『花舞う長安』は駄作で、これをまともな作品にするためには、一から書き直さないと不可能だ。

 だがせめて、最低限手を入れるだけで、もー少しマシにできるとは思う。駄作は駄作で、物語として成立していないにしろ、せめて、少しだけでも。

 それはよーするに、主人公・玄宗をまともな人間にする、という方法だ。

 今のままじゃ玄宗、あまりにバカ人としてまちがってるからな。
 マイナス地点からせめて、「ゼロ」の位置にまで玄宗の人格を矯正してみよう(笑)。

 
1・玄宗に、仕事をさせる。

 玄宗というキャラクタが壊れている一因は、「国のために愛する女を見殺しにするしかなかった」のに、国のためにまったく働いていないことにある。

 彼が芝居中でやっていることといえば、息子の嫁を奪って高笑いしていたり、仕事放り出して楊貴妃とデートしてみたり、ただひたすらいちゃいちゃエンドレス。

 遊んでいる印象しかないのに、最後で突然国を語られても、

「お前が言うな!!」

 としか、思えない(笑)。

 楊貴妃を愛しすぎたがために国事がおろそかになった、というより、もともとバカだったから、どのみち反乱は起こった、と思えてしまう。

 バカな男が女に狂ってバカなことをし、女を犠牲にして自分だけ助かった。……てな、今の玄宗は最悪。

 せめて、「女に狂う前はまともだった」ことにしなきゃ。仕事しろ、仕事!!

 
2・玄宗に、愚痴を言わさない。

 玄宗は、仕事をしていない。彼はただわがままこいて遊びほうけているだけ。
 なのに「仕事をしなさい」と言われると、必ず愚痴をたれる。
 さもいつも仕事をしているよーな、不当に傷つけられたよーな言動を取る。

 なにも義務を果たしていないのに、注意されると逆ギレしたり、被害者ぶる。

「お前が言うな!!」

 としか、思えない(笑)。

 愚痴というのはだ、努力している者がこぼすから同情を引くのであって、遊んでいるだけだったり、仕事をしてもミスばかりでなんの役にも立っていない無能者が言っても、軽蔑されるだけなんだよ?

 玄宗に愚痴を言わせるのをやめよう。言っていいとすれば、それはただ一度、それも愛する女の前でだけ、だ。
 のべつまくなし誰にでも、部下の前でも女の前でも愚痴しか言わない人間なんて、最悪。

 皇帝という立場が大変であることを示したいんだろうけど、それを「本人の愚痴」でしか表現できない作者はほんっとーに基本的なことすらわからずに脚本書いてるんだろーなー。嘆息。

 
3・責任転嫁をやめさせる。

 言わずとしれた、「黙れ! このたびの事件、お前たちにも責任があろう」ですな(笑)。

 今まで仕事らしい仕事もせず、愚痴ばかりを垂れ流し、被害者ぶってすべての怠惰とわがままを正当化していた最低男が、最後にカマす大花火。
 全部全部、他人のせい。悪いことはひとのせい。ボクはなーんにも悪くない。

「お前が言うな!!」

 としか、思えない(笑)。

 この台詞をわざわざ言わせた作者は、いったいなにを表現したかったんだろう。
 一般的に考えて、責任転嫁する人がマイナスイメージを与えることはわかっているだろうに。だから昔のドラマでは、清く正しい主人公は、たとえライバルの罠で失敗させられたとしても「悪いのはわたしです」としおらしく頭を下げたもんなのに。

 楊貴妃にふぬけになったため、こんなバカな台詞を言うようになった、とするにも、無理がある。
 いい男が愛に壊れて、卑怯者になった、つーのは、ラヴラヴ恋愛モノとして思いっきりNGですがな。
 女房ラヴ家庭いちばん、で、残業も出張も拒否して家に飛んで帰るよーになったサラリーマンが、仕事ができなくなったから左遷されました、てのはアリだけど、仕事ができないことを後輩のせいにしました、ではイカンやろ。
 人格を貶めたらダメ。観客はそんなものをのぞんでいない。

 
 さて。
 これらのことを総合的に、作品の改稿に取り入れてみます。

 テーマは、「必要最低限の改稿」で「玄宗の人格を矯正する」です。

 一から書き直した方がまともになることはわかったうえで、あくまでも、「最低限」の書き直しで、どこまで矯正できるかにチャレンジ!
(笑)

 玄宗を「まともに国のことを考え、生きてきた男」としなければ、最後の「国のために愛する女を見殺しにするしかなかった」が活きないわけだから。
 さあ、玄宗をまともに「悲劇のヒーロー」らしく、「矯正」してみよう!(笑)

 つーことで、
 続く!
 
       
 星組東宝の、午後公演のチケットを持っていなかったわたしのため、サトリちゃんが立ち見券を買っておいてくれました。

「立ち見なんだから、とーぜんショーから観ますよね?

 と、これまたとーぜんって感じに言われて(ドリーさん&サトリちゃん)、とてもウケました。

 はい、ショーからでいいっすよ。チケットを持ったサトリちゃんが合流するまでの間、のんびり喫茶店で日記でも書いてるわ(笑)。

          ☆
 
 HOTEL DOLLYにて、ドリーさん、サトリちゃんと一緒に『VO5 presents スカイ・ステージ・トークSpecial #5「湖月わたる・汐美真帆・立樹遥」』のビデオを見る。

 以前にも見たことはあるけど、こんなにおもしろくなかったよーな気がする。
 友だちと一緒にツッコミながら見ると、たのしさが格段に上がるんだなあ。

 てゆーか、今さらながらにすごくないか、このトークショーのメンバー。
 最初に見たときは「なにこのビミョーなメンバー」と思ったのに。「なんでこの3人? ありえねー」と思ったのに。
 トップスターのワタさんと、“路線内非路線”の微妙スターと別格スターの顔合わせなんて、なに考えてんだスカイステージ。
 ふつー、もっとわかりやすく「スター」を集めないか? 参加希望者が少なかったらイベントやる意味ないだろ??(きらきら路線スターを呼んだ方が集客力があるだろう、という意味っす、念のため。言い訳しちゃうチキンハート)

 でも。
 今にして、思う。

 なんて運命的なメンバーなの?(笑)

 だってモロ、HOTEL DOLLY宿泊者向けのメンバーなんだもの。

 わたしたち、よりによってワタ・ケロ・しい担だし!

 よく集まったよな、この微妙な顔ぶれ。
 このトークショーを、出演者のファンだけで見られるとはなー。

「なんでここにkineさんがいないんだろう……」
「絶対いるべきだったよねー」

 「私にはココ以外にも行くところはあるんだっ!」とゆー、名言を残してkineさんはひとりで帰ってしまったのですよ。(くわしくは、ドリーさんの12月18日の日記をどーぞ)

 それにしても。

「このメンバーだと、いちばん歌がうまいのがしいちゃんなんですねー……」

 「スター」らしくトークショー会場で歌うワタ・ケロ・しいを見ながら、サトリちゃんがしみじみ言う。
 ほんとにねー。しいちゃんだけだねえ、歌がまともなのって。しいちゃんだってべつに、ものすごく歌がうまい人じゃないんだけど……でも、いちばんうまいー(笑)。

 わたしの目から見て、私服のまま素顔で歌う3人の中、いちばんカッコイイと思えたのは、しいちゃんでした。顔、好きなんやもん……カエル顔好きー。「人類よりも、歯が何本か多いに違いない」と思えるよーなでかい口、好きー。
 そしてなにより、服装がカッコイイから、美人度を上げている(笑)。

 てゆーか。
 ケロちゃんの私服のセンスって、なんでああも愉快なんでしょう……。
 おもしろいよなー……どーしたらあんな服を選べるんだろー……(笑)。

 
 星組公演を観に東宝へ行った折、夜はいつも「乾杯」ではじまる食事をしているのですが(笑)、いつもなにかしら微妙なものに「乾杯」している気がする。

「ケロちゃんのセンターパーツに乾杯!」

 とか、

「ワタル会総見に乾杯!」

 とか。(注・誰ひとりワタさんの会には入ってません。総見のときに観劇して、舞台と客席のテンションが高くてとても感動したのよ)

 ドリーさんはお酒弱くてすぐ真っ赤になってかわいいし、サトリちゃんはなにげに強いし、kineさんはひとり素面なのに場のテンションに悠々ついてくるし……と、みんな愉快だ。
 
 
 次に集まるのは、クリスマス。
 楽の、前日。

 わたしたちは、なんと言って乾杯するんだろう。

 
 P.S.「み」さん、次はぜひ一緒に乾杯しようね。

     
 火曜日に帰宅して、木曜日にモリナ姉さんとデートして、金曜日にまた旅立つ。……そんな人生、まちがってる気がしないでもない(笑)。

 木曜日、モリナさんとお茶しているときに組替え発表があった。

「まとぶん、花組だって。じゃあ星の3番手は誰になるんだろう」
 と言ったわたしに、モリナさんはものすごーく素で答えた。

「しいちゃんじゃないんですか?」

 そしてわたしもものすごく素で、返した。間髪入れずに。

「絶対ナイ」

 ……………………ごめん、しいちゃん。

          ☆

 予定はなかったのに、今週末もまたLet’s東宝、HOTEL DOLLY。
 それもこれもドリーさんが、「毎週、なんて無理、ですよね? 4列目のチケットあるんですけど」と言ってくれたため。
 4列目ですとっ?! ぜんぜん無理じゃないです、行きます、もちろん! ありがとう。
 チケット付き宿泊プランもアリなんですね、HOTEL DOLLY(笑)。

 そして、東宝に日参している?(笑)ドリーさん、サトリちゃん、わたし以上に毎週完璧に東宝に現れているkineさんも合流。
 濃いわ……なんかすっげー濃いんですけど。

 先日の観劇で、ついうっかり「あちら側」に行ってしまったわたしは、ほんとのところ、迷ってました。

 あの記憶のまま、封印するべきじゃないのかって。

 ハンパな席でハンパな気持ちのまま『ドルチェ・ヴィータ!』を観て、あの感動がべつのもので上書きされてしまうことを恐れた。

 晃さんに譲ってもらった1階センター席チケットと、ドリーさんに譲ってもらう4列目のチケットの2枚しか持たずにはるばる東宝まで行ったのは、そんな迷いがあったため。
 どうせ行くなら、4公演4枚分のチケットを押さえてから行くべきなのに。
 観られなかったら、それはそのときのこと。
 そんなふうに、ちょっと後ろ向きな気持ちで旅立ったんだ。

 結果として、4公演全部観られたんだけど(笑)。

 
 あの愛しい楽園は、もう彼岸にしかありませんでした。
 どんなに焦がれても、たどりつくことはできない。

 わたしは「こちら側」で、せつなく眺めておりました。

 
 ところで。

 「過去」と「未来」のどちらが好きかと問われて、「未来」と答える人はどれくらいいるんだろう。

 わたしはもちろん、「未来」の方が可能性とか希望とかにあふれていて、わくわくするものだと思っているよ。
 物語でも詩でもそうじゃん。「未来」や「明日」を語る方がすばらしいって!

 わくわくするのは「未来」。
 でも。

 好きなのは、「過去」。

 愛しいのは、過去だ。昨日だ。

 だからきっと、『ドルチェ・ヴィータ!』がこんなに好きなんだろうなあ。

 過去が好きだよ。昨日が愛しいよ。
 バカで幼くてまちがいだらけの自分ごと。

 会いたい人たちがいる。
 もう二度と会えない人。
 今でも声をおぼえている。夢の中では、ふつーに出てきて、生活している。

 失ってしまったものがある。
 もう二度と手にすることはできない。
 のぞんで捨てたわけじゃない。選ばなかった、だから残らなかったもの。

 いとしい、いとしい、いとしい。
 だいすき。

 過ぎてきた時間のひとつひとつ、出会ってきた人、感じたこと、全部がいとしい。

 過去が愛しい。

 だからわたしは、『ドルチェ・ヴィータ!』に囚われる。

 フィナーレの歌手たちは、口々に「昨日」と「別れ」を歌う。
 主題歌の「マスカレード」、とても長い歌だけど、タイトルと同じ“マスカレード”という単語が出るのはただ一度。
 エトワール(笑)であり、このショーの方向をカタチ付けたひとり、ケロが歌う。……愛されてるね、ケロ。ありがとう、オギー。

 うしなったものがいとしくて、せつなくて、涙が止まらないそのときに。

 太陽が、現れる。

 太陽の申し子@ワタルくん。
 “新しい一日”を、「明日」を、「未来」を、高らかに歌う。

 ふさがりきらず、濡れたままの傷口に、あたたかいものがふりそそぐ。
 わたしだからじゃなく、なにか理由があるからじゃなく。
 この光は、すべてをつつむんだ。
 すべてを癒すんだ。

 なんとゆーか。

 これほどまでに、ワタルくんに感謝したことはなかったよ。

 ディアボロと白いスーツの男が、銀橋から去っていったあと、大階段にひとり立つワタルくん。
 フィナーレでただひとり、「未来」を歌うワタルくん。

 すくってくれて、ありがとう。

 美しい悪夢のなか、甘い闇のなか、現世を忘れ現実を否定し、心地いい絶望のなかで眠りたくなるわたしを、「こちら側」に連れ戻してくれて、ありがとう。

 こちら側が、この世界が、現実が、美しいことやさしいことを、思い出させてくれて、ありがとう。

 ワタさんの存在は、救いなんだ。

 そのまっすぐさ。おおらかさ。やさしさ。あかるさ。すこやかさ。
 その、つよさ。

 太陽があるから、わたしは闇を愛し、心の穴にフタをすることができるんだ。

 
 「過去」を愛し、焦がれながらも、「未来」にわくわくする。
 そーやって、生きていく。

        
 二重写しの夢を見ている、気がする。

 東宝公演を観ていると、せつない気持ちでいっぱいになる。

 ねえ、これはなに?
 わたしが観ていたものと、同じもの?

 『花舞う長安』にしろ『ドルチェ・ヴィータ!』にしろ、あまりにムラ公演と別物なんだ。

 演出が変わったわけではないんだが。
 温度がチガウんだもんよ。

 たとえば『花舞う長安』。
 陳玄礼は玄宗を愛していた。これでもかってくらい、愛しすぎていた。勝手に台詞作りまくって、盛大に暴走していた。
 玄宗はひどい奴で、身勝手自己中極まりないんだけど、それでも陳玄礼はたのしそーにうれしそーに周囲なんかなにも目に入らず、玄宗だけを愛しきっていた。
 玄宗に責められると、見ているこっちが「痛っ」と思うくらい、傷ついていた。

 たとえばセレブSと航海士。航海士はセレブSを熱愛し、セレブSは気まぐれにそれに応えていた。ラヴラヴなふたり。「こいつら、いったいどういう関係? 裏にどんな物語がっ?!」と思わせるホモっぷり。
 たとえば雷のシーン。さんざんラヴっていたセレブSと航海士は、二人の物語の続きとして、あたりまえのよーにふたりで腕を絡めて走り去る。
 愛に満ちた男たち。

 たとえばディアボロに狙われた第二の男。白いスーツの第二の男は、最初から「ディアボロ・ラヴ」と顔にくっきり書いて、自分からうれしそーにその手を取る。ご機嫌に白い歯を見せまくって踊り、ディアボロに笑いかけたり投げキスしたりと バカ ……ラヴ全開。作品をぶち壊すハッピーエンド。

 ねえあれは幻?
 もう2度と見られないの?

 なまじ同じ作品だから、せつない。
 あの温度はなんだったの。
 たしかに、作品としてはまちがっていた。正しいのは、クオリティが高いのは、東宝公演の方。
 わかっているけど、さみしい。

 まちがっていても、バカみたいでも。

 ムラの方が、好きだった。

 愛に壊れていて。
 やたら温度が高くて。
 やたら密度が濃くて。

 ウエットで感情的でむきだしにバカで。

 これがゆるされてしまう「タカラヅカ」という世界が好きだった。

 ムラ楽なんて、一種別空間だったからなあ。
 ディアボロ@トウコちゃんなんか、熱を通り越して壮絶って感じだったし。
 あのテンションを平常公演で期待する方が悪いんだろうけど、やっぱ、比べてしまうからなあ。
 
 あれらの熱は、本拠地宝塚の持つ力なのかもしれない、とも思う。
 ケロ茶もそうだったけど、ムラでの濃度が東京ではまったくなかった。
 ひょっとしたら、東宝楽も、ムラ楽よりあっさりしてしまうのかもしれない。
 クライマックスがムラ楽で、東宝楽はエピローグになってしまうのかもしれない。
 そのことは、覚悟しておくべきだなと思った。
 もちろん、ほんとに最後の最後の東宝楽こそ、いちばんの熱さと濃さを期待したいのだけど。……期待しすぎでスベって、消化不良になってもこまるので(笑)。

 
 二重写しの夢。
 わたしは、あの熱をおぼえている。

 淡々と端正なんて、つまんないなあ……と思ってしまうよ。
 折り返し地点だから、これからまた熱くコワレていくのかもしれないけど。

          ☆

 ところでわたくし、はじめて、チケットを紛失しました。
 今までお忘れ券で劇場に入ったことは何度かありますが、それは全部「はじめからお忘れ券で入場予定」だったものばかりです。つまり、ぎりぎりになってひとから譲ってもらうばかりだったのね。
 自分で、ほんとーになくしたのは、はじめて。

 しかも、1列目ですがな。

 どーしてなくすかなー。うれしくて何度も眺めていたせいだな。譲っていただいた方の封筒ごとなくなってるわ。

 今までになく、待たされたました、劇場入口で。
 開演に間に合わないかもしれない、と、係のおねーさんに説明は受けていたけど……ほんとーにはじまるまで入れてくれなかった。
 今までのお忘れ券経験では、最悪でも5分前には入れてくれたんだけどなー。今回は開演までストップかぁ。

 まあ、芝居がアレなんで、正直自分が遅れて観られない分にはぜんぜんかまわなかったんだけど。周囲の人への迷惑を考えると憂鬱だった。
 そういやわたし、ムラでも2列目のときに遅れて行ったなあ。でもあれはゆうひバウの並びやってたからなあ。『長安』2列目とゆうひくんなら、ゆうひくん優先してもしょーがないよなあ。『ドルチェ・ヴィータ!』さえちゃんと観られればいいわけなんだし。

 お忘れ券を発行してもらい、「お手数をおかけしました」と係のおねーさんに一礼するなり、走りましたよ、客席まで。
 舞台ではナマズ髭皇帝と年齢不詳の恰幅のいいおじさんが喋っているところ。はっきりいって、ふつーの場面よりずっと暗い。目が慣れていないわたしには、客席は暗闇にしか見えない。
 目が慣れるまで隅っこで立っていたかったけれど、そうもいかず。案内係のおにーさんが先に歩き出してしまう。いくら足元を小さなライトで照らしてくれても、なにも見えてない。
 自分の座席がどこかはわかったけど、「椅子」がどこにあるか見えない。まいったねえ。後方座席ならライトがあちこちにあるけど、前方は舞台の邪魔になるからか設置してないもんなあ。ほんとになにも見えなかった。

 そこが自分の席だとわかっても、椅子が見えないと、坐ることができないのよ……椅子って坐ってないときは折りたたまれているでしょ、自動的に。折りたたまれた座席部分がどこかわからず、席の前でじたばたしちゃったよ……。

 教訓。
 チケットは、なくさないようにしましょう。

 ひとに迷惑かけちゃいけませんて。

    
 「陸続きの楽園」の続きっす。
 

 最初から、ばくばくしっぱなしだった。
 『ドルチェ・ヴィータ』がはじまる。この席で観られる。そのことにどきどきしていた。

 幕開きの美しさ。問答無用で異世界へ投げ入れられる美しさ。どこを見ていいのかわからない。やばいだろこれは。水の精たちの美しさ。トウコの歌声につづいて、オレンジ色の男たちの歌声。てゆーかくみちょこわいよ。濃いよ濃いよ。
 檀ちゃんに拍手して、ワタさんと踊るところを見たい……けど、奥で踊るアルレッキーノが見たい。彼らの前後首振り小鳥さんダンスだけは、絶対に見るの。なんか知らんが、そこの振りがめちゃくちゃ好き。緑ガエルと朱色の鳥たちが前に出てきた。ケロを見たい……のに、こまった、すぐそばにゆかりちゃんがいる。ゆかりちゃんの美貌から目が離れない。
 銀橋のワタさんはいつもろくに見られない。舞台の上のアルレッキーノを見るのに必死。目の前を横切るときだけ顔を上げて。上手花道セリで沈んでいくワタさん、こんなに近いのにダメだやっぱり見られない。だって舞台中央にいるディアボロが、ケロに触れるんだもの。動かない・動けないアルレッキーノに、ディアボロが一方的に触れていく。今日はいつものように腕に触れた。二の腕をなぞって、すれちがう。昨日だっけかは、ケロの腹を、抱くよーに撫でていたね、トウコちゃん。
 
 シビさんとトウコのデュエット。隣の席のおじーさんの、飴をなめる音がくちゃくちゃ響く。食べ終わったらまた袋をごそごそさせて、新しい飴をなめる。
 花市場、明るい音楽。おじーさんの飴をなめる音、くちゃくちゃ。すでに合いの手のよう。
 緊張のケロしい。目の前の、ケロしい。
 わざと肩でぶつかりあい、つつきあい、バッグを取り合った。お前らどこのバカップル?!状態でいちゃいちゃ無限大。いちゃつきぶりなら、ワタ檀をはるかに超えたピンクハート。玄宗と楊貴妃なんか、メじゃないって。もしも「天下無敵のバカップル選手権」があったら、ケロしいがぶっちぎりで優勝してるね。だってこいつら、天然だもの。色気もないままさわやかに、そのくせラヴラヴオーラ全開。無自覚に愛し合っているやつらほど破壊力の大きいものはない、と目の前に突きつけてくる。
 ワタさん登場、手拍子手拍子、隣のおじーさんくちゃくちゃ、新し〜い・くちゃ・一日ぃがぁ・くちゃ・産声をあげたぁ・くちゃ・朝のきら〜めぇきぃ太陽ぉはぁ……くちゃ、はまだ? テンポが落ちてるぞじーちゃん! 思わず身構え(笑)。あなたぁが・くちゃ・来るのぉが・くちゃ・遅すぎた〜、ほんの束の間・くちゃ・ふたりで踊るまるでふつうの……。
 歌う3人娘、みなみちゃんのパンツは白でした(のぞいたんかいっ)。おじーさんの飴をなめる音はだんだん間延びしていき、いつの間にか聞こえなくなった。
 そして。

 そして、サテリコン。
 ひとさらいめ。
 さらわれたわたしは、おぼれ死ぬかと思ったぞ。

 ところでコーザノストラ@ケロちゃん。
 なんで2日つづけてセンターパーツ?!
 真ん中分けですよ、少年めいた髪型ですよ、若いですよ、前髪揺れてますよ、ちょっとアナタなに誘ってんですかっ。
 受オーラを気前良く放出しながら、檀ちゃんにもてあそばれてますが。
 やーばーいー(笑)。
 なんでそう色っぽいんだ。そりゃ隣のじーさんも飴なめるの忘れるわ(違います)。

 それから、黒いドレスのドルチェ・ヴィータのパンツは、やはり黒でした(のぞいたんかいっ)。
 いやあ、黒ドレスの檀ちゃんは、見えそうで見えない、ぎりぎりのラインでチラリズムを貫いてましたからなあ。ついに股間が見えたときは、興奮しました。

 ケロと檀ちゃんがいないときは、サテュロス@すずみんに釘付けだし。どどどどーしよー、すずみんの残像が消えない……絶対今晩うなされる(えっ)。

 ケロは上手にいることが多いので、近くてたのしいし、下手にいるときは上手側を向いているので、「あっ、ダーリンがわたしを見てる!!」というカンチガイ目線で幸福感にひたれました。

 ところでいちばん多く目線をくれたのは、ありがたいことにワタさんでした。
 すでに盛大に「キて」いたわたしはぼろぼろ泣いたままだったんだが。
 そんなわたしにワタさんは、とてもやさしい目線をくれました。瞳が、いたわるよーに微笑むの。舞台の上手前にくるたびに。銀橋に出てくるたびに。「大丈夫?」とか「よしよし」ってな感じのやさしい目線がくるのっ。
 カンチガイかもしれないけど。べつにわたしを個別認識してくれていると思い上がるわけじゃないけど。
 でもでも、すっげー癒やされた。うれしかった。ワタさん大好き! その「男のやさしさ」に胸が熱くなったわ。ひとりよがりでもカンチガイでも、わたしは癒やされたんだから。救われたんだから。

 最初で最後。
 もう2度とこんな席で『ドルチェ・ヴィータ!』を観ることはない。
 もう2度と、わたしは、あのいとしい悪夢に行けないんだ。
 悪魔の棲む楽園に、行けないんだ。

 あのひとのいるところから、道がのびることはないんだ。

 今いる現実を愛していないわけじゃないけれど。
 楽園の記憶が鮮烈すぎて、涙が止まらない。
 へたりこみそーになる脚をだましだまし動かして、よーやく逃げ込んだ喫茶店で、がーがー泣きながらキーボードを叩いて。水にもオーダーしたものにも、一切手をつけず、ただえんえん書き続けて。
 文字にして吐き出して、なんとか渇望と現実の折り合いをつける。

 あー、もー。
 なにやってんだか。

 あー……そんでもって。

 揺れる船の上で踊るセレブたち。
 うっかりすずみんを眺めていたら、小悪魔の登場シーンを見逃したんだ。

 ものすっげえ、負け犬な気持ち。


     
 つながっていた。
 サテリコンのときに、痛烈に感じた。

 舞台と、わたし。

 どういえばいいんだろう。
 わたしのいたところから、舞台があまりにも「直線」に見えた。
 ちがうな。
 ケロちゃんに「直線」だった。

 コーザノストラKの足元から道がのびていて、わたしにつながっていた。

 あの青い世界からリボンのような絨毯がのびて、わたしの足元につながっていた。
 招かれていた。

 
 えーと、なんだな。
 めずらしく東宝で最前列に坐れたんだわ。
 そのときの感想。
 つってもSSじゃないよ。所詮S席。上手の真ん中あたり。

 前に誰もいないから、舞台がとても近かった。
 邪魔がなにもなかった。

 ……というだけのことなのか?
 なんかわたし、あまりにもトリップしまくったんですけど。

 今までだって、最前列に坐ったことはあった。ムラなら運が良ければ1公演1回は、端とはいえ最前列に坐れる。
 前に誰もいないとか舞台に近いからとか、そんな理由なんだろうか、アレは。

 最前列だから、ではないのかもしれない。
 他の公演では、ありえなかった。
 

 わたしは、あの場所にいた。
 『ドルチェ・ヴィータ!』、もうひとつの花市場、サテリコン。
 舞台があまりに近いことに、おどろいた。水滴に映った世界が盛り上がって見えるよーに、コーザノストラのいる裏社会がわたしに近づいた。
 そう、向こうから近づいてきたの。わたしはぼーっと座席にいた。世界が膨らみ、盛り上がり、わたしのいる場所まで飲み込んだ。波がなにもかもさらっていくように。

 さらわれたわたしは、あの場所にいた。
 コーザノストラのいる世界。
 あのひとのいる世界。
 あの奔流のなかに、いた。
 だから。
 こんなにも、平衡感覚があやしい。

 回る舞台、回る人々。わたしがあそこにいるなら、あのひとと同じ世界に生きているなら。

 べつの地球に立っているなら、きっとこんな感じ。

 わたしはわたしの生まれ育った世界を離れ、生きてきた現実を捨てて、そこにいる。あのひとのいるところにいる。
 うまく立てないのは、呼吸ができないのは、ここが異世界だから。
 陸に上がった人魚姫が、はじめて二本の脚で立っているように。

 すぐそば、体温の感じられる場所、息づかいのわかる距離で、わたしは彼らを見つめていた。

 惑乱のなかで。
 わたしはたったひとりをさがす。
 見つめる。
 彼がわたしの錨、彼がわたしの灯台。

 おぼれないために。
 うしなわないために。
 わたしは彼を見つめる。
 彼がいるから、わたしはわたしでいられる。

 直線。
 あのひと。
 たしかにわたしはここにいるのに、世界はわたしを包んでいるのに。
 ひとりだけにしか、焦点が合わない。

 オペラグラスで切り取った視界だから、ひとりしか見えないんじゃなくて。なにもかもここにあるのに、あのひとしか見えない。
 直線。最短距離。
 他のすべてを無視して、わたしと彼の間に引いた線。わたしと彼を結ぶ、いちばん短い距離。無駄のないまっすぐな線。

 そして。
 波のように彼は消えていった。
 幕が引かれるように、視界が変わった。

 その切り替わった視界に。

 ドルチェ・ヴィータがいた。
 のばした腕。白い指先。
 彼女の真後ろに、ディアボロがいた。
 のばした腕。白い指先。

 直線。
 1本のせつないタイトロープのうえに、闇の聖女と水の悪魔がいた。

 ドルチェ・ヴィータとディアボロを結ぶ線をのばしても、獲物である男のもとには届かない。男はドルチェ・ヴィータを頂点に二等辺三角形を描く位置にいる。

 ドルチェ・ヴィータとディアボロを真正面に見たのは、わたしだ。
 彼らの描くまっすぐな線は、そのままわたしに届いた。

 まっすぐな道だから。まっすぐな刃だから。
 たぶん、歩いていける。わたしはここから、聖女のところへ、悪魔のところへ。
 なににも惑わされず、よそ見をせず、たどりつけるよ。
 直線だから。

 
 とゆー。
 なんか、生まれてはじめての感覚を味わいました。

 トリップですな、これは。
 あぶないあぶない。
 てゆーか、イタいというべき?(笑)

 いーのよ、人間なにごとも経験だから!
 どんなにイタくても恥ずかしくても、ここは一発経験しておけ!てなもん(笑)。

 途中から「やばいぞこれは」と思ったんだけど。
 案の定、貧血起こして立てなくなってね(笑)。
 なんで貧血起こすのか、わかったわ。
 心臓が、血液を循環させる以外にばくばくしすぎるせい。よけいなところでばくばくしすぎてるから、本来の機能である血を送れなくなってるんだわ(笑)。

 座席に坐ったまま、異世界体験。わたし、この世界にいなかったから。あの瞬間。

続く

     
「ちょっと、Cってば」
 と、Kさんがオレの名を呼んで、袖を引く。
 航海を終えて、戻ってきた港町で。
 次の出航までのわずかな休暇。仲間たちは三々五々散っていき、オレとKさんも笑って別れるはずが、なんとなく会話が終わらなくて一緒に歩いていた。
 Kさんはなにかとオレをいじるのが好きな人で、今日もまた荷物を奪われ、港で追いかけっこをすることになった。
 ようやくバッグを取り返したはいいけど、今度はKさんのバッグまでオレが持たされている。Kさんは身軽だ。両手がふさがっているオレは文句を言いつつも彼の言いなりになっている。
「まだ時間あるだろ?」
 とKさんはオレを引っ張って手近な公園に入っていった。
 Kさんは同僚。年は同じだけど、キャリアは向こうが上。ついでに外見も、上に見えるかな。
 今オレが、いちばん仲のいい人。一緒にいるとうれしい人。
 船を下りたら別れ別れに休暇を過ごすことになると思っていたから、こうやって少しでも長く一緒にいられるのはうれしい。
「ちょっと試したいことがあってさ」
 と言うKさんは、オレを芝生の上に坐らせた。
「最近、同じ夢ばっか見るんだよな。それも、お前の夢」
「オレの夢?」
 なんだそりゃ、と言う前に。
 Kさんに、押し倒された。
 芝生の上に、ごろんと。
 そしてそんなオレの上に、Kさんが乗り上げてくる。
 なななななんだなんだ?!
 抱えていたバッグを思わず放し、Kさんの腰に腕を回す。ちなみにKさんは中背よりちょい小柄だ。オレが人より長身な分、オレとKさんは体格に差がある。
 Kさんの目的がわからないままうろたえていると、今度は肩を掴まれて、ごろんと回転させられた。
 回る視界。
 今度はKさんが下になり、オレが彼のカラダの上に乗り上げるカタチになった。
 どうしていいかわからずに、Kさんの顔の両脇に手をついて、上体を支える。下半身は密着しているが、とりあえず顔だけは腕の長さ分離れた。
 Kさんは神妙な顔をしている。
「やっぱこの体勢だな」
「な、なにが?」
「だから夢だよ。お前の夢」
 オレが、Kさんの夢に出てくるってこと?
「いつも同じ角度で出てくるんだけど、ふつうに向かい合って喋ってるわけじゃなさそうだからさ。なるほど、やっぱ下から見上げてたんだ」
「下から、って、カラダの下からってこと?」
「みたいだな。俺が寝ころんでて、お前が上から覆い被さってる。……そう、この角度だ」
 手の長さ、顔の位置。Kさんはひとりで納得している。
 それはいいけど……コレって、どういうシチュエーションだよ?
「たぶん、どこかの部屋。俺はベッドに寝ころんでいて、上にお前がいる。お前の顔越しに、薄汚れた天井が見える」
 Kさんは記憶を追うように、ゆっくりと語った。ハスキーな声が、さらにかすれて聞こえる。
 転がっても落ちなかったオレの帽子を、Kさんがやさしく払いのけた。水夫の制服、白いタイとラインのセーラーシャツと白い帽子。髪は帽子の中に全部入れてしまうのが基本。Kさんは腕を伸ばしてオレの髪を指で梳いた。前髪が額に落ちる。
「お前は、暗い青のスーツを着ていて」
「スーツ?」
「派手なネクタイして、スーツのジャケットの袖を、肘までまくっていて」
「……ソレ、柄悪くない?」
「悪いな。どっかのギャングみたいな格好」
 そんな格好、したことない。なんでKさんの夢の中のオレは、そんな服装を?
「それにお前は、見たことないような顔をして、俺を見ている」
「え?」
「えらく真剣な……暗い……熱のある眼をしてる」
 熱?
「見つめていると射抜かれてしまうような眼をして、言うんだ」
「なんて?」
 聞き逃してはいけない気がして、オレは黙ってKさんの言葉を待った。
 でもKさんは、言葉を切ってしまったまま。
 ぷいっ、と、視線をはずした。
「……おぼえてない」
「嘘だ」
 シンプルに、思ったことを口にしただけなのに。
 Kさんは火がついたように反論した。
「おぼえてないって言ってるだろ。夢なんだから。たかが夢なんだから、そーゆーもんだろ?!」
 そりゃそうかもしれないけど。でも、今の嘘だ。だってKさん、赤くなったよ? 夢の中のオレの言葉を言おうとして。
「しつこいぞ、お前」
 そう言ってKさんは、オレの脇腹をくすぐってくる。うわっ、ずるい。オレも負けじとくすぐり返す。
 ふたりして芝生の上をごろごろ転がった。笑い転げた。
 はしゃぎ疲れて並んで寝ころんで、空を見上げた。白い雲が浮かんでいる。上空は風が強いのか、動いていくのがよくわかる。
「オレも夢見るよ。Kさんの夢。オレは平の水夫で、毎日甲板掃除してるんだけど、Kさんは航海士なんだ。制服が似合っててかっこいいの」
「なんだソレ」
「同じ船に乗ってるんだ」
「夢の中でもか」
「そう」
 オレは起きあがって、寝ころんだままのKさんを見る。
「夢ってさ、願望だったりするんだろ?」
「……べ、べつに、そうとは限らないだろ。あんなのが願望なんて……そんな……」
 Kさんは自分の夢を反芻しているのか、また赤くなっている。
「それとか、前世や来世の記憶とか」
「お前、前世だか来世だとかでも、平の水夫やってんの?」
「海が好きだからね。きっと何度生まれ変わっても、船乗りになってるよ。もしなにかあって船に乗れなくても、港町で生きる男になる」
 港町で海に焦がれたまま、ダークブルーのスーツを着て、ギャングをやってるとか。陽気なセーラーマンとして、甲板で踊っていたりとか。
 きっと、何度生まれ変わっても。

「そんでもって、きっとKさんと出会ってるよ」

 航海士と平水夫で、身分違いになっちゃったとしても。
 港町のギャングでも。
 きっときっと、オレの隣にはKさんがいる。
 何度生まれ変わっても、絶対にオレたちは出会っている。

 Kさんは、まぶしいものでも見たみたいに、ゆっくりとまばたきをした。
 そして。
 いつものいたずらっぽい笑いを浮かべて、突然オレのバッグを手に取った。
 あっと思う暇もなく。
 オレのバッグを遠くへ放り投げた!
 ひどいっ。
 仕返しにKさんのバッグを反対側に投げる。オレたちは同時にそれぞれ自分のバッグを取りに走り、また戻ってきてつつきあった。
 顔を見合わせて、笑う。
 メシでも食いに行こうか。ねえ、Kさん。

 一緒にさ。


          ☆

 『ドルチェ・ヴィータ!』はシーンごとに別時代希望。
 何度も何度も生まれ変わり、出会い続け、別れ続ける宿命の恋人・男@ワタルと少女@ウメの物語だと思っている。

 だもんで。
 とーぜん、他の登場人物も、それぞれ別人、別の時代の人間だよな、つーことで。

 ショーはキャラクタに名前がないからこまるよなー。イニシャル表記なのはたんに、愛称や芸名のままで書いて妄想系にカンチガイされるのが嫌だから。わたしはヲタク、やほひ女。作品萌えキャラ萌えはしても、ジェンヌさん個人でどうこうは考えません(笑)。
 まあ心配しなくてもケロしいで萌える奇特な人間は、わたしとその周囲だけだろう(笑)。
 しいちゃんみたいな健康優良児が相手じゃねー。どうしようもないよねー。
 セーラーのふたりも、あれだけいちゃいちゃバカップルしてても、色気は皆無だし。
 どっちが受か、思考停止して考えられないくらい、キヨラカなふたり。

 でもコーザノストラは、しい×ケロだから!!
 その関係で、セーラーもいちおーしい×ケロ前提かなあ。

  
 さて、そんでもっていい加減公演の話いってみよー。

 11日の11時公演は、メル友の晃さんと初顔合わせの日。ドリーさんちでだらだらごろごろ『ベルサイユのばら』(アンドレ@湖月わたる。かっこえー)なんぞを見ていたせいで、東宝に着いたのは結構開演間際。
 遅れるわたしに、「チケットカウンター前にいます」というメールをくれていた晃さんだったが、あれ? 誰もいないぞ?

 彼女は一足先に、劇場内に入ってしまっていたらしい。
 なんでかっちゅーと。

「小泉総理が来てるんですよ!! 思わずガードしちゃいました!」

 チケカウンター前まで出てきてくれた晃さんはそう言う。
 思わぬ来客者にくっついて、劇場内に入ったらしい。やーん、ミーハー(笑)。

 晃さんとはあまり話す時間がないまま、公演時間。
 今度ゆっくりお話しましょーねー。

 さて、小泉首相と一緒にタカラヅカ。

 つってもわたしは2階席だったので、彼と一緒にうっかりテレビに映ってしまうなんてことはないですよ、かめたさん(こんなところでメールの返事・笑)。
 晃さんに譲っていただいたチケットが2階1列目だったんで、1階席の騒ぎはよく見えました。これはこれでたのしいぞっと。

 小泉総理登場でわたしがいちばんどきどきしたのは、『花舞う長安』だけ観て帰らないでくれということでした。
 たとえばYOSHIKI氏は、ショーしか観なかった。自分と関係なかった芝居は観てくれなかった。
 そんなふうに、小泉氏が芝居だけで帰ってしまったらどうしよう。スケジュールの関係とかではじめから決められているにしろ、1部だけで帰ってしまったら、どうしよう。

 あんなものだけを観て、タカラヅカを判断しないでくれ。
 祈るような気持ちだった。
 すっげーどきどきしたよ(笑)。

 べつに小泉氏だからじゃなく、すべての人に対して思うけどな。『長安』だけ観て帰らないでくれ、って。世間に影響力のある人ならことさら。
 あの駄作だけが、ヅカの可能性じゃないから。あれが限界じゃないから。
 『ドルチェ・ヴィータ!』を観てから、タカラヅカを判断してね。お願い。

 結果、小泉氏は最初から最後まで観劇し、そのあともとても愛想よく観客の写真撮影や握手に応えていた。
 政治家ってすげえなー、と思った。
 芸能人も政治家も、同じように人気商売なわけだけど、政治家はここまでサービスいいんだー。へー。
 たぶん1階1列目の大部分の人と、握手をして出て行ったよ、あの人。
 
 わたしはのんきに2階から眺めていただけですが。

          ☆

 およそ2週間ぶりに東宝公演を観ました。
 5公演連続で観たので、記憶は混同、どの公演がどうだったかは、あまりよくわかっていません。

 チェリさんにばらされてしまったので白状しますが、最近芝居で最初から最後まで起きていられたことは1度もありません(笑)。
 カラダにリズムが刻まれているようで、同じところでオチて同じところで目覚めるよーです。すまん。
 いちばん起きていたのは、図らずも農協貸切のときでした。拍手のタイミングや客席の反応がことごとくイレギュラーで、おもしろかったかららしい。

 ショックだったのは、1列目で観劇したときのこと。

 もちろんわたしは、最初から最後まで起きている気、満々でした。
 他の4公演はオチちゃったけど、今回だけは絶対観るもんねっ。誓いの髪飾りも蓮の花もみんなみんな観るんだからっ。
 このチケットを手に入れるために、それなりの労力と手間をかけたんだからっ。元は取るわよー!
 と、息巻いていたのに。

 実際、ちゃんと起きてました。
 観ていました。
 寝た記憶はありません。

 が。

 気がつくと、玄宗が楊貴妃に髪飾りを渡していました。

 あれ?
 なんか、記憶がとんでる?

 おかしい。
 楊貴妃が杯くわえて踊るとこ、観てない。
 てゆーか李亀年の歌、聴いてないぞっ?!

 祭りの夜は観た、梅妃VS楊貴妃も観た、梅妃の「安禄山……!」も聞いた。
 なのに。
 そのあとが何故、「浮気が後ろめたいから、プレゼントでお茶濁し」の髪飾り贈呈シーンになってるの??

 なんで記憶がとんでるの??
 わたし寝てないのに!

「そりゃ寝てたんですよ」

 ドリーさん@今日は仕事で観劇できず、は、すっげー端的に言い切ってくれるし。
「1列目でやっちゃいましたか……」
 って、なまあたたかい目で見るしっ。わーん。

 ごめんよごめんよー。
 そんなつもりはなかったんや〜。

 出演者はいつも熱演ですとも。目にも美しいですとも。
 ただ、どんなにキャストがすばらしくても、作品が破壊されきっているのはつらいんですよ……さめざめ。

 
 ところで2週間ぶりの陳玄礼将軍は、えらく薄くなってました。
 なんで??
 クライマックス、以前ほど傷ついてない。

「情を捨て、義を正されますように!」
 も、えらくあっさりしている。
 ムラでも東宝初日近辺でも、すげえ溜めて言ってたのに。

 『ドルチェ・ヴィータ!』でも、ケロのワタさんやトウコへの愛情表現は控えめになっている。

 ふーん。いつも加速度つけてアツくなる人かと思ってたけど、トーンダウンもするんだー。

 ムラでの「行きすぎた愛情」を知っているだけに、けっこう拍子抜け。
 だってケロの必殺技でしょう? 「公私混同」は。
 素で愛している相手には、つい舞台上でもラヴラヴ光線発しちゃうのよね。微妙に役の範囲内外で。
 そーゆー天然なところ、大好きなんだけどなー。
 役になりきって押さえ過ぎちゃうのって、役者としては正しいけど、「タカラヅカスター」としてはちと物足りない。

 公演も折り返し、あと2週間。
 ヒートアップしてくれることをのぞむ。
 必殺技使っちゃえ、ケロちゃん! キミはいつだって愛の狩人さ!!

 
 唯一ラヴ度が上がっているのが、セーラーのケロしい。

 お前らどこのバカップルですか!!

 初日近辺にわたしを悩殺した「肩組み」や「抱きつき」はなくなってるんですけどね。
 あまり露骨に接触しない分、ラヴラヴ度が上がってて、目眩がします。

「つかまえてごらんなさぁい♪」
「こいつぅ♪」

 を、毎回やるのはどうですか、30男がふたりで! いや、役の年齢設定は知らないけど。ハタチだとしても、変だよ! そんな男たちいねーよ!

 ケロちゃんが、しいちゃんの荷物を持って逃げちゃって、しいちゃんがそれを追いかける、というのは定番になってるよーですね。
 あと、わざと肩やら肘やらをぶつけあって笑っていたり。

 いちゃついてんぢゃねーよ!! と叫びたくなる仲睦まじさ。……てゆーか、恥ずかしいよ、お前ら……。

 5回の観劇のうちいちばんキタのは、きらきらとソロを歌うしいちゃんのことを、真横に坐って、うれしそーに見上げるケロちゃん。
 うれしいのか? そんなにうれしいのかっ?! しいちゃんスマイルを見つめることがっ?! そんなのすでに友情ぢゃねーよ。

 エロスは抑えめ、さわやか路線でホモぶっちぎりのケロちゃんに、めろめろです。

        
 お茶会のあとは、「HOTEL DOLLY」で合宿。
 ドリーさんちは地の利がよく、広くてきれいで、ヅカAV設備完備という完璧さ。すばらしい。
 女の子らしくスパークリングワインで乾杯して、あとは甘いお酒が飛び交っていた。

 いちばんのポイントは、集まったメンバーがケロファンだけじゃないということだろう。

 ムラ楽のときに痛感したんだが、いっそ別のファンの人と一緒にいた方がいいんだ。客観性やある意味突き放した冷静さや、いたわりがあるから。
 ぐずぐずに崩れないでいられるのは、みんながいてくれるから。

 とはいえ。

「今ここにいるメンバーで、星組主要メンバー担当そろっちゃってるよねー。あ、でもトウコ担だけいないか」

 という言葉を笑って聞きながらもわたし、実は首を傾げていたんだよ。
 トウコ以外の星組主要メンバーがそろってる?(ドリーさんは「あたしトウ担でもいいー、トウコちゃんかわいー!」と騒いでました・笑)
 ここにいるのは、ケロとしい、それからまとぶん担当だよねえ? 
 肝心のワタ担がいないじゃん。

 …………すみません。
 kineさんのこと、ナチュラルにしい担だと思ってました。

 そーいやkineさん、ワタさんファンじゃん。素でわかってなかったっ。

 ケロ関連のスカステ映像を途切れることなく流しながら、喋りまくりながら、飲んで食べまくりながら、ひたすらハイテンションに夜は更ける。

 にしても、いちばん愉快だったのは、『JURIの“それってどうなの!?”#6「立樹遥・真飛聖」』を見ているとき。
 しいファンのkineさんとサトリちゃんが最後まで「今日はやめときます、今日はケロさんの日ですから!」と遠慮しまくっていたんだが、深夜3時を過ぎて、わたしが風呂から出てきたときには、ふたりはたのしそーにこの番組に見入っていた。
 ホテル・オーナーのドリーさんはすでにオチているし、その友人のマナさんは帰宅したあとだ。
 リビングの大きなテレビ前に敷いてもらった布団の上で、kineさんとサトリちゃんはしあわせそうにきゃっきゃっやっている。
 元気だなあ。眠くならないのかなあ。てか、若いサトリちゃんはともかく、kineさんわたしと同い年なのに、いつも冷静な人なのに、そのテンションはいったい……(笑)。それにたしか、kineさんだけは素面だったよねえ?

 テレビの中のしいちゃんが、なにか言うたび、表情を動かすたびに、ふたりが歓声をあげてよろこぶんだよー。
 布団の上を転がりまくって、床にアタマぶつけたりしてるの。

 番組よりもしいちゃんよりも。キミら、おもしろすぎ。

「かわいー!!」
 を連発するふたりを眺めながら、「いや、かわいいのはキミらだから!」(微妙にパクらせていただきました、kineさん)と思ってましたよ。

 しあわせな夜でした。

     
「なにやってんですかぁ!!」
 と、後ろから怒鳴られた。
 見れば、ドリーさんとkineさんがいる。
 ケロちゃんのお茶会会場にて。場は握手会の最中で雑然としているときだ。わたしとチェリさんとサトリちゃんのテーブルに、ドリーさんたちがやってきた。

 なにって、あの。

「見てましたよ、なにやってんですか」
 ドリーさんテンション高し。わめくわめく。基本的に穏やかさんなkineさんも、ドリーさんと一緒になってわーわー言っている。

 ドリーさんたちに責められる直前まで、チェリさん他にも責められていたんですが。

 えーと、その。
 よーするに、ケロちゃんと最後の握手をしてもらえるそのときに。
 わたしは、ケロちゃんにお願いをしたんです。

「手を合わせてもらえますか」
 と。

 握手ではなく、手と手を合わせてみたかったの。
 ディナーショーでケロとみなみちゃんがやっていたよーに。

 わたしは、ケロちゃんの手が大好きだった。
 大きくて、セクシーなあの手。

 握手よりも、素直に手を重ねたかった。

 へんなお願いだったんだろー、ケロちゃんは「はあ?」って感じに、それでも快諾して手を合わせてくれた。

 あまり時間を取っては悪いから、じっくり合わせることはできなかった。あわただしくほんの一瞬で終わった。

 舞台であんなに大きく見えるケロちゃんの手は、べつにぜんぜん大きくなかった。
 わたしより小柄な人だから、当然かもしれないけど。
 そうか、べつに大きくないんだ。というのが、おどろきだった。

 どきどきしたまま、お礼だけ言って、逃げるよーに台から降りて。先に握手を済ませていたサトリちゃんのもとへ追いついたら。
「なにやってんですか!」
 あれ?
 わたしのあとから握手をしたチェリさんが、追いかけてきて。
「なにやってんですか!」
 あ、あれ?

 自分の席に戻ったら、次はドリーさんたちが、
「なにやってんですか!」
 あれえ???

 わ、わたしそんなに、変なことしましたか??
 てゆーかみんな、他人の握手するとこなんかちゃんと眺めてるんだ?

 なんでもみんな、わたしのことを心配して、なにかと気にかけてくれていたようです。ムラ茶会があまりにぼろぼろだったので。「あの号泣していた人」とかゆー、恥ずかしい指示語をいただいていたくらいだから、チェリさんはじめ周囲の人がなにげに気遣ってくれていた。
「緑野さん、大丈夫かしら、って心配して見てたのに、なにやってんですか!」
 と、いうことらしい。

 東京茶会はムラ茶会のあの濃密な世界とはちがい、わりとイベント的というかしめっぽくならずに終始した。そのおかげもあってわたしも号泣するほどでもなく、しくしく泣く程度ですんでいた。
 しくしくやってはいたし、いろいろ思うところ感じるところはあったわけだが。
 それとはべつのところで、ケロちゃんの手に萌えていた。
 握手できるのなんか、これで最後だし! 会にも入ってない、入り出もしないわたしが、素顔のケロちゃんと会えるのはきっと最後だし! 楽の入り出はするつもりだけど、人混みの後ろの後ろからこっそり見送るだけで、そばには寄れないわけだし!
 ニアミスはただ一度。接近遭遇するのは今生でこの瞬間が最後。

 それなら、あの手が欲しい。

 ……つーことで。
 お願いダーリン。わたしにその手を感じさせて。

「なにやってんですか」
 と、みんなに責められましたが。
 本能のままにわたし、行動してました。悔いはない。ありがとうケロちゃん。

 わりとわたしはモノを考えずに生きてその場その場で行動しているので、いざ手を合わせたときに「はっ、爪塗ってくるべきだったっ」と歯がみしましたが。手を合わせただけだから、ダーリンにわたしの爪は見えないけど。でも、ダーリンの手と合わさった自分の爪が生まれたままの姿だったことに、恥じらいを感じました。

 それを言ったらドリーさんに、
「『長安』なんか観ているからですよ」
 と言われた。
 ドリーさんはわたしが『花舞う長安』を眺めているうちに、美容院に行っていた人だからなー。たしかにヲトメたるもの、『長安』なんか観ている場合じゃないよなー。

 でもさ、「手」って、裸の部分だよねえ。とか言ってみる(笑)。
 せっかく裸なんだから、裸のままでいいか。生まれたままの姿でいいか。変になにか塗ったりつけたりせずに。
 わたしを魅了したあの手に触れて、感じて、そのまんまのわたしでいるのも、オツかもしれない。

 ケロちゃんと合わせた手で、自分の頬に触れてみる。
 そこにもうぬくもりは残ってないけど、記憶は消えないから。
 この手は、あのひとに触れた手。

 ムラ千秋楽で、泣き出したトウコちゃんの手を握っていた、あの手だよな。愛する者をつつむ手なんだよな。

 翌日もそのさらに翌日も公演を観たけれど、そのたびに「ああ、あの手に触ったんだよなー」とぼーっと考えたよ。
 やっぱあの手、好き。

 端正なオールバック姿のケロちゃんは、なんかもー観音様のよーな風情でした。
 きれいとか美しいとかいうより、「正しい」姿だと思った。地球が正しいように、ここにいるこの人が正しいんだ。って、そんな感じ。

 運のないわたしはもちろんなにも当たらないし、グッズ購入特典の福引きでは2分の1の確率でハズレを引くし。たった2枚しか抽選券が残ってなくて、特賞がまだ残っていたにもかかわらず、わざわざハズレを引くのかわたし。なんてハズさないんだ。
 会場は信じられないほど広くて、壇上のケロちゃんは遠いし、わたしたちの席は歌の巡回コースからははずれているし、ムラ茶のあの小さな場所での凝縮された雰囲気からは程遠くある意味拍子抜けして、ある意味ほっとして。

 とりあえず語り継ぐべきコトは、オギーを泣かせた男・汐美真帆ってコトかな。あれっ、女だったけか?(真顔)
 てゆーか、泣くんだオギー。
 ケロのために泣いて、そして、ケロのためにあの泣かせるディナーショーだの、『ドルチェ・ヴィータ!』だの作ったんかい。
 ケロはそれほど「オギー役者」であるとは思っていない。オギーの好みではあるだろうけど、トウコやかよこほどハマっているとは思えない。
 ムラの『ドルチェ・ヴィータ!』では、ケロはケロであるがゆえに、作品を壊していたし(笑)。
 そんなヤツをそれでも愛し、あそこまでの仕事をしてくれたんだと思うと、感動する。

 
 感謝の気持ちが満ちていく。
 いろんなものに、人に。

 9月2日の発表以来。

 かなしい分だけ、やさしさに出会っている。
 ケロちゃんや、舞台の上の人たちにもそうだけど。

 わたしの周囲の人たちや出来事も。

 失う分以上のものを、得ている気がする。

 ねえ、世界ってさあ、こんなにやさしかったかなあ。
 こんなに美しかったかなあ。

 うれしくて、いとしくて、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 いつかわたしも、やさしく強い人になって、傷ついている人になにかしてあげられるよーになりたいと、心から思う。

 ケロちゃんをますます好きになるのは、こんな気持ちを教えてくれたからだ。
 かなしくて、透きとおって、かなしみがうつくしさやいとしさに変わるくらい、昇華してしまうこと。

 なにかを突き抜けたよーにうつくしいお茶会のケロちゃんを見ながら、そんなことを思った。

    
 ケロ尽くし、夢の3日間を過ごし、よーやく帰阪しました。

 どれだけ夢の中だったかとゆーと、この3日間一度も猫のことを思い出さなかったくらいです。
 今までどんな旅行のときも、残してきた猫のことを思い出さない日はなかったんですが。

 帰りのバスの中でみんなの日記読んだんだけど、おもしろすぎだキミら。笑いかみ殺すの、大変だったよ。

 もずえさんにはついに、わたしがドイツ人だってことをバラされちゃうし。はなはなさんはじめ、わたしに会ったことある人たちはみんな、黙ってくれてたのに(笑)。
 
 さえバウ初日は、もずえさんとの初デートでした。
 かわいいイラスト入りのお手紙までもらっちゃった。あの空回り日記のノリの、手書きのお手紙っすよ? すばらしいですよ。感涙必至ですよ。たとえ内容がハトのことに終始していても(笑)。
 しかもこのお手紙、まちかめぐるのイラスト付きなんですよ?! まちかめぐるですよ?! コムちゃんでもトド様でもなく、よりによってまちかめぐる!!
 ……ありがとう、もずえさん。

 もずえさんとは短い逢瀬の間にいろいろ濃くお話したんですが、とくに日記のネタについては盛り上がりましたね。
 もずえさんが「こんなふうに書いたりして」と言ってくれたので、わたしも「じゃあそれを受けて、こんなふうに書くわ」と宣言。
 日記による夢のコラボレーション。ひとつのネタをふたりで展開!! ……なんてね。

 Shout!の誠さんにもちらりとお会いできて、うれしかったです。もずえさんから直前に聞いて「えっ、あのレシートの人?」と心の中で叫んでしまったんですが、ひょっとしてわたし、声に出してました?

 
 そして東宝にて、いつも熱いメールをくださる晃さんとの束の間の逢瀬を経て、怒濤のケロ茶とケロ合宿(ケロしい合宿?) in 「HOTEL DOLLY」。3日間で5公演連続フル観劇、はてしなく濃く熱い時間を過ごして帰宅。

 それにしても、「HOTEL DOLLY」をあとにしたのはわたしがいちばん遅かったわけですが(ドリーさん、ありがとう!)、先に帰宅していた仲間たちの日記にもれなく「お茶会での緑野の行動」の前振りがしてあるのはなんなんですかー。
 わたしそんなになにかやらかしてました? やったとしたら握手の件だけだし、握手だってそんな、思わせぶりな前振りが必要なものでもなし。……ねえ?(誰ともなしに同意を求める)

 この3日間、情報量が多すぎて、みんなと過ごした時間がたのしすぎてせつなくて、なにから書いたらいいのかわかりません。

 みんなみんなありがとう。緑野はすっげえしあわせでした。とてつもなく涙腺弱くなってるので、いろんなとこで泣きが入りますよ。ありがとー、みんなと過ごせた時間やかわした会話を思い出しては、泣けてくるんだよー。笑って話していたことでも、あとになると、泣けてくるの。
 年をとると涙もろくてねえ……さめざめ。

 
 膝の上から降りない猫がいい加減重くて仕方ないので、そろそろベッドへ移動しますわ。日記はぼちぼち書きます。ねーむーいー。

        
 さて、2日連続さえバウ『熱帯夜話』です。今日はプログラム売ってました。みんな当然プログラム買ってます。昨日もらったコピーを眺めているのは、わたしぐらいのもんです(貧乏人)。

 作品的には、退団バウ公演である、という事実ゆえに成り立っている感じ。
 ヒットパレードと、名前をもじった役名、舞台人たちの舞台と楽屋裏の物語、文化祭前夜を思わせる青春のかほり、そして、地球最後の日。

 サエール@さえちゃんを座長とするある劇団。無事に初日の幕が開いて、サエールは仲間たちとある高層ビルに忍び込んで打ち上げをすることになった。何故高層ビル? 何故忍び込む?! ……なんてツッコミは置いておいて。
 劇団内は自由恋愛奨励らしい。
 アーチー@あーちゃんとサエールは、元は恋人同士だったが今は別れて、アーチーには別に恋人がいる。リュウ@越リュウはなんかえらい年離れてないか?の若い団員の女の子ネネ@ねねちゃんとラヴラヴらしーし、お調子者のカーリー@ほっくんはシーナ@たまこちゃんにアタック中。……てな具合に。
 学校の七不思議と同じノリで、この高層ビルにも「幻の90階」が存在するとかで、サエールたちはそれをたしかめることにする。「学校の怪談」じゃないんだから、そんなバカな……というツッコミは置いておいて。
 階段を上がれ上がれ、あれ?なんかみんなと離ればなれ? 螺旋階段は夢かうつつか、感覚をマヒさせて。
 サエールの前にはさっきから、イカレた格好のふたり組、船長@さおたとティンク@れみちゃんが現れてはなつかしい思い出を見せている。ふたりは何者? そしてその目的は?
 それだけで引っ張るのかと思いきや、突然現れたるマギーJr.@マギーが臨時ニュースを読み上げる。巨大隕石が地球に激突するとゆーのだ!! そんなバカな……というツッコミは置いておいて。

 なにしろ劇団の話だから。
 あたりまえに彼らはステージに立ち、またさえちゃん……サエールは人気スターで。彼には、「なつかしい舞台の思い出の役や歌」があり、それを「彩輝直の思い出の役や歌」として再現できる仕組みだ。

 
 それにしても、物語としてなにがやりたかったのか、なにを言っているのか、わたしのアタマではさっぱり理解できませんが、退団バウ公演だから言及せず!(通常公演だったらツッコミまくるぞ、ヲイ)
 さえちゃんのサヨナラを盛り上げる、という至上目的があるから、辻褄あわなくてもポエムがサムくても作者脳内自己完結で観客置き去りでも、とりあえず赦す(笑)。
 全編「オギーを目指して、スベっちゃいました☆」てな作りなのも、赦す(笑)。
 それとも、オギー役者であったさえちゃんのための、オマージュかしら。オギー作品のパロディっぽくなっているのは。

 ストーリーは置いておいて、とにかくさえちゃん。
 いろんなさえちゃんを、「全部見せてやるぜ!」な心意気がうれしい。

 今日も気持ちよく泣いてきました。
 泣けば泣いた分だけ、きれいな道ができる。わたしがさえちゃんを見送るための道。退団者を見送る道。うまく泣けずにいると、未練が積もって、いろんなものが愛せなくなってしまう。きれいな人を見送るために、わたしもきれいになる、そのための涙。退団公演に「泣かせ」演出がしてあるのって、そのためだと思うよ。
 ケロの舞台にしてもそうだけど、泣きポイントって観るたび変わるよね。舞台が生もので、観ているわたしも常に心が動いているせいだと思う。いろんなところでいろんなことを感じて、思って、毎回チガウ涙を流す。

 それにしても、「ローズ」は反則でしょう。
 ついこの間、この歌を歌って「宝塚での最後のお仕事です」とか言っていた人がいたんですけどっ?
 退団する人はみんなこの歌、歌わなきゃなんないの? 決まりなの? しかもふたりとも歌がへ……ゲフンゲフン。

 言葉を濁したあとで言うのもなんですが。
 それにしてもさえちゃんって、ほんと歌下手だよな(笑)。

 彼女が歌い出すたび、ツボに入って笑いそうになる。
 ケロを見ていても思うことなんだけど、「歌が下手」であることをわかったうえで好きになっちゃうと、その「歌の下手さ」すら、チャームポイントになっちゃうんだ。
 うっわー、またしてもすげーことになってんなー。ああでも、いいわあ。ぽわん。……てな感じ。
 下手さが愛しいというかな。こまったな(笑)。

 第1幕は、さえちゃんヒットパレード。
 オスカル、という派手な当たり役を持っているのは強いよな。『ベルばら』はとにかく派手でインパクトのある作品だから。コレでまず一発カマシてくれると、あとのヒットパレードが盛り上がりやすくなる。

 それにしても。

 あああ、ほっくん。
 えーとえーとえーと。

 ほっくんファンの人、今すぐバウホールへ行きましょう。駆けつけましょう。ほっくん、えらいことになってますよ。

 ほっくん、フェルゼンやってますよ!!

 目が点になったもんよ……フェルゼンですか! よりによってフェルゼンかよ?!
 びっくりだ。

 いや、歌はすばらしかったですよ。聞き惚れましたともさ。ああ、それにしてもフェルゼンって……。ハマコがフェルゼンやってたら、これぐらいおどろくかな。

 そんでもってほっくん、女装もしてますよ!!
 女になって、さえちゃんと色っぽく踊ってます。
 どどどどどーしよー、あたし、なにを見てるんだろう。ほっくんが女だよー、うわー。

 2幕では、悪の美青年さえちゃんに誘惑される青年をやってますよ。ラヴシーンありっすよ! からんでますよ!!

 はあはあ。ほっくん、すげえ。ほっくん見るだけでも値打ちあるって、マジでコレ!

 あ、つい熱く語ってしまった。
 ほっくんはわたしにとって、月組の「まちかめぐる」の位置にまで出世した子だからなあ。さえちゃんを語るはずが、ついほっくんを語っちまったよ。
 今回ほっくんマジいいから、ぜひ見ておくべきだー。

 
 いかん。思いっきり横道に逸れてしまった。

 えー、とにかく、さえちゃんヒットパレード。
 時の流れと思い出と、「もうお別れなんだ」というこちらの先入観ゆえに、舞台上の「青春のかほり」や、「そのポエムはいったい?!」のさおたさんだの、ピーターパンだの、突然すぎてびっくりの「地球最後の日」も、ついでに最後の楽屋落ちも、「サヨナラさえちゃん」を盛り上げる要因になる。

 めそ。

 
 ところで、夢咲ねねちゃんが新公シシィに抜擢された理由のひとつは、あさこと同じドレスを着られる娘役という要因を満たしているからではないかと。
 ねねちゃんって身長、あさこと同じくらいだよね? 文化祭観たけど、ありえないくらいでかい娘役だった記憶が(笑)。
 とりあえず、脚長っ。いつ見てもボンバーだ。

 
 うっかりほっくんを語りすぎたために、文字数も時間もなくなっちったよ……さあっ、明日はケロ茶だ〜〜!!

     
 わたしにこの芝居を見せろっっ!!(鼻息)
 

 さえちゃん主役で、なにが見たいですか?
 オギー演出のセンシティヴ・ストーリーが見たいです。はかなくも美しいものが見たいです。
 ああ、だけど。

 そうよ、そうなのよ。
 さえちゃんは、ソレだけじゃないのよ。

 さえちゃん主役で、江戸川乱歩『黒蜥蜴』!! しかも黒蜥蜴は美青年でよろしく!

 彩輝直バウ・パフォーマンス『熱帯夜話』初日に行って来ました。
 退団発表ゆえチケットが手に入らないにちがいないとヘコんだわたしでしたが、現実って不思議、バウホール下には「当日券発売中」の文字が。あ、ありえねえよ、そんな……。
 ファンはいくらでも何回でも観ることができるってことだけど、それってうれしいやらかなしいやら……。

 しかもどういうことなの、「プログラム発売延期」。入り口で、キャスト表のコピーを配ってました。これがほんとに、ただのコピー。なんの工夫もない、ただの白黒コピー。事務所のコピー機であわてて刷りました、てなびんぼーくささ。
 プログラム売場では、他に売るものがないので、「彩輝直のクリアファイルいかがですか?」と、おねーちゃんたちが呼び込みをやっていた。

 なんかいろんな意味で、ものがなしい幕開き。

 でもそんなこと、どーでもいいんだ。

 たのしかったからっ!!

 2幕の最初に「劇中劇(ショー)」があるんだけどねっ、これがもー、もろツボ!!

 「美賊・黒薔薇」よ?!

 舞台は大正期くらいの館の舞踏会。
 伯爵夫人だの男爵夫人だのが、ドレス姿で踊っているのよ。カーキ色の軍服を着た帝国軍人もいるわ。振り袖姿の令嬢と、その恋人らしいスーツ姿の青年。
 館の主は、妖艶な和服の美女。
 まさに江戸川乱歩の世界。「黒蜥蜴」の世界。

 美賊・黒薔薇のターゲットは、舞踏会に招待されていた美しい令嬢。

 館の主・黒瀧夫人とは仮の姿。彼女……いや、「彼」こそが、黒薔薇なのだ。

 美しい青年の姿となり、黒薔薇は令嬢を弄ぶ。
 黒薔薇を追う探偵、令嬢を追う恋人の青年。

 令嬢を「コレクション」の一部に加えた黒薔薇は、次に彼女の恋人の青年までを毒牙にかける。妖しいまでの美青年・黒薔薇に翻弄され、恋人青年もまた、彼の「コレクション」に……。

 そして探偵と黒薔薇の戦い。黒薔薇を捕らえるはずの探偵もまた、彼の手のひらの上で踊るのだった……。

 という。

 あるときは妖艶な美女、あるときは美貌の青年……美賊・黒薔薇が、さえちゃん。
 和服姿がたまりません。洋館に和服の女主よ? 螺鈿のよーな暗いきやびやかさ。
 美青年のときはもちろん洋服だしねっ。

 これだけでもたまらないのに。

 いちばんツボを直撃した配役は。

 探偵@越リュウ!!

 ホームズを彷彿とさせるフロッグコートで登場、端正なスーツ姿。
 冷静に館に立ちながらも、次第にかき乱されていく様がもう。

 「探偵と怪盗」ってのは、永遠の萌えシチュエーションよね?!

 究極の愛憎、エロスよね?!

 探偵@越リュウ×美賊@さえちゃんっすよ?!
 大正ロマンっすよ?!

 萌え〜萌え〜萌え〜。

 くるくる回っちゃうわ。
 これぞ耽美ってもんですわ。

 この話を、1本の芝居として見せろっっ!!
 ショーの一場面じゃなくて、バウでいいから、ふつーに芝居として公演として独り立ちさせて。お願い神様。
 観たいよ。観たいよ、この芝居。

 ストーリーはありがちワンパタでいいから。
 ただ美しく妖しく、耽美をきわめてくれればいいの。
 漆に金箔、とかの暗い日本の美しさを見せてくれればそれでいいの。

 悪のさえちゃんと、悪を追うはずがいつの間にか惹かれているリュウ様が見たいの〜〜っ、じたばた。

 他のキャスティングもそのままでいいから。
 黒薔薇に籠絡される青年がほっくんなのは、正直どうよ、と思うけど、それすらそのままでいいぞ。
 ほっくんに耽美は似合わないけど、彼の健康さが「僕ノンケです」と言いたげな真っ当な青年らしさに合っていたとは思うから。

 
 思いがけず、堪能しました、『熱帯夜話』。
 なにをやるのか、どーゆーコンセプトの催しなのかもわからないまま観に行ったんですが。
 素直に、おもしろかった。

 切っても切っても彩輝直、さえちゃんを好きなら至福のとき。
 他のみなさんもみんなそれぞれ見せ場があり、オイシイぞ。

 出演者のファンなら、見て損はないっしょ。
 チケットまだあるみたいだから、行くがよろし。

 とくに、さおたさん、ほっくん、越リュウはオイシイぞ〜〜。
 ヒロインのあーちゃん見るのもひさしぶりだしな。
 新公シシィ役の夢咲ねねちゃんをチェックしたい人も、見るがヨシ。

 あと個人的に愉快だったのが、愛を語る越リュウが見られたこと。

 越リュウってほら、キャラ的に、恋人がいてラヴラヴで、マジに告白して、って役をやらない人じゃん? 脇役者だから、と言ってしまえばそれまでだが。

 しかし今回、劇団員リュウ@越リュウには、恋人がいるんですよ。男一匹、本気で惚れたたったひとりの女なわけですよ。
 その彼女に向かって、愛を語るのよ。

 女の子と向かい合っていちゃつくんじゃなくて、その場にいない恋人に向けて独白するわけだから、客席に向かって、愛を語るのよ。

 リュータロー様の熱っぽい視線が、愛の言葉が、わたしに向かっている?! てなカンチガイをさせてもらえますよ?!(笑)

 愛に濡れる越リュウ……ハァハァ。

 
 濃くていいステージでした。
 他の語りはまたのちほど。

     
 わたしのアタマの中にあるのは、クラスで劇をやろうとするのび太くんたちの姿だ。

ジャイアン「おい、オレの役はいい役だろうな」
のび太@何故か脚本係「も、もちろんいい役だよ」
ジャイアン「台詞が少ないんじゃないか? ここで台詞を増やせよ」
のび太「ええ? でも……」
スネ夫「ここで『このままでは陛下といえども、問題もございます』って入れればいいんじゃないかな。そしたら、ものすごーく難しいことをやる人、みたいじゃない?」
ジャイアン「よし、それだ。それでいこう」
のび太「そんなこと言ったら、物語がおかしくなるんじゃ……」
ジャイアン「なんだと? のび太のくせに逆らうのか?」
スネ夫「のび太のくせに!」

 ……なーんてね、フフ(半ば自棄)。

 『花舞う長安』の台詞重複の話、続き。

 ただでさえ駄作で目も当てられない話だっつーのに、それをさらに耳障りにする重複台詞の山。
 それらのほとんどが、よりによって専科の星原さんの台詞と見せ場なのが、とてもいやな感じ。

 政治的なモノが感じられて。

 なんですか、つまり、星原さんつーのは、ヨイショしないとイカン人なわけですか?
 おべっかつかわないとイカンのですか?

 星原さん自身がそんなこと求めてないとしても、そーゆー風に気を遣って作品壊さなきゃならないよーな立場の人なんですか?

 それとも、酒井せんせが星原さん大好きで、彼の出番を増やしたくて無茶したわけですか?

 星原さんのためだけにしたことだとしても。

 逆効果だから! 余計なコトして、余計高力士をバカっぽく見せているだけだから!!

 政治的だか個人的だかわからないが、なにかしら意図があるんだろう、この偏り方は。
 世の中きれいごとだけじゃ回らないから、それはべつにいいよ。
 ただ問題は、「そーゆーことは、観客にわからないようにやれ」ってことですな。

 こんなにバレバレで、しかも台詞の重複とかゆー、いちばん稚拙な方法で出番水増しして、作品のレベルさらに落として、高力士の賢さにも泥を塗って、なにもかもめちゃくちゃにしてしまっている。

 心から、思うよ。
 酒井ってほんと、バカなんだな。 溜息。

 わたしが星原さんなら、こんなヨイショの仕方はありがた迷惑だわ……。
 重複させない、たった一度の台詞で、ちゃんと重厚さを表現できる人なのに。星原さんに失礼だわ。

 
 重複台詞がバカに見える、見本をあげておきましょう。

すずみん「都、長安へ攻めてくるのも時間の問題かと思います。ヤツは陛下を裏切ったのです!!」
玄宗「わかった。安禄山め。……よくも裏切ったなっっ」

 だからっ、今さっきすずみんが「裏切ったのです」って言ってたじゃん!
 玄宗、人の話聞けよ!!

 ここのやりとりはほんと、玄宗がバカに見えます。
 「裏切った」は、1回だけにしておけ。すずみんか玄宗か、どちらかだけが言え。どっちが言っても問題ない。ただ、重複した場合、あとから言った方がバカに見える。

 あ、すずみんの役名おぼえてないもんでな。ひとりだけ役者名ですまん。

 
 画面だけ眺めていたら害のない舞台なんだけど、この台詞の重複が耳障りで耳障りで。
 こんな言語センスのない台詞は、聞いていてつらいのだわ。
 思わず推敲しろよ、と思ってしまうもん……。つーか、誰も添削してやれないのか……やれないのがヅカだよな……しょぼん。

 博多からこっち、ハコが変わるごとに期待したよ。誰か教えてやれよ、と。重複してるよ、まちがってるよ、と。
 でもずーっと、まちがったまま。
 まあ、某元理事長が「少しも早く」を決め台詞にしているくらいだから、日本語のマチガイなんか、どーでもいーんだよなー。齋藤作品なんか大地に膝をついて脱力するくらい、日本語まちがいまくってるもんなあ。
 それでもいいんだもんなあ……。

 
 重複台詞の例をいちいち抜き書きするのがめんどーで、今まで書かずにおりました。
 他にも耳障りな部分はいろいろあるんですが……も、いいや。

 安禄山@トウコの、

「身分を考えたから、ここまで登りつめてきたのですよ。へっへっへっ、これ以上の肩書きがいるのですか」

 究極の助平笑いですべて、帳消しにしておきますわ。

 へっへっへっ、て……。

 いくら悪役だからって、その笑い方はどうなの……?
 やりすぎ……やりすぎだよ、トウコちゃん!!(笑)

 そのときによって、「ふっふっふっ」だったり「はっはっはっ」だったりするんですがね。
 「へっへっへっ」と言ってるときも、多いっすよ。

 好きだぜ、安禄山!
 その潔い助平ぶりが!!(笑)
 中年はそーでなきゃねっ!!

  
          ☆

 こんなところでなんですが。

 かめたさん、ワインとお茶、ありがとー。
 家族で大喜びしていただいてます。

 ママと弟とわたしとで、乾杯しましたよ。
 弟は、普段絶対に家では飲まないんだけど、あのワイン見たら、のそりとグラス持って来て坐ったよ。ツボに入ったらしい(笑)。
「甘い酒か。甘いのなら飲んでやろう」って。甘党だからな〜〜。

 おいしゅうございました。
 ほんとにありがとう!!

     
 いつか書こう、と思いつつ、めんどくせーので先送りしてきた話題。

 あの有名駄作『花舞う長安』にも、いいところはちゃんとある。
 主役カップルがラヴラヴなことや、衣装が美しく豪華であり、安禄山以外はみんな似合っていること(好きだけどな、あの似合ってなさが・笑)や、舞台上に目にたのしい美しさを全編保っていることなど。
 つまり、脚本以外の部分だけにしか取り柄がない、物語以前の作品であることには変わりないんだがな。

 物語としてはまず成立すらしていないので、なにも語る気にはなれないが、アタマを空っぽにして「これは物語ではない。これは物語ではない。これは物語ではない」と自分に言い聞かせて眺める分には、美しくていいのかもしれない。
 観葉植物とか、水槽の熱帯魚を眺めるハートで。

 そう思ってわたしはなまあたたかく眺めてきたんだが、どーしても耳障りな台詞がある。
 言い回しがどうとか、正誤だとか、時代考証だとか、そんな小難しい話ではない。

 台詞の重複が耳障りなんだ。

 なんでそう、同じことを繰り返し言うの?
 それも、ふつーの台詞じゃなくて、説明台詞を。
 説明台詞ってのは通常、「あまりやってはいけないこと」だよねえ?
 他の部分で表現すべきことを、時間がないとか技術がないだとか、もろもろの理由で「台詞で説明する」なんてこと。
 台詞ってのは人間の会話のはずで、ふつーに生きていたらそんな不自然なことは言わないが、芝居の進行上仕方なく、だらだら説明させる。技法としてアリだけど、あまり格好のいいものじゃない。下手な作家ほど説明台詞を多用する。
 1回言わせるだけでもかっこわるいっちゅーのに。
 それを何回も繰り返すのは、なんの意味があるの?
 2度繰り返さないと、観客が理解できないと思っている?
 しかし、それほど難解な事柄を説明しているわけではないので、よーするに作者がバカなんじゃないの? と、わたしは思っちゃうんだよなあ。

寿王「玉環は、私の妃となる女です」
玄宗「わかっている。お前には追ってもっと素晴らしい他の妃を迎えるようにしてやろう。高力士、お前に任せる」
高力士「と申されても、玉環様は寿王様の妃におなりになられるお方でございます」

 このノリで、台詞は重複しまくり。
 この場合、高力士の「玉環様は寿王様の妃におなりになられるお方でございます」は、いらない。その直前に寿王が説明しているんだから、ここで繰り返す意味はない。むしろまちがっている。
 「と、申されても……」で、止めておけよ。一から十まで説明するから、作品がよりバカっぽく見えるんだ。

玄宗「安禄山が言うには、その方が世にもまれなる宝を手に入れたというので(略)」−−1
玄宗「玉環のことを知らせたのは、安禄山とお前(高力士)ではないか」−−2
玄宗「お前(高力士)が、武恵妃に瓜二つの娘がいるゆえ、ごらんになりませんかと言った(略)」−−3&C

 玉環のことを聞いた、ってだけのことを、なんで立て続けに3回も言わなきゃならないの?
 1回で十分だ。

 しかも、

玄宗「本当によく似ている、瞳が武恵妃に生き写しだ」−−A
高力士「陛下、いくら武恵妃様によく似ているとはいえ、玉環様をお連れになるとは……」−−B

 の台詞のあとに、前述の−−3&Cの台詞を言っているので、ここでも重複。なんで3回立て続けに「武恵妃に似ている」ってふたりで言うの?

 言語感覚が鈍い、としか思えない。
 無駄なんだもの。説明台詞の重複なんつーもんは。

 基本技術として、台詞重複は耳障りでしかないというのに、その「失敗例」がほとんど高力士@星原さんに集中しているっていう事実がまた、いやな感じがするんだよな。

 たったひとりに集中するのって、変じゃないか? 主役ならまだしも、ただの脇役だよ? 狂言回しでもナレーターでもないんだよ?

 そんな偶然はあり得ない。
 作為があるから、こんな結果になったとしか思えない。

 例を出そう。

玄宗「しばらくは高力士の言葉に従うといい」
高力士「このままでは陛下といえども、問題もございます」
玄宗「だから、お前に任せると言っているではないか」
高力士「玉環様を芳楽公主様のもとにお預けしましょう」

 これは台詞自体は重複していないが、やりとりとしてはまったく無駄だ。
 玄宗は高力士を信頼し、はじめから彼に「任せる」と言ってる。なのにわざわざ高力士が異を唱え、玄宗に同じ意味の言葉を繰り返させ、結局は「高力士にお任せください」という結論に至る。
 だーかーらー、はじめから任せる、了解、で済むことを、なんでこんなにまわりくどく意味の重複をさせなきゃならないのよ?

 この無駄なやりとりで得をするのは、高力士だ。
 まっすぐなロープに結び目を作ってそこで流れを止める。物語としては無様になるが、高力士というキャラクタに「見せ場」ができる。
 とりあえず、高力士が有能である、ということを印象づけるエピソードになる、だろう(わたし的には疑問だが、いちおーな)。

 だが、なんのために?
 高力士は主役ではない。わざわざ物語の流れを堰き止めてまで、見せ場を作る必要はない。
 内容を重複させなくても、高力士が有能であることは表現できている。なのに何故、ことさらにまだるっこしいことをする?

玄宗「しばらくは高力士の言葉に従うといい。高力士、任せたぞ」
高力士「わかりました、玉環様を芳楽公主様のもとにお預けしましょう」
玄宗「なに、姉のところに? (略)さすがは高力士だ」

 と、ちゃんと話はつながるのに。
 わざわざ重複させる真意は?

高力士「お妃様は、いかなることにも、見えない振り、聞かない振り、ましてやご政情に関することは一切お話になってはなりませぬ」
楊貴妃「それは何故?」
高力士「宮廷では、見猿、聞か猿、話さ猿」
楊貴妃「……わかりました」

 それは何故、ってなんでいちいち聞き直させる?
 聞き直させて、どんなすごいことを教えてくれるのかと思いきや、「同じことの繰り返し」。意味ないじゃん。

 ここも、先述の例と同じ。
 台詞を重複させ、流れを堰き止め、やっていることは、高力士の見せ場作り。

高力士「お妃様は、いかなることにも、見えない振り、聞かない振り、ましてやご政情に関することは一切お話になってはなりませぬ」
楊貴妃「……わかりました」

 で、いいじゃん。わざわざ重複させなくても、十分高力士が有能だということはわかるって。
 むしろ、重複させることでよりバカっぽくなってるんですけど。

 無駄な、意味のない重複。
 それがみな、高力士のスタンドプレイ・シーン。

 このことが、さらに作品の質を下げている。

 なんかコレって……すごーくヤな感じなんですけど……。

続く

    
 お茶会のために上京するのは何ヶ月も前に決まっていたことなのに、交通機関の予約をきれーさっぱり忘れていた。
 いつものバスが売り切れ!!
 あわてて他のバスを探す。
 ……がっ、すべて売り切れてるってばよ。びっくりだ。
 ネットで探せるところは上から順に空席情報をクリックしていったけれど、全部「残席数0」。

 仕方ないなー、めんどくせーけどあそこにするか。

 と、昔何度か使ったバス会社に電話する。今どき電話。HPなし。

「はい、あと40席ほどありますので、大丈夫ですよ」

 ……あれほど、他社のバスは売り切れてるのに、40席ってそんな……(笑)。
 いつもいつも、ここのバスは「売り切れることはまずないですから、ご安心を」って素敵なセールストークしてるもんな。それってどうなの?(笑)

「では、チケットを買いに店頭まで来てください」

 と言われるので、めんどくせーのだ。この現代に、現金持って買いに出かけなきゃならないなんて。自宅でネット入金とかさせてくれよー。

 いつも絶対売り切れない、という安心感があるから、好きは好きだけどな(笑)。

          ☆

 さて、DVDレコーダが復活したので(修理のにーちゃんを迎え入れるための掃除に疲れ果てた)、さっそく『花舞う長安』を見ました。
 ええ、発売前日にいそいそキャトレに買いに行きましたわよ。

「あっ、やっぱりもう売ってる。買わねばっ」
 とよろこぶわたしに、Be-Puちゃんがひとこと。
「でも今日、見られないのよね」

 …………そーよ、見られないわよっ。レコーダ故障してるからなっ。泣。

 でも買う。

「どーせ今見られないなら、先にあたしに貸してよ。レコーダが直った日に電話くれたら、緑野さんちまで届けに行くから」

 やだっ。封を切るのもいちばん最初に見るのも、購入したわたしだ〜〜っ。

 がるがると吠えるわたしに、Be-Puちゃんは「はいはい」といなしてくれる。
「んじゃレコーダ復活したら、教えてよ。見に行くから」
 それならヨシ。上映会するかい?

 
 『花舞う長安』を見た、といっても、バスの残席探ししながら流していただけだから、集中して見ていたわけじゃない。このソフトはひとえに、『ドルチェ・ヴィータ!』のためだけに買ったので、『花舞う長安』は不可抗力で勝手にくっついていただけ。まあ、おまけ程度の気持ちで眺めた。
 おかげで、アングルが気に入らないとかの不満もない。熱意もない。まー、こんなもんぢゃろ、って感じ。

 
 さて、その『花舞う長安』で。

 わたしのいちばん好きな、玄宗の台詞を白状しましょう。

 安禄山が反乱を起こし、玄宗たちは敗走、「悪の源は楊貴妃にあり、楊貴妃を殺せ」と民衆が言ってるよん、と最後の忠臣たちが玄宗を説得しているシーンにて。

 玄宗が言う、

「黙れ! このたびの事件、お前たちにも責任があろう」

 という台詞。

 いやーもー、すばらしい台詞ですね。
 それまで玄宗は人畜無害のバカだったんですが、この台詞で傍迷惑なバカに成り下がるという、決定打台詞ですよ。
 てめーの阿呆さを弱い立場のモノに押しつけ、自分を正当化するいやらしさ。
 ……ここまでバカだったのかっ!! と、観客を絶望の谷に突き落とす、究極の最悪台詞。

 ワタさんファンはきっと、この台詞を憎んでいると思います。
 せめてこの台詞がなければ、最低限玄宗の人格をフォローすることができるのに、と、ハンケチを噛みしめていると思います。

 でもわたしは、この台詞が大好きなのだ。

 だって。
 愛する玄宗にこう言われたときの、陳玄礼@ケロの傷ついた表情が絶品だから。

 いやあ、いいですよ、玄宗。もっと言っちゃって!! ひどいこと言って、陳玄礼を傷つけてくれっ!
 おちゃめなこと言って笑っているときより、目つき鋭く悪だくみしているときより、陳玄礼……というかケロちゃんは、傷ついた顔をしているときの方が、色っぽいから。

 だもんでこのシーンは、終始ケロの表情が絶妙です。
 陳玄礼、傷つきまくり、苦しみまくりだから。

「貴妃を殺すなら、私を殺せ!」
 も、いいですな。
 このときの陳玄礼がまた、いい顔します。

 そっか……そんなに玄宗が好きか……。
 この阿呆男に惚れきってるのか……。ほろり。

 DVDにはもちろん、ろくに映ってませんがな。玄宗とか楊貴妃とか映しているから。
 しかも玄宗、「ぼーぜん」バージョンじゃん、これ。絶叫しないし、崩れ落ちないんだ……。

 ぼーぜんバージョンの玄宗と、それを最後まで見守る陳玄礼は、「玄宗のヤツ、絶対陳玄礼のこと逆恨みするぞ」と思えて、それはそれでたのしかった。
 玄宗の弱っちぶりと、小物ぶり、なさけなさが実にいい。なにしろ「このたびの事件、お前たちにも責任があろう」とか言っちゃう人ですから! 楊貴妃が殺されたのは、自分以外の誰かのせいにするにちがいない! ってことで!
 ぜひそのことで、陳玄礼を責めてくれ。
 ソレって完璧にただの言いがかりじゃん、てなことで責められ、耐える陳玄礼が見たいっ。ハァハァ。

 ムラの後半の、絶叫バージョンはねえ。あまりにも玄宗が痛々しいのと、最後まで陳玄礼が後ろに立っているのがわかるよーになんとなくライトが残るよーになったせいもあり、「なにをしているアンドレ、ぢゃねえ、陳玄礼、そこで玄宗を抱きしめろ」と、拳を握っちゃうのだわ。
 そのまま別次元・別物語突入していいからっ。抱きしめろ、傷ついた小鳥ちゃん(ばかデカイが・笑)を抱いてなぐさめてやれっ、と思う。
 抱きしめたら、すがりついてくるよね、アレは(笑)。そのまま、ヤっちゃえるよねえ? そんなときでもすけべ心ではなく、あくまでも玄宗の心だけを思いやり、耐える表情の陳玄礼が見たい。ハァハァ。

 
 えーと、まあとどのつまり。

 ワタルくんがやっているから、玄宗のことは好きよ。他の人だったら、好きになれなかっただろうさ。
 ケロちゃんがやっているから、陳玄礼を好きなのと同じで。

 玄宗がワタさんで、陳玄礼がケロだから、とりあえず力一杯萌えておきます。

         
「緑野さん今回は、まちかめぐるの立ち位置、教えてくれないんですか?」

 と、かねすきさん。明日雪組を観るそうです。

「いつも、頼んでもいないのに立ち位置を全部解説してくれるでしょう?」

 えっ。
 なになに、語っていいの? 言っていいなら、言うよ? まちかめぐるの立ち位置! 芝居もショーも、がんがん語っちゃうよっ?! わたしは初日に1回観ただけだけど、まちかめぐるのことはいくらでも語れるぞーっ。

「やめてください、聞きたくないですってば。聞かなくても、どうせ目に入ってくるんだから!」

 やだわー、かねすきさんたら。いつの間にかあなたもまちかめぐるの虜なのよね。わたしの呪い? なにソレ。呪ってなんかいませんわよう。
 伝染病かもしれない、とは思ってるけどな。

 ところでまちかめぐるって、チェ・ジウに似てると思うんだけど、わたしの欲目?

          ☆

 雪組公演『青い鳥を捜して』の感想。

 なにはともあれ、ブレンダ@となみちゃん。

 かわいい。かーわーいーいー。
 もうめろめろっすよ!!
 のーみそ破壊されそうなかわいさ!!

 となみファンにはたまりません……。
 このとなみちゃんを見るだけでも、価値があります、この芝居。
 今んとこわたし、2回観たんですがね、My No.1はとなみちゃんですよ。
 個人的にいちばんキたのは、「プンプン」って台詞。
 ぐはあっ、て感じ。オレ男なら鼻血吹いてるよ……かわいすぎ……。

 このやりすぎたギャグキャラが、下品にならないのがとなみちゃんの持ち味。バカっぽいのも持ち味(笑)。

 ブレンダのかわいさは、デニス@かしげの阿呆さと相まって実にすばらしいハーモニーになっている。

 かしげ、いいよねえ。
 実際出てきたときはまたムジャヒドかよ、ってがっかりしたんだけどな。
 どーして演出家はすぐかしげに薄いバカ役をやらせるの? 人の善いバカキャラって、かしげのキャラまんまじゃん。
 正直もう見飽きたよ……。
 そう思っていたらなんと。
 最後の最後でかっとばしてくれるじゃないですか!!

 クリーム舐めのシーンっすよ!!

 それまでただのバカ、美貌の無駄遣いの薄い人(いや髪の毛のコトじゃなくて)でしかなかったのに。

 ブレンダのクリームを舐めて笑うデニスは、突然オトコマエですよ!

 うわっ、こんなにかっこよかったんだ?!
 人間、言動や浮かべる表情で、顔立ちなんて変わって見えるもんなんだ。
 デニスはやっぱなさけなさが前面に出ていて、ちっとも美形じゃない。実際この男をハンサムだと思って見ている人は少ないだろう。

 それがあるとき突然、美形様になる。

 それまでただの友だちだったのに、あるとき突然、ときめいてしまうよーな。
 その一瞬を境に人生が変わってしまうよーな。

 なさけないふにゃ男くんだったのに、突然包容力あふれる美青年に変身して恋の主導権を握ってくれちゃったりしたら。

 オチます。
 堕ちますよ、かっしー!!

 ときめきました。
 かっしーラ〜ヴ。

 作品自体嫌いだし、どーでもいいと思っている芝居だけど、ブレンダとデニスだけは好き。となみとかしげは萌え。

 
 ひさしぶりのトド様には……えーとえーと、なんとも言えない気恥ずかしさがあった。
 なつかしいし、会えることはうれしいんだけど……なんだろう、この気恥ずかしさは。
 やっぱ卒業して社会人になったのに、今さらこの年で高校の制服着て余興やらされている人を見ているよーな気持ちになるからですかね……。
 時代物ならきっと、ここまで気恥ずかしくはならないんだろうな。
 でも、トド様のスーツ物が見られてうれしかったのよ。スーツ姿も好きだもんよ。

 ただもう少し、年相応の役をやってくれればな……。

 演出家はナニ考えて、『再会』の焼き直しみたいな話とキャラをトド様にやらせたかな。
 たしかに『再会』のトド様は評価されていたよ。当時、思いがけず好評を得ていたはず。それまで重い話や役ばかりで、気軽なコメディをやっていなかった人だったし、ぐんちゃんとのラヴラヴぶりも微笑ましくて、えらくウケていたさ。
 過去に好評だったからって、それをもう一度やらせてどうするんだ。言っておくけどトドって、同じキャラをやらせたら、ほんとーに同じよーにしかやらないぞっ?! 別人格だから、って、演じ方変えたりしないぞ。くそ真面目に同じ引き出しで勝負してくるぞ。融通利かないからっ。
 ……つーことで、いろいろとつらい役と姿だわ、ジェイク@トド様。

 女と恋愛させるより、血のつながらない弟@コムと  恋愛  ぢゃなくて どっぷり兄弟愛させた方がよかったよ。わたし的に。

 リアルな現代スーツ物、というカテゴリより、時代物が似合うのと同じハート。
 兄弟愛憎モノとかは、現代ラヴコメに比べたらはるかに異世界ファンタジー・カテゴリだもんよ。リアリティとは別の次元で勝負、だからさ。
 トド様の個性でイケると思うの。

 親子モノでお涙頂戴させるぐらいならさー、兄弟モノやろーよー。需要あると思うけどなあ。

 てかさ、トドとコムを並べたら、ついそっちを刺激されないか?
 耽美やりたくなるじゃん? ホモやりたくなるじゃん?

 わたしだけが腐ってるのかと思ってたけど、どうやらコレ、多数派意見だったみたいだし。

 その証拠が、『ドリーム・キングダム』でしょ?

 3人の演出家に、トドコム使って好きに演出しろ、って言ったら、3人が3人とも耽美ホモ作ってきたのよね。
 そっかあ、誰でもそうなんだー。みんな同じこと考えるんだー。

 でも石田だけが別なんだよね。だって耽美属性皆無のオヤジだから。

 ショーが耽美ホモ3連発だから、芝居まで耽美じゃ胸ヤケするから、無理だけどさ。わかってるけど、芝居でも見てみたいなあ。トドコム愛憎モノ。齋藤演出あたりで(笑)。

 
 コムちゃんはひどい脚本とキャラであるにもかかわらず、健闘してました。
 いい男になったよなあ、コム姫。こんなに懐の深い男に成長するとは、思ってなかったよー。
 トップにして正解の人だったんだなあ。

 Myツボは、うずくまるフィンセント@コム姫を、軽く抱え上げるよーに肩を抱いて立たせてしまうジェイクにーちゃん@トド。

 新公では、キムくんは触れているだけで、かなめくんが自分で立ち上がるのね。だって体格的に、抱き起こすのは無理だもの(笑)。
 でかい弟に小さな兄、は個人的に萌えだったけどな、新公。

 
 いやらしい下品な脚本であるだけに、救いなのがケイト@まーちゃんの清潔さ。
 まーちゃんは凛と咲く白百合のよーな女性だねえ。ああ、ほっとするわ。
 トドとの並びは悪くないけど(てゆーか、誰とでも合わせることができるんだよね。いよっ、娘役芸!)、やっぱコムちゃんとのカップルを見たいと思ってしまう。
 いいコンビなんだな、コムとまーちゃん。異分子が入った公演だからこそ、再確認したよ。

       
 他の作家の名前を出してしまったので、フォローの意味も込めて、もう少し石田昌也語り。

 石田せんせは「タカラヅカ」としてはエラーな作家だと思っている。
 だが、「作家」としては、ふつーだと思っている。
 出来事を起こして物語を回す、という、ごく基本を知っているってことで。それがうまく機能しているとか、破綻していないかとかはこの際置いておいて。

 酒井澄夫は逆。
 「タカラヅカ」としては正しい。ちゃんと美しいものを作れるから。
 ただ、「作家」としてはお話にならない。素人のリレー小説以下の整合性。日本語のセンスもおかしい。
 二度と芝居を書いて欲しくない。ショーだけ作っててくれ。

 
 さて、石田せんせは女を軽んじているので、ほんとうの意味での「恋愛」を書くことが出来ない人だと思う。
 どんなにペットのわんちゃんを愛していても、わんちゃん相手に本気の恋愛物語は書けないでしょう? だって所詮相手は犬なんだもん。同等の存在じゃないんだもん。それと同じ。
 タカラヅカらしくないものを新規客開拓のために「あえて」作り続けているというのは、ただの言い訳に聞こえる。作らないんじゃなくて、作れない。彼の中に、素養がないから。
 ただ「女嫌い」というわけじゃないので、恋愛から逃げたカタチのラブストーリーならかろうじて書ける。むしろ女は大好きなんだろーなー、てな感じの下世話なものなら。

 恋愛モノ、が基本であるタカラヅカにおいて、どんな恋愛をするか、は、その主人公の「生き様」に関わってくる。
 つまらない恋愛しかしない男はかっこわるいし、真摯な恋をする男はかっこいい。
 石田昌也作品が「タカラヅカらしくない」最大の理由は、コレを理解していないせいじゃないかと思う。

 いい女を愛し、愛されている男はそれだけでかっこいいんだけどな。
 どんな女とどんな恋愛をしているかで、その男の価値が決まるんだけどな。

 石田作品の男たちがかっこよくないのは、ろくな恋愛をしていないから。
 どーでもいい女とどーでもいい恋愛を上辺だけでしているから。

 もちろん、他のジャンルでならそれもアリだ。仕事や野心、歴史スペクタル、いろんなものをメインに据えていい。
 だがここはタカラヅカだ。歴史大作であろーと、ピカレスクロマンであろーと、主人公は真摯な恋愛をしていなければならない。

 女をなめている人に、「いい男」は書けない。
 女はアクセサリでもなければ、便利屋でもないんだよ。
 男の価値を上げることができる、人生のパートナーなの。

 これほどの女に惚れられているのか!!
 これほどの女を愛しているのか!!
 ……ごてごて飾らなくてもその姿が、男の生き様を輝かせる。

 根本を理解しないまま、「タカラヅカらしくないのが作風」とうそぶいているのが、嫌だわ。
 作家として、というより、「男として」嫌いなタイプだと思う(笑)。おとなしく男向けジャンルで、男に都合のいい下世話な話を書いていればいいのに、と思う。

 
 さて、そーゆーわけでわたしとは趣味が合わない石田作品。
 嫌い、というよりはほんと、「趣味が合わない」。カテゴリエラーであるにも関わらず、ヅカとして存在していることが嫌なだけ。

 されど石田作品にもいいところはある。
 下級生ウォッチはたのしい。
 ごちゃごちゃした無駄な作りなので、そのぶんいろんな子たちが板の上にいる。それを眺め、本筋とは関係ない小芝居を見るのはたのしい。
 こだわりをもって作り込むこともしないんだろうラフな作風なので、板の上の役者たちに自由がある。
 それは、いいことだと思うよ。「作品より人を見る」タカラヅカにおいて。

 ストーリーやキャラクタが無神経なのは、作者が女性を軽視し、それゆえに恋愛自体を軽視しているせい。それをあきらめ、無視し、役者の個性のみをたのしむ。
 ご都合主義や、浮いている台詞と展開、品のなさと整理されていないエピソードとキャラクタ位置、そーゆーものも全部無視、気にしない気にしない。
 生徒さんの演技だけを、たのしみましょう。

 それはそれで、なんとかなるもんだから。

 タカラヅカってすごいわ……。

 
 とゆーことで次は、キャラ語りいってみよー。
 翌日欄へ続く。

     
 存在を無視してきましたが、いちおー感想ぐらいは書いておこうかと思います。
 雪組公演『青い鳥を捜して』

 初日に観たにもかかわらず、感想を書く気にもならなかったのは、たんに趣味じゃない話だったせいですわ。

 どう趣味じゃないかというと、下品だから。

 昔、レンタルビデオ屋でバイトしていたことがありました。
 そのとき受けた電話に、こーゆーのがあった。
「お電話ありがとうございます、レンタルビデオ**です」
『あのー、探しているビデオがあるんですが、在庫があるかどうか、調べてもらえますか』
「わかりました。なんてタイトルですか?」

 レンタルビデオ屋なんで、とーぜんアダルトビデオも扱ってます。すでにそんなもんで照れたり躊躇したりはいたしません。
 仕事ですから。
 お客にアダルトビデオのことで問い合わせを受けたって、とってもふつーに応対します。
 この電話で、訊ねられたのはアダルトビデオの在庫についてでした。

『〜〜、っていうやつと、〜〜っていうやつと、それから〜〜っていうやつなんですが。在庫はありますか?』
「えーと、〜〜と〜〜と〜〜ですね」

 もー、あからさまなアホみたいなぐちょぐちょぬるぬる系のタイトルですよ。下手に例を出して日記に書くと、男性陣の検索に引っかかるだろーから書かないけど(笑)。

『ちがいます。〜〜です』
「え、だから〜〜ですよね?」
『ちょっとちがうみたいです。〜〜……もう一度言ってください』
「〜〜、ですよね?」
『もう一度』
「〜〜」

 ええ。会話しているうちにね、わかってきましたよ。
 この電話の客は、ビデオの問い合わせがしたいんじゃなくて、わたしにその「あからさまなアホみたいなぐちょぐちょぬるぬる系」のタイトルを言わせたいだけなの。
 電話の向こうで、どんどん息荒くなってるしね。

 受話器握りながら、わたしのアタマにあったのは「アホかこいつ」でした。
 いやらしい言葉を女の子に言わせて、それでひとりでハァハァしてやんの。
 それはまあ、気持ちがわからんでもない、つーか、べつにわたしはそーゆー趣味はないが、そんなこともあるだろうよ、とは思う。
 しかしそれは、いやらしいことをしているときにいやらしいことを言う、なら、わからんでもない、という意味だ。
 こっちは仕事でタイトルをメモしながら読み上げてるだけだよ? 感情こもってるわけでなし、事務的に棒読みしているだけなのに。
 そんなもんで興奮するのって、あまりにもバカバカしい。つか、虚しい。
 そんなつもりもない女の子に、無理矢理いやらしい言葉を言わせることで、陵辱した気持ちになってるんだろーか。こっちはお客からの電話だと思っているから、無碍にもできなくて、真面目に相手してさ。拒否権のない無力な女の子に、強制させることでなにか倒錯した快感を得ているんだろーか。
 まだハタチそこそこだったわたしは、怒りだとか嫌悪だとかいう前に、ひどく脱力した。あー、あーゆー感情を、「憐れみ」っていうんだなあ、と、今にして思うよ。

 石田昌也作品が趣味に合わないのは、その電話をかけてきた孤独な変態さんに近い感想を持つせいだと思う。
 電話の変態さんは人知れず1対1の関係でしていたことだけど、石田はその電話と同じことを「舞台」という公の場で大勢の人に見せているからなあ。ムカつくのはそれもあるだろーなー。

 あー、つまり。
 石田ってさ、ジェンヌにいやらしい台詞言わせるのが快感で、わざと下品な脚本書いてんじゃないの? と、思ってしまうからさ。

 世の中、いろんな性癖の人がいるからねえ。バイトの女の子にアダルトビデオのタイトル音読させて、自家発電しちゃう人がいるくらいなんだから。
 「清く正しく美しく」の秘密の花園で、わざわざテレビドラマ以下のいやらしい台詞を連発させることで悦に入る演出家がいても、不思議じゃない、と思ってしまうことよ。

 基本的に石田先生は、女好きで、そして女を見下しているんだと思う。
 それは彼の作品にじつによく現れている。
 女は抱くモノ・支配するモノであって、そこに対等な信頼や尊敬は成立しない。
 愛は与えてやるモノであって、対等に分け合う・育むモノではない。
 いつも男尊女卑が前提。

 作品ってこわいよねえ。1作2作ならごまかせても、天才じゃない限り、そこにどーしても作者の人間性や価値観が出ちゃうからねえ。
 もちろん、多少歪んだ価値観の持ち主でも、アンチすらつっこめないよーなおもしろいものを書ければそれで、なんの問題もないんだけどね。
 石田せんせ、そこまで天才じゃないし、職人でもないからなー。

 石田作品の女たちは、いつも悲惨だ。
 誠意のない描かれ方をしている。

 そして男たちは、そんな汚れた女たちを、一段上から「愛してやる」んだよなー。
 「愛する」んじゃないの。「愛して・あげる」。ほどこしなのよ。
 こんな女を愛してやるオレって、なんて寛大ないい男なんだろう。……という意識が絶対にある。やれやれ。

 同じよーに女を描くのが下手な作家といえば、谷せんせがそうだけど、彼の作品には男尊女卑は感じられない。谷せんせの場合はたんなる「恋愛下手」だと思う。理想の男を描くことばかりに熱中していて、恋愛を描けない。女というものがよくわからない。
 出てくる女性キャラに魅力がない、恋愛が絵に描いた餅状態、と、いろいろ欠点はあるものの、谷せんせの作品の失敗ぶりは微笑ましかったりする。少年ジャンプを大好きな男の子が書いた話みたいで。(キャラを殺してお涙頂戴するのは嫌い。でもそーゆーとこも少年ジャンプだなとは思う)

 石田は少年ジャンプじゃないからなー。
 オヤジ向けエロマンガ系。オヤジ頭で都合がいいよーにしか、描かれていない。
 少年マンガなら女の子も読めるけど、オヤジ向けマンガは女の子は読めない。少年マンガには愛と夢が必要だが、オヤジ向けマンガには欲望と下世話さの方が必要だからだ。
 ジャンルがチガウんだから、仕方ないわな。

 『青い鳥を捜して』もまた、このジャンルちがいを噛みしめたさ。

 石田昌也……なんでこの人は、タカラヅカにいるんだろう??
 もっと他に、才能を活かせる場所があるだろうに。

 わたしは酒井澄夫を作家として認めないけど、石田昌也はアリだと思っている。
 石田せんせはたんに、カテゴリエラーなだけ。
 ヅカとしてまちがってるだけで、作家としてまちがってるわけじゃない。
 もちろん、うまい作家だとは思ってないけどさー。作品を創ることもできない酒井と比べたら、「作家」としての仕事は石田せんせの方がはるかにまともだからさー。

 タカラヅカでなければ、もっと評価される作家だろーに。
 なんでヅカの座付きやってんだろう?
 男の人が演じる、ふつーのカンパニーでやった方が活きる脚本だと思うよ? 石田作品って。
 もちろん対象観客も、男の人でさ。
 男が観て都合よくて、男が観てたのしい話。
 ……なんで、女性客相手に「女を貶める話」を書き続けてるんだ、この人? 夢と美を看板にしている美しい劇団で、「下品な話」を書き続けてるんだ?
 それが理解できないからつい、考えちゃうのさ。
 ジェンヌにいやらしい台詞言わせるのが快感で、座付きを辞められないんじゃないの? と。

 不思議な人だ。

       
 まずは、猫を膝の上にセッティング。

 アニマルセラピーというほどちゃんとしたものじゃないにしろ、猫は不可欠。
 膝の上に、やわらかい、あたたかい、愛するものを載せて、その重みと体温を噛みしめ、豊かな毛並みを撫でる。
 そうやって、テレビの前で待つのさ。

 ケロちゃんの番組。

 頭痛がするのは、たぶん精神的なもの。心とカラダがつながっている証拠。

 あたたかい飲み物用意して、猫を撫でながら、テレビを見る。

 やっぱりテレビはテレビでしかなくて、なんだか寂しくなったけど。
 やっぱり映像は映像でしかなくて、今すぐ生のケロちゃんが観たくて、東京に飛んでいきたくて、なんだか哀しくなったけど。

 まあ、別の意味でもヘコんだというか、ショックを受けて、テレビ見ながらチェリさんに泣き言メール打ってみたり。しばらくはヘコみつづけるわ……。

 それでも気を取り直して、画面見て。
 猫を撫でて。

 猫のほっぺたぐにゅぐにゅして。耳をいじって、頬ずりして。
 あっ、逃げられたっ。

 ほら、ヨーグルトだよ、食べたいでしょ? テレビの上から降りておいで。
 食べ物で釣って、また膝に載せて。

 膝の上でいびきかいてる猫を撫でつづけて。
 猫は不可欠。
 絶対必要。
 この世でもっとも手触りのいい生き物。「愛」だけで存在している生き物。

 泣きべそかきながら、テレビ見て。

 …………まあ、そんな日。

    

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