『ロジェ』にて、ロジェ@水に絡むのが何故レア@みなこであるかの、勝手な考察。
 絡む、としか表記できないような、恋愛以前の微妙な関係なのは、なんなのか。
 

 ロジェは24年前から、成長していない。
 30過ぎてなお、幼い少年のメンタリティしか持たない。

 家族を殺された、それゆえに犯人シュミット@ヲヅキへの復讐以外は考えられない。

 ……ので。
 自分の狭い視野でしか、幼い思考でしか、モノを見られない、人を見られない。

 戦犯組織を追う調査員のレアに、勝手にシンパシーを感じて自分の事情を話す。
 レアがユダヤ人だから、迫害を受けた両親の復讐のために差別を受ける自分自身のために、元ナチスの連中を追っているのだと、決めつけている。

 たしかにレアも「感情は否定しない」と言った。
 彼女が危険なエージェントをやっているのは、ユダヤ人だからだろう。そうでなければ、若い女の子がナチスに興味を持ち、命懸けで闘ったりしないだろう。

 でもレアは、復讐者ではないんだ。

 組織に身を投じたきっかけが、自分がユダヤ人であり、迫害を受けた両親の心の傷を見て育ったことであったとしても、それは復讐心からではない。
 傷ついた人を目の当たりにして、傷つけた人間が逃げのびて「なにもなかったこと」にしている、この現状を「変だ」と言って、なにもなかったことにしないために逃げた者たちを追っているだけで。
 そこに感情はあるだろうけれど、それだけじゃない。
 彼女は私怨を義憤へ昇華している。

 「復讐」という言葉を使わないレアに、ロジェは簡単に「復讐か」と言い切る。決めつける。
 
 この、決めつけるロジェがなあ。
 すごくなさけないというか狭量というか、子どもなんだよなあ。

 オマエと一緒にするな。思わずツッコミ入れたくなる(笑)。

 現にロジェは自分の復讐しか興味がなく、ネタさえ仕入れたらあとは戦犯組織なんかどーでもよくなっている。戦犯組織を追うことを使命としているレアからすりゃ、「私の仕事を愚弄しないで」てなもんだと思うが。
 レアが人生と命を懸けて追っている戦犯組織を「どーでもいい」としておいて、レアに「復讐者同士のシンパシー」を感じるってのは、ひどい無神経さだ。相手が大切にしているモノを尊重できず、自分の大切なモノだけを押し付けるってのは。

 それでもレアには、ロジェを完全に否定はできないんだろう。「復讐か」と言われて否定しないように、義憤に昇華しているとはいえ、そこに私怨がないとは言い切れないから、潔白でない以上否定もできない。
 だからこそ、ロジェに惹かれるのかもな。と、思ったり。

 ロジェのいびつさは、レアにとって「ダークサイドに落ちた自分自身」じゃないか?
 こうはなりたくない、と思っている、間違った姿。自分も一歩間違ったら、ああなっていたかもしれない姿。
 自分の中にもあるだろう、ゆがんだ心。
 ダークサイド、こうはなりたくない……てのは、ある意味魅力があるもので。しかもそれが、めっちゃ男前で自分好みの男性だったりしたら、そりゃ惹かれるわなあ(笑)。
 
 レアがロジェに惹かれたのは、なにはともあれ絶対ビジュアルゆえだと思う(笑)。
 だってロジェ、すっげーハンサムだもん、いい男だもん。どんな鉄の女だってまずアンテナ立つって。
 んで、好みのいい男の前ではちょっとオシャレしてみたり、好感度アップな仕草や声色をしてみたり、なんつーんだ、女子の本能がまず動く。
 そしたら向こうは、似たような境遇を抱えていて。なんかシンパシー感じてくれてるようで。
 これって運命?! ……とよろこんでみたものの、実はそのいい男、とんでもないガキんちょだった、と。
 思っていたような大人のいい男ではなかったけれど、一旦好意を持ったあとでは引くに引けないし。思っていたのとちがっても、キライにはなれないし。

 子どもなだけで、根は善人。
 興味のない相手には優しくなれるように、ニュートラルな状態では善良。デフォルトいい人。
 ただそこに自分の利害が絡むと、自分優先になってしまうのは、子どもだから。社会ルールは後天的におぼえる知識、誰も彼に大人になるための教育をしなかった。自分と家族しかいない世界で生きるロジェは、対人関係を築けない。
 それでまあ、あんなことに。

 復讐に走るロジェは、レアにとって無視できない、放っておけない男だったろう。彼が美男子でなく恋愛対象でなくても、とりあえず、自身のダークサイドであれば、気になったろう。
 一歩間違えれば、嫌悪の対象かもな。「見たくない」「否定したい」モノを見せつける相手だから。
 でも幸か不幸かロジェは美男子で、どっちに振れてもおかしくない針は恋愛へ傾いた。

 ロジェとレアはひとつの事象の裏と表。だから対で描かれるのはわかる。
 そして、それゆえに恋(レア側のみ)がはじまるのも。

 ただ、問題は。

 この対での描かれ方だと、ロジェがかっこよくないです。

 狭い視野で復讐の虜になっている者と、広い視野で世界貢献している者。
 同じ傷を持ちながら、この対比では前者に分が悪い。

 あのー、正塚せんせ。
 ロジェとレア、逆にしても良かったんじゃ?
 狭量に復讐に囚われているレアに出会い、彼女の心を開かせようとするロジェ。同じ傷を持つからこそ、彼女の病みっぶりがわかるし、また痛々しくて、手を差し伸べずにいられない……そして、ロジェの昇華したはずの復讐心、心の奥の闇も動きだし、それとも葛藤する……てな。

 それならもちろん、レアが仇を殺せないのは、ロジェと出会い、彼を愛したから、ってことになる。復讐という檻から、ロジェによって解き放たれたから。
 って、ふーに、物語を展開させることが出来る。

 今のままの、24年前から成長していない子どものロジェ、を主人公にするなら、彼と対比するレアという存在は、出さない方が良かったんじゃあ……。
 きちんと傷を受け止めて、「大人」になったレアがいるんじゃ、「子ども」のままのロジェがなさけない……。

 レアがロジェに惹かれる気持ちはわかるけれど、今のロジェではレアを本当に理解することはできないね。
 だから、恋愛に発展しなかった。

 ほんとに、なんでヒロインがレアなんだろう? 分析しても、レアがヒロイン……主人公の恋愛相手となり得ないぞっと(笑)。
 わざとそうしているのか、気づかずにやってしまったのか。
 ハリーに聞いてみたいっす(笑)。

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