とゆーことで、なにがあるかわからない昨今、「花組東宝千秋楽」と「月組全国ツアー初日」が同日だったため、月組初日の方はあきらめ、翌日にしました。
 周囲に月組ファン皆無なため、話題にものぼらないっすが、ひとりでチケ取りし、ひとりで行って来ました、『あかねさす紫の花』『レ・ビジュー・ブリアン』梅芸楽。

 『あかねさす』をナマで観るのは、雪組以来です。
 花組の『あかねさす』は、博多だから観てないのだわ……寿美礼サマの中大兄を見たくてぐるぐるしたけど、結局あきらめたんだった。当時のわたしに、博多はものすげー遠いところだったのよ。今思えば、有間皇子@まっつを見るために行っておけばよかった、と後悔しきりですが。あのはかなさを見れば、まっつオチする日が早まったかもしれん(笑)。
 月組のは中日だったから観てません。梅田でやってくれたら、1回くらいは観ていたと思う。ゆーひくんが出ていればどこへでも行くけど、出てなかったんでスルー。きりやんの中大兄も見たかったなぁ。

 『あかねさす』を観るのは、実に10年振り。

 やっぱ、好きだ。

 この三角関係には、ぞくぞくするわー。
 やっぱ時代のせいなのか、最初物語の流れの悪さ、テンポの悪さに辟易したんだけど、中大兄が横恋慕はじめるあたりから「きゃーきゃー♪」な気持ちに(笑)。

 物語としては、大海人が主役であるべきだと思う。能力はあるが善良であるがゆえにおだやかに生きている男が、大切なモノを奪われ牙を剥き出すに至るまでの過程。……とゆーのが萌えですなっ。
 そしてこの三角関係を魅力的にするには、横恋慕する中大兄が、主役?と思えるくらい魅力的であることが必須。
 観ている観客が中大兄と大海人、ふたりの男の間でよろめいてしまうくらい、ふたりとも魅力的でなきゃね。
 額田に感情移入して、ふたりの男、ふたつの愛の狭間で心乱され戸惑い苦しむのがツボ。乙女ゲーの感覚、女の夢ですわよ。
 だからこそ、ほんとのとここの物語は額田主役であるべきだと思う。タカラヅカだから、そうできないという建前だけど、額田視点、大海人寄りってのがいちばん正しい姿だと思うよ。

 つーことで、プロローグでまず大海人のモノローグがあるのは、どっちの男が、ヒロインのダーリンか最初にを示すことになるので、正しい。
 ふたりとも魅力的、であるわけだから、最初に観客に教えてもらわなきゃこまるのよ、観る上での心構えとして。どっちの男が設定上のダーリンかわかったうえで、心を安定させて観なくちゃだわ。それがルールってもん。
 たとえ、そのあと出てくる男がどんなに魅力的でも、「物語」としての主役がどちらか、まず表明しておかなければ。
 「物語」の主役はこっちの男なんだわ、でももうひとりの男の方が好き!! とまで思わせてこそ「物語」の力になる。

 『生徒諸君!』の岩崎と沖田とかさ。
 岩崎がナッキーと最終的にくっつくダーリンであることは、読者みんなわかってるけど、それでも沖田が大人気! とかゆーのと同じ。
 岩崎と沖田の人気が拮抗して(いや、沖田人気の方がすごかったが)いるからこそ、マンガ自体の人気もヒートアップしていったよな。
 この「沖田」ポジションの男キャラが成功すると、少女マンガは成功するよな。

 『あかねさす』がおもしろいのは、男ふたりの魅力が拮抗することにある、と思う。
 あくまでも主役は「夫にしたいタイプ」「やさしい安全パイ」大海人で、それに対する「愛人にしたいタイプ」「強引で危険な男」中大兄をスパイスにするから、物語が引き締まる。
 大海人は「主役」としてのおいしさを、中大兄は「2番手」だからできるおいしさを持つ役。

 この作品を演じるには、力の拮抗したトップと2番手が必要だ。
 大海人と中大兄に、あまりにも格差があったり並びが悪かったりすると、設定が映えなくなる。

 だもんで、今回のあさゆひによる再演は、願ったり叶ったり。なにかにつけてあさゆひで客を釣ろうとする劇団の思惑にのってしまうよーで複雑だが、おいしくいただいておきます。

 95年に雪組で再演されたとき、主役の大海人はトップのいっちゃんで、中大兄と天比古は2番手のタカネくんと、3番手のトドロキの役替わりだった。
 先にトップと2番手が拮抗していなければ、と書いたが。
 ある意味中大兄は「ある程度の男役スキルのある人ならできる役」なんだよね。だから、2番手がやろうと3番手がやろうと、路線スターとしての華と実力があり、大海人個人のハマり具合や彼との映りがよければなんとかなる。拮抗、と言える範囲でな。
 ただ、天比古はそうはいかなくてなー。
 雪組でのベストキャスティングは、わたし的には大海人@いっちゃん、中大兄@トド、天比古@タカネくんだった。
 トドロキは中大兄はできても、天比古はできなかったんだよ……。冷酷な美形、は演じられても、人間くさい弱さのある役、はできなかった。どーにも嘘くさかったよ、あの人の慟哭シーン。
 難しい役だったんだ、天比古。
 その天比古と通じるもののある役、大海人もまた、中大兄以上に難しい役だと思う。
 当時のタカネくんは大海人も演じられたろうけど、トドロキは大海人を演じるだけの力はなかったろう。

 てなことも踏まえて、大海人こそが主役で、トップスターが演じるべきなんだと思うよ。難しいからこそ、演じる意義のある役だからさ。
 中大兄は「オイシイ」役。「2番手はオイシイ」と言われるのと同義語。
 その、「役」としてのオイシさで嵩上げされた「魅力」でいい、大海人と中大兄は「拮抗」してくれなきゃいかんのだ、物語的に!!

 
 いやあ、たのしかったっすよ、あさゆひ『あかねさす』。大海人@あさこ、中大兄@ゆーひ。
 ゆーひくん、合ってるよね、ああいう役。

 トドのときも思ったんだけど、中大兄に人間性なんかいらないわ、わたしは。
 実はいい人だとか、苦悩しているだとか、そーゆーハンパなもんはいらない。
 ひたすら傲慢で、強引で、計算高くて、冷酷な王者であってヨシ。
 それでもなお、惹かれてしまうてのが萌えだ。

 本能として、あると思うんだ。
 やさしい夫と平凡に幸福に暮らしている、なんの不満もない毎日。でも。
 強引で傲慢なめーっちゃハンサムな外国の大富豪が現れて、無理矢理さらわれてしまったら……ての。
 そりゃ泣くし傷つくし、夫や家族を思ってつらい想いをするだろーけど。
 富も名誉もあるハンサムに「君を愛している」と熱烈に迫られ、命ギリギリ愛を見せつけられたら、そりゃときめくわさ。
 ラヴロマンスの定番ストーリーですわな。

 平凡を愛しているつもりだったけれど、ほんとうのわたしは、激しい恋を求めていたんだ!! と、ハンサムな彼と恋の逃避行で終わってもいいし、激しい求愛によろめきもしたけれど「本当に愛しているのは夫」というオチにたどりついてもいい。
 なにしろ定番だから。

 ただ、『あかねさす』は「本当に愛しているのは夫」というオチだからこそ、横恋慕強引男は、「冷酷」である方が萌える。
 クールな美形、なに考えてんのかいまいちわかんねー。……という方が、よりどきどきするんだ。
 ホットで人間的なタカネくんの中大兄より、冷酷で機械的だったトドの中大兄にときめいたように。

 つーことで、ゆひ中大兄、人間性乏しそうなとこが、実にツボです(笑)。

 いいわー、あのなに考えてんのかわかんないとこ!!

 中大兄の腹の中が見えにくい分、大海人の人間らしさが際立っていて、いいコントラストだ。
 こういう「拮抗」ぶりは好みです。

 ゆひさんの中大兄は、実にいいんだけど。
 ……ゆひさん、万葉モノの化粧もカツラも、似合わねー(笑)。
 総髪にしてくれると、ほっとするわ〜〜。


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