草原のキリン。

2003年7月8日 家族
 病気になると、叱られる。
 病気になる、=自己管理がなっていない。つまり、本人が悪い。
 ケガをしても、叱られる。
 ケガをする、=不注意。つまり、本人が悪い。

 ええ、ええ、その通りさ。わるいのはわたしだよ。
 でもなあ、熱出してふらふらしているときに、だらだら説教だの嫌味だのは勘弁してくれよー、ママン。

 ムラに行くたび風邪をもらってくるのは、劇場に保菌者がいるせいだと思う。
 だけど、いくら保菌者がいるところに出かけたって、感染する人としない人がいる。
 それはやはり、自己管理の問題だろう、わたしの場合。
 免疫力が低下しているために、ふつーの人が平気な場合でも、簡単にウイルスの侵入をゆるしてしまうのだと思う。

 そして、いつものよーにわたしは、風邪を引き、熱を出した。

 それでも、目の調子は悪いままだ。
 痛痒くて泣けてくるので、ふらつきながらも眼科へ行ったさ。風邪は2、3日寝てれば治るが、目は治りそうにないから。『血と砂』のころからわたし、目が変なのよー。定期的にものもらいができるのよー。

 前に行った眼科は、友人諸氏に話したところ「ヤブなんじゃない、そこ?」とさんざん言われたので、ちがうところへ。
 症状的には以前と同じ(よりひどくなっているが)だったのに、今度のお医者さんはまったくちがう薬を出してきたよ。
 そして、以前かかった医者よりはるかに安くついた。いや、前が高すぎたんだと思うけど(周りから「それ変」とさんざん言われた不自然な高額ぶり)。

 これで治ればいいんだが。
 問題は、「当面コンタクトレンズ使用禁止」と言われたことさ。
 あ、あの、星組の初日があるんですけど。立ち見でチープに、作品とキャスティングだけを確認するつもりなんですけど。
 コンタクトレンズ禁止ってことは、オペラグラスも使えないってこと。
 うわああぁぁぁん。

 病気になると、叱られる。
 嫌味を言われる。
 周囲に迷惑をかけるわけだから、責められても仕方がない。
 だが、できることなら、治ってからにしてほしい。
 つらいときに追い打ちをかけられると、さらにつらい。
 ……それがいやなら病気になんかなるな、たわけ者め、ということだが。

「草原のキリンなら、あんたはとっくに死んでるわ」
 と、母は言う。
「病気になるってことは、群れに置いてゆかれるってことよ。群れからはぐれたらもう、生きていけないわ。そうでなくても、ライオンが襲ってきたときに走れないようじゃあ、おしまいね。あんたはとっくに死んでるわ」
 今回の母のお説教は、動物界の摂理バージョンでした。自分の不注意で病気になるなんて、動物以下のイキモノだということです。

「よかったわね、人間で」
 と、母は言い捨てます。

 虚弱は罪悪。ママは弱い者が嫌い。
 体調を崩すたびに、針のむしろ。
 あー、草原のキリンかあ。
 たしかに、わたしがキリンならもう生きてないかもな。弱いから。
 そして、こんなに強いママから、こんな弱いわたしが生まれたことも、ちと不思議だぞ?

 ちなみにママは、わたしの知る限り病気になったことがほんの数回しかありません。
 すげえよ。30年間に寝込んだ回数が、ほんの2、3回なんだよ。
 健康な肉体も驚異だが、それ以上に賞賛されるべきなのは、彼女の強靱な精神でしょう。徹底した自己管理。心の強さで、身体を律するのですわ。
 わたしも心が強ければ、こんなに簡単に病気にはならないのでしょう。ママがわたしを叱るのは、わたしの「心の弱さ」ゆえでしょう。
 しかし。
 心の弱い病気のキリンを叱っても、さらに病気が重くなるだけのよーな気がしている……つーか、だらだらお説教されているうちに、熱が上がったよーな。

 
 笑い声が聞こえる。
 どーやらなにか、愉快なことが起こっているらしい。
 たぶん、あさこだな。ゆみこやらんとむだな。
 だが、わたしにはわからない。

 わたしのオペラグラスはおさちゃん固定。
 他にはなにも、見えませぬ。

 と、いうのも。
 わたしの目は昨日に続いて絶不調。
 昨日は左目が真っ赤だったが、本日は両目とも真っ赤。痛痒くて死にそう。
 コンタクトレンズなんか、入れられるはずもない。

 仕方なく眼鏡で出かけたんだけど。
 眼鏡だと、オペラグラスが使えないよー。
 外出時はコンタクトレンズが当たり前だったので、眼鏡でオペラグラスを使った経験がなかったの。そっか、あれほど使えないものだったのか。
 本日、はじめての2階席。やっぱオペラグラスは必要でしょう。
 仕方なく、普段は眼鏡で全景を、ここぞというときには眼鏡を外して、オペラグラスを使っていました。
 あー、めんどくさい。
 芝居のときは、それで通してたんだけど。

 ショーになったら、開き直りました。
 オペラグラスは、寿美礼ちゃん限定。おさ様専用。
 寿美礼ちゃんが出ているシーンは、全景や他の人を潔くあきらめ、彼ひとりを見つめつづけました。
 どーせトド様は最初と最後しか出ないしね。最初の白コートのシーンだけさ、大変だったのは。それにしたって、トド様と寿美礼ちゃんはふたりで踊って歌ってくれるので、なんとかひとつのフレームに収まるし。
 寿美礼ちゃんが出ないとわかっているシーンは、ずっと眼鏡のまま全景をたのしんでました。

 とってもたのしかったです、千秋楽。
 ああ、寿美礼ちゃんかわいい……。

 トド様は日替わりのアドリブが得意な人。雪組下級生時代から、やんちゃをしまくっていた人。
 それにつきあわされる人は、アドリブ力、上がるだろうねえ。
 『猛き黄金の国』の、ナルセを思い出す。
 毎日毎日、トドロキにいじられて、みるみるうちにアドリブ力を上げていったなあ。「如才ない大人の男」という役を崩さずに、トドのやんちゃを受け止め、返していた。インタビューでも「勉強になった」といちいち公言していたっけ。
 ナルセと同期の、寿美礼ちゃん。……アドリブ、苦手だよね(笑)。トドにいじられるたびに、素にもどるのがかわいいやら、おかしいやら。
 千秋楽だから、派手にトド様やるだろーな、と寿美礼ちゃんも観客も身構えていただろーに。
 主水の狂言切腹のシーンで、トド様のつっこみに寿美礼ちゃん、素で笑いだしちゃってますが。
 ああ、かわいい……。
 狂言切腹の作法に物申す、というアドリブだったので、坐って刀を持っている寿美礼ちゃんの後ろに膝をつき、後ろから抱きしめるよーに両手を前に回すトド様、ぽかんとして次に笑い出す寿美礼ちゃん。……やっている内容はともかく、その絵面に萌え……。

 「あたしのおさ」が口癖のキティちゃん、「友情なんて長田さんの五の次」のデイジーちゃん、キティちゃんに引きずられているおとなしいココちゃん+わたしの4人でそれぞれ観劇していたもので、公演後のかしましいこと。
 帰宅するときには、わたしの喉は枯れ果てていました。

 
 せっかく目覚まし時計に新しい電池を入れ、起床時間にアラームを合わせて寝たのに……。
 スイッチ入れるの忘れてた。
 ははははは。
 2日連続、余裕のない朝(つーか、目覚ましナシでもギリギリ遅刻しない時間に目が覚める、わたしってすごい・笑)。
 そしてやはり、2日連続WHITEちゃんは寝坊で遅刻。こちらからTELしてなきゃ、遅刻どころかすっぽかされていた。朝の約束はやめておいた方が無難だよね、この人とは。来ない確率が他の人と比べて異様に高い。

 しかし、なにがあったんだろう。
 朝起きるなり、視界が狭かった。
 左目が開かない。
 多すぎる目やにを洗顔で洗い流し、鏡を見ると……うわ。
 眼球中の毛細血管が存在を主張しまくり。キモ。
 痛いしかゆいし、熱いし。

 ついでに、鼻の右の粘膜もおかしくなっており、痛いしかゆい。鼻が赤くなってるし、穴の形が少々いびつになってる。

 帽子を深くかぶり、眼鏡をかけて家を出た。誰もわたしの顔を見ないでください。左まぶたが腫れて、眼球は真っ赤、おまけに鼻まで赤く腫れてるおばさんなんて、キモすぎる。
 ……花東宝発売日。またしてもWHITEちゃんが来ないから、またしても1番乗りでひとりぼっち(前述の通り。TELしたら起きてきた)。
 チケットだけ買って、早々に帰宅。以後家から一歩も出ず。誰にも会わず。
 日曜だから、病院にも行けないし。
 この日記書いてる今も、完治せず。

 明日……花組千秋楽なんですが……。
 この目で行くの、わたし?
 コンタクトレンズ入れられないし、いつも以上にぶすでキモい顔なんですけど。
 でもって、ムラまで行ってたら、病院行ってる時間もないし。

 明日にはマシになってるといいなあ……。

 
 猫に怒られた。

 帰宅するなり、怒濤の鳴き声。吠える吠える。
 と、ゆーのもだ。
 彼のエサ皿は、見事に空っぽだったんだな。

 今日半日、エサをやってなかったの。

 だって、朝起きたら、まさかの6時50分だったんだもん!!
 今日は水くんバウのチケット発売日だよ? 7時半に梅田で並んでなきゃならないんだよ?

 なのになんであたし、6時50分にパジャマでベッドにいるのよ?!

 もー、大あわてで身支度しました。
 友だちに渡すモノとかは、昨日のうちに荷造りしてあったんでセーフ。ビデオの設定も昨日のうちにしてあった。だから、あとは自分ひとりが外に出られる状態になればヨシ。

 ばたつくわたしの足下で、猫が鳴く。
 そうそう、アンタのごはんよね。
 だがそこで、はっとする。
 今ちょうど、猫のごはんを切らしていた。新しい袋を開けて、エサ皿にいれて、残りを保存用の缶に移して……なんて、してる時間はないっ。

 見れば、エサ皿にはゆうべやった分がまだ残っている。
「お昼には帰るから、それまで我慢しててねっ」
 とわたしは、猫を残して家を出た。

 そうして、7時20分には梅田で並んでいましたことよ。
 すごいわ、わたし。

 年寄りはむやみに走ってはいけません。
 電車に飛び乗ったとき、心臓がばくばくしてこのまま貧血起こすかと思った……。

 それにしても、本日の梅田・阪急プレイガイド!!
 ものすごかった。

 なんなの、あの人数は。
 近年まれに見る大人数。
 大劇場公演の発売日よりはるかに多い。
 もちろん、前回の雪バウとは比べモノにならない……。
 プレイガイド側も、予測していなかったのでしょう。列のさばき方が、変。
「今日は百貨店前の通路を使用する許可を取ってないのね」
 とCANちゃん。
 人数的にはとっくに、百貨店前の通路に並ばせなければさばけないほどの人数なのに、そこを使わないようにするために躍起になっている。
 つまり、詰め詰め状態。
 普段の並びの倍の密度で狭い場所に並ばされた。
 ものすごい、圧迫感。
 酸素が薄い。
 そのうえ、なかなか本抽選がはじまらない。
「予想外に人数が多かったから、抽選券が足りなくなったんじゃない?」
 とCANちゃん。
 当たりくじの数は決まっているから、はずれくじをあわてて作って、抽選箱に投入しなければならなくなった。だから抽選開始が遅れた。……のでは?
 なんにせよ、今日の並びはやばいよ。いつもの倍の時間がかかった。手際悪いよ。
 雪バウがぜんぜん人がいなかったからって、宙バウも同じくらいだなんて考えちゃダメだよ、プレイガイドの人たち。組や主演者、演目によって人出はぜんぜんちがってくるんだからさ。

 と言いつつわたしも、実際に並ぶまで忘れてたよ。
 そっか、水くん人気あったんだ。
 『フィガロ!』のときも、並びは過酷だったっけ。喉元すぎたから、すっかり忘れてた。
 わたしも水くん好きだけど……水くんよりかしげの方が好き……そしてかっしー、ほんとに人気ないんやね……かっしーバウとの、今回の並びの熱気の差にちと悲しくなる……。

 どうせバウの並びだから、とっとと並んでとっととごはん食べて、とっとと買ってとっとと帰ろう。
 バウは発売枚数が少ないから、大劇とちがって短期決戦なんだよね、プレイガイド。だからいつも早く帰れる。
 そう思って家を出たんだが。
 過酷な半日でした。

 ちなみに、いつものブレックファストの店でCNに電話してみたところ、13分でつながりました。
 今までのバウホール公演は、15分くらいまでなら、後方センター席が買えましたのよ。
 だから13分でつながった、よっしゃあ買えるぜ!と仲間たちにガッツポーズをしたんですが。
 完売でした。

 WHITEちゃんは某チケットカウンターに並びに行き、3分完売だったそうな。

 これ、水くんの人気がものすごいってこと?
 かしげのときと天と地ほどの差が……。

 そしてわたしたちは、おびえるのです。
「水くんがコレってことは、あさこのときはどうなるの……?」
 今回と同じか、それ以上の過酷な戦いを覚悟しろってことでしょうか。ぶるぶる。

 とりあえず、わたしとWHITEちゃんはふたりで並んで観劇できることになりました。
 ありがとうCANちゃん。

 そしてわたしは、誘われるままにWHITEちゃんと映画に行ってしまいました。
 いちお希望通りにチケット取れたし、「友人なんか五の次、長田さん命@デイジーちゃん(命名・殿さん・笑)」に渡すモノも渡せたし、善意と厚意の人@CANちゃんに渡すモノと受け取るモノの交換できたし、肩の荷が下りたわ、と。

 そうやって、とっても濃い1日を終えて帰宅したところ。

 猫に、怒られた。

 エサ皿は当然、空。
 ご、ごめんっ。
 昼には帰るつもりだったんだっ。

 あわててエサをやり、水をやり。

 そうして今、猫はわたしの後ろでわたしの鞄をベッドにして、クロワッサンの形になって熟睡している。

 ああ、ほんとに濃い1日だ。

 
 なんとなく、昔好きだったマンガを引っ張り出して読んだ。

 あああああ、ごめんなさい、ごめんなさい、わたしが悪いです。ごめんなさい。

 という、いたたまれない気持ちになった。

 つーのもだ、そのマンガには「読者からのおたよりコーナー」というのがあってだな。
 マンガにはたまにそういうの、あるよね? 有名どころでは『ONE-PIECE』とかさ。空きページの穴埋めとか巻末とかに、おまけとして読者の交流ページがあったりする。
 その、「昔好きだったマンガ」にもソレがあって。

 わたしはそこの、常連だった。

 ごめんなさい、ごめんなさい、わたしが悪いです。ごめんなさい。うわあ〜〜んっ。

 そのマンガを読むのは、ほんとに久しぶりだったのよ。
 改めて、今、ばばあになってからその「おたよりページ」を読むとだな……逃げ出したい思いにひとりでじたばたしてしまった。

 若かったんだよ、あのころはまだ。
 だからあんな、イタイはがきをうれしげに出しつづけてたんだ。

 何枚出したかなあ。
 一度も、ボツになったことなかったんだ。マンガ家の先生にも名前をおぼえてもらえてさ。舞い上がって投稿してたよ。
 連続で載りつづけるもんだから、見知らぬ人からの、わたしへの応援はがきとかも載るようになってさ。
 あら、あたしったらファンがいるんだわ、もっとがんばってナイスな投稿しなきゃ!! と勝手に張り切って……。

 イタイ。
 イタイよママン。
 厨房の典型だよ。すでにリアル厨房ではない年齢だったのがまた、さらにイタイよ。号泣。

 過去の悪行ってのは、ほんと、ハートに悪いですな。

 昔の自分の投稿が載っているページを見ないようにマンガ本編を読み、わかっているくせに、禁断のページをちらりとめくって「はぐうっ」な気持ちで胸を押さえる。
 マ、マゾ?
 いつかこの羞恥な痛みが快感に変わる日が?

 
「あの、近所まで来てるんですが……表札、出てますか?」
「? 出てると思いますけど……いちおー」
 パナソニックのおにーさんと、わたしの電話での会話。
 なんで「いちおー」かというと、本名+ペンネームの連名で表札出してるから。知らない人が見たら、ややこしいかなと。
 しかし、修理に来てもらうの、これで3回目なんで、まさか「家がわからない」と言われるとは思わなかった。
「ほんとに近くまで来てますんで、一度家の外に出てもらえますか」
 と言われ、あわてて玄関を出る。
 ……そしたらほんとに、家の前の道をパナのトラックが徐行していたよ。ここです、我が家はここ。合図をして、止まってもらう。
「表札は……」
「出てますよ、ほら」
 とおにーさんにポストを示すと、ポストには某大型電気店のちらしがべろんとつっこまれており、名前部分が隠れていた。
「……見えないでしょう?」
「……見えませんね」
 悪いのは某大型電気店(家から徒歩5分)だ!

 そうして、よーやくDVDレコーダーが完全復活した。
「2回も出張修理に来てもらったのに、結局直ってない」
 とオペレーターのおねーさんに言ったせいかしら。今回はその2回とは別の人が来てくれました。
 んで、今度の人はちゃんと本体の中を調べ、部品を交換してくれたよ。
 ああよかった、これで動く。操作ができる。

 パナのおにーさんがレコーダーの修理をしている横で、わたしはパソコンの復旧作業。
 めでたく3度目の再セットアップさ。ふふふ。
 Outlookに登録してあったメルアドはすべて消失しました。Cookiesまかせにしていたパスワードもすべて消失しました。登録テキストを引っ張り出して、設定し直しだよ。
 ああでも心配しないでフレンズ、友だちのメルアドはOutlookなんぞで管理してませんので、問題ないです。

 そうして、ともに壊れたDVDレコーダーとパソコンは、ともに復活いたしました。

 ああ、電化製品はめんどくせえなあ。

 
 壊れたパソコンを放り出して、映画館へ。

 
 『メラニーは行く!』鑑賞。

 見るつもりはまったくなかったタイトルだが、消去法にて選択。
 だってさ、10個もあるスクリーンのうち6個が『マトリロ』と『チャリエン』なのよ? なんて迷惑な話題作たち。
 『マトリロ』はまだ見る気ないし、『チャリエン』はお金を出してまで見たくない。
 『スパイ・ゾルゲ』が見たいんだけど、3時間もある映画は時間が合わなくて見られないんだよなー。『戦場のピアニスト』も『指輪物語』も上映時間のせいで見るのが困難だったよ。
 他のタイトルを見回して、いちばんマシなのが『メラニー』だった。
 『ビッグファット・ウエディング』が、わたし的にとほほだったから、も一丁ラヴコメでも見て口直しするか、という気にもなっていたし。
 よけいにとほほ気分になる可能性もあるがな。

 監督アンディ・テナント、出演リース・ウィザースプーン、ジョシュ・ルーカス、パトリック・デンプシー。

 メラニー@リース・ウィザースプーンは今や人生の春。デザイナーとして成功し、大富豪のニューヨーク市長の息子アンドリュー@パトリック・デンプシーと婚約! いや、なんといってもすげーのは「ティファニー」での求婚シーンでしょう。ティファニーを借り切って求婚って……う、うらやましすぎ。現実離れしたシンデレラ・ストーリーもここまでやってくれると爽快(笑)。
 しかしメラニーには秘密があった。
 実は彼女、夫がいるのだ。
 大富豪アンドリューに告げていたプロフィールは全部嘘。
 過去を清算するために、メラニーはあわてて故郷のアラバマに戻る。そこで相も変わらずイケてない夫ジェイク@ジョシュ・ルーカスに離婚届を突きつけるが、拒否されてしまう。
 それからメラニーの「離婚届にサインさせるぜ大作戦」開始。強引に突っ走る。
 田舎町でどたばたやっているうちに、大富豪アンドリューの母(ニューヨーク市長でしたたかな政治家だ!)が放ったスパイが身上調査に現れるし、アンドリュー自身ものこのこと「メラニーのご両親にご挨拶をば」とやってくるし……。
 メラニーは嘘を突き通すことができるのか。つーか、彼女がほんとうに愛しているのは大富豪か、びんぼーな元夫か。そもそも、彼女のほんとうのしあわせはどこにあるのか。
 大騒ぎなラブコメ。
 

 いちばんに思うことは、この邦題、どうよ?ってことかな。
 原題は『SWEETHOME ALABAMA』っていうそうじゃないの。なにも知らずに映画館にいて、タイトルが出たときに「えっ、スクリーンまちがえた?!」ってアセっちゃったよ。
 『メラニーは行く!』と『SWEETHOME ALABAMA』じゃあ、あまりにかけ離れたタイトルじゃん。つーか、テーマがまったくちがってるよ。
 もちろん、『メラニーは行く!』の方が売れるタイトルだとは思うけどさ。主演女優のリース・ウィザースプーンに対する世間のイメージ的にもさ。
 でもなんか、せちがらさにせつなくなるんだよなあ。
 たとえば『追憶の横顔』とかなんとか、叙情的で、作品の内容に合ったタイトルを提出したのに、
「こんな地味なタイトルじゃ売れません。もっとベタに行きましょう。『温泉美女3人旅、全裸殺人事件!! 〜女の過去になにがあったのか? 不幸な偶然が事件を呼ぶ!!〜』とかがいいですね!」
 ってことになっちゃったよーな、そーゆー臭いがぷんぷんしてねぇ。ああ、せつないなあ。
 『SWEETHOME ALABAMA』っつータイトルだと思って見てたら、感じ方が変わってるはずなんだがなー。
 『メラニーは行く!』っていうと、自己チューなバカ女が大騒ぎするバカコメディだと思うじゃん。いや、たしかにその通りなんだけどな、でもな。
 タイトルのせいで、バカコメディを見たい人しか見ないよ……わたしはそれで、敬遠してたもん。

 たしかに、ヒロインのメラニーはバカ女だ。やってることは犯罪すれすれ。彼女のめちゃくちゃぶりを描くのが、この作品のテーマのひとつだろう。
 しかし。
 自分のしあわせのために他人を踏みつけても平気、で、暴走するメラニーを見ながら、そこにある「青春の輝き」に、わたしは気がついた。んで、気がついちゃったから、それに気をとられた。

 メラニーはアラバマの田舎町で育った。小さな町だから、プライバシーはあまりない、みんな知り合い状態。
 そこで彼女は、若干10歳で求婚される。はじめてのキスをする。
 相手はジェイク。10歳からつきあって、高校生で結婚。
 つまりメラニーにとって「青春」とは、夫ジェイクが切っても切れないモノなのよね。
 ジェイクと、仲間たちと。
 田舎町と夫を嫌ってニューヨークへ行き、そこで成功したメラニー。離婚するために7年ぶりで帰郷した彼女も夫をはじめとする町の仲間たちも、みんなもう「あのころ」のままじゃない。
 いろんな意味で「大人」になってしまったメラニーの目に、「現在」が映り、それゆえに「失ってしまったあのころ」がちらちらと見え隠れする。
 変わってしまったメラニー、変わったけれど本質は変わらず、だからこそメラニーを苛つかせるアラバマの人たち。
 メラニーの青春と、それがもう「過去」になってしまった今現在が、とくに台詞やエピソードとして語られるわけじゃないけど、画面の端々から見えるのよ。
 愛する故郷、アラバマ。
 失ってしまったからこそ、その鈍い輝きが愛しい、わが青春。
 ……そーゆー感じに見えたの。わたしには。
 だからこそ、『メラニーは行く!』というアホアホなタイトルがせつないのよ。

 わたしがこの映画を「売る」立場なら、こんな邦題はつけないし、アホアホぶりを際だたせたあんな予告編は作らないなあ。
 テーマは「青春の輝き」ってことで、せつない本質があるのよ、でも表面にある物語は爆笑コメディなの。……という切り口で宣伝を考える。
 メラニーと仲間たちのふれあいを中心に予告編を作るな。大人になった仲間たちを描くことで、彼らの青春時代が垣間見えるのだ、と。
 宣伝次第で、イメージなんかある程度自由に作れるじゃん。せつないのよ、ってイメージを植え付けておけば、ちゃんとくみ取ってくれる人も増えると思うけどなあ。

 邦題と宣伝で、バカ女の暴走コメディというレッテルが貼られてるもんなあ。原題を見て「スクリーンまちがえた?!」と思うくらいに。

 繰り返すが、たしかに「バカ女の暴走コメディ」なのよ。あからさまなせつない系ではない。
 女の妄想系、でもある。
 王子様と貧乏な初恋の人、どっちを選ぶ? という、5万回見た話。
 どちらを選ぶかも、ええ、みなさんのご想像通り。
 どちらを選ぶのかが想像通りなだけに、よけいに原題通りの売り方をしてほしかった。
 タイトルが『SWEETHOME ALABAMA』なら、想像するまでもなく、ヒロインがどちらを選ぶか、タイトルだけでわかっているでしょ?
 どの男に行き着くのかを最初に提示した上で、彼女の心の彷徨をたのしむ、っていう見方が確立するじゃない。愛しているのは終始一貫彼ひとり、だけど「イケてない田舎町」「カントリーガールだった自分」を否定したくて、あがいて回り道して、大暴走の大迷惑をかけるヒロインの行動に、親近感を持てるじゃん。
 ヒロインのめちゃくちゃぶりだけをクローズアップする売り方だと、ヒロインに感情移入する前に反感持つよ? メラニー、恵まれすぎ。わがまますぎ。って。
 せっかくあんなに、アラバマの仲間たちのことを描いてるのに。この邦題じゃ、仲間たちのことは無視してるよなあ。

 特別出来のいい映画じゃなかった。
 だけど、いろいろ引っかかるのだ。
 ここをこうしたら、もっと好みになるのにー。じたばた。
 って感じ。
 メラニーの青春時代を回想シーンとかでベタに描かず、現在の会話だけで表現した、その技術力を評価したってことかな。
 繰り返される意味のない会話のキャッチボールで、メラニーがとんでもねー悪ガキだったことがわかるのね(笑)。
 その悪ガキが、そのまんまのどん欲さで暴走してるんだなって。
 ガキのくせに半端に大人になって、ガキの自分を否定したくてあがいているのが、見ていてツボだったのよ。

 
 それにしても、彼女を愛するふたりの男、王子様と貧乏な初恋の男、どっちもいい男過ぎ(笑)。
 もちろん初恋の男(元夫)に感情移入しまくったけどさ。いやあ、泣かせるよ、彼は! 報われない愛に生きるあたり、受資質抜群だねえ。


 DVDレコーダーの修理の人が、よーやくやってきた。
 結局、リモコンを新しくしただけ。
 それなら5日も待たせなくていいだろうに。

 動くようになったレコーダーの整理をしていると、今度はパソコンが臨終した。
 あまりに突然で口があんぐり開いたまま。
 Giga Pocketを立ち上げるなり、ブラックアウト。
 ななななんなの、またしてもGiga Pocket?! 過去2回再セットアップするはめになったのも、映像系の不安定さゆえ。

 それに連動するかのように、DVDレコーダーもまた動かなくなった。

 わたしの部屋、なんか悪い電波でも出てる?
 ミナミで買い物したり、キタで買い物したり、多忙な1日。いろんなとこでバーゲンがスタートしてるねえ。

 さて、今日は『マイ・ビッグファット・ウエディング』を見てきました。
 『ロッキー』以来のアメリカン・ドリームだと、試写会場の司会のおねーさんが言ってました。無名の役者が実体験を元に脚本を書き、自分で演じ、それが『ハリポタ』に迫る興行成績を残したとか。いいねえ、そーゆードリームは大好きだ。

 監督ジョエル・ズウィック、脚本主演ニア・ヴァルダロス。

 デブでブスで行き遅れのギリシャ系アメリカ人トゥーラ@ニア・ヴァルダロスは、素敵な男性イアン@ジョン・コーベットに出会ったことから、人生を変えるべく努力をはじめる。ひきこもり人生とおさらばして大学へ通い、眼鏡をコンタクトに替え、メイクもファッションも前向きに挑戦、イケてるキャリアウーマンに大変身!
 あこがれのイアンを振り向かせ、彼からプロポーズ。幸福絶頂!
 しかし問題は、彼女の家族。トゥーラの父は完全無欠のギリシャ人至上主義で、ギリシャ人以外との結婚は認めないと息巻いているヒトなのだ……。

 二言目には、「30才」「行き遅れ」「バア様くさい」が飛び交い、なかなかキツい映画です(笑)。
 30才はべつに行き遅れではないし、スクリーンのトゥーラはどう見ても30才には見えない。
 数年前、泉ピン子がそれくらいの役をテレビドラマで演じていたが、アレもキツかったなあ、どうみても40過ぎなのに一回りも年下の役はなあ……てな記憶を蘇らせてくれたよ。
 主演女優のニア・ヴァルダロスはすでに40過ぎてるんだってね。うん、どう見ても40過ぎのおばさんなんで、「30才」を連呼されるとキツかった。デブスのときも、美女に変身したあとも、やっぱり40過ぎは40過ぎだよ。30には見えねー。
 素直に「40才」って設定にすればいいのに。なんで30じゃなきゃダメだったの?

 わたしはラブストーリーが大好きだし、ハッピーエンドが約束されているかわいい物語も大好きだ。
 だから、予告編を見た段階ですべて想像が付く話でも、この映画はたのしみにしていたんだ。

 実際、愉快でかわいい映画で、場内は笑いに包まれていた。ただの笑いだけじゃなく、ツッコミも入るのね。観客がスクリーンに向かって思わずひとことつぶやいちゃうよーな、そんな楽しい映画。
 とくに頑固なパパは人気者。いちばんウケてた。
 わたしも終始たのしんで見た。

 が。
 かなり期待はずれだったのだわ。

 なーんだ、こんなもんか。
 って感じ。

 なんでコレ、そんな大ヒットしたの? そんなに名作か??
 そりゃ、たのしいよ。たのしいけどさ……それだけじゃん。がっかり。

 なんとも平坦なプロット。小ネタだけで笑いを取り、場をつないでいく感じ。
 クライマックスと呼べるよーな山場はない。同じテンションで全部が流れていく。

 しかも、ストーリーはおとぎ話系。
 美人になったヒロインにベタ惚れのハンサムが、なにもかも彼女に捧げてしまう話。ほんとに、なにもかも。人生すべて、ヒロインに捧げるの。アメリカ人のはずが、宗教まで変えてギリシャ人になるのよ。
 え、えーと?
 彼女の側に問題が起こり、彼がにっこり笑って自分を犠牲にし、解決する。
 彼女の側に問題が起こり、彼がにっこり笑って自分を犠牲にし、解決する。
 彼女の側に問題が起こり、彼がにっこり笑って自分を犠牲にし、解決する。
 ……この繰り返し。
 なんなんだ、これ。
 彼女はなにひとつ失わず、彼だけがなにもかも犠牲にして、それでハッピーエンド。女の側だけ100%都合のいい結婚。だって愛があるから。……てか。
 おとぎ話にしたってわたし、こんな物語、たのしめないよ。

 バカ売れするラブストーリーの典型のひとつとして、「ヒロインに都合がいい話」ってのがあるんだよね。
 ラブストーリーの客は、女性が圧倒的に多い。その女性が気持ちよくなる物語は、売れる。
 つまり、ヒロイン万歳、世界がヒロイン中心に回る物語。ヒロインの恋人は善、ヒロインの敵は悪、ヒロインはどんなに理不尽なことをしてもけなげってことで善。常識も倫理も関係ない。
 客はヒロインに感情移入して、自分が「神」の世界で快感に浸る。

 この『マイ・ビッグファット・ウエディング』が売れたのも、コレが理由ではないだろうか。

 とにかく、1から10まで、ヒロインが気持ちいいだけの物語。ヒロインに感情移入したら、そりゃ天国だよ。世界が自分のために回っている感覚を味わえる。
 それを、「家族愛」とか「ユーモア」とかの外聞のいいラッピングで飾り立ててあるの。
 う・わー。

 あと、見ていてやたらと思ったのは、『ベッカムに恋して』に似てるなあ、ってこと。
 どちらも「異文化婚」がテーマなんだよね。
 『ベッカム…』はインド。『ビッグファット・ウエディング』はギリシャ。
 どっちも民族主義で大家族主義。血筋に誇りを持ち、習慣と宗教を大切にしており、考え方が古風。「女はこうあるべき」が固く守られており、ヒロインはそれを破り、自分の意志で『ベッカム…』はサッカーを、『ビッグファット・ウエディング』は結婚相手を選ぶ。
 しかも、クライマックスはどちらも民族色全開の結婚式。
 異文化婚を現代に描こうとしたら、似てしまうのは仕方ないと思うよ。思うけど……似すぎだー。
 そして、『ベッカム…』の出来がよかったぶん、『ビッグファット・ウエディング』のつまらなさが目立ってしまった。わたし的に。
 『ビッグ…』は盛り上がりがないんだもん。とにかくずーっとヒロインが気持ちいいだけだから、危機にも陥らないし、障害もない。ハラハラもドキドキもなく、ただ愉快な人たちを見て「あはは」と笑う。ずーっと同じことの繰り返しでハッピーエンド。

 ああ……『ベッカム…』がもう一度見たいなあ。かわいくてよくできた映画だったよ。ちゃんと起承転結があって、クライマックスがあって、家族や親戚たちがかわいくてさあ。

 『マイ・ビッグファット・ウエディング』が売れる現代社会を、ちょっと嘆きたい気分っす(笑)。
 わたしはほら、「痛い」話が好きだからさ。「気持ちいいだけ」の物語(ボーイズではこーゆーのを「アホアホ系」とか言うよね)だけが支持される世の中は、ちょっと生きにくいです。

 
 頬のあたりを、軽やかなタッチでなにかが触れた。
 ああ、猫がまた、わたしの顔を触っているのだな、と思いつつ覚醒すると。

 うっぎゃあああああっっっ。

 黒い楕円形のイキモノが、視界の端を消えていった。
 ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴのつくイキモノっ。
 今わたしのほっぺたに触ったのって、ゴのつくイキモノ?!

 半狂乱で殺虫剤を振り回す。
 ぜえぜえ。
 なんとか仕留めた。

 いっぺんで完全覚醒。朝からショック度高し。

 家の外に出たときに、なにが起こったのかがよくわかった。
 隣家のドアに張り紙がしてあったんだ。

『ただいまバルサン中』

 ……ウチ、集合住宅なんよ。壁一枚で隣の家だし、天井裏はつながっている。
 隣家でバルサンしたら、そりゃウチに逃げ込んでくるわな……。

 猫に触られたのと同じくらい、ソフトでライトな感触でしたよ、ゴのつくイキモノの足触り……(嫌)。

          ☆

 BS『あなたが選ぶハイビジョン宝塚歌劇2002』の再放送を、見てしまった。録画だけして、見るのはまたいずれ、と思ってたんだが。途中から全部、見ちゃったよ。

 月組……シューマッハがいる……。
 ケロとゆーひが並んでるよお。なつかしいよお。
 ほろほろ。

 『あなたが選ぶ…タイトル長いよ』を見ながら、『MOTHER1』をやってたのよね。
 ケロとユウヒのふたりで冒険していたのに、途中からトウコが加わった……のはいいとして。トウコちゃんてば、あたりまえのよーに、ケロとユウヒの「間」に入ったんだよね。今までケロとユウヒが並んで歩いてたのに、あとから出てきてわざわざふたりの間に割り込んだ。……すげえ。
 しかも、トウコとケロは「前から知っていた=初対面ではなく、再会」「出会うことが運命」のような口ぶり。……すげえ。
 なんか、いちいちぴったりでこわいんですけど……と思いつつプレイしていたら。
 今度は、マッチョな男ワタルが登場した。ワタルはユウヒに問答無用で詰め寄り、勝手に「交代」させ、自分が強引にパーティに入った。……すげえ。
 だから今は、ケロ、トウコ、ワタルの星組トリオで冒険中。ユウヒはどこにいるのやら、いなくなっちゃったよ。

 なんか……すべて符丁が合っていて、微妙にいやんな感じっす……。
 わたし、なにも考えないで名前つけたのに。こんな展開だなんて知らなかったのに。

 それにしても、ストレスの溜まるゲームだよ、『MOTHER1』。なんて不親切なんだ、すべてのことが。

 ストレスといえば、弟は今ごろ『静岡』をプレイ中。奴はバッドエンディング1回しかクリアしてないんだよねー。わたしのよーにベストエンディングやUFOエンディングを見ていないのよー。んで今ごろやり直してるのよー。ほほほ。
 めちゃくちゃストレスが溜まるそうな。ええ、ええ、最悪よね、あのクソゲーったらよ。
 でも、来週発売されるという、『静岡3』をやりたくて、姉弟そろってうずうずしてるのよねー(笑)。

 
 あまりにこわくて最後まで見ることができない人が続出。……という新聞記事を読んだ。
 ので、WHITEちゃんとふたり、いそいそと出かけたレイトショー。

 なんでも、本物の幽霊も映り込んでいるんだって? セル&レンタルメディアなどに編集するときには、それら「あってはならない影」は全部修正するんだって? だから、生の霊が見たい人は映画館へGO! てな口コミ情報。
 ……残念ながらわたしには、映画館で見てもどれが本物なのか、ちっともわからなかったんですけど。

 香港・タイ合作映画『the EYE【アイ】』。
 監督オキサイド&ダニー・パン兄弟、出演アンジェリカ・リー、ローレンス・チョウ。

 角膜移植をした少女マン@アンジェリカ・リーは、それ以来「ふつうなら見えないもの」が見えるようになった。霊・霊・霊! そこにもここにも霊!
 マンはカウンセラーのワ・ロー@ローレンス・チョウと共に角膜提供者の情報を求めてタイへ旅立つ。

 ……こわかったっす。
 わたしは笑いのツボが他人より少ないらしいんだが、ホラーのツボもあまり持ち合わせていないようで、なにを見てもそれほどこわがらないのね。
 でも、こわかったわ、コレ。
 途中退場するほどでもないし、『リング』ほどでもないが、そーだな、『リング』の次ぐらいにこわかったかな。1位と2位の間はかなり空いてるけど。
 ホラーはやはり、映画館で見なきゃだめよねー、という、音の怖さが満載。追いつめてくれるよー。いちばんこわかったのは、エレベータのシーンかなあ。いやあ、やっぱ老人ってこわいよー。

 『呪怨』が疲労系だったせいもあり、ホラーにおけるストーリーの重要さをひしひしと感じているところだからさ。
 『the EYE【アイ】』がよかったのは、ストーリーなんだとわたしは思う。
 ヒロインにどれだけ感情移入できるか、で、こわさってぜんぜんちがうもの。
 わたし、ホラーであることをのぞいても、この映画、好き。
 ヒロインにバリ感情移入して見てたよ。
 マンと、もうひとりのヒロインともいえるリン、ふたりの少女に入り込んで見ていた。

 幽霊が見える。死ぬ運命の人を迎えに来る「影」が見える。
 ……なんて言ったら、引かれるよね。電波扱い必至。
 だから、自分を守りたかったら、そんなことは口に出さず、自分だけ危険から逃げればいいじゃん。せっかく死の危険を予知できるんだからさ。
 だけど、マンもリンも、走り出す。自分だけ逃げるんじゃなくて、走り出す。前へ。ここは危険なの、ここにいたら死んじゃうの。お願い、逃げて。
 そんなこと言っても、誰も信じてくれないよ。キチガイ扱いされるだけ。それでも、走り出さずにはいられない。
 死なせたくないんだもの!
 無力でも、バカでも、石を投げられても、叫び続ける。
 わたしを理解しない人たち、だけど死なないで!

 クライマックスは、あざといくらいだ。いやだ死なないで!って、わたしも思ったよ。マンと同じに。
 マンのかなしみが痛切で、それゆえにリンのかなしみも胸に迫り、それらが一気に爆発する。
 かなしくておそろしくて、そしてどこか美しいとさえ言える、クライマックスの最後のシーン。

 ……だから、見終わったあとに多少「いいのか?」って割り切れないものは残るんだが。つーか、そのオチは予想がついてたよ、っていうか。もうひとつくらい、どんでん返しが欲しかったな、とか。
 ちょっと消化不良なところが、よけいにツボかもしれない。ものすごーく、刺激されるんだもの。わたしならこうする、とか、真面目に考えたくなる。

 とりあえず、とってもおもしろかった。収穫だわ。
 ヒロインのアンジェリカ・リー、わたしの目には「南国生まれの中谷美紀」に見えたんだけど(笑)。ホラーの似合う美女だわ。

 あ、あざといといえば、入院患者の少女インイン。この子もどうなるのか、最初から予想はついたけど……泣かせてくれたよー。
「世界はきれいよ」……インインが繰り返すこの言葉を胸に、強く生きていきたいっす。

 
 わあぁぁあん、わあぁぁあん。

 どせいさんストラップが、なくなってしまったぁぁ。

 レイトショーを見るために会ったわたしとWHITEちゃん。晩ごはんを食べながら、わたしは「どせいさん」を自慢しようとしました。
 そしたら。
 な、ないっ。
 ストラップから、どせいさんがなくなっている!!

 ショック。
 あんなにかわいかった、どせいさん。
 わたしが『MOTHER1+2』を買う原動力のひとつだったどせいさん。
 哀しみに取り乱しながら、わたしは弟にメール。
 ひょっとしたらまだ、手に入るかも。なんかのはずみで残っている商品があるかも。一縷の願いを込めて、販売店勤務の身内にSOSを出した。

 帰宅したのは、12時過ぎ。
 弟は、母の書斎で奮闘中だった。
 とゆーのも、ついに母のパソコンが大破しましてな。昼間、わたしは母に呼びつけられ、触ってみたんだか、わたしの手にはまったくおよばないくらいぶっ壊れていたので「弟に見てもらいなよ」とスルーしたのよね。
 残業して帰ってきて、さらに母のためにこんな時間までパソいじりか……あわれなヤツ。
 母の壊れたパソコンはもうご臨終で、仕方ないのでわたしのお古のマシンを使い回すために大移動をしているところだった。弟を働かせながら、母はすでに白河夜船。とっくに就寝。
 パソコン相手に奮闘する弟に、わたしは
「メール見た?」
 と、訊ねた。
 すると彼は、「ふっふっふっ」と笑い出す。

「今日の昼のことだ。ぼくのどせいさんストラップも、ふと見ると肝心のどせいさんが、なくなってたんだ」
「ええっ、あんたのも?!」
「どせいさんはボールチェーンでストラップにつけられてただろ? それがはずれて、ボールチェーンだけが残っている状態になっていた」
「そうそう! あたしもそうだよ。チェーンだけが残ってたの!」
「……ショックだった。でも、休憩が終わってロッカーを見ると、どせいさんが落ちていた」
「じゃあ、みつかったの?」
「そう。ロッカーを使ったときにたまたま落としたらしい。付属のチェーンが落ちやすいということを知ったわけだから、それをはずして、自力で強固に付け直した。これで二度とはずれないはずだ」
「あたしはいつどこで落としたかわかんないから、出てこないよ!」
「落としたショックは、こちらはすでに体験済みだ」
 弟はにやりと笑う。
「もう二度と、落とさない」
「だから、あたしは落としたんだってばーっ。手に入らないの? なんとかして!」
「無理を言うな。二度と手に入らないから『限定』っていうんだ」
 って、なにを勝ち誇った顔で言うか!! むきーっ。
「どせいさん、かわいいなあ」
「どーせあたしはなくしたわよっ、くやしーっ」
「ふっふっふっ」
「きーっ」

 てな、1日の終わりでした。なんてすがすがしいのかしら。

 ああ、それにしてもどせいさん……。
 ショックだよー。めそめそ。

 つーことで、今日見た映画の話はまた後日。

 
 野風の笛を吹くと、数万の死者がゾンビとなって蘇り、奏者のために戦うとか。
 なんてスペクタクルな光景。
 そりゃ、こんなことを言って脅されたら、天下の将軍様も膝を折るでしょう。数万のゾンビ兵と戦うなんて、ごめんだもの。

 いや、「野風の笛」ってのが、そーゆー魔笛であると思っているわけじゃないんだが、WHITEちゃんはそう思って家康様や主水の台詞を聞いていたそうなんで。
 それをアタマに引っかけたまま、何回目か忘れたけど、花組の『野風の笛』を観てました。

 B席でいい! と豪語していたわりに、1階S席で観ていたりしてな。おやぢばかりの団体客が、「おれ、こんなのいらねー、観たくねー」ってことで、「半額。誰か買わない?」と声をかけてくれたので、ありがたく購入しました。3750円という半端な金額が、通常のサバキでないことを物語る……。
 19列目の端っこで、席についてふと横を見ると、たかちゃんがふつーに歩いていて、瞬時固まる(笑)。油断していただけに、触れる距離に突然現れられたら固まるって。びっくりした、今日は観劇日なのね、宙組有志一同。
 にしても、たかちゃんって、拍手起こらないね。トップスターが観劇に来たときって高確率で拍手が起こるのよ。でも、たかこ相手に起こったのを見たことがない……。最近は拍手しなくなったのかなあ? 
 同じように半額でその席を買った隣席の女性ときゃーきゃー盛り上がる。わたしたちがあんまり盛り上がるので、周囲のおやぢ団体客も「なに? 誰か通ったの?」と興味津々。
 しかしおやぢ団体客、芝居の間は爆睡タイム。10人くらいのグループだったんだが、起きていたのはひとりだけだったよ。そのひとりも、フラッシュ付きのカメラで舞台を撮影しようと何度もチャレンジして、係のおねーちゃんに叱られまくりだし。
 最初から最後まで起きていたおやぢに、聞いてみたかったなあ。「あの芝居、どう思いました?」って。

 なんかもー気持ちが麻痺しているのか、芝居の脚本のひどさがまったく気になりません。新公では気になりすぎて辟易したのに、さすが本公演だなあ。役者の力で別次元。汝鳥伶さまラヴ(あれ?)。
 しょせん主演ふたりのファンなので、トドとオサがかわいらしくも素敵にそこにいるだけで、あとは「なかったこと」にしちゃえるみたい。ヅカってすごいなあ。

 んで、「野風の笛」。
 いちばんの見所である主水の自害シーンにて。
 嬉々として「野風の笛」の解説をする主水@血糊付きを見ながら思ったのよ。

 こいつ……野風の笛が吹かれたら、率先して蘇ってきそうだな。

 数万のゾンビ兵たちの先頭に立つ、血まみれ主水ゾンビ。ひとりだけ豪華なはっぴの背中には「鬼っ子様命」の金刺繍。
 その後ろには、秀頼とか不知火とか、お揃いの親衛隊はっぴにはちまき締めた面々がずらり。

 こわい……。

 うん。降参した方がいいよ、将軍様。触らぬ神に祟りなし、クサイモノにはフタ。「神々しさにひれ伏」したっていいじゃん。相手、イッちゃってるよ。
 つーか主水、アンタ、ゾンビとして蘇る気満々で自害してないか? 死んでも背後霊になって忠輝の後ろにいそうだよねえ?(笑)

 さて、本日はかねすきさん殿さんと観劇だったので、やほひトークOKな面々。
 ねえ、わたし忠輝×主水なんですけど。つーか、忠輝総攻(ちょっとヘタレ)。なのに殿さんは主水攻って言うんですけど?
 攻の寿美礼ちゃんは大好きだけど、トド相手は見たくないっちゅーか……問題はトドか……。忠輝があさこなら、忠輝受でOKなんだが(忠輝あさこVer.ってちょっと見てみたい)。
「トドって昔は“やんちゃ攻”だったんだよ」
 とわたしが言えば、
「だってわたしが最初にトドを見たの、『凱旋門』だったんだよ」
 と殿さんは返す。……総受のトドからスタートしたなら、そりゃトド受に違和感ないよね……。

「『野風の笛』でなら、パロ書けるわ」
 とひとりが言えば、残りのふたりもうなずく。
 うん。ギャグであろーとシリアスであろーと、ツッコミどころ満載作品なだけに、二次創作はしやすかろー。実際に書く書かないは別として。

          ☆

 帰宅すると、WHITEちゃんからメール。話題は『アメリカン・パイ』の、リューの両親。
 とくに、おやぢ役の悠さんのくどさについて。

> しかし、リューの父はあんなに熱くて良いのか?あの夫婦は二人で芝居を壊し
>に来たのだろうか。前観た時より濃くなってる?

 とのメールに、「千秋楽はまた、ものすげー濃さだったよ」と返したら、

> ユウナオキ(?←分からないからカタカナ)は日増しに熱くな
>っていたのね。あんなに濃かったら、リューもひくって。そり
>ゃ、あの親父の前では死ねないわ。

 との返事が。
 たしかに……。あのおやぢの前で死ぬのは嫌かも(笑)。
 リューの家出の原因もわかったわ。パパね。

 ハンサムなんだけどな、パパ。しかし……アレはやりすぎだろう、悠さん。

 
 ありゃ。
 トウコにはまだ会えないのに、先にユウヒに出会ってしまった……。

 『MOTHER』って、いちばん最初に登場人物「4人」の名前を決めさせられるのね。
 主人公を「ケロ」にして、そのガールフレンドを「トウコ」にして。友人ふたりのうち、ひ弱そうな男の子に「ユウヒ」とつけた。……ガールフレンドを「ユウヒ」にするかどうかで、ちょっと悩んだのは秘密(笑)。

 なにしろ、最初に名前をつけるので、実際にゲームをはじめてしまったら、そんなこと忘れちゃってるのね、わたしの場合(脳みそにシワが少なくてねえ)。
 ガールフレンドを「トウコ」にしたことだけはおぼえていたけど、「ユウヒ」のことはころりと忘れていたから、街の人の会話で「ユウヒ」という名前が出たときには、おどろいたよ。
 えっ、ユウヒ? ……あ、そっか、あたしがつけたんだった。てな。
 とゆーことで、無事にケロくんはユウヒくんと出会いました。ユウヒくんは金髪の変わり者っぽい男の子。口は達者だがちょっと臆病な発明マニア。ケロくんを気に入ったみたいで、彼の後ろにくっついて冒険の旅へGO!
 せっかくふたりでラヴラヴなのに、このあとにトウコちゃんやら、もうひとりのごついタイプの男やらが仲間に加わるんだろーなー。なんか、笑えない展開のやうな(なにが?)。ま、ユウヒには片想いが似合うし(なにソレ?)。

 本日はまたしてもレコーダーとDVDの整理に明け暮れました。
 つーかレコーダー、リモコンが利かなくなってるの……。こ、故障? リモコンが使えないと、できない操作が山ほどあるんですが。
 買ってからまだ半年。
 そして、保証書が行方不明という現実……わーん。

 
 うわあ。またしても児玉っちだ。

 ひとりでこっそりと、ステージトークに行ってきました。みわっちとあすかちゃんの。
 某オークションで、定価の3分の1以下で落札できちゃったもんだからさ……この値段ならそりゃ行くでしょう!てなもん。
 きれーな若いお嬢さんを、間近で見られるのだから、いそいそお出かけ。

 あんな値段だったのに、いい席でした。3列目の通路際。みわっちもあすかちゃんも客の顔を見ながら通路を歩いてくれるのさー。わーい。

 さてわたし、ステージトークは2回目の体験。
 前回は雪組の、いっぽくんととなみちゃんだった。となみちゃんが天然でかわいかったっけ。
 しかしあのときは、主役のはずのふたりよりも、「演出家のビデオレター」という爆弾があったので、それで印象がぶっ飛んでしまったのよ。
 ええ、児玉女史のお姿でね。
 正直、もう二度とお目にかかりたくないと思いましたのことよ。

 んでもって今回。
 ……忘れていたよ。「演出家のビデオレター」のことなんか。
 司会者がその話をしだしたときに、わたしは「はっ」と震えました。

 新公の演出って。
 児玉っちじゃん!!

 うわあ。よりによって、また児玉っち演出のときに、ステージトークに来ちゃったよー、あたし。
 不覚。

 えーと、あれからもう1年経ってますかね。
 さすがの児玉っちも、スカステやらなんやらで多少は映像慣れしてきているのでしょう。「ビデオレター」にしても何回目かの出演だろうし。
 前に見たときよりはるかに、「人間」になってました。
 あのときほど気持ち悪くもなかったし、わけわかんない電波言語をつぶやきつづけてもいなかった。
 よかった、さすがにマシになってんじゃん……と、思っていたら。
 司会者は言う。「児玉先生のビデオレターは、本当は7分間もあるんですよ」

 ………………。
 成長ナシですか。

 日本語になっている部分だけを編集してあったのね。
 1年前のビデオレターは、たぶん最初の1回目だったんだと思うよ。だから編集ナシの無修正。おかげでやたらと長かった。そして、長いのになにを言っているのかはさっぱりわからなかった。
 児玉女史にそのまま喋らせては時間の無駄だと悟ったスタッフが編集したものを、「ビデオレター」として金を出して会場にいる客の前に流すことにしたのね。
 正解だよ。7分もあの調子で喋られたら、たまんない。

 みわっちとあすかちゃんは、「児玉先生の真似」をたのしそーに披露してくれました。これがまた、似てる。特徴ありすぎだもんなあ、児玉っち。

 いや、それはさておき、主役のふたりだ、うん。
 わたしはあすかちゃん目当てでした。
 『Crossroad』ファンならば、遠野あすかのファンでしょう! 多少「それはどうよ」な役がつづいたって(『琥珀…』はひどかった……本役も新公も……)、『Crossroad』の記憶があれば許せちゃうって。研2であの役をやったんだもんなあ。
 あすかちゃん、顔、ちっちゃい……。舞台では丸く大きく見えるのになあ。こんなにちっちゃいのか。
 ふたりとも、和服姿でした。みわっちは涼やかな水色、あすかちゃんはかわいらしいピンク。
 そしてふたりは、ノンストップで漫談をかっ飛ばすのでした……おもしろかった。
 ステージトーク初出演のみわっちは体当たり風、3回目のあすかちゃんは余裕の笑顔。飛ばすみわっちに、あすかちゃんが笑顔でついていくのがかわいい。取り残されることなく、合いの手入れてる。

 スカステのカメラが入っていて、9月に放送するそうだ。
「みなさんは映りませんから、ご安心ください」
 と司会者は言う。それを鵜呑みにしていたんだけど。
 最後に、会場の出口のところで主役ふたりに記念カードを手渡してもらうことになってるのね。
 わたしはこーゆー場合、いつもなにかしら言うことにしている。ただ黙ってもらうものをもらうんじゃなく、感謝とか激励とか感想とか、そーゆーことを言う。お茶会の握手のときとかね。相手の目を見て、なにか伝えたいじゃないか。
 んで、今回もまた、そのとき思ったことを短くてきとーに言葉にした。長々喋っては周りの迷惑だから、ほんの一瞬を心がけて。でも、しっかりとみわっち&あすかちゃんと視線を合わせて。
 ……着物姿のふたりはもちろん、ヒールなし状態。娘役のあすかちゃんはともかく、男役のみわっちも、ヒールを履いたわたしよりはるかに小さかったなんて、悲しい現実はなかったことにして。
 よっしゃ、ちゃんと伝えたわ! と内心ガッツポーズで回れ右したら。

 そこには、テレビカメラが。

 う、嘘つきぃ。客は映らないか安心しろって言ったじゃない!
 ……撮るだけ撮っていても、ほんとうに放映するのはほんの一部でしょう。200人もいる客全部の「スターの手ずから記念品授与シーン」を放送するわけない。だから、わたしが映ってしまう確率は200分の1だ。
 200分の1だけど。
 映りたくない……。
 合掌。祈。

          ☆

 今日発売のアドバンスのソフト、『MOTHER1+2』を手に入れました。
 弟に社販で買ってきてもらったの。わーい、20%OFFだー。予約特典の「どせいさんストラップ」付きだー。どせいさん、かわいいー。さっそく使うぞー。
 わたしにソフトを手渡す弟の携帯電話に、見慣れぬものがついていた。
「なにつけてんのよ」
 わたしが言うと、弟はにやりと笑った。
「これ? どせいさん、かわいー」
 弟もしっかり、非売品のどせいさんストラップをGETしてやがる。
「なに、アンタも買ったの、『MOTHER1+2』?」
「買ってない。予約特典だけもらってきた」
 ず、ずるいずるいずるい〜〜っ。

 とゆーことで、緑野姉弟は今、おそろいの携帯ストラップを使っています。

 
 
 花組東宝の友会入力、気づいたのが〆切1分前だった。……あぶねえ、あぶねえ。どうせはずれるだろうけど、せめてエントリーはしておかなくっちゃね。オサ様命!のデイジーちゃんに頼まれていることだし。
 今のとこ、何故か花組は連勝中。記録更新するかしら。
 

 この間、WHITEちゃんと「オヤジのカシゲが見たいわ」などと話していたとき、ふと思ったのよね。
 カシゲで見てみたい役ってのは、いったいどんな役だろう、と。
 WHITEちゃんと話していたとき、ふたりの頭の中にあったのはもちろん『アンナ・カレーニナ』のオヤジ役だ。コム姫目当てで観に行ったはずなのに(わたしは+しいちゃん)、カシゲにハマってホールをあとにした。
 あのときのかっしーはよかったよなあ。でもそれ以外でよかった役って……?

 もしもわたしが、かっしー主役でなにか作品を書くとしたら、なにをどんなふーにやるだろう……とドリームして、途方に暮れる。
 ……なにも、思いつかない。
 壮いっぽくんの方がよっぽど、イメージ湧くよ。いっぽくん主役で、かっしー2番手なら、いろいろドリームできるのになー。
 へんだな、わたし、いっぽくんとかっしーなら、断然かっしーの方が好きなんだけど。それでも、かっしーの「主役」はぴんとこない。

 長く雪組を観ているもんで、かっしーの歴史は大方目にしているはずなんだが、彼の「はまり役」を思い出せない。「はずし役」なら思い出せるんだけど(『追憶のバルセロナ』とかな)。

 わたしがかっしーに着目したのが、新公『エリザベート』。ルドルフ皇太子のあまりの美しさに、息をのんださ。
 なんせ、本役のルドルフはおせじにも「美しい」とは言えない人だったので、イメージ通りの「ルドルフ」を見ることができて大喜びした。
 忘れられないのは、友人のクリスティーナさんだ。彼女はルドルフ役に多大な思いこみがあって、「タータンのルドルフは絶対許せない!」とわめいていた。
 彼女のなかの「ルドルフ」はシメさんで、そのイメージを崩す者は許せないと言うのだ。
「アンタ、見たの? シメさんの演じるルドルフ」
 と、わたしが聞くと彼女は自信満々に答える。
「テレビの中継で見たわ、『うたかたの恋』」
「テレビのって……あれ、マリコじゃん」
「…………っ!!」
 驚愕。指摘されて、本気でおどろいてやんの。
 たしかに『うたかたの恋』はシメさんがトップスターのときに上演されたけれど、まさかの休演でシメさんはムラの舞台に立てず、代役でマリコさんが演じたのよ。テレビ中継はその代役公演だった。
 クリスティーナさんのなかでは、『うたかた』=シメさんで、記憶の書き換えが完了していたらしい。一度も見たことのないシメさんルドルフのみが「正解」で、あとは全部「まちがい」。
 シメさんルドルフを「見た」と思いこんでいるあたり、ほんとにドリームしてたのね。
 そしてそのドリームゆえに、タータンのルドルフが許せない、と。
 そのクリスティーナさんが、新公のかっしールドルフを見て、
「許す。許すわっ、このルドルフなら許す!!」
 と、鼻息荒く繰り返していたのが、忘れられない。
 ……あのころは、『エリザベート』がヅカの定番となり再演しまくるなんて、夢にも思ってなかったからさー。

 新公のルドルフは、そりゃーもー、美しかったさ。かっしーの白い美貌にぴったりの役だったよ。
 当時飛ぶ鳥を落とす勢いの、鬼畜さが素敵なトウコ演じるトートに翻弄されるのが、耽美極まりなかったわ。

 しかし。
 あれ以来、はまり役を思い出せないんですが。

 まだわりとよかったのって、『イカロス』とか? 個性の薄いきれーで繊細な青年の役だったわねえ。『浅茅が宿』のオカマ役(トドにからむ)は、サムかったしなあ。あと、本公演で2作連続トドの腕の中で死ぬ役をやってたっけ。個性の薄いどーでもいいよーな、でもとにかくきれいな役(トドのよーな男臭い美男と絡めるとイイ、と演出家に判断されたのかね?)。
 初主演の『ささら笹舟』は作品自体が駄作中の駄作なので、それでかっしーを語るのは気の毒だから除外するとして(かっしーは熱演だった。こんなに実力があったのかとおどろいた。……でも駄作だった)、えーと、わたし的にかっしーの役で好きだったヤツって……?

 強いて言うなら、『アナジ』の不知火かな。
 アレもどーでもいい役だったが、唯一「きれいなだけの薄い人」ではなかった。
 海賊だから、汚かったの。ダークな美しさ。なんだよかっしー、黒い役もできんじゃん!とあのときは誤解した(誤解なのか)。
 『バルセロナ』で見事に膝かっくんさせてくれたように、悪役はできないのよね。なにをやっても「いい人」オーラが漂っている。今思えば、不知火も「悪ぶっているけど、ほんとはいい人」だったから、素敵に見えたのよね。

 つーことで、わたしがかっしーで見たい役。
 「ハートの熱い不良青年」。

 かっしーはとにかくきれいだから、スーツだとか軍服だとか着せて、さしさわりのないいい人とか美男だとか愛に苦悩する繊細な貴公子とかやらせても、ただきれーなだけで終わると思う。
 今までがそうだったから。
 だから、もしもわたしがかっしー主役でなにかプロデュースするなら、悪役ではない黒い役を創り上げる。
 見た目はワイルドで悪役風。ぶっきらぼうで無口。
 だけど、ほんとはやさしく熱い男。不器用なかわいい男なの。
 かっしー自身の「白くて真っ当で人のいいオーラ」が勝手ににじみ出てくれれば、それで十分素敵になるよ。

 さて、この不良青年かっしーに合わせて、他を創るとすると。
 いっぽくんもダーク系がいいなあ。敵でも親友でもいいけど、彼は「芯からクール」な男希望。
 いっぽくんも、持ち味は陽性だと思うので、逆に一発、黒をキメて欲しいもんだ(わたしがいっぽくんにきゃーきゃー言ってたのは、魔性の男ロドリゴに爆裂片想いしてストーカーとなるミゲル役だったんだけど・笑)。
 かっしーと並ぶと「ふたりともクール系」に見えるけど、かっしーは実はホット、いっぽくんは見た目通りのクールガイ、という色分けにして。出来事に対するリアクションで、ふたりのキャラクターのちがいを表現すること。
 ヒロイン要員がシナちゃんだとしたら、ラブストーリーをやるのは苦しいから、いっそ妹役とかにして、かっしーといっぽくんの友情メインとかな。

 そんなふーに、キャラから妄想して物語を創るかなあ。

 今までの経験上、バウホールの「2番手不在」の作品でおもしろかったものって、ほとんどないんだもの。
 小説でいうならば、タカラヅカは純文学ではなくライトノベルだと思うのね。ラノベである以上、いちばん大切なのは「キャラクター」であり「萌え」だと思う。
 多少ストーリーが破綻していても、キャラが魅力的ならOK出るジャンルでしょう。
 もちろん、ストーリーが破綻せず、含蓄があり、芸術的に優れていたって、かまわないんだけど。
 全部こなす自信がないなら、まずはキャラだ、スターだ。出演しているジェンヌの魅力を出せたなら、それで最低限クリアーだ。
 主演の男役とヒロインを魅力的に描くのは基本だが、ヅカの場合、ヒロインよりも2番手男役に重点を置くのがポイントじゃないかと思う。だってラノベはラノベでも、女性向けラノベだからね。異性に魅力がなけりゃ、女性はよろこびません。
 主役と2番手男役がストーリーの中心であり、魅力的であること。ふたりのいい男に絡むにふさわしい魅力を持ったヒロインであること。
 それが「はじめの一歩」かなあ。
 てことで、あて書きからスタート。ストーリーはあとから考えよう(笑)。

 あ、今はほんと、バウのことしか念頭に置いてないから、こんなことを書いてます。
 大劇作品なら、また微妙にアプローチがちがってくる。
 

 先日かっしー主演の『アメリカン・パイ』を観て、

「薄いかっしーに薄い役をやらせてどうするんだ、地味な雪組に地味な作品やらせてどうするんだ。キャストの中でいちばん派手ないっぽくんを無駄遣いしてどうするんだ」

 と、つくづく思っちゃったからさあ。
 思ったわりに、「かっしーで見たい役」がないことに愕然としたので、真面目に考えてみた。

 軽く流してくれ。


 雨なので、映画館に行けない水曜日。
 映画館まで、自転車で40分もかかるんだもん(電車乗れよ)。

          ☆

 ここ数日、母がなつかしグッズをひろげています。
 昨日は帰るなり、25年ほど昔の「母の日記帳」を見せられたし。
 育児日記なのよね。わたしと弟のことだけが書いてある。しかも、当時のグッズがいろいろ貼り付けてあるし。
 わたしが母の誕生日に贈ったお手製のお守り袋だとか、賞状だとか、母と父の似顔絵だとか、とにかく「あちゃー」なものがいっぱいさ。

 今日は、30年前のビデオを見せられた。
 ……なんつっても30年前だから、音声はなし。カラーもずいぶん色あせている。わたしは幼稚園児くらい、弟は直立歩行する動物状態。
 母は笑えるくらい太ってるし、父は貧相。祖父母は人相悪し。

 映像が残っているのはいいけど、いっさい整理してないんだよね。
 当時のテープは3分しか録画できず、3分に1回映像が途切れ、そのたびにまた別のテープをつないであるんだけど、つなぎ方がめちゃくちゃなの。時代も季節もとびまくり。
 テープは劣化する一方だから、デジタル化したいんだけど、このめちゃくちゃなままじゃ、どうしようもないよ。
 どうして「撮影年月日」と「場所」をメモしてないの?

「大体わかるじゃない。桜が咲いているなら、春よ」
「いつの春よ? 30年前? 31年前?」
「年齢でわかるじゃない」
「じゃあこのテープのわたしは、4才? 5才?」
「場所でわかるわ。ほら、この遊園地、ファミリーランドよね?」
「ぜんぜんちがう」

 話にならない。
 わたしは、DVD化するならちゃんと年代順に整理したいのよ。
 それを話しているのに、年寄りどもときたら、たんに「昔の映像」に大喜び。20年前でも30年前でも、まったく気にならないみたい。
 ただ「過去」がうれしくてしょうがないのね。

 我が家には、映像財産が山ほどあるのよー。昔から、ビデオカメラ大好きだったんだもん。
 しかし、それらのほとんどが未整理(日にちすら書いてない)ってのは、どうよ。
 現代のビデオカメラ時代になるまで、日付機能はなかったわけだからねえ。

 それにしても、わたしはつくづく、ぶさいくな子どもだったなあ。

 
 今日は花組新人公演。

 てゆーか、WHITEちゃんと4日連続デート。それでも話題が尽きないのがすごいね。閉店で追い出されるまで某レストランで喋ってた。……どーせ帰りの電車も同じ、家も近所なのに。
 はっ。のろけかしら、これ(笑)。

          ☆

 そのかーっ、そのかラ〜ヴ!!

 今回の新公は、それに尽きます、わたし的に。
 もー、すてきなの、そのかくん。
 忠輝よりも主水よりもいろは姫よりも、いちばん「美形」だったんですけど、そのか。

 そのかの役は、「徳川家康」です。

 もーっ、家康が、白髪のじじいが、そんなに美しくていいのっ?!
 その切れ長の瞳はなんなの? うきゃーっ。

 ……あくまでも、個人的な感想なんで、ツッコミはナシでお願いします。賛同意見のみ募集(笑)。

 今回の新公は、おやぢ役の人々が、若すぎました。
 みんな、顔にシワひとつ描いてない。きれーなまま。少女マンガの老人みたい。ヒロインと同じ顔で、目の下にシワが1本描いてあるだけのおばーさん、みたいな感じ。つるつるすべすべのお顔で、老人や中年をやってるのさ。
 そのかの家康は美しくて個人的にはウケたけど、真の役者ならばその美しい顔を汚すぐらいせんかい、とも思う。
 もちろん、彼はプロローグとフィナーレで「若衆A」をやっているので、顔を汚すことなど不可能なのですが。

 そのかの若衆がねー、もー、きれーでねー。
 ゆみこが本役の位置で踊ってるのよ。目を疑ったわ。えっ、家康なのに若衆A?! 組内3番手の位置?! 家康なのに?!(こだわっている)
 眼福眼福。いいもん見ました。

 というかわたし、今までそのかっちを「美形」だと思ったことがなかったのよ。
 フェロモン男だし、いい男だと思っていたけど、顔が美しいとは思ってなかったのよね。よくも悪くもおやぢ顔だなあ(笑)、と。恰幅もいいし、このままケロ系のやんらしい味の出せる、おいしいおやぢに育って欲しいもんだと。

 ああなのに。
 今日はじめて彼を、「美形」だと思いました。
 家康なのに!!(こだわる)

 主役ふたりがアイドル系かわいこちゃんじゃん。なにも似たタイプにW主演の新公をさせなくていいのにさ。
 本役はトド様と寿美礼ちゃんの持ち味のちがいが全面に出ているからパッと見もたのしいけど、新公はふたりとも瞳きらきらの美少年だよ。あー、ジャニ系Wときたもんだ……の横で、切れ長の瞳がきらり、の、そのかだよ。
 かわいこちゃんに興味のないわたしは、見事にそのかにオチました……オペラグラスは彼専用(笑)。や、もともとそのかファンだけど。

 主役はみわっち。
 がんばって切れ長のメイクしてました(笑)。トド様風? でもやっぱりかわいい。
 なんというか、若くて軽い忠輝だった。トドが重すぎるってこともあるだろうけど、それにしても軽いなあ。

 みつるくんは……歌だ。なんといっても歌だ。寿美礼ちゃんが恋しかった。そっか、難しい歌だったんだな。そーでないと、ここまで歌えないなんてこと、ないよな? てくらい、ものすごい歌声だった。
 しょっぱなの、みわっちとのアカペラ・デュエットの破壊力ってば……(笑)。
 あー……トド様と寿美礼ちゃんの歌が聴きたい……。
 いちばんよかったのは、自害シーン。そこにたどりつくまでは、けっこう大変だったような。

 まっつには発見ナシ。期待通りというか。
 眼力がまだまだだなあ、と思う。
 ところでわたし、まっつは顔が好きなのね。宙組の右京くんと同じ、群舞の端にいても顔だけで「あっ、好みの子発見」と贔屓リストに入れた子なの。
 今回彼は、鉄砲隊としても出てるんだけど、わたしの席からは顔がほとんど見えなかった。で、前もって役を調べたりしていないので、誰が演じているのかもわかっていない。
 なのに、「あの鉄砲隊の子。好みの顔だわっ、あとでチェックしなきゃ!」と思ったのよ……プログラム見て笑ったわ。なんだ、まっつじゃん。鼻しかろくに見えなかったのに、それでも好みだと思ったのか、わたし(笑)。

 さて、一度個別認識したが最後、どこにいても目に入ってしまう、個性的な顔立ちの理世ちゃん。本公演でも目についてしょーがないのに、新公ともなればなおのこと。……モブキャラに向かない子だわ(笑)。
 理世ちゃん演じる豊臣秀頼、すまん、本役より好みだ。ゆみこちゃんも好きだけど、理世ちゃんの秀頼の方が好き。
 なんというか、すげーさわやかに「少年」だったぞ。秀頼っていうよりも、「沖田総司」のイメージだった。
 透明感あふれる美少年であるだけに、その運命が痛々しいというか。
 忠輝が若くて軽いのが悔やまれる。トド忠輝とからんでくれたら、わたし、萌えてたかも……。

 あすかちゃんは、華やかだなあ。
 最初の登場のとき、赤い衣装なんだよね。それを見て思ったの。赤が似合うなあ、と。ヒロインなんだな、この子、と再確認した。それが、本役さんには感じられないトコロだわ……。
 でも、顔がな……。真っ白けでこわかった……。
 顔さえアップで見なければ、あとは完璧に「お姫様」だったわ。声も演技も。

 それにしても、やっぱり新人公演って、つらいね。
 役者が力不足だと、作品の不出来がモロにわかる。
 雪の『春麗の…』も新公を見て「もう本公演に行きたくない」って思ったんだったわ。宙の『ベルばら』も、新公を見てしまったから「二度と観たくないっ、こんなもん観たらわたしの感性が廃れる」と思っちゃったんだ。
 新公はいいのよ。がんばっている若い人たちを見るのは好き。生徒たちを悪く言ってるわけじゃないのよ。
 ただ、作品のこわれっぷりに、我慢ができなくなるのよー。

 今回も、「これをあと2回も観るのか……」と、うんざりしてしまった。
 かねすきさん、わたし、24日は安い席でいいです。たとえかねすきさんと殿さんが1階S席で観ていても、わたしは2階B席で観るよ。トド様も寿美礼ちゃんも大好きだけど、彼らの熱演は観たいけど、作品にうんざり。

 と、言いつつも、それでも劇場に通うのだから、オタクってやつはよ(泣笑)。

 
 ひょっとしてコレ、夢オチかなあ?
 最後はおデブでおっかない奥さんが出てきて、「アンタ、なにぼーっとしてんのよ、さっさと掃除してよっ」とか怒鳴りつけて終わるんじゃ……?

 と、途中から危惧してしまいました。

 『ソラリス』。
 監督・脚本スティーヴン・ソダーバーグ、出演ジョージ・クルーニー、ナターシャ・マケルホーン。

 惑星ソラリスを探査中の宇宙ステーションでトラブル発生。なにが起こったのか、当局はお手上げ状態。そこでジョージ・クルーニーが調査に送り込まれた。
 ステーションでは、とんでもないことが起こっていた。クルーは何人も死んでるし、生きてる人たちもなんか変だし……。説明不要、クルーニーも異変を経験することになった。死んだはずの妻、ナターシャ・マケルホーンが現れたのだ。
 どうやら、惑星ソラリスの力で、「記憶」の中にある人の姿が「本物そのままの姿」で再生されるらしい。ナターシャに未練タラタラのクルーニーは、ニセモノと知りつつも……。

 えーと。
 なんか、想像していたのとはまったくちがう映画でした。つーか……周り、寝てる人けっこーいたような。たしかに、寝るかも……。

 予告編とかテレビCMとか見ると、壮大で派手なスペオペ系に見えるんだけど、実際はお茶の間系でした。4畳半でOKっていうか。
 小さな宇宙ステーションの中だけで、話は完結。1幕ものの舞台みたい。お金、かかってなさそう。

 SFのふりをしていますが、SFでなくてもいい話でした。
 愛と過ちと後悔の物語。
 ベタ惚れだった妻を、自分の過失(と本人は思っている)で死なせてしまった男が、その愛の傷から立ち直れずにうだうだやっていたところ、幽霊だか宇宙人だかわからないけど妻がもう一度現れた。まさかのラストチャンス、トライアゲイン?!
 てな話。
 惑星ソラリスでなくても、幽霊でも麻薬でも、天使が出てきても、このテの話は作られるよね。
 だから途中から、話はSFというより観念の世界へGO! ……SFを見るつもりで来ていた人は、そりゃ寝るわ……。
 まあ、SFが観念の世界へ入ってしまうのは、小説ではありがちなので「うわっ、こうきたか」ぐらいの気持ちで見ていましたが。

 観念の世界へ入り過ぎて、凡人のわたしは蚊帳の外。ほけーっと眺めておりました。
 そして、夢オチもアリかなあ、とか、チガウこと考えてたよ……。
 美しい妻との情熱的な恋愛も、悲劇の別れも、そしてソラリスでの再会も、みんなみんな、クルーニーの妄想だったら愉快だなあ、って。現実の彼はさえない3流サラリーマンで、ぶさいくでおっかない奥さんに尻に敷かれていて……と。
 実際は、最後まできれーに突っ走って終わったけど。きれーすぎて、わたし的には「それだけかい」だったわ。

          ☆

 昼間は大阪歴史博物館に行ってました。『ソラリス』より、こっちの方がおもしろかったよ。

 父が行きたがったので、家族みんなでおつきあい。……つーかうちの家族、歴史系のイベントは大好きなんだ。
 障害者手帳があれば本人と付き添いひとりが無料。父は先日の入院以後、障害者認定を受けているので、無料……のはずが。
「手帳の交付は、来月からなんだ」
 ええっ、そうなの? ……まあ、退院してすぐ、遊び歩く方が変だよなあ、父よ。

 入場料は600円。
 値段分はたのしめる場所だったわ、博物館。
 弟は2回目だと言っていたが「1回だけじゃ、とても全部は見られない」とのこと。……まったくもってその通りだった。

 平成時代に建てられたとは思えない、超バブリーな造り。一見の価値ありだ。

「最初の映像がすごいぞ。とにかく、笑える」
 と、弟。
 なにが笑えるんだろう、と思いつつ順路に従う。

 ……ほんとに、笑えたよ。

 「難波宮大極殿」の大スクリーンの映像。NHKが全面協力したんだろーな、と思わせる壮大すぎるCG映像と、もったいつけた演出!!
 クライマックスでは、吹き出してしまった。
 ここまでやるか。……ここまでやるのか!
 考えた人、えらい。
 ベッタベタの感動がそこに。

 単純なうちの母なんか、素直に感動していたよ。
 わたしや弟は、感動する前に爆笑してたけどな。

 このベタさは、見習いたいわ。

 歴史が好きで、大阪に興味がある人はGO。
 全館あげて「大阪万歳」の姿勢を貫いていて、すげー愉快。
 歴史的価値はほとんどないが(模造品ばかりの陳列)、金のかけ方はハンパぢゃない。金さえあれば、重要文化財や国宝がなくても博物館は運営可能なんだってことを体現してくれているよ。……せちがらい話だ(笑)。

 1回では完全に見ることができなかったので、是非もう一度行きたい。

 
 ツッコミどころ満載。雪組バウホール公演『アメリカン・パイ』。

 幕間の休憩にて、わたしとWHITEちゃんが口にしたのは、壮くんのことでした(笑)。

「あれってさあ、かっこいいの?」
「かっこいいんじゃない? つーか、めちゃかっこよかったじゃない」
「たしかにかっこいいんだけど……」

 何故でしょう。
 かっこいー黒髪ロン毛の壮くんが出てくるたびに「くすっ」と笑えるのです。
 なんでだろーね?

 たぶん彼が、不自然にかっこいいからでしょう。
 かっこいい意味もないし、役的に重要でもない。つーか、いてもいなくてもいい。なのに、出てくるたびに「これでもかッ」とかっこいい。
 そのギャップが、脱力系の笑いを誘うのね。
 さてそれは、出演者の問題なのか? 演出の問題なのか?
 

 けっこー、とほほな作品でした。

 わたしは原作を知らないし、あらすじすら読んでません。いつものよーに、予備知識ナシ。2番手が誰かも知らなかったさ。ポスターに写真が載ってないから。

 真っ白な状態で見はじめて、思ったこと。

 暗転うぜぇ。
 芝居くさい。
 センス悪。

 ……1幕って、ものすごーく場面転換多くない? ちょっと台詞があって、すぐ暗転。セットが作り替えられるごとごとという音が響く。
 テレビじゃないんだから、場面転換が多いと観ている方は疲れるよ。ほんとーに必要なシーンなのか?

 舞台は現代。正確にはちと昔だと思う。西ドイツがあるころ。マイアミで売れないロックバンドをやっているカシゲは、ひとりの少女を拾う。薄汚い少年、に見えるくらいのかまわない姿をした少女、シナちゃん。彼女は不治の病だった……。

 多少郷愁を誘うとはいえ、あくまでも「現代」だよね、これ。
 だから、みょーな芝居臭さが気になった。
 カシゲがいちばんそうなんだけど、「今、芝居してます!」っていう、大袈裟な演技なの。2500席ある大劇場で、いちばん後ろの席の顔が見えない人からも、ゼスチャーでなにをしているかわかりますよ、てな、大きな大きな演技。
 あの、ここ、バウホールなんですが。500席しかないんですが。
 なんでそんな、TPOをわきまえない演技なの? なんでそんな、もったいつけた大袈裟な演技なの?
 ふつーにやればいいのに。
 みんなみんな、「今、芝居してます!」と芝居しまくり。
 同じバウでも、時代ものならそれでいいと思うのね。コスチュームものなら。
 でもコレ、現代でしょ? 現代の人が、そんな喋り方するのって、気持ち悪いっす。

 反応にこまったのは、服のセンスの悪さ。
 えーと、これは原作がそうなんですか? 原作では、これとまったく同じ服装してるの? ほら、マンガがアニメ化されたときに、「なんじゃこれは」とびっくりすることがあるからね。マンガに色はついてないけど、アニメにはついてるから。「世界」に色がついた途端、センスのちがいにおどろくことがある、ってこと。だから今回も、原作まんまだけど、色にするときにまちがえたのかしら、とか?
 ……それにしても、服のセンス、ひどいよ。
 少し前のマイアミのロッカーたちは、あんなんなんですか? もし史実に忠実だとしても、それを舞台で再現する意味はどのへんにあるんですか?

 変な格好をした人たちが、みょーに芝居っけたっぷりの臭い演技をし、ちょろっと喋ったかと思うとすぐ暗転、ちょろっと喋ったかと思うとすぐ暗転……の繰り返し。
 こ、こまった。
 なんかひさしぶりに、基本的にレベルの低いモノを観たかも。

 谷も植田も石田もその他いろいろも、基本レベルまでは問われないよなあ……と、しみじみしたりして。

 「わたしならこうする」「わたしなら、こうはしない」がてんこ盛りで、じれったい作品でした。

 せめて。
 わたしなら、服をなんとかするよ。
 史実も原作も、とりあえず置いておく。今「舞台で」美しく見えるようにする。
 統一感を持たせ、「現代だけど、どこかファンタジー」って感じにするよ。
 そして、演技を変える。
 変にわざとらしくしないで、もっとさらりと現代ぽくする。ふつうにする。ねっとりすれば泣けるってもんでもないよ。さばさばした演技だからこそ、「ここぞ!」ってときに熱を込めて、泣かせるんだ。
 

 物語の構成は、ツッコミどころありすぎて、語れないわ。部分修正どころじゃない、1から全部作り直したくなるので、語れない(笑)。
 わたしが原作を知らないからかしらね。
 でも、知らないからこそ、純粋にこの舞台を観て、作り直したくなるのよ。あくまでも「この物語」を。

 いやあ、わたし、『SLAPSTICK』大好きなんだけどねえ。新公でも、小柳演出好きなんだけど。
 今回は、大ハズシでしょう。いっそ気持ちいいくらいに大失敗してる気がするんですが。

 
 カシゲはきれい。ほんとにきれい。
 だから、「きれいじゃない」設定だということに、最後の方まで気づかなかった。
 繰り返し「モテない」と言われていたけど、友人同士はわざと相手を低く言ったりするから、それかなと思ってた。
 だってきれいなんだもの。きれいじゃない役だなんて、わかんなかったよ。
 過剰な演技がいちばん気になった。もっとふつーに喋れよ、と思った。
 彼が若くてかっこよくてきれいだから、女の子を拾うのはどうかと思っちゃったし。男の子と半同棲してるみたいだし、なんかあちこち首を傾げてしまった。
 そうか、もっと年が上で、きれーでもかっこよくもない男の設定なのね。それなら男の子を父性ゆえに家に入り浸らせていても性犯罪の臭いはないし、やせっぽちの女の子を拾っても変質的な臭いはないか。
 設定とカシゲの姿が相容れなくて、混乱した。
 タカラヅカだからきれいでいいんだけど、「実際にきれいだけど、ほんとはきれいじゃない設定」だって、もっとわからせてくれてもいいんじゃあ?
 わたしとWHITEちゃんは最後まで、わかんないままだったよ。

 とはいえ、彼は熱演でした。

「オヤジのカシゲがみたかったな」
「違和感なくオヤジになれるしね。髪が後退してる……」

 カシゲに関しては、かなり欲求不満だ。……あ、いつもか。
 がんばれかっしー、負けるなかっしー。いつもわたしは、そう思い続けている……。
 

 シナちゃんはかわいかった。ほんとに小さい。うらやましい……わたしがあれくらいの体型だったら……はっ、本音が。
 声が透明感に満ちていて、とてもきれいだった。昔、歌を聴いてびっくりした記憶があるだけに、どんどんうまくなっているのがすごい。
 ただ、顔は小さいのにアタマが大きいのが気になった。カツラのせい?

 
 壮いっぽくんは、ますますタカコそっくり(笑)。いろんな意味で、一回り小さなタカコ。
 全員が妙にくどい演技をしているから、意味もなくかっこいい彼のくどさが、笑える。
 それにしても、いてもいなくてもいい役か……。今上昇気流に乗っている彼をこんな使い方するなんて、もったいない。

 
 いづるんはお医者さん役。いづるんが、眼鏡でスーツの医者!!
 ナァァァイス!! これだけは、ナイス・キャスティング!! ついでに白衣も着せてくださいよ。
 いづるんには役不足だとは思うんだけどね。悪趣味な服装のロッカーたちとちがって、スーツだったからうれしい。
 いづるんが眼鏡の医者……(妄想中)。

 
 全体的に、男役がまるまるしててつらかったなあ。
 みんなジーンズとかだから、「男役」のカラダや立ち居振る舞いができあがっていないと、見ているだけでもキツイんだよね。
 みんな、「女の子」のまま舞台に立っていた。き、きつい……。
 

 ほんとにまあ、いろーんな意味で大変な舞台だ。
 ろくにミュージカルにもなってないし(名もなき少年少女たちが、意味もなく出てきて踊るシーンが何度もある。どうやらこれが「ミュージカル」らしい)。
 カシゲとシナちゃんのふたり芝居で十分な脚本だったね。

          ☆

 水くんバウのポスターが貼ってあった。
 か、かっこいい……。
 しかもひとり写りだよ。
 今まで、ひとり写りポスターになった人って、みんなトップスターになったよねえ?


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