日々に追われる。
 記憶を残したくてあがく。

 はじまってしまった、だから近づいてくるのは終わりだけ。


 『インフィニティ』初日。

 なにもかもが、緊張していた。
 舞台上はもちろん、客席も。

 まっつは職人肌の舞台人で、かつ、自信家だと思う。
 自惚れゆえではなく、自分の腕一本に誇りを持つ頑固職人。
 また、それを隠さない。
「いいものを見せる」と、自ら言い切る。
 言ったからには、失敗は許されない。

 もちろんすべての舞台人が良い舞台を見せるために誠心誠意プレイしていることは、わかっている。それがプロとして当たり前だということも、わかっている。

 その上でなお、まっつはさらに職人肌っつーか、ストイックに逃げ場を自らなくす人だなと。

 はじめての主演。
 なのに上の学年の人は出演していない。はじめての長での公演でもある。そりゃ巴里祭はあったけどね。舞台も人数もステージ数もチガウ。
 はじめて尽くしでどれだけ精神的にも大変か、想像もつかない。
 しかし彼は下級生ではない。「はじめてなんです」が通る学年ではない。至らなさが、若さや初々しさで済まされる学年ではない。
 学年相応のものを、ポジション相応のものを、ベテランとしての能力を、要求される。……はじめてなのに。

 いろんな意味で、プレッシャーは半端なかったと思う。
 その緊張が、場に満ちていた。

 しかし。
 本人は、緊張している自分を示したくはないんだろう。
 いつものように、老練な姿を見せる。
 その、プライドってば。

 初日の歌声は、それほどよかったわけじゃない。
 固い。伸びがない。
 まっつ比で。
 とくにオープニング。
 ふつうにうまい。よく歌えている。でもでも、これ、まっつの本領じゃないよね? まだだよね?

 声はあとになるほど出るようになっていた。

 いちばん、「あ、ここで変わった」と思ったのは、2幕の、インドの場面。
 ええ、「マッツマハラジャ」ですよ(笑)。

 ここで観客が大喜びしたので。
 まっつの一挙手一投足に歓声が上がったので。

 あ、吹っ切れた。中の人。

 スイッチが入ったというか、図に乗ったというか(笑)。

 大役である、スペイン場面を終えていたことも大きいか。
 マタドールの苦悩を歌って踊る場面はまた、すげーぴりぴり緊張していたもの。
 力みまくった場面をやり遂げて、そのあとは発散場面、しかも観客が面白いほど自分の手のひらの上ときた。
 舞台人が、これでちょーしに乗らないわけがないっ。

「あそこでエンジンかかったねー」
「あのあとはアレだったねぇ」
「フィナーレとか別人だよねー」
 終演後に仲間たちと話した。
 クールで無表情っぽいまっつさんだけど、なかなかどーして人間味あふれる変化です。ド緊張してぴりぴりしまくってて、そのくせそれを見せまいと必死で、山場を乗り越えたあとにブチ切れて、あとはハイテンションでちょーしこいてるんですよ(笑)。なんて人間的で、かわいい人なんだ。

 出のギャラリーをしたけど、陽は暮れて真っ暗だし、「蛍の光」は流れ出すし、まっつナニ言ってんのか聞こえないし(笑)。
 「ありがとうございました」だけは聞こえたけど、他にナニ話してたんだろう、ぼそぼそと。
 向かいのコマくんは、挨拶以外の話もちゃんと聞こえたのに、まっつさんってば……。


 んで、翌日。
 やっぱ初日は緊張してたんだねえ。だって。

 オープニングから、歌声がチガウ。

 おおお。まっつの声が、聞こえだしてる。動き出してる。
 曲ごとの音色のちがいも、わかりやすくなってきた。まっつ、曲ごと、場面ごとに声も変えてるよね?
 これからもっと変わっていくんだ。深化していくんだ。
 楽しみで仕方がない。

 初日はわたしも緊張しすぎていて(笑)、幕間にしろ終演後にしろ、口を開くと「疲れた……疲れたよ……」しか言わなかった。ただ坐って聴いていただけのくせに、なんでそんなに疲れるんだっていう。
 あまりに緊張しすぎて、泣くことすら忘れていた。

 んで、2日目。

 何故だ、オープニングからだだ泣き。

 なにがどうじゃない。
 これで最初で最後だからだとか、まっつがセンターだとか立派になってとか、そんな感慨でもない。
 ただ胸が苦しい。涙がでる。

 わかんないから、そーゆーもんだと受け止めるしかない。

 あと、初日の夜にだーっと書き殴ったテキストが、けっこー間違いだらけだったと気づき、ショックを受ける(笑)。あたしの海馬ってほんとポンコツ……てゆーか記憶力なさ過ぎだ。

 えー、2日目に気づいたこと。
 フランスまっつ、帽子で顔半分隠れたまま真ん中で、前へ出した手から後ろへ振り返って移動する瞬間(ひどい説明)、悲しそうだった。切なそうだった。キュン死するかと思った。←

 イタリア、ゴンドリエーレ@コマにコナかけまっつ。
 ちゅっとキスの真似っぽい唇の動きをした上で、指でコマつんの顎のあたりをちょん。
 コマ、色男まっつに心を奪われる(笑)。固まったままふらり、と倒れかけた。
 ……ちょ、お前ら……(笑)。

 前日に「NOW ON STAGE」を見て、ひとりでえんえんまっつに熱い胸の内を語るコマに「どんだけまっつスキーやねん!」と突っ込んだところだったこともあり、ツボりまくった。
 コマがひとりで喋りすぎたせいで、他の子のまっつへの言葉が聞けなくなったんじゃあ? 司会者さんは「みなさんは」って言ったよね? コマに代表してひとりで語れとは言ってないよね? なのにコマひとりが語りすぎて、他の子の時間がなくなったのか、コマonlyで終わっちゃったよヲイ! と、突っ込んだ(笑)。
 んで、次の質問をするとき司会者さんが「ひとりずつ」と前振りしたのに、さらにウケた。ひとりで喋りすぎるなって牽制か?

 ドイツ、あゆっちにすがるまっつ、泣きが入ってた。みっともないくらい、顔ゆがめて。
 えええ、泣きのまっつなんて?!
 ベン様はそりゃ毎回泣いてたけど、それとはちがう、もっと情けない痛々しい顔。傷のある、大人の男の「泣き」。
 な、なんでそんなことに? どうつながってあんな表情になったの? あたしがちょっとあすレオ見ている間に!!(だから、まっつさんを見なさいよ)

 いやその、あすレオのタンゴ、それぞれ女と踊っていたはずなのに、なんでそんなことになったのかと、それを確かめたくてだな、ついそっちを見ていて……。
 あすくんからレオくんを誘ってた! 後ろから色っぽく抱きついて。
 ねえねえ、レオ受なの? 受なのレオ? なんか苦悩してたわよー。
 すげーBLな画面。(だから、まっつさんを見なさいってば)

 レオくんと言えば、女役のとき、カツラは必須です。
 キミはコム姫ぢゃないんだ、地毛だと女に見えんねーってば!!(笑) 何故いきなり地毛だったんだ、2日目。

 スペインが、圧巻。
 初日のぴりぴり感とはチガウ、まっつが作り出す緊張感。
 美しさに、息をのむ。

 もーあちこちで、いやっちゅーほど「花男」であることを感じた。
 肌がざわめく感じ。
 うわ、これぞ花組育ちだ、花男だ。

 日本、初日に震撼した通り、黒燕尾の手はまっつを含め全員が手の甲を客席に見せている。
 全ツ『ロック・オン!』では、この持ち方はまっつひとりだった。
 それが、全員が、まっつに倣っている!!
 うわーん、大好きだみんな!!
 (振付にヤンさんが参加していた結果かもしれんが・笑)

 フィナーレからカーテンコール、挨拶はそつなく立派、でもなんかテンション変でかわいいまっつ。
 両足揃えて跳びはねるの、犯罪級のかわいさだ……。隣のコマつんにもたれ掛かって、コマつんをあわてさせるまっつ……いいぞもっとやれ(笑)。


 初日に泣けなかった分、えんえん泣いた。
 疲れた。(やっぱソレか)
 

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