やるせない、痛みに満ちた物語。

 なんの気負いもなく、いつものよーに2階の隅っこに坐った。
 駐車場に並んだ観光バスの多さにびっくり、団体客の多さにびっくり、客席の埋まり具合にびっくり。行楽シーズンって、源氏物語って、こんなにすごいの? ヘタな海外ミュージカルより団体客入ってるんですけど?
 学生さんやらお揃いのお弁当の袋を膝に置いた年輩の方々やら、どうか芝居は静かに観劇して下さいよと心の中で祈る。ショーなら多少騒いでもいいからさー。(団体さんのショーでの歓声は初々しくて好きだ)

 初日でもなんでもない、ふつーの平日。
 わたしは初日好きでいつも初日はハズさず観劇しているのだけど、トド様DS×2を取ったために、月組初日はあきらめた。いやその、星全ツとか合唱のレッスンとかいろんなものが同じ週に重なってね……いくらわたしでも遊んでばかりいられないわ。(つか、働けよナマケモノ……)

 初日でなかったら、あとはいつ行っても同じ。新公までに観られればいいわ。DSのおかげで、超絶びんぼー、観劇回数減らすって決めたんだもん。月組は1回だけよ、1回だけ。

 で。

 オープニングから、号泣。

 大野せんせの『夢の浮橋』

 まだ主役出てきてません!な状態で、ツボ直撃で大泣きする。

 てゆーか、光源氏@萬ケイ様、素敵すぎ。

 老いてなお美しい光源氏、愛ゆえに壊れてしまったかなしいひと。
 罪に汚れた大人と、無垢な子どもたち……そして、罪の、烙印。

 油断していたから、ハンカチの用意もない(笑)。
 プロローグだよ? はじまって数分だよ? 主役もまだ出てないんだよ? ここで大泣きするって、誰が思うよ?!(逆ギレ)

 しょっぱなからダメージでかすぎて、息も絶え絶え。
 しばしぼーーーーっと舞台を眺める。

 正気に戻ったのは、匂宮@あさこが、愛人ズに囲まれてわいわいやってるあたり。(遅っ)
 あー、さすが大野くん、「大きいわあ、大物よお♪」とか「宮様モテモテ♪」とか、そんな歌詞にはなんないんだー、なんてことに感心する。

 よーやくアタマがまともに働き出したので、ちょっと待て、きりやんどうした? と、焦る。なんかきりやんをぜんぜん見てない気がするんだけど? わたし、見落としてた?!
 や、出てないから、見落としてたわけじゃないから、落ち着け(笑)。

 そうやってせっかく冷静に観られるようになってきたっていうのに、その薫@きりやんが登場したあたりから、また、泣き通しになる。

 うああぁぁん、ナニこれぇ。

 痛い。
 ものすごく、痛い物語だ。

 やるせない、せつない、かなしい。

 再度登場する萬ケイ様にまた、号泣。
 ハンカチ握りしめての観劇に。

 最後の最後まで、緊張して、心臓ばくばくして、泣きっぱなしで、幕が下りたときは、消耗しきっていた。

 オギーが去り、こんな「痛い」ものは、タカラヅカで観ることはないと思ってた。
 油断してたよ……。そうだ、大野くんがいたんだ。

 わたしには、まだ大野くんがいるんだ。

 なんつーんですか、厚い雨雲が切れ、隙間から黄金の光が射してきたよーなキモチでした。
 祝福の天使が2~3匹、わたしの頭の上を回っていたかもしれません。

 や、大野くんはオギーじゃないので、代わりとかそーゆーんじゃなく、オギーに求めていたわたし自身のツボを、補うカラーを大野くんも持っている作家なんだということを、再確認したの。

 オギーより、芸風がホモ系っつーか腐女子向きなのも、愉快だしな(笑)。大野せんせ、ヲタクだもんなー(いろんな意味で)。

 
 とにかく、よくぞ萬ケイ様に、光源氏を配役してくれました。
 萬ケイ様だけで、ごはん3杯イケます。
 夕霧@ソルーナさんとかも、もーくるくる回りたいくらい、ツボです。

 匂宮@あさこちゃんの美しさ、浮舟@しずくちゃんもハマってる。小宰相の君@あいちゃんも好きだー。

 ただ、薫@きりやんは最初、どうかと思ったんだが……なんつーか、精彩に欠けて見えて、首を傾げた。その、薫登場から泣きスイッチ入ったんだが(笑)、それとはべつに、薫の演技ってあれでいいのか?と。
 しかし、次に観劇したときはんなこたぁーどーでもよくなってたねっ。てゆーか、薫はアレでいいのだー。

 ええ、「次」って。
 お金がないから、マジでびんぼーだから、月組は1回だけって決めてたのにぃーーっ。

 芝居が終わった瞬間、「あたしコレ、もっぺん観る。絶対絶対観るー!!」って悶えてた(笑)。

 もー、すごい好き。
 大好き。

 ツボ語りは欄を改めて、じっくりと。
 うおー、観たいし書きたいし、今年いちばんのヒットだわ、わたし的に。1年の最後にすごいの来ちゃったなあ。いいなあ、月組さん。(他組をうらやましがる癖はやめなさい)
 
 
 あ、ショーの『Apasionado!!』も、たのしかった。
 冒頭の「小林幸子」では、毎回団体さんの歓声がすごかった(笑)。つか、いつ行っても団体さんだらけだ。バスが10台とか平日に停まってるの、久しく見ない光景だよー。
 芝居が終わったとき、「この作品、団体さん向きじゃなさすぎるだろう」と嘆息したので、ショーがわかりやすいキャッチーさにあふれていて、ほっとした。

 さすがフジイくん、いい仕事してるなあ。

 あ、まさか『血と砂』が出てくるとは思わなかった。
 チェリさん、みっぽーがドンニャ役やってますよー(私信・笑)。

 中詰めのオカマ・ショーも愉快痛快。

 どっかの赤熱海で見た、「子どもの名前はペドロがいい……」を再度見ることになるとは思わずひとしきりウケ、まさきのやる気っぷりと、野獣あさこのかわいさにきゃーきゃー。ナニあの「きょとん」とみりおを見る顔!! 可愛すぎる。

 とまあ、とてもたのしかったのは、たしかなんだが。

 でもなんか、落ち着きが悪いというか、ヅカを観ている気が薄くなるっていうか……OSKを観ている気がした。わたしがはじめて観たOSK公演は、トップ娘役がふたりいたんだよね。たぶん、そのせい。
 「娘役トップスターがいない」と、こんなに落ち着かない、しっくりこないもんなんだ、とはじめて知った。

 最後の大階段前のあさこちゃんのダンスシーンなんか、どこのサヨナラショーかと……。てゆーか長い……長すぎるだろアレ……。
 
 ショーはともかくとして、芝居見たさにリピート決定っす。立ち見が出てくれるから、貧乏人にも通いやすいしなっ。人気公演ばんざい。わくわくっ。

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