猫がなかなか帰りたがらなかったために、15分遅れでテレビの前に坐った。

 「ザ・タカラヅカV雪組特集check!」ファーストラン。
 もちろん録画予約はしてあったので(しかも同時に2本・笑)、アタマから追っかけ再生する。

 ヅカヲタ歴はそこそこだが、贔屓が3番手内に食い込んでいるってのは、はじめての経験。(最初の贔屓はド路線様でトップになったが、当時はスカステがなかった)
 オープニングからがっつりUPになる贔屓にびびる。さ、さんばんめって、こういうことなのか……。
 今まではほんと、その他の人々のところに映るだけだったもんなああ。

 と、立場のありがたさに感動しつつ、雪組トップコンビから続く美しい画面に見入っておりました。キムみみちぎまっつ……ほんとに、なんてなんて美しい人たちなんだろう。
 ただほんとに、ぼーっと観賞していた。

 ああまっつ、またその髪型なのね……と思いつつ(笑)。

 そうこうするうち。

 えっ? と、思った。

 えっ? ちょっと待って、今?
 今、まっつ、手ぇつないでた、よね? 手が映ったよね? まっつの手が誰かの手を握っていて、その手の相手が誰か映る前に、画面が別ショットに切り替わったよね?
 見えなかったのは、わたしのせい? わたしがぼーっとしていたから?
 いや、実はちゃんと見ていた?

 まっつ、ちぎくんと手つないでたよね?

 自分が目にしたモノを咀嚼しきれなくて、一瞬ぐるぐるして、はっと気づく。
 そうだこれ、録画じゃん! 巻き戻して確かめればいいんだ!

 ええ、巻き戻して確認しました。
 血液型別グループ写真、AB型の面々。シックな黒衣装に身を包んだ人々が、隣の人とどこか一カ所触れるカタチでぐるりと輪になっている、という絵。
 肩に手を置いていたり、握っていたり、目線はみんな上、つながっているのに誰も目を合わさない、というシュールな姿。
 ちぎくんを起点に、カメラはぐるーっとメンバーを映していく。雪組、AB型多い……(笑)。
 ぐるりと回ったカメラは、最後にまっつを映す。彼でちょうど一周。きゃびいに肩へ手を置かれることでつながり、まっつ自身は誰かと片手をつないでいる。
 つないで、いる。
 ぎゅっとはしていない。なんか控えめに、他人行儀に(笑)、まさしく「つないでいる」って感じに、つながっている。
 そこで、カメラが切り替わる。
 やっぱり、まっつがつないでいるのが誰の手か、映してくれていなかった。

 でも、あれって。

 人間の視界というかアタマって不思議なモノで、別々の画面を見ても、脳内で再構成できるんだよね。
 ちぎくんからスタートした画、ちぎくんとまっつが隣同士に坐っていた画、それぞれ別の画面だったのに、脳内で結びつく。

 まっつが握っていた手は、ちぎくんの手だ。

 ちぎくんは映ってなかったのに、途中で画面変わったのに、ぼーっと見ていたわたしが「ちぎくんと手をつないでいるところまで映った?」と、ナイものを見たよーな気がしてしまったくらいに。

 いやあ……興奮した(笑)。

 ちぎくんと手をつなぐ、まっつ。
 だからナニってもんだが、盛り上がった。わたし的に(笑)。

 なにしろわたしは『ロミオとジュリエット』を最高峰の大好き作品としている人間で。
 マーキューシオとベンヴォーリオのコンビに、萌え狂った者で。
 ちぎまつ! ちぎまつ!
 『ロミジュリ』が最初で最後、以来まーーったく組んでくれないふたりだから、飢えてますのよ。

 あの遠慮がちな手の握り方がたまらん(笑)。

 AB型がシュールかつ美しい画だったので、他の血液型もそうくるのかと思いきや、B型はキュートでA型はお笑い、O型はカオスだった……。
 そして何故、血液型コーナーのトップがAB型だったのかを理解した……ふつーにA・B・O・ABとか、血液型表記順とかで映せないわけだ……これでAB型がラストだったりしたら、拍子抜けもいいとこだ……。

 ちぎまつで萌えまくり、他の血液型のみなさん見てウケまくっていたのに。

 そのあとに続くコーナー、トップコンビ・ポートにて。

 まさかの涙腺決壊。

 萌えたり笑ったり泣いたり、忙しいな自分。
 ツッコミ入れるけど、どうしようもない。

 番組最初のコーナーで、ひとりずつの写真撮影場面で、キムくんもみみちゃんも、それぞれ腕にリボンを巻き付けていたんだ。
 ひとりずつ、がそうだから、「へえ。雪組本の個人写真は、リボンを腕に巻くのが統一テーマなのか」と思った。
 ところが、みみちゃんの次のちぎくんは、リボンを巻いてない。続くまっつも、巻いてなかった。あれえ? 統一テーマってわけじゃないのか。
 疑問に思ったけれど、それ以上は考えず、次の血液型コーナーに夢中になった。

 そしたら。

 トップコンビの写真で、リボンの謎が解けた。

 キムみみは、互いの腕をリボンでひとつにしていた。

 向かい合ったふたりの腕が、リボンでぐるぐる巻きだった。

 ひとりずつ、腕にリボンを巻いていた。
 ひとりで生きるときに、腕にあったリボン。
 キムのリボン。
 みみのリボン。

 それが、ふたりが出会うことで、ひとつになった。

 運命の、ふたり。

 いや、もお……。
 がつんときた。
 ナニこれ。
 油断していた。
 血液型コーナーで、笑ったあとだってば。
 そこにこんな。

 次のショットでは、キムみみは背中合わせに大きなリボンでラッピングされていた。
 相似形のふたり。
 それぞれ別なんだけど、同じ魂を持つ美しいふたり。宿命の恋人同士のような。双子の兄妹のような。
 お菓子のような。オーナメントのような。

 別れが、待っているのに。

 ふたり一緒に在ることが運命である、この美しいふたりは、あとわずかな間で終わってしまう。失われてしまう。
 砕け散る一瞬前の硝子細工。溶けて消えてしまう前の雪の結晶。

 そんな馬鹿な。

 こんなにこんなにうつくしいのに、なぜおわってしまうの。

 どうして。
 組本の発売を知った頃は、ただ無邪気に楽しみにしていられた。
 トップコンビが決定し、ようやく2作目の本公演。波乱と混乱でスタートしたキムくんの時代が、今ようやく落ち着き、これから本番がはじまる……そう、気持ちを新たにしたところだった。
 前回の公演は演目がひどかったけれど、今回は芝居もショーも良作、芝居は癖があるから万人向きではないかもしれないけれど、ショーは全方向性のザ・タカラヅカ的な佳作だ。ようやく風がキムくんと雪組に向いてきた……そう思っていた、矢先のこと。

 嵐の中、守ってきた芽が育ち、明るい陽を浴びて葉をのばし、これからつぼみがつく……ってところで、引きちぎられた痛みと悲しみ。まだ花びらの色すらわからない、青いままのつぼみだ。何故咲くまで、待ってくれなかったのか。
 2年しか時間がないと決まっていたのなら、何故花壇を荒らし、前に咲いていた花を毟り取り、花はおろか生き物が育ちそうもないくらい破壊しまくったのか。
 壊れた花壇を元に作り直す時間も与えられず、嵐の中それでも芽吹いていたのに。


 しあわせな組本特集番組で、切なくて大泣きしました……。

 はー、年寄りは涙もろくていかんやね。

 雪組のみんなは、かっこよくてかわいくて、美しくてたまらんです。
 今の雪組が好き。キムみみが好き。大好き。


 しかし、黒燕尾の舞台化粧は、濃すぎるんじゃないかと老婆心(笑)。

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