「もうヒロインはシュミットってことでいいよ」

 と、わたしが言うと、kineさんは冷静に言った。

「え、バシュレじゃないんですか」

 いやーっ、バシュレはいやーっ。

「でも、ロジェはバシュレの命のために復讐をあきらめるんだよね」

 まやさんヒロインはナシっ。どんだけロジェが愛しているのがバシュレただひとりであったとしても! 
 ヒロインはヲヅキでっ!!

 
 『ロジェ』の主人公ロジェが24年間追い求めていた、「あの顔は忘れない」相手ですよ。シュミットさんは今あんだけ枯れたハンサムなわけだし、若い頃もきっと二枚目だったんですよ。
 べつにシュミットがハンサムだからどうってわけじゃないが、見た目はいいに越したことないし。
 で、24年間ずーーっと思い続けてきて。
 いざ再会してみれば、悪魔のような男、ではなくて、ものすげーまともにいい人で。
 しかも、ずーっとずーっと苦しんできていて。……ロジェの家族のこと以前にナチスの戦犯なんじゃん、収容所勤務の軍医ってふつーにエリート軍人だったんじゃん、そっちのことはいいのかよ、てなことはまあ、置いておいて。

 彼は忘れていなかった。
 ロジェに対して犯した罪を。

 これでシュミットが忘れていたら、ロジェの片思い。
 だけど、シュミットもまた苦しんでいた。24年間、ずっと。

 ロジェの苦しみを共有できるのは、世界でただひとり、シュミットだけじゃね?

 もちろん、意味合いはチガウんだけど。
 でもあの不幸な事件で傷つき、24年間苦しみ続けてきた、その闇の深さだけは同じ。

 気づいちゃったんじゃないの、ロジェ。「二度と顔を見せるな」と背を向けて。
 シュミットこそが、世界でただひとりのファム・ファタルだと。

 ここで殺せば、ロジェはひとりになる。同じ闇を持った者はいなくなる。リオン@キムは「全部はわからないけど、想像できる」と言う。もちろんそれでいいんだけど、同じ体験をしなければわかりあえないわけじゃない、同じじゃないからこそ人は愛し合い求め合うのだけれど、それでも。

 シュミットは、ロジェの鏡だ。

 贖罪から、弱い人たちを助け続けたシュミット、断罪から、悪い人たちを捕らえ続けたロジェ。
 ひとつの事象の、裏と表だ。

 レア@みなこちゃんもそうだけど、ここでもロジェと対になるキャラクタがいるんだな。
 同じ事件の傷、苦しみを起点に、向かい合うのがロジェとシュミット。
 

 ……それでもシュミットを殺すことが出来れば、完結はしたんだと思う。ロジェの長い長い復讐の旅は。
 だけど彼は撃てなかった。殺さなかった。

 両想いのまま、ふたりとも生き残っちゃったよ?(笑)

 ふたりの苦しみはイコールのまま、天秤が釣り合ったまま、生き残ってしまった。
 しかも、だ。
 シュミット先生はあのままもぐりの医者を続けられるはずもなく、しかるべき機関の管理下に置かれるだろう。彼自身戦犯であるわけだが、最後に囚人の命を救ったわけだし、これから戦犯逃亡組織の情報源としての価値もあるだろうし、刑務所送りとゆーよりは、働かされそうじゃないですか、それなりのところで。
 それが贖罪になるというなら、彼はきっと誠意を込めて働くと思いますよ、みんなのために。

 で。
 ロジェはきっと、インターポールはやめてないと思う。
 続けるかどうかわからない、と言っていたけれど、もともと彼は善良で健康な真面目人間。そして、子ども。
 リオン相手に「血が騒ぐだろ」と言っていたように、もともと好きなんだよね、「正義の味方」。

 これからはくびきをはなれ、真っ向から悪人退治が出来る。
 そーなると、だ。
 戦犯組織を追っていた実績からして、これからもスキルを活かせる仕事をするわけだろ。

 シュミットと、顔合わせますよ、絶対。

 それこそ、組織から口封じに狙われるシュミットの護衛をすることになったりとか(笑)。
 ロジェの公私混同の暴走は報告されず(されてたら、罪に問われるだろう、あんなにさばさば旅立てないだろう)、「なかったこと」になっているなら余計に、シュミット係に任命されそうだ。ブエノスアイレスまで行って、彼を捕らえた功労者だもん。

 同じ苦しみをわかりあえる、24年間想い続けた相手と、一蓮托生、命預けます関係。
 いやあ、愉快ですな。
 
 つーことで、色気のなさ過ぎるレアとの関係や、愛の少ないリオンとの関係より、ヒロインはシュミットでええやん。ねえ?(笑)

日記内を検索