『ベルサイユのばら―オスカル編―』初日感想メモにも書いたけど。

 ヲヅキが大人になってしまったことが、ショックだった。

 わたしは、ヲヅキのアランが好きだった。
 あれは2006年。コム姫主演の『ベルサイユのばら―オスカル編―』。
 新人公演で、ヲヅキはアランだった。

 荒くれで、男気があって、ハートの熱いアラン。やんちゃさと頑固さが素敵にミックス。いちばんに感じられたのは、「人としての、誠実さ」。

 新公も良かったけれど、さらにさらに素敵だったのは、そのあとの全ツ!!
 主演水しぇん。
 アンドレがちょー勘違い男壮くんだっただけに、「オスカル、アランとくっついちゃいなYO!」と本気で思った(笑)。

 新公では誠実で恋愛感情のあまり感じられないアランだったんだけど、全ツではその誠実さに加えて、「ひとりの男としての艶」みたいなものも感じられたの。
 だから、オスカルと恋愛ENDの妄想も出来た。

 水しぇん相手で、あんだけ男らしくダーリンが出来る人だ。
 公式テルキタなら、どんだけ素晴らしいだろう。

 ヲヅキさんとかなめくんは、仲良しこよし。
 イイか悪いかはさておいて、ふたりの関係性は、宙組でも踏襲されている。

 アランはヲヅキのハマリ役。彼の彼らしい魅力を、存分に発揮出来る役。
 そのヲヅキの、得意だとわかっている役で、堂々と大好きなかなめくんを愛し、守ってイイんだよ。
 どんだけ素敵なアランを見られるだろう……!!

 そう、期待していたので。

 登場したアランが、……以前わくわくどきどきしたアランとは違っていたことに、肩を落とした。

 なんだろう……とても、大人になっていた。
 大人……おっさん?

 アランはオスカルより年下で、青っぽい男だ。好きな女の子をいじめてしまうよーな、子どもっぽい、素直じゃないところのある、かわいい男だ。
 だけどヲヅキのアランは、そんな青さはなく、落ち着いた大人の……おっさんだった。

 もう若くなくて、分別をわきまえた男。
 第一線を退いた、半分隠居入ってるみたいな、請われて現役に席だけ残してます的な。
 立ち位置が他の衛兵隊士たちとチガウ。リーダーなんじゃなくて、や、リーダーなのはたしかだけど、OBっぽいというか。

 チガウ……これは、わたしが見たかったアランじゃないし、そもそもアランってこうじゃない。

 ハマリ役、これぞアラン!! と盛り上がった過去の記憶がはっきりとあるだけに……。

 寂しかった。

 ヲヅキは、大人になってしまったんだ。

 もう若気の至りみたいな、はねっ返った男の子は演じられないんだ。

 役者にも、年齢はあり、時期はある。
 その年齢でしか演じられないモノが、ある。
 ヲヅキさんは若い頃から子役からおっさんまでいろいろ演じてきたけれど、役者としていちばんはねっ返っていた時代は、過ぎてしまったんだろうか。
 あとは大人の男役として、年齢やキャリアにあったモノを演じる人になるのか。

 アランという「若い」役で、こうまで大人であることに、彼の役者としての限界っていうか、「時期」を考えた。
 まあたぶん、ヲヅキさんは若い美形役とか、いかにもなスターさんの役をやる「欲」が欠けているように思えるからなあ。
 おっさん役、真ん中を支える役を、とても誠実に務める役者。
 だからこそ、花形役を与えられると、意識の違いが出て、「なんかチガウ」になってしまうのか?
 若い頃はそれでも、真ん中寄りの艶のある役が出来たのにね。トップスターに必要なキラキラはなくても、その横に立つに遜色ない、男の艶があった。
 それが学年と共にどんどん渋い方へ成長していった……真ん中寄りの艶ではなく、舞台を支える重鎮としての魅力を増した。

 ヲヅキさんは大好きな役者。
 スターというよりは、役者。

 彼の才能を愛しつつも、「スター!」っぽかった昔をなつかしく思う。

 せっかく今、昔よりずっと「スター!」な扱いになってるのに。
 昔よりさらに脇体質になってるって、どうなの。

 もっと欲を出して、真ん中意識持ってくれていいんだけどなー。
 それによって役者としてのヲヅキさんがどう変わるのか見たいよ。
 だってヲヅキ、新公主演もバウ主演も、ナニもしてない。「真ん中に立つ」「興行を支える」「自分の名前でその公演を売る」経験をしていない。
 それだけの責任を負った、覚悟を持った、ヲヅキを見てみたかった。

 今回のアランは、あまりにも「今」のヲヅキだ。
 脇役だ。
 自分の分を知り、わきまえた芝居だ。
 粛々と役目を果たす「大人」の姿だ。

 なんか、寂しい。

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