ロジェと女性たち。@ロジェ
2010年7月4日 タカラヅカ 『ロジェ』にて、地味におどろいたのが、杏奈ちゃんだ。
美貌だけれど芝居は壊滅、わたしはその卓越した個性と破壊力に敬意を持って、ルーシーちゃんと呼んでいる、彼女。なんでルーシーかは何度も語ったので割愛。
そのルーシーちゃんが、たくさん喋ってる。
この役の少ない、主要人物以外台詞のない極端な芝居で、よりによってルーシーちゃんがたくさん喋っている。脇役の台詞量を円グラフにしたら、ルーシーちゃんがすごい割合を占めているんじゃないかってくらい、喋っている。
……何故……っ?!
いやその、最初は「すごい、ルーシーちゃんなんか芝居がうまくなってる! 変じゃないわ」と思ったんだけど、なにしろ台詞が多いもんで、どんどんいつもの棒読みになっていって、最後はいつものルーシーちゃんに(笑)。
あああ、変わってなかった……最初の方はかなりお稽古つけてもらってたんだわ……でも台詞が長いから保たなかったんだ……。
そこはもう、期待を裏切らないルーシーちゃんに拍手!ってなもんなんだけど、よりによって何故彼女がこんな長台詞の役を? 大人の女が必要なら、ゆめみ姉さんでいいじゃんよー。
で、ブエノスアイレスの通行人が杏奈ちゃんで良くね?
見た目は完璧なんだけどなあ、杏奈ちゃん。真面目でヒステリックなエリート官僚、美貌が映えてかっこいい。……喋るといつものルーシーちゃん(笑)。
女性キャラの出番が少ない……以前に、女いなくても良くね?な芝居。
そんななか、ナニ気にモニーク@きゃびぃが美味しいなと。
……ええ、思い出すのはやはり『銀の狼』。あんときもきゃびぃ、いい役だったなと。正塚好みの娘役なのかな。
きゃぴぃなあ、いい女になったよなあ。喪服の揃えた膝、落ち着いた喋り方、が、みょーにツボった。哀しみを堪え平静に話す姿に、知性を感じる。
クリスティーヌ@圭子女史もまた、品のあるマダムで。正塚だから歌はなく、役としてわずか2場面に出るだけなんだけど、彼女の落ち着きと覚悟のキメ方が格好良く、娘のモニークとふたりして、「親子」だってことがよくわかる。
いい家庭だったんだな。
この奥さんと、この娘だよ。思慮深く謙虚で、そして潔い。
このふたりを、守りたかったんだよな、ゲルハルト@にわさん……。
レア@みなこちゃんの次に比重の高い女性キャラは、マリア@みみちゃんになるのかな。
……あの程度の出番で、次、になる、正塚せんせ女性キャラに興味なさ過ぎ。
かわいくて深刻系の、リアルな芝居。
メイド役のあゆちゃんがぽーんと浮かんでいるのと対照的。
『マリポーサの花』のとき、素敵に棒読みテイストだったけど、あれはそーゆー演技だったのか、それともそこからうまくなったのか。
や、『マリポサ』以降のバウヒロとか、ふつーにうまいと思って見ていたけれど。同じ演出家の作品で、鮮明さがぜんぜんチガウから。
年若いきれいな女の子が、一途に慕っているからこそ、シュミット@ヲヅキの格も上がるよなと。
キャラクタの価値を決めるのは地位でも財産でもなく、何行にも渡る台詞や華美な衣装(植爺価値)でもなく、「愛の在処」だよなあ。
多くを語らなくても、真摯に生きている人から愛情と尊敬を抱かれている、その事実だけでキャラクタの格は上がる。
「先生を撃たないで」もいいけれど、実はその後の「急患だから」と設備の整った病院の手配に爆走していくところが好き(笑)。
さて、主人公ロジェひとりの物語である、この公演。
出会う女性たちもみんな、彼の復讐の近辺にいる人たちなんだよね。
復讐以外考えられないロジェは、それ以外のところでは誰にも出会っていないようだ。
元ナチスSSのゲルハルト。顔を変え、ナチス時代のカネで実業家として成功、悠々自適の生活を送り、武器の密輸なんかもやっている悪人。
戦犯組織を追うインターポールの刑事ロジェの憎むべき敵のひとり。
……なんだけど、ゲルハルトの死後、妻子に対しみょーに優しい。
家族の仇を追うロジェは、それに関係している戦犯組織をすげー情熱で調べている。彼が家族を失ったのも戦争の混乱ゆえ、ナチス大嫌い!ってことか。
端から見るとその情熱がいびつで、友人の刑事リオン@キムは「ユダヤ人でもないのに、そこまでナチス狩りに燃えるなんて?」と首を傾げる。
だからゲルハルトの死後、喪服姿で事情を語るクリスティーヌとモニークの話をじっと聞いているロジェがこわかった。
クリスとモニークに罪はない、でも戦犯組織を悪と情熱を持って憎んでいるロジェだから、死んだからといって元ナチス将校のゲルハルトを悼むキモチなんかないだろう、その妻子に対しても優しい気持ちは持てないだろう。
尋問をリオンに任せて沈黙しているロジェのキモチを想像しては、暗い気持ちになっていたんだが。
ロジェはゲルハルトに、なんの興味もなかった。
拍子抜けするくらい。
舞台の最初から、すげー勢いでゲルハルトを追いつめる話をしていたのに。
ゲルハルトが憎むべき戦犯だとか、その罪で得た私財ゆえに妻子はのうのうと暮らしていたんだとか、そんなことはまるっと忘れている。
仇であるシュミットの情報だけが大切で、あとはどーでもいー。だからクリスとモニークにも、「突然夫・父を亡くした気の毒な女性たち」として接する。「君たちが幸せに生きることが、亡くなったお父さんの望みだよ」なんて言っちゃう。ヲイヲイ、憎んでいた戦犯の望みだの幸せだのを叶えてどうするよ?
ロジェは戦犯組織を追っているけれど、ほんとのところどーでもいいんだよね。
シュミットがナチス関連の男だからナチスを憎んでいるだけで、もしシュミットが麻薬密売マフィア関連の男だったりしたら、麻薬だのマフィアだのを憎んでたんじゃね? で、ほんとのとこ、麻薬もマフィアもどーでもいい。シュミットにしか興味はない。
それまでさんざん戦犯組織を悪として情熱を持って追っておきながら、シュミットの情報を得られた途端、態度ががらりと変わる。「戦犯? ナチス? なにソレ?」
正直、キモチワルイです(笑)。
クリスとモニークに、優しい態度で接するロジェが。今までの彼の言動からすれば、彼女たちに罪はないことがわかっていても、個人的な憎しみやこだわりが捨てきれずに垣間見えることになるだろーに。
どーでもいいと思っているから、いきなり優しくなるなんて、すげー嫌な優しさだ。
まあそれこそが、ロジェが24年前から成長してないゆえのゆがみなんだろうけど。
唯一女の子に優しくしている場面がキモチワルイなんて、ひどいわ、演出家(笑)。
美貌だけれど芝居は壊滅、わたしはその卓越した個性と破壊力に敬意を持って、ルーシーちゃんと呼んでいる、彼女。なんでルーシーかは何度も語ったので割愛。
そのルーシーちゃんが、たくさん喋ってる。
この役の少ない、主要人物以外台詞のない極端な芝居で、よりによってルーシーちゃんがたくさん喋っている。脇役の台詞量を円グラフにしたら、ルーシーちゃんがすごい割合を占めているんじゃないかってくらい、喋っている。
……何故……っ?!
いやその、最初は「すごい、ルーシーちゃんなんか芝居がうまくなってる! 変じゃないわ」と思ったんだけど、なにしろ台詞が多いもんで、どんどんいつもの棒読みになっていって、最後はいつものルーシーちゃんに(笑)。
あああ、変わってなかった……最初の方はかなりお稽古つけてもらってたんだわ……でも台詞が長いから保たなかったんだ……。
そこはもう、期待を裏切らないルーシーちゃんに拍手!ってなもんなんだけど、よりによって何故彼女がこんな長台詞の役を? 大人の女が必要なら、ゆめみ姉さんでいいじゃんよー。
で、ブエノスアイレスの通行人が杏奈ちゃんで良くね?
見た目は完璧なんだけどなあ、杏奈ちゃん。真面目でヒステリックなエリート官僚、美貌が映えてかっこいい。……喋るといつものルーシーちゃん(笑)。
女性キャラの出番が少ない……以前に、女いなくても良くね?な芝居。
そんななか、ナニ気にモニーク@きゃびぃが美味しいなと。
……ええ、思い出すのはやはり『銀の狼』。あんときもきゃびぃ、いい役だったなと。正塚好みの娘役なのかな。
きゃぴぃなあ、いい女になったよなあ。喪服の揃えた膝、落ち着いた喋り方、が、みょーにツボった。哀しみを堪え平静に話す姿に、知性を感じる。
クリスティーヌ@圭子女史もまた、品のあるマダムで。正塚だから歌はなく、役としてわずか2場面に出るだけなんだけど、彼女の落ち着きと覚悟のキメ方が格好良く、娘のモニークとふたりして、「親子」だってことがよくわかる。
いい家庭だったんだな。
この奥さんと、この娘だよ。思慮深く謙虚で、そして潔い。
このふたりを、守りたかったんだよな、ゲルハルト@にわさん……。
レア@みなこちゃんの次に比重の高い女性キャラは、マリア@みみちゃんになるのかな。
……あの程度の出番で、次、になる、正塚せんせ女性キャラに興味なさ過ぎ。
かわいくて深刻系の、リアルな芝居。
メイド役のあゆちゃんがぽーんと浮かんでいるのと対照的。
『マリポーサの花』のとき、素敵に棒読みテイストだったけど、あれはそーゆー演技だったのか、それともそこからうまくなったのか。
や、『マリポサ』以降のバウヒロとか、ふつーにうまいと思って見ていたけれど。同じ演出家の作品で、鮮明さがぜんぜんチガウから。
年若いきれいな女の子が、一途に慕っているからこそ、シュミット@ヲヅキの格も上がるよなと。
キャラクタの価値を決めるのは地位でも財産でもなく、何行にも渡る台詞や華美な衣装(植爺価値)でもなく、「愛の在処」だよなあ。
多くを語らなくても、真摯に生きている人から愛情と尊敬を抱かれている、その事実だけでキャラクタの格は上がる。
「先生を撃たないで」もいいけれど、実はその後の「急患だから」と設備の整った病院の手配に爆走していくところが好き(笑)。
さて、主人公ロジェひとりの物語である、この公演。
出会う女性たちもみんな、彼の復讐の近辺にいる人たちなんだよね。
復讐以外考えられないロジェは、それ以外のところでは誰にも出会っていないようだ。
元ナチスSSのゲルハルト。顔を変え、ナチス時代のカネで実業家として成功、悠々自適の生活を送り、武器の密輸なんかもやっている悪人。
戦犯組織を追うインターポールの刑事ロジェの憎むべき敵のひとり。
……なんだけど、ゲルハルトの死後、妻子に対しみょーに優しい。
家族の仇を追うロジェは、それに関係している戦犯組織をすげー情熱で調べている。彼が家族を失ったのも戦争の混乱ゆえ、ナチス大嫌い!ってことか。
端から見るとその情熱がいびつで、友人の刑事リオン@キムは「ユダヤ人でもないのに、そこまでナチス狩りに燃えるなんて?」と首を傾げる。
だからゲルハルトの死後、喪服姿で事情を語るクリスティーヌとモニークの話をじっと聞いているロジェがこわかった。
クリスとモニークに罪はない、でも戦犯組織を悪と情熱を持って憎んでいるロジェだから、死んだからといって元ナチス将校のゲルハルトを悼むキモチなんかないだろう、その妻子に対しても優しい気持ちは持てないだろう。
尋問をリオンに任せて沈黙しているロジェのキモチを想像しては、暗い気持ちになっていたんだが。
ロジェはゲルハルトに、なんの興味もなかった。
拍子抜けするくらい。
舞台の最初から、すげー勢いでゲルハルトを追いつめる話をしていたのに。
ゲルハルトが憎むべき戦犯だとか、その罪で得た私財ゆえに妻子はのうのうと暮らしていたんだとか、そんなことはまるっと忘れている。
仇であるシュミットの情報だけが大切で、あとはどーでもいー。だからクリスとモニークにも、「突然夫・父を亡くした気の毒な女性たち」として接する。「君たちが幸せに生きることが、亡くなったお父さんの望みだよ」なんて言っちゃう。ヲイヲイ、憎んでいた戦犯の望みだの幸せだのを叶えてどうするよ?
ロジェは戦犯組織を追っているけれど、ほんとのところどーでもいいんだよね。
シュミットがナチス関連の男だからナチスを憎んでいるだけで、もしシュミットが麻薬密売マフィア関連の男だったりしたら、麻薬だのマフィアだのを憎んでたんじゃね? で、ほんとのとこ、麻薬もマフィアもどーでもいい。シュミットにしか興味はない。
それまでさんざん戦犯組織を悪として情熱を持って追っておきながら、シュミットの情報を得られた途端、態度ががらりと変わる。「戦犯? ナチス? なにソレ?」
正直、キモチワルイです(笑)。
クリスとモニークに、優しい態度で接するロジェが。今までの彼の言動からすれば、彼女たちに罪はないことがわかっていても、個人的な憎しみやこだわりが捨てきれずに垣間見えることになるだろーに。
どーでもいいと思っているから、いきなり優しくなるなんて、すげー嫌な優しさだ。
まあそれこそが、ロジェが24年前から成長してないゆえのゆがみなんだろうけど。
唯一女の子に優しくしている場面がキモチワルイなんて、ひどいわ、演出家(笑)。