彼よりも、彼の周りが。@ブエノスアイレスの風
2008年11月22日 タカラヅカ 敗北がかなしいが、気を取り直して『ブエノスアイレスの風』キャスト感想。
ニコラス@れおんは大人になったなあと思う。ショーヴランが素敵だった記憶があるだけに、無意識に底上げされているかもしれないが、ゆっくり地道に力をつけている。
しかし、正塚芝居に合わないんだろうか。
たんに正塚芝居をしているときに、わたしと合わないんだろうか。
『愛するには短すぎる』のときのフランク役で「結局ナニをしたかったのかわからないキャラだ」と思った、あのときから変わっていない気がする。
そのときそのときはちゃんと動いているし、イイ声で男臭く、かっこいい野郎なんだけども。
全体として俯瞰したとき、ふと我に返ると「……で?」になってしまうというか。
正塚作品以外ではそんなことは感じないので、鬼門はココだけだと思う。
さて、ある意味愉快なリカルド@和。
街の不良少年が成人してちんぴらになった、という、正しい成長ぶりの男の子。……え? そーゆー役だよね?
一昔前の暴走族とか、不良グループって、すごくいろいろ「掟」があったりするんだよね。
チームを抜けるときは制裁を受ける、とかさ。
自分に自信がなくて、ひとりではいられないので、とにかく群れる。でも、自分も他人も信じられないから、「掟」で縛る。
暴力によって、恐怖によって、はじめて安心するの。ひとりじゃないって。アイツはオレを裏切らないって。
「敵」の存在もそう。
「敵」を作ることで、「味方」でいられる。闘うべき「敵」がいるから、結束し、「仲間」でいられる。ひとりじゃなくなる。
ひとりでは、いられない。
こわくてこわくて、仕方がない。
暴力でも掟でも、メールでも掲示板でもなんでもいいから、誰かとつながっていないと、不安で生きていられない。
えーと、そーゆー男の子だよね、リカルドくんって?
だから、暴走族で同じような格好して「オレたちは仲間だ、裏切りはゆるさねぇ」とか言って、敵チームとか警察とか大人とかと闘っているときは、イキイキしていられたんだよね?
でももう未成年じゃないし、仲間たちはみんな大人になって就職して、「ゾク? ハタチ過ぎてまでやるこっちゃないっしょ(笑)」って言われて、がーーんってなるのね?
仲間さえいれば、居場所を見つけられた。仲間であるためには、集う理由が、闘う理由が必要だった。だから敵を脳内設定していた。いつもいつも、見えない敵と戦い続けた。敵さえいれば、「仲間」が在る、はずだったから。
闘う理由もないのに闘おうとして、その戦いの資金のために銀行襲撃を考えて、銀行襲撃する武器を手に入れるため、妹を犠牲にして。
欲しかったのは、居場所。生きる意味。存在価値。
いわゆる中二病。
……というキャラクタは、大変愉快です。
あまりにバカでかわいい。はた迷惑で、人生ナメきってるとことかデコピンしたくて仕方がない。
不細工ならゆるせんが、なにしろ絶世の美形なので、すべて許せる(笑)。人生なんてそんなもん。
てゆーかさ、こんだけ美貌があって、どうして自己肯定できないのか。妹という自分の分身以外をなにも持っていないと思い込むのか。
その屈折ぶりを思うと、興味深いです。
誰か、身内以外の人が教えてあげるべきだったんだよ。「キミは自分に価値を見つけられないかもしれないけど、客観的に見てその美貌には価値が生じるよ」と。
人格とか才能とかは置いておいて(笑)、とにかくわかりやすいところで、「美貌」。
わかりやすいとこでないと、お馬鹿なリコくんは理解できないでしょ? まず、美貌を認めて、あとはそっから自分探しするがヨシ。
しかし、彼の周りには妹しかいなかったんだよなあ。妹は彼の一部分だから、ナニ言っても意味ないし。
ニコラスが言えば…………あああ、あの男はそんなこと死んでも言わねえ。てゆーか、男の顔の美醜なんか、絶対区別ついてねえ(笑)。
まあ、ともかく。
リカルドは興味深いです。
つか、和くんでなんか、ややこしい役とか、じっくり見てみたいなー。
イサベラ@ねねちゃんは、やっぱ「華」なんだなと。
ヒロインがちっとも特別扱いされない正塚芝居において、自力で輝かなければならないところを、ちゃんと「わたしはヒロインよ」と華やかさで自己発信してるんだもの。
単独ヒロインではないのかもしれないが、とにかくヒロイン級の役だとわかる。華美な衣装やファンファーレ、ライトがなくても。
長身に小顔、長い手足とまあ、シンプルなドレス姿が、栄える栄える。
ダンスがうまいかどうかより、彼女単体の美しさで説得力になる。
イサベラの抱え込んだ人生の重みは、脚本には多少描かれていたと思うし、彼女の自宅の場面などその場のインパクトはあるんだけど……なんだろう、それによって彼女がどう生きているのかは、あまり伝わってこなかったような。
キャラクタがよくわかったというか、うまい!と思ったのは、エバ@まりもちゃん。
彼女はちゃんと脚本通りの演技をしていると思う。耳から入る情報と、目の前の光景に齟齬がなかった。
たしかに7年前は大学生で、今は社会人だわ。
となると、他のキャラクタとのバランスがおかしくなる……こまった。
エバがほんとに地に足つけて自分の人生を生きている、等身大の女の子だったので……すまん、27歳くらい?だと、わたしからすりゃ「女の子」だ、つきあっている男がアレでいいのかと首をひねったよ。
ニコラスはいいの。
エバと対峙していると、違和感はあるんだけど、まあそんなこともあるかな、元法科のインテリ学生革命家だったのかな、と想像できないこともない。
ただ、ビセンテ@ベニーがなー……。
なにしろキャリアがない(路線として扱ってもらって来ていない)ため、技術が乏しいことはわかっていたが、本気でやばかった(笑)。
正塚芝居は新公がひどいことになる、というお手本のように、役というか、立ち居振る舞い着こなしから、全部に手こずっていた模様。
元軍人で現刑事には、見えない。てゆーか、大人に見えない。
いっそエバの家庭教師時代の生徒、とかゆー設定だったらよかったのに。今24歳くらいで、今年よーやく憧れの刑事になりました!みたいな。元軍人設定はナシで、戦争で家族亡くしたからゲリラを憎んでる、とかでいいじゃん。
設定とベニーがまったく合ってないので、エバがなんでこんな男にプロポーズされていろいろ思い悩むのかわからん……。
とまあ、辛口ではあるが。
ここまでなんにもできてないのに、ベニーは、負けていない。
できていないことを本人わかっているのかいないのか、自由に舞台の上にいるよね(笑)。
動くときに、まず心を動かそうとしているのがわかる。……技術が足りてないから空回りしているけど、彼が「なにかしよう」と思ってソコにいることは、わかるの。
やっぱおもしろいなあ、ベニー。
この子に技術がつけば、どんなに愉快なスターになるだろう。今後がたのしみだー。
ニコラス@れおんは大人になったなあと思う。ショーヴランが素敵だった記憶があるだけに、無意識に底上げされているかもしれないが、ゆっくり地道に力をつけている。
しかし、正塚芝居に合わないんだろうか。
たんに正塚芝居をしているときに、わたしと合わないんだろうか。
『愛するには短すぎる』のときのフランク役で「結局ナニをしたかったのかわからないキャラだ」と思った、あのときから変わっていない気がする。
そのときそのときはちゃんと動いているし、イイ声で男臭く、かっこいい野郎なんだけども。
全体として俯瞰したとき、ふと我に返ると「……で?」になってしまうというか。
正塚作品以外ではそんなことは感じないので、鬼門はココだけだと思う。
さて、ある意味愉快なリカルド@和。
街の不良少年が成人してちんぴらになった、という、正しい成長ぶりの男の子。……え? そーゆー役だよね?
一昔前の暴走族とか、不良グループって、すごくいろいろ「掟」があったりするんだよね。
チームを抜けるときは制裁を受ける、とかさ。
自分に自信がなくて、ひとりではいられないので、とにかく群れる。でも、自分も他人も信じられないから、「掟」で縛る。
暴力によって、恐怖によって、はじめて安心するの。ひとりじゃないって。アイツはオレを裏切らないって。
「敵」の存在もそう。
「敵」を作ることで、「味方」でいられる。闘うべき「敵」がいるから、結束し、「仲間」でいられる。ひとりじゃなくなる。
ひとりでは、いられない。
こわくてこわくて、仕方がない。
暴力でも掟でも、メールでも掲示板でもなんでもいいから、誰かとつながっていないと、不安で生きていられない。
えーと、そーゆー男の子だよね、リカルドくんって?
だから、暴走族で同じような格好して「オレたちは仲間だ、裏切りはゆるさねぇ」とか言って、敵チームとか警察とか大人とかと闘っているときは、イキイキしていられたんだよね?
でももう未成年じゃないし、仲間たちはみんな大人になって就職して、「ゾク? ハタチ過ぎてまでやるこっちゃないっしょ(笑)」って言われて、がーーんってなるのね?
仲間さえいれば、居場所を見つけられた。仲間であるためには、集う理由が、闘う理由が必要だった。だから敵を脳内設定していた。いつもいつも、見えない敵と戦い続けた。敵さえいれば、「仲間」が在る、はずだったから。
闘う理由もないのに闘おうとして、その戦いの資金のために銀行襲撃を考えて、銀行襲撃する武器を手に入れるため、妹を犠牲にして。
欲しかったのは、居場所。生きる意味。存在価値。
いわゆる中二病。
……というキャラクタは、大変愉快です。
あまりにバカでかわいい。はた迷惑で、人生ナメきってるとことかデコピンしたくて仕方がない。
不細工ならゆるせんが、なにしろ絶世の美形なので、すべて許せる(笑)。人生なんてそんなもん。
てゆーかさ、こんだけ美貌があって、どうして自己肯定できないのか。妹という自分の分身以外をなにも持っていないと思い込むのか。
その屈折ぶりを思うと、興味深いです。
誰か、身内以外の人が教えてあげるべきだったんだよ。「キミは自分に価値を見つけられないかもしれないけど、客観的に見てその美貌には価値が生じるよ」と。
人格とか才能とかは置いておいて(笑)、とにかくわかりやすいところで、「美貌」。
わかりやすいとこでないと、お馬鹿なリコくんは理解できないでしょ? まず、美貌を認めて、あとはそっから自分探しするがヨシ。
しかし、彼の周りには妹しかいなかったんだよなあ。妹は彼の一部分だから、ナニ言っても意味ないし。
ニコラスが言えば…………あああ、あの男はそんなこと死んでも言わねえ。てゆーか、男の顔の美醜なんか、絶対区別ついてねえ(笑)。
まあ、ともかく。
リカルドは興味深いです。
つか、和くんでなんか、ややこしい役とか、じっくり見てみたいなー。
イサベラ@ねねちゃんは、やっぱ「華」なんだなと。
ヒロインがちっとも特別扱いされない正塚芝居において、自力で輝かなければならないところを、ちゃんと「わたしはヒロインよ」と華やかさで自己発信してるんだもの。
単独ヒロインではないのかもしれないが、とにかくヒロイン級の役だとわかる。華美な衣装やファンファーレ、ライトがなくても。
長身に小顔、長い手足とまあ、シンプルなドレス姿が、栄える栄える。
ダンスがうまいかどうかより、彼女単体の美しさで説得力になる。
イサベラの抱え込んだ人生の重みは、脚本には多少描かれていたと思うし、彼女の自宅の場面などその場のインパクトはあるんだけど……なんだろう、それによって彼女がどう生きているのかは、あまり伝わってこなかったような。
キャラクタがよくわかったというか、うまい!と思ったのは、エバ@まりもちゃん。
彼女はちゃんと脚本通りの演技をしていると思う。耳から入る情報と、目の前の光景に齟齬がなかった。
たしかに7年前は大学生で、今は社会人だわ。
となると、他のキャラクタとのバランスがおかしくなる……こまった。
エバがほんとに地に足つけて自分の人生を生きている、等身大の女の子だったので……すまん、27歳くらい?だと、わたしからすりゃ「女の子」だ、つきあっている男がアレでいいのかと首をひねったよ。
ニコラスはいいの。
エバと対峙していると、違和感はあるんだけど、まあそんなこともあるかな、元法科のインテリ学生革命家だったのかな、と想像できないこともない。
ただ、ビセンテ@ベニーがなー……。
なにしろキャリアがない(路線として扱ってもらって来ていない)ため、技術が乏しいことはわかっていたが、本気でやばかった(笑)。
正塚芝居は新公がひどいことになる、というお手本のように、役というか、立ち居振る舞い着こなしから、全部に手こずっていた模様。
元軍人で現刑事には、見えない。てゆーか、大人に見えない。
いっそエバの家庭教師時代の生徒、とかゆー設定だったらよかったのに。今24歳くらいで、今年よーやく憧れの刑事になりました!みたいな。元軍人設定はナシで、戦争で家族亡くしたからゲリラを憎んでる、とかでいいじゃん。
設定とベニーがまったく合ってないので、エバがなんでこんな男にプロポーズされていろいろ思い悩むのかわからん……。
とまあ、辛口ではあるが。
ここまでなんにもできてないのに、ベニーは、負けていない。
できていないことを本人わかっているのかいないのか、自由に舞台の上にいるよね(笑)。
動くときに、まず心を動かそうとしているのがわかる。……技術が足りてないから空回りしているけど、彼が「なにかしよう」と思ってソコにいることは、わかるの。
やっぱおもしろいなあ、ベニー。
この子に技術がつけば、どんなに愉快なスターになるだろう。今後がたのしみだー。