『インフィニティ』だらだら感想続き。
 まっつが両手投げチューで退場したあとは、ゴンドリエーレ・コマつんと翔くんの場面。

 えー、このふたりのゴンドリエーレは、歌ウマ設定コマ、色男設定翔なんだ?
 コマは美声を聴かせるよ、と歌声で客を誘うが、翔くんの歌では客は特別なびいている様子はない。が、面食い客のヒメがコマと翔を見比べて、翔の方がイケメンだからという理由でなびく。すると、他の女たちも「ゴンドリエは歌声より顔だわ!」と翔になびく。顔で選ぱれたあと翔くん張り切って歌う大音響の歌に客がどよめくのはえっと、うまいからではなく……。
 客を取られそうなコマは「色男は危険」だと、男たちに訴え、共感をあおる。女は翔を支持、男はコマを支持。

 いなばっち……このアテ書きって(笑)。
 コマは歌声、翔は顔なのか……。

 この観光客はほぼフルメンバー出演なんだが、朝風くんがときどきサングラスをかけているのがいいです。開襟シャツと相まって、うさんくささ倍増。
 女子ではなんつってもヒメとカレン姐さんが濃ゆいです(笑)。

 コマはなおも歌声で観光客を誘うけど、美貌+値引き(笑)という翔が圧勝。
 だけどそんなコマに、ひとりの女の子が目をハートにして進み出てくる。この女の子が寿春花果ちゃん……愛称あだちゅうって……本名からか……(笑)。←文化祭プログラム確認しちゃったよ。
 翔くんも夢華さんと唐突にカップルになる。

 次が翔くんと夢華さんのラヴラヴデュエット。ふたりでえんえん歌って踊る。
 この場面も2段階構成。長いぞ。
 まずこの場面の主役、翔くんと夢華さんの周りには、他の観光客たちもいる。
 他のカップルたちは翔くんカップルがラヴラヴしている間ストップモーション。それぞれ甘い雰囲気のポーズで静止しているわけだが、レオ&あゆっちカップルがすごい。
 ナニをしているわけじゃない、ただ、見つめあっている。腰を抱いた至近距離でずーーっと。
 身を寄せあったりしているカップルより、なお破壊力高い(笑)。アツい瞳のまま見つめあって静止って……。
 あと、きんぐ&ヒメが、小芝居付きで別の意味で濃ゆい……(笑)。これはヒメの功績だと思う。ネクタイ直してやったり、いちいちニクいぞ。

 わたしはレオくんときんぐの横顔が好きです。
 この公演で横顔が好きなのはもちろんまっつがいちばんだが、あと、レオくんときんぐ。
 まっつとレオくんは鼻が特に好きだ(笑)。横顔の、高く長い鼻を中心にデコと唇がきれいな弧を描くラインが好き。
 きんぐは弧ではなく直線に並ぶ横顔を「整っている」と思う。

 翔くんカップルのラヴラヴは続き、周囲のカップルたちはそれぞれ去っていく。
 レオ&あゆっち、まなはる&ひーこカップルが残り、レオくんたちもいなくなり、最後はまなはる&ひーこだけが残る。
 翔くん&夢華さんカップルのシャドウ的に、まなはる&ひーこも踊る。まなはるたちはライトで追ってもらってないのスモークで少し紗がかかった感じに見える。翔くんたちはとにかくきらきらです。 

 初見ではあまりに長くてびっくりした場面だけど、慣れるとそーゆーもんかと思う。
 翔くんの歌はうまくない。「歌える人が歌う」「踊れる人が踊る」というコンセプトのこの公演の中、ダントツで大変な歌声。
 しかし。
「翔くん、うまくなったねええ」「『灼熱の彼方』はほんの少し前なのにねえ」「アレはほんと、顔と勢いだけでやり通した公演だったものねえ」……と、みんな親心目線(笑)。

 翔くんと夢華さんが「長い」と思える反動なのか、次のコマとあだちゅうカップルの場面は短く感じる。時間的には同じなのかな? でも2段階構成じゃなく、ひとつの演出で終わる。
 翔くんと夢華さんはふたり同等に歌い踊るけれど、コマくんカップルは、あくまでもコマくんが主役。彼が歌う周りを、あだちゅうがひとりでくるくる踊っている。

 で、お昼のベニスがこのカップル・コーナーでは夕暮れになっていたわけだが、次はさらに時間がが進み、夜になる。

 上手寄りの奥に男の影。照明暗すぎてろくに見えないけど、それがまっつ。

 1930年代のベルリン。
 ここだけ年代設定あり。
 まっつのまがまがしい台詞声を聞けますよっと。
 背徳の街っつーことで、夜の美女たちがスーツの男たちと妖しく絡んで踊る。
 それを睥睨してナレーションと歌を担当するまっつが、素敵な冷酷さです(笑)。
 熱のない瞳、口元に薄い嘲笑。……強い嘲りぢゃないの、薄い、がポイント。強く嘲るほどの関心もない、って感じ。

 稲葉くんを「うまいな」と思ったのは、この場面でナチスを出さなかったこと。
 ナチスを出すことは簡単。記号としてとても使いやすいし、また、あの軍服はかっこよくてタカラヅカ向き。
 だけどあえて、ナチスを出さなかった。
 軍靴の音と娼婦たちにそれを匂わせる動きをさせるだけで、表現した。
 最初に年代と場所を言ってあるんだから、わかる人にはわかる。で、わからなくても別に問題ない。

 で、その「世界の外側」で嘲笑していた男が、物語の中に入る。
 ひとりの女を見かけたことで。

 まっつってやっぱ、芝居巧いんだ、と思う。
 オブザーバーだったのに、一瞬で物語の中へ入った。そのあとも、物語との距離感が独特。

 まっつはワケありらしいふくよかな美女あゆっちを見かけ、彼女を追い、彼女と情念のタンゴを踊る。

 あゆっちが毛皮を脱いだ瞬間、うわっと思う。
 なんつーか、なまなましいよね。
 やわらかそうっつーか……触ったら気持ちいいんだろうなあ、って感じが、役柄的にリアルっちゃーリアル?(笑)
 もちろん、タカラヅカ的観点ではもっと痩せてくれてもありがたいんだが、今さら詮無きこと、そのふくよかさを役作りと考えよう。

 音楽は狂気を含んで盛り上がり、背徳の男女のダンスは激しくなり……。
 それは不吉なサイレンの音で打ち切られる。

 まっつはあゆっちにすがりつくけれど、彼女も周囲の者たちもみんな波が引くように消えていく。

 残されたのは、まっつひとり。

 物語に入り込みすぎた彼は、自嘲して背を向ける。
 この自嘲の笑みがまた、壮絶なんだなあ。一瞬片頬歪めて、酷薄であろうとしながらも、瞳に悲しみや虚無が浮かんで。

 で、お着替え。
 最初に脱いだ上着は黒い皮ジャケット。……良かった、ふつーの服で(笑)。
 着替えながら彼は歌い出す。

 背徳の街を嘲笑していた男が、今度は真逆の歌を。

 『ロマノフの宝石』より、「夜明け」。

 1989年の作品ですってよ。残念ながらわたしはまったく知りません。
 知らないけど、とりあえずわかったことは、元ネタは、絶対正塚だ(笑)。
 行き交う人々の歌、「命」という歌詞……どこを切ってもマサツカ!!

 そーだった、いなばっちはショーを作るとオギーの模倣、芝居を書くとハリーの模倣になる人だった……(笑)。

 1幕のラストシーンが突然正塚芝居全開でびびった。
 や、正塚好きだからいいけど。そんでもって、まっつは正塚役者だと思っているので、いいんだけど。

 続く。

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