鏡開きで泣きました。

 まとぶさん、蘭ちゃん、そしてサプライズで登場の花組メンバー。「元花組もひとりまざってます」……れみちゃん。

 わたしの好きな花組が、そこにある。

 まとぶんや壮くんがきらきら笑っていて、めおちゃんがしゅん様が神妙な顔していて、下級生までひとりずつ名前の点呼が出来て。
 わたしのホームだった組が、みんなが、そこにある。

 ああ、そこは帰れない場所なんだ、と思った。

 どんなに愛しくても時は戻らない、止まらない。まっつはそこにいないし、まとぶん他は退団してしまう。

 そーやってひとりでべそかいて。

 2年前と同じように、ロビーの出演者写真を見上げた。『太王四神記』初日も、鏡開きのときにキャトルレーヴ入口上に飾られた写真を見て、韓国時代劇コスプレな人々の中まっつが時代を超越した涼しい姿で映っていて震撼したっけ。

 『ロミオとジュリエット』スチールのまっつは、黒髪でした。
 あれ? 宝塚支局の写真と違うぞ、と思い、あわててプログラムを買いに行く。

 そしてプログラムをめくって。

 腰を抜かす。

 まさかの1ページひとり写り!!

 キムくんの美しいロミオ写真を何枚も見て、きれーねー写真集状態ねー、と前からめくっていって、トップ娘役がいないからヒロインはふたりで1ページなんだ、あーちぎくんかっこいーワイルドだわー。
 と、なんの気負いもなくページめくって。

 そこに、まつださんがいるとは、夢にも思わず。

 全身写真っ?! こここここれって3番手位置ですよ?!!

 うろたえきってここでまっつメイトにあわててメールして、そのあとでいや待てこれはオープニング写真だから、出演者スチールは別、そっちはどうなってんの、とあたふためページをめくり。

 スチール写真も、1ページでした。ちぎくんと見開き。さらにあわくって、主な出演者インタビューページをめくる。こちらも1ページ。

 おろおろおろおろ。ナニをすればいいんだろう、とまごついたあと、まっつメイトにプログラムを写メする。
 ……うろたえると、行動がおかしくなりますね。なんかわたし、あちこち徘徊していたようです。

 てゆーか。

 スチール写真のまっつベン様、黒髪に青メッシュでめちゃかっこいいんですけど?!

 最初はこのイメージだったわけでしょ? なのになんで宝塚支局のゲネプロ写真は謎の金黒ツートンカラーなの?!
 舞台はどっち??
 願わくば、プログラムの青メッシュで……!!

 と思っていたが、実際幕が開くと。

 金黒ツートン様がいらっしゃいました。

 『タカラヅカスペシャル2010』で後ろ髪が長かったのはこのためか、というロングヘア。黒髪を後ろで束ねてます。そして、アタマの上だけいかにも「ヅラ付けました」という金髪がわさっと盛られてます。アタマ長いです、髪が盛り上がってる分。……はっ。まっつったら髪の毛で身長を稼ごうとしている……っ?!(失礼な)

 いやまあその、ナマで見るとそう変でもないというか、コレはコレでアリかなと思います……。所詮はファンなのでナニ見ても許せてしまうので、客観的な判断は出来ません。

 ロミオ@キムくん、マーキューシオ@ちぎくん、ベンヴォーリオ@まっつがもお、かわいいです。愛しいです。
 3人でわーーっと銀橋渡られたりするとどきどきします。

 そしてまつださん、踊ってます、歌ってます。
 歌ばっか言われてるけど彼、踊れる人でもあるんだってば。
 そしてその、歌声。
 コーラスの中でもどーんと聞こえる、その声。
 彼が芯になって歌う群衆場面が何ヶ所かあるんだが、それらがもお、快感で。
 キムくんも歌える人だから、キムくんが「主役」として朗々と歌い、それにコーラスが絡み、コーラスの中でもさらにまっつの声がキムくんに絡み、支えるというか。
 うわナニこれ気持ちいい。

 キムくんとまっつの声が絡む。つかず離れず、触れて絡んで自在に模様が織られる。

 ああ、この人がトップさんだ。
 まっつの組のトップさんなんだ。
 まっつはこの人を支え、この人と舞台を作っていくんだ。

 舞台の上のまっつが、すごく「イイ」顔をしていて。
 彼が今、やりがいを持ってそこにいることがわかる。

 ここが、まっつの居場所なんだ。

 鏡割りで泣いた。帰れない場所を思って泣いた。
 わたしはまだキモチを花組に残したまま、うまく切り替えが出来ずにいるけれど。
 ご贔屓自身はもう、前に進んでいる。

 花組が大切なことは変わらないけれど、これからは雪組もまた大切なホームになる。
 ご贔屓がこんなにイイ顔をしている、そうあれる場所であり、仲間たちなんだ。

 2幕のベンヴォーリオのソロ「どうやって伝えよう」はカーテン前にひとり。って、今までそんなの見たことナイ、まるまる1曲ソロ、しかも舞台にひとりきり。
 そしてまた、この歌が。

 この歌を、聴けて良かった。
 ラストの絶唱とか鳥肌モノっす。

 ベンヴォーリオはチャラい今どきの男の子で。
 コミカルな顔もするし、凶暴な顔もする。ハードな場面も楽しい場面も出るし、2幕はシリアス一直線だ。ひとつの舞台の中でいろんな顔を見せる。ロミオと同じように……いや、あるいはそれ以上に、彼は急激に成長していく。
 オープニングの舌出し挑発顔のエロさ(笑)にがつんとやられ、二枚目半のボクちゃん喋りにあわあわし、ロミオを責めながらも親友の言葉にきちんと耳を傾け胸に届いている姿から、マーキューシオが今まさに死ぬってときの少女のような可憐さ(笑)にオペラグラスを落としそーになり、苦悩のファルセットに耳を疑い。

 そしてフィナーレでは、黒髪まっつ健在。

 金髪部分ヅラ(だからウィッグって言いなさいよ)をはずし、ザ・男役!なリーゼント。
 ……結局、彼は黒髪歴を更新しています(笑)。

 ナニが驚いたかって、フィナーレの出番は2ヶ所なんだが、そこでいちいち髪型を変えてきていること! あのまっつがだよ?
 最初は黒髪リーゼントなんだけど後ろ髪は付け毛のロングヘアでベン様踏襲。次は後ろ髪はずして地毛オンリー。……ただし地毛にも幾筋かはメッシュ入ってるんでただの黒一色でもないんだけど。

 ここまででも十分驚いてたんだけど。

 最後のパレード。
 ひろみ、ヲヅキと降りてきて、次はまっつだよね?と準備しているにもかかわらず、階段の上でスタンバっている姿が、まっつに見えなかった。

 な、なんか、王子様みたいな姿してまつよ??

 白尽くめ衣装、大きな袖、白マントに肩章付きでもお、およそまっつらしくない姿!(失礼な)
 なんでまっつが金髪部分ヅラなのかわかった。

 パレードの衣装は、金髪が似合うからだっ。

 だって白い王子様なんだもん。真正面から見ると黒髪が見えなくて、金髪だけなんだもん。
 白い王子様なまっつって……おろおろおろ。

 
 いやはや、消耗しました。
 泣いたり舞い上がったりもお。

 暫定の3番目だろーとなんだろうと、こんなまっつを見られるなんて夢にも思わなかった。ありがとうありがとう。いろんな人、いろんなものに、とにかくありがとう。
 ベン様は、いったい何回仲裁に入るのでしょうか?

 あまりにいつもいつも仲裁ばっかしてるので、数えようとして、早々に挫折しました。8回までは数えたんだけど……多すぎだよ。
 
 てことで『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつの行動調査。
 まずまっつを整理しないと他の感想が書けないという、狭量なのーみそゆえ。

 ベンヴォーリオって、どんな人?

 ベンヴォーリオとマーキューシオ@ちぎくんは、モンタギューのリーダー。
 とりあえずどっちも不良少年、かつ危険な人物として紹介される。いや、別に不良ではないんだけど、この作品では不良少年グループ同士の抗争っぽく描かれているから。
 
 リーダーがふたりいるグループ。(ちなみにロミオ@キムくんはチームのアイドルポジ・笑)
 ひとりはキレやすく暴力的、ひとりはクールで大人。……てのがキャラ立ての定番。

 マーキューシオが短気設定なので、ベン様がそれを止める役目ってのはわかるけど、それにしても同じことばっかやらせすぎだぞイケコ(笑)。
 マーさん相手だけでなく、他の人たちのことも片っ端から止めてるんだよなー。だから数え切れない(笑)。

 んで、そういう「制止役」つーならば、もっと完璧クールで感情が動かないとか、両家の争いに反対だとか、穏やかで争いや騒動自体を嫌うとかなら、わかるんだけど。
 ベン様自身、十分好戦的だし。
 挑発したりからかったり、舞踏会に潜り込んだり、やることは十分過激かつ幼稚。
 さんざん挑発しておいて、いざ暴力沙汰?てなときは止めに入るという、迷惑な男。どっちやねん!という。

 ツートンカラーの髪からして、自己顕示欲の強いナルシスト。
 絶対自分を色男だと思ってる。
 ジュリエットの乳母@コマに「ボクがロミオです」と超かっこつけて迫ったのに、「こんな男」呼ばわりされ魅力を全否定。そのときのショック顔からして、女に振られることに慣れてない……振られるとはカケラも思ってないことがわかる。

 仕草は貴族的で慇懃無礼。
 いちいち大仰な挨拶をする。特に敵であるキャピュレット相手にはよくやってる……相手をバカにするために。
 さらに、舌出しに象徴される、下品な態度も取る。

 そしてこれはまっつの特性なんだろうけど、黙っているとクールに見える。そりゃーもー、冷え冷えと。

 いろんな顔があるし、言動が一致していない部分もあり、ベンヴォーリオの人となりはわかりにくい。
 ヤンキーキャラとして筋が通っているマーキューシオと違って、なんか半端だぞっと。

 
 ベンヴォーリオの二面性の最大部分は、「敵」と「仲間」に対する顔の違いだろう。
 冷ややかだったり慇懃無礼だったりするのは、敵であるキャピュレット絡みのとき。
 ロミオたち仲間の前では、やたらかわいこちゃんでちょいヘタレなキャラになる。
「戦争なんてなかったら良かったのにね、お兄ちゃん」ぢゃないけれど、両家の争いさえなければ、ベン様はヘタレなかわいこちゃんでいたのかもしれない。ちょいナル入ったカッコ付けの二枚目半だったのかもしれない。
 マーさんのキレやすさは両家の争い関係なくそのままかもしんないけど、ベン様は相当違ったキャラになっていたかも?

 ティボルト@ヲヅキが「本当の俺じゃない、大人たちがし向けたんだ」と歌うけど、ベン様もそうだよなあ、と。

 とういうのも、ベンヴォーリオは物語の前半後半でかなりキャラが変わるからだ。

 モンタギューのタカ派筆頭としてダークに踊っているところからはじまるオープニング、宿敵キャピュレットに対するときのクールかつ尊大な態度。
 それが、親友ロミオの裏切り、決闘、マーキューシオの死で、劇的に変わる。

 キャピュレットの娘と結婚したというロミオを責めるときも、マーキューシオが脊髄反射的な怒りや嫌悪感で吠えているのに対し、ベンヴォーリオは悲しみを打ち出し理を説いている。「駆け落ちしても連れ戻される、敵を愛しても幸せになれない」と。
 ロミオに裏切られたことに怒りはあるだろうし悲しみも大きいにしろ、それだけではなく、ロミオが不幸になることを心配している。マーさんよりベン様が精神的に大人なのは、こーゆーところにも出ているよな。

 そして決闘のさなか、ベンヴォーリオはロミオが訴える「誰もが自由に生きる権利がある」に共感する。
 それこそ、ラダメスが歌う「世界に求む-王家に捧ぐ歌」を肯定し、アイーダが毅然と顔を上げて唱和するがごとく(笑)。
 ロミオの歌にがっつり応える。

 ロミオはほんとならここでロレンス神父以外の味方を得るはずだったんだ。親友ベンヴォーリオもまた、彼の恋を認め、応援してくれるはずだったんだ。
 だがマーキューシオの死、ティボルト殺害の罪で急転直下。

 ベンヴォーリオが、ロミオが目指すものを一緒に目指そうと、同じ夢を見ようとしたその直後、大きな力が少年たちを引き裂く。
 大人たちから否応なく受け継がされてきた憎しみ、負の連鎖がマーキューシオを殺す。

 憎しみではなく愛を、信じてみようとしたその矢先に。

 声に出して態度に出して取り乱すロミオと違い、ベンヴォーリオは静かに打ちのめされる。
 息絶えようとする親友を呆然と見つめる。

 ……ベン様がロミオ大好きなのはデフォルトだけど、実はいちばん彼が愛してたのはマーキューシオぢゃないかと思うのよ。
 ロミオは親友だけど、マーさんは魂の双子っていうか。ロミオはベン様とはいろいろチガウ部分があるけれど、マーさんとは言葉不要の関係というか、子猫がじゃれ合うみたいにいつもいつも一緒で、離ればなれになることなんか考えてもいなさそうだから。

 子どもの頃からナニも隠さない仲だったという3人組だけど、ロミオが知らない、ベンヴォーリオとマーキューシオふたりだけの秘密はあったと思う。
 キャピュレットとの抗争のことだったり、女絡みのことだったり。ロミオに言ったら引かれるよーなことは、あえて言わずにふたりだけの秘密にしていそう。
 ワルイコトを共有する、一種の共犯。運命共同体。ふたりにとってロミオは天使、聖域。ふたりともロミオを愛しているけれど、ほんとのとこいちばん愛し合っていた……それを確認するまでもなかったのは、ベン様とマーさんかもなと。

 確認するまでもないから、マーさんは最後ロミオにばっか意識を向ける。彼は去る側だから、愛してやまない天使ロミオに思いをぶつけて事切れていい。
 「失う」ことで、自分の中の思いに気づき、呆然とするのはベンヴォーリオ。置いて行かれる側の彼は、今まさに自分の半身が失われるのだと知る。

 怒るとか復讐とか。
 そんなことすら、考えつかない、喪失。

 ロミオにとってマーキューシオは親友ではあっても半身ではないのね。だから彼は取り乱すことができた。てゆーかマーさんがひどいんだけどね。ロミオのせいで刺されたとか言うな(笑)。そのへんの無神経さがマーさん。

 取り乱したロミオがティボルトを刺し……半身を失って身動きできないベン様がナニも出来ないウチに、ロミオすらベン様から離れていく。

 マーキューシオを失って、ロミオまで失う……って。ベンヴォーリオどんだけ不幸のフルコース。

 
 続く。 
 『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつについて、わたしのアタマの中の整理整頓。

 マーキューシオを失って、ロミオまで失って。ベンヴォーリオどんだけ不幸のフルコース。

 このあと彼は、タカから鳩へ変貌する。
 モンタギューのリーダーだったはずなのに、血に飢えた人々はベンヴォーリオの言葉を聞かない。
 いや、ベンヴォーリオがリーダーたり得たのは、彼が「憎しみ」というエネルギーの切っ先役だったから。共通の敵を持つことでグループがまとまる、目に見えない大きな力。
 憎しみの呪縛から解き放たれたベン様は、モンタギューもキャピュレットもない、ただ争いを止めたいと願う。

 大きな力の前で、あまりに無力に。
 

 憎み合うふたつの勢力、大人たちからゆがめられてしまった子どもたち。
 ロミオは最初からそういった呪縛の外にいたし、ティボルトは呪縛の中で自滅した。
 ベンヴォーリオは唯一、物語の途中で呪縛が解けるキャラクタなんだ。

 だから彼は変わる。
 途中からは別人。
 直接的な原因はマーキューシオが死に、ロミオがいなくなったためだけれど、ほんとのところはそうじゃない。
 ジュリエットを愛するロミオを見て、彼が訴える「自由に生きる権利」に共感し、憎しみという何代にも渡る呪いを打ち破ったためだ。
 ゆがめられる前の、本来のベン様に戻ったんだ。

 親友たちに見せていた、やさしい少年の顔に。
 他人が傷つくことにも傷つく、ごく当たり前の少年に。

 そのやさしさやまともさを取り戻した代償が、さらなる絶望だっつーのが、この物語の残酷なところ。

 ベンヴォーリオが憎しみに囚われたままだったら、ジュリエットの死をロミオに伝えに行きはしなかった。

 ……ところでベン様は、自分が死刑執行人だという意識はあったのかな?
 れおんくんのロミオはともかく、キムくんのロミオはベン様にジュリエットの死を告げられたときからすでに死んでいたと思うので、ベン様がロミオを直接殺してるんだよねええ。
 ジュリエットが死んだと知ったらロミオは死ぬだろう、ってわかって言っているのか、「誰かに殺されるくらいなら、親友の俺の手で殺してやる」ってことなのか……まあそれはまた欄を改めて妄想するとして。

 冒頭のテーマに戻るとだ、ベンヴォーリオというキャラクタの持つ二面性、挑発するくせに止める、どっちやねん!な半端さ。

 それこそが「本当の俺じゃない、大人たちがし向けたんだ」な、この物語のやるせない部分の具現なんだなと。ベン様自身もそう歌ってるよな、ロミオをかばって。

 最初に見たときは、ベンヴォーリオまっつのかっこよさにばかりくらくら来てたんだけど、だんだんそうじゃない、弱い、哀しい部分が大きくなって。
 てゆーかこの人、相当繊細ぢゃないか?

 マーキューシオの最期を見取るところの、魂が抜け落ちたような姿。いたいけですらある表情。無垢な少女のようだ……「少年」ですらなく、強き者の庇護を必要とするような。
 ロミオの亡骸を前に、立っていることが出来ず、ぺたんと、まるで正座しているかのようになってしまうところ。かっこいい坐り方ではなく、男らしくもなく、そんなことを考えてる余裕もない、空っぽの姿。
 ロミオの眠る台の縁に両手をついて、そこに顔を埋めてしまう、子どものような泣き方。

 これが本来のベンヴォーリオ。彼はロミオをピュアだと思っているけれど、ベン様だってほんとはピュアなんだよ。ゆがめられてしまっていただけで。

 そして人は、やり直せる。
 生きている限り。
 間違いは間違いで、なかったことにはできないけれど、改めることは出来る。
 だからベンヴォーリオは立ち上がる。

 ……大公閣下@しゅうくんに腰を抱かれるように(笑)去っていくのが、ひそかなツボだ。あの身長差、体格差。
 これから大公閣下と共に、新しいヴェローナを作るべく努力するんだよね?

 
 とまあ、そんなこんな。
 観ているうちにまた感想は変化するかもしんないけど、現在はこんな感じ。

 大人で強いまっつ、ドSなまっつばかり最近見ていた気がするので、繊細でやさしい、幼いまっつが新鮮でどきどきしまつ(笑)。
 しかも前半は黒くて悪くてかっこいいまっつだし。
 なんて美味しいんだ、ベンヴォーリオ。

 
 でもってフィナーレなんだけど。
 初日の感想に2回目の登場は短髪地毛だと書いてるけど、翌日の11時公演でえらいことになっていた(笑)ので、地毛オンリーではないことがわかった。
 すみれ色の燕尾で登場するとき、たしかにぱっと見、短髪で燕尾の衿がちゃんと見えているんだけど……まっつアレ、ナニやってんの? 編み込み? なんか複雑なことになってないか、後ろ髪。

 2日の11時公演フィナーレ、燕尾まっつは何故か短い後ろ髪を味も素っ気もないゴムくくりでもしているような感じになっていて、なんで後ろくくってるんだろ、と思って見ていたら、どんどんどこからともなく長い髪がぱさりさぱさりと落ちてきた。
 踊れば踊るほど、髪が長くなるまっつ。
 男役群舞から、ヲカマ……ぢゃねえ、ショートカット美女ふたりをまじえたダンスになるころには、ロン毛のまつださんがそこに。しかし彼は涼しい笑顔。髪の毛失敗してる? なんのこと? と言わんばかりに。

 内心めちゃ焦ってんだろうなあ、と想像しつつも、気合いの入った「これがふつーですよ。ナニかありました?」な笑顔とのギャップに、ひとり客席で悶えた(笑)。

 んで、3回目の観劇時に後ろ髪がどういう仕掛けになっているのかがんばって見たんだけど、やっぱよくわかんない。
 パレードでまたベンヴォーリオになるため、付け毛をはずせないんだろうけど、それなら無理して短髪にならず、ずっとロン毛のままでいりゃいいのに……黒ピン使ってるのも見えるし、なんでああまで苦労してんだろう……もともと髪型をころころ変えられるほど器用ぢゃないんだろうに(笑)。

 ああもお、かわいいなあ。

 パレードでは足元をなんか心配してしまうし。
 だってあの人、白のスターブーツなんか履いてるんですよ?? そんなもん履いたまっつが見られるとは、夢にも思ってなかったので、初日は目を疑いました。
 で、歩きにくそうだなあ……と。
 階段気を付けてね?(余計なお世話)
 あらためて。

 キムくん、トップお披露目おめでとう。

 『ロミオとジュリエット』初日、開演アナウンスに心から拍手した。
 真ん中に立つことが相応しい人。彼の創る雪組を、愛し、見守りたいと思う。

 ロミオ役って似合うよね、まさに等身大、5組の中でもっともロミオって感じの人だよね。
 ……なんてのんきに考えておりました。

 たしかにキムくんは少年としての持ち味があり、若々しさやかわいらしさはロミオっぽいのだけど。
 芸風というか、根っこにある特徴はまた別だもんな。

 ロミオの「狂気」っぷりに、震撼しました。

 そーだよな、キムだもんな。かわいいだけで終わるわけないよなー(笑)。あーもー、えーらいこっちゃなロミオだわ。

 キムくんの天使の笑顔を堪能できる前半が、実は伏線というか伏兵というか。クライマックス以降も彼はまさに天使の笑顔を浮かべるんだけど、それはすでに狂気の域で、なまじ無垢な天使っぷりなので背筋が凍るというか。
 んで、その狂気を見せつけられたあと、また観劇すると最初の純真な少年っぷりもまた違って見えてくるというか。
 いやはや。面白い持ち味のトップスターが誕生したな。

 ベンヴォーリオ@まっつの感想欄でも書いたけれど、ロミオ@キムが死ぬのは霊廟で毒を飲んで、ではない。
 ベン様からジュリエットの死を告げられたときに、彼の心は死ぬ。

 そっから先はロミオもう狂ってる。常人ぢゃない。
 狂気を演じさせるなら音月桂か野々すみ花、まっつってば相沢@『舞姫』に続いてまたしても追いつめて狂わせてしまう役なのね、相手が狂気に落ちる様を目撃する役なのね、とアゴを落としました。

 狂ってしまったロミオは、彼ならではの天使の笑顔、しあわせそうな光輝く笑顔を浮かべ、毒薬と戯れる。
 ……こわいんですけど(笑)。

 直近にあったばかりだら比べるなという方が無理、れおんくんのロミオとの個性の差がすごい。
 れおんくんはほんとうに健康な人なんだと思う。彼のロミオは心からまっすぐで、愛も悲しみもブレがなかった。不安がなかった。人々が夢想する「ロミオ」とはこうだろうってな、美しい純粋さと健やかさがあった。
 この少年を助けたい、愛を成就させてやりたい……! どうして死んでしまうの、と生身の彼に感情移入してだーだー泣ける。
 れおんくん自身は少年役者ではなく、彼の魅力が最大に発揮できるのはもっと色気や傲慢さのある役だと思うけれど、彼の魂の強さは少年ロミオ役でも見事に発揮されていた。

 少年役者でかわいらしい容姿で、一見人々が夢想する「ロミオ」そのものに思われがちなキムくんは、実は邪悪系が持ち味なんだよねえぇ。
 キムもまた「強い」魂を感じさせる人だけど、彼には毒と陰がある。濁りというか、夢の世界に相応しくない「ヨゴレ」を持つ。
 ゆがんだ硝子玉のような、屈折した光を内包するのがキムくん。本人は美貌と華を持ち、真ん中できらきら輝いているんだけど、それとは相反する不道徳な闇がその奥にある。

 ロミオという純粋無垢な少年を演じることで、キムくんの闇の部分が浮かび上がってくる、この効果が面白い。

 ロミオが自殺を選ぶ、その流れが実に自然だ。
 そこにたどり着くしかないだろうと思わせる。
 れおんのときは「助けたい、なんとかしたい」と思うのに、ロミオが死んだ直後に起きあがるジュリエットに「どうしてもう少し早く……!」と涙を流すのに、キムだと「仕方ない、もう手遅れだ」と思うし、間に合わないジュリエットにも「そうだよね」と思う。

 だってロミオってさ。

 ジュリエットと出会ってなくてもいずれ自殺したんじゃね?

 そう、キムロミオの最大の特徴。
 ジュリエットと出会って人生加速したけれど、遅かれ早かれ彼は狂気に至ったのではないかと思わせる。

 彼は、繊細すぎる。

 多くの芸術家が自ら死を選ぶに至るよーに、ロミオはいずれ自殺した気がする。現実は彼をゆっくり蝕み、破滅させただろう、と。
 「僕は怖い」というソロが、彼の精神の悲鳴に聞こえる。ああ、いずれ狂気に堕ちる人ならではの独白なんだなと。

 弱いからいずれ死を、という意味じゃない。
 彼は強い。強いからこそ現実と真っ向からぶつかってしまう。それゆえに摩耗が激しく、目に見えないヒビが細かく入り続け、いつかぱりんと全体を壊してしまう。
 それこそ40代くらいになって、成人した子どもが身を固めるあたりで、おとーさん自殺しちゃったよになりそうだ。

 ジュリエットと出会わなかったロミオを見てみたい、と思わせる。
 今は子どもだから夢見る夢子でいられるけれど、そのうち否応なくモンタギューの長として一族を背負い、ティボルト@ヲヅキ率いるキャピュレットと戦いながら生きなければならなくなる。
 両家の争いを遺憾と思うロミオだから、自分がトップになった暁には事態を変えようと努力するだろう、だけど憎しみの連鎖は止まらず揺らがず、彼は傷つき続けるだろう……。

 戦い続け、傷つき続け、狂気と正気を彷徨いながら、笑いながら死んでいく、壮絶なロミオの一代記が脳裏に浮かびます。
 書きたいなソレ。ジュリエットと出会わなかったロミオの物語(笑)。

 ジュリエットの死を告げられたあとのロミオの狂気っぷりに震撼したのち、再度観劇すれば、そうなるに相応しい、納得のロミオだということがわかる。
 悲恋だとか心中だとか以前に、彼の心がいずれ壊れることをわかったうえで見ると、なおいっそう哀しい。彼の刹那の輝き、幸福な天使の笑顔に胸がしめつけられる。
 美しすぎるから、壊れるしかなかったのか。

 れおんくんのロミオこそが、大劇場で大衆向けに見せるロミオで、キムくんロミオは中劇場向けじゃないかなああ。マニアックですよコレ。
 そのくせキムくん自身は大劇場向きのキラキラ資質を持った人で。
 面白いなあ。

 物語のカラーは主役が作ってヨシと思っているので、れおんくんならではの『ロミオとジュリエット』、キムくんならではの『ロミオとジュリエット』、両方アリだと思う。
 れおんの健やかさ、キムの病みっぷり、どっちも好きだ。たのしい。
 れおんくんはもう見ることが出来ないのだから、キムくんの闇と狂気に浸りきりますよ、楽しいですよ、魂ぎゅーっと絞られる感じの痛さが快感ですよ(笑)。

 かわいい少年、いかにもロミオ、な外見であるからいくらでも病んでヨシ。
 初見の人やライト層にはそのかわいらしい部分だけ見えるから、ラストの狂気に「え?」となってリピートしない限り「最初からこのロミオやべぇ!」とは気付かれないから、いくらでも繊細に光と闇を表現しちゃってください。
 ピュアな役をやるほど毒が見える、なんて素敵な持ち味、マニアックな中毒性のあるトップスター。

 音月桂のロミオは必見だ。
 ティボルト@ヲヅキが、生身過ぎてウケる。

 雪組『ロミオとジュリエット』は、いろいろと星組版とは別物で。
 星組版で号泣し、「ちえねねが好きだ、ちえテルねねのトライアングルが好きだ」と、大好き過ぎてゴロゴロ転がっちゃう勢いだったわたしです。
 どーしても星組と比べてしまうのですが。

 かなめティボルトを見てツボに入りまくった、あの恥ずかしい中2病キャラ。
 さんざん悪さしておいて「俺のせいじゃない」って、ナニその責任転嫁!
 かなめくんのティボルトはなんともアホかわいい美形様で、笑いながら脳天つんつんしたい愛しさがありました。

 しかしヲヅキティボルトは。
 笑えない。

 彼が「俺のせいじゃない」と歌うと、笑うどころか痛々しくてたまりません。
 ほんとうにそうなんだろう、わかっていて止めることが出来ないんだろう。彼の抱える闇に、心がずきずきする。

 ジュリエットがロミオ@キムに奪われたと知ったティボルトの歌がまた、痛々しくて。
 彼の人生が今ここに集約されているというか。

 ジュリエットを密かに愛してきた、禁じられた恋だった、それを彼女の夫を殺したうえで告白しようってのはもうコレ、自殺ソングだよね?
 今まで築いてきたモノすべて叩き壊す宣言。
 本当にそうしたとして、彼はキャピュレット家すら崩壊させるだろう、掟を破ってジュリエットをその腕に抱くなら。
 
 キムロミオの狂気もそうだけど、ヲヅキティボもリアルに闇が深い。
 いや、ロミオがああだからこそ、ティボルトもこうなんだろう。

 星組ってほんと素敵に「ファンタジー」だったんだなあ。
 生きる意志とすこやかさでキラキラしたロミオ、持ち味の生々しさはともかくバービー人形みたいなジュリエット、マンガ的っつーか笑えるくらいテンプレ中2なティボルト、そしてこれまたマンガ的な「オレがドラマチック!」キャラのマーキューシオ(笑)。
 
 雪組版はなんかこー、ダークなんですけど……。
 『ロミオとジュリエット』を見に来たんだよ、そんなとこで現実は見たくないんだよ的、泥臭さがあるというか。
 天下の大純愛モノなのにジュリエットがふたりいる段階で、「ファンタジー」として創るのは無理っつーことで、イケコもチガウところに狙いを持っていってるのかしら。

 
 雪組版でもっともマンガ的なのは、乳母@コマだ。
 初日はすごかった、ほっぺたはおてもやんだし。
 肉布団量すごいし。低いどすこい男役声でコミカルに演じていたし。

 乳母ってのはここまでやっていい役なんだなと。

 路線娘役として育ったれみちゃんはここまで出来ないし、しなくていい。娘役は「娘役」としての崩してはならないラインがある。
 でもコマは男役だから、どんだけ崩してもイイ。おでぶな不細工おばさんになってもいいんだ。彼が美形男役であることと、おばさん役は別次元にあるから。

 コマ乳母がおてもやんなのは、この病んだ雪組版の「救い」なんだと思った。
 ロミオの狂気ハンパねえ……ッ!な物語で、乳母までリアル路線だったら辛すぎる。だってこの役、土壇場で裏切るんですよ? それがジュリエットのためだとしても。

 空気読まないコミカルキャラでいいよ、乳母。
 ……と思ってたんだ。大事なとこはちゃんとシリアスなんだし(顔はおてもやんだけど)。

 ところが4日に観たときはすでにおてもやんはやめて、ちょいチーク濃いめなだけになっていた。(アンタ初日から何回観てんのよって話・笑)

 ナニ、不評だったの、あのメイク……?

 キャラクタ自体は変わっていないので、ほんとメイクだけ「ふつー」にしちゃったんだねええ。
 ケバいチークがカンチガイ感を作っているし、おでぶなおばさんなのは変わってないから、同じことなもかもしれない。

 乳母は難しいキャラクタだなほんと。
 
 ……しかしコマくん、太ったよね?
 えーと、役作り? 声を出すために必要な肉をつけた?
 でも最近せっかく痩せてきれいになったのに、また二重アゴになってるっすよ……もったいないー。
 この公演が終わったら、またイケメンなコマくんに戻ってね。
 

 イケメンNo.1といえば、なんつってもマーキューシオ@ちぎ。
 どんなイカレた髪型したって、下品な態度を取ったって、彼が超美形であることは揺るがない。

 おウタがアレなのは想定内、とゆーか、芝居歌である限り気にならない。いやその、フィナーレの銀橋ソロはすばらしい破壊力でしたが(笑)。

 彼もまた雪組版らしいマーキューシオなんだろうなと。

 つまり、地に足が着いている。

 現実の範囲の不良少年、リアルにありそうなレベルのキレた男の子。
 星組版の初見時、マーキューシオの最期を見て、ごめん、泣くどころかツボっちゃってふるふるした(ベニー最高!!)のに、ちぎたさんだとちっとも笑えない。
 あ、ここってふつーに悲劇なんだ、と思った。や、星組版も悲劇だっつーのはわかってるけど、ベニーが素敵にベニーで、やりすぎまくってたから……。

 ちぎたマーさんの最期はとてもふつうで、ふつうゆえにちょっと地味というか、芝居がかり方が少ない分引っかかりがなくて……さみしい。
 物足りないという意味のさみしいではなくて、ほんとうにマーキューシオという男の最期として、さみしい。
 こういう死に方しちゃう子なんだなという。

 トラブルメーカーでさ。
 いつも騒動起こして、物事引っかき回して、そして最後の最後でもロミオを追いつめてさ。
 「オレが刺されたのはロミオのせい」とか、いちいち言うな、墓場まで持っていけっつの(笑)。その同じクチで「ジュリエットを愛し抜け」とか言うなっつの(笑)。
 この凡人ぶりが痛い。悪意とかなく、めっちゃニュートラルにロミオを追いつめ、狂気へと背中を押しちゃうんだぜえ。
 世の中往々にしてそーゆーことってあるけど……そんなリアルは「ファンタジー」にはいらん、見ていてつらいってば。

 や、その「いらん」がてんこ盛りでダーク路線な雪組版も、だからこそ好きです(笑)。
 繊細すぎるキムロミオに、無神経なちぎマーさんは素敵なコントラスト。ロミオはそりゃ、この大雑把なマーキューシオを好きだったんだろうなと。
 それにしても、当日券発売時に「BINGO」参加券当たったって人、いるんすか?
 花組のときもけっこうな回数当日券で観たし、今回の雪組はそりゃーもー気合い入れて当日券並んでるんですが。
 わたしひとり当たらないだけじゃなくて、当たっている人を見たことナイ……。

 ええ、「BINGO」当たってませんとも。わたしのくじ運だとそりゃ無理だろうっていう。
 当たってもいいように、「BINGO」当日は予定空けてあるのにっ。行く気満々なのにっ!(笑)

 
 初日からとんとんと調子よくリピートして、休演日をはさんだことでちょっとアタマ冷やして……しかしまた、観に行きたくて行きたくてたまらなくなっているという、ナニこの中毒性。
 いい作品に贔屓が出ているって、幸福なことだなああ。(切実・笑)

 
 『ロミオとジュリエット』、ジュリエットと、ロミオについて。

 初日のジュリエットはみみちゃん。
 とにかく、かわいい。
 登場した瞬間のかわいらしさから、「ああ、この子がヒロイン!」と納得できる。
 歌が苦手な人であるため心配していたけれど、芝居歌として聴く分には問題なかった。
 ヒロインらしいきれいな声で、違和感ない。
 ロミオ@キムとの並びがキレイ。
 公演ごと、役ごとに成長していく人を見るのはうれしい。

 翌日はもうひとりのジュリエット、研1抜擢の夢華さん。
 彼女の抜擢に言いたいことは山ほどあるが、それは置いておいて、あくまでも舞台上の話限定。
 『ロジェ』新公のビジュアルがあまりにアレだったし、その後の『はじめて愛した』も苦しかったので心配していたけれど、大丈夫、かわいくなってる!
 というか、「ジュリエット」というのは、女の子をかわいく見せる役なんだなと。ブロンドの髪やかわいいドレス、素直に笑って泣いて愛に生きる女の子。……マサツカ作品の地味服しかめっ面キャラより、そりゃかわいさが底上げされるわっていう……。まあその、相変わらず横顔はキビシイが(笑)。
 でもって、歌がうまい。徹底的にキャリア不足なのに、舞台度胸もある。
 ただ、体格的にキムくんと合わない……舞踏会のキュートなドレス姿でペタ靴はないわー。ロミオがすごいハイヒールなのに。んで、夢華さんに肩出しドレスは気の毒ですよ、いかつさがむき出しになってびびる。

 
 これはわたしの問題なんだろうけれど、今回「ジュリエットがふたり」ということで、『ロミオとジュリエット』なのに、ロミオとジュリエットの恋愛に没入できていない。
 星組版を観たときに「ちえねねがすきだ、ちえねねがすきだ」と大泣きした。ロミオ@れおんとジュリエット@ねねちゃんが愛を語っている、それだけのことに感動して号泣できた。あの感覚が雪組版にはない。

 今回の『ロミオとジュリエット』は、タイトルに反して『ロミオ』という作品なんじゃないかと思う。
 ジュリエットは主人公ロミオの人生を彩るパーツの一部であり、主役のひとりではないというか。公演ポスターが物語る通りに。
 
 演出的にもロミオだけが突出したカタチになっている。
 タカラヅカには番手制度があり、舞台での露出にもルールがある。銀橋を渡る回数に、それがもっとも大きく反映される。
 銀橋ソロがあるのはロミオとジュリエットだけ、しかもジュリエットは1回だけであとはえんえんロミオのみ。
 今回は2番手に銀橋ソロがないため、他のキャラクタにも銀橋は与えられない。せっかくエプロンステージがあるのにそんなルールのため使用できず、みんなカーテン前で歌うしかなくなっている。
 全体のバランスを無視して、ロミオの扱いだけがぶっちぎりで強い。

 そしてキムロミオがまた、「ジュリエット」を愛してはいても、ジュリエット本人のことは愛しているのかどうかよくわからないというか……。

 ロミオはとびきり繊細な天才肌の少年で、どんな人生を歩んだにしろいずれ狂気に至るというか自殺して終わりそうな暗い予感を持ったキャラクタ。……なんだが、彼はとても強い。存在がとても強く、唯我独尊。
 ロミオの強い自我の前に、ジュリエットはとても形式的というかロミオと同じ次元に存在していない気がする。
 ロミオが愛しているのは結局ロミオ自身であり、ジュリエットはロミオの鏡像ではないかと。

 彼らの「運命の恋」を否定するわけではないけれど。

 キムくんって「恋愛」においては相手役いらずな面は、たしかにあるよなあ、と。
 彼自身が強く、自己のうちで完結できてしまうというか。若くして抜擢され続けてきたわりに、ちゃんとした恋愛はさせてもらってない、そのあたりが出てしまったのかなと。

 だから、見た目のお似合いっぷりに反し、芝居の調和はみみちゃんより夢華さんだと思った。

 みみちゃんのジュリエットには、個性がある。
 ああこれはみみちゃんのジュリエットだと思える。

 だが夢華さんにはソレがない。

 夢華さんは歌ウマさんだが、彼女が歌い出した瞬間「おおっ、すげー歌姫だ!」と思うことはない。彼女の歌は「主役」の歌声ではないんだ。うまいんだろうけど印象に残らない。ヘタじゃないから耳障りでもないし。
 彼女の芝居は、その歌声と同種のものだ。うまいんだけど、主張がない。キムくんのような「強い」人の前だと個が消えて、完全に従になってしまっている。

 『ロミオとジュリエット』ではなく『ロミオ』であるこの物語では、ジュリエットは個性のあるみみちゃんより、ロミオの陰にかくれてしまう夢華さんの方が合っている気がした。

 でもなー。
 べつにそんな、「ジュリエット」という記号を観たいわけじゃないからなー。

 みみちゃんの生気あるジュリエットがさらに開花し、キムを振り向かせられるといいなあ。今のところ、同じ次元にいないからな、このカップル(笑)。
 見た目の似合いっぷりは素敵なのに。

 夢華さんがこれで個性を出してきて、キムと一騎打ちになったらおもしろいだろうけど、そしたら見た目の似合わなさがクローズアップされて難しいことになるかな? キムより縦にも横にも大きいよね? 見た目は大事だよー、頼むよ劇団。

 キムの独走態勢という構成演出になっているのも原因だと思うけど、キムラさんももう少し周り見てくれてもいいのになと思う(笑)。
 テンパっちゃうのも仕方ない状況なんだけど。

 
 といいつつ、今の『ロミオ!』も好きよ。(キムシンの『オグリ!』みたいな感じのタイトルでヨロシク)
 面白いです、マジ。あのキムくんがテンパって暴走しているなんて、愉快ですよ。
 いずれ落ち着いて芝居も変わってくるんだろうし、今しか見られないものを目一杯楽しみますとも。
 劇団は、同じ組での再演を禁止するべきだ。
2011/01/07

2011年 公演ラインアップ【宝塚大劇場、東京宝塚劇場】<5月~8月・宙組『美しき生涯』『ルナロッサ』><6月~9月・花組『ファントム』>

1月7日(金)、2011年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、宝塚大劇場、東京宝塚劇場の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。

宙組
■主演…(宙組)大空祐飛、野々すみ花

宝塚グランドロマン
『美しき生涯』-石田三成 永遠(とわ)の愛と義-
作/大石 静 演出/石田昌也

脚本家の大石静氏、テーマ曲の作曲に大島ミチル氏を迎え、戦国武将・石田三成の生き様を描きます。

レヴュー・ロマン
『ルナロッサ』-夜に惑う旅人-
作・演出/稲葉太地

紅い月の下で繰り広げられる様々なイメージを、東西文化の交じり合う中近東世界を舞台に展開するエキゾチックで魅惑的なレヴュー作品。


花組
■主演…(花組)蘭寿とむ、蘭乃はな

ミュージカル
『ファントム』
脚本/アーサー・コピット 作詞・作曲/モーリー・イェストン
潤色・演出/中村一徳  翻訳/青鹿宏二

ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」を題材とし、1991年のブロードウェイでの初演以降、世界各地で上演され高い評価を受けている脚本アーサー・コピット、音楽モーリー・イェストンによる『ファントム』を、宝塚歌劇では2004年に宙組により初演。怪人の心の葛藤を鮮明に浮かび上がらせ、悲劇の結末をよりドラマティックに描き出した、宝塚歌劇ならではのロマンチックな舞台は高い評価を得、2006年には花組により再演。今回は、花組・新トップスター蘭寿とむのお披露目公演として、初演時から潤色・演出を務める中村一徳により、さらに感動的な舞台をお届けいたします。

 花組で、『ファントム』って……!!

 主演のらんとむさんの持ち味や得意分野無視の演目、さらには相手役の蘭ちゃんも歌は相当苦手なのに何故天使の歌声役、つーこともツッコミたいところだが、それよりなにより、役者個人がどうとか何組だからどうという次元じゃなくて。

 「花組」で「『ファントム』再演」はナイだろうってこと。

 たった5年前にやったところなのよ?
 その間、花組の主立った顔ぶれにはあまり変化がないのよ?
 トップを含めて3~4人しかまともに役がなく、しかも花組メンバーで当時と比べて変化があったのはトップを含めて3人ほど、役のある人の顔ぶれが変わっただけで、それ以外の大した役じゃない人たちは全員同じなのよ?

 そもそも『ファントム』は再演するような作品じゃない。
 大山鳴動してぢゃないけど、鳴り物入りで輸入されたわりに肩すかしな残念作品。演出家が違えば底上げはされたかもしれないけれど、なにしろ紙芝居作家が指揮を執っている。ネタは良くても料理人の腕によって、いくらでもまずいモノが皿に並ぶ見本のよーな作品だ。
 演出が悪くて見た目のセンスがなくても、タカラヅカ的であるならそれはソレでアリだと思うが、それもチガウ。
 主人公から3番手までタカラヅカ的な意味では誰ひとり「おいしく」ない。うまく感動的に演じても、誰も「タカラヅカ」としては得をしない。
 そして致命的に、役がない。主要な役すらおいしくないのに、それ以外にろくに役がないなんて……「タカラヅカ」でやる意味があるのか??
 せめて1時間半で収まっているならショーと2本立てにして、救いを持たせることが出来るが……。

 あらゆる意味でマイナス面しかないのに、なんで再演するんだ。
 
 もっとも「鳴り物入り」だったために知名度はある。外部でも上演されているし、無名のオリジナル作品より上演するメリットが劇団にあるんだろう。
 それならせめて、組を変えるべきだ。
 タカラヅカはリピーターで持っている。ファンが「あきた、もう観たくない」と思う状態は避けるべきだろう。

 5年前、花組で再演が決まったとき、わたしは相当凹んだ(笑)。
 宙組の初演を楽しんだのは事実。だけど、楽しんだことと、作品への評価は別。
 寿美礼サマで聴きたい曲はあっても、本公演でやって欲しいわけじゃない。『TCAスペシャル』とかでちらりと見せてくれれば満足できる……むしろ全編上演は勘弁してレベルの作品だと思っていたから。
 トップから3番手まではいいけど、番手もつかない人たちはただの「動く背景」。それがショーもなく1本モノで1ヶ月半……。そりゃ凹むわ……。

 それでも、宙組でこうだったものを花組で、という意味では楽しめたり期待できたりもした。
 前もってどんな役か話かわかっているので、妄想配役で仲間たちと盛り上がることも出来た。

 どんなに駄作でも、「再演」ならキャスティングを想像して楽しむことは出来る。
 出演する人々が違えば。
 最近なら、『ロミオとジュリエット』がそうだね。星組でこうだったから、雪組ではこうだろう、とか、考えて楽しめた。

 しかし同じ組で同じ演目って。

 花組はついこの間、『EXCITER!!』再演したばっかですけどっ?!
 同じメンバーで同じ作品を再演しました。
 凹みました、マジ。

 同じことをまた繰り返せと……??

 『EXCITER!!』はまだフジイくんで、多少演出の変化も期待できたけれど、中村Bには、それすらない。
 彼は10年前も10年後も同じことをやり続けます、配役は持ち味無視で上から順番1・2・3です、1階センター席以外からは観られない、平面的で奥行きのない舞台を作り続けます……。

 ああせめて、同じ組で再演でさえ、なければ……。
 同じ組でやるなら10年はあけないと、似た顔ぶれになってしまう。10年未満の再演は、同じ組禁止にして欲しい。切実。
 作品も出演者(組)も演出家も同じはナイわー。

 本公演は5年前とほぼ同じ顔ぶれなので、配役で楽しみがあるのは新公だけです……。
 いまっち主演が見たいです。心から見たいです。「同期で感動銀橋」とかゆーピントのズレたことを劇団が狙っての演目なら、新公も同期でタソにキャリエールやらせたってください。

 「らんとむでファントム」そう言いたいだけの劇団渾身のギャグ(もちろん大スベリ)なんやないの、と思いつつも、決まってしまったからには応援します、5年前もそうでしたから。
 

 宙組さんの演目は楽しみです。芝居の演出家がイシダせんせだということ以外は、うらやましいです(笑)。
 史実忠実な世界観ではなく、ゲーム的なビジュアル戦国モノでお願いします。
「キングはどこに出てました?」
 と友人のチェリさんに聞かれたので、プロローグのあゆっちとの場面を含め、1幕で出ていた場所を簡単に説明したけれど、これが初見のチェリさんの記憶には残っていなかったらしい……ある日の幕間の会話。
「ヲヅキを見るのに忙しいから、赤チームはあんまり見る余裕がないの」
 という彼女の言葉は納得。全体を観たいと思いつつも、贔屓を見てしまうのがヅカファンの性。でも他の子たちだって、見たいよね。

 これから2幕を見るわけだから、大丈夫、絶対にわかる場面がある。
 ヲヅキに胸ぐら捕まれて、殴られるんだよ、キング。ここならヲヅキしか視界に入らない人にもわかるはず。
 そう太鼓判押して説明。

 んで、2幕も終わった終演後。
「キング、どこに出てた?」
 ちょ……っ、ヲヅキティボに殴られていた赤チームの男の子いたでしょ?

「殴られてた男の子はいた、ちゃんと見た。でもアレ、キングぢゃない」

 キングだってば(笑)。

 という物議を醸し出すほどに、キングがイケメン。

 『ロミオとジュリエット』にハマってます、機嫌良くリピートしてます。

 仲間内では観劇回数の少ないわたしが、それなりにがんばって観ています。ええ、少ない方ですよ、友人のドリーさんは『EXCITER!!』を通算40回以上観てたりするし、ジュンタンの宙組観劇回数なんかもお……。みんな贔屓の出ている公演はそれくらい観るよね?な人たちだもん、わたしはまだまだ小物です。
 それでも、ドリーさんに真顔で「めずらしいじゃない」と言われるくらい、わたしらしくなくマメに観劇しています。
 つか、1週間で6回観劇とか、バカジャネーノ?って感じに通ってます。……や、そんなの今だけ、すぐに落ち着くと思う。お金続かないし。すでにチケットカウンターでカード切ってるし(現金が足りなくなったらしいよ・笑)。

 
 ヘタレ美形キングを愛でるのを楽しみにしている(としか思えない、いつも必ずキングに言及する)、チェリさんが認識できなかったほど、今回のキングくんはかっこいいっす。
 思い切ったショートヘアは赤トサカ気味。ワイルドってゆーか、ほんとに「男子」な感じなの。ちっともヘタレぢゃないのよ、マジかっこいいのよ!!
 小顔で肩のラインがきれいで。
 オープニングのラブストーリーっぷりもいい。ドラマのあるイケメンぶり。

 
 赤チーム男子では、朝風くんが好みすぎてたまりません。
 なんか目張り成功してるってゆーか(ヲイ)、黒髪とアイメイクのくっきり具合がすごーくツボ、もともと気になる顔なのにさらにど真ん中にキタ(笑)。あの顔で、なんかワイルドな、邪悪な表情浮かべてんのよ、好みすぎる。
 りんきらのカオとカラダのボリュームが相変わらずであること、レオくんのカオがやはり好みであることを、初日からとりあえず確認しました、はい。

 赤チーム女子では、なんといっても、リサリサの美貌と毒!
 も、たまらん。あのコケティッシュな美貌で挑発的かつワイルドな美女を演じられたりしたら、鼻血もんですわ。
 オレ、女で良かったなああ。もしオレが男でリサちゃんと出会ってたら、今頃マジで恋してるかもしんない……と思いました。あんな女の子に恋して身を持ち崩すのは、男としてある意味本懐かも、と。
 んで、そんなリサちゃんにエロエロに絡まれてなお、ジュリエットへの純愛を貫いているティボルト@ヲヅキが、さらに不器用で愛しくなります(笑)。

 
 友人のkineさんとモンタギューチームの点呼をしていて、ふたりそろってホタテくんを捕獲していない事実に気が付く。
 他の男たちは点呼済みなんだが、ホタテと桜路くんだけが漏れている。今後の課題。てゆーか、カオをおぼえていない桜路くんはともかく、個別認識できているホタテを何故見落としているんだ自分。

 がおりが安定した美しさを、カオもそうだし動きでも示していること、なにがどうじゃなくてもしょうくんが美貌とガタイで目立ちまくっていること、まなはるが、暑苦しすぎること(笑)、あすくんのカオというか笑顔が目に付き過ぎること(笑)を、仲間たちと語りつつ、毎回舞台をまったり愛でている。

 れのくんはこの間、客席降りが真横でさぁ。銀橋のまっつ忘れて、その美貌とナマの歌声にうっとりしちゃったわー。きれいー。鼻大きいー。(ソコ?!)

 まっつ中心視界なので、まっつを抱く男たちというくくりで、みうととか香音くんとか認識してるし(語弊ありすぎです)。
 「綺麗は汚い」でまっつと絡むハウルはWプルシェンコ!とツボっているし。

 
 若者チームはともかく。

 ソロのある年長者たちを見て、つくづく「歌の難しいミュージカルなんだな」と思っています。

 美しくて色っぽくて、いろいろと無神経っぽいキャピュレット夫人@かおりちゃんは、期待以上かな。
 ある意味ティボルトの相手役であるわけで、母役とはいえ「現役!」の華やかさが姿にも歌声にも必要。
 ミュージカルの大役といえば、その昔マダム・ヴォルフ@『エリザベート』で残念感のあったかおりちゃんであるだけに、美貌はさらに磨きを掛けつつ大人の女として花開いている様が素敵です。

 キャピュレットの不倫ママと対照的なのが、貞節かつ過保護ママであるモンタギュー夫人@ゆめみちゃん。
 重厚なママっぷりは安心な出来なんだけど、このゆめみちゃんを持ってしても手に汗握る歌なんだ、モンタギュー夫人のパートって。
 最初の両夫人のデュエット、ゆめみちゃんの歌い上げが不安定でなあ。階段にいるベンヴォーリオ@まっつと一緒にオペラに収めていることが多いんだが、「ゆめみちゃんがんばれ」と毎回思う。
 ここまで歌で苦戦するゆめみちゃんをはじめて見た。
 最後の霊廟での歌は素晴らしいっす。

 ヴェローナ大公@しゅうくんは……がんばれ。大変だと思うけど、がんばってくれー。
 キーが合わないのか、あちこち大変(笑)。
 特にオープニングは苦戦しまくりだよなあ。ぱっちり歌えている箇所と、やばいところの差が大きくて。
 姿の良さと、芝居のかっこよさがあるゆえに、歌もがんばってほしいナリ。
 政治家・施政者である顔に、個人の顔が見えるあたりがイイ。従者をたくさん連れて行動している威圧感がサマになってる。

 うれしい驚きだったのは、神父@にわにわ。
 歌える人だとということはわかっていたけれど、今までの彼はあくまでも「脇」の歌手であり、こんなに「主要人物」で歌えるかどうかは未知数だった。単に歌がうまいことと、物語を動かす歌を歌えるかどうかは、別次元のことだから。
 そんなの杞憂だった。
 神父さんの歌、すごくイイ!! ロミオ@キムくんとも合っている。
 あたたかくておおきくて、ドラマのある歌声。すごく素敵。心地良い。
 台詞回しが星組エマくみちょまんまに聞こえるのは、演出家指示なのかな。もっとにわさんオリジナルでもいいと思うんだが。
 『ロミジュリ』が忙しいわたしですが、そのかくんの『Dancing Heroes!』ははずせません、行ってきました。
  
 そのかが、かっこよかった。

 も、このひとことに尽きる。
 桐生園加というタカラジェンヌがいること、ダンサーがいること。
 そのことを感謝し、誇りに思う、そういう公演だった。

 学年を考えても当然のことなんだが、他の出演者とそのかとの格差がすごい。
 ただ踊れている、ということと、空間を牽引する・客席を掌握する「スター」との違いを見せつけてくれた。

 バウ公演は新しい出会いの場、下級生をおぼえて帰るぞー!という意気込みもあったんだが、途中で完敗宣言、無理。
 そのか見てるだけで、いっぱいいっぱい。

 複数回観られるならそれもアリだけど、チケット1枚しかないなら、もうここはそのかを見よう、そのかに酔おう。それこそ本望ってもん。
 や、それでも第一目標の「せめて男の子たちだけでも、全員顔を見分ける・おぼえる」は達成したのでヨシとしよう(笑)。
 
 バウで行われたダンス公演、『Young Bloods!!』や『ハロー!ダンシング』も全組観てきたけれど、今回のような確固たる「スター!」の率いる公演ではなかった。
 スターが主役を務める、通常のバウ公演。
 構成演出も通常公演っぽいというか、「所詮ワークショップ」という甘えのない真っ向勝負なものに思えたけれど、これは単に演出家のちがい?
 ハコがバウであるということを除けば、ふつーに大劇場でやっているショーの感覚で観られた……演出的に。

 ええ、そのためでしょうか。

 主役は、歌も歌わなければならない(笑)。

 ダンス公演だし! ふつーのヅカショーぢゃなくてもいいんだし!
 誰もそのかの歌に期待してないんだし!

 何故、歌わせる(笑)。

 タカラヅカ・ショーというテンプレートには、「ここでこうスターがばーんと出てきて、出てきたらまず主題歌歌って」とか書き込まれているのね。それ以外はナイのね。
 だからものすごーくかっこよく登場! かっこよく踊るそのかさん!が、……歌い出すので、もお、大変。

 その落差の大きさときたら(笑)。

 踊るそのかがめちゃくちゃかっこいい、素敵すぎるだけに、歌い出した瞬間のとほほぶりに椅子に沈み込んじゃうよ(笑)。

 歌は宇月くんに任せるとか、全部録音にしておくとか、方法はあるだろーに、「タカラヅカだから!」とテンプレ重視。
 や、そこがタカラヅカの愛しいところであり、そのかの愛しいところでもある。

 何故そのかに歌わせるのか。
 これが外部なら絶対彼は寸劇の台詞以外に声を出すことなく、踊りだけだよね。陳腐な歌よりはるかに、そのダンスで言葉を表現できるのだから。

 だけど歌う。
 決してうまくない……ぶっちゃけかなりとほほな歌を。

 でもそれが「タカラヅカ」。
 この公演はダンス・パフォーマンスを観に来る公演ではなく、タカラヅカスター・桐生園加を見に来る公演だから。
 そのかが歌うことで作品のクオリティが下がってもかまわない、彼が歌も踊りも務めることでそのか主演公演としてのクオリティが増すならば。
 観点の違い。作品クオリティより、スターの見せ場重視。
 それが正しいとか間違っているとかいう次元じゃない、それが前提、それが「タカラヅカ」。

 プロ歌手の素晴らしい歌唱と楽曲のテープを流してそれに合わせて無言で踊るよりも、ヅカスタッフの手によるチープな曲と詞をとほほな歌声でスターが歌いながら踊るのが、タカラヅカ。
 それが、愛しい。

 なんでそのかに歌わせるかなー、黙って踊らせときゃいいじゃん。と、幕間も終幕後も仲間内で言い合うけれど、だからといってそのかの歌を否定する人はいないと思うんだ。
 あの歌声も含めて「そのか」だから。

 てゆーかプログラムの写真も含め、踊るそのかがかっこよすぎて、美しすぎて、歌でもなけりゃ、やってられないよ?

 この人完璧?! 神?! な勢いを、歌うことで「ああ、完全無欠な人なんていないのね」とほっこりさせてくれるってゆーか。

 手の届かない神々しい人が、一気に近しい存在になるというか。

 そのギャップにいちいちきゅんと来ます(笑)。

 下級生たちも良かったしがんばっていたし、発展途上の彼らを率いて公演を打つことに意義があるのもわかってるけれど、もう少しスキルのある人たちでこの公演を観てみたかったなと、特に「タカラヅカ」スキルが必要な場面を観ると思いました。
 ダンスの善し悪しだけなら文化祭や発表会でもいいの、でもここタカラヅカだから、という。
 フロックコートの男たちが妖しく絡む場面なんかもお、女子校の文化祭を観る気恥ずかしさに満ちていて、もおどうしようかと(笑)。耽美な萌え場面なんだろうけど、萌える以前だわ、男役としての技術(ハッタリ含む)が足りていない人たちで観ると。
 それも含めて、大満足の公演なんだけどね(笑)。

 宇月くんがいてくれて良かった。彼ひとり、他の子たちと一線を画していた。いろんな意味で。まんちゃんも踊っているときは安心。

 ラストの「奇跡」はそのか自身の振付らしい。
 予備知識なく観ていたんでそんなことは知らなかったが、観ながら「そうにちがいない」と思った。すごーく創作ダンスっぽいというか(高校時代のダンスの授業を思い出した)、スカステの『ダンス魂』でそのかが踊っていた創作ダンスとテイストが激似だったので。

 そのかのこの公演に対する意気込み、熱意のすごさがわかる。

 全編通してものすごーい「サヨナラ公演」演出で、あまりに際立って「サヨナラ」なので、チガウ意味でとまどう。

 これが2番手以上の公演なら、「ああ、次で卒業なんだ。トップスター以外は事前に告知できないから発表されていないだけで、これがサヨナライベントなのね」と思えるけれど。
 そのかはそうじゃないし。
 ここ20年ほどの間で、サヨナライベント公演をしたのは、トップスターのみ。新専科の樹里ちゃんは日生劇場主演したけれど、作品ありきで樹里ちゃん個人のイベント公演ではなかったし。
 たかちゃんの『W-WING-』とか、ワタさんの『Across』とかコム姫の『アルバトロス、南へ』とか、かしちゃんの『I have a dream』とか、そーゆーの。
 ゆみこですら、DSがあったのみで、イベント公演はなかった。

 立場的にサヨナラ公演作ってもらえる人ではないので、あまりに「サヨナラ」一色なのでとまどう。
「そのかだから、『ナニか感動的なものを』って考えたら、サヨナラっぽくなっちゃったんじゃね?」
 とか、友人たちと話してましたが。

 集大成とサヨナラは、たしかに似ているので(卒業するスターは大抵インタビューで「男役**の集大成をお見せします」とか言う)、それでこんなことになっちゃった……というオチであることを、心から祈る。
 観るたびに、いろんな発見があり、チガウところで泣ける。
 アングル固定の録画映像ではない、ナマの舞台のおもしろさ。

 『ロミオとジュリエット』、リピートすることによっていろんな人の人生が浮かび上がってくる。

 キャピュレット卿@ヒロさんが素晴らしいことは、初演の星組でもわかっている。
 色男な姿も素敵だし、妻に愛されていないと判明、その上娘に非難されての寂寥のソロがまた絶品。
 毎回豊かな歌声を心地よく聴いているわけなんだが、あるときちゃんと歌詞に耳を傾け……というか、考えてみた。や、歌詞はもちろん聞いている・意味わかっているけど、ちゃんと考えてなかったのね。

 ジュリエットに拒絶されたあと、キャピュレット卿は「娘よ」と歌う。
 憎くて言っているんじゃない、幸せを願っているのだと。
「いつかはわかりあえる日が来る」と。

 いつかなんて来ないじゃん!!

 ジュリエット、自殺しちゃうじゃん。

 キャピュレット卿目線で物語を見たら。
 それまでは「個」なんて無視、自分の所有物だと思っていた一人娘。なにも言わなくても自分を愛し、全幅の信頼をおいてくれていると、疑ってもいなかった存在。
 親にとって、子どもはいつまでも子ども。娘がひとりの女性に成長しているなんて、気付いていない。最初に抱き上げた小さな姿のまま、「ぱぱのおよめさんになるー」と抱きついてきた姿のまま、印象は止まっている。
 だからジュリエットの愚行が許せないし、理解できない。自分の考えを一方的に押しつけ、逆らわれて手をあげる。

 思わず殴ってしまい、はじめて、娘が成長していることに気づき。

 彼はいつも、自分が良かれと思うことをしてきた。黙っていても家族は理解してくれていると思い、闘ってきたのに……実は誰も彼を愛してくれていなかった。
 自分の生き方は間違っていない、考え方は間違っていない。ただ、愛する家族に理解されていなかったこと、それを少しも気付かずいたことを寂しく思い、また、自嘲する。

 子どもに否定されるって、人生否定されたよーなもんじゃんね?
「親父みたいになりたくない」とか、「お母さんみたいな人生は嫌」とか、息子や娘に言われたら、凹みますよ。
 家族のためにがんばって生きている、その過程全部間近で見てきた相手に否定されたら、じゃあオレの人生なんなんだよ?てなもんで。
 ジュリエットひどい。パパの自尊心こなごなに砕いちゃったよ。

 自嘲しても、キャピュレット卿は意志を曲げない。間違っているのは娘の方、親は娘のためを思ってやっているんだ、いつかわかってくれる。
 叩いてしまった手を見つめ、きっと娘の幼い頃の姿なんか思い浮かべながら……彼女の幸福を祈る。今憎まれても、娘のために最善を尽くそうと。

 なのに。
 なのに、ジュリエットは死んでしまう。

 キャピュレット卿は娘とケンカ別れしたまま……その手で娘を殴り、泣かせてしまったまま、永遠の別れとなる。
 いつか、わかってくれる……そう思っていたのに。あえて悪役になったのに。

 てゆーか、娘殺したの、俺か?

 泣いて嫌がる娘に結婚を命令した、そのまま娘自殺ってことは、殺したの俺じゃん。

 娘に全人生否定された上、その娘殺しちゃったよ……。
 ってそれ、どんだけ悲劇。

 ヒロさんの歌声に聴き入り、彼の哀切に集中したあとジュリエットに「恐れはしない♪」と薬飲み干されたときにゃ、喉の奥が鳴りましたよ、キャピュレット父の気持ちを思って。
 ちょっと待て、父親を全否定したまま死ぬな!! そんなことしたらパパがどんだけ傷つくと……!!

 突き放した直後に息子に自殺されたエリザベートもかくや、の悲劇。

 ここでだーだー泣きました。舞台に現れないキャピュレット卿の慟哭を思って。

 跡継ぎで息子同然だったティボルト@ヲヅキを失い、その上一人娘まで失って。
 それでもキャピュレットの長たる彼は、弱いところを誰にも見せられず、妻すら心通う相手ではなく。
 その寂寥の凄まじさは想像にあまりある。

 
 いやはや。
 どこにツボがころがっていて、どこでずどーんと来るか、実際観てみないとわかんないし、観るたびチガウし。
 こーやってジュリエットパパに感情移入して泣いたかと思うと、次に観たときはまさに同じ場面でジュリエットに感情移入してさめざめと泣いたし。

 大好きだ、『ロミオとジュリエット』。
 それは、まっつの声の調子の悪い日のことで。
 前日からファルセットがなくなり、見守るファンも心穏やかでなかった日。

 実際歌声は抑え気味というか、いつもの心地よいクリアさに不意にざらつきが混ざったり、のびるはずのところで不用意にオチたりしていた。
 もちろんファルセットもなかったし、聴かせどころのソロ「どうやって伝えよう」の最後の歌い上げの音が下がっていたりした。
 相当キツイんじゃないかコレ、と、まっつの中の人の心配を、マジにした。

 といっても、台詞声はふつーだし、歌だってリピートして通常時の歌声が耳に焼き付いているから「あれ?」と思うだけで、初見の人には不調なんてわからないだろうレベル。
 いちばんわかりやすいファルセットの有無だって、「へえ、こうまとめるのか」と、その違和感のない終わらせ方に感心したほどだ。
(後日、ちゃんとファルセットで歌い、なんの問題もなく美声を響かせているそうなので、この2日だけだったらしい)

 生身の人間の生の舞台だから、いろいろある。
 観ているこちらも、そのときどきによって違った受け止め方をするし。

 だからコレは、このとき限定だったのかもしれない。
 調子が悪いから勢い任せにガンガン飛ばしていく、とかそーゆー選択肢は最初からなかった結果なのかもしれない。
 中の人の都合はわからないが、とりあえずわたしは1観客として、舞台上に見えるモノがすべて。

 その日の『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつは、いつもにもまして、抑えの効いた人に見えた。

 激しさがなく……まとっている空気に熱はあるのに、声のトーンは抑えられていて。
 2幕の最初の方、ロミオ@キムの裏切りを責めるベンヴォーリオとマーキューシオ@ちぎの場面で。
 激昂するマーキューシオの横で、ベンヴォーリオは。

 かなしそうだった。

 言っていること自体は強い、キツイ、脚本通り。いつものように、ロミオを責めている。
 なのに、そこに怒りの表情はなくて。

 抑え気味の声、熱のこもった言葉、責める、詰問する歌、まっすぐな眼差し。

 でもそこに浮かんでいるのは、哀しい表情。
 責めながら詰問しながら、泣きそうな顔をしている。

 今までだって、怒りにまかせて責めているのではなく、友人を心配して説得しようとしているのがベンヴォーリオだった。
 
 怒りに過剰反応するマーキューシオや、他の人々の中で。

 哀しいベンヴォーリオ。
 怒りより不信より、悲しみなんだ……傷ついているんだ……。そういう、人なんだ……。

 哀しい顔で、でも強い言葉で親友を責める姿に、泣けた。

 ベンヴォーリオの痛みが、鋭角に突き刺さった。

 強いからこそ、そこに満ちる悲しみが痛い。つらい。
 
 そうやって痛々しい姿を見せていたから、次の場面でベン様が笑いながら登場して「おおっ、笑ってる!」とびっくりした。(いや、デフォルトですから)
 でもベンマーコンビは、毛を逆立てたティボルト@ヲヅキの姿を認めて、一気に表情を改める。

 そして「決闘」場面になる。
 挑発するマーキューシオ、苛つき臨界点突破のティボルト。

 ひとり離れたところに坐り込んで、なりゆきを眺めているベンヴォーリオの横顔が……かなしげに見えた。
 もちろん冷笑したりウザそうにしたりと、いつものことは一通りしているんだけど。
 冷え冷えとした眼差しが、ふと寂しげに見えて。愁いを帯びているように見えて。

 こうやってティボルトと、キャピュレットたちとぶつかるのは、ベンヴォーリオたちの「日常」。生まれたときから敵のいた彼らは、こうやって生活してきた。

 親友ロミオがやったことは、この「日常」を破壊することだ。否定することだ。

 ベンヴォーリオにとっては大切な仲間、日常なのに。
 親友だと思っていた男は、それを否定した。
「君たちを愛している。でも彼女への愛はもっと深い」……俺たちをアイシテル? そんなの言い訳じゃん。

 マーキューシオみたいに怒りに転嫁して発散も出来ない……だからベンヴォーリオはひとり離れたところにいる。
 冷えた目つきで騒ぎを眺め、嗤い、ふと、哀しい瞳をする……。

 冷静なベンヴォーリオが、出遅れている。
 ティボルトの様子がいつも違うこと、狂気じみていること……もっと早く察するべきだ、そしてマーキューシオを止めるべきだった。

 シャレにならない空気の中、元凶のロミオが飛び込んで来、説教なんかはじめるからティボルトの狂気はさらに加速。ティボルトの怒りはマーキューシオにも火を付ける。

 哀しい目で沈黙していたベンヴォーリオも乱闘に加わりながら、積極的な戦いではなく、制止する目的で動く……いつものように。
 そしてロミオの言葉に耳を傾ける。

 哀しい顔はしない。
 親友をまっすぐに見つめる。
 力強い歌声を返す。

 あ、哀しくなくなった……と、思った矢先に。

 マーキューシオが、刺される。

 せっかく、立ち直ったのに。
 ロミオに裏切られた傷、捨てられた悲しみ、否定された痛みから、愛ゆえに立ち直ったのに。親友を赦し、彼の心ごと受け入れようとしたのに。

 
 続く。
 ある日の『ロミオとジュリエット』、ある日のベンヴォーリオ@まっつ。

 せっかく、立ち直ったのに。
 ロミオ@キムに裏切られた傷、捨てられた悲しみ、否定された痛みから、愛ゆえに立ち直ったのに。親友を赦し、彼の心ごと受け入れようとしたのに。

 立ち直った、次の瞬間奈落へ突き落とされるって、ナニこの完璧なドラマっぷり。すげー急展開。

 マーキューシオ@ちぎが刺され、ベンヴォーリオは崩れる。

 それまでのカッコつけキャラ……二枚目半なところを見せてもいたが、対外的にはシニカルで慇懃無礼なクールキャラだったのに。おにーさんキャラだったのに。ふてぶてしいチームリーダーだったのに。

 まとっていたもの全部かなぐり捨てて、親友を抱く。必死に手なんか握って。
 言葉もなく、消えていく親友の魂を見つめる。

 哀しい顔、なんてもんじゃない。
 子どものような、痛々しい表情。
 思考がストップしたような。

 だからロミオの凶行にも反応できず。横にいたんだから、止めろよ、なんて無理な話。
 いつもの仲裁役ベンヴォーリオなら止められていたかもしれないけど。今の彼には無理だった。
 呆然と、立ち尽くすしかなくて。

「僕たちは被害者だ」と、死んだティボルト@ヲヅキのもとまで行って歌う。
 その、ティボルトを見る目も、とても哀しくて。

 友情じゃなくても、ここにもなにかしらの絆はあったんだと、前にも増して思う。(ティボとベンは、マーやロミオ抜きで一度ちゃんと話すべきだ、と思っている……そのうち語る)

 親友とライバルを一度に失って、その上ロミオまで追放になって。
 「狂気の沙汰」から「どうやって伝えよう」の痛々しさ全開。

 ちょ……っ、ちょおっ、ちょおっ、なんなのこれ、なんのプレイなのまつださん、今回のベン様すげートバしてるよおおおっ。
 
 歌声は抑え気味、高音は出ないのか最初から出さない方向、その分悲しみや揺らぎがてんこ盛りっ!!
 クールな外見と強い動き、なのに満ちる悲しみ。

 萌え死ぬかと(笑)。

 マントヴァで満面の笑顔のロミオに対峙し、クチにする言葉、「君に、会いに」が絶品。

 きみに、あいに。
 キミニ、アイニ。

 文章にならない、単語を並べただけの幼児みたいな喋り方。
 これが精一杯だったんだ、ベン様。
 あれだけ壮絶な決心をしてマントヴァまで来て、でもロミオの笑顔を目の当たりにしちゃったら、言葉が出なくなった。

 絞り出す、「君に、会いに」。

 ジュリエットの死を告げたあとは、目を合わすことも出来なくて。親友の視線を避けて、顔を背ける弱い姿。

 霊廟での、腰が抜けたようなぺたんとした坐り方、亡骸のそばまで行って台に両手をついて泣き崩れる姿が哀しいのは、言うまでもなく。

 マーキューシオの死の場面や、霊廟での魂が抜けたような姿へのラインが、一気につながり、あざやかに浮かび上がった気がした。
 や、今までだって別に疑問はなかったんだけど。

 初日のベン様はもっともっと強くてふてぶてしかったし、ドSな顔もいっぱいしていたし。
 怒りより悲しみを湛えた人ではなかった。

 こんな哀しい人なのか、ベンヴォーリオ……。

 立ち上がり、決意を歌い出す姿がまぶしい。
 コーラスの中、まっつの声を拾うのもたのしい(笑)。

 去り際に大公閣下@しゅうくんとなにを話してるんだろう、「はい」って頷いているのがわかる。

 わたしの脳内には「大丈夫か?」「はい」という会話が聞こえるんですが。
 大公閣下はマーさんの死、ロミオ追放後、ベンヴォーリオがボロボロだったのを知っているのよ、だからここで彼の心の傷を案じるのよ(笑)。

 
 また別の日には違ったベン様が見えるかもしれない。
 だから取り急ぎ、あの日わたしが(勝手に)見たモノを記す。

 ……客席に水くんたちがいたのに、きっとふつーならより張り切って見せちゃうところだろうに。よりによってこんな日に本調子ぢゃなかったまつださんの運の悪さにも萌え(笑)。
 粗忽者のベンヴォーリオと、女ったらしのマーキューシオ。
 そう脚本にはあるけれど、逆じゃないのかなああ。
 まずマーキューシオは女ったらしではないでしょー? アレは女の子にもちょっかいかけて喜んでるガキ。スカートめくりして喜ぶ類いの。
 ベンヴォーリオの方がよっぽど女性経験豊富に見えるし、粗忽なのはどう考えてもマーキューシオでしょ、あのトラブルメーカー(笑)。

 神父様の前ではベン様相当猫かぶってんだな、と思うと萌えですわ(笑)。

 結局ベンヴォーリオ@まっつの歌声は朗々と響いていて、弱弱だったのはわたしが見たマボロシだったようです。
 ファルセットもきれいに響き、オブリガートも迫力っす。歌い上げるときのカラダを弓なりにそらす姿も健在、「腹筋が割れてきたほどの歌声@まっつさん談」を堪能できます。

 ちょっくらここで、『ロミオとジュリエット』のベン様のツボ語り……つーか、メモ。

 オープニングのナレーションはベン様ではなく「まっつ」なので、ベン様ツボとは別……アレを「ベンヴォーリオ」としてやってくれたら萌え死ぬんだけど(この物語の語り部が、生き残ったベンヴォーリオってことになるっしょ?)、あえて個性を廃し「ナレーション」に徹している・ベンヴォーリオとは別人の声としている、とわたしは思った。
 ベン様ではないが、もちんあのクレバーな声も大好きだ。
 しかし小池せんせはまっつの声が大好きなんだろうな。(握手! わたしと同じねっ)

 
 ベン様登場は1場から。
 上手花道を通って、2個イチ扱いのマーキューシオ@ちぎくんと一緒。

 あ、ベン様ウォッチは下手がお勧め!! 彼の重要な表情はすべて下手からでないと見えません(笑)。

 ベン様の舌出しは大公閣下登場してすぐ、ティボルト@ヲヅキ相手に舞台中央でべーっとやります。めっちゃ冷え冷えした眼。
 ヲヅキいいなあ、毎日あの顔見られて……。(やられる方はたまったもんぢゃなかろう)
 ただ、タイミングなのか気分なのか、やらないときもあり。そのときはただガン付けるだけに留まる。

「え、ソレいつもじゃないですか?」と、返したまっつメイトにツボった……そう、無言のガン付けってまっつ的標準装備というか、ふつーにしててもそう見える人なのにって(笑)。

 オープニングのベン様のクールぶりはすごいです。
 キレキレのマーさんとのコントラスト。少年マンガ的キャラ造形。

 下品に好戦的に威嚇しまくるマーさんと対照的に、ベン様は慇懃無礼。敵の大将登場に貴族的な礼をしてみたり。あちこちでこれみよがしな一礼をするのがベン様。

 ベンヴォーリオとティボルトの関係が好き。
 お互いなにかとちょっかい出しあってるとこが。

 ベン様はマーさんと違って露骨にくってかかったりしない。舌出しのようにバカにした態度を取ったり、猛るティボルトを収めるよーにハグしたりする。
 てゆーか、何故にハグ!!
 ものすげー低温に投げやりに、ティボルトを抱きしめるベンヴォーリオ!!
 や、もちろんティボは怒って突き飛ばすんだけど。

 両家のトップ、キャピュレット卿@ヒロさんとモンタギュー卿@ナガさんが一発触発!って感じに身構えたとき、それぞれの大将を守るように背中に隠すよーにばっと前に出る、ティボルトとベンヴォーリオが好き。
 闘うのは、このふたり。対峙するのはこのふたり。
 両家を背負い、血を流す覚悟のあるふたり。

 モンタギューのリーダーはベンヴォーリオとマーキューシオのふたりだけど、後先考えずに吠え続けるマーさんより、一歩引いたベン様の方がよりリーダーっぽく見える。こういう肝心なときにモンタギューを背負って立つのがベン様であるように。
 マーキューシオはもっとフリーダム。ベンヴォーリオが背負っている責任感みたいなものが感じられない。だからこそ魅力があるわけだが。

 そして、ティボルトに唾を吐きかけられるベン様の図に萌え、それに加え、ベンヴォーリオのために怒り狂うマーキューシオに萌え。
 唾かけられたのベン様だってば、なのにベン様、自分では怒るヒマがないの、マーさんが激昂しちゃってくってかかるから、ソレを止めるのに必死で(笑)。
 ベン様、頬をぬぐうヒマもろくにないのよ……マーさんが激しすぎて(笑)。

 
 2場の両家夫人の歌「憎しみ」場面では、ライトが点かないうちから要チェック。
 ベンヴォーリオとマーキューシオが、とにかくいちゃいちゃしている。子犬のようにじゃれあってる。
 ここはアドリブOKなので、毎回チガウ。
 ふたりの仲良しぶりがたまらん。かわいすぎる。体格が合っているって、こんなにかわいらしさを増大させるものなのか(笑)。
 モンタギュー夫人@ゆめみちゃんへ、マーさんがベン様のアタマを押さえて挨拶をさせる……のはほぼデフォだが、やってないときもある。
 この両手を広げた挨拶が、とてもベン様らしい。貴族的で、棘と愛嬌があって。

 「憎しみ」の歌は両家夫人がそれぞれ歌い、相手のターンのときはライトが落ちてストップモーション。
 自由にいちゃついているベンマーコンビもその瞬間、ぴたりと止まる。
 静止が決まっているあたりでは激しい動きはしていないが、あるときちぎちゃんが腕をわりと上げているときにこの瞬間がやってきて……腕を肩より上げたまま、マーさん止まってた……大変だなちぎたさん……(笑)。

 マーさんは「チャオ!」と退場、残されたベン様は階段を上がり、途中で止まって出番待ち。
 壁にもたれて待っている姿が美しい。

 初日前にマスコミに出た写真では「まっつ、やらかした?!」と心配した髪型だけど、実際の舞台ではすごーく映える、かっこいい。てゆーか初日はもっと「部分ヅラ載せてます」って感じだったのに、短期間でどんどんきれいになっていったので、手直し相当がんばったんじゃないかと。
 白金の髪が頬に落ちる感じが実に美しい。

 わざわざ上った階段を下りてくるところでモンタギュー夫人にとっつかまる。このへんがベン様。調子のいいマーさんは、こーゆーうざい状況を敏感に察して逃げる。

 ロミオ@キムの居場所を聞かれ応える声と姿が……オープニングと別人。
 あの危険なクールビューティ様はどこにっ?!状態の、道化喋り。
 それがまた、イイ声で……。

 ベン様はモンタギュー夫人に信頼されているんだと思う。ティボルトのことをキャピュレット夫人@かおりちゃんが「私のたったひとりの相談相手」と言っているが、むしろモンタギュー夫人とベンヴォーリオの関係っぽいなあ……キャピュレット夫人の場合、チガウ意味も混ざってるわけだし。

 いずれロミオが当主となりモンタギューを率いる。そのときの右腕がベンヴォーリオなんだろう。モンタギュー夫人はそう考えていそうだ。

 
 ……たった2場書くだけで欄ひとつ?? 大丈夫か、書ききれるのか。
 続く!
 『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつ語り、その2。

 3場銀橋にて、夢見る夢子ちゃんロミオ@キムを捕獲するベンヴォーリオ。
 ここもものすごーい道化喋り。

 かわいいけど、それほど好きなわけでもない……まっつの若作りの違和感がいちばんキツイ場面というか。(若作り言うな!)
 ロミオの二枚目ぶりを強調するために、ベンヴォーリオはこういう演出なんだろうなと思う。
 オンナの話にニカニカ興味津々、先走ってみたり、説教してみたり、こーゆーところが「粗忽者」なんだろう。
 ……でもベンヴォーリオがそーゆー言動を取るのはココだけで、ココがかなり浮いてるのはどうかと思う(笑)。

 くしゃみがやたらイイ声で笑える。そして、ロミオを捜す声がまたイイ。……ああもお、あの声大好き(笑)。

 
 6場の市街。モンタギューチーム勢揃い。
 「ここにいたのか」と、ロミオを捜して現れるベンヴォーリオ、よっぽどあちこち捜し回ったのか、見つけるなりぺたんと膝を突き……。
 ロミオの脚を掴み、そのまま地面に転がってしまう……のだが、最近どんどんロミオが冷たい(笑)。
 初日近辺はもう少しちゃんと、脚を掴ませてくれていたと思う。でも回を重ねるごとにろくに掴ませてもらえず、ベン様ひとりぺしゃっと潰れている(笑)。

 「お前はいつもロミオのあとを追いかけてるな。ロミオはまるでお前の王様だな」……って、文字だけで見ると相当の萌え台詞だ(笑)。
 実際はそーゆーBL的な気配のない、健康かつ幼稚な様子で言われる。
 マーさんにこう言われたときの、ベン様の子どもっぽいぶーたれた顔はかわいい。「なんだよソレ!」みたいな反論顔。

 ロミオはベンヴォーリオの王様じゃない。
 だけど、崇拝の対象ではある、のだろう。

 たぶんベン様は感じている。ロミオがどこか自分たちとはチガウ次元に立っているって。
 チガウところにいる人だから、彼とこの世界をつなぐ役目が必要で、自分こそがそうなんだと……無意識にでも思っている、そーゆー立場の役だと思うんだ、ベンヴォーリオって。

 いつもロミオのあとを追いかけている、の「いつも」がイイですな。
 そうか、いつもなのか。
 キムのロミオはある日ふと消えてしまいそうな、別次元へ飲み込まれていきそうな不安感がある。
 ロミオを守るために、得体の知れないナニかに彼を奪われないために……ベンヴォーリオがロミオを手の届くところにおいておきたくてあがいているのだとしたら、とても切ない。

 や、全体的に彼らはみんな子どもなので、そんなことは気づきもしない、無意識の話ですが。
 でも子どもだからこそ、敏感に察することはあるよね。

 そして、盛り上がりナンバー「世界の王」へ。

 ロミオの歌声を受けて、まずベンヴォーリオが歌う。
 その声の良さもいいけれど。

 いちばん血がざわざわして昂揚したのは、コーラスになってからだ。
 ベンヴォーリオがオブリガートをはじめたとき。

 うわ、スイッチ入った!
 実際、マイクのスイッチ入ったのかもしれないが(笑)、まっつの声がどーんと響いた瞬間の感動。

 近年はソロで歌わせてもらうことも多くなった。でもソロはソロで完結しているし、コーラスになれば多重のなかのひとり。『Red Hot Sea』の幽霊船コーラスは素晴らしかったけれど、まっつひとりの声が前に出る類いのコーラスではなかったし。
 彩音ちゃんMSで声を重ねたときにすごく響く人だということはわかったけれど、それはあくまでもホテルの宴会場という小さなハコでの話。
 大劇場でソレを披露することがあるなんて、そして完璧にやってのけるなんて、想像したこともなかった。

 主旋律と絡み合いながら、対になる旋律をガンと入れる、響かせる。

 踊り、暴れながらも背をそらし、全身を使って「音」を出している。奏でている。
 まっつの小さくて華奢なカラダ全体が動いているのがわかる。弾んでいる、はじけている、外に向かってうなりを上げている。

 そんなまつださん、見たことがない。

 たしかに役割的にはじめてっつーのもあるが、それ以前に、「未涼亜希」という人が変わった気がする。
 それをいちばん顕著に思い知らされたのが、このときだ。

 だから初日は心臓ばくばくして、「ナニが起こってるの」「あの人にナニが??」とうろたえまくった。

 歌いながら、キムちぎまっつが銀橋に来る。
 この3人。
 ああ、この3人でこれからやっていくんだ。

 まっつは変わり、ここに居場所を見つけた。
 キムくんが笑っていて、ちぎくんが笑っていて。ここに居場所を作ってくれている。そこでまっつも楽しそうに笑っている。

 ああほんとうに、組替えしたんだ。

 感傷とか安堵とか過去とか未来とか、いろんなものが押し寄せてきて、涙なしにはいられなかったよ、初日。

 公演も中日を迎えようかって今はもう、大好きな楽しい場面ってだけだけど。

 この元気で楽しいナンバーのあと、打って変わって妖しいナンバー、「マブの女王」になるのがいい。

 ここはマーキューシオのソロなので、ベンヴォーリオはダンスのみ。
 モンタギューチームのひとりとして仮面のダンスをする、その動きが素敵。

 ここでだっけ、ひとりメンバーたちの後ろに身を引き、髪をいじるの。
 長い後ろ髪を直す感じで、必ず手をやる。無造作に見えてナル入ってる感じがたまらん(笑)。
 ひとり群れをはずれ、またナニ喰わぬ顔で戻る。
 彼の性格というか、立ち位置が見えてイイ。

 芝居部分は初日とかはここでもかなり道化的で、ロミオを捜していたハクション銀橋的な演技だったんだけど、どんどん落ち着いて、大人びてきた。
 「女の子をちょっとからかって退散するだけ」と悪い遊びの提案をするマーさんに、ドキマギする芝居をしていたんだ、初日あたり。
 まるでベン様も相当うぶな男の子、みたいに。

「今日家に誰もいないから、兄貴が隠してたエロDVD鑑賞会やるぞー」と言い出した女ったらしのマーさんに、「そういうの興味ナイ」という優等生ロミオくん、「オオオオレは行くぞっっ」と、普段は悪ぶってるけど実は未経験のベンくん、声がうわずってます、みたいな感じだった。
 これこそが脚本通りの「女ったらしのマーキューシオと粗忽者のベンヴォーリオ」なのかもしれないが……途中からベン様は声をうわずらせることなく、ふつーに「面白そうだから行く」という芝居に変わった。
 いや、ほっとしました。ベン様がチェリーボーイだとオープニング他の大人び方との差が微妙なので(笑)。

 
 続く。
 おかしいなあ、1日が初日だった公演、どーして15日の段階で観劇回数が10回超えるのかなっていう。
 こんな人生間違ってる、と思いつつ、「今だけ、この公演だけ」と言い聞かせながら暴走してます(笑)。

 『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつ語り、その3。

 7場、仮面舞踏会。
 ドレスコードが白のパーティなので、潜り込むモンタギュートリオもみんな白。
 ベンヴォーリオは相方のマーキューシオ@ちぎと一緒に上手から登場。

 なんでここ、ロミオ@キムは一緒ぢゃないのかなあ。演出上仕方ないとはいえ、マーベンの2個イチ感が上がるというか、このコンビ好き過ぎる(笑)。

 あまり乗り気でないゆえに準備にもたつくロミオに業を煮やし、「先行くぞ!」とやったのかな。オシャレもばっちりなマーベンコンビ。ふたり一緒に選んだんだろうなって感じがくすぐったい衣装。……でもわたし、サルエルパンツってあんまし好きぢゃない……(笑)。

 やってきたはいいが、もちろん彼らは招かざれる客、招待状があるわけじゃない。入口でキャピュレット家の使用人に止められる。
 なんとか中へ入ろうともがくバカコンビ。
 そこへ現れる、パリス@ひろみ! 来たぞ、救いの神!!
 パリスがアホボンだってのは、ヴェローナ中の共通認識なのか。すかさずパリスに取り入るふたり。
「これはこれはパリス伯爵」「お久しぶりです」「ん? 誰だっけ?」「お忘れなんですか? 私たちですよ」「ああもちろん忘れてないとも、キミたちだよね、はっはっは」……てな会話が聞こえてきそう。
 そんなことをやってるときに、天敵ティボルトがこっちにやってくる。あわててその場にしゃがみこむふたり。

 この、ティボルトの視線を避けて坐り込むときの、ベン様の手つきが最高。
 地味に大好きだココ。すげー萌える。
 なんつーんだ、わきわきと女の子みたいに手を口元にやってるのね。危ない危ない、てな動作なんだけど。
 コレ、かわいい。かわいすぎるっ。すごい好き!!

 この間にアホボンパリスは使用人と話しており、どさくさにまぎれてマーベンコンビは「パリスの連れ」として門番突破。

 この突破したときにマーベンコンビが「やーいやーい」てな顔をする。
 ベン様の2回目の舌出しが拝めるのはココ。運が良ければですが。してないことも多い。
 オープニングでティボ相手にダークにエロエロに舌を出すのとは違い、いたずら小僧全開の無邪気な「べろべろばあ」(笑)。
 オープニングの舌出しほど下手を向いてるわけじゃないが、上手端でやるから、下手からの方がかえって見やすいと思うんだが。

 そしてコンビは階段を上がり2階へ。まずは敵情視察、全体を見回している。

 この2階にいるふたりがまた、めちゃくちゃかわいい。
 
 2階席の後方だと、この舞台上の2階が見にくいので、1階か2階前方ですよ、お勧めなのは。当日Bだとろくに見えん(笑)。←経験談

 上手から下手へ移動していくんだけど、真ん中を過ぎたアタリがいちばんフリーダム。
 アドリブ場面なので、ふたりで毎回好きなことやってる。
 わたしはダンスしているのがいちばん好きだなー。
 大抵まっつが男役で、ちぎが女の子でくるくる回されてた。でも1回だけ逆も見た、「あ、まっつが回されてる!」って。
 楽器演奏していたり、くねくねしていたり、意味もなくスキンシップしていたり、こいつらナニっっ!!ってくらい、かわいい。

 さて、平舞台に降りてきたふたりは、当初の目的「女の子たちをからかって捨てる」を実行する。
 ベンヴォーリオは降りてきてすぐに、さっさと女の子にコナかけてる……マーキューシオはチガウのに。

 ここで愉快なのは、ベン様にちょっかい出された女の子たちが、みんな正しくその気になっていること。
 仮面で顔はわからない、なのにちょっと声かけるだけで女の子が目をハートをする、って、どんだけ色男設定なん、ベン様。そうか、声がイイからかっ? あの声で口説かれたらそりゃ腰くだけるわ。

 ベン様は男連れの女の子をひとり声かけたあと、ダンスの順番待ち、マーキューシオとふたりでセンターで踊って仮面を取ってにっかり。

 で、そのあと本格的に行動。
 つまり、キス攻撃。

 男からパートナーの女の子を奪い、がばっとキス。
 立て続けに3人。

 キスされた女の子が、みんな「ぽわわ…ん」となっているのが、もお(笑)。

 このキスしているベンヴォーリオ、まったく無表情で義務的にやっているときと、口角上げてにんまりしているときとがある。
 どっちも萌え。
 いや、冷たい顔は今までも見ているから、キスしてにんまりしている薄い唇の方が好きかなー。
 なにあのワルイカオ!!

 んで、ベンヴォーリオがこうやって次々女の子をオトしている間、言い出しっぺのマーキューシオがナニしてるかと思うと……スカートめくり……。
 オトしてる女の子の数は、絶対ベン>マー。
 マーさんがキスしたのひとりだけだっけ?
 マーさんがしているのは「女の子を誘惑」ではなくて、「女の子にイタズラ」という、小学生のガキレベルに思えるんですが……それでも声に出して「女! 女!」と騒ぐから「女ったらし」と思われてるのかな?
 声に出して騒げる分、子どもだっちゅーかね。

 またしてもティボルトの視線をのがれて、上手の人垣の後ろに隠れ、隠れたあとにちゃっかり女の子ひとりお持ち帰りするベン様。
 女の子と一緒に退場していく……別室でナニしてるの? ねえ??

 舞台奥へ去ったのに、再登場は上手袖。マーさんと一緒。
 リボン芸人たちに拍手。

 そうこうしているうちに、下手から銀橋でロミオとティボルトがモメている。それに気付いてマーベンコンビも銀橋へ。

 ふたりしてロミオを守る、その使命感が素敵。
 真っ先に飛び出してティボルトに対峙するマーキューシオ、それでもなお、さらにロミオを後ろへ下がらせようとするベンヴォーリオ。

 ロミオは君たちのお姫様ですか?

 プリンセス・ポジションの友だち。……って、ふつーに少年マンガでもアリだから、実際の男社会にありがちなんだろうけど、目の当たりにするとウケる。
 いいなあ、愛されキャラ・ロミオ。

 
 舞踏会だけで1欄使っちゃったよ……続く。
 ところで、この作品の「死」って、女性だよね?

 新人公演も迫っていることだし、取り急ぎ『ロミオとジュリエット』キャスト感想の続き。

 象徴的な存在として、ダンスと身体表現でテーマを表す愛@せしると死@咲ちゃん。
 初演の星組では愛と死は男と女、あらゆる意味で対照的な存在だったけれど、雪組版ではチガウ。
 愛も死も、両方とも女性だよね?

 死は男に見えない。
 ふつーに女の人だよね。
 それも、カラダの大きな、男装している女性。男役。

 対する愛は、これみよがしに「女」であることを強調した女性。

 「男役」と「娘役」がいる、宝塚歌劇団を暗喩しているよーな。

 抽象的な存在である以上、愛と死にナニを見るかは、観客にゆだねられている。
 わたしには、死が女性にしか見えないし、また愛と対等だとも思えない。

 愛の圧倒的な存在感の陰になり、いるのかいなのかわからないのが死だと思う。

 死は、物語を統べる存在ではない。
 物語が生み出した澱みだ。

 物体と光源があれば、そこに陰ができる。それが死。

 死自体に感情はないし、意志もない。なにかしら表情を浮かべているとしてもそれは、彼女がどうこう考えているのではなく、そのときの「世界」に在るものがそう映っているだけ。

 この『ロミオとジュリエット』世界において、もっとも透明で美しく、それゆえに澱んでいるのは、ロミオ@キムだ。
 繊細すぎるモノは、この汚れた世界では生きられない。ロミオは破滅をその内にに秘めている。
 ロミオが生み出した陰、世界の澱みが生み出した陰、それが死だと思った。

 ぶっちゃけ、咲ちゃんが足りていないのか、そーゆーところも含めてイケコが狙って演出したのかは、わかりません。
 男役であることとか星組版の死から考えれば、あまりにもアレな「死」ぶりなので(笑)。
 でもこれでOK出ているってことは、それでいいってことで、男役だとか星組版の死だとかいう先入観を捨てて見れば、男装の女性、ボーイッシュな大柄女性であり、存在感なく気が付いたらそこにいる不気味さ、感情や意志の見えなさも、すべて説明がつくってことで。

 ロミオの絶望感が全編に渡って大きく漂っているこの物語には、裏主役のように君臨する死、トート閣下は不要。
 トートなんかいなくても、十分暗いから(笑)。
 死は意志なんか持たなくて、ただなんかそこにいて、しどころなくただ「在る」だけでいい。
 ファンタジーというよりも、ある意味ホラーな存在でいい。
 トート閣下は「ファンタジー」だよねええ。星組の真風トートは「タカラヅカ」らしいファンタジックなキャラクタだった。

 死がただ「在る」だけの存在である分、愛の存在感が強い。
 ロミオとジュリエットの運命の恋というよりも、ロミオの闇の方が印象強いっつー気がしないでもないこの物語だからこそ、愛はあざやかであるべきだ。

 せしるが美形であることはわかっていたけれど、女性となった彼は息をのむほど美しい。
 毒のある美しさだと思っていたのに、いや、もともとソレがあるからこそ、ソレすら超えて慈愛の美しさを表現しうるのか。

 愛の美しさ、しなやかさが、この絶望的な物語に光を射していると思う。

 ……ただしこの愛、死とは違い、感情も意志もあるようなので。
 世界と異質な存在、死すら彼女の一部のような。
 神とは残酷なものである、という証明のように、彼女こそが「トート」なのかもしれない。

 
 なんて、とりとめもなく考えつつ。

 実はこの愛と死を見ながら、ナニか思い出すなーと思ったら、『無限のリヴァイアス』のネーヤだ(笑)。
 姿は愛が近いけれど、存在は死の方がネーヤっぽい。
 舞台の上の人々の意志を映して踊る、ヒトでない存在。

 
 ……『無限のリヴァイアス』を雪組でキャスティングしたらどーなるだろう……。キムやちぎはともかく、まっつがどのキャラになるかわからん……(笑)。
 順番に当てはめると昴治@キム、祐希@ちぎ、イクミ@まっつ、ブルー@ヲヅキか。イクミの二面性と狂気はキムで見たいけどなー。

 
 余談。
 「タカラヅカ・ステージスタジオ」の衣装で、わたしたち素人が着ていちばんサマになる衣装はナニか。
 宝塚の舞台衣装のレプリカを着て写真を撮れる、変身写真館ね。
 いろんな衣装があるけれど、所詮素人が着てジェンヌさんみたいにかっこよくなれるはずがない。
 メイクサービスを受ければまた別なのかもしれないけど、そうでなくてただ衣装を着た、標準装備の小物を貸してもらっただけの状態で、いちばん底上げされて見える衣装って?

 それは、トート閣下です。

 シシィの豪華ドレスでも背負い羽根尽きドレスでも燕尾でもオスカル様でもなくて。
 トート閣下のコスプレなら、どんな人でもサマになる。ある程度、カタチになる。

 あの白金髪カツラで丸顔だろーと女顔だろーとラインが隠れるし、なによりダークカラーの口紅(貸してくれる)で、誰でもなんとなーくそれっぽく見えるそうだ。
 ステージスタジオで以前友人が働いていたのでな、教えてくれた。現場の経験から(笑)。

 だからナニってもんだが、トート閣下つながりで、余談(笑)。
 基本まつださんはあんまし芝居の変わらない人だと思うんだけど……ベンヴォーリオ役に関しては、その日によって印象が変わる。
 ちなみに、コレを書いている1月18日、新公の日の本公演ベン様はクール成分多めでした。ロミオを責める「もう友だちじゃない」とか、冷え冷えしてこわかったよー。

 『ロミオとジュリエット』、ベンヴォーリオ@まっつのツボ語りの続き。

 10場、「綺麗は汚い」場面。
 ここもまた見どころだらけツボだらけでこまる。書ききれるとは思えない、きっとぼろぼろ抜け落ちる。

 ここのベン様は、モンタギューチームの影番@ヒメとのダンスからはじまる。

 プログラムの写真はかわいいのに、舞台のヒメはそりゃーもーコワイです。何故あんなメイクを……!(笑) 所作も不良少女というより、スケ番です、長いスカートに木刀持ってガム噛んでるイメージ。ムカついたとき、ドンって床踏みならすんですこの子、怖すぎます(笑)。
 敵と対峙していないときは、ファニーなおねーちゃんって感じ。キャピュレットチームの影の女王@杏奈ちゃんがお色気美女なのとは正反対なキャラ。
 でもベン様は臆することなくダンスしてます、たのしそーに。

 街角で、モンタギューチームみんなできゃーきゃー遊んでいる。
 そこへ現れる年期の入った軍艦……ジュリエットの乳母@コマくん。

 この乳母との絡みがいちいち素敵で。

 相方のマーキューシオ@ちぎくんがスカートめくりなどの悪ガキ系の絡み方をするのに対し、ベン様は色男系です。遊び半分に口説きに入る。
 だから「粗忽者のベンヴォーリオと女ったらしのマーキューシオ」ってのは……以下略。

 ロミオ@キムを捜している乳母に対し、「僕こそロミオです」としれっと嘘を付いて迫るわけなんだが……。
 ナル入ったわざとらしいキメ顔に、あのイヤミ貴族的な大仰な物腰。
 初日近辺は「こんな男」呼ばわりにマンガみたいな「がーーん」という顔をしてショックに後ずさっていたけれど、最近はそこまではやってない。ショックはショックだけど「なんだよ、くそっ」ぐらいの感じで引いている。

 それでもめげずに、「色男」攻撃。
 ダンスしたり、ほっぺにちゅっとやったり、あくまでも男としての魅力勝負。ナニ、「こんな男」呼ばわりされたから? 手玉に取るまであきらめないっての?(笑)
 荷車に坐った乳母の片脚を肩に掛け、反対に乳母にいじられているまっつがまた、イイ顔してる……おねえさまに遊ばれるのをヨシとする悪ノリしたエロい顔。
 まっつの横顔スキーとしてはたまりません、横顔キレイ、その上表情エロい。

 ここの場面が楽しいのは、乳母に対しての色男ぶりと、相棒マーさんに対しての子犬的じゃれ合いっぷり、その両方を楽しめ、美声まで堪能できるから。

 乳母にしてやられたマーさんがわんちゃんよろしく四つん這いでぴょんと跳ねてくるのをベン様が両手で受け止め、その後ふたりでいちゃいちゃ。
 マーさんの髪を撫でたり(犬を撫でる手つき)、マーさんに抱きしめられたり(あくまでも、受動態)。
 男と女の恋愛模様の歌の中では、マーさんと恋人同士の真似事もしちゃう。もちろん?ベン様が女役、内股でシナをつくってマーさんに寄り添う。マーさんは男らしくベン様の細い腰を抱いてるのー。
 この女役のときが、なりきってキモいまばたきをパチパチしていることもあるし、ふつーにかわいく笑っていることもある。あんまりやりすぎてキモくなってると、マーさんが「おえっ」て感じに突き放す……。ベン様、ほどほどにね(笑)。

 3回目の舌出しもここのはずだが、最近はめっきり見かけない。プロローグではエロ、舞踏会ではがきんちょと色のチガウ舌出しをするベン様、ここではかわいこちゃんだったよーな。ふざけて女の子相手にやってたはず。ああ、もう記憶が……っ。

 男たち全員がイケメンポーズをキメる場面もあるんだが、そりゃもおベン様もノリノリでキメてます。
 たまに遊びすぎててタイミングが遅れ、ポーズできずに流れちゃったりもする……そのときの「乗り遅れた!……なんてことないよ、もともとこうするつもりだったんだし!」という誤魔化しっぷりも素敵です(笑)。
 ああ、あのしれっとした誤魔化しっぷり、ナニかに似てると思ったら、猫に似てるんだわ。猫って失敗すると「ナニ? なんのこと?」って誤魔化すよね? ソレに似てる……(笑)。

 乳母をかまうのにあきると次は、乳母のお付きのかわいこちゃんピーター@ハウルをいじりだす。
 ピーターくんがヘタレ美少年なだけに、年上の不良少年ベン様がちょっかいかけると、余計な心配しちゃいますな。ベン様、手加減手加減、そんなウブな子、食っちゃったらダメだよー。
 まるで女の子にするみたいに、くるくる回して踊っちゃうんだもんよー。

 そしてみんなで銀橋。ピーターをいじりつつ、センターで乳母とマーさんと合流。
 他のみんなは客席降りで歌い踊っているわけだが、銀橋から目を離せない。

 乳母が主旋律をがんがん歌い、他のみんなはリフレインのコーラスをしているんだが、この銀橋で突然ベン様が「Oh~~」とオブリガートはじめるのだわ。
 これがまた、イイ声。
 めっちゃ楽しく盛り上がっているその最高峰なところで、がつんと響く声。

 たまりません。ほんと。
 目に楽しく耳に楽しい、乙女心も腐女子心も萌え心も、なにもかも一気に満たしてくれるすばらしい場面です。
 
 最後に銀橋センターで、乳母とマーさんと3人でハートを作るところとか、かわいすぎる……!

 ここまで乳母に尽くした(笑)あと、本物のロミオと比べて「やっぱりアンタたちとはチガウ」と言われ「ああっ?!」となるとこや、「おいロミオ、そのおばさんをお持ち帰りか?」の台詞の言い方が好き。「お持ち帰りか?」の「か?」で語尾が揶揄っぽく上がるとこがいいのー。
 そしてロミオの趣味を疑いつつ、ピーターくんをお持ち帰りする、と。
 ベン様、マーさん、その子にワルイコト教えちゃダメだよー(笑)。

 
 1幕の出番はここまで。
 オープニングのダークさをのぞけば、1幕のベン様はとにかくかわいい。マーさんとのコンビがかわいすぎる。

 モンタギューチームのカラーは青だけど、ベンヴォーリオの衣装は黒。これは星組版でも同じ。
 星組のベンヴォーリオ@すずみんはロングの黒コートだった。でもって彼は、このコートをいちいちばさりばさりと手でひるがえしていた。や、ベン様だからではなく、これは涼さんの標準スキル。昔っからマントやコートの裾は、いちいちひるがえすヒトですから(笑)。
 ひるがしはすずみん固有スキルだけど、同じ役で同じ衣装の場合、まっつもアレやるのかしら……と、まっつメイトと共にわくわくどきどきしていたんだけど。

 衣装違った……ロングコートぢゃなかった……っ。がっくり。

 まっつベン様は燕尾ジャケットです。ハードテイストにじゃらじゃら光り物付けられてるけど、基本は黒燕尾。
 すずみんのコートはプログラム写真でのみ着用。

 そうだよな、まっつの身長だと足首まであるロングコートは重すぎるよな……。
 や、すずみんもれおんくんとベニーに身長合わせるため、ひとりだけものすごいヒール着用だったけど。(れおんとベニーはローヒール)
 まっつはヒール履いても……ゲフンゲフン。

 燕尾はまっつに似合う衣装のひとつであるので、それをチョイスしてくれたイケコに感謝です、はい。
 ナニこの構成……。

 雪組新人公演『ロミオとジュリエット』、1本モノを短縮して上演するのだから、いびつになるのは仕方ない。
 『エリザベート』も『スカーレット・ピンパーネル』も、盛り上がり最高!のオープニングをわざわざカットして、テンション上がらないハンパな場面からスタートして、観客を冷めさせ、かつ演じている下級生のハードルを上げる不親切設計が通常。

 それにしたって、コレはないやろ……。

 あのかっこいいオープニングがないだろうことは、覚悟していた。どんだけかっこよくて観客の期待を煽り、劇場の空気を暖める効果があっても、所詮「状況説明と人物紹介」に過ぎない場面なので、カットしてもストーリー的には問題ない。
 幕が開いたらナレーションで解説されつつ、ロミオのせり上がり→銀橋ソロだと思っていた。

 そんなカワイイモノではなかった。
 いきなり第7場舞踏会からスタートだったんだ。

 いちおーその前に、愛@あすくん、死@レオくんがふたり一緒にカーテン前センターにせり上がり、愛と死のダンスを披露。
 そこに神父@ホタテくんのナレーションでモンタギューとキャピュレットが憎み合って大変、そして今夜はジュリエットがお金持ちのパリス伯爵@まなはると見合いさせられる仮面舞踏会が開かれること、そこにモンタギューのベンヴォーリオ@がおりくん、マーキューシオ@しょうくんが潜り込もうとしていること、ジュリエットの従兄ティボルト@りんきらが何故か不機嫌であることを説明。

 本舞台カーテン前は、愛と死が踊り、主要人物たちは上手花道にナレーションに名前が出ると登場、すぐにいそいそと消えていく。
 舞踏会場面だから、衣装は全員白。そしてナレーション解説のみで一瞬、しかも花道。
 ……無理です。これだけでキャラクタ認識しろなんて。
 わたしはそれぞれの顔も、役の衣装もわかってるからイイけど、そうでない人にはなにがなんだか誰が誰だか状態のはず。

 そしてさらにわけわかんないことに、このナレーションがおとぎ話ちっく。
 本公演のナレーションが感情を廃して淡々と解説して壮大感を出しているのに反して、「あらあらティボルトくんはご機嫌斜めです、どうしたのかな?」みたいなファミリーミュージカルのナレーションっぽい。

 承前であっけにとられているところに、カーテンが開き舞踏会スタート。

 ええ、こっからは本公演と同じです。

 ……同じなんです。
 つまり、全員白衣装、全員仮面着用。

 ちょっと待て。

 はじめての場面がコレ?!
 誰が誰だか誰ひとりわからない状態で、コレ?

 出演者全員って勢いの人数、モブも主役も入り乱れてごちゃごちゃ。
 ヒロインのはずのジュリエット@あゆっちがどこにいるのか、主役のはずのロミオ@咲ちゃんがどこにいるのか、いやそもそもいつどこで登場したのかも、わからない。

 新公定番の「主役が登場したら拍手」もなかった。そんなもん、入れる隙もない。
 
 主役が誰かもわからないまま、長々と舞踏会が続く。
 画面はいつもごちゃごちゃ、なにかしらどたばたしているが、それでナニが起こっているのかわからない。だって全員同じ衣装に同じ仮面、誰が主役かヒロインか、主要人物かもわからないのに、全員がナニかしら動き回っている舞台で、ナニをわかれと?
 よく見れば仮面にも個性があるし、主要人物は豪華衣装なんだけど、そんなもん咄嗟にわかるかっつの。いきなり何十人と登場されて踊られて、そこまで区別できないって。

 本公演の舞踏会はすごく楽しい場面なのに、新公では盛り下がり一直線。
 つか、苦痛だった。
 いつまで続くのコレ。
 お芝居を観るつもりで着席したのに、本編がはじまるまでに観るつもりのなかった別のショーをえんえん観せられている気分。
 早くお芝居観させてよ、『ロミオとジュリエット』を観させてよ。

 物語がはじまったのは、新公がスタートして何分も経ったあと。
 ロミオとジュリエットが舞台でふたりきりになり、「天使の歌が聞こえる」を歌い出してから。
 ここでよーやく仮面を取るし。

 しかし、盛り上がらない。
 キモチが切り替わらないんだ。
 アンタたち誰?状態だし。

 それまでに蓄積されたストレスを、どう処分すればいいのか。

 そうやって、キャラクタにも物語にも入りきれないまま、次はティボルトのソロ。こちらもすごーく唐突。
 ああ、「ティボルトは何故か不機嫌です(笑)」って解説されてたな。でも(笑)付きの解説されたあとに「みんな大人が悪いんだ」と歌われてもな……なんか変な人。

 こんなひどい構成の新公、はじめて観た。

 いろいろ物申したいカットぶりの新公はあった、これまでも。
 しかし、ここまでひどいのははじめてだ。

 主役やヒロインが登場しても観客が気付かない演出ってナニ?
 彼らがどこでナニしてるかわからないまま何分も続くってナニ?

 そしてそもそも「新人公演」とはナニか?を、考えさせられる構成だった。

 もちろん目的は新人の育成、下級生の適性のお試しの場だろう。
 将来のトップスターは大劇場の真ん中に立たせることで経験を積む、スキルを磨く。実際に真ん中に立たないと得られない物はあるし、反対に向き不向きも顕著になる。
 スター候補生だけでなく、脇を支える人々の育成も必要。出演者全員ひとりひとりがこの経験を血肉とし、成長していく……のはわかる。

 しかし。
 このいびつな構成はいったい……?

 主役や主要人物がわからないまま進む序盤に加え、2番手役であるマーキューシオの見せ場カットにより、「スター」スキルの研鑚の場が削られ、なのに専科役のモンタギュー父の見せ場はまるまる残っている。
 星組版では2番手役だったティボルトも、1幕の大半がカットされているため出番と見せ場はさらに減り、途中で死亡・出てこなくなるためおいしいとは言えない。

 ナニがしたいの?
 次代を支える「スター」を育成したいんじゃないの?
 ならば「スター」としての経験を積める構成にするべきじゃないの?
 おでぶおばさんや、しぶいおっさんを演じられる人たちを育てるのが目的で、この新公を上演したの?

 いや、乳母役は娘役2番手の役なので、カット無しは妥当だと思っているし、専科さん的な役割を軽んじているわけではなくて。

 朝風くんスキーなわたしは、カットされるに違いないと思っていたキャピュレット父のソロがまるまるあってうれしかったけれど、彼に1場面与えているヒマがあれば、マーキューシオや若者チームがオイシイ場面を作れと。
 ソレが「タカラヅカ」だろう、と。

 結局主役のロミオしかオイシイ役はなく、咲ちゃんだけを目立たせる目的で作られている?
 ヒロインのジュリエットも、たった1曲の銀橋ソロ削られてるから、あとは芝居歌しかないのな。

 そうやって主役だけを目立たせたいというならソレはソレでアリだろうけど、それなら最初の「主役が誰でどこにいるかわからない」場面をえんえんやるのはなんなんだと。
 ファミリーミュージカル調のナレーションで愛と死が踊るのも、わけわかんないし。

 目的のわからない、迷走しまくった構成にストレス溜まりまくりでした。

 
 演出家バカなんじゃねーの? というのがいちばんの感想ですが(笑)、出演者への感想とは別です、もちろん。
 キャストについては別欄で。
 さて、雪組新人公演『ロミオとジュリエット』を観て、感動したことのひとつは。

 衣装部さんって、すごい! ……だったりする(笑)。

 観る前に友人たちと喫茶店でぐだぐだやりながら、「お衣装は替わってるよねえ」「そりゃそーよ、だって本役の衣装が入るわけナイもん」「きっとちえちゃんたち、星組さんの衣装になってるわよ」と決めつけていたんですよ。
 「よかったねー、もう1着ずつあって!(笑)」と、のんきに話しておりました。

 主役の咲ちゃんは縦にはもちろん、横にも丸ぷくだし、しょうくんは縦にはもちろん、がっちり男っぽいし、がおりくんは横はともかくとして、縦には本役よりずっと大きいわけだし。
 や、実際の彼らがどうかはよくわかってないけど、舞台上から受ける印象として。
 あのミニマムな本役さんたちの衣装を着られるとは、思ってなかった。

 そしたらなんと!
 みんなちゃーんと、本役さんの衣装を着てるんですよ!!
 タカラヅカってすごいな。いろんな体格の子が着回し出来るようにしてあるんだ。

 そしてまあ、舞台上のロミオ、マーキューシオ、ベンヴォーリオの3人が……大きい。
 ちびっこトリオを見慣れた目には、すらりと長身のイマドキの若者たちトリオがまぶしくて……(笑)。←こあらさんのご贔屓は、そのちびっこトリオの中でもいちばん小さいだろう人ですよ(笑)。

 ロミオの白い舞踏会衣装はパンツに黒レースのラインが入ってるんだけど、太股部分は太く、足先に向かってどんどん細くなっていくデザインなの。
 キムくんが着ているときは、同デザインのスターブーツの間際でもレースは太いままなんだけど、咲ちゃんだとすごーく細くなってた……あのレースの太さの差が、ふたりの脚の長さ……もとい、身長の差なわけだ。
 トリオの中でも咲ちゃんがいちばん大きいので、衣装のラインの差が大きい。

 ロックテイスト黒燕尾も、がおりくんが着るとあんなにすっとして見えるのか……「狂気の沙汰」のリフレインの方で、ひとりくるくる踊るがおりくんとまっつの、スタイルの差に愕然(笑)。←だからわたしのご贔屓はその、いちばんのちびっこさんだってば(笑)。

 
 『ロミオとジュリエット』は秀逸なミュージカルであり、それゆえに役者のポテンシャルを引き出す効果があると思う。
 『エリザベート』や『スカーレット・ピンパーネル』がそうであるように。
 もともと10の力のある舞台人が、10以上の力を発揮しちゃうような。
 数あるタカラヅカ的駄作たちだと、役者がどんなにがんばってももともとの作品が悪いため8ぐらいの力しか出せなかったり。どんな駄作もすべて10以上の力でもって名作・感動作に変えられる人は天才ってやつで、そうそういないので、そんな特殊な人のことは置いておいて。
 『ソルフェリーノの夜明け』や『ロジェ』で10以上の力を出せなんて無理は言わない(笑)。ただ、『ロミオとジュリエット』なら、ソレも出来るだろうって思うんだ。

 ベニーの新公『スカピン』が近年まれに見る大盛り上がりだったように、作品がキャストを底上げしちゃうことがあるんだ。
 もちろん、最初から容量のない人はどんだけ作品が良くてもダメかもしんないが、本人も周りも「オレのMaxは10」と思い込んでいたけれど、実は15まであったとか。今まで誰も気付いていなかった未知のスペックが開花するとか。
 そーゆーことを起こしてしまう力のある作品だと思うの、『ロミジュリ』も。

 だからとても期待して観劇した。

 で。
 ……期待が、大きすぎたのかもしれない。

 わたしが勝手に夢見ていたのは、そのポテンシャルが作品力にのってぱあっとはじける・花開くこと。
 なにかしら未知の魅力に出会えること。
 良いのか悪いのかわかんないけど、なんかすげえもん観た!!と無我夢中で拍手すること。

 手堅く地味に小さくまとまった「良い新人公演だわったね」というデキ……を観たかったわけではなかったんだな。
 あとにして思えば。

 構成演出が酷すぎて、物語に集中しにくかったこともあるけど、「爆発的なナニか」「よくわかんねーけど、すごいもん観た!」と思うよーな新公ではなかった。

 そして、しみじみと「この作品の歌って、ほんとに難しいんだな」と思った。

 咲ちゃんにしろりんきらにしろさらさちゃんにしろ、歌ウマで通っている人たちだ。カレンちゃんだっていの莉ちゃんだって。
 だけどその歌唱力でどーん!とねじ伏せてくれる、聴き惚れさせてくれることはなかった。
 彼らもものすごーく歌い込めばもっともっとうまくなるんだろうけど、なんか一様に「足りない」歌声だった。
 や、もちろん、ヘタじゃない。ふつーにうまい……及第点ってやつだと思う。
 でもそれは、客席で聴いていて鳥肌がたつよーな、身震いするよーな「ドラマ」のある歌声ではなかった。

 1回きりの新公だからこそ、そーゆー「奇跡」が起こるかもしれない、と思ってわくわくしてたんだけどなあ。
 なんつーかものすごく、真面目な新公だった。コケてもいいから大技にチャレンジ!というより、絶対失敗しない規定演技をきっちりやります的な。
 スタンドプレイしろってゆーんじゃなくて。うーん。

 自分たちで枠を作って、その中で収めることを第一目標にした新公っぽい印象を受けた。

 やはりそれは、主役の印象が大きいかなあ。
 ロミオ@咲ちゃんは3回目の新公。本公演やDCでも主要キャラを演じている、すでにベテラン新人っつー人。
 崖っぷち感より慣れの方が大きいのか、「ロミオってこんな感じ」という想定内のロミオをきっちり演じた。
 歌ウマさんだし、なにもかも平均点以上ある人だし、ナニが悪いっつーわけでもないんだが……つまんなかった……。

 この間のジュリアーノ@『はじめて愛した』のときの方が、面白かったなあ。

 面白いかどうかで語るなっつーもんかもしれんが、エンタメですよ、「スター」ですよ、なんかわかんないけど目が離せない!という魅力を、わたしはアタマ悪く「面白い」という言葉でくくってみたりする。

 せっかく『ロミジュリ』という大作なんだもの、もっと「面白い」咲ちゃんの姿が見たかった。
 失敗しない手堅くまとめた咲ちゃんではなく、大失敗しちゃったけどすげー面白かった咲ちゃん、が見たかったなあああ。
 
 いや、若々しくてかわいいロミオでした。適度に甘くて、悲劇的で。ふつーにロミオでした。……ふつーでないロミオでも良かったのになー。←しつこい。
 なんか盛り上がらないなあ、コレ……と、しょんぼり気分で、それでも舞台上の彼らのがんばりと一生懸命さには拳を握って見守っていた、新人公演『ロミオとジュリエット』

 ひとり、ものすごーく愉快な人がいた。

 ベンヴォーリオ@がおりくん。

 すらりとスタイルのいいベン様で、本役さんとのヴィジュアルの差にくらくらしながら(ちびっこで悪かったな、うわああぁぁぁん!なキモチ・笑)、本公演でのモンタギューの男も含め、がおりくんキレイになったなあ、と眺めていたわけなんですが。

 途中からこの人、トバしはじめるの。

 「狂気の沙汰」リプライズあたりからぐわーんとアクセル入った。
 がおりくんがダンサーなのは周知のこと。翻弄される困惑ダンスが美しい。
 わたしが彼を認識したのは、実はダンスではなく歌でなので、わたしにとっては歌ウマさんくくり、ベン様の歌についてもなんの心配もしてなかった……が、思ってたよりずっとうまい!! ファルセットもOK!
 そしてさらに、カーテン前ソロ「どうやって伝えよう」が。

 面白かった。

 いやごめん、うまい、うまいんだ。期待以上にうまかった、見事に歌った。
 でもそれ以上に、面白かった。

 舞台ってさ、ナマってさ、うまいヘタだけで決まるものではないんだ。
 うまくても興味を持てないものはある。最低限の技術は必要だよ、でもその上でテストの点数ではないナニかが重要。

 このベンさんは熱血漢で、あちらこちらで魂のアツさを垣間見せていた。
 いかにもコスチュームプレイなロン毛は黒+金で、いやソコは本役さん踏襲しなくても(笑)な色合い、されどぶわっと大きくなびかしているところは、ライオン風でわかりやすい。背が高いと髪のボリューム多めでもいいんだよなあ。
 きれいで派手でスタイル良しの、アツいハートのロッカーなベンさん。

 彼がそのアツいハートを爆発させ、魂のシャウトをするのが、「どうやって伝えよう」だ、面白くないはずがナイ!

 いやもお、顔芸すごいから。
 「狂気の沙汰」からすでに。身体表現も大きいけど、表情筋の動きも大きい。

 技術に増して、「ナニか面白い」というものは、観客に伝わる、動かす。
 がおりのソロで、客席が動くのがわかった。
 舞台を自分のモノにする、「主役」になる。
 今は新人公演だから、他のみんながいろいろと足りていないし真面目な固さに満ちあふれた舞台だ、本公演で同じことができるかどうかは別だが、今この舞台、この公演で一気に劇場の空気を動かしたのは、間違いなくこのがおりベンさんだと思う。

 ソロが終わったときの、拍手の大きさ。熱さ。
 この公演でいちばんだった。

 やっぱナマ舞台って面白い! 観に来て良かった! と思わせてくれる。こーゆー空気がぶわっと動く瞬間って、そこにいてすごく気持ちいいんだもの。感動するんだもの。

 がおりベンさんの面白さは、なんつーんだ、蘭寿さんがベンヴォーリオを演じたらこんな感じかも、と思わせてくれるような面白さだった。
 らんとむもすごく「面白い」スターさんで、若いときからとにかく目を引く……好き嫌い以前に衆目を集める「面白さ」のある人だった。
 やっぱスターさんは面白くなくっちゃねー。なんかわかんないけど見てしまう、目が離せない、そーゆー味のある人っていいわあ。
 そこからさらに、美しさや格好良さ、オトメをくらくらさせる色気なんかを開花させていけば鉄板ですよ。

 がおりくんというと、うまいけれど地味めな人という印象、舞台を締めてくれる貴重な人という印象だったんだけど、どんどんスキルを磨いて存在感を増しているなあ。
 いやはや、すごく楽しかった。拍手!
 

 構成の悪さで足を引っ張りまくられていた気の毒なこの公演で、ベンさん大爆発まできてよーやく劇場内の空気が動き、暖まった。
 ……って、もうラストやん!(笑)

 次に面白かったのが、ジュリエット@あゆっちだ。

 かわいい、というのはあゆちゃんの武器。とにかくかわいいジュリエット。
 なんだけどやっぱり彼女はまぎれもなく「おねえさん」だった。
 本役のジュリエットより上級生だし、コムちゃん時代から抜擢を受けたきたスターだ、丸顔とロリっぽい持ち味で今まで忘れていたけれど、すでにもうこんなにも「大人」になっていたのかと驚かされた。
 ロミオとの実の年齢差というかキャリア差があちこちに見える。
 咲ちゃんロミオも子どもっぽすぎるわけではないけど、やっぱり幼い。それに比べ、ジュリエットは大人の部分が見えた……役作りではなく。

 ロミオとジュリエットが何故恋に落ちたのかわかんない、という致命的な構成の悪さ。なにしろ、主役とヒロインが観客に個別認識できたのが「天使の歌が聞こえる」を歌い出すときからで、そのとき彼らはすでに恋に落ちていたので、その前がわからないという。
 そんなひどい状態で、それでもよくキモチをつないで、演じていたと思う。

 かわいいし、よくやってるし、歌はまあご愛敬っつーことで、ぜんぜんイイんじゃないの、ってあたりの感じでまったり愛でていたんだが。

 ラストの霊廟。
 早とちりロミオが自殺しちゃったあと、ナニも知らずに目覚めたジュリエット。
 ロミオが死んでいるとわかった途端。

 あ、狂った。

 ちょ、ジュリエット、狂っちゃったよ??!

 客席から心の手を伸ばしたよ、ちょっと待て、と(笑)。
 愛ゆえになんの迷いもなく死を選ぶ、というより、狂気の域だからこそ笑いながら自分の心臓にナイフを突き立てるんだと。

 あゆっち、ぶっトバしてるなああ!!
 ジュリエットの狂気にぞわっとした。

 そうだよな、自分のせいで愛する人が死んじゃったんだもんな、心が壊れないはずないよな。
 狂った瞳で「ふたりのパラダイス」を歌うジュリエットが、めちゃくちゃ素敵だった、美しかった。……切なかった。

 このジュリエット、キムロミオの相手役で見てみてぇ!!と、心底思った。

 
 がおりは研7、あゆっちは研6。
 若者の成長が遅くなった現代、やはりこれくらいの年輪を重ねてはじめて花開くモノはあると思う。主役独占で作られるのではなく、いろんな役を経て力を溜めて経験を積んで、それゆえに輝くモノが。
 若ければそれでイイっつーのは、年配男性の感覚なのかなあ。今の時代、入団間もない下級生はほんとに幼いよ、姿もタカラヅカスキルも。歌やダンスという基礎技術は昔の人よりしっかりしてるんだろうけれど、タカラヅカスターとして「見せる」力は昭和時代とまったくチガウ。
 幼いスターに機会を与えて鍛えるのは大切だけど、偏執しすぎるのはどうかと思う。

 目を離せない、惹きつけられる「面白い!」と膝を打ちたくなるよーなスターを、舞台を、タカラヅカには作り続けて欲しい。

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