わたしには、かめたさんというメル友がいる。

 かめたさんは静岡在住。毎年わたしにおいしいお茶を送ってくれるやさしい人。
 やっぱ名産地のお茶はチガウよねっ、とわたしは毎日おいしくお茶をいただいております。

 ええ。
 わたしは、ものすっげー茶飲みです。
 毎日毎日、あびるよーに(笑)飲んでいます。
 濃いめのお茶が好きで、出がらしなんてもってのほか。茶葉は1回限りの使い捨て、2度もお湯を注いだりはいたしません。そのかわり1杯目をよーく蒸らして濃くして飲む。

 そんなわたしだから、お茶っ葉の使用量のすごいこと。そして、茶殻の多いこと。生ゴミの大部分を占めるのが茶殻であるというこの現実。

 さすがにね、なんとかならんもんかと思いましたのよ。
 ゴミを捨てながら。
 こんなに大量の茶殻を捨てる毎日に疑問。

 茶殻の出ない方法を、まじめに考えるべきなんじゃないのか、わたし?

 つーことで、かめたさんに相談。

「ねえねえ、お茶っ葉を粉末にする機械ってあったよねえ? あれってどうなんだろ」

 そしたら、即答ですよ。

「以前使ったことがあるけど、あまりよくなかったですよ」

 と。
 答えが返るとは思わなかった。
 だって、わたしの周囲の人たちは、わたしが粉末茶のことを話題にしても「なにソレ?また緑野が変なものに興味持ってる」程度でスルーだったのよ?
 そーゆー存在があることは知っている。でも興味もないし、これから先も自分にはなんの関係もない。……と決めつけているような反応しか、なかったんだもんよ。

 なのに、かめたさんからは、ちゃんと答えが返った。
 てゆーか。

 使ったことがあるてのがすごい。

 いやあ、心強い友人ですよ。緑野、大喜び。お茶のことが相談できる人がいてくれてよかった〜。

 かめたさんは打てば響く人なので、わたしが粉末茶に興味があるとメールに書いた直後に、静岡製の粉末茶を送ってくれた。粉末茶としてふつうに販売されているやつね。
 聞きかじりとネットでの知識しかないわたしに、まず現物を試してみろ、と。ありがたい。

 ほほお、これが粉末茶か。いつも使うビジネスホテルに置いてある1杯分使い切りのヤツしか、使ったことのないわたしには新鮮。
 自分でスプーンに適量取って、お湯を注ぐ。

 ……お茶を飲んでいる気がしない……。

 味は、いまいちでした。
 うーん……たしかに、カテキン丸ごと摂取とか、茶殻が出ないとか、少しの量でたくさん飲めるから経済的とか、利点はいろいろあるものの、味がコレだとなあ。
 ちゃんとしたお茶会社が販売している、プロの製品がコレだとすると、一般家庭で自力で作る粉末茶は当然これ以下の味ってことよね。

 かめたさんが、家庭用お茶ミルを過去に使用したことがあり、あまりよい結果を得られなかったので早々にミルを手放してしまった、という経験談もうなずける話だったし。

 どうしたもんか。

 てなことをやってるうちに、また微妙に時は流れ。

 次に、かめたさんから別の粉末茶が送られてきた。
 今度のは、某社販売のお茶ミルで、実際に挽かれた品だという。某社に問い合わせた際に、わたしの分まで試飲品をもらってくれたのだ。

 おや?
 この粉末茶は、前に飲んだ粉末茶より、ずっとおいしかった。
 これを、一般家庭で作れるの?
 かめたさんも、以前手放したお茶ミルで挽いた粉末茶より、ずっとおいしいと言っていた。

 それまで漠然とお茶ミルを調べていたのが、一気に目標が決まる。
 某社製のお茶挽き器を手に入れるぞ!!

 某社のHPからさっさと定価で買えばいいんだが、びんぼーなもんでつい、少しでも安く手に入れられないかと奔走する(笑)。

 ああそして、今月アタマによーやく手に入ったのだよ、某社製お茶挽き器!!

 その日は法事で朝からばたばたしていたんだが、お坊さんを見送ったあとに、いそいそと箱から出し、説明書片手に初挑戦。お茶のためならがんばります!
 いやあ、この説明書がねー、笑えるくらい不親切でさー。知りたいことはまったく載ってないのよ。客観性に著しく欠けている……。
 日本語の添削したくてうずうずしたわ(笑)。

 それでも、説明書にない部分を想像で埋めて使用開始。
 電動式ですから。スイッチON!
 うわっ、でかい音(笑)。きりきりぐおんぐおん、いかにも「挽いてます、すりおろしてます!」って感じ。
 隣の部屋に置いておこう……うるさくてテレビが見れない……。

 音が止まってから、わくわくと機械を開ける。

 おお。
 粉末茶ができてます!!

 作業を繰り返し、付属の茶筒にできたての粉末茶を入れ、親の家に報告に行く。
 見て見て、うちで作った粉末茶だよー。

 味は試飲品と同じ印象。たぶん使っている茶葉がチガウから、微妙にチガウんだとは思うけど、わたしごときの舌では区別つかず。
 ふつーにおいしい。

「へええ、いいじゃないの。それでコレ、簡単にできるの? アタシがお茶っ葉買ってきたらアンタ、粉にしてくれる?」
 と、母。

 簡単と言えば簡単。
 しかし。

 面倒なことは山積みだ(笑)。

 いろんな人たちが、「1〜2回使っただけ」でこの機械を手放す気持ちが、よーっくわかった。
 お茶に対してそれほど需要だとか情熱のない人が使い続けるには、高い階段だと思うな。この面倒さは。

 まず、時間の問題。15分間しか、動かないんだ、この機械。15分間、けっこうな騒音をたてて挽けるのは、とっても少量のお茶だけ。
 15分を何度も繰り返して一定量のお茶を挽くことになるわけだが、連続使用は2回まで。15分動かしてできた粉末茶を取り出し、次にお茶っ葉を新たに入れてスイッチオン、さらに15分。……そしたら次は、30分以上は使用禁止ときたもんだ。
 小さな茶筒ひとつ分の粉末茶を作るのに、数時間必要。下手したら半日仕事か(笑)。

 そしてなによりつらい、使用後の清掃。
 機械をいじるのは、古新聞紙の上がのぞましいです。
 なんでって、ちょっと触るだけでそのへん緑色の粉だらけになるから(笑)。
 機械の中は粉だらけ。
 もったいない……なんで粉受け引き出しの中に全部入ってくれないの? ものすごい量の粉が、奔放に機械の中にあふれてる。
 説明書によれば、「日常お手入れ」ではちょっくらハケで粉をはらえばよし、みたいなことが書いてあるが、とんでもない。
 1回1回、分解して水洗いは必須ですわ。
 本体だって、丸洗いしたいくらい、粉だらけで不快。少しでもきれいにしたくて、本体の中を拭き清めるのがもー、時間かかるってばよ。

 ここまでして、この機械を使い続けるには、お茶への愛が必要でしょう(笑)。

 便利さと不便さを語りながら午後のお茶をすするわたしの前に、郵便が届いた。
 あっ、かめたさんからだ。
 ころんとした分厚さのある包みを開けると。

 そこには、今、わたしが母とふたりで飲んでいるのと同じお茶が!!

 ええ、ムトウ ティーファイン同梱のお茶筒ですわよ。できた粉末茶をコレに入れて保管してね(はぁと)な缶ですわよ。

「ティーファイン買いました」
 同封のかめたさんの手紙を読むまでもなく、わかりました。

 まさか同時期に同じモノを買っているなんて!!(笑)

 ああ、同志よ。
 語り合える人がいて、うれしいわ。

  
 完璧な朝だった。

 1時間半ほどだがちゃんと睡眠を取り、余裕を持って起床した。
 朝食を取り、ネットで電車の時間を再確認、家を出るまでのタイムテーブルを組み立てる。
 朝の日課になっている夢占いサイトをのぞき、ついでに星占いや「今日のラッキーアイテム」なんてものまでチェックする。

 完璧だわ。
 なんて余裕の時間。

 いつもの電車に乗るには、まだ十二分に余裕があったけれど、1本早い電車に乗ってもいいかな、てな気分で早々に玄関へ行く。
 「どこに行くんだ! オレも連れて行け!」と鳴く猫を肩に乗せ、親の家に運ぶ。
 寝静まった親の家に猫だけ放り込んで、さあ出発だ。

 ……余裕だったのにね。
 なまじ、この「余裕」がまずかったのだわ。

 駅に向かって自転車をこいでいるとき、「忘れ物」に気がついた。

 ビデオのタイマー、入れてない!!

 DVDレコーダのタイマーは入りっぱなしだ。わたしが忘れていても、勝手に録画し続ける。
 しかし、ビデオデッキはいちいち自力でタイマーを入れなければならない。再生や録画など、通常に使用するときには、タイマーを切っておかなければならないからだ。
 今日は同時刻に見たい番組があるから、ビデオも予約入れてたのに! タイマースイッチ入れなきゃ、ビデオは動かないわ! ……DVDレコーダに慣れてしまうと、ビデオデッキはひたすら不便な機械です。

 時間を確認する。
 今日は、早く家を出ていた。
 今、家に戻っても、わたしがいつも乗る電車に間に合う……かもしれない。

 あわててUターン。
 わたわたと帰宅し、2階へ駆け上がってビデオのタイマーを入れる。
 そして自転車にまたがり、猛ダッシュ。

 ここまで真剣に自転車をこいだのは、いつ以来だろう……おばーちゃんの訃報を聞いたときかな……古い話だ……てなぐらい、真剣にこいだ。駆け抜けた。
 自転車を降りてからも、走ったさ。

 しかし、無情にも、電車は動き出した。
 わたしをホームへ残したまま。

 10秒あれば、乗れてたのに……。

 ホームのベンチにへたりこむ。
 ぜえぜえ。年寄りの全力疾走はダメよ、事故の元よ。落ち着けわたし。

 えーと、次の電車だと、大阪駅に着くのが7時27分なんだよね。3分あれば間に合うのはわかってるけど、気ぜわしいのが嫌だから、いつも19分には大阪駅に着く電車に乗っているのに。
 あー、大阪駅に着いてからダッシュだなあ。WHITEちゃんはいつもこの電車に乗ってやってきて、梅田の街を走っていたよなあ。……でも今日はWHITEちゃんの姿はない。阪急を使ったのかな?

 不本意な1本遅い電車に乗り、大阪駅へ。
 さあ、またしてもダッシュだ、梅田の街を走るのだ。

 目指すは阪急プレイガイド。
 タイムリミットは7時30分ジャスト。

 ふつーに走れば、29分には目的地に着く。人混みを顧慮しても、徒歩で4分くらいの距離だからな。
 27分に大阪駅着ってのは、半端だから嫌なんだよなあ。走れば間に合うけれど、歩いたら間に合わないという。いっそ、どうあがいても間に合わない時間なら、あきらめもつくのに。

 走れば間に合うのがわかっているから、走るしかない。
 ゴールはプレイガイド窓口ではなく、そこから伸びた行列の最後尾。
 最後尾の位置は、いつも大体決まっている。そこを目指して走る。

 予定通り、29分にいつもの場所にたどりついた。行列の最後尾に並ぶ。

 あー、よかった。やっぱり間に合ったわ。

 と、ほっとしていたら。

「最後尾、ここじゃないですよ」

 ええっ?!

「最後尾は、百貨店の前よ」
「がんばって、今ならまだ間に合うわ」

 並んでいるおばさま方が口々に教えてくれる。
 ありがとう、同志の方々。でも、わたしがこの場に並んですぐじゃなく、微妙に時間が経ってから教えてくれたのがまた、混乱に拍車をかける結果に。

 まだ間に合うって……。えーと、わたしの時計ではすでに30分なんですけど……31分になるまでの数秒で走れと?

 百貨店の方って……反対側ですが……。

 激励してくれる方々の前での不戦敗もなんだし、まだ間に合うのかもしれないし、もう間に合わなくてもいっかってゆー気も微妙にしてるんだけど、ああもうわけわかんない。

 とにかく走る。

 今度は本気だった。
 本気の全力疾走。
 駅のホームまでも、電車を降りてからいつもの場所までも、たしかに走ってはいたが、ここまでの全力じゃなかった。

 残るすべての力をしぼりだし、わたしは走った!!

 ……思えばコレが、いけなかったんだ……。

 ばばあの全力疾走は、事故の元です。

 間に合いました。
 なんで間に合ったのか、自分でもよくわからないけど。
 あの距離を自己ベストタイムで走ったのでしょうね。いちばん履き慣れたペタ靴とジーンズでよかったよ……。

 〆切の7時30分には、間に合いました。
 わたしはチケット購入希望者として、抽選に参加する権利を得ました。

 しかし。

 貧血起こして、坐り込みました。
 立てねぇ。

 結局、自分で抽選することができませんでした……。あうー。

 ぎりぎりにやってきて走って、それで倒れているバカおばさん……。
 恥ずかしい……恥ずかしすぎる……。

 友人諸氏、ご迷惑をおかけしました。すみません。

 完璧な朝だったのに……。
 いつもなら徹夜で朝食抜きで行くのに、とりあえず眠って食べてから行ったのに……。
 余裕だったのに……。

 なまじ「余裕」があったから、忘れ物のフォローをしに家に帰り、なまじ「間に合う」ことがわかっているから走り……。

 いつも通りにしていた方がよかったのかもしれん。

 
 『ワンピース 呪われた聖剣』話のつづき。

 たしかに、耳に挟んではいた。
 テレビで会見の模様も見たし、新聞で記事も読んだ。
 しかしわたしは、スルーしていた。

 芸能人という名の素人が、出演することを。

 世の常識として、素人をいきなり主役にして舞台には出さない、ちゅーのがある。
 一流ホテルの厨房に、素人のわたしを連れて行って「さあ、本日のメインディッシュを作りなさい。それを何万円のディナーとして販売します」なんてやらないからな。

 芸能人が声優出演することは、かなしいかな「よくあること」なので、あまり気にしていなかった。
 いくらなんでも、ずぶの素人を主役クラスにはしないだろうし、また、そうするとしたらそれは、視聴に耐えうるだけのクオリティが見込める場合だろう、と。

 安心していた。
 信頼していた。

 安直な金儲けのために「作品」を壊すような真似はしないと。

 いや、基本中の基本だから。
 いちいち考えるまでもない前提ってやつ。

 昔、わたしが若かったころの素人声優たちは、そりゃーひどいもんだった。
 日本語が発音できる、というだけしか取り柄のない、ここまで下手な人間を捜す方が難しくないか?てな超絶下手くそが主役クラスでまかり通っていた。アイドルだかなんだかよく知らないが、わざわざ彼らを使わねばならなかったらしい。

 アニメというジャンル自体が、そういうことをするしかない、かなしいジャンルだった。

 そして時は流れ。
 吹き替えだとか声優だとかの、社会的地位は相変わらず低いままだ。
 プロがいるにも関わらず、畑のチガウ素人が宣伝のために抜擢されるのが日常。

 だが、時の流れと共に芸能人のレベルが上がってくれた。
 昔は顔さえかわいけりゃ、音痴で大根でダンスもできないという三重苦の人間でもアイドルでいられたが、今は顔以外のスキルも求められる。
 てゆーか、顔がいいだけの人間なんていくらでもいる現状だから、そこで生き残っていくために、他の能力が必要になったんだな。

 今のアイドルとかタレント、みんなそこそこなんでもできるじゃん。うまいじゃん。
 昔に比べれば、大したもんだよ。

 てな認識もあり、さらにわたしは安心していたんだ。
 素人芸能人が出演しても、作品のレベルを壊すまでには至らないだろう、と。

 甘かった……。

 すごかったよ、『ワンピース 呪われた聖剣』。
 耳障りなのなんのって。

 3人いたのがたぶん、致命的だった。

 ひとりは、今回の物語の主役ともいえる、敵キャラ・サガ@中村獅童。
 役者としての中村獅童は好きだし、声優としてもそれほど下手じゃなかった。でもやっぱり、素人だってのがわかるレベルの演技だった。
 物語の主役のひとりが「素人」だってのは、かなりイタイ。
 ただ、もう少しグレードの低い役なら、彼程度の演技でもOKだとは思う。
 もしくは、これがテレビシリーズで、1クール以上あるならば、きっともっと慣れてうまくなっていくだろうから、この役でもOK。

 あるいは、素人出演が彼ひとりならまだ、なんとか耐えられた。
 たとえ主役であったとしても、他がプロの仕事をして、支えてくれていたならば。

 しかし現実は、過酷だった。

 彼の横には、超絶下手っぴ、「日本語が発音できるだけ」しか取り柄のない少年がいた。

 サガの弟子トウマ@某アイドルグループのひとり。

 いやあ、すごい下手っぷりのよさ。
 21世紀だとは思えない下手さ。
 わたしが昔目眩を覚えていた、80年代のかほりのする下手さだった。

 ここまで下手なのに、使っちゃうんだ……。
 ある意味感心したけどな……。こんな感心、したくなかったわ……。

 今のアイドルは、大抵なにやってもそこそこうまいもんなのにな。
 さすがだよな、ジャニーズ。
 またしても、わたしのジャニーズ観を強固なものにする出来事だった。

 この男が死ぬほど下手だったせいで、うまくない程度の中村獅童も余計に違和感を醸しだし、手のつけられない状態に。

 そして、さらに。

 ヒロインの祖母イザヤ@久本雅美。
 これがまた、素人丸出し以前に、声質がまったく合ってなかった……。

 老婆イザヤは、絵を見ればわかる通り、ものすっげーインパクトのあるキャラ。
 主役ではまったくないが、この役が「活きる」かどうかで世界のニュアンスが変わってくるだろう、重要な役。
 正塚芝居でいうところの未沙のえるみたいなもんですな(そんな喩えを……)。

 そんな大切な役を、うまい下手以前に、「老婆の声」が出ないタレントにやらせること自体、まちがってるよ……とほほ。
 ふつーの女の人の声で、あの素敵なばばあの役をやるんだもんよ……。
 ばばあがアップになって喋っていても、今聞こえているこの声がばばあの声だって思えない……。

 演技上の計算で、わざと「ふつーの女の人の声」にしているというなら、わかる。
 でもそんな計算はどこにもなく、ただ書いてある通りの台詞を喋ってるんだよね……。溜息。

 わたしは予備知識なく見るのが好きなので、誰がどの役で出るのかも知らずに見ておりました。
 最後のテロップを見るまで、この素人さんたちの名前も認識しておりませんでした。
 だから、彼らに対する含みはまったくないです。
 久本雅美だから嫌!とか、イメージちがう!とか、思いながら見たわけじゃないっす。
 なんにも知らずに映画を見て、「うわ、下手すぎ。……そーいや素人が出演するっていってたな。これがソレか」と気づいたクチっす。「で、誰なんだろ、この声」と首をひねったクチっす。
 もともと、現在活躍している声優さんのこともまったく知らないんで、知らない声だからといって拒絶反応がでるわけでもないっす。

 ただ純粋に、下手くそがキライなんです。

 プロの仕事を、大切にしてくれよ。
 『ONE-PIECE』なんて、素人のネームバリューに頼らなくても成功が約束されたタイトルじゃん。

 下手くそたちに邪魔されて、映画をたのしむことができなかったことも、つらい。

 しかしそれだけでなく、作品創りとは別のところにある大人の事情によって、創作物が歪められる現実と、プロの仕事を軽んじる現実に、とても滅入るのです……。

 ああ、かなしいわ……。

 
 世の中に職種はあまたあり、それに従事することによって「プロ」となる。
 プロ、エキスパート、専門家、熟練者、職業人。
 呼び方はいろいろあるわな。

 プロっちゅーのは、それによって糧を得ている、という意味もあるが、ここでこだわりたいのはやはり、熟練度だわな。

 誰だって、やるだけならできる。
 パンを作ることだってそばを打つことだって、小説を書くことだって、舞台で歌い踊ることだって、やろうと思うなら今すぐにでもできるよ。
 うまい下手は別としてな。

 道具と材料とレシピがあれば、わたしにだってパンは作れるよ。そばは打てるよ。1日体験教室で、たのしく作ったさ。
 でも、わたしが作ったパンも、打ったそばも、職人さんの作るものには遠く及ばないさ。てか、比べること自体失礼さ。
 それくらい、プロと素人の差ってのはあるんだ。
 べつにソレ、いちいち言わなくてもいいくらい、当たり前のことだし。世の常識だし。

 わたしは、プロの仕事ってのはすごいもんだと思っているのよ。
 ひとつの事柄を極めるってのは、すごいことだよ。
 真似できない技術なんだよ。
 傍目には「なんてことない」ものに見えても、そこにはとびきりの技術と経験と工夫があるものなのさ。

 だから、プロの仕事を大切にして欲しい。
 傍目には簡単でも、やってみたらものすごーく難しいんだから。
 誰にでもできるというなら、その職に「プロ」がいるわけないじゃん。わざわざ「専門家」がいるってことは、それが「必要」だからだよ。
 プロの仕事を、軽んじないで。

 と。
 心の底から思いました。

 『ワンピース 呪われた聖剣』鑑賞。

 映画館にいるガキは超絶苦手なので、災難に遭遇しないために鋭意努力中。ガキの見る映画は、春休みになる前にとっとと見てしまわなくては。
 つーことで先日、公開すぐに見に行きました。
 子どもはいなくて、泣かれたり暴れられたり蹴られたり髪の毛ぐしゃぐしゃにされたりはしなかったけど、かわりにオタクがうるさかったです。はー、なんであんなに喋りまくるんだろーねー。

 いつものことだが、予備知識はナシ。
 『ONE-PIECE』命!のWHITEちゃんがなにやら浮かれたことを口走っていたが、あまり記憶には残ってない。サンジファンの彼女は、サンジ中心にしか喋らないからな。WHITEちゃんの話だけだと、サンジ主役の映画に聞こえるよ……。
 芸能人が声優として出演する旨のニュースは目にしたけど、それも興味がなかったのでスルーしていた。
 わたしの頭にあったのは、「『ONE-PIECE』の映画、2本目」ということだけ。
 ポケモンだっけデジモンだっけかと同時上映だったヤツは、「映画」のうちのカウントしてません。単独上映になってからが、「映画」。だからこれが2本目。

 1本目がおもしろかったから、期待していた。
 まっとうな「映画」としての作り。徹底したエンタメ力とサービス精神。売れている作品の余力のある勢い。1本目は、それらがとても気持ちのいい作品だったから。

 そして、今回の『ワンピース 呪われた聖剣』。

 ……たのしくなかった……。がっくり。

 他タイトルと同時上映だったころの『ワンピ』は、むきだしのエンタメであり、ストーリー以前のお約束だけのサービスアイテムでしかなかった。
 ソレを経て晴れて単独上映となり、テレビシリーズで培った土壌をバネに「独立した物語」を作った。彼ら麦わら海賊団が、原作には描かれていないところで出会っていた冒険のひとつとして、長編ならではの起承転結のある「正しい物語」を展開した。
 映画であることの、わくわく感。テレビとはチガウ、「いつもよりすごいことになるにちがいない」という期待を裏切らず、「いつも」を大切にしたまま、「いつもより派手に愉快に」ぶちあげてくれた。

 さて、ここまではとても正しい作りだ。
 娯楽作品シリーズの流れとして、とても王道であり、まっとうな構成だ。

 では次は?
 1本目は「いつもより派手に」で、きれいにまとめることができた。
 じゃあ2本目はどうしよう。「派手に」するのは基本だけど、それには限界がある。

 そして来ました、これまた王道。
 「仲間割れ」。

 いつもの仲間たちで派手にするのが限界なら、仲間同士で戦わせればいいんだ。
 物語作りの基本中の基本、テンプレといってもいいネタです。
 王道OK、お約束上等。
 エンタメとはお約束をどう料理するかですよ。
 だから、ゾロが敵になる、というネタは直球ど真ん中キターー!てなもん。
 この王道ネタを、エンタメ力の安定したスタッフがどう見せてくれるのかを、期待していましたよ。

 で、実際に見て思ったことは。

 えーと。
 さすがです。
 お約束でありテンプレであるので、なんの問題もなく、料理しきってました。
 敵となったゾロと戦うのが、ルフィではなくよりによってサンジだというのも、キャラを理解したうえでのことだとわかります。ニクいなぁ、と思います。
 ゾロという男のシンプルな頭の中には、ルフィというくっきりはっきりしたキャラの他は「仲間」というややぼけたビジュアルのキャラが数人いて、あとはくっきりした「宿敵」とか、顔のない「敵」とか「その他の人」とかがいるんだと思っています。
 だから、ゾロがルフィと戦うのは、NG。戦わせるならもっとちゃんとした前振りと深い物語が必要。どーぶつ並のゾロの頭の中で、唯一無二の位置にいるのが、彼の認めた「海賊王」なのだから。
 じゃ、残りの仲間のうち、誰と戦わせるか。……消去法でサンジしかいないでしょう。ゾロは弱いモノに剣は向けないから。女にも乱暴はしないから。戦闘員であるサンジくんになら、多少ナニかしても大丈夫です。
 「お約束」だけでいうなら、いちばん盛り上がるのは対ルフィだとわかっていながら、あえてルフィとは戦わせず、対サンジなのが、スタッフが「作品世界」を大切にしているんだなと思わせてくれる。
 ……腐女子的にも、ゾロVSサンジはオイシイはずだしな(笑)。

 作品の構成はまちがっていない。
 キャラの人格と言動を大切にし、オイシイネタをあちこちふりまいて、つっこみどころも満載だが元気よく派手に盛り上げてくれる、正しいエンタメ。

 なのに。

 わたしには、たのしめなかったんだわ……。がっくり。

 なんでかなあ。
 なんでこんなに、世界に入りにくいのかなあ。なんでこんなに覚めた気持ちで、萎えた気分で、「長いなあ、今何時? まだ終わらないのかー」なんて考えながら見てしまったんだ?

 物語としての構成がまちがってないのに、オイシイのに、ここまで萎える原因。

 頼むから、素人を出演させるのはやめてくれ。

 これに尽きるのだわ……。

 ヅカを観ていて、ときどき椅子から転げ落ちそうになる下手な歌を聴いたりするが、この映画では歌じゃなく通常の「演技」で、椅子から転げ落ちそうになった。
 歌なら、1時間半の芝居の中の数分ですむけど、演技だと、そいつらが出ている時間全部が、苦痛でしかないのよ……。

 つーことで、冒頭のプロうんぬんの話になるわけだが、ここで文字数限界。つづく。

 
 さて、新人公演『1914/愛』の話、その3です。
 これで最後だ、締めの部分だ、起承転結の結の部分だ。

 てことで、冒頭に戻ります。

 金がないので、観劇にさっぱり行っていません。
 わたしも大人になったなあ。金がないのは今にはじまったことじゃないのに、一昨年も昨年もムラに通いまくってたもんなあ。自重できるようになったなんて、すごいわわたし。

 新公を観ながら、再確認していたのよ。

 わたしやっぱり、この物語好き。

 こんなに好きなのに、通ってないなんて、すごいわわたし(笑)。

 えーとね、『シニョール ドン・ファン』くらい好き。
 わたし、アレ、ハマったのよね。通ったのよね。
 役者は関係なく、作品にハマって通ったの。
 『1914/愛』もそう。役者ではなく作品。
 だってMyダーリンは端役であんな扱いだから、ダーリン目当てではハマれないわ。

 『ドン・ファン』はあんなに通ったのにねえ。
 今回、自重してるわー。大人になったわー、わたし(笑)。

 新人公演だから、主要キャラ以外は学芸会に近い部分もあるわけだ。
 う・わー、きっつー……な面もあるわけだ。

 だからこそ、その「作品」を好きか嫌いかが浮き彫りになる。

 そしてわたしは、再確認したわけだ。
 この物語は、わたしのツボを刺激する、と。

 新人公演という、若さ一発全力投球の舞台が、作品のテーマである「愛」や「夢」とリンクして、本公演にはないきらめきがあったりな。

 夢を追う者たちに、幸いあれ。
 無知でも無謀でも、それでも夢を実現するためにあがきつづける者たちに、幸いあれ。

 その若さに、幼さに、愚かさに、幸いあれ。

 宝物を詰め込んで、きらきら輝いていてくれ。

 
 新人公演『1914/愛』の話その2です。

 サバキはそれなりにあったし、あちこちでもチケットが余っていたようで、観たい人には程良く行き渡ったんじゃないかな、というチケ事情でした。はい。

 物語は主役カップル、アリスティドとアデルの爆走ぶりに、若い芸術家たちの物語を絡めて進む。主役たちはコメディ一直線、シリアスは脇が担う、という作り。

 主役たちが真ん中の直線コースを雄叫び上げながら走る物語なので、主役には「吸引力」が必要不可欠。
 本役のワタルくんと檀ちゃんには、他のなにが欠けていようとソレだけはあるので問題ナシ(笑)。
 では、新人公演は?

 ノープロブレム。ノーマンタイ。

 アリスティド@レオンくんには、やはり華があります。

 なにしろ「天才歌手」役で、最初っから歌いまくってくれるので、本公演からしてかなり拷問なんだけど、新公でもやはりつらかった……歌がダメダメな現星組で、どーしてこんな設定なのよ、責任者出てこい!
 歌いまくるレオンくんに、気分は萎え萎え。かなりしょぼくれた気持ちで観ていたのに、気がついたら惹きつけられていた。
 アデルと出会ったあとの銀橋の歌なんか、マジ感動している自分に気づく。
 ええっ、歌下手っぴなのに。こんなにダメダメなのに、心が動くわ。惹きつけられるわ。
 うおー。華ってのは、こーゆーものをいうんだわ。吸引力ってのは、こーゆーものをいうんだわ。

 きらきらしている若いアリスティドを、素直に素敵だと思う。もちろん、本役ほどのスケールはまだないにしてもね。

 ヒロイン、アデル@ウメちゃんには、やはり華があります。

 かーわーいーいー。
 とにかく、かわいい。
 演技しているのか地なのかわかんないけど、とにかくかわいいぞ。
 元気に真摯に生きてる、等身大の女の子。こんな子、今もどこかにいそうだ。東京の小さな事務所に籍だけなんとか置いて、オーディション受けまくって落ちまくって……てな。
 応援したくなる、そんな女の子だ。
 最後の啖呵を切るシーンも、えらくキュートだったぞ。本役の檀ちゃんがものすげーオットコマエだから、ただでさえボーイッシュなウメちゃんはさぞや漢らしく決めるのかと思いきや。……キュートでガーリッシュですか……あくまでも「女の子が気勢を上げている」ラインを崩しませんか……なるほどー。

 アリスティドもアデルも若くてかわいくて、少女マンガのやうだよ……。
 少女マンガが好きなわたしは、とてもときめいて観ることができたよ。

 さて、このぶっちぎりな主役カップルの話の横で。
 重い現実と戦うのは若き芸術家たち。

 戦争を象徴とする、いちばん暗く重いパートを受け持つのが詩人アポリネール。
 彼は冤罪で逮捕されたり恋人に捨てられたり戦争に行ったりと、波瀾万丈。他の画家たちとは一線を画した「大人」の雰囲気。
 主役にしろ、他の画家たちにしろ、そこにあるのは「若さ」だから、アポリネールひとりががんばって「重さ」を出すべきだとわたしは思う。
 「作品」を中心に考えた場合ね。
 主役カップルの物語は、中央を走る太い幹。画家たちの物語は、その幹から伸びる枝に咲いた花。そしてアポリネールの物語は、幹に巻き付いた細い蔦なの。
 だからこそ、詩人の人生はシリアスに重く。彼の悲しみと、それでも前へ進む強さをせつなく美しく描いてくれ。
 実力派が演じてこそ。華だけしか持たない下手っぴくんには、やって欲しくない役だ。
 アポリネール@彩海早矢は、破綻なく演じていたと思うよ。歌はともかくとして。とりあえず彼は、「華しか持たない下手っぴくん」ではないもんな。ただ、あまりに地味だったために、もともと本筋に絡まないだけに、さらに物語から乖離し、沈殿したよーな気がする。

 さて、主役カップルの物語に絡まないといえば、画家たちもそうだ。
 しかし画家役は、路線スターの役だと思うんだ。
 彼らの背負う現実もまた、たしかに重く暗いものだ。しかし画家たちには重さや暗さよりも、「友情」だとか「夢」だとかを全面に押し出している。
 ヒロインのアデルと同じ立場なんだよね。
 つまり彼らも、きらきら輝いていないとダメなのさ。
 画家たちのリーダー格、モディリアーニ役は、特に。
 この役こそ、2番手男役の役だと思う。
 ヒロイン・アデルのもうひとつの面を表しているわけだから。つまり、「夢を求めてあがいている」ダーク面。アデルはあの通りコメディやってるから、同じことをシリアスでやるわけだ。ちゃんと親友がいるのも同じ、ルームメイトなのも同じ。
 アデルは病気になった親友のために謎の伯爵夫人に変身してコメディ路線でがんばっちゃうけど、モディリアーニは病気になった親友のために、暗くパリを去っていくのさ。
 モディリアーニは、もうひとりのアデルなんだよ。そりゃ、2番手の役でしょう。そこにいるだけできらきら輝く人が演じるべきでしょう。
 本役はタニちゃん。実力はさておき、華だけはある人。いるだけで、きらきら輝く人。……このキャスティングは、正しい。
 そして、新人公演。

 モディリアーニ@ゆかりちゃんには、やはり華があります。

 ああっ、清十郎様。
 美しすぎます、モディリアーニ。
 眼福眼福。見ているだけでしあわせ。
 スーツ姿が、どこのホストのにーちゃんですか、て感じで大変すばらしいです(笑)。
 悪ぶってみたりやさぐれてみたり、だけど笑顔全開ではしゃいでいたりと、感情のつながりが大雑把なんだけど、それすら魅力に思えてしまうの……うっとり。
 きれいっていいなあ。
 こんなきれいな男が、男に向かって、

「こいつだけは死なせたくない……」

 とか言うんですよ、ハァハァ。
 すみませんわたし、本役さんより萌えてます。清十郎様のモディリアーニ……何人男を泣かしてきたんだヲイ、言ってみろよ、手玉に取ってきたんだろう、アア? 本命のユトリロには指一本触れられずに、他の男で誤魔化してきたんだろうヲラヲラ!! ……てなことを、やさしく問いただしたい気持ちです(笑)。

 清十郎様を見られただけでも、新公に行った甲斐があったな……。しみじみ。

 ユトリロ@しゅんくんは、丸かったっす……。
 若くて丸くてかわいくて、モディリアーニが愛するにはちょいと役者不足というか……モディリアーニ、ひょっとしてショタ? と思ってしまうわ……。

 スーチン@鶴美名前読めないわ舞夕くんが、ハンサムでした。おお、こんなところにもきらきらした子が!って感じ。

 エドモン@凜華せらくんも、噂に違わぬ美形ですなあ。友人からいろいろ聞いていたから、カンカンのときは手に汗握ってしまった(笑)。1回こっきりの大舞台で、あれだけキメてくれるのは大したもんだ。

 あと、使用人@美弥るりかちゃんが美形で目を引くよねー。

 なによりすばらしかったのは、オルガ@みなみちゃん!! 感動。
 あの美貌でそこまでやるか。……てか、余裕でうまい。場をかっさらってくれる快感。
 彼女の歌声がもんのすげーから、コメディがコメディとして正しく成立するのよ。いやあ、いいもん見たわ、聴いたわ。

 てなあたりでまた、文字数が足りない……。

 
 金がないので、観劇にさっぱり行っていません。
 わたしも大人になったなあ。金がないのは今にはじまったことじゃないのに、一昨年も昨年もムラに通いまくってたもんなあ。自重できるようになったなんて、すごいわわたし。

 つーことで、わたしが星組公演を観たのは初日1回こっきりです。

 そのとき幕間にチェリさんに言いました。

「利助が目につきまくる……。どこにいても、利助を見てしまう……」

 チェリさんは素で、
「わたしは清十郎様ばっかり目につきますけど」
 と、返してくれました。おお、同志。

 わたしも清十郎様は目に入りますともさ。清十郎様がまだ清十郎様じゃなく、「ナチスのお稚児さん」だったときから、目に入りまくりですよ。
 清十郎様はその美貌でわたしを釘付けにしてくれているので、べつに不思議でもなんでもないのです。

 でも、利助はな……。
 べつに見る気もないし、見たいとも思ってないのに、とにかく目に入ってくるのよ……。

 一度おぼえてしまったが最後、忘れられない顔だよね、利助……。

 と、なんの話かというと、本日行ってきましたのよ、星組新人公演『1914/愛』

 利助こと、彩海早矢が2番手、カシゲの役をやっておりました。
 あー、利助だー。利助が二枚目役やってるー。ヒューヒュー。

 なんかね、どこにいてもなにをしていても、見てしまうわよ、利助。もー、無意識に探しているよーな気もするのよ、利助。
 ひょっとしてこれって……。

「まちかめぐる現象?」
「まちかめぐる現象ね」
 WHITEちゃんは断言する。
「緑野、アンタはまちかファンであるうえに、さらに利助ファンなのよ」

 そ、そうなのか、ひょっとして?
 そうなのかもしれない、たしかに。
 それならついでに、月組のマチオのことも愛しているのかもしれないな。
 とりあえず、ファンということにしてくれていてもいいさ。

 ただ。
 今回の新公を見ながら、腹の底から思った。

 アポリネール役は、利助ではなくみらんくんで見たかった……!!

 みらんくんは、ギョーム役でした。本役はケロ。
 ケロちゃんがやっているせいですかね、画商ギョーム氏のイメージは「大人」で「社会人」で「オヤジ」でした。
 若さ爆発破滅一本の芸術家たちの間で、唯一社会に適応している大人の男というか。頼りになる兄貴というか。

 でもみらんくん、きれいすぎるんだもんよ……。

 うわー、なんてさわやかな男前のギョームさんなんだろー、ギョームさんだと思えないー。
 いや、本役のケロがさわやかでないとか男前でないとか、言っているわけではありませんが。
 とにかく、みらんくん演ずるギョームさんはハンサムなにーちゃんでした。

 今までわたし、みらんくんを特別きれいだとか思ってなかったんだが……もちろん、男役としてふつーにきれいだが、ビジュアル面より実力の方が充実している人だと思っていた。
 なのに、あらびっくり。
 みらんくん、きれいだわ……端正だわ……。スーツが似合うわ……。

 みらんくんは好きな男役だけど、個人的に「真ん中向きではない」と思っている。たぶん、主役とかやるには地味さが目立っちゃうだろう。
 でもさ、華のある脇役をやると、ハマると思うの。2番手役ではなく、あくまでも脇役。たしかに脇なんだけど、オイシイ役っていうか、ファンが増えますぜ、的な役どころ。

 今回のアポリネール役が、その「華のある脇役」だと思うのね。

 ええ。
 真の2番手役はモディリアーニだと思ってるよ。モディリアーニは、「真ん中としての華」が必要な、スター男役がやるべき役。
 アポリネールは脇役。堅実な演技で、コメディ一直線な芝居を締める役割。色気のある上級生男役がやってもいい役。この役をただの脇役にしない、真ん中を邪魔しない華や色気が必要。

 本役のカシゲはとにかく薄いので、この条件に当てはまっているのかいないのかわたしには判断できないんだけど、「作品」だけを見てみたら、そーゆー役割だと思うの。アポリネールって。
 トド様トップ時代の雪組でこの作品を上演していたら、ハマったろうなと思う。
 アリスティド@トド、アポリネール@タータン、画家4人組@三兄弟+カシゲ、ごめんコウちゃんはどっか他の役をてきとーにやっていてくれ、と。
 てゆーか、アポリネールがタータンだったら、個人的にめちゃナイスキャスティングだ……。トド様とグンちゃんが真ん中で突っ走りコメディやってる横で、タータンひとりシリアス芝居で愛憎劇やってくれるとうれしい。芝居をびしりと締めてくれー。
 ……はっ。妄想キャスティングで脱線してるわ、わたし。

 あー、とにかく。
 アポリネールは、ある意味オイシイ役なのよ。
 地味だし、主役に絡まないしで、路線男役にはオイシくないかもしれんが、別格男役にはオイシイのだ。

 だからこそ、みらんくんで見たかった……。

 なまじ今回のみらんくん、すげーきれいだったからさー。
 このきれいさなら、アポリネール、ぜんぜんOKじゃん。
 主人公サイドの物語とまったく絡まない分、アポリネールは地味地味に真っ逆さまになりがちな役どころなんだから、見た目の美しさと色気が必要なのよ。
 みらんくんの端正さなら、生真面目地味なアポリネールを、オイシく彩ってくれただろうに……!

 と、歯がみしてしまうくらい。

 利助には、きれーさが欠けておりました……。
 色気が欠けておりました……。

 利助だもんなー……ビジュアル、きついよなあ。利助役のときも、美しさと色気がないことを口惜しく思ってたもんなあ。

 いや、うまいんだけどな、利助。利助役のときだって、すっげーうまかったけどな。
 でも美しさや色気とは、ぜんぜん関係ないとこにあるうまさだったからさ……。

 あー、残念だー。
 利助のアポリネールには、かなり不満なのだ……。
 カシゲだって薄くて埋没してるけどさ、とりあえず彼は「きれい」だからさ。美貌だけでなんとか形を作ってあるからさ、まだいいんだけど。
 きれいじゃないアポリネールなんて、ただの脇役だよ……。もったいない……。

 利助はがんばって色気を身につけてくれー。
 ビジュアルは、色気の有無でいくらでも底上げして見えるもんだから。美形でなくても色男にはなれるもん。
 あのやたら目立つ顔を、武器にしてくれよ。

 ああそして、みらんくん……。
 みらんくんがアポリネールなら、いろいろ萌えてたろうなあ。いや、警察の取り調べとか、いろいろとな(笑)。

 アポリネールの話だけで文字数ぎりぎりかよ……(笑)。
 つづきは明日欄へ。

 
 みんなでファストフード店に来ていた。
 白くて細長いテーブルを囲むように坐る。
「ねえ、新製品だってよ」
 ひとりがそう言い、平べったい箱を出してきた。
 ちょうど、おまんじゅうの箱のようだ。
 フタを開けると、やはりおまんじゅうのように、その新製品だという食べ物がきれいに並んでいた。

 それは、白い鼠の死骸だった。

 ハムスターかな。みんな同じ角度、同じポーズで丸まったまま箱に詰められている。
 ひよこまんじゅうみたい。

 これが新製品……。
 わたしはまじまじと眺め、ちょい鼻白む。

 ごめんわたしコレ、食べられそうにないよ。
 だってネズミだし。
 毛皮ついてるし、手とか指とかまでちゃんとついてるし。
 どっから見てもネズミの死骸、は食べられないよ。
 そりゃあかわいく、おまんじゅうみたいに並んでるけどさあ。

 てな夢を、昨日見ました。

 四角い箱いっぱいにきちんと詰められた、ハムスターの死骸。
 何故そんな夢を……。

 それから、今日の夢。

 そこは外国。遺跡のある古い街。石畳に細長く連なる市のテント。色とりどりの布。
 限られた時間で観光しなければならないわたしは、悩んでいる。
 このまま目の前にある遺跡を見学しようかしら、それともツレと合流する方が先かしら。
 ツレと合流するには、駅前まで戻らなくちゃ。それなら先に買い物を済ませようかな……。

 悩むわたしの前に、空からなにか、降ってきた。

 それは一匹の、河童だった……。

 緑色の、鎧のようなウロコのようなもので覆われたカラダ。濡れている。頭の上には、もちろんお皿。
 目だけ人間の目と同じ。白目部分が目立つのは、緑色との対比があざやかだから。

 何故、外国に河童が。
 つーか、何故、空から降ってくる?

 固まるわたしの前で。

 河童は殺された。

 …………こんな夢を見ているわたしに、誰か夢占いしてやってください。
 
 
 先週分の『牡丹と薔薇』を一気見しながら、手がヒマだったので、過去日記のテーマ分けをしてみた。

 過去日記のテーマ分け。
 つまり、過去日記の「修正」なわけよ。べつに本文書き換えちゃいないが、結果としては「修正」して、新たにUPしなおすことになる。

 ……失敗に気づいたのは、ずいぶん経ってから。

 この日記は、テキストをUPする際に、

メールで日記をバックアップ−−書いた日記をメールで保存しておく
他のサイトに更新通知を送る−−日記の更新を更新通知サイトに通知する

 てのを、やるかやらないか、選ぶことができる。
 デフォルトでは「やる」になっている。

 機嫌良く、過去のデータを修正していると。

 ええ。
 ふと気づくと、3ケタのメールが届いてました。修正した日記の数だけ。……削除めんどくせぇ。

 そのうえ。
 3ケタもの回数「日記を更新」したせいで、よそさまの「日記更新お知らせサイト」に、ずーーっと顔をさらしていたようです……うがー。

 まー、なんにせよ。

 『牡丹と薔薇』、ひどいことになってますなあ。

 

静かな週末。

2004年3月6日 その他
 なんか最近、映画をあまり見ていない気がする。
 なんでだろう、と考えたら、答えは簡単だった。

 WHITEちゃんが、誘ってくれなくなったからだ。

 一昨年とか、昨年の前半とか、ものすげー勢いでふたりで映画見てたよねえ?
 週に3回は会って、一緒にヅカだの映画だの見ていたよーな。

 さみしいよー、WHITEちゃん。

 ……と、ここで言ってみる(笑)。

 
 プチショックなことがあり、『ビッグイシュー日本版』を買ってみました。

 いや、プチショックと『ビッグイシュー』とはなんの関係もありません。
 ただ、なにかふと新しいことをするには、きっかけが必要なわけで。
 ああ、ちょっくらかなしいわ、と思っているときに視界に販売員の姿が入り、そーいや前から興味はあったよな、と思い出し、ふらふらと財布を開けておりました。

 ふつーに、おつりが出ないように200円ジャスト握って、
「1冊下さい」
 と言っただけなんですが。

「ご支援、ありがとうございます!!」

 と叫ぶように言われ、最敬礼。
 90度のお辞儀を何度も何度も繰り返され、わたしは思わず逃げ出してしまいました……びびびびっくりした。
 いやあの、わたしはただ、雑誌を1冊買おうとしただけで、そんなに感謝されるとおじけます。

 モノを買って、こんなに感謝されるのはコミケ以外でははじめてだ……。

 なにはともあれ、『ビッグイシュー』という雑誌。
 ずーっと前に、テレビのニュースで見て、存在だけは知っていた。
 ホームレスの自立支援を目的として発行されており、実際にホームレスの人が手ずから販売しているんだってことは。

 梅田を歩いていると、自然に目に入る。『ビッグイシュー』という雑誌を持って「発売中です!」と叫び続けているおじさんたち。

 でも、目に入るからといって、彼らから謎な雑誌を買おうとはあまり思えなかった。表紙も好みじゃなかったし。

 どんな雑誌なのか、見てみたい気はする。そのうち、表紙や特集が好みだったら、買ってみるかな。
 その程度の漠然とした思いだったんだ。

 うん、ほんと、わかってなかったんだよね、わたし。
 昔ニュースでちらりと見た程度だったわけだし。

 『ビッグイシュー』の販売員にはちゃんと行動規範が決められていて、ルールに則って販売しているわけだ。
 礼儀正しい言葉遣いにびっくりしたのは、わたしが無知なせい。彼らはちゃんと、ルール通りの態度を取っているだけ。

 そして、雑誌の定価の半分以上は、そのままその販売者の収入になるそうな。
 そりゃ、力一杯お礼も言うわな……彼はただの販売代理人ではなく、店主なわけだから。

 知らないことがいっぱいありました。
 無知ゆえに、逃げ出すよーに雑誌を受け取って去ってしまいましたのよ……ごめんね。
 礼儀には礼儀で返すべきなのにね。

 さて、内容ですが。

 定価200円の価値は、正直あまりないと思います。
 無料で配布されている企業の雑誌みたいな感じ。
 特集記事とかがおもしろくないわけじゃなく、なにしろ誌面が少なく雑誌が薄いので、とても表面だけな印象。もう少しちゃんと読みたいのにな、という入口部分で終わっている。
 ふつうの定価200円の雑誌なら、入口だけじゃなく、ちゃんと最後まで記事として突っ込んだ内容になっていそうなもんだが。
 話題ひとつに2ページしか割けないんだもん、仕方ないよなあ。

 それを覚悟の上で「興味の入口を広げてみる」という意味で読むなら、それなりにたのしめる。
 なんせ「日本版」なので、少しだけだけど本家ロンドン版の翻訳記事とかがあるんで、ふつーの日本の雑誌にはない記事を読めるわけだから。
 さわりしか書かれていない記事を読み、興味を持ったら自分でさらに考えてみればいいわけだ。調べてみればいいわけだ。
 たくさんある選択肢をさらに広げる、というたのしみ方はある雑誌だと思った。

 わたし個人としては、好みの表紙や見出しが目に付いたら、また買ってみてもいいかな、という感想。

 あと、雑誌の代金がそのままダイレクトに販売者の手に入るというなら、好みのおぢさんを見つけて彼から購入するというパターンもアリかもしれませんよ、世のみなさま。(をいをい・笑)

 ちなみに、わたしが買ったのは第5号、表紙はメグ・ライアンで彼女のインタビュー掲載、特集は「自分の顔とどうつきあっていますか?」でした。

 
 『嗤う伊右衛門』鑑賞。
 監督・蜷川幸雄、出演・唐沢寿明、小雪、椎名桔平、香川照之。

 原作は読んでない。
 てゆーか、京極作品を読まなくなって、ずいぶん経つなあ。読まない理由はべつにないよ。たんに縁がないだけ。
 京極がものすげーブームになったときがあったよね。あれは前世紀のことですか。あのころに読んだままだなあ。

 えーと、物語のベースは、『四谷怪談』。だから、見に行こうと思ったわけなんだが。オギーの『四谷怪談』にハマりまくったからなあ。

 暗い過去なんぞを背負って人生斜めな浪人・伊右衛門@唐沢寿明は、御行乞食・又市@香川照之の計らいで、民谷家の娘・岩@小雪と縁組みし、その家督を継ぐ。岩は病のせいで美しい顔に醜い傷を負っていたが、卑屈さなど微塵もない気丈な女だった。家督目当ての政略結婚ってことで、最初はぎこちないふたりだったが、どうやらいつの間にかラヴラヴになっていたらしい。しかし、そこへ伸びる魔の手。岩に執心していた筆頭与力・伊東喜兵衛@椎名桔平がふたりを引き裂こうと画策する……。

 まず、役者の好みの話をしておこう。
 映像作品を見る場合、好みの役者が出ている場合はそれだけで興味が湧くし、好意的にもなる。逆もしかり。
 わたしには苦手俳優が何人かいる。生理的にダメで、見ることもできない人だって、いる。これはもー、好みの問題だから、その俳優のすばらしさには関係がない。
 そこまで拒絶反応は出なくても、「あー、主役がこの俳優かぁ。んじゃ無理してまで見なくてもいいかな」ぐらいには萎える人がいる。「生理的嫌悪感はないから、見ることはできるけど、作品がつまんなかったら速攻視聴中止して悔いはないな」というよーな。

 唐沢寿明は、わたしにとっての「主役だと萎える俳優」のひとりだ。
 理由はわからない。昔からそうだった。92年ごろだっけ、彼がブレイクしてドラマに出まくってたのって。あのころからすでに、苦手だったんだよなあ。
 脇役なら別に気にならない。主役だとダメなんだわ……。
 いちばんダメだったのが、『ホームワーク』かな。ドラマの。あ、チガウ、『ラブコンプレックス』だ。主役が唐沢でなければっ、と歯がみしたなあ。

 とまあ、萎え俳優主演なので、この映画はわたしにとってかなり分が悪かった。アウェー戦みたいなもんだな。
 さて、不利な条件の下で、ちゃんと映画を愉しむことができるだろうか……。

 映画を見ていちばん引っかかったのは、「お岩と伊右衛門は、いつの間にそんなにラヴラヴになっていたのか」だった。

 純愛モノだってのは予告からすでにわかってるんで、「そーゆーもんだ」と思って見てはいるけど、あまりに「ふたりの物語」が描かれていなくてびっくりだ。

 主役であるはずの男と女が、どーやって歩み寄り、心をつないでいくかを、きちんと描写して欲しかった。
 ふたりの心の機微がわからないと、そのあと「引き裂かれる」意味がないじゃん。
 ふたりのラヴをこれでもかと書き込んであればあるほど、物語が効果的になるのに……何故だ? 何故肝心の部分は端折られてるんだ?
 突然「半年後」とかに話が飛ぶんだ?
 わたしが見たかったのは、その飛ばされてしまった「半年の間のふたり」なんだけど。いくら台詞で「あれから半年、結婚できてしあわせだわ」って言われても、「はあ?」としか思えない。

 ふたりが愛し合う過程は端折られて、そのままストーリーは怒濤のよーに進む。
 「愛し合っている」という設定を、仕方なく自分の脳内で補完してついていくしかない。けっこう大変。

 プロットはさあ、BL系メロドラマで好みなのよ。
 「愛のない関係」ってことでお互いかたくなだったのが、徐々に心を開き、愛し合い、だけどハンデがあると思い込んでいる受が「相手のために身を引き」、受に愛されていないと誤解した攻が自暴自棄になり……てな。
 オイシイ部分はやっぱり、受と攻の心の葛藤部分なのよ。
 「愛されていない」と思ってかたくなになっているふたりが、「なんだオレたち、両想いなんじゃん」と気づく第一段階までが、たのしいのよ。
 誤解してすれ違ったり、傷つけ合ったりさー。
 恋愛モノは、両想いになるまでがいちばんたのしいんだからさ。

 なのに、その過程はすっ飛ばし。
 そのあとの悲劇ばっかりがんばって描いちゃってさ。
 エロスもいいけど、ハートも大事にしてほしいわ……。

 というあたりは、好みからはずれておりました。
 後半の悲劇ぶっちぎりが悪いと言ってるわけじゃなくて、ソレをやるならどーして前半のラヴをちゃんと描かないんだ、と不満なわけですな。
 手抜きな気がして残念。
 ドラマとして派手な部分ばかりを描いて、面倒くさいところはすっ飛ばした印象だったから。

 時間がばこばこすっ飛んでいって、「半年後」「そのまた半年後」と、心がぶつ切りになっているのも、手抜きテイスト。
 いちいち盛り上がりに水を差されるんだが、あとはそれを観客がどれだけ脳内補完できるかですな。

 わたしは、BL系メロドラマプロットが好みだったので、補完しまくって見ました。
 ので、たのしく号泣しました。
 やはりお岩さんの「うらめしや」はいいですな。
 究極の愛の言葉。
 愛して愛して、壊れてしまうくらい愛したから、だからこそ彼女は繰り返す。「恨めしや」と。

 桔平の悪役は、とーっても気持ち悪かったっす。
 もう少し美しくしても罰は当たらないんじゃないか……? ひたすらキモいぞ。

 小雪にしろ桔平にしろ、時代劇には合わないな、と、最初の登場で思った。本人の資質ではなくて、サイズの問題。

 とくに桔平なんか、鴨居より背が高いんだもん……(笑)。

 あと、全編通してホモくさいのは、わざとなんでしょうか。ホンモノくさいというか。

 同じプロットで、他の話を書いてみたいと思う映画でした。
 かゆいところに手が届いてなくてさー。おしいなー。

 これって、苦手俳優が主役だったせい?
 わたしが悪いのかもな。

 
 2週連続、デンマーク映画。
 2週連続眼鏡っこ萌え。
 『幸せになるためのイタリア語講座』
 監督・脚本ロネ・シェルフィグ、出演アンダース・W・ベアテルセン、アネッテ・ストゥーベルベック、ピーター・ガンツェラー。

 とある街で生活する、6人の男女。
 妻を失ったばかりの新米牧師アンドレアス@アンダース・W・ベアテルセン、恋愛下手かつカラダの悩み(笑)を抱える心優しきホテルマン・ヨーゲン@ピーター・ガンツェラー、ヨーゲンの親友で気の荒い元サッカー選手ハル・フィン@ラース・コールンド、救いがたい不器用女オリンピア@アネッテ・ストゥーベルベック、アル中の母を抱えているカーレン@アン・エレオノーラ・ヨーゲンセン、デンマーク語わかりません、のイタリア美人娘ジュリア@サラ・インドリオ・イェンセン。
 あー、みんな名前長いなあ。
 それぞれなにかしら事情を抱え、悲しみだの失望だのを背負いながらも、週に1回のイタリア語講座へ通い、それによってほんの少し、平凡な日々を変えていくのだった……。

 よくある、大人のハートウォーミング・ラヴストーリー。
 中年男女も人生これから、明日新しい恋ができるかも? てな話。

 登場人物の年齢層高いぞ……みんないい年だぞ……。

 複数主人公、複数カップルのラヴストーリーだから、『ラブ・アクチュアリー』みたいなやつかなと期待して見に行ったんだが。

 そーでもなかったなー。

 印象としては、クリスマスなんかにある2時間スペシャルのドラマって感じ。
 コレ、邦画だったらまちがいなく「テレビでいいじゃん、わざわざ映画にしなくても」と思ってたわ……。

 かわいらしく他愛なく、あったかいラヴストーリーなんだけど、それ以上のものはなにもなかった。
 プロットが巧みなわけでもなし、派手に盛り上がるわけでなし、とびきりオシャレなわけでなし。
 ずいぶん素朴に、ふつーに恋愛。
 カップルが複数なぶん、薄くなってるし。

 まあ、このいかにもふつーな、地味な感じがいいのかな?
 わたしにはかなり物足りなかった。
 わくわく感も、ときめきも、せつなさも。

 ツッコミどころは満載(笑)。
 とりあえず、ハル・フィンとカーレンのカップル。気持ちが通じたらいつでもどこでもヤるのはよせ(笑)。
 てか、あんな美容室やだよー。
 客の髪を洗うだけで欲情されちゃうのもやだよー。
 デンマークの美容室に疑問を持ってしまうわ(笑)。

 ヨーゲンのプロポーズの言葉は感動的だった。
 月並みだけど、あーゆーことを言ってくれる男はいいねえ。ほろり。

 個人的に、この映画でいちばんたのしかったのは、牧師のアンドレアス@アンダース・W・ベアテルセンの、眼鏡だ(笑)。

 デンマークでは、眼鏡っこ萌えがあるんですかい? 日本と同じように?

 2本見たデンマーク映画の主人公ふたりがふたりとも、眼鏡男だってのは、そーゆーことなんですか?(笑)

 『しあわせな孤独』のマッツ・ミケルセンは医者で眼鏡のおいしい中年男でした。
 そしてこの『イタリア語講座』のアンダース・W・ベアテルセンは、牧師で眼鏡のおいしい中年男。
 医者に牧師。
 コスチューム萌えのうえに、眼鏡萌え。
 なんてはずさないの、デンマーク映画、おそるべし。

 不器用でやさしい眼鏡牧師は、目にたのしい存在でした。
 ストーリーには関係ないけど、レストランに入ったとき、眼鏡がくもっちゃったのがいい。画面のすみっこで、はずして拭いてるの。かわいい(笑)。

 それにしても、『しあわせな孤独』に引き続きこの『幸せになるためのイタリア語講座』、邦題のセンスの良さに脱帽。
 タイトル勝ちだわ。

 
 先日、弟に頼まれ、WOWOW放送の『呪怨』をビデオ録画した。
 姉弟そろってホラー好きなもんでな。

 わたしの『呪怨』という映画への評価はとても低いので(笑)、早く弟にも感想を聞きたかったんだが。

「ねーちゃん、あのビデオ、見れないんだけど」

 今日になって弟がそんなことを言う。

 見れない? なんで? わたしいちおー、確認したよ? 冒頭部分と、後半部分をちらりと再生して、「よし、録画できてる」と確認してから渡したよ?

「でも、見てたら10分くらいで画面が揺れだして、ブルーアウトする」

 10分? それじゃあ、まだなんにもはじまってないってことか。

「いや、トシオくんが出てきたところ」

 ……そこで画面が揺れて、消えるの? それ、こわいじゃない。

「うん、こわい」

 弟のビデオデッキで試してその症状で、親のビデオデッキで試しても同じ症状だったらしい。
 ちなみに、テープは新品、ヴァージンテープ。
 古いテープを使ったなら、画像が悪くてもわかるけど……さらなのに……。標準録画なのに……。

 それじゃ、念のためにわたしのビデオデッキでも試してみるか……。

 ということで、姉弟そろってわたしの部屋。
 生憎わたしのDVDレコーダは24時間フル稼働中(笑)なので使えない。『呪怨』を録画したビデオデッキもDVDレコーダにつないであるので使用不可。
 てことで、もう1台の独立したビデオデッキ(何台持ってるんだ・笑)にテープを挿入。再生開始。

 布団に横になった老婆に、女の影がおおいかぶさっていく……。

 あー、たしかに映り悪いねー。白い線が入る……。
 で、どこが映らないって?

「いや、映らないのはここだ。このシーン、ぼくは見てない」

 そうなの?
 映り悪いけど、とりあえず見られるよ。
 そのあとはふつうに映ってるみたいだし。

 でもま、とりあえず問題のシーンはふたりで鑑賞。

 虚空に向かってぶつぶつつぶやく老婆、それを寝かしつける奥菜恵、白いノイズ、布団に横たわる老婆、白いノイズと揺れる画面、老婆におおいかぶさる、あるはずのない女の影……ノイズノイズノイズ揺れる画面。
 恐怖に引きつる奥菜のアップ、ノイズ、一瞬消える画面、ノイズ、倒れる奥菜、ノイズノイズ、俊雄くん、ノイズノイズ……だんだん収まる画面……。

 こわいっす……(笑)。

 映画館で見たときより、みょーな効果のある分(笑)。

「まあ、とりあえず最後まで見てみるよ」

 と、弟。残りは自分の部屋で見るそうな。
 うん、がんばって見てくれ。
 ホラーシーンで画面が揺れるビデオテープ。
 いやあ、すばらしい。

 
 この日記、アクセス元とやらがわかるよーになって、ずいぶん経つ。

 いつもカウンターだけ回ってて、誰が回しているんだろう? と不思議だったが、そうか、世のみなさんはこんなふうに検索をかけていろんなサイトを回っているのね、と感心。
 自分がゲームの攻略サイトを探す以外で、検索かけたりしないだけに、わかってなかったのよ。

 エロワードで検索してくる男たちの飽くなき野望に苦笑しつつ、また、世の腐女子のみなさんの検索っぷりにも感嘆。……わたしの日記にたどりついても時間の無駄で、がっかりしただろうなあ。すまん。

 検索ワードに、世の人気を推測する。

 オサアサはやっぱり、人気なんだねえ。
 ケロはやっぱり、人気ないんだねえ。
 カシゲはさらにもっと、人気ないんだねええ。

 ついでにいうと、「妄想小説」とか「妄想」とか「同人」「受」「小説」だとかゆー言葉と一緒に検索される回数も、オサアサはぶっちりで多いねええ。人気だねええ。

 いや。
 検索ワードの話なんか、それまで書く気なかったんだが。
 今日、とても感動したワードで検索してきた方がいて。
 今までだってそりゃーもー、愉快な検索はありましたことよ。しかし、わたし的にいちばんツボにハマったのが。

 古田新太 総受

 すごい! つわものだわっっ。
 お友だちになりたいわっっ(笑)。

 そっかー、古田新太総受かー。すっげー新鮮な響き。
 いいなあ。うっとり(笑)。

 まあいちばんの問題は、そんな検索ワードで、わたしの日記がヒットしてしまう現実ですな……。

 
 2月29日、うるう年のおまけの日。
 1日多くてラッキーな日。

 体調不良で1日寝ていた日。

 飲まず食わずで終わった日。
 あー、いっそ痩せていますように。
 わたしは並びが好き。
 友だちに会えるから。

 てことで、またしてもいつもの梅田、いつもの発売日。本日は雪組。
 そして不思議なことに、いつもあれほど運のないわたしが、雪組だけはくじ運がいい。何故だ……いちばんどーでもいい組が……ゲフンゲフン。

 いつものよーにいつものメンバーでいつもの場所で朝ごはんして、いつもの店でランチして。そーして1日終わりました。
 いっぱい喋ってたのしかったー。

 ところで初舞台生なんですが。
 情報出るの、遅すぎやしません?
 昨年はたしか、発売日にはもう、本名と芸名はネット上に出てたよねえ?
 だからわたし、純矢ちとせちゃんの口上の日のチケットをわざわざ買ったおぼえがあるんですが。
 発売日の前日によーやく芸名と口上スケジュールが発表……って、遅すぎるよ。
 文化祭でカオが好みだった彼とか、美貌の彼とか、芸名わかんないから、口上の日のチケットが買えないじゃん!
 つくづく劇団って、商売下手だよな……。

 それはソレとして、倦怠感がものすごく、せっかく友だちといてもみょーにつらかったんですが……そうか、花粉症の薬のせいかな? 副作用キツイからな……?

 

笑う女の謎。

2004年2月27日 家族
 母が言う。

「インターネットをしていたら、突然別の窓が開くの」

 どっか触ったんでしょう?
 リンクの貼ってあるところをクリックしたら、そうなるのよ。おどろかなくても大丈夫。

「アタシが触っているのは画像だけよ? よく行くホームページの、この画像をもっとちゃんと見たいな思っていじっていると、突然知らない窓が開くの」

 ふーん。
 そんなこともあるでしょうよ、と、わたしと弟はデザートを食べるのに忙しい。
 べつのホームページに飛ぶだけよ、特に問題ないわ。

「そしたらその窓にはね、『緑野龍子さん』って出るの」

 は?
 緑野龍子ってのは、母の名前だ。
 なんで母の名前が、たまたま訪問したサイトに出るの?

「そして、『初期化しています』って出るの」

 初期化?

「それから、『ダウンロードしています』って出るの」

 なんかソレ、やばくない?

「それから、知らない女の人がいるの」

 はああ?!

「その窓が開いて、ダウンロードとか初期化とか、勝手にはじめて、アタシの名前を呼んで、そしていつも、女の人が上の方に出てきて笑うの。どこのホームページに行ってもそうなの!」

 ちょっと待ってママ……。
 それって、ホラー

「わからないの、こわいの!!」

 と言う母の話をよく聞くと。

「ねえソレ……Photoshopのことぢゃあ……?」
 と、弟。

 Photoshop!!
 た、たしかに、立ち上がるときにユーザーの名前が出るわ。登録してあるから。
 初期化もダウンロードも出るわ、メッセージが。

 そして、たしかに女の人が笑っているわ

「ねえ、あれってなんなの? なにが起こっているの?!」

 えーと。
 画像データを開くと、自動的にPhotoshop Elementsが立ち上がっちゃうんです。そーゆー関連づけしてあるから。
 べつになんの問題もありません。

 てか。

 知らない女の人が笑ってる……か……。
 こーゆー表現の仕方をすると、Photoshopもホラーになりえるのね……。

 
 そう、それは、ある昼下がりのことだ。
 わたしは出かけるために、自転車にまたがった。

 お天気上々、予定もいろいろ、さあ急いででかけましょう。

 そのとき。
 気づいたのだ。

 肩の上に、猫が乗っていることに。

 ママに爆笑されました……「猫を肩に乗せて、自転車を漕いでいる女がいる」と。

 わたしにとって、猫が肩に乗っていることは日常なのよ。
 だから、そんなことすーーっかり、忘れきっていたわ……。
 いちいち意識してなかったわ……。

 家の近所で気がついてよかった。
 もしそのまま、シャレにならない距離、気づかないまま自転車を漕いでいたら……。

 猫を家に置きに行くために、一度帰宅するハメになっていた。
 ああ、ぶるぶる。時間と労力の無駄。つーかそれじゃ、約束に間に合わなかったわ。

 爆笑する母に猫をあずけ、さあ、気を取り直して出発よ!!

 みなさんも、ペットを肩に乗せたままの外出には、お気をつけ下さい。

 
 もし、
 あなたが孤独を感じているなら、
 すでに
 しあわせも知っているはず。


 とゆーコピーにつられて、はるばるミニシアターまで行って来ました、『しあわせな孤独』
 監督・原案スザンネ・ピエール、出演ソニア・リクター、マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・カース。えーと、デンマーク映画っす。

 結婚間近のしあわせカップル、セシリ@ソニア・リクターとヨアヒム@ニコライ・リー・カース。ところがある日突然、ヨアヒムが交通事故で全身不随になってしまった。絶望したヨアヒムは心を閉ざし、セシリをも拒絶する。
 どん底のセシリは、事故の加害者の夫、ニルス@マッツ・ミケルセンに心のよりどころを求める……。

 某映画祭に行ったときに、5回連続で予告編を見せられ、刷り込みされてしまった作品(笑)。
 誰が悪いわけでもない、日常に起こりえる悲劇と、リアルゆえにせつない愛の物語。

 とりあえず、眼鏡男萌えで見に行きました。
 ニルス@マッツ・ミケルセンの眼鏡っこぶりがヨシ。洋画の主人公格で眼鏡かけた男って、ほとんどいないんだもの。外国には眼鏡萌えがないのかしらね。

 なにしろ数ヶ月も前に、連続5回予告を見せられたもので、わたしのなかでイメージが先にできあがってしまってました。
 この予告編がまた、よくできてるんだわ。わたしの好きな痛い系のにおいがぷんぷんして。

 あんなに愛してあっていたのに、突然恋人が、全身不随になってしまった。一生寝たきり。しかも彼は、ヒロイン・セシリに「病室を出て行け。二度と来るな」と言う。
 苦しくて、寂しくて仕方ないセシリは、「できることがあれば、なんでも言ってくれ」と言ってくれた、加害者の夫ニルスに連絡する。
 夜中の電話。「今すぐ来て。そしてわたしを抱きしめて」
 ニルスは同衾している妻に「セシリのところへ行く」と言う。妻も、「気の毒なセシリを支えてあげて」と言う。奥さんにしてみれば、ただなぐさめてあげて、ぐらいの気持ちなんだけど。
 セシリとニルスは、一線を越えてしまう。
 被害者の恋人と、加害者の夫。
 そして、その事実を知り取り乱す妻。

 ……という設定を説明しきってくれた予告を見て、わたしはより痛い方へ想像していたわけだ。

 つまり、ニルスは妻と家庭を愛している。
 だけど罪を償うために仕方なくセシリを抱く。罪悪感と、葛藤と。もちろん、セシリを魅力的だと思うし、同情もしているけれど、あくまでも、妻への愛が強い。
 妻は、夫の不倫を知り、夫を責めると同時に自分をも責める。わたしが罪を犯したから……!と。
 セシリは今でもヨアヒムを愛している。だけど、どうしたらいいのかわからない。ひとりでは立っていられなくて、ニルスとの愛欲におぼれる。ニルスが自分を愛していないことを知りながら。

 てな話をな。

 真ん中にあるのは、「罪」。
 過失による、取り返しのつかないもの。

 罪を中心に、贖罪と苦しみと悲しみが、身動き取れず絡まっている感じ。

 そーゆーものを、勝手に期待していたからさー。

 ちょっと、拍子抜け。

 もちろん、痛くてせつない愛の物語だったけどさ。
 微妙にツボをはずしてたんだよねえ。
 てか、「罪」が存在しなかった。
 すごいよなあ、たしかに仕方のない事故であったにしろ、警察も裁判所も太鼓判押すくらい、妻に責任がなかったにしろ、妻の運転していた車が若いヨアヒムの人生を奪ったのに、誰もそのことを責めないの。
 てっきりわたし、ヨアヒムにしろセシリにしろ、妻を責めると思ったのね。恨むと思ったの。
 そりゃ飛び出したヨアヒムが悪いけど、轢いたのはそっちじゃん。そっちが気をつけていれば、こんなことにはならなかったのでは? って、逆恨みしちゃうと思うのよ、わたしなんかは心が弱いから。
 警察がなんと言おうが、あんたのせいでヨアヒムはなにもかも失ったのよ! って、泣いて責めると思う。
 なのにソレ、誰も言わないし。
 ヨアヒムを轢いたその夜に、妻たちはパーティやってるし。
 このへん、国民性のちがい? 日本人って、ウエットだから? たとえ自分が悪くなくても、自分のせいで誰かひどい目に遭っていたら、とてもパーティなんかできないよねえ。予定されていても、中止にするよねえ。
 だからセシリがニルスを呼び出してセックスしちゃうのも、べつに彼が加害者の夫だから、てわけじゃないのよね。そのときやさしくしてくれる男なら、誰でもよかった感じ。
 ニルスも、妻の罪を償っている、というより、若い女の子にすがりつかれてよろめいたよーに見えるし、夫の浮気を責める妻も、自分の罪なんかきれーに忘れてるっぽい。

 映画の中の男女はたしかに、突然の不幸に翻弄され、よるべない愛の名の下に悩み苦しみ、人生を泳いでいるんだけど。泣きながら見たけれど。
 ニルスの白衣(医者なのだ!)と眼鏡は美しかったけど!!

 わたしには、かなり消化不良。
 もっともっと、痛いものを見せてくれ〜〜!!
 これじゃもの足りーん!!

 それにしても、この邦題とコピー、すばらしいわ。
 全編通してかなしくてせつない愛の物語に、「しあわせ」という言葉を使いますか。
 邦題つけた人のセンスに脱帽。

 予告の方が、おもしろかったっす……。

 

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