サバキへの取り締まりはきびしくなっているのに、当日券売る気ナシの劇団窓口に、盛大に嘆息した、新人公演の日。

 立ち見券が売り切れていないことを知っていたので、「行けば観られるな」と思って新公を観にはるばるムラまで行った。
 わたしが到着したのが、立ち見入場者の集合時刻くらいかな。
 ムラの立ち見は立ち位置が決まっておらず、自由競争。だから立ち見の人はみんな少しでも早く入場して、いい場所を取ろうとする。

 しかし。

 「立ち見券発売中」と書かれているにもかかわらず、当日券窓口は、閉まっていた。

 係員は余っている。カウンターの中にはヒマそーに、両手を後ろに組んでなにをするでもなく、ただ突っ立っている男の人もいたな。それでも当日券窓口は閉鎖され、「予約・前売り窓口」のみが開いていた。
 「当日券」が欲しい人は、開いている窓口に並ぶよう書いてある。

 前売り窓口には当然、前売り券を買う人たちが並んでいる。
 まだ先の公演で、すでに発売日は過ぎているのであまりいい席は残っていない。
 数人しか並んではいないのだが、ひとりずつが「**公演の*時の分、席はどこがありますか?」「お待ち下さい。……S席でしたら……**があります」「センターだとどこになりますか?」「……**ですね」「じゃあ*日の*時はどこがありますか?」てなことを、悠長にやっている。

 えーと。
 当日券は、「立ち見」のみ発売中なわけで。立ち見は早い者勝ちなシステムで、集合時刻っつーのがあって、入場時刻っつーのがあって、ソレに間に合うかどうかでチケットの価値が変わるものであって……。

 係員余ってるなら、公演がはじまるまでは、当日券売れよ。

 や、余ってなくても、やりくりして窓口開けておくもんだろー、ふつー。
 売り切れてるならともかく、まだ発売中の札出しておきながら。
 そして、締め切り時刻があるものなのに、その時間無視して別窓口に客を並ばせるって……。

 当日券を売る気はないくせに、門の前では係員が立ちはだかり、サバキを見張っている。

 そーゆーアホなところが、すごーく「宝塚歌劇団」って感じだ。

 や、チケットの売買がいけないから見張っているのであって、当日券云々とは話が別、ということはわかっているが。
 客の手持ちチケットの行方を取り締まる前に、まずチケット売ってくれよ、とゆー、寒々しい気持ちになったんだわさ……。

 もともと立ち見目的だったこともあり、おとなしく「前売り券」の列に並んで順番を待った。
 並んでいるウチに開場時刻を過ぎたさ。
 あー、開演時刻までに、チケット買えるといいなー。ははは。

 よーやく自分の番になって、窓口のおねーさんに「立ち見チケットを1枚下さい」と言ったら、「今日のですか?」と、驚かれた。

 ……当日券窓口は存在しないんです、そして、当日以外なら公演や日時を指定するでしょう?
 そんな意外なことを言われた、てな反応しないでくださいよ。

 あー、ひょっとしたら、「時間命の立ち見券」だから、欲しい人は窓口が閉まっていても「今すぐチケット売ってよ!!」とごり押しするのが前提だったのかな?
 どーしても時間までにチケットが欲しいなら、閉まっている窓口の前で叫ぶぐらいするだろー、それをしないで悠長に他公演チケット発売の列の後ろに並ぶような人はいない。……ということかもしれん。だから驚かれたのかも。

 そりゃまあ、大して焦ってなかったけどさー。手すり(立ち見1列目)に執着ないんで、後ろの壁にもたれて観れりゃーいいや、てなもんだったからさー。
 開演時刻までに売っていただければ、それで結構でございます、ぐらいの気持ちではあったけれど。
 手すりで観たい、ちょっとでもいい位置を探したい、と思っている人がもしもこの進みの遅い列に並んでいたら、つらかったろうなあ。
 客の列ができていたら、あわてて他のレジを開けて誘導するのが当たり前になっている世の中で、人が余っているのに窓口閉鎖して、客を並ばせてるんだもんなー。しかもよりによって当日券窓口を閉鎖するんだもんなー。
 や、立ち位置に焦りがないわたしでも、この理不尽な不便さには、気分を害したからさ。

 ほんと劇団って商売ヘタだよな。
 殿様商売っつーか。
「あら、立ち見券残ってるんだ、それならちょっと観ていこうかしら」
 と思った人が、「当日券窓口閉まってるのね」とあきらめちゃうかもしんないじゃん。前売り窓口は建物入口まで人が並んでるわけだし。
 その人が新公を観て、今まで知らなかった新人くんに一目惚れして、「この子の出る公演のチケットは何枚でも買うわ!!」な常得意様になるかもしんないじゃん。
 機会を失うことがなにより痛い、って、販売業やってるときさんざん教え込まれたけどなあ。モノの補填はあとからどーにでもなるが、機会だけはどーにもならん、「チャンス・ロスだけはするな」って。

 ちょっとしたことで、その企業の考え方とか出るよなー。

 で、愚痴ったところで「売っていただく」わけだしな。立場弱いや。客のはずなんだけど、身分制度では最下層にいるんだ、びんぼーな1ファンのわたしは。劇団様に踊らされるばかりっす。
 溜息。


 演奏が終わった途端、「ブラボー!!」って叫ぶおじさんがいる。絶対にいる。同じ人か単体かはわからないが、必ずいる。
 いつも理解できなかった。
 感動したから叫ぶ、にしてはどんなときも100%叫ぶ。練習だろうがなんだろうが、終わると必ず「ブラボー!!」。
 それってたんに、叫びたいから叫んでいるだけで、演奏の善し悪しとは別、よーするに自分が目立ちたいだけなんぢゃないの?

 「なんでもいい、演奏が終わったら毎回絶対100%、声を上げる」人のことは理解できないが。

 はじめて、終わったとき、声を上げたくなった。

 毎年恒例『1万人の第九』、長い長いベートーヴェン交響曲第九番、合唱が終わり、演奏が全部終わったときに。
 いつものブラボーおじさんが「ブラボー!!」と叫び、他にも何人か「ブラボー!」と叫んでいた。わたしの後ろの女性も小さく「ブラボー」と口にしていた。

 競馬の最終コーナーでみんな一斉に声を上げる、あの感じっていうか。
 興奮が高まると声になる、あの感じっていうか。

 なんか体温上がって、心臓がばくばくして、なにかしら叫びたかった。

 こんなの、はじめてだ。
 『1万人の第九』も、参加9回目。連続参加9年目、佐渡せんせーとも連続9回目。
 もういい加減「恒例」で「日常」になっているっていうのに。
 今さら。今になって。今回限り。

 音楽の才能に著しく欠けているわたしは、いつまでたってもうまく歌えない。や、すでにあきらめている。わたしにはできない、と。
 だから自分のできる範囲で、「参加する」ことを愉しんでいる。
 歌えるところだけ歌い、無理なことはしない。わたしがソロ歌手ならそーゆーわけにもいかないが、なにしろ1万人いる。アルトだけで5000人はいるだろーって勢いだ。そのうちのひとりがへたっぴでもなんの問題もない。「出ないところ、歌えないところは口パク推奨」「ブレスは好きなところで何回でもしてよし」と先生も指導している。
 プロのように歌えるはずがない。できないことはできない。だからカメの歩みで「去年より少しでも歌えるようになろう」てな、「自分目標」を決めて臨んでいる。
 
 近年は「合唱の声で歌う」ことがMy目標。
 「合唱の声」ってゆーのは、自分が思っているだけで、それがどーゆーもんかは説明できない。なにしろ知識が皆無なもので。
 ただ、第九を歌っていると、他人様の地声と合唱の声はチガウ、ということだけはわかる。歌う声と喋る声がチガウように。
 歌というとカラオケしか知らないわたしは、「合唱の声」とやらの出し方がわからない。だからずーっと地声で歌っていた。まず、音を取りやすいところで曲をおぼえるしかなかった。
 で、カメなわたしはよーやく、他人様のような「地声ではない」歌い方をしようと四苦八苦。自分が思っている通りの音が出ないんだこれが。

 自分が音痴だとわかっているので、いつも「他の人の迷惑にならないよう」気を遣う。はずれた音ででかい声で歌う人が近くにいると、すごーく迷惑だもの。釣られるのよ、その音に。
 反対に、ガイドとなる「正しい音」があると歌いやすかった。同じ音を心がけて声を出すのは気持ちいい。
 わたしをいつも導いてくれた「正しい音」のあらっちは、もういない。もう永遠に、彼女の歌声を聴くことはない。
 あらっちのように歌えるはずもないが、あらっちのように歌いたいと、地声の歌い方を捨て、「合唱の声」を目指す。
 『THE SECOND LIFE』を観たあと、『アデュー・マルセイユ』を観たあとのレッスン(劇場からレッスン場へ直行・笑)では、ほっくんの歌声を耳に残したまま、オサ様の歌声を耳に残したまま、イメージに届けと必死に声を出した。……それがさー、不思議なの、歌ウマさんの声が耳に残っているときの方が、うまく歌えた気がするのよー(笑)。

 そーやって、自分なりにカメなりに努力しての、今年の第九。
 9回目の参加だが、はじめて、座席移動がなかった。
 欠席者の席を埋めるため、当日の席決めで絶対に移動があるもんなんだ。1万人を超える参加者が、ひとりの欠席者もないなんてこと、物理的にあり得ない。ひとりでも来ない人がいたら、その人の席を詰めるために全員が移動する。
 だが今年のわたしの仮座席は、アルトとソプラノの境界線だった。わたしの座席位置(縦一列)を基準に席移動をすることになり、わたしと同じ縦列“以外”の人たち全員が、なにかしら移動。わたしたちだけそのまま着席。
 境界線だから、当然通路際。しかもわたしは、出入口真上の手すり位置だった。
 つまり、わたしの前には誰もいない。はるか下方に男性座席があるだけ。
 これはわたし的にすっげーありがたいことだった。
 わたしは「自分が音痴である」こと、「音程の狂った声は前列の迷惑」になることを知っている。
 横の人の迷惑には、あまりならない。直撃を喰らうのは前の人。後ろに音痴がいるとすげーつらい。
 でも今回は、わたしの前に誰もいない。つーことは、気を遣わず、思い切り歌っていいってこと?

 つーことで、本気で歌った。
 ここまで腹の底から声出したことなんて、そうそうない。……てくらい、本気だった。

 や、前日のリハまではまだ出ていた音階が、当日は風邪が悪化していたため出なくなったりしていたが、出せる範囲の音を気持ちよく出した。
 大阪城ホールは馬鹿でかい。某歌劇団が音校生も含めて運動会を開催できるほどの広さだ。
 わたしが腹の底から声を出したって、ぜんぜんびくともしない。

「1万人の合唱団と120人のオーケストラ、すべての音を指揮するつもりだから」と、佐渡先生は前もって宣言していた。
 ちゃんと全員に合図を出すからついてこい、と彼は言った。

 ついていこう。
 全霊を上げて。

 なにしろわたしがいるのはソプラノとの境界線近く。……基準線で最初の境界線だったが、最終的にはわたしの隣のブロック半ばまでアルトが移動してきた(わたしたちは動いていないが)ので、厳密な境界線ではなくなったが。
 佐渡せんせー的にはわたしたちの位置は「ソプラノ席」なので、送ってくれる合図はわたしのいる位置とは反対方向に向けられちゃってるんだけど、それでもソレを受けて声を出す。

 世界中の人たちが手を取り合い、仲間になる。
 不思議な力。
 神の手。
 奇跡を信じ、声を合わせる。

 ありえないねぇ。
 なんなんだろうね、この高揚感。

 奇跡って、あるのかもしれない。

 すとんとそう思えるほどの、クリアになった意識。
 歌声。
 演奏。
 1万人を超える人たちの、意志を持って出す音たち。

 響き渡る、音。

 だから。

 終わった瞬間、叫びたくなった。
 なんかよくわかんなくて、拳を握った。

 お隣のおばーさんと目を合わせて笑った。

 やったね。やったよ。すごいね。すごいよね。

 何年か前には、ここにあらっちがいたのになあ。隣の席のおばーさんは、あらっちくらいの身長だった。わたしの肩ぐらい。
 あらっちが亡くなってから、やたらとあらっちのことを思い出すよ。
 いつだったか『1万人の第九』の参加抽選にはずれてしまったとき、「合唱団の中には入れないけど、客席で歌うわ」と言っていたあらっち。
 ここにはいないけれど、それでもどっかで参加してるかもな。あの「正しい音」を響かせていたかもな。
 
 ブラボーおじさんの気持ちはわからないが、「ブラボー!」と叫びたい気持ちはわかった。

 すげぇ気持ちよかったよ。
 今年の第九。

 
 で。
 たしかに、今年の第九は好い第九、だったんだけど。

 わたし的にいちばん衝撃だったのは。

 じつは、ゲスト歌手の中島美嘉の、「素顔」だった。

 どれくらいの衝撃かって、『白夜伝説』のミーミルちゃんの素顔写真を、プログラムで見たとき以来の衝撃だった(笑)。


 中島美嘉の「素顔」は、有名なのか?

 おばさん、若い子のことよく知らないから。若者の間では周知のことなのかと疑問を持ったが、若いパクちゃんと誠さんが「見たことない」と言ってくれたので、ほっとした。

 『1万人の第九』、今年のゲストは中島美嘉だった。『1万人の第九』と同い年(25歳)なんだって。

 ドラマ・フリークでもあるわたし(大抵のドラマは網羅しているぞっと)が中島美嘉と出会ったのは、2001年のドラマ『傷だらけのラブソング』だった。昔の大映ドラマのよーなしょーもないドラマだったが、ヒロインのケバい不良少女の歌う「アメイジング・グレイス」はたしかに素晴らしかった。
 不良少女役だから、あんなメイクをしているのだと思ったが、中島美嘉は終始一貫ケバケバしいタヌキメイクのシンガーだった。目の周りが真っ黒で、付け睫毛なのかマスカラ威力なのか、おばさんにはよくわかんないわぁ、てな感じの。
 歌番組はあまり見ないが、ドラマを見てれば流行りの音楽は嫌でも耳にすることになる。以来、中島美嘉の名前と歌声は絶えることなく日常の中にあった。ジェンヌがお茶会で彼女の歌を歌ったりするしな。

 しかし、素顔は知らなかった。
 いつ見ても彼女はタヌキのよーなメイクをした、作り物っぽいカオをしていたから。

 で、『1万人の第九』には、リハーサルとゲネプロと本番がある。
 前日行われるリハでは音楽部分だけ練習、当日の朝行われるゲネでは進行全部、つーことで、すべてに中島美嘉は登場する。
 平井堅がゲストで出た年からだったかな、リハーサルもチケット売って一般客を客席に入れるようになっていた。有名流行歌手が出演するんだから、そして本番と同じ曲数歌うんだから、たとえリハでも金になるんだ、すげーなと思った記憶あり。
 わたしだって、たとえば春野寿美礼がゲスト出演するコンサートがあって、リハーサルもお金を出せば見られるとゆーなら、絶対チケット買って見に行ってるもん。ファンならリハだって見たいはず。
 だから今年のリハも、ふつーに客を入れていた。

 大阪城ホールには、リハーサルから1万人の合唱団と、何人かは知らないが一般客がいた。
 そのステージ上に、中島美嘉は現れたわけだ。歌う曲は「LIFE」と「The Rose」と「きよしこの夜」。本番じゃないからふつーの服装で、髪の毛はおろしたまんまで。

 あ、あれ?

「中島美嘉さんです!」
 と紹介されて出てきた女の子は、わたしの知っている「中島美嘉」ではなかった。
 量が多いだけの、ダサい髪型。瞼の上に一直線になった前髪の厚さは1cmくらいありそうだ。
 地味で、暗そうなカオ。テンション低く、とりあえず、歌う。

 歌声もまた、わたしの知っている「中島美嘉」とはちがっていて。
 あ、あれえ? 中島美嘉ってもっと「うまい」ってイメージだったんだけど……。
 大して、うまくない。音取れてないじゃん? 高音が上がりきらず途中で消え入る。声量もない。ブレスの多さが耳につく。
 淡々と歌い、なんとも退屈な声。

 ナマで聴くのがはじめてだから?
 テレビでは人工的に処理されていたからあんなにうまく響いたのかな?

 てゆーかアレ、ニセモノなんじゃね?

 何故誰もナニも言わない? あきらかに別人じゃん。カオ、ちがってるやん。

 いつもジェンヌを見慣れているためか、姿勢の悪さが気になる。
 真っ直ぐ立てない、歩けない。
 歌うときは前屈み。振付とも思えない微妙な動き。あー、『バイオハザード』のゾンビがあんな動きをする……。

 地味で暗い女の子が、貞子@『リング』のような髪型でカラダをくの字に曲げて歌う姿は、なんつーかこー、ホラー風味だった。

 前屈みでずっとゆらゆら揺れてる……こわい……。

 リハは歌だけで終わったけれど、当日のゲネはその他の進行も本番通りやる。つまり、トークもある。
 ……美嘉ちゃんは、「喋れない女の子」でした。佐渡せんせと司会者が、美嘉ちゃんを真ん中に喋っていても、自分からは会話に加われず、ぼーっと突っ立っていた。「美嘉ちゃんはどう?」と言われてはじめて「台本です」というような答えをローテンションに口にする。
 たしか中島美嘉って自分からぺらぺら喋るキャラではなかったよな。だからまちがってはいないんだけど、こわいタヌキメイクのときは「クール」とか「アンニュイ」に見えていたけど、貞子姿だとたんに「気の利かない子」に見える……メイクの威力に唖然。

 ねえねえアレってほんとに中島美嘉?!
 わたしは聞きたくて仕方なかったが、かなしみのひとり参加、誰にも聞けない。
 お隣のおばーさまと仲良くしてたんだけど、おばーさんはもちろん「あの女の子誰?(笑顔)」「2曲目、いい歌ねぇ(笑顔)」「ところでおまんじゅう食べる?(笑顔)」だったので、聞けませんでした。
 2曲目は美嘉ちゃんの持ち歌ではないっすよ……ヅカでは定番、1年に何回も聴く曲だが、ふつーの人ははじめて聴くくらいのもんらしい……。

 わたしはもうすっかり春野寿美礼中毒で、寿美礼サマのコテコテな歌声以外受け付けなくなっているのかもしれない。
 中島美嘉のひっかかりのない「きれいな」歌声は、そうめんのようにのどごしさわやかに流れ切り、なにも残らない。
 物足りない……。
 つまんない……。

 そう思っていたんだが。

 さて、本番。
 リハ、ゲネと貞子姿でホラーだった歌姫・中島美嘉は、ちゃんと「中島美嘉」の姿で現れた。

 迫力のドレス姿、迫力のタヌキメイク。目の周りは真っ黒だ。
 あのぶ厚い貞子ヘアは、きれいにウェーブを付けて撫でつけ、モガのようになっていた。

「……あんなに塗りたくらなくても……(唖然)」
 素顔→化粧顔の順で「中島美嘉」体験をした隣の席のおばーさんは、その別人ぶりに絶句。

 いやあ、あのメイクはアートだねっ。同じよーにフラフラ前屈みで歌っても、自分からはなにもできずにぼーっと突っ立っていても、変じゃない。
 そーゆーもん、という「キャラクタ」として成り立っている。

 で、実際。

 本番は、歌がうまかった。

 テレビで聴く通りの「歌姫」ぶりだった。

 リハでは手を抜いていた、……とも、思えない。そんな器用さがあるようには思えなかった。真面目な女の子に見えた。
 本番でこそ、実力を発揮できる子なのか……!

 冴えわたる歌声の、美しさ。

 作り込まれた人形のような姿と相まって、別次元の存在として光を放っていた。

 ……えーと。
 ここまで「素」と「本番」がチガウ人を、見たことないっす。
 『1万人の第九』には旬な歌うたいさんが必ずゲスト出演し、リハで素の姿も見せてくれるけど、みんな本番と大してちがいはなかったっす。
 めっさ普段着で現れて、本番でキラキラのゴージャス・ドレス姿、髪とメイクに何時間かかったんだー?な手の込んだ姿になる人たちはいても、少なくとも顔は同じだった。

 ヅカメイクばりに濃ぃ〜〜いメイクだから、素顔が別人なのは想像の範囲内っちゃーその通りなんだが、だからこそおどろいたのは、素顔を隠していないことなのよ。
 デーモン小暮閣下のように、素顔は絶対見せちゃいけないことにしておかなきゃ……。

           ☆

 今年の『1万人の第九』は、ゲネの進行がぐたぐたで、お昼休憩はなくなるわ、発声練習は短縮されるわ、時間が取れないから休憩時間に急遽練習させられるわ(半数は席を立ってるので不在。そんな練習意味あるのか?)、休憩短縮のせいでトイレの大行列から帰還できない人たちが演奏がはじまっても会場内をウロウロしているわ、散々だった。
 そのくせオケの演奏自体は佐渡センセがかなりタイトにまとめたので、結果として30分も時間が無為に空いてしまうわで(それなら休憩と練習時間をちゃんと取ってくれよ!)、これまたひどいことになっていた。

 本番がどーなるのか、午前中段階では心から不安でしたねぇ。

 ここまでひどい進行っぷりははじめてなんだが、どーしたんだろう、毎日放送さん。

 まあともかく、裏事情は置くとして、例年以上の感動的なコンサートでした。
 久石譲氏の新曲「Orbis」が、ものごっつー壮大で、すばらしい曲でした。
 舞台に現れた久石せんせが、なによりまずオケに向かって頭を下げまくっていたのが印象的。
「楽譜もらったのが10日前でね、オケは死ぬほど練習しましたよ……これがまた複雑なことやっててね……」
 と、佐渡せんせがゲネでゆーてました。わたしらコーラスも、楽譜もらったの5日前とかだったよね……。
 どーも〆切破りまくったっぽい(笑)。

 でも、いい曲だった。

 「六甲おろし」もなかったし、良いコンサートでした。はい。


 愉快だったのは、主役と2番手のキャラの違い。

 新人公演『エル・アルコン−鷹−』です、仲間内で1階席観劇はわたしだけ、つーことでみんなから「スクリーンがどうなってるか見てね!」と託され任務重大。
 『エル・アルコン』本編にて、ホリゾントを使って映像流しまくり、ティリアン、ギルダ、レッドの顔がテロップ付きで流れるのだが、ソレははたして新公でどうなっていますやら。
 今まで本公演でキャストの写真(絵)が使われていた場合、新公では顔部分だけ上から紙が貼られていたのだわ。作り直したりしない、ただの写真の切り貼り。『ファントム』でも『落陽のパレルモ』でも。
 でも今回は絵ではなく映像じゃん? 上から紙を貼るわけにはいかない。かといって、たかが1回限りの新公のために映像全部撮り直し、なんてお金を掛けるとは思えず……どーなるのかみんな興味津々。でも2階席では見切れてしまうので、1階席の人がちゃんと見てね! ってこと。
 や、1階席って言ってもわたし、立ち見なんですけどね(笑)。

 なんと、全映像撮り直し、新公オリジナルでした!!
 ティリアン@ともみん、ギルダ@キトリ、レッド@しゅんになってるよヲイ!! ともみんはちゃんと後ろ姿で歩いていくとこまであるよ!!

 どんだけ金あるんだ、NTT協賛!

 スポンサー付き興行の底力を見ました。

 そして、「映像」においても、本役さんたちの実力を思い知った。やっぱきれいだわ、トウコたち……。「映像」であっても、「見せ方」を知ってるんだね。

 さて、その派手さトンデモなさは「タカラヅカ」としての本領発揮なすばらしい作品、『エル・アルコン』。ポスト『ベルばら』でいいんじゃね? いっそ1本モノにしちまえよ、なドラマティックぶり。
 アラはあってもそれを吹き飛ばす勢いのこの作品を、いまいち地味なイメージのあるともみんがどう見せてくれるのか。

 ……ともみんって、実力うんぬんよりまず、知名度がない気がするんだが、どうだろう。

 本公演を見ているときの幕間、いかにも「オレはヅカ通だぜ」ってな感じでチケットのことや組子のことを語っていたおじさんが「夢乃聖夏? 誰?」と素で言って、周囲のおばさんたちに「新公で主演する子ですよ」と言われていたのを見て「うわー」と思った。
 さらに、「(『エル・アルコン』本公演の)芝居のどこに出てた?」「さあ、わからないけど……とにかく主演するようよ」「今までどんな役やってた?」「さあ?」とかゆー会話に続き、さらに「うわー」と思った。

 たしかに、答えられない……。今までどんな役を、本公演でやってたっけ?
 や、そりゃさかのぼって答えられるけれど、「夢乃聖夏? 誰?」とゆーよーな人に、「あの役をやっていた子よ」と言えるほどの役を、本公演でやってないんだよ。

 新公主演するよーな子は、下級生の抜擢でもない限り、ふつーは「**で**役をやっていた子」って言えるくらいの扱いは受けてるもんだからなー。
 研7なのに、知名度がないっつーのは気の毒だ。知名度が、チケットの売れ行きに反映するもんだし。

 そして、「スカイフェアリーズをやっていた」というのもまた、「舞台人としての知名度」には、なんの関係もないのだということを、思い知る。
 「何年か前、テレビでニュース読んでた」ってのは、みんな「芸歴」にはカウントしないもんなー。

 重要なのは、「舞台」での成果。
 それは正しいことだ。

 
 さて、そのともみんティリアンだが。

 まず、歌にびっくりした。

 そうか、本役がトウコだし、歌が多いんだ。でもって、モロにアニメソングって感じの曲だけど、実は難しいのかな?
 歌がもー、えらいことになっていた。

 手に汗握る。が、がんばれ。

 前回の新公『シークレット・ハンター』では、こんなに自爆するほど緊張は伝わってこなかったし、歌もひどくはなかったはずだ。てゆーか、本役のれおんまんまのコピーで、ヘタじゃないけど印象にも残らなかった。なまじ顔とかスタイルも似ているので、「キミがれおんのコピーを目指したら、シャレになんないよ?」てなもんだったんだが。

 トウコのコピーは、できなかったらしい。

 フラフラした歌声、緊張や「あ、ハズした、どうしよう!」てな揺らぎがまんま伝わってくるオープニングに、こっちも泣きそうになった(笑)。

 だが。それでも。

 真ん中なんだ。
 キミが真ん中。キミが闘わなきゃ。

 場慣れしていない、声を出すことに慣れていない、歌が得意ではない、という三重苦状態で冒頭の「ミッション」を歌うとどんなすごいことになるか。

 サイトーくんらしい、アホっぽいアニメっぽい歌だ、「ミッション ミッション クールに決めろ♪」。なにしろ「野心の炎」が「メラメラ♪」ですよ。ふつーには羞恥心が邪魔して歌えません。
 ティリアン@ともみん、マスターズ@みやるり、スコット@天寿でキザりながら銀橋を渡る場面。
 ……声が聞こえない……オケの音だけがかなしく響く。

 銀橋で恥ずかしげもなくキメまくる、つーのはスキルが必要なんだ。や、知らなかった……というか、実感してなかった。
 ともみんもだが、みやるりとミッキーはそんなもん、スキル以前の問題だろ。まったくの未知の世界、できなくてふつー、一般人ではありえない。

 にしても、ここまでできないとは……。
 タカラヅカの「スター」が、どれほど特殊なものかを思い知る。本役のあかしもしゅんくんも、「スター」としての場数を踏んでる子たちなんだなあ。初心者だと、ここまでなにも出来ないんだから。

 マスターズとスコットが総崩れなので、ティリアンがひとりで踏ん張った。
 途中から、ともみんの声だけ聞こえる。
 が、がんばれともみん〜〜!!

 やー、もー、心臓に悪いよ、この舞台。どーなるんだヲイ(笑)。

 そんななか、登場するとホッとするのは、レッド@しゅんくん。

 うまい。
 ひとりだけ、うまい。
 余裕でうまい。

 オープニングでぐだぐだになっているティリアンの歌を聴かされたのち、レッドがせり上がってきて歌い出すと、ホッとしたよ〜〜。あああ、歌える子がいた〜〜、よかった〜〜。

 伊達に場数は踏んでない、しゅんくんは「見せ方」を知っている。他がいっぱいいっぱいな中、自分の呼吸で生きているのがわかる。

 ティリアンと、レッド。
 キリキリ舞いして余裕のないティリアンと、たのしそーなレッド。
 このふたりの、キャラの違いときたら……。
 なんかすげーおもしろいんですけど。

 ともみんは、どーなることかと緊張の連続だが、それでも場が進むにつれ落ち着いていく。歌声も、アレっちゃーアレだが、まだ十分マシになっていく。

 しゅんくんの方も、父親が陥れられたあとは絶叫系芝居になるので、たのしそうって感じではなくなる。

 うん。このふたりがねぇ、ほんとにもー、おもしろくて。

 舞台ってのはいいねえ。たのしいねえ。

 つーことで、続く。


 しゅんくんの新公芝居はいつも、途中から変わっていく気がする。
 火がつくと止められないんだろうか。暴走体質なんだろうか。

 なんにせよ、おもしろい。

 新人公演『エル・アルコン−鷹−』
 主役は初主演のともみんだし、ヒロインも初終演で抜擢のキトリちゃんだし、2番手は余裕のハズのしゅんくんだし?

 えーっと、この『エル・アルコン』って、主役はティリアンで悪役、対立する2番手レッドが正義という、ふつーとは逆のピカレスク・ロマン、だったりする。
 少なくとも本公演はそうだ。

 しかし。

 新公は、善悪が逆転していた。

 やー、もー、これだからナマの舞台っておもしろいねっ。どんなに技術がつたなくても、1回こっきりの力任せの新公っておもしろいよねっ。

 自爆気味ではじまったティリアン@ともみんは、舞台が進むにつれ演技や佇まいが落ち着いてくる。
 もともとタッパはあるしきれいだし、コスプレはある意味トウコより似合っている。やっぱあの大仰衣装には、ある程度の身長が欲しいよな、と、小柄オトコに惚れ気味なわたしでも思う。
 持って生まれたモノは、恵まれているんだよな。
 そう、そして落ち着いてくるに従って、持って生まれたモノが、出てしまうのだ。

 にじみ出ている。出てしまう。
 台詞とか演出とかと無関係に。

 どうしよう、ティリアンが、善人だ。

 すげー真面目で、いい人のティリアンがいますよ!! 夢のために一生懸命で、女(ギルダ)にやさしいまっすぐな人がいますよ!!

 世の中の方がまちがっているため、それを正すために耐えてる人みたいだー。
 アツいハートが心の中でメラメラ(笑)してるよー。

 どうしよう。
 こんなの、ティリアンぢゃない(笑)。

 素直にヒーローしているティリアンに大ウケ。なんじゃこりゃ。ぜんぜんピカレスクぢゃない〜〜。

 それだけなら、まだしも。

 悪のティリアンに対する、正義のレッド@しゅん。
 最初レッドは、プリマスのおぼっちゃまとしてイキイキとのびのびとたのしそーに現れた。
 が。
 父が冤罪で処刑され、ティリアン相手に噛みつくようになってからは、どうもチガウところのスイッチが入った模様。
 テンションが上がると、余裕とかがどっかへぶっ飛び、不要なほどにエンジンが掛かる。

 黒い。

 え、えーと?
 レッドってたしか、無神経なほどの清廉潔白青年だよねえ?
 善良で正義で誰より正しいお子ちゃまだよねえ?

 「正義と良心」と言いながら、レッドくんはどーにも黒い。復讐を正統と考える心の歪みが前面に出る。

 このレッドってなんかやばくね?
 「相手は悪だから、僕は正義だから、なにをしてもいい」と本気で思ってね?
 自分を転ばせた同級生を、後ろから押して階段の上から突き落としそうだぞ? 「当然の権利です」って学級会でも胸を張りそうだぞ?

 幼い。大学生には見えない。そして、その幼い怒りと正義が、邪悪に見える。

 彼に付き従うキャプテン・ブラック@真風がダメダメで(笑)。がきんちょレッドの暴走を止めるだけの度量を持たない。
 レッドの熱が高く、そのへんのものを巻き込んでしまうだけのパワーがあるだけに、みんな一緒にキリキリ舞い。高く高く舞い上がる。

 どうしよう。レッドが、悪人だ。

 歪んだストーカーが、ティリアンを狙ってる!! 逃げて、ティリアン逃げて〜〜!!(笑)

 憎しみと使命感に我を忘れたレッドは、ただの悪。復讐鬼。
 見えているのは悪者ティリアンと、大切な自分自身だけ。

 どうしよう。
 こんなの、レッドぢゃない(笑)。

 素直に悪役しているレッドに大ウケ。なんじゃこりゃ。ぜんぜんヒーローぢゃない〜〜。

 おもしろい。
 おもしろすぎるよ、ともみんとしゅんくん。
 やー、もー、ふたりともダイスキだ!

 誰か止める者はいないのか?!
 いないまま、最後の対決だ〜〜!

 ギルダを殺されたティリアンは、まさに悲劇のヒーロー。
 愛する女性を殺され、我を忘れて悪党レッドに斬りかかる。

 悪党レッドは手下のブラックとふたりがかりでティリアンを討とうとする。卑怯だぞ、さすが悪党だ!
 がんばれ正義のティリアン!!

 いつの世も、正義が理解されるとは限らない。オスカルだってアンドレだって、ええもんだったけど死んでしまった。ティリアンも心正しい正義の男だが、志半ばで倒れるのだった……!

 彼の心の美しさを表すかのよーに、白い衣装で再登場し、愛するギルダとめぐりあう。
 デュエットダンスが欲しいですな。

 
 ここまで別物だと、いっそ清々しいです。

 たのしくてたのしくて。

 やっぱりタカラヅカは「悪人」を主役にして物語を進めるのは難しいのよ。
 「ヒーロー」の方が演じやすいし、物語を動かしやすいの。

 スキルの足りない、キャリアの足りない子が、とりあえずやらなきゃならないことだけやると、「悪人の物語」にならないの。
 「悪」でありながら、「真ん中」であり、物語を動かして感動させる、つーのは高等技術。
 いやはや、いい経験になりました。悪役が主役の物語自体、今後もそうそうないだろうから、次にいつ見られるかわからない。バウとかならアリでも、大劇場ではレア中のレアケース。
 いいもん観たわー。
 そうか、ふつーに演じると、ティリアンって、『エル・アルコン』って、こんなことになるのか(笑)。

 本役の凄まじさを知ると同時に、作品の難しさ、作品位置の特異さを思い知りました。

 でもって、すっかり話が変わっていたので、ティリアンの一代記として、「心正しい青年が志半ばに倒れる話」としてすんなり感情移入でき、ドキドキハラハラ、感動しました。
 やっぱドラマティックだわ、この話。
 ティリアンが悪であれ正義であれ、夢を語る若者の物語として十分泣ける。

 あー、おもしろかったっ。


「舞台に、水くんがいる」

 みんな口を揃えてそう言うんだ。
 新人公演『エル・アルコン−鷹−』にて。

 キャプテン・ブラック@真風涼帆。
 入団前から水くんに似ているとかオサ様に似ているとか噂になっていた彼。わたしは文化祭から「水くん似」と書き続けてるなー。にしても今回はまんまバラク@『鳳凰伝』。

「似てるよねー」
「水そのまんまだよねー」

 ちょっと待ってよ。たしかに顔はそっくりだし雰囲気もいい感じだったけど、真風くんダメダメだったじゃん。水くんはあんなにヘタじゃないわっ。

「え? うまくないからこそ、水に似てるんでしょ?」
「うまくないとこが似てる」

 ちょっと待ったMyフレンズ!! 聞き捨てならないわ、水くんはうまいわよっ。男の中の男よ!

「男なのは認めるけど、うまくはないよね」
「かっこいいとは思うけど、うまくはないよね」

 ……複数の友人に聞いても、誰も水しぇんが「うまい」とは言ってくれない……。
 かくいうわたしも、『銀の狼』まで、彼が演技うまいかどうかなんて考えたことなかったしな。んなこととは関係なく「かっこいい!」とか「ステキ!」とかで舞い上がっていたし。

 今は、巧い人だと思っているのよ。心のある演技を、完成された男役芸とともに見せてくれる人だと。
 でもそれは、ファン視点なんでせうか。一般認識としては、水しぇんってアレな人なの??

 まあ、それはともかく。

 友人たちはひとくくりにしてくれた、ブラック@真風。
 いやあ、演技も発声もまだまだ、ダメダメレベルです。
 でも。
 かっこいいっす。
 そこにいるだけで、「おっ」と思えるのは、強みです。長所です。や、「水くんに似ている=好み」だっつーことも大いにあるけど。
 まだ研2だもんよ。ヘタで当然、ダメダメで当然。『Kean』のときも台詞がうわずっていて、ついでに滑舌も良くなくて大変だったが、この新公ブラックもそれ以上に大抜擢、そりゃー大変だったろう。

 薔薇の花くわえてせり上がり登場だもんな。研2でな(笑)。
 大変やな〜〜。
 イロモノキャラなんで、演技力云々よりも必要なのはハッタリ力。まずソレを磨かせようということかな、期待の新人くん。

 まだまだ幼くて拙さが目につくけれど、足りない分をこれからどう埋めていくのか、最初から完成していないところが期待感を煽る。
 ビッグに育って欲しい。長身の水しぇんだもんなー。たのしみだなー。
 

 反対に、若いけれど「うまい!」と話題をさらったのが研3の大輝真琴。
 小ティリアン役。

 本役のティリアン@トウコにつながる演技だった。

 本役の小ティリアン@ミッキーは、悪くない。ヘタでもなく、まあうまいんじゃないかなと思われているのだろう、だから話題にものぼらない。や、わたしの周囲では。
 うまければ『落陽のパレルモ』や『ファントム』のののすみみたいに「アレ誰?!」と噂になるし、ヘタすぎても「誰よアレ!」と言及せずにはいられないだろうから。ソレが一切ない、誰もナニも言わない、興味がない、つーのは、ふつーに及第点なんだろう。

 でも新公の小ティリアンは、巧かった。ふつうに演技が出来ていたということに加え「黒さ」があった。

 父親を手に掛け、剣を握り強い意志を解放する。
 「悪魔」とののしられながら、七つの海七つの空へ思いを馳せる。

 「ティリアン」という人間の遡源がここにある。

 小ティリアン@弟くん(『Hallelujah GO!GO!』の、主役の弟役)……もしくはいとーさん(本名まんま・笑)と呼んでいたが、周囲が「まいける」と呼びはじめているので、ソレに倣いますわ、まいけるくん。

 純粋な少年として、母と敬愛する男と「オレンジの夢」を語るときも端正に巧いのだけど、やっぱ冒頭の「黒さ」と「強さ」に注目。
 なにしろ物語の最初、プロローグだから、ここが弱いと作品がつまずくのよね。
 残念ながらジェラード役がいろいろと足りていないのですごーくぼやけてしまったプロローグを、小ティリアンが力尽くで「真ん中」へ話を引き戻した。

 彼は、「ティリアン」だ。

 幼いけれど、まちがいなく「ティリアン」だった。
 その黒さと強さがまっすぐに光を放っていた。

 ……ティリアンなのよ、彼。
 だから、彼が成長して新公ティリアン@ともみんになるのは、変なの。

 新公のティリアンは、正義のヒトだから(笑)。
 あの白いティリアンには、残念ながらまいける小ティリアンはチガウの。

 まいけるの小ティリアンがつながっているのは、トウコのティリアン。
 まいけるが成長してトウコになるなら、わかる。
 てゆーか、そっちを見たい。そっちが、正しい。

 本公演の小ティリアンを見ても、うまいもヘタも思わなかったし、正しいとかチガウとかも思わなかった。
 ただ、新公の小ティリアンを見て、「この子からトウコにつながる芝居を見たい」と思った。

 や、ソレだけだ。
 本役のミッキーに対して含みがあるわけではない。

 まいけるはうまい子だと思う。
 前回の『シークレット・ハンター』新公でも演技力を高く評価されていたはず。台詞もなかったのなー(笑)。
 ただ、子役限定であることを危うく思う。
 『Hallelujah GO!GO!』にしろ、新公にしろ、まともに役がついているのが全部子役、少年役だもんよ。
 若くて小柄だからどうしてもそうなっちゃうんだろうけど、ヅカで必要なのは「大人の男」だから、子役がどれだけうまくても男役としてのスキルにはならない。
 まいけるに、大人の男の役を。
 大人役をやるとどーなるのか見てみたいっす。本公演では金髪ロン毛で耽美風(笑)にがんばってるけどさー。群舞ばっかだもんよー。芝居が見たいのよー。

 
 まいけると同期の初ヒロイン、ギルダ@キトリは、ふつーにうまかった。
 本役あすかちゃんのコピー。
 表情、声、話し方のイントネーションまで、まるまるコピってた。

 これだけきれーに模倣できるんだから、うまい子なんだろうと思う。

 あすかのコピーというと花組のきほちゃんを思い出すけど、きほちゃんが技術的には完璧にコピーしていながらも情感や華の面で劣化コピーになっていたことを思うと、キトリは十分内面もコピーしていたと思う。
 ただ、「コピー」止まりである、という点ではやはりインパクトに欠けるなー。

 彼女の本役であるジュリエット役の方が魅力も破壊力(笑)もはるかに上だ。
 新公のジュリエットは「ふつー」だった。おバカ度もトンデモなさも、本公には及ばなかった。
 てことは役がバカであるという以上に、演じているキトリがすごいんだなと思い知らされた(笑)。

 ギルダは特殊な役だし、ジュリエットもトンデモないしで、彼女の娘役としての力はまださーっぱりわかんないっす。
 彼女にも、ふつーの役をプリーズ。


 体力気力共に落ち込んでいるため、なにもできずにおりますが、「公式に反応」しておきましょう。

 小出しに、小出しに、「2008年宝塚歌劇公演ラインアップ」発表。2006年12月16日には、「2007年後半ラインアップ」が発表になっていて、「『アデュー・マルセイユ』って、小池って、マジかよ……」とガクブルしてたってゆーのに、まだよーやく8月公演の発表だ。

 雪組、すごいね!!

 大劇場にて、荻田&正塚!!

 盆と正月が一緒に来た感じ? うっわー、たのしみだー。またしても毎週nanaタンとムラでデート、いつもの店で5時間以上ダベリングがデフォルトな日々がやってくるのかしら?(笑)
 通いますよ、作家名だけで!!

 ただ、水しぇんファンとしては、両作家のこれまでの水くんの扱いを見る限り、ちょい不安はあるんですがね……。
 オギーもハリーも役者の好きキライ激しいっちゅーイメージがある。
 そしてふたりとも「ひょっとして水くんにキョーミない……?」てな扱いをしてくれた。

 不安はあるにしろ、だからこそ水夏希を主役にしてどんなものを書いてくれるのか、かえって楽しみでもある。

 そして個人的に。
 オギー作品のこれまでのパターンから推測して。
 ゆみこVSハマコ、どちらが「語り部(歌手)」として選ばれるか、すげーたのしみっす。
 オギーの好みからすればゆみこ<ハマコは明白だが、ゆみこは2番手だからなー。どんなことになるかなー。

 そして、ナニ気にオギーのお気にであるだろーキムの扱いがたのしみだー。

 
 雪WSの『凍てついた明日』は、トウコ×あすかで再演熱望作品だっただけに、その点では残念ですが。

 再演自体はうれしい。
 とゆーのも。

 荻田浩一たるもの、ただのコピーは作るまい。

 と、思っているからだ。現にもう、タイトルちがってるし。

 『凍てついた明日−ボニー&クライドとの邂逅−』ってナニ?! 全改稿前提? 書き直すのね? 新しいのね? オリジナルなのね? ワクテカ。

 ベテラン・キャストのために書き下ろした『凍てついた明日−ボニー&クライド−』を、新人たち用に書き直し、『凍てついた明日−ボニー&クライドとの邂逅−』として上演。
 オギーファンとして、その変化をたのしみたい。

 WS主演経験者のかなめくんが今さらWSを、しかも通常2名でやるところを独占することに関しては、劇団のアホさ加減に嘆息するばかり。
 『お笑いの果てに』以来、すっかり成長が足踏み状態のかなめくんが、どーんと男ぶりを上げてくれることを祈るキモチで願ってます。

 実際のところ、主役よりもヒロインを危惧している。ボニーは「娘役」の範疇を超えた難しい役だからな……。「娘役」としての基礎を完璧にした上で、ようやく挑戦することの出来る役だ。
 さらに衣装まで難しいぞー。いろんなとこでボニーの衣装が使い回しされているのは見かけるが、いつも微妙。あの服を着て「ヒロイン」として立つには、「華」と「スタイル」と「美貌」が必須……せめてこのうちのふたつはナイと自滅かも。

 あとは今の雪組には「風早優」がいない、つーことを危惧してます。
 初演『凍てついた明日』のキモになったのは、クライドが愛する「幻の兄」、クライドが道を誤るきっかけとなった「保安官」、クライドを追いつめる「捜査官」をひとりの役者が演じるということ。
 この配役には、震撼したもの。や、みやたんは他にもいろいろ演じているけどさ。とくにこの3つ、なかでも「兄」と「捜査官」は『凍てついた明日』を語る上で絶対ハズせない、重い重い意味を持つ。

 現役でこの役を演じられるのはハマコのみかなと思うけど。……ハマコで見たいけど。ハマコだったら、って考えるだけで背筋がぞくぞくするけど。

 でもって、ヲヅキがこの役だったら、チガウ意味で震撼、萌え狂いますがな(笑)。

 
 月組日生劇場は『華麗なるギャツビー』再演ですか。
 こちらもmixiで妄想配役書いて遊んでいたくらい、某組と某組で見たかった作品なんで、その点では残念ですが。
 名作なので、再演自体はたのしみっす。

 ただ。
 ただの再演ではなく、一幕モノを二幕モノに書き直しとゆーことで、不安が……。

 『凍てついた明日』も『華麗なるギャツビー』も、妄想配役して遊んでいて、そのキャスティングではもう見ることが出来ない、という点では残念だが、再演自体はたのしみ。そして、どちらも改稿前提ときてる。
 なのに。
 『凍てついた明日』の改稿はうれしい限りだが、『華麗なるギャツビー』の改稿は、……えっと……。

 頼むよ小池。
 過去の自分の名作を、自分で改悪しないでくれよ? ……初演はそれでも、カリンチョの力量、鮎ちゃんの美貌でもって成り立っていた部分は多分にあるんだし……。
 や、良い作品になることを、一観客として祈ってます。

 せっかく改稿するなら、番手を考え直してね〜〜。いっちゃんのやった役は、2番手の役ぢゃないっすから。

 
 月組博多座はきりやん主演で『ME AND MY GIRL』かー。
 『ME AND MY GIRL』は好きぢゃないので特別「観たい」とは思わないのに、「きりやん主演」だと「観たい」と思えるのは何故だろう……。
 「霧矢大夢」というのは、そーゆー役者なんだなぁ。

 ……ところでゆーひくんは、なにに出るんだろう?
 それによって観劇予定が変わるなー。西と東、両方は無理だから(あたしゃそのころ雪組のオギー&ハリーに通っている予定)、ゆーひくん次第になるなー。

 
 宙組WS『殉情』は、たのしみなふたりが主演。
 や、ちぎは鉄板だと思っていたが、ちーが予想外、すっげーうれしい。いやその、正直ちーくんを真ん中で観られることは、ないのかもと思ってたんで……(全ツ階段降り、カチャ以下の扱いだもんよ)。

 しかし、作品に関しては、劇団のアホさ加減に嘆息するばかり。

 たしかにWSは「お勉強の場」なんだろーけどさー。それでも、ここでがっちり「人気」を取るのも仕事ぢゃないのか?
 幕末モノならともかく、現代人が理解しにくい価値観をテーマにした地味な日本物を「今」やらせなくてもいいだろうに……。
 画面もストーリーもキャラも、ナニもおいしくない作品がWSなんて。
 試練だなー。がんばれ宙組若手たち。

 と、言いつつも。

 ちぎの演じるドM男は、見てみたい気がする(笑)。

 そして、ちーくんではあまり見たくない……彼で見たいのはドSの方だ。
 はっ、ちぎバージョンの春琴を、ちーが演じればいいんだっ(笑)。ちぎよりでかいけど無問題、どーせ日本髪で誰がやってもデカくなるんだしっ。

 
 ……なんて、熱を押してまで夜中に長々書いた文章の最後がコレか(笑)。


 『エル・アルコン−鷹−』の新人公演を観て、しみじみと思う。

 ジェラード@立樹遥の魅力について。

 今回わたしは、ジェラード@しいちゃんがダイスキだ。や、もともとしいちゃん好きだけど、ソレとは別にジェラードが好きだ。

 彼を見ていると、せつなくてせつなくて胸が痛い。
 それはつらい、かなしい痛みであるのに、とびきりあまくもあるんだ。

 大人になったティリアン@トウコと再会したときの、ヒゲのおっさん姿には、あまりときめかない(笑)。や、ソレはソレで萌えではあるので、好きは好きなんだけど、意味がチガウので今は置いておく。

 ティリアンの記憶にある、青年時代の「若く、強く、美しい」ジェラードにときめくの。

 わたしが年寄りだからかもしれない。
 「若さ」が象徴する痛さ……傲慢さや愚かさ、無意味な攻撃性などが、愛しいんだ。
 「若さ」が象徴するはかなさ……壊れやすさや繊細さ、いずれ失うことがわかっている刹那性などが、愛しいんだ。

 ジェラードの美しさは、「青春の象徴」だ。
 ティリアンが葬り去ることになる「少年時代」だ。

 何故ジェラードと、母イザベラ@柚長との記憶があんなにも美しいのか。
 それが「聖域」であるからだ。
 ティリアンの野望の原動力というより、「癒し」だったのだと思う。
 彼の強く固い精神の中にある、やわらかな美しいもの。それがあるからこそ彼は冷酷になれたし、また、彼なりのやさしさを心に残したまま戦えた。

 ティリアンが悲しいのは、その「美しいもの」を、自分で葬り去るからだ。

 ふつーの人には、そんなことできないし、また、する必要もない。
 だけど前へ進むことを強く欲するティリアンは、自ら自分の中の大切な「聖域」を葬り去った。
 母の死を道具にし、ジェラード自身をその手に掛けた。

 母の墓の前で、ティリアンがふと、「ここにオレンジの木を植えては?」と口にする。

 そのときの、トウコの表情を見て欲しい。
 大きなつばの帽子をかぶっているし、客席には斜めに背を向けているのでろくに見えないと思うが。
 前方下手からなら見える。

 ぽつんと。
 それまでとはチガウ、空白な表情で。
 あまりに真っ白な、いや、色がないから白い、透明な顔で言う。

 少年というにも痛々しい、生まれたままの、むき出しの魂がふと浮かんできたように。

 ぽつんと、本人の意識とは関係なくこぼれ出て。
 その「意志の不在」さが、横顔の幼さが、切なすぎて。
 
 ……ほんとうに一瞬で、彼はすぐにいつものティリアンにもどるのだけど。
 帽子に隠れて、彼のそんな表情は誰にも見とがめられないし、他愛ない一言も彼自身に否定されてしまうのだけど。

 この一瞬の表情が出来る人だから、安蘭けいはとんでもない「役者」なんだと思う。

 そして彼のこの表情は、まっすぐにつづいている。彼の、「あの日」に。

 若き日のジェラードとイザベラと、少年だったティリアン自身。

 オレンジを語った、ただ、美しかった日々。幸福だった日々に。

 「若く、強く、美しい」ジェラードに。

 まっすぐに、せつないほどのか細い美しさで、続いているから。

 ジェラードは、「青春の象徴」だ。
 無知だからこそ幸福だった「少年時代」の記憶だ。

 ジェラードが持つ若さ、美しさ、力強さ、やさしさ、そしていくばくかの愚鈍さと無神経さが、愛しくてならない。
 彼は若く、自分の能力と可能性を信じている。
 傲慢で、無神経でもある。
 人妻と不倫関係にあり、その女に不義の子を産ませ、夫の実子として育てさせている。父親の名乗りはせずに、しかし父としての情愛で息子に会いに来る。
 その厚顔さ。その傲慢さ。

 立樹遥の太陽の笑顔が、その歪みを覆い隠す。

 ジェラードの歪み、過ちが、しいちゃんの大きさでかすむ。それは、少年時代のティリアンが、自身の幼さゆえにジェラードの卑小さに気付かなかったように。

 しいちゃんは、「失った夢」だ。

 わたしはもう若くない。わたしはもう、失望とか傷とか涙とか、いろんなものを知っている。
 ただ無邪気に笑っていられた子どもの頃には戻れない。

 だから、なんの傷も歪みもない、美しいだけの夢やあまいだけの美には酔えない。

 歪みを内包した太陽にしか、惹かれないんだ。

 しいちゃんは太陽だ。
 若い頃の彼……それこそ雪組でロケット・ボーイをやっていたり、新公主演をしていた頃の、なんの傷もないキラキラキラキラ無邪気に輝いていた頃のアイドルとしての光ではなく。
 年齢と経験を重ね、だけど演技がうまくなったわけではなく(笑)、あちこち年相応のほつれや傷を重ねながら、それでも、太陽であり続けることができる、魂の大きさ……そのことが、泣けるほど愛しい。

 だから、彼の演じるジェラードが痛いほど愛しい。涙が止まらなくなるほどせつない。

 ジェラードが美しければ美しいほど、格好良ければ格好良いほど、切なくて仕方がない。

 
 ティリアンは、ジェラードを殺す。
 これは決定事項だ。
 彼が七つの海七つの空を、鷹のような生き方を志したときから、決まっていた。

 ジェラードは英雄でも偉人でもなんでもない。ただの卑小な野心家だ。
 ジェラードが幼いティリアンを誉めたのは、「自分の息子」だからだ。
 彼は「自分自身」を誉めたんだ。
 その厚顔さで。その傲慢さで。

 だからティリアンは、ジェラードを殺さなければならない。
 その手で葬り、超えてゆかねばならない。

 サンクチュアリを、葬らなければならない。

 
 安蘭けいと立樹遥は、正反対でありながら、どこかしら似たカタチの影を持つ。
 トウコは月の魅力、陰と淫の魅力を持つ役者であり、しいちゃんは太陽の魅力、光と康(ゆたか、すこやか、おおきい等)の魅力を持つ。
 トウコの影は大きく濃く、しいちゃんの影は少ない。
 だけどふたりの影は意外なところで重なる。大きさが違っても濃さが違っても、形が似ているから。影の伸びた長さはチガウのに、相似形になる。

 このふたりが並び立つとき、他にはない魅力を感じるのは、そのためかと思う。

 それはオスカルとアンドレだったり、ウッドロウとカールトン監督だったり、ティリアンとジェラードだったりと、トウコを抱擁する立場にしいちゃんが来たとき。
 そのとき艶めいた月は、いびつな太陽と同じ影を描く。太陽は影を増す。

 ……ティリアンが、ヒゲ中年男ジェラードを殺す前に抱きしめるのが、萌えです。
 しいちゃんはヘタレても別の芳醇さを発するステキなヒトですから。
 青年時代の美しさや切なさとは、まったく別。
 こちらは純粋に萌えです。ヘタレっぷりが(笑)。

 新人公演を見て、「ジェラードがチガウと、こんなにつまんないのか……」と愕然としたもので。
 しいちゃんが特別に演技しているとか、とくに思わないから(しいちゃんはいつでも、ナニをやってもしいちゃん♪)、ほんとにキャラクタだけで勝負してるんだよなあ。
 そして、新公だからもちろん足りない部分は大いにあるにしろ、敗因のほとんどが「しいちゃんぢゃないから」だけだなんて、あんまりだよなあ。

 ティリアンの少年時代のエピソードに重点を置いたこの作品において、ティリアンが魅力的になる要因の何割かは、ジェラードが魅力的であること、にかかってると思うんだが、どうだろう。

 ジェラード@しいちゃんが、格好良すぎるんだってば。
 ステキすぎるんだってば。
 ときめいちゃうんだってば。


 べつに、悪かったワケじゃないんだよ、新人公演『エル・アルコン−鷹−』の、ジェラード@どいちゃん。
 彼はよくやっていました。丁寧で、役に対する誠意が見えた。……正直なとこ、うまいとは思わなかったけれど、それはなんつーても難しい役だから仕方ないってば。

 しかし、ジェラードが、パーシモン卿の愛人にまざってて、驚いた(笑)。

 さすが新公。
 ジェラードやってる役者が、何故ドレス着て愛人を(笑)。
 アルバイトにしたって無意味でステキ。

 しかもどいちゃん、マジでキレイだし。
 

 んじゃ、他の役のこととか、おぼえている範囲でざーっと記録。

 ベニーが、美しかった。

 や、スペイン海将でヒゲ姿で、めちゃくちゃ美しいってナニ?(笑)
 予備知識ナシで観ているため、彼がヒゲの海将役だとは知らずにいて、後半内心ウケまくった。場を壊してるぞ、あの美貌は(笑)。

 しかしなんでベニーの役付は上がらないのだろう?
 『龍星』や『ソウル・オブ・シバ!!』のころの方が役付が良く、年々下がっていくなんて変だよなあ。演技ができないわけでもないのに。
 美貌とスタイルだけでも、十分際立っているのに。

 
 美貌といえば、イザベラ@しずくちゃん。
 キャスティングをざーっと眺めたときに、仲間内でいちばん危惧されていたのが、実は彼女だ(笑)。
 その演技力のアレさは、前回の新公ヒロインで記憶に強烈すぎて。
 イザベラは難しい役だぞ? 大丈夫か??

 や、大丈夫でした。
 そうか、イザベラって美貌さえあれば、演技しなくてもなんとかなるんだ!(暴言)

 イザベラは、「過ぎ去りし幸福」の象徴。無責任に美しい「夢」。
 ただひたすら美しく、弱々しければそれでOK。
 しずくちゃんは美しく、少女の姿まんまで、ガラスケースの中のお人形のようでした。
 それはソレで、イメージとしてアリだ。

 
 で、美貌といえばティリアン側近のマスターズ@みやるり。
 どんだけ美しいんだ。
 本役のあかしも「本当にあかし??」と目を疑いたくなるほど美しいが、新公のみやるりは砂糖菓子のように甘い、正統派の美しさだ。
 こちらもお人形のよう。
 最初の「ミッション」の歌がまーったく歌えていなかったり、演技してるのかどうかも、実は美貌だけしか目に入らなかったからぜんぜんわかんないんだけど、とりあえずきれいだった。
 眼福。

 もうひとりの側近スコット@ミッキーも、美形ではあるんだが……丸い。
 スカステの旅行番組で見かける素顔の彼は、びっくりするほど「ふつーに芸能人」として美形だ。ジェンヌというより外部のタレントさんみたい。
 女性としては理想的な美しさなんだろうな。
 ただ、「男役」としては、まだまだ丸い。
 本公演のティリアンの子役ぶりがどんどん熱を帯びてきているので、成長をたのしみにしているひとりなんだけど……今はまだ舞台人としては目にはとまらず。

 
 ペネロープ@まりもちゃんは、うまかった。
 本役コトコトとは、まったくチガウ、強さというか野性味のあるペネロープだった。
 貴族のお人形さんではなく、芯に強いものを持った、それゆえにわがままだったり生意気な口をきく女の子だった。
 それゆえに、剣を握る女の子だった。

 この強い少女が、恋に狂い、滅びていく様は哀れだった。

 
 エリザベス@コロちゃんは、もちろんうまかった。
 歌がうまい〜〜、歌詞がはっきり聞こえる〜〜(笑)、そして、嘘くさく可愛い〜〜(誉め言葉)。

 
 シグリット@せあらはふつーにうまくて、色っぽくて適度に下品で、とっても「愛人」らしかった。
 このシグリットならコールサックと兄妹でもおかしくないな。本役のみなみちゃんは品がありすぎてなー(笑)。

 
 レッド父とスペイン提督@水輝涼は、地味に巧い。本役の組長ほど声に特徴がないので、2役に無理がない。
 彼はこのまま脇一直線なのかなあ。たしかにまるまるしすぎている気はするけど、一度思いっきり二枚目役で見てみたいんだけどなあ。
 エンカレのときの色男ぶりが忘れられないんだよ……。
 なまじ実力あるしさー。なんとかなんないのかニャ。

 
 エドウィン@しーらんは、なんか目立たなかったなあ。難しい役なんだなあ、コレ。
 あれだけ派手に見えるのは、すずみんの力業なんだなぁ、と改めて思う。

 しかし、アルバイトのパーシモン卿の愛人役は、こわくてステキだった。
 やりすぎだからキミ!! や、それでこそしーらん!! 期待を裏切らないヤツだ〜〜(笑)。

 
 ニコラス@れんたは、ええっと……がんばってくれ、と。
 『Kean』でもなかなか謎な使われ方をしていたが、劇団的に期待の新人くんなのかな?
 テレビで見る素顔はかわいいし、学年から考えてもなにが悪いってこともないんだが、まだ男役になっていないのが気になる。やる気は見えるから、前進してくれるといいなあ。

 
 ええっと、こんなとこで。
 

 需要はなくても語りましょう。語らずにはいられないのだ、見どころまっつ。
 や、元のテキストを最初に書いたのは10月だ。書くことが他にありすぎてUPできないまま現在に至る。まっつファンの端くれとして、毎公演まっつまっつな話を書かなくては!とゆー意気込み……だったんだが、ぜんぜん書けてないっすよ。
 もう今さらだし、東宝では変更があるかもしれないが、それでも今さらムラまっつの話。

 
 スタートから40分出てこない『アデュー・マルセイユ』でのまっつ。
 や、ふつー出てこないったって、本編とは関係ないプロローグには群舞として出ていたりするじゃないですか。登場が遅い壮くんだって、ヒゲつけて謎のボス代理やってるし。なのにまっつは出てこない。プロローグにもいないし、待てど暮らせど出て来ない。登場が遅いっつたら『エル・アルコン』の和くんとかもそーだけど、彼はプロローグには出ているから「いる」ことだけは観客にもわかる。もし急用で途中退場するお客さんがいたら、ヘタすりゃまっつは存在すら知られないままっすよ(笑)。
 さすがに40分は長いねえぇ。それでも「良い役」と思える役だっつーのがありがたいが。

 登場はカジノ・オリオンにて、カッコつけたりせの後ろ。や、個人的にツボなんですが。盆が回り、スポットライトがひとりの男を照らし出す。ポーズを決めたその男は、なんと、へなちょこりせだ!!
 初日はりせのものすげー登場に爆笑し、その直後にちょい悪まっつ登場で、笑いのコンボ攻撃をくらった。もー、どうしようかと。
 舞台が暗転していることもあり、スポットライトの輝度はりせのものの方が高い。りせより地味に登場するところが、まっつらしくってツボなのだ。……てか、りせのパフォーマンスが謎なんですが。カジノの支配人っつったって、あの演出は変だろ。

 黒髪オールバックはてーっかてか。黒塗り口ひげぎーっらぎら。銀のタキシードはきーっらきら。……どうしましょう、外見だけで笑えます。
 なんともわかりやすい「金持ち」ぶり。セレブではなく、成金。なんともわかりやすい「権力」ぶり。貴族ではなく、マフィア。
 ジオラモ@まっつはいつも、クラウディア@としこさんと一緒にいる。マドモアゼル、だから妻ではなく愛人だろう。彼女を抱く手つきに注目。
 ソフトタッチ。角度や仕草を変え、すごーくがんばっていろいろやっているが、ほんとのとこ、ろくに触っていない。エロオヤジ設定なんだから、もっとわかりやすくがしっとかべーーったりとか、本気でイロイロ触り放題でもいいだろうに、実際触る仕草を繰り返しているのに、実はまともに触っていない。
 触れるか触れないかの微妙なラインを、羽のようにくすぐるように、なぞっていく。
 や、実際に触っちゃうとドーランがついてしまうからとか、理由があるのかもしれないが。それでも触っているかいないかわかる程度に触っていないというのは、なんか愉快です。
 いつも生真面目に、本気で触ってしまわないように空間を確保し、だけどさも「触りまくりのエロオヤジ」風に手つき指つきに細心の気を配って演技している、まっつがステキです。

 大物っぽく見せるためか、動作はわりとゆるやか。そんなジオラモさんが高速で動く瞬間があります。
 クラウディアがうっかりばらまいてしまったお札を、拾おうとしゃがむところ。無邪気ぶったジェラール@オサが手に取り、眺めるのを、横から奪い取る。
 ここの場面の意味はついにわからないままだったが(偽札を混ぜたのがジオラモだった、という意味か? だとしてもなんの説明もない)、いかなる場合も大仰にスローモーなジオラモさんが、突然高速キリキリまっつ!になるのは、純粋になので、愉快です。キュートです。

 さて、フィリップ@立さんにラヴコールしたあとジェラールは、ジオラモの待つホテルに行きます。
 長椅子が中央からせり上がって来て、カーテンが開いてジオラモさんが登場します。

 はい、ここ見逃さないで。
 カーテンが開く瞬間、ジオラモさん、なんかやってます。

 クラウディアさんのアゴに手をかけているところを見ると、チューの前後なのかもしれません。
 カーテンが開くとなにごともなかったかのように「♪ルイ・マレー」なヒトになりますが。

 イケコ的にまっつは「中央カーテンから主役の前に割って入る男」なのかもしれません。海馬教授もまったく同じ登場をしていたのでデジャヴに襲われます。……イケコぐらいだよなあ、まっつを真ん中に持ってくる演出家って。ありがたやありがたや。

 さて、ホテル・ネプチューンのスイートでのジオラモさんは全部ステキですが、なかでも気になるのはグラスの行方です。

「まあ一杯やりたまえ♪」
 とワインのグラスを薦めるジオラモさん。
 サイドテーブルにはグラスがどっさり。

 わたしがジェラールなら「ジオ様に誘われちゃった(はぁと)、ホテルだよスイートだよ、どーしよー。なに着て行こうかしらっ!!」なピンクなキモチでドキドキですから、まず部屋に通されて「ちっ、女(クラウディア)付きかよ」とがっかりしてるのに、そのうえこのグラスの数を見たら、「何人来るんだよ!」と、さらに落胆することでしょう。
 わ〜〜ん、ジオ様とふたりっきりぢゃないのかよ〜〜っ。
 ……や、ジェラールはわたしのようにジオ様に期待(なんの?)はしないと思うので、落胆はしないだろーけど。でも捜査員ならグラスの数には注目し、心構えているはずよね?

 気になるのは、グラスの行方。
 ジオ様はMyグラスを手にしている。で、クラウディアはジェラールにグラスを薦め、ジェラールが受け取る。
 そしてジオ様のひとりミュージカルスタート。
 うさんくさいですねえ。まっつだと思えると笑えてしょーがないですねえ。それでも「かっこいい」とか「ステキ」とか「……ポッ」とか、思ってしまうあたり、ファンってすげえよな。自分でも「アレにときめくのかよ」とセルフツッコミ入れちゃいますからねー。まっつならなんでもいいんだな、すでに。いいんだよ。

 グラスを片手に歌い、オサ様を口説く。オサ様の肩を抱いても、あくまでもソフトタッチ。がしっ、と握ったりはしない。ついにムラでは一度も。ちっ、小心者め。(暴言)
 まっつの攻キャラは大好物なので、ジオラモさんはその点ではいい感じです。「恋愛アドベンチャー『アデュー・マルセイユ』」では、是非ジェラールを口説いて欲しいもんです。モーリスを口説き落としてくれても萌えだが(笑)。

 ジオラモさんとグラス。
 ……はい、文字数ないので続きます。


 今さらこっそりと『アデュー・マルセイユ』のまっつ語り。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

 ホテル・ネプチューンのスイートにて、「まあ一杯やりたまえ♪」と酒を勧めるところからはじまるジオ様@まっつ。
 次々登場する悪役たち。

 気になるのは、グラスの行方。

 悪党ズの紹介したりなんだりで、ジオ様は一旦グラスを手放します。ジェラール@オサ様もまた、一度はグラスを返す。
 グラスはサイドテーブルへ。
 人数分用意されたグラスの中へ混ざってしまう。

 そして悪党たちはそれぞれグラスを手に「乾杯」することになるわけだが。

 ちょっと待て。
 そのグラス、すでに2個は使用済みだったのよ? 小道具だから空のままできれいなままだけど、実際には使用済みなのよ?
 さも新しいみたいに全員に配っちゃっていいものなの?

 ……いいんです。

 確認しましたよ、あたしゃ。

 ジオ様は、自分とジェラールのグラスをきちんと選んで、勧めてます。

 一旦集められたグラス。クラウディア@としこさんが悪党たちに配るのは、まっさらなグラス。
 ジオ様はちゃんと自分が飲んだグラスを手に取り、さらにジェラールが飲んだグラスを手に取って、彼に勧めてるの。

 あ、細かい。
 小道具だからきれいなままなのに、ちゃんと「Myグラス」「彼のグラス」を決めた上で演技してるんだ。

 あたりまえのことかもしれないが、そんなことに感動する。

 最初はそのへんのことが、観ててもわからなくて。
 使用済みグラスとか未使用まっさらグラスとか、区別なく眺めているだけだったし。

 よーするに。
 ジョジョとジオラモ(モーリスでも可)が、間接キスしてたらおもしろいのに。……と、思ったことがグラスの行方に注目した動機です(笑)。はい。

 気になるのは、グラスの行方。
 グラスを戻したりまた手に取ったりしているのに、間接キスしてないんですよ、誰とも!

 つまんね〜〜。
 つまんねーよなあ?

 ジオ様1回くらい、グラス交換しちゃえよ。でもってオサ様と間接キスしちゃえ(笑)。とか、仲の悪いモーリスとジェラールを間接キスさせちゃえ、いたずらしちゃえ(笑)。とか、思ってました。……や、小道具ですから舞台ですから、実際に口は付けないですけどね。わかって言ってますけどね。でも、誰にも内緒でジオ様がそんないたずらしてたら、すげーたのしいのになあ。
 や、たとえグラスが入れ替わっていても誰も気づかないだろうし、気づいたとして「まっつ、間違えたんだな」で終わるだろーけど。
 ひそかに萌えさせてくれてもいーじゃんかよぅ。

 まっつの「ひとりミュージカル」は回数を重ねるほど巧くなっていって、「もともと『歌手』カテゴリで、歌ウマさんだと思っていたけど、まだ伸びるのか!」とうれしいおどろきだった。
 語りかけるよーに歌うところも好きだが、途中何カ所かある「歌い上げ」部分が特に好き。ぞくぞくするほど好き(笑)。

 『舞姫』のときにパクちゃんが「まっつって歌うときに後ろへ反り返る(笑)」と指摘してくれたけど、ええ、その通りっすね。彼は歌への気合い度によって姿勢が変わります。「ここぞ」というときは胸を反らし、のけぞるよーに声を出します。
 だからもちろん、「私の出身はシシリア島だ〜〜♪」とか、「マルセイユ・ルート〜〜♪」とかのときは、のけぞってますねっ(笑)。好きですよ、コンパクトなカラダ全体を使って声を出しているまっつ。

 ええ、ジオラモの部屋になるなり流れるあの「♪ズンチャ・ズンチャ・ズンチャ♪」のメロディが大好きだー。うさんくさい〜〜♪

 さて、男女問わずスキンシップ過多なジオ様は、ジェラールにも臆せず触ります。……触っているはず。演出上では。肩を抱き寄せてひとりミュージカル続行。
 前にも書きましたが、まっつはついにオサ様に遠慮なく触ることはありませんでした……。いつもいつも、ずっとずっと、「触っている」ふりで、実はほとんど触れていないという。
 さおたさんのことは抱けるくせに、何故っ?! ……失礼、ショーの話です。まっつ、さおたさんには平気で腰に手を回したりなんだりしてるんだけどね……密着度平気で高いんだけどね……オサ様相手だとダメみたい。
 「上級生相手だから畏れ多くてダメ」というなら、オサ様よりさらに上級生のさおたさんはどーしていいんだ? 彼だけ特別? 反対に、オサ様は特別だけどさおたさんならいいや、ってこと? ソレは、どっちに萌えればいいの? てな話は置いておいて。(どっちのパターンもそれぞれ萌えです、ハァハァ)

 一度くらい、本気で抱き寄せてほしかったなあ。
 まっつそんなの、一生の記念じゃん? あの春野寿美礼を強引に抱き寄せた男、なんてさー。
 また、これまでがんとして触ってこなかったまっつが、一度だけそんな真似をしたら、寿美礼サマがどんだけ驚くか、反応が見たいっす。

 まあ、まっつのヘタレっぷりはともかく。
 ジオ様は余裕でジェラールを口説く。

 なにがステキかって、ジオ様「オレが口説いてオチない奴はいない」と思い込んでるよね?
 最初からジェラールが自分のものになるって信じ切ってるよね? 疑ってないよね?
 この調子で生きてきたんだろうなあ。いいなあ(笑)。

 でもってここがさらに愉快なのは、ジェラールが快く了承したのは、ジオラモの誘いだけだということ。

 「仲間を紹介しよう」とジオ様がリシャール他をひとりずつ部屋に入れるわけだが、ジェラールはそれを喜ばない。
 マフィアのボスや刑事という「仲間」にすればお得な人たちが紹介されているっつーに、頼もしい顔をしないのね。
 むしろ憮然としている。極めつけはモーリス@壮くん登場、反感を皮肉にこめて表現しちゃう。

 ねえねえこれってさ、最初のわたしの「ジオ様に誘われちゃった(はぁと)、ホテルだよスイートだよ、どーしよー。なに着て行こうかしらっ!!」のわくわくぶりと重ならないか?
 クラウディアは女だから対象外として、男として誘われたのはオレひとり♪と思ってホテルに出向いて。
 案の定「ずっと前からキミのことを見ていたんだ。キミが必要だ。私と共に生きてくれ」てな甘い言葉で口説かれて「はい、末永くヨロシクお願いします。ぽっ」てな展開になってだよ?
 「じゃあ仲間を紹介しよう」ってナニ?! ジオ様とふたりっきりぢゃないのかよ?!(クラウディア、アウト・オブ眼中)
 リシャール@はっちさん、ペラン警部@星原先輩ときて、「げ、おっさんばっか。……若さでオレの勝ち?」と思っているところへ、キラキラ美青年笑顔でモーリス登場。ジェラール不機嫌絶好調!!
 なんつーか、王子様にプロポーズされ、舞い上がってOKしたら「妻たちを紹介しよう。キミは4番目の妻だ」と言われたような展開ぢゃね?(微妙に『有閑倶楽部』ネタ)
 ……え、チガウ?

 なんにせよ、グラスが最初からあれだけ用意してあるのに、ジェラールは他の連中が登場すると驚くし、誘いを快諾するのがジオ様単体のときだけなの。
 ふふふ。

 つーことで、まだ続く〜〜。


 今さらこっそりと『アデュー・マルセイユ』のまっつ語りその3。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

「あなたたちがホテルの部屋から出てくるところを見たって人がいるのよ!」
 と、夫の浮気を責める妻のようで、ちょっとトキメキます、シモンの「お前たちが同じ部屋から出てくるのを見た」って台詞。

 ジェラールをジオラモに取られた! と、傷ついているシモンがツボです。リシャール云々は言い訳だよね? たしかにジオラモを紹介したのはオレだけど、まさかこんなことになるなんて……。
 夫の気を引きたくて離婚届を突きつける妻のようで、ちょっとトキメキます。破り捨ててくれると思ったのに、受け取るなんて……!!

 いやその。
 ジオラモとジェラールとシモンは、ちょっと昼メロちっくだな、と。
 ……え? そんなことない?

 ホテル・ネプチューンのジオラモの部屋にて、ジェラールが坐る長椅子を悪党たちが囲む一瞬が好き。最初は断ったグラスを、最終的には受け取ったジェラール。隣にはモーリス。近いよ距離!(笑)
 最後のキメは悪党たちがそれぞれの位置に散ってしまうので、椅子の周囲に集まるのはほんの一瞬。だけどそれぞれ個性を出した悪党たち(含むジェラール)が不敵で不遜ですげーかっこいい。
 『凍てついた明日』の2幕冒頭のソファの場面みたいでわくわくする。
 この椅子の周囲でキメにしてくれればいいのになー、イケコ。散ってしまうとふつうの終わり方になっちゃうよー。

 さて、ジオラモ@まっつの次の出番は、カーテン前のモーリス@壮くんの駄々っ子ソング。
 ここのジオ様のなにがステキかって、一生懸命駄々をこねているモーリスを口先でなだめつつ、一歩離れると「バカだこいつ」と頭の横で指をつんつんすること。
 クラウディア@としこさんに向かって、どんだけモーリスをバカにしているかさらりと表現。「アタマおかしいって」とやったあと、また「仲間」の顔をして説得ソングを歌ってしまうのが素晴らしい。

 ええもちろん、モーリスの肩を抱いて、頬をつつくのは、最高峰に愉快です。

 寿美礼サマのことはろくに触れないままなのに、壮くんのことはどんどん触れるよーになっているのがステキです。

 ジオラモ的には他の悪党ふたり、リシャール@はっちさん、ペラン@星原先輩のことは、それなりに認めているんだと思う。が、モーリスのことは完全にバカにしきっている。
 リシャールとペランが「目的」を歌うときはふつーなのに、モーリスが「父の意志を達成するんだ」と歌うときは鼻で笑う。
 私欲で集まった悪党たちなのに、モーリスひとり義憤ゆえと信じている、その矛盾、幼稚さ、責任転嫁っぷりを軽蔑しているのだろう。

 ジオラモさんはここでもグラス片手です。ほんとに好きなんやな。

 このそうそうたるメンバーの中で、まっつがどさくさにまぎれてセンターで歌っていたりするのを、ほんとーにすごいことだと思う。
 
 どさくさにまぎれてセンター、はこのあとにもあるわけで。
 アルテミス婦人同盟主催の舞踏会、そのダンス・コンテストにおいて。女の子たち@いちか、ののすみがコンテスト開始を高らかに宣言したあと。
 またしてもカーテンが上がると紗の向こうに、まっつととしこさんがいる。
 センター。
 ……退団するとしこさんへの配慮だと思うが、それにしてもまたまっつがドセンにいる、つーのは心臓に悪い。イケコありがとう、他ではありえないまっつ使い。

 このタンゴ場面はジオラモとクラウディアの湿度を堪能する。
 ベッタベタ。
 他のどのカップルよりも顔を近づけて踊っている。

 まっつほんと、ちっちゃいんだけどね。
 女性とほぼ同じ体格だからこそ、あれだけリアルに顔を近づけられるんだと思う。身長差あったら大変だもんなー、おでこくっつけて踊るの。
 いったん下手にはけていくときの無理矢理な密着ぶりがツボ。

 コンテストで優勝できるとは思ってなかったのか、自分たちが選ばれなくてもまったく気にしていない。いや、「ここは若い人たちに花を持たせようか」てなキモチなのかしら。
 踊り終わったあとはずーっと下手端。
 銃を抜く騒ぎになっても下手端。
 ここでのポイントは、クラウディアをかばうところ。
 ナニかあると、咄嗟に女をかばうのね。新公が特にかばっていなかったので、まっつジオ様ならではなんだろう。

 シモン@まとぶが銃を抜いて云々、とやりだし人々が騒然となったとき、ジオラモは、ジャケットの中に右手を入れている。
 ええ。彼もまた銃を持つ男であり、必要があれば凶器を使う準備と覚悟のある男である。

 ジャケットの中で銃を握るジオ様がかっこいいっす。
 むやみやたらと銃を出さないの。でも、服の中で握っているの。

 
 騒ぎの中ずーっと下手でモブに混ざっていたジオ様、次の舞台となる地下水道では上手に登場、しかしここでも気分はモブ。

 舞台中央でドラマが進み、モブの男たちがわいわい取り囲んでいる中に、どさくさまぎれに登場するので、オペラグラスでジェラールだけ見ている観客には「ジオラモ? 出てた? いつからいたの?」てなもんかもしれません。

 ここでは最初から銃を抜いて登場。クラウディアもくっついて来るが、彼女は武装しない。ジオラモさんが守ることが前提なのね。

 ジオ様の最後の見せ場は、言わずとしれた「弁護士を呼べ」。

 「イタリア人だからカンケーないね」とやった直後に「そのための国際警察だ!」とフィリップ@立さんに一喝され、態度急変。
 その虚勢と撤退の速さがお笑い一直線。

 ええ、ムラで観劇したウチいったい何回、わたしの周囲の見知らぬ観客たちがそこで吹き出していたことでしょう……遠い目。

 後半になるとさすがにみんなあまり笑わなくなっていたけど……たんにリピーターが増えたのかな。

 いや、ジオ様の演技もふてぶてしさを増していたので、小物っぷりお笑いっぷりは激減していたと思う。
 「弁護士を呼べ!」のひとことも、負け犬の遠吠えではなく「皮肉」に聞こえていたしな。含み笑いながら言っていたり。
 たぶん彼は裁かれることなく、権力や金に守られ、切り抜けられるんだろうな。それを見越しての含み笑いであり、皮肉なんだな。
 そう思える演技に変わっていった。

 
 ジオラモというキャラクタは、感情移入できるタイプではないので、好きだとはとても思えないが、「未涼亜希」という人を見る上ではとてもたのしかった。
 「笑えた」ということも大きいが……演じることで、成長していく様を見られたことがいちばんうれしかった。

 歌声もビジュアルも演技も。
 そして、いちばん感心したのは「声」だと思う。

 ジオラモは、声がチガウ。
 まっつの通常の男役声とは別の声なんだよね。
 わざとしわがれさせた、喉にこもらせたよーな声。歌も通常の語りも自在に巻き舌を入れる。
 なのに、発声は明瞭。口跡良く言葉が、歌詞が耳に入る。

 まっつって、いろんな声を持った人なんだ。
 通常のクリアな声も好きだけど、このわざとしわがれさせたイヤラシイ声も、すごく好き。
 あたしゃ元アニメヲタクだからさー、男には声で惚れるんだよー。声の振り幅の大きな人は、それだけでポイントアップ。

 外見は化粧や衣装でなんとでもなる。表情なども含め「視覚に対する演技」はわりと取り繕いやすいんだ。
 だが「聴覚に対する演技」は難しい。
 たとえ無表情でも台詞声に感情があれば演技は成り立つが、逆はめちゃくちゃになる。台詞棒読みがいちばん芝居を壊す。

 ジオラモさんはビジュアルその他でいろいろ話題を提供してくれたが、なによりその「声」の能力を最大級に表現してくれたことが、うれしい。
 まっつの声、好きだな。

 
 今さらこっそりと『ラブ・シンフォニー』のまっつ語りをしてみる。

 えー、テキストの元は10月中に書いたモノであって、ムラでの記憶でしかないし、ソレを加筆修正しつつブログに転記している今、すでに東宝公演も終了しているわけで。
 ここでナニを書いても「まっつのここを見てね!」にはならない……もう見られないんだもの。だからほんと、無意味もいいとこなんだけど、それでも書く。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

 『ラブ・シンフォニー』のまっつで、実はみょーに気になってしまうことがひとつある。

 まつださんはオープニングと最後のパレードで同じ衣装を着ている。
 ナニも考えずすべて上から順に割り振る中村Bなので、寿美礼サマ、まとぶ、壮くんとわかりやすく衣装のグレードを付けられている。みわっち・まっつはそれらに次ぐグレードのお衣装。
 襟に黒のアクセントがついた白燕尾。中のベストは黒。
 まっつは白燕尾が似合う人なので、この衣装は似合う。好き。

 ただ……。
 右襟がいつも、変ぢゃないですか?

 いつ見ても、ジャケットが右側だけ大きく開き、中のシャツというかベストというかが引っかかったような、微妙な着こなしになっている。
 ベストの肩ぐりのラインとかウエストのラインとか、ふつーは見えないだろうに右側だけ見える。
 いやその、別に気にならない程度だとは思うよ。大きく開き、てのは、左側と比べて、という意味で、見苦しいとか脱げそうとかいうほどではなくて。
 たんに、左右非対称である。それだけのこと。人間だから偏りがあるのは当然のことだと思う。
 ただ、一旦気になると、いつ見てもそうだから気になってしまって。

 そーゆー衣装なのかなと思ったが、みわっちをはじめ他の人たちは右だけはだけるなんてことはない。

 振付のせいなのかなあ?
 最後のパレードのときなんかは、羽根扇を左手で持っていても(つまり左手だけ動かしていても)、やっぱ右側だけがはだける。

 あの引っかかったようなめくれかけた襟や合わせの部分が気になって気になって、指でピッと引っ張って直してやりたいと、毎回じれじれしてました(笑)。
 やー、もー、かわいいー。(結局ソレか)

 
 板付きで登場のオープニングのわりに、まっつはライトがなかなか当たらなかったり、客席に背中を向けて寿美礼サマ見てたりで、顔をちゃんと見せてくれない。
 そしてよーやく前を見て踊ってくれたと思ったら、すぐにいなくなる。
 ……まあその、オサ様見たい気持ちとまっつ見たい気持ちとでせめぎ合うので、オサ様場面にまっつがいないと心穏やかになれる、というのはあるんだが。

 一旦下手にはけたまっつが再登場するのは、壮くんを中心にみわっちと3人で奥の階段から。
 オサ様、彩音ちゃん、まとぶんとわかりやすく「順番」にスター登場したオープニング。
 それに次いでトリオで歌いながらの登場。

 そこで、まっつの声を拾うのが楽しい。

 人間の耳って不思議だよねー。コーラスでも、聴きたい人の声を拾い上げてくれるもんねー。
 トリオの中からまっつの声を聞き分け、うっとりする(笑)。

 オープニングの振付は謎なんだが、この3人が舞台中央でガッツポーズをするのが三者三様でおかしい。
 みわさんのやる気溢れるポーズっぷりと、壮くんのちょっと異次元風味のサワヤカポーズと……薄幸オーラ漂う、ガッツ、という言葉となんともミスマッチなまっつと。
 3人揃うと、変。いやむしろ恋。(わけわからん・笑)

 そしてまた、オサ様が現れるとすれ違うよーにいなくなる3人……。

 なんでいなくなるかって、着替えのためですよね。
 スタンバイのためですよね。

 次の場面、「ラブ・ゲーム」のカードから出てくるギャンブラーたち。
 まっつが出てくるのはハートのAから。真ん中の左隣のカードをガン見だ。

 中央から壮くんが出て、右隣のカードからみわっちが出て、次にまっつが出る。

 この場面のまっつが、いちばん好きです。

 カードから気前よくどんどんスーツの男たちが出てきて、舞台びっしり大盤振る舞いに踊るアレです。銀橋では壮くんが「きーぽんきーぽん♪」歌ってます。

 モスグリーンのギャンブラー・スーツ姿の美しさと、まっつの不景気そうな顔がたまりません。
 あのクールっつーか辛気くささがいいんです。コスパ悪そうでそそるわー。

 でもって、まっつの背中が好きです。

 このカード背景場面にて、壁に貼り付いているときの背中が良いんです。
 薄いカラダが良いんです。作られた肩のラインが良いんです。

 この場面での壮くんの歌声も好き。壮くんいい声になったなあ。どんどん深みが出ていいわー。

 ムラではけっこー前方席でまっつのみガン見していたけど、目線をもらったことはナシ。
 が、もれなくみわさんに持って行かれる(笑)。

 あのマメさはなに? 絶対釣ってくれるよね? 目線来まくるよ、目を合わせてニヤッとかされるよ。うおおおまっつ〜〜。

 
 背景が開いて次の場面になると、まっつは下手に移動。さおたさん、みわっち、しゅん様と一緒。銀橋を渡り終わった壮くんは下手花道壁に貼り付いてる。
 まっつはいつも、さおたさんとナニか話している。なに話してるのかなあ。
 で、寿美礼サマが舞台中央に登場、ギャンブラーとしてカードのことを歌う。

 その歌詞に合わせて、まっつたち4人はカードを投げる仕草。出したカード(パントマイムだから実在しない)で勝敗が決まる。
 このへんはアドリブらしく、誰が勝つかはそのときでないとわからない。

 にしても、まっつ弱い。
 勝率低いだろ絶対。いちばん多く勝ったところを見たのはしゅん様。
 まっつが勝つとこは結局1回しか見ていない。

 1回だけ見た、勝利のまっつは、ものごっつーかわいかった。

 高速で万歳して、全開で笑ってるの。子どもみたいに。
 かかかかわいいー。
 高速キリキリまっつはツボだー。

 こんなにかわいいまっつが見られるなら、何回でも勝って下さいよ。勝つとこが見たいよ……と、オサ様から目を離してこの場面はずーっとまっつ見てたのにぃ。
 まっつ、弱い……。(肩を落とす)

 セクシー彩音登場で、まっつたちもライトの中へ、決められた振付の中へ戻っていく。
 ええ、辛気くさそうクールでセクシーなアンニュイまっつになって、彩音ちゃんに絡む。

 みわっちのキザりがあまりに濃いので目を奪われそうになりつつも、視界はまっつ固定だ、うおおお。

 彩音ちゃんをオサ様に取られてしまったあと、4人組はそれぞれ下手袖へはけていく。

 ええ、このときですよ。

 まっつが、さおたさんを抱くの。

 さおたさんはまっつの肩抱いて。互いに腰とか腕回して。
 とってもラヴく去っていく。

 なななななにやってんですかあんたらっ。

 と、初見では目が飛び出ました。
 毎回必ずやっていたので、すでに振付の類なのかもしれないけど……何故抱き合う。

 考えれば、カード場面でもさおたさんはまっつに触れて登場するし、このカード勝負の直前でもさおたさんは必ずまっつの肩に手を置いて静止する。

 中村B的に、まっつ×さおた? あ、逆も可。つか、Bに聞いてみたい……どっちですかって(笑)。

 芝居の方でも書いたけど、オサ様のことはろくに触れないまっつが、さおたさんとはこのスキンシップぶり……。
 目に楽しいっす。腐脳にオイシイっす。

 あれ、もう文字数ナイ……続く。


 瀬奈じゅんの美しさを、思い知る。

 初日に行ってきました、『A-“R”ex』

 チケット持ってなかったけど、行けばなんとかなるさと。や、オペラグラスも持ってなかったんだけど、オギーだし初日だし。チケット掲示板の手応えから、こりゃサバキはけっこー出るなと踏んで。

 びんぼーなので後方の安い席で観劇。
 肉眼でも出演者少ないし半分以上役者の区別つくし、前方席のチケットはすでに押さえてあるし。最初は後方でざーっとオギー体験しましょ。

 予備知識ナシ。
 タイトルとあさことかなみん、シビさんラストってことと、マチオ先輩が出ることしか、知らなかった。
 「半分以上役者の区別がつく」ってのは、出演者の発表があったときにそう思った、という記憶があるだけで、実際は誰が出るかわかっていないという(笑)。

 だから誰か出てくるたびに、「あ、この子出てるんだ」と新鮮な驚きでした。
 ええ、きりやんの登場にすら、驚いた。きりやん、出てたんだ!みたいな。

 正直、あさこでオギーがナニやるんだろう、と思っていた。
 あさこちゃんはオギー世界の住人ではないよなぁ、と。
 かなみちゃんときりやんは、「毒」や「闇」も演じられる人たちだから問題ないだろうけど、あさこちゃんはどうなるんだろう? と。

 まあ、太陽のワタル兄貴主役で作品書ける人だから、誰が主役でも良い仕事はするんだろうという安心感もあったけどな。

 しかし……。
 こうなるとは、思ってなかった。

 
 これは、タカラヅカではない。

 最初から、オギーの外部芝居のノリだった。今は亡きスパークヒップス系。

 タキさん、シビさんがまた、容赦なく実力を見せつける。
 かなみん、きりやんも安定した技術と華と「毒」を披露する。

 脇の子たちもまた、それぞれ役割に応じて「仕事」をしている。

 女の子たちはそれぞれ見せ場があってキャラがあってオイシイ。
 狂気の花嫁@りんかの美しさとヒビの入った透明さがこわい。

 まさきの華と実力、強さのある毒がまぶしい。

 だがソレは、「タカラヅカ」ではない。

 舞台構成も、衣装も、セットも、なにもかも「タカラヅカ」ではない。

 美しくない。
 キャラクタも、ストーリーも、美術も、画面も。

 どろどろと、おぞましい。

 これは、外部でタカラヅカOGを使ってやるべき芝居だ。
 その方が、さらに「活きた」と思う。

 だって。

 その「タカラヅカ」的でない世界の真ん中で、アレックス@瀬奈じゅんが、あまりにも「タカラヅカ」だからだ。

 「タカラヅカ」であることを否定した世界で、アレックスひとりが「タカラヅカ」なんだ。

 彼ひとりが場にも役にもそぐわない、世界観を無視した「タカラヅカ」な衣装を着る。
 彼ひとり、演技の質が違い、存在がチガウ。

 彼ひとりが、美しい。

 壮絶に。

 悲しくて。
 痛くて。

 あさこファンでなくてよかった、と思った。
 わたしなら、自分の贔屓がこんな痛々しい役を演じている様を見るのはつらい。

 最初から、なにもかも語られている。
 台詞の洪水。
 テーマもストーリーも、なにもかも言葉遊びのように皮肉のように風刺のように、なにもかも投げ出されている。

 アレクサンダーを演じる役者でもあるあさこは、最初から「世界」から突き放されている。
 彼は「主役」であり、「ナニを着ても良い」「なんでもいい」と烙印を押されている。

 彼がどうであれ、彼は「真ん中」に立ち、彼を中心に物語は進む。
 いや、進んでいるのは「世界」でしかなく、彼はそこに「在る」だけだ。

 ひとりだけ、きれいな衣装を着て。

 ぽつんと。

 ひとりぼっちで。

 同じ舞台にいるのに、彼だけが、別の世界にいる。

 彼が放つ、真っ白い光。
 現実ではない、美しすぎる光。

 その無意味さ、無力さが、かなしくて。つらくて。痛くて。

 なんでオギー、ここまでやる?
 あさこに対して、ここまでやっちゃうのかよ。

 外部で、卒業したばかりのヅカOGでやるべき芝居だ。
 本物の男性がいた方がいい。そして、アレックス役はヅカOGの男役が演じる。
 その方が、さらに世界観とアレックスの孤独が浮き彫りになっただろう。

 現役で見るのは、つらい。痛い。

 あさこがオギー世界の住人でないからこその扱いがまた、痛い。ソレを逆手にとって出来た作品だと、つまりあさこへのアテ書きだとこうなるのだということがまた、痛い。

 あさこがどれほど美しいか、これほど堪能できる作品はない。

 だけど、彼の美しさが、つらすぎる。

 
 ナニもかも「語りすぎ」な作品なんだけど、初日の組長の挨拶まで「語りすぎ」だったことには笑った。
 タキさん、「この作品の見方」を、説明してました。げげげ。あ、ありえねー。出演者が「この作品は、こんなふうに見るもんなんですよ」と例を出して解説するなんて。
 でもまあ、仕方ないわなあ。
 客席はぽかーんとしていて、幕間の他の客の会話を聞いていたけどみんな「わけわかんねー」「こんな芝居やりたいなら、どっか他でやってよ」系のことを言ってたしなー。
 オギーの芝居がわけわからんのはいつものことだが、それでも今までの作品は最低限「美しかった」からな。
 美しくもないんじゃ、そりゃ苦情も出るわ。
 だからこそ、タキさんが挨拶でわざわざ事細かに「解説」したんだな。
 や、あくまでも「挨拶」の範疇に収めていたけど、アレはまちがいなく「作品の見方」「解説」ですよ(笑)。
 

 あ、マチオ先輩はナレーターです。
 大仰な衣装で登場して、空気をぶっ壊して行きます。この作品の、大切な「癒し系」です(笑)。


 発売日なので、朝から梅田へ行きました。
 いつもの時間、いつもの電車。
 いつもの道を通って、できているだろう行列の最後尾を目指す。

 三番街の並びの最後尾といえば、総合案内所の横のムービング・ウォークがない通路。三番街プレイガイドをスタート地点として、ぐるりと回ってコインロッカー前あたりがわたし的いつもの並び位置。

 大劇もバウも、大体同じくらい。
 大劇場公演はムラでの発売が主だから、梅田に並ぶ人は多くない。バウはムラでの発売がないので、その分にぎわう。
 どちらにしろ最近は600人くらいが平均的かな。コインロッカー前が最後尾だと、それくらいの人数。

 ……2007-11-10の日記のコピペで悪いね。なにしろいつもの行動だから。

 ゆーひくんのときは、いつもの場所に最後尾がなかった。いつもの場所をはるか超えて、進めども進めども最後尾がなくて青ざめた。

 そして今回も。
 いつもの時間にいつもの場所に行ったのに、最後尾がなかった。
 つか。
 行列自体が、なかった。

 青ざめた。
 並びの日にち、まちがえた? そんなバカな。前日デイジーちゃんから並び要請来てる、今日で間違いない。

 あわてて、三番街プレイガイドの方へ向かった。

 そう。並んでいる人数が少なすぎて、いつもの場所まで列が伸びなかったんだ。
 よーやくたどり着いた最後尾、周囲の人たちが「人、少ないね」「少ないですね」とポツポツ話している。

 並んだ人数は、なんと約350人だった。

 通常600人ほどだから、半数強、ですか。どんだけ人気ないんだ、宙組。

 しかしわたしは内心ガッツポーズ。
 並んでいる人が少ない、つーことは、当たる確率が高い、とゆーことだ。
 アタリの数は同じなわけだからなっ。

 いちおートドファンの端くれ。最前列でトド様を見るぞっと。

 180番位までを引けば、日にちさえ選ばなければ1列目の隅っこで見られるぞ。2分の1以上の確率じゃん?
 苦手な石田作品だからとりあえず1枚だけ買って、あとの購入権利は宙組ファンのデイジーちゃんに譲って、と算段。

 はりきって抽選して。

 312番を引きました。

 350人中、312番て!
 フタ桁引くより難しいっつの!! どんだけくじ運ないんだわたし!!

「その台詞、前も聞きました」
 嘆くわたしに、kineさんはクールに言う。
 そうよ、いつものことよ。

 でもね、すごいのはここからよ。
 チケットの購入券は番号順に「9時」「10時」「11時」と時間が区切られている。
 並んだ人数が少ないから、9時と10時の購入時刻の人がほとんどで、11時の人はあまりいないわけ。
 312番のわたしは、もちろん11時。

 抽選を終えて、デイジーちゃんとCANちゃんのところへ行ったの。
 そしたらふたりも乾いた笑いと共に、見せるわけよ。11時の購入券を!!

 引く方が難しいカス番号を、3人揃って引いたのよ?
 どんな確率ソレって??

「買うなってことですかね、コレは」
「今日はもう帰れってことよね」

 つーことで、3人揃っていつもの店で朝ごはんして、解散しました。

「朝ごはん食べるために来たのよね、あたしたち」
「そうよね」
 と、慰め合いながら。

 今日は星組千秋楽でもある。ゆーひくんバウの初日でもある。
 星楽とゆひバウ初日チケット、両方手に入れていたわたしは、本気で悩んださ。どちらを観るか。
 なんでズラしてくんないんだよバカ劇団め。

 1時から『エル・アルコン』観て、ラストシーンをあきらめてバウへ直行、2時半から『ハリラバ』を観る。バウは大体1時間ほどだから、3時半過ぎには1幕が終わる。大劇2幕は3時過ぎから開始だから、ショーははじまってるけど草野ショーだし、ここはあきらめることにして、ショーが終わるのは4時過ぎか。とにかく退団者の挨拶にさえ間に合えばいいわけで……ああっ、これじゃダメだ、ゆーひくんの2幕が観られないっ。バウ2幕は4時くらいからはじまるっつの!

 や、最初から最後まで、きちんと観たいのは当然で、キャストと他観客への礼儀だともわかっておりますが、どちらも選びがたくて、本気で悩んだのですよ。
 星楽は立ち見だったので、途中退場可能だったしな。どーせわたし、後ろの壁にもたれて観るから、手すりにはいないし。誰かの視界を遮ることなく退場できる。
 バウはもちろん座席だから、途中の入退場はできないと思っていた。星の退団者挨拶を聞いたあと、バウの2幕途中から入場はできない。

 つーことで、断腸の思いでバウチケを手放す。しくしくしく。
 ゆーひくんの初日は観たくて観たくて観たくてあきらめきれずにかなしくてくやしくて仕方ないのだけど、それでもっ、星の退団者を見送る方がわたしには重要だったのですよ。

 で、退団者を見送るためにいつもならしない出待ちまでして。
 ひとりならまずしないが、kineさんたちと一緒だったから、そのまま現役の出までなんとなく見送って。

 早朝から夜まで、いったい何時間立ち通しだっただろう……。
 ちょっと考えたくない。

 トシなので、腰にきましたよ、ヨボヨボ。

 次は、寿美礼サマなんだな、と思って覚悟して、その日もまた早朝から夜まで、こうやって立ちつくすんだなと思ってみたりで、イロイロイロイロつらかったり悲しかったり。

 冬の別れは染み入るね。
 心もだが、カラダにも過酷だね。

 あと1週間強か。

 
 この日のムラは、宙並び、星楽、ゆひバウ初日と、朝から晩まですごい人口密度でした。
 並びは見てないけど、きっと宙ファンだけでなくたくさんの人たちが押しかけて来ていたのだろうし、退団者のいる星楽がすごいことになっているのも当然、また、人気のゆーひくんの初日だから、バウの出待ちもそりゃーすげえ人だった。
 すっかり陽の暮れたムラに、シルエットがいっぱい。

 タカラヅカって、すごいところだ。


 誰を見るのか。見送るのか。
 ソレは正直、そのときになってみないとわからないもんだ。

 星組千秋楽。『エル・アルコン−鷹−』『レビュー・オルキス―蘭の星―』

 退団者、ということでなりふり構わず見つめていたのは、南海まりちゃんだった。

 みなみちゃんは、特別だった。
 その娘役らしい美しさと気品、昨今めずらしい姫役者であること、たしかな実力と華やかさ……それらすべてが好感だったし、ダイスキだったけれど。

 これが最後……そう思って見つめると、思い出されるのは「あのころ」の記憶なんだ。

 『ドルチェ・ヴィータ!』のデュエット・ダンス。
 そして、『Good Bye,Good Guy,Good Fellow』のすべて。とくに、「夜のボート」。

 わたしのシシィが、いってしまうんだ。

 そう思うと、悲しいというよりどーんと胸の中が重くなる。なにか他のものが詰まってしまったかのように。

 シグリット@みなみちゃんは、コケティッシュさが増していて、その賢しさが「うっとうしい女」であり、肉体と狡賢さを武器にのし上がってきた女のしたたかさを感じさせて、ぞくぞくした。
 すっげーヤな女なんだもの!! でも、すっげーかわいい女なんだもの!!
 キライだけどスキ。そんな、魔性の女、小悪魔。くうぅぅ、この女相手なら、そりゃーどんな男もオチるわ。そして、オチないティリアンのオトコマエが上がるってもんだわ。

 ショーでは、最初の白い服で蘭をくわえている場面……鳩なんですかアレって?のところで、すでに退団者たちは胸に花を付けていて、ずきりとさせてくれた。
 なんかイメージ的に、花を付けるのは後半、と思っていたから。
 最初から来るとは思ってなくて、はっとした。

 みなみちゃんの端正な姿を、目で追っていた。

 その長いおみ足も、堪能しましたよ。歌声と共に。

 袴姿での挨拶時、みなみちゃんのパールの入ったアイメイクに、意味もなく見入っていた。
 ああ、きらきらしているなあ。
 瞳がきらきらしていて、目の周りもきらきらしていて。
 特に目の下にまろやかな艶があることに、注目していた。

 涙ではなく、でも、しっとりと濡れているような。

 きれいなきれいな、笑顔なのだけど。

 どこか濡れているように見えて。
 濡れて見えるのは、わたしの目が濡れているせいなのかもしれないけれど。

 
 とくに誰を見るとか、決めていたわけじゃない。意識していたわけじゃない。
 ゆかりくんだってダイスキだし、退団しないからといって他の人を見ないですむわけでもない。トウコちゃん見てあすかちゃん見て、でもって今すげーブーム(笑)なしいちゃんを見て「はうっ」とときめいて(笑)。

 それでもなんか、要所要所でオペラがみなみちゃんを探しだし、喪失感に浸っている。

 わたしの、しあわせの記憶。

 ほんとうに、いい娘役さんだった。

 しあわせでいてほしい。ずっと。ずっと。

 他の退団者のみんなも。これからも花園に残り、戦い続ける人たちも。
 みんなみんな、しあわせで。
 

 ……さびしくてたまらないカーテンコール、退団者を眺め、トウコちゃんを眺め……で、しいちゃんの太陽の笑顔を見て、癒される。

 や、ほんとにクるよ、あの人の笑顔。
 どーんっと飛び込んでくる。
 胸の中の重いモノが、一気に流される。

 『Good Bye,Good Guy,Good Fellow』のときも、そうだったな。
 客席にいたジェンヌはゆうひくんも含めダダ泣きしていたというのに。トウコちゃんとか顔ぐちゃぐちゃにしていたというのに。

 しいちゃんは、笑顔だった。

 彼が泣いていなかったとかゆーことではなくて。
 ただ彼は、ディナーショーが終わって退出するとき、いつものあの大輪の笑顔だった、ということ。

 そしてそのことが、救いだったということ。

 理屈ではなく、癒された。
 あたたかいものに、ひとのこころは救われるんだ。

 
 そんなことを、思い出した。


 忘れちゃいそうだから、とにかくおぼえていることを書き残しておく、『エル・アルコン−鷹−』『レビュー・オルキス―蘭の星―』。今までの観劇時の記憶、思いつくままに、順不同。
 

 いついかなるときも、ゆーほさとるが、わたしの視界の中央にいる件。

 何故なんだ。場面変わってモブだ群衆だ群舞だイエーッ! てなときに、いちばん最初に目に飛び込んでくるのは、いつだってゆーほだ。芝居だろうとショーだろうと。しかも、わたしの真正面にいる。……いやそのわたし、センター坐ったことないから。
 今この瞬間、彼と見つめ合ってる?!(赤面) てな錯覚に陥る出会いばかり。
 あああ、ゆーほよ何故。
 

 最初はそんなことなかったのに、新公後はともみんに気を取られるよーになった。
 いつもの最前列下手端に今回2回坐ったんだけど、ここってとってもともみん席でもある。芝居もショーも、ともみんが何度も目の前に来る。
 1回目は「ふーん、ともみんか」でしかなかったのに、新公後の2回目に坐ったときは……どうしよう、ともみんばっか見てるよわたし!!
 ティリアン効果おそるべし! 新公ティリアンかっこよかったよー。ハートフルでパッショネイトで、かわいいティリアンだったよぉ。それってぜんぜん「ティリアン」ぢゃないけど、要は魅力的な男だったから無問題、ソレでよし。
 しかし極楽鳥んときのともみんの脚の長さは驚異ですわ。いやぁ、ボンバーだ。
 
 
 そのいつもの最前列下手端にて、友人のBe-Puちゃんと並んで観劇したとき。
「あー、おもしろかった」
 と、ショーの幕が下りるなりBe-Puちゃんはしみじみと言い……続けて、こう言った。

「こあらったさんが、いちばんおもしろかった」

 なにを言い出すんだMyフレンド。

「こあらったさん、ジェンヌに目線もらうたび、『はうッ!』ってなってんだもの。横ですっごく反応してるのわかるから、おもしろくておもしろくて。
 『1はうッ』千円として、『7はうッ』はしてたから、チケット代の元は取れたね(笑)。
 とくにしいちゃんに目線もらったとき、飛び上がって『はうッ』ってなってなかった?」

 ……バレてる。バレまくってますよ、どうしよう!

 しいちゃんはね、銀橋から花道へ出るときに、まず、目があって、そこでわたしは十分「はうッ」ってなってたのに、わたしが反応したのを見て、にーーっこり笑いかけたんですよあの人! しいちゃんですよ?! あの太陽の笑顔ですよ?! あの大きな目で、口で、表情で、わたしに、笑いかけたんですよおーっ。ななななんてことするんですか、わたしを殺す気ですか?!!
 ぜえはあ。
 しいちゃんがいってしまったあとも、わたしがしばらく椅子に沈み込んでぜえはあしていたのを、「基本トウコちゃんしか見ません」な顔してBE-PUちゃんたらしっかり見てたのよ! やーねー、もー。

 次はBe-Puちゃんと一緒だったのは千秋楽だったんだけど、そこで会った他の友人たちにもわたしの「はうッ」ぶりを語り出すしな……ええいっ、放っておいてくれ〜〜。

 そのしいちゃんはすずみんとふたりで、千秋楽にクリスマスなとんがり帽子をかぶって現れ、そのかわいらしさで客席をわかせてくれました。
 しいちゃんととんがり帽子というと、『SAY IT AGAIN』を思い出すんだけど……あんときはかっこよかったなあ……ステキに攻キャラでさ……あ、今も攻だと思ってるけど、ヘタレ攻にジョブチェンジしてるからなぁ(笑)。

 で、そのとんがり帽子な千秋楽。曲の終わりに帽子を取ると、アタマの上には蘭の花。しいちゃんは成功したが、すずみんの花は落ちちゃった。残念。
 や、脳天に花載せてるしいちゃんもかわいいんだが、その仕込みをしている姿を想像する方が、かわいくて萌える……しいすずで互いにアタマに花を載せっこしたのかしら。絶対ふたりで確認してるよね、花載せた姿で。
 かわいい……かわいすぎる……。

 
 やはりBe-Puちゃんと観に行ったときのこと。
 クリスマスカード・プレゼントの抽選だっけかをやっていて、わたしはいそいそとあかしの名前に○を付けていた。トウコに○つけて意気揚々なBe-Puちゃんは「誰それ」。
「利助」
「……誰」
「だから利助、『厳流』のときのケロ武蔵の弟分で色気のカケラもなかった小うるさいガキで……」
「あたし、こあらったさんと違って『厳流』3回くらいしか観てないから、おぼえてない」
「3回観てたら十分だろ」
 あのチケ難公演で、会にも友会にも入らずそんだけ観てたら大したもんだ。

 てな会話のあと、芝居が終わって幕間。

「……わかったわ、こあらったさんが言ってた子。顔見たらわかった」
「かっこよかったでしょう?」
「空気読まずにアツ過ぎる演技する子よね、上手ですごいことになっていた、あのエチオピア人」
 キミのあかしインプリンティングは、『王家に捧ぐ歌』、しかも中日公演かよっ?!(笑)
「かっこよかったでしょ? 美形でしょ?」
「……こあらったさんが好きな子だってことはわかった」
「だから、ステキでしょ?」
「こあらったさんの好みだってことはわかった」

 意地でも、誉めないな、こいつ(笑)。

 えんえん実のない攻防を繰り返し、ショーになり。
 わたしがいろーんなスターさんそっちのけで下手端にいるあかしにかまってもらい、舞い上がっている様をつぶさに目撃される結果となる……。

 でもさでもさ、あかし、かっこいいよねっ? 美形だよねっ?
 利助のくせにさっ。利助だったのにさっ。

 ……あかしのクリスマスカードは、当たりませんでした……くすん。
 

「千秋楽のジジババに期待よっ、今からなにするか考えてるってトウコちゃんお茶会で言ってたから!」
 と、トウコファンの友人がすげー熱量で会うたびに語っていた。
 ので、千秋楽の『レビュー・オルキス―蘭の星―』にて、心構えはしていたんだけど。

 トウコちゃんとあすかちゃんのジジババが登場しても、わたしはすっかり油断していた。なにかするとしたら、あの悪趣味なゴンドラを降りてからだろうと思っていたから。

 ところが、周囲に五月雨のように笑いと息をのむ気配が広がっている。ちなみに、千秋楽のわたしは立ち見だ。肉眼ではなにが起こっているのかわからない。
 だってジジババはなにをするでもなく、ゴンドラに乗っているだけっしょ?

 あわててオペラグラスをのぞいた。そこには衣装も髪型もいつと同じなふたりが……同じ……な、ふたり……が……?

 ??!

 ジジババが、逆になってる!!

 トウコばあさんに、あすかじいさんになってる! なにそれぇ〜〜!(笑)

 トウコじいさんは、かわいらしく首を振り振りかわいらしい声で歌っている。ゴンドラから降りたあともかわいこちゃんぶり続行。ばあさんだけどヲトメ。ぶりぶりにかわいこぶりっこ。

 ヒゲでうまったあすかちゃんの声はほとんど聞こえない。そんなじいさんをリードして歌声では置き去りにして、ばあさん絶好調。
 ずけえよヲイ!

 芸人魂を見た。

 
 そんなこんな。

 
 たかちゃんキタ〜〜っ!!

 『茶々 天涯の貴妃』試写会行ってきました。

 や、今日は午前午後とゆーひくんの『HOLLYWOOD LOVER』Wヘッダーして、それから『茶々 天涯の貴妃』試写会。宝塚から、大阪のリサイタルホールまで駆けつけましたよ。びんぼーなので阪急使って。梅田駅から20分でリサイタルホールまで踏破したぞ。帰宅ラッシュの波を逆走するのは消耗した……。(お金のある人は、宝塚からJRで北新地駅に行きましょう。もしくは西梅田から1駅だけ地下鉄に乗り、肥後橋駅で降りましょう)
 なんのなんの、同じようにゆひバウWしたあと、『A-“R”ex』を観に行ったnanakoさん(しかもサバキ待ち)にはかないませんとも(笑)。

 試写会告知時になんの予告もなかったけれど、試写会前の解説にて、「上映後に出演者の舞台挨拶があります」と言われ……出演者つったらふつー主演が来るじゃん? 以前同会場へ試写会見に来たとき、主演女優の長澤まさみちゃんとかも挨拶来てたし! リサイタルホールだから、舞台あるし! でもって、舞台があるからその分スクリーンが遠いので、前寄りの席に坐ってるしあたし! しかも、観劇帰りだからオペラグラス持ってるし!!

 たかちゃんが来るってみんな知ってたのかなあ。そのわりにヅカファンらしき人は少なかった。
 なにしろスポニチと競艇主催の試写会だからなあ……おじさん率おじーさん率高い。スポニチで試写会告知見たとき「この客層相手にこれだけの人数のご招待記事出しても、応募者少ないぞ? ハガキ出したら絶対当たるな」と思って1枚応募、当たる気満々行く気満々で予定を空けて当選通知を待っていた(笑)。

 まさか、主演女優と監督の舞台挨拶付きだとは思ってなかった。
 わーいわーい。

 て、ゆーか。

 はじめての、ナマたかちゃんなの。

 あの日。
 2006年7月2日。

 美しい美しいたかちゃんを、東宝前で見送ってから、はじめての逢瀬。
 コンサートもなにも、観てないし。FC入ってるわけじゃないから、イベントとか知らないし。

 1年半ぶりに会うたかちゃんは……ええっと。

 セミロングの茶髪に、黒のレギンスにピンヒール、黒のミニスカ……もしくはチュニックかな? 黒と茶でまとめているわりには「びみょー……」なファッション。
 もちろん、並び立つ監督より背が高かった(笑)。

 ありきたりな挨拶の他、テンション高い司会者さんがいろいろ話を振るんだが、たかちゃんの喋りは、ええっと、その。

 相変わらず、アタマ悪そう……。
 たかちゃん、変わってない。わーい。(←うれしいらしい・笑)

 すぐに場がしーんとしてね。会話が続かなくてね。司会者の質問の意図を、ぜんぜん酌んでいない返答したりね。
 いやあ、たかちゃんだわ。すっごくたかちゃんだわー(笑)。

 場が冷めているのを察してか、司会者さんが「大阪出身の和央さん」としきりに水を向けているのに、大阪弁で話したりしないしね。地元ならではのこととか言わないしね。

 そこはべったべたな大阪弁を披露するところだろう!! なにか地元ネタでも披露して「こんなに大阪人です」とアピールするところだろう!! と、じれじれした。
 客席にいるほとんどは「誰この人?」状態の大阪のおっちゃんたちなんだから、「大阪の女の子」をアピールすれば親近感持ってもらえるのにー。

 てゆーかこのトーク、台本ないんか……。
 司会者がなにか言うたび、たかちゃんが詰まるのが気になった。

 「タダだから見に来た」だけのおっちゃんおばちゃんたちに、たかちゃんのことを、好きになってもらいたい。好意を持ってもらいたい。
 そう思いながら客席にいる身としては、はらはらし通しでした。や、わたしが気をもんでも仕方ないんだが。

 男役時代のかっこいいたかちゃんは、そのままヅカファン以外の人にも「かっこいい」と思ってもらえる人だと思うから、服装も「かっこいい」系で来てくれた方がよかったかなぁ、とか。
 しかしびみょーだ……あの服装、あの髪型(笑)。

 や、トークがぐだぐだでも、服装ビミョンでも、とにかくたかちゃんに会えたのがうれしかった。
 うれしかった。
 もー、すげーうれしかった。

 
 で、問題の映画『茶々 天涯の貴妃』は。

 おもしろかった。

 意外。

 いやその。

 ゆりちゃんの例を知っているからさ。
 当時ものすげー人気で、ものすげー鳴り物入りで芸能界入りした天海祐希が、当初どんなへっぽこ映画でコケまくっていたか、刷り込まれているから。
 『MISTY』とか、ひどかったなー……。ガラガラの映画館で、ツレとふたりぽつんと見たなー。わざわざポスカ付き前売り券とか買って、見に行ったんだよ、ヅカファンとして。

 女優としては素人で、世間的知名度ゼロなヅカの男役をいきなり主役に使っての時代劇映画ときた。
 こりゃ絶対つまんないぞ、と。
 わざわざ史実無視の男装シーンまででっちあげての「ヅカファン動員」目当て。『千年の恋 ひかる源氏物語』くらいつまんなくてどーしよーもないものにちがいない。

 と、思い込んでいたので。(つかオレ、天海の映画けっこー見てるんだ……女優・天海祐希は好きよん)

 ふつうに、映画として、エンタメとしておもしろいので、おどろいた。

 茶々という女性がどーゆー人で、どんな人生をたどったのかは、ふつーに知っている。……て、みんな知ってるよな?
 信長の妹・お市の方の娘で、秀吉の側室で、秀頼の母で、淀殿で、大坂城で息子と共に果てる人。
 原作は読んだことナイ。わたしの戦国時代知識は司馬遼太郎に偏っている。司馬遼の淀殿はあんましいいイメージないっす……。

 その、よく知る女性の一代記を、エンタメとして気持ちよく再構築してくれた。
 現代女性が感情移入できるカタチで。

 秀吉@渡部篤郎がイイ。

 かわいい。
 秀吉は茶々よりはるかに年上の、権力尽くで彼女を手に入れる男なのだけど、設定だけ見るとひでー男なんだけど、この物語の中では十分魅力的なの。
 欠点はいろいろあれど、「恋」できる相手なの。
 この男を抱きしめ、この男の夢を、子どもを、守って生きていこうと思えるくらいの。

 やっぱ秀吉を愛せないと、はじまらないよなー。
 秀吉が愛すべき男だから、それだけでもたのしい。

 たかちゃんファンとしては、かなり安心して見られると思う。

 だって、男役時代と、違和感ないんだもんよ。

 でかいよ茶々、でかいよ(笑)。

 ときどき鴨居よりでかくてびびる(笑)。
 秀吉よりでかく見えてびびる(笑)。

 立ち居振る舞いもだが、なにより声が男役のままだ。
 ふつーの声はがんばってたおやかにしているが、高ぶるとまんま男役。いつものたかこ。
 男装してなくても、違和感なし。男装するとさらに、いつものたかこ。

 そして、「茶々だしな。ベッドシーンと、出産シーンは、絶対あるよな」と、おびえていたんだが。

 女になったたかちゃん、までは許容範囲だが、上記ふたつだけは、かなり抵抗ある。ぶっちゃけ、見たくない。

 大丈夫。
 どっちもなかった。

 それどころか、キスシーンもなかった……(笑)。
 すげーストイックに寄り添ったり抱きしめたり程度で、「儂の子を産んでくれ」(プロポーズの言葉)のわりに、性を感じさせる場面はナシ。
 ただ、別々の布団に並んで寝ている場面は何度も出てくる(笑)。

 豪華絢爛……を謳うわりに、女優陣はあまりキラキラしてない、いぶし銀オンパレード。つか、みんな年齢層高すぎないか……? もう少し若くてキラキラした子をそろえてもよかったんぢゃあ……? たかちゃんの年齢に合わせた?
 ええ、ぶっちゃけたかちゃんもあまり美しくないし。舞台では誰より美しいと思っているが、スクリーンではびみょー。なんつーか、地味な、映えない顔立ちだなぁ。
 ちゃんとしたエンタメ映画だったので、映画クオリティ的にはたかちゃんではなく、もっと美人のスクリーン向け女優使った方がよかったのでは? とか、思ってしまう。

 でもわたしはたかちゃんファンだから、ふつーにおもしろい映画に、たかちゃんが主演として出てくれるのはうれしい。……一般人の反応はわからんが。


 今さらこっそりと『ラブ・シンフォニー』のまっつ語りをしてみる、その2。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

 クールなまっつはコストパフォーマンス悪そうな、辛気くさそうな、気怠いっちゅーか不幸そうっちゅーか、ステキな雰囲気を持っている。
 が、ホットなまっつは一転してくすぐったいっちゅーか、いたたまれないっちゅーか、こまったなヲイ、てな、これまたステキな雰囲気を醸し出す。
 ……どっちにしろステキってゆーてるだけのよーな気もするが、気にしないように。

 ぴんくなまとぶさんたちがセリ下がっていくのと反対に、中央をせり上がってくる美女ひとり。
 パイナポーな彩音ちゃんだ!!
 彼女の両脇に躍り出る、テンション高いお祭り野郎ども! みわっちとまっつだ!! ……え。

 みわっちはわかる。ハイテンションはまかせとけ!なホットでスェクスィイイなあんちゃんだ。しかし、まっつは……。

 まっつのキャラクタと正反対っ!な、お祭り野郎まっつ! 白いスーツに緑のテロテロ開襟シャツ!

 あのー。
 まっつの開襟シャツ姿って、なんかすげー新鮮なんですが。
 あんまし胸開けてるイメージないから。
 まっつは第一ボタンまで留めてネクタイきゅっと締めてるイメージだな。肌を見せるなんてとんでもない、お婿にいけなくなっちゃうわ的というか、ええっと。(まちがってます)

 基本1階席でしか見ていないので、回数は少ないんだが2階で見たとき、必死になってのぞき込んだんだが胸元はがっちりガードされてました。開けている部分以外見えない。……や、開襟シャツならのぞき込むのが人の常だろう! ゆーひくんとか、中を見せてくれる気前のいい男前だっているんだし!(まちがってます)

 本舞台で彩音ちゃんに絡んで踊っているときはまだいい。あくまでも、彼女相手にキザっているわけだから。

 銀橋に出てきてからですな。
 いたたまれなさMAX! に、なるのは(笑)。

 こっから先の振付がすごい。
 腰振り、腰回し、ホットホットホット! あちちあち。

 ……恥ずかしい。
 
 高温なまっつがなんか、恥ずかしいです。正視できません。ガン見してます。(まちがってます)

 ちょうちょなオサ様登場に合わせて一旦はけたあと、あの「太股上げ降ろしダンス」(ナニその表現)を踊るオサ様に加わるカタチでまとぶん、壮くんと登場し、ついにはまっつもみんなと一緒にわらわら現れる。

 帽子があるときはまだいいんだがな。
 彩音ちゃん率いる美女連合に場を譲って一旦下手に寄ったあと、それぞれが帽子を袖へ飛ばし、また中央に戻ることになるわけだが。

 まっつは寿美礼サマと一緒にいてくれるので、ひとつのフレームに収めやすくて助かる。なにをするでもなくセクスィなオサ様と、黄昏れてるまっつを心ゆくまでガン見。
 でもね、寿美礼サマが帽子を取り、続いてまっつが帽子を取る……様をぼーっと見ていちゃダメよ、まっつを見届けたらすぐにオサ様の開襟プレイを見なきゃ!!

 オサ様は帽子を袖へ放り投げたあと、何故か胸をはだけるから。
 なんでかわかんないけど、サービスしてくれるから。

 自分の胸元へ手をやり、シャツをくつろげるオサ様ガン見。あああありがとうございます、寿命がのびます。(まちがってます)

 オサ様と彩音ちゃんのダンスのあと、端っこにいたまっつたちもわーっと戻ってきて総踊り、帽子無し。

 さあ、全開で恥ずかしいです。

 テンション高いです、温度高いです。唇引き結んで、エロく腰回してます。
 らしくもない開襟シャツです。白いジャケットには謎なちょーちょついてます。

 ここで注意。
 まっつを見るのはいいが、大伴さんは視界に入れないようにしましょう。なんかひとりだけ別の振付で踊ってらっしゃるので、視界にうっかり入ると、目を奪われてしまいます。マジで危険だ、みおさん。

 まっつは笑わない。まっつだけでなく周囲の人誰も笑わない。真剣勝負にエロエロしている。そんななか、みおさんひとり、全開の笑顔だ。……や、だからそこで視界を奪われちゃダメだってばっ。がんばれわたしっ。

 まっつをはじめ、みおさん以外の人が笑顔になるのは、オサ様が途中退場し、オトコマエだぜラテン男@まとぶが「ハァーーッ!!」と叫んだあと。

 こっから先は無礼講。みんな笑顔全開、振りもちょっと(かなり?)自由にバラバラになる。
 赤ジャケットオサ様登場で、祭りは最高潮に。

 オサ様の銀橋大暴れは、途中からエアギターがなくなって寂しかったわ。でも「キンバラさ〜〜ん!」があるからヨシ。

 全開笑顔まっつの腰振り&腰回し、恥ずかしい〜〜っ!!(笑)

 温度高いよまっつ、テンション高いよまっつ。
 アツいまっつってなんでこんな恥ずかしいんだろう。いたたまれないんだろう。

 でもわたし、銀橋から本舞台に戻ったあとのまっつがのりのりでくるりと一回転するのが、すごーく好きだ。

 まわるまっつ。
 大口開けて笑いながら、腕を振り上げ腰でリズムを刻みながら、くるりと回るまっつ。

 最初に見たときは「アドリブ? 回っちゃうくらいハイテンション?!」とびびったが、よく見ると隣でめおちゃんも同じように時間差で回っているので、振付だと思う。
 しかし、かなり自由に踊っている場面なので、まわるまっつは新鮮というか見慣れないというか……微妙?(笑)

 いいなあ、かわいいなあ。

 ラテンまっつは、いたたまれなくて好きだ〜〜。

 
 そーして次がスパニッシュ。
 ありえないことにひとりで下手花道登場、ひとりでひとしきり踊って、本舞台に来て独唱ときたもんだ。

 まっつがそんな扱いしてもらえるはずがないと信じ切っていた初日の混乱は、すごかったです。や、わたし的に。

 まっつの歌で寿美礼サマはじめ、組子のみんなが踊り、まっつ自身踊る寿美礼サマに一瞬絡むことになるという、奇跡の場面。

 いかなる場合もここではまっつガン見、どこからでもオペラでピン撮りっす。おかげで他の人たちがどーゆーことになっているのかさーっぱりわかりません。や、中央のことはどーせDVDその他でフォローできるし。でも、「まっつアングル」は存在しないから、ナマで見届けなくちゃ!!

 ……てことで、続く。


 今さらこっそりと『ラブ・シンフォニー』のまっつ語りをしてみる、その3。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

 はい、スパニッシュです、まっつがなんかありがたいことになってます。

 下手花道で踊るまっつは、端正です。
 わたしはダンスの善し悪しはさっぱりわからんのですが、まっつの動きはなんかおぼえました。手の表情に特徴ある。
 大きくない踊り方。外へ向かうのではなく、確実に踊ることを念頭に置いたような。

 歌声は回数を重ねるごとに豊かさを増し、ついでに顔の表情が大きくなった。

 うっとりしてます。
 まっつ的キメ顔してます。

 表情ひとつひとつも、すげー作り込んでいる。計算している。指先の動きとか計算しているよーに。
 ラフに流すとか、感情にまかせるとか、そーゆーことがまったくない、すげー気張った姿。

 うっとりしたナルシーまっつが、なんかちと恥ずかしいです。背中がむずむずします。
 自分で自分を抱きしめる振りとか、アンニュイうっとりなままでやるので、さらにステキです。

 
 最後の場面は黒燕尾、まずは大階段に登場。
 まつださんの黒燕尾姿は、残念だが華やかではまったくない。衣装にきらきらがついてないからとか、そーゆー意味ではなくて。
 でも空気の緊張と、小細工ナシの「男役」としの技術が気持ちいい。
 それにしても髪型変わらないなあ、ショー全体通して……とか、ラスト場面だからこその感想を飲み込みつつ(や、多少は変わっているのよ、でも全部印象が同じっちゅーかええっと、ゲフンゲフン)、その端正さを堪能する。
 中村Bだから立ち位置は上から順番、探すまでもない(笑)。

 寿美礼サマがセリ下がったあと、後ろを向いて汗を指で拭くのは身だしなみ、歩きながら髪を撫でつけるのはかっこつけ、まとぶさんのドスの聞いた歌声に続き、みわっちとふたりで歌う、太い低音が好き。ときどきみわさんの声をかき消す勢いで声が響いているのを聴いては「ヲイヲイ(笑)」と思う。

 まっつが笑顔になるのは、デュエットダンスになってから。
 ひーさんとのダンスでは、とてもくだけた自然な笑い方をする。だからそれまでの大人っぽさ(落ち着き?)から、年相応の男の子になる感じ。
 パートナーの女の子の、顔やダンスの表情ひとつひとつに反応する、ご機嫌なあんちゃん。ひとりだけに向けられる「キミと踊れてたのしい!」オーラが心地いい。そのくせ、途中男役だけで一列に並ぶところでは、途端にかっこつけて客席に対していい男ぶっているのがいい(笑)。

 
 パレードはまさかのセンターひとり降り。階段上にスタンバイするところからオペラでガン見しているんだけど、歌位置にたどり着くまでにも口動いてるよね? 歌っている風でもなく、数でも数えているのかなあ、という印象。
 最初はすげー地味だった歌声が、日に日に場に相応しい力と色を帯びていくのがたのもしかった。(や、最初のうちはどーなることかと手に汗握った)

 なにはともあれ、まっつまっつまっつ。
 群舞の隅っこだとしても、探して眺めるわけだから。これから先なにがどうなるかわからないのがタカラヅカ、それでもまっつまっつな日々は続くのです。
 少しでも長く、続いて欲しい。

 
 キャトレで発売している、『ラブ・シンフォニー』東宝版のまっつ写真がかっこよくてお気に入りっす。
 いちばん好き!な、「ラブ・ゲーム」のモスグリーンのスーツ姿。

 わたしの目にアタマに、録画機能がついていればなぁ。まっつアングルを自在に再生できればいいのに。
 ……と、ヅカにハマったときから20年、変わらぬ欲望です。カタチに残ることはないから、せめて文字に残しておきましょう。

 まっつまっつまっつ。


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