引き続き、宝塚音楽学校文化祭の話です。

 文化祭には、スターがいない。
 あたりまえだけど、それが新鮮なんだ。
 たしかにやっていることはタカラヅカで、出ている子たちも立派にタカラジェンヌしているんだけど、そこにはトップスターがいない。
 全員ほぼ同じ扱いで(配役云々の差はあるにしろ)、全員同じ土俵の上にいる。

 トップスター中心の構成をしていない、タカラヅカ。

 ひどく「生」な印象を受ける。

 団体で出てきてうわーーーーっと踊って、うわーーーーっと去っていく。その繰り返し。

 もちろん、見て楽しめるように緩急付けた構成にはなっているよ。ソロもあればカルテットもある。
 衣装も変化し、目にもたのしいさ。

 でもやっぱり、印象は、

 団体で出てきてうわーーーーっと踊って、うわーーーーっと去っていく。その繰り返し。

 たったひとりのトップスターを、持ち上げる必要がないんだもん。
 「主役」がいないんだもん。
 みんなみんな、力技。みんなみんな、一生懸命。
 ひとりずつではできないことを、欠けた部分を、持ち合えない部分を、とにかく人数でカバーする。若さと体力と情熱でカバーする。

 だから、「わーーーーっ、わーーーーっ」な印象。
 小学校のグラウンドで、クラス全員でやった鬼ごっこみたいな。
 みんな走って、みんな声あげて、みんな元気で、みんな大好き。
 走り回ったら疲れるとか、そもそもこんなことやってなんになるんだとか、現実的なことは考えない。
 ただ、今が大切。今が好き。だから両手を挙げて声をあげて走り回る。わーーっ、わーーっ。

 ……大人になっちゃうと、もうできないんだよね、そんなこと。

 音楽学校を卒業して、プロの舞台人として大劇場の舞台に立てば、こんな「わーーっ、わーーっ」は存在しなくなる。
 そこはトップスターを中心とした、シンプルで残酷なピラミッド社会。
 同じことをやっていても、意味がチガウ。

 タカラヅカでありながらタカラヅカのルールがまだ適応されていない、文化祭という不思議空間。
 力一杯、いっぱいいっぱいの若者たちが、愛おしい。

 ある意味、ふつーの大劇場公演を観るよりおなかいっぱい感があるのは、プログラムがみっしり充実しているからだよねえ。
 ダンスとかでもさ、大劇ではここまで「ダンスだけ」見せてくれないもんね。派手なセットもなければ衣装もない、トップコンビがくるくる回っているだけでもない、ただシンプルにダンス。
 しかも、大勢。
 団体芸。

 第3部も終わりの方になると、わたしはひたすら手拍子したくてたまらなかったんですが。
 たのしいから。
 出演者たちはいっぱいいっぱいで、彼らの余裕のなさに引きずられちゃうとたのしむどころじゃないんだけど、それもラストが近づくにつれ薄くなっていくというか。
 そう、出演者たちもプログラムが終わりに近づくと、

「ええい、いてもうたれーーっっ!!」

 て感じになってきてるよねえ(笑)。
 演技にも気持ちにも加速がついて、テンションあがりきって手がつけられなくなるっていうか。
 プログラムがまた、盛り上がっていくしさ。

 ラストナンバーは心からたのしめました。
 手拍子もできたし。
 たのしかったよ、ありがとう。
 心から、思う。

 名前はわかんないけど、踊っていて素敵な子がいっぱいいた。
 どうかどうか、がんばってくれ。
 こーやって、客席で心からたのしんだヤツがいるんだからさ。
 あなたたちは、ひとをたのしませることができる人なんだからさ。

 とっても気持ちよく拍手し、気持ちよく帰路につくことができた。
 ありがとうな気持ち。
 それが、気持ちいいの(笑)。

 
 22日に、宝塚音楽学校文化祭へ行って来ました。

 昨年はじめて観て、あまりにたのしかったもんだから、味をしめてしまって。
 とはいえ、まさか今年も観られるとは思ってなかったので、下準備一切ナシ。すみれ売りにも行ってなかったし、ネットの噂話すらチェックしてなかった。
 だからもー、誰が誰やら(笑)。

 わたしが観に行ったのは、22日の昼間の回です。
 つか氏の娘さんが挨拶をする回。

 お目当てもなにもなく、ただ、「夢に向かってがんばっている若者たち」を眺められればヨシな気持ちでした。彼らの元気を分けてもらいたくて。

 ぼーっと観ていただけなんですが……第一部の「セ・マニフィーク」を歌ったふたりが、ものごっつーツボだったんですが、どうしましょう(笑)。
 吹き出しそうになって、必死に自重した。
 だってさ……「セ・マニフィーク」はいかにもヅカ!って感じのノリノリ曲じゃないですか。腰振ってウインクしながら歌うよーな。
 この文化祭でこの曲を歌った男役ふたりも、ソレ系でした。
 振り付けもばっちり、派手にキザりながら歌い踊るわけです。
 ひとりは「ボクはアイドル!!」ってなあざやかな笑顔。
 もうひとりは、能面のよーな顔に、ぎこちない笑みを浮かべ、「必死です!」。
 ……ツボにはまりました。このコントラストが。
 タカラヅカスターとしての役割を心得ている高音パートのかわいこちゃんと、顔面をひきつらせているよーにしか見えない低音パートの無表情男。
 芸能界モノの少女マンガに出てきそうなアイドル・ユニットですな。
 いいよ君たち、その芸風、いいよ!!(笑)

 その他のシーンでも、わたしの席からはマニフィーク・コンビの高音パートのかわいこちゃんばかりがよく見えたので、幕が下りるころにはすっかり彼のファンになってました。てか、いつもいい場所で踊ってるよねえ。

 顔だけでいうなら、「この恋は雲の果てまで」を歌った子が好みです。
 幕が開いて最初に目がいったのは、この子と、あともうひとりの美貌の男役。
 この子は特に美貌だとは思わないけど……顔が好みなのよー。
 文化祭は日舞や歌やダンスはそのままだけど、芝居だけはダブルキャストなんだよね。わたしの観た回は、この好みの男は芝居には出ていませんでした。他の回を観ることができたら、この子が主役のお芝居を観られたのにー。残念。

 もうひとり、幕開きから釘付けになってしまった、美貌の男役。……歌は苦手なんでしょうか、ソロはありませんでした。ダンスも苦手なんでしょうか、いつも後ろの方にしかいません(笑)。
 でも、ものすげー美貌だ。
 プログラムの写真でも群を抜いてきれいだが……舞台でもきれーだった。
 他はどうだかしらないけど、芝居はうまかったぞ。お笑い担当だったけど、相方さんとふたりして、とてもふつーにお芝居していた。笑いを取っていた。
 あの美貌でこれくらいお芝居できれば、いいんじゃないかと。

 芝居は荻田浩一作のコスチュームプレイ。長く続いたフランスとスペインの戦争を終わらせるため、両国の王子と王女が結婚することになった。だけどフランス王女はその結婚を嫌って逃げ出してしまう。彼女はジプシーの男に助けられるが……。ええ、お約束ですよ。彼女を助けたジプシー男が、実は結婚相手のスペイン王子だったという。

 昨年の正塚晴彦作の芝居(NHKの朝ドラ『てるてる家族』の文化祭で演じられていたよね?)でもそうだったけど、文化祭のお芝居っていうのは、「すべての登場人物にまんべんなく見せ場を」というコンセプトで作ってあるのね。
 だからいちおー「主役」は存在するけど、その他の人たちもそれに準ずるぐらいの見せ場がある。ほんとに、「お勉強成果の発表の場」なんだわ。
 昨年はソレを知らずに見ていたから、「男」という役名しか持たない純矢ちとせちゃんのことを「脇役? しかしそれにしては出番も台詞も多いし、重要な役だったような???」と混乱したわ。

 同じ轍を踏む気はないので、プログラムを開いた段階で、「主役はわかるとして、はて、あとの役はどれがどんなふうにオイシイのかしら」とたのしみに眺めましたのことよ。役名、下に行くほど端役、ってわけじゃないからねえ。

 だもんで、上記の「美貌の男役」が、みょーにオイシイ役をやっていた(笑)。主役ではぜんぜんないのに。
 彼と、彼の相方の枢機卿役の子はよかったなあ。男役として美しいし、ふつーに演技できていたし。

 主役の美男ジプシー@実はスペイン王子役の子は……あー……ビジュアルがきつい……。正直、このビジュアルで超モテモテ男なのは疑問だった。でも、演技はうまかったよね。ダンスもよかったし、ビジュアルではなく実力の人なんだろうな。

 ジプシー男の片割れ、女とくっつかない方の役の子が、わりとうまかった。幕が開くとこの子がひとり立っていて、「え、この男が主役の王子様?」と思ったくらいだ(笑)。男役としてのスタイルがいいよね。

 フランス使節役の男役と女役、このふたりもまたうまかった。年配役だから難しかったろうに、とても自然。

 しかし、あとの男役はもー……。

 そーなんだよなあ、歌が下手な子はソロを与えなければいいし、ダンスも後ろで踊らせておけばいいんだろう。
 しかし芝居は、わざわざダブルキャストにして全員に「役」を与え、その役にはご丁寧にも「見せ場」がある。
 だから、いちばんうまい下手の差が歴然としていたのが、芝居なんだよなあ。

 娘役はともかくとして、男役は、数名の子を除いて「まさに学芸会」レベルだった……。

 男役ってのはほんと、むずかしいんだなあ。
 まずみんな「声」がぜんぜんできてないから、なに言ってんだかわからないし、甲高い女の子の声で男言葉喋って……女子校の演劇部みたいだ……。
 衣装の着こなしも大変なんだろう。もたっとしか着られない。コスチュームプレイなだけに、重い重い。せっかくきれいなお衣装なのになー。

 娘役はいろいろとうまい子がいて、見ていてたのしかった。
 ヒロインの王女様、なんて安定感のあるうまさなの。美人じゃないけど、雰囲気あっていいよね。この子が、つか氏の娘さんかー。
 顔に特徴があるので、いったんおぼえてしまうとどこにいてもわかる。てか、優秀な人らしいので、いつもセンターで踊ってるもんなあ。
 1部のモダン・ダンスからずっと、しゃきしゃき踊って動いて、気持ちのいい子だ。踊ってるとかっこいーよー。

 ジプシーの女頭目もかっこよかったし、もうひとりの惚れっぽいジプシー娘もかわいかった。ブラコン王女さまやった子のはじけっぷりも好き。
 ああ、娘役もいろいろオイシイ芝居よねえ……てゆーかオギー、よくもこれだけ詰め込んだな、この短編芝居に。

 ひとりずつのチェックができたのはこの第2部まで。
 第3部はダンスなので、もー、誰が誰やら。「セ・マニフィーク」のかわいこちゃんとつか氏の娘さん、「この恋は」の好みの顔の男役、美貌の男役、ぐらいだよ、わたしが区別ついたのって。
 団体で同じ衣装で踊りまくってくれるから……。
 ダンスに見とれていると、顔なんか見てないもんなあ(笑)。

 あっ、もう文字数がない。次の欄に続く。

 
 本日(2/21)星組を観てきたモリナカ姉と話した。
 ショーについての感想はほぼ同じ。

 だが問題は、芝居だ。

 わたしと彼女は正反対の感性を持つ。

 昨日わたしが、「この芝居、好きなんですよー。主役カップルがとにかくかわいくて……」とか、この日記で吠えているーなことをきゃあきゃあ語ったら(2日連続で長電話・笑)、モリナカ姉さんはクールに、

「じゃあきっと、わたし的にはつまらない話なんでしょうね」

 と、一刀両断にしてくれました……(笑)。
 そして今日の電話では、

「いかにも緑野さんが好きそうな話だと思いました」

 と、言われちゃったよー。ふふふ。
 姉さんには、わたしのツボがわかるのよねー。そしてわたしがよろこんでいることって大抵、彼女的には「つまんねー」ところなんだよねー。なんせ感性逆だから。わたしが嫌いなモノは、彼女は大抵絶賛しているし。
 ああ、モリナカ姉さん、そんななまあたたかい目で見ないで……(電話で話しています)。

「で、妹と、タニちゃんとまとぶんの役はアレなのかと話していたんですけど……緑野さん的にはどうなんですか?」
 姉さんはクールです。声に感情はほとんどありません。

 ええ、ソレですよソレ!
 タニちゃんとまとぶん! あれっていいホモですよねー!
 わたしひとり、きゃあきゃあ感情過多に喋っています。

「……なんだ、あれでいいんですか」
 だから、姉さんはクールです。声に感情はほとんどありません。

「緑野さんのことだから、もっと、ふつうの人が思いもつかないような、とんでもない人たちをカップルにしてよろこんでいるのかと思ってたんですけど。あんなわかりやすい人たちでいいんですか」
 だから、姉さんはクールです。声に感情はほとんどありません。

 ……姉さん!!
 あなた、わたしを誤解してます!!

 わたしはべつに、キワモノ好きだとか、ホモねつ造マシーンつーわけでは、ありません!

 たぶん。

 …………きっと。

 
 星組公演の話、『1914/愛』その3。

 わたしがヒロイン・アデルを好きなのは、真実がわかったあと、恋に飛び込んでいくことをためらう理由。

 はじめはただ、「身分違い」だからだめだと言っていた。
 伯爵様と自分ではつりあわない、と。

 でも、ほんとうはそうじゃない。
 あたしは、自分がちっぽけで恥ずかしいの。
 と、彼女は言う。

 がんばってるよ、一生懸命生きてるよ。でもわたし、それでいったいなんになってる?
 自分が恥ずかしい。
 好きになった人を、素晴らしい人だと思う分。
 彼に比べて、自分が恥ずかしい。

 ただ「身分違い」だから、といつまでもうじうじ愛を拒む女ならうっとーしい。そんなもんが壁になるなら、所詮その程度の思い。

 だけど、彼女が壁として考えるのが「自分自身」なら、話は別だ。

 人を愛してはじめて、自分自身を見たんだね。
 それまでは、生きることだけに無我夢中だったから。
 恋をして、相手からも愛されて。
 それではじめて、顧みたんだ。

 あたしって、彼に愛してもらえるような素晴らしい女?

 答えはNO。
 はじめて顧みた自分はそりゃー、欠点だらけさ。しかも謎の伯爵夫人とかゆー、めちゃくちゃイタい名前(笑)で二重生活だし。詐欺行為だし。

 「自分」という現実に打ちのめされて。

 時代もまた、「戦争」という現実を容赦なく歩み出す。

 暗い時代にひとりで灯火をかざす愛する男の元へ、勇気を出して訊ねていく。
 乗り越えろ、現実を。だからこそ人生は素晴らしい。

 暗い時代を、物語を、力業でひっくり返す。
 似たものカップル、バカップル。
 アリスティドとアデル。
 きっとモンマルトルの、名物夫婦になるだろう。

 主役ふたりがかわいくて大好きなので、それだけでこの物語は好きよ。
 つーか、主役を好きでなかったら、きっと観ていてつまらない。それくらい、ふたりしか重要じゃないんだもん(笑)。

 あと、ツボにはまって愉快だったことあれこれ。

 フルーレ伯爵@立さんの肖像。
 伯爵のお屋敷には肖像画が4枚ほど飾ってあるんだが、これがまたご丁寧に、みんな立さんの似顔絵なのよ。コスプレ立さんがいっぱい(笑)。

 アリスティドの許嫁@センドーさん。怪電波、超音波。すげえや。

 アリスティドの店の男の子@レオンくん。カンカンのピルエット、すごい。回る回る。かっこいー。ええもん観たー。

 ラストシーンの、フルーレ伯爵の赤ちゃん。
 パパ……ほんまに跡継ぎ、自分でがんばっちゃったんだ……。ここにも、自分の力で夢を叶えた男がひとり。

 とまあ、こんな感じで。

 さて。
 あとは恒例の、腐女子語りでいいかしら。

 ホモ率高しの、谷作品。
 めずらしく主役がホモじゃなかった(つか、めずらしく主役は恋愛していた)ので、ホモ度が低くなってました。
 でも、さすが谷だ、脇役がすみっこでちゃんとホモしてました(笑)。

 モディリアーニ@タニちゃん × ユトリロ@まとぶん。

 びびびびっくりだ!
 なんだこの組み合わせはっ。

 てか、タニが攻か!

 モディリアーニ@タニちゃんは、男っぽい大人の男でした。
 持ち味が「かわいい男の子」であるタニちゃんが、「大人の男」だよ。はー、びっくりだ。
 顔はかわいいままなんだけど、「強い男」をそれなりに演じていました。

 さて、同棲中のモディくん(モディリアーニ)とモーリスくん(モーリス・ユトリロ・笑)ですが、このふたり、デキているのでしょうか、それともモディくんの片想いでしょうか。

 片想いじゃないかなあ、と、わたしは踏んでいるのだが……。

 ユトリロはアル中で破滅型人生まっしぐらなので、たぶん、モディリアーニに対しても、「ヤりたきゃヤれよ」な態度だと思うんですが。
 モディリアーニが、あえて耐えていたよーな気がする……。

 据え膳を、あえていただかずに、プラトニックに甘んじているというか。
 だからこそ、想いは深く、言動はねちこくなるというか(笑)、意識のないユトリロを愛しそうに撫でるモディリアーニには、が輝いております。

 酒におぼれて身体ぼろぼろのユトリロを、守るよーに抱くモディリアーニ。たとえいったん健康になったとしても、ユトリロはまた酒におぼれて身体をこわすだろう。それがわかっていても、彼を介抱したいというモディリアーニ。
 ユトリロの壊れた生き方ごと、彼を愛しているんだね。

 でも、夭逝するのはモディリアーニなんだよね……。なんだかんだいってもユトリロは長く生きてるし。年下攻だし(笑)。

 ちらりとしか出てこないけど、モディリアーニはいい役だなあ……。

 あ。
 ケロを語るのを忘れてますな。

 彼は実在の画商ポール・ギョーム役。
 いい人でした。……以上。ええ、それだけの役でした。

 できることなら、あの貧しい画家たちの愛憎の輪の中へ入っていってほしいもんです……。
 モディリアーニあたり、口説いてくれませんか。史実ではモディくんにアトリエ世話してやったりなんだりしてるじゃないですか。
 ユトリロへの片恋に苦しむモディくんをヤっちゃってくれてかまいません、大人の男の魅力で(笑)。

          ☆

 そーいやカシゲのやっていたアポリネールを見て、何故か葛山信吾で見たいなー、とか思ってしまった……。
 何故、どっから葛山信吾……??
 しいていうなら、……?

 カシゲといえば。

 幕間にチェリさんと話していたんだが。

「客席で会いたいジェンヌは誰?」
 という質問に、

 「オサちゃん」と答えたら、

「オサちゃんは舞台の方がきれいですよ」

 と、返された。
 いやあの、わたし、オサちゃんの素顔も好きなの。

「ええっ?」

 そんな、おどろかなくても(笑)。
 わたし、男の顔としたら、あの顔がむちゃくちゃ好きなのよー。
 女の顔としてじゃなく芸能人の顔としてもじゃなく、市井の、リアル男性の顔として、あのテの顔がいちばん好き。
 顔立ちが薄くて、細長くて、目が切れ長で笑うと線になっちゃう顔。

「だからカシゲが好きなんですか?」

 って、チェリさん、なにを真剣に。
 カシゲちゃんは世間一般的に見ても、美形じゃないですか。
 リアル男性の顔として、あんな美形はノーサンキューです(笑)。つか、ちゃんと女の子の顔だし。

 カシゲの顔は、薄くなんかないですよ。
 彼が薄いのは、髪の毛芸風だけです。

          
 星組公演『1914/愛』の話の続き。

 物語は、「嘘からはじまった恋」の主人公アリスティド@ワタルくんとアデル@檀ちゃんを中心にして進む。
 このでこぼこカップル、とってもお似合いなんだけど、どーしてこう元気に全力疾走で回り道をするかな(笑)、というふたりをかわいらしく描いてある。

 このふたりだけしか、物語らしい物語はない。
 ああ、世界はふたりのために。

 アリスティドとアデルが出会って恋して誤解していったん離れてでもやっぱり愛してる! というだけの話。
 話の内容が少ないから、破綻していない、というのもあるとは思うよ。
 でもそれ重要だし。
 決められた時間内に起承転結やらなきゃなんないんだから、欲張ってあれこれ詰め込んでも破綻するだけさ。
 潔く、単純な物語にしたのは正しい。

 このバカップルの物語に、ちょいと絡めてみたのがアポリネール@カシゲ他、芸術家たちの物語。

 ええ、絡めただけ。
 本筋にちょっとばかし。

 時代を説明するため、主役ふたりの立場を説明するため。
 それだけの扱い。

 ……主役以外の、ある程度スターな生徒のファンなら、怒るかもな。この扱い。
 極端な話、ふたり芝居でもOKだったもんよ。
 芸術家たちなんか、いなくても話は通る。

 わたしは主役以外のある程度な人のファンで、その人はいつ出てくるんだと心配してしまうくらい出番がなかったが、そんなのべつに、気にならない。

 作品が壊れていないことの方が、重要だ。

 主役の背景と立ち位置がはっきりわかって、彼と彼女が中心に物語が進み、テーマなんかぶちあげながら、一生懸命生きて元気にハッピーエンド。
 それでいいじゃん。

 そう。
 わたしはこの作品、大好きだ。

 ツボなのよ、ツボ(笑)。
 そーいやわたし、『タンゴ・アルゼンチーノ』も好きだったわ。

 夢に向かう若者たちの物語が好きなの。

 夢を見て、夢のために、あるかないかわからない才能を信じて、ときに疑って、世間を恨んだり壁にぶつかったり、自暴自棄になったりしながら、それでも、夢を捨てきれずに走り続ける。
 自分を壊しながら、作品をつくりつづける。
 そうすることでしか、生きられないから。

 呼吸をするように、夢を必要として。
 そうやって生きることしかできない若者たちの物語だから。

 現実は、過酷だけれど。

 シリアス部分はアポリネール@カシゲ担当でしたな。
 主役カップルがコメディ一直線のなか、カシゲはシリアス一直線。
 冤罪で拘留されるわ、失恋はするわ、戦争に行くわ。
 たぶん、おいしい役なんだと思うよ。かっしーがやってるから、どーにも影が薄いけど。
 詩を書くために戦場に行く、と言い切る姿が胸にせまったわ。詩人としての建前かもしれないけれど、たぶん本音だと思うから。
 モノを創る人間なら、作品のために自分の命ぐらい危険にさらして平気でしょうよ。そうやって心のひだを深くすることを望むでしょうよ。それくらい、壊れていてこそでしょう? 芸術家なんて。
 心の傷は全部、財産だよね。モノを創り出すための。
 他の芸術家たち、モディリアーニ@タニちゃん、ユトリロ@まとぶんも、そうやって自分を傷つけながら、芸術を生み出す生き方を選んでいたね。

 それにしても、主役カップルがかわいいんですが(笑)。

 最初は、アリスティドのわざとらしい「俺様喋り」が気持ち悪くて耳障りだったんだけど、「実はお貴族様」で、ふつーに喋ることもできるんだってのがわかってからは平気になった。そっか、わざと柄悪くしてるうちに、あんな行きすぎたキャラになっちゃったのね、アリスティド(笑)。
 アデルは、等身大のかわいい女の子。元気で向こう見ず。そうでもなきゃ、「謎の伯爵夫人」に化けたりはしないよなあ。オペラ歌手を目指すより、女優目指した方がいいよ……。

 もちろん、音痴のふたりが天才シャンソン歌手だったり、オペラ歌手志望だったりするのは、耳の暴力でしかないですが……。
 アリスティドの歌を絶賛する、舞台上の人たちの姿が寒いです……勘弁してくれー。

 今回わたし、ほんとにワタルくんの歌、ダメだった……。

 ラダメスのときは気にならなかったのに。
 今回は苦痛で苦痛で。
 しかも彼、天才歌手役だから、オープニングからえんえんえんえんえん、歌い続けるし。
 誰か助けて。
 つらい、つらすぎるよ。

 ぜえぜえ。
 導入部分から消耗。
 そのうえうすら寒い「俺様喋り」だし。

 ああなのに、好きだわ、この役をやっているワタルくん(笑)。ラダメスも大好きだったけど。アリスティドも好き〜。

 バカでかわいい。

 ワタルくんの得意分野だよね。バカで善良な男って。

 そしてなんといっても、檀ちゃん。
 そうなのよ、檀ちゃんの本領は「ちょいとタカビーな貴婦人」よ。アムネリス様がハマリ役なのよ。地味で善良な平民は似合わないのよ(笑)。
 だから、謎の伯爵夫人のタカビーさと美しさ、気品と性格の悪さはすばらしかったわ。
 いいなあ、勝手に「伯爵夫人」を名乗っても周囲の貴族たちが納得してしまう迫力があるんだもの。

 今回の檀ちゃんがおいしいのは、美しい伯爵夫人と、等身大の気の強い女の子を同時に見られてしまうことでしょう。
 地味で善良でおとなしいヒロインじゃないの。この間の『永遠の祈り』みたいな。猪突猛進逆ギレ娘。『Practical Joke』のジルがハマっていたようなもんですわ。
 檀ちゃんはこーゆー爆走女も似合いますね。

 そしてなんといっても、最後の啖呵。

 檀ちゃん、かっこいい……。

 アムネリス様の「鎮まりなさい!」にも匹敵する決め台詞。
 檀ちゃんはその繊細な美貌に似合わず、オットコマエな台詞が決まるよねええ。

 そしてまた、文字数が足りないので次の欄へ続く。
「次の星組公演はこわいですねえ」
 と、デイジーちゃんは言う。
 たしか名古屋でだ。仲間たちがぞろりと5人、名古屋の喫茶店で顔を合わせていた。
「トウコちゃんがいないんですよ? でもって、加わるのはタニちゃんですよ。どうするんですか」
 心配事は、「歌」のレベルだ。
 星組のトップコンビは美形でゴージャス。しかし歌はかなりアレ。歌唱力スターのトウコがいなくて、ヅカを代表する音痴スターのひとり、タニちゃんが加わる、というと、観る前からデンジャラス。
「ワタルと檀ちゃんのデュエットをえんえん聴かされるわけだよね……すごいよね」
「そこにタニちゃんがハモったりしたら、どうするんですか」
「ワタルと檀ちゃんとタニのコーラス……ぶるぶる」
「そこに、ダブル音痴の娘役2番手のふたりが加わったら!」
「カノチカとウメ!! そんな、ジャイアン・リサイタル以上の破壊力になっちゃうよ!」
 てな、名だたる音痴スターの名をあげて戦慄するわたしたち。
 ワタルと檀ちゃんとタニとカノチカとウメちゃんの合唱。……くらくら。

「そのうえ、そこにケロちゃんまで加わったら!!」

 ちょっと待ってくれ、マイ・シスターズ。
 その面子に、わたしのダーリンの名を連ねますか、そうですか……。
 たしかにケロちゃんも歌はアレだけどなっ、音痴ってほどでもないと思っているのはファンの欲目? 欲目かな、しょぼん。
 カノチカやタニちゃんと同列に語られちゃったよ……。

 てな、スリルに満ちた星組公演初日。演出家は地雷と名高い谷&草野。期待よりも不安が高いぞ。チケットもぜんぜん売れてないぞ、とーぜん立ち見券なんか発売してくれなかったぞ、びんぼー緑野ピーンチ。

 ま、財布はひたすら軽いけれど、心は錦、弟よDVDの代金はしばらく払えないから待っていておくれ。金はなくてもムラには行くのさ。

 ミュージカル『1914/愛』。演出家は「皆殺しの谷」。とにかく登場人物を殺しまくり、人の死で場を盛り上げるこまった作家。主人公が登場人物全員から愛され、しかし彼は誰も愛することはできず、彼の身勝手な行動に大勢の人が無惨に無意味に殺され、最後は彼もよくわかんねー理由で子守歌なんか歌いながら非業の最期を遂げる。……という、壊れた物語をなんとかのひとつおぼえで描きつづける作家。自分を主人公にしたドリーム芝居を書き続けているのかもしれん……ぶるぶる。
 という、谷先生のオリジナル新作で、第一次世界大戦前夜のパリが舞台で、タイトルが『1914/愛』、だよ。
 終わってる、って気がしないかい?
 うわー、また派手に殺しまくるんだろーなー。
 カンチガイしたドシリアスで、暗くて重くて、一歩まちがうと眠いだけの話になるんだろーなー。
 戦争に引き裂かれる愛とか、ぐだぐだうっとーしいまでに悲劇をやるんだろーなー。

 しかも主役、シャンソン歌手とかいうし。

 ワタルに歌手の役?!
 いくらタカラヅカが夢の世界だからって、そんな無茶な!
 いや、彼は『月夜歌聲』でもたしか、京劇スター役だかで歌の才能ある人をやっていたけど。でもってよりによってキムくんに「歌を教える」というものすげー演出になってたけど。

 なんでワタルくんに歌手の役をやらせるかな。作曲家とかダンサーとか、歌を誉められなくてもいい職業にすればいいのに。

 と、さらに危惧ばかり抱えた『1914/愛』。
 予備知識を好まないわたしは、なんの情報もないまま、とにかく観に行った。
「でも今度の芝居、誰も死なないそうですよ」
 と、いつも予習ばっちりのデイジーちゃんが言っていたことが、耳の端に引っかかっていたくらい。

 コメディーだとは思わなかったよ……。

 谷せんせい……このタイトルで、この時代背景で、コメディやりますか。

 アリスティド@ワタルはモンマルトルのシャンソン酒場の経営者。でもってそこのスター歌手。彼のすばらしい歌声に客は拍手喝采。いよっ、天才歌手!!
 彼は弱い者、貧しい者の味方。口は悪いが、ハートはホット。店のもうけなんか度外視で、貧しい人たちに料理をふるまってやっている。
 そんなアリスティドだから、彼を慕っていろんな人がやってくる。
 売れない若い芸術家たちもそうだ。詩人のアポリネール@カシゲはアリスティドの店に謎の伯爵夫人@檀ちゃんを連れてきた。すべてが謎に包まれた美女は、貧しい芸術家たちにパトロンを紹介して回っているのだ。しかしこの伯爵夫人、貴族なのにアリスティドたちと一緒になって「反貴族の歌」を熱唱したり、なんか変。まあ、すべてに謎だから、謎の伯爵夫人という、こっ恥ずかしい名前を自分で名乗っているんだろう。
 「貴族がなんだ、べらんめえ」なアリスティドだが、実は彼は本物の貴族のおぼっちゃま。ある日彼は父のフルーレ伯爵@立さんの策略で、政略結婚をさせられそうになった! デキレースの「花嫁選び@歌がうまい娘さん募集」で、新作オペラのオーディションだと信じて参加した娘アデル@檀ちゃん激昂。嘘をついて人を集めるなんて! 夢をもてあそぶなんて!
 このアデルこそが、謎の伯爵夫人の真の姿。酒場のアリスティドの真の姿が伯爵家の若様だとは、思っても見ない。
 だからお互い、初対面じゃないのに、初対面だと信じる。
 そして「身分違い」の恋に落ちるのだ……。

 あのー、これ、「嘘からはじまった恋」ってやつですね?

 二重生活をしている男女が、うっかり素顔の方で出会ってしまい、仮面の方で知り合っているあの人とは知らずに恋に落ちる。
 現代に置き換えるなら、「ネットでは別人」とか?

 ハンドルネーム「謎の伯爵夫人」。
 タカビーな女王様。やり手で、多くの人を手玉に取る。(あくまでも、ネット上でのこと)
 ハンドルネーム「酒場のアイドル」。
 俺様で毒舌。柄が悪く、おっかない。(あくまでも、ネット上のこと)

 しかし、現実では。
 夢に向けて地道な努力をする真面目で清純な娘、アデル。
 礼儀正しく上品な青年貴族、アリスティド。

 ふたりは、ネット上で舌戦をかわした相手だとは知らずに恋に落ちる……。

 とか、そーゆー話ですね。

 実際に「会って、顔を見ている」のに、「別人」だと信じ込むのが愉快。ふたりともかけ離れたキャラクタを造形しているもんだから。

 いったいどーしたことだ、谷先生。
 谷先生の作品なのに、破綻していない。

 壊れてないよ、なんで?

 作品が壊れていないことでおどろかれてしまうくらい、谷作品って、壊れているのが当たり前でしょう??

 いや、そりゃたしかに、『なみだ橋 えがお橋』も壊れてなかったさ。あのときもおどろいたさ。谷先生が壊れていないものを書いた!てな。
 しかしアレは、ただのまぐれだと思ってたんだよ。偶然の産物だと思ってたんだよ。

 でも、またしても壊れていないものを作るなんて!!

 破綻していないモノも、作れたんだ!! 驚愕。

 しかも、恋愛モノだよ?
 谷先生がもっとも苦手とする。今までただの一度も、「人を愛している主人公」を描けなかった谷先生が、恋愛モノを!!

 谷正純に、なにがあったんだ?

 つーことで、翌日欄に続く(笑)。
 
 わたしは、通帳を盗まれたことがあります。キャッシュカードごと。

 しかし、警察は取り合ってくれませんでした。
「事件にするのはめんどくせー」
 という態度で追い払われました。

 というのも、実質的な被害がなかったせい。

 わたしは迂闊なことに、通帳とカードの入ったポシェットを、玄関口に置きっぱなしにしていた。
 玄関には必ず鍵をかけているので、危機感がなかった。

 しかし。
 そのポシェットを開けてみたら、たしかに入れていたはずの通帳も、それと一緒にしていたカード類も全部なくなっている。
 反対に言えば、なくなっているのは、通帳とカード類だけ。その他のものは全部そろっていた。

 なんで? わたしは通帳とカードだけよそへやったりとか、してないよ?

 わたしの家に毎日出入りしている家族に聞く。
「ねえ、わたしのポシェット、触った?」
 通帳の扱いが悪い、って気を利かせてどこかに片付けてくれたとか?

 しかし家族は全員「触っていない」と言う。

 そうこうしているうちに、警察から連絡が入った。

「あなたの通帳が落とし物として届いています」

 落ちていた場所は、わたしの家の近所の路上だった。
 通帳とカード類がむきだしで放置されていたらしい。

 そこではじめてわたしは、盗難に遭っていたことを知った。
 ポシェットの中身が、「通帳とカードだけ選んで」路上に落ちるわけないじゃん。落ちるなら全部落ちるだろう。

 わたしは玄関の鍵を必ずかける。
 これはもう習慣だ。
 無意識の域に達している。

 しかし、鍵をかけないヤツがいる。
 父だ。
 父はわたしの家にやってきたとき、鍵をかけない。

 もともと我が家では、「鍵をかける」という習慣がなかった。大阪の下町、人情命の場所だからな。出かけるときはともかくとして、在宅中は誰が来てもいいように玄関に鍵はかけない。
 わたしも祖父母が存命時にはそうしていたさ。近所の人は勝手にドアを開けてあがりこみ、おしゃべりしていったさ。いつでもウェルカム、みんな仲良しだったさ。
 しかしそれも今は昔の話。
 祖父母は亡くなり、古いびんぼー長屋はどんどん解体され、マンションや新築住宅地になり、街の雰囲気も変わっていった。
 もう、鍵をかけずにすむようなところではなくなったさ。時代は変わったのさ。

 玄関に鍵をかけなかった最大の理由は、1階に人がいた、てのがある。
 1階の仏壇の部屋に、祖父母が暮らしていたからね。玄関が開けば、彼らが気づく。

 祖父母亡き今は、1階がただの「倉庫」と化している現状。わたしは2階にこもっているので、1階に誰かがこっそり入り込んでも、気づかない。
 だから在宅中も鍵は必ずかけている。

 なのに。
 父は、鍵をかけない。
 わたしの家の2階にあるコピー機を使っている間とか、玄関の鍵は開けたまんま。古いコピー機は大きな音をたてるから、階下の音なんて、聞こえるはずもない。

 父はいつもそう。
 トイレの電気は消さないし、自分の家の寝室の扉も開けたまま。
 使用後は電気を消せ、開けたドアは閉めろ。
 いくら言っても、なおらない。

 玄関に鍵をかけろ、というのも、わたしが何度言ってもダメ。今も3回に1回は忘れている。

 だからまあ、玄関口に置いてあったポシェットを、外部の人間が触る可能性はあったわけだ。

 わたしは、これは盗難事件だと思った。
 盗まれたんだ。
 ……わたしが不注意だったせいとはいえ。

 しかし、被害はなかった。

 犯人の行動をシミュレートしてみよう。
 
 玄関のドアを触ったら、おや、鍵がかかってない。開けたら、無人の部屋が見え、上がり口にはポシェットが置いてある。中を見たら、なんと通帳が。横にはカードもあるぞ。

 咄嗟に通帳とカードだけを握って、逃げる。
 角をふたつ曲がったところで、盗んで逃げたものを確認してみた。

 あれ?
 キャッシュカードだと思って掴んできた、カードの束。
 テレホンカードにどこかの店のポイントカード……キャッシュカードじゃない!!
 とくにこの、某家電量販店のポイントカード! 分厚いプラスチック製で、見た目も質感もキャッシュカードとそっくりだ! なんて紛らわしい!!

 キャッシュカードがないんじゃあ、通帳だけあっても意味ないじゃないか! キャッシュカードがあれば、暗証番号にしていそうな電話番号や誕生日くらい誰だって調べられるのに!

 つーことで、盗んできたものをその場に捨てる。持っていてもしょうがない。
 捨てた通帳がどうなろうと、知ったことか。

 ……てな流れだったんじゃないか?
 通帳の発見場所が、わたしの家から2つめの角を曲がったところ、というのがまた、リアリティ。わたしゃそんなとこは通らない。駅とは反対方向だし。

 キャッシュカードも同じポシェットに入れてたんだけどね。それだけは、ファスナーのついた内ポケットに入れていたのよ。
 ポシェットを開けて、一見できるところには入れてなかったの。
 それでなんとか、最悪の事態は回避できた。

 「通帳とカード類」だけ掴んで逃げずに、その場で確認していれば、ちゃんとキャッシュカードも盗めたのにねえ。
 出会い頭の事故、ほんの出来心だったんだろうなあ。
 てゆーか、一見してキャッシュカードがないと判断していれば、盗みなんかせずに、ポシェットから手を離したかもしれない。

 「取ってください」と言わんばかりに置いてあったせいだろうな。

 ……それって、父のせいもあると思うけど。
 わたしが玄関口に貴重品を置いたままにしていたのは、「鍵をかけている」という前提の上でよ。鍵を開けたままにしているバカがいることは、計算に入ってないわ。

 通帳を受け取りに警察に行ったときに、「これはわたしが落としたモノじゃない、盗まれたモノだ」と主張したんだけど、警察は取り合ってくれなかった。
 被害がないのに、わざわざ話をややこしくするな。……そーゆー感じだった。
 そしてわたしは、
「アンタがうっかりして落としたんだ」
 と、警察の人に言いくるめられました。
 記憶の改竄をやんわりと、だが確実に強要された。やれやれ。

 さあ、この「九死に一生を得た」通帳。
 じつは印鑑を紛失して長い。
 今日よーやく新しい印鑑を買ったので、届けを出さなきゃなー。
 心機一転だ。

 
 世界は愛に満ちている。
 そう信じさせてくれる物語。

 『ラブ・アクチュアリー』

 この映画を好きなことは、わかっていた。『ノッティングヒルの恋人』も好きだし、『ブリジット・ジョーンズの日記』も大好きだ。リチャード・カーティスの描くラヴストーリーはツボにはまる。
 特別なんかじゃない、ふつーの人が、ふつーの人生の中で、恋に走り出す瞬間。その輝き。それをせつないくらい「特別に」描いてくれる。
 そして、複数の主人公の物語が同時進行し、最後にひとつに重なる物語、ってのも、大好きなんだよね。プロットの緻密さを必要とするから。

 監督・脚本リチャード・カーティス、出演ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン。


 就任早々、ちよっと太めな秘書(つっても雑用係)の女の子に恋してしまう独身のハンサム首相@ヒュー・グラント。
 最愛の妻を亡くした男ダニエル@リーアム・ニーソン。妻の死もショックだが、義理の息子とのつきあい方でも困惑の日々。
 高嶺の花への片恋に悩むダニエルの妻の連れ子のサム@トーマス・サングスター、多感な11歳。
 弟に恋人を取られ、南仏へ傷心旅行に出かける作家ジェイミー@コリン・ファース。
 南仏のコテージでジェイミーのメイドをするオーレリア@ルシア・モニス。英語はまったく理解不能。
 会社社長のハリー@アラン・リックマンは部下の美女にモーションをかけられどきどき。
 しっかり者の主婦カレン@エマ・トンプソンは、夫ハリーの浮気心に気づき、ひとり号泣する。
 入社以来2年7ヶ月同僚カール@ロドリゴ・サントロに片想いしているOLサラ@ローラ・リニー。
 親友の新妻ジュリエット@キーラ・ナイトレイに片想いしているマーク@アンドリュー・リンカーン。

 てな具合に、複数の人々の「愛」を取り巻く問題が動き出す。全部で19人だよ、メインキャラ。……多い(笑)。

 ……残念ながら、プロットが緻密だとはあまり思えなかった(笑)。かなり力技な感じ。
 それぞれのストーリーも、浅いというか、全体をきちんと描ききっていない印象を受けた。

 だけどわたし、オープニングからエンディングまで、ほぼ泣きっぱなしだったんですが(笑)。

 かなり、ツボに合う作品なんだよねえ。

 19人の主人公たちの抱える「愛の問題」はどれも、アイディア一発勝負に思える。制作者側のね。
 ふつーなら、このネタひとつでは映画にはならないから、もっとたくさんネタを出して、味付けして仕掛けをして、エピソード作って、いろいろやったうえではじめてまともな「ストーリー」になりえるよーな、いちばん最初の「ささやかなネタ」でしかない。
 その最初の「ささやかなネタ」ひとつだけをたくさん集めて、力技で1本の映画にしてしまった。

 あるじゃん、主人公と相手役だけ考えて、「このシーンのこの台詞だけ」思いつくっての。
 でも、1シーンと1台詞だけじゃあ、「物語」にならない。同人誌ならそれだけで4ページだけの雰囲気マンガになったりするけど、商業出版物ではそれは通らない。
 キャラクタの背景を作って書き込んで、主役以外の人たちにも全員人生を考えて、起承転結のある物語を作って、そのなかにはじめて、「このシーンのこの台詞だけ」を盛り込むことができる。1行の台詞を言わせるためだけに、5000行の「物語」を書かなきゃいけない。

 この映画に感じたのは、「このシーンのこの台詞だけ」を山ほど集めたんだなってこと。
 主人公たちひとりひとりの話は、それだけでは「1本の映画」にはなりえない。ネタ一発勝負だからだ。
 だけど、そのネタ一発、「このシーンのこの台詞だけ」をよくこれだけ魅力的にひとつの映画にまとめたな、と感心する。……力技だけど。
 てゆーか、そのネタ一発に、とても破壊力があるものが多いんだ。そのネタだけで、「勝った」って感じの。

 親友の妻を愛した男。
 親友のために「最高の結婚式」をプロデュースし、周囲がお祭り気分のときもずっと裏方の顔でビデオカメラを回し続ける。心から、ふたりの幸福を祈る。
 そうしながらも。
 彼がファインダー越しに追い続けるのは、花嫁ただひとり。
 愛した女が最も美しい瞬間の笑顔を撮り続ける。最も幸福な日の笑顔を撮り続ける。
 愛した女が最も美しく、最も幸福なときは、彼女が永久に彼を愛さなくなる日。
 彼が彼女を失うその日、彼女はまぶしいほどに美しい。

 身内と恋人に裏切られた男。
 男は小説家。「言葉」を使うプロ。だけど愛に傷ついた彼はあえて、「言葉の通じない」外国の別荘でひとり執筆に没頭する。
 そして彼は、言葉の通じない異国の女性を愛する。「言葉」を持たない男と女は、それぞれの母国語で愛を口にする。相手に通じないことを知りながら。
 帰国した男は、女の国の言葉を学びはじめる。……馬鹿げてる。だって彼女とは、愛の言葉ひとつ、かわさなかった。確かなものなんて、なにもない。
 自嘲しながらも男は探すんだ。彼女と自分をつなぐ「言葉」を。

 ネタ一発勝負。
 でも、このネタひとつで、十分泣けるんですけど。
 きちんと1本の物語に作ってみたくなるくらい。

 登場人物すべての物語は、クリスマスの夜にひとつの昇華を遂げる。

 クリスマスは、愛するひとと過ごしたい。
 素直になりたい。
 伝えたい。

 マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」が流れるなか、愛することのよろこびも、しあわせも、いたみもかなしみもくるしみも、わたしかもしれないあなたの姿になって、両手を広げている。
 抱きしめるために。

 すべてを。

 もう少し作り込んであったら、もっと好きなんだけど。力技感があるし。
 だけど今のままでも、わたしは十分大好き。

 ヒュー様の話がいちばん、どーでもよかったよーな。いちばん、薄っぺらいというか。
 でも、一目惚れしちゃった女の子が「ちょっと太め」だと、わかっていない男、っての、いいなあ。
 彼の中では、彼女は絶世の美女なんだよね(笑)。だから、他の人に「太めの女の子」だと言われると「……そうだったかな?」てことになる。
 日本ではあり得ない「首相」。若くてハンサムで独身だよ。恋しちゃうんだよ。官邸で腰振って踊っちゃうんだよ。
 あの演説も好きです(笑)。

 父と息子ネタに弱いわたしは、ダニエルとサムの物語も好きだー。
 父と子というより、祖父と孫に近い年齢差で、真剣に親子を……ある意味対等な男同士の友人として、先輩と後輩として、向かい合うふたりが愛しい。
 愛を語る、不器用な男たち。じじいに近いおっさんと、11歳の少年。

 ハリーにしろカレンにしろサラにしろ、みんなみんな、不器用で、それでも精一杯にその手をのばしていて、愛しい。
 決してひとつなんかではない、愛のかたち。愛のすがた。

 大丈夫。
 世界は愛であふれている。

 
 それは、運命の出会いだった。

 『暴君ハバネロ』という、きっつい名前とパッケージ。どーやら辛いスナック菓子らしい。
 たしか、東京駅でだったと思う。いつのことだっけかな? 東京にはしょっちゅー行ってるのでわからないが。
 WHITEちゃんが「なにコレ」とウケながら買っていた。

 たぶん彼女は、ふたりで一緒に食べるつもりで買ってくれたのだと思う。彼女もわたしも、辛いものが大好きだから。
 しかしわたしたちはその夜、大阪へ向かうバスの中で爆睡していて、お菓子を食べる余地などなかった。

 後日、

「あの『暴君ハバネロ』ってさ、めちゃくちゃ辛かったよ……3日に分けて、ようやく食べきった。緑野のいるときに開封するべきだった」

 と、WHITEちゃんが言っていたのが記憶に残っている。

 へええ、そんなに辛いのー?
 柿の種を心から愛する、辛党のWHITEちゃんがそう言うなら、ほんとに辛いんだろうな。
 WHITEちゃんはことあるごとに「『暴君ハバネロ』食べた?」とわたしに聞いてくるのだが、わたしはそのたび「あ、忘れてた」と答えていた。いや、ほんとにおぼえてなくてさ。
 つーか、売ってるところを見たことなかったし。
「東京限定のお菓子じゃないの?」
 と、まぬけたことを言っては、
「ふつーにコンビニで売ってたよ! なんで見てないの?」
 と、叱られておりました。……だってお菓子売り場行かないんだもん。

 そして、いつまで経っても自分で買って食べないわたしに、WHITEちゃんはついに業を煮やしたようです。
 先日の日曜日、某チケット購入のために早朝から並んでいたとき、買ってきてくれました!

 おお、『暴君ハバネロ』。
 手にするのははじめてだわ。

 WHITEちゃんが見守る中、おそるおそる食べてみる。

 辛い!

 辛いですよ、ほんとに。
 すっげー辛い。今まで食べた、どのお菓子より辛い。

 わたしは「辛い」というシンプルな台詞を連発しました!

 なのにWHITEちゃんは言うのです。

「……辛くないの?」

 いや、だから、「辛い」って言ってんじゃん!

「だって、ものすごい勢いで食べてるけど……」

 はっ。
 ごめん、買ってきたのはWHITEちゃんだったよね。

 ひとりでほとんど食べてしまった……。

「いや、いいけどね。そんなに気に入ったなら」

 うん、ものすっげー気に入った!
 ひさしぶりのヒットだわ、こんなにおいしいお菓子と出会えるなんて。目からウロコ。

 数分で1袋たいらげてしまったわたしは、チケット購入の帰り道、自分で2袋買って帰りました。

 猫の待つ家へ帰宅。

 そしてその5分後。
 わたしは、WHITEちゃんにメールを打った。

「やばい、もう1袋食べてしまった!」

 WHITEちゃんから帰ってきたメールは、

「早っ。2袋じゃ足りなかったんじゃない?」

 ……足りませんでしたとも。
 1袋食べるのに5分かからないんだもん。涙。
 てか、量少なすぎ。

 ……てか。
 太るだろ、スナック菓子なんぞバカ食いしてたら。涙。

 それは、運命の出会いだった。
 出会ってしまったのだから、それ以前のわたしには戻れない。

 愛しいヒトの名は、『暴君ハバネロ』。きっつい名前とパッケージ。
 食いたい……。

          ☆

 そーいや2月10日の日記で、『送られなかった手紙』のことをさんざん語った最後の最後に、

 『届かなかった手紙』

 と書いていることについて、指摘されました。

 「これってオチなんですか?」と。

 いやいやいや!(笑)
 ぜんっぜん、気づいてませんでした。

 『長い春の果てに』がわたしの中で勝手に『長すぎた春』になっているようなもんで、自動変換されとりました。

 そして、『長春』が『長すぎた春』でもぜんぜん内容的にまちがってねーじゃん、と思っているのと同様、『届かなかった手紙』でもいっかー、とか思ってしまいました。
 だって主人公である伯父様@ヒロさんからしてみれば、『届かなかった手紙』だもんねえ。えっ、あの芝居、主人公ってドミトリー@いっぽくんだったの?!

 つーことで。
 オチとするのもアリかと(笑)。

 
 あれ?
 「レビュー選択」したところ、『ゴシカ』の解説文には

>『チョコレート』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたハル・ベリーが挑むサイコ・サスペンス。

 とあった。

 変だな?
 試写会の招待ハガキにも、会場でもらったちらしにも、「サスペンス」だなんてまったく書いてないよ?

 この映画のあおり(ジャンル)は、ホラーじゃないんですか?

 なんせ宣伝文句が、

『リング』『呪怨』…怨念のD.N.A.は世界で増殖する

 だよ?

>『リング』『呪怨』が産み落とした日本型恐怖のD.N.A.を併せもつ、初めてのハリウッド・オリジナル脚本作

 だよ?

 配給会社は、この作品をホラー映画として売る気満々ですが。

 わたしも、ホラーだと思ったから見に行きました。
 監督マシュー・カソビッツ、主演ハル・ベリー、ペネロペ・クルス、ロバート・ダウニーJr.

 タイトルの『ゴシカ』は、Gothicからきています。
 あの中世ゴシック様式、ダークでデコラティブな素敵世界、Gothic。

 舞台は「森の奥深く、古城のようにそびえたつ女子刑務所の精神科病棟」。
 精神科医ミランダ博士@ハル・ベリーは、職場であるその刑務所からの帰り道、謎の少女に出会う。そこで彼女の意識はブラックアウト。
 気がついたときは、彼女自身が「精神科の囚人」になっていた。記憶の混乱。ミランダは「夫殺しの凶悪犯」「分裂症」として収容されていた。
 彼女に取り憑いて夫を殺させたのはあのときの少女、つまり悪霊の仕業だ……しかし、精神異常者として扱われる彼女の言葉を信じる者はいない。
 霊からのメッセージ、「Not Alone−ひとりではない−」の意味は?
 夫殺しの真相は? そして浮かび上がってくるもうひとつの事件とは……?

 えーと。

 ゴシック・ホラー、っていうんで、期待したんですよ、わたし。
 おお、舞台は「古城」ですかー。いいですなー。ゴシック・ホラーはそうでなくちゃねえ。ってな具合にさ。

 弟と見に行ったんですが、終わるなりふたりして、

「なんか、『バイオハザード』見てるみたいだった……」

 と、つぶやいてしまったよ。
 映画の『バイオハザード』じゃなく、ゲームね。

「どこがゴシック・ホラー? ホラーじゃなくてただのアクション映画だろコレ」
「舞台はアンブレラ(『バイオ』に出てくる巨大企業)の研究所にしか見えなかったねえ」
「あちこちデジャヴが……ゲームのバイオをプレイしてるみたい」
「あんなに必死になって病院を脱出する必要があったのか? ていうか、作品のいちばん必死に作られているシーンが、ホラーじゃなくアクションシーンだってのはどうよ」
「アクションにカーチェイスときたもんだー」

 はい。
 ホラーじゃなかったっす。

 たしかに悪霊は出てきたけどな。
 そんなの、小道具のひとつにしか過ぎず、話は別物だったよ。

 簡単に言うと、

 冤罪を着せられたヒロインが刑務所を脱出し、自分で謎を解き、真犯人を捕まえる物語。

 という、お約束のアクション映画でした。恐怖よりもスリルに満ちておりました。

 「ホラー」ということにした方が売れるから、ホラーだって嘘ついてんだな……溜息。
 しかも、ゴシック・ホラー……。

 舞台は超近代的な、コンピュータ管理された場所。SFと言っても通る。なんせ、ゲームの研究所だとか秘密基地にクリソツなわけだからな。
 どこがゴシックなんだか。せっかくの古城を、ここまで役立たずな使い方をしなくても……。

 ま、「気味の悪い暴力的な事件を扱ったフィクション」を、「ゴシック」と呼ぶそうだから、それでいいのかね。
 わたし的には「それだけ」をわざわざ「ゴシック」とは呼びたくないですが。
 んなこといったら猟奇血まみれバカアクションは全部ゴシックになるわ。

 「ゴシック・ホラー」でないとわかって見るならば、それなりにおもしろい映画です。
 ヒロインがどうやって冤罪をはらすのか、真犯人は誰かを推理する、つー意味でな。まあ、わりとわかりやすいオチなんで、推理するまでもないけどさー。理詰めで考えたら、他の答えはないもんなあ。

 ただ、つっこみたいことがありすぎて、うずうずするぞ(笑)。

 いちばんの疑問は、アメリカっちゅー国では、悪人ならば殺してもぜんぜんOKなんすかね? てことだわ。

 えーと、逮捕されれば死刑確実の超悪人がいたとする。
 そいつはとにかく悪人だからってことで、たとえばわたしがそいつを殺しても、わたしは無実なの?
 わたしのしたことは「殺人」にはならないの?

 少なくとも日本では、指名手配中の凶悪犯だからって、わたしがそいつを殺した場合、わたしは殺人犯になりますなあ。
 悪人だからって、殺していいわけじゃないから。
 動機も関係もナニもないし、正当防衛でもなんでもなく、「あ、悪人だ、殺しちゃえ」てな感じに殺した場合、それは罪だよねえ。
 わたしには、そいつを裁く権利なんぞありませんから。

 悪人だから殺してヨシ! 正義の名前さえあればなにやってもヨシ!

 という感覚に、違和感ありまくり。

 もちろん、これが変身ヒーローものだとかアニメだとかなら、そんな無粋なことは言わないよ。「正義は勝つ」でいいさ。
 しかし、なまじリアルに映画やってるだけにねー。
 ずさんな正義感には納得できないわ。

 あともう少しがんばればおもしろくなるのに、いろんなところで感覚のズレを感じ、もどかしさに終始した。
 わたしならこうする、が山積み(笑)。
 うん、勉強になったよ、いろいろと。

 なんにせよ、カテゴリは元通り

>『チョコレート』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたハル・ベリーが挑むサイコ・サスペンス。

 にしておいた方がいいよ、映画会社の宣伝の人。

 コレ、ホラーちゃうし(笑)。

 
 引き続き、中日公演の話です。

 興味深かったのは、『Romance de Paris』が、そこそこおもしろかったこと。

 大劇で観ていたときは、怒りというより絶望感にうちひしがれた、失敗作。
 正塚せんせぇ、もうダメなのかもな……。創作者として終わってしまったのかもしれない、と絶望した。

 でも、中日劇場で改めて観ると、けっこーおもしろかったし、キャラクタに感情移入もできたんだ。
 もちろん、前に日記でつらつら書いた部分は、認めてないけどな。

 それとはべつに、これはこれとして、たのしんでいる自分がいた。

 答えは、すぐにわかった。

 ここが、中劇場だからだ。

 中日劇場は大劇場より1000ほど客席の少ない、中クラスの規模の劇場だ。
 オケボックスもないし、銀橋もない。
 1列目の客席の目の前が、もう舞台だ。

 劇場のキャパの問題だったんだ。
 『Romance de Paris』は、2500人もの客が入る劇場でやるべき芝居じゃなかったんだ。

 出演者の数も、大劇のときより減っている。雪組の約半数は小劇場で『送られなかった手紙』を上演中だ。
 なのに、違和感がない。
 ふつう、大劇で上演された作品を他の劇場で、少ない人数で再び観せられると「人数少なくて寂しい」とか「舞台が貧弱」とか思うもんなんだが、『Romance de Paris』に関しては、そんなことがまったくなかった。

 違和感ナシ。ぜんぜんOK。

 てか。
 まちがってたのは、大劇場の方だろ?

 この芝居は、大劇場で上演するべきじゃなかった。バウホールか、ドラマシティ級のハコで上演すべき内容だった。
 作品の質も、そして出演者の数も。

 正塚先生は、大劇場作品を書けない人なんだ……。しみじみ。

 小さなハコでやるぶんには、この詰めの甘い、冗長で盛り上がりに欠ける、起承転結がきちんと練られていない芝居でも、なんとか「ムード」だけでカタチを作ることができるんだ。

 人間、向き不向きはあるからな……。正塚先生、できないなら引き受けずに済ました方が、名前に傷が付かないんじゃないすか……?

 個人的には、ナディア@まーちゃんが好きだなー。王女様だからってぶりっこしてなくて、しっとり落ち着いた、気品ある女性に思えた。こーゆー女性だからこそ、支えてあげたいと思うよなあ、と。

 地方公演でたのしいのは、出演者が少ないために、いつもならライトも当たらないところにいる若手たちが、ばんばん活躍していること。

 弁護士@しっきー!!
 いやあ、まさか役ついてるとは思わなくてさー。油断して観てたら、しっきーじゃん!! 眼鏡萌え〜〜。かっこいー。
 わたしはしっきーの顔が好きなので、クールビューティー眼鏡っ子にはノックアウトっす。

 あと、せーこちゃんを探す気満々でいたのよね。最下級生だから、気合い入れて探さないと! と。
 そしたら、いきなりクラブ・アラベスクで踊っててびっくりした……。そっか、地方公演だと、せーこちゃんクラスの子でも、こんなポジションになるんだ……。

 ハコが小さいおかげで、いろんな子が観られたわー。もちろん、席がそこそこ舞台に近かったこともあるだろうけれど。

 ショー『レ・コラージュ』もたのしく鑑賞。大階段がないのはさみしいが、それはそれ。
 舞台が小さく出演者が少ない分、下級生がよく見える。

 かなめちゃん、大活躍だなあ。くらまくん、どこにいてもわかる。ああ、しっきーがこんなによく見えるなんて、嘘みたい。いつも後ろにしかいないからなあ。せーこちゃん、ちゃんと「男役」として扱ってもらってんだー。でもリフトは苦手そう……小柄だしなあ。
 WHITEちゃんはひたすら舞咲りんちゃんチェックしてるし。

 「なっつくらっかぁ?」のシーンが、「聖バレンタイン」になっていておどろいた。そりゃあまあ、今さらクリスマスもないけどさあ。
 でも、変だよ……「バレンタインおめでとう」「チョコレートを持った男の子たちが家の前に列を作っているわ。おやすみなさい」って。
 まだ色恋以前の少女が、大人の女に変身するのが醍醐味のシーンじゃなかったっけ? もうモテモテで複数の男たちを泣かせているという設定なのか? それともあれはママの妄想? にしても、幼い娘にそんないやらしいことを言うのか?
 なんかすげー安直……。
 しかも緞帳のイラストはクリスマスのままだし。サンタクロースがいるし。
 こういうびんぼくさい変更はやめてほしかったよ。

 場面としては、好きなんだけどね。せーこちゃんに役ついてるし、ラッツキング@キムは彼らしい傲慢攻キャラ全開で(笑)。キムくんはこういう、小悪魔少年やらせたらピカイチだよなー。

 水くんはさすがの華やかさ。
 彼がいるとショーがよりたのしくなるね。歌はアレだけど(笑)。

 しかし水くんと3人の女が踊るシーンは疑問でいっぱい。
 だって、3人の女のうち2人はおばさんじゃん。
 とくに歌っている女はイカンよ水くん、その女はよせ。君の母親くらいの年齢だろう! しかも美人じゃないし! 気品があるわけでもないし! そんな女に引っかかったら、君の男ぶりに傷がつくって!!
 と、はらはらし通しでした……。いや、出演者にはなんの含みもないんだが! ただ、キャスティングに疑問。
 WHITEちゃんも幕が下りるなり、そのことにつっこんでいたし。

 色男・水くんと、美女コム姫のエロエロダンスは、すばらしゅーございました。よだれもんだわ……。

 しかし、全編を通していちばん印象に残ったのが、遠心力でぶっ飛んでいく回転ドア(そうとしか思えん……)と、ハマコだってのは、どういうことですか。泣。

 どんな素敵なシーンも、ハマコが出ると、全部ハマコ色になる
 絶好調だね、ハマコ……。

 ハコの大きさと、それに合う合わないの話に戻しましょう。

 ええ、ハマコちゃんは、中劇場には合いません……小劇場はもっと合わない。
 他のなによりハマコが強烈で痛いのは、たぶんきっと、ハコの大きさのせいだ。

 ハマコのスケールには、武道館ぐらいが相応しいかもしれん。

 客席が1万もあれば、さずがのハマコも浮かないだろーなー、と思う名古屋の昼下がりでした。

 
「で、キムちゃんのディディエはどうでした?」

 と、デイジーちゃんに聞かれ、わたしは返した。

「ハマコのディディエが見たかったな……(遠い目)」

 言った途端、その場にいた全員が爆笑しました。
 ハマコちゃんって、そーゆーポジションですね(笑)。

 中日劇場、雪組公演『Romance de Paris』『レ・コラージュ』鑑賞。

 や、とりあえず、行くでしょう、水くんを見に。
 色男、水くん。
 ハンサムな水くん。
 横顔三日月の水くん。

 素敵な水しぇんに会いたくて、はるばる名古屋まで行って来ました。

 さあ、みなさんの最大の関心事はアレですね。
 ムジャヒド@水は、受か攻か。
 そうでしょ?

 ムジャヒド@カシゲのことは、わたしの友人たちは全員口をそろえて「受」だと言います。
 理由は、「カシゲ・ムジャには、攻をやれるだけののーみそはない」。
 ……ひどいですね。みんな、かっしーを馬鹿だと思ってますね。失礼、カシゲ・ムジャのことを馬鹿だと思ってますね。ええ、わたしも思っています。
 それでもバカ攻好きのわたしだけは、「カシゲ・ムジャ攻説」を掲げていたのですが……うーん、たしかにもうこいつ、受でもいいかもって気にはなってました。バカ攻は好きだけど、かっしー、バカが過ぎるっていうか……攻をやれる甲斐性はカケラもなさそうっていうか……むにゃむにゃ。

 とまあ、カシゲ演じるところのムジャヒドというのは、そーゆーキャラでした。

 おぼっちゃま育ちで元エリート軍人、現在はしがない役人をしている、愛すべきドジ男。
 という、ムジャヒドというキャラクタ。
 かっしーが演じると、ほんとにのーみそがなさそうな、かわいいバカ男だった。
 では、水くんが演じると?

 かっこかわいー(はぁと)。

 「元軍人」だというのが、よくわかったよ、水ムジャ。軍服似合いそうだ。
 熱いハートを持っているのね。バカでドジだけど、基本は二枚目だよね。
 てゆーか。
 実はあんた、今も軍人なんじゃないの?(笑)
 バカ広報官は仮の姿で。
 ラシッド@じゅりぴょんと対立した次の場面で仲間になってるのって、「実はおれは、国王様直属の隠密なんだ」てなことを明かして手を取り合ったんじゃないの?

 なんにせよ、対立する立場で向かい合ったかつての友、ラシッドとムジャヒド。
 エリート軍人ラシッド。
 おちこぼれ役人ムジャヒド。
 強い立場なのは、ラシッドの方。
 なのに、より傷ついているのがラシッドの方、てのが、ツボです。

 ムジャに理解してもらえないことで、傷つくのはラシッドなのねー。
 なんてせつない顔で、ムジャにすがるの。そうか、ムジャに理解してもらえないのが、そんなにつらいのかー。

 てなことから、わたしの結論。

 水ムジャは攻でヨロシク。

 ラシッド@じゅりぴょんの色気が増していたことも、大きい。
 ラシッド、いい男だ……あの細腰がたまらん(笑)。
 水ムジャ×じゅりラシッド。チビ攻ののっぽ受。

 しかし、かっしームジャは「とことんバカ」で水ムジャは「ちょっとバカ」なのは、周知の事実なの?
 ラシッドの部下の台詞が変わっていたことに、びっくり。
 かっしームジャのことは「気づいてないんじゃないのか、あいつはまぬけだからな、はっはっは」だったのに、水ムジャのことは「気づいてないなんて、そこまでまぬけじゃないだろう」なのね。
 正塚せんせい……。

 役替わりのたのしみのひとつだった、ディディエ@キムちゃん。
 キムちゃんはうまい子だから、きっとそつなく演じるんだろうな、と安心していた。
 ……うまかったし、そつなくこなしていたよ。ええ。
 華のある子だから、群衆に混ざっていても「ここにメインキャラがいる」ってことをきらきら輝いて示してくれるし。「スターだなあ」と思う。

 でもやっぱり、「大人の男に見えない」よ……。

 見た目の若さってのは、どーしよーもないなー。
 キムくんは尊大な攻キャラだから、ディディエみたいな一見嫌味なエリート役は得意だと思うけど、この場合、ヴァンサン@コム姫の「義兄」という設定だからなあ。コムちゃんより年上に見えねーよ……。
 ビジュアル的にきつかった。

 熱演されていてもどこか落ち着きが悪く、わたし的には物足りなかった。

 ので、考えてはならんことを考えてしまう。

 ああ、ディディエがハマコだったら!!

 中日公演、ハマコちゃんはパワーアップしてました。
 とどまるところを知らぬ勢いでした。
 誰も彼の手綱を取ることはできないんでしょうな、「野放し」って感じでした。

 いやあ、彼が歌い出すとそこは突然、『ふたりのビッグショー』に変身ですよ!
 演歌界の大物がご登場! って感じっすよ。
 流れるのはムード歌謡、高らかに歌い上げ、コブシなんかも回っちゃいますよ。

 う・わー。
 ハマコ、すっげえ。

 ハマコが出てくるたびに、わたしとWHITEちゃんはツボに入ってしまい、ふたりして笑いまくってました……声を殺して。

 いいよなあ、ハマコ。
 周りを顧みない、潔い役作り。
 ひとり浮きまくってるけど、きっと本人的にはノープロブレム、ぜんぜんOKなんだろーなー。

 おもしろすぎるよハマコ……。

 あの、熱い熱いバーニングハートなハマコが、ディディエだったら。

 ……想像するだけで、ものすごいことに。

「緑野さん……それって、こわいもの見たさってやつですか」

 と、デイジーちゃんは言う。
 あらそんな、マジで見てみたいと思ってるのよー。笑顔、笑顔。

 ハマコ・ディディエの「傲慢ぶり」。
 ハマコ・ディディエの「冷酷ぶり」。
 ハマコ・ディディエの「がーん、大ショ−−ック!!」。
 ハマコ・ディディエの「……愛してる」。

 ああっ、見たい〜〜。
 心の底から、見てみたい〜〜。

 くどいだろうなあ、こってり濃いんだろうなあ、大暴走するんだろうなあ、場をかっさらって自分ひとりスポットライト浴びるんだろうなあ。
 ああ、彼の名は舞台荒らし!!(笑)

「どうしよう、ハマコしか印象に残ってないよ……」

 と、WHITEちゃん。

「雪バウはまちかめぐるしかおぼえてないし、雪中日はハマコしかおぼえてない。……どーしてくれるのよーっ」

 どうしてくれる、と言われても……そんなの、わたしのせいじゃないし。

 ああ、いろいろとたのしかったわ、中日公演。
 てことで、明日の欄に続く。

 
 『送られなかった手紙』でいろいろ欲求不満だったこともあり、オサアサで癒されようと(笑)、またしてもムラへ出かけました。花組公演鑑賞。

 芝居はアドリブだらけで、出演者たちの苦労がにじみ出ていました。
 そう、駄作を盛り上げるのは出演者たちの力業。がんばれ花組!

 でも、どんなアドリブも、わたしは笑うことができませんでした。
 わたし、笑いのツボ、狭いのよ……。

 ショーは大好き。
 オサアサにおなかいっぱいになれる構成。

 てゆーかさ。

 マジで一度、オサアサでラヴストーリーやってくれないかな、と思った。
 男役同士で。

 これだけ、男ふたりで意味ありげに絡めて、ファンがそれでよろこんでいて、劇団もそれをわかっていてさらに煽っている現状で。

 どーして、やらないの?

 赤字解消に、どかんと一発打ち上げてくれよー。
 男同士の精神愛という建前で、「でもアレ、どー考えても恋愛じゃん」という内容で、やっておくれ。
 原作と脚本を誰かしっかりした人に書いてもらって、演出を斎藤吉正でお願い。

 あー……見てーなー、オサ様とアサコちゃんのラブストーリー。
 目に美しいだろーなー。

 と、現実逃避な妄想にうつつをぬかしつつ。

 劇場からの帰りに、チケットカウンターに寄った。

「次の星組公演初日の、立ち見券を1枚下さい」

 端末を操作したおじさん曰く。

「申し訳ありませんが、席券が売り切れていないので、立ち見券はありません

 が−−−−ん。
 初日、売り切れているのはまだS席だけなんだって?! それじゃ立ち見券は当日も発売されない可能性高いってことっ?
 緑野、ピ−ンチ!!

 立ち見料金しか出せないのに! てか、はなからそのつもりだったのに!
 どうしよう。初日行くのあきらめるかな……。(花組を1階S席ばっかで観てるから金がなくなるんだよ……でも、客席降りがたのしいから、つい……)

 神様、星組初日に立ち見券が発売されますように。

 
 トド様のディナーショーのポスターにほれぼれと見とれる。

 美しい……。

 ディナーショーに行く金などないが、美しいモノは美しい。そして、美しいモノは、しあわせな気持ちにさせてくれる。
 だから、美しいトド様を眺めているのは、しあわせなのだ。

 わたしはトド様ファンだが、「ファンです」と言えないくらい、びんぼーだ……。

 てか、トド様のファンはどーしてあんなにお金持ちなの……。
 トド様公認アクセサリが10万円って、なんすかそれは。
 今回のディナーショーだって、某オークションサイトを眺めていたら、「席未定」なのに61000円で落札されていたよ。ろくまんえん……。

 そう、一昨年だっけかのトド様コンサート、千秋楽でもなんでもないふつーの日のそこそこの良席が、「21万円」で落札されていたときには、見ていて「ごめんなさい」な気持ちになった。
 1回のコンサートに20万以上ぽんと出せてはじめて、トド様ファンを名乗るべきだわ……あたしなんかがファンだっつったら、おこがましいわ。泣。

 あんときは、「ひょっとしてトド様退団するんじゃ……?」と疑ったよ。だって、ふつーの日のふつーの席に20万はおかしいと思うじゃん! わたしみたいな貧乏人の感覚では、それくらい出すときはさよならを見送るときだと思っていたのよ。
 そっか、トド様だもんね……ファンはそれくらい平気で出すもんなんだわ。

 さて。
 びんぼーだがこの道16年のトド様ファンのわたしは、ディナーショーのトド様の画像をPCの壁紙にして、うっとり眺めております。そう、わたしにはこれが精一杯。愛はあるが、金はないのよ。

 ああ、美しい……。
 (これでけっこー満足している・笑)

 
 
 映画に行くつもりで、早く起きた。
 ひさしぶりに、見たい映画がいっぱいある。ヒュー様を見に行かなくちゃだし、四谷怪談(笑)も気になる。1日に2本は見られるよね、と、いつもの映画館のHPのタイムテーブルを眺めながら予定を立てる。

 だが、ふと気づく。
 今日、祝日じゃん……。

 映画は、あきらめました。
 混んだ映画館、きらいだもん。
 人が多ければそのぶん、マナーを知らない人と遭遇する確率が上がるし。
 日曜祝日なんか、ふだん映画を見ない人がいそいそやってきて、茶の間のテレビを見ている感覚で食べつづけ喋りつづける可能性が高くなるじゃん。

 つーことで、来週に見送り。無職の引きこもり女には、祝日はありがたくないことの方が多い。

 引きこもりのオタクらしく、昔のアニメビデオの整理でもしていましょう(笑)。
 つーことで今は、『メロウリンク』ですわ。うわー、丸い……こんなに丸い絵だったのか、『メロウリンク』。
 全12話をいったんHDDに録画し、それをサブタイトルごとにデータを分割して、文字情報を入力する。そのあとであらためて、DVD−Rに録画。高速ダビング不可なので、正味録画時間がかかる。全工程でで12時間ほど。
 つっても、入力作業をしているとき以外は、働いているのはDVDレコーダであってわたしではないので、わたしは他のことしてるけど。『イデオン』のときみたいに、うっかり見ちゃうと、全部見るはめになっちゃうから(笑)、一切見ないでダビング。

 それでも、なつかしさはつのる。
 エロいアニメだったよねえ、『メロウリンク』。男の描く「男の世界」ってやつはどうしてこう、女から見ると爆笑モノでエロいのでせう。

 そして、思わず目頭が熱くなってしまうのは。
 このビデオは、WHITEちゃんが録画してくれたものなのよね。
 WHITEちゃん……わざわざ、アニメとまったく同じ書体で、タイトルをレタリングしてくれてるの。手書きよ。コピーじゃなくて、手で写してある。
 インデックスもワープロ打ち(PCにあらず)してあるし。
 昔から、まめなオタクだったよね、WHITEちゃん。

 
 退屈で大変だった『送られなかった手紙』
 つまらなくて大変だった、『送られなかった手紙』。

 それでも、やほひ妄想は存在するのだ、ああびっくり。
 この場合の「びっくり」は作品についてではなく、腐女子な自分にです。

 とりあえず、ドミトリー@いっぽくん、モテモテ

 出てくる主立ったキャラクタはすべて、もれなく彼にラヴでした。
 いっぽくん自身に色気がないので、あまり感じられませんが……じつは彼、モテモテだったんですよ。あの愉快なご婦人たち以外にもね。

 なかでも群を抜いて愉快だったのが、皇太子@茜ちゃん。

 いやー、濃い。つーか、くどい。
 やりすぎじゃないの?ってくらい、ひとりでトバしてたけど、あれはいいのかな? わたしは笑いをかみ殺すのに必死だったんだけど。
 いや、わたしは茜ちゃん好きだからいいけど、世間的にはどうなの?
 席が真下だったせいか、ふくよかな顎のラインがやたら目についちゃって、それがまた、彼のキワモノぶりに拍車をかけているというか……たのむよ茜ちゃん、もー少し痩せてくれ。

 皇太子、ドミトリーを愛してたよね?

 それもかなりの鬼畜愛だよね? いぢめてなんぼ、だよね?(笑)
 皇太子があのくどさとトバし具合で、ドミトリー口説いてコマして、ベッドに引きずり込んだのかと思うと、目頭が熱くなりますなあ。

 え? やってたでしょ、すでに?
 関係はできあがってたよねえ? 幕と幕の合間、脚本に書かれていないところで(笑)。

 だからこそドミトリーは、あそこまで精神的に追いつめられてゆくのよね?
 自由を求める詩人の彼が、権力と愛欲の檻の中につながれてしまったから。
 だからこそ「皇太子は僕の親友だからね」/「冗談だよ」という台詞があるのでせう?
 あの台詞、彼が皇太子の愛人ならば、ものすげえ萌えなんですが(笑)。

 つねにドミトリーを監視し、コスプレを強要し(侍従服・笑)、彼の妻に手を出し、精力的にねちこくいたぶりまくる皇太子万歳。ドミトリーが屈辱にふるえる姿を鑑賞するのが、皇太子のおたのしみなんだろーなー、と思わせてくれるあたり、すばらしいです。

 どんどんやさぐれていくドミトリーに、場違いなほどハートマークをとばす愉快な兵隊さん@ラギちゃんもいい感じ。
 彼ののーてんきな明るさが、ドミトリーをより痛々しく見せてなおヨシ。
 そーよねー、こういう無邪気な崇拝者を配置するのは定番よね。セルジュにだって、彼に一方的にあこがれてる少年がいたよねえby風と木の歌。
 ラギちゃん、せっかく美形で目立つ子なんだから、もっと使ってやってほしいわん。新公の沖田総司以来、役らしい役を思い出せないんだが……あれって何年前よ?

 美貌といえば、そらくん。どこにいても目立ちまくり……群衆役にそぐわない子だ……。
 この美貌のそらくんの役もまた、ドミトリーLOVEな男のひとり。
 軍人トリオ@ちー坊、水純くん、そらくんは、うっかりドミトリーに惚れてしまったために転落人生に加速がついたとゆーか。

 男たちはドミトリーの「詩人としての才能」に惚れて、彼の詩に煽られて反乱起こしたり、監視したり、嫉妬したり、という設定らしいが。

 素直に、ドミトリーの美貌に惚れたってことにしとけばいいのに。
 だってドミトリー、かけらも天才に見えないんだもんよ……。
 いっぽくん、美貌はあるけど、あまり賢そうな芸風じゃないから……ゲフンゲフン。

 いーじゃん、美青年に惚れて、人生誤りました、で。
 すげー説得力あるぞ(笑)。

 ドミトリーの親友ふたり@まちかめぐると、いづるんもまた、ドミトリーのことばっか口にして、彼ら自身の人生はカケラも見えてこなかったし、ダンテス@チャルさんにしろ、伯父様@ヒロさんにしろ、ドミトリーLOVEですべて片付けても、大丈夫、話はつながるよー。てか、よくわかんねー「天才」ぶりより、わかりやすいよー(笑)。

 てことで、つまんねーつまんねーと言いながらも、自分なりに、ある意味たのしく鑑賞した公演でした。

 『アメリカン・パイ』とか『Romance de Paris』とか、つまんねー話は脳内変換してたのしむ癖がついている模様(笑)。

 でもこの『届かなかった手紙』をこっち側へひっくり返してくれたのって、全部茜ちゃんの功績な気がする……(笑)。

 
 雪組バウ公演『送られなかった手紙』鑑賞。

 …………先に観ていたWHITEちゃんから、メールが来ていた。

「まちかめぐるに、おなかいっぱい」

 まちかめぐるか……。

 最初にこの公演のポスターを見たのは、いつだっけか。けっこう早くに、ムラにいたときに張りだしてあるのを見た。
「かっこいいじゃん」
「壮くんきれー」
 てな会話をし、
「あ、またチャルさん出てんだ。太田芝居にはチャルさん必須かな」
「てか、アモナスロも出てるから、『王家』コンビじゃん」
 てな会話をし、さらに、
「他の出演者は……あ、まちかめぐる」
「まちかめぐるだー」
 てな会話をし、その場を後にした。

 後にしたあとで。

「で、ヒロイン誰?」
「さあ?」
「2番手は?」
「さあ?」

 なにやってんですか、わたしたち!
 専科さんとまちかめぐるだけしか確認しないなんて!
 てかわたしたち、じつはまちかめぐるファンだろう?!

 てなやりとりがあっただけにな。
 WHITEちゃんは、

「緑野があんまり『まちかめぐる』『まちかめぐる』って言うから、アタシまでまちかめぐるしか目に入らなくなってきたよ……どうしてくれるのよ」

 と、嘆いてます。いいじゃん、死なばもろともだよ。まちかめぐる、うまい人なんだから、ファンしても罰は当たらないよ? ……たぶん。

「まちかめぐる……ああ、まちかめぐる……」

 WHITEちゃんはうわごとのよーに、つぶやく。
 えーと。
 主演は、いっぽくんだよねえ?

 まちか氏以外に、感想はないんかい(笑)。

 いい噂は耳に入ってこない、この公演。
 わたしとしてはなんの期待もせず、「きれーな人たちを間近で見られればそれでいいや」な気分で出かけました、最前列ドセンター席。

 えー、感想をひとことで言うと。

 つまらなかったです……。

 舞台は19世紀後半の帝政ロシア。名門貴族の子弟ドミトリー@いっぽくんの魂の安息を求めた遍歴っちゅーか、半生を描いた物語。

 物語は、破綻していません。
 ちゃーんとふつーに書かれている。
 しかも、お貴族様で、天才で、恋があって横恋慕やら不倫があって、サロンやらパーティがあって、謀略があって反乱があって戦闘シーンがあって、友情があって家族関係云々があって、と、盛りだくさん。
 よくこれだけのネタを詰め込んだよな、と思うくらいサービスたっぷり。

 なのに、物語はめちゃくちゃ平板。

 盛り上がるとこって、どこですか?

 これだけいろんなことか起こって、いろんなシーンがあるというのに、この退屈さはなんだろう。
 壊れているってわけでもないのに、大して複雑なプロットでもないのに、このすっきりしなささはなんなんだろう。

 よくできているのに、ただ、退屈。
 とりたてて大きな欠陥があるわけじゃないのに、つまらない。

 最後まで観て、思ったよ。

 で、なにがやりたかったの?

 外側だけをなぞった物語、なんだと思った。
 ドミトリーという「天才」の一生の物語の、あらすじだけ書いたらこうなったんだろう。

 なにしろあらすじだから、内面までは触れていない。
 こんなことがありました、次はこうなりました、そしてこんなことになりました。
 出来事の箇条書きですね。

 そりゃつまんねーわ、そんなもん。

 いくらダンスや歌でつないでいっても、派手になりようがない。盛り上がるはずがない。
 あらすじじゃあ。

 あらすじではなく、「物語」にするためには、もっと練らなきゃだめだよ。
 ドミトリーという人物を、ちゃんと書き込んでくれよ。
 彼の年表を観たいわけじゃないんだ。彼の心の動きを知りたいんだ。

 まず、彼が「天才詩人」であることを大きく打ち上げる。
 具体的に世間様にどう影響を与えているのか、解説台詞じゃなくて「出来事」で示してくれ。
 それゆえに「危険人物」として政府からマークされるんだっていう流れを打ち出してくれ。

 主人公の外側の設定を、はじめに教えてくれないと、納得できないよ。

 なるほど、これだけ影響力を持った人物なら、そりゃ権力者には嫌われるし、また彼に嫉妬し憎むモノも出てくるわな、と。

 外側を描いたら次は内面だ。
 ドミトリーがなにを悩み、なにに飢えているのかを象徴的に挿入。
 そりの話は最初からやってヨシ。なにかにつけて持ち出してヨシ。テーマ部分の伏線ってのはそれくらいするもんだ。

 そこまでやった上で、残った部分で「年表」をやればいいんだ。

 なんか、本末転倒している気がする。
 「年表」を描くのが目的で、その言い訳に主人公の内面に簡単に触れただけ、みたいな。
 ストーリーが先に決まっていて、心の辻褄が合わなくてもとにかくその決まったストーリー通りに展開させなくてはならないテレビドラマみたい。

 「心」の動きが書き込まれていないまま、「年表」を正しく消化し、ENDマーク出ました、みたいな退屈さ。

 あー、長かった……。
 どこへ向かっているのか、なにがしたいのかわからない、盛り上がりもないまま1幕が終わり「えっ、これで幕?」、2幕もそのままのテンションでまただらだら進み、そのくせラストのドミトリーの伯父@ヒロさんは「ええっ、そんな伏線どこにっ?!」の唐突な告白をしてEND。
 長かったよ……。

 その間、やたら目につくまちかめぐる氏。
 ああ、センターで踊るまちか氏を目にする日が来ようとは。長生きはするもんですな。

 とりあえず、いっぽくんはきれいでした。

 とってもきれいでした。
 リヤカー……じゃなくて、そのよーなものを使ってのダンスシーンはいちばん好き。
 かっこいー。

 ……でも、この芝居は彼には荷が重すぎたと思います。
 あらすじでしかない脚本をふくらますことができるほど、彼に芝居力はありません。

 あてがきしてやれよ、演出家。

 すばらしかったのは、またしてもチャルさんです。
 いやー……すごかった……。

 やンらすぃ……。

 なにしろ前補助センターに坐ってましたから、わたし。
 チャルさんが軍服姿で、わたしのすぐ鼻の先で女をタラシてみせてくれたときには、ずきゅんとキました(笑)。
 ぐわあ、すごすぎ。シャレになんねー。
 この男になら、そりゃ女は惚れるわ……。しみじみ。

 マーリヤ@晴華みどりちゃんが素敵でした。堂々たるヒロインぶり。
 なんでもっとちゃんと恋愛モノにしてくれないんだろうね、演出家。一代記なんぞより、どっぷり本気の恋愛モノの方が客のニーズは高いのに。
 結局まともなラヴシーンひとつナシかい。
 美男美女が主演してるってのにさ。

 ナターリヤ@涼花リサちゃんは、とっても好みでした。
 あのマンガにできそうな顔はいいなあ。わたしにでも似顔絵が描けそう。

 いづるんは……あまりに地味でかなしい。
 埋没してる……。
 色物の方が得意だよね、いづるん。
 ふつーの役をやると、埋没して見えなくなるんだよ……しょぼん。

 そして、なかなかツボだった皇太子@茜ちゃんと、腐女子話をしたいので、次の欄へ続く。

 
「あんまりDVDばっか買うから、職場でアヤしい人だって思われてるよ、きっと……」

 弟は遠い目をしてそう言う。

 ええ、弟に社販で家電用のDVD−Rをしょっちゅう買ってきてもらってるのですわ。さすがに社販、どこの店で買うより安く手に入るので。

 ふふふ。アンタ絶対、オタクだと思われてるよ。月に何十枚もDVD−Rを買う奴なんて、オタク以外にないって。
 もしくは商売している、ヤバい人?

「姉がオタクなんです、って言っておこう」

 ヲイ。アンタの店に恥ずかしくて顔を出せなくなるから、やめろ。

 メディアが安く手に入るようになったので、昔のビデオテープをがんがんRに焼いていってます。
 捨てるのはなんだかな、しかし保存版としてきちんと残すにはもう画像がかなりやばめ。とりあえず、今現在のこの汚い画像のままストップさせ、これ以上劣化させないことと、保存場所の節約、だけの目的でDVD化。
 おかげでここんとこ、DVDレコーダの稼働率はすごいです。1日のほとんど、わたしが寝ている間さえ、えんえんえんえん、働いているよ……。

「やっぱ『イデオン』ってさ、とんでもない話だったよねえ……」
 と、わたし。

「どっから『イデオン』……」
「いや今、DVDに焼いたとこだからさー。テレビ版全39話と、映画2本立て」
「持ってたんかい、そんなもの」
「持ってたんだねえ。忘れてたけど。テレビ版のラストなんかさ、ほんとに『打ち切りっ!』って感じ、めちゃくちゃな終わり方してるよ。せっかくカララとジョリバがイデの力で無事に戻ってきたのにさ、『そのとき、イデが発現した』で、なにもかもめちゃくちゃに。子どもが積み木のお城を癇性にぶちこわすみたいに」
「同じ打ち切りでも『ガンダム』みたいに、なんとかカタチにすることが不可能だったんだろうなあ」
「うっかりテレビ版見ちゃったら、こりゃ発動篇見るしかないなー、って気になるよ」
「見ながらダビングしてたんかい」
「全部じゃないけどねー」

 そっから話は富野由悠季論になり、何故か平井和正の話にまで流れていく(笑)。

 で、つい、見ちゃったよ、「発動篇」。
 今見ると、ハルルのやるせなさが、好みだなあ……。

 ところでテレビ版の後半、ギジェが仲間になるあたりからは見ながらダビングしてたんだけど。
 コスモってさあ、なんであんなにギジェのこと好きなの?
 周囲が「こいつは敵」という態度で接しているときでも、コスモだけはさりげなーくギジェ擁護。しかもかなり大人な感じで。

 コスモ×ギジェか……。
 子どものころは、考えもしなかったなあ。
 ダラム×ギジェとかは、定番として考えてたけど(笑)。

 ヘタレ男好きなので、もちろんギジェは好きです。彼の転落人生がツボ。

 しかし、『イデオン』を見てると、ゆうきまさみのパロディが頭をよぎってしょーがない……(好きだったなー)。
 
 
 ちはる兄貴のお茶会に行ってきました。

 舞台でフェロモン垂れ流しの色男(今回、芝居はハゲじじいだけど・笑)、ちはる兄貴。
 わたしが舞台の兄貴と出会ったのは、いっちゃんのお披露目公演『天国と地獄』でした。
 娘役2番手のリンゴさん(笑)の遊び仲間の、自堕落な不良貴族役。たしか朝景るいとコンビだった。
 かっこよかったんだわ。
 美貌の朝景るいとの対比で、男っぽさが際立っていて。
 不良貴族としてのキャラ的には、朝景るいの方が好きだったんだけどね。不良ぶりを古代みず希サマに罵られ、それに反発するカタチでそのシーンは終わるのだけど、幕が下りるそのとき、一瞬だけ朝景るいの方は「弱い表情」をする。泣きそうな。それが好きだった。
 でもそれは、最後までふてぶてしい顔をしたもうひとりの不良貴族が横にいるからこそ。ちはる兄貴あってこそ。
 兄貴の兄貴たる所以ともいえるあの「声」は、当時から響きわたってました。

 それ以来注目するようになったので、「あのしぶーい男役、矢吹翔っていくつなのかしら」と興味がわいて、「おとめ」で調べて愕然としました。
 ええっ、まだ研8? てか中卒?! でもって愛称「ちはる」?
 なんか、すごくショックだった。いろいろと。

 年下かい。

 でもって、「ちはるちゃん」すか……あの顔で、あの声で、あの芸風でちはるちゃん……。
 当時、わたしには同じ名前の友だちがいたので、わたしにとって「ちはるちゃん」といえばその子だったことも大きい。友だちのちはるちゃんは、ぶりぶりのロリータファッション娘だったんだよ……ベビーピンクがテーマカラーで、ぼんぼりつきコートやらリボンの編み上げ靴とかを当たり前に身につけている子だったんだよ……。

 最初に不良貴族役でハマっただけに、わたしが「ちはるちゃん」に求める役は、「黒い役」でした。
 『二人だけの戦場』なんか好きよ。しぶい悪役を期待していたから、『大上海』の「いい人役」なんかは物足りなかった。
 本格的に彼にめろめろになったのは、なんといっても『アリスの招待状』。あの愛すべき大駄作(笑)。
 そのころわたしは、『大上海』で「江上さん」役をやった汐美真帆にすこーんとハマり、友人のクリスティーナさんとふたり「江上さんラヴ♪」をやっていた。『アリスの招待状』も江上さん目当て。オカマ役(語弊アリ)だったんだけどね、ケロちゃん(笑)。
 その『アリスの招待状』で……ちはるさんが完全に忘れられない人に!(笑)
 ちはるさんの役は、ジェイコブ教授。ぎらぎらの中年考古学者。……ただし、ひとめで「ヤクザだ(笑)」とわかる。『天使の季節』の魅惑の王子@アサコちゃんじゃないけど、独特の「ジェイコブ教授ステップ」で登場、ひとこと喋るたびにポーズを決める。出てくるだけで大爆笑。濃い。めーっちゃくちゃ、濃い。
 そしてクリスティーナさんとふたりして、「ジェイコブ教授ラヴ♪」になり、思わず出待ちなんかしちゃったのでした。いや、本命は「素顔の江上さんを見るぞ」で、「江上さんってファンいるの?」で、生のケロちゃんを間近ではぢめて見て、「ぶすぢゃない」ことに驚愕し(失礼な!)、そのファンの多さにさらに驚愕したのも今となってはいい思い出です……(重ね重ね失礼な)。
 で、そのときにちはる兄貴もはじめて生で見ました! はい、素顔もぜんぜんジェイコブ教授、違和感なしでした!

「舞台と変わらない……」

 それって女としてどうなの? 20代半ばのぴちぴちの娘さんとしてどうなの?(笑)

「矢吹翔って、トドロキさんより年下なんだよね……」
 と、当時クリスティーナさんが呆然とつぶやいていたことが、忘れられません。
 注釈しておきますと、当時はトド様だってまだぴちぴちの若者で、舞台では青年役どころか少年役をやっていたりしたのでした。「ジャニーズ系美少年」とか言われててな。

 実年齢の若さがショックなくらい、「大人の男」のちはる兄貴。「兄貴」という形容がぴったりくる色男。
 彼の色気はガキにはわかるめぇ、大人の女だけが味わうことのできるいい男。
 兄貴にハマって「兄貴、兄貴」とうるさいWHITEちゃんを連れて、初のお茶会参加。
 あれほどヅカのグッズを買ったことのないWHITEちゃんが、兄貴の写真を買いあさってました。ハゲヅラの写真まで。……君、ほんまに好きなんやな……。

 もちろん、ちはる兄貴は素敵でした。
 うっとり。

 しかし、あの細さはなんなんですか。てか、ケツちっちぇえ。女の尻じゃないですよ、あれは。……はっ、失礼、兄貴は女じゃなかったですね!!
 ヲトメなこのわたしは、兄貴のあまりの華奢さに「あたし、兄貴のこと姫抱っこできるかも……」などという、不謹慎なことを考えてしまいました。あ、この日ももちろん、ぺた靴履いていきました。ダーリンより背が高くなってはイカンので!

 お話もとてもおもしろく、堪能して帰路につきました。

 ただひとつ、残念なことが。

 売っている兄貴の写真のほとんどが、わたしの求める「矢吹翔」ではありませんでした。

 わたしは『天国と地獄』の不良貴族で着目したの。黒い役や悪役、色気あふれる妖しい中年男の彼が好きなの。
 もちろん、ジェイコブ教授のような三枚目も好きだし、愉快なお話をしてくれる素顔のちはるさんも素敵だったけれど。

 売っている写真、どーしてさわやか笑顔のきれーなおねーさん風ばっかなのっ?!

 「男役」矢吹翔の素顔写真が欲しかったよー。よー。よー。(かなしみのエコー)

 寿美礼ちゃんのパーソナルブック並の、恥ずかしいまでにブラックにキザった矢吹翔さまの写真集が欲しい……。

 
 ママがいそいそと、わたしの部屋にやってきました。

「メールを見たから、来たわ」

 と。

 ええ昨夜、ママにメールを出しました。
 以前見失っていた辞書サイトを発見したので、ママにもお裾分け、とURLを貼って送りました。ママも辞書は使うだろうから、と。

 でもなんで、わたしの家に来る必要があるの?

「だって辞書をくれるんでしょ? さあ、ちょうだい」

 と、手を出す。

 がっくり。

「あのね、ママ……」

 送信履歴を出して、メールの読み方を説明。
 この青く色が変わっている部分をクリックするの。
 そしたら別窓が開いて、この画面が出るの。
 これが「辞書」。わかる?
 調べたい単語を、この窓の中に入れて、「検索」と書いてあるボタンをクリックするの。
 するとほら、こんなふーにいろいろ言葉が出てくるでしょう? 便利でしょう?
 ママのパソコンで、ママが使うことのできるHPの情報を送ったのよ、わたしは。

「まー、すごーい。アタシはてっきり、アンタがなにかくれるんだと思ってやってきたのよ。重いモノをもらってもいいように、こうやって手ぶらで!!」

 ……脱力……。

 

< 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 >

 

日記内を検索