ほんと楽しみだったんだ、新人公演『エドワード8世』!!
 初日観たときから、わくわく。
 作品を好きだと、新公も楽しみになる。
 それに大野せんせだから、新公も演出してくれるだろうし、『夢の浮橋』は本公と新公で演出変えて、キャストにアテ書きしてくれて、一粒で二度美味しかったし!
 と、勝手に盛り上がっていた。

 …………新公演出、タクジィとチガウやん……。
 なんでー? 大野くん、他に仕事詰まってるわけでもないのに、新公もやってよー(笑)。←ふつーの演出家は新公は自分でやりません。

 大野くん自身の演出で観たかったなと思うのは、新公が本役のコピーしている人多しだったためです……。

 特に、主役たち3人。
 デイヴィッド@たまきち、ウォリス@ちゃぴ、ガイ@ゆうき。
 この3人が、ガチでコピー。

 公演が進むと、たまきちとちゃぴはどんどん本人らしさが出てきたんだけど、ゆうきくんがもお、最初から最後まで、まさおコピー。
 ど、どーしたんだ……。
 台詞の言い回しから表情から、全部コピってるので、耳でだけ聴いていたり遠目に舞台全体眺めていたりすると、まさおがいるみたいだ。や、まさおのがそりゃうまいんだけど。
 他のアプローチはなかったのか……? ガイは難しいけれど、おもしろい役だと思う。他の解釈というか、また違った舞台での存在が観られると、勝手に期待していたよ……。しょぼん。


 デイヴィッド@たまきちは、最初とってもきりやんコピー。きりやさんのあの、抑揚の少ない、聞く人によっては棒読みに受け取れるだろう、あの喋りをしている、大真面目に。
 たまきっちゃん、そこは真似なくていいんだよ……あれはきりやさんならではの抑揚なさなのよー。

 が。
 どんどん、たまきちの色が出てくる。
 えーとね。
 単純。
 言葉悪い? マイナスの意味では言ってないっすよ。えーと、別の言葉だと、シンプル、素直、わかりやすい。
 きりやさん独特のわかりにくさ・複雑さ、ザ・英国人!というややこしいウザい部分(笑)がナイ。
 ストレートに感情移入できる、いかにも主人公!って感じの人。

 理性より情で動いちゃう感じというか。
 わかりやすい、かわいい男。
 ツンデレには、あまりなってない(笑)。

 だから彼の、大きな気持ちの動きに素直にシンクロできる。
 ウォリスに「君と離れているのは不安だ」って後ろから抱きしめるとことか、すごくきゅんとしたわ。ほんとに悲しそうで。


 対するウォリス@ちゃぴもまた、どんどん等身大の女の子になっていって(笑)。
 や、一応がんばって大人の女をやっているんだけど、感情の跳ね返りぶりが若くて。
 ちゃぴはほんと大きい。長身でスタイルいい。でもきっと、大抵の男役と並ぶには、大きい。
 しかし、たまきちならOK。
 縦にも横にもがっつり男なたまきちが、長身でスタイル良しのちゃぴをきゅっと抱きしめているのが、すごく映りが良い。
 ちゃぴがとてもオンナノコで、たまきちが男らしくて。
 きゅんとくる並びだ。
 …………次期トップスター様と準トップスター様は、たまきちより縦にも横にも小さいわけで……大丈夫なのかと不安になる新公途中(笑)。

 ちゃぴちゃんはがんばって娘役力を上げよう。カツラとかお化粧とか。
 キュートだけど、やっぱまだキャリア不足が見える。

 文化祭の第3部ダンス・コンサートで、男役としてセンターでばりばり踊っていたちゃぴちゃんにハクハクしていたのは、たった3年前のことなんだがなー。
 まさかもうトップになっちゃうとはなああ。
 トップになるのは歓迎だけど、もう少し娘役経験を積んでからでもよかったんじゃないかとは、思う……。ヅカの娘役ってほんと、技術で作り上げるものだからさ。
 決まったからには大急ぎで向上するしかない。がんばれー。


 本役とぜんぜん違ったのは、トーマス@ちなつくん。
 とってつけた感ハンパないと思っていた、トーマスの銀橋ソロで泣けた……び、びっくりした。いやその、その前の場面、デイヴィッドとウォリスの別れから絶好調で泣いていたので、その延長だったかもしれないけど、トーマスの慚愧の告白に違和感なくシンクロして、一緒に泣けたよ……。

 トーマスはふつうに、デイヴィッドと同世代の大人だった。若い男の子が背伸びして皇太子の後ろをついて回っている感はなく、トロッターさん@ジョーと同じカテゴリっぽく見えていて。
 だからこそ、傷ついたデイヴィッドのあとを「私が行こう」とトロッターさんが追いかけていき、トーマスはナニも出来ない、その自己嫌悪が突き刺さる。
 こーゆー役だったのか、トーマスって。

 みりおくんがどうこうじゃなく、きりやんとみりおくんの並びゆえに、なんだよなあ。世代感がかけ離れているのは。

 反対に、前半でデイヴィッドとトーマスがおちゃめに銀橋を渡る場面がある。「プリンス・チャーミング」のとこね。
 新公ではここが、ちょっとびびるくらい地味な画面になっていた……。
 たまきちとちなつだと、相乗効果で渋くなるらしい(笑)。


 うわああ、輝月くんが番手の役やってるー!!
 今のタカラヅカにはっきりした番手なんてないも同然だけど、いちおー現在の月組だと、もりえくんは4番手だよね?

 ロッカート@輝月。
 一癖ある新聞記者。
 悪い男(笑)。
 なんか色悪ですよちょっと! かっこいいですよちょっと! まだ彼、研3ですってば!

 声も落ち着いてきた? 『アルジェの男』新公よりも、男役っぽい声になっている。

 というか、本公演で彼が演じている紋章官、幕が開いてすぐ、ナレーターのガイをのぞいて物語で、はじめて、声を出す役。
 棺の前で「最も高貴な、最も優秀な」と最もを連呼する、アレ。
 どんだけ「声」を買われてるんだと思った。初日に「誰だコレ」とオペラで顔見て、びっくらこいたもんよ、研3のおこちゃまがやる役割ぢゃねーよ!

 輝月くんが本公演で演じている官僚役と紋章官はセットなのかと思っていた。だから、新公で輝月くんの役をやる子が幕開きに「最も……」と喋るんだと持って顔を見たら、ジョーくんだった。
 二度びっくり。
 ほんとにアレ、輝月くんがわざわざ選ばれてやってるってことだよね……。新公で、口跡のいいジョーにわざわざやらせるんだから。ジョーくんはそのすぐあとに、トロッターになって出てこなきゃいけないのにさ。

 んで、ロッカートさんってば、かっこいい悪い男で、かわいい(笑)チャーチルさん@からんくん相手にしたときの身長差が、すごいです。
 輝月くんとからんくん、公式身長からして10cmチガウのか……実寸だとどんだけチガウんだろう……。

 そしてラストの歌い継ぎのソロ。
 もー、悠々です。歌ならまかせろ!だもんよ。かっこつけて歌う余地ありまくりだから、さらにかっこよかったっす。

 演技自体はちょっとクド系? 大仰に、わかりやすい作り。もりえくんの繊細さはナイかな。
 でも、下級生なのに、大人に見えること、男に見えること、男役として喋って演技して歌えること、いやほんと、よい資質です。このままがんがんいってくれー。

 新公楽しかった-。
 すごくおもしろかった、新人公演『エドワード8世』

 チャーチル@からんくん!!

 誰がなんの役か、さほどわかってなかったの。
 まんちゃんがとしくんの役、歌、大丈夫か?!てのがいちばんの懸念で、それ以外はあんまり気にしてなかった。
 だからチャーチル役のことは、あまり意識してなかった、誰が、なんてこと。専科さんの役だから長の期の男の子がやるんだろう、手堅く、ぐらいの意識。

 それがいざ、登場すると、からんくんで。

 ええ、からんくん。
 子役まかせろの美少年。『Misty Station』ではロケットガールやってますわね。ちっちゃくてキュート。かわいこちゃん。
 やる気あふれる舞台姿から、鼻息の荒い子だなーというイメージ。

 そのちっちゃなかわいこちゃんが、チャーチル。
 本役は、ヒロさん。『エドワード8世』の影の2番手。主役とは違った意味で、もっとも難しい役。

 いやあ、驚いた。
 からんくんなのか?!と。なんでこんな配役?!と。

 悲しいほど、似合ってない。

 かわいい顔はそのまま、髪にだけ白いモノを混じらせている。
 声は高く、少年っぽい。

 見た目だけで言うなら、すごくちぐはぐ。
 子どもが大人の真似をしているみたい。

 からんくんは巧い子だし、アグレッシヴな舞台姿勢の子だけど、これは……この役だけは、無理……!!

 なんでヒゲ付けなかったんだろう。
 オンナノコみたいな顔はどうしようもないんだし、小柄なのも少年体型なのも仕方ない。ならばせめて、ヒゲに頼ればよかったのに。
 せめて、記号的に「年配役」だとわかるようにすればよかったのに。

 そう思いました。

 が。

 そうなの、それだけでは、終わらなかったの。

 見た目も声も、年配男性ではまったくない。少年が無理している感ありあり。
 なのに、なのに。

 舞台が進むと、違和感がなくなっていく。

 姿も声も「そーゆーもん」だと思えば、気にならなくなる。
 ふつうに、「チャーチル」という役に見える。

 てゆーか。

 巧い。

 芝居、巧いよね。ほんとに、違和感なくなった。引き込まれて見ていた。
 見た目じゃないのよ、演技なのよ。芝居で、「チャーチル」だって、「年配の男」「くせ者政治家」だってわかる……!

 小さなチャーチルが、大きなデイヴィッド@たまきちを翻弄する。
 「戦え」と煽動する。
 ぞくぞくする。
 つか、歌、うまい。ハーモニーの確かさにテンション上がった。
 きりやんデイヴィッドと違い、たまきちデイヴィッドには足下が定まらない危うさがある。
 その危うい部分を、老練なチャーチルが突く。
 ほんとうに、デイヴィッドは陥落するかもしれない、このチャーチルになら。そう思った。
 まさかのチャーチル×デイヴィッド。チャーチル、鬼畜! ちょっとこの人こわい!
 さんざんデイヴィッドを弄んだあと、いきなりさっと手を放し、それまでの鬼畜さを改め紳士の顔に戻り。
「私でよろしければ、いつでも陛下の後ろ盾に」なんて一礼するのよ? ちょっともお、すごいって!(笑)

 おもしろかった、マジで。
 チャーチルがこわくて、色っぽい。
 姿は、えっと、微妙なんだけど。大人か子どもかわかんなくて。
 それでも、かっこいいし、色っぽい。不思議だ。視覚と演技を受け取る部分って、別なのか。

 からんくんが、もっと身長あれば……。丸顔じゃなくて、大人を作れる顔立ちならば。
 きっともっと、いろんな役が出来るんだろう。
 これだけ限定される外見なのに、こんだけわくわくさせてくれるって、すごいわ。
 これから学年を重ね、大人の顔になるにつれ、さらにいい男になるだろう。
 楽しみだわ。

 次作が発表になったとき、からんくんに新公主演やってほしいと思ったんだが、マジでロミオ見てみたいよ。思い切りぶっ飛ばした、狂気のロミオやってくんねーかなー。


 もうひとり、芝居を見てツボにハマったというか、ウケた子がいる。

 メンジース@朝美絢くん。

 MI6の人です。本役たまきち。
 カフェ・ド・パリにひとり残ったウォリス@ちゃぴの前に「チャーチル様に言われてきました、同席していいですか」と現れ、「あなたの同業者ですよ」とウォリスの上海時代の写真を突きつける、あの人。

 登場した瞬間から、顔が悪役(笑)。

 むーーっちゃ悪い顔。
 悪意というか、嘲りが出ている。
 本役のたまきちメンジースとぜんっぜんチガウ。
 「スパイだった過去を隠して国王に取り入るアメリカ女」を嬲る気、満々。
 ウォリスに写真を突きつけ、暴露の歌を歌うんだが、それがむっちゃ愉しそう。サディストの顔してる。

 任務じゃない、アンタ絶対ソレ私怨とか趣味とか入ってる!!(笑)
 女スパイをキタナイものだと思ってる? 嘲りと悪意、明白な攻撃の意志。
 取り乱すウォリスを見て、優越感に浸る。

 なんつー派手な芸風。歌声のボリュームもたっぷり。ちょっと裏返りかけてたけど、なんとか持ちこたえ、歌いきった。

 おもしれー。ナニこの子。
 もともとショーアップされた派手な場面だけど、破裂度が予想外に大きかった。
 イッちゃった風情に、キレたスパイってアリだよなと思う。まともな性質なら、情報部なんかにいないよなと、戦争と戦争の合間、逼迫した情勢を思ってみたり。

 なんにせよ、おもしろかった。
 こんな子がいるんだー。
 きれいだし、そこそこ歌えてるし、これから楽しみだ。


 あと、この新公でいちばん顔が好みだと思ったのは、ヘンリー@星那由貴くんだ。

 わたしの好きな、きれいな弓形を描いたデコから頬のラインの持ち主。
 ちょい小ぶりだが、鼻の形もきれい。……小ぶりだと思うのは、わたしがでかい鼻スキーだからで、世の中的にはこれくらいの鼻の方がいいのかもしれん(笑)。

 役の多い公演はいいわー。目がいくつあっても足りない。新しい発見がある。


 93期と95期の文化祭プログラムを引っ張り出して眺めてしまったよ。
 星那くん93期、朝美くん95期。
 93期はもうみんなそれぞれ活躍している学年なんだねえ。いろいろ感慨深いわ。そして、昔自分が書いた文化祭感想覚え書きなんぞを引っ張り出して、さらに感慨にふける。
 そっかオレ、ジョーくんのことけっこー好みって書いてるわー……なんてブレない好みなのかしら(笑)。や、93期文化祭は宙組のりくくんに夢中だったんですけどね。んで95期文化祭では男役のちゃぴに夢中だったしね。
 93期文化祭の演劇は、著作権カットで映像がまったく残ってないんだよねー、ひどいねー、文化祭なのにねー。

 こうやってあとから記憶をひもとくために、文化祭を観ているよーなものだ(笑)。
 新人公演も、しかり。
 新人公演『エドワード8世』、他のキャスト感想覚え書き。

 ボールドウィン@ゆりやくん。
 新公主演した長の期の子が、下級生主演を脇の役で支える、という図は好きだ。主演経験があるからこその、豊かな実力と余裕を披露してくれるから。……してくれる、から。
 えーと。あんまり、主演経験者だから、という実力は感じられなかった……。いっぱいいっぱいにも見えないのは、もともと出番が少ない役だからっつーか、今回は専科さんがふたりも出ていたので組長の役は比重が低かったんだよなー。
 1回の経験で人が劇的に変わるとか成長するとか、都合のいい妄想でしかない、現実はナニも変わらずコツコツ日々を積み重ねていくしかないのですよ、と教えられたようでした。や、それはゆうきくんにも感じたんだけどさー。
 ほんと、出来る役の幅がすげー狭いなあ、ゆりやくん……(笑)。

 ゆりやくんは「キャラ売り」が正しいのかもな。
 と、思った。
 タカラヅカではまかり通る、スターのあり方。
 「ナニをやっても**(名前)」ってやつ。役名関係なし、生徒個人のキャラで押し通しちゃう。
 ハンパなキャラだとただの芝居できない人だが、ヅカ全体に名を知られるくらいのキャラが確立できれば、それはオイシイ人になる。
 気の良い二枚目半とかへたれ男が得意なゆりやくん、そのまま突き抜けて薔薇様系を目指すとか。あさこちゃんコピーだった帽子屋@『アリスの恋人』を、コピーのままだとダメだから、もっと発展させてみるとか。
 せっかくきれいなんだもん、新公主演もしたんだもん、今のままではもったいない。
 大人になると良い味を出すタイプかもしれないし、これからもまったり見守ります。

 フレッド@まんちゃんはダンスの期待にばっちり応え、歌の不安にばっちり応えてくれました……(笑)。その裏切らないところはステキです。
 役割がばしっと押さえられた人だと思います。
 歌はもういいから、芝居がうまくなってくれるといいな。ダンスとビジュアルはほんと良いんだもん。

 その相方、アデール@紗那さんは硬質でしゃきしゃき? フレッドの奥さんがお姉さんやってる……と、なんか混乱(笑)。
 色気とはチガウ、なんか目に残る雰囲気がある。あまり娘役っぽくないのかなあ?

 ルイーズ@早桃さん、きっつい感じが良い、キュートだ。

 トロッターさん@ジョーくん、とっても好々爺。年齢上げすぎな気もするが、これはこれで好みだ(笑)。
 侍従カルテットはかわいい。色の統一感は新公の方が上。しかしコレは善し悪しか……トーマス@ちなつくんも含め、4個イチに収まってしまう感じが。

 マルグリット@ゆめちゃんは本役とまったくチガウ役作り。マンガ的な金髪バカ女。
 夫・エジプトのプリンス(自称)@星輝くんがわかりやすいアラブの大富豪として登場していることもあり、場面自体がはっきりした位置づけになっている。
 つまり、「遊ぶのにちょうどいい女」だったのね。エジプトのプリンスもシンボル的に妻を欲したんだなとか、マルグリットは間違いなくただの金目当てで結婚したんだなとか丸わかりなので、間男のデイヴィッド@たまきちを含め、誰も責められない、みんなひどいわ、やってること、と。
 ただの遊びだから、ギャグ寄りの場面でよし。デイヴィッドはベッドの中から乱れた衣服で登場。
 きりやんデイヴィッドが「夫に現場へ踏み込まれた瞬間の間男」とは思えない、びしっとキメたスーツ姿なのが違和感ありすぎ(でもソレがきりやんらしい)だったので、新公演出もアリだろう。

 ただ、そーなるとそのあとの銀橋が嘘っぽくなる。
 恋をくり返すデイヴィッドは、王子様モノのお約束であるところの「本当の僕を愛してくれる女性」を求めているのだとつぶやく。王子様だから好意を持たれるのではなく、自分自身を見て欲しいのだと。
 …………マルグリットみたいな、わかりやすい金目当てバカ女と愉しんでおいて、「本当の僕」はナイわー。ソレ、ただの言い訳やん!に、なる。
 デイヴィッドの銀橋は、複雑でわかりにくい彼が、一瞬本音を見せる場面。でもすぐに「プリンス・チャーミング」という表向きの顔で歌い出す。明るく含みのある様子で「本当の僕を誰も見ていない」と歌っても、それはただのパフォーマンスに見えてしまう、本音を軽薄に口にすることでそんなことは別に求めていないと見せかける、二重にわかりにくいことをしている場面。
 王子様だからと近づいてきた、あんな女に引っかかってしまった自嘲もあるんだろう。でも彼女だって最初は情熱的な恋人だったんだ、金目当てにまったく見えなくて……てな物語を想像させる。
 それが本来のマルグリット事件からの流れっしょ?
 でも新公だと、マルグリットがあまりにアホアホなので、彼女一瞬でも「夢を見た」とは思えない。割り切って遊んだ、愉しんだ、としか思えない。あのテの女に本気で入れ込むとしたら、デイヴィッドがバカってことになってしまう。
 ただの遊びだったのに、それをトーマスに咎められたら「信じてみたかったんだ」と口先で「王子の孤独」を歌う人になってしまう。
 マルグリットをバカ女にして笑いを取ったために、デイヴィッドのキャラに哀愁が消えたなああ。
 や、これはゆめちゃんや星輝くんがどうというより、新公演出の上田先生の意向でしょう。役者のアドリブや役作りというより、がっつりした演出だったもの。
 マルグリットの役割は、ウォリス@ちゃぴに「あんな女と一緒にしないで」と言わせるためだけのモノになっていたんだなあ。
 たしかに、アレと一緒にされたらたまらんわな、ウォリス。

 ゆめちゃんは持ち味が現実的というか、フェアリーっぽさが少なめな気がする。
 それが役を選ぶ感じ?

 演出変更の是非はともかく、乱れた服装のままジャケットを肩に引っかけて銀橋を歩くたまきちは格好良かったっす。
 きりやんがぴしっと英国スーツ!って感じの場面だから、新公でも服装を整えるのかと思って待っていたんだが、なかった。そのまま通しちゃったよ(笑)。

 カメラマン@晴音アキちゃんだったのか(笑)。観ているときは気づいてなかった。コメディでかわいかった。
 本公演では大人の男だから殴り倒してよし、しかし新公は年端もいかない少年だったので、ロッカート@輝月くんは殴るわけにいかない。
 問答無用で殴り倒すのがロッカートのカッコイイところだったわけで、それがなくて残念だった。
 コメディっぽく脳天をげんこつで、ゴツン。少年は目が回ってくらくら~~、ぱたん!

 あ、まだキャスト感想書き切れてない。もうちょっとだけ続く。
 まっつが高校生役なら、博多まで遠征します。

 今さら、せぶんてぃーんなまっつを見られるなら。
 センターパーツよろしく。さらさら金髪、前髪必須。
 ベンヴォーリオ@『ロミジュリ』より、さらに若い役!! そんな、ある意味羞恥プレイ(笑)なご贔屓様が見られるなら、どこへでも行きまっつ。

 それくらいの意外性がナイと、チケット購買意欲につながらない。

 と、わたしは思いましたが。
 実際のところ、現代の日本人の何人が「観たい」と思うタイトルなんだろう、『フットルース』って。
 出演者もカンパニーも関係なく、「えっ、『フットルース』やるの?! なにがなんでも観てみたいっ」と思う人って、どれくらいいるの?
 何万人もの人が、実際にお金を出して観るかはともかくとして、「興味を持つ」タイトルなんだよね? 興味すら持たない、心のカケラも動かないタイトルを、わざわざ大阪と博多でやらないよね?
 わたしが知らないだけで、現代日本人の多くは「『フットルース』って今現在すごく好き! 感動! 今現在すごく興味ある!」って感じなのよね??

 そうでありますように。

 どんだけ良い舞台だったとしても、まず不特定多数の人々に「興味」を持ってもらわないと、はじまらないもんなああ。

 とまあ。
 夢にも思わないタイトルが来たので、盛大に首をかしげています。
2012/02/24

2012年 公演ラインアップ【梅田芸術劇場メインホール・博多座】<7~8月・雪組『フットルース』>


2月24日(金)、2012年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、梅田芸術劇場メインホール・博多座公演の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。

雪組
■主演・・・(雪組)音月 桂、舞羽美海

◆梅田芸術劇場メインホール:2012年7月7日(土)~7月23日(月)
◆博多座:2012年8月1日(水)~8月25日(土)

ミュージカル
『フットルース』
潤色・演出/小柳奈穂子

1984年にアメリカで公開され大ヒットとなった映画「フットルース」は、1998年にブロードウェイで上演され、100万人以上の動員を記録。以後、日本でも度々上演されてきました。耳馴染みのある名曲と迫力あるダンスは、今なお新鮮で、2011年にはリメイク版の映画がアメリカで公開されています。大都会シカゴに育った高校生レンが、ロックとダンスが禁止された保守的な田舎町に転校し、住人との間に騒動を巻き起こしながらも、愛や友情を経験して成長し、やがて周囲の人々と心を通わせ、卒業ダンスパーティーを開催するまでを描く青春物語です。

 キムくんに高校生……。
 や、似合うよ。似合うけどさ、キムくんはそのテの役をやり尽くしているイメージだから、今さら「似合うとわかりきっている役」をやっても、新規開拓にならないっちゅーか。

 キムくんには、絶大な信頼を置いている。
 彼が演じる限り、その役は良いモノになる。それだけの力のある舞台人だ。
 できるだけ多くの人に、音月桂を知って欲しい。見て欲しい。
 雪組の自慢のトップスターだ。
 かわいい容姿ゆえに誤解されがちだけど、持ち味は骨太で男くさい。少年っぽさとフェアリータイプはイコールではない、の見本みたいな人だ。
 だが、容姿のみに焦点を当てたのか、こうも少年役ばかりだと、大人の男を好きな観客(ヅカファンの大多数だよなあ)の選択肢に入れてもらえなくなりそうで、残念だ。

 ロミオ18歳、ニコライ18歳(原作)、フィンチ?歳、ルイ/フィリップ?歳(でもフィリップは育ちの特殊さゆえ少年)、正名18歳、カルロス18歳、レン18歳、ってか?
 もー全部18歳で統一しちゃいなよ!ってぐらい、そのテの年齢が続いてるよなー。
 テレビドラマを見ても、主人公は30代とかのこの現代に、少年役ばかりのトップスターって。

 劇団が持っているキムくん像には危惧を感じますが、それはともかく、キムくんがこの演目を見事に演じきってくれることに期待します。

 んで、2番手のちぎくんがバウ主演である以上、まっつは梅芸博多座組かなと思う。
 ヒロインの父役は勘弁です、高校生役がいいっす。でないとダンス場面壊滅になっちゃうもんよ……まっつ、踊れる人なんですよ、歌だけじゃないんです、ダンスメインのミュージカルで壁の花とか勘弁っす。
 いや、映画しか知らないから、誰にダンスナンバーがあるのかわかってないけど。

 んで、そのちぎくんバウ。
 
2012/02/24

雪組
■主演・・・(雪組)早霧せいな

◆宝塚バウホール:2012年7月19日(木)~7月30日(月)
◆東京特別(日本青年館):2012年8月8日(水)~8月13日(月)

バウ・ミュージカル・プレイ
『双曲線上のカルテ』
~渡辺淳一作「無影燈」より~
脚本・演出/石田昌也

優秀な外科医、フェルナンド=デ・ロッシは、バチカン・カソリック大学病院での約束されたエリート・コースを捨て、ナポリ近郊の個人病院、マルチーノ・メディカル・ホスピタルで勤務に就いていた。孤独な影を秘めたフェルナンドだったが、看護婦のモニカはいつしかフェルナンドの冷たい眼差しに惹かれ、恋に墜ちる。外科医としての腕前は秀逸でありながらも、夜勤中に酒を飲み、医師法違反の手術をし、さらには女の噂も絶えないフェルナンドに、正義と理想の医療を旨とする若き医師ランベルトは反発を強める。だが…一見傍惹無人に見えるフェルナンドの行動の裏には…ある秘密が隠されていた。テレビでも「白い影」としてドラマ化された渡辺淳一のベスト・セラーのひとつ「無影燈」。真の医療とは、愛とは、そして命とは…という深いテーマを真正面から問う「医療ドラマ」の決定版を、宝塚歌劇が舞台化します。

 おもしろくなりますように……。

 わたし個人の感覚として、イシダせんせと医療モノは鬼門!なので、このラインアップには戦慄しました(笑)。
 お願いだから、臓器移植キャンペーンはやめてください。
 どんな話でも隙あらば挿入するからなー(笑)。

 わたしのなかのイシダ株は『復活』で上がっているんですが、苦手ランク上位の演出家であるだけに、手放しで信頼できてません。
 だから、まっつがこっち出演だとしてもモニョるなー。白衣が似合うことはわかってるけどさー(笑)。

 どちらの作品も、現時点でのわたしの萌えにつながってないんですが、まあ先の話だし、直前になればなったでわくわくすると思います。
 今のところ、博多は遠いし行かずに済むならお財布が助かっていいかなあ、みたいなテンションです。


 どっちも良い作品でありますように。
 わたしが「お金も時間もないのに!!」とうれしい悲鳴を上げて西に東に奔走するような。
 いつも自組のニュースを追うだけで精一杯、余裕のない日々が悲しい。
 7月の雪組の他、発表になったラインアップは、7月花組大劇場、9月の星組全ツとバウ。……あれ? 9月の宙組大劇場だけ抜けてますよ? 9月まで発表するなら、まずは大劇場でしょうに。代替わり公演じゃなかったら、一緒に発表されていたかな。

 いちばんインパクトがあったのは、なんつっても花組の「星の王子さま」。
ミュージカル・ファンタジー
『サン=テグジュペリ』-「星の王子さま」になった操縦士(パイロット)- 作・演出/谷正純
ラテン・パッショネイト
『CONGA(コンガ)!!』
 作・演出/藤井大介

 ほれ、わたしには『ICARUS』で頭を抱えた経験があるので、またそんなことになったらどうしよう、と(笑)。
 小柄な美形ではあったが、下級生時代から大人の男余裕でOKな芸風、というか、持ち味自体は男っぽかった雪組のトウコに、少年を通り越した幼児風味のメルヘン少年イカロスを演じさせた作品が、『星の王子さま』を下敷きにしていましたね、と。
 タカラヅカは女性が演じる子役を喜ぶ、ファミリー劇場じゃない。なんで初主演作で子役をやらなきゃいけないんだ、そんなの外部の劇場でできるじゃないかと、なんでヅカでやるんだと、心から残念でした。おかげで、植田景子という新人演出家の評価は、かなり低いところからスタートを切りましたなー。
 そんなトラウマ。タカラヅカで『星の王子さま』は鬼門。

 別に『星の王子さま』の舞台化ではなく、その作者サン=テグジュペリの話だとわかるが、タイトルにわざわざ「星の王子さま」と付けているので、絶対出てくるんだろうなと。てゆーか、サン=テグジュペリと付けるからには「星の王子さま」を出さなきゃ成り立たないだろうと。
 「サン=テグジュペリ」と言って通じなくても、「星の王子さま」と言うと通じるのが現代日本人の多くぢゃないっすか? ならば絶対「星の王子さま」は使わないと。

 いったいどんなカタチで『星の王子さま』が使われるのか、それがこわいです……(笑)。
 景子たんのドリーミーさもアレだったが、ファンタジーをまったく解さない、谷正純作品だよ?! 妖精と言ったら素っ頓狂な格好で「白い血の病気、ミャハッ」とかやっちゃうセンスの人だよ?! いやもお、こわいを通り越して、楽しみです。
 「ミュージカル・ファンタジー」ですよ……ファンタジーて……。谷せんせ……(笑)。

 わたしは、『星の王子さま』は「ぼく」と「王子さま」のラヴストーリーだと思っている腐った大人なので、「ぼく」=サン=テグジュペリの格好良さは理解しています、期待しています。
 いやその、ぼくは受だと思ってましたが……王子さまはS入った攻だよねとか、振り回されるぼくがたまらんとか、片思いっぷりがツボ過ぎるとか、「ぼく、君のそば離れないよ」なんかどんだけ深い愛の言葉なんだとか……。

 腐った意味は置いておいて、『星の王子さま』はマジに大好きなので、語り出すと止まらなくなります(笑)。
 今よりはるかにびんぼーだった、少女の頃のわたしが、なけなしのおこずかいでハードカバー本を買った、大切に大切に読み返していた宝物のひとつです。

 わたしが蘭寿さんを「ぼく」として『星の王子さま』を描くなら、王子さまは壮くんだなあ(笑)。少年ではなく、あのままのえりたんがらんとむさんの前に現れ、わがまま言いまくって、そのくせキラキラの笑顔できゅんとさせて、らんとむさんを振り回すの~~。
 パイロット姿のらんとむと、クラシックなロングジャケット・スーツのえりたん。砂漠でふたりきり。現実と切り離された空間で、ふたりきり。
 『復活』でもそうだったけど、えりたんの「救いの光」はすごい。しがらみとか現実とか、わたしたちが抱える澱んだモノを、彼はぱかーっとぶった切る。ふんわり癒すのではなく、Sにたたっ切る。
 いろんな現実に打ちのめされるサン=テグジュペリ@らんとむの前に、王子さま@えりたんが現れ、すぱーっと空気をぶった切ってくれたら、そりゃ「救い」になるだろう。彼が現実のものでナイとしても。

 とまあ、『星の王子さま』だと妄想が止まりませんわ。いくらでも創作できるネタだもんよ。
 さて、あくまでも主人公はサン=テグジュペリ。どうなるのか楽しみです。
 でもってらんとむ、タイトルロールだね。すごいなー。

 ショーはまたしても藤井くん。
 花組的にはやっぱ「また」になるよな。本公演では2009年から藤井くんしかやってない……ミキティが1回だけで、4年間全部藤井ショーってナニ。
 4年間で1作をのぞき、あと全部同じ演出家のショーしかやってないって、他に例はあるのかしら。


 星組の全ツ、演目よりナニより、梅田公演があって、よかったです。
 もしも大阪公演がなかった場合、いちばん近い会場はどこだろうか、とれおんファンと話していました。
 とゆーのも、大阪のいつもの全ツ会場である梅芸メインホールが、全ツ日程とオサあさ『エリザベート』が丸かぶりしていたため。
 『エリザベート』千秋楽の翌日が全ツなんだ……。公演終わったあとに、セット全部撤収して、そのまま全ツのセットに替えるんだ……中の人、大変だなー。

 演目は、『琥珀色の雨にぬれて』『Celebrity』
 何故今さらまた、『琥珀色の雨にぬれて』……。
 それほどいい作品とも思っていないので微妙ですが、今となってはヒロインのシャロンを演じられるトップ娘役がねねちゃんだけなんだなあと。蘭はな、みみ、ちゃぴはみんな、現時点で持ち味が「少女」。大人の女を演じられるトップがねねちゃんだけか……。
 れおんくんのクロードは、柄に合っているわけじゃないけど、似合うと思う。今のれおんくんなら、こーゆー受け身の男も魅力たっぷりに演じてくれるだろうなと。
 2番手が気になりますが、やっぱすずみんかな。うーん、ちょっと新鮮味に欠ける組み合わせになるなあ、それだと。


 今回のラインアップで、いちばんシンプルに「おもしろそう! 楽しみ!」と思ったのは、星バウ『ジャン・ルイ・ファージョン -王妃の調香師-』です。
 景子たんの趣味に走った感じの題材と、主演がベニー。心から、わくわく。

 『ICARUS』で「この人ダメかも」と思ったことが嘘のように、期待のクリエイターになってます(笑)。

 だからこそ、未来ってのはあなどれない。
 新人公演『エドワード8世』キャスト感想覚え書き、続き。

 テルマ@ちゅーちゃん、美人、でもって、ヤな女~~(笑)。いるわー、こーゆーセレブ気取り女~~。と思わせてくれる造形に拍手。
 ヤな感じがリアルなの。コメディっぽりやり過ぎ感はなくて。だからさらに、ヤな女。
 ジュビリーのときにウォリスに「やり過ぎたわね」と言うときの温度とか、意地悪なんじゃなくて、彼女の立ち位置的にそうなるよなって感じで、納得のこわさだった。
 それに、なんつっても、美人。そこがまた説得力だ。

 シンプソン@有瀬くんは、シンプソンという役について考えさせられた。
 本役マギーだと、すごくばばーんっと役が前に出ているのね。すごく重要な役だ、これからデイヴィッドと三角関係とか敵対とか、とにかくそこに物語の中心がやってきます的な派手さがある。
 でも実際、シンプソン氏は主役のライバル役ではない。脇のひとりだ。
 新公を観て、脇に落ち着いているシンプソンに「これが本来の役割か?」と思った。……けど、シンプソンには、これみよがしな色っぽい演出もある。
 なんつーか、収まりが悪い気がした。本役のマギーもだし、新公の有瀬くんも、まったく逆の意味で。

 エリザベス@白雪さん、相変わらずうまい。

 ジョージ5世@貴澄くん、健闘。ソルーナさんコピーなんだけど、しっかり本腰入れてコピってたなと。チャーチル@からんくんが独自の道だったので、貴澄くんが別の道を行かずにいたのは、良かったかなと。

 アルバート@星輝くんも悪くはナイんだが……彼の場合、デカさに驚いた。マルグリットの夫はコスプレ+ヒゲでよくわかんなかったけど、ふつーにスーツ姿だと横幅が目立つなあ。まだ若いから?

 モウラ@晴音アキちゃん、安定感。彼女も早熟だなあ。

 アンソニー役はわたし的に注目の役のひとつだったんだが、なんか記憶に残らないままという……ちゃんと見たはずなのになー。
 ガイ@ゆうきくんがイマイチだったせいもあると思う。銀橋でのいちゃいちゃにどきどきもなく、あっちゅー間に出番が終わってしまった……。
 ジョージに至っては、顔すら見損ねた……。
 スパイのみなさん、出番短すぎだ。ほんとに大野くん、このくだりの描き方は要再考だと思うわ。

 あと、王家のみなさんがしどころなくてなあ。みくちゃんとか、あれだけかあ。ってそれはつまり、本公でりっちーがあれだけってことなんだけど。
 男たちはともかく、女の子にあまり優しくない公演だわ。

 あ、キオスクの少年かわいかった。


 たまきちはこれで、2回目の新公主演。
 抜擢が早かったため、まだ2回目って気がしない(笑)。劇団は彼を真風にしたいのかな? 大人っぽい外見だから早くから男役としての体裁は整う、あとは経験積ませるだけってか?
 でもたまきちくんは月組の路線スターとタイプがあまりに違いすぎるため、このまま進んでいくのか、よくわからない(笑)。
 次はロミオ役をやっちゃったりするのかしら……むしろティボルトが見てみたいんだがなー。
 新人公演『復活 -恋が終わり、愛が残った-』の感想、覚え書き。

 主な配役が発表になったとき、わたしとその周囲では、テンションが上がってなかった。
 鳳くん、みりおん、がりん、って……。
 なんと新鮮味のない新公……。

 いや、それは観客のエゴであり、演じる彼らはいつも全力投球、大変なんだとわかっているけど。
 それにしても、もう少し別の子にチャンスを与えてもいいんじゃないかなあ、花組……。

 つーことで、わたしが真ん中の3人に新鮮味を感じていないためかもしれないけど、真ん中の3人に関しては印象が薄い。
 別にものすごくヘタでもないし、かといって、先入観を覆すほどすばらしい、神がかった出来でもない。
 及第点取りました、というだけの印象。

 鳳くんが、まさにソレ。
 悪くないけど、発見もない。彼ならこれぐらいやるだろう、と思った通りの出来。

 『ファントム』であれだけ素晴らしい歌唱でヒロインとして存在したみりおんだけど、今回はあんまし……。
 彼女の本領発揮は、「ミュージカル」なのかな。
 芝居メインだと、薄く単調なよーな。

 えりたんは「属性えりたん」なので、新公で彼の役を演じる子は大抵大変なんだけど、がりんくんはその上さらに、「大人の男に見えない」という大変さも加わっていた。
 かわいこちゃん顔なのは仕方ないけど、そろそろもう少し、男になってくれてもいいのになあ。


 今回の新公で、驚いたのは、シモンソン@柚カレー。

 ごめん。
 わたし、勝手に決めつけてた。

 柚カレーくんと言えば、美形。アイドル系。妖精ちゃん。
 すなわち、「うまくない」。

 タカラヅカにおける美形アイドルは、へたっぴだと、決めつけていた。

 顔だけ眺めていればよし、キレイだからそれでよし、そんな気持ちでいたんですよ。
 だから。

 ふつーにうまくて、驚いた。

 えええ?!
 柚カレーって、うまいの? 芝居できたの?
 知らなかった!!

 わたしだけでなく、東宝で新公を観た友人のドリーさんが、まったく同じことをつぶやいていてウケた。
 そうなの、美形アイドルちゃんだから、へたっぴだと勝手に決めつけてたよー!
 ごめん、うまかったんや!!

 いやはや。

 ふつーに、いい男でした、シモンソン。

 地に足の付いた、説得力のある男。
 この男ならそりゃ、カチューシャもなびくわ、てな。

 うれしい驚きでした。
 美形に対して、偏見持ち過ぎだ、自分……(笑)。


 それから、和海くん。
 まず最初のコサックの歌手ソロで、場を圧倒したよね。
 ちょ……ナニこの歌ウマ?!てな。
 和海くんもなかなか役つかないもんなあ。歌えるし、芝居もできるのになあ。
 
 セレーニンは、役としては固すぎた気もするけど、本役もそんな感じだし、いいのかな。


 ファナーリン@マイティがうまいのは予想通り。
 つか、新公だと安定したうまさだよね。『カナリア』みたく、いきなり本公演で男役3番手やらされたら未熟さが前に出ちゃうけど、周りも新公レベルなら十分うまいよね。


 アニエス@仙名さんが、わたし的にいまいち……。
 仙名さんって、なんでこう、ゴールの手前で派手にすっころんであがいている、という印象になるんだろう。や、あくまでも、わたしの中で。

 うまい人だと思うし、ナニが足りないってわけじゃないんだけど、ナニかがチガウ。
 今回は、本役のアニエスをなぞろうとしたのが、最大の失敗じゃないのか?
 本役のアニエスは、狙ってそうしているんじゃなくて、台詞回しにしろ表現のひとつひとつにしろ、あれが精一杯なんだ。あれ以上できない、なんとか芝居しているように見える、ぎりぎりのラインで切り取ってあるんだ。
 そこを真似てどーする。
 本役のことは全部忘れて、まったくチガウ、オリジナルのアニエスを作って見せて欲しかった。
 へたなアニエスを、そのへたっぴなところまでコピーして演じている、なんともとほほな出来に見えた。わたしには。
 頼むよ仙名さん……もっとはじけて見せて~~。応援してるからさ~~。


 んで、本役のアニエス……新公の役は、女闘士マリア・パーブロアの、姫花。
 えーと。
 新公は、本公演ほど練習する暇がなかったんだね……(笑)。
 いつもの、姫花。
 そーだよな、アテ書きじゃないもんな。姫花の芝居がマシに見える瞬間を切り取るような役として作られてないもんな。
 かえって安心するくらい、いつもの姫花でした(笑)。
 強い女の役が、アニメの萌えキャラみたい。幼児の顔した女の子が、肌もあらわな衣装でいかつい武器を持ったりロボットに乗ったりして戦っている、テレビ東京系真夜中アニメのキャラみたいだー。

 姫花は姫花なので、も、それだけでいいっす。


 ミッシィ@べーちゃんは、ほっこり癒やし系。でも、貴族令嬢にはあまり見えなかったような……。

 ミッシィ父@輝良まさとは、ほんと男前。どこにいても目につくし、また、見てしまう……本筋関係なくても、とにかく目を引く……。


 カルチンキン@日高くん……(笑)。
 いや、ごめん、(笑)付けて。
 めぐむの役ばっかだね、新公。
 カルチンキンはラブシーンのある、色っぽい役。なんだけど、そうか、役が色っぽいんじゃなくて、めぐむが色っぽかったのか。
 同じことをやっているはずなのに、日高くんにはもお、「がんばれ」と思いました。
 女を黙らせるキス、って、難しいんだね……(笑)。

 マルチェンコ@いまっちがイイ声なのは、言うまでもなく。
 最後の役がコレか……。仕方ないか。

 ワーニコフ@タソはうまいけど、わかっている範囲内というか、まりんの役だから本人も狙っている感が見えていたのは、ちょっと残念。
 もっとストイックにやってくれた方が好みだな。


 本公演で、だいもんの歌声からはじまることで驚いたけれど、新公ではその同じ歌が、まったくもって別モノだった。
 とゆーのも、聞こえてきたのが女の子の声だったからだ。
 この歌、新公では娘役が歌うことになったのか! と声の主を探すと……あれえ、ちゃんと兵士が歌ってる。
 うまいヘタよりなにより、女の子の歌声だった、というのが印象的。

 ミハイロフ@優波くん、学年にしては、よくやっていたかな。
 顔が好みではないので、印象の底上げもされず。
 本役がかっこいいのは、役がカッコイイからではないんだなと再確認。
 『復活 -恋が終わり、愛が残った-』の、キャラクタとか演じている人についてとか、だらだら感想。

 シモンソン@みわっちの、説得力。

 ちょ……みわさん、かっけーー!!
 この人の持つ、台形な安定ってすごいわー。
 愛の形が台形なの、下の方が大きくて揺るがないの。
 シモンソンって、いきなりプロポーズの人で、初見では思い切り突っ込んだけど、それだけ唐突な役でもみわっちだから、救われてる。
 『虞美人』のときもそうだったけど、みわっちには「突然プロポーズ」させたくなるのか(笑)。

 その相棒、「恋をしない女」マリア・パーブロア@じゅりあも、かっけー。
 タカラヅカにおいて、「男装している美女」を演じるスキルの高さは、じゅりあ様ならではですなあ。
 シモンソンとはほんとにナニもないのか……こんだけいい男といい女が一緒に命ぎりぎり人生送ってるのに。
 ふたりの間に濃ゆい愛憎があってもいいし、さらっと皆無なのもいいなあ。つーか、シモンソンさんって、興味の対象以外にはとことん鈍い感じがする。あんなに色男なのに……(笑)。
 だから、相棒がどんだけお色気美女でも、まったく気づいてない。
 でもってじゅりあ様の本命が、蘭ちゃんだったりしたら、萌える。(役名で言いなさいよ!)

 ヒロインのカチューシャ@蘭ちゃんは……うーん、特にどうとは思わなかった。
 すごくよかったとも、悪かったとも。

 このお芝居では、誰にも特に感情移入はせず、全体を眺めているせいかな。
 カチューシャにも感情移入しないし、ネフリュードフ@らんとむには、まったくもって自己投影は出来ない(笑)。

 ミッシィ役が誰なのか、しばらくわからなかった。
 途中から、みりおんだと気づいた。……みりおんって時々行方不明になる……わたしの中で(笑)。
 ミッシィの立ち位置がわからなくて、初見ではとまどった。
 わがままお嬢様の役なのか、いい人なのか。
 最終的にいい人だとわかったし、彼女の「ネフリュードフを救えないことが悲しい」てな台詞には泣かされたけど、そこに至るまでの人格が見えなくてなあ。
 無神経すれすれの無邪気さっていうのは、表現が難しいんだなー、と。『小さな花がひらいた』のじゅりあは、うまかったんだなと。

 退団するめぐむとアーサーに、それぞれ見せ場があったのがうれしかった。
 ショーでやるべきことを、今回芝居でやってくれてるよ……ミキティ冷たいなあ。ダーイシいい人だなあ。
 めぐむとくまくまのラブシーンとか、なんて俺得。

 そう、イシダせんせってアテ書きはうまいんだよなー。生徒の特性をよく掴んでいるというか。
 ただそれが、わたしの好みに合わないことも多かったんだ、何故そこをそう料理するのかと。なまじ合っているだけに嫌だというか。
 が、今回はアテ書きぶりもハマっていて、快適だ。
 すけべ男役に、ふみかとらいらい(笑)。
 百戦錬磨の美女きらり。
 熱血弁護士みつる。

 いーよなー。

 うらぽんの叔父さんも良かった。
 神経質そうな女看守イブたんも良かった。
 はっちさんのお高いパパ役とか、さおたさんの執事とか、ツボを突いてるよなー。

 一花はちょっと残念な役回りだけど、仕方ないのか。いつもお嬢様や美女の役ばかりできないし……。
 前回がカルロッタで、八面六臂の活躍ぶりだったから、その落差の大きさがアレだけど。その前の公演ではおばーちゃんだったし。
 彼女のポジションは、作品によって当たり外れがものすごく大きいよなあ。

 セレーニン@まぁくん、がんばってたなー。
 まぁくんだ、という先入観があるから「がんばってた」になるけど、役者についてなんの知識もない人が見れば、ふつーにらんとむさんと同期に見えたのかな。
 タッパがあるので強みだと思う。

 そして、アニエス@姫花。
 月野姫花、渾身の芝居。
 すげえ、わりとふつうに見える!!
 もちろんへたなんだけど、作品をぶちこわすほどへたじゃない!!
 すげえ、がんばった姫花! やればできる子!
 ……最後の公演での大役で、ものすごくがんばったんだろうし、また姫花へのアテ書きで、彼女の欠点がわかりにくいような役にしてあるんだろうけど。
 それにしても、よくやったなあ。
 『蒼いくちづけ』のものすごさを知っている者からすれば、感慨深いですよ……。
 ここまで矯正可能なんだ、ってことに。
 そして、どんだけやってもここまでが限界ってのが、彼女の「役者」としての限界なんだろうけど……。

 でもさ、姫花は「役者」ではなく、「タカラジェンヌ」だったんだもん。
 致命的な芝居音痴、アニメ声、歌壊滅と三重苦だったけれど、「職業=妖精」であるところのタカラジェンヌとしては、彼女は素晴らしい人だった。
 その華やかさ、可憐な美貌、オルゴールの上でくるくる回るバレリーナみたいな手脚……誰もが夢見る「タカラジェンヌ」そのものだった。

 わたしに予備知識だーの思い入れだーのがあるから、アニエスはあれでアリになっている。
 まったくのタカラヅカ初見の人には、どうなんだろう……。へたはへただからなあ……群を抜いて。
 美貌だけで、底上げされただろうか。

 アニエスの絡む相手が、シェンボック@えりたんのみだってのも、救いになったな。
 えりたんはあれでどーして、懐が深いというか、大抵の女の子を受け止めちゃうよなー。誰が相手でも気にしてない、入れ替わっててもOKないい加減さがあるから、とはいえ(笑)。
 そこがえりたんの魅力であり、そんな男の傍らに立つに相応しい、浮き世離れした美しさのある女の子だってことだな、姫花。
 良いカップルでした。

 ……なんか今回、芝居であきらがあまり目に入らなくて、それが自分的に残念だった。
 たぶん、だいもんばっか見ていたせいだな……。 
 いまさらですが、『Samourai』の話。

 四の五の言わずにスカッと泣いて、「格好良かったー」と劇場をあとに出来る、『Samourai』。
 トドロキ様の雪組で育ったわたしは、このテの話への耐性が強く、ツボも心得ております。
 名作だとはまったく思わないが、ヅカファンなら1回観てみて、と言える作品だった。

 でも、やっぱりモニョる(笑)。
 なんでこんなことになってるんだと、谷せんせに膝立ちでにじり寄りたい(笑)。

 構成の悪さは、なんとかならんのか。

 『Samourai』が散漫かつもたっとした印象になっているのは、谷せんせの構成力のなさにあると思う。
 脇目振りすぎ、落ち着きなさ過ぎ。
 「書きたいこと・書くべきこと」がばらばら。あれもこれもと目移りして、結局自爆。
 テーマを絞ろうよ。

 原作は知りません。
 だから、原作がこうだから仕方なかった、てのはよくわからない。あくまでも、わたしが観た、ドラマシティの舞台の上にあるだけのもので、判断。

 この作品で書きたいのはナニ?
 「巴里の侍」でしょ?
 正名@キムが、パリでパリ市民として戦ったことでしょう? その心意気や、武士道精神に萌えていたわけでしょ?
 だったら、何故それを中心に書かない?

 別枠であるオープニングの連獅子、フィナーレナンバー等は除いた、ストーリー部分の話ね。

 プロットを立てるときに、パリでの話をまず真ん中に置く。
 で、大好きな皆殺しをクライマックスに据えて、それがもっとも盛り上がるように、その他のエピソードを配置し、全体を整理する。

 そうするとさ、まず完璧に、息子嫁・光子のタカラジェンヌ話は、存在しないよ?
 加えて、少年剣士だった日本時代もほとんどナシになる。
 これでかなり時間ができるから、その分正名とマリー@みみちゃんの恋バナを入れたり、正名たちが戦争の末にナニを求めていたのか、それで結局パリの侍がどうなったのかを、書くことができたと思うんだ。

 話が散漫になり、肝心の「で、正名はパリで、戦いで、なにがしたかったの? どうなったの?」が、まったく書けてない。すっげー尻切れトンボ。

 『Samourai』のラストシーンは、市民兵たちは皆殺しになり、何故か都合良く生き延びた兵士でもなんでもないマリーと、武闘派筆頭だった正名のふたりきり。
 彼らの戦い……つーか、正名が先頭切って吹っ掛けたケンカはなんの収束もないまま、ふたりが「命ありがとう」と歌って、幕。
 せめて、このあとパリがどうなったのかぐらいは書いてくれないと、正名が元凶になっちゃうよ?
 降伏していたら助かったのに、よそ者の日本人がキレイゴトを並べ立てて、パリ市民を無駄死にさせたってことに……。

 確かに、史実的に華々しい結果にはならず、まとめにくい、オチをつけにくいんだとは思うけどさー。
 だからといって、ぶった切りはないよ……。どこの『愛と死のアラビア』……。

 まず、百害あって一利なしの、前田光子の話をなくす。
 百歩譲って少年剣士時代の話はあってもいいが、最低限、光子@ゆめみさんの話はなくすべきだ。
 正名の「偉業」とやらを、ありがたく演説してくださっているけど、「巴里の侍」である正名には、不要どころか、害悪になっている。

 何故なら、正名がどれだけキレイゴトをパリで熱弁しようと、観客は知っているんだ。「んなこと言ってあーた、パリもマリーも捨てて、日本へ帰るんでしょ? そこで別の女と結婚して出世して、ぬくぬく暮らして天寿を全うするんでしょ?」
 正名に煽動されて、次々死んでいく仲間たち。嘆く正名。
 だけど、「正名は死なないんだよね。だってこのあとパリもマリーも捨てて(以下略)」。
 命を危険にさらす正名。
 だけど、「正名は死なないんだよね。だってこのあとパリもマリーも捨てて(以下略)」。
 生き残ったマリーと手を取り、涙ながらに「命ありがとう」を熱唱する正名。
 だけど、「正名は死なないんだよね。だってこのあとパリもマリーも捨てて(以下略)」。

 ……谷せんせ。
 史実がどうあれ、舞台上でわざわざ解説しなければ、それは「なかったこと」になるんだよ。だってこれはフィクションであり、エンタメだから。歴史の教科書じゃないから。
 わざわざ「主人公にとって、パリは青春のアルバムの1ページに過ぎず、ホームグラウンドはあくまでも日本だったんだけどね!」と解説打つ必要が、どこにあったんだ?

 冒頭から、「巴里の侍」否定。

 いくら台詞で「巴里の侍だったのです!」(ジャジャーン!!)とやっても、無意味。
 そこで説明しているその人たちが、すでに否定してるんだよ。

 侍の精神はパリ時代限定のものではない、ずっと持続していたから、あの冒頭シーンはあれでいいんだ、というなら、パリ時代のあとも全部津々浦々全部書いて、冒頭につなげなよ。
 つながっていないから、パリ時代がぶった切りで終わるから、「巴里の侍否定」になるんだよ。

 で。
 なんで谷せんせがわざわざ、こんなアタマ悪い「余談」を冒頭に持ってきたか。
 それはただ、前田光子が、タカラジェンヌだったってだけだよね?
 タカラヅカと関連性がある、という、それだけだよね?
 テレビに知っている場所が映るとうれしい「あ、オレあそこ行ったことある!」って心理につながる、他人にとっては「だから?」てなことだけ、だよね?

 プロットが散漫になっている根っこには、このどーしよーもない心理があると思うの。


 続く。

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