着まで見せてくれたし。乳首が見えそうで見えないぎりぎりライン、それに安心してたらなんと、背中はイブニングドレス張りに全開で開いてるときたもんだ。
 しかも唐突にベッドシーン突入だし。
 あー、びっくりした。

 しかし、太股率高すぎだ、秀さん……。

 そして笑えたのが、三田村邦彦氏が歌う挿入歌『いま走れ!いま生きる!』が流れたこと。
 えっちシーンで。
 ななな何故この歌が、このタイミングで。
 ぜんっぜん、合ってねえ(笑)。
 てか三田村邦彦、あなた歌は歌わない方が男前でいられるよ……(笑)。

 昔、友人に三田村邦彦ファンがいたために、彼のテープ(友人はレコードよりカセットテープ派だった)は一通り聴きました。
 だから『いま走れ!いま生きる!』も歌えます(笑)。子どものころおぼえた歌は、忘れられないものなのだ。
 作詞が三田村さん本人だということも、知っています。

 そしてこれがまた、めちゃくちゃイタい詞だということも、忘れていません。

 タイトルからして、イタいでしょ?(笑)
 『いま走れ!いま生きる!』だよ。

 歌詞を要約しますと、

「なんとなく流されているのは嫌だ、平凡な大人になんかなりたくない。あの虹に向かって走るんだ! それが生きるってことだ!」

 ……中学生が書きそうなポエムでした……。

 でも三田村さん、ハタチはとっくに過ぎてたよね……。

 当時から、三田村さんの書く詞はなんか青臭いな、と思っていました。いかにもな「青春ソング」ばっかで。

 そういう恥ずかしい人、好きですけどね(笑)。

 で、なにが言いたいかというと。

 時代劇でも、ふんどししてないじゃん、かねすきさん!
 某歌謡時代劇(笑)の宮本武蔵が黒ズボン着用だったのも、仕方ないんじゃないかしら。

 
 佐々木丸美をご存じですか?

 わたしの文章に多大な影響を与えた作家は、太宰治と夢枕貘と、佐々木丸美だったりする。

 太宰と夢枕はともかくとして、佐々木丸美はマズイだろ!
 と、大人になった今は思う。

 だけど、高校生のときは佐々木丸美のパクリのような文章を書いて、悦に入っていた。
 そりゃあもう、必死に真似をしていたよ。
 当時でさえ、佐々木丸美って文章下手ぢゃねーか? と思ってはいたが、それでもなお、真似をせずにはいられなかった。
 技巧じゃなく、スピリットなんだよね、文章って。
 多少読みにくくても、視点が乱れていても、ずるくても、佐々木丸美の文章が好きだった。

 今現在はもう、完全に抜けたと思うんだけど。
 わたしの文章に佐々木丸美的なところは残っていないと思うんだけど……どうかなあ?
 やたら韻を踏んだりリピートするところは、やはり佐々木丸美?
 あそこまでポエムかましてないと思うんだが。

 佐々木丸美がどの程度世間から認知されている作家なのか、わからない。
 とりあえずWHITEちゃんは知らなかった。
 同じ高校だったのに。でもって、高校の図書室にあったのに。わたしは図書室で借りて、佐々木丸美と出会ったのに。

 佐々木丸美は……ジャンルでいうと、何作家になるのかな? ミステリ? 恋愛? ファンタジー?
 いちおー、ミステリ作家じゃないかと思っている。かなり微妙だが。
 彼女の作品の大半は、殺人事件が起こり、それを推理することになるから。……一応。
 ただ、ふつーのミステリとして読んだら、かなりちゃぶ台返しなトリックと結末に唖然とすることになる。力業というか、なんというか。
 真のミステリ読みの人たちからは、どういった評価を受けていたのでしょうね。当時はネットなんてもんがないので、さっぱりわかりませんが。

 大人になってから思ったことは、佐々木丸美はカテゴリエラーな作家だったんじゃないかということ。
 発表先、まちがえていたよーな気がする。
 講談社のハードカバーではなく、少女向けライトノベルで出していたら、もっと人気出たんじゃないかな。

 佐々木丸美の小説は、主人公が10代の少女である。
 しかも、薄幸の少女だ。
 孤児だったり、家庭に恵まれていなかったり。
 そして幼いときに、運命の人と出会う。ハンサムで知的で上品な王子様だ。年齢は必ず、ヒロインよりも10歳以上年上。6歳くらいのヒロインと、高校生くらいの王子様が出会うのが王道。いわば『キャンディ・キャンディ』ですな。
 時は流れ、美しい少女に成長したヒロインと、大人の男になった王子様との恋愛物語が改めてスタートする。
 しかも物語はただの甘甘ではなく、謀略と愛憎が絡み合った人間サスペンスだ。美しく不幸な女たちが愛に傷つき、破滅していく。自殺と殺人と発狂はデフォルト。絶対誰か死ぬし殺されるし発狂する。
 暗躍する、魅力的な美青年たち。「巨大企業」という王国で、男たちは戦士となり血で血を洗う戦いをつづける。
 女たちはそんな戦士たちを愛し、守り、ときに手を血で染める。
 ヒロインの愛した男も狡猾な戦士のひとりであり、決して一筋縄ではいかない。やさしい紳士であると同時に、冷酷な大人だったりもする。
 これらのとんでもねーハードな物語が、17歳の少女のリリカルな一人称でつづられる。

 作品は全部、リンクしている。
 1冊読んだだけでは、なにがなんだかわからない。
 シリーズだなんてどこにも書いてないが、ひとつの世界観によって構成されている。
 発行年順に読まないと、ネタバレがあったりもする。誰が誰を殺したのか、動機と犯人がバレちゃうんだよね。

 根幹にあるのが、輪廻転生と宿命の恋人たち。
 不老不死?をめぐる謎。
 ふたつの巨大企業の戦いと、お家騒動。
 仏教観とサイコ・ミステリ。

 人物相関図と年表、作ったもんなあ。高校生のとき。
 何家のだれそれが誰とつながっていて、どんな関係にあって、誰がどこで死んで、誰が途中で名前が変わっていて、誰が誰の生まれ変わりで……と。
 夢中だった。

 こんな物語をいつかつづりたいと、切望した。

 これ、ラノベだったらもっとみんな、読んでくれたんじゃないかなあ。
 文体が不親切だけど、内容はかなりラノベだと思う。
 美少女と美青年と美女がぼろぼろ出てくるし。てゆーか、男たち美しすぎ。顔立ちだけではなく、生き方が。現代日本を舞台にしていて、ここまでハードに生きなくてもいいだろう、ってくらい、ヒーローしている。
 美しいマンガ絵のイラストがあれば、小説好きの女の子たちはいくらでもついていっただろうに。高校生のときのわたしのように。
 女の子は、生きるの死ぬといった恋愛モノは大好きよ。
 そして、かっこいい男がたくさん出てくる話は、大好きよ。

 なまじ、ハードカバー本だったからなあ。
 『館』シリーズとか、ミステリみたいな装丁つけられて、紀伊国屋のミステリの棚に並んでいたりしたからなあ。
 大人の男の人が読んで、おもしろい本だったとは思えん……。

 と、何故今こんな話をするかというと。
 冬コミで佐々木丸美本買ったからさ。でもって、年末年始と忙しすぎて、今ごろ戦利品の本を読んでいたりするからさ。

 もう絶版なんだよね、佐々木丸美の本。作者が復刊を望んでいないらしいね。
 佐々木丸美ファンはきっと、わたしと同年代かそれ以上の年齢なんだろうね。

 子どもだったわたしは、佐々木丸美の書くヒーローはできすぎていて、嫌いだった。大人すぎて、いやだった。
 たぶん今も、吹原さんとか嫌いだと思うぞ(笑)。
 いちばんのお気に入りが、いちばん影の薄い真一さんだったし。
 彼女の書く物語はいつも同じパターン、薄幸の少女が大人の男と恋に落ちる。ヒロインの性格も、王子様の性格も、根っこはみんな同じ。
 王子様の性格はわたし好みじゃなかったけれど、その壮大なロマンにときめいた。
 暗い過去と重い宿命と、絡まり合った謎にわくわくした。

 少女が、ひとを愛する、その心の動きに魅了された。

 残酷で痛い、そしてロマンティックな愛の物語。

「**ちゃんみたいに、めちゃくちゃに愛して、愛を完成させてしまえばいいのよ」

「あなたが好き、と言うことは、自分が好き、と言っているのと同じことだ。そんな恥ずかしいことを言うのはやめなさい」

 とか、ずっとずっとおぼえている台詞がある。
(記憶だけで書いているので、完全に正しいかはわからないが)

 めちゃくちゃに愛して……はたしか、愛ゆえに発狂した女のことを、ヒロインが話していたはず。
 愛ゆえに狂った女のことを、「愛の完成」と言っていた。

 そんな恥ずかしいことを言うのは……はたしか、王子様がヒロインに対して言った台詞。王子様はとにかくクールだったからなあ。

 
 忘れられない物語。
 途中で終わってしまっている……んだよね?
 『伝説』シリーズの3作目は出ていない、よね?

 結末がないまま消えてしまった作家だから、余計に消えることなくわたしのなかに残り続けている。
 あの、独特の文体ごと。

 しかし、あの文体はマズイだろ。
 影響を受けてはイカン。
 特徴ありすぎる。

 昔、佐々木丸美の亜流みたいな文章を書いていた過去があるだけに、こわくて佐々木丸美作品を読み返せない(笑)。
 だって読んだらしばらくまた、文体が伝染する。
 絶対、する。
 それくらい強烈。

 こわいこわい。

 
 弟、「大友宗麟」を熱く語る。
 母とふたりで、NHKの正月ドラマの再放送を見たそうな。

 すまんなあ、わたしソレ、本放送を20分くらい見て、「つまんねー」と見るのやめちゃったんだよ。
 そう言ったら、傷ついた顔をした。
 ……そうか、語りたかったんだね。

 てかわたし、そのヒト知らないし。知らないヒトの伝記ドラマで、冒頭の設定解説がまだるっこしくてタルくてうざかったんで、見るのやめちゃったんだよ。
 松平健の太りっぷりもつらかったし、財前直見のヅラも似合ってなくてつらかったし。

「まあな、原作読んでないと、わかりづらいかもしんないけど……てゆーか、あの話を2時間でやるには無理があるんだ。ほとんどただのあらすじだったし」

 しかも原作、遠藤周作でしょ? わたし、そのヒト苦手なんだわ。価値観が合わなくてな……。

「原作も、キリスト教マンセーですべてカタをつけるところはどうかと思うが、それまでは異色の戦国モノとしてけっこういいんだ」

 どろどろの人間模様中心の戦国モノ。だそうだ。たしかにそれなら、おもしろいかもしれない。

「ドラマも、はしょりすぎでただのあらすじになってたけど、ちゃんと奥方が狂っていくのを描いてたから、まだよかったよ」

 キャスティングがあそこまで重くなければ、まだ見られたのになあ。

 話すわたしたちの横で、母はひとりで、
「キャスティングがよかったわ。アタシたちの世代が知っている人しか出てなくて!」
 と、よろこんでいる。
 ……年寄り向きだったってことよね?
 大河の『新選組!』には父とふたりで文句しかつけてなかったのに、よろこんでいるところをみると。

 時代劇は、そのうち絶滅する文化だと思う。

 今の時代劇を見ていると、そう思う。
 視聴者がいなくて、実際おもしろくもなくて、先細りになっていずれ消えると思う。
 時代劇を支えているのが、母たちの世代だからだ。
 彼らがいなくなれば、必要がなくなるので、消えるだろう。
 今の子どもたちは、おもしろい時代劇を見ていないので、大人になっても時代劇を見たいと思わないだろう。

 母と父の話を聞いていると、思うんだ。
 彼らが好きなのは「時代劇」ではなくて、「自分たちが若いころに見ていたモノ」なんだ。
 だから、同じ時代劇でも新しい風を含んだモノには拒絶反応を示す。
 石坂浩二の「新しい『水戸黄門』」には誰もついていかなかった。三谷幸喜の『新選組!』もあら探ししかしない。
 自分たちの青春時代に流行っていたモノ、そのものを今も求め、それ以外は必要としない。
 演歌歌手が何十年も前のヒット曲を歌い続け、新しい曲はヒットしないように、みんな「過去」しか求めない。
 世の中が進化していく中、変わり続けていく中、老人たちは「変わらないモノ」を求める。
 だから彼らが支える「時代劇」は、時が止まっている。
 大昔と同じレベルの単純なストーリー。勧善懲悪、お約束、進化なし。お涙頂戴、人情至上主義。
 出演者は何十年同じ顔ぶれ。若者の役を50過ぎの中年が演じる。
 それこそ、先年放映の新選組ドラマの主演、近藤勇役が渡哲也だったように。還暦過ぎた老人が演じる、20代の若者。高橋英樹が未だに織田信長を演じてみたりな。舞台ならそれでもいいけど、テレビではキツイ。せめて、その役の人物の享年より若い役者を使ってくれと、どれほど願ったか。
 ただたんに、「新しいモノ」がキライ。
 自分の知っているモノ以外、認めない。

 いつか時代劇は、絶滅すると思う。

 水は流れないと、腐るから。
 変化を嫌い、新しい要因を排除し、老俳優たちの重厚で大袈裟な演技のみに頼っているなら。
 今の老人たちがいなくなり、世代交代したあかつきには、消え失せていると思う。

 そしてわたしは、それでもいいと思っている。

 消えていいよ、時代劇。

 いや、わたしは時代劇好きだけど。
 人情モノだと大々的に銘打っているモノ以外は、できるだけ見たいと思っているクチだけど。
 今も『必殺仕事人』の再放送を嬉々としてビデオ取りしてDVDに焼いていたりするけど。

 でも、今の時代劇は、消えていいよ。このまま腐っていくなら、なくなってもかまわないよ。

 一度絶滅しても、また復活すると思うから。

 一度絶滅すれば、旧悪を廃して、新しい時代劇が作られると思うから。
 時代劇という異世界ファンタジーのよさを継承し、老人たちへのご機嫌取り部分を捨てた、新しい時代劇が作られる日を、たのしみにしている。

 時代劇と言えば、『零〜紅い蝶〜』。
 ちょんまげ時代ではないにしろ、アレもある意味時代劇。明治か大正か、とりあえずみんな当たり前に着物を着ている時代。
 わたしと弟の話題はそこへ。

「アレって、時代的にはいつなわけ?」
「えーと、1作目のヒロインの祖母にあたるのが八重だろ。で、その八重がまだ少女だから……」
「射影機を作ったのが、宗方の先生なんだよね? 大人になった八重が拾った射影機と同じモノ?」
「アレはハナから氷室邸にあったから、別物じゃないのか?」
「氷室邸のご神体の鏡の破片が入ってるわけだから……うーん、やっぱ別物? 計算合わないよねえ」
「なにも無理して1作目と2作目の話をこじつけなくてもよかったのにな、制作側」
「2作目だけやった人は、八重だけは助かってハッピーエンドだと思うよねえ。1作目であんなことになってるのに」
「八重は自殺、夫の宗方はあんなことに……(笑)」
「あんなことに……(笑)」

 『零』の1作目の名台詞と言えば、宗方氏の「や〜え〜、みこと〜。や〜え〜、みこと〜(エンドレス)」だもんなあ(笑)。

「それにしても、2作目はストーリーがよくなかったな。1作目の方がよかった」
 と、弟。

 えっ?
 わたし、2作目の方がよかったと思ってるよ?

「なんで? 2作目はすべて、『おねーちゃんが電波でした』で終始してるじゃん」

 そ、それを言うと身も蓋もない……。
 いや、その電波っぷりのなかにだね、大人になることを厭う少女のはかなさがあってだね……。

「呪われた村に迷い込んでしまった姉妹が脱出するだけなら、話は簡単だったのに。ややこしくなったのはすべて、おねーちゃんが電波受信して勝手にどこか行っちゃうからだろ。澪はいつも、勝手にどこかへ行ってしまうおねーちゃんを探して走り回ってた」

 それはそうなんだが……。
 1作目はいちおー、キャラの目的ははっきりしてたなあ。
 民俗学的に貴重でもある呪われた屋敷・氷室邸に、某作家が取材に行ったまま行方不明になり、その作家に恩があるおにーちゃんが行方を捜しに行き消息を絶ち、今度は兄を捜してヒロイン美紅が氷室邸に入る……。
 美紅の目的も、氷室邸の怨霊の目的も、クリアだったなあ。
 ついでに、おにーちゃんとその作家の関係を妄想したりして、たのしかったなあ(笑)。

「2はラスボスがアレっても、納得いかない。そりゃあのキャラも怨念持ってるだろうけど、小物すぎ。1の霧絵ほどのインパクトがない」

 あー、霧絵はこわかったねえ。でもって、かなしかったねえ。
 でもそれってやっぱり、「真のエンディング」がさらにあるからじゃない?

「あるだろうな。そっちでは、あのキャラが真のラスボスとして出てくるんじゃないか?」

 予言しておくわ。
 「真のエンディング」とやらでは、おねーちゃんも助かってハッピーエンド。

「今度は『おねーちゃん、早ッ』かよ(笑)」

 1の「真のエンディング」を見た、緑野姉弟の感想は…
 昨日の日記で「ゆみこちゃんは、受だよね?(笑)」と書いたら、賛同のメールをいただきました。ありがとうRさん。

 てか今回の花組公演を観て瞠目したのが、ゆみこちゃん。

 雪組時代から彼のことは好きで注目していたけれど、正直真ん中に立つ人ではないと思っていた。
 雪時代はまだ華を感じたけれど(『嵐が丘』ではトウコちゃんとまちがえる人続出、無名の下級生だとは誰も思わなかったよ)、花組に組替えになってからはトップ路線に乗っているのが不思議でしょうがなかった。
 ほっくんが路線なんだからゆみこちゃんが路線でもおかしくはないが、ほっくんを脇の実力派希望としているわたしはゆみこちゃんも脇の実力派であることを希望していた。
 せっかくうまいんだから、脇で長くおいしい役をやってくんないかなあ。トップ路線の人の寿命は短いんだからさあ。
 てな希望だった。
 ゆみこちゃんはヘタレ男を演じることのできる、貴重な男役。凛とした二枚目もできるが、よよと泣き崩れる男も余裕で演じてしまう。うまいんだよね、ほんと。
 しかし、うまいからといってセンター向きかというと、かなり疑問だった。
 雪組でならまだ華やかだったけど、花組に行くとどーにもこーにも地味だ。下級生時代はあんなにかわいかったお顔も、年齢と共に個性の目立つ方へ変わってきている。
 加えて、似たタイプだったはずのらんとむが、まさかの変身、華やかなアイドル系になって追い上げてきている。
 このままだと、いつからんとむくんに抜かれちゃうんだろうなあ。てゆーか、らんとむくんの方が真ん中に向いてるもんなあ。

 そんなふうに、漠然と思っていた、ゆみこちゃん。

 初日を観てびっくり。

 きらきら、していた。

 あ、あれ?
 いぶし銀のゆみこちゃんが、きらきらしてるよ?
 てか、いろんなところで場をかっさらっていくよ?
 真ん中で「スター」してるよ?

 なにか、突き抜けちゃったのでしょうか?
 脱皮しちゃったのでしょうか?

 ヅカを観るたのしみのひとつは、若者の成長を見守ること。
 目標を持って走り続けている若者は、ときに外野が腰を抜かすような変身をする。
 ただなんとなーく毎日を生きているわたしなんかが想像もつかない飛躍をする。

 昨日の続きが今日で、今日の続きは明日。
 なにも変わらないし、変える努力もしていない。
 そんな人間には起こりえない「奇跡」を起こす。
 自分の力で。

 それを見るのが、たのしい。
 「日常」にはそうそうないことを、彼女たちは舞台の上でやってのける。

 ついこの間まで、うまいけれど地味だった女の子が、確固たるオーラを放ちはじめる。
 その、まばゆさ。
 今までがグレーだったからちょっとした輝きでも目がくらんで感じるだけだと言えば、それまでだが。
 でもそれだって、革命的なことにはちがいない。
 おいそれとあることではないからな。

 ほんのちょっと前、らんとむくんが突然なにかを突き抜けたかのように、あか抜けて美しくなり、きらきらと輝きだしたときにも、感じたよ。感動したよ。

 成長する人を見守る。
 わたしに時が流れているように、あのひとたちにも流れている。
 その、よろこび。
 その、痛み。
 それを共有することが、ヅカの醍醐味のひとつ。

 成長だけでなく、停滞や後退、そして引退をも見守る。
 出会いがあり別れがある。
 ヅカを見つめて出会うことすべては、人生で実際に出会うことと同じだ。

 だから、ゆみこちゃん。
 単独3番手おめでとう。
 バウ単独主演が決まり、大劇場で3番手としての位置を確固たるものにし。
 立場に相応しい輝きを放ってスポットライトをあびる姿に、心からの拍手を送る。
 この人も、実力で真ん中を引き寄せる人なんだね。持って生まれた「華」ではなく、地道な実力で。武芸者が黙々と磨いてきた腕を、ただ一瞬にきらめかせるかのよーに。

 てか。
 今回の見所のひとつは、まちがいなくゆみこちゃんの「脚線美」です。

 うっひゃあ、ダイナマイツ。
 その長い長い脚はなにごとっ?!

 いや、ゆみこちゃんの脚がきれーなことぐらい知ってたけどさ。今までもショーで女役やったりしてたし。
 でもこれまでとは、押し出しと輝きがチガウので、さらに美脚が強烈な印象。

 芝居では女装して笑いを取るはずがマジできれーなので笑うに笑えないし、ショーではダルマ姿(縁起物のダルマではない。レオタードのよーな衣装のこと)で惜しげもなく長いおみ足を披露。
 そしてなんといってもその、歌唱力。
 生唾モノの脚を見せたまま、歌う歌う、迫力の美声。
 ゆみこおねーさま、すてき……。
 男役では受子ちゃんなのに、女装すると攻になるのね。なんてツボな方。

 わたしがジェンヌさんを好きになる重要なファクターに、「声」がある。好きなルックスの人でも、声が苦手だと「苦手な人」に分類されてしまう。
 だから歌のうまい人、好きだしねー。ダンスは下手でも気にならないが、声と歌は重要よ。
 トド様の地の底から轟くよーな低音の歌声にめろめろだし、ちはる兄貴のセクスィヴォイスは尾てい骨にキます。トウコちゃんの深みのある声と、ケロのしゃがれ声も好き。歌は多少アレでも、声がよければ点数底上げ(笑)。
 今回の花組は、寿美礼ちゃんの歌声と、ゆみこちゃんの歌声にトリップ。あああ、いいなあ、この声好き〜〜。
 ナマで聴くと、至福の時よ。ほんと。

 ところで。
 ゆみこちゃんは、受だよね?(笑)

 寿美礼ちゃんは真っ黒だと思うけれど、ゆみこちゃんには真っ白でいて欲しいと思う腐女子心。
 白いブラウスだとか白い剣道着だとか、両家の子息の通う全寮制男子校の汚れなき少年とか、そーゆーイメージです(笑)。
 もちろん、どっかの攻男に手折られること前提で(笑)。

 『恋さわぎ』……ぢゃねえ、『天使の季節』での受ゆみこちゃんの見所は、再会したギスターブ@寿美礼ちゃんとマルゲリタ姫@ふーちゃんがいちゃいちゃしているのを、階段の上から眺めているところ。
 しあわせカップルにアテられて、アベルタン@ゆみことジョルジュ@らんとむもが、うっかり恋人同士気分でいちゃつきます。
 このとき、ごく自然にゆみこが受で、らんとむが攻。
 しかも9日に観たときは、うしろから抱くらんとむの手が、ゆみこの胸元にのびてました。上着の中に、手を差し入れてんのよ……らんとむ。
 手を服の中に入れる必要があるのか、らんとむ?!
 裏切らない奴だなっ?!(笑)

 タカラヅカ腐女子の人のほとんどが、期待してますよね、らんとむ×ゆみこ。年上受は基本ですよね?
 あ、腐女子のほとんどが期待してるのは、オサ様×ゆみこか? 『エリザベート』以来、鬼畜オサ様に翻弄される汚れなき青年ゆみこ、は定型化したか?
 いやわたし、ゆみこちゃんが受ならどっちでもいいですが(笑)。

 
 寿美礼ちゃんは攻です。
 わたし的に。

 だからオサアサは文字通り、オサ攻のアサコ受です。

 春野寿美礼サマはばりばりの攻様だと思っているけれど、彼の基本設定として、受攻以前に「鬼畜」というのがあります。
 彼は鬼畜攻様なのです。
 「貴公子」という肩書きを持つ、かの麗人は優雅に邪悪に鬼畜なのです。麗人ブラウスに薔薇の花にカウチにナイフなイメージです。
 現代リーマン物であったとしても、青年実業家で美青年を奴隷にして飼っていそうなイメージです。
 学園モノなら、悪の生徒会長希望。
 「富」と「権力」が似合う人です。
 すべての場合において、「外面は最高にいい」というのが前提。
 笑顔ひとつで彼は、「天使のような清らかな美青年」になれるのです。つーか世間をだませるのです。計算して「善」の仮面をつけられるだけではなく、本気で「善良な笑顔」を浮かべたりもするからさらにタチの悪い、最悪最強の貴公子様なのです。

 なにしろ受攻以前に「鬼畜」を基本設定に持つ人ですから、TPOに合わせてあえて「受」になってみたりもします。
 どっちにしろ基本設定は変わりません。鬼畜です。受でも攻でも、とにかく鬼畜。こいつにハマったら最後、地獄が待っているだけだ。
 ……そう思わせてなお、「地獄でもいい!」と彼の足下にひれ伏す男たち続出。そーゆーカリスマ鬼畜様なのです。

 わたしのオサちゃんは。
 あくまでも私感。
 勝手なイメージです。本人がどうかなんてことは、一般人のわたしには知るよしもない。

 とにかく、わたしにとっての寿美礼ちゃんは素敵な鬼畜貴公子。
 トート@エリザベートというよりはエロール@不滅の棘、そしてエロールよりは、あのクソ恥ずかしいパーソナルブックのノリですな。

 その素敵な素敵な寿美礼ちゃんが。
 美貌と権力で男たちを惑わせ従わせ君臨している、あのうるわしい方が。

 攻Ver.のまま、受に突入しております、『アプローズ・タカラヅカ!』!!

 ビバ特出!!
 ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ!!

 星組トップコンビ特出日を狙って、花組観劇2回目行ってきました。

 いやあ、すばらしかった。わたしはショーだけに7500円払いました(笑)。

 ワタルくんは、ほんとーにいい男です。
 なんせ出てくるだけで、そこにいるだけで、「あっ、あの男が攻だ」と周囲の者たちに知らしめてくれるのですから。

 てか、でけぇ……(笑)。

 それまでは、われらが寿美礼ちゃんが「私こそが攻」といういつもの顔でキザって踊っているのだけど、そこへワタさんが現れてみなさいよ、あーら不思議、攻を食う大攻の登場だぁ、攻×攻だぁ、エロエロだぁ。
 いやあ、空気変わるね。すごいね。

 前にも日記に書いたけど、ワタルくんは「相手役の色気を映す鏡」なので、エロいキャラと組んだときにエロさを相乗させるんだよね。
 ワタさん単体なら、色気のカケラもない善良な健康優良児なんだけど、エロい人と組むと途端にエロエロ大男に変身。
 リカちゃんと組んだときのエロさは忘れられません……。

 あまり深く考えず、「特出も1回は観ておきたいな。どの組にしよう……まあいちおーアタシ、今星ファンだから星にしておくかー」ぐらいの気持ちでチケット押さえたんだが。

 大当たり。
 わたしのやほひセンサー健在なり。

 寿美礼ちゃんを後ろから抱きすくめるワタさん。羽交い締め、とも言うが、双方表情がエロいのでなにをやってんだかやばやばな感じ(笑)。

 初日に観たとき、「オサアサ大安売りだな」と思ったあたりが、そのまま「ワタオサ」に変換されているとは。
 特出のシーンがどこかとか、予備知識なしで観てたもんで、ぜんぜんわかってなかったよ。

 特出万歳。
 ありがとう、すべての人たち!

 このわたしに、ワタル×オサを見せてくれるなんて!!
 通常ならありえないし、想像したこともなかったカップリングだよ。
 眼福眼福。

 ラダメス@王家に捧ぐ歌のときはあんなに清涼で受々しかったワタルくんだが、相手が寿美礼ちゃんならエロエロ攻らしくなれるのね。
 だってラダメスのときは、一緒にいるのがしいちゃんにレオンくんだったから、より「脳みそまで筋肉男」になってたのよねー。あそこまで体育会系じゃあ、攻男の色気なんて出るわけないわよねえ。

 とにかく、たのしかった。
 ワタルくんの男の色気を堪能。そしてそれを引き出した、われらがカリスマ鬼畜貴公子オサ様の「攻だけど受にされちゃう男」のエロさを堪能。
 あー……萌えたー。

 ワタルくんと檀ちゃんは、ほんとにいいカップルだと思った。
 登場するなり、ぱっと画面が華やぐ。
 舞台のセンターがどこかを示してくれるトップコンビだ。
 檀ちゃんは聖女の役もできる反面、エロもOKなキャラなので、ワタルくんにはいいお嫁さんだと思う。
 ふたりが絡み合うと、必要以上にアダルトでエロいので、見ていてたのしい(笑)。

 連れている女のレベルで、男の価値も変わってくるよなあ。
 いい女を連れている男は、それでだけで「いい男」だもんなあ。
 ワタルくんの男ぶりが上がっているのは、あの絶世の美女が惚れきった目をして傍らにいることもあると思うよ。

 寿美礼ちゃんは……。
 寿美礼ちゃんは、いいんだよな、あれで。
 彼は女のレベルで左右されるよーな男じゃないという自負があるのよ。だから嫁の美醜にはこだわってないのよ。
 てか、嫁よりもそのへんの女よりも、自分こそがビューティーNo.1だと思っているのよ。だから平気なのよ。
 きっと。
 かたわらの女のレベルはともかく、かたわらの「男」のレベルは高いんだから、それでいいのよね!

 いや、ふーちゃんは、寿美礼ちゃんの「表の顔」には結構似合ったお嫁さんだと思ってます。
 つまり、「腹の底まで真っ白です!」な「好青年」のオサちゃんには、ふーちゃんのさわやかさは合っていると思う。
 きれーなお衣装でにこにこ笑って、センターでポーズ取る分には、いいかと。ふーちゃんの笑顔、福々しいし。

 でも、寿美礼ちゃんの最大の魅力である「エロさ」には、ふーちゃんは合ってないと思うのよ……。

 エロ部分は、アサコが相手役なのかしらねえ、やっぱ。

 「オサアサ大安売り!」から、「魅惑のワタオサ」に華麗なる変換を遂げた『アプローズ・タカラヅカ!』。
 他の特出トップスターとの絡みもたのしみですな。
 リカ×オサ……ねっとりいやらしいリカちゃんを期待していいのか? 2番手時代のような? 『薔薇の封印』もただの「いい人」で期待はずれだっただけに、起死回生を懸けていいのか?
 タカコ×オサ……きれいだろーなー、ふふふ。ビジュアルではいちばんでしょう。わたしは攻のタカちゃんが好き〜。
 オサ×コム……誘い受だよね、コム姫なら!(笑) 堕天使コムちゃんを期待したいところだ。

 とまあ、勝手に妄想してますが。
 金がないのでもう観に行きません。
 たぶん。
 ……きっと。
 …………おそらく。

 あ、最後にひとつだけ。

 ゆみこちゃんは、受だよね?(笑)

 
 いい時代になったなあ、と思うのは、名刺を2種類作らずに済むこと。

 以前わたしは、仕事用とプライベート用と2種類名刺を作っていた。凝り性なもんだから、名前だけ換えたモノではなく、デザインごと別に作っていた。
 作っているときはそれなりにたのしいのだが、管理はめんどーだった(笑)。

 プライベートで使用したいときに、仕事用の名刺しかないときは、恥ずかしくて渡すことができなかった。
 だって、緑野です、と名乗ったあとで、チガウ名前の名刺なんか渡したら、アヤしいっつの。

 しかし、時代は変わった。

 今わたしは、堂々と仕事用名刺をプライベートでも使うことができる。

「すみません、ハンドルネームの名刺なんですけど、いいですかぁ?」

 これで通用するんだもんよ!!
 いい時代になったもんだ。
 本名とは別の、しかもなんかきらきらした「名字+名前」の名刺を渡しても、変に思われない!

 ……いい加減、プライベート名刺、作り直せよ自分、とは思いつつ……めんどーでな……。仕事用で代用しているのよ……。

「大変だな、偽名をいくつも使っている人間は」
 と、弟。

 偽名って言うな、偽名って!!

 そーだなあ、「緑野こあら」でも名刺作ろうかなあ。……って、配る相手いないけど(この日記は内緒のはずだ・笑)。

 
 ふつーに生きて、お正月してます。
 元旦からさっそく花組公演観てました。

 植田紳爾はマジ、もークリエイターやるのはやめて欲しいです。あれは本人に了承取った作品なんですか、それともただの盗作ですか。
 『LUNA』の焼き直しの『薔薇の封印』にも辟易したけど、『恋さわぎ』のパクリを『天使の季節』と銘打っての上演は不快でした。
 完全な盗作ではなく、きっと酒井せんせーも了承してるんだろーな(たとえ彼に拒絶する権限がなかったとしても)。
 それとも『恋さわぎ』は実は植田せんせーの作品だったのかな。でないとおかしいよな、ここまで同じストーリーは。
 しかも、江戸の商人の話から現代のヨーロッパの王様の話に、舞台をスライドしたせいで、壊れきってるし。
 どんな裏取引があったにしろ、他人の書いた作品を、同じ設定同じ展開同じトリック同じ台詞同じキャラクターで「自分の名前」を冠して発表するなんて、創作者としての姿勢を疑います。
 例としてあげるなら、酒井澄夫作『花恋吹雪』が上演されたあとで、植田紳爾が『血と砂』をオリジナルのふりして上演したよーなもんさ。「だって、舞台がスペインだから、別の話だもん」とか言って。酒井澄夫作『アナジ』のあとに、植田紳爾が『春櫻賦』をオリジナルとして上演したよーなもんさ。
 同じ作家がいつまでも同じ作品ばかり描き続けているのも変だが、他人がやるともっと変だ。それってはっきりきっぱり、ただの盗作だろう。
 酒井せんせーの了承を得た上で、作品をパクらせていただいたのかしら。植田せんせーはえらい人だから、そーゆーのもきっとアリなんだろーな。はー、やれやれ。
 がんばれ出演者。がんばれファン。

 またいずれ、時間のあるときに作品の感想を書きます。
 ただ、あまりにびっくりしたもんでな。植田紳爾が「終わっている」ことは世の中の常識だったけれど、他人の作品を堂々と焼き直すとまでは思ってなかったもんで。
 創作者として「終わっている」以前に、人間性の問題じゃん……。

 まー、それはさておき、この日記サイト。
 へぼなのはわかってためど、ほんとにへぼい。

 とゆーのも、現在2003年の日記が書けなくなっているからだ。

 日付指定欄に「2003」だけないのよ。あとの年はあるのに。
 1月1日00時00分になるなり、2003年は抹消された模様。
 大晦日の夜に年末分の日記書いてたら、エラーになっちゃったよ、いつの間にか日付が変わってて。

 まあいつかそのうち、改善される日も来るのだろうけど。
 おかげで、『巖流』の青年館楽の話も、映画の話もコミケの話も書けないわー。
 ちぇっ。

 いつか、書けるようになったらこっそり書くことにしよう。

 それにしても毎日忙しい……。

 

消耗する大晦日。

2003年12月31日 家族
 大晦日は忙しいです。
 誰だって忙しいです。
 特にわたしは、冬祭りに長々と参加していたので、やるべきことが溜まっています。

 その忙しい大晦日の夜に、何故ママにインターネット講座を?!

 緑野母、ついにネットデビウ!!

 母のパソコンがネットにつながりました。
 メールアドレスも取りました。つーか、取るまでめちゃ大変だったんですが。

「アドレスにする名前考えて」
「緑野龍子」
「それは本名でしょう、本名まんまじゃきっともう取れっこないから、もっと人とかぶらないようなものを考えて」
「じゃあ、りゅうこ」
「だから、本名だとすでに他の人が使ってるから無理なんだってば!!」
「えー、アタシの名前と同じ人がそんなにいるのぉ?」
「いる。確実にいる。日本の人口なめてんのか」
「じゃあ、R.M」
「だから、本名はやめろっつてるだろう!!」
「そんなこと言われても、名前なんて急に考えられないわ。……じゃあ、***」
 なんと言ったのか、聞き取れなかった。耳覚えのまったくない単語だった。
「……スペルは?」
「知らない。山用品のメーカー名」
「言っておくけど、自分でそのスペルを入力することになるんだからね。おぼえられるものにしなきゃいけないのよ?」
「えーっ、そんな、おぼえられるわけないじゃない、***なんて!!」
 自分で言ったんだろう!!

 万事この調子でね……。
 メールアドレス取るだけでも、疲れ切ったよ……。
 あと、パスワードの設定もね、同じ意味で大変でね……なんでああも日本語が通じないんだろう……。

 とりあえず、Yahooの見方を教えて、路線検索と天気予報と辞書と、それからGoogleの使い方……。

 ぜえはあぜえはあ。
 息も絶え絶えです。

 一方弟は、父に「携帯電話の使い方」をレクチャーしているし。父が買った最新型携帯電話は、機能いっぱい便利モノ、しかし彼は使い方がいっさいわからないという……。
 とりあえずわたしが写真の撮り方だけ教えてあったので、彼は毎日たのしそーに、猫の写真を撮り続けていたようだが。
 メモリ登録すらわかんないままだったのね……。
 今ごろになって、弟にメモリ登録の方法を教えてもらっている。(弟の携帯と機種が一緒なのだ。わたしのとはチガウから、くわしいことはわかんない)
 てか、「入力して欲しいんだけど……」と愛想笑いで差し出してきたアドレス帳、全員女の名前でしたけど、どーゆーことですか、父よ?

 大晦日の夜、緑野姉弟は両親相手の先生業で大忙し。つーか、消耗。

 いつものよーに、弟とふたりで近所の神社に初詣に行ったんだが、すでにへとへとだったよ。

 また1年、思いやられるよーな。

 
 WHITEちゃんは、よく寝ます。
 旅行に出かけると、とにかくよく眠ります。
 健康的で、すばらしいことだと思います。

 しかし。

 ふたり旅の場合、連れが早々に眠ってしまうと、残された方はめちゃくちゃヒマなのだー!!

 聞いてよ、WHITEちゃんてば、夜9時には熟睡しちゃうのよ?
 翌朝9時過ぎまで、12時間寝てるのよ?
 わたしが風呂から出てきたら、WHITEちゃんは服も着替えず布団にも入らず、ベッドの上でそのままオチてるのよ? とーぜん風呂も洗面も歯磨きもなにもせずによ? 化粧も落としてないのよ?
 多少差はあっても、毎日わたしの倍は寝ているのよ??

 ……ヒマです。
 夜は長いです。

 今回のわたしの旅行荷物には、ゲームボーイアドバンスSPが入ってました。なくてはならないものです。
 と言ったらオレンジは、
「そうね、バスで寝られなかったときのために、暇つぶしは必要よね」
 と言いました。
 うん、たしかにバスでも必要だけど。

 WHITEちゃんとのふたり旅行だと、特に必要なのよ、暇つぶしグッズが。

「あー……たしかに……」
 オレンジも納得してます。
 彼女の家に、WHITEちゃんとわたしとで泊まりに行くと、いつもいつも、WHITEちゃんひとり先に寝てしまうのです。その横でわたしとオレンジが徹夜できゃーきゃー喋っていても騒いでいても、マイペースに熟睡こいてます。

「うらやましいけどねえ、あのいつでもどこでも熟睡できる体質」
 まったくだ。

 つーことで、えんえんひとりでゲームしてました。

 弟から借りた『ファイアーエンブレム〜烈火の剣〜』。はじめたばかりだってのに、おかげでずいぶん進んだよ。

 てゆーか。

 コミケで、烈火本をいろいろ買ってしまったんですがっ。
 WHITEちゃんに放っておかれ、えんえんゲームしてたせいだよ!
 しかも、よく見たら知らないキャラの本まで買ってたし。まだ出てない人たちだよコレ。(同人誌はクリアしてから買いましょう)
 カップリングはいろいろ、男×男も男×女も、とにかくてきとーに買いあさったからなあ。どのへんが主流なんですか?

 今回のお買い物で意外だったのが、『ワイルドライフ』。
 無意識にわたし、『WL』本買いあさっていたようです。……そんなに好きだったのか? てか、夏コミでも唯一並んでまで買ったのが『WL』だったよーな?
 
 てか、陵刀先生は受ですか、攻ですか?

 攻だと思ってたんだけど……へ、へんだな、気がついたら陵刀受本買ってるし……。

 陵刀せんせのどこが魅力かって、やはり「年齢」ですかね(笑)。大人はいいですねえ。
 本編でどんどん妖怪の域に達していくせんせーが素敵です。あと、むやみやたらとある美しくも凶悪な笑顔のアップも(笑)。
 あーゆー邪悪で大人な美形は大好きです。

 陵刀パパの鬼畜攻とか読みたいなあ。パパはいいよね、最強だよね。院長あたり餌食にどうですか?(笑)

 でもいちばん読みたいのは、陵刀×鞍智だなあ……。
 陵刀にしろ鞍智にしろ、本命は鉄生でしょう? 本命は別にいるのに……という、救いのない関係がいいよなー。とくに鞍智。こいつはうぢうぢいぢめまくりたいキャラだ(修行して攻キャラっぽく変身してきやがったが、それでも受にしか見えない・笑)。

 そしていちばんのダークホースが、『ウォーターボーイズ』本!!

 わたしなんで、水少年本ばっかこんなに買ってるの?! てか、本があるの?!(笑)

 ドラマ『ウォーターボーイズ』は、ふつうにおもしろい、よい作品でした。最終回とか泣いたなー。
 見ていると、元気にしあわせになるドラマ。

 このドラマの同人誌が、いろーんなところで売っていた……。

 それこそ、わたしがお買い物に行くジャンルに。ちらほらと。

 で、気がついたら何冊も買ってるし。
 カップリングもいろいろだ(笑)。受攻もいろいろだ(笑)。

 わたし的には、高原×進藤です、ふつーに(笑)。

 てか、買った本を並べてみたら、受でも攻でもとりあえず高原が出ていた。そうかわたし、高原好きだったんだ!! 知らなかったよ(笑)。
 あーゆーバカな男はいいよなあ。バカで不器用で日本語が不自由で。善良なふつーの子なのに、外見と愛想のなさで誤解されて、遠巻きにされちゃって。
 こういうバカ攻に、一生懸命で鈍感な子犬くん受ってのは、ロマンだよなあ。

 あとは、進藤×田中かな。田中の片思いでよろしく!
 田中はいいよな。あの空回り体質がツボだよな。ヒステリックな優等生は受が似合うよなー。ひどいめに遭わせたいよなー(笑)。
 鈍感進藤に惚れて、ひとりで傷つきまくるの。うっとり。

 『ウォーターボーイズ』がいいのは、キャラが「美しくない」ことだと思う!
 ジャニタレばっかのドラマだったらきっと、わたしは最後まで見てなかったと思う(笑)。
 大してきれーでもないふつーの男の子たちががんばる物語だったから、こんなにたのしく見られたんだ。

 それにしても、本があんなにあるとはな……そして、それを買っちゃうとはな……。自分でもびっくりだ。

 とまあ、マイナー路線一直線。
 売れているジャンルには一切興味なしという業を背負って生きるオタク女。

 そして最後の夜にわたしのゲームボーイの充電が切れました……。充電切れるまでプレイしたのはじめてだよ、WHITEちゃん。
 あーたがわたしに構ってくれないから……(笑)。

 それにしても。

 ツインルームに大人ふたりが確かに泊まったのに、片方のベッドが明らかに使われていないのって、なんか嫌だなあ……(笑)。
 (WHITEちゃんはいつも、ベッドの「上」で寝るから、布団が一切乱れないの! 使ってないみたいに見えるの!!)

 
 コミケ2日目。わたしのメインジャンルの日。
 自分のサークルそっちのけで、お買い物に走り回る。わたしはコミケが好きで、同人誌が好きなのだ。
 ああそして。
 わたしは「そのひと」と出会ったのだ。

 出会いは一瞬だった。

「えっ、ゆうひ?」

 コミケの人混みの中、わたしは良く知る顔を見つけて振り向いた。
 今すれちがった女性が、ゆーひくんに見えたのだ。
 ゆーひ、って、おーぞらゆーひ? えええっ、なんでゆーひがこんなとこに?! でも今のゆーひだったよーな。つか、変装してたぞ?! 眼鏡かけて、スカートはいてた。マフラーで顎から下隠して、女装してたよ。
 あああ、落ち着けわたし。ゆーひがこんなとこにいるわけないじゃん!!
 見間違いだ、他人のそら似だ。
 しかしタカラジェンヌにだってオタクはいるだろうに、彼女たちはコミケに来ることができないんだ、気の毒に。コミケでやほひ本買ってるとことか誰かに見られたら、ものすげーイメージダウンだもんな。夢の世界の住人は大変だ、同人誌も買えないなんて。ああわたしは一般人でよかった。
 それにしても、さっきの子はゆーひくんに似てたなあ。もっとちゃんと眺めたかったなあ。
 と、思いつつ、某大手サークルさんの最後尾に並んだ。
 大手サークルさんには、「最後尾プラカード」というものが存在する。サークル名と「最後尾」という文字の書かれた紙を、列の最後に並んだ人が持つのだ。そーすれば係員がいなくてもどこが最後尾かが一目でわかる。
 わたしも、「***最後尾」と書かれた紙を掲げているお嬢さんに声を掛けた。「それ、次は私が持ちます」という意味で。

 再会は突然。

「ええっ、ゆうひ?!」

 わたしに最後尾プラカードを渡したのは、さきほどすれ違った、おーぞらゆーひくんだった。
 うわわわわ。
 運命? 神様コレ、運命ですかっ?!

 もちろん、赤の他人です。本物のおーぞらゆーひさんではありません。
 しかし。 
 しかしだ。
 似てるんだよ〜〜っ。
 どどどどどうしよう。
 ゆーひのそっくりさんが、隣にいるよお。
 一瞬間違えたくらい、似てるよお。
 背はたぶん、わたしより高いです。なのに、体重は確実に、わたしより少ないです。
 丸いやわらかそうな顔の輪郭に、本物のゆーひとほぼ同じ髪型。ちょいと離れた目。横から見える唇の形。
 薄い、少年のような細長いカラダ。長い手足。
 どどどどどうしよう。
 うれしい。うれしいぞ。ゆーひそっくりの美しいお嬢さんがわたしの隣に。
 いや、よく見ると本物のゆーひくんほど美形ではありませんでしたが、とにかく似ていた。この子を何割か美形にしたらゆーひになる、という、「アンドロイドゆうひ」の租型みたいなお嬢さんでした。年齢は本物のゆーひくんより少し若いかな。
 あまりにうれしくて、目をはなせない。どきどきどき。
 お友だちになりたい。ああしかし、話しかけるなんて、できないわっ。なんて話しかければいいの?!
「好きな男の子にそっくりなの」
 ……って、それは失礼だろう。わたしが長い間背が高いことをコンプレックスにしていたよーに(そう、マジに深刻に劣等感だったことがあった。今はさすがに、半分ネタにしているが・笑)、このお嬢さんだって「男に似ている」なんて言われたら「それってアタシがこの体型だからっ?!」とか思うよな。傷つくよな。つーかふつーの女の子は「男に似ている」と言われた段階でショックだろう。
 いくら、「でもその男の子、ドレス着ても似合っちゃうくらい美形なのよっ」と言っても、フォローにはなんねーよなあ。
 正直に言うか。
「好きなタカラヅカの男役にそっくりなの」
 ……って、ふつーの人って、「ヅカの男役」に偏見持ってる……かも? ヅカを好きじゃない人ってみんな、「気持ち悪い」って言うよな。「生理的にダメ」とか。「バカみたい」とか。
 てか、タカラヅカを好きだと言った途端、「緑野さんって、レズなんですか」と真顔で言われたこともあったな。一般人のヅカに対する認識ってそんなの?!
 うわあああぁん、言えない、言えないよう!
 てゆーか、ゆーひくんそっくりの友だちなんて、心臓に悪くてダメだよう。いつもうっとり顔ばかり眺めちゃうよう。そんな気味の悪い関係は、嫌だよう。

 結論。
 今、この瞬間の幸福を噛みしめていよう。

 長い長い行列の、建物の外に並ばされたんだけど、直射日光きつくて「真冬なのに日焼けしちまうよコンチクショオ」だったことも、ぜんぜん苦にならず。
 だって、ゆーひくんと一緒なんだもの!
 列が長ければ長いほど、ゆーひくんを眺めていられるんだもの。
 るるる、ららら、幸福なひととき。
 わたしのゆーひくんは、並んでいる間ずーっと、きれいに三等分されたコミケカタログを読んでいました。そっかあ、ハガレン好きなのかぁ(笑)。でも、この列(ラノベのプロ作家のオリジナル番外編が買えるサークルだ!)に並んでるってことは、ここの作家さんが好きなのよね。わたしと同じねっ。
 さりげなくもしつこく、ずーっと彼女の顔を眺めていました。列が進んで、微妙に並ぶ位置が離れてしまったときは、彼女の全身のスタイルの良さを堪能。ああ、七頭身。いいなあ、かっこいいなあ。

 緑野の、ささやかなしあわせ。
 でも、アタマの中ではエンドレスで『王家に捧ぐ歌』の女官たちの「すごっすごっ、つよっつよっ」が流れている……(ヅカサークルですてきな女官たちのポスカを買ったのだ。あと、アモちゃんとファラオの缶バッジと)。

 自分のサークルに戻るなり、店番のWHITEちゃんに、
「聞いて聞いて! ゆーひのそっくりさんがいたのーっ!!」
 と、鼻息荒く報告。
 上記の心の流れを事細かに説明したんだけど……。

「よかったね。……としか、言えないわ」

 と、冷たく言われて、それでおしまいでした。
 彼女の目は、「バカだなオマエ」という憐憫と、「なにか気の利いた受け答えをしてやるべきかしら」という困惑に満ちておりましたさ……。てか、単に引かれたのか……?
 ふふふ……ごめんね、WHITEちゃん……。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

          
 コミケ2日目。わたしのメインジャンルの日。
 自分のサークルそっちのけで、お買い物に走り回る。わたしはコミケが好きで、同人誌が好きなのだ。
 ああそして。
 わたしは「そのひと」と出会ったのだ。

 出会いは一瞬だった。

「えっ、ゆうひ?」

 コミケの人混みの中、わたしは良く知る顔を見つけて振り向いた。
 今すれちがった女性が、ゆーひくんに見えたのだ。
 ゆーひ、って、おーぞらゆーひ? えええっ、なんでゆーひがこんなとこに?! でも今のゆーひだったよーな。つか、変装してたぞ?! 眼鏡かけて、スカートはいてた。マフラーで顎から下隠して、女装してたよ。
 あああ、落ち着けわたし。ゆーひがこんなとこにいるわけないじゃん!!
 見間違いだ、他人のそら似だ。
 しかしタカラジェンヌにだってオタクはいるだろうに、彼女たちはコミケに来ることができないんだ、気の毒に。コミケでやほひ本買ってるとことか誰かに見られたら、ものすげーイメージダウンだもんな。夢の世界の住人は大変だ、同人誌も買えないなんて。ああわたしは一般人でよかった。
 それにしても、さっきの子はゆーひくんに似てたなあ。もっとちゃんと眺めたかったなあ。
 と、思いつつ、某大手サークルさんの最後尾に並んだ。
 大手サークルさんには、「最後尾プラカード」というものが存在する。サークル名と「最後尾」という文字の書かれた紙を、列の最後に並んだ人が持つのだ。そーすれば係員がいなくてもどこが最後尾かが一目でわかる。
 わたしも、「***最後尾」と書かれた紙を掲げているお嬢さんに声を掛けた。「それ、次は私が持ちます」という意味で。

 再会は突然。

「ええっ、ゆうひ?!」

 わたしに最後尾プラカードを渡したのは、さきほどすれ違った、おーぞらゆーひくんだった。
 うわわわわ。
 運命? 神様コレ、運命ですかっ?!

 もちろん、赤の他人です。本物のおーぞらゆーひさんではありません。
 しかし。 
 しかしだ。
 似てるんだよ〜〜っ。
 どどどどどうしよう。
 ゆーひのそっくりさんが、隣にいるよお。
 一瞬間違えたくらい、似てるよお。
 背はたぶん、わたしより高いです。なのに、体重は確実に、わたしより少ないです。
 丸いやわらかそうな顔の輪郭に、本物のゆーひとほぼ同じ髪型。ちょいと離れた目。横から見える唇の形。
 薄い、少年のような細長いカラダ。長い手足。
 どどどどどうしよう。
 うれしい。うれしいぞ。ゆーひそっくりの美しいお嬢さんがわたしの隣に。
 いや、よく見ると本物のゆーひくんほど美形ではありませんでしたが、とにかく似ていた。この子を何割か美形にしたらゆーひになる、という、「アンドロイドゆうひ」の租型みたいなお嬢さんでした。年齢は本物のゆーひくんより少し若いかな。
 あまりにうれしくて、目をはなせない。どきどきどき。
 お友だちになりたい。ああしかし、話しかけるなんて、できないわっ。なんて話しかければいいの?!
「好きな男の子にそっくりなの」
 ……って、それは失礼だろう。わたしが長い間背が高いことをコンプレックスにしていたよーに(そう、マジに深刻に劣等感だったことがあった。今はさすがに、半分ネタにしているが・笑)、このお嬢さんだって「男に似ている」なんて言われたら「それってアタシがこの体型だからっ?!」とか思うよな。傷つくよな。つーかふつーの女の子は「男に似ている」と言われた段階でショックだろう。
 いくら、「でもその男の子、ドレス着ても似合っちゃうくらい美形なのよっ」と言っても、フォローにはなんねーよなあ。
 正直に言うか。
「好きなタカラヅカの男役にそっくりなの」
 ……って、ふつーの人って、「ヅカの男役」に偏見持ってる……かも? ヅカを好きじゃない人ってみんな、「気持ち悪い」って言うよな。「生理的にダメ」とか。「バカみたい」とか。
 てか、タカラヅカを好きだと言った途端、「緑野さんって、レズなんですか」と真顔で言われたこともあったな。一般人のヅカに対する認識ってそんなの?!
 うわあああぁん、言えない、言えないよう!
 てゆーか、ゆーひくんそっくりの友だちなんて、心臓に悪くてダメだよう。いつもうっとり顔ばかり眺めちゃうよう。そんな気味の悪い関係は、嫌だよう。

 結論。
 今、この瞬間の幸福を噛みしめていよう。

 長い長い行列の、建物の外に並ばされたんだけど、直射日光きつくて「真冬なのに日焼けしちまうよコンチクショオ」だったことも、ぜんぜん苦にならず。
 だって、ゆーひくんと一緒なんだもの!
 列が長ければ長いほど、ゆーひくんを眺めていられるんだもの。
 るるる、ららら、幸福なひととき。
 わたしのゆーひくんは、並んでいる間ずーっと、きれいに三等分されたコミケカタログを読んでいました。そっかあ、ハガレン好きなのかぁ(笑)。でも、この列(ラノベのプロ作家のオリジナル番外編が買えるサークルだ!)に並んでるってことは、ここの作家さんが好きなのよね。わたしと同じねっ。
 さりげなくもしつこく、ずーっと彼女の顔を眺めていました。列が進んで、微妙に並ぶ位置が離れてしまったときは、彼女の全身のスタイルの良さを堪能。ああ、七頭身。いいなあ、かっこいいなあ。

 緑野の、ささやかなしあわせ。
 でも、アタマの中ではエンドレスで『王家に捧ぐ歌』の女官たちの「すごっすごっ、つよっつよっ」が流れている……(ヅカサークルですてきな女官たちのポスカを買ったのだ。あと、アモちゃんとファラオの缶バッジと)。

 自分のサークルに戻るなり、店番のWHITEちゃんに、
「聞いて聞いて! ゆーひのそっくりさんがいたのーっ!!」
 と、鼻息荒く報告。
 上記の心の流れを事細かに説明したんだけど……。

「よかったね。……としか、言えないわ」

 と、冷たく言われて、それでおしまいでした。
 彼女の目は、「バカだなオマエ」という憐憫と、「なにか気の利いた受け答えをしてやるべきかしら」という困惑に満ちておりましたさ……。てか、単に引かれたのか……?
 ふふふ……ごめんね、WHITEちゃん……。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

          
 その昔、わたしがまだぴちぴちの若い娘さんだったころ。
 某社の某賞(正式名称は忘却の彼方)に応募して、入選だか佳作だかになった(それすら忘却の彼方)。賞品は、「ペアで北海道旅行」だった。
 タダで北海道! わたしは大喜びで、当時いちばんの仲良しだったぺーちゃん(女の子)を誘い、北海道へ旅立った。秋の北海道はそりゃー美しかったさ。
 問題は、その旅行でのあるホテルで起こった。
 露天風呂で雪景色を堪能したわたしとぺーちゃん。
 浴衣に丹前を着込み、部屋でくつろいでいた。ふたりで使うのがもったいないよーな広い和室だ。
 そこへ、布団係のおじさんが現れた。
 ぺーちゃんは鏡台に向かって、髪のお手入れに余念がない。だもんで係のおじさんは、ぼーっと暇そーにしているわたしに、聞いてきた。
「布団は、くっつけて敷いていいですか?」
 質問の意味が、よくわからなかった。ので、まんまの意味に取った。
「はい、お願いします」
 こんな広い部屋で、隅と隅に離れて布団を敷かれても、寂しいしな。ふつーにふたつ並べて敷いてくれれば、それでいい。
 てな気持ちだった。わたしは。
 だが。
 係のおじさんが仕事を終えて部屋を出ていったとき。
 わたしたちは、唖然とした。

 広い大きな布団が、部屋の真ん中にひとつ。
 ひとつだけ。
 そしてその広い布団には、枕がふたつ。

 ダブルベッドならぬ、ダブル布団が敷かれていた。

 さあ、この広い布団で抱き合って眠りなさい。てゆーかどーぞえっちしてください。
 という布団が、スタンバイ完了でわたしたちを待ちかまえていた。

 なんで、女の子ふたりで泊まってて、ダブル布団なの?! えっちOK状態なのっ?!

「ねえねえ、緑野。アンタさあ、男とまちがえられたんじゃない?」

 そーゆーことなんですか、布団係のおじさんっ?!
 だからあたしに聞いたんですか、「今日えっちすんの? するならソレ用に布団セットするよ」と? 女の子のぺーちゃんではなく、男のあたしにっ?!

 20代前半のぴちぴちの若い娘を捕まえて、男とまちがえただとうっ?!
 風呂上がりですっぴんで浴衣を着たわたしは、そんなに性別不明ですかっ?!
 たしかにカラダはでかいし、チチもないけどなっ。髪も短かったけど! つーかあのころはベリーショートだったよーな気もするが、襟足刈り上げていたよーな気もするが、それにしたって風呂上がりで浴衣だよ? 女の色気が出ててもいいよーなもんじゃないか。たしかに色気なんかまったく持ち合わせてなかったよーな気もするが……えーとえーと。

 とにかく。
 わたしたちの目の前に、ダブル布団。

 ぺーちゃん、大ウケ。畳に突っ伏してひーひー笑う。
「緑野が、緑野が男にまちがえられたー。えっち用の布団敷かれたー。どーしよー、アタシ、緑野に襲われるー」
 襲わねえよ。怒。

「ちょっと待ってよ、べつに、男とまちがえられたとは限らないじゃない。レズだと思ったのかも!」
 と、わたしは反論。
 一旦笑い止んだぺーちゃんは、また新たに吹き出した。

「緑野が、レズの男役にまちがえられたー。えっち用の布団敷かれたー。アタシ、緑野に襲われるー」
 だからなんで、あたしが男役なんだっ。
 てゆーか、わたしが男だろうと男役だろうと、アンタはわたしの「カノジョ」という設定なのよ? それに関して異論はないの?

「どっちにしろ、アタシは『女の子』ってことだもん。男だとか男役にまちがえられたわけじゃないからいいもん」
 どーゆー理屈だー。
 いや、たしかに、この場合立場がないのはわたしだ。
 てゆーか失礼だぞ、布団係!

 みなさん、女同士でふたり旅も危険ですよ。
 ふたりでホテルに泊まったら即カップル認定されちゃうんですよ! 温泉だとかカニ食い放題ツアーだとかもダメですよ。ふたりでいたら、イコール恋人同士なんだもん! あのときわたしたちは、そーゆー扱いを受けたんだもん!
 みなさんも気をつけてくださいねっ。

 とゆー昔話を何故今するのか。

 『巌流』千秋楽と冬コミ旅行。
 わたしとWHITEちゃんは、ついうっかり、ホテルを取るのを忘れていたのだわ……。
 気がついたのは、12月も半ば。
 とーぜん、そんな時期では、いつも使っているホテルは全室満員、お断り。
 1からホテルを探さなくてはならない。

 安くてきれいで、交通の便がよくて、青年館にも有明にもたやすく行けること。
 ネットで検索して、候補を探す。
 すると。
 ……検索条件の「大人2人で1部屋」というのと、「安い値段」がいけなかったのだと思う。
 ヒットするのはひたすら、「シティホテル」だった……。

「WHITEちゃん、こーなったらふたりでダブルベッドで眠るかい?」
 と、わたしがメールをすると、
「ベッドはひとつでもいいけど、掛け布団はふたつないとこまるわ。私は寝相悪いから布団取っちゃうよ」
 と、返事が来た。

 WHITEちゃん……。
 本気で返さないでください……わたしゃ、冗談で言ったんだよ。女ふたりでシティホテルなんてごめんだよ。ひとつのベッドはべつにかまわないが、カップルしかいねーロビーやエレベータを女ふたりで使うのが嫌だ。それに、チェックインもアウトもわたしがすることになるんだろーから、男たちの間にひとりまじって(女は後ろで待っているからな)チェックインするの嫌だよ。
 てか。レズのカップルだと思われたら、もっといやだ。
 性嗜好は個人の自由だから他人様がどうであってもかまわないが、わたし個人がチガウのにソウだと思われるのは嫌だぞ。

 なまじ昔、男だか男役だかに間違えられた過去があるだけにな。

 WHITEちゃんの返事は待たずに、わたしは勝手にてきとーなビジネスホテルを予約した。あー、やれやれ。無事に取れて良かった。
 もちろん、ベッドはふたつだよ。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

        
 その昔、わたしがまだぴちぴちの若い娘さんだったころ。
 某社の某賞(正式名称は忘却の彼方)に応募して、入選だか佳作だかになった(それすら忘却の彼方)。賞品は、「ペアで北海道旅行」だった。
 タダで北海道! わたしは大喜びで、当時いちばんの仲良しだったぺーちゃん(女の子)を誘い、北海道へ旅立った。秋の北海道はそりゃー美しかったさ。
 問題は、その旅行でのあるホテルで起こった。
 露天風呂で雪景色を堪能したわたしとぺーちゃん。
 浴衣に丹前を着込み、部屋でくつろいでいた。ふたりで使うのがもったいないよーな広い和室だ。
 そこへ、布団係のおじさんが現れた。
 ぺーちゃんは鏡台に向かって、髪のお手入れに余念がない。だもんで係のおじさんは、ぼーっと暇そーにしているわたしに、聞いてきた。
「布団は、くっつけて敷いていいですか?」
 質問の意味が、よくわからなかった。ので、まんまの意味に取った。
「はい、お願いします」
 こんな広い部屋で、隅と隅に離れて布団を敷かれても、寂しいしな。ふつーにふたつ並べて敷いてくれれば、それでいい。
 てな気持ちだった。わたしは。
 だが。
 係のおじさんが仕事を終えて部屋を出ていったとき。
 わたしたちは、唖然とした。

 広い大きな布団が、部屋の真ん中にひとつ。
 ひとつだけ。
 そしてその広い布団には、枕がふたつ。

 ダブルベッドならぬ、ダブル布団が敷かれていた。

 さあ、この広い布団で抱き合って眠りなさい。てゆーかどーぞえっちしてください。
 という布団が、スタンバイ完了でわたしたちを待ちかまえていた。

 なんで、女の子ふたりで泊まってて、ダブル布団なの?! えっちOK状態なのっ?!

「ねえねえ、緑野。アンタさあ、男とまちがえられたんじゃない?」

 そーゆーことなんですか、布団係のおじさんっ?!
 だからあたしに聞いたんですか、「今日えっちすんの? するならソレ用に布団セットするよ」と? 女の子のぺーちゃんではなく、男のあたしにっ?!

 20代前半のぴちぴちの若い娘を捕まえて、男とまちがえただとうっ?!
 風呂上がりですっぴんで浴衣を着たわたしは、そんなに性別不明ですかっ?!
 たしかにカラダはでかいし、チチもないけどなっ。髪も短かったけど! つーかあのころはベリーショートだったよーな気もするが、襟足刈り上げていたよーな気もするが、それにしたって風呂上がりで浴衣だよ? 女の色気が出ててもいいよーなもんじゃないか。たしかに色気なんかまったく持ち合わせてなかったよーな気もするが……えーとえーと。

 とにかく。
 わたしたちの目の前に、ダブル布団。

 ぺーちゃん、大ウケ。畳に突っ伏してひーひー笑う。
「緑野が、緑野が男にまちがえられたー。えっち用の布団敷かれたー。どーしよー、アタシ、緑野に襲われるー」
 襲わねえよ。怒。

「ちょっと待ってよ、べつに、男とまちがえられたとは限らないじゃない。レズだと思ったのかも!」
 と、わたしは反論。
 一旦笑い止んだぺーちゃんは、また新たに吹き出した。

「緑野が、レズの男役にまちがえられたー。えっち用の布団敷かれたー。アタシ、緑野に襲われるー」
 だからなんで、あたしが男役なんだっ。
 てゆーか、わたしが男だろうと男役だろうと、アンタはわたしの「カノジョ」という設定なのよ? それに関して異論はないの?

「どっちにしろ、アタシは『女の子』ってことだもん。男だとか男役にまちがえられたわけじゃないからいいもん」
 どーゆー理屈だー。
 いや、たしかに、この場合立場がないのはわたしだ。
 てゆーか失礼だぞ、布団係!

 みなさん、女同士でふたり旅も危険ですよ。
 ふたりでホテルに泊まったら即カップル認定されちゃうんですよ! 温泉だとかカニ食い放題ツアーだとかもダメですよ。ふたりでいたら、イコール恋人同士なんだもん! あのときわたしたちは、そーゆー扱いを受けたんだもん!
 みなさんも気をつけてくださいねっ。

 とゆー昔話を何故今するのか。

 『巌流』千秋楽と冬コミ旅行。
 わたしとWHITEちゃんは、ついうっかり、ホテルを取るのを忘れていたのだわ……。
 気がついたのは、12月も半ば。
 とーぜん、そんな時期では、いつも使っているホテルは全室満員、お断り。
 1からホテルを探さなくてはならない。

 安くてきれいで、交通の便がよくて、青年館にも有明にもたやすく行けること。
 ネットで検索して、候補を探す。
 すると。
 ……検索条件の「大人2人で1部屋」というのと、「安い値段」がいけなかったのだと思う。
 ヒットするのはひたすら、「シティホテル」だった……。

「WHITEちゃん、こーなったらふたりでダブルベッドで眠るかい?」
 と、わたしがメールをすると、
「ベッドはひとつでもいいけど、掛け布団はふたつないとこまるわ。私は寝相悪いから布団取っちゃうよ」
 と、返事が来た。

 WHITEちゃん……。
 本気で返さないでください……わたしゃ、冗談で言ったんだよ。女ふたりでシティホテルなんてごめんだよ。ひとつのベッドはべつにかまわないが、カップルしかいねーロビーやエレベータを女ふたりで使うのが嫌だ。それに、チェックインもアウトもわたしがすることになるんだろーから、男たちの間にひとりまじって(女は後ろで待っているからな)チェックインするの嫌だよ。
 てか。レズのカップルだと思われたら、もっといやだ。
 性嗜好は個人の自由だから他人様がどうであってもかまわないが、わたし個人がチガウのにソウだと思われるのは嫌だぞ。

 なまじ昔、男だか男役だかに間違えられた過去があるだけにな。

 WHITEちゃんの返事は待たずに、わたしは勝手にてきとーなビジネスホテルを予約した。あー、やれやれ。無事に取れて良かった。
 もちろん、ベッドはふたつだよ。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

        
 徹夜で年賀状作って、よーやく寝るかな、というときに、携帯電話が『愛あればこそ』を奏でる。
 この着メロは、キティちゃんだ。

「今どこ?」
 と、キティちゃん。
 どこって、自宅ですが。
「ええっ、並んでないの?!」
 並び? なんかあったっけ?

 睡眠不足のアタマで必死に考える。
 そーいや昨夜、CANちゃんから「ありがとう」メールが入ってたっけ。
 「おかげさまで、リカちゃんの前楽を観られました」と。いやわたしはなんの役にも立ってないが、チケット掲示板に該当投稿があったらすかさずCANちゃんに情報送ってたからなあ。
 CANちゃんが成仏したよーなので、わたしのなかではすっかり「解決」していたよ。

 そうだ、もうひとり「解決」していない人がいた。
 キティちゃん、前楽も大楽もチケット持ってなかったね……。
 てか、CANちゃんほど本気でチケット欲しがってるよーには見えなかったんだよ。ぜんぜんチケ取りの努力してなかったし。「その程度の熱意」かと思ってたよ。
 そっか、当日並びに行くくらいには、熱意があったのね。普段から熱意を見せてくれていたら、協力は惜しまなかったのにぃ。

「緑野ちゃん、並んでると思ったのに!!」
 当日券の抽選の並びですか……すまん、きれーに忘れていたよ。
 てゆーかわたし、翌日が青年館の楽だから、今晩7時に家を出なくてはならないから、並びには行けない・つきあえないって言ってあったと思うが……。
 ちなみに、WHITEちゃんも同じ日程だから、並びには行ってないはず。

「じゃあアタシ、1日ひとりなのね!」
 うん。がんばってリカちゃんを見送ってくれ〜〜。あとで話聞かせてねー。
 キティちゃんはエスプリホール券をGETした模様。エスプリは見にくいから、良席を瞬発力と判断力で確保するのだぞ。

 ろくに寝ているヒマもなく、旅立ちの日は準備に明け暮れる。
 夜行バスの達人を自負するわたし(笑)は、荷造り周到。創意と工夫で快適ライフ。
 オークションで買ったミニ・キャリーバッグがめちゃ重宝。バスの座席の下にすっぽり収まり、レッグレスト代わりになるという。なによりめちゃくちゃかわいいしねえ。

 なにを忘れても、忘れちゃならない『巖流』のチケットとコミケ・チケットと宝の地図(笑)を何度も確認し、猫を親の家に預け、さあ出発だー。

 車中2泊、3泊4日の長丁場ナリ。

 
「ねえアンヌ、ジェラールがコンスタンと駆け落ちしたって、ほんとう?」

 仲良しのジャンヌがそう言った。
 わたしは耳を疑った。
 コンスタン? コンスタンですって?

 そういえば、最近ジェラールはコンスタンと親密だった。ふたりで額をつきあわせるようにして話していたし、人目を気にするかのように隠れて会っているようだった。

「あなたとジェラール、うまくいってたんじゃないの?」
「も、もちろん、いつだってラヴラヴよ。彼がコンスタンと駆け落ちなんて、あるわけないじゃない」
 わたしは懸命に笑ってみせる。なんでもないことだと印象づけるために。

「じゃあジェラールは今どこにいるの? 村にいないじゃない。見た人がいるのよ、ジェラールとコンスタンがふたりで手に手を取って村を出て行くところを」
「なにか、用があったのよ。それだけよ」
「だって、相手はあのコンスタンよ? 昔パリでさんざん遊んでいたっていう……」
「コンスタンがどうあれ、そんなことありえないわ」
 わたしは叫ぶ。

「だってコンスタンは、男じゃない!」

 わたしの許嫁ジェラールが、男と駆け落ちなんて、あるわけない!!

「でも……その男と、駆け落ちしたのよね、ジェラール」
 ジャンヌの目には、善良な憐憫が浮かんでいた。
「もう村中の噂よ。ジェラールは村いちばんの美人アンヌを捨てて、遊び人のコンスタンと駆け落ちしたって」

 村中の……。
 わたしは目眩をおぼえた。
 道理で、村人たちの視線がなまぬるかったわけだ。

「アンヌ、あなたのせいじゃないわ。コンスタンがすごかっただけのことよ。みんな噂してるわ。コンスタンは軍隊でものすごーいテクニックをおぼえてきたんだって。純情なジェラールはそれにおぼれてしまったんだろうって。相手が悪かったのよ、犬にかまれたと思って、忘れた方がいいわ!!」
 やさしいジャンヌは必死になぐさめてくれる。
 その気持ちはうれしい。
 うれしいけれど……。

 椅子によりかかりながらわたしは、心に誓っていた。

 ジェラールを、ぜーーーーったいに、取り返してやるっっ!!

 このままじゃわたしは身の破滅よ、男に許嫁を取られた娘として、もうお嫁にも行けやしない。
 村で生きていくためには、なにがなんでもジェラールを悪の道から更正させるのよ。それしかない。

「わたし、パリへ行くわ」

 ジェラールが向かった先はパリだ。以前彼はそんなことを言っていた。
 パリへ行って、ジェラールを見つけて、連れて帰る!!

 コンスタンになんか、負けるもんですかっ!!

          ☆

 うわわわわわ。
 星組DC公演『永遠の祈り』2回目の観劇。今回はWHITEちゃんと一緒。
 今回なにがショックだったかって、すずみんよ。

 あ、目があった。
 と思った次の瞬間、ばちん、とウインクされてしまった……。

 2列目ドセンターの出来事です。はい。
 ドラマシティはオケボックスと銀橋がないぶん、大劇より舞台が近いです。そして、ステージが低い分、バウよりも舞台が近いです。
 2列目は、ほんとーに舞台のすぐ近くでした。
 出演者が手の届きそーな間際にいました。

 しかし。

 びびびびっくりしたっ。
 すずみんにウインクされちゃったー。

 すずみんはフィナーレでいつもノリノリだけど、客と目があったらウインクするんだ……さすがスターだわ……。

「へー。すずみんにねー。ふーん。へー。ほー。……で、落ちたの?」

 WHITEちゃんは棒読みで聞いてきます。
 いや、落ちるもなにも……とにかくびっくりしただけで。

 あ、わたし、すずみん好きです。
 好きかキライかと聞かれれば、好きです。周囲全員がすずみんに非友好的なので、大きな声では言いにくいですが。
 あのノリノリのスターっぷりも、自分を信じて疑っていないキャラクターも、いい味出してると思うんだけどなー。

 とにもかくにも、すずみんのウインク。
 それだけで、あとの感想が全部吹っ飛んじゃった……。わたしの2列目センターは、すずみんのためにあったのか……。

 退屈なプロットの芝居なのでそのまま観るのがつらくて、アンヌ側の立場で考えながら観ていたら、本日の日記の冒頭部分が浮かびました。
 許嫁が村で評判の不良と共に消えたら、アンヌの立場ないよなあ。
 ロザルジェはコンスタンの賭博仲間で村の人間じゃないから、彼の存在は知られていない。現にジェラールはコンスタンに紹介されるまでその存在を知らなかったわけだし。
 村人にとっては、「ジェラールはコンスタンと共に消えた」ということだ。
 コンスタンはいちおー色男だし、軍隊経験者だし(笑)、刺激の少ない村人たちは、コレ幸いと噂に花を咲かせることでしょう。
 狭い村だもん、そんなことになりゃあもう彼女はそこで生きていけないよなあ。そりゃ、居場所を懸けて、彼女はがんばるしかないよなあ。しみじみ。

 コンスタンとジェラールはべつになんでもなかったとわたしも思っているが(村人が買いかぶっているほどの色気はコンスタンにはねえよ)、アンヌは本気でそっちの心配してたりしてな。
 ルイ17世を騙ろうとしていることを知って、
「男に許嫁を寝取られた女より、犯罪者の許嫁って方がまだマシよっ、よっしゃあ!!」
 と思わなかったとは、誰にも言えないよね?

 がんばれアンヌ(笑)。

 
 クリスマスも近いというのに、弟とデート。……他に相手おらんのかい……。お互い、寂しい人生だな……。

 『ラスト・サムライ』を見に行きました。
 ええ、あの大作です、話題作です。
 月曜日の昼間だっちゅーのに、お目当ての回は全席売り切れで、3時間後のチケットしか買えませんでした。みんな金持ちだなっ、映画って1800円もするのよ?! あたしはそんな大金出せないよっ?! あー、世の中は金持ちばかりさ……(もらったタダ券を握りしめている、びんぼーおばさんの図。タダでなきゃどーしてふつーの日に映画館になんか行くもんか)

 どこかで見たような、でも知らないどこかの国が舞台。監督・脚本・製作エドワード・ズウィック、出演トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之、小雪。
 今いる自分の場所に疑問を感じ、鬱屈としている主人公ネイサン・オールグレン大尉@トム・クルーズがある日異世界へ迷い込んだ。
 なんせ異世界だから、とまどうことの連続。
 異世界へまぎれこんだ主人公は歴史の波に翻弄されなくちゃね。異世界の将、勝元@渡辺謙と彼の治める国で恋をし子どもたちとふれあい男の友情なんかもしちゃいつつ、その世界での戦争に参加。ありがちエピソードは全網羅。
 オールグレンは、自分の世界では見つけられなかったモノを見つけ、成長していく。最後は強引ハッピーエンド。
 ライトノベルの定番ストーリー。

 弟とは趣味も好みも似ているので、なにを一緒に見ても不快な思いをすることはない。俳優や女優の好みも似ているらしく、わたしの好きな人をたいてい弟も好きだったりする。だから今回は、
「渡辺謙を見に行こう」
 というので意見一致。
 好みが似ている相手と、見終わった後に感想を話し合うのもたのしい。たのしいんだが……。
 弟よ。どーして君は、女じゃないんだ? 君が妹なら、わたしはもっとたのしかったのに!

 『ラスト・サムライ』でのいちばんの萌えは、真田広之の渡辺謙への呼びかけの言葉が「MY LOAD」であるということ。
 だったんだよ!!

 まいろーど、だよ、まいろーど。
 英語字幕万歳。
 勝元@渡辺謙の忠実な部下、寡黙で苛烈でストイックな武士、氏尾@真田広之。
 氏尾はもちろん、勝元を「殿」と呼ぶ。
 この「殿」が、英語字幕では「MY LOAD」なんだよ。

 うきゃ〜〜。
 真田が口にする「MY LOAD」!! ももも萌え〜〜。

 英語っていちいち「わたしの」ってつけてくれるからいいよねえ。
 我が主君、我が君、私の閣下、ああ、すばらしいわ。

 てなことを、弟には言えない……言えないよ……。しくしく。
 弟とはふつーに、ふつーな感想を話しました。
「勝元が結局『なにをしたかったのか』が見えてこない」
「それにしても金のかかった映画だった」
「日本では作れないよねえ」
「しかし何故あそこで忍者?!」
「土下座はねーよなー」
「しかしあのラストは蛇足だろう」
「だってほら、『人魚姫』をハッピーエンドにしちゃうお国柄だから」
「それにしても渡辺謙かっこいー」
「かっこいいよなー」
 てな。

 おどろいたのは、弟が「主役」と「視点」のちがいを理解していたこと。

「主役は勝元だろ? オールグレンは視点。異世界を描くためには視点が必要だから、オールグレンを中心に描かれるけれど、作者が描きたかったのは勝元だから、勝元が主役だろ?」

 エンドロールで渡辺謙がいちばん上だったことを指摘したわたしに、弟はあったりまえの顔してそう答えた。
 ふつーの人は主役と視点を混同する……つーかそもそもそのふたつの概念を知らない・気づかないもんなんだが……弟よ、どこでそんな知識を??

 舞台が日本で日本人が演じていて、描かれているのがサムライだったり武士道だったりするから混乱するけど、よーするにコレ、ほんとにありがちなふつーの異世界ファンタジーなんだよね。王道の巻き込まれ型ファンタジー。
 ふつーの高校生が、剣と魔法の国で英雄になりました、系の話。少女系ではなく、あくまでも少年系ね。女の子読者にはキャラが死ぬ話はNGだから(美形キャラがひとり、美しく死ぬのはOK。でも全滅とか玉砕とかは女の子は大嫌い。それに美学を感じるのは男の子)。
 王道なので、細かいことは気にせず、素直にたのしみました。
 これでもー少し勝元がなにをしたかったのかがわかると、いいんだけどなあ。それと、ラストは蛇足すぎ。
 全体として「かっこいいから、いいか」という、ラノベや少年ジャンプ、あるいはタカラヅカのノリだわ(笑)。

 とりあえず、ツッコミどころ満載でたのしい。
 勝元とオールグレンはどっちが受ですか? とか、氏尾はどっちですかとか、チャーミングなボブ@斬られ役の先生はどうですかとか、同人誌作れるぞこりゃ、てなもん。

 ああああ、一緒に行ったのが弟でなければ〜〜っっ(笑)。

 
 昨日の日記の続き。
 不満が渦巻いたので、自己流『永遠の祈り』行きまーす。

 フランス革命からはじまってヨシ。
 混乱の中、逃げまどう王太子ルイ・シャルルもヨシ。
 だが、そのままジェラール@ワタルの「夢」にはしない。
 パリの片田舎にて、力尽き倒れた男と、その傍らに呆然と坐り込んでいるルイ少年。そこに同じくらいの年頃の少女が現れる。少女はあわてて大人を呼びに行く。
 大人たちがわらわらとルイを取り囲むが、ルイはおびえてなにも言わない。だけど、少女の差し出す手をおずおずと握り返す。
 ボーイミーツガール。
 記憶を失った少年と、彼を助けた少女に祝福あれ。

 時は流れ、大人になった少年はジェラールという名になっている。過去のことはわからないまま。
 ジェラールは彼を育ててくれた祖母と、美しい妻アンヌ@檀ちゃんと3人暮らし。アンヌは、最初にジェラールを助けてくれたあの少女だ。ラヴラヴ新婚さんなふたり。いちゃいちゃはデフォルトだ。
 アンヌは人妻なので、みょーな若作りもせず(笑)、しっとりとした美しい女性なのだ。もちろん、村いちばんの美人さ。
 もうすぐ祭りだってことで、村は湧いている。ダンスを誰と踊るかで、若者たちは大騒ぎ。ジェラールもアンヌも、バカップルぶりをからかわれたりして、しあわせに生活している。コンスタン@レオンもここで一緒に登場。「あいつは信用できないから」と村人から白い目で見られているけれど、ジェラールだけはコンスタンにも友好的。それくらいジェラールは善良で平和な青年なのさ。
 しかし。ジェラールはときおり、誰かに追われる夢を見る。自分の居場所はここではないような、理由のない焦燥感を持ったりする。また、愛するアンヌの手が荒れていることとかささやかだが具体的なエピソードで、「もっと裕福な生活ができたらいいのにな」「ううん、わたし、あなたがいるだけでしあわせよ」てな虫も食わない会話をしておく。
 ある夜、病身の旅人@すずみんが現れる。やさしいジェラール一家は彼を手厚く看護する。
 そしてジェラールは、旅人から「ルイ17世になれるアイテム」を手に入れてしまうのだ。もちろん、誰にも内緒。アンヌも祖母も知らない。
 ジェラールは野心にとりつかれる。……てなくだりも、本編のままでヨシ。
 コンスタンの顔見せと立ち位置は先に打ち出してあるので、ここで友だち面して出てきても大丈夫。本編のままじゃ唐突すぎるからな。もともと彼に友好的だったこともあり、ジェラールはコンスタンにすべてを打ち明ける。
 ちょうど、アンヌが両親の家を手伝わなくてはならなくなった。彼女の両親はよその村に嫁いだ姉夫婦と一緒に暮らしているのだ。アンヌはなんの疑問もなく、ジェラールを愛し、今の生活を愛している。このへんで彼女のソロがあってもいいな。よそ見をはじめているジェラールと対照的に。
 アンヌがいない間に、コンスタンが連れてきた貧乏貴族のロザルジェ@ヒロさんに「ルイ17世」に見えるように教育してもらう。本編通りに。
 そして祭りがはじまった。アンヌも親の世話を終えて無事に戻ってきた。また、ジェラールの旅立ちの支度も整った。
 祭りの最中、ジェラールはアンヌにパリへ出稼ぎに行くことを告げる。これから冬になれば、農業どころじゃなくなるしな。パリで一稼ぎして戻ってくるよ。アンヌや祖母に少しでも楽をさせてやりたいってのは、本当だから。
 祭りの派手な音楽とダンスのなか、野心に燃えるジェラールと、今のままでしあわせだと困惑するアンヌ、悪党コンスタン、ロザルジェたちの思惑が交差する。村娘@センドーさん熱唱。
 で、1幕完。

 2幕のパリ編は、ほぼ本編そのままでヨシ。アンヌが「許嫁」ではなく「妻」だってちがいぐらい。
 一緒に生活していた妻なんだから、そりゃー必死になってジェラールを取り戻そうとするわな。自分との幸福な生活を全部否定されてしまったわけだもの。かなしいわな、せつないわな。
 ニコラス@しいちゃんは、はっきりいっていなくてもいい役なんだが……出さなきゃなんねーつーなら、もっとしっかり書き込んでくれ。
 ジェラールを「偽物」だとにらむニコラスは、彼の妻だというアンヌを拾い、行動を共にする。1場面、ニコラスとアンヌのために増やしてくれ。
 貴族(なのか?)のニコラスにしてみりゃ、アンヌみたいな女は初体験。「ルイ17世を騙る」という犯罪者でしかないジェラールのことを、けなげに愛し続ける姿に、くらくら。
 ジェラールを悪く言うニコラスに、やさしくもかなしい微笑みを浮かべ、村での幸福だった生活を語るアンヌ。どれだけジェラールがやさしい男か、彼を愛しているかを。
 彼女の荒れた手を取り、「これでも幸福だったと?」とニコラスが訊ねれば、「この手をかなしんで、あのひとはもっと裕福な生活をのぞみました。でも、この荒れた手を愛おしんでくれる人との生活こそが、わたしの幸福でした」と聖母の微笑みで答える。歌の掛け合いでもいいわ。
 そしてそのまま、ニコラスのソロへ。こんな女はじめてだー、どーしよー、ラ〜ヴ。てな。

 マダム・ロワイヤル@シビさんとの会見シーン、思い出話をするうちに、過去の記憶のよみがえるジェラール。
 名前忘れたけど、キーとなる侍従がいたよね。会話するジェラールとマダム・ロワイヤルの後ろで、その侍従と少年ルイが逃げまどうシーンを入れる。
 侍従はルイを守り、最後は力尽きて倒れてしまう。そこに少女アンヌが現れ……プロローグのシーンにつながるわけだ。伏線回収。
 クライマックスは盛り上げてなんぼ、偽物だと告げるかどうか苦悩するジェラールのシーンでは、村の祭りをフラッシュバックさせましょう。お貴族様たちはシルエットになり、村の皆さん総登場。踊る踊る踊る。つつましい生活の中、たった1日限りの祭り。命燃え尽きよと踊る人々。村娘@センドーさん熱唱(笑)。
 激しい音楽の中、見つめ合うジェラールとアンヌ。今、ふたりだけの世界。
 だがそれは、真実を迫るニコラスの声でぴたりと止まり、世界は一気に現実になる。ここは村ではなく、パリの屋敷の中だ。
 観客はジェラールがじつは本物のルイ17世だって知ってるし、マダム・ロワイヤルもそれに気づくんだけど、ジェラールはすべてをひっくり返す。
 苦悩のあげく、自分が偽物であることを告げる。本編まま。

 真実の幸福は、彼が捨てようとしていた生活のなかにこそあった。
 アンヌとの愛にあった。

 あとは本編ままでヨシ。苦悩→告白で派手に歌とダンスがあったので、最後はしっとり終わってヨシ。

 手を加えるのは、ほとんどが第1幕。
 ポイントは、
・ジェラールとアンヌのラヴラヴ夫婦ぶり
・びんぼーだが、幸福であること
・村人たちとの友好関係
 ということですな。
 それらすべてを「野望ゆえに捨てる」ことへのコントラストの強調。
 そして結果的に、それらが「ほんとうの幸福」であることのコントラストの強調、ですわ。
 第2幕のポイントは、
・ニコラスっちゅー半端なキャラをなんとかする
・クライマックスを派手に
 だけに尽きます。

 伏線張って、それを回収するの、わたしは大好きなんだが。前半のシーンや台詞を、後半でどれだけリンクさせられるかとか。考えるの大好きなんだけどなあ。
 少なくとも、コロスだとか白鷺だとかがわらわら踊ってすべて誤魔化す、よーなことはしない(笑)。

 いや、『永遠の祈り』の黒尽くめコロスたちはかっこよかったんだけど。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

           
 昨日の日記の続き。
 不満が渦巻いたので、自己流『永遠の祈り』行きまーす。

 フランス革命からはじまってヨシ。
 混乱の中、逃げまどう王太子ルイ・シャルルもヨシ。
 だが、そのままジェラール@ワタルの「夢」にはしない。
 パリの片田舎にて、力尽き倒れた男と、その傍らに呆然と坐り込んでいるルイ少年。そこに同じくらいの年頃の少女が現れる。少女はあわてて大人を呼びに行く。
 大人たちがわらわらとルイを取り囲むが、ルイはおびえてなにも言わない。だけど、少女の差し出す手をおずおずと握り返す。
 ボーイミーツガール。
 記憶を失った少年と、彼を助けた少女に祝福あれ。

 時は流れ、大人になった少年はジェラールという名になっている。過去のことはわからないまま。
 ジェラールは彼を育ててくれた祖母と、美しい妻アンヌ@檀ちゃんと3人暮らし。アンヌは、最初にジェラールを助けてくれたあの少女だ。ラヴラヴ新婚さんなふたり。いちゃいちゃはデフォルトだ。
 アンヌは人妻なので、みょーな若作りもせず(笑)、しっとりとした美しい女性なのだ。もちろん、村いちばんの美人さ。
 もうすぐ祭りだってことで、村は湧いている。ダンスを誰と踊るかで、若者たちは大騒ぎ。ジェラールもアンヌも、バカップルぶりをからかわれたりして、しあわせに生活している。コンスタン@レオンもここで一緒に登場。「あいつは信用できないから」と村人から白い目で見られているけれど、ジェラールだけはコンスタンにも友好的。それくらいジェラールは善良で平和な青年なのさ。
 しかし。ジェラールはときおり、誰かに追われる夢を見る。自分の居場所はここではないような、理由のない焦燥感を持ったりする。また、愛するアンヌの手が荒れていることとかささやかだが具体的なエピソードで、「もっと裕福な生活ができたらいいのにな」「ううん、わたし、あなたがいるだけでしあわせよ」てな虫も食わない会話をしておく。
 ある夜、病身の旅人@すずみんが現れる。やさしいジェラール一家は彼を手厚く看護する。
 そしてジェラールは、旅人から「ルイ17世になれるアイテム」を手に入れてしまうのだ。もちろん、誰にも内緒。アンヌも祖母も知らない。
 ジェラールは野心にとりつかれる。……てなくだりも、本編のままでヨシ。
 コンスタンの顔見せと立ち位置は先に打ち出してあるので、ここで友だち面して出てきても大丈夫。本編のままじゃ唐突すぎるからな。もともと彼に友好的だったこともあり、ジェラールはコンスタンにすべてを打ち明ける。
 ちょうど、アンヌが両親の家を手伝わなくてはならなくなった。彼女の両親はよその村に嫁いだ姉夫婦と一緒に暮らしているのだ。アンヌはなんの疑問もなく、ジェラールを愛し、今の生活を愛している。このへんで彼女のソロがあってもいいな。よそ見をはじめているジェラールと対照的に。
 アンヌがいない間に、コンスタンが連れてきた貧乏貴族のロザルジェ@ヒロさんに「ルイ17世」に見えるように教育してもらう。本編通りに。
 そして祭りがはじまった。アンヌも親の世話を終えて無事に戻ってきた。また、ジェラールの旅立ちの支度も整った。
 祭りの最中、ジェラールはアンヌにパリへ出稼ぎに行くことを告げる。これから冬になれば、農業どころじゃなくなるしな。パリで一稼ぎして戻ってくるよ。アンヌや祖母に少しでも楽をさせてやりたいってのは、本当だから。
 祭りの派手な音楽とダンスのなか、野心に燃えるジェラールと、今のままでしあわせだと困惑するアンヌ、悪党コンスタン、ロザルジェたちの思惑が交差する。村娘@センドーさん熱唱。
 で、1幕完。

 2幕のパリ編は、ほぼ本編そのままでヨシ。アンヌが「許嫁」ではなく「妻」だってちがいぐらい。
 一緒に生活していた妻なんだから、そりゃー必死になってジェラールを取り戻そうとするわな。自分との幸福な生活を全部否定されてしまったわけだもの。かなしいわな、せつないわな。
 ニコラス@しいちゃんは、はっきりいっていなくてもいい役なんだが……出さなきゃなんねーつーなら、もっとしっかり書き込んでくれ。
 ジェラールを「偽物」だとにらむニコラスは、彼の妻だというアンヌを拾い、行動を共にする。1場面、ニコラスとアンヌのために増やしてくれ。
 貴族(なのか?)のニコラスにしてみりゃ、アンヌみたいな女は初体験。「ルイ17世を騙る」という犯罪者でしかないジェラールのことを、けなげに愛し続ける姿に、くらくら。
 ジェラールを悪く言うニコラスに、やさしくもかなしい微笑みを浮かべ、村での幸福だった生活を語るアンヌ。どれだけジェラールがやさしい男か、彼を愛しているかを。
 彼女の荒れた手を取り、「これでも幸福だったと?」とニコラスが訊ねれば、「この手をかなしんで、あのひとはもっと裕福な生活をのぞみました。でも、この荒れた手を愛おしんでくれる人との生活こそが、わたしの幸福でした」と聖母の微笑みで答える。歌の掛け合いでもいいわ。
 そしてそのまま、ニコラスのソロへ。こんな女はじめてだー、どーしよー、ラ〜ヴ。てな。

 マダム・ロワイヤル@シビさんとの会見シーン、思い出話をするうちに、過去の記憶のよみがえるジェラール。
 名前忘れたけど、キーとなる侍従がいたよね。会話するジェラールとマダム・ロワイヤルの後ろで、その侍従と少年ルイが逃げまどうシーンを入れる。
 侍従はルイを守り、最後は力尽きて倒れてしまう。そこに少女アンヌが現れ……プロローグのシーンにつながるわけだ。伏線回収。
 クライマックスは盛り上げてなんぼ、偽物だと告げるかどうか苦悩するジェラールのシーンでは、村の祭りをフラッシュバックさせましょう。お貴族様たちはシルエットになり、村の皆さん総登場。踊る踊る踊る。つつましい生活の中、たった1日限りの祭り。命燃え尽きよと踊る人々。村娘@センドーさん熱唱(笑)。
 激しい音楽の中、見つめ合うジェラールとアンヌ。今、ふたりだけの世界。
 だがそれは、真実を迫るニコラスの声でぴたりと止まり、世界は一気に現実になる。ここは村ではなく、パリの屋敷の中だ。
 観客はジェラールがじつは本物のルイ17世だって知ってるし、マダム・ロワイヤルもそれに気づくんだけど、ジェラールはすべてをひっくり返す。
 苦悩のあげく、自分が偽物であることを告げる。本編まま。

 真実の幸福は、彼が捨てようとしていた生活のなかにこそあった。
 アンヌとの愛にあった。

 あとは本編ままでヨシ。苦悩→告白で派手に歌とダンスがあったので、最後はしっとり終わってヨシ。

 手を加えるのは、ほとんどが第1幕。
 ポイントは、
・ジェラールとアンヌのラヴラヴ夫婦ぶり
・びんぼーだが、幸福であること
・村人たちとの友好関係
 ということですな。
 それらすべてを「野望ゆえに捨てる」ことへのコントラストの強調。
 そして結果的に、それらが「ほんとうの幸福」であることのコントラストの強調、ですわ。
 第2幕のポイントは、
・ニコラスっちゅー半端なキャラをなんとかする
・クライマックスを派手に
 だけに尽きます。

 伏線張って、それを回収するの、わたしは大好きなんだが。前半のシーンや台詞を、後半でどれだけリンクさせられるかとか。考えるの大好きなんだけどなあ。
 少なくとも、コロスだとか白鷺だとかがわらわら踊ってすべて誤魔化す、よーなことはしない(笑)。

 いや、『永遠の祈り』の黒尽くめコロスたちはかっこよかったんだけど。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

           

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