見えない矢が、彼の胸に刺さる。@フットルース
2012年7月21日 タカラヅカ「わたしが君を必要としているって……!?」
「そうだが?」
「そんなことは断じてないぞ」
「うそつけ」
「だいたい何でわたしが、君を必要とせにゃならんのだ!?」
「孤独だからだろ」
『フットルース』2幕のクライマックス、ムーア@まっつとレン@キムくんのやりとりで、痛烈に思い出す。
カーターとジェームス@『パーム/あるはずのない海』。
シチュエーションも文脈もチガウんだけどね。
「私の気持ちは誰にもわからない、出て行け」
「待ってください、ムーア牧師」
「私はひとりになりたいんだ!」
「あなたはもうひとりぼっちです!」
……毎回、すげー殺し文句だなと思う。
レンに「ひとりぼっち」だと言い切られたムーアの、顔。
いやあ、心臓串刺しにされてますよ。
「私の気持ちは誰にもわからない」……そう言い切ることこそが、「ひとりぼっち」の証だよね。
自分でドアを閉じてしまっているんだ。
で、痛いところを突いて呆然とさせた次の瞬間、レンは「僕もです」と続ける。
「みんな『わかるよ』って言うけれど、本当にはわからないんです」
レンもまた、ドアを閉めている。たぶんほんとにそうなんだろう、誰もレンの傷を理解しない。できない。
私の気持ちは誰にもわからない……そう思うことこそが「孤独」なんだ。
ムーアは、レンをまったく知らなかった。知ろうともしなかった。
自分と同じ痛みを抱いた少年だということに、気づかずにいた。
だから、彼を憎んだ。
懸命に守ろうとしている自分の世界を、檻を、彼が壊そうとするから。
「天のもとではあらゆるものに時期がある。……今は踊るときなんです。僕たちが生きていることを、人生を祝うときなんです!」
町議会で意気揚々と言ったレンに、ムーアは拳を握った。
今が踊るとき。人生を祝うとき。
大切な人を失い、悲しみに暮れている人の横で「今が人生最高、HAPPY!!」と笑う、無神経な子ども。まだなんの痛みも知らず、他人の痛みも理解せず、快楽だけを「権利だ」と主張する無責任な若者。
そう思っていたから、「天誅」くらいの勢いで、レンの望みを叩きつぶした。
公正な議会であるはずなのに、評議員たちに評決の指示をした。子どもの過ちを正すのは、大人の義務。
だがそれは、ムーアが無知だっただけ。想像力がなかっただけ。
レンはなんの痛みも知らない子どもじゃない。
「人生を祝いたい」と言うのは、傷ついたことがないお気楽さから言うのではなく、今まさに傷だらけだからこそ、言っているんだ。泣きながらでも、立ち上がるために。
自分の痛みしか、傷しか見えていなかったムーアは、はじめてドアを開ける。
「私の気持ちは誰にもわからない」……そう、閉ざしていた心のドアを。
同じように傷つき、同じように絶望からドアを閉めながらも、たくさんの仲間たちに囲まれ、「人生を祝いたい」と言える少年。
自分の痛みを誰も理解できないとしても、それでも他人を愛し、他人を受け入れ、他人と笑い合う少年。
何度絶望しても、またドアを開けることのできる少年。
ほんとうの「孤独」を知るゆえに、ムーアの孤独を理解し、ムーアを孤独のままにしないために、手を差し伸べてくる少年。
「人生を祝いたいんです」……涙ながらに訴える少年に、ムーアは応える。「今が踊るとき」だと。
ここのムーアとレンのやり取り、心の動きが複雑で、深くて、カメラでUPになる映像ジャンルじゃないのに、よくこんだけ濃密なモノを表現するもんだと感心する。役者ってすごい。
ムーアさん絶対、レンにハート打ち抜かれてるよねええ。や、腐った意味でなく(笑)。腐っててもかまわないけど。
「話を聞いてくれてありがとう」と、泣き顔でくしゃっと笑うレンに、思わず声を掛けるムーアに、萌えまくる。
「僕はもう行きます」と背を向けようとした少年に、四十路の男が思わず、声を掛けるのよ。
まだ別れたくない、というだけの気持ちで。
まだ足りない、この時間を終わらせたくない、というだけの気持ちで。
無意識に、声が出てしまったの。
だからムーアは、レンの名を呼んでしまったあとに、一瞬うろたえる。別に話があるわけじゃないのに、呼び止めてしまったから。
思わず名前を呼んだ、呼び止めてしまった、そのとまどい。
一瞬自分でもとまどうムーアさん、まっつの演技に、うおーうおーと拳を握ります(笑)。
名前を呼んで、レンが足を止め、振り返って。
なにか用があるわけでもないのに、それを誤魔化すみたいに話を続けるムーア。
「君の父さんが、今の君を見ることが出来ないのを、可哀想に思うよ」
両手をポケットに入れて、何気ない風を装いながら。
えー、心が動いているとき、ポケットに手を入れるのはムーアさんの癖です。
怒ってるとき、照れているとき、とにかく心が動いているとき彼は、ポケットに手を入れます。
対外的な「大人」の顔、「牧師」の顔をしているときは、そんな行儀の悪いことはしない。
「ショウ・ムーア」個人の感情で揺れているときに、彼はポケットに手を入れるの。
娘の男関係に怒っているときとか、夫婦の会話が感じ悪く終わって捨て台詞吐いてドアの向こうに消えるときとか。
そして、妻に「やり直したい」と告げるときとか。
ポケットに手を入れてます。
レンを呼び止めて、個人的に語りかける、このときも。
ムーアは、ポケットに手を入れている。
かわいいなあ、ムーアさん。
見た目が美形でストロングかつストイックエロなだけに、ポケットに手を入れてる姿もまたちょーカッコイイだけに……内心の子どもっぽさというか、やわらかさに身もだえる(笑)。
ムーアさんほんと、レンに射貫かれたよねえ。
翌朝の説教のときなんか、なにかっちゃーすごい愛情ダダ漏れ表情でレンを見つめるしさー。
1幕にレンが胸に刺さったエアー矢をムーアに差し出してガン無視されるお笑い場面があるけど、そのあとにまさか、ほんとに矢が刺さる場面があるなんて、あのお笑い場面は伏線だった?!(笑)
『パーム』とはまったく関係ないしシチュエーションもチガウんだけど、それでも思いだしてならない。
若者がおっさんのハートを射貫く、すげー殺し文句の場面っていう、わたしのなかの共通項で。
レンとムーアさん、ほんといいよな。
たまりませんわ。
「そうだが?」
「そんなことは断じてないぞ」
「うそつけ」
「だいたい何でわたしが、君を必要とせにゃならんのだ!?」
「孤独だからだろ」
『フットルース』2幕のクライマックス、ムーア@まっつとレン@キムくんのやりとりで、痛烈に思い出す。
カーターとジェームス@『パーム/あるはずのない海』。
シチュエーションも文脈もチガウんだけどね。
「私の気持ちは誰にもわからない、出て行け」
「待ってください、ムーア牧師」
「私はひとりになりたいんだ!」
「あなたはもうひとりぼっちです!」
……毎回、すげー殺し文句だなと思う。
レンに「ひとりぼっち」だと言い切られたムーアの、顔。
いやあ、心臓串刺しにされてますよ。
「私の気持ちは誰にもわからない」……そう言い切ることこそが、「ひとりぼっち」の証だよね。
自分でドアを閉じてしまっているんだ。
で、痛いところを突いて呆然とさせた次の瞬間、レンは「僕もです」と続ける。
「みんな『わかるよ』って言うけれど、本当にはわからないんです」
レンもまた、ドアを閉めている。たぶんほんとにそうなんだろう、誰もレンの傷を理解しない。できない。
私の気持ちは誰にもわからない……そう思うことこそが「孤独」なんだ。
ムーアは、レンをまったく知らなかった。知ろうともしなかった。
自分と同じ痛みを抱いた少年だということに、気づかずにいた。
だから、彼を憎んだ。
懸命に守ろうとしている自分の世界を、檻を、彼が壊そうとするから。
「天のもとではあらゆるものに時期がある。……今は踊るときなんです。僕たちが生きていることを、人生を祝うときなんです!」
町議会で意気揚々と言ったレンに、ムーアは拳を握った。
今が踊るとき。人生を祝うとき。
大切な人を失い、悲しみに暮れている人の横で「今が人生最高、HAPPY!!」と笑う、無神経な子ども。まだなんの痛みも知らず、他人の痛みも理解せず、快楽だけを「権利だ」と主張する無責任な若者。
そう思っていたから、「天誅」くらいの勢いで、レンの望みを叩きつぶした。
公正な議会であるはずなのに、評議員たちに評決の指示をした。子どもの過ちを正すのは、大人の義務。
だがそれは、ムーアが無知だっただけ。想像力がなかっただけ。
レンはなんの痛みも知らない子どもじゃない。
「人生を祝いたい」と言うのは、傷ついたことがないお気楽さから言うのではなく、今まさに傷だらけだからこそ、言っているんだ。泣きながらでも、立ち上がるために。
自分の痛みしか、傷しか見えていなかったムーアは、はじめてドアを開ける。
「私の気持ちは誰にもわからない」……そう、閉ざしていた心のドアを。
同じように傷つき、同じように絶望からドアを閉めながらも、たくさんの仲間たちに囲まれ、「人生を祝いたい」と言える少年。
自分の痛みを誰も理解できないとしても、それでも他人を愛し、他人を受け入れ、他人と笑い合う少年。
何度絶望しても、またドアを開けることのできる少年。
ほんとうの「孤独」を知るゆえに、ムーアの孤独を理解し、ムーアを孤独のままにしないために、手を差し伸べてくる少年。
「人生を祝いたいんです」……涙ながらに訴える少年に、ムーアは応える。「今が踊るとき」だと。
ここのムーアとレンのやり取り、心の動きが複雑で、深くて、カメラでUPになる映像ジャンルじゃないのに、よくこんだけ濃密なモノを表現するもんだと感心する。役者ってすごい。
ムーアさん絶対、レンにハート打ち抜かれてるよねええ。や、腐った意味でなく(笑)。腐っててもかまわないけど。
「話を聞いてくれてありがとう」と、泣き顔でくしゃっと笑うレンに、思わず声を掛けるムーアに、萌えまくる。
「僕はもう行きます」と背を向けようとした少年に、四十路の男が思わず、声を掛けるのよ。
まだ別れたくない、というだけの気持ちで。
まだ足りない、この時間を終わらせたくない、というだけの気持ちで。
無意識に、声が出てしまったの。
だからムーアは、レンの名を呼んでしまったあとに、一瞬うろたえる。別に話があるわけじゃないのに、呼び止めてしまったから。
思わず名前を呼んだ、呼び止めてしまった、そのとまどい。
一瞬自分でもとまどうムーアさん、まっつの演技に、うおーうおーと拳を握ります(笑)。
名前を呼んで、レンが足を止め、振り返って。
なにか用があるわけでもないのに、それを誤魔化すみたいに話を続けるムーア。
「君の父さんが、今の君を見ることが出来ないのを、可哀想に思うよ」
両手をポケットに入れて、何気ない風を装いながら。
えー、心が動いているとき、ポケットに手を入れるのはムーアさんの癖です。
怒ってるとき、照れているとき、とにかく心が動いているとき彼は、ポケットに手を入れます。
対外的な「大人」の顔、「牧師」の顔をしているときは、そんな行儀の悪いことはしない。
「ショウ・ムーア」個人の感情で揺れているときに、彼はポケットに手を入れるの。
娘の男関係に怒っているときとか、夫婦の会話が感じ悪く終わって捨て台詞吐いてドアの向こうに消えるときとか。
そして、妻に「やり直したい」と告げるときとか。
ポケットに手を入れてます。
レンを呼び止めて、個人的に語りかける、このときも。
ムーアは、ポケットに手を入れている。
かわいいなあ、ムーアさん。
見た目が美形でストロングかつストイックエロなだけに、ポケットに手を入れてる姿もまたちょーカッコイイだけに……内心の子どもっぽさというか、やわらかさに身もだえる(笑)。
ムーアさんほんと、レンに射貫かれたよねえ。
翌朝の説教のときなんか、なにかっちゃーすごい愛情ダダ漏れ表情でレンを見つめるしさー。
1幕にレンが胸に刺さったエアー矢をムーアに差し出してガン無視されるお笑い場面があるけど、そのあとにまさか、ほんとに矢が刺さる場面があるなんて、あのお笑い場面は伏線だった?!(笑)
『パーム』とはまったく関係ないしシチュエーションもチガウんだけど、それでも思いだしてならない。
若者がおっさんのハートを射貫く、すげー殺し文句の場面っていう、わたしのなかの共通項で。
レンとムーアさん、ほんといいよな。
たまりませんわ。