誰を見るのか。見送るのか。
 ソレは正直、そのときになってみないとわからないもんだ。

 星組千秋楽。『エル・アルコン−鷹−』『レビュー・オルキス―蘭の星―』

 退団者、ということでなりふり構わず見つめていたのは、南海まりちゃんだった。

 みなみちゃんは、特別だった。
 その娘役らしい美しさと気品、昨今めずらしい姫役者であること、たしかな実力と華やかさ……それらすべてが好感だったし、ダイスキだったけれど。

 これが最後……そう思って見つめると、思い出されるのは「あのころ」の記憶なんだ。

 『ドルチェ・ヴィータ!』のデュエット・ダンス。
 そして、『Good Bye,Good Guy,Good Fellow』のすべて。とくに、「夜のボート」。

 わたしのシシィが、いってしまうんだ。

 そう思うと、悲しいというよりどーんと胸の中が重くなる。なにか他のものが詰まってしまったかのように。

 シグリット@みなみちゃんは、コケティッシュさが増していて、その賢しさが「うっとうしい女」であり、肉体と狡賢さを武器にのし上がってきた女のしたたかさを感じさせて、ぞくぞくした。
 すっげーヤな女なんだもの!! でも、すっげーかわいい女なんだもの!!
 キライだけどスキ。そんな、魔性の女、小悪魔。くうぅぅ、この女相手なら、そりゃーどんな男もオチるわ。そして、オチないティリアンのオトコマエが上がるってもんだわ。

 ショーでは、最初の白い服で蘭をくわえている場面……鳩なんですかアレって?のところで、すでに退団者たちは胸に花を付けていて、ずきりとさせてくれた。
 なんかイメージ的に、花を付けるのは後半、と思っていたから。
 最初から来るとは思ってなくて、はっとした。

 みなみちゃんの端正な姿を、目で追っていた。

 その長いおみ足も、堪能しましたよ。歌声と共に。

 袴姿での挨拶時、みなみちゃんのパールの入ったアイメイクに、意味もなく見入っていた。
 ああ、きらきらしているなあ。
 瞳がきらきらしていて、目の周りもきらきらしていて。
 特に目の下にまろやかな艶があることに、注目していた。

 涙ではなく、でも、しっとりと濡れているような。

 きれいなきれいな、笑顔なのだけど。

 どこか濡れているように見えて。
 濡れて見えるのは、わたしの目が濡れているせいなのかもしれないけれど。

 
 とくに誰を見るとか、決めていたわけじゃない。意識していたわけじゃない。
 ゆかりくんだってダイスキだし、退団しないからといって他の人を見ないですむわけでもない。トウコちゃん見てあすかちゃん見て、でもって今すげーブーム(笑)なしいちゃんを見て「はうっ」とときめいて(笑)。

 それでもなんか、要所要所でオペラがみなみちゃんを探しだし、喪失感に浸っている。

 わたしの、しあわせの記憶。

 ほんとうに、いい娘役さんだった。

 しあわせでいてほしい。ずっと。ずっと。

 他の退団者のみんなも。これからも花園に残り、戦い続ける人たちも。
 みんなみんな、しあわせで。
 

 ……さびしくてたまらないカーテンコール、退団者を眺め、トウコちゃんを眺め……で、しいちゃんの太陽の笑顔を見て、癒される。

 や、ほんとにクるよ、あの人の笑顔。
 どーんっと飛び込んでくる。
 胸の中の重いモノが、一気に流される。

 『Good Bye,Good Guy,Good Fellow』のときも、そうだったな。
 客席にいたジェンヌはゆうひくんも含めダダ泣きしていたというのに。トウコちゃんとか顔ぐちゃぐちゃにしていたというのに。

 しいちゃんは、笑顔だった。

 彼が泣いていなかったとかゆーことではなくて。
 ただ彼は、ディナーショーが終わって退出するとき、いつものあの大輪の笑顔だった、ということ。

 そしてそのことが、救いだったということ。

 理屈ではなく、癒された。
 あたたかいものに、ひとのこころは救われるんだ。

 
 そんなことを、思い出した。


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