宙組『エリザベート』の感想を書けていない。
 や、感想をUPする欄がない。
 役替わりが3パターンもあるもんだから、役替わり感想優先で、それ以外は初日感想すら書けていないという。

 てことで、今ごろ初日感想(笑)。


 まぁくんに感じている、この安心感はなんだろう。
 今の宙組で『エリザベート』が観たいわけではなかったんだが(組子が活躍する芝居とショーの2本立てが観たい)、まぁくんはトートよりフランツの方が合うと思うんだが、それでも、トートをやるとなっても、不安はない。
 まぁくんはさわやか好青年だけど、毒のある役はハマると思っている。てゆーか、ことさらさわやかな役をやるとき以外、油断すると毒とか影が出ちゃう人だと思う。人間臭い人だと思う。良くも悪くも。青い血も浮き世離れ感もないが、そこが彼の魅力。
 トートが似合わないと思う最大理由はただひたすら顔だけで、ほんとにもう特徴あり過ぎる丸顔でさえなければ、耽美も死も任せろなスタイル美形さんなのに。

 初日、芸風は問題ないし、歌だってたぶん大丈夫、ビジュアルは初の黒髪トートで丸顔隠ししてるんだろうからきっとOKなはず……と思って見たら、その黒髪がアダになって丸顔強調、白い風船が暗い舞台に浮いてる、みたいなものすごいことになっててびびった。
 ……けど、目が慣れれば平気。あとは、思った通りの安心感。


 慣れないのはエリザベート@みりおんかなあ。
 これは先入観なのかな。幕間に友人とも話していたんだが、みりおんシシィって「朝5時きっかりにはじめる」と言われたら、毎朝4時には起きて、ゾフィが起きて来たときには務めをすべて終わらせてそうだ。
 口うるさい姑の小言以前になにもかも完璧にやっちゃって、かといってえらそーにするわけでもなく、賢い犬のように正座して「お義母様、次はなにをいたしましょう?」って微笑んでそうで、それで姑余計にカチンとくる……的な「嫁姑の確執」パターンに思える……。
 本質的に「エリザベート」とは違って見える。
 きれいだし、歌うまいし、文句ないのになあ。

 これはアイーダ@『王家に捧ぐ歌』のときも思ったけれど、みりおんってある種の役をやると、「賢しさ」が出るのな。それがかわいげではなく、苛立ちにつながる感じ。
 わたし自身はあまりそれを感じない……というか、みりおん自体わたしの視界にあまり入らないタイプなんで、わたしは彼女の芸風には鈍感なんだけど、友人の話を聞いて、「ああ、なるほど」と思った。
 同性に嫌われる学級委員かあ……。


 フランツ@マカゼ、歌がマシになってる! これがいちばんびっくり。
 マカゼ氏というと、「美形には音痴しかいない」「音痴でないと劇団推しスターになれない」時代の代表的スターだったのに。や、今は若手抜擢に歌唱力重視が加わっているけど、ちょっと前までは音痴OKだった。
 宙組に来てから音痴というほど破壊力はなくなっていたけれど……。それにしても、さらに歌えるようになってる。
 歌ヘタでもOKなのがタカラヅカの『エリザベート』だけど、唯一フランツ役だけは歌ウマさんが務めてきた。「歌が命の海外ミュージカル」の体裁を保つための最後の牙城がフランツだったのに、今回の宙組再演で、それすら手放すのか、と愕然としていたんだけど、……びっくりだ。
 ビジュアルは申し分ない。ってゆーか、美形過ぎる。こんな美形と恋愛結婚しておいて、ナニが不満なんだエリザベート(笑)。


 でもってわたしは、黒天使のそらくんを探すのに手こずっていた。
 『エリザベート』の舞台は基本暗いし、黒天使は暗いところで踊る。
 ……ということを抜きにしても、探しにくかった。
 だって、「思ったところにいない」んだもん。

 全組眺めていれば、贔屓組でなくてもある程度のスターさんたちの「立ち位置」はわかる。全員登場のショーのオープニング群舞だろうと、数人口のダンスであろうと、あの人ならこのあたりにいる、つーのがあるじゃないですか。具体的にどうこうじゃなく、感覚的な刷り込み方。
 タカラヅカって基本学年順だし。番手と学年を考えれば、誰がどのへんにいるかイメージ出来る。

 それで、「そらくんはこのへん」と思って見ると、探せない。
 ? 黒天使全員の顔ぶれを確認したら、「和希そら」の立ち位置は予想出来る、この面子ならここよね、と。学年と過去の役付きからして。
 ふつー、新公主演済みスターは、10人グループのひとりだとしても、真ん中に配置される。ライトの当たらないダンサーチームの、唯一ライトが届く位置に来る。
 それが。
 いないのよ。真ん中にも、ライトの届くところにも。

 ……見事に、隅へ追いやられてる。
 マデレーネ@かなりちゃんと長のかけるくんがライトのあたる位置定番なのはわかるとして、その周囲にもいないとか……思わないよ!

 身長順だったり、するのかなあ。
 なまじわたし、「かずきそらのいそうな場所」を観る癖がついてるもんで、そこにゆいちぃやすばるくんがいると、びびる。

 初日はかずきそら探しに手間取ったわ……。くそー、なんでもっとわかりやすいところにいてくれないんだ。黒天使10人の中で、唯一の新公主演済みスターなのに。

 前日欄で宙組『エリザベート』初日の話を書いてますが、今日は千秋楽です。
 初日・新公・千秋楽は該当の日にち欄に書くMyルールゆえ、千秋楽日には千秋楽の話。

 いやあ、雪組以外の楽日観るのひさしぶり。や、雪組はチケットなくてもなんとか入手に努めるけど、全組にそんなお金はかけられない。友会で当たったんです、超絶ひさしぶり、いつぶりだよ千秋楽当たるの。一次抽選なんか何か月に一度?(ステータスはダイヤモンドですがナニか?)
 それでも、仕事立て込んでるし、行くかどうか迷ってたんだけど、Aバージョン初日を観て決めた、絶対行く(笑)。千秋楽だからというより、Aバージョンをもう一度観たかった。そして、Aバージョンのチケットを持っているのが千秋楽だけだった。や、完売公演ですから、前もってチケットある日しか選択肢ない。

 2度目のAバージョン。決めていました、りくエルマーだけを観る!


 真ん中は東宝楽のライブ中継を見るからいいや。
 それより、中継では見られないものを見るっ。

 りくくんの美貌と、エルマーのアツさを海馬に刻み付けました。
 あああ、かっこいい。バカで救いがなくてたまらん。
 エルマーはきっと目に映っているものがすべてで、それ以上ではないんだろう。だから見ているわたしは勝手に切なくなったりもどかしくなったりするんだ。
 複雑なものを読み解くのも楽しいけれど、シンプルなものに自由に想像の翼を広げるのも楽しい。


 ところでこのエリザベート、トートとはすぐに別れそうじゃないですか?
 長い旅路の果てに結ばれたふたり、トート@まぁくんとエリザベート@みりおんですが、最後の昇天場面を眺めながらそう思うのです。
 みりおんシシィはたぶん、この直後に正気に返るんだわ、はっ、私が欲しかったものはコレじゃない、って。
 そんな風に思うエリザベートははじめてで、なんというか、はじめて、みりおんの顔を見た気がした。

 研1でまぁくんの相手役に抜擢されて以来、みりおんはずーっとスター街道歩いてきたし、ヒロインやってる姿もたくさん見てきたけど。わたしは不思議と、みりおんを舞台で見失った。顔がわからなくなるんだ。
 あの子、誰だっけ。登場の仕方や台詞から、重要なキャラクタだとわかるけど、誰だっけ、前にどの場面で出てたっけ。
 しばらくしてから台詞の内容からそれが誰なのか消去法で判別する。えっ、この物語のヒロインか! すでに主人公と出会って恋に落ちてるのに、別の場面で大勢と一緒に出てきたらわかんなかった。
 ヒロインやってなお、顔がわからないとか。なんだそりゃ。わたしの頭の方がやばい。加齢こわい。が、みりおんに関しては、それが結構ある。
 さすがに、トップ娘役に就任してからはマシになったけど……衣装その他でわかるし……。
 美人で歌ウマでなんでもできて、なんの問題もないスターさんなのにな。
 なんでこう、顔がわからないんだろう。
 そう思っていた。それが疑問だった。
 疑問の答えは得られないままだが。とりあえず今、ああ、みりおんってこんな顔してるんだ、と思った。
 もうわかった、はじめて見た、知った、もう見失うことはないだろう。

 朝4時に起きてゾフィーを待ち構えるエリザベート。トートの手を取って昇天したあと、「やっぱり違うわ」と振り払うエリザベート。
 はじめて、みりおんを見た。顔が、わかった。

 ……まぁ様トートにはぜひ、振り払われて「がーーん!」ってやってほしいですな。んで、すぐさま文句垂れて責めてほしい。エリザベート、聞く耳持たないけど。ソコで文句垂れるのがまぁ様トート。
 マカゼフランツはその横で「やれやれ」ってお茶飲んでる。シシィに勝てるとはまったく思ってない皇帝様は、最初から不戦敗。苛烈に玉砕するトートに「わかってねーな」と上から目線で薄笑いしてる。……や、君も振られたわけだからね。同じ穴の狢だからね。

 そんな3人模様を想像して胸を熱くする『エリザベート』ファンです、はい(笑)。


 それとは別に、雪組退団者を知って悲鳴をあげた。
 千秋楽で、「はじめてみりおんの顔がわかった」と思った。なぜかずっとおぼえられないままだったみりおん。や、大体においてわかるけれど、気を抜くとどこにいるのか、誰なのかわからなくなる、不思議なお嬢さん。
 テレビと違って舞台は、ヒロインだけしか画面にいない、わけじゃなく、モブも脇役もヒロインも、みんな同じにそこにいる。そこで「ヒロイン」だとわからなくなる……みりおんは、そんな危険性を秘めていたんだ。や、私にとって。

 それがはじめて、「顔がわかった」と思った……立ち位置とか衣装とかの問題ではなくて。
 そう思った矢先だ。
宙組トップ娘役・実咲 凜音 退団会見のお知らせ
2016/08/23
宙組トップ娘役・実咲 凜音が、2017年4月30日の東京宝塚劇場公演『王妃の館』『VIVA! FESTA!』の千秋楽をもって退団することとなり、2016年8月24日(水)に記者会見を行います。

なお、会見の模様は当ホームページでもお知らせ致します。

 いやむしろ、「顔がわかるようになった」からこそ、退団なのかもしれないなあ。わたしのような人間に伝わるくらい、みりおんの中で、区切りがついていた、ということなのかも。
 いつもは観ない、他組の千秋楽。それを観ていたために、遅れて雪組退団者を知った。
雪組 退団者のお知らせ
2016/08/22
下記の生徒の退団発表がありましたのでお知らせいたします。   
雪組
朝風 れい
和城 るな
水沙 瑠流
真條 まから
瀬南海 はや

2016年12月25日(雪組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団

碧月 れん

2016年8月22日付で退団

 朝風くん……!

 歌ウマで男前で、しかもエロいという、三大要素を備えた大人の男が、退団するだと……?!

 前公演で大人の美形男役タジィを失ったばかりだというのに、雪組はまたひとり宝を失うの……?
 若いかわいこちゃんは毎年どんどん入ってくるけど、大人のイケメンに熟成されるまで年月がかかるのよ、貴重なのよ。
 朝風くんだって、最初に彼を認識した『凍てついた明日』では、顔のパーツが真ん中に寄った丸顔の素朴な男の子、だったわ。
 その後もなんとなく目で追ってはいたけれど、新公でも大した役はつかないまま学年が上がり、ずっと「いい人」の役ばかりという印象(悪役などのおいしい役がつかないともいう)だったのが、『ロミオとジュリエット』のキャピュレットの男でエロ&ダーク開眼、一気にエロい男役として目立ちはじめた……というわたし認識。
 キャピュレットの朝風くんが好み過ぎると浮かれていたら、某劇場ロビーで偶然ナマ朝風くんに遭遇、美形過ぎてびびった思い出。
 中堅になってから、悪役とか濃い役をするようになって。雪組のエロ担当になって。

 誰だっていつかは卒業していく、それはわかる。わかるけど。
 待って、朝風先輩、次の公演って、正塚よ?!
 主要人物以外モブ必至よ? ライトの当たらない場所で帽子を目深にかぶってダンスする、ぐらいしか組子に見せ場を作れない人よ?
 そんな公演で卒業とかマジか!!

 や、イケコの『るろうに剣心』だってウエクミ『星逢一夜』だって、パイセンろくに台詞もなかったけどさ……。『ローマの休日』だってあんなだったけどさ……。
 モブでも「あそこに美形がいる!」と目を引くのが、朝風くんの特徴、力技。

 ああ……。
 時を戻して、もう一度『ロミオとジュリエット』が観たいよ……。「今日こそその日」の朝風くんが観たい……あの舌を突き出したR18な顔を。


 るなくんも意外だ。だってこの間、スカステの「オシエテ」に出てたよね?
 雪組95期で出演したの、れいことるなくんだけだよね? おーじくんではなく、るなくんなのが意外っていうか、他組の95期メンバーと比べてもかなり不思議だったんだが、それってつまりこれから活躍するから、ってことなのかなと思ったのに……違うの?


 美貌の瑠流ちゃんは、娘役に転向してもこれといった活躍の場もないまま卒業……? それなら男役のままでよかったんじゃあ……? 「あ、あそこに美形がいる」って眺めるの好きだったのにな。


 まからくんは早すぎるわ、あまりに早すぎるわ。何故今タカラヅカを見限るのかわかんない……学年のわりに活躍してたはずなのに。そりゃ、路線スターとしての活躍ではなかったけれど……。
 別格候補というのは、まからくんの目指すものではなかったのかな……。


 毎度のことながら、集合日はしょんぼりすることが多い。

 そして、めずらしく集合日に配役も出たみたいだけど、オリジナル作品なので名前だけだとどんな役なのかわかんないし。
 あすレオが役付き悪いことだけはわかった。
 宙組『エリザベート』、千秋楽も終わって翌日欄からは次の星組公演の話になる予定だが、ここでは初日の話。
 ……ええ、初日の帰り道に書いたメモを元にした感想が、まだ終わっていないのです……(笑)。


 うらら様はマダム・ヴォルフ役。
 歌えないうらら様が歌ばかりのミュージカルでなにするんだろう、柚長が『ロミオとジュリエット』で「フラメンコの女」という役を特別に作ってもらったように、うらら様も舞踏会場面で一瞬だけライト浴びて踊る役を作るとかするのかな……と思ったくらいだったけど。
 マダム・ヴォルフかぁ。男役が演じたりもする、低音を響かせる役だから、これならうらら様でも声が存在するのか、うまい抜け道を考えたもんだなー。そう思った。
 うん、実際、「声」はあった。裏声が「ない」だけで、地声はあるんだもんね、うらら様。
 しかし、声があるからといって、歌えているかどうかは、別だった……。

 ミュージカルなのに、ひとりだけカラオケ歌唱だった。
 ただ地声で歌っているだけ。アルトの艶も深みもない。

 あー……そうか……。出せる音程の歌=誰でも即プロ歌手! ってわけ、ないよなー……。声があっても、舞台人として聴かせる歌に磨き上げるのは、きっと何年もかかるんだよね……そうでないと、すべての歌手さんたちの努力を否定することになるよね……。
 うらら様はまだ研1だから、歌がうまくなるのはこれからなんだ。いつかきっと、美しい地声の歌を聴かせてくれるんだ。
 ただ、今現在、美しい歌を聴かせてもらえないことが、一観客としてとても残念だ。
 きれいなんだけどなあ。
 はじまる前、キャトルレーヴでうらら様のスチール見て、美しさに感嘆したのになあ。友人とその美しさについて語ったくらいなのになあ。
 神様のバカ。なんで二物を与えないの。

 ちなみにうらら様、きれいなだけじゃなくて、気品もあるの。売春宿のおかみに見えないのよ……。個性的な貴婦人に見えちゃって、美女たちの衣装が娼婦に見えないことも加わり、わたしが無知な中学生だったら、宅配とかの意味がわからなくて、単純に舞踏会の催しがはじまったのかと思うわ……。『ベルばら』とかで、アントワネットがお気に入りの貴族を集めてお芝居して遊んでた、あんな感じで。
 品がある、ってのは得がたい持ち味だから、柄違いの役を無理にやらせず、素直に「フラメンコの女」にしておけばよかったのに……。


 そう、「フラメンコの女」はいいと思う。うらら様だけの話ではなく。
 作品が違っても、突然「フラメンコの女」がスポットライトを浴びて踊り出す、って「お約束」を作ってしまえばいい。『ロミジュリ』でも『スカピン』でも『1789』でも、『エリザベート』でも。
 作品関係なく、とにかく突然「フラメンコの女」。イケコの必殺技として周知させるの、「ああ、歌えないから主要役をさせることはできないけど、どうしてもピックアップしなければならない事情のある人なんだな」と、ヅカファンならみんな「あっ……(察し)」と納得する。そういう「お約束」まで突き抜けちゃえば良いんじゃ?
 一見さんは過去のその作品を知らないから、「ここで突然フラメンコ? 何故?!」にはならず、「そういうもん」と思って見るだろうし。
 イケコ大作海外ミュージカル上演が決まるたび「今度はどの場面で『フラメンコの女』来るだろー?」「いやいや、『フラメンコの男』かもよ?」とか、ヅカヲタたちが予想して盛り上がる、的な。
 歌えなくても主要役をやらなければならないのは、タカラヅカのシステム上仕方ない。それなら、こういう逃げ道を作っちゃうのもアリだと思う。歌えない人が歌重要な役をやって作品を壊すよりは、ずっといい。


 ルキーニ@愛ちゃんはめっちゃイケメン。うらら様と絡むとことか、安定の麗しさ。画面が華やぐね。


 シシィパパ@まりんさん、花組『エリザベート』の同役がわたしにとって鬼門だったんで、今回の配役もめっちゃ身がまえたんだけど、……あれ? 嫌じゃない! このパパなら大丈夫だ!
 花『エリザ』のときはなんであんなに冷血漢だったんだ……? シシィを愛してないパパがどれだけ心冷えるか、身をもって知ったわ。
 今回は、「まりんが演じるヒロインパパならこんな風」という、想像通りのパパだった。


 ゾフィー@せーこは安定のゾフィー……なんだけど、あまり響いてこない……着地点がわからない。ゾフィーとしての外殻は完璧にあるんだけど、キャラクタが見えなくて。外殻はほら、過去『エリザ』から導き出されるもので、それだけなら問題ないのだけど。
 せーこのゾフィーはなにを目指しているんだろう。リピートするうちわかるかなー。


 ツェップス@りんきらがいい。なんだろ、リアルとファンタジーの狭間? いるいる、と思う肉感と、その「いるいる」と思わせる造形こそがデフォルメされた姿というか、ファンタジーなのではないかと。


 ヴィンディッシュ嬢がモンチだと知らなかったのでびっくりした。や、事前に細かい配役までチェックしないんで。
 そうか、モンチか! んじゃうまいんだろうな! と思ったからか、なんかわりとふつうっていうか、「え? それだけ?」と違和感。リアルなのかもしれんが、今のとこわたしにはわかりにくかった。


 シュヴァルツェンベルク@美月くんの歌が残念でな……。ほんとに歌苦手なんやな。
 重臣たちはとりあえず歌えないとつらいのだということを、改めて思った。
 かっこいいのになあ。歌もうまそうな雰囲気あるのになあ。


 黒天使@かけるくんが強そうで強そうで……きっととても素晴らしいダンスを踊っているのだろうと思うけれど、実力よりナニより容姿が「黒天使じゃない」と思うわたしを許して……。
 実力ナッシングさんがビジュアルだけで重要な役をやって作品をぶち壊すのをつねづね愁うわたしですが、実力さえあればなんでもいいのかというとそうでもなく……ただの好みの問題かなあ。世の中的に翔くんは耽美キャラなんでしょうか? 黒天使は耽美な存在だと思っているので、翔くん自身が素晴らしい舞台人であることとは別に、「柄違い」だと思ってしまうのです。
 黒天使で唯一ライトが当たり顔も姿も観客に示される人が、スリムなまぁトート様とは対極にあるような、ガチムチ野郎っつーのは……わたしのイメージする黒天使とチガウ……。

 てのが、初日感想っす。その後の感想はまたいずれ。
 星組『桜華に舞え』『ロマンス!!(Romance)』初日観劇。

 サイトーくん新作の『桜華に舞え』を観た感想は、『TRAFALGAR』を観たときの感想と同じだった。

 すなわち。

 サイトー作大劇場本公演に必要なモノは、お金だ。

 『エル・アルコン-鷹-』がとてもステキに派手で盛り上がる海洋男子ロマンだったので、同じジャンルの『TRAFALGAR』も、同じように盛り上がると思ったの。
 実際、『エル・アルコン』と『TRAFALGAR』は同じ方程式で作られていて、設定や場面や演出などなど、「使い回……ゲフンゲフン、ワンパター……ゲフンゲフン、いやその、作者のライフワーク的こだわりが全編にあふれている」状況だった。
 やっていることが同じだと、印象を大きく変えるのは、そりゃ演者の違いとか題材とかいろいろあるけどそれはともかくとして、予算の差は、如実に出る。

 『TRAFALGAR』を観ながら、「そっか……お金、ないんやねえ……。『エル・アルコン』は予算いっぱいもらってたんやねえ……」と遠い目になった。

 それと同じ。
 歴史は繰り返す。

 『桜華に舞え』を観ながら、「そっか……お金、ないんやねえ……。『JIN-仁-』は予算いっぱいもらってたんやねえ……」と遠い目になった。

 『エル・アルコン』はスポンサー付き公演、『JIN-仁-』は人気ドラマのタイアップやったもんなあ。
 特に『エル・アルコン』は豪華だったなあ。ヅカの通常公演とは、かけられる予算が大きくチガウんだろうなあ。

 えー、『桜華に舞え』は、『JIN-仁-』と同じ方程式で作られてました。
 あまりに同じで、あちこち苦笑い。
 中村Bのショー張りに、「次にナニが来る」かわかる感じなのが、もう(笑)。

 『TRAFALGAR』が2010年だから、6年経ってもサイトーくん変わってねえ。海洋モノなら海洋モノ、幕末モノなら幕末モノ、同じジャンルで焼き直し。

 いちばんツボ直撃したのが、ことちゃんの役っす。キタキタ、これがないとサイトーじゃないっ(笑)。
 あ、『JIN-仁-』では咲ちゃんがやってました。頬の傷をなぞるポーズ(サイトーくんのお約束)付きで。

 でも、『TRAFALGAR』は「『エル・アルコン』劣化版」だったのに、『桜華に舞え』は「『JIN-仁-』の上位互換作品」です。『JIN-仁-』を習作として、完成版を作った感じ。
 あー、『JIN-仁-』はひどい出来だったけど、その失敗を元に、向上した作品を作れるなら、まだいいんじゃないかと。や、そのひどい出来なモノでサヨナラ公演見せられた者としては物言いたいこと山積みだけど、同じ焼き直しでも、よくなってるならまだ救いはある。劣化されたらたまらん。

 サイトーくんはますます男子萌えに突き進み、ヅカファンのほとんどが女性だということを忘れてるなー。
 男性は、少女マンガを理解出来ないとかそもそもコマを追うことすら出来ない場合も多いが、女性の多くは少年マンガを読めるし楽しむこともできる。だから、サイトー作品が少年ジャンプでも、大半の女性はついてはいけるのだと思う。けど、あちこちの感覚の乖離っぷりが「ああ、サイトーくん男子だもんなあ」と思う。

 少年ジャンプだからこそ、ばーんどーんぶわーっと派手であるべきで、予算が足りてない感じなのが悲しい。
 サイトーくんが満足出来るくらいの予算をもらえていたら、『桜華に舞え』はもっと華やかで派手で、ドラマチックになっていただろう。
 それが残念。

 サイトーくんに予算を!


 『ロマンス!!』は、なんともなつかしい空気感。
 ああこれ知ってる、昔のタカラヅカこんなだったー、的な。
 年寄りなので、この空気は嫌いじゃない。

 なんかすごく、ワタさんサヨナラを思い出していた。あれも岡田せんせ作品だった。
 夢中で、それこそ息を詰めて、見入っていたあの感覚。
 同じ星組だから似せているのか……って、岡田せんせにソレはないか。ツギハギ基本でこだわりなんかなさそうな作風だもんな。
 サヨナラ公演だとコレしか手持ちがないのかもしれない。

 だとしても、『ネオ・ダンディズム!』に通った者としては、なつかしくて切ない。


 芝居にしろショーにしろ、みっちゃんほんと、大活躍というか、すげー仕事量だなと思う。トップスターってすごい。
 身体に気をつけて、最後まで走りきって欲しい。
 『桜華に舞え』初日の観劇感想メモをさらっと記す。


 まおゆうきがうまくなっている……?!
 なんか、まおくんっぽくない。どうしたんだまおゆうき!
 まおくんはヘタレでないといかんとか、それは勝手な思い込みなので、うまくなってくれているのは喜ばしいことです、はい。
 しかし、まおくん年寄り似合わない……演技以前に、あんな神スタイルのじじいいねえ、と思う……。


 鹿児島弁、勘弁。

 聴き取れない……。
 わたしの耳の問題かもしれんが、ここまでぶわんぶわんした音では無理っす……。
 途中からあきらめて、雰囲気だけ受信することにした。
 NHKの大河ドラマ(音声調整がんばる年寄りにも優しい制作)ですら、字幕付きだったのに、テレビでもないナマ舞台で、しかも、こういっちゃなんだがタカラジェンヌの発声と滑舌で、「誰でも初回で音を完璧に聞き取れて、意味を完全理解出来る」と思って使用してるんすか? そうでないなら、「雰囲気やニュアンスを借りるだけ」にしてほしかったよ……。
 や、大河ドラマ『翔ぶが如く』も途中で脱落しちゃったから、もともとわたし、このジャンルが苦手なだけかも。

 『エル・アルコン-鷹-』以来、サイトーくんのオープニングには期待している。めちゃくちゃ盛り上がるんだもの、派手なんだもの、華々しいんだもの。アニメ的というか、フィクションであることの強みと旨味をぎゅっと詰め込んであふれかえってる感じが……!
 その期待感っつーか思い込みがあるから……うーん、今回ちょっと拍子抜け。
 そっか、衣装が豪華でも派手でもないし、幕末ってだけじゃあ華やかになりようがないのか……。
 予算たっぷりあれば、オープニングからオリジナルムービー流してキャラ紹介して、どーんと盛り上がれたんだろうな……。
 なんつーか、イマドキのカラフルキャラ弁期待してフタ開けたら、おばあちゃんの茶色いおかずだらけの昭和なお弁当だった感……? いや、茶色いおかずおいしいけど、昭和も好きだけど。

 時代があっちこっち跳ぶのな。
 逆流はせめて1回にするべきでは? どうしても必要だとも、効果的だとも思わない謎構成。


 桐野利秋(中村半次郎)@みっちゃんはいい。あってる。さすがサイトーくん、みちこのキャラははずさないな。
 みっちゃんのいいところも悪いところもハマってる……。そういうの、集大成的に見られるのはいい。

 衣波隼太郎@ベニーは、ええっと、まずいちばん言いたい、殺陣がんばって!!
 半次郎さんを止めるために斬りかかって、勝ってしまう場面あるじゃないですか、少年マンガのお約束!的な。あそこがあまりにへっぴり腰すぎて、「え、コレに負ける半次郎って??」になる。
 みっちゃんはカケラも負けそうじゃないのに、無理に負けるからまた嘘くさい展開に見える。

 みっちゃんは大人になってからの方が良いけど、ベニーは若いときの方がいいなあ。チョビ髭おっさんより、若衆の方が似合う。線が細すぎるのかな。

 八木永輝@ことちゃんがいいなあ!
 予定調和に「説明しなきゃならないことを説明してます、やることいっぱいあって大変です」な展開の本編の中、サイトーの趣味だけで存在するキャラクタは、本来「いなくていい」だけに、自由自在。
 説明聞くの飽きたなー、というときに、ことちゃんがぶわーーっと熱量出しながら、ストーリー関係なく出て来て個人的感情だけぶわーっと語ってくれるのが、とても痛快。
 うんうん、自由度高いキャラはいいね! 彼が出て来ると「物語が動く」気がするよ。

 あ、そんでもってことちゃん、かっこよくなった。男っぽくなって、どんどん雰囲気や顔が変わっている。若い子ってほんと、公演ごとに変わるねえ。

 大谷吹優@風ちゃん。……や、吹優ってこんな漢字なんだ、今はじめて知った……結命@『JIN-仁-』といい、サイトーくんのヒロインのネーミングセンスがこそばゆいです……タスケテ(笑)。
 女性の絡まない題材で、それでもがんばって絡めた方かなと。
 ただ、風ちゃんに似合う髪型でも衣装でもなかったのが残念……もっとかわいい姿を見たかったなあ。

 桐野と吹優の関係は、もっとおいしく出来たと思うの。記憶喪失ネタは鉄板だもの。
 だから、「ついで」程度にしか使われてないのがもったいない。

 西郷隆盛@さやかさんは、さすがのうまさ。
 なんだけど、タカラヅカでこのキャラクタをこういう描き方すること自体、わたしは求めてないなー。

 なんかすごく「サイトーだわ」と思ったのって、ママネタがどーんときたからか。
 以前はサイトーくんというとマザコン要素基本装備だったのが、最近あまり気にならなくなっていた。
 桐野母@あんる、若いのに老母芝居うますぎ。
 こういう比重の高い年配女性役を、組長がやらないんだなあ、と、今さらなことを思ってみたり。主人公の親って管理職がよくやるイメージだから。

 しーらんの役が年齢不詳というか……立ち位置がわかりにくいのは、華奢な若者に見えるからか。狭量な若者が意地悪をしているように見えて、そこだけ観ると学園モノっぽい。
 しーらんって老け役やったことなかったっけ? カチャさんと同じでいつまでもフェアリー、永遠の少年イメージ。
 それは武器であり魅力であると思うけれど、今回は違和感。

 せおっちが目に付くなあ……。
 他の役と区別して見ているつもりがないのに、ああまたせおっちだ、と思うから、立ち位置がよくなっているのかも?
 それともわたしが無意識に彼を求めている……?(笑)
 あ、あとあやなくんもわかります、目に付きます。

 反対に、かいちゃんがわからなかった……。
 最後の方でよーやく「あ、あれひょっとしてかいちゃん?」と気づいたのだけど、前半まったくわからん……出てた、よ、ね?
 『こうもり』に引き続き、芝居でかいちゃんを見失うとか……何故だ、宙組にいたときはこんなことなかったのに。


 ラストはもっと勢いのまま、なだれ込むように終わってくれても良かったかな。
 テンポ悪くなって完、という気がした。
 『ロマンス!!(Romance)』初日感想メモ。


 オープニングの色合いからして、ロマンチックレビューキターー!と思う。

 淡い色のグラデーション、オーソドックスなデザインの衣装。
 ゆったりしたダンスと主題歌。

 んで、オープニングが終わったら、愉快な格好の男たちが銀橋に現れて「ダンディズムとは……」って語り出すのよね! あ、これ『ダンディズム』じゃなかったっけ。


 プログラム買ってないから、場面名とかわかんないんだけど、みち風の場面で……あ、ウィキに場面名載ってる!! いい時代だなヲイ。
 「第三章 初恋」。みっちゃんが真っ白ブラウスで「青年」やってて、風ちゃんがお嬢様ドレスでお友だちと恋に憧れる少女♪って感じに踊ってる場面。
 ここ、すごく好き!
 きゅんきゅんした!! みっちゃんなのに!(失礼)

 わたし、みちこさんに女子的な意味でときめいたことがないし、彼を美形とも思えていないのです。すまん。ついでに、若作りした彼が苦手で、いっそおっさんでいてくれ、と思ってるクチです。
 なのに。
 そんなわたしが、青年ほくしょー氏にときめきました!!

 初恋。……ああそうだよな、そういうタイトルだ、そういう場面だ。
 少女と青年の恋に、……ただ見つめ合い、ダンスを踊る、それだけで世界が変わる、甘酸っぱい想いに酔いました。
 みっちゃんの真っ白ブラウスがいいの、袖がふわっと膨らんでるのがいいの、あああタカラヅカだ、タカラヅカでこそだ、こんな美しさ!

 初々しい恋のダンスだけで十分、泣けてくるような甘い切なさを味わっていたのに。
 うわああ、別れきますか、出征ですか!!
 迎えに来た友人たちが、どう見ても同年代に思えない、ここで本物の若者出しちゃうとみっちゃんの「青年」フィルターが崩れるからヤメテと思ったことはナイショ(笑)。

 ここで終わり……と思ったあとに、とどめ来ました!!
 後ろから風ちゃんを抱きしめるみっちゃんに、ヲトメハート直撃された!
 やだコレ萌えるーー!

 いやあ、この期に及んでみちこ様にどきどきするとは……あ、あなどれんわ! ほくしょーさん!


 次の「ロックン・ロール・エイジ」は、目が足りない。どこ見ていいかわかんないまま終わった。
 とりあえず、スケート履いたお嬢さんたちがかわいくて……。

 前の場面であんだけときめいたのに、ここのみっちゃん見て、途端冷静になれました。うん。そうだよね(笑)。

 ところでれんたの髪型に目が点になったんですが……。


 ことファンの友人が、公演がはじまる前から「また女装があるのっ!!」と会うたび憤慨していたんですが、何度も同じ話を聞かされていたわりにすっかりそのことを忘れていて、中詰めでみっちゃんと踊っている美女をオペラグラスでチェックして驚きました。
 ことちゃんじゃん!!

 すげー、きれいだー!

 ことちゃんというと、何度も何度も女役をして、その都度うまくてハマってて、娘役スターだと言われても違和感ナイくらいだったけど。
 ハマってて違和感なくても、きれいかというとまた別の話っていうか、キュートでかわいかったけど、やっぱりごつかったしぷるぷるしていたしで、「きれい」という感じではなかったの、わたし的に。

 それが、違和感なくきれいだわ。
 娘役スターだわ。

 ことちゃん痩せたねえええ。ほんときれいでかわいくて、彼に転向を望む人たちがいるのもわかるわー……。


 中詰めのあとは、作品のメイン場面。
 「第六章 友情」……『ネオ・ダンディズム!』のメイン場面、「惜別」を思い出す。
 ここ好きだわ。「惜別」が大好きだったの。誰かをオペラで追うよりも、椅子に深く身を沈めて、降りそそぐ光の筋を浴びる感じ。
 波のようにあとからあとから重なってくる感情を、無理せず手を離して、あるがままに揺られるような。

 そして、なまじわたしの頭に『ネオ・ダンディズム!』があるもんだから、みっちゃんがここにいるのが不思議な気はする。なんか、「星組のショーを見ている」感覚があって、だとしたらやっぱりみっちゃんはわたしの思い描く星組にはいなくて、じゃあどこにいるんだろうと思うと……月組なのかな。
 『ネオ・ダンディズム!』の頃のみっちゃんは月組のホープで、月組で輝いていたから。

 いろんな記憶が交差する。
 現在を見ながら、過去を見る。宝塚歌劇団100年の歴史半端ナイ、過去は現在に続き、続いているからこそ循環し、想いは時を超える。簡単に。

 なんか、メイン場面のあとからは、あんまし記憶にナイというか、力尽きてメモに書かれていない。
 うーん、「惜別」に気持ちが行っちゃったせいだな。

 
 芝居もショーも、良い退団公演作品なのではないかと。
 正直『THE ENTERTAINER!』の方がサヨナラ作品っぽかったけどなー。
 『桜華に舞え』のあとなら、『ロマンス!!』のまったり感はちょうどいいんじゃないかな。
 宙組『エリザベート』の話です。

 今回、『エリザベート』という作品の力を改めて見せられたなと。

 前回の花組『エリザベート』は、異常だったと思う。人気の面で。
 異常な加熱っぷりというか、当日券を求めて徹夜する人が後を絶たず、公式に「徹夜禁止」と言い渡されるとか。
 そんなの、はじめてだ。

 や、昔はチケットを買うために1週間とか1ヶ月とか?以前から組織で並ぶのは当たり前だったけれど。
 バウのチケットが欲しくて発売日の前日の夜に並びに行ったら「今ごろ来ても買えないわよ、みんな1週間以上前から並んでるんだから」って追い払われたもんな。実際そこに並んでいる人は10人ぐらいしかいないとしても、「1週間前から100人以上並んでる」と。チケット販売を仕切っている「誰か」の許可を得ることのできない一般人は、一般販売されるチケットの列にすら並べない、買えないシステムだった。

 そんな閉鎖的な時代の話ではなく、今現在のチケット販売システムになってからは、はじめて。
 いくらなんでもそこまで大人気って、みりお様すごすぎ。

 という、前花組『エリザ』は行きすぎ、おかしかったと思うので除外するとして。

 今回の宙組『エリザ』も、思ったより周囲の反応が良くて、びっくりした。

「今度『エリザベート』やるんだって? 観に行きたいな」と、あちこちで聞いた。
 ヅカヲタでない人たちから。

 タカラヅカも観たことある、程度の人とか、昔ヅカファンだった、もう何年も観たことないわ、という人とか、ミュージカル全般観るの好きよ、という人とか。
 あと、「前回の『エリザベート』を観たかったんだけど、チケット取れなかったら、今回は観てみたい」という人とか。(←ヲタじゃないから、タイトルが同じなら同じだと思っている)

 「タカラヅカの『エリザベート』」って、ブランドなんだ……!

 「大石静脚本のミュージカルやるんだって?」と言って来た人も、「『王家に捧ぐ歌』再演するんだって?」も皆無だったが、『エリザベート』だと食いつきがチガウ……。

 知らなかった。
 『エリザベート』って、すでにそんな扱いなんだ。
 騒ぐのはヅカヲタだけかと思ってた。そんな、一般人へのアピール力のある演目だったんだ。
 や、そりゃ少しはあると思ってたけど、これほどとは思ってなかったんだ。


 実際、劇場へ行くと、いつもとはチガウ活気がある。

 建物に入って劇場改札口を目指して歩いていたら、なんか長蛇の列がある。
 団体客だとしても、この位置に並ぶのはおかしい。なんの列だろう、と思ったら、レストラン・フェリエの「幕間お食事予約の列」だった。

 えええ。
 心から、驚いた。

 フェリエって、改札口横のレストラン。高くて味もサービスもイマイチな、ヲタならまず使わない店……。
 そう、ヲタなら使わない。何千円も出して食べたい食事でも、得たいサービスでもない。
 でも、ヲタ以外にはここしかない。劇場にも宝塚という土地にも慣れてないと、食事をどうすればいいかわからない。建物内にあるふつうのレストラン、はフェリエだけ。あとは和食と喫茶とセルフサービスのフードコートだもの。内容のわりにちょっとお高いけど、テーマパーク内の食事が高いのと同じだとあきらめられる。

 わたしも数年に一度は利用する。ヅカ初心者の友人や、母をエスコートするときに。
 特に、母と一緒のときは、観劇前に「幕間お食事予約」をする。そして、1幕が終わったら予約していた食事をして、また座席に戻る、というのをやる。
 母にとっては、「宝塚大劇場のレストランでレビューランチを食べる」というのも、「宝塚観劇」というイベントのひとつに含まれているようだ。テーマパーク内の食事と同じノリ。

 とまあ、そんな感覚のレストランが、何故か盛況。
 通常公演なら、平日昼の「幕間お食事予約」コーナーは閑古鳥で、係のおねーさんがぽつんと暇そうに立っているのがふつうだ。
 なのに、そこが長蛇の列になっているということは、だ。
 ヲタではない人たちが、いつになく詰めかけている、という現象のひとつなんだ。

 まあ、そうでもないと、チケット完売とかあり得ないし、それを期待して劇団もわざわざ再演しているのだから、正しい結果を得ている、ということだろう。
 実際、『Shakespeare』の客入りを体感した者としては、ここで『エリザベート』を持って来たのは、経営戦略として正しいのだと思うわ……再演決まったときは不満だったけど。
 組子モブの一本モノはよせ、今の宙組に必要なのは芝居とショーの二本立てだ、って思ったけど、これだけ「ヲタ以外」を動員出来るなら、今の宙組に必要なのは、まず劇場に足を運ばせるネームバリューのある作品だったんだと、認めざるを得ない。

 んで、まぁ様と宙組には、力がある。基本力というか、与えられた題材を、真面目に形作ることが出来る。

「今、『エリザベート』やってるんだって? 観てみたいな。どんな感じ?」と聞いてくる、ヲタ以外の人たちに、「ぜひ、観てみて」と言える。
 なんというか、とてもスタンダードな「タカラヅカの『エリザベート』だよ」と。
 初日、まぁ様の背景に溶け込む黒髪と浮かび上がる白いまん丸顔にびびったけれど、リピートしたらそんなのぜんぜん気にならなくなった! むしろ、「スタンダードな『エリザベート』」だと思う!
 だからみんな、観に来て! と。
 なんだか不思議な気がした。

 好みの顔の人が、フランツをやっている。

 宙組『エリザベート』
 マカゼ氏が皇帝フランツをやっている、ということに慣れない。

 初演からずーっと『エリザベート』本公演はコンプリートしてきているが、顔が好みのフランツってはじめてなんじゃ……? 純粋に、心の底から「若くてハンサムな皇帝」という台詞を実感込めて納得出来るのって、はじめてなんじゃあ……?

 や、フランツは作品2番手格の役なので、演じる人はみな美形スターさんばかりですが、そのなかにもどうしても好みにより美形に思う・思わないがあって……。
 えーと、歴代フランツはタカネ・ノル・たかこ・樹里・ガイチ・ゆみこ・きりやん・みちこ? 今そらでぱっと思いつくまま書いたけど、抜けはないかな?
 このなかではいちばん、たかこのことが好きだったけど、フランツやってたときのたかちゃんってば、たかこ史上最大に太っていた、よね? 顔がまるまるぱんぱんで、下級生時代から眺めていた者から見ても、びびるレベルだった。
 マリコさんが「さきちゃん史上最大の太さ」とガチファンから認定されていたのもトートをやったときだったし、『エリザベート』を歌うためには太らなければならないんだ、と納得したおぼえがある。
 つまり、たかこは好きだったけど、フランツのときは好みの顔ではなかった。

 こんだけ再演を重ねて、はじめて、好みの顔がフランツやってる……なんか不思議……なまじヲタ歴長いから、フランツはビジュアル不問的なイメージ持っちゃってて……や、どうせ半分ヒゲオヤジだし……。

 てゆーかフランツっていい役だな。

 今ごろ。
 今ごろ言うのか。

 初演を観たとき、わたしは断然ルキーニ派で、フランツのことはまったくいいと思ってませんでした。こんな役が2番手役だなんて可哀想、てな風に思ってました。
 それが、前回の花組『エリザベート』から、ルキーニよりフランツの方が良くね? と思うようになり……今回駄目押しで、「フランツいい役!」と思いました。

 や、初演雪組『エリザベート』公演終了後すぐに発売されたビデオを見て、「フランツっていい役じゃん!」とは思った。舞台ではわかんなかったけど、映像ではフランツはちゃんとアップになるから、どういう役なのかわかる。
 初演終了後からちゃんと、理解してはいたの、フランツという役。わたしの好みからいって、絶対この役好きだぞと。
 ただ、実際の舞台では、他にもっと観たい部分が多すぎて、フランツを観る余裕がないというか、あんまり気にならないから絶賛放置中というか……そういう扱いだった、わたしにとってのフランツ。

 でも。
 顔が好みだと、観てしまう。
 美しいから、眺めてしまう。
 うわ、舞台のフランツこんなに観るの、はじめてかも。

 マカゼフランツは美丈夫だ。
 ハンサムなだけではなく、強そうでもある。なのに、シシィ@みりおんに振り回されちゃうんだ。「仕方ないんだ」とか「開けておくれ」とか言っちゃうんだ。
 みりおんシシィがまた、一筋縄ではいかない感じでさ。気が強くて言うことを聞かない、とかじゃなくて、理論武装して正論でねじ伏せてくる系だから、フランツたじたじ。
 やだなにソレかわいい。

 フランツがでかくて強そうで、シシィが細くて折れそうな現実感を持っているところがいいの。
 フランツは大きさと同時に、鈍重さもある。自分の大きさが小さな相手を傷つけるのではないかというとまどいがある……ように思えるところが。
 大きさや強さに任せて、征服しよう食らいつくそう、という意識がまったく感じられない、むしろ及び腰になっている感じがいじらしい。

 シシィに対してはすごく慎重で下手に出ているのに、それ以外にはけっこう強いというか、冷酷な感じなのもまたいいよね。
 あっきールドルフが必要以上におどおどしているのもまた良くて(笑)、フランツあんた、シシィにはメロメロあまあまで、息子には一徹父ちゃん系なのか、なんだそれ萌える。
 最終答弁でのトート@まぁ様への態度といい、基本資質はドSなのかも。シシィにだけ弱い。

 外側に向ける顔と、愛する妻にだけ見せる顔がチガウ……イイヨイイヨ、ソレすっげーイイよ!

 みりおんがカリスマ性のある特別な存在ではなく、学級委員的なリアルな女の子なのがまたいいのよ。
 こんなふつうの女の子に惚れて、最上級の男が背中を丸めているのがロマンなのよ。
 英雄が女神と恋に落ちるんじゃ、ただの英雄譚でしかない。少女マンガなら、ヒロインはふつうの女の子よ。

 ということで、マカゼフランツがとても楽しいです。
 歌は、歴代フランツ最低レベルだと思うけど、びびるくらいマカゼ比でうまくなってるし、これだけ美しければアリだと思っている。
 実力とビジュアルのバランス大事、美形ならとりあえず出来ているとかヘタじゃない、あたりでもOK!(どんなに美形でも、作品壊すくらいへたっぴだとわたしは付いて行けなくなる……どんなに神実力でも突き抜けて不細工な路線スターは、やっぱり「チガウ」と思う……ので、バランス大事)
 しかしマカゼさん、マジ歌うまくなってる……星組時代はなんだったんだ。『Étoile de TAKARAZUKA』新公とか伝説レベルなのに……。
 えー、とても私的な宙組『エリザベート』考。
 わたしの勝手なイメージなので、「どこが??」と思われる方は、そっとページを閉じて見なかったことにしてやってください(笑)。


 とある、ライオンと小型犬の夫婦の話。

 吹けば飛びそうな雌の小型犬が、立派なたてがみの雄獅子に、きゃんきゃん吠えまくっている。ライオンは太い首をかしげて、途方に暮れたように、小型犬を見ている。
 ライオンは、小型犬が大好きなんだ。彼女を喜ばせたいし、彼女に癒されたいと思っているのに……小型犬はライオンがナニをしても猛烈に吠える。
 小型犬はライオンに対し苛立ちや絶望を感じているし、ライオンは寂寥と哀しみを感じている。
 だってそもそも、ライオンと小型犬じゃ、生きる世界が違いすぎてて、一緒にいてもわかりあえないよ。つか君たち、そもそも言葉通じてる?

 小型犬は、自分が小さな犬だということ自体にも、たぶん納得していない。世界は広く大きく、彼女は小さくやせっぽちだ。
 だけど彼女は胸を張り、しっぽを立てて闊歩する。「私だけに」と。

 そんな彼女を、ライオンはまぶしく見つめている。大きな身体と強い牙と爪を持つがゆえに、彼は彼女のように生きられない。強い力には義務と責任が生じ、百獣の王たる立場に縛られる。
 小型犬は彼の元を離れて放浪し、彼は玉座で彼女の帰りを待つ。
 彼女の港はどこだろう? ……自分のもとでないことはわかっている。だけど、彼女が求める場所がどこにもないことも、わかっている。
 どこにもないのなら、ここに帰ってくるといい。
 そう思って彼は、彼が生涯懸けて守り通した王国で、愛しい妻の帰りを待つんだ。


 ……なんてイメージなんですが。マカゼさんとみりおんちゃん。
 太い首をかしげて途方に暮れている雄々しいライオン……そんなマカゼフランツにハクハクします、滾ります。
 シシィは通常猫タイプだと思うんだけど、みりおんは猫じゃないわ、真面目な犬だと思う。真面目だから許せないことが多くていっぱいいっぱいになってしまう。

 あ、トート@まぁくんは黒豹ね。小さな痩せた犬のみりおんを誘惑する、豪奢な豹。
 みりおん犬は、黒豹閣下にも等しく吠えます(笑)。

 ちなみに、マカゼライオンを誘惑するマデレーネ@かなりちゃんは金色の女豹。かなりちゃんの姿をしているけれど、ほんとのとこトート閣下自身だよね、だから豹。
 マカゼライオンが誘惑されちゃうのは、愛する小型犬の周囲によく似た黒豹を見かけていたから……てな。

 黒豹閣下はけっこう狭量で、小型犬相手に本気で怒って吠えたりしてる。小型犬も受けて立つから、この1匹と1頭のケンカは喧しい。
 ライオン陛下は彼らのケンカには混ざらず、下がった場所から眺めている。や、小型犬ちゃんに勝てないの知ってるし。

 なんやかんいって、小型犬最強説。
 誰も彼女に勝てない。


 そんなイメージ。

 起きているときはキャンキャンうるさいけど、たまに小型犬ちゃんはライオン陛下にもたれかかって眠っている。
 寄りそいあって眠る、大きなライオンと小さな犬。ナニその癒しショット。
 でも、嫉妬深い黒豹閣下がちょっかい出して、小型犬ちゃんは怒って吠えて、ライオン陛下は起き抜けにわけがわからないまま吠えられて、しゅん。
 ドヤ顔で小型犬ちゃんの前に現れた黒豹閣下も、やっぱり小型犬ちゃんに吠えられて、しゅん。黒豹閣下はしょんぼりするとき黙ってしっぽを巻くのではなく、やり返すからさらに小型犬ちゃんが吠えて、……エンドレス。

「毎晩毎晩、同じ質問ばかり」とルキーニが愚痴るくらい、「グランデアモーレ、偉大なる愛」の物語……ぐるぐる同じことを繰り返すのがラブコメの鉄則ですもの!

 三角関係ラブコメは、開き直って楽しむものよ。悲劇じゃなく、かわいいラブコメよ。あの世に行っても、生まれ変わっても、愛を叫べ、愛しい、不器用な獣たち。
 あー、萌えるわー(笑)。

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