天使は語る、打算をば。@エドワード8世
2012年2月13日 タカラヅカ「みんな、あなたに期待していたのに」
と、ガイ@まさおは言う。
王冠を捨てて恋を選び、陰謀渦巻く華麗な場から退場してしまったエドワード8世……デイヴィッド@きりやんに対し。
ガイは狂言回し。
実在の人物だけど、時を超え空間を超え、物語をナレーションし、ついでにあちこちチャチャ入れをする。
彼自身が物語の中に着地するのは、よりによってスパイとして、デイヴィッド暗殺未遂事件になんだけど、それを踏まえてなお、彼はいつも楽しそうだ。
ルキーニ@『エリザベート』がにやにやしているのとは、チガウ。もっと「天使」的。
無邪気で、それゆえにちょっと邪悪。
可愛くて、それゆえに無責任。
ガイの目線が、つまりこの「物語」の目線なのかなと思う。
ストレートにウツクシイモノをヨイショして語るのではなく、斜に構えて不親切に、真意がわかりにくく、ある意味ヲタクに、深くも浅くも好きに受け止められる余白を残し、余韻を絡める。
小悪魔的? いや、まさに「天使」的。
まさおの甘い美貌と相まって、コンチクショオな効果絶大。
愛しいね。
とても、愛しいよ。
「期待していたのに」
つまり、告白です。
好きだったのに。
彼はプリンス・チャーミング。
魅惑するのがお仕事。
デイヴィッドさんは、みんなから、愛されている。
『エドワード8世』はねえ、とてもとても、しあわせな物語。
主人公の愛され度が、ハンパない。
みんなみんな、彼が好き。
打算も計算も皮算用も、全部全部肯定して、ただもう、みんな彼が好き。
プリンスであるデイヴィッドを利用したくて寄ってくる女たち、テルマ@すーちゃんや、マルグリット@みくちゃん。
友だちの延長で侍従やってる、「デイヴィッド甘やかし隊」のるう・ゆりや・ちなつ。
新参者だけど、彼なりに皇太子が大好きなトーマス@みりお。
後援者として感謝しているアステア姉弟@ちゃぴ・とし。
「王」としての器にわくわくしている、新聞記者ロッカート@もりえ、政治家チャーチル@ヒロさん。
才能を認めている父ジョージ5世@ソルーナさん、弟アルバート@一色氏、反発したり心酔したりの他の弟・妹たち。
クラブのボーイから踊り子さんから、放送協会のえらいさんから、キオスクの売り子から、とにかくもお、出てくる人出てくる人、みんなみんなデイヴィッドが好き。
キモチいいやね。
愛されている、主人公。
ただしそれらはみんな、それぞれのカタチで。
デイヴィッドにとっていいことだけでもないのだけど。
愛されるというのは、彼がソレだけ多くの人に「与える」ことができる人だということ。
や、「役に立つか立たないか、この世のすべての基準」ですから。
それが富であれ名声であれ虚栄心であれ、叡智や優しさであれ、彼に群がることで、なにかしら得るものがある。だから彼は愛される。
それをデイヴィッド自身が痛感しているからこそ、マルグリット事件のあと、デイヴィッドは高くない温度で自嘲する。「信じてみたかっただけだ」とつぶやく。
トーマスは残念ながら、デイヴィッドの本心には気づかない。キーワードを拾えない。それが彼の限界、デイヴィッドとの距離。
いつもそばにいてデイヴィッドのことを想っている、誠実なトーマスも、デイヴィッドを救うことは出来なかった。
デイヴィッドには、ウォリス@まりもが必要だった。そーして彼は、ウォリスと他のすべてを秤に掛けて、ウォリスを取る道を選ぶわけだが。
彼に選ばれなかったすべての者たち、「期待していたのに」と文句を言う、「絡んでいたこっちがバカみたいだ」と恨みごとを言う、ガイはすべての人たちの代弁者だ。
だけどガイは、怒ってない。つか、笑ってる。
すねて絡んでみせるだけで、まるっとデイヴィッドを許している。
だって、好きなんだもん。
好きってさ、それだけでもお、「得る」ものがあるんだよね。
見返りをどう受け取るか、足りないと感じるかは、人それぞれだけど。
デイヴィッドへの片思いに、作中で決着がついているのは、チャーチルとアルバートのみかなあ。
チャーチルは、デイヴィッドの王としての器に期待し、デイヴィッドを彼が思うところの「正しき王」にしようと画策する。味方の振りして、邪魔者のウォリス排斥の種を撒いたり水をやったり。
だけど結局、自分の思い描く「正しさ」と、デイヴィッドの望む「正しさ」の差異に気づき、認め、手を放す。デイヴィッドを縛ろうとしていた、鎖の手を。
奔放な兄にいつも振り回されていたアルバート。自分の至らなさと、兄の才能の狭間で、きっとずっと、苦しんできた。
その彼が、最後に兄に認められる。
都合のいい出まかせではなく、真実の言葉を。
うれしかったろうなあ、バーティ。
「いい国王になれる」って、大好きなお兄ちゃんに、認めてもらえて。
大好きだからこそ、他の誰でもない、デイヴィッドに、認めて欲しかったんだよね。
王になる、その重責を担えるくらい、うれしかったろう。
誇りに、自信になったろう。
兄の肯定が。
ひざまずき、その手にキスをする。「国王陛下、万歳」……ずっと見上げ、あとを追いかけてきたその人が、頭を垂れる、その意味。
いやもお、ここは泣きポイントですから! バーティがたまらん。一色氏好きだー!
他の人たちは、なんか歌で一挙にまとめられちゃってた(笑)。エピローグ。
みりおくんの役はほんと、銀橋ソロがとってつけた感高すぎ、比重低すぎです、大野せんせ。
トーマスは銀橋ソロのあるよーなキャラぢゃないっす、役の比重で行けば、チャーチルが心情をソロで一発歌い上げるのが相応しい。
もしも3番手がおっさんもOKな人だったら、チャーチルだったかなと思ってみたり。……ええ、もしもみっちゃんなら、ふつーにチャーチル演じてただろうなあ、とか。
それでもみりおくんには銀橋ソロを付けなければならなかったんだろう、タカラヅカ的に。つか、役としてはロッカートの方がおもしろいんだが、それでもみりおはトーマスでなきゃならんかったのか、大野くん的に。
それはともかく。
主人公はひたすらみんなに愛される。
で、愛と打算は同一だったりする。
そんな、「天使」的な物語。
語り部であり、チャチャ入れ係であり、物語への「目線」でもあるガイが最後に、
「結局自分の話は、自分自身で紡げってことなんでしょ」
と、まとめを口にするのは、サービスかなと。
それとも言い訳?
わかりやすくしてあげましたよ、って?(笑)
と、ガイ@まさおは言う。
王冠を捨てて恋を選び、陰謀渦巻く華麗な場から退場してしまったエドワード8世……デイヴィッド@きりやんに対し。
ガイは狂言回し。
実在の人物だけど、時を超え空間を超え、物語をナレーションし、ついでにあちこちチャチャ入れをする。
彼自身が物語の中に着地するのは、よりによってスパイとして、デイヴィッド暗殺未遂事件になんだけど、それを踏まえてなお、彼はいつも楽しそうだ。
ルキーニ@『エリザベート』がにやにやしているのとは、チガウ。もっと「天使」的。
無邪気で、それゆえにちょっと邪悪。
可愛くて、それゆえに無責任。
ガイの目線が、つまりこの「物語」の目線なのかなと思う。
ストレートにウツクシイモノをヨイショして語るのではなく、斜に構えて不親切に、真意がわかりにくく、ある意味ヲタクに、深くも浅くも好きに受け止められる余白を残し、余韻を絡める。
小悪魔的? いや、まさに「天使」的。
まさおの甘い美貌と相まって、コンチクショオな効果絶大。
愛しいね。
とても、愛しいよ。
「期待していたのに」
つまり、告白です。
好きだったのに。
彼はプリンス・チャーミング。
魅惑するのがお仕事。
デイヴィッドさんは、みんなから、愛されている。
『エドワード8世』はねえ、とてもとても、しあわせな物語。
主人公の愛され度が、ハンパない。
みんなみんな、彼が好き。
打算も計算も皮算用も、全部全部肯定して、ただもう、みんな彼が好き。
プリンスであるデイヴィッドを利用したくて寄ってくる女たち、テルマ@すーちゃんや、マルグリット@みくちゃん。
友だちの延長で侍従やってる、「デイヴィッド甘やかし隊」のるう・ゆりや・ちなつ。
新参者だけど、彼なりに皇太子が大好きなトーマス@みりお。
後援者として感謝しているアステア姉弟@ちゃぴ・とし。
「王」としての器にわくわくしている、新聞記者ロッカート@もりえ、政治家チャーチル@ヒロさん。
才能を認めている父ジョージ5世@ソルーナさん、弟アルバート@一色氏、反発したり心酔したりの他の弟・妹たち。
クラブのボーイから踊り子さんから、放送協会のえらいさんから、キオスクの売り子から、とにかくもお、出てくる人出てくる人、みんなみんなデイヴィッドが好き。
キモチいいやね。
愛されている、主人公。
ただしそれらはみんな、それぞれのカタチで。
デイヴィッドにとっていいことだけでもないのだけど。
愛されるというのは、彼がソレだけ多くの人に「与える」ことができる人だということ。
や、「役に立つか立たないか、この世のすべての基準」ですから。
それが富であれ名声であれ虚栄心であれ、叡智や優しさであれ、彼に群がることで、なにかしら得るものがある。だから彼は愛される。
それをデイヴィッド自身が痛感しているからこそ、マルグリット事件のあと、デイヴィッドは高くない温度で自嘲する。「信じてみたかっただけだ」とつぶやく。
トーマスは残念ながら、デイヴィッドの本心には気づかない。キーワードを拾えない。それが彼の限界、デイヴィッドとの距離。
いつもそばにいてデイヴィッドのことを想っている、誠実なトーマスも、デイヴィッドを救うことは出来なかった。
デイヴィッドには、ウォリス@まりもが必要だった。そーして彼は、ウォリスと他のすべてを秤に掛けて、ウォリスを取る道を選ぶわけだが。
彼に選ばれなかったすべての者たち、「期待していたのに」と文句を言う、「絡んでいたこっちがバカみたいだ」と恨みごとを言う、ガイはすべての人たちの代弁者だ。
だけどガイは、怒ってない。つか、笑ってる。
すねて絡んでみせるだけで、まるっとデイヴィッドを許している。
だって、好きなんだもん。
好きってさ、それだけでもお、「得る」ものがあるんだよね。
見返りをどう受け取るか、足りないと感じるかは、人それぞれだけど。
デイヴィッドへの片思いに、作中で決着がついているのは、チャーチルとアルバートのみかなあ。
チャーチルは、デイヴィッドの王としての器に期待し、デイヴィッドを彼が思うところの「正しき王」にしようと画策する。味方の振りして、邪魔者のウォリス排斥の種を撒いたり水をやったり。
だけど結局、自分の思い描く「正しさ」と、デイヴィッドの望む「正しさ」の差異に気づき、認め、手を放す。デイヴィッドを縛ろうとしていた、鎖の手を。
奔放な兄にいつも振り回されていたアルバート。自分の至らなさと、兄の才能の狭間で、きっとずっと、苦しんできた。
その彼が、最後に兄に認められる。
都合のいい出まかせではなく、真実の言葉を。
うれしかったろうなあ、バーティ。
「いい国王になれる」って、大好きなお兄ちゃんに、認めてもらえて。
大好きだからこそ、他の誰でもない、デイヴィッドに、認めて欲しかったんだよね。
王になる、その重責を担えるくらい、うれしかったろう。
誇りに、自信になったろう。
兄の肯定が。
ひざまずき、その手にキスをする。「国王陛下、万歳」……ずっと見上げ、あとを追いかけてきたその人が、頭を垂れる、その意味。
いやもお、ここは泣きポイントですから! バーティがたまらん。一色氏好きだー!
他の人たちは、なんか歌で一挙にまとめられちゃってた(笑)。エピローグ。
みりおくんの役はほんと、銀橋ソロがとってつけた感高すぎ、比重低すぎです、大野せんせ。
トーマスは銀橋ソロのあるよーなキャラぢゃないっす、役の比重で行けば、チャーチルが心情をソロで一発歌い上げるのが相応しい。
もしも3番手がおっさんもOKな人だったら、チャーチルだったかなと思ってみたり。……ええ、もしもみっちゃんなら、ふつーにチャーチル演じてただろうなあ、とか。
それでもみりおくんには銀橋ソロを付けなければならなかったんだろう、タカラヅカ的に。つか、役としてはロッカートの方がおもしろいんだが、それでもみりおはトーマスでなきゃならんかったのか、大野くん的に。
それはともかく。
主人公はひたすらみんなに愛される。
で、愛と打算は同一だったりする。
そんな、「天使」的な物語。
語り部であり、チャチャ入れ係であり、物語への「目線」でもあるガイが最後に、
「結局自分の話は、自分自身で紡げってことなんでしょ」
と、まとめを口にするのは、サービスかなと。
それとも言い訳?
わかりやすくしてあげましたよ、って?(笑)