『カサブランカ』は、キャラ萌え作品である。

 物語には、ストーリー主体のものと、キャラクタ主体のモノがある。
 で、『カサブランカ』はキャラ物だと思う。ストーリーのおもしろさだけで真っ向勝負はしてないよね? リック@ゆーひを含めた、キャラクタを好きになってはじめて成立する作品だよね?

 だって、リックを好きでなかったら、タル過ぎるでしょ、この話。

 1時間半にスピーディにぎゅっと凝縮されていたら、まだストーリーにも重点があったかもしれないけど、2時間半かけて表現するにはあまりにストーリー部分が少ない。
 水増しして引き伸ばした分、キャラに萌えてね、ってことっしょ?

 つーことで、素直に、萌えました(笑)。

 リックと男たち萌え。

 リックはもお、お約束みたいな主人公。
 訳ありな過去を1ダースくらい背負っていることもそうだが(笑)、なんつっても登場人物全員から愛され、求められているところが、もお(笑)。

 老若男女問わず、みんなみんなリックが好き。リックが気になる。リックが世界の中心。

 そんだけ一方的に愛され、求められておきながら、当の本人は「オレって孤独」と勝手に殻に閉じこもっているわけですよ!
 みんなが欲しくてたまらないものをあったりまえに持ちながら、「興味ないね」と孤高ポーズ決めてるんですよ!
 それは自由への通行証を持ちながら、ソレのために殺人も当然、全財産投げ出してもいい、って他人が思うシロモノを持ちながら、「こんなのいらねーし」と思っていることと同じ。
 そりゃ「ナニサマのつもりよ?!」となじりたくもなるわな。愛されても「興味ねー」、通行証持ってても「興味ねー」。

 全世界の人がうらやむ境遇でありながら、彼の飢えは癒えない。

 彼の飢えを癒すことが出来るのは、世界でただひとり。
 なにごとにも動じない乾ききった男が、唯一取り乱すのは、ただひとりのこと。

 ……このギャップがたまりません。

 イルザ@ののすみが絡むときだけ、別人になる、しかもそれを隠しもしない、とゆーのが萌え過ぎる(笑)。

 しかもイルザは、リックを愛していないし。

 タカラヅカのお約束としては、「ヒロインは主人公を愛していた。けれど、別れるしかなかった。主人公はヒロインの幸福のためにあえて身を引いた」という展開なんだと思うけど、「愛し合っているのに、別れてエンドマーク」だと思うけれど、この『カサブランカ』ってそうじゃないよねえ? 
 プログラムにも「互いに封印していた気持ちを蘇らせたリックとイルザ」「イルザも又、リックとは別れられないと悟るのだった」とあり、ふたりが真に愛し合っていたと書かれてはいるようだ。作者はそう思って演出しているのかもしれない。
 ……でも、わたしがどう感じたかは別問題。

 パリでのイルザは、たしかにリックを愛していたと思う。だからこそ、その別れでいちばん泣けた。
 ののすみが泣くと、全世界が泣く。
 永遠の別れを決意しながら、涙を堪えて微笑んでキスをねだる姿に泣いた。

 ……でも、カサブランカで再会してからのイルザは、リックのこと昔通りには愛してないよね? 彼女がいちばん愛し、いちばんに考えているのはラズロ@らんとむのことだよね?
 リックから通行証を奪い、ラズロを逃がすためだけに、すべて計算尽くでリックに色仕掛けしたんだよね? アニーナ@アリスが夫への愛ゆえに、ルノー@みっちゃんに身を売ろうとしたように。愛する人を救うために、涙をのんで悪党へ身を差し出したんだよね?

 ヒロインから悪党認識される主人公!!(笑)
 なにソレ、美味しすぎる!!

 いや、イルザにもリックへの愛情やら憐憫やらはあったと思うけれど。それを愛だとゆーことにしても、かまわないんだけど。
 タカラヅカらしく、リックへの愛が真実、ラズロへのキモチはただの尊敬や情にすぎない、としてもいいんだけど。

 わたし的には、リックはイルザに利用されたとする方がより萌えです。

 結婚式を夢見てわくわくとコートの襟を立ててカッコつけて待っていた、そのまぬけさ……ゲフゲフン、もとい、純粋さそのままに、「もうアナタから逃げられない!」と腕の中に崩れ落ちてくる女の言葉をそのまま信じて舞い上がっちゃうなんて、ステキ過ぎるぢゃないですか!! ついさっきまで、他の男のために拳銃向けていた女なのに!!(笑)

 一旦は女の愛の言葉を全部信じて盛り上がって、だけどそのあと、はっと気づくわけだ、「ひょっとしてオレって、ルノーと同じじゃね?」と。ビザが欲しけりゃ一晩つきあえと言う、あの助平親爺と。いやいやいや、ルノーと同じはマズイだろう、いくらなんでも! オレそこまで落ちぶれてなくね?! ……葛藤するリック(笑)。
 で、その反面教師のルノーを巻き込んで、最後の大作戦ですよ。ええ、わざわざルノーを巻き込むんだもん、心理の流れというか、ワケがあったわけですよ! 伏線もばっちりですね!

 最後の飛行場場面でリックがラズロに「それくらい彼女は君を愛していたんだ」と告げる台詞は、全部そのまんま、これこそ真実。
 や、これを言わないとリックとしてはやってられないでしょ。このまま黙って行かせたんじゃ、イルザは、「リックは最後まであたしが自分を愛していたと信じ込んでいたわ、バカな男ね」と思っちゃうじゃん? 先に「オレは全部お見通しだったんだぜ、演技だとわかってて調子を合わせただけだ」と強がっておかないと!
 やせ我慢は男の美学。男の憧れ。ハードボイルド万歳(笑)。

 かわいい男だなあ、リック。
 つか、リックが「いい奴」だってみんな知ってるんだよね。
 リックがアニーナ夫妻を助けたとき、店の従業員たちが「ボスがはじめて情を見せた」と大喜びするけど、あれって「そもそもボスは人情家である」という前提があってこそだよね。本当に冷徹な人が相手だと、喜ぶよりは驚いたり引いたりするだろうし。

「ボスってかわいいよな、クールぶってるけどほんとはいい人だって丸わかりだっつーの」
「しっ。本人は隠してるつもりだから、オレたちも気づかないふりしてやんなきゃ」
「ほんと面倒くさい性格だよなー(笑)」
「無理してツンツンしちゃってさ。いつデレるんだろーな(笑)」
「でもそこがかわいいんだよなー」

 ……てなもんで、みんななまぬるく見守ってるんだよね。
 そんな意地っ張りさん(笑)がついに、殻を破ってやさしさを表現した、ってことで、みんな大喜び、サッシャ@みーちゃんはチューまでしちゃう、と。
 
 みんな知ってる、リックのかわいさ。みんなリックにめろめろ(笑)。

 リックを演じているのがゆーひだから、クールビューティ完璧だから、それゆえさらに際立つかわいらしさ。これがもっとアツかったりハートフルだったりする持ち味の人だったら、ここまでギャップ萌えはできないだろう。
 あの温度の低い乾いた様子と、カッコづけと正反対の行動が愉快でならない。

 美貌も富も、人々の愛と尊敬も、なにもかも持っているのに、心に飢えを抱いたままの37歳。……37にもなって、心は中2のよーなナイーヴさ(笑)。
 いやあ、なんて萌えな主人公なんだ。

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