タカラヅカの醍醐味は、ただその舞台をそのとき1回だけ観るのではなく、団員の成長を見守ることにある。
 生徒、と呼ばれる団員は、同じ組・同じメンバーと構成の舞台に立ち続けることで、成長していく。

 長くファンを続けていけるのは、リアルな人生がそこにあるからだ。
 舞台の上が、芸名のタカラジェンヌが虚構、作りものであろうと、それを創っている人たちは、生身だからだ。

 2012年7月1日。
 この日を最後に、ひとりのタカラジェンヌが卒業した。

 1992年度入団だから、卒業時で研21。
 わたしが知る限り、トップスター経験者としては、最長の在団年数。

 わたしがゆーひくんを見はじめたのが1998年、研7のときから。
 学年よりも、舞台上の「幼さ」が顕著だった。
 舞台に対する姿勢?
 なんで笑わないの? ぶすったれた顔で踊ってるの? 「クールというキャラ設定のため、プロ意識ゆえにあえて笑わない」ようには見えなかった。単に、素の感情がそのまま出ていると思った。
 楽しそうにしているときと、そうでないときの差が激しかった。

 中の人のことは知らないので、ほんとうはどうだったのかは、わからない。
 でもそんなのどの舞台人も同じ。
 問題は、1観客のわたしには、そう見えてしまったということ。

 トップスターになる宿命を背負ってスポットライトを浴びている人なら、そんな持ち味ではいかんのだろうが、なにしろゆーひくんは脇の人だ。完全な脇ではなく、微妙路線と言われる、真ん中寄りの脇、トップにはならないけどある程度の役はもらえる位置。
 タカラヅカはいろんなジェンヌがいて、多面的に舞台を盛り上げている。ゆーひくんの立ち位置なら、「記念写真でひとりだけ横を向いている男の子」でもいい。

 てゆーか、ゆーひくんはそういうところが良かった。
 女子はそんなところにときめいた。

 出会った頃の印象って大きいじゃん?
 長い間、ゆーひくんは「不器用な不良少年」だったなあ(笑)。
 誤解されがちで、素直じゃなくて、でもほんとはナイーブで優しいの。女子の夢が詰まった、少女マンガのヒーロー。アンソニーではなくて、テリィね。

 安心して微妙路線の萌えキャラにときめいていたのに、どうもキャラ設定が違ってきている? と感じたのが、2005年。えーともう研14?
 ふつーなら、ヅカを卒業するよーな学年です。

 なのに、そんな頃になってから。
 なんか、キラキラしはじめた。
 まるで、真ん中の人のように。

 ナニが起こっているんだろう、と思いつつ。
 重ねた年数の分、かっこよくなっている彼を眺め、そのかっこよさにきゃーきゃー言い。

 ゆーひくんがかっこいいのはゆーひくんだからで、特に深くは考えない。
 出会った頃から美貌の人だった。つっけんどんな舞台姿で、集合日のたびに退団の噂が流れた。
 なにが出来るわけでも、得意なわけでもない。できないことが山ほどあったが、そんなことはどーでもよかったし、またそんなところも良かった。
 ただ、おーぞらゆーひはかっこよかった。萌えだった。

 だから、出会った頃の印象は大きくて。

 ゆーひくんが、ただの資質だとかノリだとか、持って生まれたモノだけで勝負してない、と気づいたのは、なんと2009年になってからだ。
 遅っ。

 もう上級生だから、積み重ねた経験ゆえにかっこいいのだということは、わかっていた。努力していないとも思ってないし、技術を磨いていないとも思ってない。

 ただわたしにとって、ゆーひくんは最初からかっこよくて萌えで、それだけでよかった。
 それ以上考えていなかった。
 へたっぴな歌も滑舌のアレさも含めて萌えだったし、不自由なダンスも役幅の極端に狭い芝居も、足りないところごと萌えだった。
 それだけでよかった。それ以上考えなかった。

 だから。

 トップスターになり、大人の男としてスーツを着こなし、銀橋を歩くゆーひくんに、がんっとアタマを殴られた。

 大空祐飛は、ここまで来ていたのかと。

 こんなところまで、たどり着いていたのか。
 わたしが知っていた、不器用な不良少年ではなくて。持って生まれたモノだけでもう十分素敵な人ではなくて。

 ここまで精密に、作り込まれた人だったのか。

 トップスター大劇場お披露目『カサブランカ』。
 ここではじめて、わたしは大空祐飛さんと出会う。

 プレお披露目の博多座では、ごめん、感じなかった。
 同じようにスーツ着てても、ショーの真ん中が大変そう、と手に汗握る、今までのゆーひくんだったから。

 一本のモノの芝居でトップお披露目だったのは正しい。
 ゆーひくんの特性、魅力を存分に発揮したと思う。

 トップスターの大空祐飛さんは、あまりにかっこよくて、完成されていて、すごかった。

 彼が、創り上げてきたモノ。
 それはまぎれもなく「タカラヅカ」であり、「男役」だった。

 積極的に真ん中でキラキラしている人でもなく、「タカラヅカ大好き! 一生ここにいるの! 隅っこでもいいの!」という芸風でもなかった。
 いつでもふっとやめちゃいそうな、いなくなっちゃいそうな危うさがあったし(実際ソレで毎回退団だと言われたし)、なにかに執着して死にものぐるいでどうこう、というタイプにも見えなかった。

 だからナチュラルに、そこにいる、ように見えた。

 たしかに、昔はそうだったのかもしれない。
 でも今、研18になり、舞台の真ん中に立つ彼は、そんな「ナチュラル」な人じゃない。
 確固たる意志を持って、人為的に後天的に「創り上げられた」ひとだ。

 一朝一夕でできるものじゃない。
 ナチュラルに、あるがままに、なんかで作れるものじゃない。

 どれだけの意志の力と時間と研磨あっての造形か。


 タカラヅカは夢の王国だけど、ここに存在し続けるには、パワーがいる。
 どんなに美しく幸せなところだとしても、そこが異世界である以上、存在するには通常でない精神力がいる。
 生身の人間がフェアリーという存在で在り続けるわけだから、エネルギー半端ナイんだろう。

 卒業していく人たちは、ある意味「フェアリーとしての寿命」を全うする力が働いているのかもしれない。
 これ以上、この世界で存在できない、HPが尽きようとしている、とわかるのかもしれない。

 ゆーひくんは、フェアリー力のとても強い人だったんだ。
 ほんとうなら、そのキャラクタのHPは尽きているはずなんだけど、何度も自分の意志と努力で上位クラスにスキルアップしていった。クラスが変わることで、そこでまたイチからレベルアップして。
 パラメータに表記されているレベル数だけなら、他の人と同じ位なんだけど、なにしろいくつものクラスを経験した上での現在のレベルだから、プレイ時間自体はすごく長いし、パラメータの数値はすごいことになってるぞっていう。

 わたしはゆーひくんを長く愛着持って眺めてきたけれど、彼がご贔屓だったことはない。
 だから、ほんとうに彼ひとりをたったひとりのご贔屓として応援している人とは感じ方が違っているのだろうと思うけど。

 今のゆーひくんを見て、思う。

 男役・大空祐飛が、誇らしい。

 ここまでやってくれたなら、もうなにも言えない。
 フェアリーという生き方、虚構をこの三次元に創り上げること、そんなものすごいことを、ここまでやり遂げてくれた。
 こんな人がいた。
 こんな人がいる。

 7月1日、『大空祐飛ラストデイ』を見ながら、映画館のスクリーン越しのゆーひさんの美しさに、感嘆し続ける。
 『華やかなりし日々』という作品は好みとかけ離れすぎていて、登場人物誰ひとりナニ言ってんのか理解できないけど(笑)、それとは別に、ただもおゆーひくんがすごすぎて。

 大空祐飛が、美しい。

 こんな美しい生き方をする人を創り出す、タカラヅカもが、誇らしい。愛しい。

 ありがとう。
 こんなに長く、この楽園にいてくれて。
 そして、たくさんたくさん、夢を見させてくれて。萌えさせてくれて。

 出逢えて、うれしかった。
 いつも時間がなくて、ろくに記録できずに肩を落としている。
 特に宙組はローテーション的にいちばん書けずにいるよなあ。

 もう今さらだけど、『華やかなりし日々』『クライマックス』を観てのキャスト感想あれこれ。

 わたしは、ののすみには残って欲しかった。
 ゆーひくんと同時退団するのではなく、タカラジェンヌ・野々すみ花として、その卒業を惜しむ。

 花組にいたときと宙に行ってからのすみ花ちゃんは違いすぎて、つまりそれがトップ娘役になるってことなんだろうけど、宙に行ってからのののすみが、花にいたときほど「自由」でない気がした。
 花組で若手娘役として活躍しているときは、自由自在だった。役割的にも、役者的にも。ショースターとしても。
 生き生きと、軽々としていた。

 それがゆーひくんの相手役になり、宙組でトップになってから。
 なんだか小さく固くなってしまったなと。

 ゆーひくんは素晴らしいスターさんだし、ののすみもまた才能ある舞台人だ。
 しかし、ふたりがコンビとして合っているのかというと、どうなんだろう。
 やたらと『銀ちゃんの恋』をふたりの代表作として持ち上げられているようだが、たしかにあの作品(花組版)でのふたりは良かったが、それでこのふたりの人生すべて決めてしまうほどのモノかというと、……わたしは、チガウと思う。

 『誰がために鐘は鳴る』 のときに、しみじみと思った。
 ゆーひくんとののすみ、って、実は合ってないんじゃあ? と。

 『誰鐘』の主役カップル、ゆーひさんは通常営業なんだが、ののすみ……キモかったよアレ……。
 リアルで重い芸風が、アレな設定のヒロイン像と、なんとも不協和音。

 そのキモさも含めて、実は楽しんだんだけどね、『誰鐘』。大泣きしてツボりまくってたんだけど(笑)。←所詮キムシンスキー。

 でもとりあえず、ゆーひくんの相手役がののすみ限定であること、ののすみの相手役がゆーひくん限定であることを、残念だと思った。

 唯一無二のベストカップルじゃない。
 別の人と組んでも、きっとこのふたりは別の魅力を、輝きを発揮するだろう。
 そう思った。

 だから研21のゆーひくんの卒業は避けられないにしろ、ののすみには残って欲しかった。
 わたしは、役者としての彼女のファンだ。
 だからこの花園で、もっと見ていたかった。
 まだまだあるだろう、新しい魅力を、役を、見たかった。

 実際、トップになってからろくな作品や役にめぐり会ってないもんなあ。トップ、という狭い役の宿命だけど。

 や、あくまでもわたしの感想なので、すみ花ちゃんは名作とはまり役にしか出演しておらず、ゆーひさんとはベストコンビ、神が用意した宿命のふたり、なのかもしれません、世間的には。

 ただわたしは、「最後の作品と役がコレかよ」と、『華やかなりし日々』に盛大に肩を落とすのであります。
 ジュディってさあ、脚本上では「純粋ないい子」ってことになってるけど、ぶっちゃけ、相当なタマだよね? なんでこんな表現しかできないの、演出家……。

 それでも、まあ、 『誰鐘』が最後でなくて良かった、そう思えってことか……。

 芝居のクライマックス、大レビューシーンは素晴らしかったっす。
 『クライマックス』よりずっと華やかで胸躍る、タカラヅカらしい良いショー場面でした。
 ここでセンターで輝ける、ほんとうにいいスターさんだと、トップ娘役さんになったのだと、胸熱でした。


 そして、結局のところ、ゆーひくんの相手役であり、彼と一緒に卒業していく、それでいいのだと思う。
 や、いいも悪いもわたしが言うことではない。んなおこがましい。

 タカラジェンヌの決断は、すべて正しい結果なのだと思う。
 そうでなくてはならないと思う。
 フェアリーとして。
 夢の世界の住人として。
 それが彼らの義務であり、責任なんだ。

 コンビ芝居以外を見たかったなあとか、ののすみに残って欲しかったなあとか、それはわたしの勝手な思いであり、そう思えるくらい素敵なスターさんであったこと、そんなスターさんに出逢えたことを、幸せに思っている。


 かなめくんは、これまた安定のかなめくん。
 この人は変わらないなあ。
 次期トップだと言われても、良くも悪くも変わらない(笑)。
 ナチュラルというか、飄々としているというか。

 熱量がないかわり、悲壮感もないので、輝度は一定、その安定感がいいのかもしれない。
 トップになったらナニか変わるのか、このままなのか。
 楽しみです。いやマジで。

 アーサー役は、ほんとにいつものかなめくんで、それ以上の感想がない……(笑)。
 役がひどいから、やりようもないんだろうけどなー。


 今回、カチャがかっこよくて、わくわくしたー。
 少しずつだけど、たしかに大人になってるんだ。少年ぽい持ち味をエッセンスに、かっこいいオトコになって欲しい。
 つか、無理に体型補正しまくらず、個性を活かしつつスリムな青年を作るといいんじゃないかな。……って、ソレが難しい、みんな自分に似合うラインを探して模索し続けているんだろうけど。

 で、カチャもだけど、りくくんもいい感じにかっこいい。
 だいぶん男役であることになじんだというか、大人になってきたなあという感じ。
 やたら抜擢されていた下級生時代より、落ち着いて周囲を見回せている感じだ。

 なんかちーちゃんが愉快にいい役だった。
 台詞だけで実際に場面はないんだけど、ラヴが進行しているっぽいのも萌え。ピーターとポーラ@れーれの話が見たい見たい!

 あっきーかっこよくなかった? ねえねえ、なんかすごくかっこよかった気がする。
 芝居の方でも一瞬、「えっ、そこでキミ?」と思ってハクハクしたぞ(笑)。


 で、わたしはやっぱりなんといっても、ともちん、好きです(笑)。

 アホウな役で、ともちんのこのテの役は目新しくないというか、どこで見たというよりもああまたかな感じがあるんだが、それでも彼の持つ光を心地よいと思う。
 やっぱ彼、派手だよね? カラダが大きいからではなく。
 タカラヅカ的なキラキラじゃなくて、強く大きな光がある。良くも悪くも。

 だから役によってはそれが邪魔になるし、うまくはまれば魅力になるんだと思う。

 ジーグフェルド役を、それでも派手に存在させてしまうのは、ともちんの力なんだなあ。
 おかげで、彼に絡むちーちゃんも底上げされて美味しくなってる。

 頼むよともちん、長くいてね。その光を見せていてね。


 えりちゃんの卒業が惜しいっす。
 役によって輝けた子なのに、劇団はこの子をうまく開花させてくれなかったなあ。
 これから宙組がさらにビジュアル特化、対ヅカヲタではない、外部のマニアック層にアピールする組になるなら、えりちゃんの萌えキャラ力は得がたい才能だったのになあ。

 個人的に、ともちん×えりちゃんのカップリグを見たかったよ……。身長差だけで、たぎる。
 7月1日、『大空祐飛ラストデイ』を見るために、三宮・OSシネマズ ミント神戸へ行った。
 神戸はわたしの行動範囲外からはずれているため、すっげー久しぶりだった。京都・奈良の方がよっぽど行動範囲だもんよ。

 とにかくチケ難でなあ。ここしか手に入らなかったのよ。

 映画館で中継を見られるのはありがたい。設備とか音響とか。
 しかし、今のシネコンと舞台はなかなかどーして相容れないんだなとも思った。

 そのスクリーンの専用ロビーがないため、グッズ販売が出来ない。

 『「大空祐飛ラストデイ」ライブ中継オリジナルパンフレット』が当日限定発売されたけど、それの販売場所がなくて大変なことになってた。
 スクリーン前の廊下に長テーブル出してシネコンスタッフが販売してたんだけど、もちろん長蛇の列。来場者全員が買う勢いだもん。
 開場時間から上映開始時間までの短い間に、狭い場所で販売しなければならない、しかも長蛇の列になって他スクリーンのところまで列が伸びてる状態が続く。
 また、売店スタッフでもないふつーのシネコンスタッフは、販売がヘタ。
 千円という販売しやすい価格であるにも関わらず、ひとりの客に対する時間が掛かりすぎ。
 スタッフは数名いるのに、販売員はひとりだけであとは口を出すだけで実際にはナニもしないという。
 そしてこのパンフレットへの認識が薄く、「売れる」と思ってなかったみたい。
 最初から袋詰めして用意しておくべきなのに(場所の狭さ、時間の短さから考えて)、なにもしていない。ただ販売ブースを作っただけ。
 だからお金を受け取ったあと、パンフを袋に入れるのに毎回手間取り、ひとりの客に時間掛かりまくり。
 客の方が自発的に「袋は自分で入れます」って時間短縮に努めてた。そしたらまたご丁寧に、「ありがとうございます」とゆっくりお辞儀して袋を手渡すし。(だから、販売員はひとりです。その間列は止まってます)

 丁寧なのは良いことだけど、この場合の客へのいちばんのサービスや誠意は、販売をきびきびと行うことだと思うんだ……。
 時間取りまくって袋詰めしたり、丁寧にお辞儀をすることじゃないと思う……。や、もちろんそれ接客の基本だけど、間違ってないけど、でも空気読もうよ。
 いやまず、こんだけ行列出来た段階で販売員増やそうよ。お金を扱うことができるスタッフが限られてるなら、袋詰め要員連れてこようよ、人余ってるじゃん。

 このままだと上演までに全員に販売することは不可能なんじゃ……?
 って感じだったんだが、さらに問題発生。

 数が、足らない。

 あわてて、「今から並んでも買えないかもよ?」てなことをアナウンスし出す。

 売り切れることは想定してなかったらしい。
 スタッフさん、あわててたなあ。

 ヅカファンはおとなしいから、不手際続きの販売列にも黙って並び続けるし、そうまでして「買えない」と言われてもクレームひとつ付けずに引き下がるけど。
 ヅカ以外でこんな醜態だと、けっこー深刻にクレーム入れられてるんじゃあ……?


 売り切れ告知の用意がなかったらしく、パンフレット販売についての業務連絡FAXに、「完売しました」と1文加えた謎の紙が、スクリーン入口に貼られているのを見ながら、思った(笑)。

 これ、客に見せていい書類ちゃうやろ……。
 こんなもん張り出すくらい、パニクってたんか……。

 HDDクラッシュのためいろんなデータ紛失しちゃったんで、この愉快な売り切れ告知の写真もなくしちゃったんだけど。
 「『大空祐飛ラストデイ』パンフレットの販売するから、よろしくね!」という内容が事務的に書かれた業務連絡FAXでした。
 「『大空祐飛ラストデイ』パンフレット」という文字の書かれた書類がそれしかなかったため、それに1文加えて拡大コピーして、とりあえず張り出したらしい。
 早いこと売り切れ告知しないと、クレーム付けられるかもしれないもんね! 急げ急げ、なんでもいい! てな?

 売り切れたおかげで上映時間前に販売は終わったけど、そうでなかったら上映に間に合わなかったかもなー。
 限定で、今しか手に入らないんだもん、どうしても買うために並び続けるし、かといってそれで上映間に合わなかったら……騒ぎになるぞ。ぶるぶる。


 『ラストデイ』中継への認識不足。
 スクリーンが満席になること、グッズはほぼ全員が買うこと、ひとりで複数部買う人も少なくないこと。


 そして、設備上の問題。
 トイレが、圧倒的に少ない。

 シネコンは、スクリーンの客のほとんどが、一斉にトイレへ駆け込む状況を想定して作られていない。
 映画はせいぜい2時間、しかも入れ替え制。トイレを使う人も一定数いるだろうが、映画館で行くとは限らない。はじまる前に別フロアのトイレを使う人もいれば、終わったあとに映画館を出てから行く人もいる。

 だが。

 タカラヅカ中継は、そうじゃない。

 サヨナラショーと挨拶含めて、映画館内にいるのは4時間以上。
 間に30分(35分だっけ?)の休憩があるのみ。

 決まった時間に数百人の客が、一斉にトイレを使う。

 そんな状態を、想定していない。

 だから、ヅカ客たちがトイレに長蛇の列を作っていても、しばらく放置していた。
 客はトイレのキャパがどれくらいなのか知らないから、おとなしくスクリーン横のトイレの列に並んでいる。劇場のトイレのイメージもある。ある程度の数はあるトイレなんだろう、と。

 いやいやいや。
 個室の数、めちゃ少ないです。
 想定されてませんから。3桁もの人が並ぶことを。

 途中から、シネコンスタッフも「やばい」と気づいたらしい。
 映画館のトイレでは、この人数を処理しきれない。外に出て、他のフロアのトイレを使ってくれと。

「この列にお並びになっても、休憩時間内にトイレをご使用になれないかもしれません」
 ……さんざん並ばせたあとで、ソレを言う?

 なんか、さんざん並ばせたあとで、
「パンフレットはご購入になれないかもしれません」
 と言い出した、開演前の醜態を思い出す。
 ……同じことを、くり返すか。

 で、他のトイレってどこよ?
 とスタッフに聞いても、答えられないんだなこれが(笑)。

 他フロアのトイレ、とか、下の階もトイレが、とか言うのが精一杯。いや、それはわかってるから! ショッピングビルなんだから、どの階にもトイレはあるでしょうよ。
 どこの階がキャパ大きいから安心よ、とか、この時間ならすいてるはず、とか、なにか情報はないのか。

 仕方ない、ことはわかるけど、臨機応変利かなすぎ、と思った(笑)。


 大変だったろうな、シネコンスタッフさん。
 イレギュラー尽くしで。

 今後もヅカの中継を映画館でやるならば、客誘導のノウハウも、劇団がちゃんと伝えておくべきだ。
 お互いのために。
 てことで、よーやくまっつ語りです。えっ、まだやってなかったのか、いつ書けるのかとじれじれしていたよ! とにかく時間がなくてなー。

 もうだいぶん記憶の彼方、海馬教授に発掘して欲しいですよ、『Shining Rhythm!』のまっつまっつ。

 オープニングは、ばんっとセンターのキムくんがライトを浴びたら、下手側をチェック。
 さすがに幕開きと同時には見えないけれど、キムくんのピンスポのおかげで、ハコの上に立ってるまっつがうっすら見えるの。
 このときの、上着の端に手を掛けて静止しているまっつが、美しい。

 キムくんが歌ってます、ばんっと音楽鳴って、拍手が起こって、どうやら上手側にいるちぎくんにもスポット当たったらしいです。
 でもまっつは静止したまま。

 んでよーやくまっつの番、音楽がばんっと鳴ってまっつにライトが当たるなり、スカした横顔で静止していたまっつが、満面の笑顔で踊り出す。

 このギャップが……ギャップが、たまらん……っ!


 総踊りになったあと、まっつたちは一旦はけて、キムくんのダンスとちぎくんの歌になる。
 そこへまっつが若手の男の子たちを数名連れて、踊りながら戻ってくる。

 この踊りながら戻ってくるところ、ちぎくんの歌、「踊れ♪」の位置でまっつたちはカラダを後ろに倒すんだが、ここがオープニングのひそかなツボだった。

 というのも、まっつ、カラダ倒しすぎ!

 どういう膝してるの、なんで踊りながら異動しながら、カラダをそんなに倒せるの、後ろの男の子たちと角度ぜんぜん違いますがな、まっつひとりすごい角度で倒してる。
 とても自然に、すい~~っと。
 一瞬のことなんだけどね。
 その一瞬が、楽しすぎて。

 まっつ、このテの振りのときは、ほんとにすごい倒すよなあ。
 膝が強いのかな。
 ふつーの人があんだけ背中を後ろへ倒したらひっくり返ると思うんだけど、まっつは軽やかにこなしてしまう。

 んで、センターへ来てちぎくんの歌でしばしダンス。
 男の子たちと分かれて、ちぎくんと攻守交代、下手へ移動してソロ。

 ここのソロがなあ、娘役コーラス入りでなあ。
 この歌のまっつと、娘役の声が合ってない気がして、毎回「コーラスいらね」と思った。
 すべてのまっつにコーラス不要と思うのではなく、ここはどうも合ってない気がしてなあ。


 そのあとの場面で、中村Bの人使いにちょっとウケる。
 ソロタイムのあとみみちゃん登場と入れ替わりに下手へハケたまっつは、キムくん再登場を出迎えるように下手側の人々に混ざる。
 おお、トップスター様君臨の図ですな、お出迎えですな……と思ったら、ほんとに、出迎えただけだった。

 出てきて群衆に混ざって、奥の高いステージに登場したキムくんが「ハァッ!」と一声あげて、下へ降りてたら……ささーっといなくなる(笑)。

 ちょ……っ、それだけ? キムくん出迎えただけ?!
 あとはなんもしないで、くるくる回っていなくなるの?

 んで、いなくなったわー、滞在時間数秒かよ~~、とウケていたら、また、出てくる。

 せわしないなヲイ。

 トップスター様を出迎えるためだけに出てきて、トップコンビの短いデュエットダンスコーナーの間はいなくて、トップコンビがふたりして見守る中で野郎ばかりで踊る……。
 不思議な組み方だなあ。

 なんにせよ、見守るトップコンビの視線を受けながら踊るまっつがかわいい。
 ときどきアイコンタクトしているの? まっつだけしか視界に入ってないのでわかんない。

 とにかく、オープニングからちゃんと3番手扱いされていることにどきまぎしまくりだったよ初日。……『RSF』がどんだけトラウマになってるかってもんだな(笑)。


 次の出番は第3章「大地のリズム」。
 マタドールまっつキターーッ!!

 スペインの場面だと見聞きしていても、マタドールだとは聞いてないっすよね?
 『インフィニティ』でも作品のメイン場面がマタドールだったくらい、マタドールをさせたい男・まっつってことなんすかね、演出家的に。
 でも、『インフィニティ』とはまったくチガウ、別人のマタドール。

 だって、黒い。

 悪役らしい、とは聞いていても、出た瞬間から冷たいし黒いし、でも衣装黒ぢゃないし(そんな単純な)、かっこよすぎてびびる。

 舞台奥からセリもなんもなく登場するんだけど、日によっては拍手があってうれしかった。「スター登場!」って感じがして。
 トップスターと対峙する役だもんね。すごいね、まっつ。アトラクションのなか一瞬で終わるんじゃなくて、ほんとにちゃんとした場面でキムくんのライバル役やってるんだ!

 このマタドールまっつは、ある意味まっつの得意分野っつーか、傲慢、冷酷さが、説明不要で漂っていて、なんでこの人こんなことになっちゃったんだろう、と感心する。
 昔はヘタレな薄幸キャラだったんですよ……?
 なのになんで、ここまで育っちゃったんだろう。すげえな。

 登場してからわりと早いウチに「口元をぬぐう」振りがあるんだけど、アレなに、どうしてあんな振りがっ?!
 ここがもお好みすぎてエロ過ぎて。

 まっつさんはエロ標準装備の方ですが、それにしてもマタドールさんやってるときは制御装置解除しているらしく、エロを隠してません。漲るままに滴るままに、野放しにエロです。
 クールビューティはまっつのキャッチフレーズだけど、そこに「野蛮さ」を含ませるとさらにタダゴトではないエロスが加わってとんでもないっす。
 その昔、やっぱショーでトップ娘役(妊婦)に手を出す悪役をやったんだけど、そのときもすごく野卑た感じの嫌な男を演じてくれてねえ……本質的に「ヤバイ」男になるよな、まっつに悪役させると。
 そこがまたキャッホウ!です、はい。


 まっつの『Shining Rhythm!』での役割は、このスペイン場面での敵役、そしてクライマックスの「光と影」で影。

 『Shining Rhythm!』というタイトルの作品で、一貫して「影」を仰せつかっている。
 トップスターが光であるのはタカラヅカのお約束、それに対峙する役割。
 重要で、光栄な役割。
 イメージの一貫ぶりにも、中村Bがまっつ個人にこだわりがありそうだ、と思えてなんかうれしい。

 陰影と色彩。
 わたしがまっつに感じるモノ。

 輝度よりは、深度。

 それを表現させてくれる作品と、役。
 なんてうれしい作品だろう。


 続く。
 公演終わって数ヶ月、今さら『Shining Rhythm!』の感想、こあらった視点のまっつまっつ、その2。


 第3章「大地のリズム」、スペイン場面です。まっつさん、マタドールです。

 どんなドラマがあるのか、説明不足でよくわかってませんが、まっつがキムくんの恋人みみちゃんを取っちゃったんだよ!って話。そこへキムくん戻って来たよ!って話。
 まっつはマタドールで、みみちゃんはフラメンコダンサーみたいです、衣装からして。
 華形スター同士のカップル、らしい。とりまきもいっぱい。

 んで、こんときのマタドール衣装、いいモノ着せてもらってますねええ、まっつ。
 生地の織りとか、『哀しみのコルドバ』のときの比ぢゃないもんねええ。

 『哀しみのコルドバ』のときも書いた(http://koala.diarynote.jp/200905100022344652/)けど、マタドールはあの「ひとりでは着ることの出来ない衣装」を身にまとっていることも萌えなんですよ。誰か男の手を借りて、あの衣装を身につけているわけです。
 まっつの後ろで踊っていた男たちの誰かなんでしょうかね、まっつマタドールの助手。
 きんぐさん希望なんですが、彼はキムくん側で踊っていたので無理かな。
 まっつの後ろにいた男の中だと……香音くんだったらどうしよう。きゃー、きゃー。(落ち着け)


 ……ひさしぶりに、うっかり昔自分が書いた『哀しみのコルドバ』のアルバロ@まっつ語り読み返したけど、大概だなコレ……。あの役で、ナニをこんなに語ってんだか……。溜息。

 まあ、それはともかく(笑)。


 銀色の「光の衣装」の、実は尻に萌えてまつ。

 すすすすみません、『RSF』でもさんざん尻尻言ってましたが、またしても尻です。
 なんかこのマタドール衣装って、お尻が小さくきゅっとして見えるような。いやその、まつださんはもともとそーゆーお尻だと思いますが、さらにまた。
 カラダのラインの出る、フィットした生地じゃないんだけど、ハイウエストだからか、お尻が強調されている気がする……ハァハァ。
 生地の厚みがさらにストイックさを出している気がして、だだ漏れるエロとのギャップが……ハァハァ。

 そして、腰を振る動きに注目です。
 腰あたりを拳で軽く叩くよーな振りにも注目です。
 ナニをしているわけでなくても、とにかくカッコイイ。とにかくエロい。

 表情がいちいち「嫌なヤツ」で素敵ぢゃないですか?
 何回か、わざわざチューの口で息を吐くの、アレ挑発だよね……?

 白いドレスのみみちゃんとの絡みも大好物です。
 ふたりがまた、似合う。
 まっつの背中でくるりと回る、みみちゃんのリフトがまた美しいし。
 ふたりとも踊れるから、すごく軽やか。

 美女の相手役っていいねえ。相乗効果で素敵になる。
 美女みみを、美青年キムと取り合う。……こんなまっつが見たかったっす、ほんと。ありがとう中村B。

 ……場面の設定はぜんぜん伝わらないし、素手で殴り合ってあっちゅー間に負けて、しかもグーパンチでお亡くなりになる、って、わけわかんないけどな中村B。

 でも倒れてさらに殴られて、呻くまっつさんがエロいので、もーなんでもいいっす。
 お亡くなりになってセリ下がっている姿がテラ美しいので、もーなんでもいいっす。

 公演最初の方は、倒れて死ぬまでの間に、ちらりと周囲を窺い見てて、その様子がまたファンの琴線に触れていたんだが、……あれってやっぱ、セリ線確認してたんじゃないかな……お茶会以後、腑に落ちたというか(笑)。
 もしもセリ線超えてたら、呻くふりで寝返り打つ気だったんじゃ……。見たいぞソレ(笑)。

 楽しかったなあ、マタドール。
 まっつ視点固定DVDが欲しいっす……。



 続いて、第4章「魂のリズム」、中詰めのラテンメドレー。
 男たちはみんな目に痛い蛍光イエロー燕尾。
 スターたちが順番に登場するなか、まっつはまっつステップをひっさげての登場。

 まっつファンになってはじめての、まっつセンター場面。プログラムの場面出演者欄、いちばん最初に名前が載っているの。
 開演前に、プログラム見て感動した。今までほんと、そんな立場になかったんだもの。花にいたときは、下級生が場面もらっていてもまっつはなかったし、いい位置や役割をもらっていても、香盤上は上に何人もいたし。
 雪組で3番手になって、3番手なんだからふつーは「いちばん上に名前」の場面くらいあるだろうと思ったら(番手ついてなくても、もらえる人はもらってるわけだし)、ショー2作ともんな扱いしてもらえなかったし。
 あああ、ついに。はじめて。「上から順番、1、2、3」の中村Bだからこそ、ふつーの3番手の扱いをしてくれる……。

 ただ、この「はじめて」の場面は、ほんとに一瞬っちゅーか、メドレーのなか、どさくさ紛れというか、あっちゅー間に流れていっちゃうんだけどね(笑)。


 まず掛け声がすごい(笑)。
 登場してすぐ、センター来る前にもう声出してる。
 このときのオラオラ声がまた、無駄にエエ声で。うわー花組~~、って感じ。
 そしてセンターにて、まっつを中心の逆三角形になって踊る。エエ声を響かせて、まっつステップ。
 初日は目が点になりました……えええ? ナニあれデジャヴ? 『インフィニティ』で見たような? マッツマハラジャ様……?

 お茶会で答えを言ってましたが、振付の先生が同じ人なんだそうです。
 あのガッツポーズしながらのアキレス腱伸ばしは、正式に「まっつステップ」という名前が付けられているそうです。
 これから先、どこかの組のどこかの場面であの振付があったとしても、未来永劫まっつステップです、そう呼ばれるのです。……次に使い回すことがあるのか、微妙な振付ですが(笑)。


 まっつステップばかりが取り沙汰されてるけど、この場面でのいちばんのポイントは、まっつの腰回しだから!
 ラテンといえばコレですよ、腰をぐりんっと回すの。『ラブ・シンフォニー』でもやってたアレ。
 いやもお、大好物。
 まつださんはずっと腰回しててくださいよ。エロいエロいエロい、おかーさん、この人エロいよ~~。

 まっつの特徴っていうか、ウリ?
 面白いのかエロいのかわからないっていう。

 かっこいいだけじゃない、黒い服着て影だけやってるんじゃないよっていうか、多面的複合的な魅力。

 ほんとに、もお。
 まっつステップなのに、エロいんだから、たまらんわ……。


 続く。
 『Shining Rhythm!』、こあらった視点のまっつまっつ、その3。

 第4章「魂のリズム」、中詰めのラテンメドレー。
 グループごとにスターが次から次へと現れる、まっつステップのまっつは上手へハケて行ったあと、ちぎみみ銀橋時に再登場。

 先にあゆっちをセンターとした娘役の総踊りがあり、そこへあとから合流するカタチ。

 まっつはまっすぐセンターのあゆっちのところへ。

 あ、あゆっちが相手役なんだ。
 『インフィニティ』のあとなので、「おおっ」と思う。

 正直、あゆっちとまっつは合っていない。
 あゆっちの体格に、まっつが負けてしまう。男役芸で負けるとは思ってないが、単純に見た目が互いの短所を強調する。
 まっつは小柄で華奢であること、あゆっちはその、娘役にしては横幅が大変分厚いこと。

 第2章の「クールリズム」場面にて、ちぎくんも同じように、あゆっちと組むことで互いの短所を強調して大変そうだった。
 小柄で細い男役と組んでいい娘さんぢゃないんだよなあ、あゆっち。

 しかし、彼女がかわいくて華やかなことは確かだ。
 彼女と組むと「おおっ、なんかキラキラだー」と思う。

 キラキラ華やかなあゆっちを、まっつがこう、後ろから抱きしめたりするわけですよ。
 あのやわらかそうなニクに触れるわけですよ。
 それはそれで、独特の萌えがあります(笑)。

 自分より肉厚な女の子をリードして踊る、華奢なまっつにも、どきどきします。オトコマエでときめきます。
 あゆっちってなんつーかその……リアルなエロさがあるよなあ。

 2番手のちぎくんがトップ娘役のみみちゃんと組んでいるから、3番手のまっつは娘2のあゆっちと組むことになる。
 さすがは「上から順番1、2、3」の中村B、ブレがない。


 で、カップルたちのダンスは奥から登場したキムくんの歌声に乗り、キムくんが銀橋回りしている間にカップルはばらけて、まっつたち少人数男子と娘役が残り、キムくんが本舞台に戻る頃には、ちぎくんが登場している。

 舞台に戻ったキムは、ちぎを見つけてデュエットダンス。
 トップと2番手の、男同士のダンス……ふつーならもっと萌えそうなもんだが、がしっと健康的っちゅーか体育会的というか……なんかチガウ……。

 そこの場面を彩るのが、まっつの歌声。

 前の場面から引き継いで残っているまっつが、朝風くんとか歌手属性の子たちのコーラスを背景にして、歌い出す。

 んだが、まっつばっか見てるとイマイチなにが起こっているのかわかっていない。
 キムちぎはいいの、トップ様と2番手様のダンスだもん、興味あります、振り向きもします。
 問題はそこにつながるまでの流れが、なかなか理解できなかった。

 さっきまであゆっちと踊ってたのに、気がついたら隣がコマくんになって踊ってる-。見晴らしいいなと思ってたら、舞台から人減ってる……?
 んで、隣コマくんだったはずなのに、気がついたコマくんいないし。あれ? いついなくなったの?? なんで朝風くんとハウル?
 あれ? いつの間にまっつひとり??

 ……オペラグラス、たまには下ろそうよ、っていう。


 しかし、ここのまっつのソロが。

 全編通して、いちばんイイ声。

 いちばんの見せ場である「光と影」の銀橋ソロより、ある意味イイ声だと思ってます(笑)。

 まっつの「にごり」のある発声。これわたし、大好物で。
 『インフィニティ』の2幕最初、「キャリオカ」が生き生きしていたようなもんで。まっつ、このテのラテンソング得意だよね。

 あとになるほど、がなりも利かせるよーになり、どんどん派手な歌い方になっていった。

 しかもさー、歌ってる姿もさー。

 なんで、エロいの?(笑)

 ここでエロくすべきなのは、男同士で踊っているキムちぎで、ひとりで歌ってるまっつじゃないでしょ?
 なのになんでひとりでエロいの?

 たしかにその、ハゲシイアイを歌ってるわけですが、そんなひとりでくねらなくても……(笑)。

 歌い終わりに、キムちぎの方にコナかける感じなのも、もお。ハァハァ。


 いや、面白くていいです。


 んで、歌い終わったら下手にはけて、そのあとまたすぐにわらわらっと男たちと一緒に出てくるし。
 つーか中詰めみんな衣装一緒、お着替えなしで大人数、この出たり入ったり感がたまらなく中村B……(笑)。

 いや、息つく暇もなくしょっちゃう出てきてくれるので、うれしいです。オペラ下ろすヒマがありません。

 んで、中村B定番、男たちの群舞の奥から、トップ娘役率いる女の子たち登場、彼女たちの群舞に転換。男たちは左右に分かれて舞台を譲る。

 まっつはさっきから下手にハケて下手から出てきて、また下手にハケて、下手から出てくる。
 この、最後の登場時。

 肩掛け羽根を付けている。

 正式な名前わかんないや。長い羽根のショールみたいのを、片方の肩にだけ掛けているの。

 あのボタンは、このためだったのか!!

 初日、初見時。
 オペラでまっつをガン見しながら、不思議だったの。
 中詰めの着たきり黄色燕尾。その他のみなさんと同じ衣装なのはいつものこと、花組時代から見慣れているので気にならない。
 ただ気になるのは、左肩に付いている黄色いボタン。アレなに?

 思わず他の人の衣装もチェックしちゃったよ。なにか意味があるのかって。なにか飾りになるのかな? 身もフタもなくふつーに「ボタン」なんだけど?

 他の人には付いてない。みんなふつーに燕尾ってだけ。ちぎくんには付いてるから、あとからナニか付け加えるのかな? 次の場面で上からナニか付けるの?

 用事がなかったら、悲しすぎるな、だってあのボタン、変だもん。あんなところに付いてると。

 その答えがわかり、膝を打った。
 あの羽根って、ボタンで着脱するものなんだ!! 目からウロコ、今まで知らなかった!
 や、ただ肩から掛けているだけだと思っていたわけじゃなく、単に、考えたことがなかった、興味もなかった。

 で、一拍遅れて、感動した。

 まっつが中詰めで、羽根付けてる。

 ショーによってはみんな付ける、そういう意味の羽根じゃなくて。
 2番手と3番手だけが付ける羽根を、まっつが付けている。

 感動。
 つか、感涙。

 3番手になって1年と数ヶ月、はじめて3番手みたいにショーの中で羽根を付けさせてもらった……。

 ありがとう中村B。上から順番1、2、3。


 続く。
 泣きすぎて、やばい。

 『フットルース』初日観劇。

 ごめんなさい。
 わたし、完全ナメてた。油断してた。
 演目発表されたとき、テンション下がりまくった。がっかりした。
 制作発表に行き、「なんだよ、おもしろそうじゃん」と思った。思ったけどそれは、「おもしろそう」であって、2時間半楽しめればいいや、ぐらいの軽い気持ちだった。
 ペンライト振るとか客席参加型とか、正直年寄りにはキツイなとか思ったし、「ふつーがいちばんなんだよ、奇をてらわなくていいんだよ」と思った。

 2幕、途中から泣き通しで、消耗した。

 ハンカチ用意してなかったの!! 泣くとか思ってなかったし、涙腺弱いから大抵ナニ見ても泣くけど、ハンカチいるほど本気で泣くとか思ってなかったの。
 舞台から目を離すの惜しいし、鞄ごそごそとか観劇中にやれないし、でも顔中崩壊してるし、もおどうしようかと。


 アリエル@みみちゃんが、好きだ。

 賢くてクールで、ちょっと怒ってて、……そして、とても傷ついている女の子。

 ワルぶって不良たちとつきあい、でもほんとうの意味では流されることもせず、ひとりぼっちで線路の高架下で詩を書いている女の子。
 電車の騒音の中、やり場のない思いを叫び続ける女の子。

 繊細で、情緒豊かで。

 5年前の事件がなければ、彼女はまったくチガウ女の子になっていただろう。
 これだけ聡明で繊細な子なんだ。彼女の抱えた傷が、痛い。傷だらけで強がる姿が、痛い。

 そして彼女は、彼女の傷の原因の大半である、父親ムーア牧師@まっつを、愛している。
 反抗しながら、泣きながら叫びながら、それでも、愛している。

 アリエルが本当の自分……傷だらけの自分を見せられる唯一の場所で、レン@キムに言い当てられる。「お父さんが好きなんだね」

 不良ぶった外見も、父に振り向いて欲しいため。
 父を傷つけることで、愛を確かめようとしている。
 ……そんな方法を取るしかないところまで、追い詰められている。
 彼女がどれだけ話をしようとしても、父が心を閉ざしてしまっているから。

 父親のいないところで彼女は、父を語る。
 彼女から伝わってくる。「お父さんが好き」

 その次の場面で、ムーアに対してアリエルは叫ぶ「大っ嫌い!!」……好きだって、全身で叫んでるのに。拒絶され、傷つけられ、逆の言葉を叫ぶことしか、できない。

 ちょ……、ナニこの父娘の双片想い状態。

 ムーアは彼なりに娘を愛しているし、アリエルだってパパが大好き。
 なのにお互いがお互いに片想い。
 愛されていない、と傷ついている。

 そうだわたし、父娘萌えってあったんだった。うまくツボに入ったとき、すごい破壊力を生むツボだった。
 ヅカ作品ではなんつっても『Crossroad』。ヘレナ@あすかと父親の関係がツボだった。父親に愛されていない……その渇望と劣等感が少女を歪ませた、ってやつ。

 パパが好き、パパに愛されたい。……パパの傷を、癒してあげたい。
 だけどパパは私の言葉を聞こうとしない。パパは私を理解しない。パパはひとり傷ついたままで、私の手を必要としない。
 愛に飢え、その上、愛する人を救えない無力感に苛まれ。
 同級生たちの意識レベルは彼女よりずっと幼く、同等に語れる者はいなくて。
 ずっとずっと、孤独だった少女。

 いやもお、アリエルが切ない。切なすぎる。

 そんな彼女が、レンと出会った。

 レンもまた、傷ついている少年だった。
 その傷ゆえに、同級生たちよりも大人になってしまった少年だ。

 同じ傷、同じ痛みに引かれ合って、アリエルとレンは惹かれ合う。


 レン@キムが、好きだ。

 心の傷を陽気さで隠すことの出来る男の子。
 アリエルのように不良ぶること、自分を傷つけることで誤魔化そうとはしない。
 それはたぶん、彼の母親@ヒメの影響だろう。強く明るく前向きに、涙も傷も乗り越えていく母と息子。

 そんな彼がアリエルと出会い、それによって自分の傷と向き合う。

 笑って見ないふりをしていた、今まだ血を流し続けている、心の傷。


 傷つき、心を閉ざしたムーアは他者を縛り、支配する。閉ざすこと、固くすることで守ろうとする。心を。

「ひとりにしてくれ」
「あなたはもうひとりぼっちだ」

 レンに言い切られ、胸を突かれるムーア。
 ここで唐突に気づいた。

 これは、父を失った息子と、息子を失った父の物語なんだ。

 かけがえのないものを失い、傷ついたまま、どうやって生きていっていいかわからない、そんなふたりの男の物語でもあるんだ。

 レンは父を失った。その傷が癒えていない。
 ムーアは息子を失った。その傷ゆえに心を閉ざしている。

 レンはムーアの心を開くことで、彼自身が救われていくんだ。

 そして、ムーアは。

 レンの言葉で総崩れになるムーア牧師、そのあと、ひとりうなだれるムーアさんをアリエルが寄り添うように守るように抱く姿が、もお、もお……っ。

 さらにムーアさんは、奥さん@きゃびいと抱き合う場面まであるしね。ここがまたね、もおね……!!


 ムーアが頑なに守ってきたモノ、彼が先鋒となっていたけれど、それは街の大人たち全体の傷でもあったんだ。

 痛みを痛みとして受け入れ、乗り越えること。

 大人たちはまず、それをしなければならなかったんだ。5年前に。
 痛みを否定し、見ない振りをしてきた。すべての歪みはそこからはじまった。
 凝り固まり、ひとつの意識以外は排除する、敵を作り攻撃することで味方同士結束する、そんな歪んだスパイラルの中にいた。

 解放される。
 今。

 ダンスパーティは子どもたちのレクリエーションじゃない、高校のイベントじゃない、傷ついた街全部が、救われるためにあったんだ。


 いや、もお。
 ストーリーっちゅうか、テーマ部分が好みすぎて、たまらんす。

 まあその、これ、この前、観たよ……!という展開だったりするんですけどね、父上!!(笑)
「私は自分を深く恥じている。今でも夫と呼んでくれるだろうか」
 ……同じことをやって、言ってますよ、パパ!
 でも、フェリペ二世よりさらに繊細です、ムーア牧師。

 まつださん、かっこよすぎ。

 スーツ姿やばい。ベスト姿やばい。
 母性本能鷲掴みされますぜ。
 あの背中、抱きしめたい。


 キャストのキャラクタもかわいいし、衣装もセットのセンスもおしゃれ。
 音楽は耳馴染みのあるノリのいいものだし、ダンスがまたたのしい。

 残念な部分もそりゃ皆無ではないが、そんなのを数えるよりも今はただもお、楽しい。

 テーマ根幹がツボ直撃で、キャラとビジュアルと音楽がいいって、もう最高っすよ!!
 うれしい悲鳴、こんなことになるとは……!

 なんでこれ、映像残らないの?! 『H2$』のときは、贔屓や好きな人たちが出ているから、雪組が、タカラヅカが好きだから、なんにせよ映像は必要だと思ったけど、作品自体は好きでもなんでもないから執着はなかった。
 でも『フットルース』はチガウ。

 作品が好きだから、映像残らないとか、ありえないっ!!
 責任者出て来~~いっ、うきゃ~~っ!!

 何年あとでも映像見て、泣きたい作品だよ。
ノベルティとかフィナーレとか。@フットルース
ノベルティとかフィナーレとか。@フットルース
ノベルティとかフィナーレとか。@フットルース
 梅芸公演の素敵なところ、『フットルース』はプレゼント盛りだくさん。
 てことで、スカステでもやっていた「オリジナルメッセージ・カード」と「カラーバンド」。

 わたしが手に入ったのはこの色。

 シャーベット・ブルー、スカイ・ブルー、ディープ・ブルー。

 ブルー尽くし。

 ちょ……、バランス悪いわ、寒色ばかりだわ、夏色っちゃー夏色なんだが、ほら、ここはやっぱし差し色が必要でしょう。

 チェリー・ピンクと、ブラックが欲しいです。

 ……なにを言いたいか、わかりやすすぎまっつね(笑)。

 メッセージカードは、何故か4枚。

 未涼氏の通常バージョンが欲しいです。

 未涼氏の七夕バージョンは自分で手に入れた……わけではまったくなく、心優しい友人からプレゼントしてもらいました(笑)。

 わたしのくじ運では、見事にまっつにはかすりもしません。

 そしてナニ気にコマのメッセージカードはコンプ、カラーバンドも1本はコマの。
 なんかとってもコマくん尽くし。

 メッセージカードは確率5分の1、カラーバンドにいたっては、10分の1の確率なんですよ?
 カードとバンドはランダムに組み合わされているため、コマのカードだからってコマのバンドがセットになっているわけじゃないの。
 全部ばらばらで、ナニが当たるかまったくわかんない状態で、色もかぶらず、欲しい人のノベルティを手に入れるって、どんだけレアな確率? 数字弱いから計算できないけど、すごい分母になってるはずよね?

 グッズスキーなもので、ペンライトは2本購入、チケット袋も2種手に入れました。(3枚目の写真)
 だってまつださん載ってるんだもの。>チケット袋

 他にもまっつ絡みのノベルティ乱発されたら、狂ったように窓口でチケット買ってたと思うけど、幸いにも?トップさんグッズだけなので、落ち着くことができています(笑)。



 ところで、2バージョンあるフィナーレ。

 初日は「アイム・フリーVer.」。
 男役群舞からはじまって、男女総踊りへ。遅れてキムくん登場。
 なんだけど、この男たちの衣装が。

 ……これ、好評なんすかね?
 わたしはなんつーか、ゲイバーのショータイム?てな第一印象でした……。(注・個人の感想です)

 てかてかスリムブラウス(開襟)に、尻や太股の形ぴっちり丸見えの黒パンツ。
 くねくねやらしく踊る。

 まつださんがエロいのは通常運転ですが、下級生男子たちは下半身が大変そうです。さすがに、あのパンツで男役として在らねばならない、ってのは、ハードル高いわ……。

 若い頃のフジイせんせがよく、あーゆー格好で宝塚の街を闊歩されていらっしゃったわね……ぴちぴちパンツ……とか、いらん記憶まで刺激された。
 や、せんせーが今も同じテイストのファッションを好まれているのかは、存じ上げません。

 男たちだけのときは衣装センスに目が点だったんだけど、女の子たちが加わると、それはそれでアリかなと思った。

 初見の衝撃が大きかっただけで、見慣れたらなんてことないのかも。

 ちなみに、いちばんすごいセンスっちゅーか色彩っちゅーか、小柳たん大丈夫か……と思ったのはキムラさんの衣装です……。
 タカラヅカってすごいよね。


 両バージョンこのノリなのか?と危ぶんでおりましたが、本日昼公演の「ヒーローVer.」。
 女の子たちを引き連れたキムくんが「ヒーロー」を歌い踊る。おお、キラキラしたパンツだけど、上は黒燕尾だー、と思って見ていたら。

 遅れて男たちも登場。

 まさかの、黒燕尾。

 腕まくりオラオラ野郎度高しの黒燕尾ですよ。
 歌手はコマくん。まっつ以下男たちだけでハードに踊りまくる。

 きゃーきゃーきゃー。

 初見では、こっちのフィナーレが好みっす。
 まっつがワイルドに踊りまくってる~~。


 まつださんはなんせ、「おとーさん」メイクと髪型のままです。
 ラストのパレードでまたムーア牧師に戻らなきゃならないから、ヘタなことは出来ない。ムーア牧師の顔と髪型で、黒燕尾の腕捲って、ハードに踊りまくるわけです。

 萌える。

 若者たちの中、明らかに年長で、でもキレキレに踊ってるのー。
 セクシーさ半端ナイのー。
 あの怒ってるみたいな、こわい顔がいいのー。

 うがが。
 かっけーかっけーかっけー。


 「アイム・フリーVer.」がみょーな世界に見えたのは、まつださんがエロ過ぎたせいもあるかも。
 なにしろメイク・髪型がおっさんのままでしょ? それでてかてかブラウスとぴちぴちパンツで踊るから、なんかすごくやばいものを見ている気になったのかも。口半開きとかもー、とにかくやばすぎだから! 子どもに見せられませんから!てな(笑)。
 まわりの若者たちは、そこまで問題なかったのかも。(ヒップラインは置くとして)


 そのあとのキムみみデュエットダンスがまた、正統派。
 大階段前でやる、あのデュエットダンスのノリです。……お披露目公演で、これくらいストレートに見せて欲しかった、と思うくらいです。(プレお披露目も、お披露目も、演出に恵まれなかったよね……)

 リフトがステキで、ふたりの息の合い方に、コンビとしての素晴らしさをしみじみ感じるっす……。
 てゆーか泣ける。

 なんであと1公演なの? これからじゃん、キムみみ……。


 あ、最後に、ペンライトのこと。

 2幕で物語中自然にペンライトを振る場面があるので、そこでレン@キムくんの「ダンス指導」を受ける形になる。

 坐ったままでいいし、なくても手だけで参加可能。もちろん、参加しなくてもよし。なにしろ坐ったまんまだから。
 あとはラストのダンスパーティ、フィナーレで使用可。つっても、なくても支障はない。

 振付は簡単。ミラーになってなくても(出演者と左右逆でも)おぼえられるくらい、単純なモノ。
 わたしみたいなおばさんでもできるくらい。

 公演が進むと立って踊る人たちが増えるのかな? わたしはまあ、場に合わせるつもりです。立つのがふつーになりゃ立って踊るわ。
 制作発表のときは退院翌日だったんでジャンプして傷口痛んでひーひーだったけど、今は元気だからどんと来い(笑)。


 『フットルース』楽しい……やばいぐらい、たのしい……。
 なんか今、思うんだ。

 この芝居、すごくないか?

 芝居に正誤はないし、好みによって大きく印象が違ってくる。だからわたしがそう感じるからって、それが世間的な評価とはイコールではない。

 それでも、思う。

 『フットルース』のレン@キムと、ムーア牧師@まっつの芝居。
 クライマックス、心を閉ざしたムーアをレンが口説き、考えを変えさせる場面。

 かたくなだったムーアの心が動く。
 誰の言葉も聞かず厚い鉄の扉の向こうにいた男が、ノックの音に気づく。
 はじめて音を聞き、顔を上げ……はじめて、「世界」を見る。
 5年前、扉を閉ざし、同時に彼の「世界」も閉じた。分厚い壁で囲まれた、小さな世界を守ることだけを考えていた男が、少年の声に反応する。
 最初は拒絶して、でも拒絶の声さえこの5年、上げていなかったことに気づき……だって誰も、彼の扉をノックしなかった……彼を思いやって、あるいは彼を恐れて。
 顔を上げた彼は、おそるおそるドアを開く。
 隙間から外を見て、少年の涙を、真実の言葉を聞き、ついには扉を開け放つ。


 この場面の演技、すごくない?

 引き込まれる。

 わたし今まで、キムくんとまっつが役者としての相性が良いとか、思ったことなかったの。
 そりゃふたりともうまい人だから、それぞれよくやっていることは、わかっていた。でも、芸質が異質すぎて、「うまい」以上のモノを複合的に創り出すことができているかは、懐疑的だった。
 100点+100点=200点。
 計算式通り。
 キムくんは芝居の熱量の高い人で、相性のいい人と組めば何倍にもなることがわかっているだけに、「まっつ相手じゃあ、100+100にしかなんないよ」と申し訳なく思っていたくらいだ。や、おこがましい話ですが、相手がまっつでなければもっとチガウ爆発っぷりを見られたのに、と、勝手に思ってました。

 相性が良い人たちなら、100+100ではなく、100×100になるのに。答えの桁数が違いすぎるのに。
 キムくんの熱を、まっつが受け止めて……受け止めるまでは良いけど、こんだけきちんと受けられるだけでもすごいと思っているけど、問題は、そこからさらに上げるのではなく、そのまま流すんだよなあ、まっつ。
 さらに爆発させてくれる人と組んで芝居をするキムくんが見たいなあ。
 そう思っていた。

 や、キムくんもまっつも、単体で好きな人たちだから、好きな人たちを一度に見られるから、組んで芝居してくれるのはうれしい、好き、と思っていたよ。
 相乗効果は期待してなくても、ふたりががっつり組む芝居を見られることだけで、うれしかったんだよ。それは本当。
 キムくんが「同期のあうんの呼吸」をことあるごとに言ってくれるのも、うれしかった。
 演じている彼らにとっては、やりやすさとかが、「相性ばっちり!」なのかもしんない。
 ただ、それを客席で観ているだけのわたしは、キムくんが宣伝するほどふたりの相性は良くはない……と思っていた。ええ、ほんと個人の感想です。


 だからはじめてなの。
 相性を超えて、ふたりの芝居を「いい」と思うの。

 えーっとえーっと、なんかすごくない? このふたり。このふたりの、芝居。

 音月桂と未涼亜希。
 このふたりが、ここまでじっくり繊細に「芝居」として絡む……歌ではなく、正味芝居をしている……えっと、はじめて見る、のかもしれない。
 がっつり「芝居」で闘うふたりを見るの。
 役者同士が本気で芝居として絡み合い、創り出すモノ。その空気、その「人間」としての姿に、息が詰まる。

 このふたり……すごくない? こんなにすごい人たちだったの?
 つか、このふたりって、ふたりで「やれ」って箱を与えられて向かい合ったら、こんだけのことをやっちゃう人たちだったの?
 ご、ごめんわたし、なんにもわかってなかった。

 舞台を観ながら、心臓をどきどきさせている。
 今わたし、すごいものを見ている……。
 なんかすごい、「役者」の創り出すモノを見ているよ……!!


 レンとムーア。
 同じ傷を抱いた男たち。
 光と影、この物語の主人公と裏主役。

 レンによって、扉を開け放ったムーア。

 開いた扉から飛び込んできたのは、「世界」。

 5年間拒絶していた、閉め出していた、「世界」が一気に彼を打ちのめす。翻弄する。
 うずくまる彼を癒すのは、娘アリエル@みみ。
 彼女が「父さんを信じている」と抱きしめてくれるから、彼はそれでも立ち上がる。
 歩き出す。

 クライマックス、起承転結の「転」が、レンではなくムーアだっつーあたり、物語的にちょっと待てそれでいいのか、と思うところではあるが(笑)、とにかくムーアが変わることで、物語は結末へと進む。

 レンとムーアが、この物語の、核。
 それを、同期のふたりが見事に演じきっている。

 このふたりの「芝居」を、見られるのが最後かもしれないって、どういうこと? それって、ものすげーもったいないことなんじゃないの??

 キムくん退団については相変わらず、「辞めるのやめてくんないかな」とアタマ悪く願い続けてますが、それはキムくん本人を好きで、キムくんトップの雪組が好きだから。
 そこに加えて。

 キムとまっつの芝居って、すげーいいじゃん!てのが加わったんですが?
 ちょ、これで最後ってなに? わたし、最後にしてはじめて気づいたの? もう手遅れ? なによそれ~~!! じたばた。

 本公演では、トップと3番手がここまでがっつり芝居で絡むことは、そうそうない。
 『ドン・カルロス』でも似たよーなことやっていたけど、やっぱり3番手を物語の核にするわけにはいかないから、比重を落としてあった。作品的に不自然であっても、タカラヅカの番手制度は絶対だ。絶対であるべきだと思っている。
 本公演では無理、またどこかの別箱公演でないと! 第一、次回本公演はトップコンビ退団だし、専科のお客様もいるしで、まっつがトップさんとじっくり芝居する余地はないはず。まっつより上の立場の人をdisるわけではなく、ただ事実としてそうだと思っている。
 だからほんとに、今回が最初で最後なんだ。や、わたしにとって。

 なんてこったい……。

 こんだけいい芝居をするコンビが、これで解散って、あんまりだよ歌劇団。

 ああますます、「キムくん、辞めるのやめて」!!

 物語スキーとして、これだけ濃密な好みの物語を創り上げられる役者を、コンビを失うのは、つらすぎる。
※上演時間の都合により、抜粋された場面の上演となります。また、上演場面につきましては、著作権上の許諾をもとに、選定しております。

 1本モノを短縮して上演するのが当たり前の新人公演で、ついぞ見たことのナイ注意書きがプログラム冒頭にありました。

 雪組新公の演出が、どんだけ不評だったかってことだな。

 こうしてわざわざ「ひどい構成で上演するけど、劇団のせいじゃないから、文句言わないでね!」と書いてあるってことは、前回相当苦情があったんだろうなあ。

 ある意味、ほっとしました。
 どんな演出でも観客は黙って受け入れるのみ、ひどいものを「ひどい! あんまりだ!」と言っても劇団には届かないのかと思っていた。
 『仮面の男』の件もあるし、ひどい演出に関しては、「ひどい」って認めてもらえるんだね。(人事その他については、観客の声なんてまーーったく届かないにしろ)

 つーことで、月組新人公演『ロミオとジュリエット』
 演出っつか構成は雪組新公とほぼ同じ。いきなり仮面舞踏会で、主人公もヒロインも、他の主要人物も全員白尽くめ+仮面着用で、誰が誰だがまったくわからず。
 主役が誰かわからんわけだから、ストーリーもわからない白尽くめの人々のドタバタ群舞を何分間も見せられ、途方に暮れた頃によーやくロミオ@たまきちとジュリエット@咲妃みゆちゃんのふたり場面になる。

 雪組で耐性付いていたから、まあなんとか、最初から「こーゆーもん」と乗り切った。
 ほんと、ひでー演出。

 ともあれ。

 死@ちなつくん、ステキ。

 ナニあの耽美な人!!
 美しいです。しなやかです。
 なのに、不気味。
 立ち姿とか、不自然に前傾していたり、左右非対称だったりして、生理的に「ぞわっ」とする感じ。気持ち悪い。それがもお、すごく「死」だ。

 ちなつくんをゆーひくんに似ていると言う人がいるってのを、はじめて理解した。
 たしかに似ている……。
 耽美なダーク化粧すると、すごくゆーひくんっぽい。

 死を眺めているだけで堪能できる新公だった。
 つか、もっぺんちゃんと死だけオペラで追いかけたいんで、新公あと2~3回上演してくださいよ(笑)。


 ベンヴォーリオ@ゆうまくん、でかっ。
 最長身ベンヴォーリオ……。公称身長177cmっすよ。月組最長、全組合わせたって、そっから上は悠未さんとか十輝さんとかですよ……。

 雪組の小さなベンヴォーリオを見慣れているモノとしては、異生物を見るハァトですわ……でかいー……。

 月組新公をなにがなんでも観に来たのは、ゆうまくんのベンヴォーリオを見るためだったと言っても、過言ではない。
 本公演でおっさん役なので、若者役、二枚目役をやるゆうまくんが見たかったの。

 ふつうにうまかった。うん、ふつーに。

 ……プラスアルファの発見は、なかった。
 本公演の大公役がうまい、そのまんまに、ベンヴォーリオ役もうまい。
 同時に、大公役で足りていない部分は、ベンヴォーリオ役でも足りていなかった。
 歌はうまいけど、芝居部分は歌ほどじゃない、声がまだ男役じゃない。

 あと、大公よりも芝居している時間が長いし、いろんなことを表現しているので、ひとつものすごーく気になった。

 呆然としているときの表情が……美しくない……。

 役者なんだから、いろんな表情をしてしかるべきだし、あえてアレな顔をするのはいいのよ。それが必要だと判断し、計算と確固たる意志でやっているならば。
 でもたぶん、そうじゃないよね?
 「美しいことが基本のタカラヅカだが、あえて俺はタカラヅカを超えた表現をしてみせる!!」となにもかもぶちこわしてもいい、それで起こることすべて受け入れる覚悟の上であの表情をしているわけぢゃ、ないよね?
 単にまだ、美しく見せる技術が足りてないだけだよね……?

 役に入り込んで泣いたり傷ついたりするのはいい。でも、役者は自分のナマの感情を見せるだけじゃだめだ、表情を含む身体をコントロールして「表現」しないと。

 ゆうまくんはふつーにしていれば、かっこいい。
 だからどうか、動いて、芝居して、さらにかっこよくあってほしい。
 技術を磨いて欲しい。
 や、今でも学年のわりにうまいんだけど。それはわかっているけど、もっと!と、期待してしまう。


 マーキューシオ@朝美くん。……ちっちゃっ!!
 って、公称身長169cm、決して小さくないんだけど、ベンヴォーリオ177cm、ロミオ172cmと並んじゃうと、小さいわ……(笑)。

 相変わらずイケメンです。
 そしてなんつーか、とってもマイペースなマーキューシオでした。

 1幕前半をカットされているとモンタギューチームがとっても割を食う。マーさんも同じ、見せ場が半減。
 ほぼ唯一だよねって見せ場、死の場面にて。
 「あれ言ってこれ言って、それから次はこれ言って、はい死んだ」という忙しさ。やることたくさんあるの、それを全部やるのに必死で、順番守るのに必死で、周囲のことは見えてないっちゅーか、気にしてない?

 うっわー、マイペースやな~~。
 ちょっと唖然と、オペラグラスのぞいてました(笑)。

 ロミオはついて行けないと判断したのか、そもそもそういうキャラなのか、気にせずにゆっくり嘆いてるし。
 ベンヴォーリオはその~、あまり美しくない表情で固まってるし。

 モンタギュートリオ、大変そうだなあ。


 もしも新公が文化祭みたいにあと何回か続けて上演されたら、この子たちはどう変わっていくんだろう。

 マーキューシオは変わりそうで、ワクテカなキャラだ(笑)。
 さらに暴走するか、それとも周囲を見回す余裕ができるのか。
 見てみたかったなー。


 ジュリエット@みゆちゃんは、かわいかった。
 歌が大変そうっていうか、ブレスが大きすぎで、最初なんでこんなに溜息つきまくるんだろう、と首を傾げたよ。
 息継ぎしていると思わないくらい、大きな音なんだもん……。

 あとになればなるほど芝居も発声もよくなっていって、初ヒロインとしては十分だったんじゃないかと。
 つか、かわいいってのはいいわー。
 しかし、やっぱ前髪ぱっつんなんだ……イケコよ……(笑)。


 ロミオ@たまきちは……うーん、別に悪くはなかった、よ……ね?

 たまきちに関しては、いちばんの感想が、発見がない、だった。
 や、ただのわたしの問題。

 ほとんどヒロイン、てな新公2番手役であざやかにデビューして、今回で主演3回目。本公演やその他公演での露出の多さもあって、見慣れた感のあるたまきちくん。
 その、見慣れた、ままのたまきちだった。

 外見は若く作っていたし、若い芝居も別に悪くはないんだけど……いわゆる「ロミオ」というキラキラした美貌ではなかったし、外見をぶっ飛ばすほどの圧倒的歌唱力も演技力も、今回は発揮していなかった気がするし。

 ふつうに良かったけど、3回目の主演で大役で、ふつうに良かった、というのは、どうなんだろう……。
 彼は本公演の死役も生彩を欠いているし、伸び悩みの時期なのかなあ。

 ロミオが似合う……つまり、みりおくん的美貌やかわいらしさを、たまきちに求めるのは柄違いってことなんだろうけど、劇団がソレを求めているみたいなんで、こりゃもうがんばっておくれよと。

 あ、衣装がなつかしかったっす。雪組ロミオ……(笑)。
 月組新人公演『ロミオとジュリエット』感想続き。

 キャピュレット夫人@みくちゃんよかった~~!

 わたしがイメージする通り・求める通りのキャピュレット夫人。こういうキャラで見たかった!と思っていた姿を見せてくれたので、満足度高い。
 美しく、激しく。「強い」顔の下にいろんな感情が垣間見える。

 やっぱうまいよなあ、みくちゃん。
 ただ彼女の巧さは、いわゆる「タカラヅカのヒロイン的」なものではない気がする。ただ可憐とかただ可哀想とかを演じるには、彼女は水面下にある物が固くて大きい気がする。
 タカラヅカのヒロインは、目に見える花の部分がいちばん重要であって、見えないところでどんだけ立派な根を持っていても仕方ないというか。

 花部分ではなく、植物として葉や茎、根っこまで含めた全部で勝負する役の方が、みくちゃんを魅力的に見せる……と、わたしは思う。


 モンタギュー夫人@真愛さん、うまかったー。
 彼女が歌う「罪びと」で一気に泣けた。
 優しさと後悔、無力だからこそそれを認め前へ出る強さ……なんかしんしんと泣けた。納得できた。
 
 いつも同じ表情している印象でそれはどうなのか疑問だが、とにかくその表情が、わたしのイメージするモンタギュー夫人に合致、こちらも欲しいモノを差し出してくれたので、とても心地よかったっす。


 乳母@晴音アキちゃん……なんかデジャヴ……『バラの国の王子』 新公で見たわ、このお化粧……。
 晴音アキちゃんってほんと、いろんな役やってるよねえ。正統派からお笑いまで。
 こちらも乳母として違和感ナイ役作り。道化に徹するよりは、骨太ハートフル。
 ただ、歌はえーらいこっちゃ。ここまで歌に苦戦するアキちゃんはじめて見た。で、歌が大変なせいか、芝居もそれに引きずり倒されて荒くなったり。
 アキちゃんにしては、全体的にいい出来ではなかったような。
 やっぱ乳母って難しいよなー……。

 あと、ピーター@麗奈くんがめちゃかわいい。これまた雪組ピーターっぽくてさ、違和感なし……。


 そして、ふと思う。
 新公の脇キャラの人たちって、月組本公演キャストよりも、わたしの馴染みある雪組キャストの役作りに似ているのだわ。全部が全部じゃないけど、いろんな人たちが。
 それでわたしはいちいち「そうこれ! これが見たかったの!」と思う。

 月組本公演版は再演も2回目だから、オリジナリティを出そうといろいろ故意に変更している部分があり、新公はそんなややこしいことはせず、基本に忠実に演出しているのかもしれない。

 なんにせよ、新公はわたしには感情移入しやすい『ロミジュリ』ぶりだった。


 雪組ともチガウ、本公演ともチガウ、それでもなんかばーーんっ、と良かったのが、ロレンス神父@からんくん。

 ちょ、からんくん、おっさん演じるの、腕上げたね!
 前回の新公で、見た目がとっちゃんぼうやっていうか、かわいい女の子がおじさんコスプレしている据わりの悪さがあったのに、今回はちゃんとおっさんしている……って、そうか、コスプレ物だからか。スーツでおっさんやるより、作りやすいってことか。

 でかいロミオ相手におっさん芝居して……って、前回新公もそうか(笑)。
 ちっこい身体で包容力や年長さが出ているのはいい。
 が、なんつってもラストシーンですよ。
 ロミオとジュリエットの死を知り、嘆きのソロを歌う。
 そこがもお、本気で見せ場。
 「俺が主役!!」の勢いでやってます。

 本役のエマさんはすごくうまい人だし、押し出しのいい派手な演技をする。
 でも彼は決して「俺が主役!!」という芝居はしない。
 役割をわきまえた派手さなんだ。

 でもからんくんってば(笑)。
 手加減なしで吠えてます。
 虚ろな瞳とか慟哭とか、場も観客も圧倒させる気、満々。

 いいなあ。
 この子のこーゆーところが好きだ。

 わたしはからんくんのロミオが見たかったです。心から。
 見た目もかわいこちゃんでロミオタイプだし、歌えるし。
 そしてなによりこの、自己陶酔型の芝居がロミオ向きだと思う。
 今の時代の新公主演はトップスターの確実な切符じゃないんだし、路線にするかどうかではなく、こーゆー子に機会を与える懐の広さを見せて欲しかったよ、劇団。


 パリス@星輝つばさくんは、これまた独自路線のパリス。大ぶりな顔を目立たせる小公子カット、その上カボチャパンツに白タイツ。……すげー徹底した不細工キャラを確立。そりゃコレを「理想の結婚相手」とされたら、ジュリエットもティボルトも怒るわ……。
 いきなり仮面舞踏会という、わかりにくい構成なので、とにかくひとめで「ナイわー」と思わせるキャラを作ってくるのはいい。
 花組でいうなら、タソがやりそうだなあコレ、と思った……。星輝くんはそっちへ進む人なのか。前回の新公では片方の役がやっぱタソ系だったけど……。

 ティボルト@ゆうきくん、黒塗り似合うねー。体格もいいので、ティボルト役は似合う。
 しかし彼はいつかどこかでばーんと変わることがあるのかなあ。抜擢が早かったため、もう5年くらい同じテンションのゆうきくんを見続けているわけだが、新公主演しても変わらないし、今回本公演で女役しても変わらないし……あとどうすれば化けてくれるのかなあ。

 愛@隼海くんは……女役なの? キミって女の子だったの?ってところからスタートしているもので、慣れないまま終了しちゃった。
 わたしはどうも、隼海くんを女の子認定してなかったようで、「隼海くんの中の人が女の子である」という基本事項にくらくらしていた。
 首から下が別人に見える……だって首から下は女性ですよ……隼海くんなのになんでそんなことに……。
 わたしは隼海くんをなんだと思ってるんだろう……いやその、彼のアグレッシヴな芸風が好きなんですが……そうか、女の子だったのかー。


 モンタギュー卿@輝城くん、キャピュレット卿@貴澄くんはあまり琴線に触れず……いやその、うまいことはわかってるし。

 輝城くんはモンタギュー男の方が印象強いわー。
 ピーター役の麗奈くんも、キャピュレット男姿が不穏でかっこよかった。迫力ある顔立ちだから、ダークな役作りだとそれがさらに映えるなあ。
 日付は1日ズレてますが、『フットルース』アフタートークショー「音月桂・舞羽美海・未涼亜希・蓮城まこと/司会:早花まこ」に行ってきました。

 当方ルポ機能はないので、相変わらずただの感想です。

 1本物芝居の終演後だから、みんな役の衣装姿でトークですよっと。

 このトークのテーマは、ずばり「喋りの虫に屈したまつださん」でした、わたし的に(笑)。

 とゆーのも、アフタートーク開始当初、われらがまっつさんはあまり喋る気がなさそうでした。
 たぶん、コンディションの問題もあるんだと思う。できるだけ喋らないでいようと思っている感じ。

 みんな個々にマイクを手にして、司会のきゃびいの言葉に従って自由に話すんだけど、まっつさんってばマイクを下げたまなんだもん(笑)。
 手にしたマイクが膝の上。他の子たちがマイクを(喋っていないときでも)口元に持ってきてるっつーのに。

 なのに、だ。
 トークが進むにつれ、まっつさんが喋り出す。
 ツッコミ冴える(笑)。大阪人の血が騒いでいるのか……?!

 で、後半からラストにかけて、いつものまっつ節というか、最近のトークショーで「まっつが全部持って行った」的に笑いをどっかんどっかん取る、あの調子になってアフタートーク終了。

 まっつ……!!
 なんておいしい人なの……。

 最初喋らなくて、後半エンジンかかって、ラスト持って行く、って。
 そうやってしれっと終わるのが、すごい勢いで膝叩いたよ、まっつらしい!!と。

 まっつが喋り出すきっかけを作ってくれたのはキムくんだっけ?
 まっつに話を振るんだよね。
 たしか、フィナーレ2種類あるけど、オススメどっち?って。
 んでまっつが「どっちも。甲乙つけがたい」ってぼそぼそ喋り出して。あれ? オタ芸の話振ったのはその前? あと?(客席参加型『フットルース』、お客さんがすでに振付マスターしていることから、牧師さんがオタ芸披露まで話が飛躍した)
 とにかく、キムくんが話振るもんだから。

 まつださん、なんかスイッチ入った?

 自分のこの役のここがこだわり、っていう質問に対し、みんな一瞬悩んで沈黙したその瞬間、間髪入れずまっつのツッコミが入る。

「ここ」と、キムくんのブーツを指さす。

 まつださん。質問、聞いてました? 「自分の」役のこだわりですってば!!
 キムくんのこだわり指摘ぢゃないって!(笑)

 キムくん爆笑、「気づいてた?!」と。レンのブーツの折り返し部分。わざと一部だけ折って履いてるんだって。
 まっつ、どや顔。

 自分の役のこと聞かれて、自分のことそっちのけで「キムくんをよく見ている」ゆえの「こだわりポイント」を披露してくれるなんて、キムまつ萌えの人を喜ばせるネタだなあ、と感心した。
 で、キムくんが打てば響く子だなあと思うのは、それに対し自分の話で終わらせず、「まっつのこだわり知ってる、これでしょ!」と返すこと。
 ……それが本当に「日頃からこだわりだと見抜いている」様子ではなく、単に今話の流れで思いついただけ、という感じであったとしても(笑)。

 キムくんはまっつ牧師様の緑色のストール?を、「こだわり」と決めつけてました。まっつは否定も肯定もせず。キムくんの「緞帳みたい」という表現にウケてた。

 きんぐのこだわりが、いかつい指輪。
 レンを殴るときに「痛そう」と思ってもらうように、わざとしているらしい。
 それはいいけど舞台稽古にて、ほんとに痛い指輪らしく、自分で自分の手を傷つけてしまったきんぐ、血がどばっと出て、組んで踊るみみちゃんにも血が付いてしまったそうな。
 舞台上も客席もその話にざわざわしているっつーに。

「うちの娘になにすんの」(大阪弁)

 ツッコミ入りました、場内爆笑。

 まっつパパはどんどん親バカぶりを発揮して。

 娘は両親のどっちに似てるんだろう、っていう話題に対し、

「絶対お父さん」

 言い切りました。親バカ。親バカですよこの人!!
 アリエルのこと、「かわいい」って言ってた。

 ……自分に似てかわいい、って言ったのかな? 娘が美少女なのは、自分に似ているから、自分が美形だから……って暗に言っているのかもしれぬ(笑)。

 カルロス@キムくんのパパだったときは、そんなことまったく言ってなかったと思うから、ほんとに今、娘がかわいいんだな~~、まあ、男親ってそうだよな~~。

 ムーア家は、イイ家族なんだと思う。
 まっつも自分で家族ネタにのっていた。
 ヴァイ@きゃびいの作った夕飯を、アリエルも自分も食べないでリビングを出て行ってしまう。ものすごいごちそう、かつ、ものすごい大量なのに。
 それで、「この人ひとりで食べるの」と、きゃびいを指す。この人って言ったよね? なんて身内感覚の表現(笑)。
 それを受けてきゃびい、「ふたりがいなくなったあとなにげにちらっと料理を見てるんです。これどうすんのよって」……リアルだ……リアル過ぎる家庭の風景……。

 んで、どういう流れでその話になったか忘れたけど、たしかキムくんが「きんぐのあの袋の中なに入ってんの?」といきなり聞いたんだ。
 あの袋……ひとり街を出ていく不良青年チャックくんが抱えている、ズタ袋。
 きんぐ、間髪いれず、さらっと。

「あの中には、夢と希望が」

 うまい。これはうまい返しだー! 一斉に拍手! ……キムくん笑いすぎ。
 その満場の拍手と笑いまくるキムくん、というタイミングで。

「ドス黒いんだろうね。ブラックホールみたいになってるの」

 ぼそっと低音ツッコミ入りましたーー!!

 場内爆笑。……ってゆーか、いちばん爆笑してるのがキムくん。笑いすぎ(笑)。

 いやあ、いいなあほんと! きんぐをいじるまっつの容赦なさ、ステキ!

 まっつ→きんぐはまだあって。
 ラストにひとりずつ締めの挨拶するところで。

 まっつは「いろんな愛の形のある役」というよーな意味のことを言っていた。娘や妻に対する愛……だけでなく、レン@キムに対しても「愛」という言葉を使った。「親子じゃないけど、親子のような愛の形」と。
 ああやっぱ、そーゆーことなんだねえ、としみじみしていたら。
「残念なのは、チャックを公正させられなかったこと」
 と、しれっと言うんだもの。

 いきなり話を振られたきんぐびっくり、キムくんはさっそく口を出して混ぜっ返すし。

「ひとこと言ってくれたらいいのに。いつでも話聞くよ?」
 と、牧師様。なんかわざとらしいほどに、やさしげ。
 それを聞いてきんぐは、
「夢と希望を持って次の街に……」
 と、「ストーリーをただ口にしました」って感じに言う。牧師様のやさしさが届かなかったよ残念、と。
 そしたらそのやさしい牧師様が、

「行っちまえ行っちまえ!」

 手のひら返した。

 爆笑。
 やさしげだったのは、そのあと落とす前振り? コントとして脚本あるんじゃなく、即興でこんなことやってんの?

 なんつーか。
 まっつって、面白い人だなあ。

 大阪人として、話にオチがあるのは当然だけど(大阪では、日常会話でもオチがないと嫌がられます。鍛えられます)、それにしても素でこれって、すごいわー。

 前半おとなしかったくせに、後半どっかんどっかん笑い取って、爆笑で終わってるよ。

 ほんと面白かった……。なにを言ってもしれっと低温なところがまた、おかしい。

 愉快なアフタートークでした。満足満足。


 それと。
 このトークがまともに「会話」として盛り上がったのはきんぐに司会をさせなかった功績だと思います(笑)。
 参照は『ドン・カルロス』アフタートークね。
 http://koala.diarynote.jp/201203211215549936/

 きんぐかわいいよきんぐ。
「みなさんが、女子学生だとしたら、どの役に惚れてしまうと思いますか?」

「まっつ!!」

 質問が終わるなり、フライング気味にすげーでかい声で叫んだのは、雪組トップスター様。早押しクイズのノリで、先に言わなきゃ取られる!ぐらいの勢いで。

 あのー、もしもし?
 質問わかってますか? 「どのか」ですよ?

 まっつ、というのは役名ぢゃありません!!(笑)

 『フットルース』アフタートークショー「音月桂・舞羽美海・沙央くらま・愛加あゆ/司会:舞咲りん」にて。

 いやあ、爆笑した。
 キムくん……。
 そこは「ムーア牧師」と答えるところであって、まっつぢゃない。もしくは、「まっつの役」だな。

 まるで、まっつへの告白のようで、盛大にウケました。

 「女子学生じゃなくても」「父親にリンクする。向こうもレンが息子にリンクしているんだと思う」「最後の最後にようやく笑ってくれるのが、萌え~~」

 キムくん個人として語っているのか、レンとして語っているのか、そもそも女子学生としてという質問なのにそれもどっかいってるし、キムくんぐたぐた(笑)。
 ひとつだけ確かなことは、まっつの演じているムーア牧師が、いい男だということ。
 まっつだから、なのか、単なる役の話なのかは不明。
 ただ。

 最初に「まっつ!!」と食い気味に叫んだあと、「なんで自分がいちばんに答えてるの??(下級生順じゃないの?)」とか言って、アンタが自分で食いついたんだよ!!と、その場にいた人の内心総ツッコミも入ったであろう、キムくんの本気っぷりが愛しいです。

 まっつのこと、本気でカッコイイと思ってくれてるんだわ……。それこそ、「俺が女なら惚れてる」くらいに(笑)。

 で、レンとして生きて、最後の最後にようやく笑ってくれることに、きゅんとしてるんだ。
 レン……。
 行ける……レン×牧師、イケる……!(やめなさい)

 あ、コマくんも続いて、まっつさんかっこいい話をしてくれました。ありがたいのう。


 レンの見どころに、「サムいギャグをとばし、盛大にすべってへこむ」というくだりがあります。
 緊張すると言わなくても良いことを言ってしまう、というレンくん。とっても歓迎されないムーア家の空気に負けて、地雷を踏みまくり、胸にエアー矢が刺さる、というギャグを披露。
 もちろんムーア牧師は無反応。冷たい表情と侮蔑の無言だけがレンに与えられる。
 あのものすごいコント場面……まっつ指導だそうです。あ、たぶんきゃびいも。

 エアー矢が最後、背中の矢筒に収まるまでが流れなんだって。
 言われてから見たら、たしかにレンくん、最後に矢を背中へ入れてるわ……。

 まっつ……なんであの顔で、あのキャラで、お笑い好きな大阪人なんだ……。


 今回のアフタートークにまっつは出演していないけど、まっつ、舞台袖とかでトーク聞いてないかしら……。
 キムくんの公開告白(笑)とか、どんな顔して聞いたのか、知りたいっすよ……。てゆーかキムくん、そーゆー告白は本人がいるときにだな(笑)。

 まさかこんなにまっつの話が出るとは思わず、気楽に参加したもんで、思いがけずウハウハでした。


 アフタートーク自体、ほんっとにおもしろかった。
 なにしろ司会がヒメですから! 「ザザちゃん、絶好調♪」@『ノン ノン シュガー!!』のヒメですよ? 自由自在に出演者いじって司会やってました。

 今回のメンバーは、なんつってもWカップル。
 「役になりきって、相手のどこが好きかを言う」とか、公開のろけタイムあり。

 ラスティ@あゆっちは、ウィラード@コマを「なんといっても、かわいい」と思っているそうですよ。「放っておけない」んだって。
 あー、わかるわかる。ウィラードはマジかわいいよね~~。そして時々「降臨」したりして、ギャップもあるしね。

 ウィラードは「草食系男子なので、引っ張っていってくれるところ、いつもなにがあっても笑顔のところ」がラスティを好きになった理由だそうです。

 コマくん、カノジョいる設定久しぶりなんだってさ。年配役だーの振られる役だーの続いたもんね。あ、振られる役にサンマール@『仮面の男』は含まれるかな(笑)。「お前がいなくなって寂しかったよ」とか、公衆の面前で言ってたよね……。
 お稽古中は、コマとあゆっちふたりして「役になりきってデート」してたんだって。廊下とかで。素顔でやってたわけっしょ? ちょ、ソレ見たい……!

 で、アリエル@みみちゃんは「出会ったときからビビっときてた。全部好きです」……キターーッ! みみちゃんの全部好きです、キターーッ!!

 な、ナマで聞けるとは……っ。

 そして、それを受けてのキムくん。「最初のミサで会ったときからなにか共通するモノを感じてた。放っておけないし、俺が守ってやんなきゃ!って……」
 ここで観客どよめき、ヒメがヒューヒュー、キムくんそこで会話ぶった切っちゃった(笑)。すかさず「もう1回言って!」と言うヒメに「絶対言わない!」と即答するキム……。

 「俺が守ってやる」って、めっちゃ素で男声だったんですが。

 さらりとかっこよすぎ。

 レンはほんとにいい子で、キムくんは最初に台本読んだときに、レンという人物に心酔したと。そうありたい、と思う人物像であると。
 強くて優しいレン。そのレンとシンクロするキム。うああ、かっこいー。

 そーいやコマくんは、「ウィラードは自分とかけ離れているので、役作りが大変☆」だそうです。
 はい、周囲から総ツッコミ入ってました。「役作りしてないよね?」「コマまんまだよね?」
 なんかシルヴィア@『めぐり会いは再び』のねねちゃんを思い出した……「役作りしてないよね?」「ねねちゃんまんまだよね?」と言われながらも、ねねちゃんひとり涼しい顔で「役作り大変☆」と言っていたアレ……(笑)。
 コマまんま、なのに、失敗したコマが「ウィラードだから(失敗しても仕方ないよね、てへぺろ)」と言っても、そこは「ウィラードじゃなくて、コマだから」と言われるそうな。世の中甘くないね(笑)。


 キムくんはトークをしていても華やかな人で、場の中心が相応しい人。
 コマは面白い、いろんな意味で。みみちゃんは万事控えめ。

 意外にあゆっちはふつーの人だなあと思った。や、その、考え方とか。見た目は超アイドル、美少女ですがな。なのに、話す声が落ち着いていたりして、ギャップあり。
 ツインテールがはじめてだとか、抵抗が大きかったとか恥ずかしかったとか、うわそれすごくふつーの感覚。
 あゆっちくらいかわいい子なら、その辺平気なのかと思ってた。
 そーいやみみちゃんも今は慣れたけど、制服が恥ずかしかったとか言っていたし。いろんな衣装を着る舞台人でも、制服は恥ずかしいんだ……なんてふつーの感覚。


 それにしても面白かった、トーク。
 司会者の腕ってのは、大いに関係しているなあ。
 ヒメはこれからも是非、司会やってほしい。
「ヒーロー」のいない世界にて。@フットルース
「ヒーロー」のいない世界にて。@フットルース
 なんかとっても、統一感のある色合わせです、カラーバンド。

 てかさー、どの色が当たるかは10分の1じゃないですか。なのになんで、またしても、ディープ・ブルーが来るかな。今回、コマ大当たりだ。プレゼント日に行くたびに、コマグッズが増える。
 そして、ご縁皆無なのが、キムとまっつ。ほんとにわたしのくじ運ってば……(笑)。

 あんまりわたしがまっつまっつうるさいので、まっつのカードと黒バンドは譲っていただけました、あかりさん、ありがとう!
 でも、チェリー・ピンクのバンドも欲しかったなー。わたしはもう、プレゼント公演は見られないんだなー。
 フィナーレで牧師様がクソまじめにピンクと黒のバンドを付けて踊っているのを見るたびに、お揃いしたいっ、とじれじれしました(笑)。

 で。
 自分のくじ運は早々に見放して、買いました。
 ピンクのバンド。
 本物ちゃんと見たことないからわかんないけど、テレビや舞台まっつを見る限り、わりと似てない? このバンド。

 てことで、まっつ黒バンドと一緒にこのニセモノピンクバンド付けて、自己満足することにします。
 ばったもんのバンド付けてる残念なおばさんを見かけても、なまあたたかくスルーしてやってくださいまし……。

              ☆

 『フットルース』の、ナニがこんなに面白いのか。わたしの琴線に触れるのか。
 それを考えた。

 そして、思い至るんだ。

 「ヒーロー」がいない、ことだ。

 『フットルース』に登場するのは、ふつーの人々だ。
 それぞれ個性は強いし、デフォルメされたりタカラヅカ的、あるいはマンガ的手法が取られているけれど、あくまでもふつーの人たち。
 超人はいない。

 立場的に悪役もいるけれど、彼らとて絶対悪ではないし、主人公サイドと同じく、善悪においても日常の範囲。

 ふつーの人しかいない、わたしたちの日常と地続きの世界で、ふつーの人たちががんばる話。

 主人公レン@キムは、ヒーローではない。
 どこにでもいる、ふつーの男の子だ。
 彼がやってくることで街が変わったのは、彼が「よそ者」だったせい。同質のモノだけで固まっていた集団に異分子が入り、瓦解した。
 「天のもとでは、あらゆるものに時期がある」と作中にあるように、そろそろ限界だったんだと思う。壊れるのは時間の問題、だったところに異分子が混ざり、ぱーんと割れた。
 ラスト、ラスボスが方針を変えた、だけでみなが従ったのは、彼ら自身限界を感じていたからだ。ラスボスが折れてくれて、ほっとしただろう。
 必然だった、なにも不思議はない。
 レンが特別に素晴らしいヒーローだったから、街を変えられたわけじゃない。

 だけどレンは、いい子だ。
 彼の魅力は、「ヒーローではない」ところにある。

 レンの持つ、素直さと柔軟さ。
 それはたぶん、ボーモントの街が失ってしまったモノを象徴している。

 レンは街の仕組み自体、ダンスを禁じる地方条例撤廃に向けて闘いを挑む。
 「I’m Free」、自由を手に入れろ、と。

 でもその「闘い」は、あまりに正攻法、まともすぎる方法で。
 暴力に訴えるのでもないし、学校をボイコットしたり立てこもったりという、マンガやドラマでよく見かける方法でもない。
 町議会で発言して、評議員の多数決で撤廃してもらおうというんだから、フィクションにあるまじきまともさと、地味さ。
 議会で踊って、なし崩しに全員巻き込んでダンスパーティにしてしまえ、というこれまた映画などで見かける派手な方法でもない。ましてや、唐突に子守歌を歌って突然みんな泣き崩れ、脈絡なしに心が通じ合うなんていう、どっかの歌劇団のお家芸もやらない。

 日常にある方法、常識の範囲でしかない闘い。

 しかも、レンがたぐいまれなカリスマ性と秀逸な話術で敵対する人々を魅了し、奥深い心理戦と駆け引きでラスボスを論破し、勝利を得るわけでもない。

 レンひとりでは、闘えない。
 議会で発言するスピーチ内容は、仲間たちみんなで考えている。ウィラード@コマやアリエル@みみの力を借りて、原稿がやっと出来上がる。
 それを発言するのだって、「おぼえてきた原稿を読み上げてます」という、まったくもって「自分の言葉」になっていない、ただの朗読マシーン状態。
 ひとの心を動かすにはほど遠い、お粗末な出来。

 とても、ヒーローの仕事じゃない。

 でも、レンがやってのけたことは、十分「ふつーの人の心」を打つ。

 レンが仲間たちと作り上げた原稿は真っ当なものだし、子どもたちがそうやって力を合わせ努力して、正しい方法で公の場で意見する姿は、見ていていじらしい。よくやった、と心を動かす。
 ふつーの大人なら、そういうときは子どもたちの功績を認め、誉めてあげるもんだ。子どもたちの努力を全否定して叩きつぶす、なんて不毛なことはしない。

 ただ、レンたちが相手にしたのはふつーの大人たちではなく、「悪」に染まった大人たちだから、そうはいかなかっただけで。

 じゃあ何故、大人たちは「悪」に染まっているのか。必要なのは条例改正のための「正論」ではなく、聴く耳を持たなくなった「悪」の心を砕くこと。
 敵のラスボスムーア牧師@まっつは、元は善人だが、今は不幸にも「悪」に取り憑かれている。
 てことでレンは、ムーア牧師単体に狙いを定め、彼を歪めている原因を取り除くことにする。
 これまた、なにか華々しい必殺技があるわけではなく、「正論=キレイゴト」ではなく、「本心=弱さ・傷」をぶつけることで、ムーアの心を動かす。

 レンが仲間たちとやってきたことは正しいこと、プラスのことだ。
 それでも十分だけど、さらにその奥にある弱さや歪み、マイナスのことをさらけ出し、正しさと弱さを、プラスとマイナスを、全部ひとつにした。

 陰と陽、プラスとマイナス、それはつまり、「人間」だ。

 ごくあたりまえに、「人間」の姿。
 プラスしか持たないヒーローじゃない。マイナスしか持たない悪人じゃない。

 ごくふつーの人間が、常識の範囲内でがんばって、奇跡を起こす物語。

 「HERO」という曲が有名であり、作中で実際にその単語が使われているけれど、ほんとのとここの物語にヒーローはいない。出てこない。
 超人じゃない、ふつーの男の子であるレンが、アリエルにとってのヒーローであるように、「白馬の騎士」は存在しない。
 ……だからこそ、逆手に取って使われているよね、この単語。

 出来事もキャラクタもすべて「ふつー」なのに、それらがしあわせな奇跡につながる。

 彼らの奇跡は、わたしたちの奇跡かもしれない。

 超人とかに頼らない、ずるをしない、ふつーの人々ががんばって危機的状況をひっくり返し、大団円に持ち込む物語が、わたしは大好きなんだ。
 これぞエンターテインメント! 逆転の快感。障害を打開し高見に至るカタルシス。

 わたしが、もっとも心地よいと思う起承転結の黄金パターンのひとつだ。

 だから、こんなにこんなに好きなんだよなあ、『フットルース』。
 書きたいことが多すぎて、時間が足りない。
 『フットルース』、まとめる時間がないので、思いつくままに。

 大都会シカゴの学生たちは、ボーモント大人組のアルバイト。ザッキー、亜聖くん、いのりちゃん、すずちゃん。どっちも自然にハマるからすごいよね。
 つか亜聖くん、若者なのに大人組……(笑)。

 レン@キムくんは、「ボーモントなんて地名を言っても、どうせ誰も知らない」という前提で大口たたいているよね。なのにいのりちゃんが「テキサスの?! おばさんが住んでた(過去形がポイント)」と言い出すから、ボロが出ちゃったんだよね。地名が通じちゃったときのリアクションがいい。

 紗幕が上がって、そこには制服姿の学生たち。

 きんぐ、センター!!

 本編(プロローグ)はじまって、チャック@きんぐがセンターで歌い踊るのを見た日にゃあ……「きんぐ……! 大きくなって……!」と親戚のおばちゃんモード。
 幕開き群舞センター、ってやっぱ破壊力ある。

 主題歌「フットルース」。
 メインの若者キャラたち総出演。順番にラインアップ、ソロや少人数口でのセンター場面のたび、彼らにぱーっとライトが当たるのが気持ちいい。
 トラビス@まなはる、ライル@レオまで、ちゃんと。
 ただ、ヒロインのアリエル@みみちゃんがソロ3人目なので、ヒロインとわかりにくいかも。(拍手も入れにくい)

 エセル@ヒメが、とってもヒメなママ。マイペースで強引で明るく強く。笑いもしっかり取っていく。

 レンも他のみんなも、「逃げ出したい」と歌っている。
 最初はそうなんだ。
 逃げることしか考えない彼らが、逃げずに闘うところにたどり着く、成長物語。(ただひとり、成長しないのがチャック)

 オープニングの若者たちダンスの後ろ、真っ暗な中に、こっそり牧師様@まっつが登場しているのが、なんか愛しい(笑)。
 よーく見ると、とことこ現れて、客席に背中向けて立ってるの。
 踊る若者たち、背中向けてるまっつ……。おかしい。なんか、おかしい(笑)。
 で、そのあとゆーっくり盆が回り出し、若者たちはいなくなり、かわりに大人たちが歌いながら現れた頃、演壇に立つ牧師様がほぼ正面を向くあたりで無理なく視認できるようになる。

 牧師様のスタンバイ、早すぎる気がする……。若者たちが踊ってる後ろに、もうスタンバイしてるってのは。かわいい。

 ミサの教会内は、目がいくつあっても足りない。
 全員出演している場面? 若者たちはそれぞれ個性たっぷりだし、アリエルとレンの最初の出会いの場面でもあるし。

 ここではユーリーン@さらさ、ウェンディ=ジョー@えーちゃん、ジーター@咲ちゃん、ヴィックル@ホタテは、それぞれ別の組み合わせで坐ってるの。ただのクラスメイトって感じで。
 2幕の町議会のときは、ちゃんとカップル成立しているから、彼らにもドラマがあったんだなあと思う。

 個人的に、ダンバー先生@香音くんが、牧師様をファーストネームで呼ぶのが、気になる。
 他の人たちは、ムーア牧師、と名字で呼ぶ。でもダンバー先生だけ「ショウ牧師」なんだよね。彼は牧師様の自宅にも招かれていたし、仲良し設定らしい。
 もやもやもや……。(いろいろと思うところがあるらしい)

 デヴィッド・ボウイについて大人組+レンで話しているところの牧師様がすげーかわいい。
 あの表情はいったいなんなんだろう。

 ウェス@ザッキーも、最初はレンたちを心から歓迎していた。1週間かけて子ども部屋を用意するとか、ふつーできないよ。
 こんなにやさしかった、これが彼の本来の姿。……だから、途中から押さえつけられ、歪んでいく姿が切ない。

 ルル@すずちゃんのテンション高いぶりっこ女性っぷりは、ヒメと姉妹だってのが、よーーっくわかる、と納得。
 ヒメとすずちゃん姉妹の少女時代、想像できますわ……キャラ設定リアル(笑)。

 ダンバー先生とエレノア@いのりちゃん夫婦も、すごいわー。エレノアのあの「無垢なお嬢様がそのまま大人になった」感と、ダンバーせんせの暴君っぽいとこがね……でも先生、エレノアに惚れてるがゆえの亭主関白っぽいのがまた、いいよね。

 学生チームは大きく分けると3つのグループになるかな。

 ひとつは、ウィラード@コマとジーター、ヴィックルのイケてない男子トリオと、ラスティとユーリーンとウェンディ=ジョーの女子トリオ。
 それぞれ男子女子と別ユニットなんだけど、対で出てくるし比重的に同じなんで、同グループカテゴリ。

 ウィラードはほんとすごい。かわいい。たのしい。コマってほんとすごい。見事に持って行くんだよ、彼。
 コマくんの芸幅の広さに感動っす。

 咲ちゃんがかっこいい。イケメン。1年とちょっと前の全ツでは、あんだけ残念だっただけに、この1年の成長っぷりはすごい。
 そしてつくづく、今このタイミングで抜擢していたら、どんだけブレイクしたかなあと思うと、劇団って人育てるのヘタだなと思う。
 去年の全ツ初日の客席のどん引きぶりは、すごかったもの……。咲ちゃんに拍手皆無、静まりかえった会場。あんな不自然なことをせず、1年学年相応(よりちょっとイイくらい)の扱いで「あのカッコイイ子は誰?!」「あの子の新公主演見たい!」とファンをじらせば良かったんだ。

 ジーターはイケメンだが、チャラくてナルっぽくて、やっぱ残念男子トリオのひとりらしい、かわいいキャラ設定。

 もうひとつが、不良グループ。
 中心にいるのが、トラビス@まなはるとダイアン@あゆみ、ライル@レオとサラ@ひーこ。この2組のカップルがいいんだなー。
 まなはるとあゆみは、あゆみ姐さんがオトコマエ。まなはるは尻に敷かれ気味……に、見える(笑)。反対にレオとひーこは、低温に超ラヴラヴ。いつもふたり密着してるのが、もお……。

 残りがふつーの子グループ。いちばん影が薄いっていうか、まあその、モブ要員。つっても、学生なわけだから、おいしいんだけどね。

 不良たちのたまり場、ガソリンスタンドでは、きんぐが踊っているようであんまり踊ってない感じなのが、なんかツボ(笑)。彼は歌手ポジションなんだねー。
 ダンスはなんつってもあゆみとひーこ!! ふたりがちょうかっこいい。
 男子よりも女子のダンスがかっこいいんだよなあ。

 不良グループで目を引くのが、蒼井さん。
 最初、なんであすくんが、女子高生役で出てるの?!と、二度見した(笑)。ちゃんと見たらチガウ子だ、そりゃそーだ、あすくんは男子だもの、『フットルース』に出てたって男子役だっつーの。
 蒼井さんはキツイ美人系の顔立ちの娘さんだと思っていたけど、ばっさり髪を切り、少年のようなりりしい姿になっているもんで、「男役が娘役で出演してる?」感じに見える。
 身長さえあったら、いい男役になったろうなあ、と思えるくらい、ナチュラルに男顔。

 不良グループはダンサーを揃えてある印象なんだが、ひーこと同じ振りをその直後にやる蒼井さんは、いろいろと不利だなあと思う……。軸のぶれっぷりがすごいよ、いつも……。

 あだちゅうがパワフルで、ありちゃんがまたボンバーだ(笑)。
 で、個人的にうきちゃんがエロかわいくてたまらん。あの乾いた感じが他人に興味ないゆえに不良やってる感じで……あと、フィナーレで笑いかけてもらったもんで、一気にオチた(笑)。←

 続く。
 『フットルース』の覚え書き、いろいろ駆け足で。

 不良グループはなんか女の子に夢中で、男の子をあまり見れてないのが自分的課題。次こそは……っ。
 真地くんが髪型いまいちな気がする……つか彼、いかにも男役なクラシカルな風情の方がハンサムな気がする。

 まなはるはとってもまなはる……っていうか、アテ書きなんだろうな。ホットな三枚目。お調子者。
 このまなはるを、まっつが無表情にまたぐのが、ツボ。

 牧師様の温度の差が、たまらんなあ……。

 ふつーの子たちの中では、やっぱわたしは翼くんを眺めてしまう。
 あの爆発したよーな髪型ゆえ、小さな顔がさらに小さくなっているよーな(笑)。ときどき、るなくんとまざる……似てる?

 ふつーの子は、ウィラードたち、ラスティたちと一緒に登場するので、後ろまで見られないんだよなあ。

 あのクラスはどうなっているのか、座席はふつーの子たちの分しかないんだよね。でも途中から不良組も教室に合流、レオひーことか、ふつーに座席坐ってるしなー。
 レオくんがほんとにガム噛んでるのが、またクールでかっこいいっす。

 校長@杏奈ちゃんと副校長@がおりは、ステキなコントラスト。
 杏奈ちゃんも、こーゆー役だと似合うなあ。台詞も浮かない。

 「誰かが見てる」のナンバーはすごく好き。
 曲も、歌っている学生たちの振付も。
 すごい勢いでドラマが展開するし。

 そしてエセル@ヒメの突然の独唱がすごい。ここで彼女が歌い出すと思ってないから、初見ではびびった。
 ヒメのソロを背中に聴きつつ、学生たちの元へ戻るレン@キムの表情がかっこいい。彼はああいう、「黒でも白でもない」微妙な表情がうまいと思う。どう受け取るか、観客次第というか。

 ところでヴァイ@きゃびいの演技は、あれでいいのだろうか。
 演技っちゅーか、キャラ設定?
 年齢、上げすぎじゃないか?

 5年前に高校生だった息子がいたんだから、40代半ばくらいの設定?
 あまりにも年配というか、老婆のような声と話し方に違和感。
 もっと若く作ってもいいのに……何故。

 牧師の妻として、落ち着いた感じにしようとしたら、ああなっちゃったのかなあ?
 ムーアさんとのラストシーン大好きなんだけど、彼女の年齢設定はずーっと疑問だ。
 親子や夫婦の会話も、もっとふつうに喋っていいのに、すごく作った声音で話すのが気になる。

 バーガー店の女主人ベティ@みとさん……まさかの、ローラースケート。えっと、みとさんいくつだ……それでローラースケートって……こ、転ばないでね、ケガしないでね!!
 彼女の存在感とキャラ立ちっぷりに、ほっとする。こういう大人がいてくれるのは、ほんとにありがたい。
 みとさんの歌声も好きなので、ソロが少しでもあったらうれしかったのになー。

 アリエル@みみちゃんが、成績優秀な不良少女、ってのがいいよなあ。
 「この本を読めば良かった」と思わせるような感想文を書く女の子。きっと理路整然と頭のいい論文を書くんだろう。
 ラスティ@あゆっちとウェンディ=ジョー@えーちゃんはアホの子設定かあ。単語も文章もろくに読めないのなー……アメリカの「ふつーの子」ってそんな感じなんだろうか。や、彼女たちは勉強できない子設定なんだろうけど、日本の高校生であのレベルまで文字や文章読めないってのはナイよなーと。

 この美少女3人組、ラスティは太めのかわいこちゃん、ユーリーン@さらさはお嬢様風、ウェンディ=ジョーはファニーな感じで、それぞれ見た目もキャラ立っててかわいい。現実世界でなら、あんだけファッションのセンスがかけ離れた女の子は同じグループにはならないけどな(笑)。

 女の子たちの歌う「HERO」がかわいいし、かっこいい。
 女の子がかわいいのがいいよなー、ああ雪娘ってば!

 で、騎士姿の男子たちが登場するくだりは、初日はアタマ抱えた(笑)。だってその、あまりにアホアホな演出で……。
 が、翌日からはノリノリ、なくてはならない、大好きな場面に!(笑)
 だってみんなステキなんだもん。
 とくにキムくん! すげー大人でクールなの。レンじゃないの。アリエルの脳内王子さま(笑)なの。

 最初はもっとクールだったイメージなんだが、だんだんキムくん、笑う回数が増えてきたような……。ここは非人間的なキャラでお願いしますよ、笑顔はレンで十分です!(笑)

 他の男の子たちも、それぞれキャラクタがあっていいのだわ。
 名前はなくても通し役でずっと舞台にいるって、ほんと役者を成長させるよね。

 ノリノリでロリポップをマイク代わりに熱唱するラスティと、それに抗議する蒼井さんが、ツボ。なにやってるの、キミたち、かわいいぞっ!

 チャック@きんぐは難しい役というか。
 オープニングのセンターを見たときは興奮したけど、この役、実はあんまりおいしくないというか……辛抱役なんだなあ。
 アメリカ映画に出てくる、どーしよーもない悪役。観客が理屈抜きで軽蔑し、憎める造形になっている。タカラヅカではこういう役、難しい……。
 だってタカラヅカは悪役だろうがなんだろうが、みんなタカラジェンヌが演じていて、軽蔑とか嫌悪とかする対象にはならないんだもの。
 きんぐ自身、チャックを「嫌われ者という、記号」とは思っていない様子だし。アリエルを本気で愛してるとか、真面目に役作りしてるよなあ。

 それが、据わり悪い。
 役割は記号なのに、人間だから。きんくだけじゃない、ジェンヌたちはチャックも人間として表現しているから。

 まなはるやレオくんも、チャックとは別に厚い友情では結ばれていなかったようで、簡単に縁が切れてしまうしね。
 それはチャックが記号だから許されることで、人間味あふれるキャラクタだと、周囲の人たちが人でなしになってしまうっすよ……。

 や、いちおー、チャックがひどいヤツだから、不良仲間たちも彼を見放した、という流れは作ってある。
 チャックがラスティたちを「メス犬」呼ばわりしたとき、あゆみちゃんとかマジにムカっとしてるし。同じ女の子として、そーゆー言い方はヤだよなあ。
 まなはるも、アリエルがチャックに殴られたとき、マジに心配してるし。女の子に暴力振るうとかありえない!って思ってる子なんだろうな。

 ところで、チャック@きんぐに「バカにしなくても、もともとバカ」とか、ラスティ@あゆっちに「食べ過ぎだよラスティ」とか、アテ書きが容赦なさ過ぎですけど小柳たん……。
 や、きんぐはきんぐだからかわいいし、あゆっちもあゆっちだからかわいいわけですが!

 続く。
 『フットルース』、主人公たちはまたいずれ、腰を落ち着けて語るとして、いろいろ駆け足で覚え書き。

 レン@キムくんとアリエル@みみちゃんが、線路際で最初にふたりっきりになる場面は、泣けて困る。

 ムーア@まっつが嫌がるから、という理由で紅いブーツを履き続けるアリエル。
 それまでの強がりを離れ、ぽつんと「そうすれば、あたしがいなくなったら気づくから」とつぶやく顔の、空虚さ。

 レンにしたってそうで、大人たちのために、子どもたちがこうして、不条理に傷つけられている様を見ると、わたしが大人だからだろうか、やるせなくてたまらない。

 レンの「好きだよ。だからしたくないんだ」がもう、かっこよすぎて。
 いつもにこにこ陽気な少年のレンが、あちこちで見せる「男」の顔がたまらん。

 ところでなんでアリエルは、レンを家につれて帰ったかな。
 いやその、レンを好きだから家族に見せたいとか、パパへの嫌がらせだとか、いろいろあるだろうけど。
 あれはレンが可哀想だ(笑)。

 ダンバー先生@香音くんが、すごく当たり前にムーア家にいて、しかもあのムーア牧師様からポーカーで金を巻き上げていることに、クラクラ。
 ダンスは禁止のくせに、賭けポーカーはええんかい牧師様……。アメリカ人の善悪基準は感情的に納得しにくい。

 レンのはずしっぷりと、ムーア牧師の冷温ぶりがいい。

 ここのコントが、まっつさん活躍した結果だなんて胸熱。

 ムーア牧師のベスト姿が大好物です。
 二つ折りの黒財布もツボです。二つ折りってあたりが、小市民ぽくていい。
 いつまでも財布をテーブルに置いたままなのが、不自然で気になる。なんでポケットに戻さないんだろう……。

 牧師さんソロの歌い出しの陽気なメロディは、なかなか違和感。曲が進むと気にならないんだけど。

 「気をつけてね」と言われたレンは、待ち伏せされ、チャックに襲われ負傷。
 ただでさえ腕まくりがステキなレンくんが、包帯付きですよ、なんて萌えツボのわかった演出かしら。
 片手腕立て伏せすごい。キムくんの中の人って、いちおー女子のはずだよね……? 筋肉マニアとはいえ……。

 一緒に腕立て伏せさせられる男子たち、ナニ気に翼くんがいちばん筋力あり? 深々と沈んでるよーな。

 しかしダンバー先生はひどい。
 大人たちの中で、彼がいちばん人間としてさいてーだ。人間には、「それだけは、言ってはならないこと」がある。それを平気で言ってしまう人が、教育者だという恐怖。

 こんな教師なのに、よく子どもたちはまっすぐ育ったもんだ……。
 レンもダンバーを憎まないもんなあ。あれは心を病んでも仕方ないくらい、最低の台詞ですよ。
 なのに「ダンバー先生もストレスが溜まってるのかも」と、罪を憎んで人を憎まずの精神。

 こっから「I’m Free」への流れがかっこいい。
 ぞくぞくする。
 教室からロッカールームへ、そして体育館へ。次々展開するセット、増える人々。
 時の流れがわかる、レンの声はムーブメントとなり、学校中に広がったんだ。

 ここのダンスの格好良さときたら。
 群舞の中、ふた筋のライトがすっと輝く。
 浮かび上がるのは、雪組が誇る二大ダンサー、あゆみとひーこ!!
 ふたりのダンスソロがピックアップされる一瞬、目が2組欲しいって、どっちも見たい!!

 そーいやあゆみちゃんはぱんつ大盤振る舞いだなー。ひーこは同じようにアクロバティックなダンスをしているわりに、あゆみちゃんほど見えない。
 あゆみちゃんは見せパンっちゅーか、学生がよくやるアレ、制服スカートの下に体操服着てるノリのぱんつ穿いてる……ショーパンっちゅーかねー。ミニスカの下にアレ穿かれると、なかなか精神的衝撃が……(笑)。

 前方席に坐ったとき、女の子たちのスカート丈に感心した。
 ぎりぎりなの。
 ぎりぎり、見えないの!!(笑)

 さんざん動くし踊るけど、スカートも揺れるけど、ぎりぎり見えない。
 うまいわー、このバランス。

 中央の子どもたち、周囲を囲む大人たち。
 とくにラスボスのムーア牧師@まっつが最上段に立ち、歌声で圧倒するのがまたすごい演出。
 最初の教会ミサでもあった、出演者全員がそれぞれのメロディと歌詞を歌う、「歌の雪組」本領発揮場面。

 ここで幕! が、鳥肌立つ。

 ……ちなみに、幕が下りきらないうちに撤収する人々もなかなかにツボ(笑)。幕が下りきるまで静止しないんだ……。


 幕間のアナウンスは、初日とその翌日はなかった。休演日開けから開始だったのかな?
 レンとアリエルとウィラード@コマ。
 なかでもやっぱ、ウィラードがよりキャッチーだわー。


 2幕最初は客席登場、レン、アリエル、ウィラード、ラスティ@あゆっちのWデート。上手ドアから現れて最前列通って下手ドアへ。

 そしてなんといっても、ボブ@がおり。
 ワイルドな踊るカウボーイ。つか、歌います。
 いいキャラだー。
 がおりは全体的にもったいない扱いなんだけど、それでもこうやって見せ場があるのは幸い。

 で、ここの場面は大人チームがアルバイトしてるんだよなあ。
 いいなあ、ダンス場面があって。まっつがアルバイト禁止なのは仕方ないけど、ダンス見たかった……。

 ウィラードがとにかくかわいい。持って帰りたいくらいかわいい。

 また、ウィラードが踊れないと告白するときのレンの反応が好き。ウィラードへの思いやりというか、心遣いがいいよね。
 ウィラードが言葉にする前に気づき、人に聞かれないようにと止めようとし、それがかなわなかったあとは、見世物状態に取り囲む人々に「勘弁してやってくれよ」と制するのが……いい子だ-。

 ムーア牧師がアリエルを心配してわたわたしているとこが好き。
 「ウェンディ=ジョーと一緒」と聞くなり電話をしようと回れ右するとこ、かわいすぎる。
 アリエルが帰ってきたとき駆け寄るとこも、本気で心配してる顔だし。

 ところでムーアさんの服装の微妙さが、気になる(笑)。

 家でくつろいでいるときの彼は、ガウン姿です。
 ガウンはいいの、問題はその中。
 ノータイ、開襟チェックシャツ……まではいい。
 問題はシャツの上、ガウンの下。

 それ、チョッキですか……?

 ヒマ課長@『相棒』が着ていたような、おじさんチョッキ。(notベスト)

 カーディガンだとしても、やはり「おじさんカーディガン」としか言えないテイスト。

 対外的にしゃきっと美形ぶってるムーアさんが、自宅で家族だけになると、とても残念な服装をしたおじさん、になっているのが、たまりません……!

 続く。
 『フットルース』覚え書き、だらだらと。

 町議会での演説練習をするレン@キム。
 万能な主人公がひとりでなんでもやってしまうのではなく、ふつーの男の子が仲間たちと一緒に困難を乗り越えていくのがいい。

 ダンスパーティが開催できる前提で、体育館の飾りを作っているのかな、周りの子たちは。
 上手側にいる不良チーム4人組が、手作りのお花で遊んでいるのが愉快。
 毎回なにかしらやってるんだね。レオくんがあのトサカリーゼントにお花を挿していたり、投げてみたり、もーいちいちかわいい。
 不良もふつーの子も、みんなみんな、心はひとつ。
 同じ傷を持ち、同じ希望を持って前へ進もうとしている。

 ここでレンのダンス教室になる。
 教えてくれるのはいいし、音楽付きで実際に舞台と一緒に踊るのもイイ。
 客席下りもにぎやかだし、降りるのは下級生たちで、主要メンバーは舞台上にいるので、2階3階が置き去りにされることもない。

 ただ、音楽付きではじまったあと、客席が放置されるのは、要改善だと思う。

 だれでも踊れる簡単な振付、で、プロの彼らが1曲踊るわけにはいかない。曲の頭だけその振付で、そのあとは彼らはプロのダンスと芝居に戻ってしまい、客席は「え? あたしたち、どうすればいいの?」状態になる。
 舞台の上では、ただのダンスではなく、レンたちは原稿作りの続きをやっているし、女の子たちも自分たちで盛り上がっている。
 ペンライト振ってる客席の立場は……?

 レンたちが一緒に踊ってくれるのって1ターンだけ、観客は惰性で2ターンまでやるけど、そのあとはほんと、なにをどうすればいいかわかんないんだもんなあ。
 レンたちがもう踊ってなくても、客席はずーーーっと同じ振付で踊り続けるとか、手拍子に切り替えるとか、誰か仕切ってくれ……ぐだぐだになって自然消滅、てのは、つまらない……。

 ここのラスティ@あゆっちの歌は好き。女の子たちみんなかわいい。

 お祭り騒ぎの終了は、アリエル@みみの登場で。
 みみちゃん出てきたら、みんなペンライト消すのですよ。
 そう、みみちゃんはこの楽しい場面に出ていないんだ。

 そして、トークショーのことを思う。
 キムみみまっつきんぐ、司会きゃびいのトークショーで、やたらと「客席参加型、舞台上からダンス指南」ネタを振るんだけど、……このメンバーで、ダンス指南場面に出てるのって、キムだけやん! で、反対にコマあゆ出演トークショーでは、その話題なしだったのだわ。
 劇団ってほんとバカ……。なんでそんなトークショー台本書くかなー。(今回の目玉としているもんだから、2回あるトークショーの1回目は息せき切ってソレを台本に盛り込んでしまったんだろう、出演メンバーのことも考えず)
 質問されても、その場面に出ているのはキムひとり、他のみんなは返答に困り(まっつはハナから答える気なさそうだった・笑)、案の定キムくんひとりが気を遣いまくってえんえん喋っていた、印象。

 アリエルの言う「天国に近い場所」でのふたり……レンとアリエルの場面は、毎回もれなくだだ泣きになる。

 列車の高架下でひとり詩を書く少女、アリエルの抱いていた孤独は、どれほどのものだろう。
 特別なにも語られないのに、彼女の孤独、傷の深さに息が詰まる。

 そして、それを理解し、シンクロするレンの優しさと、……その心の傷にも。

 アリエルがいじらしくて、レンがいとしくて。

 シンプルに、このふたりを好きだと思う。
 このふたりが出逢えて良かった。
 そう思う。


 えーと、キスシーンで暗転して、翌朝?になってるんだけど、アメリカンな高校生的に、それはどういうことなんだろうなあ。レンとアリエル、ふたりで出勤してるんだけど。
 ……まあいいや。
 ほんと、どっちでもいい。どっちでも、かわいいと思うし、萌えだと思う。

 町議会場面はまた、目がひと組では足りない。生徒たちがみんなそれぞれ小芝居してるんだもの。
 つか、カップルが出来上がってるんだよみんな……(笑)。ひとつの目標に向けて闘いだしたから、恋愛階段上りやすかったんだろうな。

 しかし、「飼い犬の登録料値上げ」→「これでペットは家族になったのよ」はよくわからん……。

 レンは舞い上がっちゃって、決して「すばらしい演説」にはなっていない。
 だけど彼の一生懸命さや、高校生たちの心がひとつになっている様子を見れば、心ある大人は彼らを支持してもおかしくない。
 彼らが「成長した」のがわかるもの。
 ただバカ騒ぎがしたい、遊びたい、ってだけで主張しているんじゃないって、わかるもの。

 だけど結果は、子どもたちの完敗。
 ……大人の汚さによって。

 カーテン前のエセル@ヒメとレンの会話が好き。
 なんかもお、リアルに「親子」。

 イケメンの息子を思わず抱きしめちゃって、息子に嫌がられるとか、ありがちよねー(笑)。
 正攻法で、相手のルールブックに則って闘いを挑んだレン。まさか相手が不正をしているなんて、夢にも思わない。
 そういうところが、好きすぎる。エセルと同じように。

 エセル相手のレンの言葉遣いがいいの。他の誰ともチガウの。「僕は負けたんだぜ」とか、「~~だぜ」喋りがツボ。
 仲間たちにはもう少しチガウ喋り方をしている。
 家族なんだなあ。ママにだけ、他の誰ともチガウ話し方をするって。

 レンとムーア牧師@まっつのくだりはまた、腰を落ち着けて語るとして。

 まっつの演技、すごいよなああ。
 レンが去り、アリエルが去ったあとの演技、そしてソロがまた、すごい濃度で。

 ステンドグラスと十字架、下手の階段席にうつむき坐り込んだムーア、この画が鳥肌モノの美しさ。

 そこから画面がどんどん開いてゆき、教会内ではなく外……広がる空のもと、ムーアが演壇で語る……この演出が、画面が、すごいなと。
 教会内の演壇は、一段高いところにあるんだけど、ここではフラットなの。わざわざセリが沈んで、同じ高さになるのよ。

 ムーアも、街の人々も、みんな同じ位置にいる。
 広い空の下。

 ムーアが条例撤廃を、ダンスパーティを可としたとき、学生たちが歓声を上げ大喜びするのは当然として、興味深いのは他の大人たち。

 彼らも、解き放たれたんだと思う。

 もともと及び腰だった副校長@がおりはともかくとして、強固だった校長先生@杏奈ちゃんもが、やわらかく笑って目元をぬぐう。
 ダンス禁止タカ派であったことは確かだけど、彼女も行き詰まっていたんだなあと。
 エセルが前もって説得していたらしい、ザッキーとすずちゃん夫婦はすんなり受けて入れているようだし、大変そうなのは警官@亜聖くんとダンバー先生@香音くんか。ダンバー先生は、奥さん@いのりちゃんになだめられてたけど……奥さんは大丈夫そう。警官はエセルとハグするから受け入れてるのかな、帽子で表情がよくわからない。

 大人たちのドラマも、ちゃんと見てみたいよ。
 ダンバー先生気になる(笑)。ムーア氏との関係ごと、気になる(笑)。

 続く。
 『フットルース』覚え書き。映像残らないから、気持ちばかりが焦る。
 この大好きな物語を、どうやって留めればいいんだろう。

 ラスボスのムーア牧師@まっつが折れて、ダンス解禁になった。大喜びする人々。
 そんな中、チャック@きんぐは「俺は街を出る」と言う。

 チャックの「役割」はとしてもうまく出来ている。
 オープニングの主題歌「フットルース」で、レンも含め若者たち全員「♪逃げ出したい」と歌っていた。
 だけど彼らは逃げて終わるのではなく、現状に立ち向かい、自ら未来を切り開くことをおぼえた。そうやって実際に、勝利を、自由を得たんだ。
 結果を出した人々のところへ、なにもしなかった男がやって来て、オープニングと同じように「逃げ出す」と言う。そして、逃げ出す男が勝利者たちに向かって吐き捨てる。「負け犬め!」

 このチャックのダメダメっぷり。
 出発点は同じだったのに、成長した者と、そのままの者、鮮やかに線を引かれている。

 「負け犬」と罵るチャックこそが負け犬であり、逃げることしか出来ない彼は、どこへ行っても悲惨な人生を送ることになるだろう。
 「フットルース」というテーマを表すアンチテーゼとして、完璧。

 だからほんとに、きんぐの役作りがハンパでなあ。
 チャックは完全な悪役、しかもかっこいい悪役ではなく、嫌われ者の勘違い男でなきゃいかんのだわー。
 アリエルを本気で愛する必要はないし、仲間も不要。ひたすら自分勝手で下劣で、観客が「あいつ大嫌い! 不幸になってうれしい!」と思うくらいでないと、収まりが悪い。

 ひとりだけ「フットルース」できないチャックが可哀想に思えてしまう、今の状態はどうかと思う。
 チャックが「彼なりに、良い人」だと、誰もチャックに手を差し伸べないのが「ひどい」ようにも、見えてしまうから。

 でもここはタカラヅカで、二枚目男役に、みっともないつまらない男は演じさせられないのかなあ。
 わたしだって、きんぐがかっこよかったり、かわいげのあるキャラを演じてくれる方がうれしいもんなあ。

 あ、このチャック登場シーンは、上手と下手とで学生たちの反応が違って愉快。
 チャック登場の上手側は、彼に反応。咲ちゃんがさりげなくさらさちゃんを背中にかばうのがツボ。
 下手側の連中は、チャックに気づいてないので、なごやかなまま。いちばん端でウィラード@コマとラスティ@あゆっちはいちゃいちゃラヴラヴ(笑)。まなはるはいちびり(大阪弁)。

 ウィラード&ラスティの「ママが君にあれ作ってくれるって……あれ……クロワッサン!!」「クロワッサン?? ああ、ひょっとして、コサージュ?」というコントには、「サ」しか合ってへんがな!!と大阪の観客たちは盛大にツッコミ入れてることでしょう……。

 かわいいカップルのいちゃいちゃコントのあとは、熟年カップルのチークダンス。
 ムーア夫妻が濃いですほんと。
 てゆーかキスするのかと思った。いやむしろ、してくれていいから。

 正面から抱き合って、次に横並びに抱き合って退場、なんだけど、体勢を変えても「身体の隙間ができないような」……なんつーんだ、重ねたあと隙間を押して埋めるような抱きしめ方に、くらくらするっす。まっつ……。


 そしてラストシーン、物語のフィナーレ。
 タキシードに着替えた子どもたちがかわいい。

 ネタバレだから無理なのはわかるけど、こっちの「フットルース」の歌詞をプログラムに載せて欲しかった。だって、こっちこそが主題歌だよな。おしゃれして楽しく踊ろう!という内容。
 自由を手に入れ、解き放たれて踊る。
 「腰を振ろう」の男の子たちの振付が好き(笑)。タキシードで腰を振るのはいいよねー。濃ゆい花男の腰振りばっか見てたから、雪男たちの腰振りはなんかくすぐったい……(笑)。

 と思っていたら、上から来ました、例の花男。タキシードに着替えて、着飾った妻の手を取り。

 子どもたちのイベントに、本気で正装してやってくる大人たちが愛しい。

 だって、体育館だよ? ティッシュで作ったお花とかで飾ってあるわけだよ? すげーちゃちいわけじゃん。子どもだましでしかないじゃん。
 なのに牧師はじめ、大の大人たちが大真面目にタキシード着てやってくるのさ。

 それって、敬意だよね。

 子どもたちの自立を、心意気を認めてるんだ。
 正装は、相手への尊敬を表す。正しく着飾り、その場の空気に則り正しく盛り上がる……いろんなしがらみを捨て、解き放ち、「フットルース」したことが、よくわかる。

 ここでいきなりアリエル@みみちゃんと踊る牧師様。
 父と娘のダンスにあまり見えない……のは、まっつがふつーにはじけた笑顔でいるから。
 踊りたかったんだねえ、牧師様。

 あんだけひどいダンバー先生@香音くんも、しれっとタキシード着てまざってるのが……(笑)。
 だからダンバー先生のドラマを知りたいぞっ。

 みんなキラキラかわいくて、きれいで幸せで。
 最高のフィナーレ。

 踊っているときはいろんな組合わせでも、幕が下りる瞬間、ちゃんとカップルに戻ってるのがいいねー。ヴァイ@きゃびいの腰を抱く牧師様好きだなー。


 物語は終了、公演フィナーレ開始。
 ひとり街を出たはぐれ者チャック……の中の人、きんぐがセンター。
 チャックのテーマソングを歌い、踊る。

 きんぐはたしか歌の人で、「歌える路線」と言われていたはず……だよな、その昔。あれは水時代に新公やってたから、本役との兼ね合いでそんな印象になっただけか??
 年々歌ウマ認識が薄れていくのはどうしたものか(笑)。
 そして、歌がどうあれ、きんぐはきんぐというキャラを確立しつつあるんだなあと、そこが愛しい。

 バックで踊る娘たちは、さらさ、えーちゃん、あだちゅー、ありちゃん。……ありちゃん、ビッグサイズ……(笑)。

 日替わりフィナーレは、なんつっても「HERO」バージョン推しですわたしは。
 頼むよ劇団様、フィナーレだけでも映像残して。黒燕尾ワイルドエロまっつが二度と見られないなんて悲しすぎる。

 キムみみデュエダンは、実はキムくんの衣装あまり好きじゃない。みみちゃんの白ドレスが好きなせいかな、キムくんがゴテゴテし過ぎてる気がして。
 初日は「え、キムゴテゴテ、みみシンプル、そんなちぐはぐテイストでデュエダンするの?!」と驚いた。
 でもまあ、慣れた。それもありかと。
 キムくんのこれでもかというゴテゴテキラキラ衣装は、演出サイドの彼への気持ちなんだろう。豪華な衣装こそがタカラヅカのステイタスだから。

 踊るふたりがほんとに幸せそうで。きれいで。
 泣ける。


 パレード以下もかわいくて好き~~。
 みんなそれぞれの衣装でペンライト持ってにっこにこ。
 それこそオタ芸的な振付で踊ってみたり、ジャンプウェーブやったり、自由に盛り上がって終わる。

 このまま時よ止まってくれ、と思う。
 今の彼らを、この作品を、ずっとずっと、見ていたい。
 キムくんから「エリザベート」だの「トートみたい」だのと言われている『フットルース』のまつださん。

 踊る若者たちと違い、ムーア牧師@まっつは歌専門。
 その歌声で街を支配し、子どもたちの反抗を叩きつぶす。

 「歌の雪組」本領発揮の凄まじいコーラスの中、ムーアひとり別旋律を歌ったりと、すげー活躍っぷりです。

 わたしはまっつの声が好きで、歌声が好き。
 その端正で正確な……ともすれば面白味のない地味な歌手っぷりが、ほんとーに大好きです。

 歌が「表現」である以上、音程だーのピッチだーの技術的なことより感情優先、芝居が出来てりゃそれでいいじゃん!というのも、もちろんアリだし、そういう人も大好きです。
 調子っぱずれでも慟哭しながら歌われたら、なんか一緒に泣いちゃった、みたいな経験は、数え切れないほどある。
 役者さんってのはそうやって、観客を巻き込んでしまう力を持っているんだろう。

 そういうタイプの人と、まっつは真逆。
 悲しい歌を号泣しながら歌うとか、それゆえ音はずしまくるとか、正規のラインから逸脱することで「悲しさ」を表現しない。
 涙こぼすことなく歌い、正しい音階の歌声で悲しみを表現しようと努める。
 他のカンパニーならともかく、タカラヅカでそれは地味です。本人が泣いた方がわかりやすいし。
 音を完璧に操るより、多少雑でも感情を優先した方が、華やかだ。

 しかしその、とっても地味で地道な作業をえんえんくり返し、堅実に「音を操る」まっつが好き。

 今回「歌うボス」であるまっつが、一時期ちょっと、喉のコンディションが悪かった。
 第一声から「うわ、喉つぶした?」と戦慄するレベル。
 といってもそれは、ファンだとか、通常のまっつの歌をよく知っている人が気づくレベルで、初見の人はわからないくらい。まつヲタがうろたえきっている横で、一般ヅカファンは「まっつさん、いつ聴いてもいい声」「やっぱり歌うまいわね」と話しているのが聞こえてくる。
 一般人が聴いても変じゃないくらいのクオリティを、死守しているわけだ。

 その「喉、やっちゃった?」くらい大変な状態だったときのまっつが。
 すごかった。

 なにがって。
 ムーア牧師の痛々しさ、無限大。

 1幕ラストなんて、「ラスボスここにあり」じゃないですか。
 キムくんに「トートみたい」と言われるほど、次元違うところで君臨しているこわい人ですよ。

 そのこわいこわいムーアさんが。

 胸が詰まるほど、狂おしいほど、悲しげだった。

 厳格な言葉を並べているけれど、表情は悲しみに満ちている。
「正しい道を歩まねばならない」……そうくり返す彼は、そうすることによって己れを守っている。
「もう一度確認しましょう。この条例はボーモントの輝かしい未来を担うべきだった4人の若者に捧げられたものであることを」

 死んだ息子に捧げられた条例。

 彼は罪びと。
 息子を殺した父親。

 息子の死は事故。でも彼はずっと心に傷を負っている。
 何故、と。
 何故救えなかった、何故なにもできなかった。あのときこうしていれば、声を掛けていれば、いや、ああ育てていれば……時間を巻き戻し巻き戻し、何度も考える。
 息子を失わずに済む選択を。

 それゆえに、贖罪の気持ちから極端な条例を作り、それを徹底することにしがみついている。
 条例を侵そうとするもの、彼の街を乱そうとするもの、それはすべて敵。

 息子を殺そうとする、敵。

 ダンスやロックを禁じるこの条例があれば、息子は死ななかった。この条例を攻撃するものは、息子を殺そうとしている敵だ。

 ……もう、息子はいないのに。
 いないはずの子どもを守るために、武器を握って立ちはだかるかなしい父親。

 誰か彼を、救って。

 「正しき道を歩まねばならない」……そうくり返す彼が、悲鳴を上げているように見えた。
 壊れてしまう。
 このままでは、あの人は壊れてしまう。

 空っぽの巣を守って、狂い死にしてしまう。

 誰か、助けて。


 ……いやあ、すごかった。
 ラスボスなのに、こわい人なのに、あまりの痛々しさに、どうしようかと(笑)。

 初見時は、レン@キムたちの魂の叫びにシンクロして、泣けた。「神様に届くように」自由を叫ぶ子どもたち。
 間違っていることを間違っていると、権力に屈せず立ち上がる。
 革命。自立。
 従うだけなら楽だ。見ない振りして、陰で文句だけ言って生きればいい。
 でも、そうじゃない。困難でも、立ち向かうんだ。
 仲間たちと、力を合わせて。

 起ち上がる彼らに泣いた。魂が震えるっていうのかな、拳を握って立ち上がりたいような感覚。
 ああ、ひとはこうやって踊ってきたんだ。心の高揚を、そんな風に表現してきたんだ。……そう納得できる1幕のクライマックス。

 しかし、それがムーア牧師で号泣する日が来ようとは。

 リピート客なので、わかっているから。ムーアの傷、そして条例へのこだわり。「ボーモントの輝かしい未来を担うべきだった4人の若者」という言葉が、なにを意味しているのか。

 そして、そんな彼が「あなたはもうひとりぼっちです!」とレンに言い切られてしまうことも。

 そう。彼は、ひとりだ。
 こんなにこんなに、ひとりぼっちだ。
 罪を背負い、ひとりで戦い続けている。

 悲鳴を、上げ続けている。

 レン。
 早く、助けて。
 あの哀しい人を、助けて。

 泣きながら、思った。
 レンはほんとうに、泣けるくらい「主人公」だ。苦しいくらい「ヒーロー」だ。
 だって彼は、救うことが出来る。
 ムーアを。人間を。自分ではない、誰かのことを。

 そしてレンは「ヒーロー」ではない、等身大の少年で、わたしかも、あなたかもしれないリアルな存在。

 それが、この物語の最大の救い。

 ひとは、ひとを救える。

 ひとは、立ち上がれる。
 古い靴を脱ぎ去って。

 ヒーローでも神様でもない、ふつうの、わたしたちが。


 ムーアさん、喉の調子の悪かったあたり、そりゃーもー、ものすごいキャラになっててねえ。

 キャラクタの弱さと多層的な感情が、複雑に入り組んで、とんでもなく面白かった。面白い……interesting。目が離せない、息が詰まる、涙が止まらない。

 役としてもだけど、まっつの歌い方がまた。
 思うように声が出ないためだと思う。すごく慎重に、「声」を操っていた。
 ひとつひとつの音を探すように確認するように、歌うの。

 この人、ほんとに歌うまいんだ、と思った。
 声が出ないんだろうに、それでも歌い方を変えて、歌い切っちゃうんだよ。彼が不調だってこと、初見の人やライトな人には気づかせないんだよ。

 「音」と向き合っているまっつが、すごくよかった。
 いつもならただ「役」になりきって演じて終了のところ、余分なものが山ほどあって、いろんなものに足を取られていて、不自由ななかで懸命に役割を果たそうとする姿が……たまらん。

 喉はすぐに快方に向かったようで、ムーアさんはまた「冷徹なラスボス」になったけどね。
 わりとその日によってチガウっちゅーか、1幕ラストは悲しみ寄りだったり怒り寄りだったり、冷酷感ハンパねえ(震撼)だったり、するんだけどね。
 あの数回はほんと好みすぎて、悶えた(笑)。

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