泣きっぱなしで、消耗した。

 星組梅田芸術劇場公演『ロミオとジュリエット』初日観劇。

 シェイクスピアの有名すぎる物語。
 反目し合う、モンタギュー家とキャピュレット家、敵同士の家に生まれながら、愛し合うロミオとジュリエット、その悲劇。

 物語は知っている。
 ちなみに、水くん主演の『ロミオとジュリエット’99』も観劇している。

 だが、その有名すぎる原作を元にした今回のミュージカル自体は、知らない。動画サイトでいくらでも鑑賞可能だそうだが、見ていない。芝居にしろ映画にしろ、小さな画面の映像で見るのは苦手だ。芝居は舞台で、映画は映画館で、実際に観るのでないと、わたしの少ないのーみそにはうまく入らないようなので。

 なんの予備知識もないまま、観る。
 だが、潤色・演出が小池先生なので、全幅の信頼を置いている。
 きっと美しく、スベクタルで、タカラヅカらしいモノになっているだろうと。

 実際、美しかった。
 モンタギュー家とキャピュレット家の争いを、歌とダンスで表現したオープニングから、その美しさ、格好良さに引き込まれた。
 まあその、いちばん最初に水トートが登場したことに、心底驚いたが(笑)。
 あれ、トート@『エリザベート』ぢゃなく、水トート(限定)だよね? わかっててやってるよね?! ……てのは、置いておいて。

 音楽、セット、衣装、ダンス、なにもかもカッコイイ。
 大公@水輝りょおの正しい使い方!

 危険な美青年たち、ティボルト@かなめ、ベンヴォーリオ@すずみん、マーキューシオ@ベニー。

 あまりにカッコイイから、忘れてた。

 彼らが10代の少年であり、これが子どもたちの物語であることを。

 ……そーだった。
 『ロミオとジュリエット』ってそもそも、そーゆー話だった。
 知っていたのに、わかっていなかった。
 若さゆえにあんなことになっちゃう話だった。

 タカラヅカって基本、大人が主人公だから。主要人物が30代とか、戦争とか不倫とか人妻とかがあったりまえに出てくる世界観。 
 もうすっかりソレで慣れきっていたから、中高生の子どもたちが主役の物語だってこと、わかっていたのにぴんと来ていなかった。

 ので、そのカッコイイ人々があまりにコドモであることに、驚く(笑)。
 彼らが言ってること、マジに中学生レベルなのよー。

 そ、そうか。そーゆー話だった。
 すずみさんまでもが、10代の少年なのでびびる。わかっていても、びびる(笑)。

 ロミオ@れおんくんはもお、きらっきらの美少年。
 純粋で天使のような男の子。
 「奥手のロミオ」「恋に恋してるのか」……聞いていて眩暈のするよーな単語が飛び交う。や、男子同士でナニそのじょしちゅうがくせえみたいな会話。

 ジュリエット@ねねちゃんがぴかぴかの美少女なのは違和感ないんだけど、男たちの「10代」ぶりはいろいろと……(笑)。

 でも、そーゆー世界観なんだとアタマに叩き込んで。アタマを切り換えて。
 実際目に映る彼らはみんな、美しい少年たちなのだから。

 美しいビジュアルと音楽に酔っていた、ただ、あるがまま。

 パリス@ミッキー最高だ(笑)、ジュリエット母@コロちゃん色っぺー、仮面舞踏会キターーッ! 女の子たちの衣装可愛すぎる!!(ハァハァ)
 どいちゃんのバトントワラー、うますぎる! すごすぎる! 物語の進行止める勢い、つか、みんな本筋観ないでどいちゃんに釘付けですよあの場面!(拍手でわかる、みんなどいちゃん見てた・笑)

 ところが、だ。
 恋に落ちたロミオとジュリエット、あの有名なバルコニーの場面。
 ああ何故アナタはロミオなの……形を変える不実な月に誓うなどおやめなさい、てなあの場面ですよ、教養のないわたしでもてきとーに台詞を並べられるような。

 あそこから、ダダ泣き。

 別に悲しいことなぞ、一切ありませんが。

 ジュリエットの乳母@れみちゃん、めちゃうまい。微妙に着ぶくれて、かつ巨乳を作ってコミカル演技。
 セット前でまるまるソロ1曲あるんだね。
 彼女のソロでも泣きっぱなし。

 1幕の最後、愛し合うふたりの結婚式、ここでも幕が下りるまで泣き通し。

 
 青春のきらめきが、愛しくて。
 ロミオとジュリエット、ふたりの恋が愛しくて。

 純粋さ、愛情、無償の想い、それってこんなに愛しいモノなのか。切ないモノなのか。
 ロミオとジュリエットもだし、彼らの恋を成就させようと力を振り絞る、乳母やロレンス神父@くみちょーにも、泣けて仕方なかった。

 うつくしいものを見た、それだけで、こんなに泣けるモノなのか。

 
 2幕はリセットして観ていたんだけど、やっぱり途中から泣きっぱなし(笑)。
 
 案の定やり過ぎちゃってるベニーの死にっぷりには別に泣けないんだが(笑)、ひとり残されるすずみさんの嘆きのソロには泣かされた。
 幼さに驚いた、中学生男子たち。仲良し幼なじみ3人組。なのに、ベンヴォーリオひとり、残されたんだね。失うのはつらいね、残されるのはつらすぎるね。

 誰もが愛ゆえに傷つく。
 娘を殴って、ついでに妻に愛されていなかったことまで暴露されて、ヘコんでるジュリエット父@ヒロさん、ロミオとジュリエットのために画策する神父、おそろしい計画のはずなのに、なんの躊躇もなくきらきらと実行するジュリエット。
 神父の手紙より先に、ジュリエットの死をわざわざロミオに伝えるベンヴォーリオ。
 ただ、愛ゆえに。

 たしかに、憎しみはあふれている。
 「生まれたときから敵がいた」と歌う少年たち、そんな状況がまかり通る狂気。
 それでも。

 憎しみは群衆芝居や歌とダンスのみで、物語部分にあるのは、結局は、「愛」。
 主要人物がなにかするのは全部全部、「愛」が動機なの。

 立場や考え方がチガウから、行き違ったり理解されなかったり、間違っていたりしても。
 でも間違いなく全員が「愛」ゆえに行動している。

 「憎しみ」を歌うところからはじまった物語、「憎しみ」を舞台にした物語、なのに、そこには、「愛」しかないの。

 間違っていようがどうしようが、誰もがただ「愛」しかないの。

 象徴的な存在、死@真風と愛@礼くんが踊るように。

 眠るジュリエットを、そうとは知らず後を追うために毒をあおるロミオ、死んだロミオを眠っているだけだと信じ、幸福の絶頂の歌を笑顔で歌うジュリエット。

 ほんとうに死んでしまったロミオとジュリエット、ロミオのアタマを抱くように愛しそうに触って、泣き崩れるベンヴォーリオ。
 ふたりを失ってはじめて、憎しみを捨て、手を取り合うモンタギュー家とキャピュレット家の人々。

 「愛」しかない人々は、ただもお美しくて、愛しくて、泣き続けた。
 愚かだけど純粋で、そのなかでもロミオとジュリエットは、とびきりの純粋さで、青春のきらめきに満ちていて。痛さに満ちていて。

 なんて美しく、愛しい物語だろう。

 わたしも泣きすぎかなー、と思ったが、隣の席の人(知らない人・笑)も同じ濃度で1幕からダダ泣きしていたので、そーゆー作品なんだなと思った(笑)。

 この作品、好き。
 愛しいから、好き。
 それだけ。

 それだけで、十分。

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