わたしの目に映った、レット・バトラー@トドロキを語る。
 しつこく月組公演『風と共に去りぬ』の話、続き。

 バトラー@トドロキは、スカーレット@まさおを愛していることを、認めた。見て見ぬフリをしてきた、気づかないフリをしてきた、自分の心に降参した。

 そしてバトラーは知っている。
 スカーレットを手に入れるために必要なことを。
 バカな彼女を手に入れるためには、愛を言葉にするのだと、わかっている。スカーレットは野生児、言葉の裏なんか読めない。言葉にした、わかりやすいことしか、理解しない。
 わかっていて、バトラーは言わない。
 「愛している」ではなく、「金を持っている」と言う。
 ここで素直に愛を語れば、手に入ったかもしれないのに。わざと悪ぶって、突き放す。

 そのことをクライマックスで、バトラーは後悔する。メラニー@ちゃぴに懺悔する。
 素直に愛を語らず、悪ぶっていた。そんな態度だから、幸福な夫婦関係を築けなかったと。

 だけど、素直にデレられないのがバトラー。
 言葉の裏を読めないのがスカーレット。

 求婚時のバトラーの芝居がやばい。
 マジやばい。

 彼はあそこで自分が求婚することになるなんて、あの瞬間まで思ってなかっただろう。
 フランク@ゆうきが死んだのも予想外だし、夫の死を妻に告げて、そのままその妻にプロポーズって、人としてあり得ない。
 あり得ないことをしてしまうほどに、彼は打ちのめされた。
 運命に。
 もしくは、魂に。
 バトラーがバトラーであり、スカーレットがスカーレットであるということに。

 苦しい。
 見ていて、切なくて切なくて、苦しかった。

 神を見た。
 そんなバトラーだった。


 マミー@汝鳥サマが語るように、バトラーはこのときを機に、変わったんだろう。
 スカーレットと結婚してからは、無頼漢でも浮気者でもなく、誠実に生きたんだろう。
 でも、「わかりやすくカタチになったモノ」しか理解できないスカーレットには、通じない。
 生き方を変えたところで、言葉にしなければ、おバカさんには理解できない。
 「おバカさん」ゆえの飾らない本能で、「愛されている」ことは見抜いていても、その他が全滅、ナニも伝わってない。
 むしろ「愛されている」からとことん無神経になっている。アシュレ@コマとの不倫が噂になり、飲んだくれているバトラーにツンケンしてみせるくらいに、スカーレットはわかってない。

 同じ魂。
 だからこそ、惹かれたし……だからこそ、相容れない。

 スカーレットは、「悪く転んだバトラー」。
 似ている、と思い、チガウ、と思う。
 元は同じ、根っこが同じ、だからこそ、今ここに在る差異は深い。
 なまじ同じところからはじまっているから、「チガウ」ことへの違和感、嫌悪感も激しくなる。

 惹かれる、愛している、それと同じ強さで、相容れない、共に生きられない、という気持ちが存在する。

 同じモノ、ってさあ、いらないんだよ。
 ここに球体があって、もうひとつ同じ球体が見つかったとしても。
 同じモノふたつ、いらないよね?
 四角ならまだ、積み上げたり並べたりも出来るけど。球体ってさ、積むことも並べることも、出来ないよね?

 バトラーとスカーレットって、そういうことだよなと。

 それでもバトラーは、同じ球体であるスカーレットを欲し、彼女に横にいて欲しがった。
 自由に転がることをやめ、球である意味を捨ててまで、立ち止まろうとした。
 スカーレットはなにも理解しないから、不安定な球体のまま、好き勝手に転がる。彼女が落ちて壊れないように、必死に留めていたバトラーの苦労も知らず。

 最初から、無理だった。間違っていた。
 彼女は彼の「欠けた一部分」じゃない。別の、同じ球体だ。ふたりはどうあがいても、重ならない。共に生きられない。

 だからラストシーン、バトラーはスカーレットを捨てて出て行く。
 彼は努力した。運命に抗おうとした。でもそれも、終わった。
 スカーレットを愛してしまったのも運命、彼女と生きていけないのも運命。
 愛を認めてしまった、運命に膝を折った……だからあとは、彼女を失う運命から逃れようと、抗い続けた。
 それすらも、ついに、手放した。

 スカーレットは変わらない。
 ダイアモンドは傷つかない、マグノリアはまた花を付ける。
 バトラーも変わらない。
 孤独を愛せないモノは、自由を愛することも出来ない。
 魂が見えた、そのきらめきが見えた。

 『風と共に去りぬ』って、こういう話だったんだ。
 そう、すとんと納得した。

 や、わたしにとって、このトドまさ『風共』は、そういう物語だった。

 いいもん観た。
 ほんっとーに、いいもんを観た。

 ときどきこんな体験も出来るから、タカラヅカってすごいと思う。


 そして、轟悠。
 すごい役者になったなああ。

 いやその、長く彼を好きで眺めて来ているので。
 彼の年輪も含めて、愛しく誇らしい。

 タカラヅカのすごさ。
 そして、タカラジェンヌという役者のすごさ。

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