『ドン・ジュアン』KAAT初日観劇。
 予備知識なし。どんな話か、まったく知らずに観た。
 そして思った。

 恋はひとりではできない。

 なんかすごい勢いで恋に落ちたドン・ジュアン@だいもんさん、自分が殺した男の像のお披露目式典に乱入。
 いや君、言ってることめちゃくちゃ過ぎですよ……と目を点にしていたら、マリア@みちるちゃん「この像があるせいで、この広場に入れないというなら、こんな像は壊してやる!」って、突然像をぶっ壊した。石の巨大な像なんですが……ばこーん、と。
 まさに、あうんの呼吸。
 ドン・ジュアン単体で「変な人キターー!」だったのが、マリアのリアクションで「こっちも変な人だったーー!」で、死角なし! 全面的に変だー!!

 このトンデモ展開に「割れ鍋に綴じ蓋」という言葉が脳裏をよぎりました。
 なるほど。運命のふたりね。凸に凹。うまく噛み合ってる。
 ドン・ジュアンのこのテンションにマリアがすかさず付いて行ったことに「よかったね」と思いました。

 恋はひとりではできない。マリアたんがドン・ジュアンの奇行にドン引きするキャラじゃなく、共に暴走特急に飛び乗る娘でよかったね。


 なーん書き出しですが、『ドン・ジュアン』すっげえ良かったです。

 いろんな意味で、タカラヅカじゃないみたいだ……。

 扱うテーマの暗さと重さ。
 凝縮された濃密な舞台空間。
 キャストのレベルの高さ。

 いやあ、マジすげえな。

 最初、ドン・ジュアン@だいもんはなかなか声を出さないのですよ。登場はするけれど、ダンスと演技のみで、歌も台詞もない。
 歌うのは他の人たち。
 冒頭のドン・カルロ@咲ちゃんの歌声は弱いかなと思うけど、彼はプロローグなので置くとして。
 物語開始で本格的に歌い出すのがイザベル@圭子ねーさまですよ。そして、ファニータ@ヒメですよ。さらにエルヴィラ@くらっちですよ。たたみ掛けるように、歌ウマが歌唱力を披露するわけですよ。
 こんだけ歌ウマが歌って、これだけの歌唱ののちに「満を持して」登場する主役が……これまた素晴らしい歌声って……。
 「タカラヅカ」に慣れきってるもんで、これだけでかなりびびった。歌ウマさんたちのあとに歌い出す主演スターが歌ウマって!! そんなのタカラヅカじゃないみたい!!←

 次々と実力者が歌い出す。この人も歌ウマ、この人も歌ウマ、なんなのこれすごい、ついに主役が歌い出した、これがまためちゃ歌ウマだーー!! えええ、すごいーー!!
 音痴のいない舞台?! なにそれこわい、わたしの知ってるタカラヅカじゃない!
 ……ドン・ジュアンの最初のソロまでで、相当びびりました。
 タカラヅカでもこんなことが出来るんだ……。

 圭子ねーさまは素晴らしい歌声の持ち主だけど、舞台荒らしというか、彼女のレベルがすごすぎて「劇団が用意したスター」をぶっ飛ばしてねーさまの独壇場にしちゃう場合が、ままある。
 そんな圭子ねーさまが浮かない舞台。
 ヒメもくらっちもすごい。
 そしてなにより、だいもんがすごい。
 圭子バズーカに負けないんだもん……そんなひと、現役では一握りしかいないよ……。

 そして、なんといっても亡霊@がおりのクオリティ。
 開演前に開いたプログラムの写真ですでに、異彩を放っていたけれど。
 メイクの特異さは問題じゃない。
 演技、ダンス、歌、存在感……すべてにおいて神がかってる。


 芝居を観て、人間の演じる技術、能力を見て、背筋がぞくぞくする感じ、それを久しぶりに味わった。

 すごい舞台だな、『ドン・ジュアン』。
 よくこれを、上演した。
 よくぞ今のだいもんに、今の雪組に、この物語を与えた。
 感謝しかない。


 ドン・ルイ@エマさんのうまさも言うまでもないし、意外にラファエル@ひとこが役と作品に食いついて、いい味を出している。
 フェルナンド@レオ様がすっげーかっこいいしねえ。
 ひーこはじめ美女たちもダンスと色っぽさがたまらんわ。
 ドン・ジュアンの母@うきちゃんの美しさときたら、そりゃもうあんなことになっちゃう、その理由としてわかる、仕方ないよなという透明感だし! いや、あの展開には心底驚いたが。

 みんなすごいなー。

 あー、えーっと。
 そんでもって。

 アンダルシアの美女@レオ様が、すごかったです。
 迫力。腹筋。目力。
 そして。
 見事に、ヲカマ。

 あー、なるほど……ドン・ジュアンってヲカマもアリなんだなー。趣味広いなー。悪食だなー。
 という、主人公のキャラ説明に役立ってました。ほんっと悪徳の限りを尽くしてるんだね、ドン・ジュアン。

 重ね重ね、素晴らしい。

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